児童に必要とされる政府、NGO、個人セクターによる保健衛生サービス

児童に必要とされる政府、NGO、個人セクター
による保健衛生サービスに関する調査
2004年4月
和訳:花城 可光(Rainbow Bridge Project)
HEALTH SYSTEMS STRENGTHENING IN CAMBODIA
The Health Systems Strengthening in Cambodia (HSSC)は U.S. Agency for International
Development (USAID)の協力の元行われているプロジェクトである(協定番号 442A-00-02-00214-00)。 The University Research Co., LLC (URC) により調査と統計が
行われた。URC’s による HSSC はカンボジアの保健省 Ministry of Health (MoH)を
協力する事を目的とし、キャパシティビルディングの計画作りと管理、
HIV/AIDS & family health programs を実施している。このプロジェクトは保健省
衛生セクター強化戦略 MoH Health Sector Strategic Plan (2003-2007)に基づき、企
画の立上げ、衛生システムの質の強化、改善を行っている。
i
あいさつ
URC/HSSC を代表しこのレポートの作成、仕上げに参加して下さった全ての
方に感謝を申し上げます。
この調査の準備をしてくださり、元のアイデアをもたらして下さったのは
URC のコンサルタントである Dr. Rob Overtoom 氏、編集をや統計作業を指揮し
て下さった技術的な URC の Maria Francisco 氏と Barbara Donaldson 氏に重ねて感
謝申し上げます。
ii
目次
1 はじめに ................................................................................... 1
1.1
現在、児童の医療サービスに求められる動向と要求の現状 .......................... 2
1.2
図説
病状の変化と対応 ...................................................................................... 3
2 家で取る事の出来る医療処置、及び医療行為 ......................... 2
2.1
母親の医療処置に関する知識と能力 .................................................................. 2
2.2
家族構成員、隣人、及び友人の影響 .................................................................. 4
2.3
家族/世帯の有する資金 ......................................................................................... 4
2.3.1
治療にかかる費用............................................................................................ 4
2.3.2
地理的なアクセスと経費................................................................................ 6
3 共同体/村落内で行われる治療行為........................................... 7
3.1
信じられ実践されている伝統 .............................................................................. 7
3.2
Kru Khmerによる伝統的治療 .............................................................................. 8
3.3
伝統的産婆(The Traditional Birth Attendant)とYeey Moab ...................................... 9
3.4
村の薬屋 ................................................................................................................ 10
4 村落外で行われる治療行為 .................................................... 10
4.1
公衆衛生機関で見られる処置 ............................................................................ 11
4.1.1
保健所.............................................................................................................. 11
4.1.2
病院.................................................................................................................. 14
4.1.3
経験を活かす.................................................................................................. 15
4.1.4
医療機関の自己資本...................................................................................... 16
4.2
民間セクターで見られる処置 ............................................................................ 16
4.2.1
公式な民間セクター...................................................................................... 17
4.2.2
非公式の民間セクター(村落外) ................................................................... 20
5 発見と改善の為の提言............................................................ 20
i
REFERENCES............................................................................ 25
LIST OF TABLES
Table 1 セクター別治療にかかる費用
単位:$US(CDHS 2000) ............................. 5
Table 2 セクター別 一ヶ月にかかる治療費や薬品代に支払われた額.................... 5
Table 3 子供の疾患時に初めに利用する医療機関(CARERE 1997):........................... 9
Table 4
保護者らが保健所を利用しない理由 .......................................................... 12
Table 5 カンボジア内で活躍する民間医療セクターの数 ......................................... 16
Table 6 プノンペン及びその他 10 県の登記、無登記診療所の件数........................ 19
図説 1 発熱時、及び急性呼吸疾患(ARI)に対する処置 (ARI) (CDHS 2000) ... 2
図説 2 自宅外にて見つける治療法................................................................................. 7
ii
1 はじめに
カンボジアでは保健衛生のケアを必要とする人々の為に、保健省により衛生の
インフラの構築、およびサービスの供給を向上させる努力が行われている。
しかしながら、地方に住む母親達にとって適切なアドバイスや処置を得られる
環境は少なく、深刻な病気は貧困な家庭にとって災害にも等しい損害を招く。
多くの地域で、集落に住む人々が基礎的な医療を受ける事のできる施設が設立
されるが、平均してそれらは十分に活用されていない。それらの結果は医療水準
の質の低さを示唆するものでもある。特に大きな町などでは、急速に広がる市民
セクターらにより、それらに代替するサービスが提供されている。しかしそれら
が提供する“医療の質”に関してはあまり知られていない。
多くの保健省常勤スタッフが勤務時間外の仕事を続けており、海外出資者らに
よる個人運営のクリニックや病院の他、農村部では薬局、非公式なプロバイダー
も増えている。
カンボジアでは日常の生活や求められる医療サービスに関して、衛生状況に影
響を与える要素について調査が行なわれている。
この報告書では公共機関や市民セクターによって子供達に届けられる保健サー
ビス、または日常生活で健康に影響を与える行動等を調査したものをまとめ、よ
り適切な医療処置がコミュニティ内で行われるように提案するものである。
.
特に、本報告書は以下の課題に対する回答を試みたものである。
•
•
•
•
•
•
子供が疾患を患った場合、母親達はどこでその処置を行おうとするか?
サービスの提供者と消費者の観点、及び政府の保健サービスを使用しない
重大な理由は何か?
子供が重大な病気になった際の注意すべき問題点は何か?特に、マラリヤ、
急性呼吸器感染症(ARI)、下痢等の幼児の生命に関わる疾患の場合、どの
ような行動が望まれるか?
