世界通貨統一計画 所属:国際系ゼミ 1年7組28番 萩原 佑太 第1章 はじめに 第1節 テーマ設定の理由 2008 年のリーマンショック(世界金融危機)以来、日本では円高ドル安が進み輸出産 業に大きな影響が出た。しかし、一昨年の 12 月に誕生した自民党政権は今までの常識を 打ち破る大胆な経済・金融政策を実行し景気は回復しつつある。そんな中で、各国の貿 易あるいは景気は通貨の交換レート(為替相場)に左右されるということから世界の通 貨を統一することが最善なのではないかと思ったため。 第2節 研究の狙い 通貨統一までの過程またはその後に予想されるメリット・デメリットを経済・金融の 二つの面から眺めることでより構造的な理解を深めていきたい。 第3節 研究方法 主に本やインターネットを活用するが過去の事象について調べる際は世界史の資料集 も活用していく。 第2章 第1節 通貨の仕組み 範囲を世界に広げて通貨について学ぶうえでの最も重要なキーワードが「信用」だ。 私たちが現在「円」を使うことができているのは世界中からの「信用」があるからであ り、もしそれがなくなれば「円」にその存在価値を見出すことはできない。そもそも、 世界中の投資家が自国の通貨を「円」に替える目的は、 「円」が世界中の通貨に対して価 値が高くなった(信用が上がった)ときに自国の通貨と交換することで利益を得るため であり、他国の通貨をたくさん持っていても直接使うことはできない。これは日本に置 き換えて考えると、日本に住んでいる人が米ドルを持っていても、商品を買ったりサー ビスを受けたりすることはできないことと同じである。 また、 「物価との関係」も重要なキーワードだ。今日 100 円で買えたものも、1 年後に は 200 円になっているかもしれない。もちろん世の中の通貨と商品の流通量とのバラン スもあるが、この状況を単純に言い表すと「円の価値が半分になった」ということであ る。ドイツでは政府が第一次世界大戦の賠償金を支払うために紙幣を大量発行したため、 1マルク(当時のドイツ通貨)で買えたパンが 1兆マルクでないと買えなくなってし まったという事例もある。日本も例外ではなく終戦後間もない時期には激しいインフレ がおきてしまった。このような状況を未然に回避するために各国政府は様々な金融政策 を実行する。例として今の日本を挙げる。現在の安倍政権はそれまで続いていた円高を 解消するために、市場の通貨量を増やす政策をとっている。これにより、国内外でのお 金の流れを良くし、デフレを解消しようというのである。さらには円安を促進すること で、輸出産業を中心に景気を上昇させる狙いがある。 第2節 通貨の歴史 「通貨」の概念が誕生して以降、時代ごとに通貨の形は変わり、種類も多様化してきた。 日本では、奈良時代に流通した和同開珎、また、それ以前に流通したとされる富本銭が 挙げられる。これらはいずれも銅を材質としている。江戸時代には金貨や銀貨が流通し、 単位には両が用いられた。そして、明治時代には、現在まで続く円が導入された。 では、現在世界中で様々な種類の通貨が存在するに至った理由・きっかけは何なのだ ろう? 主な理由としては、「貿易の形態変化・大規模化」である。貿易の始まりは物々交換で ある。しかし、農産物あるいは水産物を中心とする貿易(物々交換)は食材の保存技術 が発達していなかったこともあり季節的なものであった。これを解決するために「通貨」 という概念が誕生したのである。このような現象は世界各地で共通してみられ通貨の種 類の多様化へとつながったと考えられている。 第 3 章 過去から学ぶ 第 1 節 世界恐慌 1929 年に始まった世界恐慌は世界中に影響を与え第二次世界大戦の原因にもなった。 過去に類を見ない大不況に見舞われたアメリカは諸外国からの輸入品に高関税を掛けた。 イギリスやフランスなど植民地を大量に保有している国々は報復措置として同様の制作 を実施した。これにより世界経済は一気に縮小した。植民地を貿易の中心とすることで 輸出・輸入のバランスをコントロールすることが容易になり景気回復を加速させること ができるため植民地保有国にとっては当然の策だと思われる。アメリカはドル圏、イギ リスはポンド圏、フランスはフラン圏を持ち独自の市場を活用した。 第2節 ギリシャ通貨危機 2009 年 10 月ギリシャ政府の粉飾決算(借金を隠していた)が発覚すると、ユーロの 信用は急落した。これをきっかけにもともと経済状況が不安定だったスペインやポルト ガル、ラトビアなどでも同様のことが起きた。