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在住者から見たバンコク食・豆事情(上)料理編
本文42頁参照
1.屋台で焼かれるバンコク定番菓子
「カノム トウキョウ(和訳:東京菓子)」
4.カリカリに煎られた豆が添えられるデザート
「 もち米とマンゴーのココナッツソースがけ 」
2.TV 等で人気の料理人ポン氏が紹介し
評判の「小豆入り カノム トウキョウ」
5.上段:タイ産大豆・日本産大豆・黄色豆
下段:タイ産黒豆・日本産小豆・緑豆
3.高層ビルが立ち並ぶバンコクの中心街
街の中心に通る「スカイ トレイン」
6.インターナショナルスクールで東南アジア初の
日本食が常設。「 どんぶり 」「 巻き寿司 」 コーナー
カナダ豆類事情に関する調査結果の概要
本文68頁参照
カナダ連邦政府カナダ穀物委員会で委員長から
説明を受ける
サスカチュアン大学農学部のファイトトロン
カナダ国際穀物研究所における品質調査
豆栽培ほ場で説明するベネン・アルバータ豆類
生産者協会会長
マニトバ大学リチャードソン研究センターで
アルバータ州の農場
半径800mのピポット潅漑施設の前で
豆 類 時 報 №57
2009.12
目 次
話
題
豆類主産地・十勝における需要拡大のチャレンジ………………黒澤不二男
2
行政情報
食品業界の信頼性向上に向けた農林水産省、食品事業者等の取組
……………………………………………………………吉 沢 正 純
7
調査・研究
雑豆発酵ペーストを活用した新規食品の開発……………………佐々木香子
12
虎豆の窒素追肥と早期収穫体系による安定生産技術……………唐 星 児
18
京都府中丹地域における土地利用型作物の産地づくり…………河 合 哉
23
千葉県野田市の枝豆生産と「まちづくり」の活動………………石 川 秀 勇
29
生
産 ・
流通情報
海外情報
豆類生産見通し………………………………………………………米国農務省 36
在住者から見たバンコク食・豆事情(上)料理編………………小 林 浩 子
業界団体
42
第3回「九州豆シンポジウム~わが街・我が家・豆の味~」を開催
……………………………………………………………平田大三郎 50
平成21年度豆類産地懇談会・第58回豆類生産流通懇談会報告
……………………………………………………………川 北 壽 彦 53
豆・餡・洋菓子コンテスト…………………………………………同 上
62
落花生の作況調査……………………………………………………板 野 徹
65
カナダ豆類事情に関する調査結果の概要…………………………伊 藤 洋
68
雑豆需要促進研究情報収集事業(平成21年度)の成果について
……………………………………………………………村 崎 史 郎
77
神戸『食と健康』研究会の概要……………………………………同 上
81
棚
「知っておきたい食の世界史」 「中世の饗宴」…………………後 沢 昭 範
84
統計・資料
雑豆の輸出入通関実績……………………………………………………………
91
豆類基金
コーナー
本 豆類(乾燥子実)の年次別作付面積及び収穫量(全国)…………………… 93
編集後記
……………………………………………………………………………………… 94
--
話 題
豆類主産地・十勝における需要拡大のチャレンジ
(社)北海道地域農業研究所
特別参与 黒 澤 不二男
長期にわたって継続してきた政治体制が
催されました。道内・外から実需サイド
政権交代という劇的な大転換を迎え、社会
(流通・加工)、生産サイドの関係者が多数
構造や、経済・産業構造に大きなインパク
参加し、3町村での小豆といんげんの作況
トを与えています。新政権が取り組む最大
視察の後、懇談会では農林水産省やホクレ
かつ最重要だとされる農業施策「戸別所得
ンの担当者からの農政や産地の情勢報告、
補償制度」のフレームがまだ固まってはい
十勝農試の育種担当者の育種最新情報の提
ませんが、日本のフードバスケットとされ
供があり、それらを受けて生産安定対策や
ている北海道でも、現在、この展開の行方
需要拡大に関する活発な論議が展開されま
を固唾を飲んで見守っているところです。
した。
また、てん菜など一部の作物を残し、北
筆者も司会としてその論議に参加し、
海道では収穫も最終期を迎えていますが、
数々の知見を得ることができました。そ
7、8月期の多雨、日照不足の影響を受け、
の中で、筆者は(財)日本豆類基金協会の
水稲、小麦の作況不良、他作物も平年作を
「豆類の需要喚起に向けた取組み」につい
下回る状況となっており、平成5年に次ぐ
ての報告に大いに触発されましたので、そ
農業被害の中で、生産者や農業関係機関の
の概要を以下に紹介致します。
方々は平成年度の営農計画策定や、資金
繰りなどに真剣に取り組んでおり、国や地
1.豆類の需要喚起に向けての提言
方自治体の迅速・適切な支援を求めていま
この報告は、日本豆類基金協会の活動実
す。最近年では、「水田・畑作経営所得安
践の中から、(1)豆類の需要促進方策とし
定対策」のもとで、北海道の畑作は課題を
て、①消費者への啓発、②学校給食・食育
抱えながらも比較的安定的に推移してきま
での活動推進、③外食・中食関係者への働
した。その北海道畑作の基幹作目である豆
きかけ、④その他の新分野、に関して、そ
類に関して、去る9月10日に十勝管内音更
の目的、取組み内容を具体的に紹介してお
町で「第8回豆類生産流通懇談会」が全国
ります。次に()需要拡大における問題点、
豆類振興会・北海道豆類振興会の共催で開
()諸外国における取組み事例、()今後の
--
需要喚起策へのヒントの提起で締めくくっ
は全国平均を大きく下回っており、消費量
ております。(1)の①では、各種媒体によ
トップの北陸地方の0%に過ぎません。こ
る豆に関する情報提供、HP 等を用いた高
の低消費地域の解消も不可欠だとしていま
速の情報提供や豆実需団体の特性を活かし
す。なお、北海道の豆類消費拡大について
たイベントの推進。②では「豆料理100選」、
は次項で取り上げることとします。
栄養教諭向け指導教材の作成・提供や副読
今後の需要喚起方策として、ターゲット
本配布、食育フェアへの参画、地域活動支
すなわち訴求対象の重点を、①子育て世代、
援などが内容となっています。③では事業
②児童・生徒、③健康・福祉部門に絞って
者向けの啓発資料の作成、素材・製品情報
働きかけるべきだとしています。そのため
の普及を推進。④では豆の新分野開発、機
の、セールスポイントである訴求内容を、
能性解明の研究助成などが促進の柱だとし
①豆を食べて「元気」「きれい」になろう、
ています。具体的な取組みとしては、雑誌
②豆を食べて生活習慣病とオサラバしよう、
広告、TV パブリシテイの活用、消費拡大
とすることが有効だと強調しています。
のための「地域豆シンポ」、「実りのフェス
タ」、和洋菓子コンテスト、「豆!豆!コン
2.北海道における豆類の生産と消費拡大
テスト」の開催、小学校副読本、給食レシ
へのチャレンジ
ピ集、食育事例集の作成・配布を行ってい
北海道における豆類の生産は、表1に見
ます。
るように、大豆、小豆、いんげんの作付面
新分野開発のための調査研究としては、
新需要開発を目ざした「公募型研究」で異
積・生産量とも全都道府県の首位を占めて
います。
なる専門分野の機関・研究者の連携で新規
しかし、北海道民1人あたり豆類消費量
の味噌開発、豆の糖鎖解明等に取組んでい
(日量)はグラムと最下位で、その要因
ます。
解析が急務です。この現状に強い問題意識
また「健康・福祉分野」での需要把握で
を持ったのが主産地の十勝です。近代化農
は病院、介護施設、職域給食での豆料理の
業を先駆的に展開している十勝地域には帯
普及促進がポイントとなっています。
広畜産大学や道立の農業試験場や畜産試験
()の需要拡大における問題点として、
場、(独法)北海道農研センター畑作拠点
年代による消費水準の差異が顕著で、10代
が立地する研究・情報の集積拠点であり、
後半から0代までの若年層の消費が低レベ
また営農基盤強固な農協組織の活動が活発
ルでその向上が重要な課題だとしています。
で、飼料、肥料、乳製品、製糖、でん粉工
また、地域別の豆類消費水準にも大きな
場等の農業関連企業も多く、多様な分野で
偏りがあることを指摘しています。そこで
先端的な取組みが展開されているのが特徴
は、最大の生産地帯である北海道の消費量
です。農業分野だけでみても、大規模機械
--
表1 平成21年主要豆類の作付面積
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化農業の展開はもとより、グリーンツーリ
勝は豆の大産地。畑の肉と言われよく利用
ズム運動やバイオガス、バイオエタノール
されている大豆のほかに、あずき、金時
プラントの操業、チーズネットワークの活
豆、白いんげん、花豆など色々な種類があ
動などが活発です。これらの活動の主要な
りますが、そのおいしさや栄養価について
担い手として独自の役割を果たしているの
は、まだ十分にいかされてはいません。そ
が、(財)十勝圏振興機構(略称・十勝財
んな豆たちも、みなさんのフレッシュなア
団)で、帯広市に所在し、「モノをつくる
イディアで、色んな料理に大変身できそう
(研究開発・技術支援)」、「人をつくる(地
です。豆の国・とかち発の新発想レシピで、
域振興支援)」。「産業をつくる(地域産業
大豆以外の豆も食卓の主役にしてみません
支援)」、「流れをつくる(物産振興支援)」
ですか!」でした。
を目的として、産・官・学連携のプラット
応募資格は、十勝在住の1歳以上9歳以
ホームとして平成5年に設立され、現在に
下の個人またはペア。レシピは主菜、副菜、
至るまで多彩な事業を実施。研究開発部門
デザートなど、素材に大豆以外の(小豆、
では十勝圏域の農水産物を素材とした加工
金時豆、白いんげん、花豆など)を必ず使
食品開発にも取組み、豆腐ベースの新食品、
用【乾燥豆または水煮缶詰】という条件で
いんげん素材のペーストの開発などに成果
した。審査は応募時のレシピ段階と最終段
を挙げています。
階の調理実演の2段階で行われ、地元十勝
この十勝財団が、平成1年10月に『十勝
の食育コーディネーター、ホテル総料理長、
発=新・発・想フレッシュレシピ=豆料理
フードソムリエなどが審査員を務めました。
コンテスト』を大々的に開催しましたが、
入賞したのは最優秀賞1点「ヘルシーお
その公募テーマは「大豆以外の豆も、もっ
豆よ!チーズグラタン」、優秀賞1点「こ
と食卓に」で、そのキャッチコピーは「十
れでアンチエイジング!お豆と雑穀米の中
--
華風リゾット」でした。
用されています。参考までに、そのうちの
奨励賞5点は、「スーツ豆アラカルトデ
代表的なものを紹介しましょう。まず白花
ザート」、「まめ・まめヘルシーピザ」、「三
豆、とら豆を使った「白い豆カレー」、ス
色ソース DE 豆チジミ」、「豆入り春巻」、
ウィーツの代表選手としては大豆、小豆、
「ガッツリ丼」で、それぞれ見た目にも美
金時豆、黒大豆を使った「十勝のお豆ムー
しく、味も豆の魅力を満度に引き出してお
ス」、栗と小豆を組み合わせた「アンブラ
り、素晴らしいと高い評価を得ていました。
ン十勝」、豆腐素材では「豆腐のミンチカ
レシピのネーミングを見ても判る通り、
ツレツ」などが注目を集めました。いずれ
ヘルシー、アンチエイジングを前面に押
も馬鈴薯やコーン、チーズや牛乳など十勝
し出して、思わず若い消費者、生活者が
の産物とのコンビネーションが活かされた
「作ってみようかな」という気持ちを起こ
ものでした。
させるものでした。プロのシェフでなけれ
また、帯広市の女性グループがレシピの
ば作れないというものではなく、主婦が日
発掘・普及に努めている「おびひろ味銀
常の食卓に出せるという普遍性も重視さ
行」でも「豆料理レシピ集」を刊行してい
れたようです。なお、十勝では平成18年
ます。まさに官民をあげた消費・需要拡大
に、厚生労働省の「地域提案型雇用創造促
へのチャレンジだと言えましょう。
進事業」の一環として『地場食材創作料理
ここで、付図に現代人に不足がちな食物
セミナー』が開催され、その成果が、「地
繊維の含量、表2にはミネラルやビタミン
場食材創作料理レシピブック 」 として刊行
の成分で豆類がいかに優れた食品・素材で
されていますが、その中で0種のアイテム
あるかを示してみました。
が掲載されていますが、そのうち7点に大
高たんぱくや低脂肪の特性と豊富なミネ
豆、黒大豆、小豆、金時類が素材として活
ラルやビタミンはメタボ解消のダイエット
表2 豆類の栄養成分
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に好適で老化を防ぐアンチエイジング作用、
きかけを強化するつもりです。これからの
またポリフェノール成分も生活習慣病や抗
北海道では生産の安定・拡大対策とともに
アレルギー、免疫強化の機能が注目されて
農業関係者一人ひとりが豆の産地・十勝に
いますので、あらゆる機会に、この素晴ら
続いて、豆の持つ魅力を積極的に発信し消
しい特性をアピールしていくことが必要な
費拡大に自ら主体的に参画することが必要
ことを痛感しております。
だと強調してこの小稿を終えたいと思いま
これからは筆者も、食卓に頻繁に豆料理
す。
が登場するように、我が家のシェフ?に働
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図 食物繊維100グラム中含量(g)
資料:「5訂食品成分表」
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行政情報
食品業界の信頼性向上に向けた農林水産省、
食品事業者等の取組
~食品業界を巡る情勢と信頼性向上に向けた取組の促進~
農林水産省総合食料局食品産業振興課
課長補佐 吉 沢 正 純
1.食品業界を巡る情勢
合があるほど、現代の消費者の食品事業者
食品業界では、一昨年来、産地や賞味・
に対する姿勢は厳しくなっています。
消費期限の偽装表示、食品による薬物中毒
まさに、食品事業者には、消費者重視・
など、消費者の信頼を揺るがす不祥事や事
基点の姿勢、食品の安全や品質の管理に対
故が相次いで発生し、大きな社会問題に発
する適切な取組、食品事故発生時における
展しました。これらは、消費者の生命・健
適切な対応、積極的な情報開示など、企業
康に直接関わる食品を取り扱う事業者とし
行動全体のあり方が問われています。
て許されるものではなく、食品業界に対し
てコンプライアンス(法令遵守及び社会倫
2.農林水産省のこれまでの取組
理に適合した行動)を徹底し、消費者の信
消費者の信頼を確保し、向上させていく
頼を回復し、向上させていく取組が強く求
取組は、基本的には個々の食品事業者が行
められています。
うべきものですが、食品に係わる不祥事な
これらの不祥事などは、消費者の健康に
どが続いたことから、これらについて、食
被害が生じた事案と、健康被害が生じな
品業界全体が一丸となって取り組んでいく
かった事案とに大きく分類できます。また、
ことが重要です。 健康被害が生じなかった事案については、
農林水産省では、これまでも、
食品衛生法、JAS 法等関係法令に違反し
① 関係の食品事業者団体に対して、関係
たものと、関係法令違反ではないものの社
法令の遵守を度々指導し、コンプライア
会倫理上不適切な対応だったものとに細分
ンス体制の点検・検証等を要請してきま
できます。しかしながら、たとえ健康被害
した。
が生じず、関係法令違反がなかった場合に
② 平成1年度には、全国の1会場で食品
おいても、不十分な情報開示など、食品事
産業トップセミナーを開催し、企業トッ
業者が消費者の信頼を裏切るような行為を
プの意識啓発に努めてきました。更に、
した場合には、事業が存亡の危機に陥る場
関係事業者団体主催のセミナーへの参加
--
者も合わせると、これまでに約1,000名
範」の策定や「事故対応マニュアル」の
が参加しています。
策定といった、より実践的な内容とした
③ 同年10月には、農林水産省内に、「食
セミナーを、全国の16会場で開催しまし
品の信頼確保・向上対策推進本部」(本
た。更に、要請があった場合には、食品
部長:農林水産副大臣)を設置し、食品
事業者団体が主催するセミナーに講師の
の信頼確保・向上に向けた総合的な対策
派遣も行いました。
の検討を進めてきました。
この検討の中では、食品業界のほとん
3.
「『食品業界の信頼性向上自主行動計画』
どを占める中小の食品事業者から、「信
策定の手引き~5つの基本原則~」の具
頼性向上のためのノウハウや人材の面で
体的な内容
実際にどのような対応を行ったらよいの
本手引きは、食品事業者団体向けと食品
か良く分からない」との声が多くあった
事業者向けの2部構成となっており、食
ことなどを踏まえて、食品業界の自主的
料・農業・農村政策審議会食品産業部会の
な取組を一層促すための「道しるべ」と
議論を踏まえつつ、現場に精通した有識者
して、「『食品業界の信頼性向上自主行動
の御協力により、実際に使用する方の目線
計画』策定の手引き~5つの基本原則
で策定されています。
~」を取りまとめ、平成20年3月25日に
(1)食品事業者団体向け「信頼性向上自
公表し、同日付けで、約10の食品事業
主行動計画」
者団体に、本手引きに即した対応を要請
各食品事業者団体には、業界全体として、
しました。
食品の安全や品質を確保し、消費者から信
④ 平成20年度には、食品業界の信頼性向
頼され続けるよう、必要な情報の提供・発
上に向けたセミナーを「基礎編」と「実
信、相談対応、行政機関との連携等を行う
践編」に分けて開催しました。6月から
役割を果たすことなどを盛り込んだ「信頼
11月までの間は、「基礎編」として、食
性向上自主行動計画」のモデルを示し、各
品業界に求められる取組、食品企業にお
業界の実態に応じて内容を適宜見直した上
ける実際の取組状況、「『食品業界の信頼
で、本計画を総会や理事会で決定すること
性向上自主行動計画』策定の手引き~5
を求めています。
つの基本原則~」等について、弁護士の
更に、決定後には、外部に発信するとと
方や食品企業のリスクマネージメント部
もに、会員や組合員の事業者に対し、その
門で活躍されている方を講師としてお
内容を周知して、各事業者の取組を促進す
招きして、全国の26会場で開催しまし
るよう求めています。
た。また、11月からは、「実践編」とし
て、食品事業者における「企業行動規
--
各食品事業者には、
これらを参考にしなが
٤٤࿅૕ା㗬ᕈะ਄⥄ਥⴕേ⸘↹
ら、本手引きをチェッ
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ころから実行するとと
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もに、その取組を必要
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に応じて外部に発信す
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ることを促しています。
ߦߟ޿ߡ⛮⛯ߒߡ๟⍮ᔀᐩࠍ࿑ࠅ߹ߔ‫ޕ‬㩷
なお、食品事業者に
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は、様々な業種がある
ࡎ࡯ࡓࡍ࡯ࠫߥߤߦࠃࠅឭଏߒ߹ߔ‫ޕ‬㩷
ことから、本手引きを
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少しでも活用しやすい
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ように、①食品製造事
(2)食品事業者向け「5つの基本原則」
業 者・ 食 品 輸 入 事 業
者、②食品製造小売事業者、③外食事業者、
各食品事業者には、消費者の信頼を確保
④中食事業者、⑤生鮮食品卸売事業者、⑥
し、そして向上していくために、消費者基
食品小売事業者の6つの主な業種に分けて、
点を根本に位置付けるとともに、経営者か
それぞれの特性に応じた、5つの基本原則
ら全従業員に至るまでコンプライアンスの
等を提示しています。
意識を強く持つこと、また、食品を取り扱
うという特徴から特に衛生管理・品質管理
4.今後の取組
に万全の注意を払うこと、さらに常日頃か
平成20年5月7日に開催された「食料・
ら消費者とのコミュニケーションを持つこ
農業・農村政策推進本部」(本部長:福田
とが大切であり、加えて食に携わる企業と
康夫内閣総理大臣)において、関係府省
しての責任を認識し、規模の大小に関わら
が一体となって推進する「21世紀新農政
ず一人一人の責任として消費者の信頼を確
200」が決定されました。この中で、消費
保するために行動することが求められます。
者の食への信頼確保を図る施策の一つとし
このため、基本原則の趣旨、内外に示す取
て、食品業界に対する本手引きに即した取
組方針と、実施すべき具体的な行動を、次
組の促進が盛り込まれ、「平成20年度中に、
の「5つの基本原則」に示しています。
自主行動計画を10団体以上で策定すると
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- 10 -
ともに、平成22年度までに、7割以上の中
内容とするテキストにより、セミナーを開
小食品事業者において企業行動規範の策定
催しています。
を目指す」とされたところです。
また、引き続き、食品事業者団体主催の
各食品事業者団体が積極的に取り組んで
いただいたことから、平成20年度末には、
セミナーについても講師の派遣を行ってい
ます。
約10の団体で「自主行動計画」の策定が
さらに、今後、必要に応じて、食品事業
行われたところです。これからは、これに
者団体や会員・組合員の事業者の取組状況
即して取り組まれ、業界として消費者の信
について調査し、取組が遅れている食品事
頼を確保していくことが期待されるところ
業者団体については、強力に取組要請を
です。
行っていく予定です。
農林水産省としては、本手引きに即した
これらの取組を通じて、消費者からの信
食品業界の取組を促進し、食品業界のコン
頼を確実にするための食品業界の自律的な
プライアンスの徹底を図っていくため、本
取組を加速させていきたいと考えています。
年度も、食品業界の信頼性向上に向けたセ
ミナーを「基礎編」と「実践編」で開催し
5.事業者の皆様に
ています。「基礎編」は、本年6月から12
豆類は、菓子や惣菜など様々な加工食品
月までの間、食品業界に求められる取組、
の原材料として利用されています。原材料
食品企業における実際の対応状況、コンプ
の豆類を取り扱う事業者段階での不祥事や
ライアンスに向けた取組等について、弁護
事故の発生は、加工・製造する他社に二
士の方や食品企業のリスクマネージメント
次・三次と被害が拡大していきます。
部門で活躍されている方を講師としてお招
このため、原材料を取り扱う事業者は自
きするとともに、コンプラインスに関する
社からの不祥事や事故の発生を未然に防ぐ
ドラマの上映を通じて、より分かりやす
ためにも、早急にコンプライアンスを徹底
く、全国の10会場で順次、開催しています。
していただくとともに、万が一事故が起
「実践編」は、「企業行動規範」の策定方法
や各種マニュアルをより具体的に紹介した
こった場合に対応したマニュアル等の整備
に取り組んでいただきたいと思います。
- 11 -
調査・研究
雑豆発酵ペーストを活用した新規食品の開発
(財)十勝圏振興機構 北海道立十勝圏地域食品加工技術センター
研究開発課 研究員 佐々木 香 子
1.目的と概要
は雑豆を原料とした醸造酢を北海道立食品
北海道十勝は国内でも有数の豆類生産地
加工研究センターと共同開発し、平成18年
であり、特に小豆やいんげん豆などの雑豆
度から製造・販売している(図1)。雑豆
の栽培は十勝が最も盛んである。これま
醸造酢の製造では、原料を酵素分解及びア
で、(財)十勝圏振興機構では地場産雑豆の
ルコール発酵後に固液分離を行うことから、
消費拡大を目的に、流通・消費動向におけ
多量の発酵副産物が発生する。本研究開発
る実態調査を行っており、それらを反映さ
では、この発酵副産物について発酵ペース
せた雑豆の新規用途開発に取り組んでい
トとしての素材化を検討し、高付加価値化
る((社)北海道豆類価格安定基金協会委託
を目的に機能性について評価を加えるとと
事業)。また、平成15~17年度には、豆類
もに、具体的な加工品の開発を提案した。
食材開発利用推進に関する研究事業におい
なお、本研究は経済産業省の平成19~20
て、豆の酵素処理により豆粉(ペースト)
年度地域資源活用型研究開発事業において、
を作成し、新たな食材としての評価と食品
株式会社丸勝、ベル食品株式会社、国立大
化の提案を行った((財)日本豆類基金協会
学法人帯広畜産大学、北海道立食品加工研
委託事業)。この豆の酵素処理技術をさら
究センターと共同で行ったものである。
に発展させ、十勝管内企業の株式会社丸勝
図1 雑豆醸造酢の製造工程と製品
- 12 -
2.発酵ペーストの品質・物性・成分評価
(1)物性等品質評価
ペースト中にはタンパク質が多く含まれて
おり、小豆で49.6%、金時で48.5%、手亡で
雑豆醸造酢の製造では、原料雑豆を煮熟
46.0%と、成分中のほぼ半分近くがタンパ
した後マスコロイダーで摩砕し、さらに酵
ク質であることが判った。これは、雑豆成
素分解を行った後、酵母を添加して発酵さ
分中の炭水化物が発酵によってアルコール
せ、上清分離後に発酵ペーストが得られ
へと変換され、消費されていることから、
る(上清は醸造酢製造に用いられる)。こ
相対的に含量が多くなったためと考えられ
の発酵ペーストの平均粒子径を粒度分布
る。また、各ペースト中のミネラル成分を
計で測定したところ、発酵ペーストは小
分析した結果、小麦粉や米と比較すると、
豆で60.0μm、金時で45.2μm、手亡では
ほとんどのミネラルについて多く含まれて
69.5μm であった。通常、餡粒子は約80~
いることが判った(データ省略)。これら
130μm で、約80μm の粒子群においては
の結果から、発酵ペーストは植物性タンパ
舌触りが滑らかとされていることから、発
ク質やミネラルを豊富に含んでいる食品素
酵ペーストの粒子は非常に小さい粒子であ
材であることが伺える。
り、通常の餡よりも滑らかであることが
判った。また、加熱時の粘性については糊
化する傾向は全く見られず、酵素処理と発
3.発酵ペーストの機能性とペプチド分析
(1)発酵ペーストの健康機能性
酵により、ほとんどの澱粉が消費されてい
小豆や金時、手亡などの雑豆は、一般成