供給者にとって小さな要求が、何故その他の者にとって大きな負担となる
か?
要求されている要素とは何か。そしてそれらの要求を調整し、より適切な
ケアを提供できるにはどうすればよいか?
どの要素が母親達の医療サービス使用を妨げているか、またどのタイプの
医療支援者が最も適切な予防となっているか。母親の健康管理、及び新生
児の引渡し時の注意点とは何か?
1
1.1
現在、児童の医療サービスに求められる動向と要求の現状
子供達、もしくは自分自身が疾患の類に直面した際、どのような治療の為の意
思決定を下すかは結局彼ら自身でしか決める事ができない。
彼らが保健省の機関を最初に選択する事は無い。典型的なのは二番目か、三番
目、もしくは最後に選ばれる(DHC 2000 35 より)。そしてそれらは他の全てが失
敗した場合のみである。この統計が意味するのは、“インフォーマル”や“非医
療セクター”の方がより多くの人から好まれているという事である。
“文化的に受け入れやすい”、“24時間利用可能である”、“分割払いや後
払いなどの配慮”などもあるが、重要な理由はこれらの背後にあるようである。
“インフォーマル医療サービス提供者”は主に村の薬屋、最寄の市場の薬局、
Kru Khmer(村の伝統を知る先生)、村の産婆、等である。
CDGS2000 では、大多数の発熱、および急性呼吸器疾患の医療担当者達が非公
式医療セクターに対する注意を促さなければ、適切なアドバイスと処置が患者た
ちに全く届かない、と報告している。
発熱、ARI 疾患の児童 I
2,697 人
アドバイス/処置無し
31%
公的医療機関
12%
図説 1
個人医療機関
21%
非医療機関/その他
36%
発熱時、及び急性呼吸疾患(ARI)に対する処置 (ARI) 1 (CDHS 2000)
この統計によると、子供達にこれらの病気が確認された際の処置方法、及びその
探し方は典型的に以下のようになる
1
Percentage of children under 5 years who were ill with fever and percentage of children under five years
who were ill with a cough accompanied by short, rapid breathing (symptoms of ARI) in the two weeks
preceding the survey, taken to a health facility or provider, CDHS 2000.
2
1. 母親達はまず、彼女の家の中にある条件の中で処置を試みる。熱があれば
頭を冷やし、寒がれば毛布をかけ、個々の経験を参照に家にある残りの薬
を探す。もしくは家で出来る民間療法(Section3-2 参照)を試みる。それで
良くならない場合、彼女は周囲の人々に相談するだろう。(van der Put
1992:17).
2. もし子供の症状が良くならなければ、彼女は“Kru Khmer”や“産婆”等
を尋ね、もしくは村の薬局で薬を買い求める。最もよく使用されるのは
“村の薬”か、“Kru Khmer”である。“産婆”の場所は子供がまだ乳児
の場合等に尋ねる。もし、“Kru Khmer”でも解決が出来ない病気、いわ
ゆる精神的な病や蛇に噛まれた場合等は、村の“特別な先生”や村の外に
ある民間/個人のインフォーマル医療提供者を尋ねる。(van der Put 1992:18)
3. もし子供が数日経過しても回復せず、家に利用できる資金がある場合、彼
女は村の外にある個人経営の病院(しばしば保健省のスタッフ)や最寄の町
の公的/民間の病院を訪ねる。
4. もし手持ちの資金が底を尽きた場合、病院開業者等は家で子供を見るよう
に勧める。彼女はまた“Kru Khmer”、村の薬局、もしくは隣人からもら
った余分な薬に頼る事になる。
5. もし、家族に利用可能な資金があり、かつ子供がまだ回復しきれない場合、
彼らは公的な医療機関を訪ねるか、他の治療方法を探すだろう。
このシナリオによると、“家でのケア”が最初の医療行為であり、次の選択には
手持ちの資金を含めた幾つかの要素が絡んでくる。その要素とはまず“医療の品
質”、“医療の知識”、そして“コミュニティ内で用意にアクセスできる”事で
る。
1.2
図説
病状の変化と対応
このレポートは病気を患った子供の母親達が無事その処置を行えるように、
USAID/BASICS の元“生存に関する図説”のフレームワークを用いて作られた。
これはまた、カンボジアでの経験を参照に彼女達が実行可能な予防を話し合って
作られている。
3
母乳で育成、 適切な栄養と習慣
&保護者の適切な予防
良質な
ケア
病病気の兆候
家の中
ササイン
症状の
自宅にて
悪化
健康
死亡
良質なケア
疾患
の失敗
良質なケア
の続行
健康状況の
改善、生存
自宅の外で
処置方法を探す
村落内
薬局/薬
予防行為
Kru Khmer
飲料水と衛生行為
症状の悪化
死亡
症状の悪化
死亡
&
西洋の個人経営の病院
その他のコミュニティ
内での予防行為
症状の悪化
死亡
西洋の公衆病院
村落外
適切な処置
医者より治療法を紹介
症状の悪化
死亡
症状の悪化
死亡
1
母親が治療法
を受入れない
母親が治療法
を受入れる
簡易な治療
方法
適切な処置
上の三つの図中で一番上の空間は子供が普段生活している家を指す。健康管理
者は医療提供者の中でも最も重要とされ子供達の意思決定者でもある母親である。
真中の部分の医療提供者は、子供の住む地域で文化的に最も受入れやすい医療
を提供してくれる者です。一番下の部分は村の外に解決策を探した時に見つかる
選択支である。
次のセクションではカンボジア国内で病気を患ったときに自宅内、村の中、も
しくは村の外で取る事のできる医療行為を紹介する。
家で取る事の出来る医療処置、及び医療行為
2
2.1
母親の医療処置に関する知識と能力
“家”とは最初に疾患に気付く場所であり、防ぐ場所である。また、衛生処置
が始まる場所であり終了する場所でもある。つまり、どの治療者が最も適切な治
療を行ってくれるか、という母親達の概念と同様に、母親達が我が子の病気を理
解する事ができるか、に大きく関係してくる。 (van der Put 1992; CARERE 1997).
