T - 三重県立四日市高等学校

はじめに
平成15年度に四日市高等学校がスーパーサイエンスハイスクール(SSH)校とし
て研究指定を受けて3年の月日が経過してまいりました。
事業指定を受けて以来、将来の科学技術創造立国を担う人材の育成をねらいとして、科
学を志すものが身につけて欲しい確かな学力を育成するためのカリキュラム開発事業や科
学活動を通して望ましい人間関係を育み豊な心を育成する事業、そして科学への興味・関
心を育成し科学への夢を育む事業を研究の柱に据えて様々な取組を進めて来ました。
この間の取組の成果として、数学の教材配列の中に理科の実験・実習などを効果的に融
合させた「現代数理科学概論」のテキストを完成させ、関係者に配布することができまし
た。また理科実験を題材にしながら得られたデータの処理・分析の方法や論文の書き方、
プレゼンテーションの方法等を学ぶ「スーパーサイエンスⅠ(SSⅠ)」のテキストも完
成させるところまで来ています。そして、生徒たちは「現代数理科学概論」や「SSⅠ」
などの科目を学ぶ中で確実に数学や理科の学力が確かなものになってきました。
平成17年8月に東京ビックサイトで開催された第2回生徒研究発表会において、本校
生徒の研究した「波長可変半導体レーザーを使った12C16O2の吸収スペクトル測定」が、
数学・物理分野の代表に選ばれ科学技術振興機構理事長賞を獲得しました。このことは、
私たちがねらいとしている国際的に活躍できる科学技術系の人材育成の方向や方法が、生
徒の研究発表を通して評価されたものと受け止めております。さらに、SSH事業に関わ
り研究を推進してきた教員が、その研究成果を持って全国理科教育大会、日本理科教育学
会や日本数学教育学会等で発表することができたことも大きな意義がありました。研究成
果を全国に発信すると役目とともに、全国の関係者からの助言や評価をいただきSSH事
業をより質の高いものとしていく良い機会となったからです。そして、このことは、教員
の指導力の向上とともに自信にもつながったように感じています。
今後は、これまでの研究成果をもとに研究期間1年延長させていただき、「スーパーサ
イエンスⅡ」の有効性の検証を推進しつつ、研究開発課題の提言を行っていきたいと考え
ています。
当初十分な準備もできていないままにスタート致しましたが、大きな成果を得るところ
までこられましたのは、県教育委員会はじめ運営指導委員会、実験・実習等でお世話にな
りました名古屋大学・三重大学、関係企業や研究機関等の関係者の皆様方の絶大なるご支
援と懇切丁寧なご指導の賜物と厚く御礼申し上げる次第です。
今後とも関係者の皆様のより一層のご指導・ご支援をお願い申し上げます。
平成18年3月
三重県立四日市高等学校長
細 野
道 太 郎
四日市高等学校
SSH写真集
1
SSⅠ物理実験
SSⅠ生物 植物組織培養
中村修二教授との懇談( H.17.6.28)
SSⅠ物理データ処理
SSH講演会
中村修二教授( H.17.6.28)
図書館
SSH書籍コーナー
四日市高等学校
SSH写真集
2
SS Ⅱ イネのいもち病
第6回授業公開
現代数理科学概論( H.17.7.8)
SSH 生徒研究発表会( 東京 H.17.8.9/10)
SS Ⅱ 半導体
第6回授業公開
SS Ⅱ研究発表会( H.17.7.8)
SSH 生徒研究発表会( 東京 H.17.8.9/10)
四日市高等学校
SSH写真集
SSH 研修旅行
3
Spring ー8 ( H.17.7.27)
夏期集中講座
夏期集中講座
情報( H.17.8.8)
再生医療( H.17.8.9)
SSH 研修旅行
生命誌研究館 ( H.17.7.28)
夏期集中講座
夏期集中講座
高分子( H.17.8.12)
地震と防災( H.17.8.11)
四日市高等学校
SSH写真集
修学旅行海洋研修
4
沖縄瀬底島
平成16年入学生
SS Ⅱ
( H.17.10.17)
ラットの飼育
第7回授業公開(生徒研究発表会
H.18.2.10)
修学旅行海洋研修
美ら海水族館 ( H.17.10.17)
第7回授業公開( ポスターセッション
SSH 校交流
H.18.2.10)
松坂高校研究発表会参加
( H.18.2.11 三重大学に於いて )
目
次
1章
2章
研究開発の概要
・・・・・
研究開発の経過
1.会議等の経過
・・・・・
2.学習の経過
・・・・・
3.3年間の推移
・・・・・
3章 研究開発の内容
1節 スーパーサイエンスⅠ
・ 教 科 スーパーサイエンス学 習 指 導 要 領 - 科 目 「 スーパーサイエンスⅠ 」 -
・・・・・
1.研究概要
・・・・・
2.学習評価
・・・・・
3.実施内容
・・・・・
4.夏期集中講座
・・・・・
5.研修講座
・・・・・
6.海洋生物実習
・・・・・
7.特別講演
・・・・・
2節 スーパーサイエンスⅡ
1.研究概要
・・・・・
2.学習評価
・・・・・
3.実施内容
・・・・・
4.プレゼンテーションとポスターセッション
・・・・・
5.アンケート結果
・・・・・
3節 現代数理科学概論
・ 教 科 スーパーサイエンス学 習 指 導 要 領 - 科 目 「 現 代 数 理 科 学 概 論 」 - ・ ・ ・ ・ ・
1.研究概要
・・・・・
2.学習評価
・・・・・
3.実施内容
・・・・・
4.アンケート結果
・・・・・
4節 部活動
・・・・・
4章 研究開発の成果と課題
・・・・・
5章 研究紀要
・三重県立四日市高校におけるスーパーサイエンスハイスクール事業の現状
- 3 年 次 を 迎 え た SSH 事 業 の 成 果 と 課 題 -
・・・・・
・ 確 か な 学 力 の 育 成 を 目 指 し た カリキュラム開 発 と そ の 評 価 ( 1 )
-理数融合科目「現代数理科学概論」の開発-
・ 確 か な 学 力 の 育 成 を 目 指 し た カリキュラム開 発 と そ の 評 価 ( 2 )
-「 ス ー パ ー サ イ エ ン ス Ⅰ 」系 統 化 へ の 取 り 組 み -
・スーパーサイエンスハイスクール事業における
大学・研究機関との連携について
・生徒の変容と課題 2年生
・生徒の変容と課題 3年生
・科学技術系人材育成を目指した
生徒の研究活動における学習評価方法の開発
・スーパーサイエンスハイスクール事業の事業評価方法の開発
6章 資料
1.教育課程表
2.組織
3.運営指導委員会記録
4.研究大会参加記録
5.購入図書
・レビュー
1
3
5
8
9
11
12
13
23
34
37
39
41
42
43
51
54
56
58
59
60
61
62
64
70
・ ・ ・ ・ ・ 76
・ ・ ・ ・ ・ 79
・ ・ ・ ・ ・ 83
・ ・ ・ ・ ・ 88
・ ・ ・ ・ ・ 91
・ ・ ・ ・ ・ 94
・ ・ ・ ・ ・ 101
・ ・ ・ ・ ・ 103
・ ・ ・ ・ ・ 105
・ ・ ・ ・ ・ 107
・ ・ ・ ・ ・ 110
・ ・ ・ ・ ・ 111
・ ・ ・ ・ ・ 112
1章
研究開発の概要
1.研究開発課題
国際的な視野を持った科学技術系人材の育成を図るため、大学・科学研究機関等との
連携を図りながら、科学における確かな学力と科学的な創造性や独創性を育成する教育
展開の在り方を研究開発し、研究の成果を公表する。
2.研究開発の概要
学校設定教科「スーパーサイエンス」の中に学校設定科目として、理数融合型の基礎
科目「現代数理科学概論」と研究者としての資質を育成する科目「スーパーサイエンス
Ⅰ」を置き、未来の科学技術を担うための「確かな学力」を育成するカリキュラム開発
を行った。また、大学や研究機関の支援を受けて、研究者としての実践力を育成する科
目「スーパーサイエンスⅡ」を置き、科学的な創造性や論理性を育成した。さらに、大
学等の研究施設等の訪問、最先端の研究者の講演等を聞くことによって、科学技術者へ
の興味・関心・意欲・科学を担う者としての豊かな心を育成した。検証については、平
成16年度入学生は、スーパーサイエンスクラスを作り、教育課程に組み込むことによ
って教育課程全体の評価を行うとともに、アンケート調査、理数系の学力の伸長などデ
ータを基に自己評価し、運営指導委員会により、アセスメントを受けるという方法で事
業評価を行った。
3.研究開発の内容
(1)科学への興味関心・科学への夢の育成
大学、研究機関からの支援を受け、第1学年、第2学年の生徒に対して、夏期休業中等に研
修講座を実施した。
今年度は夏期集中講座として、名古屋大学工学研究科、生命農学研究科、情報科学研究科に
おいて3日間(8講座)実施した。
科学・工学の先端技術に関する分かりやすい解説図書を購入し、学校図書館で公開し、スー
パーサイエンスコースの生徒のレポート作成に利用させた。
( 2 )「 確 か な 学 力 」 の 育 成
①理科・数学を中心とする学際的な基礎学力を育成するカリキュラム開発
数学理科融合型の基礎科目「現代数理科学概論」のカリキュラム開発を行って
いる。昨年度は内容を系統化し、学習指導要領を開発し、テキストを作成し公表
した。今年度はテキストを加筆・修正し、改訂版を作成中である。
昨年度に引き続き、今年度においても平成16年度入学生に対しスーパーサイ
エンス用の教育課程において系統的に実施した。
②論理的思考力、独創性・創造性の育成
学校設定教科「スーパーサイエンス」を設定し、研究者をめざした実験・実習
を 重 視 の 基 礎 科 目 「 ス ー パ ー サ イ エ ン ス Ⅰ 」( 以 下 S S Ⅰ )、 論 文 発 表 を め ざ し
た 研 究 重 視 の 少 人 数 活 動 の 科 目 「 ス ー パ ー サ イ エ ン ス Ⅱ 」( 以 下 S S Ⅱ ) を 学 校
設定科目として設け実施すると共に、カリキュラム開発を行っている。カリキュ
ラ ム 開 発 の 成 果 と し て 学 習 指 導 要 領 を 作 成 し 、3 章 1 節「 ス ー パ ー サ イ エ ン ス Ⅰ 」
の項で提案した。
今年度は第3学年の生徒に対し、科目「SSⅡ」を実施した。大学の研究室に
出向き、各自の研究テーマを教授等に指導していただき、研究論文(以下、レビ
-1-
ュー)を作成した。また、研究方法からプレゼンテーション等の発表にいたるプ
ロセスを学習し、今年度の研究発表会において非常に高い評価を得た。
第 2 学 年 の 生 徒 に 対 し て は 、理 科 の 実 験 を 通 し て 研 究 方 法 を 学 習 す る「 S S Ⅰ 」
を実施し、現在は「SSⅡ」を実施中である。
③観点別評価を柱とした学習評価方法の開発
科学技術系人材育成のための学習評価方法の開発を行っている。評価観点とし
て 「 論 理 性 」「 創 造 性 」「 望 ま し い 人 間 関 係 ・ 豊 か な 心 」 を 柱 と し て 開 発 に 取 り
組んでいる。絶対評価という既定の価値尺度を用いる評価ではなく「創造性」と
いう未知の可能性の能力を見る評価方法の研究開発を行っている。
④スーパーサイエンスクラブの指導
クラブ活動を通して、理数分野における基本的な考え方および研究手法を習得
することを目指し、理数系分野の教員が指導している。また、数学コンクールや
数学オリンピックなどにも取り組んでいる。
(3)望ましい人間関係・豊かな心の育成
科学の活動を通して望ましい人間関係を育み、豊かな心を育てるため、フィール
ド ワ ー ク や 講 演 会 を 実 施 し た 。 2 学 年 に 対 し 、 SPring-8 、 明 石 天 文 科 学 館 、 生 命 誌 研
究館、大阪大学レーザーエネルギー研究センターで研修を行った。
SSH 研 究 大 会 に つ い て は 、東 京 で 開 か れ た 全 国 SSH 生 徒 交 流 会 に 代 表 が 参 加 し た 。
(4)複数の事業を総合評価するシステム等の開発
一 昨 年 、 自己評価とアセスメント評価を組み合わせた本校のスーパーサイエンス事業自体
の評価をする評価システムを開発した。この方式は、各事業担当者の自己評価を外部評価
委員が評価の正当性をアセスメントするものであり、自己評価の客観性を高めることがで
きる評価方法である。今年度においても、本校の開発した評価シートによって事業評価を
行い事業の客観性を高めた。
(5) SSH 事 業 の 成 果 を 外 部 へ 公 表 す る 取 り 組 み
3 年 間 の SSH 事 業 で 培 っ た 研 究 成 果 を 、 そ れ ぞ れ の 教 員 が 研 究 紀 要 を 作 成 し 、 全
国理科教育大会、全国算数・数学教育研究大会などにおいて講演活動を行った。
4.校内研究組織
SSH 事 業 を 実 行 す る た め の 組 織 と し て 、 各 プ ロ グ ラ ム を 開 発 す る カ リ キ ュ ラ ム 開 発 グ
ループと、校内における総合的な研究調整を行うことによってカリキュラム開発を支え
るグループ、および外部委員会としてこの活動を評価するグループに対応し「カリキュ
ラ ム 開 発 委 員 会 」「 実 施 推 進 委 員 会 」「 運 営 指 導 委 員 会 」を 設 置 し た 。「 運 営 指 導 委 員 会 」
には、連携、指導していただける大学、地元企業、学校評議委員会、並びに管理機関で
ある県教育委員会の代表の方々に参加していただいている。
5.平成17年度実施規模
平成15年度入学生(3 学 年 ) は 昨 年 に 続 い て 1 5 名 の 生 徒 が 継 続 し 、 名 古 屋 大 学 ・ 三
重 大 学 の 教 授 等 の 指 導 を 受 け 、「スーパーサイエンスⅡ」を履修した。
平成16年度入学生(2学年)は昨 年 に 続 い て 2 3 名 の 生 徒 が ーパーサイエンスクラスに所
属し、「現代数理科学論」、「スーパーサイエンスⅠ」、「スーパーサイエンスⅡ」 等 を ス ー パ ー サ
イエンス用の教育課程において履修した。
平 成 1 7 年 度 入 学 生 ( 1学年)は入学生全体に対 し て ク ラ ブ と し て 募 集 を し 、 平成16
年度入学生と 合 わ せ て 1 1 名 が ス ー パ ー サ イ エ ン ス ク ラ ブ に 所 属 し た 。 放 課 後 研 究 活 動
を行い、各種コンテストに参加した。
-2-
2章
研究開発の経過
1.会議等の経過
4 月 13 日 (水) 第 1 回 SSH カリキュラム開発会議
本年度の組織、SSⅠ・SSⅡ、数理科
学研究会について
4 月 16 日 (土) SSH ク ラ ス 保 護 者 会
昨 年 度 SSH 事 業 の 報 告 、 今 年 度 SSH 事 業
4 月 26 日 (火) 第 2 回 SSH カリキュラム開発会議
本年度の組織、今年度の計画、数理科学
についての説明
研究会について
5 月 10 日 (火) 第 3 回 SSH カリキュラム開発会議
授業公開、理科・数学研究大会参加、夏
期 集 中 講 座 、 SSH 講 演 会 に つ い て
5 月 17 日 (火) 第 4 回 SSH カリキュラム開発会議
SSH 講 演 会 、 授 業 公 開 、 評 価 、 S S Ⅱ 、
5 月 24 日 (火) 第 5 回 SSH カリキュラム開発会議
SSH 講 演 会 、 授 業 公 開 、 評 価 、 S S Ⅱ 、
夏期集中講座、研修旅行について
夏 期 集 中 講 座 、 SSH ク ラ ブ に つ い て
5 月 26 日 (木) SSH 連 絡 協 議 会 参 加
理 数 学 力 基 調 報 告 、 SSH 分 科 会 、 生 徒 研
究発表大会に関する資料
5 月 31 日 (火) 第 6 回 SSH カリキュラム開発会議
中村氏講演会、授業公開、夏期集中講座、
6 月 14 日 (火) 第 7 回 SSH カリキュラム開発会議
中村氏講演会、授業公開、全国生徒発表
研修旅行、評価について
会、夏期集中講座について
6 月 21 日 (火) 第 8 回 SSH カリキュラム開発会議
中村氏講演会、授業公開、全国生徒発表
6 月 29 日 (水) 第 9 回 SSH カリキュラム開発会議
授業公開、夏期集中講座、全国生徒研究
会、夏期集中講座、研修旅行について
発表会、研修旅行について
7月8日
(金) 第 6 回 授 業 公 開
生徒によるプレゼンテーションとポスタ
ー セ ッ シ ョ ン 、「 現 代 数 理 科 学 概 論 」 公 開
7月8日
(金) 第 1 回 運 営 指 導 委 員 会
SSH 事 業 概 要 説 明 、 視 察
7 月 11 日 (月) 第 10 回 SSH カリキュラム開発会議
SSⅡの評価、学生科学賞等の応募、来
年 度 SSH 指 定 延 長 に つ い て
7 月 13 日 (水) 第 11 回 SSH カリキュラム開発会議
来 年 度 SSH 指 定 延 長 、来 年 度 SSH ク ラ ス 、
校内研究発表会、報告書について
8 月 3 日 ~ (水)
8月5日
(金)
8 月 4 日 ~ (木)
8月5日
日 本 理 科 教 育 学 会 第 55 回 全 国 大
本 校 教 員 に よ る 日 本 理 科 教 育 学 会 第 55 回
全国大会での発表
第 87 回 全 国 算 数 ・ 数 学 教 育 研 究
(土) 大 会
8 月 9 日 ~ (火)
本 校 教 員 に よ る 平 成 17 年 度 全 国 理 科 教 育
大会での発表
(金) 会
8 月 4 日 ~ (木)
8月6日
平 成 17 年 度 全 国 理 科 教 育 大 会
本 校 教 員 に よ る 第 87 回 全 国 算 数 ・ 数 学 教
育研究大会での発表
スーパーサイエンスハイスクー
平 成 17 年 度 ス ー パ ー サ イ エ ン ス ハ イ ス ク
8 月 10 日 (水) ル 生 徒 研 究 発 表 会 参 加
ール生徒研究発表会への参加
8 月 11 日~ (木)
第 15 回「数学を楽しむ高校生のた
三重大学における「数学を楽しむ高校生のため
8 月 12 日(金)
めのセミナー」
のセミナー」に参加
8 月 14 日 (日) 第 16 回数学コンクール
名古屋大学主催の第 16 回数学コンクールに参加
平 成 1 8 年 度 SSH 申 請 、 来 年 度 SSH ク ラ
9月 6日
(火) SSH 企画会議
ス、報告書の作成、テキストについて
SSH ク ラ ス 研 究 発 表
9 月 16 日 (金) 校 内 研 究 発 表 会
校 内 研 究 発 表 会 評 価 結 果 、 SS Ⅰ ・ SS Ⅱ 、
9 月 27 日 (火) 第 12 回 SSH カリキュラム開発会議
報告書について
10 月 25 日 (火) SSH 研究発表会参加
愛知県立一宮高等学校
-3-
10 月 27 日 (木) 第 13 回 SSH カリキュラム開発会議
次 年 度 SSH 事 業 、 SS Ⅰ ・ SS Ⅱ 、 研 究 発 表
会について
11 月 2 日 (水) SSH 研究発表会参加
静岡県立磐田南高等学校
11 月 2 日 (水) SSH 研究発表会参加
三重県立松阪高等学校
11 月 4 日 (金) SSH 研究発表会参加
岐阜県立岐山高等学校
11 月 9 日 (水) SSH 事 業 企 画 委 員 会
来年度事業計画、事業評価、運営指導委
員会、授業公開、報告書について
11 月 11 日 (金) SSH 研究発表会参加
千葉市立千葉高等学校
11 月 12 日 (土) ス ー パ ー サ イ エ ン ス ハ イ ス ク ー
東京国際交流館で開催されたスーパーサ
ル事業説明会
イエンスハイスクール事業説明会に参加。
11 月 13 日 (日) 日 本 理 科 教 育 学 会 第 52 回 東 海 支
本校教員による教育研究大会での発表
部大会
11 月 15 日 (火) 第 14 回 SSH カリキュラム開発会議
次 年 度 SSH 事 業 、 研 究 発 表 会 、 SS Ⅰ ・ SS
Ⅱ、報告書について
11 月 22 日 (火) 第 15 回 SSH カリキュラム開発会議
報告書、アンケート、来年度研究大会に
11 月 25 日 (金) SSH 研究発表会参加
岐阜県立恵那高等学校
12 月 6 日 (火) 第 16 回 SSH カリキュラム開発会議
報告書、研究発表会、自己評価報告書に
12 月 13 日 (火) 第 17 回 SSH カリキュラム開発会議
研 究 発 表 会 、 SS Ⅱ の 評 価 、 運 営 指 導 委 員
ついて
ついて
会準備、アンケートについて
12 月 16 日 (金) SSH 研究発表会参加
石川県立金沢泉丘高等学校
12 月 20 日 (火) 第 18 回 SSH カリキュラム開発会議
論文指導、報告書、研究発表会、アンケ
ートについて
12 月 20 日 (火) 第 2 回 運 営 指 導 委 員 会
H17 年 度 事 業 報 告 、 H17 年 度 事 業 評 価 の 依
頼 、 SSH 1 年 延 長 、 来 年 度 の 事 業 計 画
12 月 26 日 (月) 第 16 回「数学を楽しむ高校生のた
アスト津における「数学を楽しむ高校生のため
めのセミナー」
のセミナー」に参加
1 月 9 日 (月)
第 16 回数学オリンピック
第 16 回数学オリンピックに参加
1 月 10 日 (火)
第 19 回 SSH カリキュラム開発会議
研究発表会、論文指導、学習評価、報告
書について
1 月 17 日 (火)
三高理生物部会三学期研修会
本校教員による研究集会での発表
1 月 17 日 (火)
第 20 回 SSH カリキュラム開発会議
自己 評価シ ート 、運営 指導委員 会の 準備、
研究発表会、学習評価、報告書について
1 月 31 日 (火)
第 21 回 SSH カリキュラム開発会議
研究発表会、学習評価、報告書について
2 月 8 日 (水)
第 22 回 SSH カリキュラム開発会議
研 究 発 表 会 、 報 告 書 、 SS Ⅰ 講 義 に つ い て
2 月 10 日 (金)
研究発表会
生徒によるプレゼンテーションとポスタ
2 月 10 日 (金)
第 3 回運営指導委員会
SSH 事 業 評 価 、 視 察
2 月 11 日 (土)
SSH 研究発表会参加
松阪高等学校研究発表会、本校生徒発表
2 月 16 日 (木)
平成 17 年度県立高等学校「確かな
確かな学力育成合同研修会参加、本校教員発表
ーセッション
学力育成合同研修会」
2 月 17 日 (金)
SS Ⅰ 校 内 公 開 授 業
2 月 17 日 (金)
三重県高等学校数学教育研究会
第 2 回研究集会、本校教員発表
2 月 21 日 (火)
第 23 回 SSH カリキュラム開発会議
SS Ⅱ 評 価 、 報 告 書 、 ア ン ケ ー ト に つ い て
2 月 22 日 (水)
SSH 研究発表会参加
兵庫県立神戸高等学校
3 月 16 日 (木)
SSH 先進校視察
京都府立洛北高等学校
SS Ⅰ 校 内 公 開 授 業
-4-
2.学習の経過
講
日
程
■H17年度■
科 目 ・行 事
F P 4 月 1 2 日( 火 ) オ リ エ ン テ ー シ
1
ョン
F P 4 月 1 5 日( 金 )
2
FP
3
FP
4
FP
5
4 月 2 2 日( 金 )
5 月 2 0 日( 金 )
FP
7
6月
FP
8
6 月 1 7 日( 金 )
内
容
場
SSH概要説明・アンケート実施
SSⅠ
前期
所
担当者
備考
時
2-8教室 大川
1
物理:摩擦力を調べる①
基礎実験
5 月 6 日( 金 ) 物 理 ・化 学 ・生 物 の
実験とレポートを
実施する
5 月 1 3 日( 金 )
3 科目×3回
FP
6
2年次「SSⅠ」等の学習の経過
物理:摩擦力を調べる②
物理:ビデオを用いた運動の解析(データ処理)
物理実験室 桜井
川喜田
2
物理実験室 桜井
川喜田
3
情報教室
山口
4
生物:微生物取り扱いの基礎①
生物実験室 林
5
生物:微生物取り扱いの基礎②
生物実験室 林
6
3 日( 金 )
生物:実験によって得られたデータ処理
情報教室
山口
7
化学:ダニエル電池による実験①
F P 6 月 2 4 日( 金 )
9
化学:ダニエル電池による実験②
8
化学実験室 日紫喜
倉内
9
FP
10
7 月 1 1 日( 月 )
FP
14
7 月 2 0 日( 水 )
夏期集中講座事前学習(物理)
1社・2 社
134
川喜田
桜井
11
FP
15
7 月 2 0 日( 水 )
夏期集中講座事前学習(化学)
1社・2社 日紫喜
12
夏期集中講座
・SSH研修旅行
7 月 2 1 日( 木 ) の 事 前 学 習
研修旅行①事前学習
多 目 的 ホ ー 日紫喜
ル
13
7 月 2 1 日( 木 )
夏期集中講座事前学習(生物)
多目的ホー
ル
林・小谷
14
佐用郡
明石市
高槻市
吹田市
日紫喜 1 泊 2 日
FP
16
FP
17
化学:実験によって得られたデータ処理
化学実験室 日紫喜
倉内
情報教室
山口
10
AP 7 月 2 7 日( 水 ) S S H 研 修 旅 行
1
2 8 日( 木 )
AP 8 月 9 日 ( 火 )
2
AP 8 月 1 1 日( 木 )
3
AP 8 月 1 2 日( 金 )
4
S P r i n g -8 ( 財 ) 高 輝 度 光 科 学 研 究 セ ン タ ー
明石天文科学館
JT生命誌研究館
大阪大学レーザーエネルギー学研究センター
「再生医療の現状と展望」
名古屋大学生命農学研究科
「微生物と酵素のバイオロジー」
名古屋大学生命農学研究科
夏期集中講座
物理分野
化学分野
生物分野
で実施
「半導体レーザー」
FP
18
9 月 1 6 日( 金 ) 校 内 研 究 発 表 会
FP
19
10月12日
研修旅行事前指導
(水)
AP 1 0 月 1 7 日
5
(月)
研修旅行
1日
北川泰雄 教授
名古屋大学 林
山根恒夫 教授
名古屋大学 林
量子工学専攻
井口哲夫 教授
名古屋大学 桜井
「水ロケットを科学する」名古屋大学 工学研究科 航空宇宙工学専攻
梅村 章 教授
名古屋大学 桜井
1日
「高分子化合物」 名古屋大学
1日
「無機化学」
名古屋大学
・伊 藤
名古屋大学
工学研究科
工学研究科
工学研究科
化学・生物専攻
山本智代 講師
化学・生物専攻
菊田浩一 助教授
SSⅠ基礎実験、研修旅行、夏期集中講座等の内容を研究発表
SSH沖縄研修事前指導
亜熱帯の魚類生物等に関する講義及び珊瑚研修、瀬底実験所見学、
瀬底実験所周辺の珊瑚礁海岸の見学および説明
琉球大学 竹村明洋 助教授
-5-
名古屋大学 日紫喜
名古屋大学 日紫喜
多目的ホー
ル
15
多 目 的 ホ ー 日紫喜
ル
16
沖 縄 ・ 熱 帯 日紫喜
生物圏研修
センター
1日
F P 10月21日
20
(金)
F P 10月28日
21
(金)
各実験室
17
SSⅠ
後期
数学セミナー
F P 11月 4日
物理テーマ実験
22
(金) 化学テーマ実験
生物テーマ実験
FP 1 1 月 1 8 日
23
(金) 各 分 野 に 分 か れ
て実験
FP 1 1 月 2 5 日
24
(金)
各実験室
数学研究ゼミ
物理テーマ実験
化学テーマ実験
生物テーマ実験
各実験室
各実験室
各実験室
松岡学
松岡泰
大川
桜井
川喜田
日紫喜
林
伊藤
山口
18
19
20
21
FP
25
12月
9日
(金)
各実験室
FP
26
12月16日
(金)
各実験室
FP
27
1月13日
(金)
FP
28
1月20日
(金)
22
23
SSⅡ
【支援していただく研究室】
数学:名古屋大学多元数理科学研究科
寺西 鎮男 助教授
物理:名古屋大学工学研究科
マテリアル理工学専攻応用物理学分野
中村 新男 教授
航空宇宙工学専攻空力推進講座
梅村 章 教授
社会基盤工学専攻社会基盤機能学講座
水谷 法美 教授
化学:三重大学工学部
分子素材工学科
伊藤 敬人 教授
久保 雅敬 助教授
生物:三重大学生物資源学部
生物圏生命科学科
古丸 明 教授
河村 功一 助教授
名田 和義 助教授
伴 智美 助手
FP
29
1月27日
(金)
FP
30
2月10日
研究発表会
(金)
FP
31
2月17日
(金)
研究発表を終えて
FP
32
2月24日
(金)
1年間のまとめ(アンケート)
SSⅠ後期の内容を研究発表
24
25
松岡学
松岡泰
大川
桜井
川喜田
日紫喜
林
伊藤
山口
26
多 目 的 ホ ー 倉内
ル
松岡泰
27
28
29
■H17年度■
日 程
4 月 2 7 日( 水 )
5 月 1 1 日( 水 )
2 5 日( 水 ) 現 代 数 理 科 学 概 論
6 月 1 5 日( 水 )
2 9 日( 水 )
7 月 8 日( 金 ) 授 業 公 開
9 月 1 4 日( 水 )
2 8 日( 水 )
1 1 月 2 日( 水 )
1 6 日( 水 ) 現 代 数 理 科 学 概 論
1 2 月 7 日( 水 )
2 1 日( 水 )
1 月 2 5 日( 水 )
2 月 2 2 日( 水 )
積分①
積分②
積分③
積分④
積分⑤
積分⑥
積分⑦
積分⑧
積分⑨
積分⑩
積分⑪
積分⑫
積分⑬
積分⑭
2 年 次 SSH 「 現 代 数 理 科 学 概 論 」 の 学 習 の 経 過
内
容
区分求積法、不定積分、定積分、定積分の性質、
定積分で表された関数、面積と定積分
速度、移動距離、微分方程式、微分方程式の解法、
バクテリアの増殖率、速度に比例する落下、
物体の温度変化
「コンデンサーの放電曲線」
微分方程式と自然現象
-6-
場 所
担当者
2-8教室 大川・桜井
物理実験室 桜井・大川
2-8教室 桜井・大川
物理実験室
時
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
■H17年度■
講
日
程
3年次「SS Ⅱ」等の学習の経過
科目・行事
FP
1
4月21日
(木)
1期
FP
2
4月28日
(木)
SSⅡ
内
容
場
5月12日
(木)
FP
4
5月19日
(木)
FP
5
5月26日
(木)
FP
6
6月2日
(木)
FP
7
6月16日
(木)
FP
8
6月23日
(木)
FP
9
7月8日
(金)
FP
10
7月14日
(木)
名古屋大学多元数理科学研究科
中西賢次
大学の研究室等で
指導を受けて研究 名古屋大学工学研究科
を進め、論文を書
マテリアル理工学専攻
いて発表する。
量子工学専攻
航空宇宙工学専攻
9月1日
(木)
北
栄輔
支援してい 松岡学
ただく大学 桜井
の研究室
日紫喜
助教授
林
山口
助教授
川喜田
備考
時
1
2
3
中村新男
井口哲夫
梅村 章
教授 校内の
教授
各実験室
教授
4
三重大学生物資源学部
生物圏生命科学科
分子細胞生物学教育研究分野
緒方 進
助手
資源循環学科 生物循環機能学教育研究分野
苅田修一 助教授
生命科学研究支援センター 植物機能ジェノミックス部門
小林一成 助教授
5
6
7
実施日は先の日程とは限らず、土曜日や長期休業中に集中して行う場
合がある。
研究大会
における発表会
SSⅡの成果を発表
8
多目的ホー 倉内
ル
松岡泰
9
・
10
11
8月9日(火) SSH生徒研究発
10日(水) 表会
FP
11
担当者
協力いただいた大学の先生、
名古屋大学情報科学研究科複雑系科学専攻
FP
3
所
SSⅡの成果を発表
東京都
川喜田
ビッグサイ 桜井
ト
2期
総合演習
校内の
1期の成果を踏まえ、文章を読む力、文章表現力を養う演習を実施。
各教室
桜井
川喜田
岡本
日紫喜
倉内
林
伊藤
小谷
松岡学
12
FP
12
9月15日
(木)
FP
13
9月22日
(木)
FP
14
10月13日
(木)
15
FP
15
10月20日
(木)
16
FP
16
10月27日
(木)
17
FP
17
11月10日
(木)
18
FP
18
11月17日
(木)
19
FP
19
11月24日
(木)
20
FP
20
12月8日
(木)
21
FP
21
12月15日
(木)
22
FP
22
1月12日
(木)
23
FP
23
1月19日
(木)
24
FP
24
1月26日
(木)
25
〔註〕FP(ファンダメンタルプログラム)の授業は、木曜日
16:00 ~ 17:05
に行われた。
-7-
13
14
3.3年間の推移
三重県立四日市高等学校 スーパーサイエンスハイスクール事業
2006.03
事業年度
H15年度
H16年度
H17年度
H18年度
位置づけ
計画・試行年度
実施・検討年度
完成年度
総括年度
67名
ステージⅠ
(興味・関心の醸成)
41名
ステージⅡ
(研究の基礎実習)
15名
ステージⅢ
(研究者としての活動)
H
研
前 期
15
年
究
度
興 味
関 心
学 力
・募集
夏期集中講座
SSH 基礎実験
入
後
期
前 期
・継続確認
夏期集中講座
研修講座
SSH 基礎実験
スーパーサイエンスⅠ
現代数理科学概論 (SSH 基礎実験)
学会の見学
後 期
前
期
後 期
・継続確認
学会の見学
スーパーサイエンスⅠ
(SSH テーマ実験)
対
学
論 理
創 造
発表 会
研修講座
研 究発表会
スーパーサイエンスⅡ
スーパーサイエンスⅡ
(論文作成、パワー ( 研 究 レ ポ ー ト 作
ポイント発表)
成)
海洋生物学科学実習 特別講演
特別 講演
交流 会
生
象
豊 か 海洋生物学科学実習 特別講演
な 心
交流会
26名
ステージⅠ( 同 上 )
と
23名
ステージⅡ( 同 上 )
22名
ステージⅢ( 同
上 )
前 期
期
H
後 期
16
前
期
後 期
前 期
後 期
後
な
年
中学生説明会
・募集
夏期集中講座
研修講座
度
興 味
関 心
入
学力
現代数理科 学概 論
SSH 基礎実験
論
創
豊
な
研修講座
学会の見学
・継続確認
夏期集中講座
研修講座
・継続確認
る
現代数理科学概論
SSH 基礎実験
スーパーサイエンスⅠ
(SSH 基礎実験)
特別 講演
特別講演
交流会
学
生
生
理
造
か
心
スーパーサイエンスⅠ
(SSH テーマ実験)
スーパーサイエンスⅡ
スーパーサイエンスⅡ
(論文作成、パワー (研究レポート作成)
ポイント発表)
特別講演
研究発表会
海 洋 生 物 学 科 学 実 特別講演
習
徒
部
活
動
募集(11名)
基礎実験
数学コンクール
数学オリンピック
前 期
SSH
カリキュラムログ
委 開発委員
会
(毎週火
曜日5限
員 目に開)
催
会 SSH
実施推進
委員会
(月1回開
の 催)
後 期
前 期
・テキスト「現代数 ・学習指導要領「現 ・学習指導要領「現
理科学概論」の研
代数理科学概論」 代数理科学概論」
究
提案
修正
・SSH カリキュラム ・テキスト「現代 ・テキスト「現代数
の研究
数理科学概論」
理科学概論」の執
・SSH の計画
の研究
筆、実施
・中学校、保護者へ ・H15 年度版「自 ・学習指導要領「ス
の説明
己評価報告書」、
ーパーサイエンス
「SSH 事業評価
Ⅰ」の研究
シート」の完成 ・学習評価「スーパ
・研究紀要執筆
ーサイエンスⅠ」
・公開授業
の研究
・中学生説明会の ・SSH 事業評価の修
実施
正
・研究開発実施報 ・中学校、保護者へ
告書作成
の説明
活
動
SSH 運 営
指導委員
会(前期
9月、後
期 3月に
開催)
前 期
・計画全体の評価
後 期
・第1年次の評価
前 期
後
期
前
期
基礎実験
後 期
募集
基礎 実 験
前 期
基礎実験
後
期
・学習指導要領「現
代数理科学概論」
完成
・テキスト「現代数
理科学概論」の完
成
・学習指導要領「ス
ーパーサイエンス
Ⅰ」の提案
・学習評価「スーパ
ーサイエンスⅠ」
の完成
・学習評価「スーパ
ーサイエンスⅡ」
の研究
・H16 年度版「自己
評価報告書」、
「SSH 事業評価シ
ート」の完成
・研究紀要執筆
・公開授業
・研究開発実施報告
書作成
・テキスト「現代数
理科学概論」の修
正、実施
・学習指導要領「ス
ーパーサイエンス
Ⅰ」の修正
・テキスト「スーパ
ーサイエンスⅠ」
の研究
・学習評価「スーパ
ーサイエンスⅡ」
の研究
・SSH 事業評価の修
正
・公開授業
・中学校保護
者への説明
・テキスト「現代
数理科学概論」
の修正、実施
・学習指導要領「ス
ーパーサイエン
スⅠ」の完成
・テキスト「スー
パーサイエンス
Ⅰ」の研究
・H17 年度版「自
己評価報告書」
、
「SSH 事業評価
シート」の完成
・研究紀要執筆
・SSH 生の進路指
導
・公開授業
・研究開発実施報
告書作成
・3年間の報告
・テキスト「現代数
理科学概論」の完
成
・テキスト「スーパ
ーサイエンスⅠ」
の完成
・公開授業
・SSH 研究開発総括
・SSH 事業総括
・SSH 生の進路指導
・研究開発報告書作
成
・総合報告
・総括提言発行
後 期
前 期
後 期
前 期
後 期
・計画全体の中間評 ・第2年次の評価
価
-8-
・計画全体の中間評 ・第3年次の評価
価
・3年間の報告、評 ・研究全体に対する
価
評価
3章
研究開発の内容
1節
スーパーサイエンスⅠ
【教科スーパーサイエンス学習指導要領】-科目「スーパーサイエンスⅠ」-
【
第1款
目標
】
近代の科学技術の基盤となっている自然科学的な現象を数理的な手法や情報技術を
利用して探求し、実験・観察・体験を通して学際的な視点で学ぶことによって「科
学への夢」を育むとともに、豊かな人間性を養う。
【
第2款
第2
1
各科目
】
スーパーサイエンスⅠ
目
標
学際的な分野の実践教材を通して、研究から発表に至るプロセスを学習することに
より、科学を研究する者としてのスキルを習得し、論理的思考力、独創性、創造性
を養うとともに、科学に対する探求心や責任感を育成する。
2
内
容
(1)探 究 方 法 と し て の 実 験
基礎実験
ア
物理的な手法による化学実験
イ
物理化 学 的 な 手 法 に よ る 生 物 実 験
ウ
生物的な手法による実験
(2)探 究 方 法 と し て の 情 報 処 理
ア
統計とデータ分析
(ア)散 布 図
(イ)相 関 関 数 ・ 標 準 偏 差
(ウ)単 回 帰 直 線
(エ)情 報 機 器 の 利 用
イ
実験測定データの処理
ウ
シミュレーションと予測
(3)研 究 発 表 の 技 術
ア
研究報告とレビューの作成
イ
ポスターセッションの企画と運営
-9-
(4)研 究 活 動 と 社 会
3
ア
研究機関における研修講座・フィールドワーク
イ
研究成果と社会
内容の取扱い
(1)内容の構成及びその取扱いに当たっては、次の事項に配慮するものとする。
ア
内容(1)については、基礎的な実験を行うものとするが、理科の各分野の関連
性に気づかせるとともに、創意・工夫ある実験方法を考案できるよう支援する
こと。
イ
内容(2)については、内容(1)で得られたデータを用いて、統計的に分析するた
めの理論と方法を学習すること。理論を実証するために、シミュレーションを使
って結果を予測し、その後、実験を行い、実証できるようにする。
ウ
内容(3)については、自分たちで企画運営を行い、仲間との協力により豊かな
人間関係を培うとともに、それらを通して、ねばり強い研究姿勢を養うこと。
エ
内容(4)アについては、興味・関心と進路選択に係る時期に配慮し、効果のあが
るように実施すること。大学・研究機関等と連携し、事前事後学習を十分に行う
ことによって、より効果の上がるものとすること。
オ
内 容 ( 4 )イ に つ い て は 、 特 許 権 や PL 法 に つ い て も ふ れ る こ と 。
( 2 )内 容 の 範 囲 や 程 度 に つ い て は 、 次 の 事 項 に 配 慮 す る も の と す る 。
ア
生徒の興味・関心・能力にあわせて、実験の内容を精選し、科目の
目標が達成できるように工夫すること。
イ
【
研究成果に関する研究者の権利や責任についてもふれること。
第3款
各科目にわたる指導計画の作成と内容の取り扱い
】
研修講座・フィールドワークについては適切な時期に行うものとし、大学・研究機
関等での研究活動について単位の修得を可能とする。
今年度の研究開発により、昨年度提案した本科目の指導要領
から変更した点は太字・下線部で示した。
- 10 -
1
研究概要
(1)目的
物理、化学、生物の各分野の基礎実験や実習等を通して研究の流れを体験し、研
究と発表のプロセスに必要なスキルを習得する。
( 2 ) 学 習 評価
「 興 味 ・ 関 心 」、「 学 際 的 な 知 識 ・ 理 解 」、「 科 学 者 と し て の 論 理 性 」、「 科 学 者 と し
ての創造性」の4つの観点をもとに各単元での評価観点ごとの評価規準を作成し、
それに基づいた評価を行った。
評価の方法としては、実験レポートやスライド、行動観察、研究論文などを用い
て総合的に評価を行った。観点別評定を算出し、その平均から全体の評定を求めた。
な お 、「 夏 期 集 中 講 座 」、「 フ ィ ー ル ド ワ ー ク 」 の よ う な 体 験 型 の 短 期 事 業 に お い て
は、学習評価を行わないこととした。特別講演会においても同様に、学習評価は行
わないこととした。
学習評価に関する詳細は、次項「2
学 習 評 価 」、 研 究 紀 要 【 科 学 技 術 系 人 材 育 成
を目指した生徒の研究活動における学習評価方法の開発】
( 第 5 章 )を 参 照 さ れ た い 。
(3)実施概要
平 成 1 6 年 度 入 学 生 の ス ー パ ー サ イ エ ン ス ク ラ ス に 対 し 、 SSH 用 の 教 育 課 程 に お い
て学校設定科目「スーパーサイエンスⅠ」として、系統的に実施した。昨年度は第
1期~4期であったが、今年度は前期と後期の2期構成とした。前期に基礎実験、
パワーポイント実習などを行い、後期に論文指導、研究活動を行った。後期の研究
活動においては、今度大学の研究室との連携による研究活動「スーパーサイエンス
Ⅱ」へとつながっていくことになる。
平 成 1 6 年 度 入 学 生 の ス ー パ ー サ イ エ ン ス ク ラ ス と SSH ク ラ ブ の 生 徒 に 対 し て 、
夏期集中講座として物理・化学・生物等の体験講座を実施した。名古屋大学大学院
工学研究科、生命農学研究科、情報科学研究科において8講座を実施した。
平成16年度入学生のスーパーサイエンスクラスに対し、研修旅行として琉球大
学瀬底実験所における海洋生物実習を実施した。また、平成16年度入学生のスー
パ ー サ イ エ ン ス ク ラ ス と SSH ク ラ ブ の 生 徒 に 対 し て 、 フ ィ ー ル ド ワ ー ク と し て 、
SPring-8 、 明 石 天 文 科 学 館 、 生 命 誌 研 究 館 、 大 阪 大 学 レ ー ザ ー エ ネ ル ギ ー 学 研 究 セ ン
ターにおける研修を実施した。
カリキュラム開発に関しては、昨年度は学習指導要領(案)として提案したが、
今 年 度 は 内 容 を 系 統 化 し 、【 学 習 指 導 要 領 - 科 目 「 ス ー パ ー サ イ エ ン ス Ⅰ 」 - 】 を 完
成させ、この節の冒頭に掲載した。研究概要の詳細は、研究紀要【確かな学力の育
成 を 目 指 し た カ リ キ ュ ラ ム 開 発 と そ の 評 価 ( 2 )- 「 ス ー パ ー サ イ エ ン ス Ⅰ 」 系 統 化 へ
の 取 り 組 み と 改 善 - 】( 第 5 章 ) を 参 照 さ れ た い 。
( 4 ) 事業評価
生徒自己評価、プレゼンテーションやポスターセッションに関する外部評価者に
よる講評等により事業評価を行った。研究のプロセスにおける必要なスキルが身に
付いているかどうかを評価の視点とする。
事 業 評 価 に 関 す る 詳 細 は 、「 自 己 評 価 報 告 書 」、「 事 業 評 価 シ ー ト 」( 第 4 章 )、 研 究
紀 要 【 ス ー パ ー サ イ エ ン ス ハ イ ス ク ー ル 事 業 の 事 業 評 価 方 法 の 開 発 】( 5 章 ) を 参 照
されたい。
- 11 -
2
学習評価
(1)評価の観点の趣旨
各期で評価を行った。評価観点は次の表のとおり。
興味・関心
学際的な知識・理解
科学者としての論理性
科学者としての創造性
自然 の事物・現象、 自然の事物・現象、数学 自 然 の 事 物 ・ 現 象 、 数 学 自 然 の 事 物 ・ 現 象 、 数 学
数学 の論理や体系に における基本概念、原理 で の 探 究 活 動 に お け る 論 で の 探 究 活 動 を 通 し て 、
関心 を持ち、意欲的 ・法則などを理解し、知 理 の 見 極 め が で き 、 処 理 研 究 計 画 の 立 案 、 結 果 の
に そ れ ら を 探 求 し よ 識を身につけている。
した結果に対して意味づ 解釈や表現においてアイ
うとする。
けが出来る。また、探求 デアを出したりインスピ
の成果を整理して表現す レーションを発揮したり
る。
と、発想の転換をするこ
とができる。
<表
「スーパーサイエンスⅠ」の評価の観点の趣旨>
この観点の趣旨を落とし込んで、各単元での評価観点ごとの評価規準を作成し、それ
に基づいた評価を行った。
(2)評価の方法
ア
実験レポート
前 期 「 基 礎 実 験 」 で の 評 価 。 物 理 ・ 化 学 ・ 生 物 各 1 テ ー マ 計 3 回 の 実 験 (全 員 必
須 ) に つ い て レ ポ ー ト を 作 成 し 、興 味 ・ 関 心 、知 識 ・ 理 解 、論 理 性 、創 造 性 に つ い て A
~ C の三段階評価を行った。
イ
スライド(パワーポイントを使用)
前期「プレゼンテーション実習」での評価。身近なテーマを自分で決定して、そ
れについて5枚程度のスライドを作成。作成したスライドを興味・関心、知識・理
解、論理性について生徒相互評価で A ~ C の三段階評価を行った。
ウ
生徒研究活動での行動観察、研究論文
後 期 「 研 究 論 文 の 書 き 方 と 研 究 発 表 の 仕 方 」「 テ ー マ 実 験 ・ 実 習 、 数 学 ゼ ミ 」 及
び「研究発表会」を合わせた評価。研究方法の修得、研究成果をまとめて表現する
技術の修得を指した。
「 テ ー マ 実 験 ・ 実 習 、 数 学 ゼ ミ (物 理 ・ 化 学 ・ 生 物 ・ 情 報 ・ 数 学 の い ず れ か 選 択 )」
において生徒の行動観察を行う。理科系は興味・関心と創造性、数学系は興味・関
心 と 知 識 ・ 理 解 に つ い て A,B の 二 段 階 評 価 を 行 う 。
また作成された研究論文を論理性について、チェックシートで A ~ C の三段階評
価を行う。
(3)評価の総括
「現代数理科学概論」と同様に、観点別評定を算出し、その平均から全体の評定を求
めた。
- 12 -
3
実施内容
(1)前期
~基礎実験・プレゼンテーション実習~
(ア) 摩 擦 力 を 調 べ る
実施日
授業
4 月 1 5 日 (金 )
物理実験
4 月 2 2 日 (金 )
第1講
5 月 6 日 (金 )
摩擦力を調べる
担当者
桜井・川喜田
・ 教 科 書 の「 摩 擦 力 」に つ い て の 記 述 が 正 し い か ど う か 検 証 す る こ と を テ ー マ と し 、
ね
各班で研究テーマを設定し、実験方法を決め、実験の工夫改善を図るという流れ
ら
を学ばせる。
い ・レポートの作成では、特に、実験の誤差について考察させたい。
・ビデオカメラ・コンピューターの有用性も指導。
準 備 物 : 長 方 形 の 木 片 ( 3 面 は 切 っ た ま ま 、 3 面 は 鉋 が け を し た )、 木 の 板 、 そ の
指
他物理室にあるもの(例:分銅、記録タイマー、ばねばかり、電子天秤)
ビデオカメラ
導 1 日 目 :「 最 大 摩 擦 力 」、「 静 止 摩 擦 係 数 」
についての教科書の記述から、
内
各班でテーマを設定。
2 日 目 :「 動 摩 擦 力 」、「 動 摩 擦 係 数 」 に
容
ついての教科書の記述から、各
班でテーマを設定。
3日目:2日目にビデオカメラで撮影し
た運動する木片の画像から加速
度 を 測 定 す る 方 法 を 学 習 。( 情
報教室)その後、各班で放課後の時間を利用し、再実験をした。各自レポ
ートを提出。
興味・関心
学
論理的思考力
独創性・創造性
具
興味関心を持ち
最大摩擦力、静止
実験結果を客観的
有効な実験結果が
体
積極的に実験に
摩擦係数、動摩擦
にとらえ、実験誤
得られるような適
の
取り組んでいた
力、動摩擦係数の
差について考察
切なテーマを設定
評
か。
正しい測定ができ
し、データーから
し、より精度の高
価
【レポート】
るか。
規則性を見つけ出
い実験めざして、
【レポート】
しているか。
実験方法や装置の
【レポート】
工夫をしたか。
規
習
確かな学力
準
【レポート】
評
多くのデーター
最大摩擦力、静止
実験結果を客観的
適切なテーマが設
をとり、試行錯
摩擦係数、動摩擦
にとらえ、実験誤
定できたか。
価 点 A 誤を重ねている
力、動摩擦係数の
差について考察
実験方法や装置の
正しい測定ができ
し、データーから
工夫がなされてい
たか。
規則性を見つけ出
るか。
観
別
か。
評
価
の
しているか。
上記の一部がで
基 B きている。
上記の一部ができ
上記の一部ができ
上記の一部ができ
ている。
ている。
ている。
上記のすべてがで
上記のすべてがで
上記のすべてがで
きていない。
きていない。
きていない。
準
上記のすべてが
C できていない。
- 13 -
(イ) ダ ニ エ ル 電 池 の 起 電 力 の 測 定
実施日
授業
6 月 1 7 日 (金 )
化学実験
6 月 2 4 日 (金 )
第1講
7 月 1 1 日 (月 )
ダニエル電池の起電
担当者
倉内・日紫喜・岡本
力を測定する。
・ダニエル電池の構造を理解し、実験条件や測定条件を変化、工夫させる。
ね ・各班で測定条件を考え、お互いに工夫改善を図る。
ら ・得られたデータを解析し、ダニエル電池の起電力がどのような条件で変化するか
い
を考察する。
1 日目:ダニエル電池の実験装置を組み立て、この電池の構造と動作原理を理解す
る。各班で、どうすれば起電力が変化するか予想させ、測定条件を考えさ
指
せる。溶液の温度変化、硫酸銅溶液の濃度、硫酸亜鉛溶液の濃度、電極間
の距離、電極の接水面積などを変化させ、第1日目の測定を行う。
導
2日目:ダニエル電池の起電力の測定結果等から、疑問に思った事について、それ
内
ぞれで話し合いを持ち、次に濃度や温度を変えたり、実験装置の塩橋につ
いて調べるなど自由に実験を行う。
容
3日目:得られたデータを解析し、グラフを作成する。ダニエル電池の起電力がど
のような条件で変化し、自分たちの班での予想と一致したかどうかを考察
する。
興味・関心
学
習
確かな学力
論理的思考力
独創性・創造性
具
ダニエル電池起電
起電力測定で行
実験条件の変化
実験を通じて自らの
体
力測定実験に興
っ た 実 験 の 原
に関するレポー
考えを導き出し、測
の
味、関心を持ち、
理、法則を理解
トを適確にまと
定条件、実験方法の
評
意欲的に取組み、
し、また正確に
め、その結果か
工夫を行い、創意あ
価
その内容が各自の
結果が出せる。
ら要因や仕組み
るレポートの作成が
規
持つ興味と関連付
【レポート】
を科学的に考察
できる。
準
けて考察できる。
できる。
【レポート】
【レポート】
【レポート】
評
実験内容について
実験内容につい
実験と結果を理
考察が発展的で創造
価 観 A 学習した以上に調
て学習した以上
解し、しっかり
的である。
に 考 察 し て い
と考察している。
点
べている。
別
評
る。
実験内容について
実験内容につい
上記の一部が達
上記の一部が達成さ
価 B 関心を持ってい
て調べている。
成されている。
れている。
実験内容につい
上記の一部も達
上記の一部も達成さ
て 調 べ て い な
成されていない。 れていない。
の
る。
基
実験内容にあまり
準 C 関心がない。
い。
- 14 -
(ウ) 微 生 物 の 取 り 扱 い の 基 礎
実施日
授業
5 月 1 3 日 (金 )
5 月 2 0 日 (金 )
生物実験
第1講
6月3日(金)
微生物の取り
担当者
林・小谷
扱いの基礎
ね
バイオテクノロジーの進歩において、微生物を使った研究によるものが多くの部分
ら
を占めている。微生物を実際に扱うことで、扱い方をの基礎を身につけ、具体的な
い
研究のイメージを持たせる。
1回目:大腸菌、乳酸菌、納豆菌をグラム染色法で染め分ける。
白金耳でコロニーから細菌を取り、スライドガラス上で滅菌水に懸濁し、広
指
げ乾燥させる。バーナーの炎の上にスライドガラスをかざし熱を加え、火炎
固定を行う。グラム染色液(ニッスイのフェイバーG)で染色し、染まり具
導
合を観察し、グラム陽性菌か陰性菌か判定する。
2回目:溶液中の大腸菌の濃度を調べる。
内
培養した大腸菌の培地を生理的食塩水で順次希釈していく。0.1mlの希
釈した食塩水を平板培地に落とし、コンラージ棒で平板培地上に均等に塗り
容
広げる。36℃に温度調節したインキュべーターに入れて24時間置き、平
板培地上に発生したコロニーの数をカウントし、元の培地中の大腸菌濃度を
計算で求める。
3回目:データ処理
興味・関心
学
習
確かな学力
論理的思考力
独創性・創造性
現在我々の人生に
微生物の密度の測
実験の結果を正しく
基本形式にのっとり、
具
関わってくる生物
定のための実験の
理解し、細菌の密度
レポート作成がされ
体
の知識、技術は多
原理を十分理解し、
を計算できたかどう
ているか。また、人
の
くは微生物を使っ
正確にその手法を
か。また、この実験
に評価されることを
評
た研究の成果であ
行い、またグラム
手法について様々な
念頭に置き、図表・
価
る。微生物やその
染色の方法を正し
考察を行ったかどう
グラフを正確かつ見
規
扱い方に興味を持
く行い、結果を出
かをみる。
やすく作成している
準
ち、バイオテクノ
すことができたか
【レポート】
かどうか。
ロジーについてさ
をみる。
らに知りたいと思
【レポート】
評
【レポート】
っているかどうか。
価
【レポート】
実験内容について
実験内容や手法に
実験とその結果を理
考察が独創的で創造
観 A 学習した以上に調
ついて十分な理解
解し、的を射た考察
的である。
点
べていたり考察し
をしている。
ができている。
別
ている。
評
実験内容について
実験内容や手法に
上記の一部が達成さ
上記の一部が達成さ
価 B 大きな関心を持っ
ついてある程度理
れている。
れている。
の
ているのが分かる。
解をしている。
基
上記の一部も達成
上記の一部も達成
上記の一部も達成さ
上記の一部も達成さ
されていない。
れていない。
れていない。
準 C されていない。
- 15 -
(エ) プレゼンテーション実 習
実施日
7 月 2 0 日 (水 )
7 月 2 1 日 (木 )
授業
プレゼンテーション実 習
第1講
7 月 2 2 日 (金 )
プレゼンテーション実 習
担当者
山口
雅弘
ね
プレゼンテーションの内容構成、提示資料、発表技術に関する基本的な知識を習得
ら
し、プレゼンテーションツールの効果的な活用方法を学習するとともに、実習を通
い
して自分自身のプレゼンテーションスキルの向上を図り、プレゼン能力を磨いてい
ける基礎をつくる。
導 プレゼンテーションの内容構成の仕方、効果的な提示資料の作成方法に関する講
入 義 を き い た 後 、 自 分 で 作 成 す る 。 で き た フ ァ イ ル は Web 上 で 評 価 さ せ る 。
内
・ PowerPoint の 講 義
展
以下の手順で講義を聴きながら同一のスライドを作成していく。
スライドの作成、画像の挿入、グラフの挿入、テキストの挿入・編集、アニメ
容 開
ーションの設定等。
・ PowerPoint の 作 成 実 習
身近なテーマを自分で決定して、それについて5枚程度のスライドを作成。
SSH で 学 習 し た 内 容 を ま と め る も の や 趣 味 に つ い て ま と め る も の が い た 。
・ 作 成 し た フ ァ イ ル は Web よ り 閲 覧 で き る よ う に し て 、 相 互 評 価 さ せ る 。
ま 今 回 は PowerPoint を 使 用 す る プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン に つ い て 学 ん だ 。 プ レ ゼ ン テ ー
と ションとは発表であり、使用する道具については発表する内容を吟味し、それに
め ふさわしい道具を使うべきである。科学系の発表では「動き」を見せると、より
理 解 が 深 ま る 発 表 と な る こ と が 多 い の で 、こ う い っ た ツ ー ル を 使 う 方 法 を 学 ん で 、
自 己 啓 発 に 努 め て 欲 し い 。。
興味・関心
学
習
確かな学力
論理的思考力
具
・プレゼンテー
・基礎的な知識を
・目的に応じて、
体
ションソフト
身につけること
手法を改善した
の
を効果的に活
ができたか。
り、表現方法を
評
用しているか。 ・情報を適切に処
価
・意欲的に取り
規
組めたか。
準
理する技能を身
につけている
か。
工夫することが
できるか。
・レイアウトや画
面構成は的確
か。
価 観
2つの項目につ
点 A いて該当する。
2つの項目につい
2つの項目につい
て該当する。
て該当する。
1つの項目につい
1つの項目につい
て該当する。
て該当する。
A,B以外。
A,B以外。
別
評
1つの項目につ
価 B いて該当する。
の
基
A,B以外。
準 C
- 16 -
独創性・創造性
(2)後期
~研究論文の書き方と研究発表の仕方について~
~テーマ実験・実習、数学ゼミ~
ア
小単元の目標
実験、ゼミナール等研究を通して自ら課題を設定し、仮説を検証する方法を身につ
ける。そして研究の成果をまとめ、他者に伝える技術を身につける。
イ
小単元の評価規準
興味・関心
学際的な確かな学力
論理的思考力
独創性・創造性
内 容 の ま と ま 研究課題について 研究対象について、予 研究を進めるに当た 実 験 に つ い て 、 自
り ご と の 評 価 興味を持って取り 備的な知識を持って研 って対象を明確に意 ら の 考 え を 導 き 出
規準
組む。
究に当たっている。
識でき、その成果を し た り し て 創 意 あ
整理して表現する。
る研究を行う。
学 習 活 動 に お 既に知られている 既に知られているその 研究を進めるに当た 実 験 の 計 画 、 方 針
け る 具 体 の 評 その分野に関する 分野に関する情報を理 って対象を明確に意 に つ い て 進 言 が 出
価規準
情 報 に 興 味 を 持 解できている。
識 で き 、 そ の 成 果 を 来る。
ち 、 新 た な 疑 問 を 【行動観察】
整理して表現する
持ってそれを研究
【レポート】
【行動観察】
の目的 にし てい
る 。【 行 動 観 察 】
「 研 究 論 文 の 書 き 方 と 研 究 発 表 の 仕 方 に つ い て 」 は 期 間 が 短 か っ た 為 に 、「 テ ー マ 実 験
・実習、数学ゼミ」と合わせて評価を行うこととした。評価する対象は以下の2点であ
る。
①研究方法の修得
②研究成果をまとめ、他者に伝える技術の修得
(ア)
研究方法の修得に関する評価
評 価 者 ; SS Ⅰ 後 期 の 指 導 教 官
被評価者;個人に対して行う
評価方法;観点別評価
【理科系】
課題の設定について
(規 準 )既 に 知 ら れ て い る そ の 分 野 に 関 す る 情 報 に 興 味 を 持 ち 、 新 た な 疑 問 を 持 っ て
それを研究の目標にしている。
A
既に知られているその分野に関する情報に興味を持ち、新たな疑問を持ってそ
れを研究の目標にしている。
B
A 以外。
実験計画、方法について
(規 準 )実 験 の 計 画 、 方 法 に つ い て 進 言 が で き る 。
A
「 こ う し て は ど う で す か 」「 こ う し て は い け ま せ ん か 」 と い う 進 言 が 出 来 る 。
B
進言が無い。
【数学系】
事前学習について
(規 準 )既 に 知 ら れ て い る そ の 分 野 に 関 す る 情 報 を 理 解 で き て い る 。
- 17 -
A
理解できている。
B
A 以外。
課題の設定について
(規 準 )既 に 知 ら れ て い る そ の 分 野 に 関 す る 情 報 に 興 味 を 持 ち 、 新 た な 疑 問 を 持 っ て
それを研究の目標にしている。
A
既に知られているその分野に関する情報に興味を持ち、新たな疑問を持ってそ
れを研究の目標にしている。
B
(イ)
A 以外。
研究成果をまとめ、他者に伝える技術の修得に関する評価
評 価 者 ; SS Ⅰ 後 期 の 指 導 教 官
被評価者;研究班ごとで行う
評価方法;チェックリスト
< 表
チェックリスト >
大項目
評価基準
概要
目的から結論までの一連の流れが大まかに把握できる。
目的
これから何を明らかにしようとしているかがはっきりと読み取れる。
方法
どうやって研究を進めたか一通り把握できる。
結果
図や表、写真に文章を織り交ぜて得られた結果がはっきり読み取れる。
考察
分かったこと、分からなかったことが明瞭に区別されている。はじめに
まとめ
述 べ ら れ た 目 的 に つ い て 、 ま と め (結 論 )で 再 び 触 れ ら れ て い る 。
ウ
Check
実施内容
(ア)研 究 論 文 の 書 き 方 に つ い て の 講 義
実施日
授業
1 2 月 2 2 日 (木 )
参加
23名
研究論文の書き方と研究発表の仕方について
担当者 小谷
ね
・研究内容についての報告書・論文の書き方について学ぶ。
ら
・研究発表に向けての、パワーポインターやポスターセッションについての発表
い
の仕方を学ぶ。
導 ・研究の流れを生徒自身の体にしみこませる事の大切さ、研究の流れを理解して
入
指
得られる効果を説明。
・「 研 究 と は 」 と 題 し て 、 自 然 科 学 に お け る 一 般 的 な 研 究 の 流 れ を 説 明
展 ・説明する研究内容は、研究論文に挙げる項目に対応させる.この説明を以って
導
論文の書き方の説明とする。
・発表のしかたについて研究発表の意義を科学の発展と人類社会の発展に絡めて
内
説明
開 ・発表を行うにあたっての禁忌事項(制限時間の遵守)について説明
容
ま ・9月に行った発表練習会の生徒相互評価結果から、各人の発表について反省を
と
し 、 次 回 ( 2 月 )の 発 表 会 で よ り よ い 形 が で き る 様 促 す 。
め
- 18 -
(イ) 物 理 テ ー マ 実 験
平 成 1 7 年 1 0 月 2 1 日 ( 金 )、 1 0 月 2 8 日 ( 金 )、 1 1 月 4 日 ( 金 )、
実施日
1 1 月 1 8 日 ( 金 )、 1 1 月 2 5 日 ( 金 )、 1 2 月 9 日 ( 金 )、 1 2 月 1 6 日
( 金 ) 平 成 1 8 年 1 月 1 3 日 ( 金 )、 1 月 2 0 日 ( 金 )、 1 月 2 7 日 ( 金 )
授業
SS Ⅰ 第 4 期
物理・ロボ
担当者
ット
桜井、川喜田、
参加生徒
10名
山口
・実験装置の作成・実験・考察という一連の作業を通じで、科学における研究の
ね
流れの一端を知る。
ら
・一つの内容について研究を行うことで、より深く探求を行う。
い
・自分の行った研究内容について発表を行うことで、表現力の育成を図る。
・共同研究を行うことで、豊かな人間関係を養う。
物理と物理ロボット2つのグループに分かれて実施した。さらに、物理グルー
プは3テーマに、ロボットグループは2テーマに分かれて実施し、SSⅠ4期を
行った。また、2月10日に行われた生徒研究発表において、各テーマごとにレ
ビューの作成、ポスターセッション、口頭発表を行った。
①物理グループ
<松の植樹による津波の被害軽減のための研究>
地震の二次災害の代表的なものの津波について、被害を軽減するための効果的
な物体の形や配置について研究を行う。第4期では防波堤や護岸に欄干を取り付
ける場合に効果的な形状について、模型を作成し実験を行った。欄干の形は、円
柱よりも四角柱の方が津波の被害軽減のために有効であることがわかった。
内
<パラグライダーの揚力について>
可搬性と可制御性に優れているパラグライダーについて、より大きな揚力を得
るための形状について研究を行っている。今回の研究では、パラグライダーの一
部分であるセルの模型を作り、前縁延長部の長さと仰角を変化させ、風洞実験に
て空気の流れと模型周りの圧力を測定し揚力が大きくなる条件について研究を行
容
った。
<身の回りの偏光について>
ある種のコガネムシの美しい虹色と偏光の関係を研究することを目標にしてい
る。第4期では、身近にあるセロテープの位相差板としての性質を、分光器を用
いてスペクトルをとることで調べた。セロテープを重ねる枚数を変え測定した結
果 、 1/2 波 長 板 、 1/4 波 長 板 に な る 波 長 が あ る こ と を 見 つ け た 。
②ロボットグループ
< NQC を 用 い た LEGO MindStorms プ ロ グ ラ ミ ン グ >
NQC を 用 い た プ ロ グ ラ ミ ン グ 実 習 と し て 、 モ ー タ ー の 制 御 ・ 光 セ ン サ の 利 用 方
法などについて演習を行った。その後、テーマを「マインドストームを使ってロ
ボットに計算をさせる」とし、その制作に取りかかっている。
< LEGO MindStorms に よ る 自 立 ロ ボ ッ ト の 制 御 >
MindStorms を 用 い て 自 立 型 の ロ ボ ッ ト の 制 作 を 行 っ た 。 ラ イ ン ト レ ー ス を 既 存
の車タイプを用いずにユニークな鶏を作成して使用。さらにその鶏に餌をついば
む動作を組み入れている。プログラムの動きの制御や歯車の制御などさらに精度