ると考えられた。
分のうちタンパク質や食物繊維が多いこと
が知られており、それらの食物繊維やタン
(2)成分分析
パク質の一部が相互に作用し、脂質代謝改
小豆、金時、手亡の発酵ペーストについ
善効果などを示すこと等が報告されている。
て一般成分を測定し、乾燥豆および煮豆、
そこで発酵ペーストの機能性について、帯
大豆と比較した(表1)。その結果、発酵
広畜産大学でラットへの経口投与による脂
表1 発酵ペースト成分分析値
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- 13 -
やかに腸管吸収される性質があり、脂肪と
の吸着力が高いことから脂質の代謝が促進
され、血中中性脂肪を低下させるといった
健康機能性が注目されている。本報告での
発酵ペーストは酵素分解および発酵工程を
経ているため、タンパク質が分解され、ペ
プチドが生成されている可能性がある。そ
図2 発酵ペースト投与による代謝の改善
(イメージ図)
こで、煮豆・発酵ペーストについて低分子
質代謝改善効果を試験した(図2)。その
タンパク質を測定した結果、乾豆では1.3
結果、発酵ペースト投与群は基準食投与群
~2.4%、煮豆では0.1~1.2% であったのに
に比べ、血中の総コレステロールが低下し
対し、発酵ペースト中には小豆で7.4%、金
ており、特に HDL コレステロール濃度を
時で10.1%、手亡で9.8% の低分子タンパク
変えることなく VLDL+IDL+LDL コレス
質が存在することが判った(図3)。また、
テロールを低下させていた。さらに血中中
それらの分子量を測定したところ、煮豆の
性脂質については、発酵ペースト投与群で
主な分子量が小豆で5,500~8,000、金時で
は煮豆投与群よりも顕著に低下が認められ
5,500~8,500、手亡で5,500~9,500であった
た。これは、発酵ペーストの投与によって
のに比べ、発酵ペースト中における主な分
腸内環境が改善されるのに伴い、糞便中へ
子量は小豆で2,000~3,000、金時で1,900~
の油脂成分の排出が促進され、その結果、
3,500、手亡で1,900~3,400であった(図4)。
肝臓における脂質代謝が活性化し、血液中
この結果から、酵素処理および発酵により
のコレステロールが減少したと考えられる。
煮熟豆中のタンパク質が分解され、アミノ
このことからも、発酵ペーストの食物繊維
酸およびアミノ酸がいくつか繋がったペプ
やタンパク質が原料雑豆と同様の効果を示
チドが生成していると考えられた。前記動
すことが示唆された。
物試験の結果からも、発酵ペースト由来の
雑豆ペプチドが脂質代謝促進効果に関与し
(2)発酵ペースト低分子タンパクの分析
ている可能性が示唆された。
食品中のペプチドは低分子化するほど速
2%
3%
図3 低分子タンパク質分析
- 14 -
3%
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図4 発酵ペースト分子量分布
(3)ペプチド素材としての可能性検討
時14.4%、手亡18.8% のペプチドが含まれ
前記試験により、発酵ペースト中には低
ており、未処理の発酵ペーストよりも1.5
分子化されたペプチドが存在していること
~2.0倍のペプチド含量であった(表2)。
が判った。現在、大豆や海藻、魚から抽出
また、このペプチドについて分子量分析を
されたペプチドなど、様々な食品由来のペ
行ったところ、小豆発酵ペーストの酵素処
プチドが利用されていることから、雑豆ペ
理前のピークは MW2000~3000領域に見
プチドについても健康機能性素材としての
られたのに対し、酵素処理後では MW500
可能性が高いと考えられる。そこで発酵
~2000にピークが移行していた。また、金
ペーストをタンパク質素材と考え、さらに
時及び手亡発酵ペーストの酵素処理前の
低分子化されたペプチドの生成が可能であ
ピ ー ク は MW1900~3500で あ っ た が、 酵
るかを検討した。各発酵ペーストをプロテ
素処理後は金時で MW600~2300、手亡で
アーゼで処理し、ゲル濾過によって分子
は MW500~1800であり、発酵ペーストの
量(Molecular Weight:MW)10,000以下に
ペプチドが酵素処理によりさらに低分子化
分画し、ペプチド含量を測定した(図5)。
していることが判った(図6)。この結果
その結果、酵素処理後では小豆16.6%、金
から、発酵ペーストには低分子ペプチドを
図5 発酵ペースト酵素処理フロー図
- 15 -
表2 発酵ペースト酵素処理後のペプチド含量分析
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図6 酵素処理前後の発酵ペースト分子量分布
生成できるタンパク質が含まれており、ペ
具体的な商品開発を検討した。まず、ベル
プチドの原料として有効利用できる可能性
食品株式会社では、発酵ペースト入りド
が考えられた。
レッシング風調味料を試作した。ドレッシ
ング風調味料はごまタイプと味噌タイプの
4.発酵ペーストを用いた商品の開発
2種類で、両者ともペーストの色が生かさ
発酵ペーストを食品素材として見立て、
れ、かつ「荒濾し感」により豆が連想でき
ごまタイプ
味噌タイプ
図7 発酵ペースト入りドレッシング試作品(提供:ベル食品株式会社)
- 16 -
シフォンケーキ
シュークリーム
図8 発酵ペースト入り洋菓子試作品(提供:株式会社丸勝)
る物であった。また、株式会社丸勝では発
が認められた。発酵ペーストには豊富な食
酵ペーストを配合した洋菓子類を開発し、
物繊維及びタンパク質やペプチドが含まれ
自社経営の観光型施設「十勝ヒルズ」内の
ていたことから、脂質代謝改善効果はこれ
レストランでデザートメニューとして提供
らの成分が関与している可能性が考えられ
した。図7および図8に試作品の写真を示
た。さらに発酵ペーストを酵素分解するこ
す。
とで、より低分子化されたペプチドが生成
されたことから、発酵ペーストを機能性素
5.まとめ
材として商品化できる可能性が示唆された。
雑豆醸造酢の製造で発生する発酵副産物
また、商品開発においては、ベル食品株式
を有効利用するため、発酵ペーストの高付
会社で発酵ペーストを配合したドレッシン
加価値素材としての可能性について検討す
グ、株式会社丸勝で発酵ペースト入り洋菓
るとともに、発酵ペーストを配合した加工
子の開発を検討し、これらの開発品につい
品の提案を行った。機能性については、帯
ては今後も事業化に向けて商品化を進める
広畜産大学の動物試験結果から、発酵ペー
こととしている。
スト投与によるラットの脂質代謝改善効果
- 17 -
調査・研究
虎豆の窒素追肥と早期収穫体系による安定生産技術
北海道立北見農業試験場生産研究部栽培環境科
研究職員 唐 星 児
はじめに
興対策事業の試験研究において、虎豆の増
虎豆はいわゆる「高級菜豆」のひとつで、
収に有効な窒素施肥法と、より早期に収穫
花豆類と同様、つるを持ち、草丈は2m
可能な栽培体系を開発しましたのでご紹介
以上になります。北海道における虎豆の作
します。
付面積は149ha(平成20年、北海道農産振
興課調べ)で、主に北見、胆振地方で栽培
1.虎豆の生育と土壌条件
されていますが、近年の作付面積は減少傾
虎豆の生育に影響を及ぼす土壌の要因と
向にあります。その要因として、手竹と呼
して、土壌診断の際に窒素肥沃度の指標と
ばれる支柱を立てて栽培し、収穫を含め手
して用いられている作土の熱水抽出性窒素
作業が多く労力を要すること、傾斜のある
含量が高いと、収量も多くなる傾向にあり
丘陵地での栽培も多く生産者間の収量差が
ました(図1)。虎豆の根は深さ40cm 以
大きいことなどが挙げられます。それでも、
内に多く、また根粒の着生がほとんどない
高い価格で取り引きされるため生産者の意
ことからも、作土で窒素を多く供給できる
欲は高く、産地の安定生産・供給において
ことが虎豆の生育に有利であるといえます。
は特に収量水準の底上げが重要とされてい
同様に、正常な根張りが可能な深さの目安
ます。
となる、土壌硬度1.5MPa の出現位置が深
虎豆の用途は主に煮豆や和菓子です。し
かし、その消費量も近年減少しています。
産展では人気があり、特に10月上~中旬頃
は需要に対する供給が非常に少ないことか
ら、現在10月下旬以降の出荷の一部を早期
化することで収益の増加が期待されていま
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一方で、秋季を中心に催される北海道の物
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図1 作土の熱水抽出性窒素含量と虎豆収量の関係
- 18 -
い場合も多収になる傾向がありました。こ
を基肥に全量施用しており、この施肥体系
のように、虎豆の収量性を高めるには、土
は、必ずしも生育特性に合致していないと
づくりの基本である土壌の窒素肥沃度や物
考えられます。実際、基肥と追肥を組み合
理性の向上が重要といえます。
わせた施肥試験の結果、総窒素施肥量(基
肥と追肥の合計)が多くなると増収する傾
向にありますが、総量が同じ場合は、乾物
2.虎豆の生育特性と窒素施肥
虎豆は、開花期以降、光合成と養分吸収
生産量が急増する開花盛期の分施で最も多
による栄養生長と子実生産である生殖生長
収となりました(表1)。これは開花盛期
が同時進行する特徴があり、収穫前には地
の追肥窒素が比較的速やかな吸収に有効な
際近くの成熟した莢が裂けるのを防ぐため、
ことを示唆しています。なお、基肥は作条
根切りを行い生育を止めます。そこで、ま
施用であり、基肥量が多くなると塩類障害
ず生育期間における乾物生産量と窒素吸収
を受けやすく、出芽率が低下する可能性が
量の推移をみると、ともに7月の開花期以
あることから、窒素施肥は基肥を開花盛期
降に急激に増加し、その後も葉の減少を伴
前の吸収量に近い4kg/10a 程度とし、開
わず根切りまで増加し続けることがわかり
花盛期に追肥を行うのが最適な方法と考え
ました。このことから、虎豆の収量を高め
られます。
るには、開花期以降の速やかな窒素吸収に
開花盛期追肥による増収効果について
対応した土壌由来および施肥による窒素の
は、土壌の窒素肥沃度が低いなどにより収
供給が重要なカギといえます。
量水準が相対的に低い圃場ほど増収率・増
一方で、虎豆のある産地では、現在多
収量とも多くなる傾向にあり、追肥量を4
く の 生 産 者 は 窒 素 を 施 肥 標 準 量( 8 ~
kg/10a から8kg/10a に増やすと、さらに
10kg/10a)より少ない平均6kg/10a 程度
1割程度増収する例もありました。このよ
表1 虎豆の窒素施肥処理と収量
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- 19 -
うに、追肥を行わない慣行の施肥体系にお
た。しかし、早期播種に初期生育促進のた
いて特に低収の圃場で収量の底上げに効果
めのべたがけ被覆を組み合わせると、黄化
が大きいといえます。しかし、反対に収
病の発生は抑えられるとともに、出芽期や
量水準が高い肥沃な土壌では効果が小さ
成熟期が約4日早く、収量も多くなりま
く、根切り頃までの窒素吸収量も概ね施肥
した(表2)。このように、べたがけ被覆
量を上回るので、過剰な施肥を行わないよ
は早期収穫栽培に有効といえます。ただ
う、開花盛期の追肥量は土壌条件を考慮し
し、べたがけ被覆を播種から第3本葉展開
調節することが望まれます。そこで、窒素
時以降まで伸ばすと、主茎が根元から折れ
吸収量、作土の熱水抽出性窒素含量はとも
る「茎折れ」の発生が見られ、被覆期間が
に収量と正の相関関係があることから、こ
長いほど発生率が高まりました。したがっ
れらを基に、土壌の窒素肥沃度に対応した
て、べたがけ被覆は播種から第1~2本葉
開花盛期の追肥量の設定を試みました。窒
展開時にとどめます。
素施肥量を基肥4kg/10a と開花盛期追肥
虎豆の根切りは、通常、熟莢率が50~
8kg/10a の合計と同じ12kg/10a で収量約
80%のときに行います。熟莢率が低いとき
360kg/10a を目標とした場合、その追肥
に根切りすると、特に着莢が遅い上位節で
体系で目標収量が得られるのは現在の追
充実した子実が得られないという懸念もあ
肥を行わない慣行の施肥体系で収量310~
りますが、調査では、50%の時期より5日
320kg/10a の圃場に該当し、作土の熱水抽
前後早い30%のときに根切りを行っても、
出性窒素含量は概ね5mg/100g 程度と見
収量や品質への影響は認められませんでし
込まれます。したがって、作土の熱水抽出
た。
性窒素含量が5mg/100g 未満の圃場では、
これら、早期播種にべたがけ被覆と熟莢
開花盛期の追肥量を8kg/10a、それ以上
率30%の根切りを組み合わせると、慣行栽
の圃場では、土壌からの窒素供給量を考慮
培(標準播種で熟莢率50%の根切り)に比
し、追肥量を4kg/10a とします。
べて、播種が10日早ければ根切りも同じく
10日程度早まると見込まれることから、収
3.虎豆の早期収穫体系
穫も同様に早めることが可能です。しかし、
虎豆の収穫を早める栽培法については、
実際に播種時期をいつにするかは大きな問
これまで産地で取り組まれた例がほとんど
題です。播種が早すぎると、遅霜の被害を
ありません。播種の早期化、初期生育促進、
受ける可能性があるからです。そこで、そ
根切りの早期化がカギとなります。
の危険性が極めて小さく、べたがけ被覆を
播種時期を標準(慣行)より早めた場合、
した場合に最も早い出芽期を迎える播種日
収穫期は早まるものの、同時に株全体の葉
(播種可能最早日)を発芽試験の結果とア
が黄色くなる黄化病の発生率も高まりまし
メダス平年値をもとに推定する方法を検討
- 20 -
表2 虎豆の播種期・べたがけ被覆と生育期・収量
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しました。北見農試のある訓子府町の場合
性窒素含量が5mg /100g 未満の圃場で
では、出芽させてもよい最も早い日は、こ
は、開花盛期の追肥量の目安は8kg /10a
れまでで最も遅い晩霜日(最低気温1.3℃
ですが、堆肥や茎葉のすき込みがある場合
以下)の翌日で、1990年以降でみると6月
は、可能な限りその種類や量により減肥す
4日になりますが、もしべたがけ被覆をし
るようにします。また、早期収穫体系は5
てその日に出芽するよう播種した場合、被
月の気温が低い北見地方を対象とし、窒素
覆を行わなかったときの出芽日は4日遅れ
施肥は標準播種の場合と同じになります。
の6月8日と予想されます。その6月8日
虎豆の栽培についてはこれまで試験例が
からさかのぼり、日平均気温から7.1℃(発
少なく、技術面では他作物に比べ改善すべ
芽の有効下限温度)を差し引いた温度(発
き点は多々ありました。今回ご紹介した、
芽の有効気温)を積算して107.3℃を上回
生育特性に合致した効率的な窒素施肥法と、
る最初の日が播種可能最早日で、5月18日
需要の多い時期の出荷を可能とする早期収
と見込まれました。なお同町の慣行栽培に
穫体系は、いずれも虎豆の安定生産・供給
おける平均播種日(5月31日)に比べて約
を可能にする技術であると考えています。
2週間早くなります。
北海道は虎豆を含む高級菜豆の一大産地で
あり、これらの維持と発展のため、引き続
き技術開発に取り組んで参りたいと存じま
おわりに
虎豆の窒素施肥および早期収穫体系のま
す。
とめを表3に示しました。作土の熱水抽出
- 21 -
表3 虎豆の窒素施肥と早期収穫体系(まとめ)
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- 22 -
生 産 ・
流通情報
京都府中丹地域における土地利用型作物の産地づくり
~丹波大納言小豆の機械化と売れる米づくりの支援~
京都府中丹東農業改良普及センター
土地利用型作物担当 河 合 哉
1.中丹地域(舞鶴市、綾部市、福知山市)
舞鶴市
の紹介
中丹地域は、南北に長い京都府のやや北
福知山市
寄りに位置し、丹後地域、南丹地域、福井
県の嶺南地域と兵庫県の但馬・丹波地域に
綾部市
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京都府
京都府中丹地域
隣接しています。地域を貫流する一級河川
の由良川と土師川・牧川・宮川(福知山
市)、上林川・八田川(綾部市)等の多数
の支流、穏やかな丹波山地と近畿百景の第
一位に選ばれた舞鶴湾や環境省が行う星空
継続観測でも証明された綾部市の美しい星
空など、「川」「山」「海」「空」とすべての
2.京都産の「小豆」及び「お米」
自然に恵まれています。
国内における小豆の主産地は北海道で、
また、晩秋から冬期にかけては、曇雨天
生産量の大部分を占めています。一方で、
や降雪の日が多い 「 うらにし 」 と呼ばれる
「丹波大納言」と称される京都産の小豆は、
天候が続きます。由良川流域では、気温変
大粒で風味が極めて良いことから、京菓子
化の激しい季節の変わり目などに霧が発生
の材料として重用されてきました。産地と
し、その冷却効果や保温効果などが、古く
京菓子屋との関係も長く、のれんを守り続
は養蚕業、現在では、高品質な両丹茶や丹
ける匠の技で最高級の和菓子を作り上げる
波黒大豆、丹波大納言小豆(以下、「丹波
ため、産地指定される京菓子の老舗もある
大納言」という。)等の特産物を育んでき
ほどです。
ました。
輸入食品の度重なる不祥事に端を発した
国産品を求める消費者ニーズの高まりを受
- 23 -
け、卸売業者からは安定出荷と増産を熱望
上の就業者は約7割を占め、高齢化が進ん
されていますが、高齢化の進展で栽培面積
でいます(府全体では6割弱)。平均耕地
の減少傾向が続き、「丹波大納言」を原料
面積は71a で、1集落あたりの認定農業者
としている京菓子業界への供給量は落ち込
数は0.2人、平均耕地面積は8.9ha です。中
んできています。
山間地が70%を占め傾斜地が多く、小区画
これに対応するため、京都府では、府
のほ場が多いことから、担い手である集落
の試験研究機関において実用性を確認し
営農組織の規模拡大にも限界がありました。
た「ビーンハーベスタ収穫-ビーンスレッ
そこで、地域の生産力の維持・向上を図
シャ脱粒」及び「コンバイン収穫」の二つ
るため、普及センターでは、関係機関と連
の一斉収穫技術を積極的に導入することに
携して、集落営農組織に対して組織的な農
より、平成22年に700トンの生産量確保を
地管理ができるよう、水稲の省力低コスト
目指しています。
化技術(打ち込み式湛水直播技術)と小豆
一方、京都産のお米は、消費地である京
の省力生産技術(コンバインを用いた収穫
都市が近く、販売に有利な条件であったこ
技術)を提案し、導入、定着に向け支援し
とから特にブランド化を図ることなく、消
ました。
費者には京都産が意識されないまま府内で
さらに、米価が下がる中、有利販売につ
消費されてきました。しかし、平成13年の
ながるよう、新たに「特別栽培米」生産体
JAS 法改正によって精米の産地表示基準
制整備を JA に働きかけるとともに、集落
がより厳格になり、米の産地としての知名
営農組織に対して特別栽培米栽培への誘導
度が低い「京都米」の販売環境は厳しさを
を行っています。
増し、ブランド化による売れる米づくりの
推進が急務となっています。
(1)コンバイン収穫の栽培体系づくり
当地域で栽培されている 「 丹波大納言 」
3.中丹地域における水田農業の現況と取組
は、無限伸育性で莢の熟期が斉一に揃わな
中丹地域では、販売農家における65歳以
い特性から、機械化が難しいとされ、高齢
小豆の作付面積と収穫量の年次別推移
11年度
15年度
16年度
17年度
18年度
19年度
20年度
作付面積
(ha)
京都府全体
837
666
616
608
666
641
651
中丹地域
336
286
295
287
331
318
327
収穫量
(t)
京都府全体
419
333
197
438
361
385
481
中丹地域
105
123
71
209
152
※196
-
農林水産統計数値を基にした推計値
- 24 -
者等が熟莢を順に収穫する手収穫の莢どり
の生産手段への助成と合わせて新たな技術
作業によって、小規模で生産、出荷してい
として 「 コンバイン収穫体系 」 への誘導を
るのが実態でした。
図りました。技術確立に向けた取組につい
集落営農組織による栽培は始まっていま
ては、後ほど紹介します。
したが、収穫、乾燥作業までの機械作業体
系が確立しておらず、積極的な規模拡大は
(2)特別栽培米の生産体制づくり
進まない状況であり、近い将来において、
米の有利販売のため、綾部市内の一部の
急激に生産量が減少することが懸念されま
農家では、10年以上前から堆肥施用や本田
した。そこで、府の研究機関において省力
での農薬使用回数を制限したコシヒカリが
化が期待できる「コンバイン収穫」の実用
栽培されていました。
性が確認されたことを契機に本技術に注目
しかし、自主的な基準に基づく栽培であ
しました。
るため、販売メリットの表示も出来ず、有
集落組織で 「 丹波大納言 」 を栽培する営
利販売の機会を逸していました。
農集団をリストアップし、この中で機械化
普及センターでは、綾部市、福知山市、
に取り組む意向のある対象に、農業機械等
舞鶴市を拠点とする JA 京都にのくにへ働
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きかけ、平成16年に暫定栽培こよみを作成
手がかかることから、ダイレクトに収穫で
し、やる気になれば、綾部市の全農家が取
きるコンバイン収穫技術の関心への非常に
り組める特栽米の生産(JA が確認責任者)
高いものでした。北海道では、ロークロッ
を提案、誘導しました。
プ型コンバインもしくはピックアップコン
JA の販売努力のかいあって、契約栽培
バイン(又はピックアップスレッシャ)で
が広がるなど有利販売の目途もついたこと
収穫されていましたが、中丹地域では機械
から、当初は綾部市限定の取組でしたが、
が大型すぎてなじまないため、コンパクト
平成18年からは、他の2市の農家も取り組
なリール型コンバインを用いることになり
めるよう、生産部会の立ち上げを支援しま
ました。初めて実施したコンバインの収穫
した。有機質肥料100%を使用するハード
作業では、大きな問題が浮き彫りになりま
ルの高い栽培基準を設定したことから、収
した。特に問題となったのが、収穫時に起
量性や食味、除草剤等などの実証試験を積
きる土のすくい込み(かき込み)による子
み重ね、栽培こよみを改定するなどステッ
実の汚れでした。
プアップする取組は続いています。
平成19年には、福知山市を拠点とする
JA 京都福知山支店にも働きかけ、特別栽
培米生産部会を立ち上げました。
これによって中丹地域では、誰もが特別
栽培米栽培に取り組める環境が整いました。
4.丹波大納言の 「 コンバイン収穫体系 」
への誘導と波及への歩み
平高畦(無中耕培土栽培)での収穫作業
「丹波大納言」は、高級和菓子の材料と
して用いられることが多いことから、大粒
原因は、ほ場の凹凸やコンバインの沈込
性が重んじられてきました。大きな粒は、
等により、収穫時の姿勢が不安定であった
大きく育てた株から生産できることから、
ことでした。重粘土質と高い茎水分も汚れ
7月中旬までには種し、除草作業や手収穫
を助長しました。コンバイン収穫時の子
作業が行えるよう畦間を広めにとっていま
実の成熟度や損傷と損失に配慮するあま
す。また、分枝が開張した草姿となるため、
り、収穫段階までの作業体系全体を見直す
中耕培土作業は基本とされ、さらに、枝折
等の対応がとれていなかったのです。さら
れや倒伏防止のため、支柱を立て、ひもを
に、オペレータが熟した莢を目の前にする
張るなどの対策も一般的に行われています。
と1莢も残さず収穫したいとの気持ちが強
このように、土地利用型作物でありながら、
く、刈り刃を下げすぎるなど、コンバイン
- 26 -
の作業限界の認識不足と操作の不慣れも重
た平型乾燥機や米麦用一時保存用の通風用
なりました。
ラックを用いて通風乾燥しています。通風
コンバイン収穫技術の普及には、栽植様
乾燥だけでは乾燥期間が長くかかることか
式の見直しなど、新しい栽培方式であると
ら、家庭用除湿機を組み合わせたり、循環
の意識づけが必要でした。コンバイン操作
式の汎用型乾燥機などの導入検討も行われ
技術の向上を図るため、オペレータを対象
ています。
とした研修会等のソフト面と機械装備の
ハード面の両方から支援をすすめました。
5.まとめ
密植と平畦に近い栽培方法の採用で慣行
平成16年度からスタートした新たな米政
栽培並の収量確保の目途ができました。
策を受け、中丹地域においては、水田農
また、子実の汚れについても失敗の積み
業を担う集落営農組織(農作業受託組織
重ねによる改善が図られてきました。しか
等)の経営強化のため、2年3作の輪作体
し、注意していても土のかき込みは避けら
系(水稲-小麦-小豆栽培)を提案し、安
れず、限界があることから、これに対応す
心・安全で売れる米づくりに結びつく省力
るため、今年中には、全ての JA で豆用ク
低コストのための直播栽培や付加価値の高
リーナが整備される予定です。
い「特栽米 」 と 「 丹波大納言 」 のコンバイ
機械化栽培に先行して取り組む営農組織
ン収穫体系に関する技術課題解決に取り組
で、技術ポイントが整理改善され、他集落
みました。
営農組織へ波及しています。波及先の営農
これにより当地域で行われている水稲作
組織でも栽培方式や機械導入等において、
付3,850ha のうち直播栽培が50ha、特別栽
独自に発展が見られています。
培米栽培が300ha に広がり、うち58ha が
乾燥作業は、専用に乾燥施設を整備する
集落営農組合(農作業受託組織等)による
とコストや場所の問題もあることから、既
特栽米栽培となりました。
存のライスセンターや、かつて使用してい
また、小豆栽培の300ha のうち集落営農
組合によるコンバイン収穫体系による栽培
がおよそ50ha まで伸びました。
水稲直播栽培、特栽米栽培、小豆栽培い
ずれも、水田農業構造改革交付金(産地確
立交付金)より、生産振興が進んだ側面が
あり、特に小豆の機械化栽培推進に大きな
推進力となりました。
現在、来年度以降の対策の先行きが不透
除湿器を利用した乾燥方法
明で、地域は新たな局面を迎えつつありま
- 27 -
