ポータルシステム刷新により8000人を超えるグローバル

ポータルシステム刷新により8000人を超えるグローバルユーザに情報共有環境を提供
コラボレーションを加速し、グローバルモノづくりを支える部門横断的な情報流通を目指す
“グループ会社全体の情報の共有化を実現するポータルは、業務革新とともに、全社的な事業戦略を世界各国の拠点に
示す重要な役割を担っています。今後の海外での事業拡大に伴い情報システムのグローバル化を図る中で、その先鞭
をつけるシステムとして期待しています”
ジヤトコ株式会社 情報システム部 主担 佐藤 尚武氏
自動 車 用 変 速 機( A T・C V T )の専 業メーカーとして世 界トップ
ス自体の数も大幅に増加し、必要な情報にたどり着くことが困難
クラスの技 術 競 争 力を有し、各 国の自動 車メーカーに製 品を供
になってしまった。
まして合併を機に合流した社員は、地図もなく
給 するジヤトコ株 式 会 社( 以 下 、ジヤトコ)。ジヤトコでは、9 0 年
見 知らぬ土 地に立たされたような状 況となり、
「 情 報は増えたが
以 降の業 界 再 編による事 業 合 併などビジネス環 境が激 変 する
活用できない」
という事態を招く結果となった。
この課題を解決す
なか、情 報の共 有 化を図る仕 組みの整 備が急 務とされていた。
るため、情 報システム部ではまずN o t e s 上にポータルを構 築し、
10年来使い続けたIBM Lotus Notes( 以下、Notes)に蓄積
基本的な情報整理を進めることで、情報共有環境の整備を図っ
されていた膨 大な情 報 資 産を引き継ぎながら、世 界 各 国 のグ
た。ひとまず状 況は改 善されたが、
これだけでは問 題の根 本 的
ループ会 社 約 8 0 0 0 人に対して統 合された情 報 共 有 基 盤を提
な解決は図れなかった。
供するために、ジヤトコが採用したのは「Oracle WebCenter
2003年には、
メキシコにCVT生産会社「JATCO México,S.
Interaction」
( 旧 製 品 名 称:B E A A q u a L o g i c U s e r
A. de C.V.」、
フランスに自動変速機および同部品の輸入販売・
I n t e r a c t i o n )をベースにした企 業 情 報ポータル( 以 下 、E I P )
開発新会社「JATCO France SAS」を設立、2004年には韓
だった。情報共有基盤の構築に至った背景、製品選択の経緯、
国に品質サービス・営業活動サポート新会社「JATCO Korea
導入後の効果、そして今後の展望を紹介する。
Service Corp.」を設立するなど、相次いで海外に拠点を整備
し、海外の自動車メーカーとの取引を急速に強化・拡大。事業拡
合併と海外事業拡大により、
大に伴い、情報共有環境のグローバル化が急務となった。
ところ
グローバルな情報共有環境の整備が急務に
が、Notesはクライアント側にモジュールが必要なため、すべての
グループ会 社に統 一した環 境をつくることは困 難だった。
まして
ジ ヤトコは 、世 界 各 国 の 自
運用管 理の負荷を考えれば、既 存の環 境をこれ以 上 拡 大 適用
動 車メーカーに自動 車 用 変 速
させることはコスト面でも大きな課題を抱えることになる。ジヤトコ
機( A T・C V T )を供 給 するグ
の情報システム部門は、
この難題を解決するべく、膨れ上がった
ローバルカンパニーである。同
Notesを整理し、Web技術を活用したEIPによる情報共有環境
社 では、近 年 の 市 場 環 境 の 変
を構築するソリューションがベストだと判断した。
化や業界再編の流れを受けて、
ジヤトコ株式会社
情報システム部 主担
佐藤 尚武氏
1 9 9 9 年には日産自動 車のA T・
Notes全廃を決断、ユーザの利便性を保ちながらEIPによ
C V T 部 門が分 社したトランステ
る情報共有基盤の構築へ
クノロジー株 式 会 社と、2 0 0 3 年
には三菱自動車工業のAT・CVT部門から事業分割によって独
EIP導入を決断した背景を、情報システム部 主担の佐藤尚武氏
立したダイヤモンドマチック株式会社との合併を行い、技術力や
は以下のように説明する。
生 産 力を大 幅に増 強してきた。この相 次ぐ合 併によって、ジヤト
「 N o t e sの継 続・拡 張という選 択 肢もなかったわけではありま
コには、
日本を代表する2大自動車メーカーが保有していた設計
せん。ですが、弊 社は日産自動 車グループと連 携を深めるなか
技術、生産技術、管理技術をはじめ、
さまざまなノウハウ、情報資
で、統 合できる部 分は極 力共 通 化してコストダウンを図るという
産が加わり、競争力は格段に向上した。
方針を立て、
メールシステムを共有することにしたのです。
メール
しかし、各 社 から吸 収した 情 報を生 かしてシナジー 効 果を
システムが外 部に置かれると、
メッセージングを背 骨に置いてい
発 揮 するには、情 報 の 共 有 化を実 現 する環 境 の 整 備 が 不 可
