「コンビニ改造論」を紹介する

2012年9月号
「コンビニ改造論」を紹介する
参議院議員(岡山県選出)のの姫井由美子氏(元民主党、現国民の生活が第一に所属)
が2011年12月に出版(花伝社)した本である。
まえがきには、この本の主張である議論がほぼまとまっている。
「まえがき
対等な関係のためにー移譲と分権」
その、主張は、まえがきの最後の一部に詳しく述べている。
「地域で加盟店が地域貢献の担い手になれるように、本部が持っている財源と権限を公
正に加盟店に移譲するーそこにフランチャイズ・ビジネスにおける本部と加盟店の共存共
栄と、地域の発展の“鍵”があります。」
筆者は岡山大学・大学院卒、法学修士であり、かつ司法書士、行政書士事務所を開業し
ており、全国青年司法書士協議会副会長を務めた経験もあり、法律問題に関してはセミプ
ロと考えてもよかろう。
序章「コンビニ問題との出会い」で、著者は「見切り販売」の問題と述べている。岡山
県のセブンーイレブンのオーナーから手紙をもらい、その中に「なぜ同系列のイトーヨー
カドーでは弁当の見切り販売を行っているのに、我々には許されないのか」「弁当を値下げ
することにより売り切る自信はある。廃棄処分にするとコストがかかるし、何よりもまだ
食べられる物を廃棄することはもったいない」という主張を、本部にぶっつてけている最
中だったそうである。(なお、この問題は2009年6月22日に公正取引委員会がセブン
ーイレブンに排除命令をだし、8月3日にセブンーイレブンは受け入れを決定した。)
著者によれば「コンビニ問題の本質であり、一番に取り組まねばならないと思うのは、
本部と加盟店の不公正で不平等な関係です。」「コンビニオーナーは一応“経営者”という
ことになっていますが、現実的にはまったく経営者とは言えません。
(中略)オーナーとし
て裁量を発揮すべき部分をすべて本部に決められている状態は、とても経営者とは言えま
せん。」「ではオーナーは労働者なのかと言えば、全くそうではない。労働者であれば労働
時間の上限が決められていますが、“経営者”の名のもとに無限の労働が求められていま
す。」
「つまりコンビニをはじめとするフランチャイズオーナーは、経営者でもなければ労働者
でもなく、消費者でもない。既存の法律では守られない存在と言えるでしょう。
」
序章の最後に「国会議員である私の使命は、フランチャイズオーナーの実態に即した法
律をつくり、彼らの人権を守ることなのです。」「ただ、ここで目指す法律は、決して「フ
ランチャイズ規制法」であってはならないと思います。」「目指すのはフランチャイズオー
ナーの人権がきちんと守られるための法律。そして、フランチャイズ・ビジネスが適正に
発達することによる経済の活性化や雇用の促進のための法律。つまりフランチャイズ・ビ
ジネスの“規制法”ではなく、“フランチャイズ基本法”とか、「フランチャイズ契約適正
1
法」と言った名称がふさわしいでしょう。「私はあえて、“フランチャイズ振興法”でもい
いと思っています。」
これだけ大きな問題提起をしているが、肝心の“フランチャイズ法”については、巻末
にフランチャイズ議連の「中間まとめ」が記載されているのみであり、著者の意見は出さ
れていない。
第1章
コンビニ問題最前線
ここでは、5名かのコンビニオーナーの氏名と写真つきで「コンビニオーナーの声」を
紹介している。「コンビニ問題、最大の問題点」は、「大きな力を持つフランチャイズ本部
がその優越的地位を利用して、弱い立場の加盟店にさまざまな負担を押し付けている。多
くの加盟店がそのように感じているのが実態なのです」と述べている。
フランチャイズ契約は、一般的に本部が契約条項を定め、加盟希望者は、その契約書を
認めるかどうかで加盟の意志表示をする。ある意味で約款契約であり、私たちが市民生活
を送る上で、約款契約を結ぶことは日常的に発生している。例えば、鉄道に乗れば、その
鉄道会社の定めた約款に従うことになっている。またホテルに宿泊すれば、そのホテルの
定めた宿泊約款に従うことになっている。もし、その約款に不満足ならば、その鉄道やホ
テルの利用をやめて、他の手段を利用すればいいだけの話である。
現在、この本で話題になっているコンビニ加盟契約書に不満があれば、加盟することを
やめればいいだけのことである。
