2009第年6月 91 号 英文学会通信 英 文 学 会 通 信 第91号 -日本大学英文学会- 発行:日本大学英文学会 〒156-8550 東京都世田谷区桜上水3-25-40 日本大学英文学部英文学研究室内 Tel (03) 5317-9709 (直通) Fax (03) 5317-9336 目 次 《ご挨拶》 ご挨拶-「愛」と「富」と「虚無」- ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 日本大学英文学会会長 寺崎 隆行 2 英文学科主任挨拶 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 日本大学文理学部英文学科主任 吉良 文孝 3 《エッセイ》 「生活と芸術-アーツ&クラフツ展」を観て ‥‥‥‥‥‥‥ 日本大学通信教育部教材課長 佐々木 健 四半世紀の年月を経て ‥‥‥‥‥‥‥ オークラアクトシティホテル浜松 (東京支社) 勤務 名倉 雅彦 人のこの世に生あるは、事を成す為にあり ‥‥‥‥‥‥‥ 日本大学高等学校英語科教諭 清水 陵司 「お遊びに終わらない小学校英語教育」を目指して ‥‥‥‥‥‥ 日本大学文理学部講師 池田 和子 大切にしていきたいこと-大学院生活を終えておもうこと- ‥‥ 日本大学理工学部講師 青木 啓子 4 5 6 7 9 《特 集》 私的回顧 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 金沢大学名誉教授 最上 雄文 11 英語学とわたし ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 日本大学名誉教授 川島 彪秀 12 《学会賞受賞》 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 13 《特別講演会報告》 ジョウアン ・ シャトック先生特別講演会報告 ‥‥‥‥‥‥‥‥ 日本大学文理学部教授 原 公章 13 《月例会報告・予定》 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 15 《新刊書案内》 新刊書案内など ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 16 《事務局・研究室だより》 退任挨拶 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 元日本大学文理学部助手B 有川 夕貴 18 退任挨拶-たからものになった四年間-‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 元日本大学文理学部副手 前田 京子 19 宜しくお願いします‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 日本大学文理学部助手B 青木 明香 20 着任のご挨拶 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 日本大学文理学部助手B 森尾 文恵 21 2009・2010 年度運営委員 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 21 2008年度行事報告、2009年度行事予定ほか ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 21 2007年度決算報告 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 23 -1- 2009 年6月 日本大学英文学会 《ご挨拶》 ビー』は語り手ニックの視点を通して、ギャッツビー への見方が「最も軽蔑する」人物から「偉大なる」人 ご挨拶 -「愛」と「富」と「虚無」- 日本大学英文学会会長 寺崎 隆行 新年度を迎え、会員諸兄姉にはお元気で、それぞれ の分野でご活躍のことと拝察いたします。 百年に一度といわれる経済・金融危機が今世界を 襲っています。民族や思想や宗教や文化の壁を凌駕す る形で、世界が経済と IT で同一方向を目指している 中での出来事です。この危機は 1929 年にアメリカで 始まった「世界大恐慌」と比較され、またそれを脱す る手がかりもその歴史上の教訓に半ば求められていま す。ただ歴史的には、この後すぐ世界は「第 2 次世界 大戦」を経験することになります。当面の経済危機脱 出には政策、外交といった行政上からの手立てが不可 欠なのでしょうが、人類の歴史がサインカーブのよう に繰り返してきた「繁栄」と「崩壊」のリズムの、と りわけ後者が懸念されます昨今です。 1920 年代は、S. フィッツジェラルドの言葉をかり ますと、「1919 年の不確実性は終わった。・・・アメリ カはかつてなかった程の大きな、派手な浮かれ騒ぎを するだろう」と、まさにアメリカが「繁栄」する時代 ですが、その 20 年代最後の年にアメリカ経済が「崩壊」 します。この「繁栄」と「崩壊」の関係は、今引用に 挙げた作家個人についても言えることですが、ここで は 1925 年に出版されたこの作家の、映画でもおなじ みの代表作『偉大なるギャッツビー』について考えて みたいと思います。この 25 年という年は、アメリカ 最大の自然主義作家 T. ドライサーの『アメリカの悲 劇』が出版される年でもあり、 「自然主義」文学と「ロ スト・ジェネレーション」といわれる作家たちのいわ ゆる「モダニズム」文学とが迎合する年でもあります。 『アメリカの悲劇』では、主人公 C. グリフィスが立身 出世欲から自らの子供を身ごもった女工ロバータを殺 そうとボートで湖に漕ぎ出し、寸でのところで殺害を 思いとどまります。しかし弾みでボートが転覆し、ク ライドはロバータを見殺しにして逃亡します。作品後 半は、死刑判決に至るまでの裁判過程が、アメリカ社 会の矛盾と力学を浮き彫りにする形で描かれます。我 が子の無実を信じて奔走するグリフィス夫人に、とり わけアメリカの母親像を見る作品でもありますが、こ の作品が社会の犠牲になっていく主人公の悲劇が作家 の視点から描かれるのに対して、『偉大なるギャッツ 物への転換が語られる作品です。ギャッツビーの中に 「緑色の光」で象徴される「希望を見出す非凡な才能」 としての ‘romantic readiness’ をニックは見ることに なります。 『アメリカの悲劇』が時間系列の中にクライドの社 会に翻弄される悲劇が語られるのに対して、 『偉大な るギャッツビー』は立身出世を東部ニューヨークに 求めて、エリート証券マンとして船出したニックが、 ギャッツビー体験を通して、トムやデイジィーが体現 する退廃した現実世界の実相を知り、中西部に戻って から、ニューヨークでの体験を語り直すという、ニッ クの意識に封じられた時間の中で語られます。ギャッ ツビーはデイジィーという夢の対象を振り向かせるた めにのみ豪華なパーティーを開きますが、パーティー には外灯に群がる「蛾」のように連日大勢の客が押し 寄せ、彼が持つ巨万の富に群がります。華やかなパー ティーが引けたあと、一人残るギャッツビーが醸し出 す「孤独」の描写は絶妙です。作品後半はギャッツ ビーの富に傾きかけたデイジーの運転する車が、皮肉 にも夫トムの愛人マートルを轢き殺します。そしてふ たりはその罪をギャッツビーに被せて、身を隠します。 ギャッツビーはマートルの夫ウィルソンに射殺され、 屍をプールに浮かべますが、その描写は、 「虚無」を 背後にして生と死が逆転するように描かれます。 「死 者」が「生者」に、 「生者」が「死者」に取って代わ ります。葬儀はパーティーに群がった客は勿論誰一 人列席せず、田舎から出てきたギャッツビーの父親と ニックとほんの数人で行われます。 ニ ッ ク が ギ ャ ッ ツ ビ ー の 中 に 見 る ‘romantic readiness’ とはどのような精神性でしょうか。トムや デイジィーやパーティーに群がる客が体現しますよう に、現実は虚偽や醜悪さや裏切りや誹謗・中傷に満ち 溢れています。ギャッツビーの夢の対象としてのデイ ジィーとその実態には無限の乖離があります。しかし その現実を抜きにしては夢の実現はありえません。読 者が驚異しますのは、現実がいかにあろうと、その現 実を一身に引き受けて、言い訳も口実も一切持たず、 ある意味で喜んで命を賭けうるギャッツビーの「ロマ ンティックな覚悟」にあるのではないでしょうか。こ のような「覚悟」に、作家は「希望を見出す非凡な才 能」 「偉大な」を託します。現実の経済・金融状況が いかにあろうと、この 「 覚悟 」 の持続こそが私たちの 時代に肝要なのではないでしょうか。 会員の皆様のご健康とご検討をお祈りいたします。 -2- 英文学会通信 第 91 号 および授業始めで忙しい 4 月には、学生の対応に追わ 英文学科主任挨拶 れ、休みも返上して毎日夜 8 時、9 時まで配付資料の 日本大学文理学部英文学科主任 吉良 文孝 当初この 4 月より英文学科主任に就任予定であった 松山幹秀先生が体調を崩され、急遽、5 月よりその任 を引き継ぐことになりました吉良です。身に余る職責 ではありますが、会員の皆様のご協力をいただき、 この重責を果たすことができればと考えております。 何卒よろしくお願い申し上げます。 さて、本年度は新たに学部新入学生 152 名、大学院 新入生 6 名を迎え、前年度主任であった保坂道雄先生 の(松山先生に代わる1か月間の)主任代行のもと、 何とか新年度のスタートをきることができました。 わが英文学科を選択する受験生の数も、昨年度は大幅 に増加し(本年度は昨年度に比して微減となったもの の) 、ほんの少し安心して見ていられる受験者数の安 定推移を示しています。少子化による大学全入時代の 今、地方のみならず、都市部でも多くの大学がその存 亡の危機に直面するなか、日本大学文理学部英文学科 が高く評価されつつあることの表われであると教員 およびスタッフ一同心より嬉しく思っております。 と同時に、新入学生ならびに在校生の期待に応えるべ く、その責任の重さを痛感しております。一方、大学 院の入学者は、前期課程 4 名、後期課程 2 名と、例年 の入学者数に比べると若干少ないものではあります が、いずれの入学者もその目的意識が高く今後が期待 されます。私などの院生時代に比べ、ここ数年の院生 を見ますと、月例会など学内での発表の質も高く、ま た学外でも立派な発表をし、目をみはるものがありま す。授業を通して垣間見られる先輩から後輩への愛情 溢れる叱咤激励や白熱した議論などは頼もしい限りで、 確実に次の世代が育っています。 本年度は英文学科の教員・スタッフに若干の異動が ありました。助手として縁の下の力持ち役を務められ た前島洋平さんが(学組新制度移行に伴い)助教とな り、授業を担当するかたわら、研究補助(かつての 助手)の仕事もするという、いわゆる二足のわらじ で英文学科に尽力いただくことになりました。また、 長らく副手として英文学科を支えて頂いた前田京子さ んと、同じく副手(正式には助手B)として昨年 4 月 から 1 年間お世話になった有川夕貴さんが退任されま した。お二人のご尽力にはこの場を借りまして感謝申 し上げます。後任の新任助手Bとして、この3月に英 文学科を卒業した青木明香さんと森尾文恵さんを迎え ました。着任早々、他のスタッフと共に、ガイダンス 作成や事務整理に奮闘いただきました。こうしたス タッフの学科ならびに日本大学英文学会を支える努力 に、教員一同、本当に感謝しています。 さて、英文学科では、来年度(22 年度)のカリキュラ ム改訂に向けて、少人数のワーキンググループが編成さ れ、真に教育効果が上がるカリキュラム作成のためのい ろいろな議論がなされてきました。新しい時代に向けて の学生のニーズに応えるべく、そして、英文学科で(の 専門科目を)学んだという証が得られるようなカリキュ ラムの再検討をしてまいりました。その結果、 (英文学 科の専門科目だけに限って言えば)大きく 2 つの能力の 涵養を目指したものとなりました。身につけさせるべく その 2 つの能力とは、コミュニケーション能力と、 (しっ かりと読み、書くための)英語の基礎学力です。 コミュニケーション能力の涵養のためには、少人数 のクラス編成や個々の習熟度に見合ったきめ細かな指 導が求められることは言うまでもありませんが、真の コミュニケーション能力(私は、これを「人間力」と 呼んでいます)を身につけさせるための授業内容を学 生たちに提供しなければなりません。たとえば、日本 語で話して魅力のない人間は、それをそっくり英語に して話してみても、まず間違いなく、魅力のない人間 でしょう。この理屈は極めて単純明快なものですが、 そういった「真のコミュニケーション能力とは何か」 を学生たちに考えさせられるような授業を期待してい ます。また、ご存知のとおり、次期改訂の高等学校学 習指導要領では、 「英語の授業は英語で。 」が謳われて いますが、それに対応すべく教職コース科目に関連し た授業科目の充実もはかっております。 もう 1 つの能力、つまり、基礎学力についてですが、 昨今の学生たちの、読み、書くための英語基礎学力の 欠如は問題です。これは、多くの専門家たちが分析す るように、いわゆる‘ゆとり教育’がその遠因の一つ でしょう。ゆとり教育世代が初めて入学し、私がまだ 一年生の担任をしていた頃の話ですが、授業中に一人 の女子学生が、 「先生、筆記体は書かないでください。 」 というのです。なぜかと問うと、 「読めないからです。 」 という返事が返ってきました。そこで、他にも同じよ うな要望を持っている学生がいるのではないかと尋ね てみると、5、6 人の学生が手を挙げたのです。これ には驚きました。これは、ゆとり教育の名のもとに 教育内容の厳選が行なわれた結果です。筆記体が読め ない、書けないということが基礎学力の欠如とは直接 関係はないかもしれませんが、しかし、一事が万事で す。英語基礎学力の充実をはからなければなりません。 -3- 2009 年6月 日本大学英文学会 ‘基礎力なくして応用力なし’です。そのため、これ まで 2 年次のみに配していた「英文法」に加え、1 年 次に「英文法基礎」 (仮称)を必修科目として置きま した。ここでは、しっかりとした読み、書きに通ずる 基礎的な文法知識をみっちりと教え込もうというわけ です。 「英文法基礎」で学んだ内容がコミュニケーショ ン能力の養成にも直結するものであると考えます。 また、基礎学力の充実ということに付言するならば、 1 年次必修科目の「英語基礎演習」では、徹底した英 語読解力の涵養をはかります。近頃、随分と活字離れ が進んでいますが、英文学科の学生もご他聞に漏れな いようです。授業を通して学生たちの英語読解力のな さを痛感することしきりです。しかし、言うまでもな く、英語読解力の欠如は、その実、日本語力の欠如に 起因するものなのです。「英語を読む」とはいったい どういうことなのかを実感させるような授業を学生に 提供しなければなりません。世間一般で何かと批判の 多い訳読主義を擁護して、平泉・渡部論争のなかで 渡部昇一氏(『英語教育大論争』文芸春秋)が力説した、 「母語である日本語との格闘」に根ざした授業が英語 基礎演習でも期待されるところです。 さて、英文学科の学生に対していささか苦言を呈し た感がありますが、そんなマイナス面ばかりではあり ません。現在、文理学部では、玉川大学通信教育部と の間に「小学校教員養成特別プログラム」に関する協 定を結んでおり、卒業と同時に小学校教諭 2 種免許状 取得の機会が与えられています。このプログラムを生 かし、中学・高校のみならず、小学校の教壇に立つ英 文学科卒業生も何人もいます(そう言えば、このプロ グラムではありませんが、この 3 月で退任された有川 夕貴さんも、自ら小学校教諭への活路を見出し、在学 中に教員免許状を取得して地元茨城の教職に就いた積 極的な学生の一人でした)。また、昨年度より、大学 院課程の先取り履修が可能となり(大学院進学後、そ の履修科目の単位が認定されます)、昨年に引き続き、 今年度も数名の熱心な英文学科学部 4 年生が大学院の 授業を先取り履修し、学部の授業に、あるいは大学院 の授業にと奮闘しています。 以上ここ数年間の英文学科の様子を申し述べました が、これまでの永きにわたる英文学科の伝統に裏打ち された活気溢れる今日の英文学科の姿があるのも、ひ とえに日本大学英文学会会員の皆様のご理解とご協力 の賜物であると心より感謝申し上げます。これまで以 上に英文学科を盛り上げ、その輝かしい未来を築くた め、現スタッフは全力を尽くす所存ではありますが、 それと同時に、会員の皆様の一層のご協力を切にお願 いする次第です。 《エッセイ》 「生活と芸術 - アーツ&クラフツ展」 を観て ―ウイリアム・モリスについて考える― 日本大学通信教育部教材課長 佐々木 健 今年は昨年より 10 日ほど早く春一番が吹いた。梅 の花が馨しい日差し暖かな2月の休日を利用して、久 し振りに上野公園に行ってみた。目当ては東京都美術 館で開催されている「生活と芸術 - アーツ&クラフツ 展」である。本企画は、19 世紀後半にイギリスで興っ たデザイン運動「アーツ&クラフツ」の広がりを、イ ギリス、ヨーロッパ、そして民芸運動が花開いた日本 の美しい工芸作品等から辿るものである。約 280 点の 展示品は、東京都美術館とロンドンのサウスケンジン トンにあるヴィクトリア&アルバート美術館(以下V &Aと表記)の共同企画により、V&Aと日本国内の 美術館等から集められた。 以前から「アーツ&クラフツ」を牽引した中心人 物が装飾芸術家、詩人、小説家、思想家、出版業者 及 び 社 会 主 義 運 動 家 等 の 幾 つ も の 顔 を 持 ち、19 世 紀のイギリスで最も博学多才な人物で、「近代デザ インの父」と称されるウイリアム・モリス(William Morris,1834-1896, 以下モリスと表記)であったこと は知っていたが、私が何よりも今回の展覧会に興味を 持つきっかけとなったのは、数年前に約 130 年前に制 作された1枚の美しいアンティークタイルのオリジナ ルを購入したことにある。そのタイルの制作者は、モ リスの同志として当時のイギリスの装飾美術界をリー ドし、特に陶器やタイルの制作において傑出した才 能を発揮したウイリアム・ド・モーガン(William de Morgan,1839-1917, 以下ド・モーガンと表記)であった。 一昨年の9月に、大学からの命を受けて、イギリス の高等教育及び文化事情についての視察・研修を行う ためにイギリス各地を訪問する機会に恵まれ、この研 修の終盤に一週間程ロンドンに滞在した際にも、ナ ショナル・ギャラリー、テート・ブリテン、テート・ モダン及びⅤ&A等の主要な美術館や博物館を巡るこ とができた。その中でもⅤ&Aが所有する膨大な量の コレクションに圧倒されたことや、同美術館で数多く のモリスの作品に出会えた時の感銘を今でも忘れるこ とはできない。その意味でも、今回日本で開催された 展覧会は、私にとって約一年半振りのモリスの作品と の再会の場であったばかりでなく、 「アーツ&クラフ -4- 英文学会通信 第 91 号 ツ運動」を先導した彼の同志であったロセッティ、バー 集の最初の物語『騎士の物語』の冒頭を飾る装飾頭文 ン=ジョーンズ、ド・モーガンらをはじめとして、多 字“W (Whilom)”のデザイン原画とその試し刷りを くの芸術家達の作品を一同に鑑賞することができる興 見ることができた。まさにモリスが長年実践してき 味深い企画でもあった。 そもそも「アーツ&クラフツ」のイデオロギーの 柱石となったのは、ジョン・ラスキン(John Ruskin, 1819-1900, 以下ラスキンと表記)が唱えた労働や手 工芸に対する思想と言われている。彼は中世の工芸 職人が置かれた労働状況の方が、当時のイギリス産 業社会の中で機械化されていた労働状況よりもはる かに健全であったと考え、機械よりも人間の手によ る仕事の重要性を説いた。このラスキンの思想に強 く影響を受けたモリスは、ラスキンが擁護していた ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ(Dante Gabriel Rossetti,1828-1882)らラファエロ前派の芸術家と交 流を深めながら、当時イギリス社会で支配的であった 機械第一主義の考えや工業化が進む中で奴隷化されて いる労働者の状況を憂いた。さらに、彼は大量生産に よって生み出される製品の粗悪さや醜悪さを非難する とともに、中世の手工芸に芸術本来の姿を求め、手に よって作られるデザインを発展させようと考えた。 つまり、モリスは中世のギルド的な社会を理想とし、 職人の手による伝統的技法を復活させ、中世にあった 人間同士や自然との調和の復活を願うと同時に、生活 を形づくる日常性の中に芸術を引き込もうと考えたの である。こうした理念・思想がモリス自身を「アーツ& クラフツ」の旗頭とならしめることになったと言えよう。 モリスは、1861 年に「モリス・マーシャル・フォー クナー商会」を設立し、彼自身の説いた芸術理念を実 現するために、以後装飾デザイナーとしてのみなら ず、作家としても遺憾なく才能を発揮して活発な活動 を続けるが、晩年は「理想の書物」を制作するため に、ロンドンの西郊ハマースミスにある自宅近くに 私家版印刷所「ケルムスコット・プレス」(Kelmscott Press,1891-1898)を設立する。 同印刷所は、8年間に 53 書目 66 巻を刊行したが、 その中でも 1896 年、モリスが亡くなる3か月前に完 成した『ジェフリー・チョーサー作品集』(The Works た芸術理念の集大成とも言うべき美しい書物の何点か を、今回直接目にすることができたのは幸運であった。 最後に、モリスは「中世の彩飾写本についての若干 の考察」という断章の中で印象的な言葉を述べている ので紹介したい。 「<芸術>の最も重要な産物でありかつ最も望まれ るべきものは何かと問われたならば、私は<美しい家> と答えよう。さらに、その次に重要な産物、その次に 望まれるべきものは何かと問われたならば、<美しい 書物>と答えよう。自尊心を保ちつつ、快適な状態で、 よき家とよき書物を享受することは、すべての人間社 会がいま懸命に求めていくべき喜ばしい目標であるよ うに私には思える」 (川端康雄訳) モリスの死後 110 年を経た今でも、彼が創り出した 美しいデザインは人々を魅了してやまない。理想の社 会の実現を目指しながら、終生日常生活に根ざした美 を追求し、努力し続けたモリス。彼の残した業績は、 後世の世代に大きな影響を与え、モダンデザインの道 を切り開いた。大量消費社会と言われて久しい今日、 再び彼の残した足跡を振り返ることは、私たちにとっ て意味深いことなのかもしれない。 of Geoffrey Chaucer , 1896) は、彼がオックスフォード 大学に在学していた頃からの親友であった画家のエ ドワード・バーン=ジョーンズ(Sir Edward Coley Burne-Jones,1833-1898)との共同制作によるもので ある。この作品は、モリスが同印刷所で制作した書物 の中でも最高傑作として名高く、活版印刷術の完成以 来、世界で最も美しい本と称されている。残念ながら、 本展覧会では、この『ジェフリー・チョーサー作品集』 は展示されなかったが、モリスがデザインした本作品 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 四半世紀の年月を経て オークラアクトシティホテル浜松 東日本統括支配人兼東京営業所長 名倉 雅彦 二十六年ぶりに母校の門をくぐった。 今回このような機会ができたのは、在学中からの旧 友である佐々木健氏(現日本大学通信教育部教材課長) の一本の電話からだった。 「今度(十二月十三日)英 文学会の研究発表が母校であるので、時間があったら 気軽に来ないか」というものだった。最初は、私のよ うに既に英文学から随分遠ざかってしまった人間が参 加するにはあまりにも場違いではないかとの思いから 躊躇したが、 恩師の先生(中島邦男先生)や同級生(保 坂道雄先生)も来るからというので思い切って懇親会 に出席することに決めた。 当日、下高井戸の駅に降り立つと、その変わりよう に目を見張った。二十余年の月日が流れたことを改め て実感した。校舎への一本道を歩いていくと街並みも 大きく変わり、友人たちとよく利用していた小さな食 -5- 2009 年6月 日本大学英文学会 堂もなくなっていた。何か寂しいような懐かしいよ め上げたことを思い出す。 うな気持ちが交錯する中、周りの風景をゆっくり楽 今はホテルマンとして海外のお客様と応対する機会 もあり、その頃の研究が少なからず生かされていると しみながらとうとう母校の正門に辿り着いた。当時 の面影を残していたのは本部棟と旧英文科の研究棟 くらいであった。構内に足を踏み入れると学生時代 の四年間の思い出が走馬灯のように脳裏を駆け巡っ た。 専攻の英語学、英文法、音声学、英米文学、フラ ンス語のほか、一般教養の心理学、政治学や、教員 になるために必要な教育原理、教育基本法などの教 科を学んだこと。講義後、よく友人達と行きつけの 喫茶店で授業のこと、将来のことをいつまでも語り 合ったこと。今になって思うと、その頃はとても充 実した時間がゆっくりと流れていたように思える。 そんな中でもシェークスピアとの出会いが、私に とって大きな影響を与えた。多感な年頃であったせ いか、その頃の私は様々なことに興味を持ち、考え、 触れることで自分を見い出そうとしていたのかもし れない。あの有名なハムレットの独白「To be or not to be, that is the question.」そのものだったのだろう。 授業の中で読んだ「ロミオとジュリエット」のロミオ がジュリエットに告白するシーンを夢中で暗唱した こと、大学から頂いた奨学金で小田島氏訳の「シェー クスピア全集」を購入し片っ端から読み漁ったこと、 NHK が当時放送していた BBC のシェークスピア作品を 食い入るように見たこと、俳優座や文学座が上演し た「ハムレット」や「ヴェニスの商人」を友人と見 に行ったことなど、まるでシェークスピアおたくそ のものでもあった。人生の格言あり、社会的風刺や 皮肉あり、人間の愛おしさ、醜さ、強さ、弱さなど、 ありとあらゆるものが散りばめられており、何度読 んでもその度に新鮮な驚きを感じたことを今でも覚 えている。 こんなシェークスピア好きから、人と人との生き た言葉のやりとりや表情、仕草に興味を持ち、卒業 論文ではまだ当時ほとんどの学生が扱ったことの な い「 異 文 化 間 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ―Intercultural communication」 に テ ー マ を 絞 っ た。 そ の 題 材 に 決 めたのはテネシーウィリアムズの「Cat on a hot tin roof」。映画の中に出てくるポールニューマンとエリ ザベステイラー扮する主人公たちのやりとりを見な がら、日本人とアメリカ人の Body Language の違い、 Eye Contact の特徴や感情の表現方法について比較研 究した。家庭用ビデオデッキはまだ希少で大変高価 だったため、たまたま持っていた友人から一定期間 借りて、小遣いで買った映画のビデオを見ながら何 度も何度も一時停止や巻き戻しをしながら論文を纏 感じることもある。 最後に、今回この様な場を与えてくれた友人と日本 大学英文学会に感謝すると共に、母校の益々の発展を 祈念し、私自身「日大人」としての誇りを持ち続けて いきたいと思う。 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 人のこの世に生あるは、 事を成す為にあり 日本大学高等学校英語科教諭 清水 陵司 平成 20 年9月 30 日と 10 月 22 日。私にとって人生 で忘れることのない日となった。