るNotesの利用価値は極端に低下します。
この時点でNotesを
欠である。その環 境を構 築 するために、従 来から利 用していた
継続する意味がなくなりました。では、代替技術をどうするのかと
Notesのデータベースに情報を蓄積することにしたが、結果とし
考えたとき、Notesの利便性を保ちながら、情報共有環境を強化
てN o t e sで管 理される文 書ファイルの数はもちろん、データベー
できる技術はEIPしかないと判断したわけです」
社 内ポータルシステムの刷 新
ジヤトコ株式会社
情報システム部
山中 隆弘氏
て絞り込み、約150は整理・統廃合、80はOracle WebCenter
を決 めた 後 、ジヤトコでは 市 場
I n t e r a c t i o nの機 能により代 替、5 0はコラボレーション機 能を活
に複 数 存 在 するテクノロジーか
用して代替。ID管理の仕組みはWebで開発し直し、
メールは日
ら何を採用するべきかの検討が
産自動 車グループと統 合した。N o t e s 上で運 用されていたI S O
はじまった。数社のポータル テク
文書管理のアプリケーションなど、残る20機能はパッケージ製品
ノロジー ソリューションがピック
への置換やWeb形式で作り直しを進める方針を決定。2006年7
アップされ、具 体 的な検 証 作 業
月には新たなポータルソリューション製 品をベースにした情 報 共
が繰り返された。パートナである
有 基 盤 「 e-S P A c e 2(イースペース2 )」のファーストフェーズが
S I e rに対し、N o t e sに依 存して
稼動しはじめた。
いた機 能をす べて説 明し、
どのようなテクノロジーによって既 存
機能を吸収できるのか提案を募った。
この時点で、すでにNotes
ポータルを通じて社内コミュニケーションの活性化を実現
の全廃が確定していたため、データベースの整理・統合とNotes
機 能 のスムーズな引き継ぎが 可 能であるかどうか が 、テクノロ
2 0 0 6 年 7 月の 稼 動 開 始 時 点 では、約 4 0 の 機 能をO r a c l e
ジー選択の重要な要素となった。
WebCenter Interactionをベースにしたポータルに移行。以後、
「比較検討の結果、
ドキュメント管理を行うコラボレーション機
少しずつ移行を進めており、2007年3月までにNotesを全廃するメ
能のほか、Webコンテンツ管理、
アンケートなどのポートレットをプロ
ドが立っている。
「e-SPAce2」は、12台のサーバ群で構成され、
フ
グラミングなしでビジネスユーザが簡単に作成できる豊富な機能
ロントにWebサーバを3台、バックヤードに機能を分散させた8台の
が標準で提供されていたので、既存の機能を比較的容易に代替
サーバを冗長構成で配置し、
さらにバックアップ専用のサーバを1
できることがわかりました。逆に、比較対象のもうひとつのポータル
台置くというミッションクリティカルなシステムに対応した構成を採用
サーバ製品では、新たなアプリケーションを追加開発しなければ
している。現時点で、
ポータルで提供されている情報は、全社向け
従来の機能をカバーできないため、導入総コストが1.5倍になって
の新着重要情報や、経営トップからのメッセージ、総務・人事系の
しまうことがわかりました」
と、佐藤氏は採用の理由を語る。
情報、設計や生産部門など各部署ごとの情報など。ユーザによっ
さらに、同 一のネットワークドメインを持たない社 外や海 外の
ては、経営指標的な情報共有画面も提供されるようアクセス制御
ユーザにもポータルを提 供したいというジヤトコのニーズに対し
されている。今後はさらに充実した情報が「e-SPAce2」で提供さ
て、ユーザ 単 位でドメイン認 証を設 定できる機 能 が 高く評 価さ
れる予定だ。
れた。
「採用を決定した背景には、
もうひとつ大きな理由がありま
ファーストフェーズの稼動から約半年が過ぎた現時点での製品の
す 。それはユーザに対 するアクセスコントロールのきめ細かさで
評価や今後の期待を情報システム部 山中氏と渡邉悠子氏に伺った。
した。他 社のポータルサーバ製 品は、ページに対してのアクセス
「ファイルサーバの中身を夜 間に情 報 収 集してくれるクローラ
権しか設定できないため、ページを見 せるか見 せないかで制 御
機 能に期 待しています 。本 格 的な稼 動はこれからですが、
この
するしかありませんでした。それに対してOracle WebCenter
機 能を上 手に活用して、情 報 検 索の精 度や速 度を高め業 務 効
Interactionは、ポートレット単位、
さらにポートレット内に表示す
率向上につなげたいと思っています」
(山中氏)
る文書一覧などのコンテンツに対してもアクセス権を自由に設定
「私が一番評価しているのは、
できるので、管 理 者にも一 般 ユーザにも同 一のポータル画 面を
ユーザが自分で情報を発信でき
提 供しながら、必 要な部 分だけアクセス権の異なる画 面を表 示
るようになったことです。特別に、