但し、本部が勝手に契約内容を変えたり、フランチャイズ契約を破棄する場合には、法
的に問題になることもある。
加盟店の過重な負担として、収納代行サービスの事例を上げているが、私がコンビニを
利用する最大の目的は収納代行であり、もし、このサービスが中止されれば、私のコンビ
ニ利用は、半減するであろう。また「災害時帰宅困難者」を支援するための「支援ステー
ション」も「コンビニには大きな役割を果たします」と述べながら、
「この“支援協定”も、
当初は本部と自治体が“勝手に”結んだものです。」と述べている。
こういった支援活動は全国にネットワークを張るフランチャイズ・ビジネスの社会的存
在価値を高める活動であり、
「本部が勝手に」というのは、コンビニ本部が加盟店代表者(一
般的オーナー会と呼んで、重要事項は事前にオーナー会に説明して、了承を取るものであ
る)に説明していないだけで、正にコンビニ固有の問題であり、それを“フランチャイズ
一般論”として議論されることは間違っている。
同様に24時間営業も全部のコンビニが採用している訳ではなく、例えば北海道のセイ
コーマートでは、24時間営業ではないと聞いている。しかし、コンビニ経営に詳しい人
の意見を聞くと、24時間営業の方が売上高も上がり、効率が高いそうである。
コンビニ会計について触れているが、セブンーイレブンの創業者である鈴木敏文氏によ
れば、「アメリカのサウスランド社(セブンーイレブンを経営する会社)から得たものは、
本部と加盟店の間で粗利益を分配する会計システムぐらいだった」とのことであった。
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また、廃棄ロスについて「一般的な会計では、廃棄ロスを本部と加盟店の両方で負担す
るのに対して、コンビニ会計では加盟店だけが負担することになっている」と記されてい
るが、店舗で発生した廃棄ロスを本部が負担するケースは聞いたことがない。セブンーイ
レブンのみが、2009年8月の公取委の決定を受け入れる判断をした時に、初めて、店
舗の廃棄ロスの15%分を本部が負担することを決めただけである。もし、この指摘に対
して異論があるならば、具体的な事実で示してもらいたい。
また「仕入先から請求書や領収書は加盟店に交付されず、見ることもできません。本部
と仕入先が決めている本当の卸値が分からないのです。」と書かれている。
この部分は、ある程度正確であるが、セブンーイレブン・オープンアカウント事件とし
て、2008年最高裁判決(平成20年7月4日)では「フランチャイザーは、フランチ
ャイズ契約上規定されていない商品代仕入金の具体的な内容につき、フランチャイズ契約
上、報告義務がある」との結論が出ている。2008年乃至は東京高裁差戻審(2009
年8月)の判決で決まっているので、少なくともこの本が出版された2011年には、(こ
の判決文は有名な判決であるため、
)法律のセミプロとしては目を通しておくべきであった。
次に「ドミナントの恐怖」と題して、次のように述べている。「ドミナントとは、小売業
がチェーン展開する場合に、地域を特定し、その特定地域に集中した店舗展開を行うこと
で経営効率を高める一方で、地域内でのシェアを拡大し、他小売業に対し優位に立つこと
を狙う戦略をドミナント戦略といいます」と定義している。この小売業という言葉を外し、
「事業でチェーン展開する場合に」と改めれば、この通りである。即ち小売業に限定せず、
およそチェーン展開する事業はすべてドミナント戦略を取らないと採算が取りにくい。
「そして最も重要なのは、近隣の新たな出店に関して、必ずしも既存店に事前に相談があ
るわけではないという事実です。」「本部だけ栄えて個々の店舗が滅びかねないのが、この
ドミナントなのです。」
公正取引委員会は平成14年(2002)4月24日に発表した“フランチャイズ・ガ
イドライン”では、本部に対する加盟店への開示事項として「近隣出店の計画の有無及び
その内容」を開示することが望ましいとしている。
一般的に、外食・サービス業で加盟店の近隣に加盟もしくは直営で出店する場合には、
事前に当該加盟店に通知し、当該加盟店が、そこへ出店を希望すれば、その意見を採用す
る形が多い。もし、コンビニが全く無制限に近隣出店するならば、それはチェーン全体と
して問題であるだろう。