両日ともに教員採用 試験の合格通知が届いた日である。 思えばこの日まで長い道のりだった。教師になろう と決意した 14 歳の時から 15 年余り。中学生の頃は野 球部の練習に明け暮れ勉強はそっちのけ…。高校生の 頃は硬式野球部の練習とバンド活動に熱中し勉強は そっちのけ…。気づけば大学受験には失敗、それまで の悪行三昧がたたって、高校を卒業する時に両親から は「もう勝手にしなさい!」と突き放され…。大学に 行って教師を目指したいことを両親に頭を下げてお願 いし、 「予備校には行かず、朝6時から昼 12 時までア ルバイト、その後図書館に行って勉強。参考書、模擬 試験、受験料など受験にかかる必要経費はアルバイト 代から捻出する。 」という条件で浪人することを許し てもらい、なんとか大学に合格。しかし大学では友人 との遊びやバンド活動に熱中し、単位不認定を繰り返 しながらなんとか卒業…。その後大学の紹介で非常勤 講師として働き始めたが、自分の教科の能力の低さか ら失敗ばかり…。 非常勤講師として働き始めてから、がむしゃらに勉 強し始めた。非常勤講師とはいえ、夢だった教師にな ることができたからである。実際に教壇に立ち、生徒 の成長を見ながら仕事ができることが楽しくて仕方が なかった。教科の能力が本当に低かったため、授業の 準備にはかなりの時間と労力を必要としたが、それで も時間をいとわず懸命に仕事をした。がんばって教え たことが生徒に伝わった時、生徒の悩みを取り除くこ とができたり共有することができた時は嬉しくて仕方 がなかった。卒業した生徒が会いに来てくれたときは 涙が出るほど感動した。そこから少しずつではあるが -6- 英文学会通信 第 91 号 結果が出始めた。教員採用試験も1次試験を突破す てきた。 ることができるようになっていった。周りの先生方も その約1ヵ月後、平成 20 年 10 月 22 日。日本大学 少しずつ仕事を任せてくれるようになっていった。26 付属校の教員採用試験の通知がきた。仕事を早めに済 歳の時には結婚し、2年後には子どもが生まれた。あ とは専任教員となって、たくさんの生徒とかかわるこ とができれば人生は最高だ!と思い始めた。 しかし、やはり人生はそんなに甘くない。毎年教員 採用試験を受けていたが、1次試験を突破しても2次 試験で、2次試験を突破しても最終面接で落とされて しまう。6年間の受験のうち何度か最終面接までいっ たが、採用されない。周りの非常勤の先生が教員採用 試験に合格し、どんどんいなくなっていくたびに悔し くて寂しくて仕方がなかった。自分は教師に向いてい ないのではないか、もうあきらめざるを得ないのでは ないかと何度も考えた。家庭を持っている以上、この まま非常勤講師では生活していけない。預金通帳と新 聞の求人欄を毎日眺める時もあった。 そんなある日、妻と部屋を掃除していると、ある本が 見つかった。「竜馬がゆく(司馬遼太郎著)」である。 大学浪人の頃に人生で初めて買った本で、少なくとも 10 回以上は読み返した本である。そこには忘れかけ ていた自分の信念があった。 「人のこの世に生あるは、事を成す為にあり」 江戸幕末の志士坂本竜馬が、目標を達成することの 大切さを海援隊員に話したときの言葉で、私の座右の 銘である。妻は「あなたは教師しかできないよ。他の 仕事をすることになったら、絶対に死ぬまで後悔する。 家のことは大丈夫。受かるまでやり続けなさい。」と 言ってくれた。28 歳の冬。涙が止まらなかった。 ここから再び猛勉強が始まった。子供がまだ小さい ので、早めに家に帰らなければならない。そのため朝 は早めに出勤し、できるだけ早い時間に仕事を終わら せる。仕事が終わった後は必ず2時間学校で勉強。夕 方6時頃には家に帰り、子供が寝ている隙を狙ってま た勉強。今思えば、まるで大学浪人の頃にやっていた 「朝6時から昼 12 時までアルバイト、その後図書館に 行って勉強。 」という決まったスケジュールで毎日過 ごすようになっていた(家事は妻にまかせっきりに なってしまったが…)。 そして平成 20 年9月 30 日。神奈川県公立高校教員 採用試験の結果発表。ホームページで自分の受験番号 を探した。合格していた。にわかには信じられず、コ ンピューターを再起動してホームページを再確認する という作業を2度3度繰り返した。何度見ても、間違 いなく自分の受験番号がある。今までのことが走馬灯 のように頭の中をグルグルと回った。父に電話し報告 すると、受話器の向こうで母が泣いているのが聞こえ ませ帰宅し、震える手で封筒を開けた。すると1枚の 紙に、 採用高等学校名 日本大学高等学校 と書いてあった。なんと、今まで勤めてきた学校に採 用が内定したのである。この時もにわかに信じること ができず、通知を裏返しては見直す作業を数回繰り返 した。翌日から、校長先生や教頭先生、周りの先生方 や大学でお世話になった先生に報告した。すべての先 生が喜んでくれた。15 年越しの夢が叶った瞬間だった。 これからは専任教員としてクラス運営や校務分掌 等、非常勤講師のときには見えなかったたくさんの仕 事が待っている。不安はもちろんある。しかし、今ま で自分がやってきたことを活かし、先輩の先生方から たくさんのことを教えていただき、一生懸命やりたい。 そして、夢や目標を持ち、そのために努力ができる生 徒を育てていきたい。すべては生徒のために。応援し てくれたすべての人たちのために。 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 「お遊びに終わらない小学校 英語教育」を目指して 日本大学文理学部講師 池田 紅玉 ( 和子 ) 文部科学省では、平成 20 年3月に小学校学習指導 要領の改訂を告示し、平成 23 年度から新学習指導要 領のもと、小学校5・6年生で週1コマ「外国語活動」 (英語教育)を必修化し、そろばん指導に関しては、3・ 4年生の2学年で現在より時間数を増やし、そろばん を使った足し算、引き算を定着させると発表した。 私は東京都文京区茗荷谷にある筑波大学附属小学校 の1学級(生徒数は1クラス 40 人。小学2年生でス タートし、3年生の終わりまで。 )で、2007 年4月か ら 2009 年3月まで2年間、原則として週1回1コマ (1コマ/ 40 分間) 、計 60 回ほど「英文暗誦&バイリ ンガルそろばん」の授業をおこない、今年3月に保護 者対象の「おさらい会」を最後に、研究授業を無事終 了することができた。 長年大学の教壇に立っている者としては、対象が まったく異なる小学校低学年生に対して行った2年間 の英語教育の経験は、何にもかえがたいものになった。 予想をはるかに越えた生徒の熱中ぶり、大きな声で -7- 2009 年6月 日本大学英文学会 嬉々として日本語と英語でスラスラ長文をも暗誦する についているルビのような感覚で導入した場合の教 姿、英語のリズムと発音の素晴らしさに、私は毎時間 育効果をみる。英語を聞いているだけで正しい発音 感動し、「我が意を得たり!」と思うことも多かった。 が自然にできるようになるというのが、真実である 小学校英語の常識と言われていることが、必ずしも常 識ではないことを、研究授業の中から発見することも 多々あった。 原稿用紙数枚のこのエッセイの中で全てを語り尽す ことは不可能である。早い時期に、私自身の感覚と感 動が失せる前に、この2年間の研究活動についての報 告をまとめなければならないと感じている。ここでは、 最初に設定した研究の目的をご紹介し、最後に「おさ らい会」のプログラムを参考までに添付しておいた。 指導法の実際、生徒の様子や反応、生徒の英語の発音 などにご興味を持たれた方は、授業や「おさらい会」 の記録 DVD もあるので、池田にご連絡ください。 小学校で行う英語教育が中学英語やその後の英語学 習に影響を与えることは言うまでもない。小学校英語 は独立して完成するものではなく、延長線上に中学英 語、高校英語~があることを忘れてはならない。それ を忘れての議論や意見交換は意味がない。 教育を語る際、机上の空論で終わらせないために教 師は何をなすべきか?一生問い続けていきたい。 かどうかを検証する。 6.親子で取り組む家庭での復習(宿題)を課すこと で、親子間の対話の量を増やし、親子で一緒に学び 合い、成長する意義や楽しさを伝える。 【最初に設定した、研究授業の目的】 1.池田が長年の研究や経験をもとに、「 気休め 」 や 「お遊び」に終わらない小学校英語教育を実践しな がら、指導法を模索し確立する。英語教育が専門で はない日本人の小学校の先生(担任)や授業設計を 専門としない ALT にも、自信を持って教えることの できる方法や教材を提示すべく、実際の授業で試し ながら、それらを日々見直し改良する。またその結 果を公表することで、他の小学校や教育界に、議論 の材料を提供する。 2. 「英文暗誦&バイリンガルそろばん」導入が、「英 語教育」という狭い枠を超え、算数、国語、日本の 伝統文化理解、国際理解、情操教育、コミュニケー ション能力、運動能力(手先の器用さや敏捷性が養 われるなど)を伸ばす可能性を含んでいることを示す。 3.生徒の可能性と能力を信じて、具体的かつ高い到 達目標レベルを設定し、「努力すれば高い目標にも 到達できるのだ」という成功体験を生徒に与え、根 気強く頑張ることの尊さを伝える。 4.日本語にはない音声体系を持つ英語を聞き、真似 ることで、生徒に母国語以外の発音やリズムを体験 させ、言葉自体を学ぶ楽しさや奥深さに気づかせる。 5.英語の文字を読むことができない児童に発音を教 える方法として、近似カナ「魔法のカナ」を、漢字 筑波大学附属小学校 2部3年 英語の暗誦+ 「バイリンガルそろばん」 “おさらい会& Show,Show,Show” 2009 年3月6日(金曜日 13:30 ~ 15:00) 【プログラム】 (5時間目 13:30 ~ 14:10) 1.英語で挨拶 2.40 Apples(40 個のリンゴたち) 40 人の入場(全員) 3.英詩の暗誦 Apples, Peaches… (誕生月を教えてね) ソロ +(全員) 4.12Months a Year(12 ヶ月の歌) (全員) 【数が出てくる英詩の暗誦】 5.One Potato, … (おいもがたくさん) ソロ +(全員) 6.1,2,3,4 Mary at the Cottage Door,… (1,2,3,4 メリーさんが戸口にいるよ) ソロ+(全員) 7.1,2 Buckle My Shoe, … (1,2 靴をとめて) ソロ 8.2,4,6,8 Meet Me (2,4,6,8 庭の門で会いましょう)ソロ 9.1,2,3,4,5 I Caught a Fish Alive (1,2,3,4,5 生きてる魚をつかまえた)ソロ 10.One for Sorrow ( 1は悲しみ、2は喜び ) 生徒 ( 7人 ) 【英詩の暗誦】 11.I Took a Trip ( 世界を旅する詩 ) 生徒 (12 人 ) 12.Rain( 雨 ) ソロ+ ( 全員 ) 13.The Wind( 風 ) ソロ+ ( 全員 ) 14.Roses Are Red ( バラは赤い ) ソロ+ ( 全員 ) 15.Five Little Monkeys ( 5匹のいたずらお猿さん ) 生徒 ( 7人 ) 16.Five Little Monkeys の歌 ( 全員 ) -8- 英文学会通信 第 91 号 だ時期の数々の切り抜き。何年も前の「want to do リ 【40 個のことわざの暗誦:日本語&英語】 17. 「バイリンガルことわざ伝票」をめくりながら、 スト」 。そのほとんどの内容が、 今は生活の一部となり、 ことわざの復習 ( 全員 ) そうあることが当たり前になっている。自分自身を見 18.ことわざを日本語と英語で各自発表 ( 全員 ) つめ直す意味も込めて、そんな言葉や想いたちから、 いま思う「わたしが大切にしていきたいこと」をここ に記したい。 『本を読むこと』 ひたすら「受信」に努めることに専念できる時間。 大学院生活には時間があった。これは大変に幸せなこ とである。思索や感性をつくっていくのは多くの「受 信(読書) 」であるし、 「受信」し続けたからこそ「発 信」することができる。様々なジャンルの、優しい本 から専門書までを手にとり、色々な世界を旅した。ど んなに難しく感じる内容でも、吉田松陰の「読書百遍、 意 自ずから通ず」という言葉を胸に読み進んだ。ま だまだ研究者としても人間としても未熟であるけれど も、これからも、この「本を読むこと」を大切にし、 知見を深め、研究者としても人間としても魅力ある人 物になれるよう努力をし続けたいと思う。 ★★★★★★ 休憩 ★★★★★★ ( 6時間目 14:20 ~ 15:00) 【バイリンガルそろばん】 19.Yellow Beads, Blue Beads… 歌 ( 6色そろばん ) ( 6人 ) 20.I Like Soroban ( そろばん大好き ) 歌と振り付け ( 全員 ) 21.Soroban Fingers ( そろばんフィンガー ) 歌と振り付け ( 全員 ) 22.歌 そろばんチャチャチャ 歌と振り付け 23.そろばんフラッシュカード 24.楽々おつりの計算のコツ ( 大そろばんを使う ) 25.1 桁~6桁の英語による計算 ( 全員 ) ( 英語で問題を読み上げる生徒 ) ( 6人 ) 26.C D に よ る「 バ イ リ ン ガ ル そ ろ ば ん 」 問 題 1,2,3,4、5桁 ( 全員 ) 27.人間そろばん ( 全員 ) 【歌】 28.歌 英訳版の「さくら」 ( 全員 ) 29.歌詞の暗誦 Thank you.( ありがとう ) ソロ 30.歌 Thank you. ( ありがとう ) ( 全員 ) 31.英語で御礼のスピーチ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 『大切にしていきたいこと』 -大学院生活を終えておもうこと- 日本大学理工学部講師 青木 啓子 大学院時代 8 年間を紐解いてみた。