すが、特に小豆については、本年、は種時
るよう、機械化技術のさらなる向上により、
期の気象条件不良に伴う作柄不良が見込ま
産地規模を拡大していく必要があると思わ
れることから、生産安定と品質向上の取組
れます。
を一層進め、雑穀業者などに理解が得られ
<コンバイン収穫体系を普及するための取組内容>
1 コンバイン収穫の前提となる技術ポイントの抽出
①は種前の明渠設置など排水対策の徹底
②土塊混入を防止するため、中耕・培土作業(培土手収穫作業)の見直し
③トラクタ、中耕ロータリ、ブームスプレーヤ、コンバインなどの作業幅や輪渠を考
慮した栽植様式の組立
④一斉収穫に適したは種時期の徹底
⑤雑草対策
2 コンバイン収穫時のオペレータ操作技術習得支援
3 簡易な乾燥方法の確立支援
4 JA荷受体勢の整備並びに選別・調製施設の整備(研磨機の導入)
(普及センター発行 「 特産小豆をコンバインで収穫するための手引き 」 より抜粋)
- 28 -
生 産 ・
流通情報
千葉県野田市の枝豆生産と「まちづくり」の活動
技術士(農業部門) 石 川 秀 勇
なく、普通穀物地帯の農業で推移してきて
はじめに
野田市は、2003年に旧野田市と北側に隣
いた。
接の関宿町とが合併し、新市を誕生させた。
歴史的に見たその農業の特徴は、巨大な
千葉県の最北部に位置し、東を利根川、西
地場産業である醤油醸造業があって(キッ
を江戸川、南を利根運河と、地形は三方を
コーマン(株)等の工場が立地している)、
2
川で囲まれている。面積約103km 、新市
これが核となって中心市街地が形成され、
発足時の人口15万3千人(うち旧野田市12
その経済圏としての農村、農業生産が存在
万7千人)である。標題の枝豆生産と「ま
してきたことである、とされる。因みに、
ちづくり」の活動は、都市化の進んできた
都市化への動きが活発になり始めた頃とさ
旧野田市(市制の敷かれたのは1950年と古
れる1960年における農業センサスを見ると、
い)で展開されてきている。
次のような数字である。
そこで、旧野田市の市域(以下「野田
農家数(戸):総数3,814、専業799、1種兼
市」と略し、合併後の市については「新
市」と記す)において枝豆生産を盛んとし
業1,049、2種兼業1,966
経営耕地面積(ha)
:総面積2,925、田1,295、
てきている、その背景にあるものは何なの
か。また、枝豆生産と結びついた、活発化
畑1,631
作物作付面積(ha)
:計4,444、稲1,787、麦
させてきている「まちづくり」の活動とは、
類1,238、 い も 類229、 豆 類268、 野 菜
どんな内容のものなのか。本稿では、この
757、 工 芸 作 物87、 そ の 他 の 作 物78
二つことを主体に、以下述べみたい。
[耕地利用率152%]
(2)野田の醤油産業の歴史と農業
1.野田市の都市化への変容と産業
(1)1960年頃までの野田市の農業概況
野田の醤油業は、室町時代の末期に芽生
野 田 市 の 農 業 は、 都 心 か ら の 距 離 が
えがあり、江戸時代になって発展をみた。
30km という近郊圏内にありながらも、都
1640年に利根川を分流する江戸川が開削さ
市近郊としての農業構造としての展開では
れ、船運の便が良くなって原料の大豆や小
- 29 -
麦、塩を周辺の産地から集荷するのに好都
表1の農業の主要指標に関しては、1990
合になるとともに、大消費地である江戸へ
年を100とすると、農家数61、農業就業人
の輸送に適した立地となったから、という。
口67、経営耕地面積78という数字で、近年
また、江戸川の水が醸造用水として極めて
の減少傾向は著しい。農業粗生産額につい
良水であること、地場の山林から燃料とし
ては野菜の数字が大きく(1990年には427
て使う薪を得られるということもあった。
千万円)、農業粗生産額計の7割を超える
醤油の醸造工場では数多くの従業員(工
割合となっている。表2の工業の主要指標
務員)を要するが、1960年代での調査で、
に関しては、製造業の従業者数は1万人を
主力会社の工場で総員数2,200余名、うち
超え、農業就業人口の約7倍となってお
85%が出身地を野田市としていること、ま
り、製造業の粗付加価値額を農業粗生産額
た、小規模農の兼業農家がその主たる支え
と対比すると、極めて大きな倍率となって
手であるとの調査事例を報告している。
いることが認められる。なお、うち食料品
製造業の数字が大きいが、本業種には醤油
(3)現況における農業と工業の主要指標
(味噌)、漬物、酒造、清涼飲料水、乳製品、
表1 農業の主要指標(野田市) 2000年
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資料:農林水産省統計情報部「農業センサス」
表2 工業の主要指標(野田市) 1998年
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- 30 -
パン・菓子類(せんべい加工を含む)等の
いう順位である。センサス年でのそれまで
製造業が含まれている。
の推移をみると、野田市は1975年、1980年
と1位だったが、1985年から2000年にかけ
ては岐阜市が1位で、野田市は2位だった。
2.野田市の枝豆生産
(1)1960年代に展開された野菜生産振興
の活動
その1、2位が2002年に入れ替わった。な
お、野田市の枝豆の作付面積は、200ha 前
1960年頃の農作物の作付面積の動きを見
後をこの間長く持続してきている。
ると、野菜の伸びが大きい。これにはこの
頃に、組織的な野菜生産振興の取組が始め
(3)枝豆の作物特性と野田市で盛んな生
られたことがあった。市農政課と、当時、
産が維持されている要因
旧町村ごとにあった農協に事務所をおいて、
枝豆は、生育初期は比較的低温に耐える
1963年末に組合員数651名の野菜生産者が、
が、開花結実期になると高温条件を必要と
地区ごとにつくられた44の出荷組合の一つ
する、高温性の作物である。このため低温
に所属して、野菜の生産と販売に関する調
期の業務用等には冷凍の輸入物が利用され、
査・研究・改善、及び資材の斡旋の事業に
施設栽培は積極的には行われない。そして、
取り組んでいた、という。
収穫物は鮮度を要求され、収穫適期幅が短
こうした取組の中から、枝豆はねぎや
い上に、収穫調整に重労働ではないが多く
キ ャ ベ ツ、 ほ う れ ん そ う な ど と と も に
の労働力を要するので、大規模面積での生
100ha のオーダーの面積で作付けられる品
産は困難だ、という特性がある。
目となった。当時の統計では豆類のうちの
「だいず(未成熟)」という扱いであった枝
豆 が、1950年 に 5a、1960年 に30a、1964
年に300a、と1960年代になって急増して
きている。この枝豆栽培は、自家製味噌づ
くりのための大豆栽培から切り替わる形で
進むようになったようである。
トンネル栽培(撮影:4月下旬)
(2)出荷量が最上位にランクにされる野
田市の枝豆生産
野田市で盛んな枝豆生産が維持されてい
「野菜生産出荷統計」で、2002年産の枝
る要因として、大消費地に近く新鮮な収穫
豆出荷量において野田市が市町村順位で
物の出荷に有利な地理的な条件と、小規模
久々に全国第1位となった。①野田市1,870
農家層が厚く存在していることが背景にあ
t、②岐阜市1,740t、③鶴岡市1,600tと
る。その小規模農家層のうちには、若いこ
- 31 -
ろ前記した醤油会社等に勤め、子供が会社
の基本とするものとして、「総合計画」を
に勤める頃になると退社し、農業に精を出
策定している。くだけて言えば、「まちづ
す農業従事者となる農家がかなり含まれる。
くり」の計画づくりである。野田市では、
つまり、野田市の枝豆生産は、地場産業と
2001年度から2015年度を計画期間とする
結びついて産地形成が図られている、との
「野田市総合計画」の策定に当たって、そ
見方ができるようである。
の前段で「野田市まちづくり市民100人委
員会」を設けるなどした。
(4)枝豆栽培の作型と収穫調整等
特別なこうした機会を別としても、多く
野田市の枝豆は移植栽培で、ほうれんそ
の者が地区の自治会、あるいは各種の団体
うやねぎなどとの輪作体系に組み入れられ
に所属するなどして何らかの市民活動に加
て作付けされている。主な作型はトンネル
わっており、野田市民の「まちづくり」に
栽培と露地栽培で、これに加えてごくわず
対する参加意識は高いといえよう。
かハウス半促成栽培が見られる。播種時期
は2月上中旬~5月下旬、出荷時期は5月
(2)枝豆生産と「まちづくり」の活動
中旬~8月上旬である。うち5月中の出荷
枝豆生産が野田市で盛んなことは、かね
はハウス物、6月出荷はトンネル栽培によ
て市民の誇りにもなっていて、1996年に土
る早出し物、そして露地物と続く。品種は、
地の銘菓として「えだ豆の郷(さと)」を
「ユキムスメ」「サヤムスメ」「天ケ峰」な
誕生させている。これは、材料の一部に枝
ど、いくつものの品種が出荷の途切れない
豆を使った最中菓子であるが、市の中心部
ように作られている。
からやや離れた一地区の商店街が新たな地
播種後約90日で収穫適期となる。調整方
法は、立毛のまま畑で葉をとってから収
域の名物をつくろうと、市民にアイデアを
募ったその成果のものだ。
穫する場合と、株ごと引き抜いて作業場
こうした市民の心に潜在した思いに応え
へ運んでから葉を取る場合とある。荷姿
る、以下のような動きが市レベルでの広が
は、枝付で300gを1束として束ね、それ
りで活発化してきている。2004年春頃から
を袋(鮮度保持パッケージを使用)に入れ
のことで、「2002年産の枝豆出荷量が久々
るものが多くなっている。出荷先は東京方
に全国第1位」という統計発表のニュース
面、及び近県や県内等の地元である。
が弾みを与えた。
3.「まちづくり」の活動
1)『まめバス』の運行の開始
(1)「まちづくり」に対する市民の参加意
2003年6月に新市をスタートさせ、地形
識
が南北方向に25km 位もある細長い形に変
市町村は、総合的かつ計画的な行政運営
わった。そこで市民の利便を考慮し、市は
- 32 -
2004年1月からコミュニテイバスを運行さ
City 野田”の創造を目指す」ことを提唱
せている。このバスの愛称は公募で決めら
された。
れたが、『まめバス』と命名された。その
理由として、①小回りのきく「ミニサイ
ズ」のバスであること、②市民の皆さん
に「こまめ」に乗ってもらいたいこと、③
合併後の新市の枝豆の出荷量が全国有数の
産地であること、等からと説明されている。
乗車料金は定額で大人100円、子供50円と
設定されている。
えだまめ旬宴
3)枝豆を前面に出しての諸活動の展開
<2005年以降も継続実施されている催し>
・「えだまめオーナー」募集、3月。実施
主体は市農産物消費拡大推進協議会で市
内栽培農家が協力、1区画5㎡、3,000円。
受付を市農政課が担当(2002年から)。
・遊休農地約10a を借上げ、障害者の園芸
まめバス
療法の一環として枝豆作りに取り組む。
2)まちづくりの講演会と提唱
約20人が参加、5月に植え付ける。保
2004年3月、野田商工会議所は「食と観
護者やボランテイアが支援。指導農業
光」をテーマとして講演会を開催した。会
士や4H クラブの有志等が耕作を指導。
議所では野田のまちのイメージ向上の方向
事務局は市社会福祉課。2004年試行実
としてこれを企画し、講師に多摩大学経営
施(2005年からの「園芸福祉ファーム・
情報学部教授の望月照彦氏を招いた。演
おーい船形」(面積45a)の活動に発展)。
題は「食と観光のまちづくり-“Beans
・「えだまめ旬宴会」実施、6月。茹(ゆ)
City 野田の創造-」”であった。教授は、
でたての枝豆の食味会、枝豆を使った
人が集まる魅力タウンの条件、地域遺産と
和・洋・中華・弁当の試食など。野田商
しての産業の観光化などを説かれたあと、
工会議所まちづくり協議会(食と観光部
「野田では、枝豆の生産量が全国でも最上
会)主催。100名以上が参加、NHK で
位の地域だ。豆、英語で Bean。知恵を働
放映。2004年に第1回開催。
かせればいろいろな取り上げかたができよ
・「朝採り枝豆」(1袋300g入り)のプレ
う。食と観光によるまちづくりに、
“Beans
ゼント、7月。まめバス回数券購入・利
- 33 -
用者に抽選で200名を対象に。まめバス
品質・特性を持たせるべく有機肥料の使用
の利用促進と野田産枝豆の PR 目的。市
や減農薬栽培などによる環境保全型農業を
企画調整課が担当。
推進することに注力をしている。そして
・「枝豆ゆうゆうパック」販売の受付、7
2009年10月現在、枝豆でのエコファーマー
~8月。市内郵便局とI農園がタイアッ
認定農家数が新市で55名(うち旧関宿町7
プして実施。
名)を数えるともに、千葉県の制度であ
・親子の食体験-野田えだまめ体験編の開
る「ちばエコ農業」の産地指定を受けてグ
催、キッコーマン社主催、JA 協力。
ループで取り組んでいる事例も2地区(う
ち旧関宿町1地区)現れてきている。なお、
<臨時的に行われた催し>
有機肥料については、市の堆肥化センター
・2004年7月、農林水産省の「消費者の部
において街路樹の剪定枝などを主材に生産
屋」で「枝豆日本一のまち」を PR。市
した堆肥と、稲作農家からの籾殻と旧関宿
が出展。市町村レベルでの出展は初めて
町で戦後発展してきた酪農家からの牛ふん
という。
を混合した籾殻牛ふん堆肥を使った良質堆
・2005年6月、市・JA・普及事業協議会
肥を製造し、枝豆をはじめとする野菜農家
の主催で、県内外の生産者・研究者・行
(登録農家540戸)に供給するようにしてい
政関係者等を集めての検討会「えだまめ
る(2008年度の供給量2,100トン)。
サミット in 野田」を開催。基調講演を
市場関係者から聞いた上で、品質向上と
(2)地域の魅力を紹介する情報発信や商
消費拡大とを目指すとともに、収益を上
品開発など
げるには栽培の省力化も課題であるとい
最近の動きとして、次のような取組があ
うことが論議された。 ᣼ဋ↭↰↖‒ ↭←ⅹↂↆ‒
‒
‒
4.最近の動向
Јᒵ᣽ଐஜɟ↝௑ᝃ‒ ‒ ‒
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‒
(1)「枝豆」ブランド化を目指す生産サイ ‒
ドの動き
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‒
市職員による「まちづくり(政策立案)‒
研修報告書」(2005年版)に、枝豆をテー
マの対象にし、『野田まめでまちおこし~
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‒
出荷量日本一からブランド日本一へ~』と ‒
題した研究活動報告の掲載が見られた。 ‒
生産サイドでは、この報告が提案してい ‒
るブランド化(右図)にも即した、優れた
- 34 -
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「枝豆」ブランド化の提案
る。
上記まちづくり協議会を母体に法人化が
・6月15日を「枝豆記念日」と宣言、また
検討され、2009年3月に知事の認証を取
ワイン風枝豆リキュール「まめなのだ」
得、同年4月設立。正会員25名、賛助会
の発売、2006年。本品はキッコーマンと
員が醸造関係の数社や JA ちば県北など
野田商工会議所まちづくり協議会による
7団体でスタート。事業グループとし
共同開発とのこと。生産数量限定で、通
て、①「旬宴会」などを中心としたイベ
販でも購入可能になっている。
ント・セミナー等の企画・実施グループ、
・「サルサ・えだ豆讃歌」の発表、2007年。
②野田の味づくり及び関連の商品・サー
「旬宴会」で歌手・大空輝海さんが歌を
ビスの開発・支援グループ、他を組織化
披露された。上記まちづくり協議会が協
している。
力、「サルサ・えだ豆讃歌制作委員会」
が CD を制作、発売。作詞は吉田与四郎
おわりに
氏。一番の歌詞を記させていただくと、
地域の魅力を強めようとする「まちづく
野田に生まれた 枝豆は / 化粧さ
り」活動の推進は、何れのところでも普遍
れては 箱の中 / 街の市場に つい
的に欠かせないものといえよう。そして、
たなら / 日本一だよ 美味しいと /
工業製品や農産物といった「モノづくり」
声はりあげて 待つお客 / ソーレ
とともに、「人づくり」もまた重要な切り
ソレ燦燦 豆 燦燦 / 野田の枝豆 口とされる。人の意識をつくり、住む人の
日本一 日本一
心をつくっていくということである。そう
・「えだまめ体操」DVD の作成、2007年。
した取組の過程で、「農」の要素の位置づ
市が、オリジナル体操作成委員会を発足
けは、地域社会の成熟化が更に進んでいっ
させて2007年秋に発表。腰を入れて両手
ても、決して低くなることはないのではな
で豆を摘むような「豆収穫」など、枝豆
いだろうかと思われる。
にちなんだ10種類の運動が組み込まれ
最後に、筆者がこの野田市に住居を定め
ており、“介護予防体操に”としている。
たのは1979年のことで、ちょうど30年にな
1000枚作成され、希望した団体に無料で
る。こうしたことから、日常的に触れてき
配られたほか、個人にも貸し出されてい
ている当地の動きについて、最近の取組を
る。
新たに付け加えて述べさせていただいた。
・NPO 法人「そい・びーんず」の発足。
- 35 -
海外情報
豆類生産見通し
2009年10月22日発表
米国農務省経済調査局
1回目の予測を3%上回っている。8月の
乾燥食用ビーン
予測を上回ることになった要因は、作付面
天候の影響で収穫は遅れ、播種は不確定
積の推定値が増加したことである。作付
2009年度の乾燥食用ビーン栽培では、低
面積は153万エーカー(61万9,000ha)とな
温・多雨により作付けも収穫も遅れた。10
り、これは前年同期の値を3%上回ってお
月中旬の時点で、ノースダコタ州の収穫は、
り、1月末に発表された『作付予測』の予
度重なった暴風雨の影響で例年に比べて大
測値と一致している。収穫を断念した面積
幅に遅れている。ビーンの品質及び価格に
が予測を上回った(主に洪水及び雹の影響
は、多雨による悪影響が出ている。10月の
による)ことから、収穫面積は作付面積の
時点での米国農務省の推定では、ビーン全
94%に留まる見込みであり、前年同期の
品目の生産量は2,520万 cwt(114万3,000t)
97%を下回っている。収穫面積が作付面積
となり、前年同期に比べて2%の減少と見
に占める割合は2008年度より低下している
込まれているが、この値は8月の今年度第
が、最近5年間の平均の約93%を上回って
表1 米国における乾燥ビーンの生産量(2006-2009)
※
品目
変化率
%
ノースダコタ
ミシガン
ネブラスカ
ミネソタ
アイダホ
カリフォルニア
コロラド
ワシントン
ワイオミング
その他
米国計
※全国農業統計局の10月見通し
資料:米国農務省全国農業統計局『穀物生産』
- 36 -
100万ポンド
ドル / ポンド
生産量
価格
1/ 最初の販売時における価格
資料:米国農務省全国農業統計局『穀物生産量及び穀物価格』
図1 米国の乾燥食用ビーンの生産量と農場価格
いる。収穫を断念した面積は、低温と多雨
州の単収を見ると、大部分の乾燥食用ビー
に見舞われたノースダコタ州で最も深刻な
ン品目の生産量は減少するか、または前年
状態であり、作付面積の約10%に上ってい
の水準に近い値に留まる模様であるが、ブ
る。米国全体の収穫面積は現時点では前年
ラックアイ、ベビーライマ、ガルバンゾ及
に比べて1%減少して144万エーカー(58
びピントー(ノースダコタ州及びミネソタ
万3000ha)となる見込みである。報告が
州では単収が低かったが、ネブラスカ州、
ある18の州の大部分で収穫面積は前年同期
コロラド州及びアイダホ州といった主要生
の水準を上回る見込みであるが、生産量で
産州で生産量が多かったことで埋め合わさ
上位を占める4つの州のうち、ノースダコ
れている)については生産量が増加する可
タ州、ミネソタ州及びネブラスカ州の3州
能性がある。品目別の生産量の推定は、12
が、収穫面積が減少した5つの州に含まれ
月11日に『作物生産』で米国農務省から発
ている。
表される予定である。
米国全体の乾燥食用ビーン単位面積
当 た り 収 穫 量 は、17.54cwt/ エ ー カ ー
価格は不安定だが急落はない
(1,966kg/ha)と予測されており、これは
新物のビーンが入手可能となる時期に通
過去最高記録であった前年と比べて1%の
常みられる値動きを反映して、一部の品目
減少である。米国の乾燥食用ビーンの年間
の乾燥食用ビーンについては価格が9月の
平均単収が17cwt/ エーカー(1,900kg/ha)
水準から下がり始めている。しかし、中西
を超えたことが、これまでに6回しかない
部諸州の北部で収穫が遅れていることと、
ことを考えると、2009年の単収は意義のあ
最終的に生産量及び品質に関して不透明感
るものだと言える。品目別作付面積及び各
があることから、10月中にこれ以上の値下
- 37 -
がりはないものと思われる。2009年度の平
格を28%上回っている。価格がこのまま保
均生産者価格は、大部分の品目について前
たれれば、乾燥食用ビーンの年度当初価格
年同期の高かった水準を下回る見込みであ
としては2008年度に次ぐ史上2番目の高価
るが、年度当初の在庫量が少なかったこと
格となるであろう。一般的な年には、乾燥
と収穫量が平年並みに留まっていることか
食用ビーン全体の3分の1が10月末までに
ら、長期的な平均価格に比べれば高価格と
取引される。しかし、多雨により収穫が遅
なっている。ノースダコタ州またはミシガ
れていることから、収穫早々に取引される
ン州で今後、収穫される分については収穫
作物量の割合は例年に比べて低くなる見込
時に相当な損失が生じる見込みであるので、
みであり、このことが現在の市場取引状況
すでに逼迫している供給状況がさらに悪化
を支えるのに役立っており、今年度は例年
し、ピントー・ビーン、ネイビー・ビーン
と異なり整然とした取引の流れとなるであ
及びブラック・ビーンといった品目につい
ろう。
ては価格が上がるであろう。
10月半ばまでのところ、生産者価格はお
9月時点での乾燥食用ビーン全品目の平
おむね前年同期の価格を9%から28%下回
均価格は30.90ドル /cwt(68.0セント /kg)
る水準で推移した。ラージライマ・ビーン
で、収穫年度の始めの価格として前年同期
については、例外的に価格が前年同期と変
を16%下回った。しかし、昨年度の異常
わらなかった。ミネソタ州/ノースダコタ
に高い水準と比べてみても、今年度の市
州産のピントー・ビーンの10月半ばの時点
場の動向を探るには無理がある。実際に
での価格は、前年同期を9%下回ってい
2009/10年度の価格は、昨年度に引き続き
る(ただし、収穫の不安定さを反映して
高値で始まっており、最近5年間の平均価
徐々に値上がりしてきている)。一方、カ
表2 米国乾燥ビーン月別品目別生産者価格
対前年比
品目
州
9月
10月
9月
10月※
9月
セント / ポンド
全乾燥ビーン
ピントー(ノースダコタ)
ネイビー(ノースダコタ)
ブラック(ノースダコタ)
グレートノーザン(コロラド、ネブラスカ)
ガルバンゾ(ワシントン、アイダホ)
ライトレッドキドニー(コロラド、ネブラスカ)
ピンク(ワシントン、アイダホ)
スモールレッド(ワシントン、アイダホ)
ベビーライマ(カリフォルニア)
ラージライマ(カリフォルニア)
=※月中半での見込み
資料:米国農務省全国農業統計局『農産物価格』及び同市場局『ビーンマーケットニュース』
- 38 -
10月
%
リフォルニア州産のブラックアイ・ビー
が高いことを反映して、乾燥食用ビーンの
ンの価格は前年同期を13%下回った。ピ
15の品目のうち8品目までの輸出量は減少
ントー・ビーンは例年と同様に乾燥食用
した。しかし、ブラック・ビーン及びピン
ビーン総生産量の40%から45%を占めてい
トー・ビーンの輸出が増加したことによっ
る。これと対照的に、アイダホ州 / ワシン
て、2008/09年度の輸出量は増加した。ピ
トン州産のスモールレッド・ビーン(28%
ントー・ビーンの輸出量が1994/95年度以
減)及びガルバンゾ・ビーン(29%減)は
来最大となった一方で、ブラック・ビーン
大きく値下がりしており、これは供給が豊
の輸出量は、これまでの最高記録であった
富であることを反映しているものと思われ
1981/82年度の輸出量を大幅(20%)に上
る。今年度は供給量が予測されている需要
回った。
量とほぼ一致する見込みであることから、
ブラック・ビーン輸出量の約87%及びピ
2009/10年度末在庫量は、前年度に引き続
ントー・ビーン輸出量の36%がメキシコへ
き、大部分の品目について少なくなるもの
輸出された。メキシコの需要が増えたこと
と見込まれている。その結果として、この
が、2009/10年度の最も大きな動きである。
秋の収穫が完了して価格が落ち着いたのち
米国の乾燥食用ビーン総輸出量の約38%が
には、市場は春に向けて徐々に値上がり
メキシコに輸出されており、前年度の24%、
していき、上げ幅は輸出需要の強さ(特
それ以前の3年間の平均の29%に比べて大
に、旱魃により供給が少なくなっているメ
きく増加している。ブラック・ビーン及び
キシコへの輸出)及び雇用水準の回復の如
ピントー・ビーンが、2008/09年度にメキ
何(食料支援サービスの実施度合いが決定
シコに輸出された米国産乾燥食用ビーン全
される)によって決まるものと見込まれる。
体の86%に上っている。米国の乾燥食用
ビーンのメキシコへの輸出額は、前年に比
2008/09年度は輸出量が急増、輸入量が減少
べて79%増加して12,100万ドルであり、そ
2008/09市場年度(9月から8月)の米
のうちブラック・ビーンが5,800万ドルと
国の乾燥食用ビーン輸出量は、前年度より
なっている。米国からメキシコへ輸出され
17% 増 の955万 cwt(43万3,200t) で あ っ
ている乾燥食用ビーン全品目の平均輸出価
た(表3)。ドミニカ共和国(14% 減)、日
格は33.0セント / ポンド(72.8セント /kg)
本(11%減)及びスペイン(21%減)への
であり、前年に比べて5%下がっている。
輸出量は減少したが、この減少分は輸出量
ネイビー・ビーン輸出量は12%増加して
上位3カ国であるメキシコ(90% 増)、カ
172万 cwt( 7 万8,000t) と な っ た が、 こ