を高めるための研究を行っている。
- 19 -
(ウ) 化 学 テ ー マ 実 験
平 成 1 7 年 1 0 月 2 1 日 ( 金 )、 1 0 月 2 8 日 ( 金 )、 1 1 月 4 日 ( 金 )、
実施日
1 1 月 1 8 日 ( 金 )、 1 1 月 2 5 日 ( 金 )、 1 2 月 9 日 ( 金 )、 1 2 月 1 6 日
(金)
授業
化学テーマ実験
担当者
岡本、倉内、
参加生徒
4名
日紫喜
・化学発光について学習し、発光の原理を理解する。
ね
ら
い
・測定条件を変えることで、化学発光に変化が生じるかを考え、実験方法を工夫
する。
・仮説を検証するために、実験を繰り返し、探求心を培う。
・研究の成果をまとめ、プレゼンテーション能力を養う。
化学反応の中には熱を発生せずに光を発生する反応がある。本来、化学反応で
は熱反応が起こり光の放出は見られない。しかし、化学発光は基底状態の電子が
励起状態となり、再び基底状態に戻るときのエネルギーが光エネルギーとして生
じるため、光の放出が見られるのである。今回、低分子の発光について仮説を立
て、実験を行った。
①実験方法
・溶液1・溶液2を作る。
指
溶液1:125mlコニカルビーカーにジクロロメタンを25ml、3%過酸
化水素水4ml、増感剤0.005gを入れ、ゆっくり振ってよく溶
か す 。 な お 、 用 い る 増 感 剤 は ロ ー ダ ミ ン B、 ロ ー ダ ミ ン 6 G、 イ ソ ビ オ
ラントロン、フルオレセイン、ルブレン、9,10ジフェニルアント
ラセン、アントラセンである。
導
溶液2:清浄かつ乾燥した125mlコニカルビーカーにジクロロメタンを5
0ml入れ、さらに塩化オキサリルを2ml加える。この操作はドラ
フトで行う。
・溶液1に攪拌子を入れ、マグネチックスターラーで攪拌する。なお、ビーカー
には覆いをつけ光を測定しやすくする。そして、溶液2を溶液1に混ぜる。こ
内
のとき出る光の波長を測定した。
・光の波長の平均値は測定された波長のグラフから区分求積法を用いて平均波長
を求めた。
②発光原理についての考察
化学発光の実験は過シュウ酸エステルの化学発光に分類される塩化オキサリル
容
を用いた実験で、この場合はシュウ酸誘導体(塩化オキサリル、シュウ酸エス
テル)が過酸化水素との反応により共存する蛍光物質を励起させることで発光
を生じる。実験では塩化オキサリルと過酸化水素を反応させた時、中間体を生
成 す る 。そ し て 、そ の 中 間 体 か ら 増 感 剤 に エ ネ ル ギ ー が 移 動 す る 。そ れ に よ り 、
増感剤は励起状態となり、そこから基底状態に戻るときにエネルギーを放出し
その波長が可視光の領域に当てはまる場合に発光として現れるのである。
③増感剤と光の波長との関係
・増感剤が受け取るエネルギーに対して発光に使われるエネルギーの割合を計算
きるように仮説を立て、考察する。
・ 増 感 剤 の 種 類 と 分 子 量 と の 間 に 相 関 関 係 は な い か を 考 え 、実 験 方 法 を 工 夫 す る 。
- 20 -
(エ) 生 物 テ ー マ 実 験
平 成 1 7 年 1 0 月 2 1 日 ( 金 )、 1 0 月 2 8 日 ( 金 )、 1 1 月 4 日 ( 金 )、
実施日
1 1 月 1 8 日 ( 金 )、 1 1 月 2 5 日 ( 金 )、 1 2 月 9 日 ( 金 )、 1 2 月 1 6 日
( 金 ) 平 成 1 8 年 1 月 1 3 日 ( 金 )、 1 月 2 0 日 ( 金 )、 1 月 2 7 日 ( 金 )
授業
生物テーマ実験
担当者
林
眞司
参加生徒
7名
小谷大介
生物学で、すでに確立している技術や研究方法を体験することにより、今学んで
ね
いる知識がどのように得られ、生物学の研究がどのように進められてきたかとい
ら
うことを学ぶ。また、新たな技術を使って自分でとったデータをもとに、データ
い
処理についても学びレポートを作成する。
古典的な技術、技法ではあるが現在の研究にも使われている基礎的な技術であ
るので、生徒の実習内容として採用した。施設の制約もあり、2名、2名、3名
のグループに分けてそれぞれ実習内容をずらしながら行った。
・植物の組織培養の基礎
ムラシゲ・スクッグの市販の培地を使い、植物ホルモンとしてオーキシンはN
AA、サイトカイニンとしてカイネチンをいろいろな濃度の組合わせで加えた
指
培地を作成した。そこに、滅菌が簡単であるニンジンの根の形成層部分をコル
クボーラーで抜き2~3ミリの組織片を植え込む。この過程で培地作成、植物
ホルモンの希釈、無菌操作の技術を学ぶ。温度を一定にした培養容器の中で、
連続光下と暗黒条件下に置き、1週間おきにデジカメで写真を撮り成長の観察
を行った。
導
・動物・植物組織標本の作成
パラフィン切片法を用いて、動物及び植物組織の顕微鏡観察標本を作成した。
パラフィンで包埋した植物組織(キク)のつぼみなどのブロックをミノット式
のミクロトームで10μmの厚さに切片をつくり、染色の準備をした。
この実習の過程で、顕微鏡の切片作成の技術を習得するとともに、切片を切る
内
ときの刃の角度、切るときのスピードなど、本を読んだだけでは分からない、
微妙な感覚が実際に行うには必要なことを学んだ。
・陽葉と陰葉の厚さの違いと光条件
同一種の植物の陽葉と陰葉に見られる厚さの違いを電子ノギスで測定し、光強
度 〔 lux 〕 を 測 定 し 、 厚 さ の 差 と 関 連 さ せ て 植 物 と 環 境 適 応 を 考 え る 。
容
まず植物1個体につき陽葉陰葉各20枚ずつ厚さを測定し、結果をヒストグラ
ムで表示する。その際、表計算ソフトの使用やスタージスの公式についても言
及する。
・この期間の後半に、1つの班では次の研究の準備として大学の先生の指導のも
とにラットの飼育を行っており、餌の違いにより体重の増加がどのように違っ
てくるかを調べた。8週間の飼育の後、その違いを、血液や臓器の重さ、更に
内臓脂肪の蓄積の違いなどを調べるために解剖を行った。ラットの解剖という
機会は少ないので、生物分野選択の他のグループも加わりラットを解剖し、様
々な臓器を取り出し、重さを測定することなどを手伝うと共に、貴重な経験を
した。
- 21 -
(オ) 数 学 研 究 ゼ ミ
平 成 1 7 年 1 0 月 2 1 日 ( 金 )、 1 0 月 2 8 日 ( 金 )、 1 1 月 4 日 ( 金 )、
実施日
1 1 月 1 8 日 ( 金 )、 1 1 月 2 5 日 ( 金 )、 1 2 月 9 日 ( 金 )、 1 2 月 1 6 日
( 金 ) 平 成 1 8 年 1 月 1 3 日 ( 金 )、 1 月 2 0 日 ( 金 )、 1 月 2 7 日 ( 金 )
授業
数学研究ゼミ
担当者
松岡学
参加生徒
1名
村 上 智 希( 名 古 屋 大 学 大 学 院 生 )
ね
ら
い
英語で書かれた書物を使い、自らの力で洋書を読解する能力を身につけるこ
とをねらいとする。
「 自 ら 数 学 を 学 ぶ 姿 勢 」 を 大 事 に し 、「 自 分 自 身 で 調 べ 、 自 分 自 身 で 考 え 、 自 分
自 身 で 解 決 す る 。」 能 力 を 身 に 付 け る こ と を 目 的 と す る 。
①講読プレプリント
・ 題 名 :「 GROUP THEORY」
・ 著 者 : J.S.Milne
指
②方法
セ ミ ナ ー 形 式 に よ る 数 学 の 洋 書 の 講 読 。毎 回 、生 徒 が 指 定 さ れ た 範 囲 を 予 習 し 、
講義のときに黒板を使い、セミナー形式で説明する。
導
③概要
英 語 で 書 か れ た プ レ プ リ ン ト 「 GROUP THEORY」 J.S.Milne を 用 い て セ ミ ナ ー
形 式 で 生 徒 が 発 表 し た 。 群 論 ( GROUP THEORY) の 基 本 的 な 部 分 が 詳 細 に 書 か れ
たテキストを用いて、丁寧にセミナーを行った。生徒が予習してきて発表をし
た が 、 セ ミ ナ ー の 際 、 生 徒 が 分 か ら な い 部 分 は 教 員 や TA が 黒 板 を 使 っ て 説 明
内
をしたり、より詳しく解説を加えたりしながら、生徒の理解を深めた。
生徒は英語で書かれた数学的な文章を日本語に直すだけでも苦労していた。
さらに、日本語に直した後でも、その数学的な意味を理解することにかなり時
間がかかっていた。高校数学に比べて、極めて抽象的な内容なため、その数学
的な概念を理解するのは大変だが、生徒には良い訓練になったと思われる。
容
④学習内容
群論は代数学の1分野であり、現代数学や現代物理学において非常に重要な
存在である。
今回は、群の公理から出発して、巡回群や置換群などの基本的な群を学んだ。
群 の 基 本 的 な 性 質 を 学 ん だ 後 、 Cayley に よ る 定 理 「 任 意 の 群 は 、 置 換 に よ る 群
に埋め込める」を証明し、系として「任意の有限群は、置換群の部分群と同一
視される」ことを学んだ。
そ の 後 、 剰 余 群 に つ い て 学 習 し 、 Lagrange に よ る 剰 余 の 位 数 に 関 す る 定 理 を
証明した。
- 22 -
4.夏期集中講座
(1)研究概要
ア
目的
高大連携により、科学的な現象を実験・観察・体験を通して学ぶことによって、
生徒の興味関心を育てることを目的とする。夏期休業中に大学で受講することによ
って、生徒の理数系への志望を単なる憧憬の段階から未来の自分の姿へ現実味を与
えることを目的とする。
イ
学習評価
夏期集中講座は興味・関心及び望ましい人間関係や豊かな心の育成を図っている
が、数日間の経験でこのような情意面が豊かに育まれるのは稀で、多くの情意面は
長い年月をかけて様々な経験を通して形成される。従って、夏期集中講座のような
短期事業では学習評価を行わないこととした。
ウ
実施概要
名古屋大学工学研究科、生命農学研究科、情報科学研究科の協力を得て3日間で
8講座を実施した。講義の形態は午前中に講義、午後に研究室の見学・実験・実習
等とし一人の生徒が物理・化学・生物分野の中で、最先端の実験をできるだけ多く
体験できるように考慮した。
この講座では、科学的な体験を通して、生徒の自主的な研究姿勢の向上を促すよ
うに配慮した。そのため、本校教員と大学教員の間で事前にメール等で連絡を取り
合い、より効果的な学習プログラムの構築に努めた。この方法により、高校生の学
力の状況などを、担当の大学の教員に伝えることができ、実習内容が高校の内容と
重複しないようにすることができた。
本校では夏期休業中にかなりの日数の課外が実施されたので、高校としての日程
は8月上旬の日程が最適であった。
実施対象は平成16年度入学のスーパーサイエンスクラス生と平成17年度入学
のスーパーサイエンスクラブ生である。
大学や研究機関との連携に関する研究概要の詳細は、研究紀要【スーパーサイエ
ン ス ハ イ ス ク ー ル 事 業 に お け る 大 学 ・ 研 究 機 関 と の 連 携 に つ い て 】( 第 5 章 ) を 参 照
されたい。
エ
事業評価
アンケート調査により、興味・関心が増したかどうか、研究したいことが見つか
っ た か ど う か を 評 価 し た 。 興 味 ・ 関 心 の 育 成 に 役 立 っ た か ど う か に 対 し 、「 4 . 大 変
そ う 思 う 」「 3 . そ う 思 う 」「 2 . あ ま り 思 わ な い 」「 1 . 思 わ な い 」 の 4 段 階 の 基 準
を設定し、評価を行った結果、今年度は「3.3」であった。目標数値は「3.1
以上」である。
事 業 評 価 に 関 す る 詳 細 は 、「 自 己 評 価 報 告 書 」、「 事 業 評 価 シ ー ト 」( 第 4 章 )、 研 究
紀 要 【 ス ー パ ー サ イ エ ン ス ハ イ ス ク ー ル 事 業 の 事 業 評 価 方 法 の 開 発 】( 5 章 ) を 参 照
されたい。
- 23 -
(2)実施内容
(ア) MindStorms と Mathematica 実 習
【実施日】
平成17年
8月
【大学側担当者】
8日(月)
英輔
情報科学研究科
1年生
8名
2年生
0名
複雑系科学専攻
助教授
[ コーディネート]
山口雅弘
[引率教員]
山口雅弘
【指導スタッフ】
【参加生徒】
MindStorms と Mathematica 実 習
名古屋大学大学院
北
【高校側担当者】
【講座名】
大学側教官
1名
TA
5名
【実施概要】
時間帯
活
動
9:30 ~ 10:00
活
動
内
容
主担当
受付
10:00 ~ 12:00
実習
MindStorms 実 習
北
英輔 助教授
13:00 ~ 16:00
実習
Mathematica 実 習
北
英輔 助教授
16:00 ~ 16:30
質疑
質疑応答
【引率教員所見】
<講座の内容と生徒の実態>
昨 年 に 引 き 続 き 、 MaindStorms の 実 習 と 新 た に
Mathmatica の 実 習 を 行 う こ と に な っ た 。
MindStorms は 予 め 指 定 さ れ た バ ギ ー お よ び 各 種 パ ー
ツを学校で作成しそれを名古屋大学に持参して、主
写真
にアルゴリズム理解に努めるよう、プログラムの自
習を中心に行った。やはり、自分が作成したように
動くことが楽しいようで、難しい課題にも果敢に挑
戦していた。光センサの調子が悪いパーツがあり、
それをプログラムミスと間違って手こずっている生
徒がいた。
MainStorms に か な り 没 頭 し て し ま い 予 定 の 時 間 を か な り 超 過 し た が 、 次 に Mathematica の
自習を行う。この実習もプログラムを含み難解であるので、簡単な3 D 図形の描写を行
う実習を行った。普段目にする図形がパラメータを変えるごとに変化していく様子は、生
徒にとって普段授業では扱われていないので、とても刺激になる映像であった。
<教員としての感想と次年度へのコメント>
MindStormd に つ い て は 今 後 の 活 動 の 中 に 取 り 入 れ て 、 機 械 動 作 の ア ル ゴ リ ズ の 研 究 を 引
き続きさせてみたい。よりたくさんの生徒と競うことで技術も向上するのではと思った。
Mathematica に つ い て は 、 物 理 実 験 な ど の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン な ど に も 応 用 が 利 く 。 今 後 と も
その可能性をいろいろと試してみたい。
- 24 -
(イ) 再 生 医 療 の 現 状 と 展 望
【実施日】
【講座名】
平成 17年 8 月 9 日(火)
【参加生徒】
再生医療の現状と展望
2年生13名
1年生
【大学側担当者】
名古屋大学生命農学研究科
〃
【高校側担当者】
[ コーディネート]
林
眞司
[引率教員]
林
眞司、北床宗幹
【指導スタッフ】
大学側教官
2
名
、TA
北川泰雄
教授
新美友章
助手
5
4名
名
【実施概要】
時間帯
活
動
活
動
内
容
主担当
9:30 ~ 10:00
講 義
実験の意義、実験の手順の説明
北川泰雄 教授
10:00 ~ 12:30
実 験
マウスを解剖、皮下から脂肪組織を切り
新美友章 助手
だし、酵素処理によりバラバラにしてS
TA5名
VFを培養する。
13:30 ~ 15:00
講 義
発生学の基礎、幹細胞の存在とその役割
北川泰雄 教授
15:00 ~ 16:15
実 験
培養されたSVFの観察と全体に対する
新美友章 助手
質疑。
TA5名
【引率教員所見】
<講座の内容と生徒の実態>
昨年度と同じプログラムで実施していただいた。昨
年は終わりの時間が延びたので、今回もできるだけ早く
始めていただいた。そういう時間的な制約もあって、マ
ウスの解剖はすでに殺してあるマウスを用意していただ
いていたが、やはり自ら実験の目的ではあるが殺すとこ
ろから体験させるべきであったという反省があった。
マウスの解剖は、初体験で緊張しながら真剣に取組んでいた。培養についてもTAの方
の親身な指導の下、てきぱきと行っていた。午後から北川先生により、発生学の初歩から
現在研究されている脂肪組織由来の幹細胞を使っての再生医療の可能性と将来の展望につ
いて講義をしていただいた。内容は大変高度で、現在やらせていただいている実験とを結
びつけられない生徒が多いようだったが、培養結果の観察と平行して行っていただいた質
疑応答の中で、先生がより分かりやすくご説明いただいたことにより、この技術の医療へ
の寄与の可能性を想像できる生徒が増えたものと思う。このような実験を1日体験させて
いただくだけで生徒にどのような効果があるかという疑問はあるが、生物の研究分野への
興味を膨らませた生徒がきっといるものと思う。
<教員としての感想と次年度へのコメント>
時間的には、スタートを早めたことで終了時間は早まった。しかし、まとまって昼食が
取れなかったこともあり、解剖したマウスの後かたづけを生徒にやらせることはできなか
ったことは問題であった。実験の準備・後かたづけも含めて実験であり、準備の善し悪し
で実験がうまくいったり行かなかったりするという点も体験させる必要があると北川先生
がおっしゃっていたが、その通りであると思う。
- 25 -
(ウ) 微 生 物 と 酵 素 の バ イ オ テ ク ノ ロ ジ ー
【実施日】
【講座名】
【参加生徒】
平成 17年 8 月 9 日(火)
微生物と酵素のバイオテクノロジー
2年生10名
1年生
【大学側担当者】
【高校側担当者】
名古屋大学生命農学研究科
中野秀男
教授
〃
岩崎雄吾
助教授
〃
河原崎泰昌
助手
[ コーディネート]
林
[引率教員]
伊藤泰二、藤原明代
【指導スタッフ】
大学側教官
3
4名
慎司、伊藤泰二
名
、
TA
4
名
【実施概要】
時間帯
活
動
9:30 ~ 10:40
講
義
活
動
内
容
主担当
バ イ オ テ ク ノ ロ ジ ー の 概 要 、実 験 の 意 義 、 中 野 秀 男 教 授
実験の手順の説明
10:00 ~ 12:30
実
験
試 料 の 調 整 と DNA の 抽 出 、 PCR 装 置 の
中野秀男 教授
セッティング
岩崎雄吾助教授
河原崎泰昌助手
TA4名
13:30 ~ 15:30
実
験
15:30 ~ 16:00
PCR 産 物 の 検 出 ( ア ガ ロ ー ス ゲ ル 電 気 泳
中野秀男 教授
動)
岩崎雄吾助教授
結果の検討、今後の課題
河原崎泰昌助手
TA4名
【引率教員所見】
<講座の内容と生徒の実態>
午前中、中野先生による講義では、主に「バ
イオテクノロジーの現状と課題について」であ
った。専門的になりすぎず、身近な例を数多く
あげていただいたことから、高校生にも十分理
解できる内容であった。実験の方も、自分の口
腔 内 上 皮 細 胞 を 使 い 、 PCR や 各 種 実 験 器 具 を 用
いて、自分の遺伝子を確認できることから、非
常に興味を持って行っていた。結果より、アル
コール分解酵素に関する遺伝子の所有について
の知見も得られた。
<教員としての感想と次年度へのコメント>
高校にはない最先端の実験器具を利用できたことは、生徒にとって非常に有意義だった
のではないかと思う。しかし、自分の細胞を使ったものの、生き物をほとんど感じない実
験であったため、今回参加した生徒には、機会を見つけて是非実際に生き物を感じられる
実験を行ったもらいたい。そういったことも含めて、次年度は生物の基礎である分類や生
態についての分野なども検討していきたい。
- 26 -
(エ)水 ロ ケ ッ ト を 科 学 す る
【実施日】
【講座名】
平成17年8月11日(木)
【参加生徒】
水ロケットを科学する
1年生
0名
2年生10名
【大学側担当者】
名古屋大学工学研究科
【高校側担当者】
[ コーディネート] 川 喜 田 真 也
梅村
章
教授
[引率教員]川喜田真也、相原千景
【指導スタッフ】
大学側教官3名
TA 4 名
【実施概要】
時間帯
活
動
活
動
内
容
主担当
9:30 ~ 10:30
講義
「推進力と揚力について」
梅村章教授
10:30 ~ 12:00
製作
ペットボトルロケットの製作
梅村章教授
13:00 ~ 14:30
実験
推力の測定と高速度カメラによるペット
梅村章教授
ボトル内の水の流動観察
14:30 ~ 15:40
実験
ペットボトルロケットの打ち上げ
梅村章教授
【引率教員所見】
<講座の内容と生徒の実態>
最初に行われた講義では、流体力学を学習してい
ない高校生にとってもわかりやすいように簡易実験
を交えながら行っていただいたので、理解しやすか
ったと考えられる。
ペットボトルロケットの作成では、多少ながら生
徒たちの工作の不慣れさがあったが、TAの方に工
具の使い方や組み立てのコツなどを丁寧に指導して
いただき予定より多少時間がかかったが作品を完成
することができた。
午後からの実験では、高校では扱うことのない高速度カメラを使用したペットボトル内
の水の流動観察や、ひずみゲージを利用した推力測定、数値計算シミュレーションなど大
学ならではの体験をすることができた。しかし、参加した人数が多かったこともあり、ほ
とんど作業することがなく見ているだけの生徒もいた。
最後に、生徒が自ら作成したペットボトルロケットの試射を行った。午後から行った実
験結果を元に、水の量や打ち上げ角度等を工夫し、打ち上げた。今回は作成に時間がかか
ったことや、日程の関係上生徒一人につき1度しか打ち上げることができず、屋内での実
験・数値計算シミュレーションと実際の打ち上げの同じ点や相違点を体験的に気づきにく
かったのではないかと思う。
<教員としての感想と次年度へのコメント>
高速度カメラを利用した実験など大学ならではの体験ができ、生徒は興味・関心が高ま
ったのではないかと思う。また、理論に基づき自ら工夫を行い実験を行うという行程は高
校の授業でも可能だと考えられるので、今後の授業で役立てていきたい。
- 27 -
(オ) 半 導 体 レ ー ザ ー
【実施日】
【講座名】
平成17年8月11日(木)
【参加生徒】
半導体レーザー
1年生 0名
2年生 9名
【大学側担当者】
【高校側担当者】
名古屋大学工学研究科原子核工学講座
井口哲夫教授
[ コーディネート] 川 喜 田 真 也
[引率教員]阿部幸夫、松岡
【指導スタッフ】
大学側教官3名
学
TA 2 名
【実施概要】
時間帯
活
動
活
動
内
容
「量子工学入門」
主担当
9:30 ~ 10:40
講義
井口哲夫教授
10:50 ~ 12:00
製作
半導体レーザー回路の製作
井口哲夫教授
13:00 ~ 16:00
実験
半導体レーザー回路を用いた屈折およ
井口哲夫教授
び回折の実験
【引率教員所見】
<講座の内容と生徒の実態>
量子工学入門として、半導体レーザーの体験実習
を行った。
午 前 中 は 、『 量 子 工 学 』 に つ い て の 入 門 的 な 講 義
が行われた。量子力学の歴史的な経緯を含めた理論
的な解説が行われた。光の粒子性や波動性などを中
心に講義を受け、大変興味深いものであった。生徒
達は古典物理学しか学んでいないので、少し難しい
ようであったが、量子力学的な考え方に触れること
ができて刺激を受けたもの思われる。半導体に関す
る理論的な解説も行われたが難しかった。講義を受けた後、簡単なレーザーの模型を製作
した。はんだごてを手に持ち、生徒達は一生懸命製作に励んでいた。
午後は、製作したレーザー模型を使って、様々な物理実験を行った。レーザーをコップ
の水に当て、光波の屈折や反射を観察した。CDやDVDなどの身近なものから光の波動
性を体験できて、生徒達は非常に興味・関心を持った。
今回の実習にあたって、大変丁寧に解説されたテキストを用意していただいて、有意義
に実習をおくることができた。
量子工学を「理論と実験」の両面から体験でき、非常に充実した1日を過ごすことがで
きた。
<教員としての感想と次年度へのコメント>
実際にレーザー模型を製作することで、自分の手を動かして製作することの大事さを生
徒 達 は 実 感 し て い た 。 そ の 後 、「 光 の 波 動 性 」 と い う 興 味 深 い 現 象 を 、 身 近 な も の を 通 し
て実験できたことは大変有意義であったと思う。
- 28 -
(カ) 地 震 と 防 災
【実施日】
平成17年
【講座名】
8月11日(木)
【参加生徒】
地震と防災
1年生 8名
2年生 4名
【大学側担当者】 名古屋大学大学院工学研究科社会基盤工学専攻
水谷法美教授
【 高 校 側 担 当 者 】 [ コーディネート] 桜 井 景 子
[引率教員]桜井景子、北後知尋
【指導スタッフ】
大学側教官
9名
4名
TA
【実施概要】
時間帯
活
動
活
動
内
容
主担当
9:30 ~ 10:00
講義
土木工学の紹介、液状化について
浅岡
顯
教授
10:00 ~ 10:30
講義
津波について
水谷法美
教授
10:30 ~ 11:00
講義
鋼構造物の座屈について
宇佐美勉
教授
11:10 ~ 11:40
講義
鋼構造物の低サイクル疲労について
舘石和雄
教授
11:40 ~ 12:10
講義
RC構 造 物 の 耐 震 に つ い て
中村
教授
13:10 ~ 13:40
生徒発表
生徒実験結果発表「液状化について」
中野正樹 助教授
実験指導
実験方法に対する助言、指導
実験見学
津波に関する実験
13:50 ~ 14:20
光
水谷法美
教授
川崎浩司 助教授
14:30 ~ 15:40
講義
住宅の耐震性について
飛田
潤 助教授
実験
振動台による実験
中村
光
教授
講義
地震防災の重要性について
鈴木康弘
教授
展示施設見学
災害対策室見学
水谷法美
教授
15:45 ~ 16:00
アンケート記入および意見交換
【引率教員所見】
<講座の内容と生徒の実態>
「地震と防災」をテーマに、土木・建築のいろ
いろな分野の先生方から講義や実験をしていた
だ い た 。 土 木 事 業 は 「 長 期 性 」「 大 規 模 性 」「 不
可逆性」という特性があり、社会や自然、未来
写真
に対して大きな責任を有する。特に近い将来、
東海地震・東南海地震の発生が予想される現在、
災害に強い構造物を作ることが社会的に要請さ
れている。生徒たちは、講義・実験を通じて、
土木・建築の奥の深さに気づいたようであった。
また、2年生3人が、3月から取り組んでいる液状化の実験について発表し、大学の先
生方から実験方法などについてアドバイスをしていただいた。ご指導を今後の実験に生か
していきたい。
<教員としての感想>
戦後の復興期から大量の需要の中でものを作り続けてきた「土木」から、新しい時代の
「土木」へ変わりつつあるのだということを実感させられた。未来への夢を語る先生方に
触発されて、具体的な目標をみつけた生徒もいたのではないかと思う。
- 29 -
(キ) 高 分 子 化 学
【実施日】
平成17年
【講座名】
8月12日(金)
高分子化学
【参加生徒】
1年生
4名
2年生11名
【大学側担当者】
名古屋大学工学研究科
【高校側担当者】
[ コーディネート] 日 紫 喜 正 展
化学・生物工学専攻
山本智代
講師
[引率教員]村井千枝
【指導スタッフ】
大学側教官
8名
8名
TA
【実施概要】
時間帯
活
動
活
動
内
容
主担当
10:00 ~ 10:50
講義
高分子に関する概論
松下裕秀教授
10:50 ~ 11:45
実験説明
実験内容の説明
関
隆広教授
上垣外正己教授
13:00 ~ 14:00
研究室見学
班別で研究室を2ヶ所ずつ見学
竹岡助教授他3名
14:00 ~ 16:00
実験
光重合と高分子ゲルの架橋基の効果
佐藤助手他3名
16:00 ~ 17:00
データのま
質疑応答
山本講師他4名
とめ
【引率教員所見】
<講座の内容と生徒の実態>
講義は、ナイロンの話から始まり、高分子化
合物が今現在どこに使われ、生活にどのように
役立っているのか、生徒向けに易しく解説して
く れ た 。 人 工 ゴ ム は 四 日 市 市 に あ る JSR が 最 初
に合成したと聞き、とても興味がわいた。高分
子 間 に 、架 橋 点 を 1 つ 作 る と 強 度 が 2 倍 に な る 。
反応と高分子の原理を理解することで、高分子
が日常の中でとても生活に役立っていることに
気 づ き 、必 要 性 を 強 く 感 じ て い る 様 子 で あ っ た 。
研究室見学では、コマンドサーフェスという最
先端の研究の内容を説明していただき、分子の
結合の角度、結合の強さを考えて高分子化合物を開発合成すると、直接生活に役立つ物質
を合成することになると知り、高分子化学の大切さを感じていた。午後の実験では、紫外
線を使用して、高分子ゲルが変性するのがよく分かり、光を利用することにより、ナノレ
ベルの研究が行えることを理解していた。帰りには資料の一部がほしいとお願いする生徒
もおり、高い興味を示していた。
<教員としての感想と次年度へのコメント>
高 分 子 化 合 物 は 学 校 内 で は あ ま り 取 り 扱 え ず 、説 明 だ け で 終 わ っ て し ま う 分 野 で あ る が 、
実験を通して、身近に感じることができたことは良かったと思う。午前の講義の内容が午
後の実験によって、反応の事象を確認できたことはとても好印象を持てた。研究室で行っ
ている最先端の研究の話が聞けたことで生徒の興味関心を高めることになったと思う。
- 30 -
(ク) 無 機 化 学
【実施日】
平成17年
【講座名】
8月12日(金)
【参加生徒】
無機化学
1年生
4名
2年生10名
【大学側担当者】
名古屋大学工学研究科
太田裕道
【高校側担当者】
[ コーディネート] 倉 内 賦 左 夫
助教授
[引率教員]倉田廣美
【指導スタッフ】
大学側教官
3名
TA
3名
【実施概要】
時間帯
活
動
活
動
内
10:00 ~ 10:50
講義
無機化学に関する概論
10:50 ~ 11:45
実験説明
実験内容の説明と準備
13:00 ~ 14:00
研究室見学
14:00 ~ 16:00
実験
16:00 ~ 17:00
質疑応答
容
主担当
太田裕道
助教授
班別で研究室を見学
太田裕道
助教授
蛍光体粒子の合成と簡単な評価
菊田浩一
助教授
増田佳文
助手
【引率教員所見】
<講座の内容と生徒の実態>
蛍光物質に関する講義は、高校の教育課程
を超えており、細部においては生徒には難し
かったようであるが、解りやすいプリントが
用意されており、本実験の概要はつかめたよ
うである。
研究室見学では、担当のTAの方が、パネ
ルを利用してわかりやすく説明していただい
たり、実際に装置を動かして観察させていた
だいたり、丁寧に引率していただいた。
実験は、粉末を秤量し、混ぜて加熱すると
いう単純な作業であったが、待ち時間を利用
して生徒に調べ学習をさせたり、市販の蛍光
物質とブラックライトで遊ばせたり、生徒が蛍光物質に慣れるように工夫されていた。
作 成 し た 蛍 光 物 質 は 赤 ・青 ・緑 の 蛍 光 を 発 す る 3 物 質 で あ っ た が 、 ブ ラ ッ ク ラ イ ト を 照 射 し
た と き に 蛍 光 を 発 し な い ( 緑 )、 蛍 光 を 発 し て も 強 さ が 異 な る ( 赤 ・ 青 ) こ と を 確 認 し 、
疑問を持たせた後、TAによる解説を全員で聞くなど興味を持たせるような演出を考えて
いただいていた。
<教員としての感想と次年度へのコメント>
高校の化学の授業では扱わない物質、扱わない理論を学ぶことになったが、実習内容を
ふまえて蛍光の理論を教えていただいたので生徒は興味を持って聞けたのではないか。最
後のTAの方たちによる蛍光理論の解説は、熱が入っていて良かった。生徒との年齢差が
小さいこともあって、互いに学びあっている雰囲気になった。
- 31 -
(3)アンケート結果
ア
夏 期 集 中 講 座 1 日 の 中 で 行 わ れ た 講 義 ・ 実 験 ・ 実 習 等 に つ い て「 興 味 が 持 て た か 」
について、集計した。
半導体レーザー
水ロケット
講義
とても
そう思う
そう思う
レーザー組立て
講義(午前前半)
とても
そう思う
そう思う
ロ ケット製作
あまり
思わない
思わない
溝間隔
あまり
思わない
思わない
実験(午後前半)
光ファイバー
0%
20% 40% 60% 80% 100%
0%
20%
40%
地震・耐震
60%
80%
100%
高分子
液状化(講義)
高分子概論
地震と津波
とても
そう思う
そう思う
座屈
低サイ クル
とても
そう思う
そう思う
実験内容
研究室見学
RC構造物
あまり
思わない
思わない
液状化(実験)
津波
あまり
思わない
思わない
光架橋
温度応答性
振動台
高吸収性ゲル
災害対策室
0%
50%
100%
0%
20%
無機化学
40%
60%
80%
100%
バイオテクノロジー
無機化学概論
バイ オテクノロ ジー
とても
そう思う
そう思う
実験内容の説明
あまり
思わない
思わない
研究室見学
蛍光体粒子
とても
そう思う
そう思う
DNAの抽出
あまり
思わない
思わない
PCR産物の検出
実験結果の検討
0%
20%
40%
60%
80%
100%
0%
- 32 -
20%
40%
60%
80% 100%
再生医療
情報
実験内容の講義
とても
そう思う
そう思う
マウスの解剖
とても
そう思う
そう思う
Mindstorms実習
あまり
思わない
思わない
再生医療・現状と展望
あまり
思わない
思わない
SVF培養の観察
0%
イ
20%
40%
60%
80% 100%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
「関心の育成に役立ったか」について集計した。
関心の育成に役立ったか
情報
再生医療
とても
そう思う
そう思う
バイオテクノロジー
無機化学
あまり
思わない
思わない
高分子
地震・耐震
水ロケット
半導体レーザー
0%
ウ
20%
40%
60%
80%
100%
「自分も科学の発見に貢献したいか」について集計した。
自分も科学の発見に貢献したい
大変そう思う
そう思う
あまり思わない
思わない
発見
0%
20%
40%
60%
- 33 -
80%
100%
5.研修講座
(1)ねらい
生徒が将来どのような分野で、どのような研究をしていきたいのか、最先端の技術の研
究機関にふれることにより、興味・感心を育てる。未来を担う科学技術系人材を育てるこ
とをねらいとして、研究機関に出向き、専門の技術・研究内容を研修する。
(2)日程
7月27日(水)
時間帯
7:30
活動
活動内容
主担当
出発
バスにて移動
13:30
SPring-8
会社設立の目的の解説、施設見学 幡中
17:30
ホテル到着
バスにて移動
19:30
明石天文科学館
宇宙に関する講義、天体観望会
一三様
鈴木康史学芸員
7月28日(木)
8:00
出発
バスにて移動
9:30
JT 生 命 誌 研 究 館
研 究 館 の 見 学 、「 生 命 誌 」 に つ い 中 村
桂子教授
て講義
13:30
大阪大学レーザーエ
レーザー核融合についての講義、 中塚
ネルギー学研究セン
研究施設「激光ⅩⅡ」の見学
正大教授
ター
18:30
学校到着
(3)内容
ア
1日目
SPring-8 ( 財 ) 高 輝 度 光 科 学 研 究 セ ン タ ー
①研修内容
SPring-8 で は 放 射 光 発 生 の 仕 組 み を 説 明 し て も ら い 、
どのような観測に使用されるのかを教えていただいた。
蓄積リング棟内を案内、施設の説明、目的、今後の実験
内容などを説明してもらった。
②成果
(ア) 電 波 、光 、X 線 な ど い ろ い ろ な 電 磁 波 が あ る な か で 、
放射光がどれだけ実験観測に適しているかが理解でき
た。
(イ) 世 界 最 高 性 能 の 放 射 光 を 発 生 す る こ と が で き る 大 型 の 研 究 施 設 を 見 学 で き 、 蛋 白
の構造解析やカーボンナノチューブの X 線解析など、最先端の実験を視察できた。
③課題
(ア) 生 徒 が 実 際 に 実 験 解 析 を 行 う こ と が で き ず 、 施 設 見 学 に 終 わ っ て し ま っ た 。
(イ) 研 究 内 容 を 紹 介 し て い た だ い た が 、 自 分 が 将 来 、 具 体 的 に 施 設 を 利 用 し て 、 研 究
まで行うことができるかどうかのイメージが持てなかった。
明石天文科学館
①研修内容
明石天文科学館ではビッグバンとインフレーション宇宙の講義を聴き、宇宙の歴史
は137億年であるという説明を受けた。
- 34 -
②成果
(ア) ビ ッ グ バ ン 理 論 を 説 明 さ れ 、 宇 宙 が ど の よ う な 過 程
で大きくなってきたのかがイメージできた。また、その
証拠が天体観測から解ってくることが理解できた。
(イ) 宇 宙 の 形 成 と 水 素 や ヘ リ ウ ム な ど の 元 素 か ら 鉄 な ど
の元素の形成につながりがあることが理解できた。
③課題
(ア) ビ ッ グ バ ン 理 論 と イ ン フ レ ー シ ョ ン 宇 宙 と の つ な が
りがあまり理解できなかった。
(イ) 天 候 の 悪 化 に よ り 、 予 定 し て い た 天 体 観 望 会 が 十 分
に行うことができなかった。
イ
2日目
JT 生 命 誌 研 究 館
①研修内容
JT 生 命 誌 研 究 館 で は 生 命 の 誕 生 を 宇 宙 の 歴 史 と 関 連 さ せ て 講 義 し て い た だ き 、『 共
通性と多様性』として前日の研修とのつながりを持たせていただいた。
②成果
(ア) 生 命 誕 生 か ら 3 8 億 年 か け て 、ど の よ う に 生 物 が 進 化 し 、ど の よ う な 過 程 を 経 て 、
多様化してきたかが理解できた。
(イ) 世 界 の オ サ ム シ の DNA を 解 析 し 、 各 地 域 に 生 息 す る オ サ ム シ と の 関 係 を 繋 い で
い く こ と で 、 ム シ の 歴 史 と 大 陸 な ど の 地 理 学 の と 関 連 が 結 び 付 け ら れ 、 DNA 研 究 の
重要性が理解できた。
③課題
(ア) 2 年 生 と な り 、物 理 分 野 に 進 も う と し て い る 生 徒 に は 興 味 が わ く 内 容 で な か っ た 。
大阪大学レーザーエネルギー学研究センター
①研修内容
大学レーザーエネルギー学研究センターでは中塚正大
教授の講義を聴き、レーザー核融合の最先端の研究内容
を説明していただいた。
②成果
(ア) レ ー ザ ー 核 融 合 の 説 明 を 聞 き 、 球 殻 燃 料 ペ レ ッ ト に
照射、高圧プラズマの加速により、圧縮、点火、燃焼と
いう段階を経て、エネルギーが発生する。その原理が理
解でき、実験施設がどのようなものなのかが視察できた。
(イ) 超 高 強 度 レ ー ザ ー の 発 生 が 可 能 と な り 、 加 速 さ れ た 粒 子 同 士 の 衝 突 に よ る 核 反 応
の測定、加速器としての応用、レーザーを使った核科学などの研究が行われているこ
とに興味が持てた。
③課題
(ア) 内 容 は 面 白 そ う な の だ が 、 難 し く て よ く 理 解 で き な か っ た 生 徒 が い た 。
(4)アンケート集計結果
ア
宿 泊 研 修 講 座 の 各 訪 問 で 行 わ れ た 講 義 ・ 実 験 ・ 実 習 等 に つ い て「 興 味 深 か っ た か 」
というアンケートを行ったところ、次のグラフのようになった。2年生となり、自分
が進みたいと思っている分野が確定しつつあり、各研究施設の印象は良かったが、物
理分野選択予定の生徒は生物、生物選択予定の生徒は物理の研修施設の評価が低くな
- 35 -
った。全員参加型の宿泊研修講座の課題と考えられる。明石天文科学館については、
興味が高く、四日市高校では地学関係の授業がないため、関心が高くなったと思われ
る。
宿 泊 研 修 講 座 各 訪 問 先 「 興 味 深 か っ た 」
S P r in g - 8
明 石 天 文 科 学 館
生 命 誌 研 究 館
レ ー ザ ー エ ネ ル ギ ー
0 %
2 0 %
4 0 %
6 0 %
大 変 そ う 思 う + そ う 思 う
イ
8 0 %
あ ま り 思 わ な い
1 0 0 %
思 わ な い
研 修 旅 行 全 体 を 通 し て 「 科 学 に 対 す る 関 心 の 育 成 に 役 立 っ た 」「 科 学 に 携 わ る も
のとしてこうありたい」という人間像を描くことに役立ったとのアンケートについて
集計したところ、91%の生徒が役に立ったと答えた。最先端の研究にふれることで
科学に対する関心の育成は行われたと思う。
宿 泊 研 修 講 座 全 体 を通 して
科 学 に対 す る 関 心 の 育 成 に役 立 っ た
「 科 学 に 携 わ る も の として こ う あ り た い 」 とい う 人 間 像 を 描
くこ とに 役 立 っ た
0%
大変そう思う+そう思う
ウ
20%
40%
あま り思 わ な い
60%
80%
100%
思わない
「 研 修 旅 行 全 体 を 通 し て 、出 来 れ ば 自 分 も 科 学 技 術 者 と し て 社 会 に 貢 献 し た い か 」
と の 問 い (上 の 設 問 で 「 あ ま り 思 わ な い 、 思 わ な い 、 分 か ら な い 」 と 答 え た も の の み )
「何らかの形で社会に貢献したいか」について集計を行った。
宿泊研修講座全体を通して
科学技術者として社会に貢献したい
何らかの形で社会に貢献したい
0%
20%
40%
大変そう思う+そう思う
60%
あまり思わない
80%
100%
思わない
「科学技術者として社会に貢献したい」という生徒は87%であり、昨年の69%
よ り 増 加 し て い る 。「 何 ら か の 形 で 社 会 に 貢 献 し た い 」 と い う 生 徒 は 昨 年 よ り も 低 下
していることより、科学技術者としての意識が高まったと思われる。
(5)教員所見
学校での授業では習得できない最先端の技術、施設の見学ができ、自分自身の興味の向
上につながったと思う。アンケートにもあったが、2日目に4カ所の施設を見学・視察す
ることはやはり苦しかったと感じた。ただし、広い分野の研究が多く視察できたことは良
かったと思う。
- 36 -
6.海洋生物実習
(1)ねらい
高大連携によって高度な科学技術に触れ、自ら体験して、その中から課題を見つけるこ
とを目的とし、大学等の教育機関へ進学する道しるべになり、そして将来、自ら課題に直
面したとき、それに対処できることがねらいである。
(2)日程
10月17日(月)
時間帯
8:00
10:00
活動
活動内容
出発
バスにて移動
瀬底実験所
講義「クマノミの性転換」
中村
将教授
にて講義
講義「珊瑚と魚類の生態」
中野
義勝
質疑応答他
12:00
昼食
13:00
研究施設を
実験所内の施設についてそれぞれ
見学
説明を聞く
実習
瀬底島周辺の珊瑚礁海岸での珊瑚
13:30
主担当
の生態観察
15:00
移動
バスにて移動
15:30
見学
沖縄美ら海水族館見学
17:00
移動
バスにて移動
17:15
ホテル着
技術専門職員
中村
将教授
中野
義勝
技術専門職員
(3)内容
ア
1日目
①研修内容
午前は、琉球大学熱帯生物圏研究センタ
ー瀬底実験所の中村教授による講義「クマ
ノミの性転換」を聞いた。通常魚類の雌雄
は決定したままだと考えているのに、環境
が変化するといとも簡単にクマノミが性転
換することを知り、生徒は驚いていた。次
に、中野技官による講義「珊瑚と魚類の生
態」を聞いた。珊瑚礁生物の生命現象の説
明と現在の地球温暖化傾向が、珊瑚礁生物
に及ぼす影響や琉球列島における珊瑚礁生
物の現状と、今取り組まれている珊瑚礁生物の回復予測などの内容を、解りやすく、
パワーポイントを使って説明を受けた。
午後は、クマノミの研究を行っている水槽や飼育施設を見学し、説明を受けた。次
に、実習は、実際に瀬底島周辺に広がる珊瑚礁を観察するために、島周辺の海岸沿い
を歩いて自分達の目で確かめ、本州では見ることができない魚類・棘皮動物を観察し
た。
沖縄美ら海水族館見学では、マンタなど本州では見ることができない生物を見学し
た。
- 37 -
②成果と課題
琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底実験所の研修は、生徒の生物学への興味・関
心をとても高めるものであった。中村教授による講義「クマノミの性転換」の中で、
性転換のシステムを確認する実験方法の説明を聞き、生物学がどのように研究されて
いるかを知ることができた。中野技官による講義「珊瑚と魚類の生態」は、現在直面
している珊瑚礁の破壊がどのように進んでいるのかを知ることができ、環境問題にも
つながる良い学習であったと感じた。午後のフィールドワークでは、日本で唯一観察
できる珊瑚礁を直接見ることができ、また本州では見ることができない魚類・棘皮動
物を手にとって観察することもでき、生徒はとても感動できたと思う。
生物学の最先端の研究に触れることができたことや、豊かな自然を生かした研究を
体験できたことは生徒にとって大変有意義なことであった。また、教員として環境問
題を考える良い機会となった。
(4)アンケート結果
大 変 そ う 思 う + そ う 思 う
サ ン ゴ ・魚 類 の 生 態
サ ン ゴ と 環 境
分 か り や す か っ た
興 味 深 か っ た
瀬 底 実 験 所 見 学
瀬 底 島 周 辺
フ ィ ー ル ド ワ ー ク
0 %
2 0 %
4 0 %
6 0 %
8 0 %
1 0 0 %
アンケート結果からもわかる様にほとんどの生徒は研修内容に満足していることと思
わ れ る 。「 今 ま で ガ ラ ス 越 し で し か 見 た こ と の な か っ た 魚 を 生 で 見 る こ と が で き 、 沖 縄
の 珊 瑚 礁 に 触 れ る こ と も で き 、 い い 体 験 だ っ た 。」 と い う 感 想 が 多 く あ っ た 。
全 体 を通 して 、興 味 深 か っ た か
大変 そう思う
そう思う
あま り思 わ な い
思わない
興味
0%
20%
40%
60%
80%
100%
全体としての興味深さとしても23人中15名が満足してくれた。しかし、2年生に
な り 、 自 分 の 研 究 し た い 分 野 が か な り 確 定 し つ つ あ り 、「 自 分 が 志 望 す る 進 路 に 今 回 の
研修は関係しない」と感じている生徒や生き物が苦手という生徒にとっては興味が低い
結果となった。
(5)教員所見
クマノミの性転換についての最先端の研究講義はとても興味が持てた。生物に興味が低
いと思っていた生徒も珊瑚礁の海を目前にした大自然に囲まれたら、自発的に体が動くよ
う で 、担 当 教 官 へ の 質 問 も 積 極 的 に 行 っ て お り 、フ ィ ー ル ド ワ ー ク の 大 切 さ が 実 感 で き た 。
- 38 -
7.特別講演
中村修二教授講演「自分の夢を見つけよう」
6 月 28 日 午 後 14 時 、 体 育 館 に て 中 村 修 二 教 授 の 講 演 会 が 開 催 さ れ た 。
ま ず 細 野 道 太 郎 校 長 か ら 教 授 に つ い て の 簡 単 な 紹 介 が な さ れ た 。 中 村 修 二 教 授 は 1954
年愛媛県生まれ。徳島大学修士課程を経て、日亜化学工業株式会社へ入社。当時、窒化ガ
リウムの研究では世界のトップを走っておられたのは名古屋大学の赤崎勇教授であった
が 、 中 村 教 授 は 全 く 独 自 の 方 法 で 窒 化 ガ リ ウ ム を 使 っ て 、 1993 年 高 輝 度 青 色 LED の 世 界
初の実用製品化に成功。その後、会社を退職してアメリカへ行き、現在カリフォルニア大
学サンタバーバラ校教授としてご活躍なさっているとのこと。
紹介を受けてマイクに向かう中村教授に会場中の熱い視線が注がれた。
中村教授は語る。生まれは愛媛の大久という田舎。そこは高校が無く、そこの中学生は
卒業すると皆集団就職で大阪へ行ってしまう。大久にいれば自分もその運命だった。小学
校2年生の時に大洲という町へ出たので、その運命を免れた。高校は愛媛の県立大洲高校
という進学校。一つのことを深く考えさせる数学の先生に刺激を受け、理系を志望。根っ
から暗記はダメで頭が受け付けなかった、という。大学に入りさえすればバラ色の生活が
待 っ て い る ! と 周 囲 か ら 言 わ れ 続 け た 、そ の 言 葉 を 信 じ て 勉 強 し 、徳 島 大 学 に 入 学 す る が 、
そ こ で( 教 授 の 言 葉 を 借 り る と )周 囲 の「 ウ ソ 」に 気 づ き 、そ れ を 契 機 に「 自 我 に 目 覚 め 」、
「自分で考える」ことの大事さを習得したのだとか。
企業へ入社してから最初の3年はガリウム・リンの製品化に専念するが、あまりの予算
の無さに必要な装置は全部手作りで、溶接工を自認するまでに至るが、時には何かの拍子
に温度が上がりすぎ石英管がドッカーンと爆発することも度々。だいたい月に一度くらい
は 爆 発 し 、 最 初 は 「 お ー い 、 中 村 。 生 き と る か ぁ ー 。」 と 叫 ん で い た 同 僚 も 、 何 度 も 繰 り
返すうちに心配してくれなくなったとか。ガリウム・リンの次に3年間取り組んだのが、
ガリウム砒素のバルク結晶。そして、ガリウム・アルミニウム・砒素のエピタキシャル成
長 を 手 が け 、 赤 外 お よ び 赤 色 LED の 製 品 化 に 4 年 で こ ぎ つ け る こ と に な る 。
こ の 10 年 で 教 授 が 学 ん だ こ と は 、 ど ん な に い い 製 品 を 作 っ て も 、 有 名 大 手 企 業 の 同 じ
製品には負けてしまう、ということであり、売れなければ周囲に認めてはもらえないとい
うことだった。売れる、売れる、と言われるものを言われるまま、研究を会社のためにや
り 続 け 、挙 げ 句 、売 れ な い と 会 社 に 損 害 を 与 え た と 上 司 に 言 わ れ 、肩 身 の 狭 い 思 い を す る 。
ついに、自分で考え自分で決め自分のやりたいことをやって会社をやめようと決意し、会
社 の 創 業 者 に 直 訴 を 試 み OK を も ら う 。 中 村 教 授 は 「 ヤ ケ ク ソ 」 と い う 言 葉 で 、 そ の 時 の
心境を表現した。
夢 は 高 輝 度 青 色 LED 。 世 界 中 の 研 究 者 の 夢 で あ り 、 そ れ が 出 来 れ ば 、 赤 ・ 緑 ・ 青 と い
う光の三原色が揃い、全ての発色が可能になる。その素材となる可能性のある物質は、炭
化珪素・セレン化亜鉛・窒化ガリウムの三つと言われていた。当時、炭化珪素で既に青色
LED は 出 来 て い た が 、 非 常 に 暗 く 実 用 化 に は ほ ど 遠 い と 敬 遠 。 学 会 で は セ レ ン 化 亜 鉛 が
圧倒的に有望視され、世界中の何万人という研究者がセレン化亜鉛を使って研究を進めて
いた。ここで中村教授の決意は決まったという。残るは窒化ガリウムしかない。大きなブ
レイクスルーには、非常識なことをやらなければならない。人の後追いは絶対にダメ。こ
れ は 日 亜 化 学 工 業 の 10 年 で 身 に 沁 み て 学 ん だ こ と だ 、 と 中 村 教 授 は 苦 笑 し た 。 ま た 、 そ
の 10 年 、 予 算 が な い た め 、 自 分 の 手 で 自 分 の 必 要 な 装 置 を 作 り 出 す 技 術 を 磨 い て き た の
も大きかった。ある程度の知識は必要だが、本に書いてあることは皆常識であり、それで
- 39 -
は大きなブレイクスルーは出来ないのだ、と教授は強く言う。
夢は大きく持って欲しい、と。青春は人生の中で一番、気力・体力・能力共に充実して
いる時、その大事な時を、ただ大学へ入るだけの暗記学習に無駄に使って欲しくない。暗
記など試験が終われば全て忘れてしまう。夢が無いから、せっかく大学へ入っても勉強せ
ずに遊んでしまう。既に日本は先進国であり、今の裕福な日本にハングリー精神はない。
しかし、好きなことなら続けられるはずだ。本当に好きなことを見つけよう。チャンスが
あれば、是非留学もして欲しい。外国のいいところがわかるし、日本を外から見ることが
出来る。自分で考える人になってもらいたい。世界を変えるくらいの大きな夢を持とう!
講演の1時間余り、生徒たちは終始中村教授の熱弁に圧倒されていた。
その後の生徒と中村教授との懇談会でも、熱心な質問が研究者の卵達からなされた。し
かし、そんな彼らを見て、日本の学生はおとなしい、これは大学受験の弊害とも呼ぶべき
もので、社会の損!とハッキリ中村教授は言う。やればやるほど研究テーマは出てくるの
で 、や り 尽 く し て し ま う 、と い う こ と は な い 。今 は 平 和 な 時 代 で 世 界 に 人 口 が 溢 れ て い る 。
これからは食糧問題やエネルギー問題等の問題が山積みであり、それを科学で解決しない
と戦争が起きる、と、これからますます科学研究が重要になってくることを示唆した。
職員との懇談では、これは持論だが、と前置きの上で、教育についての熱心な質問に答
えた。暗記ではなく大事なことを深く教えるのがいい。数より質。教員の生徒からの評価
制度も高校くらいになればいいと思う。評価されるとなると先生は真剣に勉強するから、
長い目で見ると教育は充実するのでは。ただ、生徒の評価が悪いからと言って、クビにな
るということはアメリカでもない。
熱の入った懇談に、職員からは懇談時間が短かったとの声も上がった。
世界の刺激を受けた貴重な時間であった。
- 40 -
2節 スーパーサイエンスⅡ
1 研究概要
(1)目的
スーパーサイエンスⅠで学習した研究のプロセスを大学、研究所の指導を受けて
1つのテーマについて研究報告・研究論文を完成し、発表することによって総合的
な実践力を育成する。
( 2 ) 学 習 評価
研究を深める論理的思考力や独創性を重視し、研究方法や研究を進める上でのリ
ーダーシップ性を習得しているかどうかを評価する。
「 科 学 者 と し て の 論 理 性 」、「 科 学 者 と し て の 創 造 性 」、「 望 ま し い 人 間 関 係 ・ 豊 か
な心」の3つの観点から評価を行った。評価の方法としては、行動観察、生徒自己
評価、面接法などを用いて評価を行った。最終の評価はこれらの観点別評価に踏ま
えつつ、ひとつの文章として表した。
学習評価に関する詳細は、次項「2
学 習 評 価 」、 研 究 紀 要 【 科 学 技 術 系 人 材 育 成
を目指した生徒の研究活動における学習評価方法の開発】
( 第 5 章 )を 参 照 さ れ た い 。
(3)実施概要
平成15年度入学生のスーパーサイエンス選択生に対し、大学の研究室と連携を
して実施した。名古屋大学大学院多元数理科学研究科、工学研究科、三重大学生物
資源学部、工学部の各研究室で直接指導をしていただいた。
SSH 全 国 生 徒 研 究 発 表 会 に お い て 代 表 生 徒 が 研 究 発 表 を し 、 物 理 分 野 に お い て 「 科
学技術振興機構理事長賞」を受賞した。
今年度のスーパーサイエンスⅡにおける研究論文(レビュー)のタイトルは以下
の通りである。
・「 波 長 可 変 半 導 体 レ ー ザ ー を 使 っ た C O2 の 吸 収 ス ペ ク ト ル 測 定 」
12
16
・「 光 の ス ペ ク ト ル と ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー 」
・「 エ タ ノ ー ル ロ ケ ッ ト 」
・「 イ ネ の い も ち 病 菌 に 対 す る 抵 抗 性 と 遺 伝 子 の 関 係 に つ い て 」
・「 コ ン ポ ス ト 中 の 細 菌 種 の 16S r R N A 遺 伝 子 の D N A 塩 基 配 列 の 解 読 」
・「 ヒト 白血病 細胞 HL-60 に対し てアポトー シス誘導 作用を 示す成分 の食品 からの検 索 」
・「 フ ー リ エ 級 数 の 偏 微 分 方 程 式 へ の 応 用 」
・「 NQC を 用 い た LEGOMindStorms プ ロ グ ラ ミ ン グ 」
( 4 ) 事業評価
生徒自己評価や大学教官の評価をもとに、それぞれの基準を点数化し事業評価を
行う。
研究を深める論理的思考力や独創性が 身 に 付 い て い る か ど う か を 評 価 の 視 点 と す る 。
事 業 評 価 に 関 す る 詳 細 は 、 自 己 評 価 報 告 書 、 事 業 評 価 シ ー ト ( 4 章 )、 研 究 紀 要 【 ス
ーパーサイエンスハイスクール事業の事業評価方法の開発】
( 5 章 )を 参 照 さ れ た い 。
- 41 -
2
学習評価
(1)評価の観点の趣旨
各期で評価を行った。評価観点は次の表のとおり。
科学者としての論理性
科学者としの創造性
望ましい人間関係・豊かな心
自然の事物・現象、数学で 自然の事物・現象、数学での探 自然の事物・現象に関する探究活動を
の探究活動を深めるための 究活動を通して、研究計画の立 通して共同研究者との連携を図ること
論理の見極めができ、処理 案、結果の解釈や表現において でパートナーシップを身につけ、他に
した結果に対して意味づけ アイデアを出したりインスピレ 不足する部分を補う働きをすることで
が出来る。また、探求の成 ーションを発揮したりと、発想 他を牽引する、すなわちリーダーシッ
果を整理して表現する。
の転換をすることができる。
プの必要性に気づく。また、リーダー
【行動観察】
【行動観察】
シップを発揮するときに求められる素
養 を 身 に つ け て い る 。【 面 接 法 】
<表
「スーパーサイエンスⅡ」の評価の観点の趣旨>
この観点の趣旨を落とし込んで、評価観点ごとの評価規準を作成し、それに基づいた
評価を行った。なお、これまで評価観点として用いていた科学に対する興味・関心と学
際的な知識・理解については、これまでの指導で高まりを見せたことから、ここでは科
学者としての論理性、創造性を評価観点とする。
(2)評価の方法
ア
行動観察
大学等の指導教官により、研究活動における生徒の活動の様子を論理性、創造性
の観点で A ~ C の三段階評価を行う。
イ
生徒自己評価
上記アの評価と同じ評価規準・基準を用いて自己評価を行う。
ウ
面接法
本校教員により、共通の質問事項を用いて面接を行い、その回答内容から「研究
方 法 の 習 得 」「 研 究 を 進 め る 上 で の パ ー ト ナ ー シ ッ プ ・ リ ー ダ ー シ ッ プ の 習 得 」 の
2点について記述での評価を行う。
(3)評価の総括
上 記 ア 、 イ に よ り 得 ら れ た 評 価 資 料 を 用 い て 、「 研 究 を 深 め る 論 理 的 思 考 力 ・ 創 造 性
の習得」と題して本校教諭により記述での評価を行う。
こうして得られた記述評価と上記ウで得られた記述評価をまとめたものをスーパーサ
イエンスⅡでの評価結果とする。
人の能力は本来「観点」といった別々のものに分けることはできず一体である。これ
まで観点別評価を用いてきたがこれは便宜的なものであり、最終の評価はこれまでの観
点を十分踏まえつつ、ひとつの文章として表した。
- 42 -
3
実施内容
(ア) 波 長 可 変 型 半 導 体 レ ー ザ ー を 使 っ た 12C16O2 の 吸 収 ス ペ ク ト ル 測 定
授業
物理
課題研究
研究テーマ
波長可変型半導体レーザーを使った
C O2 の 吸 収 ス ペ ク ト ル 測 定
12
担当者
16
名古屋大学大学院工学研究科量子工学専攻
井口
実施場所
哲夫
参加生徒
3年2名
教授
名古屋大学工学部
実施時期
四日市高等学校
平成16年12月 ~ 平成
(総時間) 17年8月(約80時間)
大学の教授の指導を受け、高校の学習範囲を超えた最新の研究テーマに取り組
ね
み、目標の設定、実験、考察、まとめ、発表という研究の一連の流れを辿ること
ら
によって、論理的思考力、独創性・創造力を養う。また、研究の楽しさや困難さ
い
を体験し、基本的知識、ねばり強く取り組む姿勢、指導者や共同研究者との協力
関 係 の 構 築 等 の 必 要 性 を 認 識 さ せ 、 将 来 、研 究 者 に な る た め に 必 要 な 素 地 を 作 る 。
特定の元素や同位体を含む分子に対する高分解吸収分光をコンパクトな計測シ
ステムで行うことができる手法の開発を目的として研究を行った。本校では基礎
知識の学習や、実験データの解析等を行った。また、本研究では実験装置が高度
で、また高価なものを使用して実験を行った
指
ため、実験は全て大学の研究室をお借りして
行った。大学の研究室の訪問し、実験を行う
以外にも、メールにての指導も受けた。
【第1研究】
始めに、吸収分光実験を行うために必要な
導
鋭い線幅の光源である、高分解能吸収分光実
験 用 の 光 源 と し て E C D L ( External Cavity
Diode Laser ) の 作 成 を 行 っ た 。 次 に 、 作 成 し た
ECDLの基礎特性の測定実験を行った結果、
作成したECDL
従来のものに比べ連続的な波長可変域を約8
内
倍まで拡張することができた。
【第2研究】
作成したECDLを使用し、連続発信レー
ザーCRD(キャビティーリングダウン)吸
収分光実験を行った。今回の実験では、EC
容
D L の 連 続 波 長 可 変 域 に あ る C O2 の 吸 収 線
12
16
1547.306 [ nm ]を 用 い 、 減 衰 率 を 測 定 す る こ と で
波長と減衰率の関係
C O2 の 濃 度 を 調 べ た 。 そ の 結 果 、 C O2 の 吸
12
16
12
16
収スペクトルの測定に成功した。しかし、吸
収スペクトルの広がりが見られ、これらの大
部分は分子の熱運動によるドップラー効果に
よってもたらされていることが分かった。
【発表】
2回の校内発表会でレビュー、ポスター作
成、パワーポイントによる口頭発表を体験し
た 。 さ ら に 、 SSH 全 国 大 会 の 口 頭 発 表 に 参 加
し 、「 科 学 技 術 振 興 機 構 理 事 長 賞 」 を 受 賞 し た 。
- 43 -
SSH 全 国 大 会
全体会での発表の様子
(イ) 光 の ス ペ ク ト ル と ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー
授業
物理
課題研究
担当者
名 古 屋 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 マテリアル理 工 学 専 攻
中村新男
実施場所
研究テーマ
光のスペクトルとナノテクノロジー
参加生徒
3年2名
教授
名古屋大学工学部
実施時期
四日市高等学校
平成16年12月 ~ 平成
(総時間) 17年8月(約80時間)
大学の教授の指導を受け、高校の学習範囲を超えた最新の研究テーマに取り組
ね
み、目標の設定、実験、考察、まとめ、発表という研究の一連の流れを辿ること
ら
によって、論理的思考力、独創性・創造力を養う。また、研究の楽しさや困難さ
い
を体験し、基本的知識、ねばり強く取り組む姿勢、指導者や共同研究者との協力
関 係 の 構 築 等 の 必 要 性 を 認 識 さ せ 、 将 来 、研 究 者 に な る た め に 必 要 な 素 地 を 作 る 。
可視光域の分光器を用い、種々のスペクトルとそれを生じる物質のナノサイズ
の構造について研究した。大学で、研究の進め方についての講義を受け、走査型
電子顕微鏡での観察、金の蒸着膜の作成等を
緑のインク(染料)
させていただき、高校に持ち帰って分光器を
指
用いた測定を行い、結果をまとめ、メールで
吸
光
度
2
緑の絵の具(顔料)
2
1
1
教授のご指導を受けるという事を繰り返し
た。
【第1研究】
導入として光るもののスペクトルを測定
導
0
500
600
し、色と可視光の波長の関係を調べた。
次に、染料と顔料の透過・吸収・反射スペ
700
800
染料 0
900 1000
波 長 (n m )
顔料
インク(染料)と絵の具(顔料)の吸収スペクトル
クトルと、走査型電子顕微鏡で観察したそれ
ぞれの粒子の大きさとの関係について調べ
た。
内
【第2研究】
まず、種々の金属の反射スペクトルを測定
し、金属特有の光沢がどうして生じるのかを
調べた。光の振動数が各金属固有のプラズマ
振動の振動数よりも低い場合、光が金属表面
容
ですべて反射されることを確かめた。
次に、真空蒸着装置で金を蒸着させた厚さ
5nm と 50nm の 膜 や 、 ナ ノ サ イ ズ の 球 形 や 円
実験風景
金の蒸着
柱形の資料を用いて、吸収スペクトルと反射
スペクトルを測定した。それぞれの反射光の
金箔
色が異なって見えるのは、形やサイズにより
固有の振動数を持つ表面プラズマ振動が起こ
っているためであることを学習した。
【発表】
反 100
射
率 80
(%)
60
50nm薄膜
40
2回の校内発表会でレビュー、ポスター
20
の作成、パワーポイントによる発表を体験し
0
た 。 さ ら に 、 SSH 全 国 大 会 の ポ ス タ ー セ ッ シ
500
600
5nm 700
800
900
波長(nm)
50nm 金箔
金箔と蒸着薄膜の反射スペクトル
ョンの部に参加した。
- 44 -
5nm薄膜