色々なことを書 き溜めていたノート、ダイアリー etc… 忘れていた古 い大切な友人に再会するように、大切な言葉がたくさ んひょっこりあらゆるところから顔をだした。ちょっ とした同窓会が始まった。新聞記者を目指す知人に触 発され、新聞を一字一句逃さず毎日 5 時間かけて読ん 『締め切りを作ること』 うまく時間と付き合えないでいた。大学院時代、時 間は目の前に沢山あったのに、いつも何かに追われて いるようだった。気が休まらなかった。自由なはずな のに、自由ではなかった。茂木健一郎さんの「 「自由」 という言葉は、何時訪れるか分からない「終わり」の 予感の中でこそ輝く」という言葉に出会って、分かっ た。いつも何かしら抱えていたわたしは、目の前にあ る「自由」な時間中ずっとその何かを抱え続けていた のだ。ずっと先のことであるのに、それを気にして、 抱え続けて、いつも心は追われていた。自由な時間な はずが、休むことなく気ばかり焦らせて過ごしていた のだ。それは仮の「自由」であって、自由ではない。 いつか「終わり」は来るのだが、その先にはまた何か が待っている故、追われる心に終わりはなかった。 締め切りをつくること。それによってわたしたちの時 間は輝きはじめる。締め切りをつくった上で、自分の キャパシティを見極め、そのタスクにはどの位の時間 を要するかを計算し、その上で、そのかかる時間を差 し引いた時間を自分の「自由」時間とする。まだまだ 器用にはできないのだが、締め切りをつくり、タイム マネージメントをし、時間とうまく付き合っていくと いうこと。大切に心に留めておきたい。 『Try (Trial) and Error』 「できないのは、できるとおもわないから」である。 -9- 2009 年6月 日本大学英文学会 かの松下幸之助さんも、「成功するまで続けず途中で 縁」 、誰しもが、周りの方々との「ご縁」の中にある。 諦めてしまえばそれで失敗である」と言い、上杉鷹山 わたし自身、恩師の言葉や後ろ盾、後押しやご尽力に は、 「成せばなる 成さねばならぬ 何事も 成らぬ よって、ここまで辿りつくことができた。感謝しても は人の 成さぬなりけり」と言う。これらの言葉が本 当に意味するところを知ったのは、恥ずかしながら大 学院に入ってからである。それまでも、やろうと思え ば何でも出来ると思っていたし、やろうと思ったもの は成し遂げてきていた。しかし、その「何でも」の意 味するところは、どれも手を伸ばせば簡単に手に入る ものに限られていた。その「何でも」には、大きすぎ る壁や、とうてい越えられないであろう山は含まれて いなかった。 けれども、その「大きすぎる」や「越えられないで あろう」は、自分の心が設定した形容詞であったこと に気づいた。自分自身ができないと決め付けていただ けであったのだ。「できない」を「できるかもしれない」 に変え、その「かもしれない」の可能性にかけ、1 歩 踏み出してみた。すると、思っていたよりも簡単に「で きる」自分がいた。こういう経験を重ねてゆくにつれ、 「できるかもしれない」の内容レベルは少しずつ上がっ ていき、心の基礎体力値は上がっていった。大学院入 学前にもっていた、 「留学したい」というただ漠然と した夢を、在学期間中 2 度叶え、今はより鮮明な選択 肢が目の前にある。 もちろん、Try すれば Error することもある。けれ ども、「人は道に迷って、道を知る」。失敗することに よって、色々と学ぶことができた。そしてその失敗し た痛い経験を胸に、次回は痛い思いをしないようより 努力しようと頑張るモチベーションを得られた。誰か が言っていた。「過ちを避ける唯一の方法は経験を積 むこと。経験を積む唯一の方法は過ちを犯すこと」で あると。どんな困難も、将来の自分をつくる為に神様 が与えて下さったもの。そして、ちょっとキツイくら いの方が面白い。そうやって楽しみながら Try するこ とを覚えられたのは、大学院生活の大きな収穫の 1 つ であると思っている。この経験を忘れずに、これから も大切に、共に歩いていきたい。 しきれない程のご恩がある。曹洞宗の開祖、 道元は「修 行者の天分は素材であり、導師は彫刻家である」と書 いた。この言葉に、わたしは心の中にある漠然とした おもいに名前をつけてもらったような感覚を覚え、深 い感銘を受けた。 また、周りの人を大切にすると、不思議と自分の周 りは愛情で溢れてくる。わたしたちが車であるなら、 愛情はガソリン。わたしたちが花であるなら、愛情は 水や太陽・栄養素。これらが欠けると植物がうまく育 たないように、人間もうまく機能しなくなる。わたし は大学院時代、周りの方々から、先生方から、そして 何よりも両親からの沢山の愛情の中にいて、また今も その中にいる。だからこそ、頑張れるし、笑顔でいら れる。これらの愛情に応える為に、笑顔でいること・挨 拶をすること・礼儀をつくすこと。これらを基本におい て周りの人を大切にすることを、これからも大切にして いきたい。笑顔と挨拶は、コミュニケーションの潤滑油。 ピカソは、 「笑わないとその日が無駄になる」と言った という。人生を大切に生きていく上で、周りの人を大切 にする上で、これらは欠かせない要素なのであると思う。 『周りの人を大切にすること(笑顔・挨拶・礼儀)』 大沢在昌さんの言葉がよく頭をよぎる。「強くなけ れば生きていけない。優しくなければ生きていく資格 がない」。また、カエサルは、Clementia(寛容)とい う精神で、「自分の考えに忠実に生きること、そして 他人もそうであって当然」としたと何かで読んだ。わ たしは、この「周りの人を大切にする」ことを大切に していきたいと思っている。これは、「ご縁」を大切 にすることとつながっている。「袖振り合うも他生の 『自分を大切にすること』 自分を大切にすること。わたしは、 「周りの人を大 切にする」ことと同じくらい、「自分を大切にする」 ことを大切にしていきたいと思っている。これもわた しの人生においてとても大切な Style の 1 つである。 それを実行するには「無理をしない」ことが大切であ ると大学院生活を通して学んだ。無理をすると、笑顔 でいられなくなる。大学院時代前半のわたしは、うま く力を分配することを知らなかった。いつでも全力投 球、そして最後まで力が続かなくなる。笑顔がなくな る。うまく力を配分していくことが、笑顔で過ごす秘 訣であると学んだ。 また、 「No と伝える」こと。これも自分を大切にす る為に欠かせない要素である。いつも自問するよう心 掛けている言葉がある。“What's your priority?” これ はハワイ大学留学時代に大切な友人からもらった言葉 である。それまでのわたしは、目に付いたものに手を つけては自分の第一優先事項を大切に出来ないで、自 分を大切にできないでいた。無駄に労力を放出してい たのだ。1 番大切だと思うものから手をつけていき、 そして自分を、自分の第一優先事項を大切にする為に No と伝える。これができれば、その次に Yes と言え る時に、心からの笑顔で言うことができる。自分を大 - 10 - 英文学会通信 第 91 号 切にできてこその心からの笑顔で。こちらもまだ、中々 ておりましょう。 器用にはいけないが、いつも自問しながら歩んでいけ ば、その先に自然に “My priority” を優先して大切に § 2. The Making of English 行う自分がいるに違いないと思っている。自身の内側 が充実しているからこそ、周りの人にも自分にも優し く微笑むことができるのであろう。 最後に、これもわたしが『自分を大切にする』上で とても大切なこと「心とからだの fix day」 ; わたしが 名づけた、心や体のゆるんだネジやタガをしめ直す為 の日である。メンテナンスがされてないと、わたした ちの体や心は、うまく動かない。モンテーニュの、 「自 分の家に、自分の機嫌だけをとっていられる場所、自 分を隠す場所を持たない人間はみじめなものだ」とい う言葉に出会い、人にはひとりきりで過ごす「心とか らだの fix day」が必要であると深く思ったのを覚え ている。わたしたちは、いつでも「自分」ではいられ ない。 「自分」を見失う時もある。そんな時には、大 切な「自分」を守るため、また周りの人を大切にする ため、笑顔で過ごすため、心や体のゆるんだネジやタ ガをしめ直す。忙しさの中にあって心を亡くしそうに なった時にこそ、忘れないでいたい。 Bradly の好著と評されるその本に森村豊先生が詳密 な註を付けられた reprint 版を古書店で入手しました。 戦時中の出版かも知れませんが美しい印刷の版でし た。やがて OE, ME の勉強のため森村先生に入門(研 究科)したわけです (1954 年 )。 ここにはじまった同窓会からの1部をとろとろと書 き連ねてしまった。大学院生活を終えておもう『大切 にしていきたいこと』。この先どんなに大変な時も、 心が挫けそうな時も、“Keep trying”。私が私である為 に、これらの大切な友人たちと共にゆっくり楽しく歩 んでいきたい。笑顔とともに。 § 3. テーマ 教職に就いてから後、A-S 廃語史が研究テーマとな り、これには大塚髙信先生や諸家数名から声援を賜り、 又一時「科研費」に採用されました。J. R. Aiken 曰く、 語の obsolecence は眞に大なる社会的現象なるが故、 語の発生や発展より一層 illuminating なり―これに対 する学問的関心は払われるに値するにも拘わらず從来 全く然らざりし (English Present and Past , 1930)。 § 4. 約束 細江『精説英文法汎論』は詳細な syntax の書ですが第 一巻しか出ません。original『英文法汎論』に照らして見 れば完結には少くとも 5, 6 巻の続巻を要したでしょう。 著者御遺族に続巻の執筆権をお願いしました所、OK の約 束を頂きました。篠崎書林店主にも話しました。約束は 行使されぬままです。この大作中の文例には一々出典が 明記され随所に綿密な註が執拗なまでに念入りに施され て行くその手法は敬服の外ありません。 § 5. 心残り ある院生が英語学で論文を書きたいがとの如何に も腑甲斐なき相談に来たことがありました。手初に 《特 集》 私的回顧 金沢大学名誉教授 最上 雄文 § 1. 出会 金沢に在った「髙師」に入学したのは昭和 23 年でした。 そこで Onions, Curme, Sweet, Jespersen, Poutuma 等の学者名 とか“Century ”, NED (赤表紙)等の辞典に出会ったの です。即ち「英語学」を知りました。文法文献“Essentials ” や細江『英文法汎論』 (及び『精説』 )を入手したのもそ の頃でした。 NED は後年青表紙の OED となり更にそれの別巻 supplements も出、縮刷版も出、更に増補改訂新版も出 ました。音声表記は新版の方が親しみ易い方式になっ Canterbury Tales (序のみでも)文中の GERMAN 系、 ROMANCE 系、その他系各語の一々に(text のまま) 色分け塗りして提出してはと奨めました。その作業を その人は果せず仕舞でした。多少ともその作業が進展 した場合、学問にまで到達せぬまでも用語の系統別分 野が一瞥で把握さるべき着色地勢図風の見取図位は出 来たと惜まれます。 § 6. †古語英和辞典 国語に関しては「古語辞典」があります。英和辞 典は類書が溢れんばかりですが、それらでは英語古 典を幡く手掛りになり難い。即ち淋しくも古典に扉 を開き得べき英和辞典が無いのです。時代を通ずる spelling の多様性に対応すべき検索システィムを備 えた綜合的辞典編纂が望まれます。1984 年頃でした が、 ‘The humble petition of obsolete English’なる提案 - 11 - 2009 年6月 日本大学英文学会 を表明しました(日本英語表現学会『英語表現研究』 ことが私の英語学の学習、研究を言語科学、一般言語 Bulletin 14)。 学、そして応用言語学から音声学、音声科学、臨床音 声学、応用音声学を含むフォネティック・サイエンシ § 7. 婦人騎乗姿 ‘トマス・ハーディのこだわり- A Girl on Horseback’ なる拙稿エッセイ(平成 3 年)で申しました通り、ハー ディの諸作品中、horsewoman 姿崇拝症といった男達 が 登 場 し ま す。 そ の こ と に 因 み 中 世 Coventry 伝 説 (Godiva vs. Peeping Tom)にも言及しました。巷間流 布の説では Tom が禁断の裸体騎馬夫人を窃覗したため struck blind の罰を受けたと言う。この俗説はギリシャ (Artemis vs. Actaeon)伝説からの類推、暗示によるか も知れません。しかしハーディ作品流の視点で捕え た場合 Tom は単なる裸体行進の往来なら、禁を冒し てまで peep することは無かったでしょう。裸体なら ずとも神々しくも気高い騎馬夫人の御降臨とあらば peep の憧望は抑制し難かったでしょう。struck blind の目に遭ったのは夫人から後光(?)として発する慈 悲の光明が閃烈過ぎる輝かしさでしたからでしょう。 § 8. あとがき 学業的拙志は大なりとの思いはあったのですが、 stamina 不足と怠惰の故に見るべき成果をあげず仕舞 でした。今更どうこう文句を言うことはありません。 どうぞ皆様しっかりおやりなさいませ。 2009 年 3 月 ズ、そしてスピーチ・コミュニケーションの研究へと 拡げさせてくれたということが出来る。 スピーチ・コミュニケーションの研究領域ではオー ラル・インタプリテーション、スピーチ・クリティシ ズム、パブリック・コミュニケーション、インタパー ソナル・コミュニケーション、ディベート、異文化(間) コミュニケーションなどにわたっての研究が主たるも のであった。 これらのフォネティック・サイエンシズやスピーチ・ コミュニケーションの研究領域では特にジョセフ・A・ ワグナー、ジョン・アイゼンスン、アール・R・ケイン、 C・M・ワイズそして J・ジェフリー・アワーといった 先生方の影響を大いに受けていると言えよう。 