ナダ(8%増)及びイギリス(8%増)へ
れは4年連続の増加であり、2000/01年度
の輸出量が増加したことによって埋め合わ
以来最大の輸出量である。ネイビー・ビー
されて余りあった。供給量が少なく、価格
ンの輸出量は、輸出量上位3カ国のいずれ
- 39 -
表3 米国乾燥ビーン輸出量
品目
穀物年度(9月-8月)
変化率
%
ピントー
ネイビー
ブラック
ガルバンゾー
グレートノーザン
ベビーライマ
ライトレッドキドニー
ダークレッドキドニー
クランベリー
ラージライマ
スモールレッド
マッグ
ブラックアイ
ピンク
その他
合計
資料:米国商務省統計局のデータを基に経済調査局が作成
表4 米国産乾燥ビーンの穀物年度別輸出先国別輸出量
輸出先
9月-8月
変化率
%
メキシコ
カナダ
英国
タンザニア
南アフリカ
ドミニカ
日本
ハイチ
ベネゼラ
スペイン
フランス
その他
合計
不明
1/ 商行為による販売及び食料援助による移動を含む。
資料:米国商務省統計局のデータを基に経済調査局が作成
についても増加している。イギリスは、米
に9%減少して295万 cwt(13万3,800t)と
国のネイビー・ビーン輸出量の51%を占め
なったが、この輸入量は過去最高であった
ているが、2008/09年度の米国からの輸出
2007/08年度に次ぐ量である。輸入量上位
量は18%増加している。カナダは、米国の
の2品目について輸入量が増加しており、
ネイビー・ビーン輸出量の約40%を占めて
ガルバンゾ・ビーン(2008/09年度の輸入
いるが、輸出量は前年に比べて50%増加し
量第1位)は27%の増加(国内供給量が少
ている。
なかったことによる)、マング・ビーンは
乾燥食用ビーン輸入量は2008/09年度中
5%の増加で、長期にわたる増加傾向がさ
- 40 -
らに続いている。昨年度は国内供給の状況
乾燥ピー及びレンズマメ
が改善されたことから、ブラック・ビーン
(38%減)、ピントー・ビーン(30%減)及
生産量の増加により価格は低下
びネイビー・ビーン(35%減)の輸入量は
2009年度の乾燥ピー(エンドウマメ)及
減少した。
びレンズマメ生産量の第一回目の推定は12
2008/09年度の平均輸入価格は9%上昇
月10日(『作物生産』の公表日)にならな
して48セント / ポンド(105.8セント /kg)
いと発表されないが、今年度の生産量は昨
となり、米国の乾燥食用ビーン輸入額は
年度を上回るものと見られている。その結
前年とほぼ同じ14,100万ドルであった。カ
果として、乾燥食用ピー及びレンズマメの
ナダ(17%減)、メキシコ(7%減)、中
価格は季節的な変動をしつつも低下してお
国(43%減)及びペルー(264%増)が、
り、高値であった前年同期をかなり下回っ
2008/09市場年度の米国に対する乾燥食用
ている。9月の時点では、乾燥ピー全品
ビーン供給量で上位4位までを占める国で
目の平均価格は8.35ドル /cwt(18.4セント
あり、この4カ国で米国の輸入量の4分の
/kg)で、異例の高値であった前年同期に
3を占めている。中国からの輸入量は米国
比べて46%の低下であるが、最近3年間の
の輸入量全体の14%であり、その50%をマ
平均を24%上回っている。今年度の生産量
ング・ビーンとブラック・ビーンが半分ず
は過去の記録の中でも上位に達するものと
つ占めている。中国の場合と同様に、ペ
見込まれており、9月の時点での米国のレ
ルーからの輸入量はこの10年間で増加を続
ンズマメ価格は前年同期を31%下回ってい
けており、2008/09年度には米国の輸入量
る。ヒヨコマメの価格についても、大粒種
全体の12%となっている。ペルーから米国
も小粒種も前年同期の3分の1の値下がり
へは数多い種類の乾燥食用ビーンが輸入さ
をしている。
れているが、2008/09年度には輸入量の半
分近くがブラック・ビーンであった。
表5 米国産乾燥ピー及びレンズマメの月別品目別生産者価格
穀物年度・月
7月
8月
9月
7月
- - セント/ポンド - 乾燥ピー
オーストラリアンウインターピー
レンズマメ
大粒ヒヨコマメ
小粒ヒヨコマメ
不詳 1/2009年9月の価格は月中半の平均価格
資料:米国農務省全国農業統計局『農作物価格』
- 41 -
8月
9月
海外情報
在住者から見たバンコク食・豆事情(上)
料理編
小 林 浩 子
の国をご存知の方からは「ああ、いかにも
はじめに
屋台が立ち並ぶバンコクの街中、タイ語
で「カノム トウキョウ(直訳すると「東
タイらしいですね」と微笑んで言っていた
だける出来事なのです。
京菓子」の意)」という菓子(口絵1)が
売られています。鉄板上に生地を薄く楕円
タイはインドシナ半島の中央に位置し、
形に広げ片面のみを焼き、中にカスタード
隣国と国境を接し、歴史的には幾度となく
クリームやタロ芋、ソーセージなどを入
周辺国との攻防を繰り返してきました。し
れ、くるりと巻き上げたもので、高級デ
かし、第二次世界大戦時には東南アジアで
パートの食料品売り場でも売られる定番の
唯一独立を保ち、現在までも立憲君主国と
菓子。タイで人気の料理人ポン・タンタサ
して、独自の文化を伝えてきている国です。
ティアン氏より「鉄板焼きの文化は日本か
ら伝わってきたもので、鉄板で焼かれる菓
子だから誰もが日本を連想する「トウキョ
ウ」と名付けられた。私が子供の頃からバ
ンコクで売られている菓子」と説明を受け
ました。同氏の料理本の中では「新スタイ
ルのカノム トウキョウ」(口絵2)として、
どら焼きの生地を使用し、中に小豆餡を入
れたものが紹介されています。日本の食文
化を取り入れ、日本を連想するよう名付け
られた菓子が、今は「どら焼きの変形(愛
知県知立市の名産「あんまき」とも類似)」
となり、タイの人達の間で話題になってい
るというと、タイをご存知ない日本の皆様
にはなんとも面白い状況でしょう。ただこ
- 42 -
タイと周辺諸国(google マップから)
一方で、15世紀頃の当時の王都アユタヤ
の様子と重なります。
では、中国人・日本人・フランス人・ポル
はじめて東南アジアを訪れる機会となっ
トガル人など40余もの民族が住む多民族国
たバンコクの風景を、私は「椰子の木々の
家の様相をなしていました。外国人でも、
中、チーク材の家が立ち並ぶ街並み」を思
交易を行う商人に便宜を図り、義勇兵を受
い描いていたのですが、街の様子は東京新
け入れ、有能な人材には山田長政の例のよ
宿と変わらない高層ビルが立ち並ぶもので
うに官位も与えるなど、積極的に良い人材
した(口絵3)。ただ、近代的な街中には、
を受け入れる策をとっていました。このよ
今も母国の屋台文化が残っていて、国籍を
うに、柔軟に外国人・異国文化を取り入れ
問わず多くの人が利用し賑わいをみせてい
るというのもタイの特質する文化です。
ます。そこで感心をさせられるのが「カノ
その長い歴史を経て、今に伝承されてい
ム トウキョウ」や「タイ風焼きそば:パッ
るタイの食文化は国の歴史と同様に、独自
タイ」などを売る人までもが、物怖じせず
の文化を守り続けながら異国の文化を柔軟
片言ながら英語を話す様子です。それだけ
に取り入れています。それ故に大変豊かな
外国人客が多いということでしょう。
食体系となっています。もちろん豆を使っ
タイの首都バンコクは「10人に1人は外
た料理(主にデザート)もバラエティ豊か
国人」といわれるほど多くの外国人が住み
です。
ます。この街では、日本やヨーロッパの食
材のほとんどが手に入り、特に日本食材に
日本と同様に米を中心とする食文化をも
関しては、その需要の大きさや運ぶ距離の
ち世界で多くの日本人が住むバンコクの街
関係か、ロンドンなどヨーロッパの土地よ
とその食・豆事情についてご紹介していき
り比較的安価に手に入れることができます。
たいと思います。
バンコクと日本
海外で生活する日本人は2007年10月現
国際都市バンコク
「スカイトレイン」という街の中心部を
在、全世界で1,085,671人。その中バンコク
走る電車に乗れば、常に複数の言語が耳に
は、都市別在留邦人順位4位(3万2283
入ってきます。縁あって以前住んでいたロ
人)、長期滞在者数でも4位(3万1,643人)
ンドンで「アジアのロンドン~バンコク
と、多くの日本人が生活しています。昨年
~」というフレーズを雑誌で目にしたこと
からの世界同時不況やインフルエンザの影
があるのですが、バンコクで暮すようにな
響で、世界的に駐在員の減少傾向はあるも
り、今はその言葉を実感しています。スカ
のの、バンコクの日本人学校生の徒数は
イトレインの様子は、多くの人種が住む街
小・中学校を合わせて2,511人(2009年4
として有名なロンドンの地下鉄・チューブ
月現在)となり、今年から上海を抜いて世
- 43 -
界一の規模となっています。
レ」などを日本人以外が注文している光景
にはじめは目を疑いながらも、国外の「日
日本国内に目を向けてみると、身近なと
ころに実に多く「Made in Thailand」の
本食ブーム」の実感を得て、母国の食文化
を誇らしくも感じます。
品々があるのではないでしょうか。焼き
また、
バンコク市内にある
“International
鳥・唐揚などに代表される多くの加工食品
school of Bangkok”内の中学生・高校生
はタイの食材を使い、タイの工場で調理・
を対象とした食堂に、昨年から日本食コー
加工され日本に輸出されています。家庭製
ナーが新設されました。以前から常設され
品や車などの工業製品でも「タイ製品」の
ていた「タイ料理/45バーツ」や「洋食/
表示を探すのは容易です。バンコクの日本
65バーツ」に比べ、「どんぶり/85バーツ」
人商工会議所の加盟企業は1,303社(2009
や「巻き寿司/35バーツ」は単価が高いに
年3月現在)を数え、日系企業にとってタ
もかかわらず、1000人余りの生徒数で、ど
イは東南アジア地域における重要な生産拠
んぶりは1日200食、巻き寿司は150本と毎
点であり、また市場となっています。
日完売しています。このように日本食人気
一方、タイにとっての日本は、貿易額、
は学校でも強いようです。(口絵6)
投資額、援助額ともに第1位となっていて、
日本社会、製品への信頼も厚く、文化面も
好まれていて概ね親日的と言えるでしょう。
日本産大豆で炊いた「五目豆」を、タ
イの方に食べていただいた時のことです。
「大粒で旨味があっておいしい!これは何
近年、食の都パリをはじめ世界的な「日
豆ですか?」と質問され、その豆が日本産
本食ブーム」といわれていますが、ここバ
大豆と知ると「大豆までもが日本の食品は
ンコクも空前の日本食ブームです。バンコ
おいしい。バンコクのどこで購入できます
クのスーパーマーケットには日本の調味
か」とすぐさま聞かれました。
料・日本食・菓子が並び、寿司・焼き鳥・
日本の食材は先にもお伝えしたように、
ジャパニーズカレー・お好み焼き・たこ焼
地元のデパートやスーパーマーケットであ
き・抹茶製品の店にタイ人や外国人の行列
る程度の品が扱われています。それがバン
がみられます。
コクに支店を構える日本百貨店や3店舗を
日本の某有名定食レストランは、この2
構える日系スーパーマーケットに行けば、
年余り店舗数の拡大を続け、現在は市内に
日本から空輸された鮮魚や野菜・季節のフ
16余りの店舗を構えています。「ひじきご
ルーツ・生卵、人気の生チョコレートまで
飯」に「味噌スープ(味噌汁)」、「魚の干
も購入することが出来ます。デパートの企
物」に「豆腐とわかめのサラダ」、そして
画店で定期的に開催される、北海道から、
デザートに「白玉ぜんざい」「豆乳ブリュ
九州、沖縄などの「地域物産展」は常に賑
- 44 -
わいをみせ、日本人と共に、日本人以上に
い」と言い、そのレストランで提供される
大量に購入しているタイ人の姿をよく見か
料理は辛さが控えめで、日本人にはとても
けます。日本国内に置き換えた場合、「フ
食べやすい味付けです。現地標準的価格で
レンチ・イタリアンフェア」などで日本人
考えると高めの価格設定にも関わらず、彼
は輸入品の高価な食材などを購入し盛況の
の店はタイ人・外国人客で連日賑わってい
様子をみせています。これがバンコクでの
ます。
「日本食フェア」となるわけで、“輸入品と
伝統タイ料理の第一人者で、宮廷の料理
なる高額なものを少量に購入するのは日本
指導をされているシーサモン教授という方
人。輸入品と思い大量に購入するのは富裕
がいらっしゃいます。幸運にもこの先生
層のタイ人”と一般的に言われています。
から料理指導を頂く機会を得ました。先
話は戻りますが、この国で日本産大豆は
生が作る料理は、全般的に辛さが控えめ
輸入品として日本の市場の数倍の価格とな
で、中にはまったく辛くない料理もありま
ります。タイ産大豆と比較すれば購入先に
す。「世界一辛いスープ」といわれる「ト
もよりますが、間違いなくかなりの金額の
ムヤンクン」の味も辛さは控えめで、エビ
差となります。それでも知人を含め「日本
の旨味と爽やかなハーブのバランスが絶妙
のものはおいしく、手に入れたい!」とい
な、上品なスープです。
うタイ人の日本食へのおいしさの信仰と人
気は高いものがあります。
勿論、バンコクにある観光客向けでない
多くのレストランの料理は辛味が強く、ト
ウガラシを山盛り加え、真っ赤になった
スープを好むタイ人の姿も日々見かけます。
バンコクの食事情
~バンコクのタイ料理は辛くない?~
「 タ イ 料 理 の イ メ ー ジ は?」 と 聞 か れ
「タイ料理は、作られる場所により同じ
て「辛い」と答える人は多いのではないで
料理でも味付けや盛り付けが異なり、宮
しょうか。バンコクで生活をはじめるまで、
廷・家庭・ストリート(屋台)の3ヶ所に
私もそう考える一人でした。
大別され、互いに影響を受け合いながら、
渡タイしてはじめて習ったタイ語の先生
それぞれ現在の料理となっている」とシー
が「私はバンコク育ちなので辛いものは食
サモン教授は言います。特徴は一般的に以
べられません」という言葉に驚かされ、そ
下のとおりとなります。
の後出会った何人かのバンコク育ちのタイ
1.宮廷料理
人からも同じことを聞き、考えを改めるこ
①薄味・辛さは控えめ、②下ゆで・煎る
とになりました。前述のポン氏もバンコク
等の多くの手間がかけられる、③一口サイ
育ちで、タイ料理店のオーナーシェフであ
ズでカービング野菜・果物が添えられ、デ
りながら「辛いものはあまり得意ではな
ザート菓子が付く。
- 45 -
宮廷外の一般社会へと伝える機会となりま
した。
現在では「宮廷」以外の「レストラン」
「家庭」「屋台」でも同じ料理を見ることが
できますが、同じ料理でも作られる場所に
より、手間のかけ方は勿論のこと、盛り付
け、味、そして辛さが異なります。
タイの食文化史
2.家庭料理
1.スコータイ時代(1240年頃~1438年)
①味付けは各地方の特徴がある(例:東
タイ族によりはじめて誕生した王朝。3
北部・南部料理は比較的辛い)、②料理手
代目ラムカムヘーン王(1279年~98年)の
順が少ない、③自分の好みで食べる際に別
記したタイ最古の石碑に「スコータイの国
に用意された調味料を加え味の濃さ・辛さ
よきかな。水には魚あり、田には稲があ
を調整する。
り・・・」と国の豊かさが記されています。
この時代、既に米を中心とした食文化だっ
3.屋台料理
たことが伺われます。
①濃い味・辛さが強い、②手順が少ない、
③別に用意された調味料で、味の濃さ・辛
2.アユタヤ時代(1351年~1767年)
さは自分の好みで加える。
国際貿易都市として栄えた王朝の時代。
米と魚を中心とした食事は変わらないなが
現在の王朝(1782年~)に入ってから、
ら、様々な外国の食文化が伝えられました。
タイ料理は体系化されました。その際大き
特に人口の10% を占めるほどの中国人が流
な役割を果たしたのは宮廷の料理場でした。
入し、この頃から中華料理の影響をタイ料
古くは王には何人もの側室がいて、後宮
理は受け、今日までにも至っています。ま
(日本でいうなれば「大奥」)に住む側室の
た、ポルトガルから卵を使った菓子の技法
料理人達は、主である妃が王の寵愛を受け
が伝わり、多くの卵菓子が誕生していま
るため料理作りに励み、様々な新しい料理
す。例えば、「フォイ(糸)・トーン(金)」
を考え出しました。しかし、国王の死もし
は、溶いたアヒルの黄身をシロップの中へ
くは交代の際、次の王の母である妃以外は
流し入れ糸状に凝固させた菓子で、日本の
後宮を出るきまりがあり、同時に各妃に仕
鶏卵素麺(室町時代末期にポルトガルから
えていた料理人たちも後宮から出なければ
伝わった)にあたるものになります。
なりませんでした。この状況が宮廷料理を
- 46 -
3.バンコク時代(1782年~)
ザート」となっています。
現王朝にて美食家として有名な王が2人
一般的な一日の伝統的な食事は、朝食に
います。その王の時代にタイ料理は大きく
「ご飯(もしくはお粥)とおかず」、昼食
発展したといわれています。
に「麺や一皿盛りの簡単な食事」、夕食に
(1)ラーマ2世(1811年~1824年)
は「ご飯と数種のおかず」となります。し
38人もの妻を持ち、詩人としても有名な
かし、日本同様に生活の西洋化が進むバン
王。タイ人以外も側室に迎え、その中イ
コクでは食体系も多様化しています。街中
スラムの妃のもと作られた「マッサマン
には多くのファーストフードやコーヒー
カレー」を好み、王自ら詠った詩の一節
チェーン店があり、例えば朝食は「パンと
「マッサマンカレーは私の愛する人からの
コーヒー」という人も少なくなく、いわゆ
もの、強い香りを漂わす、その香りを嗅い
る大都市の食生活となっています。
だ全ての男性は、彼女とそのカレーを夢見
ずにはいられない」は今でも有名。ポテト
タイの豆事情
やピーナッツが入り、香辛料の香り豊かな
バンコクで生産・消費されている代表的
甘めのカレーは、日本人の間でも人気のカ
な豆は「緑豆」「大豆」「黒豆」の3つです。
レーです。
(口絵5)
(2)ラーマ5世(1868年~1910年)
本誌2008年9月号の「タイ王国の豆類事
西欧列強により隣国が他国の植民地とな
情に関する調査結果の概要」にて、各豆生
る時代、欧州訪問を行い、タイの近代化を
産高の調査がありました。日本ではあまり
進め、国を守った王。「食通」としても知
目にすることがない「緑豆」の生産高が最
られ、自らソースやカレー作りを楽しん
も高いとの興味深い記載がありましたが、
だといわれています。新年の宴会などで
実際にバンコクで生活をしていて一番身近
は、妃たちが料理を一品ずつ差し出し、王
な豆は、やはり「緑豆」です。古くはタイ
が入賞者を決める「国王主催の料理コンテ
人の間で「緑豆」には体を内から冷やす効
スト」が行われ、夜になると王は気に入っ
果があると考えられていました。昔は各家
た料理を差し出した妃のもとへ料理を楽し
庭で「緑豆のシロップ煮」が常備され、熱
みに足を運んだようです。このような出来
が出た時や暑い日に食べられていたそうで、
事も料理の発展に繋がったことが想像され、
人々の生活と身近な豆となっています。
「近代タイ料理(食材・調理道具・技法)」
と「宮廷料理」が定まった時代となります。
3つの代表的な豆のそれぞれの特徴と扱
い方は以下のとおりとなります。
現在のタイ料理の体系は「前菜」「スー
プ」「カレー」「メイン」「ご飯」「麺」「デ
- 47 -
1.緑 豆
緑豆と緑豆を加工した食品がある。(日
本で緑豆は 「 もやしの原料」として主に輸
入品が使われている。「春雨の原料」とし
てもジャガイモに次いで緑豆が多い。)
(1)緑豆/英:mung beans
(使用方法)
8 時 間 以 上 水 に 浸 し て か ら 煮 る。「 シ
ロップ煮」として主に食べられる。
(2)黄色豆(緑豆の皮を剥いたもの) /英:golden mung beans
(使用方法)
①3時間以上水に浸し、20分程蒸す。「シ
ロップ煮」にする。
②蒸したものを潰し、砂糖やココナッツク
リームまたは野菜などと合わせ練り、餡と
(4)春雨/英:mung beans noodles
して様々な「料理や菓子の具」とする。
③乾煎りし、アイスクリームやデザートの
「トッピング」とする。(口絵4)※香ばし
glass noodles ①水に浸し戻してから使用する。「サラダ・
い風味とカリッとした食感がデザートの美
煮物・揚げ物の具」として利用される。
味しさを引き立てる。
②揚げて「トッピングや飾り」として使用
(3)緑豆粉(スターチ)
する。
/英:mung beans starch
①麺やパン・デザートの「生地の材料」に
2.大 豆
含み使用される。
日本産と比較すると、一回り小さく、皮
例:「豆の細麺のココナッツ汁粉」
が硬い。また水に浸す時間も長い。
緑豆粉とジャスミンの香りの水を合わせ、
火にかけながら練る。「寒天突き」のよう
北部産が比較的良質と言われ、日本産と
比べるとカルシウムを多く含む。
な型に入れ、氷水の中に細麺状に押し出す
大豆として料理に使用されることはあま
(写真)。ココナッツクリームのシロップと
りなく、「タイ豆腐」「調味料」「豆乳」と
砕いた氷と共に食べる。
して使用される。 ( 1) タ イ 豆 腐 / 英:Firm yellow bean
curd
- 48 -
白と黄色(周囲のみ)のものがある。日
本の豆腐と比較すると共に水分が少ない。
チーズほどの硬さ。
①白(ソフトタイプ)
スープの具などに使用される。
②黄色(ハードタイプ)
炒め物などに使われる。
(2)調味料
①黒醤油/英:dark soy sauce
砂糖・香辛料が加えられている。濃厚。
万能調味料。
日本産と比較すると、皮は硬く、長さは
通常流通しているものでは2.5倍ほど。
②薄口醤油/英:light soy sauce
主食に添える生野菜として主に食べられ
日本の醤油に近い。万能調味料。
る。炒め物などなどにも使用される。
③豆醤/英:Fermented soybeans
(2)四角豆(マメ科・ツル性植物)
/英:winged beans
発酵した大豆の調味料。日本の味噌のよ
うな風味。炒め料理の調味料や、ソース作
りにも登場する。
切った断面が四角(星型)になる。日本
では沖縄などで栽培されている。害虫に強
く、無農薬で栽培しやすい。大豆並みのた
3.黒 豆
んぱく質と脂肪が含まれる。
日本産と比べると大きさは小粒。日本産
ゆでたものを刻み和え物にしたり、生野
の小豆を一回り大きくしたサイズ。煮ると
菜として食べられる。しっかりとした食感
色は薄くなり、味も淡白。
とほろ苦さは日本人にも人気。
10時間以上水に浸し使用する。「黒豆の
ココナッツミルク汁粉」など主にデザート
終わりに
に使われる。
タイは年間100万人以上の日本人が訪問
する国ですが、その街の状況、食事情につ
タイならではの豆(写真)
いては、日本ではあまり知られていないよ
左上:(1)タイ産インゲン
うに思い、現状を気づく限り報告させてい
右下:(2)四角豆
ただきました。読者の皆さまの「タイ」に
左下:日本産インゲン
関するイメージ作りのお手伝いになれば幸
いです。
(1)タイ産インゲン
/英:green(yard) long beans
- 49 -
第 3 回「九州豆シンポジウム
~わが街・我が家・豆の味~」を開催
西部穀物商協同組合 前理事長 平 田 大三郎 はじめに
1.シンポジウムの概要
豆の魅力を知ってもらい、もっと豆を食
今までのシンポジウムは、講師の講演と
べてもらいたいと、西部穀物商協同組合で
主婦や料理研究家を交えたトークショーで
は、第3回「九州豆シンポジウム ~わが
構成してきましたが、今回は、シンポジウ
街・我が家・豆の味~」(後援:農林水産
ムと呼んでいますが、講師を1人に絞り、
省、(財)日本豆類基金協会、長崎新聞社)
話だけではなく、会場で料理実演を採り入
を、平成21年9月12日(土)、長崎県佐世
れたワンマンショーになりました。これは、
保市三浦町アルカス SASEBO で開催しま
今までのアンケートの声を参考に、「百聞
した。
は一見にしかず」参加者の方々に目で見て、
当初計画の定員150名に対し、参加希望
舌で味わって頂くことで、豆料理をより身
者 が 多 く210枚 の 整 理 券 を 発 行 し ま し た
近に感じ、チャレンジして欲しいとの狙い
が、当日は、生憎朝からのが雨にも拘らず、
があったためです。
190名を超す熱心な来場者を迎え、盛況と
会場には、3台の大型スクリーンを設置
なりました。
し、カメラワークは料理研究家にお願いし、
参加者は、講師の話や、ポイントを捕らえ
- 50 -
た画面を見ながら、熱心にメモを取られて
いました。
また、当日のメニューには、地元食材も
多用して欲しいと講師にお願いしたため、
お客様には、より親しみを持っていただく
ことができたようです。
講師の上柿元勝氏は、フランスやスイス
で修業の後、神戸ポートピアホテルのグラ
ンシェフ、ハウステンボスホテルズ総料理
⑤枝豆の冷たいスープ バジル風味
長、ホテルヨーロッパ総支配人を歴任され、
の5品で、講師は、その中の①~④までを、
その間、内外の皇族や著名人の晩餐会を担
レシピに従って、ユーモアを交えた解説で
当してこられました。現在は、長崎市内
会場の笑いを誘いながら、手際良くプロの
で「パティスリー カミーユ」のオーナー
技を披露しました。
シェフのかたわら(因みに、カミーユは講
また、材料については、必ずしもレシピ
師のフランスでの愛称)、日本周遊の豪華
通りでなく、むしろ違った手持ちの豆を使
客船での料理教室、NHK を始め TV の料
うなど、食感や味のヴァリエーションを楽
理番組講師を務めるなど、幅広く活躍中で
しむ様にとのアドバイスもありました。
す。
講演中は、講師自ら調理途中の鍋や食材、
更には調味料を客席の中まで持って回り、
2.講演内容
参加者は、熱の通り具合や香りを、間近で
パンフレットで紹介されたのは、
体感でき、豆の魅力を再確認されたようで
①大豆とお魚ハンバーグ カレー風味
す。
②金時豆のベーコン煮込み
さらに、休憩時間には、地元で活躍中の
③西海豚と小値賀産ピーナッツごろも揚げ
ミュ-ジシャンによるフルート演奏でリフ
④大豆ときのこ類のスープ パセリ風味
レッシュを図るなど、お客様には、舌と目
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満足された様子が伺えました。
家路につく人々の手には、お土産の豆の
小袋(白花豆、金時豆、大豆、ひよこ豆)
と豆料理のパンフレット類がしっかり握ら
れ、きっと今夜の参加者の食卓には、豆料
理が並んだことでしょう。
3.今後の取り組み予定と課題
と耳とで楽しんでいただいた講演会でした。
西部穀物商協同組合では、豆をより身近
そして圧巻は、熱々の「大豆ときのこ類
に感じ、食べていただこうと、3年前から
のスープ」のサービス!