することができます。
この技術を使えば、運用管理上の負荷を抑
教育や研修を行ったわけではあ
えることができ、開 発も非 常に容 易だと判 断しました」と、情 報シ
りませんが、Webの知識がなくて
ステム部 山中隆弘氏は語る。
も直感的にテキストの色を変えた
2005年6月頃から本格的な検討をはじめ、同12月には新たな
り、Wordの文章をそのまま表示
ポータルソリューション製品の導入を決定、
プロジェクトが本格的
に始動しはじめた。約300あったNotesのデータベースを精査し
ジヤトコ株式会社
情報システム部
渡邉 悠子氏
させたり、ポータル上でユーザ自
身がさまざまな情報を発信しはじ
今回のお客様
システム構成図
ジヤトコ株式会社
ジヤトコ様社内LAN
Internet
Active Directory
Active Directory /
Administration
SSL VPN装置
BEA AquaLogic
Interaction Analytics
Load Balancer
BEA AquaLogic
Interaction
Tape
Library
Backup
Server
BEA AquaLogic
Interaction
ユーザ管理システム
DB Server
DB Server
BEA AquaLogic
Interaction Search
BEA AquaLogic
Interaction
BEA AquaLogic
Interaction Collaboration
BEA AquaLogic
Interaction Publisher
BEA AquaLogic
Interaction
(Admin Server)
BEA AquaLogic
Interaction
Publisher
BEA AquaLogic
Interaction Studio
設 立:1999年6月28日
資本金:299億3,530万円
従業員数:7,265名
(2008年3月31日現在)
事業内容:変速機(AT・CVT)および自動車部品の開
発、
製造および販売
対象システム:企業情報ポータル「e-SPAce2」
製品とサービス:
・Oracle WebCenter Interaction
導入効果:
・事業合併で蓄積された情報資産の有効活用、海外事
業拡大に伴うグローバルな情報共有環境を実現
・効果的な情報流通、必要な情報へ到達する時間の短縮
による業務効率向上
・ユーザ自身による情報発信のセルフ化を通じた社内コ
ミュニケーションの活性化
めています。
これは、社内コミュニケーションの活性化という意味で
非常に大きな価値があると思っています。それと、
もうひとつ評価し
ているのは、
ポータルの利用状況を解析するツールが標準で装備
されていることです。
どの画面にどれくらいアクセスがあって、
どん
なキーワードで検索をしているのか把握できるので、ユーザビリティ
の高いポータルを設計する際の重要な指標が得られます。例え
ば、過去2ヵ月の検索ランキングに基づいてランクの高いコンテンツ
をショートカットでたどれるように工夫したことで、必要な情報への
到達時間をかなり短縮することができました」
(渡邉氏)
情 報システムのグロー バ ル 化を担うキーシステムになるこ
とを期待
最後に、今後の展望と要望を佐藤氏に伺った。
「ジヤトコグループは、今 後も海 外での事 業 展 開を拡 大していく
予定です。
しかし、
こと情報システムに関しては、
まだまだ国内に
フォーカスしたシステム作りしかできていないのが実情でした。
こ
の状 況を一 変させ、今 後は情 報システムのグローバル化を図っ
ていかなくてはいけないという状 況 下で、今 回 構 築した企 業 情
報ポータル『 e-SPAce2 』は、その先鞭をつけるシステムになると
考えています。今後は、英語圏やスペイン語圏に対応したポータ
ルも提供し、8000人を超える社員全員に情報共有環境を提供し
ていく予定です。そういった意味で、
このシステムは、全社的な事
業戦略を世界各国のグループに示す重要な役割を担っていると
いってもいいでしょう。それを踏まえたうえで、要望があります。製
品の技術面は非常に満足していますが、今後この技術を生かし
ていくには、
もっと知識や情報、
ノウハウがほしいと思っています。
我々の思いつかないようなアイディアや工夫により、業務を革新し
ている他 社の事 例などがあれば、ぜひとも情 報 提 供をしていた
だきたいと思っています」。
(本事例の内容は2007年3月のものです)
※「Oracle WebCenter Interaction」は、豊富な導入実績をもつ旧BEAシステムズの
ポータルソリューションをベースにしたポータル製品です。現在は、企業ポータル構
築、コンテンツ管理、企業内コラボレーションを実現する統合スイート製品「Oracle
WebCenter Suite」に含まれています。
Copyright © 2008, Oracle. All rights reserved.
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