10月 - 在ボツワナ日本国大使館

Botswana Medical Information
2015 年 10 月
【新聞報道】
○医療過誤被害者の痛み:10 月 2 日;Mmegi
Lenmed Bokamoso Private Hospital で 2013 年 4 月に子宮の手術を受け、障害が残っ
た患者が病院を訴えた。彼女はこの病院の医師より、子宮の腫瘍あるいは嚢胞を取り除く
手術を受けた。退院して数日後、性器出血を伴う激しい痛みに襲われ、手術をした医師を
受診した。しかしその医師は、感染が見られるので他のクリニックを受診するようにと告
げた。4 件目の病院で膀胱が傷ついていることが判明し、南アフリカのプレトリアにある病
院へ転院し検査を受けた。結果は子宮やその他の骨盤腔内臓器を認めず、膀胱内には空気
が貯留していた。2013 年 6 から 7 月に泌尿器科で、多発していた膿を伴う瘻孔や、大きな
膀胱膣瘻、小腸と骨盤内腔壁との癒着が認められ、外科手術を受けた。結婚前だった患者
は、膀胱にカテーテルを挿入していなければならない、今後の人生を悲観している。
患者は弁護士を通し、150 万プラ(約 1650 万円)を慰謝料に請求した。病院側の主張は、
手術を行った元主治医に場所を提供していただけで、病院側に責任は無いと主張している。
また元主治医は、今は病院と契約していないので、被害者は直接その医師と交渉するよう
にと病院側は話している。元主治医は、現在裁判中のことなので、コメントを避けている。
医務官からの解説:
ボツワナでは検査や手術を行うとき、南アフリカの病院に転院することが多く、医師も
転院をすすめることが多い。
今回の記事のようなボツワナの私立病院では,複数開業医が集まって病院を形成するか
たちになっている。つまり病院は数名の一般医や救命救急医(不在の場合もあります)、検
査部門、薬局部門を除き専属の医療従事者を持たず,ほとんどの医師は病院のサポート医
師という位置づけになっている。病院はこれらの医師に(一定の料金を取って)場所を提
供し、個々の医師が病院内でそれぞれの診療所を開業しているといったイメージである。
各医師は病院内とは別に私立診療所を経営していることが多く、週に数回または不定期に、
あるいは手術など一定以上の設備が必要な場合にのみ、病院で医療行為を行っている場合
がほとんどである。
○ボツワナの狂犬病:10 月 6 日;Daily News
Patrick Ralotsia 農業大臣はカサネで開かれた World Rabies Day の会合で、ボツワナの
狂犬病の現状について語った。ボツワナでは人の狂犬病感染は制御されており、1972 年か
ら 1989 年の間に 25 名が狂犬病で死亡した。しかし徐々に減少し、1990 年から 1999 年ま
でで 4 名、2000 年から現在まではわずか 2 名だけが狂犬病による死亡者であった。狂犬病
予防に有効なペットへのワクチン接種を、2015 年 6 月に行ったキャンペーンでは、カサネ
地区の犬 1124 頭、猫 124 匹に行った。
獣医部門の Dr.Modise は、動物の狂犬病罹患例に関して、50%以上が犬で見られ、次い
で反芻動物の家畜が 40%、残り 10%近くが野生動物であると述べた。野生動物の中ではラ
イオンに見られることがあるが、人への感染源にはなりにくいとのこと。公務員が異動す
る時に、飼っていた犬を置き去りにすることが多く、それらの犬は野犬の群れに合流する
とのこと。同氏は、野犬の駆除を行いたいが、動物の権利が叫ばれる今日、駆除を実施し
づらくなっている。野犬のコントロールのため、無料で犬の去勢や避妊手術を行う施策が
必要であると述べた。
医務官からの解説:
2013 年の World Health Organization(WHO)からのレポートでは、ボツワナで狂犬病に
さらされた疑いのある人は 2010 年に 1440 名、2011 年は 1794 名という報告がある。また
医療施設で把握できていない感染者も存在すると推測されている。ボツワナは比較的、狂
犬病の危険が少ない国と思いますが、油断は禁物と考えてください。
○割礼で 100 プラ(約 1100 円)
:10 月 19 日;The Monitor
Serowe 地区では HIV の新規感染予防のための割礼を普及させるため、7000 人を目標と
して、割礼希望者を紹介した者と、その割礼の施術者が、割礼実施者1人あたり 100 プラ
をもらえるキャンペーンを行っている。Centre for Disease Control Botswana(CDCB)の
Robert 氏は、
「我々は 2018 年までに新規 HIV 感染者をゼロにすることを目標にしている
が、今のペースではこの目標には 20 年かかる。そのため、今回のキャンペーンを決定した。