自宅にて適切な治療を試みる場合、母親達はその地域で知られている代表的な
病気とその対処法に関する知識を備えている事が求められる。子供が熱や下痢、
その他の代表的な病気、危険な兆候(即座に医学的介入を必要とする疾患)と処
置を知らなくてはならない。そして事前に外部の医療サービスの値段、質、処置
の種類等の十分な情報を持って、素早い決定をしなくてはならない。
1998年8月から1999年9月にかけて子供の死亡率と医療行為とを関連
付ける実験が行われた。この実験は4つの県、40の村にて聞き取り形式で行わ
れた。幼児の疾患時に施す処置やその治療者、また疾患が原因で死亡した8ヶ月
から5歳までの幼児119人について聞き取られた。
調査結果より見受けられる、幾つか重要な要素を以下に要約する。
9 全体(773 人)で40%は保護者が治療者であり、自宅内で介護である。主な処
置は「近代薬品の投与」45%、「伝統的な民間療法」36%、「伝統的薬品の
投与」19%であった。
9 手始めに自宅内で治療が行われた場合、35%は”無害”、37%は”適切”、しか
し 6%は”有害”と判断された。(下痢の幼児に対し誤った薬を服用、下痢の幼
児の食事や水分を制限、熱のある幼児の病気の誤認 等)
9 5つの在宅療法が慢性的な病気で苦しむ子供に施された場合、その内の 1 つ
は事故によって傷を負った子供にも与えられた(慢性的な疾患の期間は 10 ヶ
月であった)
9 44%の保護者は危険な兆候に気付き医療提供者のもとに運んだとされるが、
残りは行動を取らなかった。治療方法を探す時、40%の保護者らは“Kru
2
Khmer”か“村の薬屋”の所に行った。痙攣も kru Khmer が治療できると広
く信じられている為、痙攣の子供が Kru Khmer の所に運ばれる。更に、呼吸
が速くなる、呼吸困難などの危険な症状と判断される場合でも 38 件中 21 件
は周りに相談をしなかった。
9 公的医療機関を利用する頻度は低く、子供の症状が困難な状況になってから
利用される。医療提供者の中では Kru Khmer が最初に選択され、また最も多
くの人が尋ねる。次に、”村の薬局”、”個人病院”、最後に稀に”公共医療機
関”を尋ねる。
9 しばしば母親達は下痢が子供の生命を脅かす病気である事を認識していない。
また、家で取られた処置が適切であったとしても、医療提供者が誤った処置
を指示する場合がある。例えば、3 歳の下痢を患った幼児に、村の薬局や個
人病院は有害か、または意味の無い薬を提供する。稀に ORS を処方する場合
もある。.
幾つかの NGO や国際機関は、子供の保健に関する適切な処置や適切な医療機関
の選び方を指導している。
9 開発パートナー(Partners for Development PFD)は Chhlong OD 地区、Kratie 県で
行われた保護者らの知識と行動に関する指導の報告をしている。対象となっ
た村で自主的に組織された Village Health Volunteers (VHV)らが、母親の家に
訪問し下痢に関する指導を行った。下痢の幼児に補水が行われる割合が 34%
から 78%に、ORT(経口補塩水療法)を行われる割合が 15%から 41%、そして
下痢性疾患の兆候に気が付くようになった母親が 10%から 81%に上昇した。
(PFD 2003).
9 Kean Svay OD で World Vision project によって行われたプロジェクトは VHVs
らによって、母親達に0~23ヶ月の乳児達が肺炎にかかった際にあらわれ
る危険な兆候を指導し公的医療機関に連れて行くように促した。(World
Vision 2003).