各県持ち回りで「九州豆シンポジウム」を
講師のご厚意で、こちらの希望をはるか
開催しており、次回は熊本市での開催を予
に超える量を、大勢のスタッフの方々に、
定しています。
講演と並行して別室でたっぷり作っていた
会を重ねるごとに、参加者の意見も参考
だいたので、参加者は思わぬご馳走にあず
にしながら、内容に工夫を加えていますが、
かり、舌鼓を打ちながら、豆料理を作る意
特に今回は、IH 器具をご提供いただいた
欲が一層湧いたようです。
九州電力のご協力に感謝します。多くの会
質疑応答では、参加者からの様々な質問
場では、火気や水道の使用に制約があるた
に講師が丁寧に答え、中でも、乾燥豆の戻
め、どこでも簡単に料理実演を行える訳で
し方については、北海道から参加いただい
はありません。
た産地問屋の方から、お湯を使う方法など
また、衛生上の問題から、試食品の提供
プロも知らない裏技を教えていただいた時
には、保健所の指導を求められることがあ
には、思わず拍手が起こるほどでした。
りますが、今回は、講師が大勢のスタッフ
予定を30分もオーバーしたにも拘らず途
をそろえて、講演と同時並行で調理できた
中中座する人もなく、閉会後の会場には、
ため、問題をクリアすることができました。
今日の試作品をカメラに収める人、感想を
最後に、このシンポジウムの開催に当
語り合う人など、美味しい香りと心地良い
たっては、前記の後援団体はもとより、当
興奮の余韻が漂っていました。
日のお茶やパンフレットをご提供いただい
アンケートも85% の回収率で、その4割
た、全農福岡農産事務所及びホクレンを始
以上に今日の催しに対する感想・希望、そ
め、ご協賛いただいた各団体に感謝申し上
して提言などが書き込まれており、皆様の
げます。
- 52 -
平成21年度豆類産地懇談会・
第58回豆類生産流通懇談会報告
全国豆類振興会 事務局長 川 北 壽 彦 平成21年度豆類産地懇談会・第58回豆
類生産流通懇談会が、平成21年9月10日
(木)、北海道十勝管内音更町で開催されま
換が行われ、盛況裡に終了しました。
以下、基調報告と意見交換の内容につい
て、概要を報告します。
した。
当日は、道内はもとより全国から、豆類
に関係する生産・流通・加工・輸入等の業
界関係者、更に行政・試験研究機関等も含
めて約90名の方々が参加されました。
午前中の作況視察は、快晴に恵まれ、ホ
クレン帯広支所担当者の案内により、芽室、
帯広川西、更別の3地区の豆類栽培圃場で、
熱心に豆類の生育状況を調査しました。
午後の懇談会は、はじめに畑中会長の主
小豆圃場を視察する参加者
催者挨拶があり、次いで、来賓の農林水産
省生産流通振興課の東野課長補佐及び(財)
Ⅰ 基調報告
日本豆類基金協会の伊藤常務理事(当時)
(1)産地情勢
からご挨拶を頂きました。基調報告では、
ホクレン農業協同組合連合会 小林雑穀
産地情勢、海外情勢及び消費地情勢につい
課長
て、3人の方から報告があり、意見交換
本年の豆類の生育状況は、当初から天候
(パネルディスカッション)では、(社)北
が不順で、平均気温は平年に近かったもの
海道地域農業研究所特別参与の黒澤不二男
の、日照不足、多雨の傾向で推移し、降水
氏の司会により、「国産豆類の需要拡大に
量の影響で圃場間あるいは地域間のばらつ
向けた取組」をテーマに、5名のパネリス
きが多くみられた。
トと特別報告者の参加の下に活発な意見交
平成21年9月1日現在の生育は、大豆が
- 53 -
2日遅れ、小豆と金時が3日遅れとなって
けは、昨年中国産の加糖餡にトルエンが混
おり、着莢数はいずれも少ない状況にある。
入していた事件があり、その代替として輸
9月当初での生産見通しについて、各豆類
入が増加している。更に2009年産の各国の
の作況状況とそれを踏まえた供給量につい
生産状況や価格の動向が述べられた。
て説明がなされたが、湿害・病気発生の圃
場があり、生育も遅れていることから、今
(3)消費地情勢
後の天候、特に秋が早く来ることを心配し
全国和菓子協会 藪専務理事
ている。いずれにしても、生産側として量
①和菓子の需要動向
と質の安定が図られる年となるように祈っ
ている、と報告された。
和菓子の生産金額は、バブル景気の崩壊
後、2005年までは減少傾向が続いていたが、
その後僅かながら増加に転じ、2008年は
4,109億円で、前年より1%増と3年連続
(2)海外情勢
雑穀輸入協議会 田所副理事長
で増加している。一方、洋生菓子は10年前
2007年から2008年にかけて、世界の主要
に比べ8%減少し、和菓子より減少率は大
穀物の価格が急騰したが、昨年の中ごろか
きい傾向にある。
ら急落し、いずれの穀物も4割から5割程
和菓子が増加傾向にある理由は、
度下落している。このため、穀物の輸入業
・和菓子店での購入実績では、1回当たり
界では、昨年の調達コストの乱高下による
の購入金額は減少しているものの、客数
影響を大きく受けている。
は増加傾向にあること。
豆類の輸入状況については、2008年まで
・製パン企業や大手流通産業などの異業種
の品目・国別の統計資料に基づき、品目ご
からの和菓子への参入が相次ぎ、若い客
とに説明があり、ほとんどの豆類は前年よ
層など新たな客層の掘起しにつながって
り輸入量が減少している。しかし竹小豆だ
いること。
・消費者において生活文化に密着した需要
が根強く、また、主原料である豆類の健
康性への理解度が深まっていること。
・和菓子店間の競争激化が個性化のある商
品や品質の向上を目指す企業の増加に結
び付き、消費者の支持が広がっているこ
と。
こうした傾向は、東京都内の百貨店にお
ける和菓子の取扱状況にも変化を及ぼして
懇談会会場風景
おり、大手百貨店が和菓子への積極的な取
- 54 -
組を行った結果、売上げの増加が報告され
ることは、当面は機械生産の和菓子に限定
ている。
されるとしても、大きな脅威ともいえる。
②異業種の和菓子産業への参入
一方、客層の拡大という点では、新しい客
異業種参入の中で目立つ動きとなったの
層が生まれる可能性が大きく、販売チャン
が、セブン - イレブン・ジャパンの参入で、
スの広がりにつながるというという見方も
本年6月に「七色茶屋」と名付けた和菓子
できる。
シリーズを東北から東海までの地域8,100
以上、堅実に推移している和菓子業界で
店で一斉に売り出した。5種類の和菓子
はあるが、昨年後半からの世界同時不況の
(団子、豆大福、わらび餅、冷やしぜんざ
影響はかなり大きなものがあり、特に贈答
い等)で、徐々に品揃えを増やしていく意
品と手土産の需要は再び減少の傾向をみせ
向であり、価格は120円~260円で売られて
ている。
いる。売上げは好調で、特に注目されるの
そうした中で、業績を伸ばしている企業
は若い客層へ広がりが見られる点である。
もわずかながら見受けられ、それらの企業
③セブン - イレブン・ジャパンの和菓子参
の特徴は「商品力」のある品揃えをしてい
入の持つ意味
ることが挙げられることから、消費者の選
流通大手は、ポスシステムなどにより商
択の目が一層厳しくなっていることがうか
品の販売動向については特に敏感で、販売
がえる。
商品についてデータに基づく販売に力を入
れている。その中で和菓子について、自社
Ⅱ 意見交換
ベンダーでブランド「七色茶屋」を立ち上
(社)北海道地域農業研究所 黒澤特別参与
げてまで和菓子を取り上げていることは、
のコーディネーターの下、5名のパネリス
流通産業にとって和菓子が魅力ある商品で
トとの間で、「国産豆類の需要拡大に向け
あると判断しているものと考えられる。
た取組について」を大テーマとして、意見
注目すべき点は高品質を目指しているこ
とであり、製造小売りを中心とする和菓子
業界全体としては、更に自社製品の品質向
上を図ることが大切になってくるとみられ
る。
和菓子店は、従来取扱商品が多岐にわた
ることや、その技術習得に一定の年数が掛
かることから、新規参入が難しい業種の一
つに挙げられていた。その中で、一挙に
8,100店もの店が一斉に和生菓子を販売す
- 55 -
コーディネーター・パネリストの方々
交換は、第1部 安定的な豆類の生産供給
金時類は需要量を見ながらバランスを取り、
に向けた取組、第2部 安定的な豆類の需
大豆については国産大豆志向が高まってい
要拡大・確保に向けた取組、第3部 今後
ることと、国の政策、水田・畑作経営所得
の豆類の需要拡大に向けた対応の3部に分
安定対策も入り、需要に見合った生産をき
けて進められた。
ちんと作っていくという考えで取り組んで
いる。
第1部 安定的な豆類の生産供給に向けた
取組
○十勝農業試験場作物研究部 島田主任研
○ホクレン農業協同組合連合会 小林雑穀
究員
課長
小豆及び菜豆の育種戦略について、資料
北海道豆類の生産動向として、21年間の
に基づき説明がなされた。
作付面積の経緯を載せた資料に基づき説明
小豆は、現在北海道で10品種が優良品種
がなされた。小豆は平成2年産がピークで
として採用されており、最近では「きたろ
40,400ha、以降は減少し、3万 ha 前後で
まん」と「とよみ大納言」が伸びてきてい
推移してきたが、平成18年は需給の関係か
る。
ら22,800ha に急減している。
育成中の有望系統として、道央以南向け
作付面積の誘導については、北農中央会
の十育155号、158号と早生で網走・上川北
が中心となり、畑作物の作付指標が産地に
部向けの十育159号がある。
提示されている。輪作体系の維持・確立を
今後の主要な育種課題は、6つあるが、
大前提に、豆類全体で6万 ha を目安にし
特に重点を置いているのが①生育初期、開
て、小豆、いんげんは、自由流通品で、需
花期耐冷性の強い品種の開発、②長胚軸で
給と価格が連動していることから、この2
耐倒伏性、エリモショウズ並みの収量性を
品目をまず決め、大豆については、6万
持つ省力・良質・多収品種の開発、③皮の
ha から小豆・いんげんを引いて、国の政
柔らかい品種育成をめざした選抜の3課題
策などを考慮して決められている。
である。
菜豆のうち、金時類については、特に
○北海道農業協同組合中央会畑作農業課 黄化病に極めて強い十育 B78号、B79号、
平田考査役
B80号の有望系統が出ている。それと秋ま
関連して、北海道の畑作物の作付指標を
き小麦の前作にこだわらない農家向けには、
設定している北農中央会の平田考査役から
やや熟期の遅い極多収の品種の育成を目指
補足説明がなされた。北海道畑作4品目全
している。
体で約30万 ha の作付があり、豆の位置づ
手亡類では、機械収穫に適するよう草
けは6万 ha としている。その中で小豆・
型を改良した十育 A57号を育成しており、
- 56 -
コンバイン収穫適性のある品種育成を目指
事
している。
日本は大豆文化が世界で最も発達した国
更に、手亡では大粒で煮熟時に皮切れが
で、大豆料理のバリエーションは非常に多
少ない品種や新規需要拡大が望めるサラダ、
い。ところが、料理の中でその他の豆を使
グラタン等の調理用に適した品種の開発を
うことは非常に少ない。世界にはいろいろ
進めている。 な豆料理があり、新しいパターンの豆料理
の研究を業界でも持って頂きたい。
○日本製餡協同組合連合会 今村副理事長
今育種の話を聞いていて、豆の皮の柔ら
第2部 安定的な豆類の需要拡大・確保に
かさの話があったが、我々も以前からそれ
向けた取組
を要望している。丹波の小豆と北海道の小
○今村副理事長
豆との違いは、製餡にすれば格段に北海道
製餡業界は、現在全国で500社余りと最
の小豆の方がおいしいが、なぜか値段は丹
盛期の3分の1位に減少している。京都に
波の方が3倍も高い。その違いは、丹波小
おいても和菓子屋の減少から、昭和40、50
豆は口に皮が残らないが、北海道の小豆は
年代に比べ製餡量は半分以下と大きく減少
口に残る。そのしゃこしゃこ感がなくなれ
している。現状は製餡業だけで生計を立て
ば、北海道小豆は小倉餡としての利用価値
ているところは非常に少なくなっている。
がもっと出てくるものと感じている。
しかし、京都市内の同業者は、有名な暖簾
の下で商売しており、大手の加工を引き受
○全国調理食品工業協同組合 水上理事
けたりして現在でも1軒も減っていない。
今一番困っているのは、皮が割れる現象
京都の菓子屋さんも良い商品を作っている
で、機械化が進むとともに目立つように
所は生き残っている。
なっている。コンバイン収穫機の調整とか、
日本には伝統文化、和菓子における季節
貯蔵中に豆を冷やさないなど皮が割れない
感があり、月々の季節感のある菓子が売ら
ようにする努力をして頂きたい。
れ、我々業界もその時期は忙しくなってい
また、北海金時は皮が堅いという評価だ
た。しかし、今はそういう雰囲気がなく残
が、レトルト対応の製造には北海金時がベ
念に思っている。消費拡大するには、この
ストと感じている。後作の関係からか面積
日は何々を食べる日だと決めて、業界挙げ
が増えないが、北海金時を増やす努力をし
て大々的に PR していければ効果があるの
て頂きたい。
ではないかと思っている。
会場からの発言として、
○水上理事
○全国落花生協同組合連合会 竹村常任理
日本人は、煮豆を箸でつまんで食べるこ
- 57 -
とから、粒形は大きい方がよいと思ってい
また、北海道では、1999年に全国の豆を
る。
扱っている若者に集まっていただき、「北
先程言われた世界の料理ということもあ
海道豆類需要拡大青年会議」を始め、隔年
り、当社でもいろいろ試みており、今豆を
毎に5回開催し、豆の需要拡大などについ
使ったスィーツを考えている。豆一個一個
て話し合っている。一つの業界、一つの業
ではなく水羊羹みたいな形態とかコンソメ
種で考えても難しいので、色々な人が知恵
やゼリーの形とか、そのような取組をして
を持ち寄って話していくことが大切で、今
いる。
日のような機会が望ましいと思っている。
また今、低糖の人工甘味料的なもので低
カロリーにした老人食用の煮豆などを試み
第3部 安定的な豆類の需要拡大・確保に
ており、介護施設等で出始めている。ソル
向けた取組
ビットやアスパルテームなどを使って少し
○(財)日本豆類基金協会 伊藤常務理事
甘みを感じさせるような、糖尿病患者向け
豆類基金協会の最大のテーマは豆の消費
や老人向けの商品も少しずつであるが、伸
拡大、需要拡大だと受け止め、40年間色々
びていくよう努めている。色々努力はして
活動を実施してきた。4年前に消費拡大宣
いるが、現状はなかなか即効性のあるもの
伝事業を今後どのように効率的にやってい
は見あたらない。
けば良いか検討するために、畑中さんを座
長にして知恵者の方々に集まって頂き、議
○藪専務理事
論を進めて方向性を出して頂いた。今それ
先程、業者が減少し、業界が衰退してい
に沿って一生懸命消費拡大の事業に取り組
るとの話があったが、衰退と淘汰とは違う
んでいるので、その一端を紹介して参考に
と思っている。業界全体がしぼんでいくと
して頂きたい。
きには淘汰が進むが、良いものを作ってい
(1)豆類の需要促進方策の分野
る店は残っていく。全体の需要を見通し、
1つ目は、消費者への直接の啓発の分野
お客様のニーズがどこにあるかをきちんと
で、2つ目が、子供の頃から食べてもらう
見ていくことが大事だと思う。
ために、学校給食・食育への分野がある。
3つ目が、料理の分野に何とか食い込めな
○全国穀物商協同組合連合会 梶原理事長
いかということで、外食、中食産業に食い
穀商連では、日本豆類基金協会の助成を
込むことをやっている。更に、新しい分野
受けて、全国各地で豆の消費拡大宣伝事業
で何か需要を開拓できないかと考え、調査
を実施しており、イベント参加などそれぞ
研究や研究開発を行っている。
れの支部ごとの具体的な PR 事業について
報告がなされた。
(2)需要促進方策
媒体別に分けると、1つ目は、各種媒体
- 58 -
による豆情報提供で、雑誌広告(栄養と
ると、北海道の消費量が最少となっており、
料理、週刊文春、オレンジページ)と TV
何故かわからないが、ある意味では今後の
パブリシティ(レディス4など)がある。
伸び代がある、これから増やせる分野とし
2つ目が、消費拡大イベント等の実施で、
て見込めるのではないかと思う。
その一つに地域豆シンポジウムがある。今
(4)今後の需要喚起方策
年は北海道豆類振興会の協力で北海道豆シ
ヒントとして、消費拡大の重点は、まず
ンポジウムを開催した。また、九州では今
消費者への啓発・普及は積極的にやるべき
年3回目の九州豆シンポジウムを長崎で開
ことで、実需分野での有用な情報提供も更
催した。それから、毎年各豆業界の方に参
に進める必要がある。
画頂いて、農林水産祭の実りのフェスティ
その時の、訴求対象の重点については、
バルに豆のブースを設け、啓発展示と豆団
やはり子育て世代の女性、それと児童生徒
体による販売会を開催している。
とか若い人になる。別の切り口として、健
3つ目が、学校配布用冊子の作成で、小
康・福祉部門は、外国の例を見ても取りあ
学校用副読本、学校給食レシピ集、食育事
げるべきと思う。
例集を豆の観点でまとめている。
訴求内容としては、一つは、豆を食べる
4つ目が、新分野開発のための調査研究
と元気になる、きれいになりますよと訴え
で、新需要開発を目指した公募型研究とし
る。それから、生活習慣病の予防につなが
て、栄養や農学の先生だけでなく医学部、
るとまでは言えないが、生活習慣病と豆の
薬学部の先生にも応募頂いており、機能性
役割はかなり接点が出てくるのではないか
の研究などで新しい知見が出ている。食品
みたいなことがある。
加工の関係では例えば味噌とか焼酎、パン
一つのたたき台として、報告させて頂い
などに挑戦してもらっている。更に、健
た。
康・福祉分野での豆類需要の把握の調査も
行っている。
○ 梶原理事長
(3)需要拡大
需要拡大について3点提案したい。一つ
問題点は何かということで、1つは、料
は国産の需要を上げるためには、輸入を減
理への豆の利用で、外国では豆が料理に沢
らしていくしかないが、ネックになってい
山使われているので、それへの挑戦は価値
るのは価格の問題で、これをクリアする方
があるものと考える。
法を解決していかなければならない。その
2つ目は、年齢層別で豆を食べている人
ためには単収を上げて、輸入品に対抗する
を見ると60代は多くて、若年層は豆の消費
力をつける必要がある。
が少なく、由々しき問題と思う。
2つ目は、食育などの推進が大切で、医
3つ目は、豆類の地域別摂取量を比較す
療とか福祉など他の業界とも手を組んで、
- 59 -
豆を PR していく必要がある。豆を使った
皆さんが取り組んでいることも継続的に頑
新製品を開発して、出来たものを業界挙げ
張っていくことは大切だと思っている。
てバックアップして売っていく。そうすれ
それから、外国では豆を沢山食べている
ば新製品も出てくるのではないか。
のに、日本では何で豆を主食のように食べ
3つ目は流通の変革の中で、農家から直
ないのかという話がでました。これは一言
結するようなところがあるが、豆を売って
で言うと必然性がないからです。外国人が
いく人がいなくなるが、競争や PR などの
豆を食べる大半は、基本的にエネルギー源
部分がなくなり、もっと販売するとか豆を
となる炭水化物の摂取のために食べている。
PR する人材を確保し、育てる必要がある
日本人は米が主食であり、副食的に食べる
のではないかと考えている。
のは甘く煮たものなどになってきた経緯が
ある。
○ 藪専務理事
外国のように豆料理を増やすのは難しい
今、パネリストの皆さんや、日本豆類基
感じはするが、料理が多様化している中で、
金協会から需要拡大の取組についていろい
料理の中に豆を使わせるのは、是非ともト
ろ報告がなされたが、それが継続的に行わ
ライすべきことと思っている。健康という
れていくことが非常に大事だと思っている。
キャッチフレーズでも良いから、中食への
昭和53年から55年頃、新聞で和菓子は食
販売、あるいは家庭の中での豆料理を増や
べると太るとずいぶん叩かれた。和菓子協
していく努力は絶対に必要と思う。
会ではそれに反発を感じ、健康と和菓子の
全国豆類振興会では、「豆を使ったパン
シンポジウムを20年間位繰返し開催してき
コンテスト」とか、「豆!豆!料理コンテ
た。更に「健康のしおり」「人生と和菓子」
スト」、「豆を使った和洋菓子コンテスト」
などの栞をずっと配布し続けてきた。その
を行ってきた。パンに豆を使ってもらおう
結果、今和菓子はどちらかというと健康的
とコンテストを始めた時、薄ら笑いで見て
なお菓子と言われるようになっている。
いた人達がいたが、今パン屋に行くと豆を
話の中に、ヒット商品が出来ないか、良
使ったパンが数多く見られるようになって
いアイデアはないかという話が出ていたが、
いる。洋菓子に豆をというのもパティシエ
企業は生きるためにすでに必死で知恵を出
から応募が沢山あるが、彼らのうち少しで
している。それでもヒット商品は容易には
も豆を使った洋菓子を出してくれるように
できない。出来たとしてもすぐに消えてし
なると新しいチャンネルが拡がってくる。
まう。本来あるべき良いものを継続的に出
需要拡大は一朝一夕には出来ないもので、
していくことが大事であり、既存商品を伸
地に足が着いた形で継続的にやっていくこ
ばすことの大切さが先ずあるのではないか。
とが一番求められていると考えている。
その上で、いろいろなアイデアを出して
- 60 -
○ 黒澤コーディネーター
理の良さを確認しているが、それが実際に
非常に力の入ったお話しの中に刺激され
家庭料理の中に入っていっているかの検証
る点が多々あったと思う。先に出た話の中
が足りないのではないか。地について拡
で、現象に対する見方の問題で、業者の軒
がっているのだろうかという確認が必要で
数が減っていく現象について、衰退してい
はないかという感想を持った。
くというマイナスの見方でなく、強いもの
に収斂しているという見方があるのかと目
その後、更に会場から質問・意見が出さ
から鱗が落ちた部分があった。それと、北
れたが、最後に、黒澤コーディネーターが
海道の豆の消費が最低だということで、注
まとめとして、実需者と生産者は、ある意
意を喚起されたが、伸び代があると受け取
味では価格を媒介にして、利害が相対立す
れば北海道にとっては嬉しいことと思う。
るという側面がある。しかし、運命共同体
北海道で豆類シンポジウムなどをやって、
という部分があり、その運命共同体が結び
一般の消費者を含めて沢山の人を集め、大
つきを更に強くして、その向こうに控える
変良い評価をいただいている。北海道では、
消費者とどう対峙していくかということは
今農業を宣伝する森崎博之という若いタレ
大きな課題だと思う。今日の議論、意見を
ントがおり、農業番組を仕切って北海道農
参考にしながらそれぞれの立場でお考えい
業の PR 役として活躍している。色々な分
ただく、今日はそういう意味での認識を共
野のあらゆる人材を活用することも求めら
有できた機会であったと思う、と総括され、
れているのではないか、この手の啓発、普
予定した時間を過ぎ、議論は尽きない感が
及も大事だと思っている。