今回の決定は、女性が男性パートナーに割礼を促す助けになる。
」と述べた。
このキャンペーンの資金として、アメリカ政府より 500 万米ドルが援助されている。ボ
ツワナ全土で、5台の移動チームで6ヶ月間に、15 から 29 歳の男性 35000 人への施術を
目標にしている。
○報酬を払っての割礼に対する穏やかならぬ反応:10 月 21 日;Mmegi
Safe Male Circumcision(SMC)を勧めた人に対して報酬を払うキャンペーンに関する意
識調査で、市民は不安を表明している。当紙の調査における代表的な意見として、報酬を
払うことは、SMC に関して誤ったメッセージを伝えるのではないか。だれかが報酬を得る
ために、他人を SMC 施設に連れて行くことは、倫理的に間違っている。このキャンペーン
の終了後、次のキャンペーンが行われることを期待して、SMC 希望者が減少するのではな
いか。報酬を受けるのは、痛みを受け入れた被術者とするのが適切でないか。無責任な両
親が手っ取り早い収入を得るために、我が子を SMC 施設に連れて行くのではないか。SMC
を受ける利点を理解して、強制されてでは無く、自発的に SMC を行わせるべきではないか。
これらの意見が見られた。
Mmaphula East 地区の行政官 Mphoentle 氏は、これらと同じ意見を持ち、まずは SMC
に関する知識を普及させるべきと述べた。彼は、人は動物では無いので、報酬で SMC に駆
り立てるのでは無く、そのお金でチームを編成して、知識の普及のための戸別訪問を行う
費用に充てたほうがよいと考えている。
これらの反応に対し CDCB は、勧めた人に報酬を支払うのは、交通費や通信費に必要な
資金を提供するためと話している。そしてそのことが我々の利益になると話した。
医務官からの解説:
2006 年のケニア、ウガンダ、南アフリカで行われた調査で、男性に対し割礼を行い、包
皮を切除すると、割礼した男性の HIV 感染リスクが半分以下になる結果が得られた。この
結果から、国連主導で、HIV 感染者の多いアフリカの 13 カ国で包皮切除推進キャンペーン
が行われている。男性の体内に HIV が進入する経路として、包皮の裏側と尿道内の粘膜が
ある。そのうち包皮の裏側の粘膜面にあるラングハンス細胞が感染経路になっており、割
礼することでこれらの感染経路を減らすことが予防効果を発揮していると考えられている。
しかし反対の意見の人たちもいる。いずれにしても割礼の予防効果は 100%ではないこと、
女性の感染予防にはならないこと(男性感染者が減れば、間接的に感染リスクは減るが)
を頭に置いておく必要がある。
○危険な人工流産の増加:10 月 22 日;Mmegi
フランシスタウンで行われた Botswana Family Welfare Association(BOFWA) の会合
で、Nyangabgwe Referral Hospital (NRH)の Dr. Thato は、毎日のように病院にくる危険
な人工流産を試みた患者について話した。またその危険性について、特に若い女性を啓蒙
する必要があると述べた。
NRH には年間約 950 例、月平均 80 例の、自然あるいは人工流産患者が訪れる。乱暴さ
れたなどの望まない妊娠に対し、病院で安全な人工流産が施行されるが、危険な方法を選
択する女性も多い。それらの女性は子宮内に異物を入れてくることが多く、一般的な異物
はペンや葉っぱ、木の枝、鳥の羽、石けん、錠剤などが多い。中には尿や医療用アルコー
ルを飲む患者もいる。これらの処置を行うのは若い女性が多く、異物を挿入することで出
血多量で死亡する危険性があると述べた。
○ボツワナでの Movember:10 月 30 日;Mmegi
ボツワナの男性は、女性と比較して保健施設や医療機関を受診しない。このため男性は
健康に対する知識が不足しやすい。Cancer Association of Botswana(CAB) は 10 月の乳が
ん啓発運動中に、まれではあるが発生する男性の乳がんに対する啓発も行った。また 11 月
は世界的に、男性に多いうつ病や男性特有の癌(前立腺癌、精巣癌など)に対する啓発月
である。その期間、参加者が口ひげを伸ばしてアピールをする活動があり、「Movember」
と呼ばれている。CAB はこの活動も行う予定である。ボツワナではさらに、男性の抱えや
すい精神面や金銭面から来る健康問題や、異性間の暴力(DV)も取り上げる予定である。
今年で 9 年目になるが、男女ともピンクの服にピンヒールの靴をはいて参加するパレード
を予定している。ピンヒールをはくことは、癌になった人たちの困難さを象徴していると
のことであった。
文責:平 昭嘉(在ボツワナ日本国大使館医務官)