(ウ) エ タ ノ ー ル ロ ケ ッ ト
授業
物理
課題研究
担当者
名古屋大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻
梅村
実施場所
研究テーマ
章
エタノールロケット
参加生徒
3年2名
教授
名古屋大学工学部
四日市高等学校
実施時期
平成16年12月 ~ 平成
(総時間)
17年8月(約80時間)
大学の教授の指導を受け、高校の学習範囲を超えた最新の研究テーマに取り組
ね
み、目標の設定、実験、考察、まとめ、発表という研究の一連の流れを辿ること
ら
によって、論理的思考力、独創性・創造力を養う。また、研究の楽しさや困難さ
い
を体験し、基本的知識、ねばり強く取り組む姿勢、指導者や共同研究者との協力
関 係 の 構 築 等 の 必 要 性 を 認 識 さ せ 、 将 来 、研 究 者 に な る た め に 必 要 な 素 地 を 作 る 。
ペットボトルを用いた水ロケットを発展させたペットボトルによるエタノール
ロケットについて研究した。大学においては、高速度カメラを用いた燃焼の様子
や圧力計を使用した燃焼の様子の解析を行った。大学で行った実験では、データ
を本校に持ち帰りパソコン等を使用し解析を行い、次回の大学での実験時の計画
指
を考え、メールで教授や助手の方と連絡を取り、大学での実験を進めていった。
また、本校においてはデータの解析以外に、エタノールの燃焼・ロケットの飛行
についての理論計算を行った。
【第1研究】
本校でエタノールロケットの簡易モデルを作成
導
し、飛行実験を行った。その後、エタノールの気
化・燃焼、ペットボトル内の圧力・温度等につい
て計算による理論値を調べた。また、噴射口の大
き さ に 着 目 し 、 よ り 遠 く へ 飛 ぶ 条 件 を 調 べ た 。( 右
図は理論計算によるグラフ)理論計算では噴射口
内
の直径が小さいほどより遠くへ飛ぶという結果が出
噴射口と加えられた力積の関係(理論)
た。
【第2研究】
第1研究で行った理論計算が正しいかどうかを
実際に大学の装置をお借りし、実験を行った。第
容
1研究と同様に、噴射口と推進力の関係を主に調
べた。
実 験 の 結 果 、 噴 射 口 の 大 き さ が 約 4 mm の と き
燃焼の様子
遠くへ飛ぶという結果が出た。これは理論値とは
異なっており、噴射口付近での空気の流れ(流体
としての性質)が関わっているのではないかとい
う結論に至った。
【発表】
2 回 の 校 内 発 表 会 で レ ビ ュ ー 、ポ ス タ ー の 作 成 、
パワーポイントによる発表を体験した。さらに、
SSH 全 国 大 会 の ポ ス タ ー セ ッ シ ョ ン の 部 に 参 加 し
た。
噴射口と加えられた力積の関係(実験)
- 45 -
(エ) イ ネ の い も ち 病 菌 に 対 す る 抵 抗 性 と 遺 伝 子 の 関 係 に つ い て
授業
生物
課題研究
研究テーマ
イネのいもち病菌に対する抵抗性と遺伝子
の関係について
担当者
三重大学 生命科学支援センター
小林一成
実施場所
参加生徒
3年2名
助教授
三重大学生命科学支援センター
四日市高等学校
実施時期
(総時間)
平成16年12月 ~ 平成
17年7月(約70時間)
校内で行ったSSⅠの研究の経験をもとに、大学の先生の指導により、高度な
ね
研究を体験させていただく。その中で、科学の研究において必要な心構え、進め
ら
方、押さえなければならないことなどを学ぶとともに、最新の機器、技術などを
い
体験する。また、研究論文の作成、研究の発表を体験し、将来研究者になるため
に必要な素地を作る。
イネのハバタキという品種においてイネの
最大の病気であるいもち病に対する抵抗性遺
伝子を同定する。イネの種子を滅菌し土に蒔
くという研究材料を調達するという実際の地
指
道な作業から体験するとともに、最新の機器
を使い最新の技術を体験した。
[実験1]
蛍光を発するように形質転換させたいもち
病菌を用いて、交雑種の85系統でいもち病
導
に対する抵抗性を蛍光顕微鏡を使って調べ、
いもち病抵抗性の遺伝子がどの染色体にある
のかを決定した。その遺伝子をイネ遺伝子の
データベースからそれが既知の抵抗性遺伝子
のPibという遺伝子ではないかと推定し
内
た。
[実験2]
PCR法によりその遺伝子を増幅し、アガ
ロース電気泳動によるバンドを作り、そのD
NA断片の塩基配列をDNAシークエンサー
容
を用いて決定した。その結果、注目していた
いもち病抵抗性遺伝子はPibであることを
確認した。RNAから作ったその遺伝子のD
NAを調べることで、RNAの選択的スプラ
イシングという現象の可能性を見つけこの現
象についても学ぶことが出来た。
[発表]
レビューを作成するとともに、校内の発表
会においてポスターセッションによる発表と
パワーポイントによる発表を体験した。
また、SSH全国大会でポスターセッション部門に参加した。
- 46 -
(オ) コ ン ポ ス ト 中 の 細 菌 種 の 16S r R N A 遺 伝 子 の D N A 塩 基 配 列 の 解 読
授業
生物
課題研究
研究テーマ
コ ン ポ ス ト 中 の 細 菌 種 の 16S r R N A 遺 伝
子のDNA塩基配列の解読
担当者
三重大学 生物資源学部
苅田修一
実施場所
三重大学
参加生徒
3年2名
助教授
生物資源学部
実施時期
四日市高等学校
(総時間)
平成16年12月 ~ 平成
17年7月(約70時間)
校内で行ったSSⅠの研究の経験をもとに、大学の先生の指導により、高度な
ね
研究を体験させていただく。テーマの設定、進め方、実験、まとめ方等研究の基
ら
本的な手順を実際に経験させていただき、最新の機器や技術にふれることにより
い
今後の研究者を目指す意欲と心構えを培う。研究をしていくうえにおいて何が大
切なのかを研究を進める中で学ぶ。
地球環境問題の一つとして廃棄物の問題がある。その中で、家庭から排出され
る生ゴミは、コンポスト(堆肥)化することによって、生ゴミを処理するだけで
なく有機肥料にするという利点がある。そこで、コンポスト化する時にはたらく
細菌を調べ遺伝子を分析する事によって菌種の同定を行った。材料は生徒の家庭
指
から出た生ゴミをコンポスト化を行い、その中から細菌を分離した。ブイヨン培
地に稙菌し1番培養すると、1g当たり2×108 個の細菌を確認。40個のコ
ロ ニ ー を 選 び 、 16S r R N A 遺 伝 子 の D N A を 分 離 し 制 限 酵 素 で 処 理 し 、 ポ リ ア
クリルアミド電気泳動で分析すると9つのパターンが識別された。その中の代表
的 な 2 つ の パ タ ー ン を 示 し た 2 つ の 菌 株 に つ い て 16S r R N A 遺 伝 子 の D N A 塩
導
基配列の解読を試みた。方法は、分離したDNA断片をPCR法で増幅し、アガ
ロースゲルで断片を分け、シークエンサーを用いて塩基配列を決定した。
その塩基配列をアメリカ国立生物情報センターのBLASTアルゴリズムで検
索 し た 結 果 、 2 つ の 菌 種 は そ れ ぞ れ 既 知 の Bacillus 属 と Staphylococcus 属 の 1 種 と 塩
基配列が100%一致していることが分かった。残念ながら、全く新しい菌種の
内
発見とはならなかったが、大学の先生のご指導の下に、高校生としては経験する
こ と が な い 新 し い 技 術 と 考 え に ふ れ 、ま た 研 究 の 中 で 味 わ っ た 困 難 や 楽 し さ な ど 、
すばらしい経験となったものと思う。
容
- 47 -
(カ) ヒ ト 白 血 病 細 胞 HL-60 に 対 し て ア ポ ト ー シ ス 誘 導 作 用 を 示 す 成 分 の 食 品 か ら の 検 索
授業
生物
課題研究
研究テーマ
ヒ ト 白 血 病 細 胞 HL-60 に 対 し て ア ポ ト ー シ
ス誘導作用を示す成分の食品からの検索
担当者
三重大学 生物資源学部
緒方
実施場所
三重大学
進
参加生徒
3年1名
助手
生物資源学部
四日市高等学校
実施時期
(総時間)
平成16年12月 ~ 平成
17年7月(約70時間)
校内で行ったSSⅠの研究の経験をもとに、大学の先生の指導により、高度な
ね
研究を体験させていただく。テーマの設定、進め方、実験、まとめ方等研究の基
ら
本的な手順を実際に経験させていただき、最新の機器や技術にふれることにより
い
今後の研究者を目指す意欲と心構えを培う。研究をしていくうえにおいて何が大
切なのかを研究を進める中で学ぶ。
ガン予防に効果の可能性のある食品、食品成分などをピックアップしたデザイ
ナーフーズ計画がアメリカでは実施されている。ガン細胞がアポトーシスにより
体から排除されるように誘導する食品成分を調べた。
調べる食品は、三重大学構内に身近にあったツクシとスギナを選んだ。ガン細
指
胞 と し て ヒ ト 前 骨 髄 性 白 血 病 細 胞 HL-60 を 用 い 培 養 を 行 っ た 。 そ の 細 胞 に ツ ク シ
とスギナの純水及びエタノール抽出液を加え、24時間アポトーシスの誘導処理
を行った。その細胞の形態変化を位相差顕微鏡システムで観察し、デジタルカメ
ラで記録した。また、アポトーシスの確認ためDNAのラダー化(断片化)につ
いてもアガロース電気泳動法で行った。博捜クロマトグラフィーによる資料から
導
の 色 素 成 分 の 分 離 を 行 い 、 ま た DPPH ラ ジ カ ル 消 去 活 性 を 指 標 と し て 抗 酸 化 能 も
検討した。結果は、様々なサンプルのうち、ツクシ、スギナのエタノール抽出液
に お い て ガ ン 細 胞 の ア ポ ト ー シ ス 形 態 変 化 が 観 察 さ れ た 。 ま た 、 DNA の ラ ダ ー の
形成を調べたところ、ラダー(アポトーシスの表れ)が確認された。資料のエタ
ノール抽出液のどの成分がアポトーシスを誘導するのかを調べたが、その成分は
内
色素成分の可能性が高く、また抗酸化作用もあることが分かった。
これらの研究を通じて、食品の材料を自分で選び、身近にあるツクシ、スギナ
を選んで研究できたこと、先生にたいへん親切にご指導いただき、一人で研究を
やり通せたこと、また、発表においても一人でがんばれたことなど、大変であっ
たが、貴重な体験となった。
容
- 48 -
(キ) フ ー リ エ 級 数
授業
数学ゼミ
担当者
研究テーマ
名古屋大学大学院多元数理科学研究科
中西賢次
実施場所
ら
い
参加生徒
助教授
3年1名
(2年1名)
名古屋大学大学院多元数理科学研究科
四日市高等学校
ね
フーリエ級数
実施時期
平成17年1月 ~
(総時間)
6月(約24時間)
大 学 の 数 学 を 学 ぶ こ と で 、数 学 の 理 論 に 触 れ る と 共 に 、 自 ら 探 究 す る 力 を 養 う 。
数学の理論を学び研究することで、論理的な思考力や独創性・創造性を養う。
自 ら 数 学 を 学 ぶ 姿 勢 を 大 事 に し 、「 自 分 自 身 で 研 究 テ ー マ を 見 つ け 、 自 分 自 身
で 考 え 、 自 分 自 身 で 研 究 論 文 を 作 成 す る 。」 能 力 を 身 に 付 け る こ と を 目 的 と す る 。
名古屋大学大学院多元数理科学研究科の中西先生にセミナー形式で「フーリエ
級数展開と偏微分方程式への応用」について指導していただいた。平成15年度
生の数学の選択者は1名であったが、平成16年度生の意欲的な生徒が1名聴講
し 、 フ ー リ エ 級 数 の 理 論 を 学 ん だ 。 SS Ⅱ は 放 課 後 や 土 曜 ・ 日 曜 に 行 う プ ロ グ ラ ム
指
であるため、このようなことが可能となった。
最初の数回は、中西先生に用意していただいたプリントをもとに「フーリエ級
数」の理論について学習をした。プリントの前半の目的は、フーリエ級数展開の
存在証明をすることであった。フーリエ級数展開の存在証明は、関数空間やL2
ノルムなどの関数解析学の概念をふんだんに使った高度な方法であり、高校生に
導
とってはかなり難解であった。その後、条件「リプシッツ連続」を満たす関数が
e の べ き 乗 の 無 限 和 で 展 開 で き る と い う 結 果 の 証 明 を 学 ん だ 。「 リ プ シ ッ ツ 連 続 」
を満たす関数すべてが、ある種の無限和で表されるという驚くべき事実の意味す
ることを、生徒は理解しているようだった。ただ、証明の過程は高校生にとって
非常に難解であり理解することに苦労をしていた。いわゆる、ε-δ論法といわ
内
れている手法なども多くの機会で使っており、理解に時間がかかったが、生徒の
将来的なことを考えると高校生の時点で学習できたことは意味があったのではな
いかと思われる。プリントの後半では、ある種の境界条件を満たす偏微分方程式
を解くための手法を学んだ。これも、高校の常微分方程式にもあまり慣れていな
い生徒にとって、フーリエ級数を用いた偏微分方程式の解法は難解であった。
容
フーリエ級数展開の理論を学んだ後は、生徒が自分自身で波動方程式を解き、
レビュー(研究論文)を作成することとなった。数学の研究論文の形式は、定義
から出発し定理や命題があり証明があるとい
う数学独特の形式があり、そのあたりも丁寧
に 指 導 を 行 っ た 。 特 に 、 Abstract と Introduction
の違いなどが分かりにくそうであった。今回
の レ ビ ュ ー も Abstract は 英 文 で 書 く と い う こ
とだったので、数学的な用語が入った日本語
を一生懸命英文に直していた。最終的な英文
に関しても、中西先生に添削をしていただい
た。分からない部分は、中西先生に教えてい
ただきながらも、生徒は自分自身の力で熱心
にまとめて、レビュー「フーリエ級数の偏微
分方程式への応用」を完成させた。
- 49 -
< 研 究 発 表 会 に て H17.7.8 >
(ク) コ ン ト ロ ー ラ ー に よ る マ ニ ュ ア ル 制 御 ロ ボ ッ ト 自 身 に よ る 制 御
授業
Mindstorms 研 究
研究テーマ
コントローラによるマニュアル制御
ロボット自身による制御
担当者
三重県立四日市高等学校
実施場所
四日市高等学校
教諭
山口雅弘
第一情報教室
参加生徒
3年3名
実施時期
平成17年1月 ~
(総時間)
6月(約24時間)
簡単なロボットを作り、練習問題を通じてプログラミングに親しむ。プログラ
ね
ミ ン グ 環 境 と し て は 、 NQC ( Not Quite C ) と い う 言 語 を 使 用 し 、 そ の ア ル ゴ リ ズ ム
ら
を学ぶ。ロボットを動かす中で論理的思考力を養うと共に、独自の発想で創造性
い
を身につける。ものを動かすことが我々の社会でどのように役立っているのかを
考えることも今回の目的の一つでもある。
C 言 語 に 似 て い る NQC ( Not Quite C )言 語 の 修 得 の た め に い く つ か の 練 習 問 題 を 解
く。それを通じて基本的なアルゴリズムを修得する。
次に具体的な課題として、光センサを使ったライトレースロボット、障害物にぶ
つかったら自動的に向きを変えるロボットなどに取り組ませる。この課題解決を
指
通じて、ロボット本体やプログラムに工夫が必要であることを感じさせ、チーム
内で議論したりアイデアを出し合ったりと共同で物事を深く考える練習にもなる。
実際先に課題をクリアした生徒に刺激を受け、同じアルゴリズムを使わないよう
に独自に動くアルゴリズムを発想したり、スピードで負けないように工夫を凝ら
していた。
導
光センサ・ショックセンサの使用方法を理解した段階で、自分の課題を決めさせ
た。ここでは第一段階で習得した知識や技術を応用したり、まだ足りない点を自
ら積極的に習得する必要が生じる。自分の得意分野で力を発揮するような課題の
選 択 が 必 要 に な る 。 取 り 組 ん だ 内 容 は 、「 ① シ ョ ッ ク セ ン サ を コ ン ト ロ ー ラ に 使
用してリモコンロボットを作成し、それと自動で動くロボットとの比較。②階段
内
を 上 が る ロ ボ ッ ト の 作 成 。」 と し た 。
①については演習でのアルゴリズムの蓄
積があったので、それらの工夫で補える
ものであった。しかし、②についてはア
プローチを含めてかなり悩んだようであ
容
った。二本足歩行で階段の上り下りを目
ざしていたが、その形状のための知識が
追いつかずに、最終的には尺取り虫型に
することに決まった。2つのモータで単
純な動きを組み合わせて、階段を進むこ
とに成功した。決まった高さしか乗り越
えられない・階段にはっきりとした輝度の差が必要であるなどやや改善の余地が
見られるが、短期間での実習を元によく作動させることができた。
研究の発表については、動きを見てもらうためにビデオを使用するなど、より
わかりやすい発表のための工夫もしっかりと取り組めた。
- 50 -
4.プレゼンテーションとポスターセッション
(1)ねらい
本校のスーパーサイエンス事業は、未来を担う科学技術研究者を育てるカリキュラム
開発である。科学技術研究者の活動の1つである学会参加を疑似体験するものとして研
究発表会を行い、高校での学習の先にある自分の姿をイメージして、現在の学習の意味
を理解すること、及び発表の技術を習得することをねらいとしている。
発表技術としては、発表論旨を組み立てることによる論理的思考能力の育成、分かり
やすい資料を工夫することによる独創性・創造性の発揮、効果的に意思を伝えるプレゼ
ンテーション能力の育成を目指している。
(2)平成17年度の目標
ア
2年生
1年次は平成15年度生の研究発表会に参加するなど、発表の見学を行ってきた。
今 年 は 、 ① オ リ ジ ナ ル な デ ー タ を 用 い て 研 究 発 表 す る 、 ② レ ビ ュ ー を 書 く ( Abstract
は 英 文 で 書 く )、 の 2 点 を 目 標 に 以 下 の よ う に 計 画 し た 。
9月の発表練習では、①研究の概要を書く、②パワーポイントを作成する、③プレ
ゼンテーションする、を目標にした。研究はまだ始まっていないので、内容は調べ学
習で良いことにした。
2 月 の 研 究 大 会 で の 発 表 で は 、 ① S S Ⅰ 第 4 期 の テ ー マ 研 究 ( ま た は SSⅡ の 中 間 発
表 )を 発 表 す る こ と で 、オ リ ジ ナ ル な デ ー タ を 用 い た 研 究 発 表 を す る 。② 論 文 と し て 、
6 0 0 0 字 程 度 ( A 4 用 紙 2 枚 ) の レ ビ ュ ー を 書 き 、英 文 の Abstract
を書く。学会
への参加を意識して、レビューの書式をフォント、字数、など取り決めを作り、規定
どおりに揃える。を目標にした。
イ
3年生
2 年 次 ま で に 上 記 目 標 は ほ ぼ 達 成 し て い る の で 、 今 年 は SSⅡ の 研 究 を 発 表 す る こ と
を目標にした。内容的に高度で量的にも多いので、発表技術のレベルアップが求めら
れた。
(3)生徒の取り組み
ア
2年生:第7回公開授業(H18.2.10)での発表会
レ ビ ュ ー は 文 字 に し て 6 0 0 0 字 に 相 当 す る 量 で あ っ た 。 Abstractを 英 文 で 書 く こ
とはできなかったが、ほぼ全班が期限を守って提出できた。内容は、自分で実験して
得たデータを使用しているので、9月の発表練習の時とは違い、充実したものができ
た。
2年生は、今回初めてポスターを作成したが、
10作品それぞれ個性的に仕上がっていた。ポス
ターセッションでは、慣れないながらも質問者に
きちんと対応できていた。パワーポイントの発表
では、発表時間の7分は多少前後するグループも
あったが、ほぼ時間を守って発表できていた。技
術的にも見やすくきれいに仕上がっていたが、オ
リジナルなデーを使っていることから、内容的に
も見ごたえのあるものになっていた。
< 2年 生 に よ る ポ ス タ ー セ ッ シ ョ ン ( 2月 ) >
すべての発表に質問が出て質疑応答が行われた。1年生が司会進行を担当したが、
時間配分や質疑応答の進め方もほぼスムーズに出来ており、予定通りの時間に終了で
- 51 -
きた。三重大学生物資源学科の神原先生から次のように講評をいただいた。言いたい
ことをどれくらい人に理解してもらえるかは工夫による。まず、自分の研究を深く理
解し、自分の言葉で語れるようになることが大切である。さらに、今後大学に進学し
たり社会へ出ると、プレゼンテーションの機会は増えるので、プレゼンテーションの
機会を多くもって練習をしておくように助言をいただいた。
イ
3年生:第6回研究大会(H17.7.8)での発表会
SSⅡ の 研 究 を 発 表 し た 。 高 校 で 習 う 内 容 を 越 え て
いるので、研究をまとめるのが大変であったが、
大学の教官に指導していただき、レビュー・発表
ともに今まで以上の仕上がりとなった。3年間の
集大成と なる研究および発表会ということもあっ
て、レビューを書く段階になっても確認のために
実験を繰り返すこともあり、仕上がりは予定より
もかなり遅くなってしまった。発表会では、規定
の時間10分を2~3分超えてしまう発表が多か
っ た の が 反 省 点 で あ る が 、 内 容 は よ く ま と め ら れ < 3年 生 に よ る プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン ( 7月 ) >
ており、スライドも見やすく工夫されていた。
過去の大会での発表の時よりも、自信をもって発表していた。閉会後、見に来てい
ただいていた大学の指導教官から、発表について時間をかけて指導していただくこと
が出来て、生徒はとても満足していた。
(4)成果と今後の課題
ア
2年生
(ア) 成 果
①第7回授業公開では、全員がオリジナルなデータを基に研究発表できた。
②図や写真を多く活用した見やすい発表が多かった。9月の練習のときに比べてパ
ワーポイントは技術面でもかなり進歩した。
③初めて作成したポスターも見やすくよくまとまっているものがいくつかあった。
④オリジナルなデータを使ったので、9月の発表練習のときに比べてテーマがはっ
きりしており内容もまとまっていて解りやすい発表になっていた。
⑤レビューはほぼ全員が期限を守って提出できた。ゆとりがあったので、フォント
の訂正をしても、発表会までに製本が間に合った。
(イ) 今 後 の 課 題
①ポスター作成とパワーポイントの作成が遅れたので、リハーサルが十分に出来な
かった。良い作品を創ろうと努力した結果遅くなったのだが、発表練習やリハーサ
ルの時間を残して早めに完成すると、さらによい発表が出来ると思われる。
②人にわかりやすく伝える工夫がさらに望まれる。
③参考文献の表記はレビューでは出来ていたが、ポスターでは表記のあるものの方
が少なかった。
④ 概 要 を 日 本 語 で 書 い た が 、 次 回 は abstract を 英 語 で 書 け る よ う に し た い 。
イ
3年生
(ア) 成 果
①高校の学習を超えた内容であったが、よく努力して理解し、論文として解りやす
くまとめることができた。
- 52 -
②高度な内容であっても、人に分かりやすく説明するためにスライドやセリフを工
夫して、プレゼンテーションできていた。
③アンケート結果からは、2年次での発表会に比べてレヴュー・プレゼンテーショ
ンの両方について高い自己評価をしており、研究発表に対して高い自己評価ができ
るようになった。
(イ) 今 後 の 課 題
レビュー作成が大幅に遅れた。パワーポイントの作成も前日までかかってしまっ
た。大学と高校で連携して指導してきたが、それぞれの学校の行事等の都合もあり
計 画 通 り に 進 ま な か っ た 。結 果 と し て 、 レ ビ ュ ー や パ ワ ー ポ イ ン ト の 作 成 が 遅 れ た 。
研 究 発 表 会 ま で の 準 備 を ゆ と り を 持 っ て 行 う に は 、 SSⅡ を 開 始 す る 時 期 を 早 め る こ
とにより研究の終了時期を早めて、レビュー作成、パワーポイント作成の期間に余
裕をもたせるべきである。
第7回授業公開(平成18年2月10日)での2年生生徒アンケートより
創造性の育成に 役立っ たか
論理性の育成に役立ったか
とてもそう思う
研究発表
とてもそう思う
研究発表
そう思う
そう思う
あ まり思わない
あまり思わない
4期,レビ ュー作成
4期, レビ ュ ー作成
思わない
0%
20%
40%
60%
80%
100%
思わない
0%
2 0%
40%
60 %
8 0%
1 00 %
発表の内容は満足できる ものでしたか
「レビ ュ ー 」の結果は満足でき る ものでしたか
満足
満足
まあ満足
まあ 満足
ど ち らともい えない
1
ど ち らともいえない
やや不満
やや不満
不満
不満
0%
0%
20%
40%
60%
80%
20%
40%
60%
80%
100%
100%
第6回研究大会(平成17年7月8日)での3年生生徒アンケートより
論理性の育成に役立ったか
創造性の育成に役立ったか
大変そう思う
レビュー作成
レビュー作成
大変そう思う
そう思う
あまり思わない
思わない
そう思う
あまり思わない
研究発表
思わない
0%
20%
40%
60%
80%
研究発表
100%
0%
- 53 -
20%
40%
60%
80%
100%
5
アンケート結果
( 1 )「 レ ビ ュ ー 作 成 と 研 究 発 表 は あ な た の 科 学 に 対 す る 論 理 性 の 育 成 に 役 立 っ た か 」
「創造性の育成に役立ったか」について集計した。
論理性の育成に役立ったか
レビュー作成
大変そう思う
そう思う
あまり思わない
思わない
研究発表
0%
20%
40%
60%
80%
100%
創造性の育成に役立ったか
レビュー作成
大変そう思う
そう思う
あまり思わない
思わない
研究発表
0%
20%
40%
60%
80%
100%
( 2 )「 S S Ⅱ で の 指 導 は 参 考 に な っ た か 」 お よ び 「 ど の よ う な 指 導 が 参 考 に な っ た か 」
について集計した。
SSⅡでの指導は参考になったか
参考になった
少し参考になった
SSⅡ
ど ち らともいえない
あまり参考にならなかった
参考にならなかった
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
どんな指導が参考になったか
調べて疑問に思ったことの答え
疑問を解決するのに役立つホームページ
疑問を解決するのに役立つ文書
人数
疑問を解決するアドバイス(答えは不要)
得られたデータを考察するのに加工する
方法
スライド、ポスター、レジュメなど見やすい
レイアウトについて
目的などの項目について具体的な
アドバイス
0
- 54 -
2
4
6
8
10
12
(3)SSⅡの感想
・三重大学などでとてもお世話になって、本当に良い経験になりました。
・僕は数学だったので、研究するということができませんでした。でも、数学の世界
は高校数学とは違いもっと深いということがわかった。また、発表するという貴重
な体験ができたことがよかった。それから、大学へ実際に行って講義を受けたのも
いい体験でした。
・グループに分かれてより細かな内容まで学習することができて、自分の進路や目標
をより明白に捉えることができたと思う。また、自分のよく知らない分野にふみこ
むことで「知る意欲」が深まったと思う。
・大学での実験、学校での考察・実験はとても楽しくていい体験でした。東京大会の
参 加 も 科 学 に 対 す る 興 味 が 大 き く な る 貴 重 な 経 験 で し た 。 ま た 、 全 国 の SSH 生 と 会
うことができて、こんなにも仲間がいるんだということに喜びを感じました。
・とても密度の濃いもので満足できた。その反面もっと研究したかったと欲も出てき
た 。 SS Ⅱ で は そ れ ま で と 研 究 方 法 が 全 然 違 っ て と ま ど っ た 。 基 礎 実 験 の よ う に 答
えが決まっていないところが楽しかった。
・ともかく楽しかった。親切な教授で本当に良かったと思う。
・それなりに楽しかったと思う。
・非常に興味深く、面白い研究をさせていただきました。団体ではなく個人での研究
がとても楽しかったです。
・なかなか普段では触れることの少ない分野についての研究だったので、困ったとこ
ろもあったが有意義だった。
・もっとおもしろい研究をしたい
・いろいろな実験をすることができたし、考え方・まとめ方などこれから先役に立つ
ことを学ぶことができました。仲間たちに出会えたこともよかったと思います。S
SⅡに参加してとても楽しかったです。
・大学へ進学するための目的が見つかり、高校生活において大いに意義のある取り組
みであった。
・今までやってきたことを一気に深められて、いちばん楽しかったです。
・やりたい分野のことをとても詳しく研究できた点がとても良かったです。また大学
などの高度な器具を使わせてもらえた点や、専門的な実験ができ、科学に対する興
味がより深いものとなりました。
・とても良い経験がたくさんできて、本当に楽しかったです。研究発表会など、やる
度に課題がたくさんで、こなしがいがありました。SSH大好きです。
- 55 -
3節
現代数理科学概論
【教科スーパーサイエンス学習指導要領】-科目「現代数理科学概論」-
【
第1款
目
標
】
近代の科学技術の基盤となっている自然科学的な現象を数理的な手法や情報技術
を利用して探求し、実験・観察・体験を通して学際的な視点で学ぶことによって
「科学への夢」を育むとともに、豊かな人間性を養う。
【
第2款
第1
1
各科目
】
現代数理科学概論
目
標
自然科学の現象を探求するための方法として数学・物理・化学・生物等の基礎科
学分野の関連づけが大切であることを実験や体験を通して学習し、数学的に処理
する能力や論理的思考力を育成するとともに科学に対する興味・関心・意欲・夢
を育む。
2
内
容
(1) 自 然 科 学 の 探 究 技 術
ア
数学の進歩の歴史
イ
情報技術とコンピュータの発達
ウ
統計処理とコンピュータの利用(正規分布・統計処理)
(2) デ ー タ ど お し の 関 係 と 関 数
ア
指数と対数
(ア)大 き な 数 、 小 さ な 数 の 表 し 方 ( 10 n で 捉 え た 世 界 )
(イ)指 数 法 則 の 拡 張 、 累 乗 根
(ウ)指 数 関 数 と 科 学 ( 音 階 、 半 減 期 )
(エ)小 さ な 数 か ら 大 き な 数 ま で の 「 物 差 し 」 と し て の 対 数
(オ)対 数 と そ の 性 質
(カ)対 数 関 数 と 科 学 ( 星 の 明 る さ 、 星 ま で の 距 離 、 恒 星 の 直 径 、 p H )
(キ)量 と 量 の 関 係 の 分 析 と 対 数 グ ラ フ ( ケ プ ラ ー の 法 則 )
イ
三角比と三角関数
(ア)測 量 と 三 角 比 ( 測 量 実 習 )
(イ)三 角 関 数 と そ の 基 本 的 性 質
- 56 -
(ウ)三 角 関 数 の グ ラ フ
(エ)加 法 定 理
(オ)三 角 関 数 と 科 学 ( 波 動 、 定 常 波 の 合 成 )
(3) 量 の 変 化 と 微 分 積 分
ア
微分法
(ア)平 均 速 度 と 瞬 間 速 度
(イ)変 化 を 捉 え る 導 関 数 ( 接 線 、 速 度 、 加 速 度 )
(ウ)微 分 法 と そ の 応 用
(エ)微 分 法 と 科 学 ( フ ェ ル マ ー の 原 理 )
イ
積分法
(ア)求 積 と 積 分
(イ)現 象 を 蓄 積 す る 積 分
(ウ)微 分 方 程 式 ( コ ン デ ン サ ー の 放 電 曲 線 )
( 4 )近 代 科 学 の 発 展 と 数 学
3
内容の取り扱い
(1)
指導にあたっては、数学、理科の各分野が個々に取り扱われるのではな
く、総合的に学ぶ意味づけがなされるよう構成されるものとすること。
(2)
内容の取り扱いについては、次の事項に配慮するものとする。
ア
内 容 ( 1) ア に つ い て は 、 測 量 器 等 の 古 代 か ら 人 類 が 開 発 し た 機 器 を 例
に数学との関連を扱うこと。
イ
内 容 ( 1) ウ に つ い て は 、 コ ン ピ ュ ー タ を 活 用 し な が ら 生 物 の 形 態 上 の
特徴を統計的に処理する等の実習を通して、平均、標準偏差等を扱
うこと。
ウ
内 容 ( 2) に つ い て は 、 自 然 界 の 現 象 か ら 実 験 を 通 し て デ ー タ を 得 な が
ら量と量の関係を、関数として扱うこと。
エ
内 容 ( 4) に つ い て は 、 近 代 科 学 の 中 で 理 論 科 学 の 発 展 を 数 学 が 支 え て
いる状況を歴史的な流れとして簡単に触れるものとすること。
- 57 -
1
研究概要
(1)目的
数学、理科を融合させた授業により、理数系の学際的な学力の増進を図ると共に、
カリキュラム開発を行い、学習指導要領やテキストの作成を目指す。
( 2 ) 学 習 評価
「 興 味 ・ 関 心 」、「 学 際 的 な 知 識 ・ 理 解 」、「 科 学 者 と し て の 論 理 性 」、「 科 学 者 と し
ての創造性」の4つの観点をもとに各単元での評価観点ごとの評価規準を作成し、
それに基づいた評価を行った。
評価の方法としては、定期試験や実験レポートを用いた。定期試験に関しては興
味・関心の高まりを見る設問、知識・理解の程度を見る設問をおき、ペーパーテス
トを行った。観点ごとに得点率を算出し、修正エーベル方を用いて評価を行った。
学習評価に関する詳細は、次項「2
学 習 評 価 」、 研 究 紀 要 【 科 学 技 術 系 人 材 育 成
を目指した生徒の研究活動における学習評価方法の開発】
( 第 5 章 )を 参 照 さ れ た い 。
(3)実施概要
平 成 1 6 年 度 入 学 生 の ス ー パ ー サ イ エ ン ス ク ラ ス に 対 し 、 SSH 用 の 教 育 課 程 に お い
て学校設定科目「現代数理科学概論」として、系統的に実施した。数学の教材配列
を軸にして自然現象を数式化することにより、数学と理科を自然な形で融合するこ
とを試みている。
昨年度は、指数・対数、三角比・三角関数、微分を学習し、データ分析実習や関
連する理科実験を行った。数学の各分野と物理・化学・生物の有機的なつながりを
意識した指導法を行った。指数・対数については、音の周波数に関する実験「音を
見 よ う 」、 水 素 イ オ ン 濃 度 の 変 化 に よ る p H の 測 定 に 関 す る 実 験 「 p H を 求 め よ う 」
を行い、三角関数については、波動物理に関する実験「波動」を行い、微分につい
て は 、 物 体 の 運 動 に 関 す る 実 験 「 平 均 の 速 度 と 瞬 間 の 速 度 」、「 運 動 の 法 則 」 を 行 っ
た。
今年度は、積分や微分方程式を学習し、微分方程式によって得られた式と測定結
果 を 考 察 す る た め の 理 科 実 験 「 電 気 実 験 基 礎 」、「 コ ン デ ン サ ー の 放 電 曲 線 」 を 行 っ
た。
カリキュラム開発に関しては、昨年度内容を系統化し、学習指導要領を開発し、
テキストを作成した。今年度はテキストを加筆・修正し、改訂版を作成中である。
研究概要の詳細は、研究紀要【確かな学力の育成を目指したカリキュラム開発と
そ の 評 価 ( 1 ) - 理 数 融 合 科 目 「 現 代 数 理 科 学 概 論 」 の 開 発 - 】( 第 5 章 ) を 参 照 さ れ
たい。
( 4 ) 事業評価
学力調査(評定平均値)や他の講座との比較、アンケート調査などを行い、評価
を行った。昨年度の数学と理科の評定平均値は4.4であった。今年度の評定平均
値は年度末に算出する予定である。
事 業 評 価 に 関 す る 詳 細 は 、 自 己 評 価 報 告 書 、 事 業 評 価 シ ー ト ( 4 章 )、 研 究 紀 要 【 ス
ーパーサイエンスハイスクール事業の事業評価方法の開発】
( 5 章 )を 参 照 さ れ た い 。
- 58 -
2
学習評価
(1)評価の観点の趣旨
「現代数理科学概論」は1年生での履修を前提に組み立てている。座学については、
教育目標は興味や学力等これからの研究活動に必要な基礎的な力の育成に限定してい
る。従って、評価の観点もそれに添う形で限定した。実験については論理性、創造性
についても評価を行った。
以下に科目「現代数理科学概論」の評価観点及びその趣旨を記す。
興味・関心
学際的な知識・理解
科学者としての論理性 科学者としての創造性
自 然 の 事 物 ・ 現 象 指数・対数、三角比・三 事物・現象に対する 事物・現象に対する
を 表 現 、 処 理 す る 角関数、微分法・積分法 科学的な探求を通し 科学的な探求を通し
ことに指数・対数、における基本的概念、原 て、事象を論理的に て、結果の解釈や表
三角比・三角関数、理・法則などを理解し、 考える。
現においてアイデア
微 分 法 ・ 積 分 法 が 基礎的な知識を身につけ
を出したりインスピ
用 い ら れ て い る こ ている。また自然の事物
レーションを発揮し
と に 関 心 を 持 ち 、 ・現象においてどのよう
たりと、発想の転換
こ れ ら を 活 用 し よ に用いられているかを理
をすることができ
うとする。
る。
解している。
この観点の趣旨を落とし込んで、各単元での評価観点ごとの評価規準を作成し、そ
れに基づいた評価を行った。
(2)評価の方法
ア
年4回の定期試験
興味・関心の高まりを見る設問、知識・理解の程度を見る設問をおき、ペーパー
テストを行った。
観点ごとに得点率を算出し、修正エーベル法を用いて分割点を算出し A ~ C の
三段階評価を行った。
イ
実験レポート
実験は3回、理科教諭が行った。そのうち2回の実験で評価を行った。
観点ごとに A ~ C の三段階評価を行った。
(3)評価の総括
ア
観点別の総括
A =3 点 、 B= 2 点 、 C= 1 点 と し 、 観 点 ご と に 得 点 率 を 求 め 、 各 観 点 の 五 段 階 評 定
を求める。その際、試験とレポートの配点比率にも留意する。
得点率%
50 未満
評定
1
50 以 上 63.3 未満 63.3 以上 76.6 以下 76.6 より上 83.3 以下
2
3
4
83.3 よ り 上
5
分割点の根拠について、
「 5 」は A と B の う ち A が 過 半 数 を 占 め た 得 点 率 と し た 。
例 え ば AABB な ら 3 + 3 + 2 + 2 = 1 0 点 で 得 点 率 は 83.3 % 。 従 っ て 83.3 % を 超 え た
と き に A が 過 半 数 に な る 。「 1 」 も 同 様 に B と C の う ち C が 過 半 数 を 占 め た 得 点
率 か ら 分 割 点 を 求 め た 。「 2 」 ~ 「 4 」 の 分 割 点 は 、 83.3% か ら 50 % を 均 等 に 3 等
分した
イ
得点率である。
観点別総括から評定を算出
予 め 、 観 点 ご と に 加 算 す る 割 合 (重 み 付 け )〔 %〕 を 決 め て お き 、 次 の 計 算 式 に 従
っ て 各 観 点 の 評 定 を 平 均 し て 、 全 体 の 評 定 と す る 。 ( 各 観 点 の 重 み 付 け を 30 : 50 : 10
: 10 と し た )
(興 味 ・ 関 心 の 評 定 ) × 30%+ (知 識 ・ 理 解 の 評 定 ) × 50%+ (論 理 性 の 評 定 ) × 10%+ (創 造 性 の
評 定 ) × 10%= 評 定
- 59 -
3
実施内容
(ア) 積 分
積分
時間数
1 1 回( 1 回 6 5 分 ) 担 当 者
大川・桜井
ね ・自然科学との関連の中で積分について学習する。
ら ・ 区 分 求 積 の 概 念 を 導 入 と し 、微 分 と 積 分 が 逆 概 念 で あ る こ と を 理 解 さ せ る 。ま た 、
い
整関数・べき関数・三角関数・指数関数の積分ができるようにする。
・自然科学に関わる事象を積分や微分方程式を用いて考察する。
・区分求積法という概念を用いて、面積を求めることを学習する。
・曲線の関数とその曲線で囲まれた部分の面積との間の関係を考察することから、
内
微分と積分が逆の演算であることを理解させる。
・曲線で囲まれた部分の面積を定積分を用いて計算する。
・べき関数、指数関数、三角関数の積分を扱う。
・自然科学に関わる積分の具体例として、位置・速度・加速度の関係や仕事や位置
エネルギーを扱う。
容 ・微分方程式を扱い、様々な自然現象(自由落下、抵抗を受ける落下、単振動、核
分 裂 、増 殖 率 、物 体 の 温 度 変 化 、コ ン デ ン サ ー の 放 電 曲 線 )を 微 分 方 程 式 で 表 し 、
それを数学的手法で解くことを学習する。
学
興味・関心
確かな学力
・自然科学に関連した事象を、積分を用
・区分求積法による面積の計算ができる。
いて考察ができる。
・べき関数、指数関数、三角関数の積分
習 ・直線上の運動と積分の関係が理解でき
評
る。
ができる。
・定積分を用いて面積の計算ができる
価 ・自然科学と微分方程式の関係が理解で
・微分方程式を理解し、その解を求める
きる。
ことができる。
【ペーパーテスト】
【ペーパーテスト】
(イ) 現 代 数 理 科 学 概 論 実 験
現代数理科学概論実験
ね
時間数
3回(1回65分)
担当者
大川・桜井
微 分 方 程 式 を 解 く こ と に よ っ て 得 ら れ た 式 と 、測 定 結 果 が 一 致 す る か ど う か 検 証 、
ら 考察する。数学で学んだことが実際の物理現象と密接に関係していること、自然科
い 学が統合された学問であることを実感させる。
①電気実験基礎
・ エ ジ ソ ン の 電 球 を 作 ろ う 。( 変 圧 器 の 使 い 方 )
内
・ 電 球 の 抵 抗 を 調 べ よ う 。( 電 流 計 、 電 圧 計 の 使 い 方 。 非 線 型 抵 抗 に つ い て )
・ 直 流 と 交 流 の 違 い 。( オ シ ロ ス コ ー プ で の 波 形 の 観 察 、 電 圧 測 定 の 方 法 )
・ 電 気 部 品 に つ い て 。( 抵 抗 、 コ ン デ ン サ ー に つ い て の 基 礎 知 識 )
②コンデンサーの放電曲線
充電したコンデンサーを、抵抗を通して放電させたとき、電流が時間とともに
容
どのように変化するか測定する。微分方程式を解くことによって得られた式と、
測 定 結 果 が 一 致 す る か ど う か 考 察 す る 。 測 定 は ( a )ス ト ッ プ ウ ォ ッ チ と 電 圧 計 を 使
用 、 ( b )オ シ ロ ス コ ー プ を 使 用 、 の 2 方 法 で 行 う 。
学
興味・関心
確かな学力
習 ・実験やレポート作成に積極的に取り組
評
価
・微分方程式を理解し、その解を求める
む事ができる。
ことができる。
【態度・レポート】
【ペーパーテスト】
- 60 -
4
アンケート結果
( 1 )「『 現 代 数 理 科 学 概 論 』 の 授 業 を 通 し て 、 理 科 ・ 数 学 の 総 合 し た 学 力 が つ い た と 思
うか」について集計した。
理科・数学の総合した学力がついた
大変そう思う
そう思う
あまり思わない
思わない
0%
20%
40%
60%
80%
100%
( 2 ) 2 年 生 で 行 っ た 分 野 「 積 分 」「 微 分 方 程 式 」 に つ い て 、「 理 解 で き た と 思 う か 」「 興
味 深 か っ た か 」「 論理性の育成に役ったか」について「大変そう思う」または 、「そう思う」
と答えた人数の割合を集計した。
積 分・微分方 程式
理解
積分
微分方 程式
論理
興味
0%
20%
40%
60%
80%
100%
・微分方程式については、
「 現 数 理 の 内 容 の 中 で 一 番 難 し か っ た 。」
「 理 解 に 苦 し ん だ 。」
などのコメントもあり、理解度がやや低い数値となったが、その一方で「高校では
扱 わ な い 内 容 で 興 味 が あ っ た し 、 丁 寧 に 教 え て も ら っ た か ら よ か っ た 。」「 と っ つ き
に く か っ た け れ ど 、 物 理 と く っ つ く こ と に 、 数 学 の 無 限 の 可 能 性 を 感 じ た 。」「 数 学
の 真 髄 を 感 じ た 。」 な ど の 感 想 も あ っ た 。
( 3 )「コンデンサーと放電 曲 線 」 の 実 験 ・ 実 習 に 関 し て 、「 興 味深く、関心を高めるもの
であったか 」、「『 現代数理科学概論』などの内容の理解の助けとなったか」について「大変そ
う思う」または「そう思う」と答えた人数の割合を集計した。
コ ン デ ン サ ー と放 電 曲 線
興 味 ・関 心
理解の助け
0%
20%
40%
60%
80%
- 61 -
100%
4節
部活動
1.ねらいと実施対象
平 成 18 年 度 を も っ て 終 了 す る こ と に な っ た SSH 事 業 に つ い て 、 終 了 後 も 生 徒 ら に 理 数
分 野 の 興 味 ・ 関 心 を 継 続 さ せ 将 来 の 研 究 者 の 育 成 を 目 的 と し て 、 平 成 17 年 度 入 学 生 よ り
SSH ク ラ ブ と し て 正 式 に 発 足 さ せ た 。
現 在 、 1 学 年 生 徒 9 名 ( 男 子 7 名 、 女 子 2 名 ) + 2 学 年 生 徒 2 名 ( SSH ク ラ ス 生 男 子
2 名 ) で 活 動 を 行 っ て お り 、 こ れ ま で 本 校 で 実 施 さ れ て き た SSH 事 業 を ふ ま え て さ ら な
る発展を目指し、放課後や週末を利用して積極的に活動している。
2.内容
理数分野における基本的な考え方および研究手法の習得を目指し、物理・化学・生物
・ 数 学 ・ 情 報 お よ び 基 礎 科 学 実 験 の 分 野 で そ れ ぞ れ 担 当 教 員 が 指 導 を 行 っ て い る 。ま た 、
長 期 休 業 中 を 利 用 し て 2 学 年 SSH ク ラ ス と 同 様 に 、 夏 期 集 中 講 座 や 研 修 旅 行 に も 参 加 し
た。さらに、数学コンクール、数学オリンピックなどにも取り組んでいる。
(1)物理・・・・・櫻井景子・川喜田真也
ア
音を見よう(現代数理科学概論テキスト参照)
イ
電気実験
(ア) エ ジ ソ ン の 電 球 作 ろ う 。
(イ) 電 球 の 抵 抗 を 調 べ る 。
(ウ ) 直 流 と 交 流 の 違 い 。( オ シ ロ ス コ ー プ で 観 察 )
(エ) 運 動 の 法 則 ( 現 代 数 理 科 学 概 論 テ キ ス ト 参 照 )
(2)化学・・・・・日紫喜正展
ア
pH の 測 定
1年生ではまだ中和反応を学んでないが、生活の中でよく使う水溶液が酸性・アル
カ リ 性 を 調 べ て み た 。 水 溶 液 の 中 の 水 素 イ オ ン 濃 度 を 数 値 に し た も の を pH と い う 。 pH
メーターを使って日常でよく使うジュース、コーラ、コーヒーや洗剤等がいったいど
れ ぐ ら い の pH で あ る の か を 知 り 、 酸 性 ・ ア ル カ リ 性 の 認 識 を 深 め た 。
イ
中和滴定
酸 と ア ル カ リ に つ い て 考 え た 。 酸 に ア ル カ リ を 加 え て い く と 、 pH が 少 し ず つ 変 化 し
て い く 。 pH の 変 化 を グ ラ フ に す る こ と で 、 酸 と ア ル カ リ の 種 類 が 理 解 で き 、 中 和 点 の
確認もできるようになった。
ウ
分子モデル作成
分子にはいろいろな種類があるが、その分子内で原子と原子がどのように結合して
い る か を 実 際 に 見 る こ と は 難 し い 。そ こ で 、分 子 模 型 を 使 い 、い ろ い ろ な 分 子 を 作 り 、
結合の種類、分子の大きさ、二重結合への付加反応などを考えてみた。フラーレンが
作れるかどうかにも挑戦してみた。
(3)生物・・・・・伊藤泰二
ア
ブラインシュリンプの発生と飼育
いつでも発生させることができるブラインシュリンプを使って、発生を継続的に観
察し1個の受精卵からどのように成体になるかを探求した。
イ
単細胞生物の観察
ミカヅキモとミジンコを用いて、単細胞生物の構造を観察した。
ウ
ブロッコリーからDNAの抽出
- 62 -
遺 伝 子 の 本 体 で あ る D N A を 実 際 に 抽 出 す る こ と で D N A に 対 す る 興 味 ・関 心 を 高 め
た。
(4)基礎科学実験・・・・・伊藤泰二
ア
水蒸気爆発(ポップコーンの作成)
火山等で見られる現象を、ポップコーンを用いて理解した。
イ
物質の三態(べっこう飴作り)
物質の状態変化について理解した。
ウ
海洋生物の飼育
エ
文化祭にて・・・・スライム、綿菓子、液体窒素による実験
(5)数学・・・・・松岡泰之
ア
2005 年 度 第 15 回 「 数 学 を 楽 し む 高 校 生 の た め の セ ミ ナ ー 」( 8 月 三 重 大 学 ) 参 加
イ
2005 年 度 第 16 回 「 数 学 を 楽 し む 高 校 生 の た め の セ ミ ナ ー 」( 12 月 ア ス ト 津 ) 参 加
ウ
第 16 回 日 本 数 学 コ ン ク ー ル ( 8 月 ) 参 加 し 、 2 学 年 生 徒 が 優 秀 賞 、 1 学 年 生 徒
が奨励賞を受賞した。
エ
第 16 回 日 本 数 学 オ リ ン ピ ッ ク ( 1 月 ) 参 加 し 、 2 学 年 生 徒 が 予 選 A ラ ン ク 合 格
し、本戦出場となった。
(6)情報・・・・・山口雅弘
ア
夏期集中講座に参加
(7)その他
ア
≪詳細は別掲≫
SSH研修旅行(引率
日紫喜、伊藤)
スプリング8、明石天文台、JT生命誌研究館、大阪大学
工学部等で研修。
イ
夏期集中講座
名古屋大学にて、物理・化学・生物・情報の分野毎に、研究室に分かれて実験。
ウ
中村修治氏との対談
3.成果と課題
下記の生徒の感想が成果である。また、今後の課題としては、実験を通して様々な手
法を身につけるだけでなく、生徒自身が実験のテーマを見つけて解決できる方向に持っ
ていきたい。さらに、小学生らに科学に対する興味・関心を引き出させるような実験の
指導をクラブ生徒が担当できる環境を作っていきたい。
(生徒の感想)
・活動を通して、いろいろ新しいことを知れたし、科学に前以上に興味が持てるように
なった。
・ 大 学 の 研 究 や ス プ リ ン グ 8、 レ ー ザ ー が ど ん な も の か 、 ま た そ の 仕 組 み も 分 か っ た 。
・生物分野の、特に遺伝子の分野。大学の研究はとても興味深かった。
・理科全般に対する興味もあがり、生物の飼育など、またしてみたいと思った。特に物
理分野に興味があったが生物や化学もおもしろいと思う。
・理科の実験を通して、色々なことを考える楽しさがあった。科学についての知識も深
まった。
・ 変 わ っ た 体 験 が で き る の で SSH入 っ て て よ か っ た で す 。
・来年度はもっと頻繁にクラブ活動を行いたい。
・授業では出来ない、少し発展的な活動内容を期待します!
- 63 -
4章
研究開発の成果と課題
1.実施による効果とその評価
( 1 ) SSH 事 業 に お け る 効 果 と そ の 評 価
①
研究者をめざした実験・実習を重視する科目「スーパーサイエンスⅠ」のカリ
キュラム開発を行った。内容を系統化し、学習指導要領を作成し本報告書に掲載
し た 。 昨 年 度 は 平 成 1 5 年 度 入 学 の SSH 選 択 生 ( 以 下 、 平 成 1 5 年 度 入 学 生 ) に
対し、第1期から第4期に分け実施した。実験の手法、データ処理の方法などの
技術の指導や研究テーマを決め自分で計画を提案し研究する姿勢の育成行った。
今 年 度 は 平 成 1 6 年 度 入 学 の SSH ク ラ ス 生 ( 以 下 、 平 成 1 6 年 度 入 学 生 ) に 対 し
て実施し、評価を行っている段階である。今後は、内容を整理し、テキストを作
成する予定である。
②
大学や研究機関の指導のもと、創造的な研究活動を行うことを目的とした科目
「ス ーパーサイエンスⅡ」を実施した。今年度は平成15年度入学生が、物理・
化学・生物・数学などの各分野に分かれ、名古屋大学、三重大学の研究室にお世
話になり、研究活動を行った。自分なりの独自の視点で研究を行い、研究論文を
作成し、プレゼンテーションやポスターセッションを行った。平成16年度入学
生に対しては、現在進行中である。
③
理科・数学を中心とする学際的な基礎学力を育成するカリキュラム開発として
科目「現代数理科学概論」の研究開発を行った。平成15年度入学生に対しては、
導 入 と し て ス ポ ッ ト 的 に 実 施 し た 。 平 成 1 6 年 度 入 学 生 に 対 し て は 、 SSH 生 用 の
教育課程の中で継続的に実施した。各単元を系統化し学習指導要領を作成した。
また、内容を整理し、テキストを執筆した。今後、内容を追加し改訂版のテキス
トを作成する予定である。
④
評 価 観 点 と し て 「 興 味 ・ 関 心 」「 学 際 的 な 知 識 ・ 理 解 」「 科 学 者 と し て の 論 理 性 」
「 科 学 者 と し て の 創 造 性 」「 望 ま し い 人 間 関 係 ・ 豊 か な 心 」 の 5 つ を 柱 と し た 学 習
評価の開発に取り組んでいる。
仮説を立てそれを立証するという自然科学分野の研究に一般に見られる流れを
「研究の流れ」と定義し、流れの各段階(課題設定の段階など)について観点別
に評価を行うことで、指導と評価の一体化を図った評価方法を提案できた。
望ましい人間関係や豊かな心の評価について、評価の対象を「研究を行う際の
リーダーシップの必要性」と「リーダーシップを発揮するときに求められる倫理
感等の素養」の二点とし、面接法による評価を行った。このような形で、従来あ
まり開発されていなかった「心」という素養の評価方法を提案することができた。
⑤
一昨年度、自己評価とアセスメント評価を組み合わせた本校のスーパーサイエ
ンス事業自体の評価をする評価システムを開発した。昨年度は事業のねらいの部
分で経営品質的な分析を加えた事業評価シートを開発した。今年度においても、
本校が開発した事業評価シートにより自己評価をし、事業の客観性を高めた。今
年度作成した自己評価報告書、及び事業評価シートは本章末に掲載した。
- 64 -
(2)生徒の変容
①
-効果とその評価-
平成15年度入学生、平成16年度入学生ともに、ポスターセッションやプレ
ゼンテーションの運営を生徒達自身が行った。生徒達自身が行うことで、運営や
報告の重要性、他の人への説明の難しさ、より高いレベルに自分自身が突き進も
うとする積極性が生徒達に養われた。準備を通して研究の理解度を自己点検し、
さらに理解を深める努力をしていた。また、仲間との協力を通して、お互いの人
間性を尊重し行動する姿も見受けられた。
②
「 ス ー パ ー サ イ エ ン ス Ⅰ 」「 ス ー パ ー サ イ エ ン ス Ⅱ 」 の 課 程 終 了 後 、 平 成 1 5 年
度入学生に対して、アンケート調査などを行ったところ、論文作成や研究発表の
際のモラルに気づいた意見や参考文献のクレジットの問題など、科学者としての
責任感の芽生えがみられた。
③
平成16年度入学生に対して、学力の推移を調査した。昨年度の調査によると、
入学当初の「春休み宿題試験」においては、10クラスの中でどの教科も平均的
な 位 置 で あ っ た が 、「 6 月 お よ び 1 1 月 の 校 内 実 力 試 験 」 に お い て は 、 英 語 ・ 数 学
の成績の伸びが大きく、特に数学の偏差値は1学年のクラスの中ではトップクラ
スにまで上昇した。また、全体の偏差値平均も上昇している。今年度、理科に関
する成績推移の調査を行ったところ、11月の第2回実力テスト、校外模試とも
に、物理が国際科学コースよりも若干低かったものの化学・生物は、国際コース
を 上 回 っ て い た 。 以 上 か ら 分 か る よ う に 、 S S H の 教 育 課 程 は 、「 現 代 数 理 科 学 概
論 」「 ス ー パ ー サ イ エ ン ス Ⅰ 」 を 中 心 に 、 数 学 ・ 理 科 の 学 力 の 向 上 に 大 き く 影 響 し
ていると思われる。
2.実施上の課題と今後の研究開発の方向
( 1 ) SSH 事 業 に お け る 実 施 上 の 課 題 と 今 後 の 研 究 開 発 の 方 向
①
科目「スーパーサイエンスⅠ」の基礎実験において、測定条件をいろいろ変え
ることで、生徒が工夫でき、データの収集を行うことができる学際的な教材を設
定することができた。今後は、教材の中で一番興味が持て、改善点を見い出すこ
とができると考えた教材だけでも再実験を行い、再度レポートを作成する時間を
設定することが課題である。
カリキュラム実施上の課題としては、情報処理における誤差に対する見方やデ
ータの信頼性を高める技術の習得として、シミュレーションや予測に関する指導
を取り入れていくことである。
②
科目「現代数理科学概論」においては、数学の単元を軸に、理科と数学を自然
な形で融合し、テキストを作成した。内容を系統化し、ねらい通りのテキストが
できたが、統計学的な手法と積分の部分が未完成であったため、今後、内容を加
筆修正し、改訂版のテキストを作成予定である。
③
学 習 評 価 に お い て は 、「 創 造 性 の 評 価 」 に つ い て 創 造 性 を 発 揮 す る 場 面 の 提 供 と
いった指導上の難しさが明らかになった。創造性を発揮する場面を学校現場で提
供することは非常に難しい。
複数の大学指導教官から自由記述の評価で「積極性」または「態度」について
の も の が 多 く 、「 積 極 性 」 や 「 態 度 」 の 指 導 方 法 と 評 価 方 法 を 確 立 す る 必 要 性 が 明
- 65 -
らかになった。
興味・関心、論理性、創造性の評価基準については、評価の段階を増やす等の
改善点が課題である。
④
平成16年度入学生に対する宿泊研修講座実施後のアンケート結果によると、
「興味深かった」と答えた生徒が70%であった。ただ、2年生になり自分が進
みたいと思っている分野が確定しつつあり、各研修施設の印象は良かったが、物
理分野選択予定の生徒は生物、生物分野選択予定の生徒は物理の研修施設の評価
が低くなった。このことから、全員参加型の宿泊研修講座の実施時期が今後の課
題である。現在のところ、1年次に行うことが効果的だと考えている。なお、授
業では取り組めない「地学」関係の講座を取り入れることも効果的だと考えてい
る。
⑤
夏期集中講座やスーパーサイエンスⅡにおいて、名古屋大学や三重大学と連携
し て い る が 、 大 学 側 か ら 見 る と 複 数 高 校 の SSH を 支 援 し て お り 負 担 も 大 き い 。 支
援を受ける側の高校としても、高校間連携によって集団化し、高校での教員の資
源を活用した上で大学・高校集団という連携形態の方が双方にとって良い方向に
向かうと思われる。
(2)生徒の変容
①
-課題と今後の方向性-
平成15年度入学生は大学入試にむけての勉強時間の確保とスーパーサイエン
スの両立に不安を抱くようになった。大学入試をきっかけに目的意識が少ない生
徒 が 辞 退 し て い く 傾 向 が あ り 、 3 年 間 で SSH 選 択 者 は 当 初 の 4 分 の 1 程 度 と な っ
た 。 今 後 は 、 生 徒 の 意 識 を 変 え て い け る よ う な 事 業 を 行 う こ と が SSH 事 業 に お け
る課題である。
②
平成15年度入学生に対して学力の推移を調査した結果、成績の著しい下降が
見 受 け ら れ た 。 原 因 と し て は 、平 成 1 5 年 度 生 は S S H 1 年 目 と い う こ と も あ り 、
試行的な意味合いが強いことや「確かな学力の育成」を目指す「現代数理科学概
論 」 が ト ピ ッ ク ス 的 に 実 施 さ れ た こ と な ど 、「 興 味 ・ 関 心 の 育 成 」 が 中 心 の プ ロ グ
ラ ム で あ っ た こ と が 影 響 し て い る と 思 わ れ る 。平 成 1 6 年 度 入 学 生 に 対 し て は 、
「現
代数理科学概論」をカリキュラムの中に組み込み、系統的に本格実施したことも
あ り 、 SSH 生 の 成 績 が 飛 躍 的 に 上 昇 し た こ と が 学 力 調 査 か ら 明 ら か に な っ た 。
- 66 -
自
己
評
価
報
告
書
自
事業目標
各事業
各事業の目的
実施内容
己
評
評価方法と評価規準
価
評価結果
努力した事項や工夫した点を文 ( 1)( 2)についてはデータがとれる規準、(3)以降は 評価の根拠となる点を文面で記述する。
面で記述する。
抽象的規準でよい。
( 1) 科 学 へ ①夏期集中
の興味関心 講座
を 育 成 し
「科学への
夢」を育む。
・生徒に自分の将来の姿
を見せることによって関
心を育てる。
・最先端の技術の研究現
場を見せることにより興
味、関心を育てる。
名古屋大学工学研究科、生命
農学研究科、情報科学研究科に
おいて8講座を用意し、2学年
は物理、化学、生物、1学年は、
物理、化学、生物、情報の分野
で、午前は講義、午後実習を基
本の形として受講できるように
計画、実施した。E-mail 等 を利
用して大学の担当教授と講座内
容をについて細かい打合せをし
た。
②フィール ・世界的な研究施設を見 【2学年+SSHクラブ】
ドワーク
ることによって、未来へ
SPring-8、 明 石 天 文 科 学館 、
の夢をはぐくむ。
生命誌研究館、大阪大学レーザ
ーエネルギー学研究センターで
研修した。
③推薦図書 ・理数系の推薦図書を入 自然科学分野を中心に購入。中
の指導
れることによって、科学 村修二教授の講演があったので
的知識の日常性を高める。 教授の著書も購入した。
( 2) 数 学 、
理科、情報
を中心とす
る学際的な
領域におけ
る「確かな
学力」を育
成する。
④「現代数
理 科 学 概
論」の授業
実施
・数学、理科を融合させ
た授業により、理数系の
学際的な学力を増進を図
る、とともにSSH教科
の学習指導要領やテキス
ト の 作 成を め ざ す 。
授業のプリントを作成してい
く過程で、理科と数学の教育内
容についてミーティングを何度
か持ち、積分、微分方程式等の
分野でテキストの素案を完成さ
せた。
⑤「SSⅠ」 ・物理、化学、生物、情
の授業の実 報の各分野の基礎実験や
施
実習等を通して研究の流
れを体験し、研究と発表
のプロセスに必要なスキ
ルを習得する。
科学の研究や発表を行うのに必
要な技術を育成するSSⅠの授
業を実施した。基礎実験のデー
タを用いたデータ処理演習や、
プレゼンテーションの学習をし
た。
⑥SSHク ・大学や研究機関等を利 放課後、曜日毎に物理、化学、
ラブ
用して高度な数学・理科 生物、基礎科学分野で、実験を
の内容に触れることによ 中心に行っている。また、名古
って学力の増進を図る。 屋大学での夏期集中講義やSS
また、各種実験を通して、 H研修旅行などにも積極的に参
研究者としての能力養う。 加した。さら に 日 本 数 学 コ ン ク
ール等にも参加した。
( 3) 論 理 的
思考力、独
創性・創造
性の育成
⑦レポート
発表会やパ
ネルセッシ
ョンへの取
り組み
【方法】アンケート調査
【視点】興味・関心が増したか、
【基準】関心の育成に役立ったか
とてもそう思う
4
あまり思わない
そう思う
3
思わない
で評点3.1以上が目標
2
1
夏期集中講座では、欠席者が少なくいずれの講座も高い
関心を持って参加しており、多くの知識が習得できるとい
う期待が伝わってきた。前年度に参加できなかった講座を
中心に実習した。最先端の研究を体験することで、自分が
取り組んでみたい実験内容や研究分野を見極めることがで
き、再生医療や地震と防災の講座をとおして、生活の中の
課題にもつながることができ、興味・関心が増幅できたと
思われる。、
光の概 念と波と のイメージ を広げることができ、何故測
定に放射光が有効なのかを生徒は理解しようとしていた。
宇宙の発生と元素の成立を結びつける講義により、化学の
2
分野と地学の分野の融合を考えた。生物の進化だけでなく、
1
宇宙の進化や 時間の経過に 対するイ メージを高めることが
できたと感じた。ヘリウムやトリチウムの核融合の説明と
宇宙の成立が結びついていることがイメージでき、物理と
化学だけでなく、地学分野にもつながりを持て、学際的な
視野が広まった。しかし、2 年生になると自分が進みたい
と思っている分野が確定しつつあり、印象はよかった(評
価 3.1)が、物理分野選択予定の生徒は生物、生物分野選
択予定の生徒は物理の研修施設の評価が低く、評価 2.9 と
なった。
【方法】貸し出し数調査
1 月 2 0 日 現 在 、 全 貸 し 出し数3086冊に対して SSH
【視点】貸し出し分類別構成を向上させる。
関連図書の貸し出し数は151冊であり、その比率は4.