多くの IEC/BCC の活動が進行中にも関わらず、有効性とインパクトを持ったデ
ータはカンボジアにわずかしか存在しない(JAHSR 2001)。NGO 等も活動に取り
組んでいるが、IMC と BCC はコミュニティレベルでの調和が必要としている。
更に、BBCWorld Service Trust では 2 年間マスメディアによるキャンペーンを
実施し、TV,ラジオ、ラジオのトークショー、メロドラマ等を通した啓蒙が行わ
れている。主に母乳養育の重要性、HIV の防止と知識、ORS と関連する一般的
な健康概念、生計、ジェンダー、生活技術、等の内容である。これらのプロジェ
クトは HIV/AIDS や保健省に関する知識と関心を測定する事で、効果が評価され
た。
3
2.2
家族構成員、隣人、及び友人の影響
家族構成員の持つ知識や経験は、保護者の意思決定に大きな影響を及ぼす。
(PATH 1999:16).母親達は適切な助言を得る為に、他の親類や友人に尋ねる。特
に老婆等のアドバイスは重要視されている。一般的に外に治療法を探しに行く場
合等は老婆達の助言が最も大きな意思決定の要素となる。事態が深刻であればあ
る程その傾向は強い。
“私の子どもは普通に生まれてきました、そして彼はどこも悪くな
いのに泣き出しました。私は髪を切る為の黒いハサミでヘソの尾を
切りました。彼は初めて母乳を飲んだのが 3 日目でした。4 日目に彼
は泣き出しました。私は夫に彼が何故泣きつづけるのか尋ねまし
た。母乳を与えようとしても飲もうとしません。私はどうしてよい
のかわかないでいると、夫は”kru Khmer ならどうしたら良いか知っ
ている”と言いました。私の叔父である Kru Khmer がやって来て私の
子を祝福しました。(PATH 2000:14)
2.3
家族/世帯の有する資金
彼らの家計から、最も大きな負担がカンボジア人の健康維持システムを支える
為に使われている。生活費維持費以外の出費の 75%~80%は医療費で出費される。
貧困層にとって、医療にかかる費用は非情に大きく家計支出全体の 28%を占
める(Cambodia Poverty Reduction Strategy Paper 2002)。医療費は交通費も含めると
都市部 20$に対し農村部では 26$と割高になっている(DHS 2000:38)。
地方においても暮らしの良い家庭は重大な病気が発生した際にそれらを支える
十分な資金を有する。彼らは必要な時には個人運営の病院、保健所、または公共
医療機関へ移動するだけの交通手段を確保できる。貧困層はそれらの手段を持っ
ておらず、まず最初に最も安価な治療方法を試みるだろう。交通費を節約する為
に彼らはまず村の中で治療方法を探すだろう。村に存在する治療者は、村の薬屋、
Kru Khmer(村の伝統的先生)、Yeey Moab か Chmoab Boraan (村の伝統的産婆)、も
し村落内に Pagoda(寺)がある場合は僧侶に頼むだろう。彼らは母親にとって村で
信じられている治療法を用いる。それらは受け入れやすく、安価で、母親達が交
通費を出費せずに村の中で行う事ができる。彼らに対する支払は現物か分割支払
で良く、多くのカンボジアの貧困層にとってこれが唯一の選択支となっている。
2.3.1 治療にかかる費用
治療の利用可能性に影響を与える主な要素は、保健所までのアクセス利用しや
すさ(価格)である。カンボジアの多くの家族にとって深刻な病気はとても高額な
負担となる。1家庭にかかる年間の医療費は 110$、1 人あたりに 15$から 20$で
あると推定されている (Fabricant 2003:16).1998 年に行われた調査では 5 段階に分
けられた階層の中で最も貧困層と最も裕福な層が医療費全体の 28%を支払って
おり、中間層はそれよりも低い数値であった(Fabricant 2003:11).
4
Table 1 では疾患や怪我にかかる交通費や医療費を表したものである。公共医療
機関が個人経営病院や非医療機関よりも高価となっている。CDHSがヘルスセン
タ-や高価な病院のケアも区別せずに統計を出している為でもある。
Table 1 セクター別治療にかかる費用
単位:$US(CDHS 2000)
セクターの種類
交通費
医療費
合計
公共医療機関
1.7
27.2
28.6
個人運営機関
0.8
20.6
21.2
Non-medical
0.1
3.5
3.6
Other 2
12.4
26.7
37.9
医療へアクセスの為にかかる費用は公式な医療費のみではなく、交通費や薬代、
付き添い人の食費と勤労機会の喪失等の非公式な費用も含まれる(Bautista 2003)
大多数の人口が農村に住み病院のサービスは受け難い状況の中で、ヘルスセン
ターの診察費は 100 リエルから 2000 リエルとほとんどの人にとって利用可能で
ある。(Section 4.1参照.)
シェムリアップで行われた調査では(CARERE 1997)では 800 人の母親達から
1742 事例の幼児の病気体験を聞き、どの医療機関に 1 ヶ月に医療費をいくら支
出したの統計を取った。以下のTable 2 を参照頂きたい
Table 2 セクター別
一ヶ月にかかる治療費や薬品代に支払われた額
保健所
平均
平均
(単位リエル)
(単位ドル)
N
1,614
0.54
150
12,666
4.22
442
公的医療機関
42,314
14.11
140
個人病院
41,720
13.91
483
7,298
2.43
482
10,367
3.46
45
Kru Khmer
市場(薬屋等)
その他
※
※
1997 年 1$=約 3000 リエル
※2Kru Khmerとは医学的知識に基づかず、村の伝統的療法を行う先生。
※“その他”に分類されるのはタイやベトナムなどの外国に移送された者、もしくは特別医療訓練を受け
ている者の医療を受けた者である。
5
この表が示すように、かなりの
高額の治療費が病院や個人運営の
診察所に支払われている。それと
同時に”Informal”と”Formal Private
sector”の人気ぶりを見ていただき
たい。公的医療機関を利用した者
はわずか 17%にすぎず、大多数の
者が市場(薬屋)や個人運営の病院、
そして Kru Khmer を利用している。
“私は貧しい
12 人家族の家に住んでいます。私
の母は数年前病気になりました。私の家には米
畑以外、家畜も何もありませんでした。私達は
母の命を救う為にそれらを売らなければなりま
せんでした。その後、私達は土地も無くなり小
作労働者になり、木を切って売る為に Bantey
Meanchey 州 に 行 く 事 に な り ま し た 。 (NPRS
2002:16)
貧困層にとって、重大な病気はしばしば災害を招く。医療費は”貧困化”の主要
な原因になっている。Oxfam の調査によると土地無し農民の 86.9%は困難な状況
により土地を失っている。その内の 44.6%のグループは疾患が原因であったとい
う。(Cambodian Development Review, 2000:2).
多くの貧しい家族が保健サービスへのアクセスの為に資産を売っている。また、
医療費を借りる為に借金をしている。その後法外な利率によって数年間、借金が
残る事になる。収穫期の後ならば、彼らは医療費をまかなう現金と米を持ち合わ
せている、しかし多くの場合、第一収穫期よりも前に医療費を支払う為に借金を
している(RACHA 1999:15).
