地域看護援助論⑫ 地域組織活動と コミュニティ・エンパワメント 2011.4

地域看護援助論⑫
地域組織活動と
コミュニティ・エンパワメント
2011.4.26
工藤禎子
学習目標
1.地域全体へのアプローチとは何か説明できる。
2.地域看護活動のプロセスを説明できる。
3.地域の力を高める具体的な方法を説明でき
る。
<目標>以下の用語の意味を理解し説明できる。
①PDSサイクル
②地域診断
③コミュニティ・アズ・パートナーモデル
④計画・目標の策定 ⑤エンパワメント
⑥住民参加
最後にミニテスト
1.地域全体への
アプローチとは?
地域全体へのアプローチとは?
授業や実習で学んだ事業の例を書いてみよう。
1)個人的アプローチとは?
2)集団的アプローチとは?
3)地域的アプローチとは?
個別、集団、地域的アプローチの統合
理念
方法
個人
参加者・関係者個々の
健康の増進
家庭訪問、健康診査、
相談・面接、など
集団
グループとしての健康
の増進
健康教育、患者会、家
族会、地域組織活動
地域
個人・集団の健康・生活を守る
地域ケアシステム・地域資源の開発
健康な地域づくり
美的、文化的、創造的な地域
疾病・事故・犯罪の少ない安全な環境
住民が誇りや愛着を持てる地域
活気があるまち、人に優しいまち
地域看護学における地域とは?
1.生活圏としての地域
2.支援の単位としての地域
3.コミュニティ 人とのつながり
ソーシャルキャピタル
地域看護学における地域とは?
1.生活圏としての地域
文化、生活様式、価値観が共通
例 北海道・・・在宅ケアの割合が低い
←→世間体を気にしない
青森県・・・高血圧が多い 平均寿命短い
←→塩分の多い食事、飲酒
共通した文化、生活様式、価値観への介入
その地域に共通の健康課題の解決
例 在宅ケアサービスの充実、啓発
→家でも介護できるんだ!
減塩や適正飲酒の健康教育
→高血圧やアルコール多飲の減少
地域看護学における地域とは?
2.支援の単位としての地域
保健師が人々へ
支援(看護・ケア)を提供するための環境
=整備される必要のある自治体の区分
健康で文化的な最低限の生活が整えられる
(責任をもつ)地理的な区分。
地域看護学における地域とは?
3.コミュニティ 人とのつながり
震災後の避難で「コミュニティを崩すな」と
言っている。そのコミュニティとは?
人とのつながり
ソーシャルネットワーク →心身の健康や
ソーシャルサポート
死亡率とも関連
ソーシャル キャピタルとは?
社会関係資本
その地域の資源、
人と人とのつながり、
安全性(犯罪率)、
地域への愛着など
地域の「暮らしやすさ」を表す概念
例:子育てしやすい地域とは?
認知症の人に優しい地域とは?
保健師が地域的アプローチを行う目的は?
1.共通する文化、生活様式、価値観の健全化
2.健康で文化的な最低限の生活(憲法25条)
責任を持つ行政単位(自治体)、公的義務
3.人と人とのつながり、ソーシャルキャピタル
を促進→地域の健康の向上
地域それ自体がエンパワーすることをめざす
地域看護とは・・・・・
• 地域において個人・家族・集団・地域を対象に、
人々の健康への援助を
看護の立場から活動展開すること。
• 地域看護は、公衆衛生を基盤にした看護活動
↑
疾病予防、寿命の延伸、
心身・社会的なウエルビーイング促進
憲法25条をそれぞれの地域(行政区分で)
促進する義務と役割を持つ
公衆衛生看護の特性
(保健師業務要覧より)
①1次予防~3次予防を含む。
②集団や地域全体の健康の保持増進をめざす。
③潜在的な問題も対象にする。
④ハイリスクグループを見つけだす。
⑤地域の人との関係を作る。
⑥地域の社会資源を開発する。
⑦問題の組織的解決をする。
臨床での看護過程とは?
思い出してみよう。
2.地域看護活動
のプロセス
地域看護活動のプロセス
地域看護学概論 p26 図1-8
①実態把握(地域診断)
②健康課題の明確化
③保健計画策定
④施策化
⑤保健サービスの提供
(相談・支援・教育・普及啓発
調整・ネットワーク化・システム化)
⑥政策評価・事業評価
地域看護活動の展開の基本
「Plan-do-see」マネジメントサイクル
PDS
地域看護学概論 p104
地域診断
計画
plan
実施
do
評価see
地域看護活動における地域診断
地域診断とは?