【基準】 SSH 以前の利用分類別構成率4.0%に 9%であった。SSH 以前の利用分類構成率4.0%に対し
対し
て 増 え て は い る も の の 、 目 標 基 準 に は ま だ ま だ至 って い な
100%増(8.0 %)4 25%増(5.0 %) 2
い。
50%増(6.0 %) 3 0% 増(4.0%)
1
で評点3.1以上
【方法】学力調査(評定平均値 )、他の講座との比
1年次における数学と理科の評定平均値は4.4であっ
較調査、アンケート
た。2年次における評定は年度末に出すため、結果は出て
【視点】課題を数理的に解決する力
いない。
【基準】
アンケート「理科・数学の総合した学力がついたと思う
・数学と理科評定平均値4.0以上
か。」という質問に対して「大変そう思う。
」が26%「そ
・理科・数学の総合した学力がついた。
う思う。」が70%「あまり思わない。」が4%であった。
大変そう思う
4 あまり思わない
2 おおむね、生徒の評価も高く、理数系の学際的な学力の伸
そう思う
3
思わない
1 長があったものと思われる。
で評点3.1以上が目標
【方法】生徒自己評価、プレゼンテーションやポ
発表は自分の言いたいことがどれくらい人に伝わるかが
スターに関する外部評価者の講評
大切である。そのためには、自分の下研究を十分に理解し
【視点】研究のプロセスの中で必要なスキルが付 ていないといけない。原稿を書いてみて内容を整理し、自
いているか評価
分の言葉で語れるようになることが大切である。今回は、
【基準】①既知事項に関する興味・関心と課題設 どの発表にも質問が出たので発表者の言いたいことが伝わ
定、②研究目標や実験等の計画立案ができるかど ったと考えて良い。ただし、生徒からの質問がもっとあれ
うか
ば 良 か っ た 。 と い う 評 価 を 、 発 表 会 後 の 講 評 とし て外 部 評
できる= 2 点
できない= 1 点
とする。
価者からいただいた。
2項目合計で評点3.1以上が目標
本年度前半の基礎実験の段階でも基本技術を学ぶとともに
実験を工夫するように指導してきたが、後半のテーマ別研
究に入って興味関心を持って調べたり、実験方法や計画を
提案する機会が増え、約半数の生徒がその力がついてきた
と自覚するようになった。。
【方法】自己報告
第 1 6 回 日 本 数 学コ ン ク ー ルに お いて 、 2 年 生 生 徒が 優 秀
【視点】新しい概念・知識の理解力、今後の学習 賞、1 年生生徒が奨励賞を受賞した。また、2年生1名は
に対する意欲・期待。外部主催によるコンテスト 数学オリンピックの本選出場を果たした。
・コンクールに参加することによって、他校生徒 活動の中で科学に対する興味・関心を自ら調べるだけでな
に刺激を受け交流が深められたか。
く、各種実験や大学等での研究活動によって、より深く探
求することができた。
担当者
評
価
3.3
日紫喜
2.9
日紫喜
2.0
所
3.2
大川
3.4
倉内
【方法】アンケート調査
【視点】科学技術者に対する夢
【基準】興味深かった。
大変そう思う
4
あまり思わない
そう思う
3
思わない
で評点3.1以上が目標
・分かりやすい資料を工
夫することによる独創性、
創造性の発揮、発表論旨
を組み立てることによる
論理的思考力の育成、表
現 力 等 の育 成
定期的に大学の研究室に出向
いて教官に指導を受け、日常的
には、高校で担当教員が生徒を
指導した。生徒・大学教官・高
校教員が連携して指導した。
【方法】SSⅡアンケート調査
【視点】論理性、創造性に対する取り組みの姿勢
【基準】
・研究方向のパネルやレビューを人にわかりやす
くまとめることができた。
・図などに工夫をすることができた。
大変そう思う
4
あまり思わない
2
そう思う
3
思わない
1
で評点3.1以上が目標
3 . 1を越えているので目標は達成できた。研究発表に
おける評価が 2 年次での値2.9より大きくなっているの
で、3 年次の 発表を通 して論理 性・創造 性がさ らに育って
いるものと思われる。
SSⅡ研究発表後の本校教員による各生徒と面接による評
価を実施し、結果から次のようなことが分かった。研究中
に出てきた疑問に対して論理的に考えたり、論理計算を行
うなどし、論理的思考力が身に付いた。大学の指導教官か
ら、レビュー作成においては、大学生レベルの論理性と構
想力を持っているとの評価を得た生徒もいた。
⑧「SSⅡ」 ・「SS Ⅰ」で学習した研
の授業の実 究のプロセスを大学、研
施
究所の指導を受けて1つ
のテーマについて研究報
告・研究論文を完成し、
発表することによって総
合的な実践力を育成する。
大学では、以下の学部学科の
研究室で2~3人ずつの生徒を
直接ご指導いただいた。
名古屋大学(多元数理科学、工
学研究科)三重大学(生物資源
学部、工学部)
高校では、理科・数学の教
員が、大学の研究室と連携して
生徒を指導した。高校教員が研
究室の指導を受けて、直接生徒
を指導した講座もあった。
、
SSH 全国生徒研究発表会にお
いて、代表生徒が SS Ⅱの研究
の1つを発表し 、「科学技術振
興機構理事長賞」を受賞した。
【方法】生徒自己評価
大学教官の評価
【視点】研究を深める論理的思考力、独創性の
習得。研究方法の習得。研究を進める上でのリー
ダーシップの習得。
【基準】①実験器具・装置の操作について積極的
に行える。②想定したデータが得られた部分につ
いて進言ができる。③想定していないデータが得
られた部分について進言ができる。④想定してい
ないデータが得られた部分について、実験計画の
再考または仮説の見直しが出来る。
A(出来る) =4 点
B(やや出来る)=3点
C(あまり出来ない)=2点
3.1以上が目標
評価の数値は、生徒自己評価と直接指導していただいた
大学教官の評価を単純に平均した。3.1を上回ったので
目標は達成できた。なお、生徒自己評価の平均値は3.2
であり、生徒自身も SS Ⅱの取り組みに手ごたえを感じた
ことがわかるが、大学教官からは3.5 とさらに高い評価
をいただいた。高校での授業に比べて、高度な内容と技術
を要する研究を行ったため、生徒には自己評価しにくかっ
たものと思われる。件数は少ないが、生徒によっては、生
徒自己評価よりも大学教官の評価が低くなっているものも
あった。
SSⅡ研究発 表後の本校教 員による 各生徒と面接による評
価を実施し、結果から次のようなことが分かった。研究中
に出てきた疑問に対して論理的に考えたり、論理計算を行
うなどし、論理的思考力が身に付いた。大学の指導教官か
ら、レビュー作成においては、大学生レベルの論理性と構
想力を持っているとの評価を得た生徒もいた。
- 67 -
伊藤泰
3.3
倉内
3,4
倉内
( 4) 科 学 の
活動を通し
て、望まし
い人間関係
を育み、豊
かな心を育
てる。
( 5) S S H
事業を通し
て教員の力
量 を 高 め
る。
( 6) 事 業 の
内容や評価
に対する客
観性を高め
る。
⑨琉球大学
瀬底実験所
における海
洋生物実習
・研究活動を通しての協 2年生SSH選択生が研修旅 【方法】アンケート、感想
力、協調の姿勢を育てる。 行中に琉球大学瀬底実験所で珊 【視点】瀬底実験所における印象
・フィールドワークを通 瑚についての研修を受けた。
【基準】研修旅行全体を通して興味深かったか。
して自然界のすばらしさ
大変そう思う
4
あまり思わない
2
と 大 切 さに 触 れ る 。
そう思う
3
思わない
1
で評点3.1以上が目標
講義で、環境が変化するといとも簡単にクマノミが性転
換することを知り驚くとともに、そのシステムを確認する
実験方法を聞き、生物学がどのように研究されているかも
知ることがで きた。講義「 珊瑚と魚 類の生態」は、現在の
珊瑚礁の破壊を知り、環境問題にもつながる良い学習であ
った。午後のフィールドワークでは、日本で唯一観察でき
る珊瑚礁を直接見ることができ、生徒はとても感動してい
た。この研修で自然に触れられたという感想を23人中1
5名が答えているが、科学に携わる人としてこうありたい
というアンケートではそう思うという生徒が少なかった。
これは、自分の目指す進路がかなり固まってきているため
であろう。
⑩特別講演 ・技術者としての生き甲 高輝度青色 LED の実用製品化に 【方法】アンケート、感想 (全校生徒)
大変暑い体育館の中、中村教授は汗も拭かずに生徒たち
斐、責任感を育てる。
世界で初めて成功されたカリフ 【視点】この講演を聞いて視野が広がったかどう に熱く語られ、生徒たちは大きな感動を持って受け止めて
ォ ル ニ ア 大 学 中 村 修 二 教 授 の か 。【基準】科学技術と他分野との関連と影響につ いた。アンケートの記述内容では外国とは、大学について
「自分の夢を見つけよう」と題 いて感じることができたか。
の価値観や学べることなど、相違点がずいぶんたくさんあ
した講演をお聴きした。
とても感じた
5 どちらともいえない
3
るのだと感じたとか、日本にも外国のように、何かに挑戦
やや感じた
4 あまり感じない
2 する人を支援する制度があってもよいなどといった感想が
感じない
1
あっ た 。
で評点3.5以上が目標
⑪全国交流
全 国 交 流 会 に 参 加 し 、 他 の 【方法】生徒観察
多くの他校の生徒や関係者にポスターセッションのブー
会へ の 参 加
SSH 校との交流を深める。
【視点】ポスターセッションにおいて、見に来た スに訪れていただいた。生徒は来ていただいた方々に積極
方とディスカッションをすることができたか。
的に研究内容を説明し、見に来ていただいた生徒と意気投
積極的に他校の研究を見に行き、交流を深めるこ 合する場面も見られた。また、自分が研究を説明する当番
とができたか。
でないときな ども、積極的 に他校の 研究を見に行き交流を
深めていた。
パワーポイントによる口頭発表では 、『科学技術振興機
構理事長賞』をいただき、大きな成果を得ることができた。
⑫他校との 同じSSHを実施してい
他校のSSH発表会等に参加 【視点】他校の生徒と交流し意見を交換し友情を
当初、東海3県のSSH実施校に対して、合同の研究発
生徒交流
る学校の生徒と交流する し他校の生徒の発表を聞くとと 深めることができたか。
表会を行うことを呼びかけたが、残念ながら実施形態の違
こ と に よ り 、 友 好 を 深 め もに 意 見 を 交換 す る 。
いや 実 施内 容 の 進 み具 合 の 違 いな ど か ら実 現 し な かっ た 。
る。
2月11日に、松坂高校の生徒研究発表会に2年SSHク
ラス生と1年SSHクラブ生が参加した。代表1グループ
の発表をその中で行った。また、発表に対して建設的な質
問を活発に行った。
⑬教科SS ・理数教員の相互の教科 「現代数理科学概論」において 【方法】アンケート
職員へのアンケートの結果職員自身のSS事業への貢献度
の教材開発 内容への理解と教材に関 理科・数学の教員がチームを組 【視点】職員自身のSS事業への貢献度、職員力 は 3.0、教員力量が高められたかは 3.2、チームとして協力
する知識の増進を図る。 んでテキストを完成させる。
量が高められたか、チームとして協力できたか。
できたかは 2.7 であった。チームとしての協力度が低い理
大変そう思う
4
あまり思わない
2
由として、SSⅠⅡに入り専門に分かれたことでその科目
そう思う
3
思わない
1
の教科担当者主導で指導を行ってきたことが考えられる。
で評点3.1以上が目標
そのことをふまえ、会議ごとに指導経過を報告し合い、指
導内容を共有している 。「現代数理科学概論」では微分方
程式の章で理数教員がチームを組んで模擬授業を行い、わ
かりやすい教授法を意見交換することができた。
⑭教科SS ・「 現代数理科学概論」の 各科目での評価方法を開発。
「現 【方法】自己報告
「現代数理科学概論」,「SS Ⅰ」;昨年同様の方法で評価を
の学習評価 学習評価方法について研 代数理科学概論」「SS Ⅰ」は昨 【視点】担当者が使える評価方法を示せたか。
行った。評価結果はおおむね妥当と見受けられることから、
法の開発
究し適用する。
年同様。「SS Ⅱ」では指導教官
担当者が使える評価方法であったといえる。
による生徒評価,生徒自己評価
「SS Ⅱ」;評価結果を評価項目別に文章表記で行った。本
を元に担当教諭がカウンセリン
校教員の中には評価項目に対する評価結果に妥当性の見出
グを行い,人間性など従来行わ
せない記述があった。こういったことから、評価に関する
れてこなかった資質の評価方法
途中での研修が十分ではなかったと思われる。
の開発を行った。
⑮教職員の ・SSH事業を通して研 5名の発表者とそれを支援する 【方法】アンケート
夏期集中講座の準備などの中、論文書き、発表準備であっ
学会・研究 究実践した内容を、全国 先生方が各地へ出かけていただ 【視点】教師自身の力量を高めることができたか。 た。今までの SSH 事業の中で研究したことを校外の研究
会における 的な学会、研究会に研究 いた。日本理化学協会全国理科 大変そう思う 4
あまり思わない 2
者の方たちに評価いただく機会として必要であろう。評点
研究報告の 報告や研究論文を発表す 教育大会(東京 )、日本数学教 そう思う
3
思わない
1
は目標には達しなかったが、それは個々の発表者のなれな
発表を奨励 ることによって、事業成 育学会(長野市 )、日本理科教 で評点3.1以上が目標
い 発 表 に 対 す る 自 信のなさを反映しているのかもしれな
する。
果を公表するとともに評 育学会(鳴門市」)
い。発表内容 に大変反響が あったと か生徒の論文や発表指
価を受ける。
導に参考になったなどの意見をいただいた。
⑯先進校視 ・他の SSH 校の研究発表 各SSH実施校の研究大会に参 【方法】自己報告
主に東海地方を中心に現在7校の研究大会に参加した。
察・情報交 会に参加し SSH 事業に関 加し、実施内容を見聞きし、先 【視点】各校の実施内容を見ることにより、本校 各訪問者がそれぞれ聞いてきた実施内容や形態をまとめ、
換
する見識を広め本校の事 生方と意見を交換しあう。
の
実施内容をより客観的な視点で自己評 情報を共有している。各校の特徴やねらいを知ることによ
業の客観性の高い自己評
価で
きるようになったか。
り 、 本 校 の 実 施 内 容 に つ い て 広 い 視 野 か ら よ り客 観的 な 自
価の基準をもつ。
己評価を行えるようになった。
⑰授業公開 ・教員、保護者への授業 授業公開、研究発表会において、 【方法】スケジュール、アンケート
第6回 SSH 授業公開を実施し、同時に SSH 関係科目以外
の実施・ホ 公開を行い、意見をもら 他校の教員、本校の保護者、中 【視点】公開の回数、見学者アンケート
のすべての科目の授業公開も実施した。
ー ム ペ ー ジ う。
学 校 の 教 員 ・ 保護者から意見を 【基準】・授業公開の回数 2回が目標
第7回の SSH 授業公開は2月10日に実施予定。
の作 成
もら っ た 。
・アンケート回収 来場者の50%以上
ア ン ケー ト の 回 収 率 は 以 下 のよ う に なっ た 。
< 参 考 資 料 > 第 6 回 全 校 の 授 業 公 開 に 対 す る ア ン 第6 回 5 5/ 5 8
95%
ケート
本 校 の 授業 に つ い て
本 校 の 授業 に つ い て
よい
5 36 %
よい
5 まあまあよい
4
まあまあよい
4 21%
普通
3 少し改善の余地ある2
普通
3 33%
改 善 の 必要 が 大 き い
1
少し 改 善の 余 地 が ある 2
8%
改善の必要が大きい
1
2%
- 68 -
日紫喜
3.4
3.7
林
川喜田
林
3.0
松岡泰
小谷
2.8
林
林
2
回
杉山
勝
95
%
- 69 -
状
現
る
な
と
題
課
い
ね
ら
の
業
事
H
S
S
業
学
習
者
を
第
一
義
的
な
価
値
提
供
手
と
す
る
事
業
【課題となる現状】
・保護者は、不況下、少
子化の中で自分の子供だ
けは不自由な生活をして
ほしくない。そのために
学歴を求めている。
・生徒は十分な教育環境
の中にあるが自分にとっ
て最適な指導を求めてい
るが受け身的な姿勢にあ
る。
生徒と保護者のニーズ
事
業
実
施
の
た
め
の
資
源
究評
価
活
動
日本社会のニーズ
【課題となる現状】
・日本経済はバブル崩壊
以降の構造不況にあり、
科学、技術の基礎研究か
らのボトムアップが求め
られている。
・日本の高校生は米、韓、
中に比べ夢が小さく、科
学技術を通して社会に貢
教
献する姿勢が弱い。
(「 四日市高校における 育
SSH事業の取り組み」) 研と
保護者生徒への提供価値
・充実した理数系学力を
つける。
・大学、大学院における
実社会の体験通して豊か
な心を育む。
日本社会への提供価値
【目指す姿】
・未来を担う科学技術系
人材を育てることをねら
いとして理数系教育の充
実を図り、
「科学への夢」
「科学を楽しむ心」をは
ぐくみ生徒の個性と能力
を一層伸ばしていくこと
を目指す。
・実施報告書を通して研
究の成果を社会へ還元す
る。
四日市高校
SSH 事業のねらい
事
価値
提供
の相
手
【 教 職 員 数 】全日制 73 名 数学、理科・職員 19 名(通信を含む)
【卒業生・同窓生】多くの同窓生を輩出しており、組織化できれば大きな人的資源となる。
下線部は今年度特に推進した事業である。
( 8) 支 援 を 受 け た 大 【名 古 屋 大 学】工学研究科、生命農学研究科、情報科学研究科、多元数理科学研究科、の支援を受けた。
学 、 研 究 機 関 、 企 業 【 三 重 大 学 】生物資源学部、工学部、教育学部の支援を受けた。
の状況
【静岡理工科大学】テキストの作成について相談した。
【 企 業 】運営指導委員として中部電力、三菱化学から協力をいただいた。
【 研 究 施 設 】 県科学技術振興センターの協力を得た。
( 7 ) 四 日 市高 校 の 状 況
⑬教科SSの教材開発・会議
⇒カリキュラム開発委員会を毎週火曜日に実施した。
⑭教科SSの学習評価方法の開発 ⇒数学・理科の教員で毎回授業の前に企画検討会を開いた。
⑮学会・研究発表会の奨励 日本理科教育会、全国理科教育大会、日本数学教育学会で5名の教員が研究発表した。
。
⑯先進校視察・情報交換 ⇒他の SSH 研究開発校の研究発表会に参加して情報交換会を行った(12月現在7校 )
○「現代数理科学概論」のテキストを作成し配布、教科書会社からも評価を受けた。
〔831,984〕
( 6)事業内容に対する ⑰授業公開の実施・HPの公開 ⇒ 授業公開を2回実施し、教職員、保護者から評価を受けた。
(7月 2月実施)
客 観 性 を高 め る 。
⑱「運営指導委員会」における外部評価の実施 ⇒7月、2 月に研究大会を見てもらい 3 月に事業評価を実施。
⑲実施報告書の公開
⇒3月
〔1,261,450〕
( 5)SSH事業を通し
て、教員の力量を高
めるとともに、成果
を公表する。
( 4) 科 学 の 活 動 を 通 し
て、望ましい人間関
係を育み、豊かな心
を 育 て る。
(3)論理的思考力
独創性・創造性の育
成
( 2) 数 学 、 理 科 、 情 報
を中心とする学際的
な領域における「確
かな学力」を育成す
る。
研究開発の軸が「SS Ⅰ」に移ったことに
よ り 教 科 内容に関する討議の量は減っ
た。全国の教育系学会で5名の教員が研
究発表をした。
外部アセスメント評価の導入
事業目標を達成するためのアクティビティに
ついては、多様であり体系化されており有意
義な事業が実施されており、生徒の自主的・
主体的な活動も行われており全体的には良好
に行われているといえる。今後、フィールド
ワークや講義部分などの浸透度について調査
し、講義のレベルや2学年における興味・関
心に対応した事業の提供が望まれる
多面的かつ数値目標を挙げて取り組まれてお
り 、 事 業評価の客観性は高い。今後、数値化
できない部分を生徒の感想で分析するなど、
評価段階を増やすなどの精度を高めることや
突っ込んだ解析が必要である。
個々の担当者がアンケートと観察に基づき多
面的かつ客観的に捉えられ、事業改善に向け
た解析がなされている。学会への職員の参加
は、自己評価は低いが参加だけでも有意義な
ことで論文提出はもっと高く評価してもよい。
生徒・保護者・ PTA 等の外からの評価や上司
からの評価も導入するとよい。
教員チームによる情報交換が意欲的であり、
力量が高まっていることが伝わってくる。し
か し 、 個 々 の 教 員 の 力 量 差 、 意 識 の 差 、 SSH
担当外の先生からの意見や評価と SSH 外への
影響を知りたい。
B
評価
大学や企業との関係が良好であり、よく活用
されていると思う。事業の持続性を考えて新
しい協力機関・機構の提案が必要なのではな
いか。校内協力体制の強化が望まれる。また
県教委・教育センター等の協力の実績を示し
てほしい。
【資源の活用度】
■校内協力体制、外部の協力が得られているか。
B
評価
【事業で得た情報の活用度】
■教員同士の情報交換や情報公開は、適切になさ
れているか。
A
評価
■自己評価報告書の結果(別紙)に同意できるか。
B
評価
【各事業の評価に対するアセスメント】
■各事業の評価資料は適切であるか。
A
評価
【事業計画の正当性】
■事業の整合性 事業目標を達成するための事業
が行われているか。
テ
ム
【アセスメント評価】(運営指導委員)
自己評価に対し、運営指導委員が(A 評価を引き上げ
るべき B;概ね同意 C;評価を引き下げるべき)の
意思表示をし、アドバイスをする。
ス
B
評価
授 業 公開 は 全校 的 な取り組みになってい
る。大学の社会連携システムが整ったこ
と に より 、 昨年度 よりもスムーズに行う
ことができている。
B
評価
事業目標に照らして適切であると思われる。
科学情報システム(文献検索システム)を体
験させるような予算をつけてはどうか。
(7)職員の協力を得る努力がなされているか。学校全体
の取り組みになっているか。
(8)大学や研究機関の協力が得られているか。その努力
がなされているか。
■予算の配分は適切か。
A
評価
(5)情報が共有化されているか。
(6)外部の公開はなされているか。
〕内は概算決算)
S S H 事 業 の 構 造
評 価 シ
(〔
事業 評 価 資 料( 本 校 自 己 評価 )
目標 達 成 の た め の手 段 ( 具体 的 戦 略 ; 事 業 計 画 )
評価は、 0.1 刻みの1~4点とし 、(A 大変良い
四日市高校教員によるカリキ 高大連携(企業)による学 第一線の研究者や先端技術 (その他の手段)
ュラム開発(理数融合型の授 習内容の開発
との出会い(研究発表の実 クラブ活動、フィールドワーク等(科学 B よい Cふつう D 良くない E 大変良くな
業 と 探 求 ・ 研 究 型 の 科 学 実 (大学・企業の研究室を訪 際に触れモチベーションを 系クラブ活動の育成と宿泊研修) い)とし、( 3)以降は抽象的でよいが、評価根拠を示す。
問し未来の自分の姿を描く) 高める)
験)
①夏期集中講座
今年度は適切な学会が見あ ②フィールドワーク
(1)興味・関心を広げることができたか。
2年、SSHクラブ生に たらなかったので実施しな
2年生とクラブ生が Spring-8,生
対 し て 8 講 座 を 実 施 ( 名 古 かった。
命誌科学館(大阪)などで研修し
評価
アンケートでは「そう思う」が主流にな
た。
B
っ て おり 概 ね事 業 の目 的 を 達す る こと が
〔558,984〕
屋大学工学研究科、生命農
で き たが 、 2年 次 においては興味分野が
学研究科、情報科学研究科)。
③推薦図書の指導
評点
昨年同様、午前中の講義は
科学関係の図書の購入〔約 40〕
絞 ら れて き てお り 、その分野以外の興味
難しかったが午後の実習は
冊の図書を購入し、図書館でSS
が 薄 くな っ ている 。興味ある講座への選
生き生きとしていた。事前
Hコーナーに追加公開。SSHコ
3.1 択参加が効果的かもしれないが、興味を
ーナーの貸出率は貸し出し中の図
「広げる」アプローチが不足していたの
学 習 を 4 時 間 実施 した 。
〔1,903,325 〕
書のうち〔4.9〕%であった。
では な い か 。
〔147,000〕
④ 科目 「 現代 数 理科 学概 論 」の 授 業実施
⑥SSHクラブの指導
(2)数学、理科、情報に関する学力の育成ができたか。
(積分と科学)
S S H 数学クラブが指導を受
数学理科融合を開発し系統的な授業資料
け、日本数学コンクールで2名(優
評価
2年生は「 SS Ⅰ」におけるレポート作成
を作成し授業を実施した。(16時間)
(優秀
A
については、上級生の様子から学び、基礎
秀賞・奨励賞)を受賞した。
賞の生徒は昨年度名古屋大学理学
評点
的なスキルを身につけている 。「現代数理
テキストを作成し公表した。
⑤「SS Ⅰ」の授業実施
部の先生に指導を受けた)
科学概論」においては、 96%の生徒が学力
〔175,200〕
3.2 がついたと感じており、数学や理科の学力
科学の研究や発表のプロセスに必要なス
キルを育成する SS Ⅰの授業(25時間)
は高くなってきている。
を実施した。SS Ⅰの系統化の見通しを得
〔2,904,242〕
た。
⑦「SSⅡ」授業実施
( 3)論理的思考力や独創性・創造性が育成されている
名古屋大学・三重大学の7研究室にお願
か。
いして、研究とレポート指導をしていただ
評価
3年生の研究実践の学習「SS Ⅱ」におい
いた。
⑧レポート発表会とポスターセッションの
B
て、生徒たちの自己評価においては研究
取り組み
に対して総合的な実践が「ややできる」
生徒の運営によって、3年生はSSⅡレ
評点
程度と感じているが、各大学の指導教官
ポート発表会・ポスターセッション(7月)
からは半数程度の生徒は「できるように
を実施した。2年生は中間発表会(2月)
3.1 なった」と評価していただいた。
を行った。2時間×2日間
〔6,062,041〕
⑨ 琉 球 大 学 瀬 底 実 験 所 に お ⑩ 特別 講 演
⑪全国交流会への参加
(4)望ましい人間関係と豊かな心育むことができたか。
ける海洋生物実習
中村修二教授を招聘し青
全国SSH生徒発表会にポスタ
2 年 生 の 修 学 旅 行 中 に 琉 球 色 発 光 ダ イ オ ー ド に 関 し て ーセッション、口頭発表で参加し、
大 学 瀬 底 実 験 所 で 海 洋 生 物 研 究 に 取 り 組 ん だ 姿 勢を聞 全国の生徒と交流した。口頭発表
中村教授の講演に対しては 80%以上の生
評価
に 関 す る 研 修 を 行 い 、 生 徒 い た。
でJST理事長賞を獲た。
徒 が 興 味 を 持 っ て 聴 い て お り ,,著名な研
は海の美しさ、大切さに感
〔107,850〕
⑫ 他 校 と の 生 徒 の 交流
究 者 への 憧 れが 見 られた。また、全国交
動した。
松阪高校研究発表会(2月)
B
流 会 等で も ポス タ ーセッションで積極的
に2年生が参加した。
に研究について話をする様子が見られ
〔98,200〕
〔320,130〕
た。
四 日 市 高 校 に お け る
( 1) 科 学 へ の 興 味 関 心
を 育 成 し 、「 科 学 へ の
夢 」 を 育む 。
事業目標
SSH 事業評価シート)
三重県方式の学校自己評価システムを利用した四日市高校SSH事業自己評価
四日市高校 SSH 事業の評価(H17
5章
研究紀要
三重県立四日市高校におけるスーパーサイエンスハイスクール事業の現状
-3年次を迎えたSSH事業の成果と課題-
教諭
林
眞司
教頭
HAYASHI Shinnji
【
要
約
阿部幸夫
教諭
ABE Yukio
倉内賦左夫
KURAUCHI Fusao
講師
小谷大介
KOTANI Daisuke
】
本校は平成15年度より、スーパーサイエンスハイスクール(以下 SSH )事業を実施している。初年度より事業目標を①
科学への夢を育む,②理数系の確かな学力を育成する,③論理的な思考力を育成する,④科学の活動を通して望ましい人間
関係と豊かな心を育む
の4項目に定めて、名古屋大学や三重大学などとの高大連携による種々の事業や、数学と理科を融
合させた新しいカリキュラム開発に取り組んできた。科目「スーパーサイエンスⅠ」と「現代数理科学概論」を開発し、科
学技術系人材の育成を目指した学力の育成や豊かな心の醸成に関するいくつかの実証的なデータ得ることができた。
1
( 2) 科学技術教育の抱える課題と本校のSSH
はじめに
本校は、平成 15 年 4 月、文部科学省より SSH 事業の指
ア
20世紀後半の価値観の変遷
定を受け、研究開発に取り組んでいる。現在、完成年度の
国際社会における現在の日本の地位を、 20 世紀後半の科
3年目を迎えている。1年次から、20世紀後半の科学教
学技術、経済情勢、教育制度という3つの視点から見てみ
育の課題を明らかにしながら、 SSH 事業のねらいを実現す
よう。 1960 年代には科学技術が日本の高度成長の牽引役を
るために様々な事業を実施してきた。本論においては、各
果たした。高度成長期を支えた科学技術の基礎研究は、第
年度の研究概要と成果、今後の科学技術教育への課題につ
2次世界大戦中から引き継がれたものであり、この基礎研
いて報告する。
究が企業に公開されて工業への応用的な研究が進んだ。ま
た、日本に「もの」がなく、豊かな生活への志向としての
2
電化製品の需要が大きかったことも高度成長を支え、多く
SSH 事業について
( 1 ) SSH 事業の経緯
の労働力需要を生んだ。進学を主とする高等学校では、進
平成 13 年 9 月 25 日付で文部省は、平成 14 年度概算要求の
路希望は大学工学部が主流となり、教育政策上、質の良い
ために 、「平成 13 年度事業評価について(概要 )」という報
労働者を産業界に供給するための高度な普通教育が行われ
道発表を行った。これは、文部省の所管する行政分野全体
た。
の実績評価を行うとともに、重点課題を打ち出し、今後の
い ま な ぜ SSH事 業 か
達成効果や達成目標を示したものである。 SSH 事業の構想
1960年 代 高 度 成 長 期
☆ 生 活 向 上 の た め の 需 要 → 質 の 高 い 労 働 力
„ 1 9 7 0 年 代 オ イ ル シ ョ ッ ク ・ド ル シ ョ ッ ク
☆ 学 歴 志 向 、第 2次 ベ ビ ー ブ ー ム → 普 通 科
„ 1980年 代 バ ブ ル に よ る 好 況
☆ 商 社 、証 券 系 の 人 気 → 文 高 理 低
„ 1990年 代 バ ブ ル 崩 壊 とデ フレ不 況
☆ 価 値 を 生 み 出 す の は 、「も の 作 り 」か ら
„ 21世 紀 科 学 技 術 教 育 か ら の 見 直 し
は、この報告書に「21世紀教育新生プラン関連」として
„
「国公私トップ30(世界最高水準の大学づくりプログラ
ム )」とともに新規事業として打ち出された。翌、平成 14
年 1 月 15 日付けで文部科学省初等中等教育局ならびに科学
技術・学術政策局から各都道府県に「 SSH 教育研究開発実
施希望調査」が通知された。
文 部 科 学 省 に よ る と 、 SSH 事 業 の目 的 は 、「 理数 系 教 育
を重点的に実施することにより理数系教育の改善に資する 」
こ と で あ る 。 そ の ね ら い は 、「 未 来 を 担 う 科 学 技 術 系 人 材
高度成長の陰りが決定的となったのが 、オイルショック 、
の育成」であり、その具体的な方法は、以下のように定め
ドルショックの 1970 年代である。この時期には商社の隆盛
られた。
《SSH校における取り組み》
時期で、大学生の就職人気は製造業よりも流通業・サービ
①理科・数学に重点を置いたカリキュラムの開発
ス業に向かった。教育の方に目を向けると共通一次が始ま
②大学・研究機関等との効果的な連携の研究
っ た 。 こ の 時 期 の 特 色 の ひ と つ は 、「 や す く 仕 入 れ て 別 の
③論理的思考力、独創性や創造性等を
場 所 で 高 く 売 る 」 と い う 流 通 の 特 徴 が 、「 も の 作 り 」 に よ
高める指導方法の研究
④各種コンテストへの積極的な参加など、
科学クラブ充実
る付加価値ではないことに注目したい。もう一つは、大学
生の学業目的が優良企業への就職による終身雇用で、技術
開発や社会貢献が上位になかったことである。
さ らに、 1990 年 代 はバブルの 時代といわ れた 。「もの」
⑤第一線で活躍している研究者等の交流、
最先端技術との出会い
を動かすことすらもせず、プレミアだけで値段がつり上げ
られた。やがて、バブルの崩壊 。「失われた 10 年」と呼ん
でいるが、本当の価値に目を向けていなかったという反省
がなされ、もう一度「もの作り」によって価値を生み出す
- 70 -
ことを見直さなければならない時代がきているのである。
か。このように本校に立地条件を強みとして、応用的、実
イ
学的な未来を高校生に見せることによって、科学技術の未
今日の日本の高校生の夢
ここに、 1999 年の(財)日本青少年研究所が調査した日
来への夢を持たせたいと考えた。
・中・韓・米の高校生に対する「 21 世紀の夢に関する調査 」
がある。将来の夢はどのようなものか、人生の目的などを
3
尋 ね た 結 果 で あ る 。 各 回 答 項 目 に つ い て 、「 と て も そ う 思
( 1)平成15年度の事業内容
平成15年度の状況
う」~「全くそう思わない」の4段階方式となっている。
本校の SSH 事業の構造は、事業対象を学習者と教員に分
つぎのグラフは各回答に5~2点の点数を配し、平均をし
け、学習者に対する事業目標を①科学への夢を育む,②理
たものである。
数系の確かな学力を育成する,③論理的な思考力を育成す
る,④科学の活動を通して望ましい人間関係と豊かな心を
4 カ国 高 校 生 の 夢
育む
社会的地位
5
事業内容に対する客観性を高める,ことを目標とし、先進
4.5
校の視察、外部評価を導入するシステム開発を行った。
4
社会的貢献
の4項目に定めて、次表に掲げる事業を計画した。
後者に対しては、①事業を通して教員の力量を高める,②
また、各事業の実施後生徒にアンケートを実施し、各事業
円満な家庭
3.5
日本
中国
韓国
米国
3
2.5
2
科学の発見
の目標に対して成果と課題を知る資料を得た。
対象生徒は、平成15年度入学生で募集に応じた67名
である。
H15年度四日市高校におけるSSH事業
お金持ち
事業目標
①科学への夢
す てきな異性
事業内容
・夏期集中講座
・学会体験
・科学関係図書の充実
②確かな学力
・SSH科目「現代数理科学概論」
どの国の高校生もノーベル賞等への意欲は薄い。韓国は、
③論理的思考力
・レポート発表会とポスターセッション
「家庭円満」は低いが「科学の発見」は高い。米国は 、「科
④豊かな心
・夏期宿泊研修「海洋生物科学実習」
「科学の発見」に関しては4カ国とも低い水準にあり、
・秋季宿泊研修「数学セミナー」
学 の 発 見 」 は 低 い が 、「 社 会 へ の 貢 献 」 や 「 社 会 的 に 高 い
・講演「医の倫理と生命倫理」
地位」などほとんど高い水準にあることがわかる。このレ
ーダーチャートを見ると日本のグラフが最も内側にあり、
( 2)平成15年度の成果と課題
他の国に比べて高校生の夢が小さいことがわかる。わが国
様々な事業に対して生徒アンケートを実施し、各事業目
が 、21世紀に国際社会の中で確固たる地位を占めるため 、
標に対して以下のような成果と課題が見られた。
もっと科学技術に興味関心を持ち、その未来に夢が持てる
ア
教育が必要である
ウ
科学への夢を育む取り組み
夏 期 集 中 講 座 に 対 す る 評 価 は 大 変 好 評 で あ っ た 。「 科 学
学習テーマの設定
へ の 興 味 関 心 が 広 が っ た か 」 と い う 質 問 に 、「 か な り 広 が
四日市市は三重県の北部にあり、中京地区に隣接し、交
っ た 」「 少 し 広 が っ た 」 と 答 え た 生 徒 は 9 7 % に 上 っ た 。
通の便が良く、古くは窯業を中心とした商業都市として、
高校側の担当者が大学の担当者とメール交換をしながら、
戦後は石油化学コンビナートを中心とした化学工業都市と
支援していただいた大学の研究室が独自資料を準備してい
して発展してきた。今日では、半導体、液晶などの先端技
ただいたことが良かったように思う。
術やベンチャー企業も進出し、人材豊かな北部サイエンス
学会体験では、英語で行われる発表、パワーポイントの
シティーの中核都市となっている 。古来より蓄積された「 も
発表とポスターセッションを学んできた。英語での発表の
の作り」の技術と大学・企業の研究者の頭脳という資源を
内容はわからないものの、表現力の豊かな発表者に感心し
活用した SSH 事業を計画したいと考えた。
たり、ポスターの作り方などに学ぶものが多かったようで
学習テーマを「生命と科学技術」に選んだ 。「生命 」「新
素 材 」「 メ カ ト ロ ニ ク ス 」 の 3 領 域 を コ ア と し て 組 み 合 わ
ある。3月、本校で行われた研究発表会では、その影響が
見られ、役に立っていたことがわかった。
せると、その学際分野として「生体内物質」や「マイクロ
平成 16 年 4 月に平成 15 年度のSSH授業に関する総合
的なアンケート調査を行った結果、多くの生徒が科学技術
学習テーマのデザイン 「生命と科学技術」
への興味関心を広げていたことがわかった。
イ
生命
確かな学力を育成する取り組み
本 校 が 、 最 も 重 点 を 置 い て い る の は 、「 理 科 ・ 数 学 に 重
機能保障メカ
生体内新物質
メカトロニクス
点を置いたカリキュラム開発 」である 。教育課程の中に「 ス
ーパーサイエンス」という教科を位置づけ、 将来の日本を
新素材
・マイクロ素材
支える科学技術系の人材を育成するためには 、数学は数学 、
理科は理科という形の知識の蓄積ではなく、 科学的な認識
マイクロロボット
と数学的な処理技術を流れとして学習することや新しい現
ロボット」などが考えられ、さらに応用面として医学を通
象を記述するための新たな数学分野を発展的に学習するこ
して国際社会への貢献へつなげることができるのではない
- 71 -
とによって、より高次での「確かな学力」を身につけるこ
のなかから限定してしまう傾向があるようだ。今日の社会
とが必要 であると考えた。平成15年度においては、9月
において必要とされる学際的な知識や技能が求められてい
以降、特に重点的にカリキュラム開発委員会で取り組み、
ることをどのように生徒に伝えればよいかという課題が残
理科の内容を学習活動の導入やまとめ、発展に組み入れる
った。
ことにより、数学を学ぶ必要性やおもしろさを学ぶことが
オ
成果の公表
11月、2月、3月に3回授業公開を行った。
できるようにした。ただ、時間数が少ないため、数学の単
元からいくつかをピックアップし生徒の反応を研究した。
11月と2月の授業公開は、現代数理科学概論の授業とス
そ れ で も 、「 微 分 ・ 積 分 」 は 数 学 の 学 習 順 序 か ら は 難 し い
ーパーサイエンスⅠ( SS Ⅰ)の実験の授業を見ていただい
分野と思われるが、1年生を対象としての授業でも工夫次
た。3月の授業公開は生徒の研究発表を見ていただいた。
現代数理科学概論の学際的な視点での新しい試みに対し
第では、十分理解できることが実証された。
て 、出席者の賛同が得られた 。生徒研究発表では「 話す力 」
「表現力」に重きを置いて生徒を指導した結果、3月の生
指数
徒の研究発表会では、プレゼンテーション力の大きな進歩
対数
が見られた。
ベクトル
三角関数①
4
平成16年度の状況
三角関数②
(1)
平成16年度の事業内容
平成16年度においても、 SSH 事業がねらいとする4つ
微分積分①
の分野での取り組みを軸として事業を展開した。実施した
微分積分②
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
事業は以下の表に示した。対象生徒は前年から継続してい
よく理解できた
まあ理解できた
る平成15年度入学生43名と入学時に募集して編成した
あまり理解できなかった
理解できなかった
平成16年度入学生SSHクラス23名である。
H16年度四日市高校におけるSSH事業
ウ
論理的な思考力を育成する取り組み
事業目標
SSH 事 業 の 第 3 番 目 の ね ら い で ある 、「 論理 的 思 考 力 を
事業内容
①科学への夢
・夏期集中講座(継続) ・学会体験(継続)
・科学関係図書の充実(縮小)
②確かな学力
・SSH科目「現代数理科学概論」(系統化)
・SSH科目「スーパーサイエンスⅠⅡ」(立ち上げ)
③論理的思考力
・レポート発表会とポスターセッション(継続)
④豊かな心
・フィールドワーク
2年 カミオカンデと核融合研究所
1年 野辺山電波観測所と筑波研究都市
育成する」ために、実験レポートを課した。このレポート
は既成の様式に記入するものだけではなく、罫紙にみずか
ら作成するものを要求したが3分の1の生徒が提出できず 、
われわれも指導に苦慮した。次年度にレポートを書く機会
が多くなるので今後の課題とされた。しかし、パワーポイ
ントによるプレゼンテーションでは質の高いものが多くあ
り、今日の生徒の情報機器の扱いになれている様子が見ら
れた。
( 2)平成16年度の取り組み経過
エ
ア
望ましい人間関係と豊かな心を育む取り組み
科学への夢を育む取り組み
こ の 分 野 の 事 業 に お い て は 、「 海 洋 生 物 学 実 習 」 と 「 講
夏期集中講座は、今年度も名古屋大学工学研究科、生命
演会(生命倫理と医の倫理 )」を実施した。前者は SSH 受
農学研究科、情報科学研究科にお願いし、1年、2年を対
講生を対象に計画したが、自由参加としたため希望者が少
象に11講座を開いていただいた。形式は昨年同様、午前
なく、生物部(2,3年生)も加えた。後者は全生徒を対
講義、午後実習であるが、生徒一人が数学・物理・化学・
象とし、講師先生と予め打ち合わせ、文科系の生徒も興味
生物に関係の深い分野から3分野受講できる仕組みにした 。
関心を持てる内容としたが、1,2学年の生徒にとって興
生徒の反応は、昨年同様大変良く、事後アンケートでは
味関心を持てたという生徒はあまり多くなかった。聞き取
「 関 心 が 高 ま っ た か 」「 得 る も の が 多 か っ た か 」 と い う 項
り等から生徒の反応を推測すると 、「医学部の先生の講演」
目の質問に対して、どの講座も90%程度の生徒が「大変
というだけで、医学に進む生徒にとって関係のある話であ
そう思う」または「そう思う」と答えている。今年度の講
ると思いこむ生徒が半数ほどいた 。「海洋生物学実習」に
座を通して、科学の発見や他の社会分野での貢献に対する
姿勢を聞いたところ、1年生は44%、2年生は83%の
② 興 味 ・ 関 心 が 持 て た
が「科学技術者として社会貢献をしたい」と答えており、
1 年
1 2 0
何らかの形での社会貢献については1,2年生ともに90
2 年
1 1 0 1 0 9
1 0 8
1 0 1
3 年
1 0 0
%以上の生徒が「そう思う」と答えている。また科学に対
8 2
7 9
8 0
6 3
人 数
6 4
5 7
6 0
5 1
する発見についても90%以上の生徒が意欲を持っている
5 3
4 6
4 0
2 9
夏季集中講座全体の平均
「科 学 に対 す る 関 心 の 育 成 に役 立 った」
2 7
1 7
2 0
一年
0
2 1 %
2 4 %
3 2 %
1 6 %
7 %
1
2
3
4
5
二年
1関心が持てなかった
~
3普通
~
5関心が持てた
しても、最初は生物関係の生徒が行くもの思ったようであ
る。すなわち、早くから生徒は自分の興味関心を狭い知識
- 72 -
0%
20%
大変そう思う
40%
そう思う
60%
あま り思 わ ない
80%
100%
思わない
ーマで課題研究を行った。その研究成果を2月18日に行
夏 季 集 中 講 座 全 体 を通 して
「自 分 も 科 学 の 発 見 に 貢 献 した い」
われた第5回の研究発表会でポスターセッションと口頭発
表という形で発表した。この研究と発表準備の中で生徒は
一年
今までのSSⅠでの様々な経験、学会体験等を通じて成長
しており、多くの参加者の前で自信を持って自分たちが行
二年
0%
20%
大変 そう思 う
40%
そう思う
った研究を熱心に説明をしていた。研究と発表のスキルに
60%
80%
100%
あま り思 わ な い
思わない
おいてはある程度期待していた成果は得られたと判断して
いる。
エ
のでこの姿勢を伸ばしていきたいと考えている。
イ
望ましい人間関係と豊かな心を育む取り組み
平 成 1 6 年 度 の フ ィ ー ル ド ワ ー ク は 、「 核 融 合 科 学 研 究
確かな学力を育成する取り組み
平成15年度には理科と数学を関連づけて学ぶ事業と実
所・スーパーカミオカンデ」と研修旅行(修学旅行)で琉
験や実習を中心に行い発表も含む科学研究のスキルを養う
球大学瀬底実験所を訪問し1日「珊瑚実習」を実施した。
目的の事業とがまだはっきりした位置づけがなされていな
前者では、浜松ホトニクスの研究者に同行してもらい、講
かった。平成16年度から前者の事業を「現代数理科学概
演を聞き、小柴昌俊先生のノーベル賞を支えた陰の技術者
論 」、後者を「スーパーサイエンスⅠ( SS Ⅰ )」という独立
の偉業に触れた。後者においては、魚類とサンゴの生態等
した科目と位置づけ取り組むこととなった。
について講義で学び、実習で現状を観察した。事後アンケ
平成15年度の実践で特に数学と理科の関連で効果が高
ートでは、研修内容が志望する進路先と関係があるかとい
いと見られた「指数・対数 」「微分・積分 」「三角関数」に
う 問 い に 対 し て 「 大 変 そ う 思 う 」「 そ う 思 う 」 と 答 え た 生
ついて、平成16年度入学生を系統的なテキストを開発し
徒は14%であったが、人間像を描くのに役立ったかとい
ながら 、そのテキストを使って授業を実施し 、生徒の理解 、
う 内 容 の 問 い に 対 し て 「 大 変 そ う 思 う 」「 そ う 思 う 」 と 答
学力の伸長について検証を行った。1年間この現代数理科
えた生徒は30%であり、興味・関心の幅を広げることが
学 概 論 を 受 講 し た 生 徒 の ア ン ケ ー ト 結 果 に よ る と 、「 理 科
できた。
・数学の総合した力がついたか」 という問に96%以上の
核融合・スーパーカミオカンデでの研修を通して 社会分野での貢献
生徒が「そう思う」と答えている。また数学などの成績に
①→②(①の設問であまり思わない、思わない、分からないと答えた者のみ回答
も成果がはっきり出ており、現代数理科学概論は理系生徒
の学力向上に有効な科目であると考えている。
①科学者、技術者として
平成15年度入学生の生徒に対して、科目「スーパーサ
イエンスⅠ」の授業を4期に分けて実施した。概要は下表
②何らかの形で
のようになっている。
H16年度スーパーサイエンスⅠの日程(2年生)詳細は別紙
授業時期
第1期(4/9~6/3)
実験の実際
・各生徒が物理、化学、生物の各分野の代表
的な実験を経験し、データを取る。
第2期(6/16~7/9)
実験データの
処理技術
・第1期で得たデータを用いて、Excelの実習
を行う。
・パワーポイント実習
第3期(7/28~10/21)
フィールドワーク など
・フィールドワーク
核融合研究所とカミオカンデ
珊瑚の学習(琉球大学)
・夏期集中講座
名古屋大学にて7講座
・第3期までの内容についてレポートを作成す
ることで研究報告の書式について学習する。
第4期(10/28~12/16)
テーマ実験と
研究レポートの作成
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100
%
そう思う あまり思わない 思わない 分からない
事業内容
大変そう思う
平成16年度は、日程調整がつかず全校の生徒対象のS
SH講演会を企画することが出来なかった。
オ
成果の公表
平成16年度には11月と2月に研究大会・研究授業公
開を2回行った。2月18日は研究大会として遠山敦子元
文部科学大臣を迎え「将来の科学技術を担う人材の育成に
ついて」と題した記念講演をしていただいた。その後「現
代数理科学概論」の公開授業と平成15年度入学生の研究
発表をポスターセッションと口頭発表で行った。多くの参
加者を迎え 、生徒にとって張り合いのある発表会となった 。
・各生徒が物理、化学、生物の各分野の分か
れてテーマ実験を行い、レポートとして発表す
る。
( 3)平成16年度までの課題について
事業に着手した平成15年度は 、大学との話し合いや JST
小グループに分けた生徒を指導する各教員がテーマに合
への申請等についても不慣れであったが、平成16年度は
わせて担当しており、視点や課題認識、書式等について細
いくつかの不備があるにせよ事業展開としては軌道に乗っ
かく指導している。しかし、生徒の中には「自分で考えて
た。
す る の が 大 変 」「 時 間 が か か り い や な 実 験 が あ っ た 」 と い
大学と連携した夏期集中講座においては、多くの講座を
う反応と「自分で考え工夫したりすることが楽しく興味が
準備して自由選択した平成15年度よりも、参加する側、
持てた 」「能動的になれたのが良かった」の2極化した。
受け入れる側ともに効率良く実施できるよう配慮した。平
ま た 、「 レ ポ ー ト を 書 く の が 大 変 」 と い う 回 答 も 多 く 、 平
成16年度より、名古屋大学が学部の前期試験を8月前倒
素、人に説明する文章を書き慣れていないという状況が明
になり、8月下旬に大学院入試があることから、四日市高
らかになった。
校だけが多くの日程をいただくことは難しい状況になった 。
ウ
今後、高校と大学が連携したこのようなプログラムはSS
論理的な思考力を育成する取り組み
SSⅠの第4期に、理科・数学・情報の分野をそれぞれ
H事業だけでなく拡大しつつあるが、独立行政法人となっ
選択し、さらに2~3名の小グループで、自ら選択したテ
た大学の現場を考えると1高校1大学の関係だけは解決し
- 73 -
間続けて行い、その中で得られたデータをコンピュータ処
ていくことではできないな課題と感じた。
また、事業2年次を迎え、豊富なプログラムが生徒の負
理しレポートに仕上げるスタイルをとった。これは、自分
担になってきていると感じた。2学年の生徒にとっては部
のデータを情報処理の教材としてレポート作成につなげる
活動の中心となってきたり秋以降には進路に向けての取り
ことで目的意識を持つことができる利点がある。そして平
組みを迎え、レポートを書いたり、午後4時からの授業に
成16年度のSSⅠにおいて問題となった各実験ごとのレ
負担感を感じている生徒もいた。 SSH 事業のねらいとする
ポートを作成する負担を少なくし、昨年度より数は少ない
未来を担う科学技術者に育成を考える上で今日の高校生を
が内容のあるレポート指導ができた。後期においては、生
取り巻く生活環境についての考察も平成17年度に向けて
徒達が希望する分野を選択させ物理、化学、生物、数学、
解決していかなければならないと感じた。
情報の5つに分かれ、校内で基礎実験実習を行った。各分
野は状況に応じて様々なやり方をしている。校内で基礎実
5.平成17年度の現状
験を継続したり、またすでにSSⅡでのテーマや大学の指
( 1 )平成17年度の事業内容
導教官が決まっているので、指導教官の指導の下で校内で
SSH事業3年目を迎え 、2年間試行してきた事を継続 、
の研究を始めている分野もある。
ウ
発展させる形で、引き続き4つの目標で以下の事業を行っ
論理的思考力を育成する取り組み
た。対象生徒は引き続き活動している平成15年度入学生
平成15年度入学生は、2年時の11月に本校SSHの
15名、平成16年度入学SSHクラス21名、平成17
最終プログラムであるスーパーサイエンスⅡ(SSⅡ)を
年度入学SSHクラブ員8名である。
行うかどうかを選択させた。43名の内15名が希望して
SSⅡの科目を行った。SSⅡは大学の先生の指導の下に
H 17 年度四日市高校におけるSSH事業
事業目標
①科学への夢
②確かな学力
③論理的思考力
④豊かな心
研究テーマをいただき、校内あるいは大学に出向き研究を
事業内容
・夏期集中講座
するもので、15名が9班に別れ、名古屋大学、三重大学
・フィールドワーク
・科学関係図書の充実
の先生の下で研究した。その成果は7月8日の第6回研究
・科目「SSⅠ 」・現代数理科学概論
発表会に於いて発表した。 生徒達は大学生や院生と同じ環
・SSクラブ
境の下、大学の先生方に直接ご指導をしていただくという
・科目「SSⅡ」
普通の高校生なら経験できない貴重な経験をさせていただ
・レポート発表の取り組み
いた。どの班の生徒もその恵まれた状況を精一杯活用して
・修学旅行
多くのものを身につけたと思われる。指導教官からも生徒
・SSH講演会
たちの意欲的な取り組みが評価された。
・他校との交流
科学の研究に於いて論理的思考力が重要であることは論
を待たない。しかし、論理的思考力を評価することは大変
( 2)平成17年度の取り組みの経過
ア
難しい。本校では初年度より SSH 事業による生徒の変容を
科学への夢を育む取り組み
今年度も、夏期集中講座は名古屋大学工学研究科、生命
評価するために、評価方法の研究も行ってきた。レポート
農学研究科、情報科学研究科にお願いし、8講座で実施し
作成するプロセスに注目し、論理性や創造性を評価する試
ていただいた。昨年お願いした先生がほとんどで、準備段
みを実施しているが、 SSH 事業の中でももっとも難しい研
階ではスムーズに進んだ。対象は2年SSH選択生と1年
究課題である。
SSHクラブ生8名であった。講座が昨年と重なっている
エ
望ましい人間関係と豊かな心を育てる取り組み
ため、昨年とは違う講座を選択させた。結果は過去2年と
今年度は、青色発光ダイオードの発明で有名な、カリフ
同 じ よ う に 大 変 良 い 反 応 で 、「 関 心 の 育 成 に 役 立 っ た か 」
ォルニア大学サンタバーバラ校の中村修二教授を招き、全
という質問に対して、各講座とも90%以上の生徒が「と
校生徒と希望された保護者を対象にSSH講演会を行った 。
てもそう思う 」、「 そう思う 」 と答えてきている 。 また 、「 科
中村教授は、夢を大きく持ち自分の好きなことを見付けそ
学の発見に貢献したいか」という問に対しても80%以上
れに全力を注ぎ有意義な人生にして欲しいという熱いメッ
が「とてもそう思う 」、「そう思う」と答えている。この事
セージを生徒に送っていただき、生徒達は大きなインパク
業としては、科学に興味を持たせ、科学に貢献したいとい
トをうけたようであった。講演後、SSH選択生の希望者
う意欲を醸成させるという目的から効果があったものと思
との懇談を持っていただき、そこでも科学技術者としての
う。この意欲を今後に繋げていくことが大切である。
生き方などの話をしていただき、有意義であった。
イ
確かな学力を育成する取り組み
0%
現代数理科学概論の研究は、平成16年度はSSHクラ
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90% 100%
1
2
②講話内容はわかりやすかったですか。
スに年間を通して授業を実施して行い、各単元ごとにテキ
3
③講演は興味深いものでしたか。
4
ストを作ってきた。平成17年度にそのテキストを「現代
④今後の学習・進路などを考える
上での参考になりましたか。
数理科学概論」という冊子にまとめた。その冊子を今後広
く配布して多くの方からご意見をいただきたいと思ってい
1とても興味深い
る。また一部未完成な所を補い、平成18年度に完成させ
る予定である。
10%
~
5
3 普通
~
5ほとんど興味がない
平成15年度のSSH講演会では、すべての人にとって
その人生の中での重要な問題である死生観について分かり
平成16年度入学生に対し平成16年度実施したスーパ
やすくお話しいただいた。ところが、生徒は医学部の先生
ーサイエンスⅠ(SSⅠ)という理科の基礎的な力を養う
のお話で自分の進路に直接関わらない内容と受け止めたの
実験中心の科目を、今年度は前期、後期という区切りで行
か、関心が我々が期待したほど高くはなかったというデー
った。前期においては、物理、化学、生物をそれぞれ3週
タが残った。平成17年度の SSH 講演会では、詳しく調べ
- 74 -
るため、アンケートに希望進路も記入させた。その結果が
6.3年間の成果と課題
以下の図である。 今年度の中村教授の講演は、生徒の興味
本校の SSH 事 業の特徴は、科目「 SS Ⅰ」と科目「現代
関心は大きかったが、希望進路の違いにより関心の度合い
数理科学概論 」のカリキュラム開発である 。 科目「 SS Ⅰ 」
に差が出ていた。
は夏期集中講座、研修旅行、海洋実習などを通じて最新の
科学技術に接すること、そして本物に触れさせることで科
今後の学習・進路などを考える上での参考になったか
学への夢を育ませるとと共に、校内においては各分野の基
工学
礎実験を行い、更に自分の研究したことを発表するという
とてもそう思う
ややそう思う
どちらともいえない
あまりそう思わない
そう思わない
他・理系
法・経済
ところまで、科学技術研究に必要な基礎的なスキルを身に
つけさせることを目指す。 SS Ⅰの「学習指導要領案」を昨
年度の報告書に発表した。今年度も昨年度のものを一部修
他・文系
正して掲載した。来年度は、科学技術への夢を育み基礎的
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
なスキルを身につけることを目的としたこの「SSⅠ」と
フィールドワークは平成16年度入学生とSSHクラブ
生(1年8名)を対象に、7月に1泊2日で関西方面の研
いう科目の「テキスト」を作成し提案しようと計画してい
る。
究 施 設 を 訪 問 し た 。 兵 庫 県 に あ る 「 ス プ リ ン グ ー 8 」「 明
SS Ⅰを基礎にして、大学の先生の指導の下に大学レベル
石 天 文 台 」 大 阪 の 「 生 命 誌 研 究 館 」「 大 阪 大 学 プ ラ ズ マ エ
の研究を体験させていただいたのが「 SS Ⅱ」のプログラム
ネルギー研究センター」を訪問したが、興味深かったかと
である 。今年度7月8日に平成15年度入学生の「 SSⅡ 」
いうアンケートの問に、それぞれのところで70~90%
研究発表会を行った。そして、物理分野の研究の一つを8
が「とてもそう思う 」、「そう思う」と答えている。10月
月のSSH全国交流会で発表し、科学技術振興機構理事長
には平成16年度入学生は沖縄修学旅行中の1日、昨年と
賞をいただくという成果を上げた。
同様、琉球大学瀬底実験所に於いて海洋生物科学実習をさ
もう1つの「現代数理科学概論」は、数学・理科を融合
せていただいた。多くの生徒が珊瑚の海や豊かな生物に興
させて学ぶ科目として計画した。現在数学と理科は独立し
味や感動を示していた。しかし、こまかくアンケートを見
た別の教科として学んでいる。しかし、数学と理科は本来
ると自分の興味分野や進路目標と違うのでそれほど興味を
密接な関係を持って発展してきたものである。それらを具
持てなかったといった解答もあった。この時期は3年次の
体的に関連させて学ばせることにより、科学技術の研究に
科目登録の時期で、進路に関わり自分の興味を持つ分野を
とって数学の重要性を実感させることは、科学技術を目指
はっきり意識する時期である。フィールドワークを実施す
す生徒にとって大変有意義な学習と考えた。その結果は期
る時期についてもより効果がある時期を考えるという必要
待 し た も の と な っ て い る 。「 生 徒 の 変 容 」 の 稿 で 示 す が 、
があることがわかった。
平成16年度入学生の入学当初の数学の成績と現在を比べ
オ
ると格段に進歩している。今年度、一部未完成ではあるが
成果の公表
平成17年度は7月と2月の2回研究授業公開を行った 。
「現代数理科学概論」のテキストを作った。それに対する
7月8日の研究授業公開は平成15年入学生が本校SSH
ご意見をもとに、来年度改めてテキストを完成させたいと
の最後のプログラムであるスーパーサイエンスⅡ( SSⅡ )
思っている。
の研究成果を発表する場とした。平成17年1月から半年
7.終わりに
この3年間、本校 SSH 事業は上記に報告したように、4
間大学の先生のご指導のもと行ってきた研究成果を論文と
して形にしレビュー集にまとめた。また口頭での発表を行
つの柱の下に様々な事業を計画し、実施してきた。
った。内容とともに発表技術も大学の先生方のご指導もあ
その事業は名古屋大学、三重大学をはじめ多くの大学や研
り、大変優れたものとなり、参加者の方々からも高い評価
究機関のご協力を得て行うことができたもので、改めて感
をいただいた。 また、今年度は2年半にわたり本校SSH
謝したい。
事業で研究してきたことを、担当した5名の職員が3つの
本校は SSH 事業を始めるに当たって3年間の事業という
教育学会で発表する活動も行い、外部からのご意見、ご批
ことで、平成15年度生は試行の学年、平成16年度生は
評をいただいた。以下の表は発表した学会と表題である。
検証の学年と位置づけ、平成16年度生の卒業までの4年
SSH 指導教員研究発表論文
1. 学ぶ目的を軸にした総合型科目の提案
スーパーサイエンス事業におけるカリキュラム開発
日本理化学協会 全国理科教育大会( 8 / 4 ・ 5 東京大学)
2. 融合型科目を視野に入れた理科実験の指導
科学のダニエル電池で起電力を求める実験
日本理化学協会 全国理科教育大会( 8 / 4 ・ 5 東京大学)
3. 数学の導入としての物理実験
-
実験「音を見よう」~指数・対数の導入 -
日本理化学協会 全国理科教育大会( 8 / 4・ 5 東京大学)
4.数学・理科を融合した科目開発 .
間の計画を立てて行ってきた。来年度は平成16年度生の
3学年の年であり、1年の事業延長を希望している。来年
度の課題は現在進行している平成16年度生のSSⅡの遂
行とともに、3年間の事業のまとめとして上記2冊の「テ
キスト」作成、そして開発したカリキュラムを今後どのよ
うに生かしていくかを研究することだと考えている。
参考文献
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/13/09/010924.htm
日本数学教育学会( 8 / 5 ・ 6 長野市)
5. 観点別評価を柱とした科学技術系人材育成のための
学習評価方法の開発
http://www.obunsha.co.jp/info/html/todays9906.htm
日本理科教育学会 ( 8 / 4 ・ 5 鳴門市)
- 75 -
確かな学力の育成を目指したカリキュラム開発とその評価(1)
-理数融合科目「現代数理科学概論」の開発-
三重県立四日市高等学校
教 諭
松 岡
泰 之
MATSUOKA Yasuyuki
【
要
約
教 諭
桜 井
景 子
教 頭
SAKURAI Keiko
阿 部
幸 夫
ABE Yukio
教 諭
大 川
暢 彦
OKAWA Nobuhiko
】
科目「現代数理科学概論」の開発も3年目となった。初年度の導入部分に絞ったスポット的な開発に始まり、昨年度は科
学と数学が融合した身近な具体例を組み込み、「実験」→「理論(講義)」→「データ解析」という流れを意識して「指数・
対数」「三角比・力学」「三角関数・波動 」「微分」の各単元を生徒達が科学・数学を学ぶ意味をより深く実感できるように
系統化した。本年度は、将来の科学者を育てるカリキュラムにおいて、微分積分は高校低学年で学ぶべきという信念のもと
に「積分」の単元の開発を行った。最後の微分方程式の扱いにおいては、生徒は自然現象を記述する言葉としての数学の存
在を感じてくれたようであり、この科目を学ぶ意味が生徒に理解されてきたと思われる。現在は生物、化学分野の具体例を
入れながら統計の章を入れ込み、テキストの完成を目指している。この科目開発を通して、将来の科学者を育てるためには
理科、数学の教科の垣根を取り払い、理数教員がチームを組んで議論しながら考えていく形が有効であることがわかった。
また、アンケートの結果、96%の生徒が理科・数学の総合的な学力がついたと答えおり、生徒の系統的・発展的理解につな
がっているものと思われる。
1.はじめに
(2)昨年度までの授業実践
本校では H15 年度 SSH 指定初年度から,理科・数学を
初年度の一昨年はH15年度入学生を対象に通常カリキ
中心とする学際的な基礎学力を育成するカリキュラム開発
ュラムとは別枠で、指数・対数・ベクトル・三角関数・微
として、科目「現代数理科学概論」の研究開発を行ってき
分積分の導入部分を中心に8回の講義を行った。終了後の
た。導入部分のスポット的な開発を行った初年度の実践と、
アンケート結果より、生徒達は実験→講義の流れを持つ展
各単元の系統化を行った昨年度の実践に続き、本年度は「積
開の内容に対しては高い関心を持ち、理解度が上がること
分」の単元の開発を行った。その授業実践と評価について
がわかった。
そこで昨年度は、平成16年度入学生に対して、特に科
報告する。
学と数学の関連度合いが高い「指数・対数」、
「三角関数」、
2.現代数理科学概論の3年間の授業実践
「微分」について、前年度の内容の再検討・再配置をした
(1)「現代数理科学概論」創設のねらい
系統的なテキスト開発を試みた。
高等学校の理科・数学において、例えば、速度の概念を
科学と数学が融合している身近な具体例を題材として取
学習するに際して物理では微分は使わないが、数学では微
り上げ、それを「実験」→「理論(講義 )」→「データ解
分を用いて定義する等、学習内容に重複する項目がありな
析(コンピュータを用いて )」という流れを持たせた展開
がら、各教科独自に授業が行われている現状があった。そ
の中に系統的に組み込むことを意識して授業をおこなっ
こで新しい科目「現代数理科学概論」を創設して、様々な
た。以下が具体的な実践内容である。
概念が生まれてきた過程を、生徒が自然な形でより効率的
に理解できるように、現行の理科・数学の枠を取り外し組
【指数】宇宙の大きさなどの大きな数から原子の大きさな
み立て直そうと考えた。
どの小さな数までを表すのに便利であることを導入とし
科目「現代数理科学概論」創設にあたりそのねらいを次
た。音階や、放射性物質の半減期が指数関数で表されるこ
の2点に置いた。
とを具体例として組み入れ、実際にオシロスコープを用い
・自然現象を数式化することによって、より論理的に自然
て音階の周波数の測定し、そのデータをコンピュータで解
の仕組みについて理解することができ、更にまた、数学が
析して指数・対数関数であることを理解させた。
いかに自然な形で自然科学の中に組み込まれ活用されてい
るかを知る。
【対数】小さな数から大きな数までの「ものさし」として
・一つの概念が生まれる必然性を感じることが内発的動機
対数を導入した 。「星の明るさ(ポグソンの式 )」「星まで
となって、科学・数学を、ともにより深く理解することが
の距離」
「恒星の直径の求め方」を対数を使って演習した。
できるようになる。
またpHの実験で対数との関係に触れた。また、マグニチ
ュードの比とエネルギーの関係、両対数グラフも扱った。
- 76 -
(3)平成17年度の授業実践と評価
ア
授業実践
【積分】
歴史的な順序も考えて区分求積法を導入とした。不定積
分、定積分、微分と積分の関係、面積を扱ったあと、変位
・速度・加速度、仕事・位置エネルギーなどの物理量は微
分・積分を使うことによってより簡単に表すことができる
ことを理解させた。最後に現行の教科書にはない微分方程
式を扱い、単振動、核分裂、バクテリアの増殖率、物体の
温度変化の問題を微分方程式を用いて解かせ、自然科学と
数学の関連性を理解させた。また、コンデンサーの放電時
の時間と電圧の関係をオシロスコープ等を用いて測定し、
理論予測値と比較させた。
(この項目は公開授業で
行い、より良い方法を論
議 す る こ と が で き た 。)
【三角比・力学】校舎の高さを測る実習において、見上げ
る角度と校舎の高さが比例関係でないことを気づかせるこ
とを導入とした。地球の大きさや、金星が地球から見える
角度、地球から太陽までの距離、自転による地面の速さ、
イ
力学における力のつりあいなどを例題として扱った。
本年度の実践の評価
生徒へのアンケート結果を紹介する。
【三角関数・波動】電気や磁気、音や光や波など三角関数
積分について区分求積を導入としたことについては、
「積
と深く結びついているものが身近にあることを導入とし
分がどういう考えで生まれてきたのかがわかった」という
た。波を三角関数を用いて表し、定常波の合成を理解させ
感想が多かった。微分方程式まで扱ったことに対しては、
た。
「数学の神髄を感じた」、「高校で扱わない内容だったので
興味が持てた」、
「物理と一緒になっているのが実感できた」
【微分】斜面を台車が滑り落ちる実験で、台車の運動の様
という感想がある一方で、難しかったという思いを持った
子をデータとしてとり、平均速度、瞬間速度とは何を意味
者もいるようである。
するのかを考えさせることを導入とした。瞬間速度と微分
また、コンデンサーと電気曲線の実験と理論を学ぶ講義
係数の関係、導関数とグラフの変化との関係、波動の式の
を組み合わせたことにについては、「興味関心が持てた」、
微分、電気エネルギーの最大値問題などを扱った。また、
「実験が理論の理解の助けになった」という生徒が半数以
ライフセイバーの最短時間問題を具体例に取り上げフェル
上見られた。このような実験を入れることによって、積分、
マーの原理を考えさせた。
微分方程式の理解が深まったようであるが、コンデンサー
の働きや電圧・電流の関係等について基礎から押さえてい
なこと、いろいろな実験機器を使用したため使いこなせな
かったことなどにより、よくわからなかったと答えた生徒
もいる。物理の授業との関連性も考慮し、実施時期や内容
について考えていく必要がある。
コンデンサーと電気曲線
興味・関心
理解の助け
0%
- 77 -
20%
40%
60%
80%
100%
本年度の内容について 、「理解できたと思うか 」、「論理
(2)科学と数学の融合について
性の育成に役立ったか 」「興味深かったか」という質問に
理科、特に物理の授業の展開において、数学は欠かすこ
対しては、積分の項目、微分方程式の両項目とも、理解で
とのできない道具である。最先端を行く物理学者は、数学
きた、論理がわかった、興味を持てたという割合がとても
にも秀でた能力を備えていることは古今東西変わらない事
高いことがわかる。
実である。しかし、現在の高等学校においては、数学と物
理はほとんど融合されず、生徒の頭の中では全く異なるも
現代数理科学概論
のとして理解されている。さらに、教育課程も互いの関係
を全く考えずに組み立てられており、生徒の深い理解を妨
理解
げている。
本校では、SSHの指定を受けた初年度より、本来一体
積分
微分方程式
論理
化したものであるはずの科学と数学の関係を再構築し、生
徒の系統的・発展的理解を生み出すべく新しいカリキュラ
興味
ムの開発に取り組んできた。この授業の対象になった現在
0%
20%
40%
60%
80%
2学年の23名は、程度の差はあるものの、数学と科学を
100%
一体のものと考え、例えば物理の内容を表すのに、微分・
積分を抵抗なく使いこなしている。アンケートの結果を見
結論として、微分積分は高校1年生からでも十分理解で
ても理科・数学の総合的な学力がついたと感じている生徒
き、整関数でとめずに三角関数、指数関数、対数関数まで
が多い。まだまだ開発途上の取り組みであり、十分な内容
扱い、物理・生物・化学の内容も考えながら体系を組み直
には至っていないが、その有用性は明らかだと考える。
すことが有効であることがわかった。十分な時間がかけら
現在は生物、化学分野の具体例を入れながら統計の章を
れなかったという反省はあるが、自然現象を微分方程式で
入れ込み、テキストの完成を目指している。今後、各方面
表してそれを解くという過程を経験することによって、今
でさらに研究が続けられ、発展していくことを願っている。
まで学んだ数学が、科学の中で大きな意味を持ち、生き生
理科・数学の総合した学力がついた
きと活躍していることを感じさせることができたのではな
いかと思う。
大変そう思う+そう思う
あまり思わない
思わない
0%
3.理数融合科目開発における成果
(1)チームとしてのカリキュラム開発について
カリキュラム開発に当たっては、数学・理科の教員が互
いの意思疎通を図り、それぞれの授業のあり方を見直すこ
とが必須である。本校では、数学・理科の教員でチームを
作り、定期的にアイディアを持ち寄って相談し、テキスト
の開発に取り組んだ。その過程を通じて、双方の科学に対
するアプローチの仕方の差異を認識し、互いに見識を深め
ることができた。ただ、時間的な制約も大きく、理科的な
内容の授業と数学的な内容の授業を別の教員が担当してお
り、真の「融合科目」の実現には程遠い状態である。
- 78 -
20%
40%
60%
80%
100%
- 79 -
確かな学力の育成を目指したカリキュラム開発とその評価(2)
-「スーパーサイエンスI」系統化への取り組みと改善-
教 諭
倉 内 賦 左 夫
KURAUCHI Fusao
教 諭
山 口 雅 弘
YAMAGUCHI Masahiro
教 諭
日 紫 喜 正 展
HISHIKI Masanobu
【 要 約 】
本校では、SSH 事業のねらいを達成するため、数学と理科融合を考えた教科「スーパーサイエンス」のカリキュラム開
発を行っている。その1つの科目として平成16年度から取り組んでいる「スーパーサイエンスⅠ」(以下SSⅠ)の研究
開発の改善を行った。基礎実験の実験材料を厳選し、レポート作成、プレゼンテーションを行う能力を高め、研究者として
のスキルが育成できた。創造性の育成については一部課題は残ったが、研修講座、レビュー作成、研究発表を通して科学技
術者としてのモラルに気づき、育成できていることが判った。科学を担う者として、自ら研究、開発した理論やものに対す
る権利への認識と責任感についても着実に芽生えていると判断でき、科学を担う者を育成するために必要な資質「研究技法」
「分析力」「発信力」「科学技術者としてのモラル」がそろうための科目が確立できた。
1
はじめに
本校では平成15年度 SSH 指定初年度から、「確かな学
力」の育成をめざして、理科・数学を中心とする学際的な
基礎学力を育成するカリキュラム開発に取り組んできた。
今日の学習指導要領は、系統的な学習を想定しており、
当該科目の内容を系統的にもれなく効率よく学習すること
ができるように構成されている。そのため、教科書に扱わ
れている理科実験では知識の体系の中で、知識や理解の確
認や定着を助ける意味合いが強い。課題研究ですら、指導
時間不足の中では、本文の実験に近い取り扱いしかされて
いないのが現状ではないだろうか 。「将来の科学技術を担
う人材の育成」をねらいとした科学教育に資する科目の内
容とは何かを考えたとき、科目ごとの体系化だけでなく、
科目の横断と科学技術を担う者としてのスキルの学習がで
きる科目が必要なのではないかと考えた。
本論では、今年度開発に取り組んだ科目「スーパーサイ
エンスⅠ(SSⅠ )」の目標と取扱、昨年度の課題から本
年度改善し、実践した成果と評価、来年度に向けた課題に
ついて報告する。
2
科目「スーパーサイエンスⅠ(SSⅠ)」について
(1)目標について
科目「SSⅠ」では、生徒が将来、科学技術者として社
会で活躍するためには、自然の様々な現象から、何らかの
触発を受け、それらの現象を様々な自然科学の知識や手法
を駆使して探求し、そこから社会に有益な価値を還元して
いくというプロセスを体験していくことを想定している。
そのため目標としては 、「研究から発表に至るプロセス」
の学習、
「科学を研究する者としてのスキル」の習得とし、
論理的思考力、独創性、創造性を養うこととした。
(2)内容について
(1)探求方法としての実験
(2)研究方法としての情報処理
(3)研究発表の技術
(4)研究活動と社会
「学習指導要領(案)2内容」については上記の4部構成
とした。(1)においては、物理・化学・生物の各分野の基
礎実験を通して、様々な実験の手法を学び、科学技術研究
者の探求方法を習得する。この際、各分野の関連性に気づ
かせるとともに、研究活動に対する興味・関心を育てる。
( 2)においては、実験結果等を分析するスキルとして、デ
ータ分析の統計的技術を習得することが必要であると考え
た。( 3)においては、研究の結果や提案を報告する際には
実験結果の考察を行い、レポートにまとめ、ポスターセッ
ションや情報機器を利用したプレゼンテーションや「話す」
「訊く」などのスキルが必要であると考えている。また、
(4)では、研究機関を訪問することによって、実際の現場
の姿を知り、最先端の技術にふれることで、より一層の興
味や意欲を高めるとともに、第一線の研究者の生き方在り
方を学ぶことで、責任や自覚を養うことも不可欠である考
えた。
(3)内容の取り扱いについて
「学習指導要領(案)2内容(1)探求方法」としての実験
において 、「(ア)物理的な手法による化学実験 」、「(イ)物理
化学的な手法による生物実験 」、「(ウ)生物的な手法による
実験」を設定した。物理分野で習う法則が化学分野にも適
用でき、測定方法を工夫することができる実験を取り入れ
る。生物分野での使用頻度が高い物質の化学的構造・特性
を考え、測定できる実験教材を扱うことで、学際的な考え
方を育みたいと考えているからである。ここで扱う実験教
材の数は最低各分野1つでもよい。科目「SSⅠ」の趣旨
は、系統的に網羅することではなくプロセスの体験である
ので、適切な教材を選定することが必要である。
「( 2)研究方法としての情報処理」においては、データ
処理の技法だけでなく、誤差に対する見方やデータの信頼
性を高めるという分析力の重要性を考えている。実験から
得られたデータを処理するだけでなく、実験から理論を導
くことができないだろうか。理論を実証するためにシミュ
レーションを使い、実験結果を予測し、その後再実験を行
い、理論を確証する。この分析のスキルを充実させたいと
考えている。
「( 3)研究発表の技術」においては、実験レポートや研
究発表用レビューの作成、測定データのグラフ作成などを
情報機器を用いて作成することでスキルアップを求める。
それとともに、研究発表会の企画や司会、運営といった活
動を通して、メンバーとのディスカッションをする機会を
多く持ち、仲間との協力により豊かな人間関係を培いたい
と考えている。総合的な学習の時間や特別活動が期待する
ところを実現できると考えている。
「(4)研究活動と社会」については 、「(ア)研究機関にお
ける研修講座」として大学・研究機関等と連携し、フィー
ルドワークを行い、科学に対する興味・関心を高めるとと
もに、最先端技術開発への憧れ、研究へ取り組む姿勢を学