貧困層の中では米や何か他の物品で物々交換する傾向があり、これらが村の治
療者にも受け入れられる支払方法でもある。もしその家庭に現金も支払としでき
る物品も無い場合、医療者は末期払いや分割払いを考慮する。個人経病院等はそ
のような柔軟な支払を考慮でき、それが多くの人々の選択に影響を与えている。
(Collins 2000:3).
2.3.2 地理的なアクセスと経費
2001 年に行われた保健省の報告によると人口の 55%が保健所への地理的アク
セスを持つという。保健省医療普及計画は“利用可能な保健所”は 10km 以内に、
徒歩で 2 時間以内にある事を指し、10000 人をカバーできると定義している。
(MOH 1997).
もし母親が公的医療機関に治療を求める場合、彼女が保健所の位置する村でな
い限り彼女は保健所のある所まで子供を連れて行かなくてはならない。平均して
保健所は14の村の集水区域に位置する。つまり他の13の村に住まう住民は保
健所に行く為には交通費を出費しなくてはならない。
交通費は地方によって変化するが、いくつかのケースでは非情に高額であった。
Kratei OD では保健所までの交通費はバイクタクシーで1キロにつき 300 リエ
ルから牛車で 50 キロメートル 50,000 リエルまで変動する(PFD 2002)。幾つかの
集落は非情に孤立しており、特に雨季の移動は非情に難しく、また高額となる。
6
保健所があまり高額でないにもかかわらず、母親達が保健所に連れて行きたが
らないのは、おそらく交通費の出費の為だと思われる。MSF がパイロットとし
て行った医療機関の資本分散化、交通費返還の施策は孤立した村の人々が最初の
治療法として保健所を選択できるように促したものである。(MSF 2003:39).
保健所までのアクセスの費用は勿論高額である事に違いは無いが、実際医療費
そのものの高額さに比べるとさして問題ではない。紹介料は病院によって変化す
る。それら(Informal)の施設は保健省の認証された資金管理の計画(価格表等)を持
っていない。料金は通常、患者の経済状況や支払希望額によって変化する。(See
also Section 4.1)
3 共同体/村落内で行われる治療行為
自宅外に治療法を探すとすると、母親達は村の薬屋や Kru Khmer、,eey Moab
か Chmoab Boraan (伝統的な産婆)等、.村か共同体の中で治療者を探す事になる。
そのような“infromal な治療者の技術”は大抵父から息子、母から娘へ伝わる。
Kru KhmerとChmoab Boraanは、しばしば識字できない事がある。しかし彼ら
は村から尊敬されている。伝統的な治療者達は、しばしば母親達が注射や西洋の
薬等を処方する前に霊を静める事を勧める。下の図説 2では多くの人が個人経営
の医療を希望している事がわかる。特にKru Khmerは死につながる子供の病気を
Kru Khmerに相談した保護者は多く見られた(RACHA 2002)。
図説 2 自宅外にて見つける治療法
Care Seeking Actions Ou tside the Home
(108 人)
n=108
自宅外にて見つける治療法
6%
11%
■Kru
Khmer
Kru
Khm er
33%
■村の薬屋
Drug sellers
■個人運営の病院
Private Clinics
23%
■病院
Hospitals
■保健所
27%
3.1
Health Centers
信じられ実践されている伝統
カンボジアには起源に持つ身体に関する伝統や風習が広範囲に渡って信じられ、
そして実践されている。それらはインドや中国、イスラムに由来するものやカン
ボジア独自の文化の場合もある(Sovicheal 2002)。
7
Kompong Chhnang で行われた衛生行為に関する人類学の研究では、精神世界
と生前の霊が母親と子供に害を与える力があるという事が、家族や血族の中で信
じられている事が判った(Collins 2000)。
次の事例では幼児にとって致命的な病気等の場合、精神世界が母親と子供達の
前世の罪を探し、赤ん坊を精神世界に連れもどそうと作用すると信じられている
Collins 2000:48)。
私の子どもが 18 ヶ月の時に、高熱と咳を患いました。その小は弱り
青ざめ、痩せていきました。私はベトナムの注射を与えましたが、
少しも良くなりません。この注射に 8000 リエル(米2ドル)かかりま
した。私は Kru Khmer がこの子は Arrih の病気にかかっていると言っ
た事を思い出しました。Kru Khmer はその子の上に冷水を撒き、私は
指示どおりに衣服と母の御香を供えました。しかし、あの子は死ん
でしまいました。私は Kru Khmer に御香とロウソクを備えました
(Ibid:49)
RACHA の調査では(2002:14)39%の保護者が子供達の病気は超自然の力、もし
くは先祖の霊に起因していると信じている。54 人の女性うち 10 人は、子供の死
は先祖に何か功罪があったからだ、と認識している。(Ibid).
この超自然現象と魔法を信じる者と西洋医学に影響を受け医療実践を行う者と
がカンボジアでどのように統合されるか。多くのカンボジア人は注入され体全体
を巡る薬が魔法のような力を発揮するという観念を持っており、注射や注入物に
よる治療を好む。
彼らはこれらの処置が良く効果もあると考えており、逆に医療提供者の所に連
れて行く事はしたがらない。
3.2
Kru Khmer による伝統的治療
伝統的な治療を行う者は、村人達、特に貧しい家庭にとって重要な医療資源で
ある。彼ら治療は様々な病気に対し慰めを与えるからだ。病気の重要度や Kru
Khmer との関係に応じて、母親達は子供を Kru Khmer の家を連れて行くか、もし
くは家庭での診療を依頼する。.
