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資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 新産業・社会システム推進室 パブリックコメント担当 宛 「ネガワット取引に関するガイドライン(案)」に対する意見 [氏 名] 在日米国商工会議所(ACCJ) [意見] ・該当箇所 ネガワット取引に関するガイドライン(改定案) 第1章(第1〜4節)、第2章(第3節)、第3
章(第2節)、第4章(第2節)、等 ・意見内容 在日米国商工会議所(ACCJ)は、「ネガワット」取引スキームを通して日本にデマンド・レスポ
ンス(DR)市場を創設しようとする日本政府の昨今の政策努力を歓迎します。米国では、既に
DR 市場が存在し、需要家のコスト削減、国内エネルギー産業におけるイノベーションの活性化、
そして将来の資源・エネルギー輸入の必要性の低減に寄与してきた歴史があります。米国の電
力市場における DR の成功事例として、PJM の容量オークションがあげられ、2019-2020 年度の
容量オークションでは、10 GW 以上の DR が落札されました。PJM のような電力市場では、DR は
最低価格で入札する供給側電源とも十分対等に競争できる信頼性の高い電源としての位置づけ
を確立しています。 さらに DR は低コストな電源であることも証明されています。PJM Market Monitor によると、
2014-15 年度の容量オークションで、低コストの DR が数千メガワット分の高価格の電力を代替
しています。当該年度だけを見ても、同代替により需要家に 118 億ドル分の節約をもたらした
実績があります。 これらの観点から、a) エネルギーの柔軟性を向上させようとする日本政府のビジョンを共有す
る業界におけるアクティブな貢献者と、b) 既に大規模な投資と取引を需給両面で行っている海
外の競争電力市場経験事業者の双方を会員企業に含む組織として、ACCJ は、日本政府が提案す
る「ネガワット取引に関するガイドライン」の改定案に以下のとおり意見を表明します。 (第 1 章、第 1 節、2-2) 1. 需 要 削 減 量 の 細 か な 設 定 ACCJ では、日本政府が 2016 年度 IAE 実証事業における冬の発動期間で適用される要件と同様
に、類型2(調整力)のネガワット取引における必須要件としてアグリゲータ事業者に 「部分
負荷発動(ロードディスパッチ)」を課すことを検討していると承知しています。 諸外国における2次、3次予備力市場(secondary, tertiary reserve markets)では本来、部
分負荷発動は一般的な要件ではないため、なぜこのような必須要件が IAE 実証事業において課
されるのかは定かではありません。 部分負荷発動を必須要件にすることは、アグリゲータ事業者に多大なコスト負担を強い、類型
2のネガワット取引の商業プログラムの開始がさらに遅延することにつながります。従って、
ACCJ は IAE 実証事業及び 2017 年に検討されている商業プログラムにおける部分負荷発動の必
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須要件が、今一度再検討されることを要望します。 (第 1 章、第 1 節、2-2) 2. 需 要 家 に よ る 積 極 的 な 参 加 基本料金は、DR プログラムにおける需要家の積極的な参加を確実にする主要な促進力であり、
今後の制度設計においても積極的に検討されるべきです。世界中の DR プログラムを見ると、基
本料金を含まないプログラムにおける需要家の参加率は、基本料金が含まれるプログラムにお
ける参加率と比較してごく小さいものに過ぎません。詳細につきましては、NERA Economic Consulting 社 の 「 Effective Use of Demand Side Resources: The Continued Need for Availability Payments」(2013 年 10 月) をご参照ください。 (第 1 章、第 1 節、2-2) 3. NEPC 実 証 デ ー タ を 用 い た 費 用 対 効 果 分 析 過去三ヵ年度を通して実施された日本政府による NEPC 実証事業では、アグリゲータ事業者は収
益を得ることは許されていなかったという事実を認識しておくことが重要です。言い換えれば、
アグリゲータ事業者は、ただ単に NEPC からインセンティブ対価を受け取り、何も徴収せず参加
需要家にそのまま渡していただけということになります。従って、NEPC 実証事業から得られた
