GRS LIABILITY UPDATE

GRS LIABILITY UPDATE
2009 年 12 月
第1号
はじめに
弊社では、米国における賠償責任訴訟等の動向につき、2007 年より製薬業界の話題を中
心とした ”Pharma PL Quarterly” をお届けして参りました。
今般、より多くのお客様に情報を活用していただくべく、上記ニュースレターに代えて製
造業一般の賠償責任事情を扱う “GRS Liability Update” を発行いたします。
グローバルに事業を展開する企業の皆様にとって、主に米国を中心とする訴訟環境の厳し
さは見逃せないものとなっています。
本誌では、4 ヶ月ごとに米国をはじめ海外の賠償責任訴訟の動向をお伝えして参ります
が、この情報が皆様の事業活動の一助となりましたら幸いです。
CONTENTS
 2008 年の全米高額 PL 評決トップ 10
 消費者製品メーカーをめぐる米国の規制環境
 最新訴訟事例
2008 年の全米高額 PL 評決 トップ 10
米国 Wilson Elser 弁護士事務所がまとめたところによると、2008 年の PL 事例における高
額評決のトップ 10 は以下のとおりとなっています。
No
被告
評決
/
和解
金額
(US$)
裁判地
内容
約 391 万人の構成員からなるクラスアクション。原告は
1
レンジ
販売会社
和解
527.5
Mil.
イリノイ
州裁判所
(マディソン)
被告企業が販売する電子・ガスレンジに転倒防止器具が
装着されていないため、レンジが前のめりに転倒して火
傷等の大けがを負う恐れがあるとして、転倒防止器具の
装着費用を請求。費用は 1 人当たり US$135、総額で
US$527,507,370。
フロリダ
2
掘削装置
メーカー
評決
265 Mil.
州裁判所
(マイアミ・
デイト)
原告の夫は建設現場での作業中、掘削装置から外れた
ケーブルが頭を直撃し、死亡した。原告は掘削装置のメー
カーに対し、指示・警告上の欠陥および設計上の欠陥を
主張。原告側の専門家証人は経済的損失額を
US$1,951,756 と見積もった。
カリフォルニア州検事総長は、2004 年に心疾患系の副作
用を理由にリコールされた消炎鎮痛剤の販売にあたり、
カリフォル
3
医薬品
メーカー
和解
58 Mil.
ニア州裁判
所(サンディ
エゴ)
医薬品メーカーが州の不正競争法に違反し、製品の安全
性に関する虚偽広告および不正競争を行ったとして
17,000 件の違法行為に対し 1 件当たり US$2,500 の罰金
を請求した。
被告企業はカリフォルニア州と同様の訴えを起こしてい
た他の 29 州に対し、合わせて US$58 Mil.を支払うこと
で和解に達した。
オーブンレンジのガス供給管からのガス漏れによる火災
4
レンジ
メーカー
アリゾナ
評決
43.1 Mil.
州裁判所
(パイナル)
で、12 歳と 3 歳の兄弟が大火傷を負った。原告は設計上
の欠陥により、アルミニウム製のガス供給管に穴が開い
たことが火災の原因であるとして、オーブンレンジの
メーカーに医療費等の損害賠償金約 US$7.5 Mil.を請求
した。
原告が心臓手術を受けている途中、手術器具に付属のモ
5
医療機器
メーカー
評決
40.4 Mil
ワシントン
ニターの故障により器具の温度が上昇して溶け、原告の
州裁判所
心臓に移植を必要とする火傷を負わせた。原告はモニ
(スノーホー
ターを製造したメーカーに対し損害賠償を請求。手術を
ミッシュ)
行った医療機関も契約違反等を理由に同メーカーを提訴
した。
1
原告は車を運転中、赤信号を無視して走ってきた被告の
スポーツカーに追突された。追突時の衝撃を受けて原告
の車のエアバッグが作動したが、原告がフロントガラス
に激突するのを防ぐことはできず、原告の身体には四肢
追突車運転
6
手/自動車
評決
30.5 Mil.
メーカー
ニュー
麻痺等の重い障害が残った。原告は相手運転手の過失と
ジャージー
自動車メーカーの設計上の欠陥を主張し、訴訟を提起し
州裁判所
(グロスター)