彼女が持つ Kru Khmer との関係によって、彼女がそれらを選択するかどうかは
大きく変わってくる。幾つかの Kru Khmer は精神または心理学的な健康のケアを
持って為、生涯その家族たちと関係を持っている。彼らは村人から良く信頼され、
尊敬されている。
カンボジアの人々は病気の治療法として Kru Khmer から精神学的、心理学的観
点からの治療と特別な物理的滋養物を受けている。彼らは時に Kru Khmer に対し
西洋の薬を入れたいのでその前に霊を沈めてほしいと頼む事もある。
治療方法として、灯油で熱された栓を背中に付ける。また熱された瓶を患部の
上に置き悪い”気”を吸い取る。(いずれも多少の痛みと小さく丸い円形の火傷が
8
残る)痛みを伴うが”吸角法”とはなっていない。そして薬草による処置などを行
われる。Kru Khemr によって使用される薬草は研究されているものではない、そ
こで保健省の中に伝統的薬品の性能をテストする為のセンタ-がある。
RHCHA の研究では、保護者らは重大な病気の兆候である痙攣などが子供に見
られる場合でも他の機関ではなく Kru Khemr のもとへ運ぶ可能性がある。Kru
Khmer こそ唯一痙攣といった症状を治す事のできる治療者だと信じられている為
である (RACHA 2000:20).
ただし、例外的にデング熱の場合、人々はKru Khmerやその他の民間機関では
なく公共医療機関を訪れる傾向がある。下のTable 3はCAREREにより 819 人の母
親を対象に行われた調査結果である。データではデング熱のケースに限り、最初
に治療を試みる機関は保健所であるとしている。骨折の場合はKru Khmer、その
他下痢(出血性を含む)や熱などは、大抵民間機関や市場(薬屋)に治療方法を探し
に行くようである。
Table 3 子供の疾患時に初めに利用する医療機関(CARERE 1997):
保健所/病院
Kru
Khmer
個人病院
市場
その他
NA
(薬屋)
下痢
183
239
245
399
112
4
微熱
41
89
63
495
144
11
高熱
217
146
326
204
92
8
デング熱
313
39
174
12
92
120
骨
65
713
17
16
21
10
出血性下痢
181
169
272
107
37
37
破傷風
71
60
176
168
21
0
頭痛
50
44
43
476
175
27
1499
1316
1877
694
217
TOTAL 1121
3.3
伝統的産婆(The Traditional Birth Attendant)と Yeey Moab
プノンペンでは出産の際に 89%の割合で訓練を受けた専門家の補助を受ける。
それに対し、地方においては 70%の人々が TBA(伝統的産婆 The Traditional Birth
Attendant)の補助を受ける。(CDHS 2000).
FACHA の調査では彼らは周期的に医療機関を変えていく事が判った。妊娠期
間には公共医療機関を利用し、新生児出生の際は TBA 及び助産婦を利用し、生
きて産まれた子の為に Kru Khmer を訪問している。幼児出生に際して発生する問
題は母親達は自宅外にその補助を求め、TBA が最も頻繁に使われている医療機
関であった。(RACHA 2000:40)
9
3.4
村の薬屋
村の商店は米をはじめあらゆる商品、砂糖や塩、スパイス、石けん、及び洗剤、
スナックやクッキ-等を取り扱っている。それに加え、彼らは様々な薬品を売っ
ている。もし村の商店で薬品を取り扱っていないとしても、しばしば村の他の誰
かが各自の家にて薬品を販売している。
大部分の調査では村の薬屋が最の人気のある機関である事を示している
(RACHA 2000: CARERE 1997, NPHRI 1996)。多くの薬品がカンボジアで流通して
いる為、どんな地方の奥地であっても薬品は販売されている。薬の種類は村によ
って、また見せによって異なり、それらは口頭で利用可能かを説明される。これ
らの店長は薬品に関する教育を受けていないが、顧客の要求に機敏に反応し薬品
を処方する。彼らは母親達が支払える額によって部分的な処方をする。
村の薬屋は普通の鎮痛剤(パラセタモール、アスピリン)、抗生物質(ペニシリン、
テトラサイクリン)、コステロイド(経口、時折注射によるもの)から出生間隔を空
ける薬品まで取り扱っている。PATH 調査の報告によると、テトラサイクリンを
下痢の子供に処方する事が特に地方で広範囲に広がっている。 (Primo-Carpenter
2004)それらは単なる偽者であったあり、ただ部分的に効果のある薬として薬局
に並んでいる。
多くの薬は冷暗で湿気の無い場所に保管する事が求められるが、村の薬屋は高
温で湿気があり、時折それらの薬は小さなビニールにいれて直射日光の下ぶら下
げられている時もある。店の主人は大抵薬を適切に保存する方法を知らないし、
そのような方法を用いないであろう。多くの薬は生産日時や有効期限などの表示
が無い状態で売られる。明らかに変色し効果の無くなった薬品でさえ、快く金銭
を支払う人には販売されるかもしれない。
他にもこれらの薬品の流通ルート都市部に広がっている。薬品の品質と利用可
能性に関しては Section4.2 で詳しく論じられる。
4 村落外で行われる治療行為
DHS の調査では、母親達が医療サービスを必要とする際に直面する問題を応
えてもらった。
9 88%の人が治療の為の十分な資金を持っていない
9 40%の人が何処に、どのくらいの距離に行けばいいのか判らず、輸送す
る程の問題として捉えていない。
9 45%の女性は単独で医療施設に行く事を好まない
9 教育を受けていない女性は治療の為にどこに行けば良いか判らず、また
その資金も確保できない状態である。(DHS 2000:131)
10
母親達の中で最初の治療方法として村の外の機関を選択する者は、暮し向きが
良いか、何らかの運送手段を持つか、初等教育を受けた者か、自宅周辺に流行し
ている幼児にとって危険な病気の兆候を知っている者である。
もし村の外の機関で治療をするという選択を迫られた場合、そこまでの交通費
及び治療費は次で説明する。
4.1
公衆衛生機関で見られる処置
公衆衛生機関はシステムの改善が行われるものの、その利用率は依然に低いま
まである。39 件の相談につき、わずか 1 件にすぎない(HIS 2003)。低い給料と貧
しい家計が衛生機関を利用するのを妨げている。遠隔地の病院ではスタッフが不
足し、多くの保健所でも助産婦及びその他のスタッフが欠如し、それらが保健省
による包括的な医療サービスの障壁となっている。
時間、距離、交通費を含め、保健所の利用率が低い理由として、乏しい医療サ
ービス、専門知識の欠如、医療提供者の態度、他の民間部門との競争が挙げられ
る(JAHSR, 2004)。
カンボジア人が村の外に治療法を探す時、保健所は最も人気の無い機関である。
多くのカンボジア人の報告によると、保健所は時折スタッフが不在であり、保
健所が公表している医療費以外は不明な金額の要求があり(ただでさえ広範囲に
渡り不当な金額の請求が確認されている)、また保健所の人間はあまり好意的で
はない、という理由から彼らは保健所を信用していない。これらの機関で働く多
くの医者やアシスタントは低い給料のもとで働いている。(RACHA 1999:8).