これらの国々に更なる経済成長を見込ん で多額の投資をしていたフランスやドイツは利益を得るどころか資金援助をすることに なり、ヨーロッパ全体を巻き込んだ。ギリシャは資金援助の条件である公務員給与の削 減や増税をなかなかクリアできず(もちろん国内からの反発が大きかった) 、フランスや ドイツ(救済する側)とギリシャ(救済される側)の対立も起きた。 第3節 まとめ 1、2 節から、通貨を統一することのメリットとデメリットが読み取れる。 メリットとしては通貨の違いにいる貿易格差がなくなることである。現在の世界では 「国債の格付けランキング」が存在する。これは各国の国債の安全性をランキング化し たもので、国債の安全性が高いということはその国の通貨の信用があるということであ る。最新のランキングは以下のようになっている。 【AAA】 英国、オーストラリア、ドイツ、オーストリア、オランダ、カナダ、シンガポール スイス、スウェーデン、ニュージーランド、フランス、香港 【AA+】 米国、ベルギー 【AA】スペイン 【AA-】日本 【A+】韓国 イタリア 【A】ポーランド 【BBB+】アイルランド、ブラジル、ロシア 【BBB-】インド ポルトガル 【B】アルゼンチン 【CC】ギリシャ これを見ると、ランキング上位の国には北欧諸国やオーストラリア、カナダなどがあり、 反対に下位の国にはアフリカや南米を中心とする発展途上国が大半を占めるが、ギリシ ャやポルトガルといった先進国も存在することがわかる。このように世界経済に大きく 影響を及ぼす国(先進国や新興国)が低迷していると、経済混乱の可能性が増えるのだ。こ の可能性を下げる究極の手段が「世界通貨統一」なのである。通貨に格差があれば自然と お金は信用のある通貨へと流れる。これが今の世界各国の経済格差を引き起こしている 要因の一つだと思われる。以上のことから、経済の安定を保ち、経済格差が是正される ことがメリットだと考えられる。 また、現在のEUの状況からもメリットが読み取れる。為替レートがなくなり、お金 の流れが活発になる。加えて企業の海外進出が促進されることで、国際競争力を持った 企業が増えることも予想される。 一方でデメリットとしては、景気調節手段である為替レートが失われることで景気調節 ができなくなることである。これはメリットとして述べた景気の安定と表裏一体である。 第 4 章 これからの展望 第 1 節 通貨統一までのプロセス 通貨統一までの最大の問題が各国通貨をどのタイミングで新通貨に移行するかである。 つまり、どの時代の為替レートを適用するかである。もちろん移行時のその瞬間を適用 するのが一番だと思われるが、そう簡単にはいかない。 「現在のレートは○○の影響を受 けていて適当でない」など各国の利害が対立して様々な意見が出るのは明白である。そ こで私は、3 つの案を考えた。 ① 先進国優先型 先進国に有利になるようなレートを採用する。利点としては比較的成熟した国に好条件 を提示するため、最も安全な策であるということである。しかし、現在の国家間の経済 格差が拡大することが懸念される。対策としては、先進国が通貨統一後に責任を持って 途上国を支援することである。 (ODP 政府開発援助・NGO 非政府組織支援による民間支 援など) ② 途上国優先型 発展途上国に有利になるようなレートを採用する。利点としては国家間の経済格差が縮 まるということである。しかし、発展途上国の資金が先進国に対して増加することで世 界各国の勢力バランスに変化が生じ、逆に争いが増えることが懸念される。対策として は、目的である経済格差縮小に効果的なレートを採用しつつも、極端な発展途上国台頭 を防ぐバランスのとることである。 ③ 均衡型 移行時のレートを採用する。先ほども述べたように、最も単純な方法であるが、各国の 利害が対立するため妥協までに時間がかかるのが難点である。 第2節 通貨統一後の課題 通貨統一後の課題は 2 つある。1 つ目は金融・両替業従事者の雇用である。これにつ いては各国政府が適切な対策を実行して十分な雇用を生み出すことが必要である。2 つ目 は 3 章でも述べたように景気が減速した時の迅速な対策の実施である。通貨が統一され た世界では、為替レートを利用した景気対策が不可能となる。そのため EU で言うヨー ロッパ中央銀行のような機関を設立する必要がある。 参考文献 『紙幣は語る』中野京子(羊泉社) ウィキペディア 「通貨で読み解く世界経済」
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