び取ってほしいと考える。「(イ)研究成果と社会」では、将
来、研究者として新しい発見や新しい製品を世の中に送り
だしたとき、その社会的な影響や害毒に対しても責任ある
- 79 -
立場を取れるよう、学習の質を高めておくことが科学技術
者としての「豊かな心」であると考えた。この教材として
は、研究者の権利と義務として特許やPL法について、研
究成果と社会として原子物理学とマンハッタン計画、戦争
の歴史やサリン事件などの教材が考えられる。
3
実践成果と評価
SSⅠの目標を実現するため、今年度は次表のように時
期を前期、後期に分けて授業を実施した。
内
容
配当時間数
前期
【基礎実験】物理・化学・生物の実 6回
験を行い、測定データを収集する。 (18 時間)
【 Excel 等 の実習】各実験が終了 3回
後、統計学の学習、測定データの (10 時間)
処理を学習し、レポートを作成す
る。
後期
【研究発表の技術】研究報告とレ 6回
ビューの作成、ポスターセッショ (18 時間)
ンの企画と運営の仕方を学習する。
【テーマ実験とセミナー】数学、 7回
物理、化学、生物の各分野に分か (22 時間)
れてテーマ実験を行う。
【研究活動と社会】科学を担う者 1回
として、自ら研究・開発した理論 (2 時間)
に対する権利や責任について学ぶ。
回数はカリキュラム開発における本校実施時間
(
)内は想定配当時間数
(1)探求方法としての実験
前期は学際的な考え方を育みたいという観点から、物理
・生物・化学の基礎実験を3回ずつ合計9回行った。昨年
度、実験後データ処理をするまでに時間を置きすぎ、レポ
ート作成が遅れてしまったという反省があり、今年度は実
験2回、Excel 実習1回の形式で行った。実験教材は昨年
度「実験装置の工夫、測定条件を変えることができ、論理
性が高まった」という内容の実験を選び、改良を加えた。
物理実験では「摩擦力を調べる」を行った。各班で研究テ
電力の測定」を行った。各班でまず、どのような条件を変
化させれば、起電力が変化するかを考えさせ、それをどう
やって測定すればよいかを考えさせた。電子の移動のしや
すさ、溶液の濃度差を生じさせれば起電力が変化すると予
測し、濃淡電池に近い条件を考える班もあった。
実験装置を工夫でき、条件を変えることができる実験を
取り入れたことで論理的思考力が高められたと考えられ
る。
(2)研究方法としての情報処理
各実験が終了したあとすぐに実験測定データを自分自身
で処理し、解析できるように日程を調節したため、今年度
はレポート提出時期が一時期に集中することはなく、レポ
ートの作成はスムーズに進んだ。単に情報処理としての授
業でなく、自分自身で測定したデータを使ってデータ処理
を行うことにより当事者感覚を持たせることができ、デー
タ処理能力のレベルアップにつながったと思われる。ただ、
予想していたデータと違う結果が出たとき、再実験する時
間がなく、科目「SSⅠ」の新しい課題が見つかった。
(3)研究発表の技術
後期において研究発表の技術を向上させるため、9月に
PowerPoint を使用して校内研究発表会を行った。発表内容
はSSⅠ基礎実験、宿泊研修講座、夏期集中講座から自分
でテーマを設定した。プレゼンテーションの企画と運営、
司会進行は生徒にゆだねた。プレゼンテーションで使用す
るツールは発表する内容をきちんと吟味し、効果的に使用
する必要がある。科学系のプレゼンテーションでは「動き」
を見せると、より理解が深まる発表となることが感じられ
た。表1はその発表会で「液状化現象について」発表した
グループの評価結果である。評価基準は「1.言葉がはっ
表1 液状化現象について
1言葉
100%
80%
6効果的
60%
2聞いている人
40%
20%
0%
5表現
3主張
4時間
生徒評価
ーマを設定し、実験方法を決め、実験を繰り返して工夫改
善を図るという流れを生徒が学べたことが良かった。ビデ
オカメラとパソコンを有効に使用でき、物体の運動が調べ
られ、摩擦力の知識を深めることができた。生物実験では
「光を使った定量実験」を行った。光吸光特性を利用し、
物質を定量する方法の基礎を学び、物理的手法を用いて、
データ処理を行うことができた。昨年に比べてレポート作
成をスムーズに行うことができ、またSSⅡの実験への良
いアプローチになった。化学実験では「ダニエル電池の起
教員評価
きり聞き取れた」、
「2.聞いている人のほうを見ていた」、
「3.主張したいことがはっきりと分かった」、「4.発表
時間が守られていた 」、「5.分かりやすい表現だった 」、
「6.効果的な利用だった」の6項目とした。このプレゼ
ンテーションではビデオや映像がうまく使用され高い評価
となった。また、原稿を読んでしまったグループも多く、
「2.聞いている人のほうを見ていた」という項目の評価
は各グループとも低い結果となっており、「話す」「訊く」
という点で苦手な生徒が多いことが判った。全体を通して
は、プレゼンテーションの重要性、他の人への説明の難し
さ、より高いレベルに自分自身が突き進もうとする積極性
が養われたと思われる。仲間との協力を通して、お互いを
尊重し相談する姿も見受けられた。
研究報告とレビューの作成として、12月に「研究発表
- 80 -
会に向けて」という講義を行った。研究とは、疑問が浮か
び、仮説を考え、その仮説を確かめる実験を行う。そのた
めの実験を企画し、得られた結果から仮説が実証できたか
どうかを考察する。想定外の結果であれば再考し、次回の
研究テーマを設定する、という流れを説明した。発表する
ということは、自分の研究をほかの人に聞いてもらい、意
見交換を行い、新たな見識を得られる機会であり、自分の
研究成果をきちんとレビューとしてまとめられることが重
要であることを伝えた。
テーマ実験とセミナーは前期の単元で培ったスキルを自
分独自の研究に適応する活動である。数学・物理・化学・
生物にグループ分けして、研究テーマを考え、実験・実習
を7回行った。昨年度は放課後を利用して実験を行ったが、
今年度はSSHクラスを設定することで授業形態として行
うことができた。高校で学習する内容を超える実験や、生
徒自身にとっては未知の分野を研究することになり、また、
SSⅡの実験へのアプローチとして、大学の教授に指導し
ていただくこともあり、生徒が積極的に取り組むことがで
きた。SSⅡと合わせると、1 つのテーマで半年以上かけ
て研究することになり、研究のおもしろさを知り、将来研
究者になりたいという夢を持つに至った生徒もいた 。「レ
ビュー作成と研究発表はあなたの科学に対する論理性の育
成に役立ったか」というアンケート(表2)では96%の生
徒がそう思うと答え、生徒の論理的思考力が飛躍的に向上
したと感じた 。「創造性の育成に役立ったか」というアン
ケート(表3)では100%の生徒がそう思うと答えてい
る。
味が高く、光波の屈折や反射の理解力を高めることができ
た。
「水ロケットを科学する」ではロケット作製を通して、
自分で本物のロケットを作製するイメージをふくらませて
いた 。「地震と耐震」では津波の講義、実験も行え、災害
に強い構造物を作ることが社会的に要請されていることが
強く印象づけられた 。「高分子化合物」では紫外線をを使
用して高分子ゲルが変性することがよく解り、光を利用す
ることでナノレベルの研究ができることを実感していた。
「無機化学」では蛍光体粒子を自分で作成し、励起スペク
トルや蛍光スペクトルなどの物理的特性を理解することが
できた 。「再生医療の現状と展望」では細胞の持つ特性を
理解し、医療にどのように役立たせているのかが理解でき
た。このように今年度名古屋大学で提供していただいた夏
期集中講座は学際的な視野を広げることのできる内容であ
った。
表4からも判断できるように、大学での研究成果にふれ
ることで、科学への関心の育成に役立ったと考えた生徒が
ほとんどで、学習意欲を高めることができた。
表4 関心の育成に役立ったか
情報
再生医療
とても
そう思う
そう思う
バイオテクノロジー
無機化学
あまり
思わない
思わない
高分子
地震・耐震
水ロケット
半導体レーザー
0%
20%
40%
60%
80%
100%
表2 論理性の育成に役立ったか
レビュー作成
フィールドワークとして、宿泊研修講座を行った。
SPrinng-8、明石天文科学館、生命誌研究館と大阪大学レ
ーザーエネルギー学研究センターを視察し、実際の研究現
場の姿を知り、将来科学者として物事に取り組む姿勢や最
先端技術の探求の夢を感じ取ってもらおうとした。表5か
ら判るように、科学技術者として社会分野で貢献したいと
答えた生徒は85%と高い値を示し、昨年度(79%)よ
り増加した。
大変そう思う
そう思う
あまり思わない
思わない
研究発表
0%
20%
40%
60%
80%
100%
表3 創造性の育成に役立ったか
表5 宿泊研修講座全体を通して
レビュー作成
大変そう思う
そう思う
あまり思わない
思わない
研究発表
0%
20%
40%
60%
80%
科学技術者として社会に貢献したい
何らかの形で社会に貢献したい
100%
0%
(4)研究活動と社会
「(ア)研究機関における研修講座」を実施するため、次
表のように夏期集中講座を行った。
夏期集中講座
講 座 名
物理・数学分野 「半導体レーザー」
「水ロケットを科学する」
「地震と耐震」
「Mindstorms 実習」
化学分野
「高分子化合物」
「無機化学」
生物分野
「再生医療の現状と展望」
「微生物と酵素のバイオテクノロジー」
名古屋大学工学研究科、生命農学研究科、情報科学研究
科の協力を得て、4日間で8講座を実施した。講座の形態
は午前中に講義、午後に研究室の見学、実験実習等とし、
最先端の実験をできるだけ多く体験できるように、物理・
化学・生物分野の中から1つずつ選択できるように配慮し
た 。「半導体レーザー」ではレーザー組み立てについて興
20%
40%
60%
80%
大変そう思う+そう思う あまり思わない 思わない
100%
また、修学旅行を利用して、琉球大学熱帯生物圏研究セ
ンター瀬底実験所でフィールドワークを行った。講義「ク
マノミの性転換」を聞き、性転換のシステムを確認する実
験方法の説明から生物学がどのように研究されているかを
知ることができた(表6)。講義「珊瑚と魚類の生態」から
は珊瑚礁生物の生命現象の説明と現在の地球温暖化傾向
- 81 -
表 6 大 変 そ う思 う+ そ う思 う
サ ン ゴ ・魚 類 の 生 態
サ ン ゴ と環 境
分 か りや す か っ た
興 味 深 か っ た
瀬 底 実 験 所 見 学
瀬 底 島 周 辺
フ ィー ル ド ワ ー ク
0%
20%
40%
60%
80%
100%
が、珊瑚礁生物に及ぼす影響や琉球列島における珊瑚礁生
物の現状を理解した。現在直面している珊瑚礁の破壊がど
のように進んでいるのかを知ることができ、環境問題にも
つながる良い学習であったと感じた。午後のフィールドワ
ークでは、日本で唯一観察できる珊瑚礁を直接見ることが
でき、生徒はとても感動していた。
「(イ)研究成果と社会」として、「研究者の権利と義務」
という授業を行った。21世紀の国際社会が、一層、科学
技術の恩恵に依存することが予測されるため、科学を担う
者として、自ら研究、開発した理論やものに対する権利と
責任について学ぶことは不可欠である。開発したものに対
する特許や意匠権、また、世の中に出した新製品に対する
責任としてのPL法など、科学技術社会に生きる研究者と
しての社会性を育てる内容の授業であった。
平成 15 年度生はSSⅠの過程をすでに終了しているが、
『論文作成、発表について字数や時間を守らないことにつ
いてどう思いますか』というアンケート集計を見ると、
「決
められた字数・時間で発表することは人に解りやすく説明
するうえでとても重要なことです 。」、「最低限のルール、
マナーだから守らなければならない 。」や「次に発表する
人や聴衆に対して不快感を与えるので守るべき。科学の世
界においてもフェアであるべき 。」と答えている。科学技
術者としてのモラルに気づき、育成できていることが判っ
た。また、『他の研究の成果などをクレジット(新聞・書物
・写真などに明記する著作権者・原作者などの名前)を挙げ
ずに自分の論文に入れることをどう思うか』というアンケ
ート集計からは「人の成果をあたかも自分のもののように
見せるということが醜い 。」、「研究などを行う以上、クレ
ジット元に対する敬意も必要なので、そういうことは失礼
に当たると思う 。」や「言語道断。論文作成時における当
然のマナーがなっていない 。」と特許に対する認識、研究
者としての責任感も着実に芽生えていると判断できる。
4
(3)研修講座の実施学年について
夏期集中講座では、いずれの講座も高い関心を持って参
加しており、多くの知識が習得できるという期待が伝わっ
てくる。また、最先端の技術を体験することで、自分が取
り組んでみたい研究分野を見極めることができ、興味・関
心を高めることができると思われる。しかし、宿泊研修講
座での各研究施設に対して「興味深かった」と答えた生徒
は約70%(表7)となった。2年生となり、自分が進みた
表7 宿泊研修講座 各訪問先 「興味深かった」
SPring-8
明石天文科学館
生命誌研究館
レーザーエネルギー
0%
20%
40%
大変そう思う+そう思う
60%
あまり思わない
80%
100%
思わない
いと思っている分野が確定しつつあり、各研究施設の印象
は良かったが、物理分野選択予定の生徒は生物、生物選択
予定の生徒は物理の研修施設の評価が低くなった。このこ
とから全員参加型の宿泊研修講座の実施時期をどの学年で
行うかが課題と考える。自分の進路が確定する1年次に行
う方が効果的だと思われる。明石天文科学館については興
今後の課題
(1)基礎実験レポート作成について
今年度のSSⅠの基礎実験としては測定条件をいろいろ
変えることで、生徒が工夫でき、データの収集を行うこと
ができる学際的な教材を設定することができた。レポート
作成の負担を少なくするため、教材数を3種類に厳選した
が、実験を検証し、再実験を繰り返すための時間が少なく
なってしまった。レポート作成を通して、実験の理解を深
め、文献等を自主的に調べられる機会を持ち、創造性を高
めることが大切である。教材の中で一番興味が持て、改善
点を見い出すことができると考えた教材だけでも再実験を
行い、再度レポートを作成する時間を設定することが次の
課題だと考えている。
(2)シミュレーションと予測について
情報処理において、誤差に対する見方やデータの信頼性
を高めるための技術を習得することは大切なことである
が、実験のシミュレーションをあらかじめ行い、実験デー
タの予測をたててから実験を行うことが重要ではないかと
考えた。実験結果から予測とどう違ってきたかを検証し、
理論を確証していくという方向でのコンピュータの活用方
法である。たとえば、中和反応の滴定曲線は酸・塩基の強
弱によっていろいろと変化する。シミュレーションを使え
ば、酸・塩基の組み合わせを変えることにより、pHジャ
ンプの値やグラフの形の予測ができ、その後再実験を行い、
理論の予測を確証することができる。このステップを科目
「SSⅠ」の中に取り入れることが課題だと考えている。
味が高く、四日市高校では地学関係の授業がないため、関
心が高く、授業で取り組めない内容を研修講座に取り入れ
ることも効果的だと思われる。
5
おわりに
今年度のカリキュラム開発成果として再考した学習指導
要領(案)は「スーパーサイエンスⅠ」の項に掲載した。
今日、耐震強度偽装問題や論文捏造疑惑といったことが
話題となっていることを考えると、科学や技術分野のリー
ダーにおけるマナーやコンプライアンスの欠如に疑念が投
げかけられている。このようなことから、科学を担う者を
育成するために必要な資質「研究技法」
「分析力」
「発信力」
「科学技術者としてのモラル」を育成できる科目「SSⅠ」
の重要度が増してくるのではないか。この研究成果は次年
度具体的なテキストの形で提供し、諸先生方の評価をいた
だきたいと考えている。
- 82 -
スーパーサイエンスハイスクール事業における大学・研究機関との連携について
教頭 阿部幸夫
ABE Yukio
【
要
約
教諭 岡本 亙
OKAMOTOWataru
教諭 日紫喜正展
HISHIKI Masanobu
講師 増井潔直
MASUI Kiyonao
(現在
上野高校勤務)
教諭 川喜田真也
KAWAKITA Sinya
教輸 山口雅弘
YAMAGUCHI Masahiro
】
本校は、名古屋大学および三重大学にいずれも車で40分の位置にあり、平成15年度より両大学の支援を受けて、スー
パーサイエンスハイスクール事業に着手した。平成16年度には、中部電力、浜松ホトニクスなど企業や三重県科学技術振
興センターなどの研究施設の支援も受けることができた。事業を充実したものにするためには、連携先(依頼先)の大学や
研究施設の先生とのきめ細かい情報交換が大切であることは言うまでもないが、各組織の枠組みなどの改革が要求され多く
の労力も要する。大学は独立法人化、企業は一層のCSマインドが要求され三重県の教育界は「学習者重視」の発想が求め
られている。 SSH 事業のねらいを達成するためには、カリキュラム開発というソフト面の改革の提言だけでなく、それぞ
れの校種が、その独自性を大切にしながら、未来の科学技術系人材を育成とするという価値観を共有して、社会の要請に応
えていく必要がある。
1.はじめに
スーパーサイエンスハイスクール事業のねらいの1つは
「科学への興味関心を育成し 、『科学への夢』を育む」こ
とである。その方法として、「大学や企業との連携により、
最先端の現場での研究者の姿に触れる」ことは、効果的な
手段と考えられる。また 、「大学や企業において活躍する
研究者の思いに触れる」ことは、高校生にとっては、研究
者としての未来の自分の姿を思い描き、どのような考えを
もって仕事に対峙するべきかという心を育んでくれるはず
である。連携をお願いする相手先としては、本校の立地や
進路状況を考えて、名古屋大学や三重大学、中部電力川越
火力発電所、三重県科学技術振興センター等にお願いした。
表1
三重県立四日市高等学校 SSH 事業
ね
ら
連携先大学、研究機関一覧
い
事
1年 次( 15 年 度生 )
様々な最先端の現場を訪問
し、科学技術の研究に対す
る興味関心を醸成するとと
もに 自 らの 未 来を 描 く
夏 期 集中 講 座Ⅰ
(名古屋大学工学研究科・
生命農学研究科・情報科
学研 究 科)
研究現場を体験し、科学技
術の研究に対する興味関心
を醸成するとともに、研究
者としての望ましい人間関
係を 作 る。
フ ィ ール ド ワー クⅠ
(筑波研究学園都市・日本
科学 未 来館 )
未来の科学技術者としての
「 確 かな 学 力 」を育 成 する 。
また、事業内容については、大学の研究室、研究施設や企
業の現場での講義、実習、施設見学、学会の見学等の直接
生徒の学習に資するものと、カリキュラム開発等のように
本校の職員の教育研究に対しての助言・指導といった形で
間接的に生徒や広く教育の現場に資するものとがあった。
特に、初年度の平成15年度においては、急なスケジュー
ルにもかかわらず、各大学、研究機関、企業に好意的な支
援をしていただき、かつJSTの迅速な対応で7月下旬か
らの講座が実施できた。本報告は本校で実施した SSH 各事
業のうち、大学や企業の支援と関連の深い事業について、
そのノウハウや課題を報告するものである
業 内 容 (学 年・ 大 学)
2年 次 ( 15 ・ 16 年度 生)
3 年次 ( 15 ・ 16 年度 生 SSH クラ
ブ)
夏 期 集中 講 座Ⅱ
夏 期集 中講 座 Ⅲ
( 15 ・ 16, 名古 屋 大学 工学
( 16, SSH クラ ブ 名 古屋 大
研究科・生命農学研究科・
学工学研究科・生命農学研
情報 科 学研 究 科)
究 科 ・情 報 科学 研 究科 )
フ ィ ール ド ワー ク Ⅱ
( 15, 核 融合 研究 所 ・東 京
大 学 宇宙 科 学研 究所 )
海 洋 生物 科 学実 習 Ⅱ
海 洋 生物 科 学実 習Ⅰ
( 15, 琉 球 大学 瀬底 実 験
( 三重 大 学生 物 資源 学部 )
所)
フ ィー ルド ワ ーク Ⅲ
( 16, SSH クラ ブ ス プ リン
グ -8 ・ 生 命 誌 科 学 館 ・ 大 阪
大学レーザーエネルギー
研究 セ ンタ ー )
海 洋生 物科 学 実習 Ⅲ
( 16, 琉 球 大学 瀬 底実 験所 )
数 学 セミ ナ ー
(名古屋大学多元数理科
学 研 究科 )
学 会 体験 学 習
(名古屋大学生命農学研究
科)
SSH 数学 クラ ブ 活動
(名古屋大学多元数理科
学 研 究科 )
科 目「 スー パ ーサ イ エン スⅠ 」
( 16, 三重 県 総合 教 育セ ン タ
ー ・三 重 大学 生 物資 源学 部 )
科 目「 スー パ ーサ イ エン スⅡ 」
( 15,16, 名 古 屋 大 学 工 学 研 究
科・多元数理科学研究科・
三重大学生物資源学部・工
学 部)
科 目 「ス ー パー サ イエ ンス Ⅰ 」
( 15, 三重 県 科学 技術 振 興セ ン
ター・三重県総合教育センタ
ー)
学 会 体験 学 習
( 16, 名 古屋 大学 生 命農 学
研 究 科)
企 業 見 学 ( 16 中 部 電 力 川 越 火
力 発 電所 )
科 目 「ス ー パー サ イエ ンス Ⅱ 」
( 15, 名 古 屋大 学工 学 研究 科
・多元数理科学研究科・三
重大 学 生物 資 源学 部)
第 一 腺 の 研 究 者 の 研 究 に 対 S S H 講 演 会 ( 全 学 年 名 古 SSH講演会(フィールドワー S S H 講 演 会 ( 全 学 年 カ リ フ
す る 姿 勢 を 知 り 、 研 究 者 と 屋 大 学医 学 部 勝又 義 直教 授 )
クⅡにおいて浜松ホトニク
ォルニア大サンタバーバ
して の 豊か な 心を 育 成す る 。
ス)
ラ校 中 村 修二 教 授)
( 数字 は入 学 年度 生 、ご 協 力願 った 大 学研 究 機関 )
- 83 -
この事業は、 名古屋大学工学研究科、生命農学研究科、
情報科学研究科 の協力を得て、平成15・16・17年度
に、各年度のSSH事業対象生徒(1学年、2学年)に実
施した。内容は、協力していただいた大学の複数の研究室
に、午前講義、午後実験実習という1日の学習プログラム
を組んでいただき、1年次、2年次生徒が、8月上旬に4
~6日間で10講座のうちから3~4講座という複数講座
を登録して受講する企画である。高校の教科・科目の分野
では 、(物理・数学 )(生物 )(化学)の最低でも3分野を
受講するよう指導した。内容は研究室の見学というものか
ら、四日市高校用に実験教材まで作っていただいた研究室
もあった。準備や当日の指導については大学院生がTAと
して活躍した。
講座の準備については、高校側が各講座を担当する理科、
数学教員を1人ずつ決め、生徒のレディネス状態や内容の
難易度を E-mail で担当の大学教授等と打ち合わせた。内容
が高度なときは、事前学習のために教授に来ていただいた
り、本校教員が指導した。
講座に参加した生徒アンケートの結果から見ると、生徒
は、いずれの講座も高い関心をもって参加し、多くの知識
と出会うことができて、得るものが多かったと感じている
様子がわかる。生徒は講義よりも作業的な実習に積極性を
示した。
夏期集中講座「ナノテクノロジー」(名古屋大学)
グラフ1 夏期集中講座アンケート結果
(各学年の平均 「大変そう思う」「そう思う」と答えた割合)
100%
80%
60%
40%
20%
0%
また参加したい
得るものが多
かった
人間像を描けた
創造性が育成
できた
論理性が育成
できた
知識が深まった
関心が高まった
1年
2年
海洋生物科学実習(三重大学)
グラフ2 フィールドトリップ(1年筑波、2年カミオカンデほか)
(「大変そう思う」「そう思う」と答えた割合)
1年 筑波ほか
100%
80%
60%
40%
20%
0%
2年 カミオカン
デほか
また参加したい
(2)夏期集中講座
この講座は、1泊2日、2泊3日程度の合宿形態をとる
ことによって、科学への興味感心だけで無く、科学の学習
活動を通して望ましい人間関係を育成することをねらいと
した。平成15年度は、7月下旬に 三重大学生物資源学部
の支援で 黒潮フィールドセンター をお借りして2泊3日の
「海洋生物科学実習」を実施した。磯の生物の観察やカキ、
アコヤガイの受精と発生の実験実習である。また、10月
には1泊2日で、校外研修所を借り、 名古屋大学理学部多
元数理研究科 に講師をお願いし、本校教員と一緒に「数学
セミナー」を実施した。宿泊型の講座は、生徒の希望は少
なく、平成16年度からはSSHクラスの必修講座として、
フィールドトリップ の名で最先端技術の研究施設を訪問す
る企画に変更した。
新しい発見に貢
献したい
大学からの支援を受けて実施している事業は、①夏期集
中講座(大学で行われる1日単位の講座)②宿泊研修講座
・フィールドトリップ(大学の施設を借りて実験や実習を
する講座、泊を伴う研究施設の見学 )、③研究体験学習、
④講演会(第一線の研究者に依頼し、研究者の姿勢につい
ての講話)、⑤高校教員の SSH 科目のカリキュラム開発に
対する助言 の5種類である。支援いただいてる大学や研
究機関は表1に示した。
(3)宿泊研修講座・フィールドトリップ
科学者・技術者
として貢献したい
2.本校での大学・企業・研究機関との連携の状況
(1)事業の種類
希望者が少なかった原因は 、「3日間時間が取られる」
と生徒が感じたことにあるようであった。しかし 、「海洋
生物科学実習」の場合、後日実施したアンケートでは夜光
虫の美しさに感動して「来てよかった」という反応をして
いる。今までの経験の範疇から判断できる興味にとらわれ、
「おもしろいかもしれないのでやってみよう」とは考えら
れないという生徒の実態に気がついたので、全員参加型に
変えた。すなわち、初めての体験に対して躊躇する保守的
な今日の子供の姿が浮かび上がってきたのである。
そこで、平成16年度以降は、この種の企画に研修場所
の多様性を持たせた上で 、「狭い世界での小さな満足から
巣立ちさせる」ことに重点を置き、SSH 選択生の全員参加
とした。平成16年は、1学年が 野辺山電波天文台、リニ
ア実験線 、 筑波研究学園都市 の研究施設4箇所、 未来科学
館 を訪問した。2学年は、 核融合科学研究所 と カミオカン
デ で研修した。平成17年は、 Spring-8、明石天
文台、JT生命科学館、大阪大学レーザーエネルギー学研
究センターに出かけた。
また、2学年修学旅行では、沖縄と北海道に分かれ、 SSH
選択制は沖縄を指定し、1日を 琉球大学熱帯生物圏研修セ
- 84 -
ンター瀬底実験所 で珊瑚についての講義と実習を受けて過
ごした。2学年全体では北海道コースの人気が高く、 SSH
生は行き先が拘束されたことによる不満があったが、体験
した生徒の満足度は高かった。ここでも 、「食わず嫌い」
の現在の高校生の姿が見受けられた。
今日 、「個性の重視」の方針により選択の自由を保障す
るために、学校制度や設置科目の多様性を進めている。し
かし、生徒が自らの個性に応じて選択するためには 、「選
択することができる能力」が大切であり、この能力は、多
種多様なものを体験するということが前提である。興味関
心を育成する基礎基本は、幼児時代や初等教育の自然体験
や社会体験の大切さを感じた。
(4)研究体験学習
四日市高校では、未来の科学技術系研究者としての「確
かな学力」の1つは、研究を計画・実施し、研究レポート
を書き、それを発表する能力であると考えた。この活動の
プロセスで学際的・総合的な学力つけることができると考
えた。まず、目指す姿を実際に見せ、体験させるべく、「学
会体験学習」を計画し、平成15年度は 名古屋大学生命農
学研究科 の協力で、植物ホルモンに関する国際学会と、ポ
スターセッションに参加した。16年度には、同研究科の
支援で動物細胞工学会(国際学会)と 中部電力 の協力で施
設の見学も行った。①英語でのスピーチがある短めの発表、
(フィールドトリップ
野辺山電波天文台
H16)
人数
学会体験学習(名古屋大学
②ポスターセッションを見ることができる、③若手の研究
者の学会、といった点が選定の視点になると生徒の反応か
ら考えられた。
この活動は、総合的な学習の時間のねらいとする学力も
併せて育成できる効果的なプログラムであることが分かっ
たが、高校の日程に合う時期、適切な内容の学会を探すこ
とは、難しい。ご支援いただいていた研究室の教授から本
校の計画に高いご理解とご協力をいただけたことが大きか
った。今後ともこの企画は有効であると思うが、そのため
には、 高校生が学会を見学できる道を、学会関係者と高校
教員のパイプを作ることによって、切り開いて行くことが
必要である。また、高校教員が様々な学会に会員として参
加できる制度上のバックアップや、高校教員の学問的な研
究力を育成する必要もあると思う。
(5)講演会
四日市高校 SSH 事業は、学力だけでなく「豊かな心の育
成」も未来の科学技術系人材の育成のための大きな柱とし
て位置づけている。その方法としては、大学の研究室で活
動している教授や助教授、院生たちとのふれあいや講演会
を通して、技術者や研究者の「生き方」に触れ、彼らの科
学技術への思いを通して自らの「在り方」を醸成すること
が大切であると考えた。そのため、平成15年度は、 名古
屋大学医学部 の協力を得て、全校生徒に対して「生命倫理
と医の倫理」という演題で講演を実施した。また、平成1
7年度には、 米国UCサンタバーバーラの中村修二教授 に
お願いし、PTAの方も来ていただいた。前者の企画は全
校生徒を対象としているため、興味関心が多様であること
に留意し、理数系に特化しない内容に配慮したが、 生徒の
方で SSH 講演会であり、医学部の先生が話をするというこ
とから、内容を聞く以前に「自分には関係ない話」と受け
止めてしまう生徒も少なくなかった。
「( 3)宿泊研修講座、フィールドトリップ」の結論部
分でも述べたように、「早くから目的を持たせて学ばせる
(進路を意識させることで学ぶ意欲を高める )」という指
導が、かえって子供の興味関心の幅を広げるチャンス失わ
せているのではないかと感じた。
平成16年度は、全校対象の講演会が実施できなかった
が、2学年の宿泊研修講座(「 カミオカンデ」他の訪問)
において、宿泊したホテルにカミオカンデの光電倍増管を
開発した 浜松ホトニクス の方を招聘して、講演していただ
いた。大きな成果を陰で支えた技術者の生き方を学ぶこ
H15)
グ ラ フ 3 1年 学 会 体 験 を興 味 深 い と答 え た 理 由
( 「 大 変 そ う 思 う 」 「 そ う う 思 う」 と 答 え た 2 4 名 中 人 数 )
総 人 数 26名
15
10
9
10
5
3
2
これ ら 以 外
プ レゼ ン資
料 の図 や表
が何 と な く
分 か った
質疑応答 の
盛 んさ
いた こと
発 表 が英 語
で行 わ れ て
0
(講演会のあとの座談会
- 85 -
名古屋大学医学部 H15)
たが、このような平日に1日かけた事業は後者でないと実
施しづらい。平成15年度は全クラスに SSH クラスの生徒
が広がっていたので、このような事業は公欠の扱いで対応
した。
本校は、SSH クラスの教育課程以外に普通科と国際科学
コースの2種類の教育課程を持っており、SSH クラスの生
徒は普通科および国際科学コースの両方から参加してきて
おり、進級時に継続して SSH クラスへ残るかを確認してい
る。平成15年度生の場合、入学当時67名いたが3年次
には15名であるのに対して、平成16年度生は、入学時
にクラス替えがない等の説明を詳しくすることで、当初か
ら26名であったが、3年次21名と固定している。定期
的に保護者会を開き、状況を説明してきたことが定着度が
よかったものと思う。折角、支援していただける大学に対
して、予定した事業に生徒が集まらない心配をしなければ
ならないことを考えると、SSH クラスである方が連携しや
すい。
二 年 興 味 関 心 が 持 て た
文
理
0%
10%
20%
30%
40%
5
4
50%
3
60%
2
70%
80%
90%
100%
1
三年 興味関心が持てた
文
理
0%
20%
5
40%
4
3
60%
2 1
80%
100%
80%
100%
三年 分かりやすかった
文
理
0%
20%
5
グラフ3
40%
4
3
2
60%
1
(2)事業の対象について
事業によっては、SSH クラスを対象としたもの、学校全
体を対象としたものがあってもよい。特に講演会などは
SSH 事業でないと来ていただけない一流の研究者の場合、
全校の生徒に聞かせてあげたいというのが親心がある。と
ころが、SSH 事業に対して、生徒は特別視をしているとこ
ろがあり、講演の内容よりも「SSH 事業の講演会」という
名に、内容を聞いて評価するよりも、まず聞いても分から
ないのではないかという及び腰で対峙することがある。講
演全体の反応がいまいちになって、大学からこられた先生
に失礼にならないかという思いをすることがある。お願い
する際に学校の実態をお知らせしておいたり、事前学習を
するなど工夫が必要である。反対に、SSH クラスを限定し
て対象とする講演については、はじめから興味・関心は高
く熱心に聞くことができ、講演者とともに満足がいく結果
になる。
講演会についてのアンケート
(浜松ホトニクスの講演
H16)
(3)大学入試と SSH 事業
とで、世の中を支えることの充実感を生徒に伝えようと考
えたからである。 実施後のアンケートで「科学の発見に貢
献したい 」「何らかの形で社会に貢献したい」という生徒
は参加した生徒の90%を越えた。
3
高校から見た高大連携とその課題
SSH 事業を実施するに当たり、まず大学に依頼(お願い)
に行かなければならないが、高校側の準備として、規模と
内容を明らかにして計画しなければならない。次に高校側
からみたいくつかの課題を挙げる。
(1)実施規模について(SSH クラスを作るか)
参加する単位としては、平成15年度入学生は全クラス
から SSH 事業への参加希望者を募集し放課後の講座を SSH
クラスとしていた。平成16年度入学生は SSH 事業希望者
を1クラスとして募り、平素の授業もこの単位で実施して
きた。
夏期集中講座のようにまとまって大学へ研修に行く場合、
休業中に1日限りのイベントであれば、実施に際して差異
はない。しかし、事前学習や事後指導を考えると、後者の
方が優れている。平成15、16年度は学会見学も実施し
平成16年度後期になると、平成15年度生は進路選択
の時期になった。その忙しい毎日の中で、SS Ⅰの授業の実
験、レポート、発表の準備に追われた。そこで SS Ⅱで大
学の研究室へ行って研究の指導をしてもらうことを説明す
ると、受験に対する不安を口にする生徒が少なくなく、そ
の結果41名の SS Ⅰ選択者が15名の SS Ⅱの選択者に減
った。保護者の中には 、「このような研究は大学に入って
からでもできる」からとの理由で SSH 事業から抜けること
を進める者もあった。10年後の自分を描くための今の大
切さを説明し得ない高校の弱さがある。いくつかの大学で
は、SSH 生に推薦入試の門戸を開いているが、私立大学の
場合、附属高校の方のその門戸は広く、公立高校には狭い
ものがある。文部科学省は新たに「高大接続」という言葉
でカリキュラム接続を求めるようになってきているがこの
分野の成果はまだでているとは言えない。
4
大学側からみた高大連携
つぎに、今年度、四日市高校の SSH 事業の支援をしてい
ただいた大学の先生に高大連携についていろいろな意見を
いただいた。その意見を中心に大学側の視点をまとめてみ
た。
- 86 -
(1)大学教員の負担感について
夏季休業中に実施した夏期集中講座は3年目になる。形
態は午前講義、午後実験や実習という形態でお願いした。
担当していただいた先生方の中には、四日市高校専用のテ
キストを作っていただく方もあり、熱心に指導していただ
いた。アンケートに答えていただいた先生11名のうち7
名の先生がそれほどではないと答えているものの、記述内
容を見ると午後の実験・実習の予備実験、試作に院生を含
め多くのスタッフを動員しており、また 、「失敗させない
ように」とか 、「高校生にわかりやすくするためには」と
か精神的なものも含めてかなりの負担感があることが伺え
た。また、高校側にとっては都合のよい夏季休業中は、大
学にとっては前期テストが8月上旬まであり、盆過ぎには
大学院の入試が始まるという時期にあたることから、大学
教員の短い夏季休業を埋めてしまうことになる。この時期
に平行して大学は高校生向けのオープンキャンパスも行っ
ており、単に興味関心の育成であればオープンキャンパス
を利用して SSH 事業の高大連携を行うということを、解決
策として大学側から提案されたりしている。また、大学に
資源を求めることなく、ねらいを達成する方法として、高
校に博士号をもつ理数系の教員を配置することを提案され
た先生もおられた。SSH 事業の次の取り組みとして、韓国
型の科学技術高校のような学校の存在も将来的にはあり得
ることだろう。
のボランティア的事業は大学教員の評価の要素となってい
ないことも知り、さらに、大学の特定の研究室が大きな努
力を払って高校を支援し、優秀な学生を育てても、引き続
きその大学で指導できるとは限らないというジレンマもあ
る。
SSH 事業の評価は最終的には、21世紀の中盤に、日本
の科学技術や産業が元気な状態にあるかどうかであるが、
そのためには、次世代の科学技術や産業を担う若い研究者
を育成するという目的を高校・大学・産業界が共有するこ
とが不可欠である。指導をいただいている大学の先生方に
「大学での講座や研究室への高校生の参加について、理数
系の生徒を育てる有効な手段であるか」と尋ねたところ、
「興味関心について有効性は高い」という認識はしていた
だいているが 、「授業レベルが高校とのギャップが大きい
と逆効果である 」、「興味を持続させる工夫が大切」などの
ご意見を頂いた。したがって、運営指導委員から頂いてい
るご意見のように「高校側と大学側にねらいを一致させる」
努力を、SSH 事業のようなカリキュラム開発を通して取り
組む必要がある。今後、中等教育の教育課程と高等教育の
教育課程の接続についての研究や、それを支える意味で、
大学入学試験制度や大学評価制度が高大のスムーズな接続
にどのように影響しているかを研究することも大切である。
(2)高大連携の重要性
夏期集中講座や SS Ⅱの事業に支援していただいた14
名の大学の先生に、高大連携の必要性について伺ったが、
「理系の学生の育成のためには必要 」「大学教育の質を上
げるために必要」など14名中9名の先生が積極的な意見
をいただいた。しかし、例えば「複数の大学との連携」や
「双方の負担がかからないように」等の工夫により長続き
するような方策を模索することが大切で、そのためには「大
学と高校が互いの内容をもっと知り合うことが大切である」
という意見が多かった。平成15年度、夏期集中講座を支
援していただいた名古屋大学の先生と本校教員が意見交換
を持つ場を作ったり、同じ SSH 事業を行っている松阪高校
と本校教員、三重大学の教員が平成16年度に意見交換の
場を持った。このような実績を積み上げることによって、
高校と大学が入試を挟んだ打算で連携するのではなく真の
意味でのねらいを一致させて「本当の意味の連携」をしな
ければならないであろう。
4.おわりに
3年間の SSH 事業を通して、大学や企業の支援を受けた
が、われわれ高校側は大学の入り口部分しか見ていないこ
とがわかった。すなわち、大学と高校は向かい合った状態
で生徒を受け渡すだけの関係にしかなかったのではないか。
高校は、大学がどのような立場におかれているのかという
ことをわずかながら知ることができた。大学は法人化の時
代にはいり、研究分野で成果を上げることはもちろん、産
業界に関わりの大きい学部では、その成果の産業界への移
転や地域への協力が求められている。また、その貢献度が
大学の評価につながっており、多忙化している現状が理解
できた。平成16年度からは多くの大学で社会に向けた連
携窓口を設け、体制作りをしている。しかし、SSH 事業等
- 87 -
生徒の変容と課題
教
諭
大
川
暢
OKAWA
【
要
約
彦
教 諭
Nobuhiko
2年生
日 紫 喜 正 展
教 諭
伊
HISHIKI Masanobu
藤
ITOU
泰
二
Taiji
】
昨年度、新入生対象にスーパーサイエンスクラス(以下SSHクラス)を1クラス作り、スーパーサイエンス用の教育課
程を適用した 。今年度2年目を迎えたわけであるが 、この教育課程を適用したSSHクラスとそれ以外のクラスを比較して 、
理数系の「確かな学力」を育成できているかを昨年に引き続き検証したい。
1.はじめに
数学1 日の平均勉強時間(平日)
普通科
70
子21名、女子5名、合計26名(普通科19名、国際科
時
間 60
分 50
退し、23名(普通科17名、国際科学コース6名)の生
40
徒でスタートした。SSHクラスでは、1年において「理
30
科 総 合 」「 情 報 」 お よ び 「 総 合 的 な 学 習 の 時 間 」 の 必 履 修
1学年9月
科目の適用を除外し 、学校設定教科「 スーパーサイエンス 」
普通科
Ⅰ 」(1単位)を教育課程として適用し、2年において「情
2学年9月
2学年11月
SSH
国際
全体
110
(
時
間
90
)
分
70
進めてきた。この2年間のSSHクラス生徒の勉強時間や
成績の推移、意識の変化、また成果等について報告する。
50
1学年9月
1学年11月
2.勉強時間の推移
1学年2月
2学年9月
2学年11月
理科1日の平均勉強時間(平日)
普通科
SSH
国際
SSH
国際
全体
40
1日の平均勉強時間(平日)
普通科
1学年2月
130
単位)および実験・実習を重視した「スーパーサイエンス
ン ス Ⅰ 」( 1 単 位 ) を 教 育 課 程 と し て 適 用 し 、 研 究 開 発 を
1学年11月
数学1 日の平均勉強時間(休日)
す な わ ち 数 学 と 理 科 を 融 合 し た 「 現 代 数 理 科 学 概 論 」( 3
除 外 し 、「 現 代 数 理 科 学 概 論 」( 1 単 位 )「 ス ー パ ー サ イ エ
全体
)
更等の理由により男子2名、女子1名、計3名の生徒が辞
報」および「総合的な学習の時間」の必履修科目の適用を
国際
(
際科学コース2クラスからSSHクラスを希望する生徒男
学コース7名)を集めて、スタートした。今年度は進路変
SSH
80
昨年度1年生SSHクラスは、普通科7クラスおよび国
全体
時 30
間
180
(
20
160
時
間 140
)
分
(
10
0
)
分 120
2学年9月
2学年11月
100
理科1日の平均勉強時間(休日)
80
1学年5月
1学年9月 1学年11月
1学年2月
2学年9月 2学年11月
100
1 日の平均勉強時間(休日)
国際
80
時
間 60
全体
普通科
SSH
国際
全体
)
分 40
250
20
(
時
間
SSH
(
300
普通科
200
0
分
)
2学年9月
150
100
1学年5月
1学年9月
1学年11月
1学年2月
2学年9月
2学年11月
- 88 -
2学年11月
「1日の平均勉強時間」は、平日・休日ともに他のクラ
化学実力成績推移
スと比較して長い方である。特に休日は時間を有効に利用
普通科
しているようである。また学年進行とともによく勉強する
60
ようになってきてはいるが、数学は逆に下降線をたどって
55
いる。その原因として、1年次は数学が主体であるSSH
に対して2年次は1単位に減ったことが挙げられる 。更に 、
2年後期は理科の学習に力を入れるよう指導しているが、
40
そのため理系科目の学習時間は数学から理科に移行しつつ
35
1学年2月
あるように思われる 。特にSSHクラスは2年次において 、
理科を物理、科学、生物すべてを履修しているため、他の
普通科
クラスよりも理科にかける時間が多いようである。
国英数校外模試成績推移
SSH
国際
全体
75
全
国 70
偏
差 65
値
60
国英数実力成績推移
SSH
2学年11月
80
3.成績の推移
60
国際
偏 50
差
値 45
特別科目「現代数理科学概論」の単位数が3単位であるの
普通科
SSH
国際
55
55
1学年8月
偏
差 50
値
1学年11月
1学年1月
2学年7月
2学年11月
数学校外模試成績推移
普通科
SSH
国際
学年
75
45
70
全
国
偏 65
差
値
60
40
1学年6月
1学年11月
1学年2月
2学年7月
2学年11月
2学年第2回実力成績( 11月)
普通科
SSH
国際
学年
60
55
55
1学年8月
偏
差 50
値
1学年1月
2学年7月
2学年11月
理科校外模試成績( 2学年11月)
普通科
45
40
1学年11月
SSH
国際
学年
75
物理
化学
70
生物
偏 65
差
値 60
数学実力成績推移
普通科
65
SSH
国際
55
60
50
偏 55
差
値 50
物理
化学
生物
入学時はSSHクラスが普通科と国際科学コースからの
混合クラスということもあり、成績はどの教科も普通科と
45
国際コースの間に位置していた。現在でも英語・国語はそ
うである。しかし数学に関しては、1学年第1回校内実力
40
1学年6月
1学年11月
1学年2月
2学年7月
2学年11月
試験から常に国際科学コースを上回り、最も良い成績を修
めている。校外模試においても同じような状況である。理
科に関しては 、11 月の第2回実力テスト 、校外模試ともに 、
物理が国際科学コースよりも若干低かったものの化学・生
物は、国際コースを上回っていた。
以 上 か ら 分 か る よ う に 、 S S H の 教 育 課 程 は 、「 現 代 数
理 科 学 概 論 」「 ス ー パ ー サ イ エ ン ス Ⅰ 」 を 中 心 に 、 数 学 ・
理科の学力の向上に大きく影響していると思われる。
- 89 -
4.生徒の意識の変化
5.おわりに
2年間の学校設定教科「 スーパーサイエンス 」を通して 、
SSH活動を通して生徒達は、数学・理科についての自
生徒達は「普通の数学では教えてもらえない、物理との関
信を深め、将来の科学者となるべく頑張っている。昨年度
連なども学べて数学の大切さがわかった 。」
「 数学と理科( 主
課題であったのは、受験科目のみ重視しがちであったこと
に物理)をあわせて考えることで理解しやすかった 。」「微
であるが、今年度は、受験科目に関係なく幅広い分野で関
分方程式は理学において非常に重要であるため有意義であ
心を広め、さらにそれが自分のやりたいことにもつながっ
った 。」「数理科学に対する知識・興味がよりいっそう深く
ていくことを理解しだしたのではないだろうか。また、発
な っ た 。」「 難 し い こ と も 論 理 的 に 考 え る よ う に な っ て き
表する機会を通して、他のグループの研究内容にも関心を
た 。」「色々な実験をすることができたので、教科書上で見
持ち 、質問ができるようになったことも大きな成果である 。
ているよりも実際に想像することができ、物事の理解に役
以上のことから、少なくとも理数系においては「確かな学
立った 。」「実験を多くやれたことが大学に入ってからの実
力」を育成することができたのではないかと考えられる。
験の取り組み方に影響を与えた 。」「物事を深く考えてみよ
来年度は、進路選択を控えていることから、これまでの努
うという気持ちを持つことができた 。」「科学に関しての知
力をしっかりと成果に結び付けて欲しい。
識や興味が増えた 。」「実際の研究現場などを見ることによ
っ て 、 将 来 の 進 路 に つ い て の 幅 が 広 が っ た 。」 と い う よ う
な感想をもっている 。このように 、SSH活動においては 、
1 年 か ら 学 ん で い る 「 現 代 数 理 科 学 概 論 」「 ス ー パ ー サ イ
エンスⅠ・Ⅱ」と合わせて、数学・理科に対する興味・関
心・学習意欲を高め、数学と物理とを融合した授業、物理
・化学・生物の科学的な考え方を理解してきている。
また、昨年度に引き続き、名古屋大学での3日間の夏期
集中講座(ロボット制御、高分子化学、無機化学、半導体
レーザー、水ロケット、地震と防災、微生物とバイオテク
ノロジー、再生医療の現状と展開)や研修旅行(スプリン
グ8、明石天文館、大阪大学、JT生命誌研究館)で最先
端の研究・技術に触れ、さらなる知見を得てきたわけであ
るが、その経験が生徒達の理数系への興味・関心を更に高
めただけでなく、どの分野においても基礎知識が非常に重
要であることを痛感させられたと思われる。そのような中
で、日頃の授業を大切にし、基礎学習を充実させ、家庭で
の学習量の確保に努めなければならないという意識をその
都度感じているようである。
さらに、今年度実施された修学旅行の際には、SSHク
ラスのみ琉球大学瀬底臨海実験所で、サンゴの生態を中心
とした講義と実習が行われ、今まで生物に関心が無かった
生徒も、実際に海に入り、生き物に触れることで興味を持
ち、現在水産学部系への進学を希望している生徒もいる。
後期からは、生徒が興味ある大学の研究室での専門的な
研究活動を行う「スーパーサイエンスⅡ」が始まった。日
常の学習活動に加えての研究活動は、かなりハードである
と思われるが、それぞれの研究室において非常に興味を持
って自ら進んで積極的に行動している。それらは2月や7
月の研究大会で発表されるが、科学的な考え方を徐々に身
につけているようにも感じられ、十分今後の活躍が期待で
きる。
さらに、数学に興味を持つ生徒は、日本数学コンクール
において優秀賞受賞、第 16 回日本数学オリンピックにおい
ては予選をAランクの成績で合格し、本選出場を果たすな
どの輝かしい成果もみられた。
- 90 -
生徒の変容と課題
教諭 倉内賦左夫
KURAUCHI Fusao
【
要
約
3年生
教諭 松岡学
MATSUOKA Manabu
教諭 岡本亙
OKAMOTO Wataru
】
本校は平成15年度に文部科学省よりスーパーサイエンスハイスクールの指定を受けた。これまでの3年間で
SSH事業に参加する生徒が減り、今年度続けた生徒が当初の4分の1になっている。この3年間における生徒
の変容を分析するために成績の推移と生徒の意識の変化を調べた。その結果、成績の変化が大きく見られた。大
学入試をきっかけに目的意識が少ない生徒及び受験勉強時間を確保の生徒が辞退していった。また、理数科目に
おいて、内容を好きでない生徒が辞退していった。残った生徒はわずかであったが、目的意識を持って、7月の
研究発表まで、大学の先生の指導を受けながら、 SSH 事業を行うことが出来た。今後は興味・関心を学習意欲の
向上に結びつけていく SSH 事業や、生徒の意識を変えていけるような SSH 事業が進路先でどのように反映され
ていったのかを見極め、今後も発展的に取り組んでいく SSH 事業を行うことが本校における課題である。
1.はじめに
3.成績の推移
本校では平成15年度よりSSH事業を実施して
きた。これまでの2年間でSSH事業に参加する生
徒が減少した。このような現状の中で3年目を迎え
課題として挙げられていたSSH事業を通して生徒
がどのように変わったのか、変容の分析が必要とな
った。
そこで「生徒の変容」を成績の推移、意識の推移
という2つの観点から分析を行い、生徒の変容とい
う視点から四日市高校におけるSSH事業の課題に
ついて述べる。
(1)国・数・英
62.0
61.0
60.0
59.0
58.0
57.0
56.0
2.本校の現状
55.0
54.0
(1)概要
本校では毎年ほとんどの生徒が大学進学を志望し
日々勉学に励んでいる。昨年度の大学進学率はほぼ
100%であり、その中で国公立は約半数を占めて
いる。そのため、定期試験以外にも校内実力試験や
校外模試を多数実施している。
また、大学受験の勉強を始めることを理由に2年
生の秋をもって部活動をやめる生徒も少なくない。
53.0
52.0
国際平均
普通平均
H15年度選択生
H16年度選択生
H17年度選択生
H15年度だけ
H16年度まで
51.0
50.0
49.0
48.0
(2)実施規模
平成15年度よりSSH事業に参加した、または
参加する予定の年次ごとの生徒数を表1に示す。
46.0
2年
2年実力
1
2年実力 英数
2
3年実力 英数国
3
3年実力 英 国
1 数
3年実力 英数国
2
3年実力 英数国
実 3英 国
力 数
4英 国
数
国
普通科
70
47.0
国際科学コース
63
60
50
29
41
人 40
数 30
20
18
15
34
5
23
10
10
0
H15(1年次)
H16(2年次)
H17(3年次)
表1.H15年度入学生 SSH選択者の推移
<表1>
H15年度(1年次)は361名の中からSSH
事業に参加を希望する生徒を募り、63名(普通科
34名、国際科学コース29名)が選択した。H1
6年度(2年次)はH15年度に参加し、理系クラ
スの選択をする者の中から希望する生徒41名(普
通科23名、国際科学コース18名)が集まり実施
された。また、H17年度(3年次)は15名(普
通科10名、国際科学コース5名)の生徒がSSH
に参加して、研究を行った。
<表2>
英・数・国の3科目の実力テストの2年生から3
年 生 の 推 移 を 調 べ る た め に 、 SSH を 選 択 し た 者 で 1
5年度のみの者、16年度まで選択した者、17年
度まで選択した者と種類に別けて 、グラフして見て 、
明らかに最後まで SSH を 続けた生徒が成績において
下降をたどり、大きく SSH の 負担が受験勉強にのし
か か っ た 事 が グ ラ フ か ら う か が え る 。 SSH の 内 容 に
ついては、大きな不満はなかったと思うので、大学
受 験 が 、 SSH に は 、 弊 害 と な っ て い た よ う に 思 わ れ
る。1年次から2年次に移るときには、文系に進路
を変更していった生徒が、辞退したが、2年次から
3年次に SSH を 辞退した大半の生徒が、 SSH が 受験
勉強につながっていかない事を理由にしている。
(2)数学・理科
SSH事業で主に学習を行う数学と理科の成績推
移について英数国と同様に表3、4に示す。
- 91 -
大変な努力が必要であったと感じる。
次に、理科においては、表4から17年度生選択
生は、2年の最初の実力テストから比較すると、7
月の研究大会までは 、それがある程度負担となって 、
多少成績が下降しているが、その後3回には上昇に
転じ、4回目の実力テストには、2年の最初の実力
テストをわずかに上回る成績となっていることから 、
元々理科が得意であり SSH に 対しても積極的に取り
組んでいたことがわかる。しかし、16年度生まで
の選択生徒は、理科が下降し続けたことから、理科
が特に得意とはしていなかったようである。
<表3>
62.0
61.0
60.0
59.0
58.0
57.0
56.0
55.0
54.0
53.0
52.0
国際平均
普通平均
H15年度選択生
H16年度選択生
H17年度選択生
H15年度だけ
H16年度まで
(3)まとめ
以 上 で 述 べ て き た よ う に 、 SSH 事 業 に 参 加 す る 事
によって受験のための学力がついているとは言い難
い 。反対に 、SSH 事 業を行うことによって 、成績が 、
下がり受験勉強の妨げとなって、グラフに表れてい
ま す 。 ま た 、 SSH を 辞 退 生 徒 の 成 績 が 上 が っ て い る
ことから、それがそのまま成績にも反映された形と
なって表れた。成績の原因としては、この学年はS
SH1年目ということもあり、試行的な意味合いが
強いことや「確かな学力の育成」を目指す「現代数
理科学概論 」がトピックス的に実施されたことなど 、
「興味・関心の育成」が中心のプログラムであった
ことが影響していると思われる。
51.0
50.0
49.0
48.0
47.0
4.生徒の意識の変化
2年
2年実力
1
2 年実力 数 学
実 2
3 年 力 数学
3
3 年 実 力 数学
1
3年実力 数学
2
3年実力 数学
実 3数
力 学
4数
学
46.0
H17年度もSSH事業に参加する生徒と、H1
6年度をもってSSH事業を辞退する生徒の意識の
違いや変化についてアンケートを元に考察した。ア
ンケートでは、数学・理科を好きな理由、SSH事
業への志望理由、辞退理由、参加して良かったこと
に つ い て 集 計 を 行 っ た 。( 複 数 回 答 可 ) 棒 グ ラ フ は
全生徒に対する割合を表しており、上の数字は人数
を表している。
62.0
61.0
60.0
59.0
58.0
57.0
56.0
55.0
54.0
53.0
52.0
国際平均
普通平均
H15年度選択生
H16年度選択生
H17年度選択生
H15年度だけ
H16年度まで
51.0
50.0
49.0
48.0
47.0
2年
実
力
2年 2理
科
実
力
3
3年
理
科
実
力
1
3年
理
科
実
力
2
3年
理
科
実
力
3年 3理
科
実
力
4理
科
46.0
<表4>
まず 、数学では 、表3から16年度選択生では 、SSH
の生徒が得意とする分野であるが、8月の3回目で
ようやく、平均点が上向いたグラフになっており、
その後は上昇していった。しかし、17年度の最後
まで続けた生徒は 、研究大会まで成績は下降を続け 、
その後、11月実施の第4回にようやく成績も下降
から上昇に転じたが、遙かに、大きく差をつけられ
たグラフとなっている。得意の数学でこれだけの差
がついているので、なかなか、それを追いつくのは
(1)継続する生徒の意識
SSH事業と生徒の数学・理科への意識との関係
について考察をしたい。3年生の 12 月 に数学・理科
を好きな理由についてアンケートを実施した。アン
ケート結果を表5、6に示す。昨年のアンケートに
より、SSHを3年間継続した生徒が数学の好きな
主な理由は、数学以外の外的な要因ではなく、数学
自身の内的な要因であることが分かった。そこで、
今年度は数学の内的な部分をもう少し詳しく分析す
ることにした。表5によると「答えをはっきり出せ
る 」「 公 式 を 適 用 で き る 」 と い う 思 考 力 を 伴 わ な い
理 由 が 少 な く 、「 問 題 を 解 く の を い ろ い ろ 考 え る の
が 好 き 」「 自 然 科 学 を 記 述 的 に 表 す 道 具 と し て 優 れ
て い る 」「 理 論 を 論 理 的 に 考 え て い く 点 」 な ど 思 考
力を伴う理由が多いのは注目に値する。さらに細か
く分析すると「問題の解き方をいろいろ考える」は
個 々 の 問 題 を 解 く と い う 「 Local な 」( 局所 的 な ) 視
点であり、残りの2つは数学の理論体系自体を問題
にする「 Global な 」(大局的な)視点である。これら
について「自然科学を記述する道具」は理論物理学
的 な 視 点 で あ り 、「 理 論 の 展 開 」 は 数 学 自 身 の 理 論
展開を意味し、純粋数学的な視点である。日々の数
学の授業において、個々の問題を解く力は十分身に
つきやすいので、SSH事業においては残りの2つ
の視点を大事にすべきだと思われる。本校のSSH
事 業 に お い て は 、「 現 代 数 理 科 学 概 論 」 に お い て S
SHを選択した生徒は 、「自然科学を記述する道具」
と し て の 視 点 を 養 う こ と が で き 、「 ス ー パ ー サ イ エ
ン ス Ⅰ 」「 ス ー パ ー サ イ エ ン ス Ⅱ 」 の 数 学 ゼ ミ に お
いて「理論の論理的な展開」を養うことができる。
- 92 -
<表5
述する」は実験と理論の関係を違う側面から表して
いるが、どちらの視点も大事である。どちらを重視
するかはそれぞれの生徒の個性によると思われる。
物理学者のハイゼンベルグとディラックはともに量
子力学の創始者として知られているが、ハイゼンベ
ルグは実験を重視し、ディラックは理論展開を重視
していたといわれている。
以上、平成15年度入学のSSH継続生徒の数学
・理科への意識をみてきた。意識としては非常に興
味深い結果が得られた。
数学が好きな理由>
数学が好きな理由
6
5
5
4
4
4
3
(2)辞退した生徒の意識
平成17年12月に3年生でSSH事業をH16
年度をもって辞退した生徒に対して辞退理由につい
てアンケートを実施した。
辞退してから何に時間を使っているかの問には、
ほ ぼ 全 員 か ら 、「 受 験 勉 強 」 と い う 理 由 が あ げ ら れ
ている。
また、SSH事業で学んだことで、現在役だって
い る こ と は あ る か と い う 問 に は 、「 理 科 に 対 す る 意
欲 が わ い た 」「 大 学 レ ベ ル の 実 験 や 講 義 を き い た こ
とで自分の見識を広められ、自分に役立っている」
「大学選択に大変役だった 」「貴重な体験ができた」
等の意見が多数あった。
「将来の職業への参考」よりも「大学の進路への参
考」が多いように思われるが、それは、決して無駄
ではなく、将来における貴重な体験として、深く記
憶に残っているように思われ、その経験は、将来大
きく役立つように思います。
SSH事業に参加して良かったことについて、辞退
した多くの生徒が「 SSHならではの体験ができた 」
と答えている。これはSSH事業の志望理由である
「最先端の科学に触れる」という内容にあっている
ため満足度が高かったと考えられる。
人数
2
1
1
理 論 を論 理 的 に
展 開 し て いく 点
自 然 科 学 を記 述 す る
道 具 と し て優 れ て いる 点
<表6
問 題 の解 き 方 を
いろ いろ 考 え る こ と
公 式 を あ て は めた ら
問 題 が と ける と ころ
問 題 の 答 え を は っき り
出 せる と ころ
0
1
理科が好きな理由>
理科が好きな理由
5
4
4
4
(3)まとめ
SSH事業に参加して良かったこととして多くの
生徒が「SSHならではの体験ができた」を挙げて
いるが 、実際には学力の向上にはつながっていない 。
また、表5、6にある数学・理科の好きな理由を内
容的なところに持たせるようSSH事業を工夫して
いくことが今後の課題である。
3
3
2
2
人数
2
1
0
5.おわりに
研 究 成 果 を製 品 化 でき る点
自 然 の法 則 を 数 式 を 用 い て
理 論 的 に記 述 で き る
実 験 を し て仮 説 を
実 証 す る こ と が でき る
生 物 や生 命 現 象 に
興 味 を感 じる
物 を 作 る こ と が好 き
自 然 現 象 (自 然 界 )に
興 味 があ る
0
次 に 理 科 に つ い て 考 察 し た い 。「 自 然 現 象 に 興 味
が あ る 」「 物 を 作 る こ と が 好 き 」「 生 物 や 生 命 現 象 に
興味を感じる」の3つが興味・関心に関する答えで
ある。生物選択者には「生物や生命現象に興味を感
じ る 」 が 多 い こ と が 分 か っ た 。 や は り 、「 生 物 や 生
命現象が好き」という素朴な興味が、実際の研究活
動の動機付けになっていることが分かる。アンケー
ト項目にはないが、コメントの部分で「錬金術に興
味があった」という答えもあった。これは、現在の
「化学」の出発点である。分野に係わらない答えと
しては「実験をして仮説を実証する」と「自然の法
則を数式で記述する」の2つがある。SSH事業に
お い て は 、「 研 究 を お こ な う た め の 姿 勢 や 手 法 」 を
身 に つ け さ せ る こ と に 力 を 入 れ て い る が 、「 実 験 を
して仮説を実証する」が若干少なかったのが残念で
ある。今後、SSH事業においてこれらの力をつけ
さ せ る こ と が 重 要 で あ る と 思 わ れ る 。 な お 、「 実 験
をして仮説を実証する」と「自然の法則を数式で記
3年間SSH事業を実施する中で、生徒の理数に
対する興味・関心を高め、それを学習への意欲の向
上につなげていくことを考えて、この事業は行われ
てきた。しかし、辞退する生徒も1年次及び2年次
に多く出てきて少人数になったが、参加した生徒は
貴重な体験ができたと考えられる。参加する生徒が
減ることではっきりと目標を持った生徒が最後まで
残り、深い研究を行った。また、大学と連携し、行
ったSSⅡでは大学に出向いて大学の教官の指導を
充分うけられた。
SSⅡの終了をもって3年間の取組によって一つ
の事業になった。その3年間での力が進路先の大学
において、どのようについていくのか、また、どの
ように意識が変化して大学の授業にあたっていくの
かを今後も継続的に見ていく必要がある。
- 93 -
科学技術系人材育成を目指した生徒の研究活動における学習評価方法の開発
講師
小谷大介
KOTANI Daisuke
【要
約】
本研究では、課題研究等の生徒が行う研究活動における学習評価方法の開発を目的とした。科学技術系人材育成
を目指したカリキュラム開発のため、自然科学分野に共通する研究の流れを作成した。また、心の評価を行うにあ
たり、科学技術に携わる者としてリーダーシップを評価の対象とした。この評価は研究終了時の教師による面接で
行った。ただ記述による評価結果は妥当性に欠き、十分な評価方法の研修が必要である。創造性の評価については
創造性を発揮する場面の提供の難しさが明らかになった。また大学の教官の多くが生徒を評価する際「積極性」を
重視していることから積極性または態度に関する指導と評価の必要性が明らかになった。
【キーワード】観点別評価、研究の流れ、面接法、リーダーシップ
1
本 校 SSH 事 業 ) で は 、 科 学 技 術 系 人 材 の 育 成 を 研 究 目
はじめに
中 教 審 (1997) は 、「 生 き る 力 」 に 代 表 さ れ る 新 し い 学
標としている。そこで未来の科学技術を担う高校生が
力観を提唱し、それを実践するため平成 10 年度改定学
備えているべき力を図1の4つの力に落とし込んだ。
習指導要領が告示された。
(2)
観点別評価
学習評価については、平成 3 年 度 改定学習指導要領
図1にある 4 つの力が本校 SSH 事業を通してどの程
で す で に 目 的 に 準 拠 し た 評 価 (以 下 絶 対 評 価 )で 行 う よ
度身についたかを測ることをもって学習評価とした。
うになっていたが、絶対評価による実践の報告は少な
身につけさせたい力、いわば教育目標を分類したこと
かった。
で、学習評価は観点別に行うこととした。
平成 10 年度改定学習指導要領が施行されるに伴い、
評価観点は従来「関心・意欲・態度 」「思考・判断」
評 価 に つ い て 教 育 課 程 審 議 会 (2000) に は 「 指 導 と 評 価
「技能・表現 」「知識・理解」とあったが、図1に沿う
の一体化」が謳われた。そのような学習評価の必要性
ように次のとおり改めた。
の高まりから、国立教育政策研究所をはじめとした研
a
究機関等で絶対評価についての具体的研究が行われた 。
興味・関心
b
学際的な知識・理解
小学校・中学校については一般の書店でも容易に見
c
科学者としての論理性
られるほど多くの絶対評価についての研究報告がなさ
d
科学者としての創造性
れているが、高等学校については未だ少ない。また、
e
望ましい人間関係・豊かな心
国立教育政策研究所 (2004) では「評価規準及び具体例」
<図 2
本校 SSH 事業における評価観点>
「単元の評価に関する事例」の研究報告は必履修科目
に限られている。これらのことは、専門性の高い学習
(3)
評価観点の趣旨
内容について絶対評価を実施することの難しさを示し
a
興味・関心
ている。
自然の事物・現象に関心を持ち、意欲的にそれらを
そこで本研究では、従来研究実践されてきた絶対評
価の手法を用いて、課題研究等の生徒が行う研究活動
探求しようとする。
b
学際的な知識・理解
における学習評価方法の開発を目的とした。
自然の事物・現象における基本概念、原理・法則を
理解し、知識を身につけている。また自然の事物・
2
評価の方針
現象において数学的手法がどのように用いられてい
(1)
本校 SSH 事業における教育目標
るかを理解する。
本 校 SSH 事 業 に お け る 生 徒 に 対 す る 教 育 活 動 ( 以 下
¾
科学への興味・関心
¾
数学・理科・情報を中心とする学際的な領域における
「確かな学力」
¾
科学者としての論理的思考力や創造性・独創性
¾
望ましい人間関係や豊かな心
<図 1
c
科学者としての論理性
自然の事物・現象に関する探究活動における論理の
見極めができ、処理した結果に対して意味づけが出
来る。また、探求の成果を整理して表現する。
d
科学者としての創造性
自然の事物・現象に関する探究活動を通して、研究
計画の立案、結果の解釈や表現においてアイデアを
4 つの力>
出したりインスピレーションを発揮したりと、発想
- 94 -
観点別に評価した。
の転換をすることができる。
e
望ましい人間関係・豊かな心
ここで、研究の流れについてはいまだ定説がないこ
自然の事物・現象に関する探究活動を通して共同研
とから、自然科学分野に共通すると思われる流れを図
究者との連携を図ることでパートナーシップを身に
3のとおり定義し、研究活動の指導を行った。
つけ、共同研究者の弱みをカバーしてグループを目
指す方向へ導く、すなわちリーダーシップの必要性
を認識している。また、リーダーシップを発揮する
ときに求められる素養を身につけている。
(4)
評価方法の概要
①
疑問が浮かぶ
②
なぜ①が起こるかを考える
③
②を仮説とする
④
仮説を確かめる手段を考える
すでに研究が行われている→既出の論文等を読む
図2観点a、c、dについては研究活動の過程で心
まだ研究が行われていない→実験によって検証
理的側面が行動として現れることから、研究を進める
調査によって検証
中で行動観察法にて評価する。また報告書から読み取
⑤
れる前述の 4 つの力を、チェックリストを用いた作品
実験の計画
仮説を実証するための方法,必要な実験装置などの検討
法で評価する。
観点eについては研究活動を行いながら次第に身に
つけて行く力であることから、研究が終了した時点で
⑥
実験の実施
⑦
結果の考察
(期待したものと異なる結果が得られた場合
面接法による評価を行う。
→⑤に戻る→②に戻る)
観点bについては自然に関する基本概念等であるこ
⑧
とから、研究の前段階に習得すべきであり、本稿では
結論
<図 3
触れない。
以下では 、評価方法が大きく異なることから観点a 、
イ
研究の流れ>
評価方法
図 4 には、研究の流れを概念図化し、評価を行う研
c、dと観点eの評価の実践について分けて記す。
究段階と評価観点を矢印で示した。また図 4 にある各
3
評価方法の提案
観点では、表 1 にある評価規準と基準に沿って評価を
(1)
興味・関心、論理性、創造性の評価
行う。
ア
研究の流れの定義
ここで表1にある研究段階⑨の評価A、B、Cの分
本校 SSH 事業では、基本的な実験や生徒の研究活動
割点の根拠について述べる。チェックリストのチェッ
等を通して研究の流れを習得させることで、図1に述
クは該当するかしないかによってのみ行う。ここでは
べる 4 つの力の育成を図った。生徒の研究活動で興味
仮に A=3 点 、B=2 点 、C=1 点として 、チェックが A ~ C
・関心、論理性、創造性の評価を行う際に、研究の流
まであると考える。評価「 A 」は A と B のうち A が過
れに沿って各段階に現れる生徒の行動や心理的側面を
半 数 を 占 め る 得 点 率 と す る 。 例 え ば AAABBB な ら
3+3+3+2+2+2 = 15 点で得点率は 83 %であ
① 疑問が浮かぶ
る。 BC の分割点も同様に算出した。
② なぜ①がおこるかを考える
③ ②を仮説とする
④ 仮説を確かめる手段を考える
既に研究が行われている→論文等を読む
まだ研究が行われていない→・実験によって検証
・調査によって検証
観点a
興味・関心
など
⑤ 実験の計画 仮説を実証するための方法
必要な実験装置
などの検討
観点c 論理性
⑥ 実験の実施
⑦ 結果の考察
観点d
創造性
観点d 創造性
観点c論理性,d創造性
⑧ 結論
⑨ 報告書の作成
< 図4
観点c論理性
研究の流れ概念図と評価観点の関係 >
- 95 -
評価を行う
評価
活動段階
観点
④仮説を確
かめる手段
を 考 え 、実 験
実施におけ
る研究課題
評価規準
既に知られてい るその
a
分野に関する情 報に興
興味
味を持ち、新たな疑問
関心
を持ってそれを 研究の
目標にしている。
を決定する
⑤実験の計
d
実験の計画、方法につ
画
創造性
いて進言ができる。
評価基準
A
B
C
既に知られているその分野
に関する情報に興味を持ち、
新たな疑問を持ってそれを
A以外
研究の目標にしている 。
「こうしてはどうですか」
「こうしてはいけませんか」
進言が無い。
という進言が出来る。
実 験 を 他
実験書や事前の説明をもと
⑥実験の実
c
施について
論理性
実験器具・装置 の操作
に 、指 示 を 仰 が ず に 実 験 が 出
について、積極的に行
来 る 。(特 に 高 度 な 技 術 を 要 す
える。
る 装 置 に つ い て は )少 な い 指
の人 (指 導
常に指導を仰ぎながら実
任 せ て い
示で実験が出来る。
c
論理性
創造性
る。
想定したデータ が得ら
「 自 分 な ら こ う 解 釈 す る 」と
れた部分につい て進言
進 言 し 、仮 説 が 立 証 で き た こ
が出来る。
とに気づく。
想定していない データ
d
が得られた部分 につい
て進言が出来る。
者 、共 同 研
究者等)に
験を行う。
「こう解釈できるので
は」というアドバイスを
受けて、仮説が立証でき
A 、B 以 外
たことに気づく。
「こう解釈できるので
「 自 分 な ら こ う 解 釈 す る 」と
は」というアドバイスを
進言できる。
受けて、自分の考えを持
A 、B 以 外
つ。
⑦データの
実験計画やこれまでの操
解釈につい
て
想定していない データ
が得られた部分 につい
d
創造性
て、実験計画の再考又
は仮説の見直し が出来
る。
実験計画やこれまでの操作
作方法などに「このよう
方法などに不備が無かった
な不備があったのでは」
か を 考 え 、計 画 に つ い て 何 ら
というアドバイスを受け
か の 指 摘 が 出 来 る 。又 は な ぜ
て、自分の考えを持つ。
そのような結果が出るのか
又はなぜそのような結果
の 理 由 を 考 え 、新 た な 仮 説 と
が出るのかのアドバイス
して再実験の必要性を感じ
を受けたことにより自分
る。
の考えを持って、再実験
A 、B 以 外
の必要性を感じる。
⑨報告書に
c
報告書の各項目 につい
チェックリストのチェック
ついて
論理性
て記述が妥当である。
率 が 83% よ り 上
⑨
報告書について
チェックリストのチェッ
ク 率 が 83% 以 下 で 50%
チェックリスト
報告書の項目
評価基準
概要
目的から結論までの一連の流れが大まかに把握できる.
目的
これから何を明らかにしようとしているかがはっきりと読み取れる.
方法
どうやって研究を進めたか一通り把握できる.
結果
図や表,写真に文章を織り交ぜて得られた結果がはっきり読み取れる.
考察
まとめ
今後の課題
※
A 、B 以 外
以上
チェック
分かったこと,分からなかったことが明瞭に区別されている.
は じ め に 述 べ ら れ た 目 的 に つ い て , ま と め ( 結 論 )で 再 び 触 れ ら れ て い る .
以 上 の 6 項 目 中 ,該 当 す る 項 目 に チ ェ ッ ク を し , チ ェ ッ ク の 入 っ た 割 合( チ ェ ッ ク 率
例;6 項 目 中 2 チ ェ ッ
ク→33%)で評価を行う.
<表 1
- 96 -
研究を進める中で行う評価の規準と基準>
(2)
社会で研究者・指導者として社会全体を牽引する場
望ましい人間関係や豊かな心の評価
面
この観点では、リーダーシップに注目する。以下で
はその根拠、リーダーシップの育成とその評価方法に
(ウ)
リーダーシップを発揮する時に求められる素養
ついて述べる。
公正さ・規律遵守、スピーチ力、指導者としての心
ア
構え 、指導者としての倫理観 、決断力 ( 論理的思考力 、
リーダーシップに注目する根拠
全体を把握しようとする姿勢 )
2 (3) 評 価 観 点 の 趣 旨 で は 、 研 究 を 行 う 際 の リ ー ダ ー
シップの必要性、リーダーシップを発揮するときに求
(エ)
養われ方
められる素養について評価を行うことを述べた。以下
リーダーシップは個人の性格による部分も大きいが 、
にこの趣旨の根拠を述べる。
リーダーシップを育てるという視点に立つと、まず
第一に、本校 SSH 事業は未来の科学技術を担う人材
は共同研究者とのパートナーシップを築くことから
の育成、つまり科学技術を担う上でリーダーとなりう
始まる 。そこで相手の苦手とすることを補うことで 、
る人材の育成を目指していること。次に、リーダーシ
その部分で牽引しようとする気持ちが身につくと期
ップを発揮する場面では、スピーチ力や決断力といっ
待される。また結果の考察などで意見が分かれると
た他を説得する素養だけではなく公正さや倫理観など
きは互いに主張をした上で、自他の正否を客観的に
も持ち合わせていなければならない。そのためリーダ
見つめる必要性に遭遇する。こうした共同研究者と
ーシップの育成を目指すことで、公正さや倫理観も合
の切磋琢磨を経て、人との関わり方を学ぶ。
わせて育成されることから研究活動におけるリーダー
また、研究を行ううえでリーダーシップを発揮する
シップに注目する。
には、研究の展望すなわち研究の流れが体に染み付
イ
いていることが重要である。研究の流れを体得して
リーダーシップの育成
以下では、リーダーシップの評価を行う前段階とし
て必要な、これから育成し評価するリーダーシップと
いるからこそ、先を読んだ発言ができる。
ウ
いう言葉の定義や育成の流れ等について述べる。
(ア)
評価方法
報告書の作成が終了した段階で、指導教諭による面
リーダーシップの定義
接により評価を行う。その際、面接での質問項目はす
集団が方向性を見失ったり、誤った方向に進もうと
べての生徒に共通なものを用い、生徒の回答から2つ
するときに妥当な進む方向を指し示すことのできる
の項目について自由記述による評価を行う。また質問
力。
がすべて終了したら教員による生徒の所見と今後生徒
(イ)
科学技術者と して リーダ ーシップを発揮する場面
生徒に伝える。図 5 に詳細を述べる。
大学等での班別実験、共同研究
(1)質問項目
全て生徒に伝える.メモや本などを見ながらの回答可.
【
a
が科学技術者として歩んでいくうえで課題となる点を
】内は (2)評価項目ア,イの何れを評価するための質問項目かを記した.