4.1.1 保健所
保健所の予測では、治療と予防や母子健康を含めた Minimum Package Of
Activities(MPA)が容易に人々の手に医療サービスを提供できると予測していた。
しかし現在、保健普及計画に含まれる 823 の保健所(全体の 87%)の内で、MPA
を含めたサービスを提供できているのはわずか 23%にすぎない。
多数の報告では、保健所は一般年齢層に比べると 5 歳以下の幼児達の為には頻
繁に利用されているが、それでも他の機関に比べると著しく利用されていない。
次の Table は、RACHA により調査された保護者達が保健所を利用しない理由
をまとめたものである。
11
Table 4 保護者らが保健所を利用しない理由
質問に対する返答
人数
パーセント
お金が無い/(治療費が)高すぎる
63
18.4
保健所に連れて行くほど深刻な状況ではない
47
13.7
保健所は遠すぎる
38
11.1
交通手段が無い
26
7.6
公衆衛生機関の人は、治療法について理解がない
18
5.3
医療サービスの質が低い
17
5
家や子供達の面倒を見る人がいない
15
4.4
公衆衛生機関の事を知らない
11
3.2
公衆衛生機関は最初に選ばない
10
2.9
その他
97
28.4
合計
342
100
“治療費が高い”というのが主な理由としてあげられるが、しかしながら他のデ
ータが示すように保健所の治療費は他の機関に比べると著しく安い(RACHA
2000:26)。
出産前の衛生行為に関する調査によると、343 人の女性は薬物乱用の傾向があ
り、わずか 51%の母親達だけが、子供が病気の時保健所に相談をしていた
(Jacobs and Parco 2000:11)。保健所への距離が遠のき、彼女達の利用は減少した。
回答者の半数は、1つの保健所でサービスが受けられず、結果として彼らの居住
区から保健所への距離は遠のいた。
公衆衛生機関は”貧困”、”TB 患者”、”AIDS 患者”、”ハンセン病患者”、”手足を損
失した者”等に無償でサービスを提供するという施策を行った。しかしそれらの
基準は保健所ごとで容易に変化した。それは以下の理由からである。
•
患者の医療費の一部(理論的には 49%)は医療スタッフの給料になる習
慣であったので、医療費免除の施策に対する反感があった
•
医療費免除の方針がしばしば不透明であった
•
保健所は患者の支払能力や免除者の適性を評価する能力が無かった.
コミュニティの知識の品質
コミュニティの人々が持つ知識の品質は、その地域が必要とする医療需要や医
療サービスの利用によって大きく変化する。政府部門、保健所の医療サービスの
12
質は多くの貧しい人々によって形成されている(NGO や国際機関から受領するも
のを除いて)。
Pursat 区に住む人の退院した女性に医療サービスの特徴やサービスの品質につ
いて質問すると、以下の反応が見られた(RACHA 1999:10-11)
•
見事な治療だった
•
医療費が高価だ
•
1 回の訪問通院で終わった
•
注入や注射が良い
•
医療サービスが 24 時間受けられる
•
効果のある治療
以上から判る事は、即効性のある治療(例:全ての苦痛や痛みが消滅し、かつ安
感がある。緩和されているように感じ、よく眠る事ができる)等は、一般に”良い
品質”と関連している。
公共医療機関および個人運営の提供する治療サービスの効力、または提供者の
行動、品質は依然として低い事がわかる。これでもいくつかの MPA が機能して
いる保健所とコミュニティがうまく参加できているという、いくらかの証拠には
なるのだが(JAHSR 2001 Paper #4)。
その他の品質の問題
子供の健康の為の医療サービスの質や技術的な基準に関しては、ほとんどの調
査でわかっていない。2003 年、MPA の機能していない保健所における子供の医
療サービスのクオリティに関する調査が行なわれた(URC HFA)。その調査では、
子供を襲う代表的な病気、下痢、ARI(急性呼吸疾患)、デング熱に対しそれらの
兆候を察知し適切な処置を行う医療者がほとんどいない事が判った。
質問を受けた全ての保健所が予防プログラムを受けていたが、その効果も薄く
再検討、もしくはシステムのアップデートを必要としていた。栄養不良の子供達
を識別し、栄養摂取の指導を行う要領は各行政区の基準を持っていた。しかしそ
れらはほとんど限られたものでしか無かった。この調査で判った事は、医療者た
ちの提言は主に「保健所に連れて行くように」というものでしかなく、栄養摂取
や予防接種等に関する知識はほとんど無いという。
これらの質の問題は患者や保健所の利用者の権利に関わる。幾つかの NGO が
取り組んではいるものの、カンボジアには病気の患者や貧困層の人権を守る機構
は無い。この現状の中では、医療サービスについての情報を持ち得ない患者は医
療提提供者に対して実に弱い立場に立たされる(公共医療施設か個人運営かに関
わらず)。患者達は、医療事故が発生し親類が死亡した場合や個人運営の病院が