著者が「本部と加盟店の関係が対等でない以上、フランチャイズ契約そのものがフェア
ーではないことがあると私は考えています」と述べているが、それはコンビニ問題であり、
フランチャイズ一般論として議論されることは正しくない。
第2章
生活インフラとしてのコンビニ・フランチャイズ
ここでは、3.11の大震災に際し、「コンビニ・フランチャイズは、今やライフライン
として、地域において命を支える役割を果たしていることを実感した」と記されている。
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事実、この通りであり、3.11の前の阪神・淡路大震災の際にも、フランチャイズ・シ
ステムは「社会のライフライン」として、経済産業大臣から感謝状を頂いたことがある。
コンビニ各社の東日本大震災の時の施策が述べられており、特にローソンの取組みが大
きく取り上げられている。
「雇用からみたコンビニFCの有用性」という項では、大切なことが述べられているの
で、いろんな補説を加えて解説したい。
雇用に関する記述としては「コンビニなどのFC産業が雇用創出に貢献してきた実績は論
を俟たないでしょう。ただ、求人の中心はパート・アルバイトなどの非正規雇用形態が中
心であり、オーナー(とその家族)以外は全員アルバイトという店舗がほとんどではない
でしょうか」と述べている。
更に「地方における正規雇用の拡大、ひいては地方経済の活性化にコンビニFCが存在
感を発揮するためには、やはり本部と加盟店の利益配分の問題に切り込まなければなりま
せん。」「本部の加盟店に対するロイヤルティを下げることはコンビニ問題と言われる諸問
題解決のための本質的な課題なのです。」
そして2010年10月の決算委員会で著者が質問した際のフリップを利用して、次の
ように力説している。
「もし、フランチャイズ契約を適正化し、加盟店の取り分を増やすことができれば、加
盟店収入が増加し、それによって地方税である法人事業税・住民税が増加します。それだ
けではなく、ロイヤルティ率の適正化によって、一店舗あたり二名の正社員雇用増加が見
込まれるとすると、全国で約50万人の雇用増につながります。」「いま地方では、何より
雇用の創出が喫緊の課題です。ロイヤルティ率の適正化という、従来のシステムを少し変
えるだけのことで、法人の負担を増やさず、地方の活性化につながる工夫ができるのです」
この4項が、本書の一番重要なポイントであると考えるため、若刊の補論を述べておき
たい。
補論(黒川の加筆)
1.契約タイプ
コンビニ契約は大別するとAタイプとCタイプの2種類がある。(チェーンによっては、
中間契約もある。)
Aタイプ
加盟店が土地、建物、内装等を負担するタイプ。(日本の外食、サービスフラン
チャイズは、ほぼすべてAタイプである。)
Cタイプ
本部が土地、建物、内装、什器類を用意して、加盟店は契約金、研修費、開店
準備金、商品代の一部など、概ね約300万円程度の一時金を支払えば加。
2.契約タイプ別加盟店の比率(月刊コンビニ
Aタイプ
2007年11月号佐々木文博氏調査)
Bタイプ
Cタイプ
直営店
ローソン
43.5%
51.0%
5.5%
ファミリーマート
57.1%
40.5%
5.5%
4
サークルK
38.0%
47.7%
セブンーイレブン(月刊コンビニ07年11月号)―
14.0%
50%以上
-
✸肝心のセブンーイレブンのタイプ別店舗数が明らかでない。佐々木氏は(持ち株会社以
降のため、詳細が未発表のため確認できない)としている。
✸ファミリーマートのAタイプには、次のタイプが加算されている可能性が高い。(月刊
コンビニの06年7月号より推察)
1FC-Aタイプ
店舗は自分で用意するが内装設備工事の一部を本部が負担。
必要な資金は2000万円~2500万円
1FC-Cタイプ
店舗は本部が用意するが、内装設備工事費用をオーナーが負担。
必要な金額は1200万円~1400万円
この2つをCタイプに加算すれば、ファミリーマートのCタイプの比率は50%以上に
なる。
✸セブンーイレブンのCタイプの加盟者は50%以上と推定している記事がある。
(月刊コ
ンビニ07年11月号)
いずれのデータも5年程度前の数値であり、現在では更にCタイプの構成比が高まってお
り、50~60%程度ではないかと考えている。