あったが、懇談会を終了した。
シンポジウムに出席した消費者は、豆料
- 61 -
豆・餡・洋菓子コンテスト
全国豆類振興会 事務局長 川 北 壽 彦 全国豆類振興会では、平成18年から20年
考された10名について、平成21年10月4日
まで「豆を用いた和洋菓子コンテスト」を
(土)東京製菓学校(東京都新宿区)にお
開催してきました。このコンテストには、
いて、実技審査による最終審査会を開催し
プロとして活躍する和菓子・洋菓子の製造
ました。最終審査に残った10名が90分に制
技術者から毎年多数の応募があり、和洋菓
限された作業時間の中で作品製作に取り組
子業界からも新製品開発の意欲増進に貢献
み、競技終了後直ちに審査を行い、別記の
したとの評価がされるなど成果がありまし
とおり入賞作品を決定しました。
たが、当初予定した3回でこのコンテスト
審査委員は、次の3名の方が務められま
は終了となりました。
した。
しかし、既に豆・餡を主原料としている
中村 勇 東京製菓学校 校長
和菓子業界はともかく、洋菓子業界におい
加藤 進 二葉製菓学校 校長
ても今後“豆と餡”を用いた洋菓子の広が
藪 光生 全国豆振広報 PR 委員長、
りが大きくなるものと期待され、また、商
全国和菓子協会専務理事
品開発の上での魅力も大きいと考えられま
その後表彰式に移り、全国豆類振興会畑
す。そのため、平成21年度は洋菓子業界に
中会長の挨拶に始まり、入賞者の発表、賞
おいて「豆及び餡」を原材料の一つとして
状の授与、審査員からの審査講評があり、
着目し、新製品を研究してもらうために、
その後の懇親会ではお互いの作品を賞味し
新たな試みとして洋菓子業界を対象とした
ながら交流が図られました。
「豆・餡 洋菓子コンテスト」を開催するこ
最優秀賞の松見衡さんは、インタビュー
ととしました。
に応え、実家がお菓子屋で前から豆に興味
平成21年5月から8月にかけて、全国の
があったことから、今回このコンテストに
洋菓子製造技術者、製菓学校の教員等を対
応募しました。レンズ豆のオレンジ色を活
象に、豆・餡を用いたオリジナルな洋菓子
かしたいと考え、きらきら輝く彗星をイ
の募集を行いました。8月末までに73作品
メージして透明感のある形にして、チーズ
の応募があり、書類による第一次審査で選
のムースに合う餡として色味のきれいなう
- 62 -
ぐいす餡と小倉餡を使用して製作したとの
頂いたパティシエの方々を含め、洋菓子
ことで、今後も和の素材の豆・餡を取り入
業界における豆の活用方法の研究が進み、
れた洋菓子に取り組んでいきたいと話され
豆・餡を使った新しい洋菓子商品が出現し
ています。
てくることが期待されます。
このコンテストをきっかけとして、応募
賞
氏 名
都道府県
作 品 名
最優秀賞
松見 衡
東京都
La comete ~彗星~
大 賞
豊川 和美
兵庫県
レンズ豆のモンブラン
金 賞
川邊 努
東京都
小さな秋(Le petit automne)
〃
眞砂 大輔
兵庫県
山吹
〃
金田 尚子
東京都
白花豆のソフトバスク
技術優秀賞
高田 信和
東京都
彩豆
〃
羽田 一雄
大阪府
TANBA ~丹波黒豆のクラシックショコラ
のチョコミルフィーユ仕立て~
〃
渡邉 泰史
東京都
Engadiner aux MAME
〃
金澤 恭兵
北海道
豆のティラミスロール
〃
山下 晋悟
福岡県
ひよこ豆のギモーフ
実技審査で作品製作に取り組む最優秀賞と大賞受賞のお二人
松見さんの作業を見守る審査員
最後の仕上げをする豊川さん
- 63 -
最優秀賞受賞作品(La comete ~彗星~)
大賞受賞作品(レンズ豆のモンブラン)
表彰式で挨拶する畑中会長
インタビューを受ける松見さん
- 64 -
落花生の作況調査
(財)全国落花生協会 専務理事 板 野 徹 今年も(財)全国落花生協会主催の下
馬鈴薯との輪作で落花生を作付しています。
に、本年産落花生の作況調査と需給懇談会
栽培の責任者の説明では、今年は播種直後
が、平成21年9月14~15日の2日間、農林
の天候が低温・多雨で初期生育は抑制され
水産省始め落花生主産県の行政・研究普及
ましたが、8月以降は好天に恵まれ、また
部門の担当者、生産者、産地及び消費地の
適度の降雨もあったことから生育は回復し、
加工業組合関係者、輸入商社関係者等約50
着莢数は平年並みとのことでした。2ヵ所
名が参加して執り行われました。これは生
目の牛久市女化町ほ場は、品種はナカテユ
産、流通、加工、輸入の各部門の情報を交
タカ、マルチ栽培の10a 当たり株数は5,900
換し、需給の安定化を図ることを目的とし
株、ニンジン、馬鈴薯との輪作で作付して
て毎年実施しているものです。また日頃国
います。両ほ場とも掘り取った株を見た限
内の産地を見る機会の少ない方、これから
りでは、莢の総数は多く、肥大も良好との
扱う商品の作柄や品質を直に確認しておき
印象でした。
たい方、その他産地の情報を得たい方等に
とって良い機会でもあります。
3ヵ所目の千葉県富里市十倉ほ場も毎年
の調査している地域のほ場で、品種は千葉
14日に行った作況調査では、バス1台で
半立、5月下旬播種の生分解性マルチ栽培
茨城県下のほ場2ヵ所と千葉県下のほ場
で10a 当たり株数は5,000株とナカテユタカ
1ヵ所の落花生の掘取り調査、引き続き農
に比べると株数は少ないですが収量は見劣
協系列の加工場の視察を行いました。
りしません。生分解性マルチは単価(22千
円/10a)が普通マルチに比べて3倍近い
つくば市の百家ほ場は毎年継続して調査
ですが、フィルムを除去する作業が省略で
している農事組合法人つくば農産のほ場で、
きますので普及しつつあります。今年はこ
品種はナカテユタカ、5月中旬の播種でマ
の地域も比較的天候に恵まれて作柄は平年
ルチ栽培の10a 当たり株数は6,900株、白菜、
並みと見込まれています。現在の落花生の
- 65 -
作付は、農家の意識の中では一般に野菜作
現地ほ場の調査に引き続き、八街市文違
の中での輪作体系の1作物として、或いは
にある関東商事株式会社の落花生加工場を
農地を荒廃させないためのカバークロップ
視察しました。生憎と収穫直前であるため、
として位置づけられています。
工場は機械施設の操業はしていませんでし
たが、原料落花生の受け入れから加工、検
落花生栽培拡大の隘路は機械化の遅れと
査までの各種設備について説明を受けまし
も言われます。耕運・整地・畝立て、マル
た。装備、清掃などの点で行き届いている
チ張りは機械を駆使しますが、播種は人力
点は個人有の加工場に比べて差があるよう
で行います。大豆用の播種機もあります
です。
が、大豆と落花生では豆の形が違いますの
で送り出しがうまく機能しないためにほと
15日は千葉市内で需給懇談会を開催しま
んど使われていません。収穫に当たって落
した。協会から農林水産省統計に基づいた
花生独特の根切り作業は小型の機械で行い
近年の生産動向の紹介があり、続いて産各
ますが、掘取りとほ場内乾燥のための島立
県から本年産落花生の作柄について説明が
ては人力作業であり、かなりの重労働で
ありました。中期的にみて生産の減退基調
す。落花生は機械乾燥には馴染まないと言
が続いているうえに、公式統計の削減に
われ、1週間程度の島立て乾燥に引き続
よって落花生の毎年の生産数量の把握が困
き、ほ場に野積みして長期の自然乾燥をし
難となってきている実態があり、これに代
ますが、このための寄せ集め、積み上げ作
わる各県独自の試験場内ほ場や作況調査ほ
業も全て人力で行う重労働です。野積みで
場での調査データが重要となってきていま
1ヵ月程度乾燥して豆の水分が10%程度に
す。今年は新品種「おおまさり」の茹で落
なると脱莢します。この作業は稲作用の脱
花生製品が一般に市販されることとなって
穀機を改良した脱莢機で行いますが、何分
おりますが、新品種であるためにまだ栽培
にも乾いた泥の付いた植物を機械処理しま
農家には作りにくいとの声もあるようで、
すので土埃が舞い上がり、ひどい労働環境
栽培面積は約20ha で販売数量も全国に行
の中での作業になります。これらの作業を
き渡るとまでは行かないようです。この他、
一貫して機械で処理するための研究開発は、
主産県がそれぞれの実情に応じて実施して
マーケットの規模が小さいために機械メー
いる生産振興、消費拡大等の対策事業、加
カーも国の研究機関も魅力を示さないのが
工業団体が行っている小学校向け啓発活動、
現状です。このため協会では今年度から国
安全マニュアルの策定、自主表示に関する
の資金と千葉大学工学部の支援を受けて掘
検討状況等の紹介がありました。
取り・島立て作業を一貫して実施できる機
械の試作開発を行っているところです。
引き続き落花生輸入商社から、主要な輸
- 66 -
入先国の本年産落花生の作付、作柄等に関
からの原料落花生の輸入は再開されたもの
する情報が紹介されました。中国山東省の
の、安全な減農薬モデル栽培農家の産物に
大粒種は概ね前年並みと見られています
限定されていることもあってその数量は以
が、遼寧省の小粒種は昨年に比べて作付が
前に比べると極めて少量です。また原料用
1割以上減少しているとのことです。米国
の小粒種も中国以外の地域への依存度が高
は、本年産は面積、収量ともに昨年に比べ
くなってきているとのことでした。
て約3割の減少となっています。バージニ
ア、ノースカロライナは面積が29%、生産
これまで長らく落花生の総需要量は、む
量は35%の減少、南東部のアラバマ、フロ
きみ換算でほぼ12万トンで推移してきまし
リダ等では面積が27%、収量は30%の減少、
たが、中国産原料の輸入が一時停止した
南西部のニューメキシコ、オクラホマ、テ
平成19年以降は減少傾向で、平成20年は
キサスでは面積は36%、収量は37%の減少
9万4千トンとなっています。これは需要
と言った状況が予想されています。南アフ
の減退と言うよりも、大粒種、小粒種とも
リカ、オーストラリアは昨年に比べて生産
に関税割当数量に残枠を生じている実態が
は増加すると見込まれていますが、パラグ
示すように供給不足を表していると見てい
アイ、アルゼンチン、インドは減少が見込
ますが、加工業にとっては大きなコスト
まれています。特に南米は歴史的な干魃に
アップ要因であります。また小売の段階で
見舞われており、パラグアイの輸出は皆無
は安価な輸入原料製品が乏しくなり、高価
となる状況です。
な国産品が少量提供される状況となれば、
需要そのものの減退に結びつく可能性も大
落花生加工業団体からは、中国産原料落
きく、輸入元の多元化による安定供給を図
花生の輸入一時停止を挟む時期を経た業界、
ることが喫緊の課題ではないかと考えられ
小売現場の状況の紹介がありました。中国
ます。
- 67 -
豆類基金
コーナー
カナダ豆類事情に関する調査結果の概要
(財)日本豆類基金協会
専務理事 伊 藤 洋
(財)日本豆類基金協会では、第45期の海
このため、カナダにおいて豆類は、小麦、
外豆類事情調査を平成21年7月5日から12
大麦、カノーラ、トウモロコシに次ぐ5番
日までカナダを対象に実施しました。私も
目に重要な農作物となっており、作付面積
この調査団の一員として参加しましたので、
で豆類が約7% を占めるまでに至っている。
その概要を報告いたします。
生産地域で見ると、いんげんまめはオン
タリオ州、マニトバ州で主に栽培され、え
1.カナダにおける豆類の生産・流通・消
んどう、レンズまめ、ひよこまめはサスカ
チュアン州で主に栽培されている。また、
費事情
(1)豆類生産の概要
我が国へ輸出される小豆、手亡は、オンタ
カナダにおける豆類(大豆及び落花生を
リオ州において契約栽培されている。
除く。)の作付面積は、世界各国への輸出
の伸びに対応して、1980年以降急速に増加
(2)豆類輸出の概要
し、2008年にはその30倍以上にも当たる
カナダ産の豆類は、生産量の70% 以上が
244万 ha に達している。これに伴い、生
世界140ヶ国へ輸出されている。現在では、
産量も増大し、2008年で480万 t と豆類全
カナダは、レンズまめ、えんどう、ひよこ
体ではインド(1,340万 t)に続く世界第2
まめの世界最大の輸出国となっている。
位の生産国となっており、豆の種類別では
えんどうが世界第1位である。
品目別では、いんげんまめは、生産量の
約85% が輸出され、主に米国、欧州向けで
第1表 カナダにおける豆類生産の推移(1995~2008年)
いんげんまめ
えんどう
レンズまめ
ひよこまめ
計
1995
94
536
303
1
1,098
収穫面積(千 ha)
2000
2004
2006
181
123
178
1,340
1,244
1,261
703
714
516
482
39
129
2,188
2,126
2,084
2008
128
1,617
652
44
2,441
(資料)カナダ農務省
- 68 -
1995
203
1,545
432
1
1,962
収 穫
2000
261
2,864
914
388
3,754
量(千トン)
2004
2006
218
372
3,097
2,520
916
630
51
163
4,298
3,685
2008
266
3,571
920
67
4,824
第2表 カナダの豆類の主要輸出先国(2006年) 順
位
1
2
3
4
5
いんげんまめ
国名
輸出量
米国
102
英国
68
イタリア
23
日本
22
オランダ
14
えんどう
国名
輸出量
インド
896
中国
251
スペイン
169
バングラ
110
アラブ首長国
38
レンズまめ
国名
輸出量
インド
130
アラブ首長国
82
アルジェリア
70
パキスタン
61
コロンビア
54
単位:千t
ひよこまめ
国名
輸出量
パキスタン
17
ヨルダン
15
インド
13
イタリア
8
サウジアラビア
6
(資料)カナダ統計局
ある。えんどうは、生産量の約65% が輸出
豆類消費は、以前は他の欧米諸国同様に少
され、主にインドを始めとしたアジア、南
なかったが、近年、増加傾向にあり、豆類
米の食用向け、欧州の飼料向けである。レ
の大量消費国であるブラジル、メキシコ、
ンズまめは、生産量の約70% が輸出され、
インドとほぼ同様の水準にまで達している。
主にアジア、中東、南米、欧州向けである。
こ の 点 に つ い て、 今 回 の 調 査 の 際 に、
ひよこまめは、アジア、中東、欧州、南米
Pulse Canada の担当者に質したところ、
等に輸出されている。
豆類の消費量が伸びているという事実はな
カナダの豆類の輸出が伸びた要因として
いし、米国とほとんど変わらないのではな
は、①栽培技術の改善、品種改良や市場調
いか、恐らくは生産量から輸出量を差し引
査に注力し、カナダの気候・土壌に適した
いた国内需要量を人口で除したものを1人
レンズまめ、えんどうの生産を促進したこ
当たり消費量(Per capita consumption)
と、②穀物委員会が品質基準を制定し、基
として算出したものであり、飼料需要も含
準に適合した良質な豆が流通していること、
まれているのではないかとのことであった。
③輸送システムが整備され、輸出港への輸
送が容易なこと等が挙げられ、この結果、
2.主な訪問先での調査概要
世界で最も競争力のある豆類生産国に成長
<マニトバ州>
(1)Pulse Canada
した。
近年は、各国消費者の嗜好に合った新し
カナダ各州の豆類生産者や流通関係者の
い豆類の開発、挽き割り、製粉等の加工技
団体の結集の下に1997年に設立された、比
術の開発、健康訴求素材としてのマーケ
較的新しいカナダ全域を統括する豆類の生
ティング促進等により、産学官連携の下で
産・販売に関しての支援組織。
世界各地への輸出を意識した豆類関連産業
の発展に努めている。
それまで各州の生産者組織が国内・海外
を含め個別に販売促進活動を行ってきたが、
国際市場では戦略上不利な面も多く、生産
(3)豆類消費の概要
が伸び悩んでいたが、本組織の設立以降、
FAO の統計によれば、カナダにおける
統一的・横断的な活動を進めたことにより、
- 69 -
近年になって、急速に輸出が拡大するなど
明があった。
市場拡大に大きく貢献してきている。
先方から Pulse Canada の組織構成と業
(3)CIGI(カナダ国際穀物研究所)
務内容、カナダにおける豆類の生産及び輸
先方から研究所の具体的な業務として、
出状況、本年産の生産見込み、豆類の効用、
①世界中の農業関係者を招待し、カナダ産
カナダにおける豆類作の強み(冷涼な気候
穀類(豆類を含む)に対する教育プログラ
で病害虫が少ない、政府の指導で厳しい栽
ムの実施、②カナダ国内の関係業界に対し、
培基準、減農薬栽培が徹底等)等につき、
農産物加工等の技術指導の実施、③豆類を
説明があった後、意見交換した。
含む穀類の加工技術等に関する調査・研究
豆の需要開拓の方策として、健康によい
の実施、④以上の事業活動成果に関する広
こと、環境に優しいことを訴求すべきとの
報等につき、説明があった後、同建物内の
説明があった。また、ここ数年のカナダに
研究施設を見学。
おける急速な生産及び輸出の伸びは、消費
レンズまめを配合したパスタの試験では、
国のニーズに対応したアイテム(商品形態
混入により栄養バランスが良くなり、10%
も含め)の開発、カナダに適応した品種育
までであれば嗜好的にも大丈夫との結果が
成の成功したことが大きいとの説明があっ
得られたとのこと。
た。
(4)マニトバ大学リチャードソン機能性
(2)CGC(カナダ連邦政府カナダ穀物委
食品・栄養補助食品センター
員会)
州立のマニトバ大学付属の研究センター。
カナダ連邦政府農務省の傘下にある組織
機能性食品や栄養補助食品に関する研究を
で、本部はウイニペグ市に置かれている。
推進している。州の予算のほか、個人・企
職員は組織全体で700人、そのうち200人が
業からの委託研究費や寄附金で運営されて
本部職員、穀物の生産地、積み出し港等全
国に500人が配置されている。主要業務は、
カナダ産穀物の品質管理と品質保証である。
先方から穀物委員会の組織の概要、カナ
ダの穀物輸出における役割、近年の穀物検
査や穀物の品質をめぐる動きについて、説
明があった後、意見交換した。
この中で、穀物検査については、食品の
安全性と輸出品の品質保証を確保するため、
今後とも政府機関による対応が必要との説
- 70 -
豆粉利用研究の説明を受ける調査団
おり、研究開発も産学官連携が基本で、新
すると、販売されている豆の種類や加工品
食品の実用化を意識した研究開発課題を設
のアイテム数は限られており、特定の品目
定している。
に限られていると感じた。
先方から、カナダの大学における研究開
例えば、乾燥豆の袋詰めではほとんどが
発プロジェクトの設定方法、本センターの
2kg か750g 入りのものと量り売りのもの
その中で役割、本センターの研究領域(農
に限られ、大型の紙袋(5kg、10kg)入
学、医学、薬学、栄養学の学際的研究の推
りのものはなかった。表記は英語と仏語の
進)、商品化まで目指した研究開発の状況、
みで、米国で多く見かけたスペイン語表記
最近の注目すべき研究開発の成果等につき
は皆無であった。
説明があった後、施設内を見学しながら意
また、缶詰はほとんどが水煮缶で調理済
みの Baked bean や Bean & Rice 等は見
見交換した。
豆類については、ひよこまめ、レンズま
かけなかった。
めの粉を練り込んだマフィンや豆類の繊維
分を添加したヨーグルトの商品化をめざし
<サスカチュワン州>
(1)サスカチュワン大学 CDC(穀物開発
た研究開発を実施中とのことであった。
センター)
(5)スーパーマーケット(ウイニペグ市
郊外)
最初にセンター内の施設(穀物受入・試
料発送施設、資料乾燥施設、種子貯蔵庫)
カナダ全域で1,400店舗のスーパーマー
を見学した後に意見交換した。
ケットを展開するカナダ最大の小売チェー
豆 類 試 験 地 の ほ 場 面 積 は150エ ー カ ー
ン Loblaw Companies 社 の 1 部 門 で あ
(60ha)。豆類育種の実績として、これま
る Real Canadian Superstore。 店 舗 と
で普及品種として80品種を育成し、いずれ
し て Real Canadian Superstore の ほ か、
も Non GMO とのことである。
Superstore、Loblaw Superstore 等 の 名
CDC の組織や事業活動の特徴として、
称が使い分けされており、カナダ全域で
①日本の大学、農業試験場、普及センター
107店舗を展開している。
に相当する3分野を統合した機能を有し、
ウイニペグ市郊外のケナストン店におい
教授は現地に出向き、農家に直接技術指導
て、豆類及びその加工品の販売状況を調査
をする等合理的なシステムであること、②
したが、店長からの写真撮影の許可が出な
育成した登録品種については、州内の生産
かったため、目視で製品毎の販売価格等を
者に無料で許諾していること(これが優良
確認・記録しつつ、調査を行った。
品種の早期普及と国際競争力の強化に貢
乾燥豆の袋詰め及び水煮缶詰が販売され
ていたが、米国での2年前の調査時と比較
献と自負)、③州内1万8千戸の生産者は、
販売価格の1%をサスカチュワン豆類生産
- 71 -
者協会に拠出しているが、CDC は、この
資金の一部を研究費として受託して生産現
(3)豆類集荷選別施設(サスカン・ホリ
ゾン社(アバディーン))
場のニーズに対応した試験研究を推進して
サスカトゥーン市から北東約40km に位
置する Aberdeen の郊外にあるサスカン・
いること等の説明があった。
ホリゾン社を訪問。レンズまめ主体の集荷
(2)サスカチュワン大学農学部
選別施設。
サスカチュワン大学は、サスカトゥーン
施設の作業工程は、受入計量→一時貯留
市にある州立大学で1907年創立で、敷地面
→調製・選別→貯蔵→袋詰・出荷で構成さ
積は3,000エーカー(1,200ha)、うち農学部
れている。出荷先としては、中東方面への
関係は1,400エーカー(560ha)。
輸出が中心で、処理能力は、120~150t /
当日は、農学部(College of Agriculture
and Bioresources (AgBio))を訪問し、本
日であり、この地域の集荷選別施設として
は小規模なものとのことであった。
館内にある農作物の品種育成に利用されて
施設運営の考え方としては、この施設で
いる最先端の大規模環境制御室(ファイト
は在庫は持たない方針であり、注文に応じ
トロン:大小100室)を見学した。
て出荷を要請することとし、貯蔵は生産者
本大学では、求められれば日本向けの豆
類の品種育成に取り組むことも可能との発
が分担する方式を採用しているとのことで
ある。
言があった。この施設は、産官学や生産現
場との連携の成果の賜であり、担当教授は、 (4)サスカチュワン豆類生産者協会(SPG)
常に具体的な研究開発成果を求められてい
るとのことである。
先方から生産者協会の組織の概要、サス
カチュワン州の豆類の生産状況、輸出及び