た。
陪審は原告が事故時、シートベルトを着用していなかっ
たことから、自動車メーカーの責任は認められないとし
た。その上で、被告(相手運転手)の過失割合を 70%、
原告の過失割合を 30%と判定。原告の過失分が左記評決
額から差し引かれることとなった。
原告の夫は中皮腫で死亡。原告は中皮腫発症の原因が
アスベスト
採掘業者/
7
アスベスト
評決
30.3 Mil.
製品
メーカー
8
医薬品
メーカー
ニュー
1970 年代に自動車部品の製造工場に勤務していた間、ア
ジャージー
スベストに被曝したことによるとして、アスベスト採掘
州裁判所
業者とアスベスト含有部品のメーカーに対して訴訟を提
(バーゲン)
起した。原告側専門家証人は経済的損失額を US$11M 超
と見積もった。
評決
29.9 Mil.
アーカン
原告は更年期障害の治療薬として、複数のホルモン補充
ソー州東部
療法剤を服用していたが、乳がんを発症。発症の原因は
地区連邦地
同薬剤にあり、被告企業が副作用について充分な警告を
方裁判所(リ
しなかったことによるとして訴訟を提起した。
トルロック)
評決額のうち、US$27.4 Mil は懲罰的損害賠償。
原告の夫は 1950 年代から 1970 年代にかけて機械工の仕
アスベスト
9
製品
評決
25.2 Mil.
メーカー
ペンシルバ
事を通じてアスベストに被曝し、近年中皮腫により死亡
ニア州裁判
した。原告は重過失による不法死亡、設計上の欠陥や指
所(フィラデ
示・警告上の欠陥を含む製造物賠償責任を主張し、アス
ルフィア)
ベスト含有製品を製造していたメーカー3 社を提訴した。
評決額のうち、US$18.2 Mil は懲罰的損害賠償。
原告は 1970 年代から 1980 年代にかけ自動車修理や屋根
アスベスト
10
製品
メーカー
評決
24.2 Mil.
フロリダ州
裏の改装、道路工事等の仕事を通じてアスベストに被曝。
裁判所(マイ
その結果、中皮腫に罹患し現在の仕事である医業を続け
アミ・デイト)
られなくなったとして、アスベスト含有製品のメーカー
(合併による継承会社)等を提訴した。
2
―トップ 10 事例に見る傾向―
1.未だ終息を見ないアスベスト訴訟
2008 年のトップ 10 事例を見ると、10 件中 3 件がアスベスト(石綿)に関する事例となっ
ています。近年、日本国内でもアスベストによる被害が広がり関心が高まっていますが、
米国では 1980 年代ごろからアスベストの健康被害が社会問題化し、アスベストメーカー等
に対して多数の訴訟が提起されました。
初期の訴訟で被告となったアスベストメーカーは、多額の争訟費用と賠償金の支払いに耐
えきれず、大半が倒産に追い込まれました。20 年~40 年の潜伏期間を経てじわじわと顕在
化するアスベストの健康被害は未だに尽きず、現在もその健康被害による死者数は年間 2
万人以上といわれています。さらに、高額な評決や和解金の獲得を見込める訴訟に目を付
けた原告側弁護士が活発な原告集めと訴訟提起を続けていることもあり、米国におけるア
スベスト訴訟は依然、多くの企業にとって脅威となっています。
アスベストメーカーの倒産に際しては、被害者への補償を目的とした基金が立ち上げられ
ました。しかし、全ての被害者がこれらの基金から充分な補償を得ることは難しく、原告
は次第に訴訟の対象を周辺企業、例えば断熱材としてアスベストを使用しているボイラー
メーカー等、アスベスト素材を含む他の製品メーカーにも広げていきました。また、過去
にアスベストに関わった企業を買収したことで賠償責任を負わされる企業も多く、現在米
国では 8,400 社以上がアスベスト訴訟に巻き込まれているといわれます。
爆発的に発生したアスベスト訴訟においては根拠が曖昧なまま処理されたり、症状の軽重
を問わず不必要に多くの訴訟が一つにまとめられた事例も見られ、こうした訴訟の多発へ
の教訓から、各州の不法行為法改革が進んだ一面もあります。近年では訴訟提起の際に必
要な医学的基準を強め、アスベスト疾患未発症の患者が訴訟に参加することを禁じたり、
複数訴訟を無闇に集約することを避ける州も出てきており、より公正な訴訟を行う努力が
見られます。
それでもなお、米国企業はアスベスト訴訟により現在までに 700 億米ドル以上の損失(2000
年~2008 年の推定経済損失額は 210 億米ドル。次項【参考】参照)を被っており、賠償金
の支払金額は今後、最終的に約 2,000 億米ドルにまで達すると予測されています。トップ
10 事例にも見られるように、重症患者やその遺族に対しては依然、懲罰的損害賠償を含む
高額の評決が下されることが多く、アスベスト訴訟の終息には今暫く時間を要するといえ
ます。
3
【参考】アスベストに関連する企業の推定経済損失額(2000 年~2008 年)