従って著者がコンビニ加盟店と呼ぶ場合、どのタイプの契約であるか明らかにする必要
がある。
月刊コンビニ11月号では「Aタイプ存続に危機」という特集記事が出ている。その中
で池田勝彦氏(セブンーイレブン・ジャパン専務取締役経験者)が,Aタイプの減少を
次のように総括している。
「Aタイプのオーナーは、昔は自分の土地を担保にして、その土地の上に店をつくり、販
売免許(酒類?)を差別化として経営していた。しかし、土地価格の下落により担保価値
が不足し、規制緩和により差別化が難しくなった。そして出店のためには多額な投資を必
要とするリロケーションが不可欠になった。このような状況の変化により,Aタイプの出
店が難しくなってきている。」
同じ論文の中で池田氏は、次のように述べている。「Cタイプオーナーには独立した経営
者であるとの自覚が不足している人が多いように私は思っている。」
3.ロイヤルティとは
ロイヤルティとは、本来本部商標の継続的利用料、本部の経営指導員による継続的経営
指導料の意味があると理解している。ところが、コンビニのロイヤルティ(会社によって
フィー、チャージと呼ぶことがある)には、一般のフランチャイズのロイヤルティ以外に、
家賃、土地使用料、外装・内装・エアコン等の償却費が含まれており、外食、サービス業
のロイヤルティと同じに扱われては極めて不十分であり、本来同じものではない。違うも
のを、ロイヤルティという言葉でくくられては間違いが発生する。
4.コンビニのロイヤルティ比率(ダイヤモンド2010年9月11日号)
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Aタイプ
セブンーイレブン
Cタイプ
売上総利益に対して43%
ローソン
~250万円
250万円~400万円
66%
400万円~550万円
71%
550万円以上
76%
FC-G(Aタイプと似ている)
FC-C5(Cタイプと似ている)
売上総利益に対して34%
ファミーマート
粗利益の56%
売上総利益に対して50%
1FC-A(Aタイプと似ている)
2FC(Cタイプと似ている)
営業総利益の35%
月間営業総利益に対して
300万円以下
300万円~450万円
48%
450万円以上
60%
サークルKサンクス
月間売上総利益に対し
65%
月間売上総利益に対して
600万円未満
30%
240万円未満
37%
600万円以上750万円未満
19%
240万円以上340万円未満
57%
750万円以上
14%
340万円以上
62%
2010年調査であるので、かなり正確であると思う。
5.複数出店者の増加
「コンビニ改造論」では、まるでCタイプがすべてで、かつ1店舗経営もしくは脱サラ
イメージで加盟店像が描かれているが、実体は相当違う。日本経済新聞2012年9月1
日に、次のような記事が出ている。
「コンビニ大手5社は今年度に過去最高の3700店の出店を計画する。ただ大量出店の
担い手となるFCオーナーは大きく変化している。初期は酒販店などからの転換が多く,
近年は脱サラ組が中心。だが個人商店の減少や働き手の世代の人口減少などの影響で、今
後はオーナー不足が懸念される。
そこで、各社とも1人のオーナーが複数店を経営できるような優遇策を相次ぎ導入して
いる。例えばローソンは2店目以降の加盟金を減額するほか、10年で4店以上を持つオ
ーナーを対象に、人材育成や税務など企業経営を指南する制度を採用した。
大手5社の総オーナーに占める複数店オーナーの比率は、07年度末の12%強から1
1年度末に20%強に増えた。コンビニオーナーも脱・家業の流れが加速している。」
「ファミリーマートの1FC契約の店舗を複数経営するオーナーには優遇制度がある。」
(月刊コンビニ06年4月号)「2号店以降の1FC契約店舗に対して、年間の営業総利益
額の2~10%を奨励金として支払うのである。」
更に、「ファミリーマートには“1FC5、-10販売奨励金制度(適応は03年3月)
という制度がある。これは経営する1FC契約の店が5店、10店となった時点で、すべ
ての1FC契約の店に対し、本部が奨励金を支払うもの。
」(月刊コンビニ06年4月号)
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同じ記事の中で「ファミリーマートがこうした制度の整備を始めたのは1999年頃。