価格の動向について説明があった後に意見
交換した。
説明の内容は、以下のとおり。
①本協会の経費の大半は、州内の豆類生産
者18,000人からの拠出(庭先価格の1%)
でまかなわれており、その予算規模は年
間6~7億円である。
②サスカチュワン州は、南部の米国との国
境地帯が乾燥地帯で、北部は湿潤地帯で
あり、サスカトゥーン市周辺は中間地帯
サスカチュワン大学農学部本館
に位置し、豆類の収量は乾燥地帯の2~
3倍の単収の確保が可能である。
- 72 -
③サスカチュワン州では、えんどう、ひ
施 設 の 処 理 能 力 は、4,000~5,000t / 年
よこまめ、レンズまめが生産されてお
と小規模であるが、高品質で付加価値の
り、特にひよこまめとレンズまめは、カ
高い豆類のみを販売する戦略(この地域
ナダ全体の生産量のほぼ全量(それぞれ
の他の業者が取り扱っていない日本向け
99% のシェア)を生産しており、えんど
Marrowfat 等に照準(アルバータ州のえ
うも77% を占めている。また、えんどう
んどうの銘柄は Yellow 又は Green が主
は、欧州で小麦・大豆への転換で生産が
流))をとっている。
減少しているのに対し、カナダでは依然
として生産が増加傾向にある。
施設内の作業工程は、受入計量→調製・
選別→一次貯蔵→袋詰・パレット積載→出
④サスカチュワン州全体の豆類の生産能力
荷で構成されている。えんどうについては、
は700万 t と推定されるが、現在の生産
トラック便でカルガリーまで、さらに鉄道
実績は約400万 t で、今後さらに生産の
便でバンクーバーまで輸送し、コンテナ船
拡大が可能である。
で日本へ輸出しており、出荷から日本到着
⑤収量水準は、豆類で100ブッシェル/エー
まで10日間を要する。
カーに対し、小麦で30~50ブッシェル/
技術的な課題としては、気候的に乾燥し
エーカーであり、豆類は有利性があり、
ているため、豆類の水分含量が9~10%と
輪作体系上も不可欠な作物である。
過乾燥となり、割れ豆が多く発生すること
⑥カナダは近年世界最大の豆類輸出国に躍
り出ており、輸出量は世界全体の26% と
(この場合、割れ豆は区分けして飼料用と
して出荷)がある。
1/4を占めている。
(2)えんどう栽培ほ場(グラッシーレイ
<アルバータ州>
ク市)
Vauxhall から、さらに南東に40km の
( 1) 豆 類 集 荷 選 別 施 設( コ ロ ン ビ ア・
Grassy Lake に あ る Columbia Seeds 社
シード社(ボークスホール市))
カ ル ガ リ ー 市 か ら 南 東 に 約170km の
Vauxhall にあるコロンビア・シード社を
の契約栽培農場で調査。概要説明の内容は
以下のとおり。
訪問。えんどう主体の集荷選別施設。
栽培ほ場は、128ha(800m ×800m ×2
本社は、1964年創立で、その後、現社長
面)、灌漑施設(半円型スプリンクラー灌
の Joerg 氏(ドイツ出身)が1997年に買
漑(半径800m))が完備。栽培品種は、え
収し、えんどう、いんげんまめ等の乾燥豆
んどうの Marrowfat 銘柄の”Rhino”(英
の生産・販売に取り組んでいる。現在、日
国で育成されたコンバイン収穫が可能な短
本及びタイの製菓企業にスナック菓子の原
桿小葉型(セミリーフレスタイプ)の新品
料豆を供給している。
種、品質もよく、耐病性に優れている。)。
- 73 -
播種は、作業幅20m のシーダーで、播
ている。
種量は60粒/ m2(6万粒/10a)とかなり
この結果、この地域の農家におけるいん
の密植だが、倒伏している株はほぼ皆無で
げんの栽培規模は、10年前の80ha /戸か
あった。収穫は、直刈りコンバイン(稀に
ら現在は200ha /戸に拡大。
茎葉枯凋剤を散布)で、収穫後の乾燥は必
要なし。単収は、現段階で400~500kg /
10a 程度が予測されるとのこと。
(4)いんげんまめ等栽培ほ場(アルバー
タ豆類生産者協会会長農場)
経営規模は1,500ha で Jan Bennen 会長
(3)豆類集荷選別施設(バイテラ社(テー
バー市))
と弟の2名で共同経営。ほ場は、全てパイ
プラインによる灌漑施設が完備されており、
カナダで最大規模の総合穀物企業
で、本社はサスカチュワン州リジャイナ
年間40ドル/ ha(使用料)を国に支払っ
ているとのこと。
市(Regina)。これまで M&A を繰り返し、
多角化・大型化を推進してきた。
作物の作付割合では、バレイショが最
も大きく1/2(770ha)、次いで小麦が
豆類関係では、アルバータ州内に3ヶ所
1/4(390ha)、残りがカノーラと豆類。
の集荷選別施設を保有。Taber の施設では、
カノーラは、全てF1採種栽培で種苗企業
豆類の銘柄としてこの地域で生産が可能な
からの委託契約による。豆類については、
Pinto、Great Northern、Small Red を中
輪作体系上必要不可欠な作物と認識してい
心に Black、Pink、Yellow も取り扱って
る。
いる。出荷量は、主力3銘柄で2万 t、その
他の銘柄で5千 t、計2万5千 t である。
調 査 し た 豆 類 ほ 場( い ん げ ん ま め の
施設内の作業工程としては、受入→粗選
Pinto, Great Northern)の概要は以下の
→貯蔵→選別→保管→袋詰め→出荷で構成
とおり。
されている。粗選の際に出た夾雑物は農家
<豆類ほ場 No.1(Pinto)>
に返却している。購入重量から除外し、生
ほ場面積―60ha、播種日―5月15日、播
産者への品質管理の指導を徹底している。
種量27,000粒/10a、低温、寡照により現
荷姿は、50kg 袋詰め又は1t のフレコン・
在生育7日遅れ。
バルクの形態で出荷・輸出する。
<豆類ほ場 No.2(Great Northern)>
アルバータ州南部は、灌漑施設さえ整備
ほ場面積―60ha、播種日―5月17~18日、
すれば、日照量、気温などはいんげんの栽
播種量27,000粒/10a、低温、寡照により
培条件に適しており、加えて主力作物であ
現在生育7日遅れ。
る小麦やカノーラなどとの輪作体系を保持
するためにも豆類は必須の作物と認識され
- 74 -
(5)カナダ農務省ボークスホール育種試
験地
テルまで出向いていただき、会議室で意見
交換。内容は以下のとおり
カナダ農務省(Agriculture and Agri-
バンクーバー事務所は、カナダの2ヶ所
Food Canada)のカナダ全域に設置され
ある事務所(もう1ヶ所はトロント)の一
ている育種試験地の一つ。運営は5名体制。
つ。所長1名のみの体制で、現地人を数名
本試験地においては、アルバータ州、サ
採用して運営。
スカチュワン州向けのバレイショ、小麦、
主たる業務は、①対日投資の推進、②カ
カノーラ、豆類等の作物品種の商業栽培に
ナダ進出企業への支援、③カナダ情報の収
移行するための最終栽培試験を担当してい
集等である。
る。
対日輸出品のうち農産物としては、第2
この地域は、気候が冷涼で夏期が短く、
いんげんまめの生育期間が100~105日とカ
位の菜種油、第4位の豚肉、第6位の小麦、
第7位の大豆などが上位に挙げられる。
ナダで最も短い地帯であるため、栽培さ
最近の注目される動きとしては、バン
れている銘柄も Pinto、Great Northern、
クーバー市周辺で中国からの移民が天安門
Pink、Small Red、Black 等に限られ(White
事件や香港返還以降急速に増えていること
Pea、Cranberry、Navy、Red Kidney、
であり、中華街だけでなく、新興の衛星都
手亡等は栽培困難)ており、試験もこれら
市である Richmond(空港の周辺)では
の銘柄を対象として新品種育成をめざして
人口の8割を占めるに至っている。
いる。
カナダは、国土の広さの割に人口が少な
試験項目としては、耐候性(早生、耐冷
性)、耐倒伏性(機械収穫適性)、耐病性
く、労働力確保のため、移民には積極的で
あり、毎年40万人を受け入れている。
(茎疫病、菌核病)、均一性(品質)が中心
日本からの対カナダ投資のうち、農業・
である。シストセンチュウは、大豆栽培地
食品関係ではオンタリオ州へのビール会社
帯でない(低温で栽培不可)ため、全く問
(アサヒ、キリン)進出が大きなものであ
題となっていない。
る。ブリティシュ・コロンビア州では、海
最近の有望品種としては、Black 銘柄の
大粒系の Black Diamond が収量性、品質
産物の加工・販売のアズマ・フーズがある
くらいで案件は必ずしも多くない。
を兼ね備えた優良品種として挙げられ、今
後の普及が期待されている。
カナダの食文化については、アメリカと
ほぼ同じだが、カナダ料理といえるような
独自の料理はない。ただし、JETRO の食
<ブリティシュ・コロンビア州>
品展示会では、ワサビ入りのえんどうのよ
(1)JETRO バンクーバー事務所
うなピリっとした味に人気があり、米国の
事務所が手狭であるため、松岡所長にホ
食文化とは少し違うと感じている。
- 75 -
(ウイニペグ市でカナダ政府関係者に
ダの主要生産州における政府機関、大学、
「小倉あん入り最中」を試食してもらった
生産者団体等の豆類関係機関が一体となっ
ところ、皆びっくりしていたとの話をす
た取組が大きく寄与していることが分かっ
ると、)カナダ人は、ヌルヌルやネチャネ
た。
チャしたものが苦手で、例えば、ナガイモ
具体的には、新品種開発から農家への普
や納豆は全く受け入れられていない。豆腐
及指導、生産流通体制の整備、さらには海
の軟らかさがぎりぎりではないか。
外における需要ニーズの把握、新需要分野
ただし、最近、抹茶入りの飲料がコー
の開拓、各種の輸出促進活動に至るまで、
ヒーショップで人気になっており、日本人
多様な取組がなされている。また、関係機
経営の和菓子店も市内にあり、ものによっ
関の間の連携やネットワークも組織が小さ
ては売り込みも可能と思われる。
くて少人数で運営されているにもかかわら
ず、うまく機能していることが明らかと
なった。
3.調査結果のまとめ
カナダにおいては、近年、えんどう、レ
これは、今後我が国における豆類振興方
ンズまめ、ひよこまめ等の豆類の生産量が
策の検討に当たっても、大いに参考とすべ
急速に増加し、今や世界最大の豆類輸出国
きものと考えられる。
となったが、今回の調査で、これにはカナ
- 76 -
豆類基金
コーナー
雑豆需要促進研究情報収集事業
(平成 21 年度)の成果について
(財)日本豆類基金協会
企画調査部長 村 崎 史 郎
小豆、いんげん、そらまめ、えんどうな
血圧上昇の抑制作用とその制御機構を検
どの雑豆の需要促進を図るため、全国の大
討することにより、妊娠中の重要な疾患
学、試験研究機関の研究者を対象に、健康
である妊娠高血圧症候群およびその合併
食材としての優秀性や新利用法の開発、調
症における、薬物ではなく食品内有効成
理改善などに関する調査研究課題を募集し、
分による予防・改善の可能性を見出す。
委託研究を行う「雑豆需要促進研究情報
・調査研究の成果
収集事業」を(財)日本豆類基金協会では、
4年前から実施しております。
妊娠高血圧モデルラットに、水で戻し
た小豆(品種:エリモショウズ)の種皮
この度、平成21年度の調査研究6課題の
を乾燥粉砕した小豆種皮粉末(「ABSC」
調査研究成果が取りまとめられましたので、
と略称する。1g 当たり総ポリフェノー
概要を報告します。なお、調査研究成果の
ルを103mg 含量)を標準飼料に1%添
要約につきましては、当協会のホームペー
加した飼料を投与した群と標準飼料を投
ジ(URL:http://www.mame.or.jp/) を
与した群間での違いを比較する方法で試
ご覧下さい。
験を行った。
これまでの知見で高血圧モデルラット
調査研究1:健康維持・増進に関する研究
では、1%ABSC 含有飼料は血圧上昇抑
・調査研究テーマ
制が認められていたが、妊娠高血圧モデ
雑豆類ポリフェノールによる妊娠高血
ルラットを用いた本調査結果からは、1
%ABSC 含有飼料では血圧はやや低位を
圧症候群の改善作用の検討
示したが、顕著な血圧上昇抑制は認めら
・調査研究機関
青森県立保健大学健康科学部栄養学科
れなかった。しかし、妊娠高血圧ラット
助教 向井友花 他
の腎皮質で活性酸素消去系酵素の減弱を
回復させる傾向が認められ、ABSC は
・調査研究目的 雑豆類ポリフェノールによる妊娠期の
- 77 -
妊娠高血圧における酸化ストレスの軽減
に関与する可能性が示された。
抽出物、他の豆のエタノール抽出物は効
果がなかった。
また、小豆、うずら豆のエタノール抽
調査研究2:健康維持・増進に関する研究
出物は、高濃度脂肪酸負荷による脂質代
・調査研究テーマ
雑豆抽出物による脂肪肝形成抑制作用
謝系酵素及びそれらの発現調節を行う転
および脂質ホメオスタシス改善作用の検
写酵素の発現・活性化を正常状態に戻す
討
ように作用し、生体の脂肪代謝ホメオス
タシス改善効果を示すことが示唆された。
・調査研究機関
埼玉医科大学医学部基礎医学部門
生化学 助教 瀬尾誠 他
調査研究3:健康維持・増進に関する研究
・調査研究目的 ・調査研究テーマ
ヒト初代培養肝細胞を用いた in vitro
雑豆によるマクロファージ活性化を介
脂肪肝モデル実験系により、雑豆抽出物
が細胞内脂質貯留および脂肪滴蓄積を抑
した癌免疫賦活作用に関する研究
・調査研究組織 制する可能性を探り、さらに雑豆抽出物
熊本大学大学院医学薬学研究部
が核内受容体や転写因子など脂質代謝関
細胞病理学分野 助教 藤原章雄 他
連因子を調節する作用機構の解明を試み
・調査研究目的
る。
腫瘍組織内におけるマクロファージの
活性化を制御することで、腫瘍の増殖を
・調査研究の成果
6種類の雑豆(小豆、ささげ、白花豆、
抑制できることが知られている。そこで、
大福豆、大正金時、うずら豆)を用い
本研究では小豆やインゲン豆等の癌免疫
て、熱水とエタノールの各抽出液を調整
賦活作用を検討する目的で、それらに含
し、ヒト初代培養肝細胞を高濃度の脂肪
まれるマクロファージ活性化制御物質の
酸添加培地(リノール酸0.5mM)で培養
探索を行う。
すると細胞内に脂肪滴蓄積が観察できる
・調査研究の成果
in vitro 脂肪肝モデルに各抽出物を添加
マクロファージ(M φ)は、炎症惹
した際の細胞内の脂肪蓄積を観察・分析
起 性 の M1 M φ と 抗 炎 症 性 に 働 く M2
した。
M φに大別され、M2を M1に活性化さ
その結果、小豆、うずら豆のエタノー
ル抽出物は、脂肪滴蓄積を顕著に抑制す
せることで腫瘍の増殖を抑制することが
知られている。
るとともに、小豆で中性脂肪(TG)、う
材料として13種の雑豆(小豆、そら
ずら豆で中性脂肪(TG)と遊離脂肪酸
豆、紫花豆、えんどう豆、金時豆、緑豆、
(NEFA)が顕著に減少していた。熱水
- 78 -
シャチ豆、レンズ豆、うずら豆、ひよこ
豆、ささげ、白インゲン豆、とら豆)の
のカゼインを小豆タンパク質で一部置換
二次代謝産物を抽出して、M φの活性
(1/8、1/4、1/2)した飼料3種類、また、
化に及ぼす影響を調べた。その結果、2
カゼインの1/2を小豆全粒粉末で置換し
段階のスクリーニングにより、えんどう
た飼料の合計5種類の飼料を、ニワトリ
豆、とら豆抽出エキスは、M φの M2分
とラットに給与して内蔵脂肪蓄積抑制機
化を抑制し、M1に活性化することが示
能の調査を行った。
唆された。また、そのメカニズムとして、
その結果、ニワトリ、ラットともに、
えんどう豆抽出エキスは STAT 3の活
小豆タンパク質給与は、肝臓における脂
性化を抑制することで、M2分化を抑制
肪酸の合成抑制と分解促進により腹腔内
することが分かった。よって、これら雑
脂肪組織重量を減少させる可能性が示め
豆は、癌免疫賦活作用を有する機能性食
された。
材である可能性が示唆された。
調査研究5:マーケッティング、食文化・
食育に関する研究
調査研究4:健康維持・増進に関する研究
・調査研究テーマ
・調査研究テーマ
小豆タンパク質の肥満解消機能とその
からだもこころも豊かに育つ、雑豆食
機能発現の機構解明
育プログラムの提案
・調査研究組織 ・調査研究組織
神戸大学大学院農学研究科
武庫川女子大学生活環境学部
教授 長谷川信
食物栄養学科 講師 北村真理 他
・調査研究目的
・調査研究目的
小豆の新たな需要開拓と消費拡大を実
子どもとその保護者を対象に、食、運
現するために、内臓脂肪型肥満に基づく
動の両面からのあそびを取り入れたアプ
メタボリックシンドロームの解消、家畜
ローチで、雑豆に関する知識普及、消費
における飼料エネルギー損失(内臓脂肪
拡大をめざす食育プログラムを提案する。
を始めとする蓄積脂肪の多くが廃棄され
海外における食教育、運動あそびなども
るため)の抑制といった機能性を発揮す
活用し、従来の形にとらわれない方法を
る食品としての評価を高めるべく、これ
提案する。
まで見過ごされてきた小豆タンパク質が
・調査研究の成果
有する肥満解消機能を実証すると共に、
その機能発現機構を明らかにする。
小学校(3-6年生)を対象に雑豆に
関するアンケートを行った結果、小さい
ころから雑豆との関わり(目にする、触
・調査研究の成果
精製飼料(タンパク質源:カゼイン)
- 79 -
れる、口にするなど)が多いほど雑豆に
親しみを持ち始め、「雑豆を食べる、好
するために、DNA が断片化した加工品
きになる」という行動につながる可能性
でも判別できる種固有の DNA マーカー
が示唆された。また、米国での現地調査
を開発し、原料雑豆の種類と構成比を、
から、幼児教育おいて広く使用されてい
高い信頼性で定量的に検査する方法を開
るビーンバッグ(お手玉に似ているが、
発する。
大きさ、形、色合いは多様)は、幼児に
・調査研究の成果
とって手軽に安全に遊べる運動遊具であ
ることが分かった。
レトロトランスポゾンと呼ばれるすべ
ての植物に存在する遺伝子の性質を利用
以上を踏まえ、保育現場やイベント等
して、アズキであれば、実際に使われ
で簡単に活用できる子どもたちが雑豆に
ている品種(「きたのおとめ」、「エリモ
親しみ、身近な物と感じさせるよう、2
ショウズ」、「しゅまり」、輸入小豆等)
つの方向からアプローチした雑豆を使っ
のすべてに反応するが、アズキに近縁種
た食育プログラムを開発し、「からだも
のササゲを含めて、他の豆類には反応し
こころも元気に育つ、雑豆食育プログラ
ないアズキ検出用の DNA マーカーの開
ム」(A5判、50頁)の冊子として取りま
発を試みた。同様に、インゲン、ベニバ
とめた。内容は、食からのアプローチで
ナインゲン及びササゲについても、それ
は、「作る/食べる、「育てる」、「触れる
ぞれの豆類を検定できるマーカーの開発
/知る」、「楽しむ」、「親しむ」を基に日
を試みた。
常生活、保育の中で展開できる6つのプ
そ の 結 果、 レ ト ロ ト ラ ン ス ポ ゾ ン
ログラム、また、運動遊びのアプローチ
Tpv438は豆類の DNA の様々な場所に
では、ビーンバッグの特性等に加え、10
存在するが、そのうちの2ヵ所は、イン
種類の運動遊びから成り立っている。
ゲンの国内栽培品種には共通しているが、
ベニバナインゲン、ササゲやアズキには
調査研究6:その他雑豆の需要促進に効果
の高い研究
存在せず、インゲンを特異的に検出する
マーカーとして利用できる可能性が示唆
された。同様に、レトロトランスポゾン
・調査研究テーマ
雑豆製品における原料雑豆の種類と構
成比の定量的検査方法の開発
PHARE-1の2カ所の存在部位は、輸入材
料を含む試験したアズキの27品種すべて
に共通しているが、リョクトウ、ササゲ
・調査研究組織
岡山大学大学院自然科学研究科
などには見られなかったので、アズキ検
教授 田原誠 他
定マーカーとして利用できる可能性が示
唆された。
・調査研究目的
雑豆加工製品の成分表示の適正化に資
- 80 -
豆類基金
コーナー
神戸『食と健康』研究会の概要
(財)日本豆類基金協会
企画調査部長 村 崎 史 郎
はじめに
豆、いんげん、えんどう等の澱粉質が約
平成21年10月17日(土)に、神戸市の神
半分を占める豆と、大豆、落花生のよう
戸女子大学ポートアイランドキャンパスに
に脂質が多く含まれている豆に大きく分
て第11回神戸『食と健康』研究会が開催さ
けられる。
れました。本研究会は、主に栄養士の方々
② 豆は、他の作物に比べタンパク質の含
に糖尿病予防のための知識と実際を学んで
量が多いうえ、ヒトにとっての必須アミ
頂くためのものであり、今回は、神戸ビル
ノ酸であるリジン(お米のタンパク質で
マ会との共催で、健康に役立つ代表的な食
は少ないアミノ酸)が多く含まれ、米と
材として「豆」がテーマになっていました。
豆を一緒に食べることによって、アミノ
「豆」を中心に、この研究会の概要をご
酸バランスが向上する。みそ汁、豆腐と
紹介いたします。具体的には、参加者全員
ご飯といった日本の伝統的な食生活が大
で8種類の豆を使った「THE まめマメ
変優れていることを示している。
弁当」を食べながら、豆の栄養についての
豆は、カルシウム、鉄、カリウムなど
講演を聞く「ランチョンセミナー」が催さ
のミネラルが豊富であり、多くの人の食
れました。豆料理を味わいながら、豆の知
生活で、ミネラル不足が指摘される中、
識を得る、味覚、視覚、聴覚など5感を同
豆は必要な食材である。
時に働かせて体得する試みでした。
また、食物繊維が100g中17~19gと
多く含まれ、特に、ゆでると乾物換算で
食物繊維が増加するという特徴がある。
1.ランチョンセミナー「糖尿病予防のた
めの健康食生活 豆をもっと食生活に
これは、いわゆる「あん粒子」となって
遊離し、難消化性となっているためであ
」
加藤 淳(現北海道総務部主幹 前十勝
農業試験場)先生による、ランチョンセミ
る。
③ 大豆には、種々の生理活性物質が含ま
ナーの概要は次のとおりでした。
れているが、イソフラボンは、更年期障
① 食用に用いられる豆は約70種あり、小
害や骨粗鬆症、乳ガン等を予防・緩和す
- 81 -
ることが知られている。豆腐や味噌など
が配られ、美味しくいただきました。ま
の発酵によってより吸収利用が可能にな
た、参加者の皆さんからも好評でした。
る。特に、国産の東北、北海道産の大豆
この弁当のカロリーは885kcal、脂質は
に多く含まれている。
27.3g、炭水化物は104.4g、タンパク質
小豆には、ポリフェノールが多く含ま
は45.7g、塩分は3.04gで食物繊維は16
れている。ポリフェノールは、癌や老化
g以上でした。
の原因とも言われる活性酸素を除去する
THE まめマメ弁当のレシピは、神戸
成分で、輸入の小豆より、北海道産の
女子大学食堂の管理栄養士の市場さん、
「エリモショウズ」「しゅまり」といった
神戸女子大学岡田祐季さん、神戸ビルマ
品種に特に多く含まれている。ポリフェ
会の皆さんで開発されたものでした。
ノールは、動物実験の結果から血糖値上
昇抑制や血圧上昇抑制効果等が明きらか
