食品工場における異物混入防止対策

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匠][食品工場の洗浄と用水・排水処理機器]
食品工場における異物混入防止対策
としての洗浄技術
∼物流に起因した危害防止を中心として∼
層
国際衛生㈱事業企画部石向稔
有光工業㈱推進部装置推進課加藤 正志
一
物混入防止対策として,パレットおよび運搬車
はじめに
くローリー)に注目したい。
パレットおよびローリーは,AIB基準の中
食品の衛生管理向上を目的とした管理手法
でも「食品汚染を避けるために清潔な状態で維
は,1996年に厚生労働省の「総合衛生管理製
持しなければならない」などの管理基準が定め
造過程」から始まり,1998年に時限法として
られている。しかしながら,パレットにクモが
制定された農林水産省の「HACCP法」,そし
巣を形成し,製品への直接混入や製造施設内へ
て,HACCP手法を取り入れたISO規格である
の持ち込みが問題になることがある。また,
「ISO22000」と多岐にわたる。
ローリーは一異物混入の問題のみに止まらず,
2000年の異物混入騒動から10年が経過する
中で,これらの食品衛生の管理手法が普及し,
”異種原料のコンタミなどアレルゲンの危害防止
にも関与してくる。
異物混入問題の減少が期待されている。我々
そこで,今回は,低コストで効果的。効率的
は,このような中で更なる異物混入防止対策
にパレットおよびローリーを洗浄することがで
を推進するため,一般的衛生管理プログラム
きる技術を紹介する。
を強化すべく,AIBフードセーフティの考え
日パレット洗浄機
方に着目して,食品工場へ導入の支援を行なっ
ている。
AIBとは,American Institute ofBaking(米
国製パン研究所)の略で,GMP(適正製造規
圖パレットの種類
範)や各種食品関連法規に準拠した独自基準で
食品の流通に使用されるパレットには,木製
ある「AIB国際検査統合基準一前提条件と食
パレットと樹脂製パレットに大きく分けること
品安全プログラムー」を開発して広く世界に普
ができる。木製パレットは,低コストで部分的
及させている。AIBの監査は,徹底した現場
な補修が容易に行えることから普及していた
主義といわれており,その中でも「清掃活動」
が,ここ最近は以下のような問題から木製パ
を特に重視している。今回,AIB導入の支援
レットの占める割合が減少傾向にある。
活動をする中で,散見された物流に起因する異
コストの不安定化
12・2010
︷
L
_91_
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一
ハンドリング時に発生する木屑や釘などが
品破損時などの外的要因による汚れ.異物の付
異物となる
着が発生する、それらは,定期的に除去しなけ
湿気に弱く湿度の高い環境下での使いづろさ
れば製品の外装への再付着や樹脂製パレットが
病害虫の寄生
汚れていること」をマイナスイメージとして,顧
樹脂製パレットは,強度が強く積載重量にも
客から指摘を受けてしまう要因となってしまう。
幅があり壊れにくいが,破損した場合の補修が
ここでは,流通分野で普及率が向上している
容易に行えない。しかし,最大の特徴は,物質
樹脂製パレットを対象とした洗浄機について紹
的に耐水性があることから,「洗浄ができる構
介する(以後の文中では樹脂製パレットをパ
造」となっていることである。そして,それは,
レットと表現する)。
定期的に洗浄を行うことにより,樹脂製パレッ
トの運用管理が行えることで衛生的な流通環境
厘三至]パレットの洗浄方法
を確保することにつながる。樹脂製パレットを
.パレットの洗浄方法には,大きく分けて人
運用中には自ずと保管時の外気汚れの付着や製
手による手洗浄作業(写真1,2)と洗浄装置
(写真3)を利用した自動洗浄作業の2通りに
大別できる。洗浄を行うパレットの枚数が,
30枚/日程度までであれば,何とか人手によ
る手作業での洗浄作業が行えるが,それ以上に