私には現在までに共著 32 冊、18 冊、学術研究論文 主要なもの 48 点(全部で 70 点) 、そして、学会発表 98 回の研究業績があるが、著書、学術研究論文はフォ ネティック・サイエンシズとスピーチ・コミュニケー ションの研究領域のものが主たるものであるが、私の 共著に関する話題について述べよう。 カリフォルニア大学ロサンゼルス校の大学院時 代 の 恩 師、 ジ ョ セ フ・A・ ワ グ ナ ー 博 士 と の 共 著 Essentials of Effective Speaking, ( 南 雲 堂 1970 年 ) ; The British and American Public Address Series: ( 英 潮 社 1970-1989) ; The Great Speeches of Franklin Delano Roosevelt ( Ⅰ ), The Great Speeches of Franklin Delano ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 英語学とわたし 日本大学名誉教授 川島 彪秀 私の英語学の学習と研究はフェルディナン・ド・ソ シュール、オット・イエスペルセン、ポール・ロバーツ、 H・A・グリースン、ハロルド・E・パーマ、W・ネルスン・ フランシス、ロバート・ラド、チャールズ・C・フリー ズなどにはじまると言ってよい。 特に、わたしがハロルド・E・パーマやダニエル・ ジョウンズ、ジョン・S・ケンニョン、チャールズ・K・ トマス、ジョン・アイゼンスン、そして、C・M・ワイ ズなどの影響を受けて、音声学をはじめとするフォネ ティック・サイエンシズの方向に目をむけた理由の一 つは当時は構造言語学盛んなりし、時代というものが あったからだと思う。さらに、カリフォルニア大学ロ サンゼルス校の大学院でロバート・ラド、チャールズ・ C・フリーズ、C・M・ワイズという先生方に教わった Roosevelt ( Ⅱ ), T h e G r e a t S p e e c h e s o f J o h n F . Kennedy ( Ⅰ ), The Great Speeches of John F. Kennedy ( Ⅱ ), The Great Speeches of Richard M. Nixon, The Great Speeches of Harry S. Truman, The Great Speeches of General Douglas McArthur, The Great Speeches of Dwight D. Eisenhower, The Great Speeches of General R. Ford, The Great Speeches of Jimmy Carter, そ し て The Great Speeches of Ronald Reagan などはワグナー博士と 一緒に、ハリウッドの NBC へ出かけて行き、録音、録 画テープの寄贈を NBC から受けながら執筆したスピー チ・クリティシズムに関する著作である。 1977 年度の秋、英語学演習 ( Ⅱ ) のクラス(当時 は 3 年生のクラスであった)で私はクラス全員に「ア メリカのフォード大統領から手紙(私信)が来た。 」 「カーター大統領からも手紙が来ている。 」と言ってク ラス全員をビックリさせたことがあった。クラスの大 多数の学生は信じていなかったようで、 「今からこれ らの私信をみんなに回覧するから・・・」と言って回 - 12 - 英文学会通信 覧したことがあった。 第 91 号 私にはまだ、英国のロンドン大学(ユニヴァシティ・ この話は 1977 年の国際太平洋コミュニケーション カレッヂ)の大学院での言語学、音声学の研究領域で 学会(当時、私はこの学会の国際副会長の任期中で の話題があるが、本稿では述べないでつぎの機会にゆ あった)の 6 月の大会で、出版されたばかりの The Great Speeches of Gerald R. Ford と The Great Speeches of Jimmy Carter を同大会に出席していた知友の学者達 に贈呈したのであったが、その時、同大会に出席して いた友人、スタンレイ・G・リィヴズ博士(イリノイ 州立大学教授)にも贈呈したら、しばらく経過した後 に、 「君はこれらの著作をフォード大統領とカーター 大統領にも贈呈したか?送ったか?」と聞くので、 「い や贈呈していない。送っていない。」と答えると、リィ ヴズ教授は「どうして大統領たちに送らないのか? 送れよ。送れ。」と何回となく、大会期間中言うので、 二人の大統領に贈呈したその後の話であった。 私との共著には前述の恩師、ジョセフ・A・ワグナー 博士とのほか、ドナルド・W・クロフ博士(現ウエス トバジニア大学名誉教授)、ウエイン・H・オックス フォード博士(現ハワイ大学マノア校名誉教授)、G・ ブルース・ローガンビル博士(現カリフォルニア大学 ロングビーチ校名誉教授)、ジェイムズ・C・マクロス キー博士(現ウエストバジニア大学名誉教授)、ヘレン・ ウォング博士(ハワイ大学マノア校名誉教授)、そし て前述のリィブズ(現イリノイ州立大学名誉教授)ら 6 名との共著がある。 私の英語学、音声学、スピーチ・コミュニケーショ ンの学習と研究にその土台を作って下さったのは青山 学院大学の豊田實博士、加藤正男先生、藤原喜多二先 生、森下捨己先生、春木猛博士、レズリー・クレップ ス博士(ドクター・クレップスは後にオクラホマ州立大 学の教授となった先生であった。 )の各先生方であった。 また、スタンフォード大学のジョン ・ アイジエンス ン博士、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のジョセ フ・A・ワグナー博士、アール・R・ケイン博士、J. J. トンプソン博士、リオ・グッドマン-マラマス博士、 ロバート・S・キャスカート博士、ロバート・ギレン 博士の適切な御指導と御教示を受けることが出来たの は極めて幸せであった。 さらに、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の大学 院でハーバード大学のロバート・ラド博士、ミシガン 大学のチャールズ・フリーズ博士に言語学の神髄を教 わったことも極めて幸せなことであった。 また、ルイジアナ大学の C・M・ワイズ博士に同じ くカリフォルニア大学で音声学の大学院のセミナーの クラスで教わったことは応用音声学の広範囲な研究領 域にわたって Research が展開できる神髄を自分のも のとし得た素晴しい機会であった。 ずることにする。 《学会賞受賞》 本学会員の中條清美先生(生産工学部准教授)が英語 コーパス学会より学会賞を授与されました。受賞対象は 「英語学習語彙研究とパラレルコーパスを利用した DDl に関する研究」です。ここにご報告いたします。 《特別講演会報告》 ジョウアン・シャトック先生 特別講演会報告 日本大学文理学部教授 原 公章 (以下の「シャトック先生講演会」報告は、2008 年 11 月7日付けで学部に提出した「報告書」に加筆・ 訂正したものであることを、あらかじめお断りいたし ます。 ) このたび、奈良女子大学の横山茂夫教授の呼びかけ で、同大学が招聘したレスター大学教授で、人文学部 長、ヴィクトリア朝文化研究センター長、ジョウアン・ シャトック(Joanne Shattock)先生の講演会を、奈 良女子大と文理学部英文学科の共催で開催した。日時 は、 2008 年 11 月6日 (木) 午後4時 20 分から5時 40 分、 会場は3号館 3305 教室であった。講演会の会場、プ ログラム、ハンドアウト、パワーポイント、立て看 板など、全ての準備は、英文学科の前島助手を中心 に、一條助手、及び4人の副手の協力によって行っ た。 講演会には、英文学科在学生が 80 名ほど、大学院 生が 10 名ほど、他大学からの聴講者が 10 名ほど、英 文学科教員(専任・非常勤)8名が出席し、併せて 100 名をはるかに越すという盛況であった。他大学か ら参加されたのは、明治大学、駒沢大学、中央大学、 江戸川大学、大東文化大学ほかの教員・学生であり、 日本ギャスケル協会会員、日本ジョージ・エリオット 協会会員も数名出席した。また、元日本英文学会会長 で東京大学名誉教授、海老根宏先生ご夫妻もお見えに なった。 - 13 - 2009 年6月 日本大学英文学会 司会は英文学科のA・ロバート・リー教授が担当し、 多く書かれた。そのため読者は作品そのものより、ま まずシャトック先生の経歴や業績などの紹介を行っ ず作家の伝記に興味を持ち、そこから作品へと向かう た。講演題目は「19 世紀イギリスにおける女性と小説」 という構図が生まれた。その結果、オリファントが言 ( “Women and the Novel in 19th-Century Britain”) うように、19 世紀の女性作家たちは「現代の特徴の で、その内容は 19 世紀に女性小説家の作品が人気を 一つである、伝記という容赦ない芸術の最初の犠牲者 博した理由を考えたものであった。シャトック教授は となった」とも言えるだろう。しかしこれらの伝記 まず、1922 年に書かれたヴァージニア・ウルフのエッ は、作家の実像を伝えると同時に、一種の文学案内の セイを引用して、集中力を要する詩や劇ではなく、日 役割も果たすことになる。これによって読者は同時に 常の合間を見て書くことが可能な小説という形式が女 「文学の旅」(literary tourism) を味わうことも可 性にもっとも適切だったと述べ、さらに作品の背後に 能となった。19 世紀イギリスはこうして「文学巡礼」 いる女性作家の存在自体に、読者の関心が向けられて (literary pilgrimage) が流行することになる。他方、 いった、と言われた。また女性作家たちは互いの作品 作家の死後、肉親や知人による伝記も出版されるよう を読みあい、個人的にも交流しあった結果、そこに競 になる。例えば、ジェイン・オースティンの伝記は甥 争心や嫉妬心も生じたが、同時に一種の「姉妹同盟」 のオースティン・リーが、シャーロット・ブロンテの (sisterhood)、「縁戚関係」(kinship)のようなもの 伝記は親友のエリザベス・ギャスケルが、またジョー も生まれていた、とシャトック教授は指摘した。例え ジ・エリオットの伝記は夫のジョン・クロスが書き、 ば、ブロンテのハワース、ギャスケルのマンチェス いずれも評判となった。とりわけ 1857 年出版のギャ ター、ハリエット・マーティノウのロンドンは、地形 スケルの『シャーロット・ブロンテ伝』は決定版伝記 的に三角地帯を示すが、この三者は女性作家同士の一 となり、長らくブロンテ研究に君臨することになる。 種の三角関係 (triangulation) をもなした、というの ただしギャスケルは、伝記執筆をシャーロットの父パ がリンダ・ピーターソンの説である。この三人の作家 トリックから依頼されたとはいえ、シャーロットとの はいずれも、その小説で「家庭生活」(domesticity) 交友はほとんど手紙を通して行われたのであり、実際 を強調した点でも共通していた。ただし、シャーロッ に二人が出会ったのは生涯でわずか数回に過ぎなかっ ト・ブロンテがオースティンの『高慢と偏見』を、ジョー た。またギャスケルはシャーロットを一種の神話に仕 ジ・ヘンリー・ルイスに薦められるまで、読んでいな 立てようとしたため、その『ブロンテ伝』は、やがて かったことは驚くべきことだ、と教授は言う。シャー 様々な変更を迫られることになる。また、オースティ ロットはオースティンの小説を「お上品で、情熱に欠 ンの伝記では、彼女に精神障害者の弟がいた事実など ける」と手紙に書いたが、これは両者の小説を比較す は伏せられたし、エリオットの伝記でも、クロスはエ る上で興味深い。しかしディケンズが『高慢と偏見』 リオットに不都合な事実は隠していた。そのため、美 化された伝記はそれ自体が一種の読み物となり、それ を読んでいたことは確実である。 一般読者の女性作家への関心をさらに強めることに が女性小説家の作品への関心をますます高めることと なったのが、当時の「伝記」の出版とその普及である。 なった。最後にまとめとしてシャトック教授は、19 当時、女性作家が「自伝」(autobiography) を書くこ 世紀の一般読者の熱烈な「伝記志向」(appetite for とは、社会常識的に、また女性の慎みという点からた biography) と、冒険や旅行が可能な男性作家に比較 めらわれたが、それでも 19 世紀後期には、それを行 して、家庭に目を向けるしかない「女性作家たちの限 19 世紀に女性作家の小説が興隆した、 なったマーティノウとマーガレット・オリファントの られた生活」が、 ような女性作家も出た。他方、作品の背後にいる女性 二つの大きな要因であった、と述べて講演を結ばれた。 の実像を知りたいという、前述の一般読者の熱い欲求 全体としてこの講演から、19 世紀はなぜ女性小説家 により、多くの女性作家の伝記 (biography) が出版さ を多く生み出したのか、そのメカニズムの一端が明ら れるようになる。例えば、メアリ・ヘイズ(1803)、 かになったと言える。 シャトック教授は、周到なハンドアウトを用意され、 メアリ・ビーサム(1804)、メアリ・ストダート(1842)、 アナ・キャサリン・エルウッド(1843)、ジェイン・ また貴重な映像をパワーポイントで紹介しつつ講演を ウィリアムズ(1861)、ジュリア・キャヴァナ(1866) 進めていったので、話される英語の速度が本国の大学 などによる、女性作家伝や案内がそれである。彼女た 並みではあったが、日本人学生にもその内容は十分伝 ちは女性作家たちのメモワールや手紙なども駆使して わったと思われる。講演終了後、再びリー教授の司会 赤裸々な姿を描き出し、当時の読者の要求に応えた。 