3.健康デザートの提案と評価
になっており、人体実験でも中性脂肪値
-雑豆レシピ-
の低下傾向が確認されている。
糖尿病の方などを想定した健康に配慮し
たデザートが神戸女子大学岡田祐季さんか
ら提案され、また、実際に試食用に配布さ
2.THE まめマメ弁当
この研究会の参加者全員に、8種類の
れました。基本レシピに比べ、カロリーを
豆が調理された「THE まめマメ弁当」
半減させた白生あん入りの「フィナンシェ」
左のご飯から時計回りで順
番に料理を記します。
①青紫蘇香る青えんどうの
梅おかかご飯、②かぼちゃ
のいとこ煮(小豆)、③虎豆
とチキンのトマト煮、④金
時豆入りつくねハンバーグ、
⑤ ひ よ こ ま め の か き 揚 げ、
⑥白花豆サラダ(オレンジ
とかき揚げの間)、⑦レンズ
豆入り出汁巻き卵、⑧鰆の
手亡豆入り味噌焼き
- 82 -
(フランス風の焼き菓子)でした。いんげ
かける試みでした。豆の提供、レシピの開
ん由来の生あんが使われていましたが、舌
発等、神戸ビルマ会の積極的な関わりに
触りや味では分かりませんでした。砂糖も
よって、この企画が成功裏に終わったもの
スローカロリーシュガーが用いられ、脂質
と思います。
は4分の1、食物繊維は1.5倍でした。
また、参加者の皆さんには、後でご自身
で「豆」を味わって頂くためのお土産とし
おわりに
て、小豆、大豆各150g の詰め合わせ(提
健康という視点からみて、豆が食材とし
供:神戸ビルマ会)や、スローカロリー
て大変に優れた良いものであることは、広
シュガー(三井製糖)、北海道産小豆のあ
く理解されつつありますが、今回の取組は、
ずき茶とゼロカロリーの羊羹2種類(遠藤
栄養士の皆さんの、眼、舌、鼻に直接訴え
製餡)が配られました。
- 83 -
後 沢 昭 範
「知っておきたい食の世界史」宮崎正勝著
-バリゼーション〕。最後に60余冊に及ぶ
角川学芸出版、平成18年10月発行、
参考文献が紹介され、関心のある方は、そ
238ページ、552円
こから更に詳細な内容を知ることが出来ま
す。
さて、人が一生の間に食べる食料はおよ
そ50㌧とも言われます。スーパー、デパ地
下の食品売り場には世界各地の食材が所狭
しと並んで溢れんばかり…。食の世界は、
加工技術・保存技術の飛躍的な発展、流通
システムの革新、消費者の生活や感覚の変
化等が相まって、ますます多様化し、少な
くとも先進国では過剰なほどに豊かになり
ましたが、ここに至るには長い歴史と幾つ
かの大きな変革点がありました。
著者は元北海道教育大学の教授で、専門
著者は、食卓を“小さな大劇場”として
は前近代の国際交流史と世界史教育。世界
捉え、“食の広がりと変化”に人類の歴史
史に関わる著書多数で、本書と同じ角川文
を重ねて俯瞰します。食材と料理法から見
庫“知っておきたいシリーズ”で『味の世
る史劇は4幕。大きな歴史の流れの中で見
界史』、
『酒の世界史』なども手掛けています。
る食の変化はドラマチックです。また、こ
全8章。〔1:人類を生み出した自然の
れが歴史を動かしてもいます。何と言って
大食糧庫〕、〔2:農耕・牧畜による食のパ
も生存の必須要件ですから…。
ターン化〕、〔3:世界の四大料理圏の誕生〕、
第1幕は、約1万年前の農耕・牧畜の出
ふ かん
〔4:ユーラシアの食文化交流〕、〔5:大
現と土器の発明。…それまでの、もっぱら
航海時代で変わる地球の生態系〕、〔6:砂
自然の産物を捜して生か炙った程度で食べ
糖と資本主義経済〕、〔7:都市の時代を支
ていた狩猟・採集生活に較べ、農耕・牧畜
えた食品工業〕、〔8:低温流通機構とグロ
の出現は、穀物や畜産物の安定確保を可能
なま
- 84 -
あぶ
にしました。加えて、土器の発明は、保存
食の組み合わせの幅を一気に広めました。
は効くものの堅くて消化しにくい穀粒の煮
第3幕は18世紀以降の産業革命。…それ
炊きを可能にしたところに大きな意義があ
までは自給自足的社会で、農村が生産の場
ります。料理法の基本は〈生・加熱・発
でしたが、イギリスの産業革命によって都
酵〉ですが、土器の出現は柔らかい食べ物
市が生産の場となり、膨張する都市住民へ
とスープを生み出し、“料理革命”と言わ
の食料供給が大きな課題になります。文献
れます。
で見る当時の都市労働者の生活はひどいも
第2幕は15~16世紀の大航海時代。この
のですが、同時に、都市に膨大な食料を搬
時代、“コロンブスの交換”と言われるよ
入する輸送手段の発達、腐敗防止技術の開
うに、新旧大陸の間で大々的な動植物の移
発、食品加工の産業化なども進み始めてお
動と食材の交流が行われました。地球規模
り、それが都市の成立を可能にしました。
の大掛かりな生態系の変化が起こり、食文
また、富の集積とともに、世界の食材が集
化も大きく変容します。この時の変化は、
中するヨーロッパの諸都市では美食が追求
今、問題にされている外来生物の持ち込み
され、この時代に、今日のレストランなど
どころではありません。ヨーロッパ諸国は
も普及します。
プラントハンターを地の果てまで派遣して
この時期、世界の人口は、17世紀の推定
組織的に進めたのです。これによって旧大
6億人が19世紀半ばに12億人、20世紀半ば
陸にもたらされたのは、ご存じインゲン豆
には24億人と、加速度的に増加し始めます。
や落花生を始め、トウモロコシ、ジャガイ
第4幕は20世紀後半以降のハイテク革命。
モ、サツマイモ、キャッサバ、カボチャ、
…いわゆるハイテク革命とグローバリゼー
トマト、トウガラシ、ピーマン、カカオ(チョ
ションの流れの中で、食の世界では低温処
コレート)、パイナップル、パパイヤ、ア
理技術とコールドチェーンの発達、更なる
ボガド、パプリカ、バニラ…で、今更ながら、
輸送手段の発達などが目覚ましく、これと
その多さ、それもポピュラーな食材が多い
スーパーマーケットに見られるような大量
ことに驚きます。一方、新大陸へは、ムギ、
販売の方法が結びついて流通革命が起こり
コメ、各種の野菜、オリーブ、コーヒー、牛、
ます。「グローバリゼーションに食卓が組
羊などが持ち込まれ、大規模なプランテー
み込まれた。」と著者は言います。
ション開発の下で、ヨーロッパの食糧庫に
世界人口は更に膨張し、今や推定68億人。
作り変えられて行くことになります。更に
不謹慎かも知れませんが、もしこれが虫の
17~18世紀にはサトウキビがカリブ海で大
世界の出来事だったならば、人はこれを“異
規模に栽培されるようになり、それまでは
常発生”と言うでしょう。勿論、この背景
奢侈品だった砂糖が大衆化して紅茶やコー
には、品種改良・化学肥料・農薬・用水補
ヒーと結びつくとともに、料理の味付け、
給・開墾などの農業技術の発達による食料
- 85 -
生産の増大と、公衆衛生や医療の発達によ
ギャン展」。晩年の大作の画題「我々はど
る死亡率の減少があることは言うまでもあ
こから来たのか。我々は何者なのか。我々
りません。
はどこに行くのか。」です。考えさせられ
さらにファーストフード化の波です。現
ます。
代人の軽くて、テンポの速い生活変化に対
食の確保があって、初めて、それに見
応し、食の商品化は、簡便化路線をひた走
合った人口の扶養が可能になります。国レ
ります。ジャンクフードの席巻と相まって、
ベルで見れば、食料は国力の基、料理は富
食文化のアメリカ的な単純化と国際的な画
と文化のバロメーターです。食材の種類、
一化です。全否定はしませんが、健康管理
量、加工、保存、輸送、料理、それらの発
上も決して褒められたものではないでしょ
見、開発、普及が歴史を変えて行く様子が
う。その一方で、近年、それらへの反発と
本書から見えてきます。まさに食の歴史は
反省からスローフードもしくはそれ的な運
“大劇場”。第5幕はどんな展開になるので
動も広がりつつあります。家庭の味、地域
しょうか…?
の伝統的な食材と味、洗練された味覚、伝
ところで、「豆」のことですが、特に第5
統的な食材の生産などを守ること、人類の
章では、世に言う“コロンブスの交換”の
歴史が育ててきた食文化を守ることを主張
一つとして、“インゲン豆と落花生の大移
します。
動”が紹介されています。
また、視点を変えると、今日はダイエッ
16世紀初頭に、西インド諸島からもたら
トと飢餓の共存する世界でもあります。野
されたインゲン豆(fejiuolo)を鉢で栽培
生動物と同じように、人も長い進化の過程
したという記録がイタリアにあります。や
で、慢性的な飢餓状態を生き抜くために、
がてフィレンツェのメディチ家の娘がフラ
摂った餌は目一杯消化・吸収して体内に蓄
ンス国王に嫁いだ時、同行の料理人がイン
積する能力を身に付けています。先進国に
ゲン豆も持ち込んだと伝えられます。そし
見るように、慢性的な飽食モードとなれば、
て17世紀以降、ヨーロッパ各地でも徐々
当然、蓄積過剰で、肥満・成人病が問題に
に食卓に上るようになります。“消化に悪
なります。慢性的飽食などということは人
い”、“胃にもたれる”、いや“肥満のもと”
類史上、前代未聞の事態なのです。その一
等々、記録に散見する当初の評判はあまり
方、途上国では、政情の不安定や気象災害
芳しくありませんが、19世紀初頭、かのナ
等も重なって、慢性的饑餓に苦しむ人たち
ポレオンはこれが好きだったようです。何
が増えています。FAO によれば、暫く前
れにせよ、インゲン豆は次第にヨーロッパ
まではその数8億人と言われていましたが、
料理を代表するマメの座を獲得していきま
今や10億人です。
す。一方、中国への伝播の経路は定かであ
思い出すのは、今夏、日本に来た「ゴー
りませんが、明代に海のルートから持ち込
- 86 -
まれたのではないかと言われます。16世紀
「中世の饗宴」マドレーヌ・P・コズマン著、
の末、明の李時珍が表した『本草綱目』には、
加藤恭子他訳
インゲン豆の記載があります。今や中国料
原書房、平成元年5月発行、211ページ、
理では一般的な食材です。日本へは17世紀
2000円
に隠元禅師が伝えたとの伝承は有名ですが、
それはフジマメだったとも言われます。
落花生は、16世紀初頭に、ポルトガルの
奴隷商人が、奴隷の船中食料用としてアフ
リカ西海岸に持ち込んで広がり、一方、ス
ペイン人が南アメリカ西海岸からフィリッ
ピンに持ち込んで、さらに中国、日本、イ
ンド、マダガスカルへも伝わったと言われ
ます。その後、18世紀末に、奴隷貿易とと
もに、アフリカから再度アメリカに伝わり、
特に米国の南部で栽培が盛んになりました
『アーサー王物語』と言えば、中世ヨー
が、南北戦争の後は、帰還した北軍兵士達
ロッパ最大級の騎士道物語です。少年版を
によって北部でも“炒り落花生”を食べる
胸躍らせて読んだ記憶のある方もおられる
習慣が広がりました。さらに1890年に植物
と思います。King Arthur は5~6世紀
性油脂を使った健康食品として“ピーナッ
頃、まだローマ帝国の支配が残るブリテン
ツ・バター”が開発され、これが20世紀の
島にサクソン人が侵攻を繰り返した時代の
米国を代表する食材となります。
伝説的な王。物語そのものはかなりフィク
こんな具合で、他の食材や料理について
ションですが、モデルとなった人物は実在
も、歴史と絡む興味深い話が次々と続きま
したとされます。何世紀にも亘って語り継
す。
がれ、物語は膨らみ、本格的にまとめられ
たのは15世紀。王の物語と併せ、『円卓の
騎士』、『聖杯伝説』などの壮大な物語群が
存在します。その中のひとつ『ガウェイン
おい
卿と緑の騎士』は、王の甥 Sir Gawain が
謎の Green Knight との間で繰り広げる騎
いん ご
士道精神溢れる物語です。韻語調の古い英
語で難解とされますが、その中に登場する、
宮廷や城で催される数々の饗宴の様子は、
中世ヨーロッパの料理に関する考え方の源
- 87 -
泉とも言われます。
ごく表面的ですが、当時の饗宴なるもの
副題を「ヨーロッパ中世と食の文化」と
のおおよその様子だけでも垣間見てみま
銘打った本書は、この物語の饗宴部分に
しょう。
注目し、中世の食文化の視点からまとめ
まずは、饗宴のしつらいから…。広間の
た、やや専門色の強いものです。初版から
中央には、特別な客人と主人側の一段と高
は少々年数を経ていますが、普段、この種
いハイ・テーブルがあります。一般の客人
の本は私たちの目にあまり触れません。実
達はその両側に伸びる細長いサイド・テー
は、これも馴染みの古本屋で目に留まった
ブルに、身分の順に上座から座ります。そ
ものです。ここで登場する料理のレシピに
して最も重要な貴賓の前には豪華な容器に
は、種類は限定されますが「豆」も出て来
入った“塩”が置かれ、他の客人達は、塩
ます。興味深いので、敢えてご紹介しましょ
の下手(つまり下座)に座ることになりま
う。物語はコロンブス以前なので、新大陸
す。メイン・テーブルもしくは広間の中央
原産の豆は出てきません。
には、ワインなどが噴き出すテーブル・ファ
では、おもむろに中世ヨーロッパの宮廷
ウンテンが置かれ、また、クロスを掛けた
晩餐会へ……。
テーブルには、ワイン・ビール・暖めたリ
著 者 の コ ズ マ ン 女 史(Dr.Madeleine
ンゴ酒などを入れた水差しや細口ビン、ゴ
Pelner Cosman)は、医師であると同時に、
ブレット(盃)、少数の良く切れるナイフ
ニューヨーク市立大学の中世・ルネッサン
などが置かれます。でも、現在のように銘々
ス史の教授です。
皿が並ぶわけではありません。テーブルに
本書は5章から成りますが、〔1: 中世饗
置かれた大皿から、自分の好みの物を切り
宴のしつらい、もてなし、装飾菓子、メ
分けるのです。客人達は、時には自前のナ
ニューや素晴らしいこと〕、〔2: 孔雀、パ
イフ、ヤスリ、はさみ等を小さなバッグに
セリ、豪華なパイ〕、〔3: チョーサーの台
入れて持参しました。
所用の鶏と中世ロンドンの食品市場〕、
〔4:
次はテーブルマナー…。スープやプディ
水源、川、屋外便所、室内便所〕、〔5: 性、
ングにはスプーンが用いられ、肉などを大
下品できたないこと、罪、そして宗教心〕
皿から取り分けたり、時には口まで運ぶの
と続き、耳慣れないタイトルに、戸惑いと
に先の尖ったナイフが使われましたが、そ
異次元の世界をさえ予感させます。物語の
れ以外の料理の殆どは指で摘んで食べまし
筋を追うのではなく、そこに出てくる数々
た。このため、礼儀作法に則った“巧みな
の饗宴の場面の詳細な記述をベースに、多
指裁き”が、優雅なマナーとして何よりも
くの歴史的資料を引用し、当時の饗宴の様
求められます。銘々皿が無い代わりに、大
子や料理、更にその背景となる生活や思想
きな薄切りのパンで作った四角もしくは丸
などについて解説と考察を加えます。
い皿に各自が取り分けて食べました。この
つま
のっと
- 88 -
パン製の皿は、後でスープに入れて煮込ん
ても肉・鳥・魚のオンパレードです。調理
だり、外で待つ貧民に施されたりもします。
方法は肉・鳥を中心に殆どがローストで、
“指”はコースの合間と最後に洗います。
4
4
4
たまにシチューなど。魚ではベークドとと
4
さて、饗宴のもてなしですが、お祈りを
もにホワイトソース煮などが出て来ます。
済ませた後、身分の順に、香り付けした暖
デザートには果物・菓子が出ますが、野菜
かいお湯で手を洗います。トランペット
類が主役の料理は見当たりません。現存す
のファンファーレ、ドラムの轟きととも
る中世のレシピにもあまり載っていないよ
に、貴族の子弟によって、銀の大皿や深皿
うです。コースは果物かポタージュで始ま
に乗った料理が広間に運ばれます。彼らに
り、果物か、ウェハー・ワイン・イチゴにアー
とって、ここはマナーを学び、多くの要人
モンドミルクやスパイスを加えたデザート
を間近に見たり会話を耳に出来る修行の場
などで終わります。
なのです。大皿の料理は二人分ずつ盛られ
また、これらの料理のレシピですが、中
ていて、次々とテーブルに乗せられます。
世のレシピの殆どは計量や割合、タイミン
客人はそこから好みで取り分けます。その
グが書かれていません。それらは経験から
間も、楽師の奏でる音楽、即興詩人の歌、
割り出していたのだろうと言われます。
芸人の曲芸などが続きます。
さて、
「豆」を使った料理を捜して見ると、
コースとメニューですが、多くの饗宴は
数は少ないのですが、“イルカのエンドウ
“3本立て”のコースで、それぞれに7種か、
豆添え”、“小口切りの肉と豆の煮込み”な
12種か、15種の、肉か鳥、魚かシチュー、
ど、脇役として登場します。
あるいは甘いデザートがあります。ともか
豆類は、果物や野菜と一緒に扱われ、健
おびただ
く夥しい種類と呆れるほどの量のご馳走が
康に良いとされていたそうです。レタス、
絶え間なく運び込まれます。全部を食べる
キャベツ、人参、セロリ、ほうれん草、キュ
わけではなく、どれだけ用意されたか、そ
ウリ、ラディッシュ、リーク、アーティ
の豪華さと美しさを誇示するものとも言え
チョーク、チコリ、エンダイブ、赤カブ、
ます。
タマネギ等と混じって、乾燥したエンドウ
本書で紹介されているメニューは、とり
豆、採りたてのエンドウ豆、レンズ豆など
わけ豪華なものかも知れませんが、何れも
が登場します。
料理は40~50種類。肉では鹿、猪、豚、兎
一方、レシピではありませんが、中世の
…。鳥では鶏、鳩、鶉、雉、更に白鳥、青鷺、
食餌療法の本に「キャベツやエンドウ豆、
ひばり
く じゃく
白鷺、五位鷺、千鳥、雲雀、鶴、鷲、孔雀…。
たら
すずき
その他の豆類、果物は、お腹にガスの溜まっ
魚では、舌平目、鱈、鱸、八目鰻、鮭、鰊、
ている人は食べるべきではない。」とされ
穴子、鯉、蝶鮫、蟹、小海老…。変わった
ています。…成る程……。
ところではアザラシ、イルカ…。それにし
また、中世ロンドンの市場では、鶏、魚、
- 89 -
雉、オート麦、ハーブ、スパイス、蜂蜜な
理拝見の散策にお出かけ下さい。所々にあ
どと一緒に、レンズ豆などの豆類が売られ
るカラーの挿絵は中世の作品を使ったもの
ています。自給自足が中心の時代ですが、
で、当時の雰囲気をよく伝えます。中世の
町の市場でもかなり購入されていたようで
饗宴は「料理の豪華さと儀礼の中に、“神
す。
の恵みの豊かさ”と“人を破滅へと堕落さ
読むにつれ、高らかなトランペットの響
ね
うた
せる誘惑”とを、極めて芸術的に表現する
き、リュートやハープの音、即興詩を謳う
もの」と著者は言います。
吟遊詩人の声、そして客人達のざわめきが
さらに読み進めば、饗宴の裏方の姿、庶
聞こえるような気がします。今日の感覚
民の食事、聖職者の晩餐、台所、調理、食
からすれば、豪華と粗野と優雅が一緒に
材、食品市場、水道、下水…、そして価値
なった中世の饗宴……。興味を持たれた方
観、宗教心、闇、卑猥、粗野、魔の世界ま
しば
は、本書で、暫しヨーロッパ中世の宮廷料
む
で、剥き出しの中世が迫ってきます。
- 90 -
統計・資料
雑豆の輸出入通関実績 2009 年(7~9月期・豆年度計)
(輸入)
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(資料:財務省関税局『日本貿易統計』より)
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統計・資料
豆類(乾燥子実)の年次別作付面積及び収穫量(全国)
資料:農林水産省大臣官房統計部農林水産統計
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編 集 後 記
食文化が似ているのは、どの国までであろうかと思っています。中国、韓国、台湾は、日本
と似ているということを疑う人はいないと思いますが、これらの国以遠はどうでしょうか。こ
んな素朴な疑問も手伝ってタイ・バンコク在住の小林さんに「バンコクの食・豆事情」につい
て報告して頂きました。小豆餡が入れられているカノム トウキョウ(「東京菓子」という意だ
そうです。)が紹介されています。少なくともお菓子という点ではバンコクは、私たちと味覚
は似ているとみて間違いないようです。
バンコクでは、「東京菓子」という名前を付けるほどですから、味覚に共通性があるだけで
なく、「東京」という語がアピールする力を持っているということです。これは日本の食を普
及する上で大きな「強み」になります。しかし、小豆餡入りの和菓子が世界的に受け入れられ
ているかとなると話は別です。ヨーロッパ人に接する機会の多いひとに聞いたりした限りでは、
小豆餡入りの和菓子には抵抗があるようです。しかし、和菓子といっても小豆餡の入っていな
い、色彩豊かな和菓子は別で、土産などでは喜ばれるようです。事は和菓子のマーケティング
に関することですので、素人がこれ以上書くのは控えるべきでしょう。
この誌の編集を担当することになってから、できるだけ行政の方に原稿執筆をお願いし、最
新の施策や取組について情報を提供して頂くようにしています。今回は、総合食料局の吉沢さ
んに「食品業界の信頼性向上に向けた農林水産省・食品事業者等の取組」の執筆をお願いしま
した。ほとんどすべての食品事業者の方々は、食品の信頼性を損なわないよう、細心の注意を
払われておられるのですが、ごく一部の人が問題を引き起こし、そのことによってその会社だ
けでなく、その業界の信頼性を根底から崩壊させてしまします。全く残念なことです。報告し
て頂いていることを着実にしていくことが求められます。一方で何をしてはいけないのか、率
直、端的なメッセージという形にして伝えるとともに、仕組を構築していくことも求められて
いるのではないかと思います。人は、金が入るとか、儲かるということになると、「魔が差す」
ことがあると思います。そのようなことが起り得ることであると考えて対応策を練ることが必
要ではないかと思います。
最近、「協働」という言葉がよく使われています。「協働」、特に「官民協働」によって大き
な力を発揮するからですが、今一つ分り難いところがあります。そこで本誌で取り上げた協働
の例を二つ紹介します。一つは、佐々木さんに執筆していただいた「雑豆発酵ペーストを活用
した新規食品の開発」です。ここでは、北海道・十勝の地場企業と公的機関の協働による研究
開発で、分かりやすい例です。もう一つは、石川さんに紹介していただいた「千葉県野田市の
枝豆生産とまちづくりの活動」です。野田市の取組は、個々の団体や市当局がそれぞれ取り組
んでいるように見えますが、市役所や農協、商工会議所、NPO 法人、キッコーマン社、自治
会などが協働して枝豆の生産振興を図り、それを基に「まちづくり」を推進しておられます。
野田市は一度訪ねてみたい、そんな魅力を持った街のようです。 (谷口敏彦)
発 行
編 集
財団法人
日本豆類基金協会
〒107-0052
東京都港区赤坂 1-9-13
三会堂ビル 4F
TEL:03-5570-0071
豆 類 時 報
№ 57
2009. 12
FAX:03-5570-0074
財団法人
日本特産農産物協会
〒107-0052
東京都港区赤坂1-9-13
三会堂ビル3F
TEL:03-3584-6845
FAX:03-3584-1757
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