研究について
a1
自分の研究テーマについての先行研究について
a2
生徒の作成した報告書を用いての研究内容の説明【同上】
a3
研究の流れ (これまでの研究の経験を参考にして ,「テーマの設定 」「研究方法の検討」などいつごろ何をするの
【生徒に対して研究を振り返る機会を与える目的の質問であり評価を行うためのものではない】
かを述べる )【評価項目ア】
a4
b
研究で自分は何をしたか.指導教官・TAの方は何をしてくださったか【評価項目イ】
論文作成・発表について
字数制限,発表時間の制限を守らないとどういう影響があるか?【評価項目イ】
b2
他の研究を,クレジットを挙げずに自分の論文に入れることについてどう思うか?【評価項目イ】
c
b1
研究におけるパートナーシップ・リーダーシップ
c1
あなたにはこれまでの SSH で培った「研究のしかた」を生かして仲間と協力し,さらには同級生だけでなく
周りを引っ張り上げてもらいたいと思っています.このことについてどう思いますか?【評価項目イ】
(2)評価項目
以上の質問を踏まえて,次のア,イについて評価を行い,所見,今後科学技術者として歩む上での課題を
生徒に伝える.
ア
研究方法の習得 (観点 e 望ましい人間関係と豊かな心 )
イ
研究を進める上でのリーダーシップの習得 (観点e望ましい人間関係と豊かな心 )
<図 5
- 97 -
面接法による評価での質問項目と評価項目>
面接法においては、生徒との信頼関係が大切である
があってその上に応用がある…大学に入ったらしっ
ことから直接的な表現の質問は避け、被評価者の振り
かり基礎を理解したうえでこのような研究に取り組
返りを重視する質問を行った。
みたい』といった、研究の土台にある基礎知識が応
用すなわち独創的な研究につながるといった認識が
4
複数見られた。このことから創造性の評価に関する
評価の適用
本項では、これまでに提案した評価方法を本校 SSH
次のような示唆が得られた。創造性を発揮するには
事業で適用したことで得られた考察について述べる。
研究を支える基礎知識が不可欠であるが高度な内容
(1)
になると創造性を発揮しがたい。しかし研究内容を
本校 SSH 事業の概要
図1にある4つの力を育成するため、学校設定教科
生徒に容易に理解できる水準にまで下げると、研究
「スーパーサイエンス」を立ち上げて長期の事業を行
に対する生徒の興味が湧かない。興味の無いところ
うとともに、研修旅行等の短期の事業も行った。ここ
では創造性は発揮されない。従って創造性について
では評価の対象とした長期の事業について述べる。長
は、興味・関心と知識・理解の間にトレードオフの
期の事業では以下にある科目を開発した(
関係が見出される。創造性の評価を行ううえでは創
内の数字
は対象学年 )。
造性の発揮される場面を提供しなければいけないが 、
・科目「現代数理科学概論」1
そういった場面を提供することの難しさがうかがえ
・科目「スーパーサイエンスⅠ」1、2
る。しかし一部の生徒は独創的な考察を行ったとの
・科目「スーパーサイエンスⅡ」2、3
評価を得てもおり、生徒によっては興味・関心と知
「現代数理科学概論」は数学に理科を織り込んだ学
識・理解の釣り合いが取れることで独創性を発揮す
習内容であり、今後行う研究に求められる学際的な知
る場面が提供できた。今後は多くの生徒に独創性を
識理解の育成を目指した。
発揮できる場面、すなわち興味関心を低下させるこ
と無く理解できることで独創性の発揮できる教材の
「スーパーサイエンスⅠ」 ( 以下 SS Ⅰ ) は実験・研究
開発が必要である。
主体の学習内容であり 、校内で本校教諭が指導を行う 。
前半は基礎実験と題して全員必修で各科目の実験を行
(イ)
その他の評価観点について
い 、数値の実験結果を用いて統計的手法の基礎を学ぶ 。
大学の指導教官に評価を依頼の際、観点を指定せ
また『研究とは』と題して研究の社会的意義や研究の
ずに所見欄を設けたところ、研究における生徒の積
流れの講義を行うことで論文作成や発表技術の教授を
極性について複数の回答が見られた。研究を行うう
行う。後半は専門分野に分かれて生徒の研究活動を行
えで「積極性」が重要な素養の一つであることの現
い、二年終了時に研究発表を行う。また科学技術者と
れと考えられる。ただ「積極性」とはいわばこれま
して持ち合わせているべき倫理観に関する講義を行う 。
での評価観点にあった「態度」に当たるもので、こ
のことについても今後指導方法や評価方法等を確立
「スーパーサイエンスⅡ」 ( 以下 SS Ⅱ ) は一つのテー
する必要性が示唆された。
マを長期にわたって行う生徒の研究活動で、 SS Ⅰと並
(ウ)
行して行う。指導は大学の教官に依頼した。
3 つの観点を総じて
教官アンケートより、評価の『項目数を多くして
本稿で述べる評価方法は、 SS Ⅰ後期と SS Ⅱで行っ
た生徒の研究活動について適用した。
複数回答とすべき』との意見を得た。例えば同じ評
(2)
興味・関心、論理性、創造性の評価
価規準と基準であっても今回のように研究の流れで
ア
評価資料から得られた考察
評価項目を分けるのではなく、各評価項目の「 A 」の
評価は本校教諭と指導教官に依頼した。評価観点と
基準に該当する文言だけをならべてチェックリスト
基準は表 1 で挙げたもののほか、自由記述で評価を得
にする方法など、評価シートの作成に工夫の余地が
た。また指導教官と同じ評価の用紙を用いて生徒自己
ある。
評価を行った。以下には自由記述で得られた、本評価
(3)
望ましい人間関係や豊かな心の評価
に対する示唆を記す。
ア
評価資料から得られた考察
(ア)
評価は本校教諭により面接法を用いた。評価結果は
創造性
この SSH 事業で行った生徒の研究は大学の研究室
図 5(2) ア 、 イ に つ い て 自 由 記 述 の 形 式 で得 た 。 ま た 面
で行う研究に近い水準であり、高校生にとって非常
接で用いた質問項目のうち、図 5 b1、b2、c1の
に高度である。そのため、創造性を発揮できる機会
3点についてアンケートを生徒に対して行った。以下
が十分に与えられなかった旨の記載が教官側から見
に本評価に対する示唆を記す。
られた。評価に関する指導教官に対するアンケート
(ア)
( 以下教官アンケート ) からも高校生には『ハードルが
高い』といった意見が見られた。生徒からは『基礎
研究方法の習得
半数近くの評価結果の記述が妥当なものでなかっ
た。
多くに見られた誤った評価結果の記述として 、「研
- 98 -
究方法の習得」を図 3 で定義した研究の(流れを習
図6 字数や時間を守らないことについて 迷惑のかか
る対象の明示の有無
得したかどうか)でなく、研究に必要な(技能の習
得)という観点で捉えたものであった。校内で誤解
のないよう、評価方法の説明を十分に行う必要があ
る。
(イ)
研究を進める上でのリーダーシップの習得
パートナーシップについての記述は概ね筆者の意
図する観点に沿った妥当なものであったが、そこか
ら育まれるリーダーシップに関する記述が不十分で
0%
20%
40%
他発表者
主催者
60%
80%
100%
あった。リーダーシップの定義の議論は時間をかけ
て行ったが、議論から評価までに時間が開いたこと
聴衆
あいまい
対象なし
悪くない
で定義が忘れられて教員個人の捉え方で評価が行わ
図7 クレジットを挙げずに自分の論文に入れること 迷
惑のかかる対象の有無
れた感がある。リーダーシップに関する定義の徹底
を図りたい。
以下ではアンケート結果から得られた、この観点
に関する指導の効果について述べる。なお図 6 、図 7
は倫理観を見るため、回答の具体性すなわち迷惑の
かかる対象がどう具体的に記されているかにより分
類 し 、 図 8 は今 後リ ー ダ ー シ ップ を 発 揮 すべき場面
に遭遇したときに実際に発揮できるかを見るため、
グラフの凡例の通りに分類した。
0%
図 5 bはリーダーシップを発揮する上で求められ
る 倫 理 観 に 関 す る質 問 で あ る 。b 1 で は 4 割 の生徒
が実体験に基づいて迷惑のかかる対象を具体的に示
して回答できていた ( 図6 ) 。b2では半数の生徒が著
作者・原作者に対して具体的によくないことである
と述べている ( 図7 ) 。
20%
著作者等 具体的
40%
60%
著作者等 抽象的
80%
読者
100%
悪くない
図5cは研究におけるリーダーシップを今後発揮
する意欲や自信が生徒の中に見られるかを問うた。
8割近くの生徒がこのことについて十分に受け入れ
ている ( 図8 ) 。
10 代 後 半 と い う 人 間 形 成 の 真 っ 只 中 に おいてこれ
までの生徒自身の研究活動経験から、質問項目のよ
図8 自分にリーダーシップが求められる
ことについて
うな非礼に対して具体的に異が唱えられることは、
今後科学技術者として活動する上で極めて意義深い 。
ただ、b2についてはマナーや法律といった抽象的
な単語で説明をしている者も見られた。彼らはマナ
ーや法律は誰のため、何のためにあるのかを具体的
に考えるところまで至っていない。リーダーシップ
を発揮する際、マナーの守れていない者をたしなめ
ようとしても、マナー違反だからと説得をした所で
非礼を行う者には聞き入れられないことから、非礼
には具体的に異が唱えられるよう育成をしなければ
0%
20%
40%
十分受け入れている
求められることを否定
60%
80%
100%
ある程度受け入れている
図6、7において望まれる倫理観に比べて、図 8
ならない。
の割合が高いが、極論を述べるとこのままでは倫理
観の低いリーダーが世に出ることとなり一抹の不安
を覚える。研究の流れという今後の研究活動におけ
る有力な経験とともに、倫理観等のリーダーシップ
を発揮する場面で必要とされる素養、すなわち科学
技術における知育と徳育をバランスよく育成する必
要がある。
- 99 -
5
まとめ
研究の流れを定義することで、終始一貫した指導と評
価を行うことができた。
創造性の評価については、創造性を発揮する場面の
提供といった指導上の難しさが明らかになった。創造
性を発揮するには研究の為の基礎知識が不可欠である
が、内容をやさしくすると創造性を発揮する為に必要
な興味が湧かない。これら相反する事項をバランスよ
く兼ね備えた場面は生徒一人ひとりで異なり、学校現
場での機会の提供の困難さが伺えるが、今後そういっ
た相反する事項を併せ持つ教材の開発が望まれる。
評価観点として 、「積極性」または「態度」の指導方
法と評価方法を確立する必要性が明らかになった。複
数の大学指導教官から、自由記述の評価で「積極性」
についてのものが多かったためである。
興味関心・論理性・創造性の評価については、評価
シート作成の工夫が望まれる。
望ましい人間関係と豊かな心の評価について。本校
教諭に対する評価方針の理解が十分に得られず、妥当
性を書く記述が目立ったことから、十分な理解が得ら
れる研修等が必要である。
しかし、評価する指導の効果は、アンケート結果か
ら 4 割弱の生徒には見出される。
また、倫理観の育成とリーダーシップを発揮しよう
とする意欲の双方をバランスよく育成することが指導
上もとめられる。
6
・
参考文献
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1997/6
21 世 紀 を 展
望した我が国の教育の在り方について ( 答申 )
・
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2000/12
児童生
徒の学習と教育課程の実施状況の評価の在り方に
ついて ( 答申 )
・
国立教育政策研究所教育課程研究センター
2004/3
評価規準の作成、評価方法の工夫改善の
ための参考資料(高等学校)評価規準、評価方法
等の研究開発(報告)
・
橋 本 重 治 (原 著 )
2003/6
・
(財 )応 用 教 育 研 究 所 (改 訂 版 編 集 )
教育評価法概説
石角完爾
ジャパンタイムズ
2003/2
アメリカ
のスーパーエリート教育
・
編者 文集編集委員会
黎明書房
2005/3
学力の
総合的研究
- 100 -
スーパーサイエンスハイスクール事業の事業評価方法の開発
-自己評価手法にアセスメント評価を組み合わせた事業評価-
教 頭 阿 部 幸 夫 教諭 倉内賦左夫 教 諭 林 眞 司
ABE Yukio
KURAUCHI Fusao HAYASHI Shinji
【
要
約
教諭 松岡 学 教諭 所 貴史 教諭 北後知尋
MATSUOKA Manabu TOKORO Takashi KITAGO Tomohiro
】
三重県立四日市高校のスーパーサイエンスハイスクール事業では、その事業評価を行うため、独自の事業評価システムを
開発した。それは、自己評価とアセスメント評価を組み合わせた事業評価シートの開発である。この方式は、各事業担当者
の自己評価を外部評価委員が評価の正当性をアセスメントするものであり、自己評価の客観性を高めることができるものと
して考案した。平成16年度に事業のねらいの部分で経営品質的な分析を加えて、現在の事業評価シートを開発した。
1
はじめに
三重県立四日市高等学校は、文部科学省より平成15年
度から3年間 、「スーパーサイエンスハイスクール(以下
SSH)事業」の指定を受けた。この事業は、未来を担う科
学技術系人材の育成をねらいとして理数系教育の充実を図
る研究開発の取り組みである。その、具体的な取り組みは、
①理科・数学に重点を置いたカリキュラム開発
②大学等で生徒が授業を受る、研究者が出張して授業す
るなどの連携の研究
③論理的思考力、創造性や独創性等を高める指導方法の
研究
④各種科学コンテストへ参加するなど科学クラブの育成
⑤第一線の技術者や先端技術との出会い、全国 SSH 校の
生徒の交流
である。また、事業予算も文部省時代の研究開発事業にお
けるものと比べると大きいので、本校での事業が効果を上
げているか、客観的な検証を行っていくことにした。その
ため、外部からの評価を受けることを目的として、自己評
価資料を作成し、運営指導委員会にアセスメント的な評価
を行ってもらうとにした。
2
評価の方法について
「四日市高校 SSH 事業の評価」(4章参照)は平成15
年度に開発し、平成16年度に修正を加えたものである。
(1)SSH 事業のねらいの設定
そもそも事業は、現状を打開し(課題の解決)何らかの
理想(目指す姿)に近づけるために行われるものであるか
ら、この2点を担当者が共有する必要がある。また、課題
として認識している主体(顧客)は誰かも共有しておかな
ければならない。四日市高校の SSH 事業の場合、1次的に
は生徒と保護者とそのニーズになるが、事業の成果は実施
報告書の形で文部科学省に報告され、将来の教育行政の資
料となることから、日本社会(文部科学省や将来の全国の
高等学校)も顧客となる。その現状の課題については、「四
日市高校の SSH 事業の取り組み」で触れたところであり、
そのニーズは「未来の科学技術系人材の育成」である。
ところが、生徒保護者のニーズはもっと身近なところに
あり、学力や将来の夢の実現である。その意味では理数系
学力の伸長は社会のニーズとも一致するが、生徒の成長を
通しての日本社会の科学技術力の伸長は彼らにとって第一
義的ではないかもしれない。そこで、社会貢献が生徒保護
者の目的価値になるよう、SSH 事業の指定を受けた高校で
は、その事業のねらいについて説明責任が生ずる。
(2)事業目標の明確化
つぎに、外部からの評価を受けるためには、事業の目標
と手段を明確にする必要がある。「四日市高校 SSH 事業の
評価」では、縦軸に(1)~(6)の事業目標を、横軸には目標
達成のための手段を入れてある。文部科学省から示された
SSH 事業の取り組み(「 1 はじめに」で示した①~⑤)
は手段と目標が混在しており事業評価を行うときには、抽
象的になりかねない。したがって、下記のように理解し、
マトリックスの形にした。
【SSH 事業のねらい】
スーパーサイエンスハイスクールでは、未来を担う
科学技術系人材の育成をねらいとして、
①科学への興味関心を育成し、「科学への夢」育む。
②理数系の確かな学力を育成する。
③論理的思考力や想像力を育成する。
④科学の活動を通して望ましい人間関係や豊かな心を
育む。
ことが求められており、そのためには、
①理数系教科科目のカリキュラム開発をする。
②大学等で生徒が授業を受ける、または、研究者が出張
し、授業を行う。
③第一線の研究者や先端技術との出会いの機会を作る。
④科学クラブを活性化して交流の機会を作る。
ほかの方法が考えられる。
(3)事業評価のための資料(自己評価)
一般的に、外部評価において、評価者は評価すべき事業
活動の隅々までを見ることができない。したがって、事業
担当者がからわかりやすい資料を提出する必要がある。こ
の資料として、「自己評価報告書」(4章参照)を用いるこ
とにした。この「自己評価報告書」は事業目標別に各事業
を落とし込み、各事業ごとに担当者が自己評価を行う。評
価方法はアンケート調査を基本として、4段階の選択肢(五
段階は「どちらでもない」という選択肢が出てしまい意思
表示がされない)を用いる。この際、大切なことは、評価
のための「視点」である。各事業において種々のアンケー
トを実施するが、各事業の目的が何なのかを明確にしない
とアンケートの設問が意義を失ったものになってしまう。
どのような評価方法であっても、事業目的と評価の視点は
一体化させなければならない。
各担当者が行う評価結果については、記述と評点を両方
掲載することにした。近年、様々な評価方法が提案されて
- 101 -
おり、評価結果は評点方式が多い。平成15年、この事業
評価の方法を運営指導委員会で議論した際、「開発型の事業
の場合はエンカレッジすることが第一義的であり、評点方
式は問題が多い」という評点方式の欠点が指摘され、評点
と文面記述の両方の方式を取り入れた。特に事業目標が抽
象的な場合は文面記述で報告をすることとした。
各事業を事業目標別の評価にまとめて「四日市高校 SSH
事業の評価」シートの「事業評価資料(自己評価欄)」に記
述する。これが最終的な自己評価となる。記述式を併用す
ることによって外部評価者に対して「どのような根拠でど
のような自己評価をしたか」をわかりやすくすることがで
きる。
(4)アセスメント評価
「四日市高校 SSH 事業の評価」の最後の欄は、外部評価
者の記入欄である。この評価の視点は、自己評価のそれと
全く視点が異なる。外部評価者は、その事業の正当性を評
価することを評価活動の目的としているので、評価の視点
は、「事業の目的と方法がミスマッチしていないか」「評価
資料と自己評価の関係は正当か」「事業に対する予算の配分
は重点度に合致しているか」等の正当性についての評価(ア
セスメント)である。平成15年度より、三重県教育委員
会では学校経営品質という考え方を導入し、アセッサーの
育成を行っているが、有識者や地域の方々を外部評価者と
して招聘する場合、その方々が経営品質の知識を持ってい
るとは限らないし、経営品質の研修してもらうわけにもい
かない。そこで、このような、自己評価理由の説明と正当
性評価の組み合わせ方式をとることにした。
3
組織と手順について
(1)運営指導委員会
本校の平成16年度 SSH 事業のために、三重県教育委員
会が設置している運営指導委員会のメンバーは下記の通り
である。
①大学関係者2名(名古屋大学・三重大学)
②企業関係者2名(中部電力・三菱化学)
③保護者2名(PTA役員、SSH クラス保護者)
④学校評議員1名(県立学校元校長)
⑤管理機関(県教育委員会高校教育室2名、研修グルー
プ2名)
他の SSH 研究指定校では、特に大学の付属高校等の場合、
各事業の計画立案、運営実施に運営指導委員が深く関与し
ている場合も少なくない。公立高校では、大学や研究機関
との連携が付属高校ほど密接ではなく、教育委員会も多く
の高校を監督しており、一校の事業に多くの力をさけない
現状がある。そこで、運営指導委員会が事業運営に直接関
与するのではなく、評価やアドバイスの役割を果たすこと
が適当ではないかと考える。
(2)評価の手順
評価の手順は下記のように行う。
①各事業終了後、担当者がアンケートを実施する。
②アンケート集計担当者が分析し、カリキュラム開発委
員会で報告する。
③年度末に自己評価報告書を作成する。
④カリキュラム開発委員会で評価結果を確認し、事業評
価資料に記入する。
⑤運営指導委員会の各委員に「自己評価資料」、「四日市
高校 SSH 事業の評価」および付属資料を送り、アセスメ
ント評価をしてもらう。
⑥アセスメント評価を管理機関(三重県教育委員会)が
調整して、最終評価を四日市高校に通知する。
4
教育分野の事業の評価とQCから経営品質まで
近年、教育や行政において評価活動が盛んに行われはじ
めたが、企業においてはすでに70年代にQC( Quality
Controal)活動が製造業の現場で盛んであった。この活動は、
事業所全体で取り組んだ形のTQC(Total Quality Controal)
へ発展し、企業経営と結びついたTQM( Total Quality
Management)となっている。今般の SSH 事業の評価システ
ムの開発は、この考え方を適用した。
各事業担当者は自分に任せられた事業をその目的を達成
できるように、努力している。これは、個々のQCである。
本校では各事業担当者が SSH 事業のねらいを共有し、各事
業の実施結果がアンケートとして結果は校内LAN上で公
開されており職員全員が共有している。各事業担当者は、
平成15年度結果を意識し、平成16年度の事業を企画し
てきた。さらに、事業成果の価値提供先の把握とそれぞれ
のニーズや教育課題を事業担当者が共有することができれ
ば、SSH 事業という1事業の範囲ではあるがTQMのレベ
ルに達することができる。
企業が70年代から経営改革に取り組んできたが、今、
行政や教育でその道を急激にたどっている。その意味でQ
CからTQMへの企業評価活動の歴史に学ぶべきものは多
い。QC活動は「いかにして安定した品質を市場に供給す
るか」という製造現場の意欲から発展していったが、今回
の四日市高校の SSH 事業は最初に個々のQCから始まって
いるわけではないが、現状や事業のねらいを共有し、その
ねらいを各担当者が事業企画で反映しようと努力している
ことで、TQMの手法を取り入れているといえる。
今、三重県では学校経営品質に取り組んでおり、平成1
6年度の事業評価(シート)から「SSH 事業のねらい」欄
で反映した。しかし、顧客を将来の日本社会と考えるか、
生徒・保護者と考えるかによって、価値前提が異なってく
る。教育に経営品質の考えを持ち込んだ場合の根本的な難
しさにぶつかっている。この課題は、生徒・保護者に SSH
事業のねらいを説明することによって、社会と生徒・保護
者の価値観の摺り合わせに努力しなければならないところ
である。
5
おわりに
教育において設定された目標は、1週間程度の短い期間
で成果が期待されるものから20年程度のものまで多様で
ある。SSH 事業全体の評価は、20年先に日本が科学技術
立国として国際社会に貢献することができる人材が育って
いるかどうかであるので、評価の確定までには時間を要す
る。運営指導委員の助言を得ながら、企業活動で開発され
たTQMや経営品質の成果を参考に、教育分野の事業に見
合った評価システムで評価を行っていきたい。
- 102 -
6章 資料
1.教育課程表
(1)平成16年度入学生教育課程表
三重県立四日市高等学校(全日制) 科目
標準
単位
国語表現Ⅰ
2
教科
1年
SSH 文系必修 選択
2年
理系
三重県立四日市高等学校(全日制 国際科学コース) SSH 文系必修
3年
理系必修 選択 SSH必修
国語表現Ⅱ
2
国語総合
4
現代文
4
3
3
2
2
2
2
古典
4
3
3
3
3
3
3
古典講読
2
国語
5
2
世界史B
4
日本史A
2
2
△
2
△
△
2
△
4
国語表現Ⅰ
2
1年
SSH
必修
4
4
2
2
地歴
2
現代文
4
2
2
2
2
2
古典
4
3
3
3
3
3
古典講読
2
6
5
2
世界史A
2
2
世界史B
4
日本史A
2
△
2
日本史B
2
△
2
△
2
△
2
4
△
2
△
2
△
2
△
2
地理A
2
△
2
2
地理B
4
△
2
4
△
2
△
2
△
△
4
4
4
2
4
2
2
2
△
2
△
2
△
2
△
2
2
△
4
2
△
4
4
2
△
4
4
近現代史(学)
公民
現代社会
2
4
4
2
倫理
2
4
4
2
政治・経済
2
4
4
2
2
2
1
2
数学Ⅰ
3
数学Ⅱ
4
数学Ⅲ
3
数学
数学A
2
数学B
2
数学C
2
4
4
4
2
2
2
数学総合(学)
4
4
4
4
政治・経済
2
4
4
2
数学基礎
2
数学Ⅰ
3
数学Ⅱ
4
数学Ⅲ
3
数学A
2
数学B
2
数学C
2
4
現代数理科学概論
SSH
2
スーパーサイエンスⅡ
2
理科基礎
2
2
理科総合B
2
物理Ⅰ
3
理科
物理Ⅱ
3
化学Ⅰ
3
2
2
□
3
3
□
3
□
3
4
4
□
3
3
3
4
2
4
2
3
3
2
4
2
2
2
3
4
□
4
2
理科総合A
2
理科総合B
2
物理Ⅰ
3
物理Ⅱ
3
化学Ⅰ
3
化学Ⅱ
3
生物Ⅰ
3
生物Ⅱ
3
2
□
4
理科
4
2
理科基礎
2
2
2
2
4
2
4
2
2
■
4
■
4
■
4
4
3
生物Ⅱ
3
地学Ⅰ
3
地学Ⅰ
3
地学Ⅱ
3
地学Ⅱ
3
国際科学史(学)
2
2
環境科学(学)
2
2
4
3
□
3
□
3
4
4
4
4
4
□
4
2
□
4
体育
7~8
2
2
3
3
2
保健
2
1
1
1
1
1
音楽Ⅰ
2
音楽Ⅱ
2
音楽Ⅲ
2
美術Ⅰ
2
美術Ⅱ
2
美術Ⅲ
2
書道Ⅰ
2
書道Ⅱ
2
書道Ⅲ
2
工芸Ⅰ
2
工芸Ⅱ
2
◇
2
◇
2
▲
1
▲
1
◇
3
2
3
3
1
1
2
2
◇
◇
2
2
◇
2
◇
2
▲
1
▲
1
▲
1
▲
1
◇
芸術
◇
保健
2
音楽Ⅰ
2
音楽Ⅱ
2
音楽Ⅲ
2
美術Ⅰ
2
美術Ⅱ
2
美術Ⅲ
2
書道Ⅰ
2
書道Ⅱ
2
2
書道Ⅲ
2
工芸Ⅰ
2
工芸Ⅱ
2
1
1
7~8
2
1
1
体育
2
3
3
1
◇
2
◇
2
3
3
1
1
1
2
◇
2
◇
2
2
3
■
3
2
2
2
2
3
3
2
2
2
2
2
2
2
2
◇
■
2
3
2
◇
3
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
工芸Ⅲ
2
2
3
3
2
2
外国語
4
4
オーラル・コミュニケーションⅠ
2
2
2
■
2
4
3
3
2
2
生物Ⅰ
保体
2
中国語(学)
2
2
2
2
2
2
2
2
2
工芸Ⅲ
総合英語
オーラル・コミュニケーションⅠ
2
英語理解
3
3
4
3
3
オーラル・コミュニケーションⅡ
4
英語表現
2
2
2
2
2
コンピュータ・LL演習
英語Ⅰ
3
英語Ⅱ
4
リ-ディング
4
ライティング
4
外国語
3
3
英語
4
4
3
3
2
3
2
2
家庭基礎
2
家庭総合
4
生活技術
4
2
1
1
3
3
2
2
2
2
情報B
2
▲
2
4
▲
2
生活技術
4
情報
情報C
2
1
1
科目の単位数の計
32
32
29
特別活動 ホームルーム活動
1
1
1
週あたり授業時数
2
家庭総合
情報A
1
総合的な学習の時間
家庭基礎
1
1
32
32
70時間 70時間
35
35
35時間
34
1
1
▲
2
▲
2
18
14
28
4
30
情報B
2
情報C
2
1
1
1
33
33
33
2
2
2
2
2
2
1
科目の単位数の計
32
32
特別活動 ホームルーム活動
1
1
1
1
70時間
70時間
35時間
35時間
35
35
34
34
週あたり授業時数
2
2
2
総合的な学習の時間
3
2
1
2
情報A
2
家庭応用(学)
2
家庭応用(学)
情報
2
英米事情(学)
2
4
家庭
家庭
4
2
スーパーサイエンスⅠ
保体
芸術
3
化学Ⅱ
□
2
スーパーサイエンスⅡ
2
理科総合A
2
4
計算処理(学)
スーパーサイエンスⅠ
4
2
現代数理科学概論
SSH
4
4
2
数学総合(学)
3
4
4
2
3
4
2
2
2
4
2
数学
4
4
倫理
4
4
4
現代社会
公民
4
4
2
2
国際関係(学)
数学基礎
2
2
2
4
選択
4
4
4
SSH
国語総合
地理A
△
3年
選択 文系必修 選択 理系必修 選択
国語表現Ⅱ
日本史B
地理B
2年
選択 SSH
古典鑑賞(学)
2
2
標準
単位
国語
2
世界史A
科目
教科
選択
5
古典鑑賞(学)
地歴
選択
1
1
30
2
30
2
18
14
28
4
28
1
1
33
33
33
備考
35時間 35時間
34
34
備考
必履修科目…地歴科で、各学年△から1つ必修選択。
選択科目「家庭総合」を選択した場合、▲2は「家庭総合」を履修する。
理科で、■から2つ必修選択。
選択科目「家庭総合」を選択しない場合、▲2は「家庭基礎」を履修する。
芸術科で、◇より1つ必修選択。
必履修科目…地歴科で、各学年△から1つ必修選択。
選択科目「芸術Ⅱ」を選択した場合、▲1で「芸術Ⅱ」を履修する。
理科で、各学年□から1つ必修選択。
選択科目「芸術Ⅱ」を選択しない場合、▲1で「芸術Ⅰ」を履修する。
芸術科で、◇より1つ必修選択。
- 103 -
4
1
(2)平成15年度入学生教育課程表
三重県立四日市高等学校(全日制)
学科名
教科
科目
国語
国語表現Ⅰ
国語表現Ⅱ
国語総合
現代文
古典
古典講読
三重県立四日市高等学校(全日制 国際科学コース)
普通科
標準
1年
単位 普通科 SSH
2
2
4
4
4
2
5
学科名
3年
2年
A
B
A必修
B必修
教科
科目
国語
国語表現Ⅰ
国語表現Ⅱ
国語総合
現代文
古典
古典講読
5
古典鑑賞(学)
国語Ⅰ
国語Ⅱ
国語表現
現代文
現代語
古典Ⅰ
古典Ⅱ
古典講読
公民
数学
世界史A
世界史B
日本史A
日本史B
地理A
地理B
現代社会
倫理
政治・経済
現代社会
倫理
政治経済
数学基礎
数学Ⅰ
数学Ⅱ
数学Ⅲ
数学A
数学B
数学C
国語Ⅰ
国語Ⅱ
国語表現
現代文
現代語
古典Ⅰ
古典Ⅱ
古典講読
2
2
2
3
3
3
2
2
2
△
3
3
3
2
3
2
4
2
4
2
4
2
2
2
4
2
2
2
3
4
3
2
2
2
理科
2
△
3
△
3
△
3
3
3
△
3
△
3
△
3
3
3
2
公民
2
4
2
3
3
2
3
3
4
3
3
2
2
2
2
2
2
3
3
3
3
3
3
3
3
芸術
外国語
2
3
3
3
2
2
3
4
2
4
2
2
4
2
2
4
2
2
4
2
△
3
△
2
△
3
4
3
3
△
3
△
3
4
3
2
1
3
1
3
1
2
2
3
2
3
3
3
家庭
リ-ディング
ライティング
外国事情
家庭基礎
家庭総合
生活技術
3
情報
家庭一般
食物
情報A
情報B
情報C
3
2
3
2
4
2
4
2
4
2
2
2
△
△
3
3
△
△
△
3
3
3
△
3
3
3
△
3
4
4
芸術
外国語
4
4
2
2
2
4
4
3
3
理科基礎
理科総合A
理科総合B
物理Ⅰ
物理Ⅱ
化学Ⅰ
化学Ⅱ
生物Ⅰ
生物Ⅱ
地学Ⅰ
地学Ⅱ
3
体育
保健
体育
保健
音・美・書・工Ⅰ
音・美・書・工Ⅱ
音・美・書・工Ⅲ
中国語(学)
オーラル・コミュニケーションⅠ
2
2
2
4
2
2
2
英語
3
2
4
2
2
3
4
3
2
2
2
4
4
2
2
4
3
3
2
2
2
2
4
2
4
2
2
2
2
2
4
2
2
2
2
3
2
3
2
2
2
3
3
3
3
3
3
3
3
2
2
2
2
4
2
4
2
2
4
2
2
4
2
2
4
2
2
2
△
△
3
3
△
3
3
2
2
△
SS(学) 現代数理科学概論(学)
科目の授業回数の計
特別活動 ホームルーム活動
総合的な学習の時間
週あたり授業時数
備考
2
2
2
2
3
3
2
3
1
3
1
3
1
2
2
3
1
32.0
1
2
34.0
1
情報
31.0
1
31.0
1
32
32
70時間 70時間
35
37
22.0
3
2
3
3
2
3
2
3
2
3
3
3
3
3
2
2
2
4
4
家庭応用(学)
3
1
4
3
3
3
1
総合英語
英語理解
英語表現
家庭基礎
家庭総合
生活技術
4
4
7
2
9
2
2
2
2
コンピュータ・LL演習
家庭
2
3
3
3
外国事情
2
4
4
2
3
3
中国語(学)
オーラル・コミュニケーションC
2
3
3
国際科学(学)
保体
家庭応用(学)
2
環境科学(学)
3
3
英米事情(学)
オーラル・コミュニケーションC
数学基礎
数学Ⅰ
数学Ⅱ
数学Ⅲ
数学A
数学B
数学C
理科総合
物理ⅠA
物理ⅠB
物理Ⅱ
化学ⅠA
化学ⅠB
化学Ⅱ
生物ⅠA
生物ⅠB
生物Ⅱ
地学ⅠA
地学ⅠB
地学Ⅱ
3
△
2
オーラル・コミュニケーションB
2
環境科学(学)
国際科学史(学)
3
2
2
2
2
4
3
4
4
4
英語Ⅰ
英語Ⅱ
3
計算処理(学)
音・美・書・工Ⅰ
音・美・書・工Ⅱ
音・美・書・工Ⅲ
オーラル・コミュニケーションA
現代社会
倫理
政治・経済
数学Ⅰ
数学Ⅱ
数学Ⅲ
数学A
数学B
数学C
2
理科
2
1
英語Ⅰ
英語Ⅱ
リ-ディング
ライティング
2
3
計算処理(学)
3
7
2
9
2
オーラル・コミュニケーションⅡ
2
倫理購読(学)
国際関係(学)
3
体育
保健
体育
保健
オーラル・コミュニケーションⅠ
世界史A
世界史B
日本史A
日本史B
地理A
地理B
現代社会
倫理
政治経済
数学
2
4
4
2
4
2
3
3
2
倫理購読(学)
国際関係(学)
4
環境科学(学)
保体
3年
B必修
6
近現代史(学)
環境科学(学)
理科総合
物理ⅠA
物理ⅠB
物理Ⅱ
化学ⅠA
化学ⅠB
化学Ⅱ
生物ⅠA
生物ⅠB
生物Ⅱ
地学ⅠA
地学ⅠB
地学Ⅱ
6
A
古典鑑賞(学)
地歴
2
数学総合(学)
数学Ⅰ
数学Ⅱ
数学Ⅲ
数学A
数学B
数学C
理科基礎
理科総合A
理科総合B
物理Ⅰ
物理Ⅱ
化学Ⅰ
化学Ⅱ
生物Ⅰ
生物Ⅱ
地学Ⅰ
地学Ⅱ
2
2
4
4
4
2
普通科国際科学コース
2年
A必修
B
古典鑑賞(学)
4
4
2
4
2
3
3
2
古典鑑賞(学)
地歴
標準
1年
単位 国際科学 SSH
9.0
1
32
SSとは、学校設定教科スーパーサイエンスの略称である。
必履修必履修科目……各教科で、△から1つ選択。
28.0
3.0
1
32
家庭一般
食物
情報A
情報B
情報C
4
2
2
2
2
2
SS(学) 現代数理科学概論(学)
科目の授業回数の計
特別活動 ホームルーム活動
総合的な学習の時間
週あたり授業時数
備考
1
1
32.0
1
2
34.0
1
2
2
31.0
1
31.0
1
32
32
70時間 70時間
35
37
25.0
6.0
1
32
SSとは、学校設定教科スーパーサイエンスの略称である。
必履修必履修科目……各教科で、△から1つ選択。
- 104 -
28.0
3.0
1
32
2.組織
H 17年度
運
営
指
導
委
員
会
事
業
企
画
委
員
会
総
務
運
営
チ
|
ム
活
動
支
援
チ
|
ム
カ
リ
キ
ュ
ラ
ム
開
発
チ
|
ム
名
中 村
神 原
那 須
宇佐美
赤 根
井 村
安 元
山 川
早 川
落 合
鵜 山
細
川
阿
桜
倉
林
松
山
松
武
松
前
新 男
淳
素 巳
隆 生
孝 一
歌 子
浩
政 美
巌
英 次
義 晃
名
野
北
部
井
内
前
道太郎
あや子
幸 夫
景 子
賦左夫
眞 司
岡 泰 之
口 雅 弘
岡
学
智 孝 好
宮 秀 樹
三重県立四日市高等学校
SSH 事 業 研 究 開 発 担 当 者 一 覧
所
属
名古屋大学大学院工学研究科 教授
三重大学生物資源学部 教授
中部電力川越火力発電所 副所長
三 菱 化 学 科 学 技 術 研 究 セ ン タ ー R&TD 事 業 部 門
元県立高等学校長
四 日 市 高 校 PTA 副 会 長
四 日 市 高 校 PTA SSH ク ラ ス 保 護 者
三重県教育委員会高校教育室 室長
三重県教育委員会高校教育室 主事
三重県教育委員会総合教育センター 主幹
三重県教育委員会総合教育センター 研修主事
担 当 業 務
三重県立四日市高等学校長
総括・渉外
〃教頭 渉外
〃教頭 開発責任者
〃教諭 企画立案
〃教諭 企画立案
〃教諭 企画立案
〃教諭 企画立案
〃教諭 企画立案
〃教諭 企画立案
〃事務長
〃事務次長 事務経理担当
名
前
林
眞 司
杉 山 康 司
河 西 善 哉
松 岡
学
小 谷 大 介
勝
美 弥 子
北 後 知 尋
山 口 雅 弘
青 木
健
横 田 秀 樹
大 川 暢 彦
木 村 眞 知 子
川 口 智 美
松 林 哲 雄
松 宮 秀 樹
各 教 科 教 員
担 当 業 務
〃教諭 チームチーフ 総務 庶務 渉外
〃教諭 サブチーフ
公開授業 研究大会 教育課程
〃 教 諭 広 報 PTA
〃教諭 報告書 アンケート調査
〃常勤講師
学習評価、
〃教諭 学習評価
〃教諭 アンケート調査
〃教諭 アンケート調査 学習評価 成績追跡
〃 教 諭 SSH 講 演 会 SSH イ ベ ン ト
〃教諭 成績追跡
〃教諭 成績追跡
〃 教 諭 SSH 書 籍 管 理 利 用 状 況 調 査
〃実習教諭 備品管理 実験室整備
〃実習教諭 備品管理 実験室整備
〃 事 務 次 長 JST 対 応 予 算 決 算
授業公開・研究大会等の支援
名
前
倉 内 賦左夫
松 岡 泰 之
岡 本
亙
大 川 暢 彦
伊 藤 泰 二
H R 担当教員
担 当 業 務
〃教諭
チームチーフ 3学年発表会等
〃教諭
チームチーフ 2学年発表会等
〃教諭
サブチーフ
受講の振り分け、研修旅行等
〃教諭
サブチーフ
受講の振り分け、研修旅行等
〃教諭
1学年SSHクラブ 受講の振り分け、研修旅行等
生徒指導、研修旅行・夏期集中講座の付添の支援
名
前
松 岡 泰 之
桜 井 景 子
大 川 暢 彦
日 紫 喜 正 展
川 喜 田 真 也
阿 部 幸 夫
林
眞 司
伊 藤 泰 二
松 岡
学
山 口 雅 弘
川 口 智 美
松 林 哲 雄
担 当 業 務
〃 教 諭 チ ー ム チ ー フ 「現代数理科学概論」授業研究 テキスト開発
〃教諭 サブチーフ
「現代数理科学概論」授業研究 テキスト開発
〃教諭 サブチーフ
「現代数理科学概論」授業研究 テキスト開発
〃教諭 サブチーフ
SS Ⅰ 授 業 開 発 、 大 学 と の 交 渉
〃 教 諭 「現代数理科学概論」授業研究 テキスト開発 SS Ⅰ 授 業 開 発
〃 教 頭 「現代数理科学概論」授業研究 テキスト開発
〃 教 諭 SS Ⅰ 授 業 開 発 、 SS Ⅱ 企 画 立 案 、 大 学 と の 交 渉
〃 教 諭 SS Ⅰ 授 業 開 発 、 SS Ⅱ 企 画 立 案 、 S S H ク ラ ブ 指 導
〃 教 諭 SS Ⅰ 授 業 開 発 、 SS Ⅱ 企 画 立 案 、 大 学 と の 交 渉
〃 教 諭 SS Ⅰ 授 業 開 発 、 SS Ⅱ 企 画 立 案 、 大 学 と の 交 渉
〃実習教諭
実験準備 指導 装置制作
〃実習教諭
実験準備 指導 装置制作
- 105 -
四日市高校SSH事業H16年度実施コンセプト
■ 実施組織総合概念図 ■
四日市高校
活動支援
チーム
カリキュラム
開発チーム
総務運営
チーム
•文部科学省 JST
•三重県教育委員会
指導・研究支援
S
S
H
事
業
企
画
委
員
会
(部活動支援チーム)
管理機関
運営指導委
評価・指導
委員会
連携支援機関
支援・指導・プログラム
相談
H16年度SSH事業
運営支援
委員会
名古屋大学
•SSH総合指導
•プログラム提供
依頼
三重大学
地元企業
公的研究機関
•施設の協力
各事業のねらい
事業4
複数の事業を総合評価する
システムの開発
アセスメント
未来を担う
未来を担う
科学系人材の育成
科学系人材の育成
事業1
事業1
事業2
事業2
事業3
事業3
確かな学力の育成
確かな学力の育成
カリキュラム開発
カリキュラム開発
望ましい人間関係
望ましい人間関係
・豊かな心の育成
・豊かな心の育成
フィールドワーク、
フィールドワーク、
講演会
講演会
科学への興味関心
科学への興味関心
・科学への夢
・科学への夢
夏期集中講座・学会
夏期集中講座・学会
(大学との連携)
(大学との連携)
数学・理科・情報を
数学・理科・情報を
中心とする学際的
中心とする学際的
領域の基礎学力
領域の基礎学力
1-A 「現代数理科学概論」
「現代数理科学概論」
1-A
の授業
の授業
論理的思考力
論理的思考力
・独創性
・独創性
・創造性
・創造性
1-B 実験・「SSⅠ,Ⅱ」の授業
実験・「SSⅠ,Ⅱ」の授業
1-B
- 106 -
3.運営指導委員会記録
平成17年度
運営指導委員会
(1)運営指導委員(本報告書第6章2.組織を参照)
(2)第1回
運営指導委員会
日時
平成17年7月8日
出席者13名
〔協議事項〕
ア
平 成 1 6 年 度 SSH 事 業 実 施 経 過
イ
平 成 1 7 年 度 SSH 事 業 計 画
ウ
SSH 公 開 授 業 に つ い て
〔意見交換〕
① 公 開 授 業 に つ い て ( 現 代 数 理 科 学 概 論 を 公 開 。「 コ ン デ ン サ ー の 放 電 曲 線 」 を 数 学
的に捉え、微分方程式で得られた式と、実際に実験でコンデンサーの放電を行っ
た時の値を測定しグラフ化することにより、測定結果と理論が一致するかを見る
と い う 内 容 。)
・2年生の7月でこの内容の授業は高度である。
・微分方程式などは指導要領の範囲を超えているものであるにもかかわらず、生徒
の理解度の高さに驚いたという感想も聞かれた。
②生徒研究発表会について
・ 3 年 生 の SS Ⅱ の 発 表 内 容 は 大 変 高 度 で あ り 、 大 学 の 卒 論 レ ベ ル で あ る 。
・高度過ぎて自分の専門分野以外はついていけない、という感想もあった。
(3)第2回
運営指導委員会
日時
平成17年12月20日
出席者13名
〔協議事項〕
ア
平 成 1 7 年 度 SSH 事 業 の 実 施 状 況 に つ い て
イ
平 成 1 7 年 度 SSH 事 業 の 事 業 評 価 に つ い て
ウ
来 年 度 以 降 の 本 校 SSH 事 業 に つ い て
エ
平 成 1 8 年 度 SSH 事 業 の 事 業 計 画 に つ い て
〔意見交換〕
① 全 国 SSH 生 徒 研 究 発 表 会 で 科 学 技 術 振 興 機 構 理 事 長 賞 受 賞 に つ い て
・発表レベルが高い。
・大学4年生の卒論レベルと言うことができる。
・レベルが高すぎて専門外の者には内容の理解が困難だった。
②教職員の研究力向上(学会発表)状況について
・ 高 校 の 教 員 が 学 会 で 発 表 す る こ と は 少 な く 、学 会 で 発 表 す る こ と の 意 義 は 大 き い 。
・学会で発表できるくらいの力量を教員につけることが大事。
・学会発表の経験が、教員の指導力のアップ、生徒の学力向上など学校全体の底上
げにつながる。
③現代数理科学概論』のテキストについて
・学会でも『現代数理科学概論』テキストの反応は大きかった。
・理科と数学からの教員が寄って両方の側面から教材を考えると興味を持ってもら
えるいいものが出来る。
・数学科は理科から分かれたから、純粋性を保っているのだ、という意見がある。
・数学科は、理科と提携してもっと応用的なことをしていくべきだ、という意見があ
る。
- 107 -
④ SSH 生 と 普 通 の 生 徒 と の 乖 離 の 懸 念 に つ い て
・ SSH 生 は 変 わ っ て い る と 周 囲 の 生 徒 に 見 ら れ て い る 。
・ SSH 生 は デ ジ タ ル よ り ア ナ ロ グ 、 携 帯 よ り 腕 時 計 を 好 む 傾 向 が あ る 。
・ SSH の ク ラ ス を 作 り 、 ま ず 核 に な る 生 徒 を 育 て る こ と で 初 め て レ ベ ル の 高 い こ と が
実現可能である。
・ SSH 生 と 普 通 の 生 徒 と が 、 教 員 の サ ポ ー ト に よ っ て う ま く コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 取
り合っていくのが望ましい。
⑤ 来 年 度 以 降 の SSH 事 業 に つ い て
・ SSH 事 業 を こ の 1 年 で 片 づ け て 次 に つ な げ る 準 備 を す る の が い い 。
・この事業が終わった後、それをどう発展させていくかが大事。
⑥ 『 SS Ⅰ 』 の テ キ ス ト 内 容 に つ い て
・科学者としてのスキルや倫理観など、資質を育てることを目的とした内容である。
・科学者としてのスキルや倫理観をどの学年で教育するのか、全体的な見通しの中で
の位置付けを考えていくことが、これからの課題。
・全般的に充分な計画性と継続性を持っている。
⑦ こ れ ま で の 成 果 を SS ク ラ ブ 等 に つ な げ て い く た め に
・この事業に今まで係わってきた高大双方の関係者の協力が大事である。
・継続のためのポイントは、キーマンになる先生がその学校にいることである。
・継続には大学と高校の教育のコンテンツの確立が大事。
・カリキュラムの一つとして確立することで継続は容易に可能になる。
(4)第3回
運営指導委員会
日時
平 成 18 年 2 月 10 日
出席者17名
〔協議事項〕
ア
平 成 1 7 年 度 SSH 事 業 の 事 業 評 価 に つ い て
イ
取り組みアンケートについて
ウ
その他
〔意見交換〕
① 文部科学省と四日市高等学校の事業内容の整合性について
・生徒の「自主性」を尊重するのがよい。
・実験に関しては生徒たちから充分な手応えが得られている。
・講義についてはもっと改良の余地がある。
・講義やフィールドワークがどの程度生徒に浸透しているのかわかるような工夫が必
要である。
・生徒に興味関心を持たせる内容が大事。
・よく内容を知りもしないで興味関心がないという、食わず嫌いをどう克服するかが
これからの課題。
・どんどんフィールドワークに連れ出して、違う世界を見せるのが効果的。今まで知
らなかったいろんな分野に興味が出る。
・2年生にもなればフィールドワークの興味関心も人によって差が出てくるため、全
員で同じテーマをやるのは問題がある。
・生徒に選ばせるテーマの分野を広げる必要がある。
・学会を聴講させることによって、生徒の意識を変える事が出来たのは大きな成果だ
った。
・学会を生徒に聴講させるには、大学からの情報が不可欠である。
②自己評価について
- 108 -
・精度を上げる工夫が必要。
・自己評価を事後だけではなく事前にも入れれば、解析の精度は上がる。
・数値化出来ない項目の内容が問題である。
・生徒のアンケートの捉え方によって、答え方が変わってくるのが問題。
・コメントに出てくるものを、もう少し丁寧に分析することが必要。
・数値に表れてこないようなものについては、色のグラディエーションで表すよう
な解析も考えていく必要がある、とのアイディアも出された。
③自己評価報告書の結果について
・図書の貸出率を生徒の興味関心をはかる客観的データとして見るのが有効。
・ 1 月 20 日 現 在 、 SSH 図 書 の 貸 出 率 は 4.9 % 、 全 体 に 占 め る 占 有 率 は 4.0 % で あ り 、
SSH 図 書 の 方 が 貸 出 率 は 高 い 。
・ 去 年 の SSH 図 書 の 貸 出 率 は 12 % で あ り 、 こ れ は 去 年 と 比 べ て SSH ク ラ ス の 在 籍 数
が減少したからだ、との見方が示された。
・教員の学会発表についての数値が低いが、過小評価である。学会に出ただけでも大
きく評価出来る。
・ 学 会 の 会 場 の 反 応 が 今 一 つ だ と し て も 、そ れ は ど う い う セ ッ シ ョ ン で 発 表 し た の か 、
誰が聞きに来ていたのかによっても大きく違う。
・学会での発表については、数値よりもコメントとか、上司の意見とかを入れた方が
いいのではないか。
④指導教官取り組みアンケートについて
・高大連携は高校側と大学側でお互いにイメージが違う。
・高大連携は大学側にとって人員確保。
・高大連携は高校側にとってインターンシップなどの、一つの学びの場。
・高大連携はギブアンドテイクの関係になっていない。これからの課題である。
・高大連携を成功させるには、双方の意見交換が必要である。
・高大が同じ方向を向いていなければ、成功しない。
・国公立大学の独立行政法人化などで、大学はとても忙しくなってきている。
・学部と大学院の試験の合間に集中講義となるが、複数大学に複数高校が連携してい
るため、集中講義の日程も高校間で取り合いという状況。
・大学の仕事は教育ではなく研究であるので、このままでは世界へ向けての日本の発
信が疎かになるのでは、という懸念がある。
・大学のオープンキャンパスでも学部が計画しているものの中には、内容的に科学に
絞 り 込 ん だ こ と を や っ て い る も の も あ る 。 そ こ で SSH と 係 わ っ て く る 部 分 も あ り 、
それを集中講義として利用していく方法も考えられる。
・高大連携に伴う大学側の負荷をいかに軽減していくかが、これからの課題である。
・いろいろな実験をすぐに何処ででもやってみせる事の出来る、そんな簡単な実験キ
ットの開発も必要。
- 109 -
4.研究発表会参加記録
(1)今年度の他校研究発表会への参加
・愛 知 県 立 一 宮 高 等 学 校「 ス ー パ ー サ イ エ ン ス ハ イ ス ク ー ル 研 究 開 発 成 果 中 間 報 告 会 」
1名参加 10月25日(火)
・ 三 重 県 立 松 阪 高 等 学 校 「サイエンス・エクスプローラー事業報告会」
2 名 参 加 11月2日(水)
・静岡県立磐田南高等学校「スーパーサイエンスハイスクール研究成果発表会」
1 名 参 加 11月2日(水)
・岐阜県立岐山高等学校「スーパーサイエンスハイスクール研究発表会」
1 名 参 加 11月4日(金)
・千葉市立千葉高等学校「スーパーサイエンスハイスクール研究発表会」
1 名 参 加 11月11日(金)
・ 岐 阜 県 立 恵 那 高 等 学 校 「 SSH 課 題 研 究 発 表 会 」
1 名 参 加 11月25日(金)
・ 石 川 県 立 金 沢 泉 丘 高 等 学 校 「 金 沢 泉 丘 SSH 研 究 発 表 会 」
1 名 参 加 12月16日(金)
・三重県立松阪高等学校研究発表会「スーパーサイエンスハイスクール生徒発表会・
事業報告会」
5 名 参 加 2月11日(土)
・ 兵 庫 県 立 神 戸 高 等 学 校 「 SSH 課 題 研 究 発 表 会 」
1 名 参 加 2月22日(水)
・ 京 都 府 立 洛 北 高 等 学 校 SSH 情 報 交 換 の た め の 訪 問
1 名 訪 問 3月16日(木)
(2)本校教員による研究大会講演
・
「平 成 1 7 年 度 全 国 理 科 教 育 大 会 」 8月3日(水)~ 8月5日(金)
東京大学
「数学の導入としての物理実験」教諭 桜井景子
「融合型科目を視野に入れた理科実験の指導」教諭 岡本亙
「学ぶ目的を軸にして融合型科目の提案」教諭 日紫喜正展
・「日本理科教育学会第55回全国大会」 8月4日(木) ~ 8月5日(金)
鳴門教育大学
「観点別評価を柱とした科学技術系人材育成のための学習
評価方法の開発」講師 小谷大介
・「第 8 7 回 全 国 算 数 ・ 数 学 教 育 研 究 大 会 」 8月4日(木) ~ 8月6日(土)
長野西高等学校
「数学・理科を融合した科目開発」教諭 大 川 暢 彦
・「日本理科教育学会第52回東海支部大会」
11月13日(日)
岐阜大学大学
「観点別評価を柱とした科学技術系人材育成のための学習
評価方法の開発」講師 小谷大介
・「三重県高等学校理科教育研究会生物部会三学期研修会」 1月17日(火)
三重県総合教育センター 「四日市高校 SSH 活動報告」教諭 伊藤泰二
・「県立高等学校 確かな学力育成合同研修会」 2月16日(木)
三重県総合文化センター 「スーパーサイエンスハイスクールの取組」教諭 林 眞 司
・「三重県高等学校数学教育研究会第2回研究集会」 2月17日(金)
三重県教育文化会館 「数学・理科を融合した科目開発-現代数理科学概論の授業実
践を通して-」教諭 大 川 暢 彦 ・ 松 岡 泰 之
(3)本校教員による研究誌投稿
・「 四 日 市 高 校 に お け る ス ー パ ー サ イ エ ン ス ハ イ ス ク ー ル 事 業 の 現 状 」
三 重 県 立 四 日 市 高 等 学 校 三 重 県 高 等 学 校 理 科 教 育 研 究 会 誌「 三 重 科 学 第 4 4 号 」
・「 融 合 型 科 目 を 視 野 に 入 れ た 理 科 実 験 の 指 導 」
教 諭 岡 本 亙 三 重 県 高 等 学 校 理 科 教 育 研 究 会 誌 「 三 重 科 学 第 4 5 号 」( 予 定 )
- 110 -
5.購入図書
(1)図書の選定と取り扱いの経緯
スーパーサイエンスハイスクール履修生・一般の生徒共に、科学に興味を持たせ、か
つその多様な興味を十分に満足させるような科学的思考能力を高める目的で、理科・数
学・情報の担当教員が中心となり一昨年度より順次選定を行い図書館に配架している。
また、科目「スーパーサイエンスⅠ」スーパーサイエンスⅡ」において各自の研究にお
ける参考文献として使用したり、生徒のプレゼンテーションの方法を学び能力を高める
ことにも役立てた。
図書館内では入り口付近の目に留まりやすい位置
に S 字型のデザイン書架を使用し専用のコーナーを
設けている。
(2)選定図書数
平成16年度選定数
423冊
平成17年度選定数
71冊
平成18年度選定数
29冊
3年間合計
523冊
昨年・一昨年度に多くの図書を配架することが出来たため、本年度は冊数を絞りより
専門的で高度な研究の参考文献となりうる研究書や総覧などについても選定を行った。
また、スーパーサイエンスハイスクールの事業にて中村修二教授の公演をいただいたこ
とを受け、中村教授の著書の選定も行うなど他事業との関連も持たせた選定も行った。
( 3 )「 理 解 、 興 味 ・ 関 心 を 深 め る た め の 推 薦 図 書 」 一 覧
本報告には、スペースの関係上一覧はあげられないので割愛します。推薦図書につい
ては、別途一覧表を作成し、適宜な場所に常駐し、生徒および教員の利用の利便性の向
上を心がけた。また、専用コーナーの書架上にも関連図書一覧を作成し、どのような本
があるかわかり易い様な工夫を行った。
(4)今年度の総括
昨年・一昨年度に引き続いての書籍の選定購入であったため、その流れをもって発注
・納品・整理・配架を行うことができた。1月末現在、図書館における全貸し出し数3
0 8 6 冊 に 対 し て S S H 関 連 図 書 の 貸 し 出 し 数 は 1 5 1 冊 で あ り 、 そ の 比 率 は 4.9 % で
あ っ た 。 ち な み に 現 在 、 図 書 館 に あ る 貸 し 出 し 可 能 な 本 の 冊 数 の う ち SSH 事 業 に て 購
入 し た 図 書 の 割 合 は 2.9 % で あ る 。今 後 に お い て も 、よ り 一 層 の 有 効 活 用 を 目 指 し た い 。
参考:スーパーサイエンスハイスクール関連の購入図書における他読書集計(多い順)
空想科学読本4
図解雑学
わかる微分・積分
空想科学読本2
図解雑学
フェルマーの最終定理
こんなにヘンだぞ!空想科学読本
絵 で わ か る ゲ ノ ム ・ 遺 伝 子 ・ DNA
図解雑学
空想科学読本
遺 伝 子 組 み 換 え と クローン
空想科学読本3
図解雑学
図解雑学
わかる半導体レーザーの基礎と応用
クローン
三角関数
世界を変えた科学の大理論100
「 空 想 科 学 読 本 」 シ リ ー ズ な ど の 興 味 の 持 ち や す い 内 容 の 本 、「 図 解 雑 学 」 シ リ ー ズ な ど
の難解な内容を分かりやすく紐解いて説明してくれる内容の本が多く読まれた。
- 111 -
波長可変半導体レーザーを使った12C16O2の吸収スペクトル測定
天野 陽介 日沖 勇紀
Abstract
We made high-sensitive and high-resolution absorption spectroscopy for isotopomer analysis using an External Cavity Diode
Laser (ECLD). Our spectroscopic technique is based on Continuous-Wave laser Cavity Ring-Down (CW-CRD) spectroscopy,
which can simply measure absolute density of target isotopomer with high sensitivity.
In this study, we discussed some properties of the infrared ECLD, such as the diode current dependence of the wavelength and
so on, and succeeded in making a narrowband and continuously tunable laser necessary for the high-resolution absorption spectroscopy. And then, we established the high-resolution spectroscopic system based on CW-CRD spectroscopy. As the result, we
were able to obtain the absorption spectrum of carbon dioxide (12C16O2), which had enough high resolution to identify each isotopomer.
1 はじめに
同位体のスペクトル
一般的な分光器により
得られるスペクトル
14
同位体の利用は、 C等の長半減期放射性同位体を用いる
年代測定や各種トレーサーとして用いられるなど様々な分野
に広がってきている。また最近では、放射性同位体に標識さ
れた薬剤を用いるガン検査法であるPET(Positron Emission
Tomography)検査をはじめ、呼気中の安定同位体により標識
された薬剤を分析することで胃潰瘍等の診断を行う手法など
医療分野でも需要が高まり、私たちの身近なものとなりつつあ
図1
り、様々な可能性を秘めている。
同位体のスペクトルと分光器によって得られる
スペクトルのイメージ
そこで私たちは、特定の元素や同位体を含む分子に対する
高分解能吸収分光をコンパクトな計測システムで行うことがで
きる手法の開発を目的とし研究を行った。各同位体分子種
ザーである色素レーザーよりもはるかに小さい)ことがあげら
れる。
(isotopomer:同種分子であるが構成している原子の同位体が
異なるもの)の吸収線(吸収波長)は、一般的にその波長間隔
が狭く、対象とする同位体分子種の存在量も少ないことが多
2.2 半導体レーザーのしくみ
半導体レーザーには光が発生する活性層とその両端のへ
いため、この吸収分光には、波長幅の狭いレーザーと感度の
き開面によって成り立っている。へき開面は平坦な面で全反
高い吸収分光法が必要となる。吸収分光の光源に用いる回
射が起こり、二つのへき開面は平行であるため合わせ鏡のよ
折格子による外部共振器波長可変半導体レーザー(External
(or Extended)Cavity Diode Laser : ECDL)の基礎特性の測定
実験とキャビティーリングダウン(CRD)分光法による二酸化炭
素の同位体吸収分光実験の結果を報告する。
うな構造になり、1 組の共振器を形成している。活性層で発生
した光は共振器によって増幅されながら活性層を往復する。
往復する間に損失があるが、一定値まで増幅されると増幅
分が損失分を上回り、急激にレーザーの出力が上がる。これ
を「レーザー発振」といい、レーザー発振が起きる時の電流を
「閾値電流」という。
2 ECDL のしくみ
レーザー発振が起きている時、この共振器の間を往復する
2.1 ECDL の特徴
光が干渉しあい、定常波ができる。この定常波は次式であら
元素や同位体を含む分子に対する吸収分光実験を行うに
わすことが出来る。
は鋭い線幅の光源が必要になる。一般的な吸収分光に用い
られる白熱灯を用いたものでは線幅が広く分解能が悪いため、
元素や同位体など区別する高分解能吸収分光を行うことはで
きない(図1)。そのため、高分解能吸収分光実験用の光源と
して ECDL を製作した。ECDL の特徴は、非常に鋭い線幅の光
源が得られること、1/1000nm オーダーで波長可変できること、
コンパクトである(一般に分光実験に用いられる波長可変レー
- 112 -
qλ = 2nL
… (1)
(q:定常波の次数, n:媒質の屈折率, L:共振器長 )
これを周波数に直すと次式が得られる。
ν=
c
λ
=
cq
2nL
… (2)
また q が 1 だけ異なる定常波の周波数差、縦モード間隔
(Free Spectral Range = FSR)は次式であらわせる。
FSR =
c
2nL
この各モードの利得曲線の変化を利用し、種々のパラメ
ータを変えることで波長を変化させることができる。それ
ぞれのパラメータを独立して変化させるだけでは、発振モ
ードも独立に変化するので異なる発振モード間での干渉
… (3)
により定在波を形成できなくなり波長変化が不連続にな
( c:光速 )
る。この現象をモードホップと呼ぶ。高分解能吸収分光実
験を行うには連続して波長を変えていくことが望ましく、
光強度が中心振動数における値の 1 / 2 となる振動数の間
このモードホップが起きないようにする工夫が必要であ
の差を半値幅という。半値幅はレーザーの線幅(振動数幅=
る。具体的には各パラメータの変化に対する発振モードの
エネルギー幅)を評価する指標となる。
動きを同期させることになる。そのためレーザー波長のダ
レーザー媒質の
ゲイン曲線
2.3 外部共振器のしくみ
FSR
レーザー素子の両端のへき開面での反射を利用した共振
1次回折光波長幅
器を内部共振器というのに対し、いったんレーザーから出力さ
内部共振器モード
れた光を鏡や回折格子を使いレーザーに戻して共振させるも
レンズによるモード
のを外部共振器という。実験には図2に示すような Littrow 型
外部共振器モード
共振器と呼ばれる外部共振器を使う。レーザーから出てきた
光を回折格子に当て、1次の回折光をもう一度レーザー媒質
図3
に戻す。共振器からの光の取り出しは0次の回折光を用い
イオード電流及び外部共振器長を制御するピエゾ素子の
る。
印加電圧に対する依存性をそれぞれ調べた。
外部共振器には次のようなメリットがある。
①
ECDL での各発振モード間の利得曲線の関係
外部共振器モードの変化に内部共振器モードを同期させ
ることで、同じ発振モードを維持し、波長を連続的に変化
3 ECDL の製作および特性測定
させることができる。
②
外部共振器をつけることで線幅の狭い光を出力できる。
③
いったんレーザーから出た光がもう一度レーザー媒質に
3.1 ECDL の製作方法と実験装置
戻ってくるので外部共振器をつけていない時よりも誘導
外部共振器内の光軸の調整には、閾値がさがる性質を利用
放出が多く起き、さらにレーザーが増幅される。よって閾
した。閾値前後の電流を流し、回折格子の角度を変化させ、
値がさがり、少ない電流でレーザー発振を起すことができ
出力された光が強くなったところで固定した。また半導体レー
る。
ザーのレーザー光は楕円型に出力され、短軸方向(半導体の
接合面方向)に直線偏光している。回折格子は溝方向に直線
鏡
偏光した光の時に最も回折効率が高くなるので偏光が溝方向
になるように素子の角度を調整した。
赤外線レーザーの組み立てには赤外線スコープと赤外線に
半導体レーザ
反射光
1 次回折
反応して色が変化するカードセンサーを用いて行った。
回折格子
内部共振器長
図2
外部共振器
Littrow 型外部共振器
レーザーの波長は、ダイオードに注入する電流、外部共振
器の長さ、ダイオードの温度などに依存する。(例えば、注入
電流を増やすと、内部共振器内の活性層での屈折率が高くな
り、実効的に共振器内の光路長が長くなる。長くなった共振器
で定常波ができるには波長が長くならなければならない。また、
外部共振器の長さを短くすると、定常波ができるには波長が
短くなければならない。)このようにレーザー発振する時の波
長はそれぞれの共振器の発振モードによる。図3は ECDL 内
での各発振モードの利得曲線をあらわした。これら全てを掛け
合わせて残ったものがレーザー発振した時の波長となる。
- 113 -
ECDL なし
図4
ECDL あり
外部共振器有無によるビームプロファイルの違い
レーザー波長の電流に対する依存性を測定した。電流が大
きくなると波長が長くなることがわかった(図7)。波長が不安
定で測定できない箇所、即ちモードホップが観測された。
モードホップを起こしている箇所での、その周波数差がレー
ザーの外部共振器の自由スペクトル領域(FSR:共振器内で
存在し得る定在波間の周波数間隔、図3のピーク間隔)となる。
赤色レーザーで 4.96GHz、赤外レーザーで 4.96GHz となった。
連続的に波長が変化している部分での直線の傾きの平均
値は赤色 LD で 0.0069 nm/mA、赤外 LD で 0.0012nm/mA とな
った。
684.540
684.535
690nm 20.0℃
684.530
製作した ECDL
684.525
波長 [nm]
図5
684.520
以下の実験には、温度・電流コントローラー(THOR LABS,
684.515
ITC102) を使い半導体レーザー(赤色LD : Hitachi, HL6738
684.510
684.505
MG 690nm 35mW)(赤外LD : Mitsubishi, ML976H6F 1550nm
FSR=4.96GHz
684.500
5mW)に流す電流値と温度を制御した。波長測定には波長計
684.495
54
(Advantest Inc. Q8326)を使用した。
56
電流 [mA]
58
60
3.1 半導体レーザーおよび外部共振器の発振特性の測定
1545.92
半導体レーザーおよび外部共振器の発振特性の測定を行
1545.90
とがわかった(図6)。これは 2.3 節で述べた外部共振器のメリ
1545.88
波長 [nm]
った。測定の結果、外部共振器を付けることで閾値がさがるこ
ット③による効果で、出力の大きい赤色 LD では顕著に表れ、
外部共振器なしでは閾値は約 48mA であるのに対し、外部共
1550nm 21.0℃
1545.86
FSR=4.96GHz
1545.84
振器をつけることで閾値が約 42mA となり、閾値が約 6.0[mA]
1545.82
(約 13%)程度さがることがわかった。
1545.80
光電力[mW]
10
18.0
16.0
14.0
12.0
10.0
8.0
6.0
4.0
2.0
0.0
ECDLなし
15
図7
ECDLあり
20
電流 [mA]
25
30
注入電流と発振波長の関係
690nm 20.0℃
3.3 波長のピエゾ素子電圧に対する依存性の測定
波長のピエゾ素子電圧に対する依存性を測定した。ピエゾ
閾値 42.0mA
閾値 48.0mA
0
20
40
電流[mA]
60
素子に印加する電圧を高くすると外部共振器長は短くなるが、
このとき波長が短くなることがわかった(図8)。実験2と同様に
モードホップがおき、波長が不安定になり測定できない箇所が
あった。3.2 節と同様に、モードホップを起こしている箇所での、
その周波数差が外部共振器の FSR はとなる。赤色レーザーで
光電力[mW]
1.4
1.76GHz、赤外レーザーで 1.63GHz となった。3.2 節と異なるの
1.2
ECDLなし
1.0
1550nm 21.0℃
回往復した光同士が干渉してできるモードで実効的に共振器
閾値 9.4mA
長が長くなるためモード間隔が狭くなる)が観測されていると
0.8
0.6
ECDLあり
は、ここでは外部共振器内での高次モード(共振器内で多数
考えられる。
0.4
閾値 10.2mA
0.2
連続的に波長が変化している部分での直線の傾きの平均
0.0
値は赤色 LD で -0.00030nm/V、赤外 LD で ‐0.0014nm/V と
0
5
図6
10
15
電流[mA]
20
25
なった。
注入電流と光強度の関係
3.2 波長の電流に対する依存性の測定
- 114 -
684.500
3.5 波長の温度に対する依存性の測定
684.499
半導体レーザー素子内の屈折率は電流と温度によって変
波長[nm]
684.498
684.497
化するため、内部共振器内の実効的な光路長は温度によって
684.496
も変化させることができる。温度変化による波長変化の割合
684.495
690nm 20.0℃ 54.4mA
684.494
FSR=1.76GHz
は、電流変化やピエゾ素子電圧の変化より大きい(図10)。約
0.099nm/℃で変化することがわかった。実際の吸収分光実験
では、温度を変化させておおまかに目的の波長に合わせてか
684.493
0
20
40
電圧[V]
60
80
ら電流値とピエゾ素子電圧を変化させる。
1548.00
1545.95
1550nm 20.1mA
1547.50
1545.93
波長 [nm]
1550nm 21.0℃ 23.5mA
波長 [nm]
FSR=1.63GHz
1545.91
1547.00
1546.50
1546.00
1545.89
1545.50
1545.87
1545.00
15
1545.85
0
20
40
60
80
10 0
電圧 [V]
図8 ピエゾ素子電圧と発振波長の関係
20
25
30
温度 [℃]
図10 温度と発振波長の関係
35
3.6 縦モード間隔および半値幅の測定
3.4 発振モードを同期させたときの波長変化の測定
製作したECDLの性能を調べるために半値幅の測定を行っ
た。ファブリペロー干渉計(FPI)を用いて半値幅を測定した。
実験2及び実験3の結果から、ピエゾ素子印加電圧に対し
FPI は鏡が 2 枚合わせ鏡のように配置されていて、片方のミ
て、ダイオード電流を赤色 LD は -0.038mA/V、赤外 LD は
-0.128mA/V で変調することで外部共振器と内部共振器のモ
ラー位置がピエゾ素子によって連続的に動いている。このとき
ードを同期できることがわかった。その結果、赤色 LD は非同
光路差が波長の整数倍になったところで定常波ができ、光が
期時の連続的な波長可変域が約 0.004nm であるのに対し、同
出力される。定常波が出来ない時は波の重ね合わせの原理
期させることで 0.013nm と約 3 倍に拡張できた。また赤外 LD
で打ち消しあい光は出力されない。出力された光をフォトダイ
では、非同期時が約 0.013nm に対し同期時は 0.100nm と約 8
オードで検出することで信号を得る。FPI の FSR は、入力する
倍にまで拡張できた (図9)。
波長に関係なく光路差(共振器の長さの数倍)により決まって
いるので、FPI の信号を見ることで、マルチモードになっている
684.540
684.535
非同期
ときの周波数間隔や、波長の広がり具合がわかる。今回の実
同期
684.530
684.525
波長[nm]
験には FSR = 1.00GHz のファブリペロー干渉計を用いた。
684.520
684.515
690nm 20.0℃
684.510
-0.038mA/V
この実験から計算した半値幅は 21 MHz となった。
また、式(2)から計算でそれぞれの FSR を求めた。ここでレ
ーザー素子の長さ(内部共振器長)を 0.25mm、レンズによる共
684.505
684.500
振器長を 4.0mm、外部共振器長を 30mm、ファブリペロー干渉
684.495
計の共振器長を 100mm とした。またレーザー素子内の屈折率
684.490
30
40
50
電圧[V]
60
70
を 3.5 とし、空気中は 1 として計算した。計算結果から、内部共
振器モードで 171GHz、レンズによる内部モードは 32.4GHz、外
部共振器モードで 4.30GHz となった。
1545.96
非同期
1545.94
3.2 節、3.3 節で求めた縦モード間隔より外部共振器モードは
同期
4.96GHz であったので計算で求めた外部共振器モードに近い
波長 [nm]
1545.92
値となっている。
1545.90
1545.88
1545.86
1550nm 21.0℃
1545.84
-0.128mA/V
1545.82
0
20
40
60
電圧 [V]
80
100
図9 同期時、非同期時のピエゾ素子電圧と発振波長
- 115 -
で表される。
0.14
多重反射セル内に光を吸収する物質がある場合、鏡の反
0.12
縦モード間隔 1.00GHz
射による減衰と吸収物質による減衰が起こるので、σを吸収
出力[V]
0.10
物質の吸収断面積、n を吸収物質の分子数密度、c を光速
0.08
とおくと次式のようになる。
0.06
I (t ) = I 0 exp(− β t )
0.04
0.02
半値幅 0.0210GHz
ここでβは吸収物質のある場合の減衰率であり
0.00
0.00
図11
… (6)
0.02
0.04
0.06
時間[sec]
0.08
0.10
β = β 0 + σ nc
赤外LDファブリペロー干渉計による縦モードの様子
… (7)
である。
この減衰信号をリングダウン信号といい、この減衰率βは
4 キャビティーリングダウン分光法による二酸化炭素同位体
上式の両辺を対数をとり、
In I (t ) = A − β t
の吸収分光実験
(A:定数) … (8)
の傾きから求まる。このβの違いから吸収の有無を判別す
4.1 キャビティーリングダウン分光法とは
吸収分光を行う場合、対象の物質を光が通過する距離が
る。
長ければ長いほどより感度が増すが、実験装置が巨大になっ
吸収物質なし
てしまう。そこでコンパクトな装置で長光路分光を行うことが出
吸収物質あり
来るキャビティーリングダウン(CRD)と呼ばれる分光法で実験
出力
を行った。
CRD 分光法は 30cm 程度の長さの多重反射セルと呼ばれる
リングダウン信号
合わせ鏡の間で反射を繰り返すことによって、10km ほどの光
路長を得ることが出来る。また検出した光の減衰時間を測定
時間
するため光源の強度に影響されない。
図13
CRD 分光法にはパルスレーザーと連続発振レーザーを使う
リングダウン信号の例
ものがある。
4.1.2 連続発振レーザーCRD 吸収分光について
パルスレーザーCRD 吸収分光は高感度であるが、その一
方レーザーのパルス幅はおよそ数μs 以下というごく短い幅で
なければ実験を行うことは出来ない。パルス幅を短くすると不
確定性原理により線幅が広くなる傾向があるため高分解能の
吸収分光には不向きになってしまう。吸収線間の間隔が狭い
同位体の吸収分光には細い線幅のレーザーが必要であるた
図12
キャビティー内の光の様子
め、連続発振レーザーを用いた CRD 吸収分光が必要となる。
そこでファブリペロー型光共振器を用いた連続発振レーザ
ーによる CRD(CW-CRD)吸収分光を行った。
4.1.1 パルスレーザーCRD 分光法について
パルスレーザーを多重反射セルに入射すると一定の反射
ミラー間隔を L、波長をλとすると、2L = nλ のとき共振器
率で反射を繰り返し、鏡を通してレーザー光が漏れ出てくる。
に定常波ができ、共振器から光が漏れ出てくる。この状態から
この光をフォトダイオードで検出する。
素早く 2L ≠ nλ の状態に変化させると、変化させた後か
光速をc、ミラー間隔をL、鏡の反射率をR、時間をt、t = 0 に
ら入ってきた光は共振器内にたまることはできず、変化させる
おける出力をI0 とすると、時刻tにおける出力I(t)は次式のよう
前に共振器内にたまっていた光が漏れ出てくる。つまりパルス
に指数関数的に減衰する。
レーザーによる CRD と同じ効果を得ることが出来る。
I (t ) = I 0 exp(− β 0 t )
… (4)
ここでβ0は吸収物質のない場合の減衰率といい、
β0 =
(1 − R )c
… (5)
L
- 116 -
再度 He-Ne レーザーを入射する。この時レーザーが光共
4.2 CW-CRD 吸収分光装置
振器のミラーの中心軸を通るように共振器ミラーの角度
光共振器は、2枚の高反射率ミラー(Los GatosResearch Inc.