損失額(US$)
年
2000
14 億
2001
16 億
2002
20 億
2003
22 億
2004
33 億
2005
23 億
2006
26 億
2007
26 億
2008
30 億
合計
210 億
出典:ISO (Insurance Services Office)のデータをもとに加工
2.裁判地の選好
米国の PL 訴訟では、州法を基準に責任の有無や賠償金額について判断が下されますが、懲
罰的損害賠償の可否や認定額の上限等の規定は州によって異なり、どの州の法律が適用さ
れるかで訴訟の結果が少なからず変わってきます。また、判事の顔ぶれによってその州に
おける訴訟手続きや裁定に大きな偏りが出てくる場合もあり、各地域の判事の特性が訴訟
の行方に重要な影響を与えているといわれます。
多数の訴訟を効率的に処理するためクラスアクション等の大規模訴訟を容易に認める地域
や、原告側弁護士と密接なつながりを持つ判事のいる地域等、企業側にとって不利な裁判
地は少なくありません。地域ごとの違いが大きい分、原告は少しでも自分に有利な結果が
出やすい裁判地を選ぼうとするため、被告企業の拠点や原告の居住地とは直接関係のない
地域の裁判所において、訴訟が提起されることもあります。
このフォーラム・ショッピングと呼ばれる現象は前述のアスベスト訴訟においても多く見
られ、裁判所の処理能力を超える大量の訴訟が一部の地域に集中して提起されました。トッ
プ 10 事例の裁判地であるイリノイ州やフロリダ州、カリフォルニア州等はいずれも高額評
決が出やすい地域として知られていますが、米国不法行為法改革基金(ATRF:American
Tort Reform Foundation)が公表している地域ごとの訴訟環境のランキング(2009 年)に
よると、企業側に特に不利な判断を下す傾向がある裁判地として、次項の6地域が挙げら
れています。
4
1.フロリダ州南部
2.ウェストバージニア州
3.イリノイ州クック郡
4.ニュージャージー州アトランティック郡
5.ニューメキシコ州控訴裁判所
6.ニューヨーク州ニューヨーク市
さらに、要注意地区として以下の 4 地域が挙げられています。
1. カリフォルニア州
2. アラバマ州
3.イリノイ州マディソン郡
4.ミシシッピ州ジェファーソン郡
5.テキサス州湾岸部、リオグランデ・バレー
米国ではアスベスト訴訟等をきっかけとした訴訟環境の悪化に対応し、1980 年代ごろから
各州で不法行為法改革への取り組みが始まりました。主な内容としては懲罰的損害賠償金
額の上限設定、連帯責任の制限、管轄地区外の原告による訴訟提起の制限等が挙げられま
す。米国 Pacific Research Institute が 2008 年に発表した調査結果によれば、企業側に不
利な判断を下す傾向があるとされた上記地域のうち、フロリダ州、ニュージャージー州等
では不法行為法改革に対する一定の取り組みが評価されています。
しかし、各州で不法行為法改革が進む一方で、新たに州法において改革を覆す内容の法案
を繰り出す「反不法行為法改革」というべき動きがあることにも注意しなければなりませ
ん。近年では改革を打ち消す法案提出のほか、州裁判所が独自に改革内容と異なる判断を
下す例が目立ってきています。各州の訴訟環境の改善に向けた動きは一進一退の状態にあ
り、原告は常に有利な裁判地を選好することから、企業としては今後も訴訟環境の動向を
注視していく必要があります。
5
消費者製品メーカーをめぐる米国の規制環境
米国ではここ数年、消費者製品の大規模なリコールが相次ぎ発生しています。特に 2007 年
には、中国からの輸入製品を中心に玩具や子供向け製品から多量の有害物質が検出され、
年間でおよそ 3,000 万個の玩具と 1,500 万個の子供向け製品が回収される等、消費者を大
きな不安と混乱の渦に巻き込みました。その結果、消費者製品の安全性確保に関わる監督
機関である消費者製品安全委員会(CPSC:Consumer Product Safety Commission)が子
供向け製品の安全性を高める抜本的な改革に乗り出し、製品メーカーや販売業者等に対す
る規制が一層強められました。
ここでは、そうした社会不安の高まりを受けて策定され、2008 年 8 月に成立した消費者製
品安全性改善法(CPSIA:Consumer Product Safety Improvement Act)について、その
特徴を見ていきます。
CPSIA では 12 歳以下の子供が使用する可能性のある製品を対象に、鉛とフタル酸エステ
ルの含有量に関する厳しい規制を設けています。2009 年 2 月 10 日以降、製品そのものや
塗料に含まれる鉛の含有量については段階的に 0.01%(塗料中の鉛は 0.009%)まで引き下