丁度、企業としての成長がゆるんだ時期だった。ほかの大手チェーンよりも問題が早く出
て来たので、早めに手を打つ必要があった。」
私の想定では、2011年の夏ごろにファミリーマートの全店舗数(07年7月末8,
468店舗)の半数以上が、複数出店者による店舗であると推定している。
複数出店者の大きな存在を考えると、「コンビニ改造論」とは、全く異なるフランチャイ
ジー像が浮かび上がる。それは、店長として、2号店以降は正規社員を雇用し、必死に育
成するオーナーの姿である。ロイヤルティも複数出店奨励金として、最大10%の減免処
置を受けている事例がある。(毎月支払い)
私は、1名の複数出店者が20~30店舗を経営しているファミリーマートの何人かの
経営者を知っている。取材をしたこともある。
「ファミリーマート加盟20周年」の記念式
典に招かれ、挨拶をした経験もある。
「コンビニ改造論」の29Pに「オーナーとして裁量を発揮すべき部分をすべて本部に決
められている状態は、とても経営者とは言えません。」という文言があります。著者は、ど
こまで複数出店者の実態を把握しているのか。殆ど1店舗オーナーの声のみを聞いて書い
たのではないかと疑っている。
(なお、複数出店者に対する研究は中小企業診断協会東京支部FC研究会が「法人・複数
加盟者に関する調査・報告書」を出版しており、私のHPの「FC時評」09年6月号で
は、複数出店者の売上高は約9.6兆円で、フランチャイズ市場の48%程度を占めてい
ると推定している。)
第3章
フランチャイズ法制定に向けて
この章は、著者の国会議員としてのフランチャイズに関する活動をまとめた記録であり、
非常に参考になる。
それをまとめると、次のようになる。
「そこで民主党の企業団体対策委員長であった前田武士参議院議員に相談し、
「フランチ
ャイズを考える議員連盟」を発足させることにした。設立趣意書は次のようなものとした。」
「フランチャイズの健全な発展を図ることは、日本の地域社会の発展を促すうえできわ
めて重要である。フランチャイズ事業者、加盟店、従業員などフランチャイズに関わるす
べての人が生存権を確保し、共に発展できる環境を整備することは国家の責務であると考
え、議員連盟を設立する」
「議連が目的とするフランチャイズ産業の健全な発展であり、本部を規制することを第一
義とするものではありません。また、フランチャイズ産業従事者の権利保障とは、憲法2
5条に規定される生存権の確保であり、基本的人権にかかわることなのです。」
「フランチャイズを考える議員連盟」は、前田武士参議院議員を会長に,超党派の国会
議員で組織され、著者は事務局長を務めています。」
「2010年3月18日に設立総会が開かれ、諸外国のフランチャイズ法に詳しい岡田外
司博早稲田大学教授に、設立の記念講演会をお願いしました。」
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また、これまで、経済産業省、公正取引委員会、消費者庁などの担当者や、UIゼンセ
ン同盟の副書記長、日本フランチャイズ・チェーン協会の土方会長、桜田厚会長、更にコ
ンンビニフランチャイズ問題弁護士連絡会の中野和子弁護士、中村典弁護士などを講師に
招いているそうである。
「そして、2011年秋、議連としての今後の方向性を示すものとして“中間まとめ”
をとりまとめました。」
(なお、中間とりまとめについては、最後に掲載する)
2.では「コンビニ加盟店ユニオンの立上げ」がテーマとなっている。
1995年から活動を続ける「全国FC加盟店協会」という団体があり、2009年6
月2日に、院内集会を開催してもらったそうである。「またこの集会は、全国のFCオーナ
ーが一堂に会する初めての場でもありました。」「院内集会の後開かれた勉強会には、厚生
労働省の担当者を呼び、
“コンビニオーナーは労働者になれるのか”というヒアリングを行
いました。(中略)すると担当者はにべもなく“労働者にはなりえません”とはっきり答え
ました。」
「コンビニ加盟店ユニオンの正式な設立大会が開かれたのは2009年8月4日、私の地
元岡山市でした。」「この日は特別ゲストとして小沢一郎民主党代表代行(当時)が駆けつ