R>99.99%@1.6μm)で構成され、ミラー間隔は0.48m である。一
を調整する。
④
この状態で赤外レーザーを入射すると、レーザーは干渉
方のミラーに取り付けられた低電圧リングピエゾ素子
(Piezomechanik GmbH HPSt150/20-15/12)には、ディジタル
ファンクションジェネレーター(NF Corp.DF1905) で生成された
120Hz、peak-to-peak 1.0V の三角波を外部入力としてピエゾ
コントローラー(MESS-TEK Inc. M-2655, Gain ×30)により増幅
された電圧を印加し、ミラー間隔を変化させた。
ECDL の制御には基礎特性測定実験と同じ電流・温度コント
ローラー、ピエゾコントローラーを使った。
キャビティー内が常圧に近い状態では頻繁に分子同士が衝
突し、運動量が変化してしまい、吸収スペクトルが広がってし
まう。そのため CRD 用光共振器内を真空ポンプ(東京航空計
器 DG-631E ) に よ り 減 圧 し た 。 マ ス フ ロ ー コ ン ト ロ ー ラ ー
(KOFLOC Inc. MODEL3660)を用い、光共振器内の物質量が
一定量に保たれるように検出対象物質を導入した。
ECDLのピエゾに電流と同期させながら電圧を変化させ波長
を変化させる。漏れ出した光をInGaAs/PIN フォトダイオード
(New Focus Inc. Model1623)で検出し、電流増幅器(Femto Inc.
HCA-40M- 100K- C、Amp. Gain ×105) で信号を増幅し、デ
ィジタルオシロスコープ( Tektronix Inc. TDS782A)を用いコン
図15
ピュータに送り解析した。
計の中心軸を通る光路をとる。
4.3 レーザー光路の調整
ファブリペロー干渉計でキャビティーリングダウンを行う際、
レーザーは干渉計の 2 枚のミラーの中心軸を通らなければな
らない。しかし、赤外線レーザーを用いて実験を行うため肉眼
でレーザーの光路を確認する事は出来ない。そこで He-Ne レ
ーザーをアライメント用レーザーとして用い、次のように装置を
4.4 炭素同位体吸収分光実験
本実験では、ECDLの連続波長可変域にあるに12C16O2の吸
収線 1547.306 nm(6462.8476cm-1 )を用いた。この吸収線は
「HITRAN (High-resolution transmission molecular absorption
database)」データベースを参考にして決定した。
組み立てた。
①
レーザー素子の温度を 24.0℃に保ち、光共振器内圧力を
光源の赤外レーザーの方向からレーザーがアライメント
11.6mmHgに保ち、0.033 L/min でCO2を流した。
用の 2 つの絞りの間を通るようにミラーで調整する。
②
赤外レーザーの反対側から He-Ne レーザーを入射し、2
つの絞りの間を通るようにミラーで調整する。
③
装置写真
2 枚の絞りの間にファブリペロー型光共振器を設置して、
1547.306 nm 付近での出力を図16に示す。1547.306 nm で
の信号の減衰が 1547.320nm での信号の減衰より急になって
いる。このことから 1547.306 nm で光の吸収が起きている事が
わかる。またこれらの減衰率βを EXCEL を使って次のように
検出物質
マスフローコントローラー
圧力計
ピエゾコントローラー
電流,温度コントローラー
フォトダイオード
波長計
アンプ
ECDL
真空ポンプ
ピエゾコントローラー
オシロスコープ
コンピュータ
図14
実験装置の概略図
- 117 -
求めた。
Δf =
信号が始まるまでの約 76μ秒間の出力の平均を出し、全
出力値からベースラインとしてこの値を引いた。次に出力のピ
2v
f0
c
… (12)
ドップラー効果を考慮してこのスペクトルの広がりを計算す
ークから 2μ秒から 6μ秒までの値の自然対数をとり、減衰部
ると 0.53GHz となる。
分の傾きを回帰直線で近似し求めた。
0.015
また、光速c、ピークの波長がA nm、半値幅がB Hzのとき、レ
0.013
0.011
出力 [V]
ーザーの振動数の最大値と最小値を次式で表される。
1514.320[nm]
1547.320[nm]
1545.306[nm]
1547.306[nm]
0.009
A B
±
c 2
0.007
0.005
… (13)
0.003
得られた振動数を波長に直して差をとった⊿λは⊿λ
0.001
=0.0042nmとなり、実験結果とよい一致を示している。
-0.001
このことから吸収スペクトルの広がりの大部分は分子の熱運
-0.003
-1.00E-05 -5.00E-06
0.00E+00
5.00E-06
1.00E-05
1.50E-05
動によるドップラー効果によってもたらされていることがわか
2.00E-05
る。
時間 [sec]
次に ECDL のピエゾ素子への印加電圧を電流と同期させな
がら連続的に 24.4V を基準に±12V 変化させたときのβをコン
5 結論
ピュータにより解析した結果を図17に示す。各印加電圧(即ち
波長)において約 150 回程度ずつ測定した。図17はこの時の
今回製作した外部共振器波長可変半導体レーザー
波 長 を 横 軸 、 減 衰 率 を 縦 軸 に と っ た 。 1547.304nm か ら
(External(or Extended)Cavity Diode Laser : ECDL)より、連続
1547.310nm の範囲で減衰率が高くなり、1547.307nm 付近でピ
的な波長可変域を赤色LDで約3倍、赤外LDで約8倍拡張でき
ークになっている。
た 。 こ れ を 用 い て キャ ビ テ ィ ー リ ン グ ダウン 分 光 法 を 行 い
12
減衰率
2.1E+05
C16O2 の吸収スペクトル測定に成功した。これを他の同位体
2.0E+05
吸収線でも同様に行うことで同位体の存在比の測定が可能に
1.9E+05
なる。
1.8E+05
1.7E+05
1.6E+05
6 今後の課題と展望
1.5E+05
1547.300
1547.305
1547.310
波長[nm]
1547.315
1547.320
ECDL は非常に敏感であるため、振動や空気の揺らぎなど
によって波長が変化してしまう。また CRD 吸収分光を行う際、
モル質量 M[kg/mol]、絶対温度 T[K]、気体定数をR[J/mol・
K]とすると気体分子の二乗平均速度は次式で表せる。
3RT
v =
M
2
キャビティー内の分子運動によってスペクトルが広がってしま
う事がわかっている。測定精度を高めるためには次のような
事があげられる。
… (9)
2
20℃での二酸化炭素の二乗平均速度は 4.07×10 [m/s]で
・
振動の少ない場所で実験を行う。
・
実験装置全体を覆うようなフードをかぶせる事で空気の
ある。ドップラー効果により、運動している分子から見た光の
揺らぎや光などの影響を防ぐ。
実際の研究では夜に実験を行うことで影響を少
波長がずれてしまうので、吸収スペクトルが広がってしまう。吸
なくしている。
収スペクトルの自然幅を 0 と仮定し、光速をc、分子の速度をv、
吸収が起こる分子から見た周波数をf0、光源の周波数と波長
・
の最大値をfmax λmax、最小値をfmin λminとする。
f max
f max
c+v
=
f0
c
c−v
=
f0
c
キャビティー内の圧力の最適値を探すことで精度を向上
させる。
・
キャビティー内の温度を下げる。
温度を下げることで分子運動が穏やかになりドッ
… (10)
プラー効果によるスペクトルの拡がりが抑えられ
る。
仮にキャビティー内の温度を20℃から100℃下げ
… (11)
た-80℃で実験を行った場合、分子の二乗平均速
度は3.31×102[m/s]となり、ドップラー効果によるス
よってスペクトルの広がりを⊿f とすると次式で表せる。
- 118 -
ペクトルの広がりを18.8%程度抑えることができ
る。
・
キャビティーリングダウンの測定回数を増やす。
精度は高くなるが測定時間が長くなる。
今回の吸収分光では 1 つの同位体だけの吸収分光を行っ
たが、複数の同位体の吸収線を含むように連続波長可変域を
調整することで同位体の存在比を測定する事が出来る。
謝辞
本研究は名古屋大学大学院工学研究科井口哲夫教授、渡
辺賢一助手、院生の富田英生氏のご指導のおかげで達成さ
れたものであり、この場を借りて先生方に感謝申し上げます。
- 119 -
付録
このようにして両方の共振器で定常波ができるようにし
波長可変半導体レーザーのしくみ
ながら波長を変化させていきます。
①レーザーは 2 枚の反射率の高い鏡(少しは光が透過する)
レーザー素子でできる共振器1を「内部共振器」といい、
が合わせ鏡のような構造になっています。この構造を共振
鏡で光を返してできた共振器2を「外部共振器」といいま
器といいます。励起された電子が遷移することによって生
す。
じた光はこの中で往復します。この光の波長はばらばらで、
外部共振器の光を返す鏡(回折格子)にはピエゾ素子と
一つ一つはとても小さい光です。このとき、光は波の性質
いうものが取り付けてあります。ピエゾ素子は、電圧をか
をもっているので、合わせ鏡の間で定常波ができる条件を
けると素子自体が伸びる性質があります。この性質をつか
満たした波長だけが増幅され、鏡から漏れ出てきます(図
って外部共振器長を変化させます。
A)。しかし、定常波ができない波長は波の重ね合わせの
一方、内部共振器はレーザーの中にあるので経路長は変
原理で消えてしまいます。このようにしてレーザーは単一
化させることはできません。しかし、レーザー素子は電流
波長(厳密には少しの波長幅がある)を得ています。
を流すと内部の屈折率が高くなっていきます。光路長は経
路長に屈折率をかけたものであるので、内部共振器は電流
②ここで出力されたレーザー光を鏡を使ってもう一度レ
をかけることで経路長は変化しないにもかかわらず、光路
ーザー内に返してみます。するとレーザー素子の 2 つのへ
長を変化させることができます。
き開面による合わせ鏡と、片方のへき開面と鏡によってで
きた共振器が同時に 2 つ存在します。このとき共振器1と
キャビティーリングダウンのしくみ
共振器2で同時に定常波ができる条件を満たした波長の
吸収分光を行う場合、対象の物質を光が通過する距離が
みレーザー発振が起きます。
長ければ長いほどより感度が増します。つまり吸収量が少なく
③では共振器1の間隔を広げてみましょう。するとレーザ
ても吸収を観測することができます。しかし、実験装置が巨大
ー発振が起こる波長の条件が変化し、前の場合よりも少し
化してしまうという点があります。そこでコンパクトな装置で長
長い波長でレーザー発振が起こるようになり、波長が長く
光路分光を行うことができるキャビティーリングダウン(CRD)と
なります。しかし、②で述べたようにレーザー発振を起す
呼ばれる分光方法で実験を行うことで高感度吸収分光実験を
波長は共振器1と共振器鏡2で同時に定常波ができない
可能にしました。
といけません。よって共振器1の長さだけを長くしていく
キャビティーリングダウン分光法にはパルスレーザーと連続
と波長は不連続に長くなっていってしまいます。これを解
発振レーザーを使うものがあります。図Bはこれらの仕組みの
決するには共振器2と共振器1の距離を同時にそれぞれ
イメージです。
の合わせ鏡で定常波ができる条件になるように長くして
いく必要があります。
(a) 二枚の鏡の間に定常波ができるような波長だけ
が増幅されて出力される。
(b) 共振器1と共振器2で定常波ができているので
レーザーは出力される
共振器1
共振器2
(d) 共振器1の長さを長くしたので波長が長くなっ
た。共振器2では定常波ができないので光は打
ち消されてしまう。光は出力されない。
(c) 共振器2で定常波ができる条件のまま共振器1
でも定常波ができるように共振器1の長さを変
図A
波長可変のしくみ
- 120 -
化させると波長が長くなった光が出力される。
<パルスレーザーによる CRD>
穴のあいたバケツがあり、そこに蛇口から一瞬で水を入
パルスレーザーのパルス幅はおよそ 30μs 以下というごく
れて穴から漏れてくる水を観察するイメージです。もし水
短い幅でなければ実験を行うことはできません。パルス幅を短
を吸収する物質があれば流量が変化するので、それを観察
くすると不確定性原理より出力される波長に幅が出てくるので
します。
高分解能の吸収分光には不向きになってしまいます。同位体
の吸収分光には波長の幅が狭いレーザーが必要であるため、
<発振レーザーによる CRD>
連続発振レーザーを用いた CRD 吸収分光が必要となります。
同じく穴の空いたバケツがあり、蛇口を開けて水を出し
っぱなしの状態にしておきます。そこに横からバケツをも
連続発振レーザーを用いる場合、光学キャビティーにピ
ってきます。バケツが蛇口の下にきた時、つまり水がたま
エゾ素子を取り付け、ミラー間隔を変化させます。ミラー
る条件を満たした時だけバケツの中に水がたまり、そして
間隔を L、波長をλとすると、2L = nλ のとき共振器に定常波
その条件から外れるとバケツの中の水は漏れ出てきます。
ができ、共振器に光がたまります。この状態から素早く 2L ≠
同じようにこの流量を観察することで吸収物質の有無を
nλ の状態に変化させると、後から入ってきた光は定常波を
判断することができます。
つくることができないので、共振器内にたまることはできず、変
化させる前に共振器内にたまっていた光が漏れ出てきます。
蛇口の水はレーザー光、バケツを光学キャビティーにた
とえてあります。
つまりパルスレーザーによる CRD と同じ効果を得ることができ
ます。
キャビティー内に何もない時も鏡の反射率は 100%では
ないため漏れ出てくる光は減衰していきます。一方吸収物
質がある場合、光が往復する間に鏡の反射率による減衰と
吸収物質による減衰があるため光の減衰は急になります。
パルスレーザーによる
連続発振レーザーによる
CRD のイメージ
蛇口
CRD のイメージ
穴のあいたバケツ
吸収物質
蛇口の水を出したまま
でバケツを移動させる
時間
流量
流量
流量
- 121 時間
時間
図B
キャビティーリングダウンのイメージ
時間
光のスペクトルとナノテクノロジー
三重県立四日市高等学校
実験協力
田中裕子
久間恵美子
名古屋大学工学研究科 中村新男教授
スペイン ヴィーゴ大学
L. M. Liz-Marzan 教授
Abstract
Beautiful colors of stained glass originate from metal particles dispersed in glass. Gold particles with a size on a nanometer scale are
responsible for the brilliant reds seen in stained glass windows in a church. We measured reflection and absorption spectra of gold
nanoparticles in the visible light region using a spectrometer, and investigated a relation between the size/shape and the spectrum.
The first study:
In introduction, we review the relationship between the color and the wavelength of light in the visible region. We measured
absorption and reflection spectra of dyes and paints. Dyes and paints were dissolved in water and put on paper. We found a
remarkable difference in the absorption spectra between the different solutions of dyes and paints. Observations of particle sizes of
dyes and paints by a scanning electron microscope revealed a strong correlation between the particle size and absorption spectra.
The second study:
We have studied reflection and absorption spectra of various kinds of metals. In particular, we focused on gold particles with
different sizes and shapes to investigate how optical spectra change by reducing the size to the nanometer length scale. Free electrons
in metal generate a plasma oscillation in which the electron density changes periodically. Shining the metal surface by light, oscillation
of electrons is driven by the electric field of light with a frequency. Absorption and reflection spectra were measured for gold thin films
of 5 and 50 nm in thickness. When the frequency of the incident light is lower than that of plasma oscillation, the light is totally
reflected on the metal surface. The gold plate reflects the light with wavelengths longer than 520nm and absorbs the light with shorter
wavelengths, and thus gold displays a yellow color. In the silver plate the light in the visible region is totally reflected, thus displaying
a “white” color.
We prepared gold thin films on glass substrates using a vacuum deposition method. Absorption and reflection spectra were
measured for gold thin films with 5 and 50 nm thickness. Although the 50 nm thin film shows the similar spectrum to the case of the
gold plate, the 5 nm thin film shows a quite different spectrum. When the metal particle size is much smaller than the wavelength of
the incident light, surface plasma oscillation appears near the metal surface. We measured absorption spectra of gold nanoparticles
with sphere and rod shapes. It is found that the characteristic frequency of the surface plasma oscillation makes the difference in color
of the reflected light depending on the particle shape and size.
1 はじめに
ニュートンは著書「光学」の中で「光線に色はない。光
線は色の感覚を起こさせる性質があるに過ぎない。
」
と述べ
混合したときに目に感じる光を調べた。
(図3)
これにより,
光の3原色とその補色の関係がわかる。
ている。我々は光のスペクトルと人間の感じる“色”につ
いて分光器を用いて調べた。
太陽光をプリズムに通して分散させると,波長の順に並
んだ虹色の帯ができる。図1は光の波長と,その波長の単
色光が目に入ったとき感じる色の関係を示している。人間
の目には色を感じるセンサーが3種類あり,それぞれ図2
のような波長の光の強さを感じる事ができる。つまり,セ
図2 人の視細胞の感度曲線
R
ンサーが赤と緑と青の光に対応する波長の光をとらえ,す
マゼンタ
黄
べての光はその3色の和として人間の脳で処理され“色”
白
として認識される。よって何色として認識されるかは複雑
G
B
シアン
であり,全く異なるスペクトルの光が同じ色に見える事も
ある。我々はR,G,Bの発光ダイオードを用い,3色を
図3
- 122 -
光の3原色の加え合わせ
2 第一研究
である。この図5から青・緑・赤の波長の違いをはっきり
A.光るもののスペクトル
と判別できる。
(3)パソコンの画面
4000
arb. units.
arb. units.
(1)太陽光
3000
2000
4000
3000
2000
1000
0
400
500
600
700
800
1000
900 1000
波長(nm)
図4 太陽光・フラウンホーファー線
太陽光
0
400
ナトリウム
水素
500
600
700
波長 (nm)
図6 パソコン画面
パソコン画面三原色
図5
三原色
図4は、我々の最も身近な光、
「太陽光」を分光器で測定
青
緑
赤
した図である。太陽光のスペクトルと水素スペクトルを見
arb. units.
4000
比べると、太陽光のスペクトルの「くぼみ」になっている
波長と水素の線スペクトルが同じ位置にあるのがわかる。
3000
この太陽光の吸収スペクトル線を
「フラウンホーファー線」
という。太陽の大気中の物質に吸収された太陽光がまるで
2000
線スペクトルの逆のような形で読み取れる。これは、太陽
の大気中に多く含まれている物質が、真空放電などで線ス
1000
ペクトルとして放つ光を、逆に吸収するために起こる。こ
0
400
の「フラウンホーファー線」を調べることにより、太陽の
大気中に多く含まれる元素がわかる。
(ただし、酸素は地球
の大気中。
)
表1には読み取れるフラウンホーファー線と原
500
600
700
波長(nm)
図7
パソコン画面 黄
図6 パソコン画面 黄
因となる元素をまとめた。図4にはナトリウムと水素のス
ペクトルを重ねて表示したが,
それぞれ 589 nm と 657 nm
図6より、パソコンの画面の三原色のスペクトルがわか
で一致していることが分かる。
る。このとき、図7と比べてみると、図6の緑と赤を足し
合わせたものが黄であることが読み取れる。
このようにパソコンの画面は3色のライトより構成されて
表1 フラウンホーファー線と原因元素
波長 nm
395
432
原因物質
Ca
Fe,Ca
+
519
527
589
657
689
764
Mg
Fe
Na
H
O2
O2
+
いるため、光の加法混色がはっきりとわかる。
arb. units.
(4)光と化学反応
arb. units.
(2)レーザーと LED
4000
3000
3000
2000
2000
1000
0
400
1000
0
400
500
600
700
800
900 1000
波長(nm)
図8 マッチとアルコールランプ
500
600
700
900 1000
波長(nm)
図5 レーザーと LED の光のスペクトル
図7 レーザーとLEDの光のスペクトル
青LED
赤LED
赤レーザー
800
マッチ
緑LED
赤外線LED
緑レーザー
アルコールランプ
マッチとアルコールランプの炎の2つの顕著なピークは
全く同じ波長にある。この2つの波長は、589nm、770nm
に位置しているが、589nm→Na+、770nm→K+の化学反応
におけるスペクトルだと考えられる。この光は炎色反応で
レーザーの光はピークがはっきりとわかる形になってい
知られる光と同じである。 (図8)
る。また LED も緩やかではあるが綺麗なスペクトル分布
123
るとほぼ同じである。(表2)これにより蛍光灯の中では
arb. units.
(5)光と温度
Hg の真空放電が起こっているとわかる。
4000
それでは、蛍光灯のスペクトルには観察されるが Hg に
はない 612nm の波長の光は何なのだろうか。これは、蛍
3000
光灯の周りに塗ってある蛍光体のためであると考えられる。
蛍光体というのは紫外光を照射すると光の三原色を出す物
2000
質であり,この蛍光体から出る光は白く見える。この蛍光
体はメーカーや色のタイプによって違っている。ほんわり
1000
と赤い蛍光灯では長い波長の光が多く放射され、
「白色」と
0
400
500
600
700
800
して売っている蛍光灯では短い波長の光が多くなっている。
900 1000
波長(nm)
図9 光と温度
太陽光
はんだごて
ストーブ
マッチ
B.染料と顔料のスペクトル
(1)吸光度,透過率と色の関係
次に物質の温度と放射光の関係を調べた。
(図9)
この各スペクトルのピークを考えると、太陽光が最も短い
2
透 100
過
率 80
(%)
波長の方にあり、はんだごてが最も波長の長い方にある。
これは温度によって光の色が変わるためで、温度が高いほ
ど光の波長は短くなる。これをウィーンの変位則といい、
60
[ λMax・T = 2.9×10-3 ]という形で表される。これに
吸
光
度
1
40
当てはめると、太陽は約 5500℃となり、実際の温度とほぼ
同じになるが、マッチやストーブの温度を当てはめると
20
3000℃を超えてしまう。これは、分光器の光を感知する
0
CCD検出器の感度が 700nmを超えると落ちてしまうため
500
600
700
800
900
0
1000
図11 インク(黄)のスペクトル
であり、本来ならばマッチやストーブはもっと長い波長に
透過率
吸光度
ピークがあるはずである。また、太陽光のスペクトルもこ
んなに短い波長で落ちてしまわず、遠赤外線まで光を出し
図 11 は黄色のプリンターのインクを水に溶かし,光の
ている。よって、これらの物質の測定結果にウィーンの変
吸光度と透過率を測定した結果を示している。この水溶液
位則は適用することはできない。だだ、図9からピークの
は青色部の光(450nm 付近の光)を吸収し,それ以外の光を
位置を予測できるため、温度が
透過させるからその補色の黄色となるのである。
太陽>マッチ>ストーブ>はんだごて
(2)反射スペクトルと色の関係
反射率 (%)
ということはわかる。
arb. units.
(6)Hg と蛍光灯
4000
100
80
60
3000
40
2000
20
0
400
1000
0
500
600
700
800
波長(nm)
図12 絵の具とインクの反射スペクトル
400
600
800
1000
波長(nm)
絵の具 赤
絵の具 青
インク 赤
図10 蛍光灯と水銀
蛍光灯
Hg
絵の具 緑
インク 緑
図 12 はプリンターのインク(染料)と絵の具(顔料)を白い
紙に塗り,その反射スペクトルを測定した結果である。ピ
表2 蛍光灯と水銀の波長のピーク
蛍光灯
366
405
437
490
546
588
Hg
366
406
437
493
548
580
612
ークの波長に違いはあるがそれぞれの色に対応する波長の
反射光が強く,染料と顔料に大きな差異は認められない。
蛍光灯と Hg の真空放電のスペクトルは図 10 を見てわか
るように酷似している。それぞれのピークの波長を測定す
124
(3)染料と顔料の透過率と吸光度
ないためである。
図 17,18 は A 社と B 社の青色の絵の具の粒子の写真で
2
100
ある。A 社の方は粒子の大きさが 400~3000nm 程度なの
吸
光
度
透
過 80
率
(%) 60
に対し,B 社の方は 5000~6000nm 程度であり,ばらつき
はあるものの大きさに違いがある事がわかった。
1
粒子が大きいと粒子表面で光が反射される。そのために
40
入射光のすべての波長にわたり,水溶液中で散乱される光
20
が増え,透過光が減少し“吸光度”が増加する。今回の実
0
500
600
700
験により,顔料など粒子の比較的大きい物質については,
0
900 1000
波長(nm)
800
透過光を測定して本来の吸光度を測ることが難しいことが
わかった。このような物質の吸光度は散乱光のスペクトル
図13 インク(緑)のスペクトル
透過
の測定により求めた方がよい。
吸収
100
透
過 80
率
(%)60
2
吸
光
度
1
40
20
0
500
600
700
800
0
900 1000
波長(nm)
図14 絵の具(緑)のスペクトル
透過
吸収
図 16 インク(黄色)の顕微鏡写真
図 13,14 はそれぞれ緑色のプリンターのインクと緑色
の絵の具を水溶液にし,その吸光度と透過率を測定した結
果である。インクでは吸収される波長と透過される波長が
はっきり区別できるのに対し,絵の具ではその区別がつき
にくい。また,図 15 は異なるメーカーの青色の絵の具の
吸光度を比べたものである。A社のものは波長によって違
いがあるが,B社のものは全波長にわたりほぼ一定になっ
ている。
吸2
光
度
1
図 17 絵の具(A 社青色)の顕微鏡写真
0
500
600
700
800
900
波長(nm)
図15 絵の具(青)の吸収スペクトル
A社
B社
(4)走査型電子顕微鏡による微粒子の観察
このような違いが何によって起こるのか走査型電子顕微
鏡を用いて観察した。
図 16 は黄色のプリンターのインクの写真である。写っ
ているのは台にしたアルミの板の凹凸で,粒は全く見えな
い。これはインク(染料)はばらばらの分子の状態で,その
大きさは 0.1nm 程度であり電子顕微鏡では見る事ができ
図 18 絵の具(B 社青色)の顕微鏡写真
125
3 第二研究
があるので、金属全体としては中性になっているが、この
(1)いろいろな金属板の反射率
電気的な中性が局所的に破れると電子の振動が起こる。正
イオンは質量が大きく動かないので、電子の密度が波打つ
反 100
射
率 80
(% )
ことにより、場所によって電荷が正になっているところと
60
せるような力が働く。この力によって電子は密度の低い部
負になっているところができる。この空間的に分布した電
荷によって電場が生じ、電子にはこの密度の凹凸を埋めさ
分に動き出し、密度が一定になろうとするが、加速された
40
電子は行き過ぎて、以前に密度が低かった場所の密度を高
くしてしまうことになる。このような密度が密と疎を繰り
20
返す運動をプラズマ振動と言い、気体分子の疎密波である
0
500
600
700
800
900
波 長 (nm)
音波と同じような振動である。
図 19 身近な金属の反射スペクトル
Zn Pb Ni このプラズマ振動数fpは、電子の質量をm、電子密度を
ne、電子の持つ電荷を-eとすると
Al
我々が見る金属の色は反射光の色である。金属は吸光度
fp
2
が高いため、
一度中に取り込んだ光は出てこない。
よって、
nee 2
=
πm
…(1)
表面で反射された光のみが反射光として目に見える。全波
と表すことができる。
長が 100%反射されると、白に見える。
(逆に全く反射され
また、光の反射率 R は、屈折率を n として
ないと黒に見える。
)Zn、Ni、Ag、Al は全波長にわたり一
⎛ n −1⎞
R=⎜
⎟
⎝ n +1⎠
様に反射しているので、白っぽい灰色に見える。
2
と書け、屈折率が0のとき反射率は1となり、これを全反
射と呼ぶ。
また、
屈折率と誘電率εの間に次の関係がある。
(2)反射率とプラズマ振動
n= ε
反 100
射
率 80
(% )
60
ここでεは光の振動数 f を変数とする関数なので、ε(f)
と書き、屈折率も n(f)となる。
電子がプラズマ振動している場合、
誘電率は次式で書ける。
ε ( f ) =1−
40
20
0
fp
2
f2
f=fpのとき、誘電率が 0、すなわちn=0 となるので反射率
500
550
600
700
は 1 となる。またf< fpのとき、nは虚数となり、反射率は
800
900
波 長 (nm)
1となる。従って、プラズマ振動数よりも低い振動数(長
図 20 金・銀・銅の反射スペクトル
Cu Ag い波長)の光に対して反射率は1となるが、それより高い
振動数の光に対する反射率は低くなる。
Au 金、銅は図 19 で示した金属とは違い、特徴的な色があ
式(1)を用いてプラズマ振動数に相当する波長を計算
る。グラフを見てわかるように、Cu は波長 600nm 以上の
すると、Alで77nm、Cuで115nmの波長以下の反射率が落
光は反射するが、それ以下の光は反射しない。よって赤っ
ちるという結果が出る。図19に示したAlで、可視光の範囲
ぽく見える。
Au は波長 550nm 以上の光を反射するので
「金
では反射率が落ちないことから、実験結果と計算結果は矛
色」に見える。Ag は、すべての可視光を反射するので、
「銀
盾しない。しかし、図20に示したCu、Auについては、実
色」に見える。
験結果と計算値が合わない。
これは、Cu、Au、Agでは、今まで説明したプラズマ振
動の他に、光によって別の電子がエネルギーの高い準位に
図 21
金属中の電子は原子
励起されることによって振動が生じるためである。フェル
核には束縛されず、自
ミ準位(エネルギーの高い準位)に上げられた電子は+の
由に動き回ることがで
電荷と対になってバネとなる。このようなバネの振動とプ
きる。この自由電子に
ラズマ振動が結合した振動が光によって生じる。
対して正の金属イオン
126
このとき誘電率は、バネの固有振動数をf0として
ε ( f ) =1−
fp
2
+
f2
(a)厚さ 50nm の場合
e2
1
2
πm f 0 − f 2
と書かれる。上式の誘電率が0となる光の周波数で屈折率
20nm
は0となり、反射率が1となる。この周波数が「バネの振
動」を考慮したときの正しいプラズマ振動数となる。この
式から求めたエネルギー、プラズマ振動数、波長は以下の
通りである。
表3 金、銀、銅のエネルギー、振動数、波長
Au
エネルギー[eV]
Ag
2.4
Cu
3.8
2.1
プラズマ振動数[Hz]
5.79×10
9.17×10
5.07×1014
波長[m]
5.18×10―7
3.27×10―7
5.92×10―7
14
14
図 23 厚さ 50nm の薄膜の原子間力顕微鏡像
薄膜は凹凸であり、金の島が堆積している。金の島でガ
ラス表面は完全に覆われていて、
下のガラス面は見えない。
図 20 に示した実験結果は、
この理論値と合致している。
(原子が何層にもなっている。
)金の島の高さは約 20nm
でサイズは 20nm~100nm である。
(3)金の蒸着薄膜の厚さによる違い
(b)厚さ 5nm の場合
a.金の真空蒸着
ガラス基板上に金を蒸着させるため、真空蒸着装置を用
いた。
5nm
図 24 厚さ 5nm の薄膜の原子間力顕微鏡像
金の島が観測されたが、ガラス表面も見えるので、金の
島で覆われていない。よって、高さが約 5nm、サイズが
20~100nm の金のナノ粒子が点在していると考えられる。
図 22 真空蒸着装置の原理図
c.厚さによる反射・吸収スペクトルの違い
装置内を真空(約 10-3Pa)にした後、ボートを約 1100℃
(a)反射スペクトル
に温め、ボートの上に置いてある金属を蒸発させる。する
反 100
射
率 80
(%)
60
と、空気に邪魔されないのでガラス基板まで原子が飛んで
いき、基板上に凝着する。
b.原子間力顕微鏡による構造の観察
40
原子間力顕微鏡を用いて、真空蒸着膜の表面の構造を観
20
察した。金のナノ粒子の大きさや形状を調べることができ
る。
0
127
500
600
800
900
波 長 (nm)
図 25 金の薄膜と金箔の反射スペクトル
5nm 700
50nm
金箔
まず、金の薄膜の厚さによる反射スペクトルの違いを測
定した。
(図 25)目で見たときには、厚さ 50nm の方は「金
吸
光 2
度
色」に見え、5nm の方は薄い青に見えた。
厚さ 50nm の薄膜は、波長 600nm より低い範囲では反射
率が落ちていることが観測される。これは、金箔のスペク
トルに似ているので、プラズマ振動によると考えられる。
1
しかし、厚さ 5nm の薄膜はプラズマ振動による反射率の
低下が見られず、波長約 500nm でピークが見られ、青い
色の光に対してもほとんど反射率は落ちない。
0
(b)吸収スペクトル
500
600
700
800
900
波長(nm)
図 27 球形のナノ粒子の吸収スペクトル
吸 2
光
度
540nm あたりに吸収のピークが観測された。
1
(5)ナノ粒子のプラズマ振動:表面プラズマ振動
金の粒子が入っているガラスや厚さ 5nm の薄膜は、
我々
の知っている金の色とは違って見える。
(図 25・図 27)
0
400
これは、試料の大きさが光の波長よりも小さくなると、金
500
600
700
800
900
波 長 (n m )
属中の自由電子は大きい場合のそれとは違った運動をする
からである。
図 26 金の薄膜の吸収スペクトル
5nm 50nm
次に、金の薄膜の厚さによる吸収スペクトルの違いを測
定した。
(図 26)目で見たときには、厚さ 50nm では緑に
見え、5nm では薄い青に見えた。
厚さ 50nm の薄膜で波長 500nm の吸光度が小さくなっ
ていることが観測される。厚さ 5nm の試料と 50nm の試
料を比べると 50nm の試料の方が長い波長の光の吸光度が
波長
大きい。これは、波長 500nm より長い波長ではプラズマ
振動により強く反射するため、透過しないからである。ま
図 28 表面プラズマ振動
た、厚さ 50nm の試料では波長 400nm で吸光度が大きい
のに対して、厚さ 5nm の試料では波長 400nm 付近でも吸
図 28 に示されるように振動する光の電場に対して、ナ
光度が波長 500nm とほぼ同じ大きさである。2つの試料
ノ粒子中の電子は一方向にのみ偏る。波長よりも大きい試
は同じ Au であるが、この差異が起こるのは、厚さ 50nm
料(バルク状の試料)の場合の、電子が集まった「密」の
の試料ではプラズマ振動数に対応する波長が 518nm であ
ところと少なくなった「疎」のところが交互に存在するの
るから、それより波長が小さい光は強く吸収されているた
と違うことがわかる。このようなプラズマ振動を「表面プ
めである。従って、反射光が強くなる波長と、吸光度が大
ラズマ振動」と呼ぶ。
きくなる波長の間の 500nm の光を透過すると考えられる。
金属のナノ粒子がどのような物質の中に埋め込まれてい
るか(点在しているか)によって、このような表面プラズ
マ振動と光の作用の仕方は変わる。
周りの物質の誘電率
(屈
折率)によって吸収が現れる波長が変わる。また、ナノ粒
(4)ナノスケールの金の粒子(ナノ粒子)を含むガラス
子の大きさ(球の場合には直径)によっても波長が少し変
金属のナノ粒子を含むガラスはエジプト時代から知られ
化する。ガラス中の金ナノ粒子の場合には、球形なので、
ていて、中世ではステンドグラスとして教会の窓に使われ
吸収スペクトルにピークが1つ観察される。
た。
5nm の薄膜の場合、金の粒子はいろいろなサイズと形を
ガラスの中に球形の金のナノ粒子(直径 3.9nm)が入っ
もつものが混じっているので、幅の広いスペクトルとなっ
てしまうと考えられる。
(図 25)
ている試料の吸収スペクトルを測定した。試料は薄い赤紫
に見えた。
128
(6)円柱形の Au ナノ粒子
長軸方向に平行な直線偏光に対しては、吸収は約 670nm、
短軸方向に平行な偏光に対しては約 520nm にピークが観
a.アスペクト比と吸収スペクトルの関係
A
測される。670nm のピークは長軸方向の表面プラズマ振動、
図 29 のような円柱形の
520nm のピークは短軸方向の表面プラズマ振動に相当す
A
アスペクト比を と定義する。
B
B
る。
円柱の方向が揃っていない試料に偏光していない光を照
図 29
射した場合、それぞれの方向の表面プラズマ振動と光が作
用するので、図 30 の吸収スペクトルには2つのピークが
アスペクト比の違う円柱形ナノ粒子を溶かした溶液試料
2つを用いて吸収スペクトルを測定した。用いた試料のア
同時に観測されることになる。
スペクト比は 2.5(A=37nm、B=15nm)と 3.3(A=33nm、
B=10nm)である。
吸 1.5
光
度
4 考察
第一研究より、まず我々が見ている「色」というものが、
1
目に入ってくる三種類の光の波長で決まるということがわ
かった。また、透過光と吸収光のスペクトルが全く逆であ
0.5
るのは、白色光を当てたときに吸収された光以外が透過光
として透過されてくるためである。染料と顔料は白い紙に
0
400
塗ったときには一見変わりはないが、水に溶かしたときや
500
600
700
800
900
波 長 ( nm )
黒い紙に塗ったときには違いがはっきりとわかる。
それは、
染料と顔料では粒子の大きさが明らかに違い、粒子の大き
図 30 円柱形の Au ナノ粒子の吸収スペクトル
ア ス ペ ク ト比 2.5
ア ス ペ ク ト比 3.3
い顔料が光を乱反射するために起こることがわかった。
次に第二研究より、金属特有の光沢はプラズマ振動のた
めに起こることがわかった。
白っぽい灰色に見える金属は、
球形の場合と違って、2つのピークが観測される。この
光の波長が落ちるのが短い波長で起こる。つまり、プラズ
2つのピークのうち、短波長の方のピークは球形のピーク
マ振動が高い。また、小さい粒子が点在している場合は表
の波長とほぼ同じであり、アスペクト比によらないことが
面プラズマ振動が起こり、表面プラズマ振動が起こる場合
読み取れる。
とプラズマ振動が起こる場合(波長よりも大きい試料の場
この結果を参考にすると、厚さ 5nm の薄膜では、ナノ
合)とでは見える色が全く違った。プラズマ振動が起こる
粒子の形状が球形ではなく円柱や楕円体のものなどいろい
場合では、試料の大きさや厚さが変化しても色は変わりな
ろな形状がある。そのために、それぞれの形状のナノ粒子
いが、表面プラズマ振動が起こる場合は粒子の大きさ(形)
による吸収ピークが重なって、800nm 位まで吸収が広がる
の違いで見える色は大きく違う。また、表面プラズマ振動
と考えられる。
が起こるときには、粒子の大きさが大きい方が長い波長の
光に吸収のピークがあることもわかった。
b.偏光に対する吸収スペクトル
円柱形の金ナノ粒子を入れたポリビニールアルコールの
《参考文献》
1) 日本色彩学会:色彩科学ハンドブック(東京大学)1980
膜を約 120℃で引っ張ることで、円柱の方向が揃えられた
アスペクト比 2.5 の試料(ヴィーゴ大学で作製)と偏光板
2)
を用いて、円柱の短軸方向と長軸方向のそれぞれのスペク
中原勝儼:化学の話シリーズ9“色の科学”
(培風館)
1999
トルを測定した。
3)
0.6
日本化学会:新実験化学講座4基礎技術3光(丸善)
1978
吸
光 0.5
度
0.4
4)
「光学のすすめ」編集委員会:光学のすすめ(オプト
ロニクス社)2003
5)
加藤俊二:身の回りの光と色(裳華房)1993
6)
ポール G.ヒューエット:電気と光(共立)1989
0.2
7)
黒沢達美:基礎物理学選書 9 物性論(裳華房)2002
0.1
8)
リチャード P. ファインマン:ファインマン物理学Ⅲ
0.3
0
400
1972
500
600
700
800
900
波 長 (n m )
図 31 偏光による Au ロッド粒子の吸収スペクトル
9)
大貫惇睦、中村新男、他:物性物理学(朝倉書店)2000
10) ヘクト,ユージン:ヘクト光学2(丸善)2004
長軸方向に平行な直線偏光
短軸方向に平行な直線偏光
129
エタノールロケット
三重県立四日市高等学校
南川
豊浩
甲斐
貴之
Abstract
This study is conducted to find the optimum condition of a long range Ethanol Rocket, by changing the area of
the nozzle. In the first stage, we calculate the amount of ethanol needed, and the maximum temperature and
pressure for burning ethanol in a test bottle. Next, we figure out the relation between air speed and pressure.
Then the calculations and the two formulas are incorporated into the equation for pressure, time, and the
diameter of the nozzle. Using the graph of the equation, we determined that a nozzle with a smaller diameter
will increase the thrust of the rocket. During the second stage, we attempted to prove our theoretical
calculations through experimentation. We inspect the changes in pressure, and thrust, and the condition of
burning. Upon inspection of the burn rate, and gushing speed from the picture, it is found that the pressure in
the bottle was greatest at the moment the nozzle opens. In addition, the result of the data analysis from the
experiment indicated that our original hypothesis was correct and that the smaller diameter nozzle helped
produce more thrust, the same as the theoretical calculation. Therefore the smaller the area of the nozzle is,
the farther the rocket fly.
点火後、エタノールが完全に燃焼してから中の気体
1.はじめに
が噴射し始めると仮定して、次の(1)(2)の二段階とし
我々が行っている研究は、エタノールを燃焼させて
飛ばすペットボトルロケット、通称エタノールロケッ
て理論を考える。
トの研究である。水ロケットは一般的に知られており、
(1)点火→エタノール燃焼
初期条件は次のように設定する。
理科の授業の一環として用いられ、打ち上げ競技大会
などが行われているが、エタノールロケットは安全性
V0 = 5.00 × 10 −4 (m 3 ) (ペットボトル容器)
やペットボトルの耐久性の点で、水ロケットに比べ問
題が多いためほとんど利用されてない。しかし、エタ
T0 = 2.90 × 10 2 (K ) (気温:20℃)
ノールロケットは実際のロケットと同様に燃料を燃焼
させて推力を得る方式をしており、未開発な部分が多
P0 = 1.01 × 10 5 (Pa ) (大気圧)
く研究要素は豊富である。このエタノールロケットを
より遠く、理想的な飛行を実現させることを目的とし
(ア)エタノールの量の最適値
て本研究を行った。
エタノールの燃焼の化学反応式は、容器内の空気中
の窒素と酸素の存在比は4:1なので以下のように表
される。
2.仮説
C 2 H 5 OH + 3O2 + 12 N 2 → 2CO2 + 3H 2 O + 12 N 2
エタノールの量は、ペットボトル内の酸素の量が決
まっており、エタノールが少なければ燃焼によって得
上の化学反応式からわかるように、エタノールは酸素
られる運動量が小さくなるので推力が弱まる。一方、
に対して3:1の割合で反応する。
入れるエタノールの量を X(ml)とすると、噴射口から
エタノールが多ければ完全に蒸発せず液体として残り、
燃焼しないので無意味である。よってエタノールの量
X(ml)の空気が出るので、それらがすべて反応するとき
には最適値があると考えられる。
次の式が成り立つ。
また、キャップの噴射口が大きいと、大きな力を加
1
(500 − X ) : X = 3 : 1
4
えることができるが、力を及ぼす時間は短い。一方、
キャップの噴射口が小さければ大きな力を加えること
よって燃焼するエタノールの最大の量は気体で 31(ml)
ができないが、力を及ぼす時間は長い。よって、加え
となり、これが最適値である。
る力の大きさと時間によって飛距離が変化するので、
すなわち、物質量は 1.38 × 10−3 (mol ) となる。
キャップの噴射口の大きさには最適値があると考えら
よって質量は 6.30 × 10−1 ( g ) となる。
れる。
(イ)容器内の上昇温度
3.理論計算
本研究では、始めに仮説を立て簡易化したモデルで
理論化を行った後、実験データと比較して仮説を検証
この反応でエタノール1.00(mol)に対して発生する
燃焼熱は 1.37 × 103 ( kJ ) 。
よってエタノール 1.38 × 10 −3 (mol ) における燃焼熱は、
1.37 × 103 × 1.38 × 10 −3 ≒ 1.90( kJ )
となる。
燃焼後、容器内の気体は反応後の気体をすべて N2と
するという、一連の研究方法をとる。
- 130 -
みなすと、上の化学反応式より、反応前後で体積は
17/16 倍となっている。よって体積は 533(ml ) 、すなわ
断熱変化とする。
熱力学第一法則より、
ち 2.38 × 10 −2 (mol ) である。
d
[mC v (T − TM )] = − P0 qA
dt
定圧モル比熱を CV、温度変化を⊿T とすると、
1.90 × 10 3 ( J ) = 2.38 × 10 −2 (mol ) × Cv × ΔT
(イ)条件式を解いて P の関係式を求める。
①~④の式より q、-(Δm/Δt)、m、T を消去すると、
N2の定積モル比熱を 33.0(J/mol・K)とすると
ΔT = 8.00 × 10 4 ÷ Cv ≒ 2.40 × 103 ( K )
dP
2 R ( P0 M + ρC v TM ) A
=−
P − P0
dt
ρ Cv
VM
となる。
(ウ)燃焼後の最大圧力
この微分方程式を解くと、(C は積分定数)
最大圧力を PM、燃焼前後の気体の物質量を n0、n1と
2
P=
n0:n1=16:17。
すると
…④
定積変化なので、以下のような式が成り立つ。
⎞
1 ⎛ 2 R P0 M + ρC v TM
⎜
At − C ⎟⎟ + P0
⎜
VM
4 ⎝ ρ Cv
⎠
ここで t=0 のとき P=PMなので、
P0
PM
=
n0 RT0 n1 R(T0 + ΔT )
C = 2 PM − P0
(気体定数:R=8.31 (J/mol・K)
すなわち、 PM = 10.0 × 10 5 ( N / m 2 )
すなわち P 関係式は、
2
P=
(2)エタノール燃焼後→気体噴射
容器内の気体の状態は以下のようになる。
5
⎞
1 ⎛ 2 R P0 M + ρC v TM
⎜
At − 2 PM − P0 ⎟⎟ + P0
4 ⎜⎝ ρ C v
VM
⎠
3
PM=10.0×10 (N/㎡)
T0=2.69×10 (K)
(ウ)求めた P の関係式を用いて、ある噴射口の直径に対
定数として以下のように設定する。
3
ρ=1.60 (kg/m ) (気体の密度)
する、微小時間あたりにかかる推力をすべて積分した
CV=33.0 (J/mol・K)(定積モル比熱)
値を表1に示した。
M = 3.20 × 10 −2 (気体の平均分子量)
変数として以下の記号を用いる。
2
噴射口の面積:A (m )
容器内の温度:T( K)
容器内の圧力:P (N/m)
容器内の気体の質量:m (kg)
噴射速度:q (m/s)
時間:t (s)
(ア)圧力・時間・噴射口の面積の関係式を導く条件式を
求める。
気体は流体とみなすことができるので、ベルヌーイ
の定理を用いることができる。よって次の式が成立す
る。
表1
1 2
1
ρq +; P = ρ × 0 2 + P0
2
2
したがって表1から噴射口の面積が小さくなるほど機
これを変形すると、
q=
2( P − P0 )
ρ
噴射口の直径と加えられた力積
体に加えられる力積は大きくなり、機体は遠くへ飛ぶ
…①
ことがわかる。
単位時間内に噴射する気体の質量は、-(Δm/Δt)と
表され、これが噴射口を単位時間内に噴射する気体の
4. 実験
体積と密度の積に等しい。よって、
−
Δm
= 2( P − P0 ) A
Δt
噴射口の面積の最適値を求めるために、以下のよう
な実験を行った。
…②
(1)実験方法
理想気体の状態方程式より
PV =
m
RT
M
…③
(ア)
この反応を容器内と外気との熱の移動がないと考え、
131
実験1
エタノールを使用した噴射実験
ペットボトルのキャップの噴射口をセロハンテープ
でふさぎ、図1、図2のように装置を組み立てた。容
噴射時間の関係を調べた。なお、実験1で推力の測定
器内をニクロム線に電流を流して着火してエタノール
はペットボトルの変形によって正確な数値が得られな
を燃焼させ、オシロスコープで容器内の圧力、推力の
かったため、実験2では圧力のみを測定した。
変化を測定し、高速度カメラで燃焼、噴射の様子を撮
実験条件は以下のように行った。
影した。この操作を噴射口の面積のみの条件を変えて
行い、噴射口の面積と容器内の圧力、推力、噴射時間
1日目
の関係を調べた。
キャップの噴射口の直径:4.0、6.0、7.5(mm)
メタンと空気の混合比:
1:10
ペットボトル:1.5(ℓ)
実験条件は以下のように行った。
キャップの噴射口の直径:4.0、6.0、7.5(mm)
エタノール:1.2(ml)
2日目
ペットボトル:1(ℓ)
キャップの噴射口の直径:0.0、2.0、4.0(mm)
メタンと空気の混合比:
1:10
ペットボトル:1.5(ℓ)
(2)実験結果
(ア)
実験 1
オシロスコープで測定した圧力、推力からは再現性
のある実験結果は得られなかったが、高速度カメラの
映像から以下のことがわかった。
※最大圧力となる瞬間について
テープがはがれた後の気体が噴射する様子がはっき
りと映っている映像の、燃焼の速度、すなわち炎が燃
え広がる速度と、気体の噴射速度を調べた。(図3)
図1
実験装置の全体図
図3
図2
左は噴射口直径 4.0(mm)、右は 6.0(mm)の噴射の様子
ペットボトルのキャップの図
図4
噴射口直径 4.0(mm)の容器内の燃焼の様子
エタノールを用いた実験では、着火前のエタノール
の蒸発の度合いによって反応するエタノールの量が異
図4のように中心から噴射口に向かって炎が燃え広
なり、それが圧力変化に大きく関係したので再現性の
がる速度をA、炎が大きくなる速度をB、中心から底
ある結果が得られなかった。そこで限られた時間の中
に向かって燃え広がる速度をCとする。
で実験を行い、数多く均一なデータを得られるように
噴射速度と燃焼速度は表2のようになった。ただし、
するために、メタンで同様の実験を行った。
噴射速度は噴射後の1フレームの噴射気体の長さ、燃
焼速度は噴射直前の50フレーム間の炎の移動距離を
(イ)
実験2
メタンを使用した噴射実験
用いて計算した。
一定の混合比でペットボトル内にメタンと空気を満
たし、実験 1 と同様に噴射口の面積と容器内の圧力、
132
4,0(mm)
6.0(mm)
噴射速度
240(m/s)
212(m/s)
A
2.80(m/s)
2.48(m/s)
B
4.56(m/s)
3.36(m/s)
C
1.76(m/s)
0.48(m/s)
表2
噴射速度および燃焼速度
映像を見ると、気体の噴射が始まっても炎は燃え広
がっていた。つまり、燃焼は続いていた。しかし、上
の表のように噴射速度は燃焼速度に対してはるかに大
きいので、テープがはがれた途端に圧力は下がり始め
表3
ることがわかる。すなわち、テープがはがれる瞬間が
最大圧力と噴射口の直径の関係
最大圧力となるといえる。理論計算では点火してから
エタノールが完全燃焼するまでと、エタノールが完全
理論計算では噴射口の面積にかかわらず最大圧力は
燃焼してから気体が噴射しきるまでの2段階に分けて
一定としたが、実験結果(表3)では噴射口の面積が
計算を進めていったが、実験結果と比較すると最大圧
小さくなるほど最大圧力は大きくなっている。これは
力となった後気体が噴射するという点で一致している。
噴射口の面積が大きいほど噴射口を覆うテープの面積
が大きくなり、テープがはがれやすくなるからである
と考えられる。テープがはがれた瞬間が最大圧力なの
圧力が上昇し始めてから最大圧力(Pmax)となるまで
の時間を燃焼時間(t1)、最大圧力となってから大気圧
で、テープが早くはがれるほど最大圧力は小さくなる。
(P0)に戻るまでの時間を噴射時間(t2)とする。また、
よってキャップの穴が小さいほど最大圧力が大きくな
グラフにおいて噴射時間中の圧力の変化量の積分を相
ると考えられる。なお、噴射口の直径 6.0(mm)の平均
対推力(F)と考える。(図5)
値が 7.5(mm)の平均値よりも下がっている理由は、
6.0(mm)で行った3回の実験のうち1回が他とは大き
く異なった実験値を示しており、それらの平均値を取
ったためである。
図5
(イ)
圧力変化のグラフとの数値の定義
表4
噴射時間と噴射口の直径の関係
表5
相対推力と噴射口の直径の関係
実験2
図5のように定義してグラフから Pmax、t1、t2、F の値
を読み取り、噴射口の直径ごとに各値の平均値を求め
た。その結果を以下の表に示した。ただし、相対推力
はグラフから計算することができないため、図5の F
の部分と同面積の厚紙の重さを測ることによって調べ
た。
133
理論計算では噴射時間、推力ともに噴射口の直径が
小さくなるほどそれぞれの値が大きくなった。実験結
果(表4、表5)でもこれと同様の結果になっている。
よって、理論計算と実験結果が一致したため、噴射口
の面積小さくなるほど噴射時間、推力ともに大きくな
り、より遠くへ飛ぶと考えられる。
5.エタノールロケット作成について
図7
噴射実験を行う上で一定にしておかなければいけな
使い捨てカメラのフラッシ部分
い条件は、反応する燃料気体の量であった。つまりエ
タノールロケットを作成する上で初めに気をつけなく
てはならない点は、エタノールの蒸発方法、着火方法
である。これらのことについて考察を行った。
(1)エタノールの蒸発方法
噴射実験ではペットボトル内に直接エタノールを入
れ、温めることによってエタノールを蒸発させていた。
それ以外にも他の容器でエタノールを完全に蒸発させ、
それをペットボトル内に注入する方法を考えたが、他
の容器とペットボトルの温度差によってエタノールが
一部凝縮してしまうため、噴射実験と同様な方法が最
適であると考えた。
図8
(2)着火方法
(ア)
着火装置のキャップ部分の図
ニクロム線に銅線をつなぎ、その延長をカメラのフ
ラッシュ部分に接続する。まず電池とコンデンサーを
ガスマッチを使用する場合
つなげて電荷を蓄え、スイッチの切り替えによって一
瞬でニクロム線に電流が流れるようにセットする。ニ
クロム線についた銅線を図8のようにキャップの噴射
口に通す。スイッチを入れ、ニクロム線をスパークさ
せて着火するとエタノールが反応してペットボトル機
体が飛び、銅線は噴射口から抜き取られるという仕組
みである。
6.まとめ
理論計算と実験を行った結果、エタノールロケット
は噴射口が小さいほど遠くへ飛ぶということがわかっ
図6
ガスマッチを使用した着火
た。しかし、噴射口が小さすぎても着火が困難になる
ため、着火方法に適応した最小の面積の噴射口が最適
であると考えられる。
図6のようにガスマッチでキャップの噴射口に火を
通し着火させる場合、2つの問題点が生じる。ひとつ
は、直径が 3.0(mm)以下の噴射口には火が通らない点、
参考文献
もうひとつは安全性が保たれない点である。
日本航空宇宙学会論文集 Vol. 49, No.574, pp. 382-387,
2001
(イ)
使い捨てカメラのフラッシュを使用する場合
謝辞
小さい噴射口に火を通せるようにするため、また着
この一連の研究は名古屋大学工学研究科梅村章教授、
火時の安全性を保つために、使い捨てカメラのフラッ
高森助手のご指導の下で達成されたものであり、この
シュ(図7)を使用する着火方法を考えた。
場を借りて感謝申し上げます。
134
イネのいもち病菌に対する抵抗性と遺伝子の関係について
三重県立四日市高等学校
岡本あゆみ 東浦裕紀
Abstract
Hypersensitive reaction (HR) is thought to be the most important defense reaction of higher plants. Lately, it was
proved that the defense mechanism which block penetration attempts of pathogenic fungi plays central roles in disease
resistance. Then, we tried to identify the gene of rice cultivar, Habataki, which could suppress penetration attempts of
rice blast fungus remarkably. At first, we inoculated rice blast to Backcross Indred Lines (BIL) from Sasanishiki and
Habataki; they were replaced a piece of a chromosome from Sasanishiki, which was highly susceptible to rice blast,
with a chromosome from Habataki. A length of infection hyphae in leaf sheath tissues of rice was investigated and
chromosomal position of resistant gene locus was estimated with QTL analysis. By the results of the analysis, the
resistant gene on the chromosome two was identified. To know whether this gene is novel or not, we tried to search the
rice genome database “Oryzabase”. As a results, we found a gene, Pib, which is at the similar position to the gene we
found. Because the sequence of Pib is already made clear, we checked whether this gene is Pib or not by PCR.
Electrophoresis of the PCR products from genomic DNA and cDNA of Habataki showed fragments of the expected size
(0.7 kbp and 0.4 kbp, respectively). When template was cDNA, we found an unexpected extra product whose size was
similar to PCR product of genomic DNA. Sequences of all products were identical to Pib gene and mRNA. The extra
product had a genomic DNA sequence with an intron. This result suggests that alternative splicing gives rise to
different transcripts from Pib gene.
既に作製されていた。そこで、この 85 系統の BIL にいも
1 はじめに
イネの大敵、いもち病菌の生活史とは次のようなもので
ち病菌を接種し、その感染の程度を調べることにより、抵
ある。
抗性遺伝子が染色体のどの位置に存在するかを解析するこ
(1)胞子が葉の表面に付着
とにした。また、イネゲノムデータベースを活用すること
(2)付着器が出現
により、同定された遺伝子が既知のものであるかどうかを
(3)付着器から葉の細胞に菌糸が侵入
確認し、既知のものである可能性が明らかになった場合に
(4)感染した菌糸がイネの組織で成長
は、分子生物学的な分析により同一のものであることを確
(5)伸長した菌糸が胞子を作り、他の部位へ伝播
認することにした。
このようないもち病菌からの攻撃に対するイネの抵抗性
で、最も重要視され研究が進められてきたのはHR(過敏
2 実験1
感反応)と呼ばれる機構である。HRとは、動物のアポト
(1)菌液調整
ーシスに似た、プログラムされた細胞死である。感染が広
ア 菌糸が蛍光するように緑色蛍光タンパク質(GFP)
がらないように、
(4)の段階で、感染したいもち病菌とと
を発現するように形質転換したいもち病菌を PDA
もに細胞が死ぬのである。これまでは、これがイネの重要
培地上で培養し、オートミール培地上に植えつぎ、
な抵抗性機構であると考えられていたが、近年、イネのい
一週間培養した。
イ その後滅菌水を培地上にまき、滅菌した筆を用いて
もち病菌に対する抵抗性には、
(3)の段階を阻止する機構
気中菌糸を掻き取り、空気穴を開けたサランラップ
が最も重要であることが分かってきた。
でふたをしてブラックライトの下で胞子形成させた。
いもち病菌にはイネに感染する系統の他にキビやアワに
ウ 胞子形成させた後、滅菌水を培地上にまき、滅菌し
感染するものがあり、それぞれは他の植物に感染しない。
例えば、アワいもち病菌をイネに接種してもイネは感染し
た筆を用いて胞子を掻き取り、胞子縣濁液を得た。
ないということである。これまで、異なる系統の菌が感染
エ 3000rpm、2min で遠心分離機にかけ、上清を取り
除き、滅菌水を加えた。
できないこともHRによると考えられてきたが、最近の研
究によって付着器からの菌糸の侵入が防がれていることが
オ 血球計算盤を用いて胞子濃度を測定した。
わかった。HRは侵入後に誘導される機構なので、この結
カ 再度遠心分離機にかけ、濃度が 5.0×105 になるよう
に 0.1%粉末寒天入り滅菌水を加えた。
果はイネにHR以外の抵抗性が存在することを示している。
そこで我々は、顕著にいもち病菌の侵入を阻止するハバ
タキというイネの品種が持つ抵抗性遺伝子を同定すること
(2)接種植物調整
にした。ある形質に関わる遺伝子を同定するためには、交
ア ハバタキ・ササニシキ戻し交雑自殖系統群(BIL)
雑によって得られる子孫の遺伝学的な解析が必要である。
全 85 系統のイネの種子を EtOH に 1 分間、イオン
これには膨大な時間と労力を要するが、ハバタキの場合に
交換水と次亜塩素酸ナトリウムを 1:1 の割合で混合
は、いもち病菌に弱いササニシキの染色体の一部がハバタ
したものに 30 分間つけ、滅菌水で 5 回洗浄し、種
キの染色体に置き換わった戻し交雑自殖系統群(BIL)が
子滅菌した。
- 135 -
イ その後、滅菌水をしみこませたろ紙を敷いたガラス
シャーレ内に入れ、インキュベーター内で 30℃の条
件で発芽処理した。
ウ 種子をポットに植え、3 週間成長させた。
エ イネの一番若い葉鞘を葉の付け根から 5cm ほど切
り取った。
3…感染菌糸の伸長がササニシキと同等
(3)接種
(ササニシキの 70%を超える程度)
ア ピペットマンを用いて濃度を調整した胞子縣濁液を
筒状になっている葉鞘の中に注入した。
※今回の実験ではササニシキの侵入具合が悪かったため、
イ 接種した葉鞘は、湿らせたろ紙を敷いたガラスシャ
系統 No.1 の侵入具合を基準とした
ーレ内に置いた台の上に固定し、インキュベーター
内に移して菌を培養した。
(5)QTL 解析
各系統の観察結果から得られた数値を QTL 解析ソ
(4)観察
接種から 36 時間後、蛍光顕微鏡を用いて感染菌糸
フト(QTX)で処理し、DNA マーカー間の LOD 値
の伸長程度を評価した。このときの評価はササニシ
を計算して染色体上における遺伝子の位置を推定し
キと比べてどれほど感染菌糸の伸長が抑制されてい
た。
るかを見るものとした。評価は個体ごとに数字で示
し、1 系統につき 3~4 個体の値を平均してその系統
3 実験1の結果・考察
の値とした。評価基準を次に示す。
評
No.
(評価基準)
評
No.
価
0…感染菌糸の伸長が認められない
1…感染菌糸の伸長が強く強制されている
(ササニシキの 30%未満)
評
No.
価
評
No.
価
評
No.
価
評
No.