げることを定め、一部製品におけるフタル酸エステルの含有量についても 0.1%以下にする
ことを要件としています。
さらに、上記規制要件の遵守を徹底するため、製品中の鉛やフタル酸エステルの含有量に
ついて第三者認証の取得が義務付けられました。この規制は米国内で販売される子供向け
製品についてあまねく適用されるため、海外で生産される輸入品を含め、認証のない製品
を米国内で販売することはできなくなります。この認証規制の発効期日は当初 2009 年 2 月
10 日とされていましたが、産業界からの反発が大きく CPSC 内部の体制が整わなかったこ
ともあり、2010 年 2 月 10 日に延期されました。
また、CPSIA では安全性基準の強化に加え、リコール手続きの円滑化を目的とした措置も
定められています。製品が市場に出るまでのフィルター機能をどんなに強めても、リスク
を完全に取り除くことは不可能です。
CPSC は製品リスク情報の消費者向け公開データベー
スの作成、製造日や製造場所を含む製品情報を記した追跡ラベルの貼付義務化、製品購入
者の登録データベース構築等により、メーカーや消費者が製品のリスクをいち早く認知し、
リコールの際は消費者への通知を確実に行うとともに、関係者が即座に該当製品を特定で
きるよう策を打ち出しています。
さらに、内部告発者の保護機能を強め、規制に違反した際の罰則を強化する等、CPSC の権
限をより強める措置も盛り込まれました。近年続いた予算削減と人員縮小により弱体化し、
消費者保護という本来の目的を果たすことが難しくなっていた CPSC の姿が相次ぐリコー
ルで図らずも浮き彫りにされ、今般の本格的な改革につながったといえます。
6
しかし、CPSIA の施行は企業にとってみれば、大幅な負担の増加を意味しています。玩具
等子供向け製品の安全性基準や第三者認証の取得はこれまで企業の自主性に任されている
部分が多かったため、義務化されれば経済的・時間的な負担が増すことは避けられません。
その負担は特に資力の少ない中小企業に重くのしかかり、対応に苦しむ企業からは CPSC
に規制実施の延期を求める声が殺到しました。
さらに、12 歳以下の子供を対象とした製品の中に書籍も含まれることについて、米国の図
書館・出版業界が反発の姿勢を示す等、本法の適用範囲が現実的な枠を超えて広すぎると
する批判も見られました。適用範囲の絞り込みが必要な点は CPSC も認識するところです
が、影響を受ける企業は現在も特定の製品や部品を規制対象から除外する等の緩和措置を
求めて働きかけを続けており、CPSIA の要件や適用範囲については今後も細かな変更が加
えられることが予測されます。
CPSIA の規制についてはそれぞれ発効時期にばらつきがあるため、どの時点でどの規制に
従わなければならないのか、注意が必要です。米国に製品を輸出する日本企業を含め、企
業側の対策としては CPSIA 規制の実施に関わる CPSC の動向を正しく把握しながら、規制
を遵守し適切かつスムーズな対応が取れるよう、準備していく必要があります。
【参考】主な CPSIA 規制の発効時期
規制
発効日
第三者認証規制の発効日
塗料中の鉛含有量
0.06%(600ppm)
1978 年 2 月 27 日
2008 年 12 月 22 日
0.009%(90ppm)
2009 年 8 月 14 日
2009 年 8 月 14 日
0.06%(600ppm)
2009 年 2 月 10 日
2010 年 2 月 10 日
0.03%(300ppm)
2009 年 8 月 14 日
2010 年 2 月 10 日
0.01%(100ppm)
2011 年 8 月 14 日
2011 年 8 月 14 日
2009 年 2 月 10 日
2009 年 3 月 23 日
0.1%(1000ppm)
2009 年 2 月 10 日
2010 年 2 月 10 日
ASTM F963 玩具規格
2009 年 2 月 10 日
2010 年 2 月 10 日
製品中の鉛含有量
子供向けジュエリー中の鉛含有量
0.06%(600ppm)
フタル酸エステル含有量
出典:CPSC “Guidance for Small Manufacturers, Importers, and Crafters of Children’s
Products”より一部抜粋、加工
7
最新訴訟事例
米国の賠償責任訴訟では被告側に著しい悪意が認められる場合、被害そのものに対する補
償的な賠償に加え、懲罰的損害賠償(以下、懲罰賠償)が課せられることがあります。懲
罰賠償は時として数千万米ドルから数億米ドルに上ることもあり、企業の経営上、大きな
脅威となり得ます。ここでは、最近の訴訟事例の中で被告企業に対し高額の懲罰賠償が課
された 3 つのケースをご紹介します。
金額(US$)
No.