で、質疑応答が行われ、フロアの二人からの質問にシャ 女性作家が亡くなると、その死亡記事 (obituary) も トック教授は丁寧に回答された。最後に、シャトック - 14 - 英文学会通信 第 91 号 教授、横山教授はじめ、多くの方々のお力によりこの [司 会] 野呂 有子 (文理学部教授) 講演会が実現でき、無事終了したことを、心から感謝 [発表者] したい。 1. 《月例会報告・予定》 ●月例会報告 2008年11月以降の月例会・特別講演は以下の通り行 われました。 11月 研究発表(2008年11月22日) [司 会] 寺崎 隆行 (通信制大学院教授・経済学部教授) [発表者] 1.『骨董屋』におけるネルの役割 角田 裕子(博士後期課程2年) 2. E.M.フォースターの小説における「見えない もの」について 松山 献(通信制大学院博士後期課程3年) 12月 2008年度学術研究発表会・総会 (2008年12月13日) 【学術研究発表会(語学の部)】 [司 会] 安藤 栄子(国際関係学部教授) [発表者] 1. 事象命題と主述命題の区別とその応用 一條 祐哉(文理学部助手) 2. 中間構文に関する一考察 山岡 洋(聖徳大学准教授) 【学術研究発表会(文学の部)】 [司 会] 當麻 一太郎(文理学部教授) [発表者] 1. シャーロット・ブロンテの前期初期作品にお ける語りを巡って 新井 英夫(松山大学法学部専任講師) 2. E.A.ポーの「アモンティラードの酒樽」を恐 怖小説として読む 堀切 大史(文理学部専任講師) 1月 研究発表(2009年1月10日) [司 会] 福島 昇(生産工学部教授) [発表者] 1.『ヘンリー4世:第1部』終幕の劇的アイロニー について 上滝 圭介(博士後期課程2年) 2. The Anglo-Saxon ChronicleにおけるHAVE構 文と完了形の発達 秋葉 倫史(博士後期課程2年) 4月 研究発表(2009年4月18日) 知覚動詞構文のアスペクト 佐藤 健児 (博士後期課程2年) 2. 『闇の奥』 と 『嵐が丘』 -その共通点から見え るもの- 山本 由布子 (文理学部講師) 5月 研究発表 (2009年5月16日) [司 会] 塚本 聡 (文理学部教授) [発表者] 1. Paradise Lost 及び Paradaise Regained に於け る “the true orator” vs. “the false orator” 野村 宗央 (博士後期課程2年) 2. On Dative Alternation: What does Morphology tell us abount the Syntax of the Alternation? 田中 竹史 (博士後期課程3年) ●月例会予定 2009年6月以降の月例会・特別講演等の予定は以下の 通りです。 詳細が決まり次第、 はがきおよび本学会ホー ムページ等でご案内いたします。 6月 研究発表・特別講演 (2009年6月27日) 【研究発表】 [司 会] 原 公章 (文理学部教授) [発表者] 杉本 久美子 (東北女子大学講師) [演 題] The Longest Journey 一試論 それぞれの real と Rickie の死について 【特別講演】 [司 会] 関谷 武史 (文理学部講師) [講演者] 加藤 行夫 (筑波大学教授) [演 題] 悲劇の座標軸 9月 アメリカ文学シンポジウム (2009年9月26日) [司 会] 高橋 利明 (文理学部教授) [発題者] 1. 宗形 賢二 (国際関係学部教授) 2. 堀切 大史 (文理学部専任講師) 3. 高橋 利明 (文理学部教授) 4. 長田 光展 (中央大学文学部教授) 10月 英語学シンポジウム (2009年10月10日) [司 会] 塚本 聡 (文理学部教授) [発題者] 1. 田中 竹史 (博士後期課程3年) 2. 松崎 祐介 (日本大学豊山女子高等学校教諭) 3. 塚本 聡 (文理学部教授) 11月 研究発表 (2009年11月21日) [司 会] 中村 光宏 (経済学部教授) [発表者] - 15 - 2009 年6月 日本大学英文学会 1. 未定 Prima , through The Readie and Easie Way , to Paradise Lost .” Milton in France . Ed. Christophe Tournu. Bern: Peter Lang, 2008. (3)Kazuo Mano. Studies in the Languages of the Paston Letters (ALA 出版、2009 年1月、全 280 頁) (4)サイコアナリティカル英文学会 ( 編 )、 『英米文 学の精神分析学的考察』( 啓文社、2009 年 ) (5)小野寺 健(訳) 、 『博物館の裏庭で』 (ケイト・ア トキンソン著、新潮社、2008 年) ---、 『回想のブライズヘッド』( イーヴリン・ ウォー著、岩波書店、 2009 年 ) (6) 日本ブロンテ協会 ( 編 )、 『英語・英文学のフォー ムとエッセンス』 (大阪教育図書、2009 年) 杉本 宏昭(日本工業大学専任講師) 2. 未定 森 晴代(理工学部講師) 12月 2009年度学術研究発表会・総会 (2009年12月12日) 【学術研究発表会(文学の部)】 [司 会] 未定 [発表者] 1. 未定 2. 未定 【学術研究発表会(語学の部)】 [司 会] 未定 [発表者] 1. 未定 2. 未定 1月 研究発表(2010年1月23日) [司 会] 未定 [発表者] 1. 未定 2. 未定 China Fictions/English Language: Literary Essays in Diaspora, Memory, Story. A. Robert Lee Rodopi Press (Amsterdam and New York) has just brought out Professor A. Robert Lee's new book, Gothic ●研究発表者募集 当学会では、月例会・年次大会の発表者を募集してい ます。 申し込み希望者は、以下について事務局までお知 らせ下さい。なお、検討の結果、ご希望に添えない場合 がございます。 1. 氏名 2. 住所 3. 電話番号 4. 所属 5. 発表希望年月 6. 発表題目 7. 要旨(日本語400字以内、英語200語以内) 《新刊書案内》 本学会員による新刊書を下記の通りご報告します。 なお、学会員で研究書等を出版された方は事務局(英 文学科研究室)までお知らせください。新刊書案内と して随時掲載いたします。 (1)Lee, A. Robert. China Fictions/English Language: Literary Essays in Diaspora, Memory, Story. Amsterdam; New York: Rodopi, 2008. (2)Yuko (Kanakubo) Noro. “On Milton's Proposal for a “Communitas Libera” Reconsidered – from Defensio to Multicultural: Idioms of Imagining in American Literary Fiction . This deals with a wide range of American novels from the early 19th Century through to the contemporary era. You can get an idea of what it contains (more than 500 pages) from the cover blurb which reads as follows: Gothic to Multicultural: Idioms of Imagining in Amrican Literary Fiction , twenty-three essays each carefully revised from the past four decades, explores both range and individual register. The collection opens with considerations of gothic as light and dark in Charles Brocken Brown, war and peace in Cooper's The Spy, Antarctica as world-genesis in Poe's The Narrative of Arthur Gordon Pym , the link of “The House” and main text in Hawthorne's The Scarlet Letter , reflexive codings in Melville's Moby-Dick and The Confidence-Man , Henry James' Hawthorne as self-mirroring autobiography, and Stephen Crane's working of his Civil War episode in The Red Badge of Courage . Two composite lineages address apocalypse in African American fiction and landscape in women's authorship from Sarah Orne Jewett to Leslie Marmon Silko. There follow culture and anarchy in Henry James' The Princess Casamassima , text-into-film in Edith Wharton's The Age of Innocence , modernist stylings in Fitzgerald, Faulkner and Hemingway, and roman noir in Cornell Woolrich. The collection then turns to the - 16 - 英文学会通信 limitations of protest categorization for Richard Wright and Chester Himes, autofiction in J.D. Salinger's The Catcher in the Rye , and the novel of ideas in Robert Penn Warren's late fiction. Three closing essays take up multicultural genealogy, Harlem and the Black South, in African American fiction, and the reclamation of voice in Native American fiction. 第 91 号 Languages of the Paston Letters となっていますが、こ れで私の Paston Letters 研究が終わったわけではあり ません。またまだ調べなければならない文法項目は他 にたくさんあります。今回の本の出版をきっかけに、 また励みとして、今後もつづけていきたいと思います。 それで中島先生をはじめ、今までお世話になった多く の先生、特に営麻一太郎先生、原公章先生、高綱博文 先生へのご恩返しになればと願っています。 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● Studies in the Languages of the Paston Letters について 『英米文学の精神分析学的考察』 について 日本大学通信教育部 真野 一雄 日本大学文理学部講師 関谷 武史 15 世紀ノーフォークの豪族パストン家の親子3世 代 14 人の書簡を中心とした『パストン家書簡集』は 当時の地方の生活・社会、後半は宮廷情勢をも伝えて くれる歴史資料となっています。私に Paston Letters 研究のきっかけを与えてくださったのは 15 世紀の 統語法研究をされている名誉教授の中島邦男先生 です。主に私が勤務する通信教育部の『研究紀要』 に掲載した Paston Letters に関する論文をまとめて 一冊の本にすることにしました。ちなみに目次は 1. A Study on the Inflectional Endings of the Verbs, 2. On 3rd Person Singular Present Indicative -s, 3. On 3rd Person Singular Present Indicative -s (2), 4. Reflexive Verbs, 5. Impersonal Verbs, 6. Impersonal Verbs (2), 7. Do, 8. Do (2), 9. Gerund, 10. Gerund (2), 11. Relative Pronouns, 12. Accusative with Infinitive と なっています。特に動詞に関連するものを中心に、調 べました。各個人・各世代間の相違を考察し、古い中 英語的な特徴と新しい近代英語的な特徴を明きらかに し、英語の発達段階における位置づけをする試みを いたしました。言語全般を扱ったものではありませ んので、書名は Studies in the Languages of the Paston Letters とするのはおこがましいのですが、中島邦男 先生が南雲堂から出版された Studies in the Languages of Sir Thomas Malory, Studies in the Languages of the Cely Letters と同じものにさせていただきました。