データ(費用や DR による利益の試算に使われたもの)は、競争市場で実際持続的に運用されて
いる商業プログラムを適切に反映しているものではありません。 さらに、調整力の対価となる基本料金-海外の電力市場で成功している DR プログラムの必須要
素-は、プログラムの運営側が価格レベルを設定していたため当該分析では全く考慮されてい
ません。日本で DR の商業機会が普及していく段階に移行するにつれ、第一のステップとして、
需要側・供給側両方の電源を対象にした競争入札による調整力調達を確保すべきです。 (第 1 章、第2節、1) 4. 今 後 の 電 力 シ ス テ ム 改 革 に お け る 需 給 調 整 契 約 の 扱 い 政府補助の実証事業におけるもう一つの未解決問題として、アグリゲータ事業者が需給調整契
約を締結している需要家をポートフォリオに組み込もうとする際に、送配電事業者が「待機時
間帯における利害対立」があると判断した場合、送配電事業者はアグリゲータ事業者が当該需
要家をポートフォリオに組み込む行為を阻止することができるという事実があります。 需給調整契約の締結状況に関わらず、全ての需要家が今後の実証事業及び商業プログラムへの
参加を容認されるべきです。しかしながら、需要家が二重に負荷削減をすることは禁止される
べきであり、かつ需給調整契約の負荷削減が別のプログラムにおいて未達成・失敗をもたらし
た範囲においては、当該需要家もしくは需要家のアグリゲータ(需給調整契約の管理者)がペ
ナルティを課されるべきです。 ゲートクローズ(同時同量義務の締切り)前後で小売事業者が管理する需給調整契約と送配電
事業者が管理する需給調整契約の明確な線引きを含む、より透明性が確保された市場デザイン
が、今後、日本の電力システム改革を推進していくにあたって、ネガワットが電力市場で対等
に競争していくために必要です。 2
(第2章、第3節、2-3 (3) ② a) 5. 第 三 者 ア グ リ ゲ ー タ 事 業 者 の 電 力 消 費 デ ー タ へ の ア ク セ ス 許 可 第三者アグリゲータ事業者にとって事業機会を確実なものにするためには、電力消費データへ
のアクセスを確保することが極めて重要です。電力消費データは、a)「営業活動前」の段階の
見込み顧客の識別・獲得から、b) 「容量の指定」段階におけるネガワットの安定供給のための
ポートフォリオ構成、c) イベント発動後段階における負荷削減効果の測定及び需要家への対価
支払の精算に使用される一般的な手段として、諸外国では、「メーターデータ同意書」を利用 し、第三者アグリゲータ事業者の運用上のデータアクセスを許可しています。さらに、一元化
されたオンラインデータベースを設けて、そこからアグリゲータ事業者が上記運用業務遂行の
ための電力消費データにアクセス及びダウンロードできるようにしている市場も見受けられま
す。 以上 5 点が、ガイドライン改定案に対する ACCJ のコメントです。 ・理由 先月上旬に北九州で開催された G7 エネルギー大臣会合後の共同声明では、電力安定供給に寄
与する「より良い電力市場のデザイン及び適切な規制枠組み」の必要性が強調され、その枠組
みにはデマンド・レスポンスが含まれるべきとされました。 他の先進諸国と比較して資源・エネルギー自給率が低く、輸入依存率が極めて高い日本にとっ
て、エネルギーミックスの多様化と電力安定供給の確保は日本の国際競争力を高めるために極
めて重要です。電力の安定供給を確保するにあたって、先進諸国では通常多様な電源を対象に
した電力需給見通しが立てられます。欧米諸国では DR が電源として扱われ需給見通しに含まれ
ているのに対し、日本では旧一般電気事業者が管理する計画調整契約が定着節電として扱われ、
電力需要想定に織り込まれるに留まっています。 「節電をしようとする意思」という観点から見ると、日本は間違いなく世界をリードする国で
あるにも関わらず、これまで需給調整のツールとしては供給側に大きく依存し、需要側のリ ソースが十分に活用されてきませんでした。今後日本においても、
「より良い電力市場のデザイ
ン及び適切な規制枠組み」の必要性をベースにネガワット市場の整備が進められ、市場メカニ
ズムを通して DR に適切な経済価値が与えられることで、DR が日本の電力安定供給及びエネル
ギー安全保障に寄与することが大いに期待されます。 上記の点に関する日本政府の検討及び ACCJ の会員企業が北米をはじめとする電力市場で DR 事
業から得た知見や経験を共有する機会をいただいた事に感謝いたします。日本政府が今後の制
度設計を進めていく中でお役に立てることがあれば、ACCJ は喜んで協力をさせていただく所存
です。 3