けて、コンビニは今や地域の顔としてなくてはならない存在であり、健全な経営を続けて
いけるように民主党として法律の整備をしていきたい、と激励してくれました。
」
「民主党は衆議院選挙の際のマニフェストに“中小企業いじめ防止法案”を盛り込みまし
た。小沢代表代行は“大企業による不公正な取引を禁止することをマニフェストでも明確
にしている。みなさんと本部との契約もこの法律の適用対象としたい”と力強く語りまし
た。」「同年9月には、連合岡山に加盟、他の団体とも連携を取って活動を進めていくこと
になりました。」
後の章になるが「終章」の宇都宮弁護士に学ぶ・法律で世の中を良くする方法の中で、
著者は「コンビニ加盟店ユニオンの最大の目標の一つは(全国組織の)連合に加盟できる
かどうかということです。」と述べている。これには強い違和感を感じた。コンビニ加盟店
ユニオンを結成した時には、セブンーイレブン・ジャパン社と団体交渉をすること、
セブンーイレブンが応じなかったので岡山地方労働委員会に“不当労働行為の救済申し立
て”を行った筈である。この本では、セブンーイレブン・ジャパン社の対応、岡山地労委
の判断には全く触れず、いきなり(全国組織の)連合に加盟できるかどうかが問題である
と述べている。
私は、HP上09年9月号でFC時評「コンビニ加盟店ユニオンは労働組合か?」と題
して、労働組合ではないと結論づけている。また、本書で述べられている「INAXメン
テナンス」事件と「新国立劇場オペラ合唱歌手」事件と、コンビニ加盟店ユニオン事件の
問題とは全く関係が無いことを11年9月FC時評「労働組合法上の労働者性とフランチ
ャイジーとの関連」で、述べている。
4.フランチャイズ法への展望でも大切な論点が沢山ある。文章に従って、必要な処を記
8
載する。「“フランチャイズを考える議員連盟”としても、フランチャイズ・ビジネスの健
全な発展を目指すための法律が必要ではなかと考えています。」「それは片務的なものでは
ありません。今までグレーゾーンに放置されてきたオーナーの立場を中心に、新たな枠組
みを提示した加盟店を守るための法律とし、産業全体としてフランチャイズが今後も成長
していく土台を整えることを目指しています。
」
「現時点での我が国におけるフランチャイズ・チェーンを規制する法律としては、中小小
マ
マ
売商業振興法や独占禁止法のフランチャイズ・ガイドライン、民法等がありますが、どれ
も現在起きている問題に対処するには不十分なものです。
」
「フランチオャイズオーナーは、経営者でもなければ労働者でもないグレーゾーンに放
置されているため、どの法律でも守られない。同じように,FC業界を監督する官庁も、
明確にあてはまるものがなくグレーゾーンとなっているのです。」
「私たちが目指すのは、本部も、加盟店も,FCで働く人も、本部の従業員も、消費者
も、地域も、すべてが発展するための、みんなが幸せになるための法律です。」
「その代表的なものが、ロイヤルティの問題でしょう。」
ロイヤルティのあるべき姿の項で、問題となっているオーナー店長の例を上げて説明し
ている。「この店は、2008年度の年商が2億1700万円で、粗利益は6400万円で
した。オーナー夫妻が24時間365時間休みなく働いて、これだけの売上を計上したの
です。この店のロイヤルティは約59%、3780万円のロイヤルティを本部に収めまし
た。」「そうするとこのお店の年間収入は、挿し引き2620万円です。しかし、廃棄コス
トを含めた営業費は全て加盟店負担であり、2008年度の経費は2120万円でした。
最終利益は500万円となりました。でも、オーナー夫妻に実際振り込まれたお金は38
0万円でした。では120万円はどうなったのでしょう」
「オーナー店長は、こう語ってく
れました。
“本部は店の月末在庫に見合う金額まで、資本金を積み上げることを求めるため、
利益からその分(この場合120万円)を本部が留保するので、最終的に手元に入るのは
380万円になるのです。」「ご夫婦で一生懸命、休まず働いてオーナー夫妻の手元に残る
のが380万円。これが、年商2億円を超える店舗の実態です。複雑なコンビニ会計シス
テムが、判り難さを助長していますが、高いロイヤルティの一端をご理解いただけたので
はないでしょうか。」
補論
(黒川)
6.C型加盟店の年間収入は、どの位か?