私 にとりましてはそれだけでも光栄なことです。毎回原 稿締切日にあわせて書いた論文ですから改善の余地は 多々あると思います。でもそんな論文を一冊の本にす るよう勧めてくださったのが通信教育部長の高綱博 文先生です。高綱先生の勧めがなければ決して本に なることはなかったと思います。書名は Studies in the サイコアナリティカル英文学会は、この度、創立 35 周年記念論文集として、 『英米文学の精神分析学的 考察』を 2009 年 1 月 20 日(火)に出版いたしました。 掲載された論文は 26 篇で、466 頁の大型判の論集と なりました。私も編集に参加し、原稿に目を通し、時 には助言をしたりしました。出来栄えは外観だけでな く、内容も立派なものに仕上がったと考えております。 日本大学英文学会の多くの会員の論文が掲載されたこ とも喜ばしいことであります。 私がこの学会に入会したのは高知大学に在職してい た頃で、かれこれ 25 年程前ではなかったかと思いま す。今は故人となられた学会の創設者、今田準造先生 が初代会長をされていました。当初から現会長の小園 敏幸先生と親しくお付き合いすることもあって、ずっ と会員として、常任理事として関係して参りました。 平成 2 年 4 月より日本大学文理学部に移籍して以来、 何度か学会の研究発表の会場校を引き受けたりして参 りました。その都度、諸先生方を始め助手、副手の皆 さんに御尽力いただきました。そんな関係もあって、 院生が研究発表をしたり、学会誌『サイコアナリティ カル英文学論叢』に投稿したりすることが年を追う毎 に増えて参りました。お陰で会は順調に発展し、この 度、日本学術会議協力学術研究団体に指定されました。 精神分析学と申しますと、性欲論のフロイトですか、 集合的無意識とやらのユングですか、と受け流されて しまうことが時にはありますが、現在の精神分析学は、 特に J. ラカンの功績によって、ヘーゲルやカントの 哲学、ソシュールの言語論、J. クリステヴァや L. イ リガライのフェミニズム、L. アルチュセールのマル キシズム、J. バトラーや E. K. セジックらのジェン - 17 - 2009 年6月 日本大学英文学会 ダー論等々と密接な関係を持ち、正に現代思想:現代 『英語 ・ 英米文学のフォームと エッセンス』 批評の中心をなしております。昨年度院生とポストコ ロニアルの勉強をいたしましたが、E. W. サイードや F. ファノンや H. K. バーバの文学論は精神分析学に 裏打ちされていることを強く感じました。 以上、「学会通信」の求めに応じて会の歴史を含め て記念論集について報告いたしました。尚、論集につ いては英文学科研究室図書に 1 冊ありますので、興味 のある方はお目通し下さい。また、サイコアナリティ カル英文学会は今年度の第 36 回大会を日本大学文理 学部を会場にして、10 月 3 日(土)午後 1 時より開 催することになっております。以上 2 点を付言して私 の報告といたします。 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 『博物館の裏庭で』 と 『回想のブライズヘッド』 大学院文学研究科講師 小野寺 健 昨秋から年初にかけて2点の名作を訳した。『博物 館の裏庭で』はイングランド北部の歴史的な町ヨーク を故郷とする貧しい人々の、4世代にわたる主に女性 の人生を緻密に描いた、女性作家 Kate Atkinson の第 一作である。史上の奇書『トリストラム・シャンディ』 を産んだ町だけに、二つの世界大戦に翻弄された庶民 の悲しい人生の記録もとかく奇行に富んでいて、悲し みを深める。狭隘な意識の世界に逼塞する前衛的な作 品群を前にして、小説の未来が案じられる今、自信に あふれた伝統的リアリズムにささえられた正統派の作 品が現れたこと自体が奇跡の観がある。天才的作家 ウォーの『ブライズヘッド』は、戦中戦後の物心とも 松山大学法学部専任講師 新井 英夫 本書は、佐野哲郎京都大学名誉教授が 2008 年 2 月 に喜寿を迎えられたことを祝し、日本ブロンテ協会会 員 52 名が寄稿し、編集された記念論文集である。わ たしは「 『ワイルドフェル・ホールの住人』における 読みの可能性」と題した論文を寄稿し、 「書簡体」と「日 記体」の併用というこの小説独自の複雑な語りの手法 に着目し、いかにこの小説が社会的真実に重きを置い て執筆されたものであるかを論じた。 本書はそのタイトルが示すとおり、近年の文学研究 の動向を踏まえ、様々な作家の作品を多面的な視点か ら論じたものである。なかでも特筆すべきは、ブロン テに関する論文が 36 編にもおよび、近年の日本にお けるブロンテ研究の全体像を窺い知ることができるこ とにある。研究会員の先生方にはもちろん、学生会員 のみなさんにも卒論等を執筆する際に、大変有益な一 冊となるだろう。 日本におけるブロンテの人気は今なお強く、本年秋 には、ブロードウェイで人気を博し、トニー賞 5 部門 にノミネートされ話題になったジョン・ケアード脚本・ 演出のミュージカル『ジェイン・エア』が、松たか子 を主演に迎え、日本で初演される。本書がさらなるブ ロンテ人気を呼び、日本におけるブロンテ研究の発展 に寄与することを願っている。 (2009 年 3 月、大阪教育図書、A5 判横組み、546 頁、 10,500 円) 《事務局・研究室だより》 に貧寒たる時代を背景に、その逆の豪奢な物質的生活 のなかでの戦前の精神的苦悩を描いて、英国文化と青 春の輝きを秀逸な文体で創造した傑作。必読の作品で ある。 (『博物館の裏庭で』、新潮社・『回想のブライズ ヘッド』上下、岩波文庫) ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 退任挨拶 元日本大学文理学部助手B 有川 夕貴 前年度 1年間助手Bとして英文学科事務室で過ごさ せていただきました。先生方、学生の皆さん大変お世 話になりました。 1年前、英文学科を卒業し、再び日本大学文理学部英 文学科でお世話になることになりました。最初は期待 と不安でいっぱいでした。お世話になった先生方、英 文学科のために頑張ろう、後輩の力になりたいという 気持ちがあるものの、慣れない仕事の中で本当に皆さ - 18 - 英文学会通信 第 91 号 んのお手伝いができるのだろうか、という不安がとて 皆様、本当に一年間大変お世話になり、ありがとう もありました。案の定、わからないことばかりで先生 ございました。 方や学生の皆さん、英文学科スタッフへ多大な迷惑を かける日々でした。それでも学生達は笑顔で話しかけ てくれ、相談に事務室へ来てくれました。先生方も事 務室のスタッフも優しく声をかけてくれ、その言葉に 救われました。改めて英文学科の人々の温かさ、優し さを実感しました。本当に英文学科は素晴らしいとこ ろだと思います。また、英文学科から離れた今、英文 学科の素晴らしさを改めて痛感しております。学生の 皆さんは、先生方から学問を始め、たくさんのことを 学んでください。きっと皆さんのこれからの人生にプ ラスになることと思います。 私は助手Bとして過ごしたこの 1年間でたくさんの ことを学ばせていただきました。その中でも一つとて も印象に残っている言葉があります。それは、私が失 敗・ミスをしてしまった時のことです。私が「どうし よう。 」 「怒られてしまうかもしれない。」と不安に思っ ていると、「失敗してしまったのなら、これからそれ をどうしていくか考えよう。」とある方が言ってくれ ました。その失敗を悔いていても、それが成功に変わ るわけではないし、必要なのは失敗してしまったこと を今どうすることが最善なのかということです。どん なに気持ちが救われたことかわかりません。過去を反 省することも必要かもしれません。もちろん、まった く気にしなくてよい、ということでもありません。で も、私たちは前へと進まなければならないのです。過 去を悔むより、次への一歩を考える方がとても大切な んだ、ということを教えてもらいました。私は何か失 敗をすると悔むばかりで次のことを考えるということ をほとんどしませんでした。でも、この言葉を聞いて からは次の行動へと迅速に動くことができました。私 にとって、とても力になる言葉です。もちろん、失敗 しないようにしていくことがよいのですが、人間だれ しも失敗をすることはあると思います。私はこれから もこの言葉を思い出し、日々頑張っていきたいと思い ます。 一年という短い期間ではありましたが、私にとって かけがえのない思い出に残る一年でした。たくさんの 出会いがありました。先生方をはじめ、英文学科のス タッフ、学生の皆さんには本当に感謝の気持ちでいっ ぱいです。そして、英文学科・英文学会のお手伝いが 少しでもできたことをとてもうれしく思います。 私もこれからは、助手Bとして学んだことを活か し、教員として恥じないようますます研修・研鑽に努 め、子どもたちのために尽力して行きたいと考えてい ます。 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 退任挨拶 -たからものになった四年間- 元日本大学文理学部副手 前田 京子 休日なんていらない。 一日でも、 一時間でも長く過ご したい。 ――「副手」の任期満了日が近づいていた 3 月には、 いつもそのよに感じていました。 私は英文学科で、学生として 4 年間、そして卒業の 2 年後となる 2005 年の 4 月から 2009 年の 3 月まで副 手として 4 年間、合計で 8 年間を英文学科で過ごしま した。英文学科での仕事はとにかく楽しく、喜びで、 幸せなことでした。このように感じられる環境にいら れたことは、本当に恵まれたことです。 学生・院生の皆さんにできるだけわかりやすく、開 かれた事務室であるよう、改良・改善の日々でした。 副手は授業を持つことはありませんが、大学生活の指 導や手続き方法を教える機会がたくさんありました。 しかし、指摘されて気がつくことも多くあり、事務と して至らないことがたくさんあったのではないかと毎 日反省していました。大切な大学生活をしっかりサ ポートできていたのか、今でも心配です。それでも何 か質問に来てもらえると、嬉しくて受付カウンターか ら身を乗り出す思いで対応していました。 学生さんの大学生活サポートのほかにも、副手とし てたくさんのことに関わることができました。 図書関係の仕事のためにたくさん勉強しました。学 生のときには読んだことのないような洋書が多く、初 めのころは、本を探しに来た先生や学生さんをお待た せしてばかりでした。英文書庫のプロになり、使いや すい書庫づくりをしたくて、助手さんから作家や本の 名前や研究分野のことを勉強、図書館の専門の方から 図書管理のいろはを勉強。書庫の整頓をしながら書庫 の本を視線で隅まで舐めまわしました。成果あって貸 し出しの依頼があった図書をすばやく見つけられたと きは、冷静なフリをして心の中でガッツポーズです。 探しまわってやっとのことで目的の本にたどり着いた ときは、事務室に走って戻り、小躍りしながら助手さ んや副手の仲間のところへ褒めてもらいに行きまし た。 学会関係の仕事は、フォーマルな場所での立居振る - 19 - 2009 年6月 日本大学英文学会 舞いや、大切なデータの管理、学会開催の用意など、 方を抱え、パニックを起こしそうな量のことを常に穏 勉強になることがたくさんありました。英文学会やそ やかに手際よくこなし、忙しくてもユーモアを忘れな の他の学会で事務スタッフとして先生方にまぜていた い。そんな助手さんの姿勢は私のお手本で、さまざま だき、備品や会場の準備から学会の参加まで体験しま した。学会で仕事をさせていただけることがうれしく て、つい張り切って残業してしまい、先生方にご心配 をかけてしまったこともありました。時間を忘れるく らい楽しかったのです。簡単な作業のお手伝いくらい しかできませんでしたが、学会でお会いすることので きた先生方からたくさんの励ましの言葉を(時には素 敵なおみやげまで)いただきました。 オープンキャンパス準備も、時間を忘れて夢中に なった仕事の一つです。受験生が見てわくわくするよ うな飾り付けを…ぱっと目を引くポスターを…英語の かっこよさを…英国らしくおいしいお茶を…と、走り 回ってお祭り騒ぎでした。 緊張感のある試験監督も楽しかったです。「楽しい」 などと言っては学生の皆さんには怒られてしまうかも しれませんが、誰かが消しゴムを落として困っていな いか、体調のすぐれない人はいないか、集中できる環 境が整っているか、とゆっくり試験会場をまわりなが ら、学生さんの大学生活を傍で感じられたのです。 先生方の部屋の戸締りは、毎日の大好きな仕事でし た。それぞれのお部屋から先生の情熱があふれていて、 頭の中で先生の声が聞こえてくる感覚があり、戸締り は、その日に先生とお話したことを思い出して幸せな 気持ちになる時間でした。 同僚の副手とは、このような快適な忙しい毎日を楽 しく過ごしました。社会人として未熟な部分だらけで したが、卒業年度こそ違うものの同じ英文学科の卒業 生である仲間と共に、大切な先生や学生をどのように サポートできるかを考え、常に向上心をもって支え合 い、指摘しあいました。英語の面でも皆で協力してい ました。日常業務の傍ら、新しい英会話のフレーズを どこかで聞けば副手の皆に広めて練習しあう時間はと ても楽しい瞬間でした。特に英語で電話がかかってき たときの事務室の緊迫感は忘れられません。電話を受 けた時は聞き取りの難しさと勉強不足の英語を副手の 仲間に聞かれる恥ずかしさとで冷や汗をかきながら対 応し、周りで見守る側になった時は一緒になってハラ ハラ、ソワソワ。電話を切ったところで、皆で胸をな なことを「助手さんだったらどうするだろう」という 視点で考えるようになりました。仕事がつらい時や不 安な時でさえも楽しく勤められたのは、助手さんが傍 にいてくれることが心強く、安心できたからです。 