年月
裁判所
総額
うち、
懲罰賠償
被告
内容
車の横転事故により半身不随となった原告が、車体
ルーフ部分の強度不足等を理由に自動車メーカーを
提訴。当該車種による同様の事故が多数発生してい
るにもかかわらず、企業はコスト抑制のために安全
性を高める措置を取らなかったと主張していた。
1
2009.11
連邦最高
裁判所
82.6M
55M
自動車
2004 年の一審(カリフォルニア州裁判所)では懲罰
メーカー
賠償 US$246M を含む US$369M の評決が下された
が、その後補償的賠償、懲罰賠償ともに見直され、
懲罰賠償は US$55M に減額。
被告企業はなおも懲罰賠償を不服として連邦最高裁
に上訴したが、棄却され、US$82.6M の賠償額が確
定した。
2
78.7M
2009.10
75M
どちらのケースも、原告は被告企業が製造する更年
ペンシルバニア
医薬品
州裁判所
メーカー
(フィラデルフィア)
3
2009.11
34.3M
期障害治療薬を長年服用した後、乳房切除を必要と
する乳がんを発症。メーカーが当該治療薬と乳がん
の関連性を認識しながら、充分な警告をしなかった
として、医薬品メーカーを提訴した。
28M
8
ケース 1 では連邦や州、業界の安全性基準を遵守していてもなお、懲罰的損害賠償を問わ
れるか否かが争点となりました。被告企業は医療費の支払い等、原告への補償的賠償には
同意しましたが、基準遵守の努力をしていたにもかかわらず「悪意」があるとして懲罰賠
償の対象となったことに異議を唱えていました。
原告側としては、同様の事故が多発していたことから企業は当該車種のリスクを認識して
いたはずであり、にもかかわらずコスト抑制を優先し、安全性を増すための措置を怠った
として、被告の悪意を主張していました。一台あたり 20 米ドルでより安全な設計にするこ
とができたとする専門家の意見もあり、製造コストを人命に優先させたとする印象が高
まったことが、大きな敗因となったようです。被告企業は当該車種の横転事故による訴訟
を多数抱えており、これまで全て和解か勝訴により解決してきましたが、本件は初めての
敗訴事例となりました。
ケース 2 と 3 では、充分な警告がなされていなかったことに加え、企業が自社製品と乳が
んの関連性を否定するために、ゴーストライターを利用して自社に有利な論文を医学雑誌
等に発表させたことが明らかになり、リスクを意図的に隠ぺいした疑いが強まったことが
懲罰賠償につながったといえます。
製品と乳がんの関連性が広く認識されるようになったのは 2002 年のことであり、7 年を経
た現在は全米でおよそ 1 万件の訴訟が提起されているともいわれます。医薬品の警告文言
をめぐる訴訟について、本件をはじめ医薬品メーカーは連邦の規制機関である米国食品医
薬品局(FDA:Food and Drug Administration)の承認を受けた以上、州判例法に基づい
て欠陥と判断することはできないとの主張を続けてきました。しかし、2009 年 3 月に連邦
最高裁がこの主張を否定する判断を下してから、各州の判例法に照らした責任追及の正当
性が増し、米国の訴訟環境は企業にとってさらに厳しいものになりつつあります。
医薬品以外の分野についても、企業寄りの姿勢が強かった前政権と異なり、オバマ大統領
率いる現政権は、連邦規制の遵守を理由に企業への責任追及が制限されることに対して厳
しい姿勢を見せています。どの業界でも、連邦レベルの基準を満たしただけでは訴訟を回
避することが難しくなっているのです。さらに、リスク開示や安全性向上等の必要な措置
を怠ったと見なされれば、単純な賠償にとどまらず懲罰賠償を問われる可能性は非常に高
まります。どんなに厳正な審査を経た製品でも、市場に出れば新たなリスクが出てくる可
能性を免れないことから、製品リスクに関する情報を常に関係機関や消費者と共有し、安
全な製品を提供するために必要な措置を迅速に取っていく姿勢が求められます。
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このニュースレターは、読者の皆様に賠償責任訴訟対策上の参考情報を提供するこ
とを目的として、マスコミ報道など公開されている情報に基づいて作成しておりま
す。従いまして、このニューズレターに取り上げている事案および企業に対する中
傷・誹謗・批評その他を意図したものではありませんので、宜しくご理解ください。
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