週刊ダイヤモンド2010年9月11日号では「フランチャイズの悲鳴」という特集が
組まれた。セブンーイレブンの井坂社長が対談に応じている。ポイントとなる加盟店の満
足度に対して、次のように説明している。
ダイヤモンド「これまで、セブンーイレブンのオーナー収入は多く、ひとり勝ちといわれ
てきたが、近頃は苦しいという声も聞く。これは一部なのか。」
井坂社長「加盟店満足度を表すモノサシがあるとしたら、契約更新率だろう。15年契約
9
が終わり、もう1回契約する率は90%を超えている。09年度はこれよりさらに多い比
率になる。」
オーナー月収試算比較セブンーイレブンCタイプ(24時間営業、開業後6年目のケース)
売上総利益の取り分
本部
59%
加盟店
41%
日販
616
(09年度の例)(単位千円)
粗利益率
30.3%
売上総利益(月間)
5、599
ロイヤルティ(月間)▲
3,307
加盟店総収入
2,293
営業経費
▲
1,756
加盟店利益
537
オーナー月収(住宅費加算)
697
ローソンCタイプ(24時間営業、開業後6年目のケース)
売上総利益の取り分
日販
本部
49%
加盟店
51%
502(09年度の例、単位千円)
粗利益率
30.4%
売上総利益(月間)
4,578
ロイヤルティ(月間)▲2,243
加盟店収入(月間)
営業経費(月間)
2,335
▲1,581
加盟店利益(月間)
754
オーナー月収
754
ファミリーマートCタイプ(24時間営業、開業後6年目)
売上総利益の取り分
本部
47%
加盟店
53%
日販
498(09年度の例、単位千円)
粗利益率
28.0%
売上総利益(月間)
4,183
ロイヤルティ(月間)
▲1,954
加盟店総収入(月間)
2,229
営業経費
▲1,487
加盟店利益(月間)
660
サークルKCタイプ(24時間営業店、開業後6年目のケース)
売上総利益の取り分
本部
45%
10
加盟店
55%
日販
472(09年度の例、単位千円)
粗利益率
27.6%
売上総利益(月間)
ロイヤルティ(月間)
3,908
▲1,773
加盟店総収入
営業経費
2,135
▲1,487
加盟店利益
648
このダイヤモンド誌(2010年9月11日号)は随分話題を呼んだ特集であったが、
必ずしも本部側、加盟店側から反発はなかったと思う。ある程度、真実を突いた収入表で
あったかと思う。勿論、事業であるから、成功する人も、失敗する人もある。ダイヤモン
ド誌がいかなる基準で、モデルを選定したかは不明であり、この数字をすべて事実として
受け入れることには、戸惑いはある。この月収を年収に換算すれば780万円~900万
円となり、それ程高くないが、それ程低い年収でもない。所詮、初期投資の低い加盟であ
るから、この程度の年収が、もし確保できるならば、これも一つの選択肢かと思う。
第4章
コンビニ・フランチャイズの未来像
過労死、自殺者の問題が提起されているが、フランチャイズに関する問題意識は、従来
の延長戦上でしかない。
(1)ロイヤルティの適正化(減額)
「良い人材の育成のためには、正規雇用・非正規雇用を問わず、労働に応じた給与が支
払われるような仕組みが必要です。その道筋として、私は、ロイヤルティの適正化、
つまり利益の公平公正な再配分を提案しましたが、中長期的にみれば、これは本部に
とってもメリットがあるはずです。」
(2)フランチャイズ法の制定
「実体をともなった、本部と加盟店の平等な関係の確立が不可欠であり、フランチャイ
ズ法の制定がその最短コースとなるのです。
終章
宇都宮弁護士に学ぶ
省略
資料
フランチャイズを考える議員連盟
中間まとめ
1.
フランチャイズ事業は、わが国で相当の歴史を有し、ほぼ定着した事業形態とな
って
いる。その社会的重要性を踏まえ、同事業に関わる利害関係者らの取引安定化及び適
正化を図る必要性がある。現行法では、中小小売商業振興法、独占禁止法などで規定
されている程度であるが、一方ではフランチャイズ事業の健全な発展を期すとともに、
他方ではフランチャイザー(本部)とフランチャイジー(加盟店)との間の合理的で
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良好な関係の維持、紛争の予防などの観点から適切な法規制が求められる。
2.