地域看護学概論p106
地域の健康課題を明らかにする。
診断-解決
解決方法を見いだすための診断
地域の特徴、強みを明らかにする。
地域診断の対象範囲
• 自治体が管轄するエリア全体で実施
市町村の保健福祉計画などに活用
• 保健師の担当地域を対象に実施
A地区、B地区など
• 担当業務を中心に実施
母子、高齢者など健康課題別
地域診断のための情報収集
地域看護学概論 p108
• 既存資料からの情報 人口動態統計
サービス利用状況、出生届け
• 日常の活動からの情報
健診結果、住民の声など
・意図的な調査
健康調査、グループインタビューなど
地域診断のための情報収集
地域看護学概論 p108
・観察
地域踏査、
ウインドシールドサーベイ
町並み、住宅の状況、
商店街、
人の往来
ゴミ、花壇、交通安全活動
出生届け(14日以内)の記載事項
①子の氏名
②男女の別 1 男 2女
③生まれた時 年x月x日 午前/午後 x時 x分
④出生したところ(名称)及びその種別
1 病院 2 診療所 3 助産所4 自宅 5 その他
⑤体重及び身長
⑥単胎/多胎の別
⑦母の氏名(国籍) ⑧妊娠週数 満 週 日
⑨この母の出産した子の数(死亡子を含む) 人
⑩証明者 1 医師 2 助産婦 3 その他
外国人登録者は新規登録申請が必要
モデルを勉強しておくねらい
• 地域看護活動の複雑な事象を解き明かす。
何が起きているか、どうすべきかを考える指針。
• 問題解決の戦略とプロセスを理解できる。
• 健康問題の全体像や関係要因を一望。
• 地域看護活動の計画、効果評価に使える。
*国家試験にも出ますので覚えておきましょう。
*モデルに当てはめるのが目的ではない。
モデルはあくまでも「道具」
コミュニティ・アズ・パートナーモデル
・
1つの地域集団を1つの生物体とみなす
(システムモデル)
・モデルの提唱者
Anderson E.T.&Macfarlane J.M
・モデルの改変
community as client model (1988)
→community as partner model (1996)
コミュニティ・アズ・パートナーモデル
特徴
地域の情報収集、アセスメント、計画を
住民と専門家が共同で行なう。
コア
人口構成、人種、価値観、歴史など
コミュニティの基盤や素質を作っているもの
=健康水準に大きく反映
<復習5>
コミュニティ・アズ・
パートナーモデル
アセスメン
ト
アンダーソンが
開発
分析
ストレッサー
地域の看護診断
計 画
介 入(予防的)
評 価
反応の程度
コミュニティ・アズ・パートナーモデル
アセスメントの8側面
①物理的環境
②教育
③安全と交通
宅地や人の集まっている場所
教育資源の種類や場所
消防、警察、公衆衛生、水、大気、
交通手段
④政治と行政
政策決定過程のキーパーソン
⑤保健医療と社会福祉 場所、スタッフ、利用者
⑥コミュニケーション 新聞,電話,掲示板、口コミ
⑦経済
財政力、産業、失業
⑧レクリエーション
施設の利用状況、満足度
コミュニティアズパートナーモデルの
プロセス
①各側面(コアと8側面)のアセスメント
②課題の抽出からの取り組む優先順位を決定
リスクの大きさ、実施時の反応など検討
③課題毎の対応策を立案
④対応策の優先順位を決定
予算、効果、放置時の害、住民の関心度、
地域の看護職の役割の適当度
⑤実施
予防的視点での介入
⑥評価と再アセスメント
地域看護活動の計画・実践・評価
地域看護学概論 p111~
・計画策定における住民の参画
・策定のプロセスの重要性
・計画に必要な要素
①目標の明確化
②目標達成のための条件
③実施計画
④基盤整備計画
⑤評価計画
事例から学ぼう
札幌市 東区の例
• 報告者
黒木友里さん
• 丘珠地区
高齢化率が高い
• 子育てサロン 仲良し広場
• 報告を聞きながら考えよう
①地域の力とは何か
②地域の力を高めるための
保健医療福祉職の関わりとは?
3.地域の力を高める
アプローチ
地域的の力を高めるアプローチ
=地域全体のエンパワメントとは?
地域住民全体の健康のために、
地域のニーズをとらえて、
住民の主体性をいかして、
事業・サービス・場を興し、
継続する手助け
エンパワメント
• 個人
• 家族
• 集団・組織
• 地域全体
様々なレベルの
エンパワメントが
ある
エンパワメントの原則
1.対等な立場
パートナーシップ
2.住民参加
「傾聴」 母親教室 案内で参加
「対話」 生活習慣病予防教室などで
仲間と共感、励まし合い
「参加」 事業の計画への参加
社会復帰学級など
地域の力を高めるアプローチの例
(保健師業務要覧 p7より)
1)地域診断
2)住民全体を対象とした啓蒙・普及活動
3)健康を守るためのサービス・システム
(資源)の開発
4)健康を維持増進する環境や
ヘルスケアシステムの構築
5)健康な地域文化づくり、地域づくり活動
コミュニティ・エンパワメント
地域看護技術p242
• コミュニティやより広い社会において
自分たちの生活をコントロールしていくことや
人々や組織やコミュニティの参加を促していく
ソーシャルアクション
・フォーマル(施策)~インフォーマル(共助)を含む
・その地域の独自性に基づいた活動
・図6-15 体験→理解→関係の形成→機能するコミュニティ
用語の意味を理解し説明できる!?
①PDSサイクル
②地域診断
③コミュニティ・アズ・パートナーモデル
④計画・目標の策定
⑤エンパワメント
⑥住民参加