そして何より、先生方のそばに居られることがとて も幸せでした。授業の合間に、先生に授業の様子を教 えていただいたりおしゃべりをしたりする時間は楽し く、つい仕事の手が止まっていたかもしれません。授 業では厳しい先生が、その外でどれだけ学生・学科の ことを考え、議論を重ねてくださっていたのか。授業 では優しく明るい先生が、その外でどんなに遅くまで 教材研究やご自身の研究に向き合ってくださっていた のか。その姿を間近で感じることができ、先生方のい てくださる英文学科で学べる安心感と尊敬の気持ちで 満たされていました。本当に感謝しています。 伝えきれない感謝の気持ちをどうしたら言葉にでき るのか、どんなに考えても答えが出ず、やはりまとま りのない文章になってしまいました。心からの感謝を こめて…本当にありがとうございました。この大切な 時間を心にとどめ、これからもしっかり歩んでいきま す。副手として英文学科の一員でいられたこの4年間 は、私の大切なたからものです。 でおろし検討をたたえあったものでした。 また、事務室では助手さんのそばでたくさんのこと を教えていただきました。研究とは何なのか、学会は どんなところなのかも分からずに副手になった私に とって、助手さんは初めて間近で接した「研究者」で、 副手のチーフで、人生の先輩でした。研究と事務の両 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 宜しくお願いします 日本大学文理学部助手B 青木 明香 今年度より英文学科事務室で助手Bとして勤務させ て頂くこととなりました。大好きな母校で働かせて頂 くことを、とても光栄に思っております。 学生時代、私は学科事務室にとてもお世話になりま した。分からないことがあると、その都度瞬時に対応 して下さり、編入学の私を三年間支えて下さいました。 この三月に無事卒業することができましたのも、先生 方のご指導と学科事務室の皆さんのお陰だととても感 謝しています。 英文学科の先生方の講義は語学、文学ともにとても 興味深いものでした。これまで語学について疑問に 思っていたことが理解でき、また著名な文学者の作品 に触れることができたばかりではなく、作者の意外な 一面などを垣間見ることができ、本当に夢のような三 年間でした。卒業して振り返ると、もっともっと勉強 - 20 - 英文学会通信 第 91 号 しておけば良かったと反省もしていますが、こんなに 思っています。 そして一日も早く皆様のお役にたて 充実した日々を過ごすことができるなどとは思っても る日が来るように毎日たくさんのことを吸収していこ いませんでした。この四月からは、学科事務室勤務と うと思っています。 なり、私が今までお世話して頂いたように学生の皆さ んを支援し、ご指導いただいた先生方・学科に恩返し がしたいと考えています。 文理学部では、学科・クラスを超えて多くの人と友 人になることができます。また、クラブ、サークルな どで視野を広げることもできます。試験、レポート、 論文など勉強の面で大変なこともありますが、新入生 の皆さんには、できるだけ多くのことを吸収し、楽し い学生生活を過ごして頂きたく思っています。そのた めには、この英文学科での学生生活で何か一つ目標を 持つことをお勧めします。私は、皆さんがこの日本大 学で有意義な学生生活を送り、目標や夢に近づくこと ができるよう精一杯サポートしていけたらと考えてい ます。至らない点は多々あるかと思いますが、どうぞ 宜しくお願い致します。 まだまだ未熟者ではありますが、精一杯頑張ります のでよろしくお願い致します。 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 着任のご挨拶 日本大学文理学部助手B 森尾 文恵 本年度から英文学科の助手Bとして勤務することに なりました。 私は四年前に日本大学に入学しました。 福島から上京してきた私にとっては不安と期待でいっ ぱいだったことを今でも覚えています。私にとって英 文学科で学ぶことは憧れでした。そして実際に入学し てみると予想以上に魅力的で、ますます英文学科を好 きになっていきました。この四年間は様々なことを学 び私を大きく成長させてくれたと確信しています。そ れは尊敬する先生方や、友人、大学の職員の方々抜き には語れません。 私にとって助手Bという仕事は学生さんたちに大き く関わっていく存在だと思っています。私が学生の頃 は先輩方にとてもお世話になりました。時には優しく、 時には厳しい助手Bの先輩方には多くのサポートをい ただきました。そして、無事に卒業を迎えることがで きました。これらを考えるとプレッシャーの大きさに 躊躇してしまいがちですが、英文学科の助手Bとしての 自覚を持ち、精一杯仕事に取り組んでいこうと思います。 そして、学生時代に授業でたくさんのことを教えて 下さった魅力的な先生方と同じ環境でお仕事させてい ただくことは大変光栄なことだと感じます。今後は、 感謝の気持ちを込め、お手伝いさせていただきたいと ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 2009・2010 年度運営委員 昨年 12 月開催の総会にて 2009 ・ 2010 年度運営委員 が以下の通り選出されました。 会 長 寺 崎 隆 行 副会長 吉 良 文 孝 ○飯 田 啓治朗 ○寺 崎 隆 行 岡 田 善 明 ○當 麻 一太郎 ○吉 良 文 孝 中 村 光 宏 黒 澤 隆 司 ○野 呂 有 子 古 賀 康 博 ○原 公 章 齊 藤 伸 ○深 沢 俊 雄 ○佐 藤 秀 一 福 島 昇 ○佐 藤 勝 ○保 坂 道 雄 渋 木 義 夫 ○堀 切 大 史 鈴 木 孝 (会計監査) 真 野 一 雄 関 谷 武 史 間 山 伸 ○高 橋 利 明 水 口 俊 介 武 中 誠二郎 宗 形 賢 二 ○塚 本 聡 (会計) 山 上 登美子 (○印は常任委員) [任期は2009年4月より2011年3月まで] ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●2008年度行事 ◆文理学部英語弁論大会 (文理学部主催) 11 月 22 日(土)に 3 号館 2 階 3205 教室において 開催されました。結果は次の通りです。 1位 桶田 由衣 (英文学科3年) 2位 菊地 慎 (ドイツ文学科4年) 3位 山田由里子 (哲学科1年) ◆大学院特別講義 2008年11月以降の大学院特別講義は以下の通り行わ れました。 12月16日 (火) 4・5時限、 17日 (水) 2・3時限 [講 師] 阿野 文朗 (東北大学名誉教授) [講義題目] 「ホーソーンを読み解く―多義性・ ロマンス・<中間地帯>―」 - 21 - 2009 年6月 日本大学英文学会 ◆卒業式 Dickens, Charles (6) 3 月 25 日(水)に午前 10 時より日本武道館におい Drabble, Margaret (1) て卒業式が行われました。同日午後 12 時半より文理 Fielding, Helen (1) 学部 3 号館 3206 教室におきまして学位記の伝達式が 行われました。本年度は学部卒業者 125 名、大学院博 士前期課程修了者 10 名、博士後期課程満期退学者は 2 名でした(3 月 25 日付)。 また、学部長賞は中島大気さん、優等賞は加藤有里 さん、優秀賞は浅見一葉さんでした。同日午後 6 時よ りヒルトン東京において謝恩会が催されました。 ◆ 2008 年度大学院学位論文・卒業論文 2008 年度に提出された大学院修士論文のタイトルおよ び学部卒業論文の分野・作家の内訳は以下の通りです。 〈2008 年度大学院修士論文 タイトル一覧〉 【文学】 大前 義幸 A Conflict between Author and Illustration-A Focus on Dickens’s Oliver Twist Gaskell, Elizabeth (1) Huxley, Aldous (1) Jones, D. W. (1) Joyce, James (2) Kay, Susan (1) Lewis, C. S. (1) Orwell, George (1) Potter, Beatrix (2) Rowling, J. K. (5) Shakespeare, William (3) Shelley, Mary Wollstonecraft (1) Stevenson, R. L. (1) Swift, Jonathan (1) Travers, P. L. (1) Wells, H. G. (1) Wilde, Oscar (1) 蒋 麗 Villette - Toward Independence of Women Lucy Snowe in the Society 髙木さゆり Hester Prynne’s New Feminine Attraction in The Scarlet Letter 長谷川朋美 Huck’s Moral Development in The Adventures of Huckleberry Finn 米山 耕平 What or Who is Mr. Hyde? - Rereading The Strange Case of Dr. Jekyll and Mr. Hyde 【語学】 近藤 一樹 The Semantics of Will in if -clauses 佐藤 直美 The Study of It-Cleft Sentences 谷村 航 A Study of the There Construction 野笹 智之 The Diversity between Simple Present and Progressive Form with Futurate 江村 直人 A Study of the Present Perfect and the Simple Past - On the Interchangeability between the Present Perfect and the Colloquial Preterite 【米文学】 Capote, Truman (1) Dickinson, Emily (1) Ellison, Ralph (1) Fitzgerald, Francis Scott Key (1) Hawthorne, Nathaniel (11) Hemingway, Ernest (3) King, Stephen (1) Poe, E. A. (2) Salinger, Jerome David (2) Twain, Mark (2) Wright, Richard (1) 〈2008 年度学部卒業論文 分野・作家内訳一覧 (カッコ内の数字は人数)〉 【英文学】 Austen, Jane (6) Barrie, James Mathew (1) Brontë, Emily Jane (4) Carroll, Lewis (3) Dahl, Roald (2) - 22 - 【一般言語学】 (4) 【対照言語学】 (3) 【英語学】 (20) 【英語史】 (5) 【英語教育】 (4) 【その他】 (19) 英文学会通信 ● 2009 年度行事 第 91 号 ●日本大学英文学会 2007 年度決算額 ◆入学式・開講式 4 月 8 日(水)に日本武道館において入学式が挙行 され、同日午後2時半より文理学部で開講式が行われ ました。英文学科の入学者数は次の通りです。 学部入学者 152 名 大学院博士前期課程入学者 4 名 大学院博士後期課程入学者 2 名 ◆本年度在籍者数 学部 2年生 172名 3年生 182名 4年生 174名 大学院博士前期課程 9名 博士後期課程 11名 2007 年度決算額 前年度からの繰越金 収入の部 会費 研究会員 同窓会員 学生会員(新入生) 雑収入 補助金 収入合計 \1,311,676 \1,675,000 \964,000 \343,000 \368,000 \21,641 \400,000 \2,096,641 支出の部 ◆大学院特別講義のお知らせ 英文学、米文学、英語学の各分野の著名な先生方によ る大学院特別講義が 2009 年度もとりおこなわれる予定で す。大変貴重な機会ですので、是非ご参加ください。詳 細は英文学科ホームページおよび掲示でお知らせします。 論叢出版費 会員名簿出版費 学会通信出版費 同窓会通信出版費 通信費 大会費 大会懇親会補填費 講演謝礼費 大会 月例会 講演会 他学会年会費 日本英文学会 日本アメリカ文学会 日本英語学会 英語教育関連学会 用品費 予備費 支出合計 日本大学英文学会基金への繰入 計 次年度への繰越金 - 23 - \549,045 \152,250 \259,962 \68,460 \512,870 \36,543 \0 \93,000 \0 \0 \93,000 \21,120 \7,000 \7,060 \7,060 \0 \129,040 \30,868 \1,853,158 \0 \1,853,158 \1,555,159 2009 年6月 日本大学英文学会 ⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰ 『英文学論叢』第58巻 原稿募集について 日本大学英文学会機関誌『英文学論叢』第58巻(2010年3月発行予定)の原稿を募集いたします。 投稿希望の方は『英文学論叢』第57巻巻末の投稿規定に従って下記にお送り下さい。 締切日 2009年9月30日(水)(必着) 宛 先 〒156-8550 東京都世田谷区桜上水3-25-40 日本大学文理学部英文学研究室内 日本大学英文学会 TEL: 03-5317-9709 FAX: 03-5317-9336 E-mail: [email protected] ⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰⅰ - 24 -
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