なった場合は人手で洗浄作業を行うことは困難
を極める。その場合は,洗浄装置を利用した自
』動洗浄作業を行うことが有効である。では,自
動洗浄作業を行うための洗浄装置は,どのよう
なものが良いのか。
写真1 手作業によるパレット洗浄風景
︸
写真2 洗浄に使用する高圧洗浄機
_92_
写真3 パレット洗浄機の設置事例
食品機械装置
マ
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L
うに能力を高めた。
塵]樹脂製パレットの自動洗浄装置
この洗浄機の最大の特徴は,洗浄後の洗浄水
パレット洗浄装置の選定を行うには
の除去に遠心水切り方式を採用していることに
洗浄対象となる樹脂製パレットのサイズ
ある。5.5kWのサーボモータにより最大
洗浄処理能力(一時間当たり,一日当たり
400min一二の回転数で瞬間立ち上げ,瞬間停止
の洗浄枚数)
を行うことでパレットに付着している洗浄水を
汚れの状態
除去,完全乾燥には至らないもののスタッカー
洗浄後の水切り,乾燥の必要性
に積載中に洗浄水温による蒸散効果も伴って,
などを考慮した上で,適したものを選定する
残水量を低減することに成功している。特に従
必要がある。
来の熱風乾燥方式に比べると蒸気などの熱エネ
そのような中で我々は,コンパクトな省ス
ルギー使用量の削減を行うことによるランニン
ペース設置型で環境にやさしい低ランニングコ
.グコストの低減,乾燥機周辺での熱気の充満と
ストのパレット洗浄機を開発した。 ・
ブロワー運転時の騒音による作業環境の改善を
回転洗浄・遠心水切り付パ
図ることができる(表1)。
團
レット洗浄機
表1 遠心水切り方式と熱風乾燥方式の比較
遠心水切り方式
ら,自ずと洗浄機本体が大きくなってしまう。
5,5kW
モータ
i間欠運転)
蒸気
g用量
水切り工程を備えたコンパクトな洗浄機を開発
騒音値
した。また,段積みしたパレットを一枚ずつ切
水切り
り離して洗浄機に投入するアンスタッカー,洗
パレットを段積みするスタッカーも直載型とす
ることによりコンパクトなサイズとし,機長を
5300㎜,機幅を2750㎜とすることができた。
このことによりパレット洗浄機を限られたス
ペースでも設置が可能となった。
洗浄方式は,洗浄室内でパレットを水平方向
150Kg/h程度
使用無し
80dB(A)程度
◎
X
凹凸のあるパ
形状にかかわら
ク安定した水切
關ォ能
90∼95dB(A)
△
○
激bト形状では △
c水が多くなる
周
浄・水切りを行った後に洗浄機から排出された
果
@(連続運転)
×
内で洗浄工程を行った後に高速回転による遠心
7,5kW∼11kW
◎
しかしながら,そのような中で我々は,洗浄室
○
熱風乾燥方式
評価
ものでユ100㎜四方の大きなものであることか
評価
洗浄対象となる樹脂製パレットは,一般的な
タンクローリー・バルク車の
洗浄システム
]
匿三コ洗浄システムの構成
に回転させながらの回転洗浄方式とし,固定ノ
タンクローリー・バルク車の洗浄システムの
ズルからパレット全体を網羅するように洗浄ノ
構成としては,以下のユニットからなる。
ズルを配置することで洗浄効率を高めた。ま
主にローリー内部を効率よく,確実に洗浄
た,洗浄ポンプには,縦型多段渦巻きポンプを
するノズルユニット
採用し,500L/分の水量を0.5Mpaの圧力で吐
洗浄水を供給するタンクユニット
出させパレットに付着した汚れを洗浄できるよ
洗浄水を加圧する高圧ポンプユニット
‘
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㌧
洗浄後のローリー内部を乾燥させるために
匿至]洗浄システムのフロー
熱風を発生させる乾燥ユニット
システムを制御する制御ユニット
洗浄水は,一e蒸気式熱交換器により温水(60
油脂系,液糖系などの液体およびその他粉体
∼80℃)がfタンクに供給され,常時,g循環
汚れに対して,最も洗浄効果が期待できる洗浄
ポンプと蒸気式h熱交換器により一定の水温