価
価
1
3
16
2.3
31
1
46
1.5
61
1.7
76
2
2
2
17
1.3
32
1
47
1
62
1
77
0
3
0.5
18
2.5
33
-
48
1.7
63
1
78
1.8
4
1.5
19
0.5
34
0
49
1.5
64
1.7
79
0.7
5
0.3
20
2
35
1.3
50
1
65
1.7
80
2
6
2
21
0.5
36
1.7
51
1.5
66
0.5
81
2
7
1.7
22
0.5
37
0.3
52
1.5
67
0
82
1.5
8
1
23
2
38
2
53
0
68
1.3
83
1
9
1.7
24
2.7
39
1.7
54
1
69
1.3
84
1
10
0
25
2.3
40
0.3
55
1
70
2
85
2
11
1
26
2
41
1.3
56
1.5
71
1.7
12
1.5
27
2.5
42
1.5
57
1
72
1.5
13
0.5
28
2.3
43
0.5
58
1
73
1.5
14
2
29
1
44
0
59
1.5
74
0
15
2
30
2
45
1.3
60
0.5
75
0.3
表 1 BIL85 系統に接種したいもち病菌の伸長程度
今回の実験では、視覚的評価のみに基づいて QTL 解析
を行った。表 1 は、BIL85 系統に接種したいもち病菌の感
染菌糸の伸長程度を示している。この表の値を元に、QTL
解析を行い LOD 値を求め、抵抗性遺伝子の存在位置を決
定した。
(次頁図 1 矢印の部分)
2…感染菌糸の伸長がある程度抑制されている
(ササニシキの 30%~40%未満)
136
LOD値
Extraction Solution を入れ、葉が液面より下に沈ん
第2染色体
でいることを確認し、チューブのふたを閉じて軽く
35
Vortex した。
30
ウ チューブを 95℃、10min ブロックヒータ上でイン
25
キュベートした。
エ 100μl の Dilution Solution を加え、Vortex により
20
よく撹拌した。
15
オ 4℃で一旦保存した。
10
5
(2)QIAGEN RNeasyPlantKits による RNA の抽出
以下の作業はすべてディスポ手袋をして行なった。
1 .0
3
1 .0
7
0 .9
1
0 .9
5
0 .9
9
0 .7
9
0 .8
3
0 .8
7
0 .6
7
0 .7
2
0 .7
5
0 .5
5
0 .5
9
0 .6
3
0 .3
9
0 .4
2
0 .4
6
0 .5
0 .2
3
0 .2
7
0 .3
1
0 .3
5
0 .1
2
0 .1
6
0 .1
9
0
0 .0
4
0 .0
8
0
ア およそ 100mm の組織を LN2 に入れ乳鉢で細かくな
図 1 第 2 染色体の各 DNA マーカー位置における LOD 値
るまで磨砕した。
今回の実験では視覚的な評価だけしか行っていないので、
イ 磨砕した試料を、8 粒のガラスビーズ(直径 3mm)
を入れた 2ml のスクリューキャップチューブ(アシ
推定した染色体の位置がハバタキに組み換わっている系統
がすべて抵抗性を示したかどうかを照らし合わせ、どれ程
ストチューブ)に入れた。
一致するのかについても検証してみた。LOD 値のグラフよ
ウ 450μl の Lysis buffer RLT を入れ、FastPrep を用
り、抵抗性遺伝子が存在するだろうと思われる染色体の位
いて、SPEED:6.5、TIME:45sec で一回処理した。
置は第 2 染色体の DNA マーカーR2511 の近くであると考
エ
QIAshredder にサンプルを入れ、15000rpm で、
2min 遠心した。
えられた。この位置がハバタキの染色体に置き換えられて
いる系統と観察によって得られた評価の数値とを照らし合
オ スピンカラムを通過してきたものを新しい 1.5ml の
わせた結果、R2511 がハバタキに置き換わっている系統の
サンプルチューブに入れた。このとき、ごくわずか
ほとんどが抵抗性を示すことが明らかになったが、ごく一
に沈殿ができていたが、これを舞い上げたり取らな
部の系統では感受性を示した。この結果は、視覚的な評価
いようにした。
が不十分であることを示している可能性もあるが、データ
カ 225μl の EtOH を入れ、ピペッティングで混ぜた。
は DNA マーカーの位置にある染色体が、ハバタキとササ
キ サンプルを RNeasy スピンカラムに入れ、
11000rpm
で 15sec 遠心した。
ニシキのどちらであるかを示しているに過ぎないことに注
意すべきである。すなわち、抵抗性遺伝子がちょうど
ク
スピンカラムを通過したフラクションを捨て、700
R2511 の場所にあるとは言えないからである。つまりそれ
μl の Wash Buffer RW1 をスピンカラムに入れ、
は、R2511 の位置がハバタキに置き換わっていても抵抗性
11000rpm で 15sec 遠心した。
(コレクションチュー
遺伝子を含んでいない場合があることを意味している。
ブはそのまま使用した)
R2511 の位置がハバタキに置き換わっていた系統の大半
ケ スピンカラムを通過したフラクションを捨て、スピ
ンカラムを新しい 2ml サンプルチューブに付けた。
が抵抗性と評価されたことから考えて、この実験で行った
視覚的評価は十分に的確であったと判断された。このこと
コ 500μl の Wash Buffer RPE(EtOH を加えている
は逆に、DNA マーカーの位置にある遺伝子が、抵抗性遺
もの)をスピンカラムに入れ、11000rpm で 15sec
伝子そのものではないということも示している。
遠心した。
DNA マーカーR2511 の近くに同定された抵抗性遺伝子
サ スピンカラムを通過したフラクションを捨てた。
(コ
をインターネット上のイネゲノムデータベースで調べてみ
レクションチューブはそのまま使用した)
たところ、この付近に Pib という抵抗性遺伝子が存在する
シ もう一度 500μl の Wash Buffer RPE をスピンカラ
ムに入れ、15000rpm で 2min 遠心した。
ことが知られていると判明した。
ス スピンカラムを新しい 1.5ml のサンプルチューブに
そこで私たちは、今回検出された遺伝子が Pib であるか
つけ、30~50μl の DEPC 処理水をスピンカラムの
どうかを確かめるために、PCR 法を用いて遺伝子を検出す
メンブレン上に直接のせ、11000rpm で 60sec 遠心
るとともに、得られた PCR 産物の塩基配列を確認した。
した。
セ 分光光度計の RNA 濃度測定プログラムを用いて、
RNA 濃度を測定した。
4 実験2
(1)REDExtract-N-Amp Plant PCR Kits による DNA
(3)RNA からの cDNA プールの調製
の抽出
以下の作業は手袋をして行なった。また、操作は PCR
ア 70%EtOH で拭いたはさみを用いてイネの植物葉を
用の 0.2ml チューブ内で行なった。
切り、4 辺すべてに切り口ができるように、およそ
ア 濃度を測った RNA に、それぞれ濃度が 0.2~1.0μ
5mm 角の切片を 3 枚作製した。
イ
g/μl、全量 4.5μl になるように H2O を加えた。
切片を 2ml サンプルチューブに入れ、100μl の
137
ウ 以下のサイクルで PCR した。
イ 20μM dt primer を 0.5μl 加えた。
94℃ 5min
ウ サーマルサイクラーを用いて、70℃で 10min 反応
94℃ 30sec
させた。
エ ただちに氷冷し、以下の試薬を全て器壁につけスピ
50℃ 30sec
ンダウン後撹拌し再びスピンダウンするかたちで加
72℃ 30sec
えた。
72℃ 2min
10×BufferRT
1.0μl
5mM dNTP
1.0μl
RNase free water
2.5μl
Omniscript RTase
0.5μl
Total
40 サイクル
4℃ Keep
(5)ミューピッド用アガロースゲル作り
ア ゲルのホルダーを 10%EtOH 軽く拭いておいた。
イ アガロースを 1.8g量り、電子レンジで 120ml の 1
10μl
×TAE に溶解した。
オ サーマルサイクラーを用いて、37℃、60min、また、
ウ
スターラーバーで撹拌しながら溶解し、十分に約
50℃まで冷却した。
93℃、5min で反応させた。
エ ホルダーにゲルを満たし、コームをさし、上に覆い
(4)PCR による特異的 DNA 断片の増幅
をして、30 分以上固化させた。
以下の試薬をチューブの器壁につけ、スピンダウンし混
和した。
(6)アガロース電気泳動によるバンドの確認
なお、primer の塩基配列は
長さを確認するためのものと、切り出して塩基配列を調べ
るためのものと二種類×二回分行なった。
5’プライマー:5’- AGGGAAAAATGGAAATGTGC -3’
ア 確認用
3’プライマー:5’-AGTAACCTTCTGCTGCCCAA -3’
(ア)ゲルを所定の位置にセットしゲルにかぶるように
1×TAE を注いだ。
(イ)1μl のサンプルバッファーをパラフィルム上にサ
を用いた。
ンプルの数だけ滴下した。
ア DNA
(ウ)必要量のサンプルをピペッティングによってサン
DNA template
4μl
10×PCR-Buffer
5μl
(エ)混和したサンプルをゲルのスロットに充填した。
2.5mM dNTPs
4μl
(オ)30min 電圧をかけた。
5’primer(50μM)
0.5μl
イ シークエンサー用
3’primer(50μM)
0.5μl
超純水
35.5μl
プルバッファーと混和した。
(ア)アと同じく、ゲルを所定の位置にセットしゲルに
かぶるように 1×TAE を注いだ。
(イ)5μl のサンプルバッファーをサンプルに加えた。
2.5u/μl Taq polymerase
0.5μl
(ウ)混和したサンプルをゲルのスロットに充填した。
Total
50μl
(エ)30min、100V の電圧をかけた。
イ cDNA
(7)写真撮影、ゲルの切り出し
cDNA pool
1μl
10×PCR-Buffer
5μl
2.5mM dNTPs
4μl
5´primer(50μM)
0.5μl
3´primer(50μM)
0.5μl
超純水
38.5μl
2.5u/μl Taq polymerase
0.5μl
Total
50μl
トランスイルミネーターの上にゲルを置いて写真を取り、
バンドを確認しながら切り出した。
(8)DNA の抽出と塩基配列の決定
切り出したゲルから DNA を抽出し、電気泳動で確認し
た。DYEnamic ET キットを用いてシークエンス反応を行
い、ABI3100 DNA シークエンサーを用いて、それぞれの
バンド由来の DNA の塩基配列を決定した。
138
とした場合には Pib 由来のバンドよりかなりサイズが大き
5 実験2の結果・考察
いバンドが検出された(図 2 および 3)。PCR で用いた
ハバタキ
DNA
primer は、cDNA 由来のバンドは DNA 由来のものよりも
cDNA
短くなるようにデザインされていたため、このバンドは本
来存在しないはずのバンドである。今回は Pib 由来と考え
ササニシキ DNA
られる 722bp の DNA 由来のバンドと 450bp の cDNA 由
cDNA
来のバンドの他、この未知のバンドについても塩基配列を
Pib
解析し、前者 2 種類の PCR 産物が既知の Pib と同じ塩基
配列であるのかを調べるのと同時に、この未知の PCR 産
同様
物がどのような塩基配列をしているのかを調べることにし
Pib
た。そこで、ジデオキシ法(サンガー法)を用いて、DNA
シークエンサーで塩基配列を解析した。
図 2 ゲノム DNA および cDNA をテンプレートとした
PCR の結果
AACCNTTAANGTTCTTTAACATAATGATGCATTGTG
(上からハバタキ DNA 由来、
cDNA 由来、
ササニシキ DNA
CCTCTTGAGTGAGAAGGTAATATAAGTGTGCTCCAT
由来、cDNA 由来。下のバンドについても同様)
TTTTCTTGGTTTGATATTCTTTTAATCATTTGAGTAA
TCCAATCAAGATGATATTTGTGCATGCAGAAATAGC
DNA 由来 Pib…722bp,cDNA 由来 Pib…450bp
ATATACTAGATTCATATACAACTTAATCTGTTCTCAC
AACAATAGCAATGCAGTTCCTAAAATGACCTGCATT
GGATGGACGTTAGATGTGACTTTGTTTTTGTATGTA
ATGGTGGCCTTCATTCCTTAGTTTTAATAGTAAAGA
CGTATTTCTAAATTTAATTTTTTTTGTTTTACTTTAG
NAGCACAATAAAGCTTAAATTGTATCAATGTCAGGT
ATTTGAGGAGGCTACATATTTGGATGATCAGAACAA
Pib
未知のバンド
TCCAGAGTTGGTTAAAGAAGCAAAACAAATCCTAAA
GAAGTGCGATGGACTGCCCCTTGCAATAGTTGTCAT
AGGTGGATTCTTGGGCAAACCGACCAAAGACCCCA
未知のバンド
GAAAGAGTGGAGAAAATTGAACGAGAATATCAATG
Pib
CTGAGTTGGAAATGAATCCAGAGCTTGGAATGATAA
GAACCGTCCTTGAAAAAAGCTATGATGGTTTACCAT
図 3 図 2 の PCR 産物を DNA 抽出用ゲルで電気泳動した
ACCATCTCAAGTCATGTTTTNTATATCTGTCCATTTT
結果
CCCTGAAGACNGATCATTAGTCGAAGGCGTTTGGT
(左からハバタキ cDNA 由来、DNA 由来。もう一方のバ
GCATCGTTGGGCAGCAGANGGTTNCTAAAAA
ンドも同様)
図 4 DNA 由来の Pib と推定されるバンドの塩基配列
PCR を 2 反復行った結果、一方の結果では DNA、cDNA
両由来とも Pib が検出されたが、他方では、DNA をテン
プレートにした場合のみ Pib が検出されなかった(図 2)
。
しかし、同じサンプルを二つに分けて実験を行ったことよ
CANGGCGANTCTNACNCGGATTCGTNTTTNACAGT
AATTGAGCTGCATTTTGCTNCCGTCTNTGAANATGA
TCAAGGTATTACGACTAGACGGCNTACAGTNCTTN
り考えて、いずれのサンプルも Pib を含んでいたという可
GGACTCGAATCNCGAACGAAATCCNCAGGTTGGGT
能性が高い。何故他方の結果でバンドが確認できなかった
GNANGAACGCGAGANACAAATCCTCANAGNACGT
のか考えたところ、次のような可能性があげられた。
GCGACGGACTGCCCCTTTCNATANTAGTCATAGGT
・
抽出した DNA 微量であったため、実験操作の際に、
GGATTCTTGGCAAANCGACCANAGACCCCAAAGNA
マイクロピペットによってうまく DNA を取り出すこ
・
NTGGATAAAATNGNGCGAGANTATCAGGGCTNACT
とができなかった。
TGGAAATGAATCCAGAGCTNGGAATGATCAGAACC
電気泳動の際、サンプルを注入するときに手違いを起
GTCCTTCAANAAAGCTATGATGGTTTACCATACCAT
こした。
CTCGAGTCATGTTTTTTATATCTNNCCNTTTGCCCT
これ以外にも可能性はあると考えられ、本来ならばもう
GAAGACCAGATCATNATTCGAAGGCNTTNGGTGCA
一度実験するべきではあるが、今回は時間が足りなかった
TCNTTGGGCAGCATAAGGGTTACTAACATCTCCTTG
ため行うことができなかった。
GGCAGCANAAGGTTACTA
また、DNA をテンプレートとした場合、Pib 由来のバン
図 5 cDNA 由来 Pib と推定されるバンドの塩基配列
ドよりややサイズが小さいバンド、cDNA をテンプレート
139
ACCCNTAATGTTCTTAACATAATTGATGCATTGTGC
によって、同じ範囲の DNA から転写された RNA でも遺
CTCTTGAGTGAGAAGGTAATATAAGTGTGCTCCATT
伝子による働きが違う場合がある、ということが知られて
TTTCTTGGTTTGATATTCTTTTAATCATTTGAGTAAT
いる。
CCAATCAAGATGATATTTGTGCATGCAGAAATAGCA
これは、進化の過程や環境適応において便利なのではな
TATACTAGATTCATATACAACTTAATCTGTTCTCACA
いかと考えられる。イントロンを含む・含まないによって
ACAATAGCAATGCAGTTCCTAAAATGACCTGCATTG
遺伝子の働きが変わるということは、全てのイントロンを
GATGGACGTTAGATGTGACTTTGTTTTTGTATGTAA
削ることによってのみ転写が行われる場合よりも、遺伝子
TGGTGGCCTTCATTCCTTAGTTTTAATAGTAAAGAC
のはたらきについて微調整が利くということだからである。
GTATTTCTAAATTTAATTTTTTTTGTTTTACTTTAGA
6 総括
GCACAATAAAGCTTAAATTGTATCAATGTCAGGTAT
TTGAGGAGGCTACATATTTGGATGATCAGAACAATC
全体の実験を通して、結果的に以下のことがわかった。
CAGAGTTGGTTAAAGAAGCAAAACAAATCCTAAAG
AAGTGCGATGGACTGCCCCTTGCAATAGTTGTCATA
・
GGTGGATTCTNGNGCAAACCGACCAAAGACCCCCA
QTL 解析によって検出できた遺伝子は、実際にイネい
もち病菌に対する抵抗性に関わる、Pib という遺伝子
NAAGAGTGGNGAAAATTGAACNAGAATATCAATGC
であった
TGAGTNTNNCCATGAATCCNNAGCTNGTGAATGAT
・
NCNGANCCGTCCTTNAAAAAAGCTNTGATGNTTTN
RNA は選択的スプライシングというものを行ってい
CCANNNCCATCNCCNGNTNNTGNNNTNNCNTNTC
て、それによって全てのイントロンを削るスプライシ
TGNCCATNTTNCCCTGNANGACCNNANCATTNNTC
ングを行うよりも複雑な遺伝子の働きを得ることが
CCNGGGNTTNGGNGNNNCNTNGGNCNNCNGNCG
できる
TTNCNTAAAA
この実験で私たちが単離・同定した Pib 遺伝子は、HR
図 6 cDNA 由来の未知の PCR 産物の塩基配列
にも、侵入自体を防ぐ抵抗に関しても関係のある遺伝子で
この結果をインターネット上の遺伝子データバンクでホ
あったので、侵入を防ぐ抵抗に関してのみ関係のある遺伝
モロジー検索したところ、Pib と推定される DNA 由来の
子の発見についても研究してみたいと感じた。しかし今回
PCR 産物と cDNA 由来の PCR 産物はそれぞれ Pib の遺伝
はその遺伝子に関してまでは調べることができず、その点
子および mRNA(cDNA)の塩基配列のデータと一致した。
のみ残念であった。
また、cDNA 由来の未知の PCR 産物の塩基配列は Pib 遺
伝子の塩基配列と一致した。図 4 および 6 の結果からも、
今回の実験では、まず初めに、使用する試料(ササニシ
DNA 由来の PCR 産物と未知のものの配列が極めて類似し
キとハバタキ)の種子を滅菌し、土に植えるところから始
ている事がわかる。このことにより、cDNA 由来の未知の
めさせていただけた。また、試料の調整なども体験できた
PCR 産物は DNA 由来の Pib と同じ配列を持つことがわか
ため、地道な努力の積み重ねが華やかな結果に繋がってい
った。
く、ということを身をもって感じられる実験であった。普
何故 cDNA をテンプレートとした PCR の産物がイント
段の実験では、使用する試料を育てることから始めること
ロンを含んだ遺伝子配列を持っているのかについて考える
などなく、試料の調整も先にやっていただいているので、
と、次のようなことがいえる。
今回の実験は私たちにとって非常に貴重な体験かつ有意義
に過ごすことのできた時間であった。
・
・
また、イネという身近な植物の遺伝子に触れることによ
RNA を抽出したときに DNA も混入した
って、ゲノムの可能性がどれ程幅広いかということを感じ
スプライシングが行われていない RNA が存在した
ることができた。最近では、イネの収穫量に関する遺伝子
そこで、RNA 抽出時に DNA 分解酵素で完全に DNA を
が利用可能になったという話も聞く。米を主食とする日本
取り除いたサンプルで、同様の実験を行った。しかし、そ
人として非常に興味深く、これからますます盛んになって
れでもやはり RNA 由来側に DNA 由来と同じ長さのバン
いく分野であるといえるだろう。
ドが確認できた。つまり、転写時にスプライシングが行わ
れていてない RNA が存在していると考えることができる。
7 謝辞
このことは Pib 遺伝子には「選択的スプライシング」と
この度の研究は、三重大学生命科学研究支援センター助
言われる現象が起きていることを示している。DNA が
教授小林一成様と、
TA竹内竜馬様、
山本雅子様にご指導、
RNA に転写される際、遺伝子情報の要らない部分(イン
ご協力いただきました。心より感謝いたします。
トロン)をけずるためにスプライシングが起こるわけであ
るが、その削る部分を選ぶ、ということが行われているの
8 参考ホームページ
だ。イントロンを削る、削らないということや、削る部位
DDBJ BLAST (http://www.ddbj.nig.ac.jp/Welcome-j.html)
NCBI BLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)
140
コンポスト中の細菌種の 16SrRNA 遺伝子の DNA 塩基配列の解読
三重県立四日市高等学校
芳金綾香 白崎里菜
Abstract
Identification of bacteria from garbage composting system was examined. One gram of the compost contained 2×108
bacteria. Some bacteria have starch and cellulose degrading activities. To identify these bacteria, 16S rRNA gene were
amplified from chromosomal DNA purified from these bacteria using polymerase chain reaction (PCR). The amplified
fragments were digested with restriction endonuclease HaeIII. The digested patterns were compared and grouped into
9 patterns. Two of these patterns appeared frequently and were selected. The DNA from strain No. 4 and 39 were
sequenced using DNA sequencer. To determined the closest known relatives, searches were performed in DNA
databases with the BLAST algorithm. The result showed that No. 4 is Bacillus licheniformis and No. 39 is
Staphylococcus lentus. These results indicate that bacteria in compost have varieties of species and functions.
1 はじめに
近年地球環境の悪化の問題の一つとして廃棄物問題が
②計測に使用したプレートより細菌コロニーを 40 コロニ
挙げられる。私たちの生活のなかで、たくさんの廃棄物
ー選び、新しい培地に植菌すると同時に、カルボキシ
が出ており、それらの処理で、ダイオキシンの問題や、
メチルセルロース(CMC)とデンプンをそれぞれ含んだ
不法投棄の問題、埋め立ての問題など、様々な問題が生
培地に植菌した。37℃で一晩培養した後、CMC の培地
じている。
に1%コンゴレッド溶液を加え、セルロースを染色し、
1M 塩化ナトリウム溶液で脱色した。デンプンの培地
そこで私たちは、家庭から排出される最も身近な生ご
にはヨード溶液を加えてデンプンを染色することで、
みという廃棄物の処理について研究した。
分解を確認した。
生ごみをコンポスト(堆肥)化することは、生ごみを
処理するだけでなく、
有機肥料を提供できる利点がある。
(2)結果
きているのかを知るために、生ごみコンポスト内の細菌
土壌1g当たり 2×108 個の菌を確認することができた。
単離した菌を顕微鏡で観察したところ大部分は桿菌であ
を調べ、さらに菌種を同定した。
り、わずかに球菌であることが確認できた。セルロース
そこで、私たちは、コンポスト化でどのようなことがお
本研究では、私たちの家から出た生ごみを使用し、コ
を分解する菌とデンプンを分解する菌を調べたところ両
ンポスト化を実際に行った。こうして作成したコンポス
方の基質とも分解する菌と、セルロースだけを分解する
トより細菌を単離し、その性質の一部を調べたのち、代
菌、デンプンだけを分解する菌がいることがわかった。
表的菌種について分子生物学的な解析、PCR 法による
16S rRNA 遺伝子の増幅と DNA 塩基配列を解読し、菌
種を調べた。
2 実験①コンポスト菌の分解特性
コンポスト作成
土、
もみがらをベースに生ごみを足し、
屋外にて発酵した。
図2 コンポストから単離した菌
ブイヨン培地、37℃で一晩培養した。
図 1 作成したコンポスト
(1)実験方法
①生ごみコンポストを生理食塩水で希釈し、ブイヨン寒
天培地に植菌し、37℃で一晩培養した。寒天培地に生
育したコロニーの数からコンポスト土中の菌数を計算
した。
- 141 -
図3 顕微鏡観察(桿菌)
④サンプルを 15000rpm、5 分間、遠心分離した。余分
なものが沈殿し、DNA が上澄みに残った。
⑤上澄みを取り、新しいチューブに移し換えこれにエタ
ノールと 3M 酢酸ナトリウム溶液を加えて攪拌した。
⑥-80℃で 10 分間保存して 15000rpm、15 分間、遠心
分離した。
⑦上澄みを取り除き、生じた沈殿をスピードバックで乾
燥した。乾燥した沈殿を TE 緩衝液で溶解した。
⑧フェノール、クロロホルムによる抽出の後、エタノー
ルにより DNA を沈殿させた。沈殿を TE 緩衝液で溶
解し、以下の試料とした。
⑨試料をテンペレートとしてを PCR を行った。
図4 顕微鏡観察(球菌)
プライマーとして、細菌の 16S rRNA 遺伝子を増幅す
る 27F と 1492R を使用した。プライマーの配列は次
のとおり。
27F: 5’-AGAGTTTGATCCTGGCTCAG-3’
1492R: 5’-GGCTACCTTGTTACGACTT-3’
反応条件は、96℃、10 秒、53℃、10 秒、72℃、1分
間 30 秒の反応を 30 回繰り返した。反応後、アガロー
スゲル電気泳動(トリス-酢酸-EDTA 緩衝液)で増幅
した DNA 断片を確認した。
(A)
⑩PCR で増幅した 16SrRNA 遺伝子を制限酵素 HaeⅢで、
(B)
37℃、1時間、切断した。
図5 単離した細菌の基質分解性
(A)
CMC を含む培地でのセルロースの分解
(B)
デンプンを含む培地でのデンプンの分解
⑪切断した DNA をポリアクリルアミド電気泳動(トリ
ス-ホウ酸-EDTA 緩衝液)した。そして DNA の切れ
方の違いで種を分類した。
表1 単離した菌のセルロースと澱粉に対する分解特性
(2)結果
いづれの試料からも、16S rRNA 遺伝子と推定される長さ
の DNA が増幅した。(図6参照)次にこれを制限酵素
HaeIII により切断した。その結果の一部を図7に示した。
図6では、長さが同じ(約 1500bp)DNA 断片であったが、
制限酵素で切断すると異なる断片を生じた。HaeIII は、
番号は、単離した菌の番号を示す。CMC は、カルボキシ
メチルセルロースを示す。分解活性のみられた菌は○で示
GGCC という配列を認識して切断する酵素なので、切断パ
した。
ターンが異なるということは、塩基配列の違いを意味して
いる。この分解パターンを比較することで、40 コロニーは、
3 実験②ポリアクリルアミドゲル電気泳動による
9種類のパターンに分けることができた。このうち、出現
頻度の高かった二つのパターンについて、代表菌種 No.4
菌種の分類
(1) 実験方法
と No.39 を選び、塩基配列の決定を行った。
実験①のコンポストから得た菌のコロニー40 コロニ
ーを5ml のブイヨン液体培地で、37℃、一晩、振と
う培養した。
①培養培地を 1.5ml をマイクロチューブに取り、
15000rpm、3 分間、遠心分離した。
上澄み液を取り除き、リゾチーム、プロテアーゼ K、
リボヌクレアーゼを含む 50mM トリス塩酸緩衝液を
図6 16SrRNA 遺伝子のアガロース電気泳動
加えてボルテックスにより菌体を懸濁した。
PCR を行ったところ、
全ての rRNA 遺伝子を確認できた。
②37℃のウォーターバスで一時間インキュベーション
左は DNA マーカー。
した。
③溶菌液として 10%ドデシル硫酸ナトリウム溶液を加
え、手でゆっくり混ぜ、55℃のウォーターバスで一時
間インキュベーションした。
142
図8 塩基配列の決定
ABI3100 DNA シークエンサーから出力された配列の例
GACGAACGCT
CCTTAGGTCA
AACTCCGGGA
AAGGTGGCTT
TAACGGCTCA
ACTGAGACAC
AAAGTCTGAC
GTTAGGGAAG
GCCACGGCTA
ATTATTGGGC
CAACCGGGGA
CACGTGTAGC
TGGTCTGTAA
GTAGTCCACG
CAGCAAACGC
ATTGACGGGG
CCTTACCAGG
GAGTGACAGG
GCAACGAGCG
GCCGGTGACA
GGGCTACACA
ATCCCACAAA
ATCGCTAGTA
CGCCCGTCAC
AGCCGCCGAA
図7 16SrRNA 遺伝子の制限酵素 HaeⅢで切断後のポリ
アクリルアミド電気泳動
この結果で系統分離する。制限酵素の切断の様式から 9 パ
ターンに分類した。
4 実験③シークエンスによる菌の種類の特定
(1) 実験方法
①PCR で増幅した DNA を全て、アガロースゲルで電気
泳動を行った。電気泳動したゲルより、紫外線点灯下
で DNA を含んだ部分を切り出した。
②前もって重さを量っておいたチューブに DNA を含ん
だゲルを入れ、総重量を測定することでゲルの重さを
GGCGGCGTGC
GCGGCGGACG
AACCGGGGCT
TTAGCTACCA
CCAAGGCGAC
GGCCCAGACT
GGAGCAACGC
AACAAGTACC
ACTACGTGCC
GTAAAGCGCG
GGGTCATTGG
GGTGAAATGC
CTGACGCTGA
CCGTAAACGA
ATTAAGCACT
GCCCGCACAA
TCTTGACATC
TGGTGCATGG
CAACCCTTGA
AACCGGAGGA
CGTGCTACAA
TCTGTTCTCA
ATCGCGGATC
ACCACGAGAG
GGTGGGACAG
CTAATACATG
GGTGAGTAAC
AATACCGGAT
CTTACAGATG
GATGCGTAGC
CCTACGGGAG
CGCGTGAGTG
GTTCGAATAG
AGCAGCCGCG
CGCAGGCGGT
AAACTGGGGA
GTAGAGATGT
GGCGCGAAAG
TGAGTGCTAA
CCGCCTGGGG
GCGGTGGAGC
CTCTGACAAC
TTGTCGTCAG
TCTTAGTTGC
AGGTGGGGAT
TGGGCAGAAC
GTTCGGATCG
AGCATGCCGC
TTTGTAACAC
ATGATTGGGG
CAAGTCGAGC
ACGTGGGTAA
GCTTGATTGA
GACCCGCGGC
CGACCTGAGA
GCAGCAGTAG
ATGAAGGTTT
GGCGGTACCT
GTAATACGTA
TTCTTAAGTC
ACTTGAGTGC
GGAGGAACAC
CGTGGGGAGC
GTGTTAGAGG
AGTACGGTCG
ATGTGGTTTA
CCTAGAGATA
CTCGTGTCGT
CAGCATTCAG
GACGTCAAAT
AAAGGGCAGC
CAGTCTGCAA
GGTGAATACG
CCGAAGTCGG
TG
GGACCGACGG
CCTGCCTGTA
ACCGCATGGT
GCATTAGCTA
GGGTGATCGG
GGAATCTTCC
TCGGATCGTA
TGACGGTACC
GGTGGCAAGC
TGATGTGAAA
AGAAGAGGAG
CAGTGGCGAA
GAACAGGATT
GTTTCCGCCC
CAAGACTGAA
ATTCGAAGCA
GGGCTTCCCC
GAGATGTTGG
TTGGGCACTC
CATCATGCCC
GAAGCCGCGA
CTCGACTGCG
TTCCCGGGCC
TGAGGTAACC
GAGCTTGCTC
AGACTGGGAT
TCAATCATAA
GTTGGTGAGG
CACACTGGGA
GCAATGGACG
AAACTCTGTT
TAACCAGAAA
GTTGTCCGGA
GCCCCCGGCT
AGTGGAATTC
GGCGACTCTC
AGATACCCTG
TTTAGTGCTG
ACTCAAAGGA
ACGCGAAGAA
TTCGGGGGCA
GTTAAGTCCC
TAAGGTGACT
CTTATGACCT
GGCTAAGCCA
TGAAGCTGGA
TTGTACACAC
TTTTGGAGCC
60
120
180
240
300
360
420
480
540
600
660
720
780
840
900
960
1020
1080
1140
1200
1260
1320
1380
1440
算出した。
ゲルの抽出には Gel Extraction kit (Quiagen)を使用
図9 決定した No.4 菌の 16S rRNA 遺伝子の塩基配列
した。
③ゲルにゲル重量の3倍量の溶液 QG を加え、50℃でイ
GATGAACGCT
TCTCTGATGT
ATAACTCCGG
GAAAGACGGT
GTAACGGCTT
AACTGAGACA
GAAAGCCTGA
TGTTAGGGAA
GCCACGGCTA
ATTATTGGGC
CAACCGTGGA
CATGTGTAGC
TGGTCTGTAA
GTAGTCCACG
CAGCTAACGC
ATTGACGGGG
CCTTACCAAA
CAAAGTGACA
CCGCAACGAG
CTGCCGGTGA
TTGGGCTACA
AAATCCCATA
GAATCGCTAG
ACCGCCCGTC
GGAGCTAGCC
ンキュベーションした。
④カラムチューブに溶けたゲルを加え 15,000rpm、1 分
間遠心分離した。下に出る液は取り除いた。
⑤洗浄のため PE 溶液をカラムにのせ、15,000rpm、1
分間、遠心分離し、下に出た液体を取り除き。そして、
もう一度遠心分離をした。
⑥新しいチューブにカラムを装着し、ミリ Q 水をメンブ
レンの中央に添加し、13,000rpm、1 分間、遠心分離
して、DNA を回収した。
⑦回収した DNA をアガロース電気泳動し、量の確認を
行った。
。
⑧塩基配列の決定はダイナミック ET シークエンスキッ
トを用いて反応を行った。回収した DNA をテンペレ
GGCGGCGTGC
TAGCGGCGGA
GAAACCGGGG
TTCGGCTGTC
ACCAAGGCAA
CGGTCCAGAC
CGGAGCAACG
GAACAAATTT
ACTACGTGCC
GTAAAGCGCG
GGGTCATTGG
GGTGAAATGC
CTGACGCTGA
CCGTAAACGA
ATTAAGCACT
ACCCGCACAA
TCTTGACATC
GGTGGTGCAT
CGCAACCCTT
CAAACCGGAG
CACGTGCTAC
AAATTATTCT
TAATCGTAGA
ACACCACGAG
GTCGAAGGTG
CTAATACATG
CGGGTGAGTA
CTAATACCGG
ACTTATAGAT
CGATACGTAG
TCCTACGGGA
CCGCGTGAGT
GTTAGTAACT
AGCAGCCGCG
CGTAGGCGGT
AAACTGGGGA
GCAGAGATAT
TGTGCGAAAG
TGAGTGCTAA
CCGCCTGGGG
GCGGTGGAGC
CTTTGATCGC
GGTTGTCGTC
AAGCTTAGTT
GAAGGTGGGG
AATGGATAAT
CAGTTCGGAT
TCAGCATGCT
AGTTTGTAAC
GGACAGATGA
CAAGTCGAGC
ACACGTGGGT
ATAATATATT
GGACCCGCGC
CCGACCTGAG
GGCAGCAGTA
GATGAAGGTC
GAACAAGTCT
GTAATACGTA
TTCTTAAGTC
ACTTGAGTGC
GGAGGAACAC
CGTGGGGATC
GTGTTAGGGG
AGTACGACCG
ATGTGGTTTA
TCTAGAGATA
AGCTCGTGTC
GCCATCATTA
ATGACGTCAA
ACAAAGGGCA
TGTAGTCTGC
ACGGTGAATA
ACCCGAAGCC
TTGGGGTG
GAACAGATGA
AACCTACCTA
GAACCGCATG
CGTATTAGCT
AGGGTGATCG
GGGAATCTTC
TTAGGATCGT
TGACGGTACC
GGTGGCAAGC
TGATGTGAAA
AGAAGAGGAG
CAGTGGCGAA
AAACAGGATT
GTTTCCGCCC
CAAGGTTGAA
ATTCGAAGCA
GAGTTTTCCC
GTGAGATGTT
AGTTGGGCAC
ATCATCATGC
GCGAACCCGC
AACTCGACTA
CGTTCCCGGG
GGTGGAGTAA
GAAGCTTGCT
TAAGACTGGG
GTTCAATGTT
AGTTGGTAAG
GCCACACTGG
CGCAATGGGC
AAAACTCTGT
TAACCAGAAA
GTTATCCGGA
GCCCACGGCT
AGTGGAATTC
GGCGGCTCTC
AGATACCCTG
CTTAGTGCTG
ACTCAAAGGA
ACGCGAAGAA
CTTCGGGGGA
GGGTTAAGTC
TCTAGGTTGA
CCCTTATGAT
GAGGTCAAGC
CATGAAGCTG
TCTTGTACAC
CCTTTTATTA
60
120
180
240
300
360
420
480
540
600
660
720
780
840
900
960
1020
1080
1140
1200
1260
1320
1380
1440
ートとして、6プライマーで、全領域二方向の配列が
図10 決定した No.39 菌の 16S rRNA 遺伝子の塩基配列
読めるようにプライマーを選択した。
(2) 結果
⑨サイクルシークエンス反応は、95℃、20 秒、50℃、
15 秒、60℃、1分間で30サイクル繰り返した。
シークエンサーから出てきた図8のようなチャートをもと
⑩ 反 応 後 、 DNA を エ タ ノ ー ル に よ り 沈 殿 さ せ 、
に塩基配列を並べた結果、No.4 の場合は、図9に示したよ
15000rpm、20 分間の遠心分離を行った。回収した沈
うな 1472bp の塩基配列を決定した。また、No.39 につい
殿を乾燥させ、ホルムアミドの溶解し、95℃、2分間
ても同様に 1478bp の塩基配列を決定した。これらの配列
の加熱と氷水での急冷をした後に、DNA シークエン
について、データベースに対して検索を行ったところ、
サーに試料を入れた。
No.4 については、Bacillus licheniformis CICC 10219 株
⑪シークエンサーから出てきた DNA の塩基配列をつな
と 、 No.39 に つ い て は 、 Staphylococcus lentus
ぎ合わせて、1本の配列にした。この配列を使って
ATCC29070T 株と 100%一致した。このことは、No.4 が、
DNA データベースに対してアメリカの国立生物情報
Bacillus licheniformis、No.39 が Staphylococcus lentus
セ ン タ ー の BLAST ア ル ゴ リ ズ ム で 検 索 し た
であることを示している。
(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)
。
143
5 考察
今回の実験で、コンポスト中には、多くの細菌が存在
今回決定した塩基配列は国際 DNA データベース、DDBJ/
することが理解できた。わずか1g の中におよそ2億個
EMBL/Genbank、に次のアクセション番号で登録した。No. 4
の細菌が生きていた。
これらのたくさんの細菌のなかで、
AB219153、No.39 AB219154
実験1より、細菌によって分解する栄養物質が異なるこ
謝辞
とはわかった。表1でまとめたように、栄養物質入りの
本研究を行うにあたり、ご指導いただきました三重大学
培地で菌を培養することでデンプンとCMC(セルロー
生物資源学部、
苅田修一助教授、
大学院生の山崎智子さん、
ス)を分解する菌を確認することができた。
他、生物資源学部の皆様方に深く御礼申し上げます。
これらを両方分解できる菌と片方しか分解しない菌、
両方とも分解できない菌と3通り存在していた。
参考文献
デンプンは米やパンに含まれていて、セルロースは紙
鈴木健一朗、平石 明、横田 明編「微生物の分類・同
や植物細胞壁に存在している。家庭の生ごみには、残飯
定実験法」シュプリンガー・フェアラーク東京
などにご飯の粒や野菜のくずが入っているので、デンプ
ンを分解する菌やセルロースを分解する菌がいることが
中山広樹ら編「バイオ実験イラストレイテッド」秀潤社
わかった。デンプンもセルロースも両方、ブドウ糖から
微生物研究法懇談会編「微生物学実験法」講談社サイエン
できているが、両方とも分解しない菌については、炭素
ティフィク
源としてタンパク質を利用していると考えられた。今回
の実験では調べることができなかったが、コンポスト中
にはタンパク質を分解している菌なども存在することが
わかっている。
実験2より40種類の細菌をランダムに単離した。こ
れらの細菌から染色体 DNA を精製し、その DNA を使って
PCR 法により、
16S rRNA 遺伝子を増幅することができた。
これらの増幅した遺伝子をさらに制限酵素 HaeIII で切
断することで、大きく分けることができた。その結果、
40種類の細菌は9種類に分類することができた。この
ことから、数だけでなく、違った種類の細菌がコンポス
トにいることがわかった。また、このパターンと実際の
菌の色、形から、パターンが同じであっても見た目がま
ったく違ったり、パターンが違っても見た目がまったく
同じ菌などが観察できたことから、菌の形状は遺伝子の
パターンに関係しないことが推測できた。
もっとも多く存在していたパターンの細菌ふたつを選
び、そこから得られた DNA の塩基配列を決定した。一つ
の配列を6つのプライマーで、二本鎖 DNA の裏と表を解
読した。No.4 は、1472bp で、No.39 は、1478bp であった。
これらの配列を国際 DNA データベースに対して相同検索
を行ったところ、No.4 は、Bacillus licheniformis と
No.39 は、Staphylococcus lentus と 100%一致した。
Bacillus licheniformis は、グラム陽性桿菌で、アミ
ラーゼ生産菌として有名であった。今回の実験でもデン
プンを分解していた。またセルロースを分解する酵素を
もっていることも知られている。このことからコンポス
トにおいての生ごみの分解に役立っていると考えた。一
方 Staphylococcus lentus は、いろいろ調べてみたが、
あまり情報が得られなかった。表1で示すように、No.39
の菌は、デンプンもセルロースも分解していないことか
ら、糖質ではなくタンパク質を分解している菌であるか
もしれない。
144
ヒト白血病細胞 HL-60に対してアポトーシス誘導作用を示す成分の食品からの検索
三重県立四日市高等学校 3 年 3 組 服部早希
Abstract
Recently, life style-related diseases are mainly one of causes of the death in Japan. It is well-known that various functional
components in foods are effective on the prevention and the therapy of life style-related diseases. In this study, I investigated whether
the apoptosis in the acute myelomonocytic leukemia cell line, HL-60, was induced by a water-soluble fraction and an ethanol-soluble
fraction of some foods. As a result, the apoptosis was mainly induced by an ethanol-soluble fraction. These results suggest that some
components in an ethanol-soluble fraction might be effective on human leukemia cells.
1 はじめに
クシがカエルに変態する過程で尾が喪失する現象(図 2)
現代社会において、生活習慣病は、その名のとおり、日々
や、幼虫が蝶に変態する過程などがそれに相当する。従来、
の生活習慣やストレスなどが原因となり、発症する一連の
主に病理学の分野で認識されていた壊死(ネクローシス)
疾病をさし、特に食生活が大きな影響を与えていると考え
とは、その形態的な特徴を始めとして大きく異なることが
られる。厚生労働省の調査によると、その中でも、
「がん」
知られている(図 3)
。
は 1981 年以来、日本における死亡原因の第 1 位となり、
近 年で は、 年 間の 死亡 人 数が 、 三重 県四 日 市市 の人 口
a
( 298,137 人:平成 16 年 10 月 1 日) をも超える約 30 万人
にも達している。
米国では、1990 年から、国立がん研究所が中心となっ
て、がん発症率の低下を目的とした、デザイナーフーズ計
画が実施されている。そのプロジェクトにおいては、膨大
な量の疫学的調査のデータが集められ、がん予防に効果の
可能性が有る食品および食品成分をピックアップし、その
重要度に合わせてピラミッド型の図が作成されている(図
1)
。
b
図 1. デザイナーフーズ計画における
がん予防の可能性を有する食品および食品成分
(http://www.timesoft.jp/mini/2002/07-09/0918.html より転載)
この候補食品の中でトップグループに位置するニンニク
は、古くから滋養強壮、疲労回復、抗がん作用、抗酸化作
用、抗菌作用、免疫能調節などの効能が知られており、高
い機能性を有した食品と言える。またお茶に含まれる成分
の 1 つである、カテキンについては、テレビその他で良く
その名前を耳にするが、抗がん作用、抗酸化作用、抗菌作
用などが報告されている。このように食品の機能成分によ
る、がんを始めとする生活習慣病の予防や治療効果が近年
期待されている。
アポトーシスとは、別名、プログラムされた細胞死とも
呼ばれ、遺伝子産物によりその制御を受ける個体生命を維
持するうえで重要な生命現象である。例えば、オタマジャ
非処理 アポトーシス誘導処理
図 2. オタマジャクシからカエルに変態する際に
尾が消失していく様子(a)ならびにアポト
ーシスの形態学的な特徴(b)
(a) はフォトサ イエンス生物図録 (鈴 木孝仁監修)
数研出版より転載
る、アクチノマイシン D (AcD) を用いた。すなわち、培
ネクローシス
アポトーシス
地に終濃度 1μg/ml となるように添加し、3 時間 CO2 イン
キュベーター中で培養した。また食品のサンプルに関して
は、各々サンプルを超純水でよく水洗した後、超純水およ
びエタノールにて抽出液を調製した後、培地に種々の割合
で添加し、最長 24 時間まで CO2 インキュベーター中で誘
導処理を行った。
b. 位相差顕微鏡による細胞の形態変化の観察
アポト ーシス誘 導処理が終 了した後、 細胞の形 態変化
を位相差顕微鏡システムにより観察した(図 4)
。また任
意の視野内における細胞の形態変化の様子をデジタルカメ
ラにより写真撮影を行った。
図 3. ネクローシスとアポトーシスの形態学的相違
「Essential 細胞生物学」監訳:中村桂子・藤
山秋佐夫・松原謙一 (南江堂)より転載
アポトーシスとは、細胞死の 1 つであり、細胞レベル、
核レベル、DNA レベル、そし てタンパク質レベルなど、
種々のレベルにおいて、特徴的な崩壊をもたらす。そして、
これらの過程で、不要となった細胞は自発的に死滅し、か
つ新たな細胞が増殖していくことにより、個体は正常な生
命活動を営んでいく。しかしながら、この秩序を乱された
状態にあるのが「がん」と言える。がんは、本来ならば不
要となった細胞がアポトーシスにより排除されるはずが、
図 4. 細胞の形態を観察するための位相差顕微鏡システム
遺伝子上の何らかの異常により排除されない結果、無秩序
に増殖を続ける疾病である。従って、がん細胞に対しアポ
c. DNA ladder を指標としたアガロースゲル電気泳動法を
トーシスを誘導させ、本来の「死」の方向性へと導くよう
用いてのアポトーシス細胞の検出
な成分は、その治療につながる可能性が期待される。
アポトーシスを誘導した細胞 (2.0×10 6 cells) を遠心に
より回収し、PBS (-) にて洗浄した。細胞 Lysis バッファ
2 目的
ー (10 mM Tris-HCl pH 7.8, 10 mM EDTA, 0.5% Triton X-
以上のような背景から、本研究の目的として、ヒト前骨
100) 100μl に浮遊させ,氷中にて 15 分静置し,断片化し
髄性白血病細胞 HL-60 に対して、アポトーシス誘導効果
て低分子量となった DNA を抽出した。続いて,16000 × g
をしめす食品の検索を設定した。着目した食品としては、
にて 20 分遠心し,上清を回収した。
上清を 100μg/ml RNase
本研究を本格的に開始した時期に、三重大学構内でも自生
A にて 37℃, 1 時間処理し,続いて 100μg/ml Proteinase K
しており、なおかつ季節ものであった、ツクシ、そして、
にて 37℃, 1 時間処理した。そして,終濃度 0.5 M になる
スギナを選択した。これらの植物はもともと同一由来の植
ように NaCl と,終濃度 50%になるようにイソプロパノー
物体であり、日常的に食用される点に加え、古くからその
ルを加え,-20℃にて一晩静置した。その後,16000 × g
薬効についても様々な報告がなされている等、非常に興味
にて 20 分遠心し、不溶化した断片化 DNA を回収した。
深い研究対象であると言える。
上清をできる限り除去し,70%エタノールにてリンスした
後,サンプルを 10μl の TE バッファー(10 mM Tris-HCl pH
3 方法
7.8, 1 mM EDTA)に溶かし,電 気泳動用のサン プルとし
a. 細胞培養およびアポトーシス誘導
た。電気泳動は 2%のアガロースゲルにて行った後、エチ
ヒト前骨髄性白血病細胞 HL-60 は、10%ウシ胎児血清,
ジウムブロマイドにてゲルを染色し、イメージングシステ
100 μg/ml ストレプト マイシン, 100 U/ml ペニシ リン,
ムにてゲル内の DNA を可視化した後、写真撮影を行った。
2mM グルタミンを含有する RPMI1640 (Gibco BRL Co.)中、
CO2 インキュベーターにて培養した。陽性コントロールに
よるアポトーシス誘導に関しては、制癌剤としても知られ
d. 薄層クロマトグラフィー (TLC) による色素成分の分離
種々の食品サンプルを、薄層プレートに常法通りにスポ
図 5. 各食品の抽出液によりヒト白血病細胞 HL-60 を
ットし、展開溶媒(石油エーテル : アセトン = 7:3 の混
処理した後、細胞の形態変化の様子を位相差顕
合液 )を用いて、薄層クロ マトグラフィーを行い、色素
微鏡システムにより観察した様子
成分の分離し、可視化を行った。
a)Control 処理 b)AcD による陽性コントロール処理
e. DPPH ラジカル消去活性を指標とした抗酸化能の検討
c)ツクシ 水抽出液 d)ツクシ エタノール抽出液
終 濃 度 150 µΜ DPPH ラ ジ カ ル (1, 1-diphenyl-2picrylhydrazyl radical), そして、250 mM MES バッファー
e)スギナ 水抽出液 f)スギナ エタノール抽出液
(pH 6.5) を含有する反応系に対して、種々の濃度となるよ
うに食品サンプルを添加し、DPPH ラジカルの吸収極大で
ある 520 nm の吸光度の変化を解析した。
さらに 、これら 誘導処理を 行った後、 ヒト白血 病細胞
HL-60 より、DNA を抽出し、アポトーシスの特徴の 1 つ
である DNA 断片 化、すなわち、DNA ラダ ーの形成を、
4 結果と考察
アガロースゲル電気泳動により行ったところ、先述した条
各々のサンプルを、様々な濃度で、ヒト白血病細胞 HL-
件において、DNA ラダーの形 成が認められた事から、こ
60 培養系に添加して、時間経過を追跡し、条件検討を行
れらの現象は、ヒト白血病細胞 HL-60 が、アポトーシス
ったところ、位相差顕微鏡による観察結果、陽性コントロ
により死滅している事が確認された。
ールである、アクチノマイシン D と同様のアポトーシス
続いて 、これら エタノール 抽出液処理 によるア ポトー
による特徴的な形態的変化が、特にエタノール抽出液処理
シス誘導処理において、何がその原因となる化合物である
において観察された (図 5)。
かを推察するために、以下の検討を行った。
すなわ ち、まず は従来まで の研究結果 を参考に 、まず
は各抽出液の色に着目した。例えば、白いも、さつまいも、
a
b
そして紅いもを比較すると、可食部に色素を有する紅いも
が、その高い機能性、すなわち抗がん作用や抗酸化作用を
示す事が報告されている。特に今回の検討においては、ス
ギナエ タノール抽 出液は鮮 やかな緑色 を示してい る(図
6)
。
a
b
c
d
c
d
e
f
図 6. 各食品の抽出液の色の様子
b)ツクシ エタノール抽出液
a)ツクシ 水抽出液
c)スギナ 水抽出液 d)スギナ エタノール抽出液
そのような知見を参考に、各抽出液の色素成分について、
薄層クロマトグラフィーによる分離を行った (図 7)。
a
b
9.
DPPH
7.
(a)
,
(b)
7
DPPH
DPPH
(
a
8, 9
)
b
HP
c
http://www.timesoft.jp/mini/2002/07-09/0918.html
a
b
3
Essential
(
) 1999
UP BIOLOGY
1996
8.
DPPH
(a) DPPH
(b)
,
(c)
.
フーリエ級数の偏微分方程式への応用
三重県立四日市高等学校
有竹
訓彦 、安元
智司
Abstract
We study the Fourier series expansion and its application to partial differential equations. The Fourier series of a
function on the interval -π≦t≦π is an infinite sum of basic functions (k:integer). First we investigate
convergence of the Fourier series. We will see that when a function satisfies certain conditions, the Nth partial sum
of its Fourier series converges to the original function asNtends to infinity. Next, as an application of the Fourier
series ,we consider the partial differential equation of a vibrating string. Expanding the unknown function into the
Fourier series with respect to the space variable, we derive an expression for general solutions.
1
はじめに
π
∫π f (t )e
1
fˆk =
2π
フーリエ級数展開とは次のようなものである。区間-π
fˆk がこの式が成り立つことは次のように説明できる。
∞
的な関数の無限和
∑c
k = −∞
k
e ikt で表すことができる。ここ
∞
f (t ) =
∑ fˆ e
k = −∞
で関数は複素数の値をとると考え、各係数 c k も複素数で
両辺に e
ある。
このような単純な関数を足し合わせるだけで、いかなる
π
∫π
関数も表せるというのは驚くべきことである。そして今日
フーリエ展開の考え方は、数学の分野だけでなく、物理や
−
工学でも基礎的な道具であり、音楽機器、情報通信、画像
π
− ijt
ikt
をかけ、-π≦t≦π上で積分すると
−ijt
ここで k
この論文では、区間-π≦t≦π上で定義され、
π
∫π e
π
∫
f (t ) dt < +∞
2
となる関数
π
∫e
it
フーリエ展開には e という関数が含まれている。これ
k = −∞
π
∞
dt =
i ( k − j )t
k
∑ ∫ fˆ e
π
k
i ( k − j )t
dt
となり
dt
を得る。
π
⎡ e i ( k − j )t ⎤
dt = ⎢
⎥ = 0 となる。
−
(
)
i
k
j
⎣
⎦ −π
= j のとき
π
dt = ∫ 1dt = 2π
i ( k − j )t
−π
−π
よって
は
π
e it = cos t + i sin t
∞
∫π ∑ fˆ e
−
とオイラーの公式で表すことができる。
k = −∞
定義
f (t ) を次のように展開するこ
よって、
f (t ) =
∑
k = −∞
1
fˆk =
2π
fˆk e ikt
fˆk は定数で次のように定義される定数である。
∫π f (t )e
dt = 2πfˆ j
− ijt
dt = 2πfˆ j より
−
とをフーリエ級数展開という。
∞
i ( k − j )t
k
π
区間-π≦t≦π上の関数
ここで
∫π ∑ fˆ e
≠ j ならば
i ( k − j )t
また k
f (t ) を考える。
∞
k = −∞ −
−
−π
π
−
−
フーリエ級数展開
とする。
k
f (t )e −ijt dt =
∫π f (t )e
処理、医療機器などいろいろなところで応用されている。
2
dt
−
ikt
≦t≦π上のどんな関数でも e (kは定数)という基本
ikt
π
∫π f (t )e
ikt
dt を得る。(説明終)
−
f (t ) = L + fˆ−1e − ikt + fˆ0 e 0 + fˆ1e ik + fˆ2 e 2ik + L
をフーリエ展開とする。
- 149 -
これは以下のように考えると無限次元の直交座標による
L2 ノルムが有限であるという。
f (t ) の表示と見なせる。
r r
ベクトルの内積 a ⋅ b と同じように関数の内積 f , g
e ikx , e ilx = 0( k ≠ l )
定義
f ,g
区間-π≦t≦π上の関数
e ikx , e ilx = 1(k = l )
に対して、内積
を次の式で定義する。
f ,g =
1
2π
基本ベクトルと同様で関数 e
f ( x) g ( x)dx
従って、 e
−π
ここで、関数の内積
f ,g
(L, fˆ
は次の性質を満たす。
−2
性質
af + bh, g = a f , g + b h, g
(2)
f , g = g, f
ikt
を基本ベクトルとする座標ではfは
)
, fˆ−1 , fˆ0 , fˆ1 , fˆ2 ,L と表される。
fの L ノルムについても有限次元ベクトル空間と同様に
次の定理が成り立つ
定理(パーセバルの等式)
f
(3)
f, f ≥0
(4)
f, f =0⇒ f =0
2
=
∞
∑
k = −∞
ここで
∑ fˆ e
k =− N
k
ikt
と定義するとフーリエ級数
定理
また、この内積から関数の「長さ」の概念も次のように、
f (t ) は区間[-π,π]上の関数であるとする。
(*)ある正の数 M があり、全てのsに対して、
定義される。
定義
f (t ) − f (t + s ) ≤ M s
が成り立っている。このとき
2
と定義し、これをfの L ノルムという。
f, f
ここで関数のノルム
f
lim f N (t ) = f (t ) が成り立つ。
N →∞
は次の性質を満たす。
(証明略)参考文献[1]を参照。
(*)は連続性の条件を強めたものである。たとえば、
(1)
f ≥0
(2)
f =0⇒ f =0
f ′(t ) が連続関数ならば、条件(*)をみたす。一般には
連続な関数でも
(4)
N
展開の収束性は次の定理によって保証される。
f , g = 0 のときfとgは互いに直交すると
いう。
(3)
2
fˆk
f N (t ) =
これを内積の公理という。
f =
は k が異なるとき直交す
2
(1)
ここで
ikt
る。
π
∫
の直交性を考えることが
できる。
を次のように定めたい。
f ,g
ikt
ここで、これによって関数 e
af = a f
f N (t ) が f (t ) へ収束するとは限らない。
ここで、この定理によって条件(*)をみたす関数が
フーリエ級数展開できることが保証された。
f +g ≤ f + g
これをノルムの公理という。
f
ここで
2
= f, f =
1
2π
3
π
∫
2
f ( x) dx
∫
2
f (t ) dt < +∞
を満たす関数
偏微分方程式への応用
弦の自由振動を表す偏微分方程式(波動方程式)は次の
−π
π
条件
より、
ように表すことができる。
2
∂2 y
2 ∂ y
=
c
…①
∂t 2
∂x 2
f (t ) のことを
−π
この偏微分方程式の解を境界条件
150
すなわち
y (0, t ) = 0 , y ( L, t ) = 0 , y ( x,0) = f ( x ) ,
vˆ
vˆ
1 ˆ
1
( f k + k ) , Bk = ( fˆk − k )
2
ick
2
ick
Ak =
∂y
( x,0) = v ( x ) のもとで求めたい。まず y ( x, t ) をx
∂t
したがって
についてフーリエ級数展開するため、境界条件を満たす周
vˆ
yˆ k (t ) = fˆk cos(ckx ) + k sin( ckt )
ck
期的な関数に誇張しておく。
y ( − x, t ) = − y ( x, y )
これを②に代入すれば
y ( x + 2 kπ , t ) = y ( x , y )
∞
(k はすべての整数)
y ( x, t ) = ∑ 2i fˆk cos(ckx ) sin( kc)
N =1
f (x ) , v (x ) についても同様の拡張をしておく。すると
+
y ( x, t ) を時刻tにおいてxについてのフーリエ級数に
展開できる。これを
さらにfのフーリエ級数
∞
∑ yˆ
y ( x, t ) =
k = −∞
k
(t )e ikx
…①
とおく
y ( − x, t ) = − y ( x, y ) をフーリエ級数に代入すれば
yˆ k (t ) = − yˆ − k (t )
k = −∞
)e ikx
k = −∞
次に係数
ickt + ikx
k
2
∂2 y
2 ∂ y
=
c
∂t 2
∂x 2
(
∂y
( x,0) = v ( x ) のもとでとくと次のようになる。
∂t
+ Bk e −ickt + ikx ) となる。
∞
~
y ( x, t ) = ∑ f k cos(ckt ) sin( kx)
N =1
+ v~k sin( ckt ) sin( kx)
∞
∑ ( Ak + Bk )e ikx
k = −∞
ここで
π
∞
∂y
v( x) =
( x,0) = ∑ ick ( Ak − Bk )e ikx
∂t
k = −∞
よって
を境界条件
y (0, t ) = 0 , y ( L, t ) = 0 , y ( x,0) = f ( x ) ,
Ak , Bk :定数)
Ak , Bk を決定する。t=0での境界値から
f ( x ) = y ( x ,0 ) =
0
定理
よって
∑(A e
− e ikx )dx
以上をまとめると次の定理が得られる。
この微分方程式の解は次のようになる。
y=
−ikx
1
v( x) sin(kx)dx
πi ∫0
k = −∞
yˆ k′′ (t ) = −c 2 k 2 yˆ k (t )
∞
∫ f ( x)(e
π
vˆk =
∞
yˆ k (t ) = Ak e ickt + Bk e − ickt
π
同様に
2
∂2 y
2 ∂ y
=
c
①を方程式
に代入すると
∂t 2
∂x 2
2
dx
−
1
f ( x) sin(kx)dx
πi ∫0
=
k =1
∑ yˆ (t )(−k
−ikx
fˆ は次で与えられる。
π
∞
y ( x, t ) = ∑ 2iyˆ k (t ) sin( kx ) …②
∑ yˆ ′′(t )e ikx = c 2
∫π f ( x)e
1
=
2π
だから
∞
π
1
fˆk =
2π
2i
vˆ k sin( ckt ) sin( kc)
ck
π
~
2
2
f k = ∫ f ( x) sin(kx)dx , v~k = ∫ v( x) sin(kx)dx
π
f (x ) , v (x ) のフーリエ係数によって Ak , Bk は
決定される。
151
0
π
0
4
まとめ
この論文では最初にフーリエ級数展開の収束性を考察
した。
すなわち、関数
するとき、f
f (t ) に対して f N (t ) =
N
∑ fˆ e
k =− N
ikt
k
と定義
(t ) が条件(*)を満たすとき、f N (t ) が f (t )
に収束することが分かった。
ここで、条件(*)をリプシッツ連続という。
次にフーリエ級数展開を用いて、弦の自由振動を表す偏
2
∂2 y
2 ∂ y
=c
微分方程式
を解いた。
∂t 2
∂x 2
すなわち、各時刻tにおいてxについてフーリエ級数展開
し微分方程式を解くことで、一般の解を求めることができ
た。
謝辞
この論文を書くにあたって丁寧にご指導していただいた
名古屋大学大学院多元数理科学研究科の中西賢次助教授
に感謝します。
5
参考文献
新井仁之 「フーリエ解析と関数解析学」 培風館
2001
152
NQC を用いた LEGO MindStorms プログラミング
三重県立四日市高等学校
中村圭宏
藤松基彦
日置大希
Abstract
We introduced about line trace by the last announcement. Line trace is the work to which a robot recognizes the
course of the black line drawn on the field by the light sensor, and follows it. At the time, the robot determines
actions by himself and does works. Generally such a robot is classified into "autonomy type." An autonomy type
robot's advantage is not needing people's help. However, if he has change of environment which he cannot foresee, he
sometimes may not work correctly. So we find the method of moving him satisfactorily. Here, we give two methods,
the manual operation by human and the automation by himself. It is not important which method is better. It is
important that both of the methods are needed in robotics.
1
MindStorms について
裏を返せば、独自の関数を用いることによって演算処理
LEGO 社の MindStorms および CyberMaster のロボッ を簡略化し誰にでも扱いやすいプログラミング環境を提
ト・キットは、多種多様の仕事を行ういろいろなロボット 供していると言える。
の作成やプログラムを可能にするものである。このプログ
ラミングには NQC というプログラム言語を用いる。これ 3
研究のいきさつ
前回の発表では光センサを用いてライントレースを実
は前記のロボット専用に開発された言語である。
行するロボットについて紹介した。ライントレースとは
フィールドに印刷された黒線のコースをロボットが光セ
2 プログラムの作成
ンサによって認識し進んでいく作業のことで、基本的に
はセンサの取得した値と事前情報として与えられた閾値
ロボットに特定の仕事をさせるためには、その仕事手
(製作者が決めた定数)との大小比較によって「コース
順を記したプログラムを作成する必要がある。プログラ
上では直進する」
・「コースから出たら方向を修正する」
ムが正確でなければならないことは言うまでもないが、
という二つの動作を切り替えながら行っている。
それ以外にも軽量かつ効率的であることが望まれている。 例)#define THRESHOLD 40
それは MindStorms 本体のメモリ制限などの物理的原因
task main()
{
の他に、製作者が自分の描いたプログラムの全体像を見
SetSensor(SENSOR_2,SENSOR_LIGHT);
失わないためでもある。
OnFwd(OUT_A+OUT_C);
以下にプログラムの例を載せておく。
while(true)
{
例)task main()
if (SENSOR_2 > THRESHOLD)
{
{
OnFwd(OUT_A);
//モーターAを前
OnRev(OUT_C);
進
until(SENSOR_2 <= THRESHOLD);
OnFwd(OUT_A+OUT_C);
OnFwd(OUT_C);
//モーターCを前
}
進
}
Wait(400);
//現状を4秒間維
}
理論上では上記のようなプログラミングによって、ロボ
持
ットに簡単なライントレースを実行させることができるは
OnRev(OUT_A+OUT_C);
//A,Cを逆回転
ずであった。しかし実際はコースから外れる等の誤作動が
Wait(400);
//現状を4秒間維
何例か発生し、必ずしも期待していたような動きが得られ
持
たわけではなかった。考えられた原因は、事前情報として
Off(OUT_A+OUT_C);
//A,Cを停止
与えられた閾値と実環境における閾値との“ズレ”である。
先に述べたように、ロボットは光センサの取得した値と閾
}
値(例題では 40)とを比較して行動を決定付けている。取
このプログラムは main()という一つのタスクで構成
得した値が 40 より小さければ「黒線上にいる」と判断し、
されていて、ロボットは上から順にこれを実行してい
40 より大きければ
「コースからはみ出した(白紙上にいる)」
く。ここで用いた NQC というプログラミング言語は
と判断する。ところが、もし部屋が暗かったらセンサの取
Not Quite C の名の通り、C 言語に良く似ている。前
得する値は全体的に小さくなるし、もし部屋が明るかった
ら逆にセンサの取得する値は全体的に大きくなる。すると
述のように NQC は MindStorms や CyberMaster に特
ロボットは、ずっとコース上にいる(もしくはずっと白紙
化した言語である。MindStorms 自体が複雑な演算処
上にいる)と勘違いしてしまうのである。製作者が事前に
理を想定していないため NQC も C 言語に比べて取り
扱える関数にある程度の制約がかかっている。しかし
- 153 -
想定した仮想環境と、ロボットを取り巻く実環境の違い
がここに現れるのである。
前回の発表では、事前情報として与える閾値の値をその
都度変えることによってそれを解決した。しかしそのよう
な暫定的な対応では変化に富む実世界での運用が困難で
あることは目に見えていた。僕達はこの研究を次の目標に
した。
4 研究内容
は難しい。そこで製作者は「コマンド」という操作をコント
(1)コントローラによるマニュアル制御
(2)ロボット自身による制御(オートメーション)
先のコントローラによる制御では操作側がロボットの置
かれている状況を正確に把握する必要があった。操作者がロ
ボットと共に行動しているのなら状況把握は簡単である。し
かし共に行動していない場合、操作者は各種センサが収集し
た情報を元にロボットの現状を把握する必要がある。そうな
ると、操作者にかなりの負担がかかるばかりでなく、ロボッ
トの作業効率も落ちてしまう。このような場合、ロボットに
ある程度の判断力を与え、逐次提供される情報を元に行動を
決定させる方がスムーズな動作をとらせることができる。た
だし前回のライントレーサの二の舞にならないように、周囲
の環境が変化したらそれに順応するような機能を持たせな
ければならなかった。
端的に言ってしまえば、人間が直接ロボットを操作する
ローラに取り入れた。この操作は、操作側が決まった順番に
ボタンを入力することによりタスクを切り替えるといった
ものである。これによって操作性は格段に上がり、ロボット
の動作は操作側の意思にほぼ沿う形となった。周囲の環境の
変化を問題としないロボットが完成したのである。
ことでこの問題は解決する。人間は思考能力を持ち、周囲
の環境の変化を自分で理解することができる。ロボットが
出来ないことを人間が補うのである。しかし、最初のうち
はそういったマニュアル制御に少し抵抗感があった。開発
者からしてみれば、自律行動をし得る能力のあるロボット
をわざわざ手動で動かすことは非効率的に思われたのだ
った。僕たちは実際に上の写真のような、マニュアル制御
を行う装置(コントローラ)を作った時にそれが間違いで
あると気付いた。自律型ロボットと人間によるマニュアル
操作とでは明らかに使用用途が異なり、一概に比較するこ
僕たちはセンサの数を増やすことで問題の解決を図った。
人間が五感の情報を組み合わせて状況判断しているように、
とができないからだ。こうして僕たちはマニュアル操作に
ロボットも複数のセンサの情報を組み合わせることにより
ついて研究を始めた。
複雑な状況の判断をすることができる。上の写真のロボット
(例)task main( ) {
は4つの車軸を用いて障害物を乗り越える「クライマー」と
SetSensor( SENSOR_1, SENSOR_TOUCH) ;
呼ばれるものだ。先端部にタッチセンサ、前後輪部に光セン
SetSensor( SENSOR_2, SENSOR_TOUCH) ;
サが搭載されている。以下にこのロボットの動作について説
明する。
SetSensor( SENSOR_3, SENSOR_TOUCH) ;
if( SENSOR_1==1)
{ start left_move; } else{ start straight; } }
task straight( ) {
if( SENSOR_2==1)
{start straight_move; } else{ start right; } }
task right( ) {
if( SENSOR_3==1)
{ start right_move; } else{ start main; } }
~~~~~~~~~(以下略)~~~~~~~~~~~~
このプログラムでは main()というタスクでコントロー
ラに用いるタッチセンサの定義が行われている。なお、3
つしかない MindStorms の入力ポートを全てコントロー
ラのために使っている。コントローラによる制御の最大の
難点として、入力ポートの少なさが挙げられる。タッチセ
ンサは通常、On 又は Off の二通りしか感知しない。3 つ
のセンサを使っても 8 通りの操作しかできないことにな
る。これでは操作側の意思どおりにロボットを動かすこと
154
ライントレースの時のように平面世界で仕事をする上で
は問題にならないが、今回のように「高さ」が加わることで
ロボットの動作は自身の姿勢の安定性に大きく関わること
になる。仕事をスムーズに行うためにもこのロボットには的
確な状況判断がより一層必要とされる。そこでこのロボット
には、4つの車軸を2つのペアに分けそれらをそれぞれ独立
して動かすことによって安定性を保つ機構が取り入れられ
ている。この機構を用いることで、例えば障害物が階段状に
このロボットは障害物がない限り前進する。(a)のように
前方に障害物がある場合、先端部のタッチセンサがそれに
触れることでロボットは障害物を認識する。ロボットは障
害物を認識すると、まず(b)のように第1輪を持ち上げる。
少し前進して第1輪を完全に障害物の上に乗せたら、次に
その第1輪をテコにして(c)のように第2輪を持ち上げる。 なっている等の状況の変化が生じた場合でもロボットは問
第2輪を持ち上げたら再び前進して、第2輪をテコに第3 題なく仕事を成しえるのである。実際に僕たちは、障害物を
輪を持ち上げる{(d)(e)}。(f)(g)の過程で同様に第4輪を持 階段状にしたり障害物の高さを変えたりして様々な状況を
ち上げ、(h)のように障害物に完全に登ることができる。障 作り出したが、ロボットは全ての課題を問題なく成しえてい
害物を降りる際は、光センサによってその縁見つけ、登る る。こうして自ら状況判断をするロボットも完成した。
のとは逆の手順をたどる。こうしてロボットは障害物を乗
り越えるのである。
5
考察
今回の研究ではロボットの操作方法について、コントロー
ラを用いたマニュアル操作とオートメーションの2つを取
り上げた。前にも述べた通り、この2つは使用用途が異なる
ためどちらがより優れているか一概には比較できない。だが、
あえて優劣をつけるために僕たちはそれぞれの操作方法を
使った2つのロボットを戦わせる実験もした。結果はオート
155
メーションに軍配が挙がったが、ここで疑問が生じた。こ
の勝負では人間によって操作されるマニュアル制御の方
が状況判断の面から言えば圧倒的に有利であったはずで
ある。何故、負けたのだろうか?答えの一つにマニュアル
制御の別の問題点が挙がった。今回、マニュアル制御の代
表としてコントローラによる操作を試したが、制作したコ
ントローラはデジタル入力にしか対応しておらず、力の加
減が操作側に分かりにくいものであった。事前に決められ
た特定の動作のみをするオートメーションによる操作に
対し、マニュアル操作では操作側の状況判断によって逐次
その動作を変える分、ロボットに負担が大きい。このこと
からも、本当に社会の中で運用できるようなロボットの制
御には未だ至っていないと言える。これから先、ロボット
は社会の中でより必要とされるものとなっていくだろう。
それは産業界に限らず、我々の生活の中にも言えることで
ある。人間とロボットが滞りなく共存していくためにも、
僕たちは今回の研究を足がかりにして更なる目標に向か
って進まねばならない。
参考文献
ホームページ
・Mindstorms Gallery
URL:http://homepage3.nifty.com/
mindstorms/index.html
・LEGO MINDSTORMS
Robotics Invention System
URL:http://www.bea.hi-ho.ne.jp/meeco/index.html
書籍
・「Joe Nagata の MindStorms スーパークリーチャー」
著者:Joe Nagata
出版社:オーム社
156
編集後記
今 年 度 の 報 告 書 の 編 集 方 針 は 、 本 校 の SSH 事 業 の 成 果 を 分 か り や す く 伝 え る た め に 、
カ リ キ ュ ラ ム 開 発 を 中 心 と し た 構 成 と し ま し た 。単 に 、実 施 報 告 の 羅 列 に な ら な い よ う に 、
学 習 内 容 と 学 習 評 価 を 組 み 合 わ せ て 記 述 し ま し た 。各 取 り 組 み の 体 系 的 な 分 析 に つ い て は 、
研 究 紀 要 と し て ま と め て 掲 載 し ま し た 。 本 校 の SSH 事 業 は 3 年 間 で 終 え 、 1 年 の 延 長 期
間である次年度は、本校のこれまでの研究成果を総合的に分析し、評価することを事業の
大きな柱と考えています。その集大成として、研究報告書の性格を持った冊子を作成する
予定です。
科学の先端を支えるには技術や教養が必要であり、またそれらを支えているのは人間で
あります。生徒達は、科学者として社会に貢献するためには、豊かな人間性やコミュニケ
ーション能力等、様々なものが必要であると感じ取り、自ら努力を続ける姿が見られるよ
うになりました。
ま た 、 本 校 の SSH 事 業 に あ た り 、 常 に 的 確 な ご 指 導 ご 助 言 を 与 え て く だ さ っ た 関 係 者
の方々に、深く感謝申し上げます。
最後に、本校教員の熱い思いから生まれたアイディアや成果が、これからの科学技術系
人材の育成に向けたカリキュラム開発のお役に立てれば幸いに思います。
(松岡
書
名
『 平 成 15 年 度 スーパーサイエンスハイスクール
研究開発実施報告書・第 3 年次』
発行日
平 成 18 年 3 月 31 日
発行者
三重県立四日市高等学校
校
細野
長
所在地
道太郎
〒 510 - 8510
三 重 県 四 日 市 市 富 田 四 丁 目 1 番 43 号
TEL
059-365-8221
FAX
059-365-8222
- 156 -
学)
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四日市北
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