フランチャイズの中でもコンビニエンスチェーンは、現代社会の中で大きな役割
を果
たしている。特に今回の東日本大震災では、物流が困難な中であっても被災者へ食糧
品をはじめ様々な日用品提供を行ってきた。また被災地周辺には店舗もないが、唯一
コンビニのみが早期に再開をして地域住民の拠り所にもなっているところも多い。
3.
コンビニについては、現代日本社会における一定のインフラにもなっていて、本
来の
物品販売から各種公共料金の支払い、宅配便の受付け、中には住民票発行などの行政
事務まで担う店も現れている。こうした新規事業は、一般利用者にとって便利ではあ
るものの、現場の店舗への過重な負担とならないよう適切な規律が求められる。
4.
定型的なフランチャイズ契約においては、一般的には本部が優位に、加盟店が不
利に扱かわれるケースも見受けられるが、必ずしも一概には言えない点もあり、なお
慎重に調査検討を進める必要がある。しかし、現代社会の中でのフランチャイズの重
要性を考慮すれば、本部と加盟店との適正な関係を規律するだけではなく、加盟店を
利用する一般消費者にとっても特段の問題が生じないようにするため、フランチャイ
ズをめぐる取引適正化のための法案の必要性は強い。
5.
フランチャイズ契約を規制するための法案には,とりあえず以下の論点が考えら
れ、
なお慎重に検討を進める必要がある。
【基本的コンセプト】
・フランチャイズ事業の健全な発展を促す。自由で活発な経済環境を阻害するようなもの
であってはならない。
・フランチャイザー(本部)とフランチャイジー(加盟店)との間の合理的で適正な関係
の維持を図ると共に紛争の予防を目指す。
・万一、本部との間で紛争が発生した場合には、簡易、迅速な紛争処理が出来るようにす
る。
【主な論点】
① 本部事業者について、都道府県もしくは国への登録制をとるか。
② 本部の加盟店募集について、過剰、虚偽勧誘の禁止等、不当な勧誘が行われないように
にするための措置をとるか。
③ 本部と加盟店とのフランチャイズ契約締結に当たって、どの程度の説明義務や書面交付
を求めるか。
④ 本部がロイヤルティ等の名目で加盟店から徴収する金銭について、いかにしてその適正
化を求めるか。加盟店が不当な不利益を被らないようにするための合理的な仕組みをい
かに求めるか。
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➄フランチャイズチェーン協会、国及び都道府県に対してフランチャイズ適正化に向けた
一定の義務を課すか。
➅同一商圏内における新規事業について何らかの規制を課すか。もし規制するとすれば、
営業の自由との関係をどのように調整するか。
➆加盟店と本部の間の紛争について、紛争処理機関を設置するか。
➇国、都道府県の本部に対する指導勧告、改善命令などの措置を規定するか。規定する場
合、本部及び加盟店の不服申し立てを認めるか。
6.当議員連盟としては、今後ともフランチャイズ法作成に向けてさらに検討を進める。
(平成23年11月9日採択)
会長
前田武志
副会長
民主党参議院議員
田中けいしゅう民主党
衆議員議員
〃
川内博史
民主党
衆議院議員
〃
岡崎トミ子
民主党
参議院議員
〃
小川俊夫
民主党
参議院議員
〃
今野
東
民主党
参議院議員
〃
伊藤正道
社民党
参議院議員
〃
亀井郁夫
国民新党
参議院議員
〃
田中康夫
新党日本
衆議員議員
幹事長
松野信夫
民主党
参議院議員
和田隆志
民主党
衆議院議員
姫野由美子
民主党
参議院議員
民主党
衆議員議員
幹事長代理
事務局長
事務局次長長尾
敏
(役員名は2010年3月18日のHPより引用)
通常、最後に「まとめ」を記すことにしているが、あまりにも長文になったため、今回
は省略する。
著者の姫野氏に対しては、公務多忙の中、よくこれだけまとめられたものだと感心し、
お礼を申しあげたい。今後とも、フランチャイズ業界について、関心を寄せて頂きたい。
筆者の私見は、ほぼ補論1~6に尽くされている。
本文章の無断引用は禁止致します。
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