システムは,高圧の温水を死角が無いようにス
に保たれる(図2)。
プレーすることである。これらの要件を考慮し
この貯湯された洗浄水を10μフィルターで
て開発した高圧温水洗浄によるタンクローリー
ろ過後,プランジャポンプにより汚れの程度に
洗浄の実例システムを紹介する。
よって5∼10血Paに加圧し高圧3次元ノズル
からスプレーする。
匿≡互]ノズルユニットの構成
高圧水の持つ強烈な物理エネルギーによっ
ノズルユニットの主な構成としては,高圧水
.て,頑固な汚れについても洗い残しの無いより
が外部へ飛散せず,且つ洗浄中に異物のコンタ
高度な洗浄力が発揮される。
ミを防ぐため,タンクローリーのマンホールの
なお,同時に,洗浄前後のマンホールの周囲
形状に合わせたaマンホールフタ,そのフタに
や各バルブ類,排出口等も温水高圧で手洗浄を
取り付けられたbの360度死角無しのスプ
行うことが重要であるが,この時手元ガンの
レーが可能なX・Y・Zの3次元高圧ノズル,
水圧,水量を調節し,高圧水の飛散による汚染
c乾燥用の熱風ノズル,そしてaを昇降,前後
を防ぐことに注意を要する。
移動させるdホイストからなる(図1)。一
水
e
高圧3次元ノズルへ
蒸気
f
手洗いガンへ
一
1
蒸気
らげラ
遜轍鮒,影漉
h
d
P
9
高圧水
a
熱風
高圧プランジャポンブ
フィルター
図2 洗浄システムのフロー
b
C
マンホール
タンクローIJ一
画乾燥システムのフロー
を透過緩,」蒸気式熱交換器により約100℃に
図1 ノズルユニットの主な構成
_94_
加温されk送風機により熱風ノズルへ送風さ
食品機械装置
︸
乾燥に使用する熱風は,i吸気フィルター
、
”川rIlrIII”IrIrIIIIIllrIIIII[1”Ir川IIIIIIIII”IIIIIII!1”II”IIIilEIIIIIII」IrIIIIIIrIrI柵1””IIIIIEImI”IIIIIIIrI川lll川1川1!III
”IIIII”IIl川1」III”IIIll川IIII””IIII川IIFI”IIIII!IIIFIII”IIIIIIIrI”IIIIIII”「IIIIIIIIIrIIIIIIIIIII!1”IIIIIIIIIIrI「IIIIIIIIIIIIIEIll
、
れる1図31.
洗浄システムの構築:に当たっては,各種様々
特に送風機の吐風口には,m HEPAフィル
な汚れに対して洗浄温度,洗浄一圧力.洗浄水量,
ターを使用して,外気や乾燥ユニットからのコ
洗浄水の清浄度,ノズル形状,ノズルセットの
ンタミの混入を防止する構造を呈している。
位置,洗浄時間,洗剤使用の有無乾燥の有無,
日
乾燥温度熱風の清浄度,乾燥時間などの洗浄
効果と乾燥効果を決定する各要因について最も
@
蒸気
適切な条件を決定することが重要である。
へ
おわりに
吸気 熱風吐風
冒頭でも述べたが,食品の衛生管理向上を目
・的とした管理手法は,多岐にわたる。そして,
図3 乾燥システムのフロー ・
それら管理手法は,その導入の前提条件となる
一般的衛生管理プログラムが確立されていない
と機能しない。
今回,一般的衛生管理プログラムの中で重要
匿至]㌧洗浄システムの選択と検討.
となる洗浄について,特にパレットおよびタン
クローリー・バルク車の洗浄について,効率的
ここでは,より高度な洗浄効果が得られる高
で且つ洗浄能力の高いシステムを紹介した。異
圧の温水洗浄方式と十分な乾燥が得られる熱風
物混入防止対策に貢献すべく,今後も利用者の
乾燥方式についてシステムの紹介を行った。
声を聞きながら,より利便性の高い洗浄機の開
ただし,全ての汚れに対して,このシステム
発を進めて行きたい。
が最も適切であるとは言えず,求める効果のレ
なお,洗浄機導入の検討に際しては,デモン
ベルに対しては,過剰なシステムとなる場合も
ストレーションも受け付けているので,気軽に
ある。
相談して欲しい。
■
●
12・2010
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