相当額の治療を行わない場合等においても、訴える事のできる場所を持っていな
い。
13
4.1.2 病院
多くの保健省の病院では、”小児科”は”空白科”となっている。病院に入院でき
る子供の割合は 1000 に付きわずか 28 人である。特筆すべきは、この数字が著名
な NGO にサポートされた小児科に入れられた子供を含めた数字である事である。
これらの病院の主な影響力は、政府の主管の元、近くで利用ができるという事で
あるはずなのに、である。
例えば、シェムリアップでは町に主要な2つの小児科(Angkor Hospital for
Children と Javarman Hospital)が安価、もしくは無料で高品質な医療を提供し始め
た事で、シェムリアップ内の小児科は完全に閉じた。2003 年には、小児患者の 4
分の1以上はシェムリアップ以外の県の子供が占めた。また 14%以上の OPD 患
者もシェムリアップ以外の県からやって来た。
病院に関する知識の品質
多くの政府に管轄を置く病院が提供する医療サービスは、未だ受入れ難い水準
である。その多くの理由は医療従事者の低い給与、貧しい予算、医療の質に関す
る不十分な規則等、(いたる所で報告されているような)構造的な問題を含めたも
のである。
政府の安い給与とその他人的資源に関する問題:
9 保健省の人員はしばしば従事していない事がある。それは政府の安い給与を
補う為、他の仕事に専念しているからである。例えば、個人営業病院やその
他のビジネスである。これらは、数時間の処置遅延に繋がる。
9 個人業に専念する保健省の人間はビジネスとして従事している。時折、医療
の品質を改善する事よりも、自分の病院のベッドを埋める事に興味関心を持
つ者もいる。
9 保健省のスタッフは個人運営の病院に患者や資源を個人運営の病院に移し、
備品を市場に売り物として流している事が知られている。
9 患者は病院の反対側に設置された薬局で薬を買う事を要求される。それらは
多くの場合、病院の人間か彼らの親類が所有している薬局である。同じよう
な事実として、多くの病院の研究者達は患者を選択し処置しながら”見本”を
送り、個人の実験室での結果を翌日に返す、等といった事が行われている。
9 民間病院や NGO/国際機関等は魅力的な給与と利益を持って、多くの人材を
集め続けている。人的資源やキャリア計画を政府に誘引できるものはほとん
ど無い。政府提携やどのポジションにどのくらいの給料を払うのかという事
は、誰が重要なポジションに付くのか決定する重要な要素である。
政府予算の支出に関して
14
9 運営している保健省の病院は、運営費を政府予算に頼る事ができない。第一
回目の四案は 3 月から 4 月ごろに届くが、遅れる事もある。毎年、年末にな
って大きな予算が舞い込んでくる為、後半は無駄な費用の支出が著しくなる。
9 保健省の予算が地方に着く割合はある一部である。典型的なのは保健省と
MOE は割り当てられた予算の内 75%ほどを費やし、MOI と MOD は割り当て
られた予算の 150%を支出する。2003 年は社会部門の予算支出の割合が最も
低くなった年であった。
9 重大な欠点は、必要な薬品や医療資材を調達する為の運営費(余分な薬品の購
入も含む)が特に第一4半期に届かない事である。
その他の品質の問題
9 多くの患者が効果的な治療よりも、注入や注射、もしくは多重な治療を好む
事が知られている。病院で提供されるサービスの”品質に対する理解”は、提
供される処置によって変わってしまう。公式なガイドラインに沿って治療を
行う病院は人気が無い。
9 未だ多くの病院が”公式な”支払基準を持っていない。治療費は公衆医療機関
も個人運営問わず、特に貧困層にとって限られたものにしてしまう(Wilkinson
2001 as cited in Bautista 2003)。同じ研究でも、治療の程度や品質が支払能力に
沿って変化する”奇妙な客”が示される。
9 スタッフの態度、患者への処置、特に貧しいという理由が、しばしば公共医
療施設へ行かない理由となる。
9 公共の病院ではその場で支払が求められる。治療費の支払い関する配慮が貴
きかない。緊急の場合、それが悲惨な結果をもたらす。
9 大部分の村人は農場で生活しており、収入の場を離れて時間を費やす余裕が
無い。長い病歴の記録や、物理的な試験も診断法も無い個人運営の病院は、
しばしば治療が即座に短い時間で行われる。それらの治療法は注射などの注
入が主で、それらの瓶が空になれば支払を済ませ、帰宅する。患者達はもし
公共医療施設に行けば2~3日は費やさねばならないだろうと気付く。NHS
の研究データ(1998)によると、貧困層の人が病気になった場合、暮し向きの
良い人間よりも個人運営の病院に相談する事を好む。特に入院する場合はな
おさらの事である。
4.1.3 経験を活かす
政府を代替して特定のパイロット地域に医療サービスを提供する NGO の事例
では、必要な資材と適切な管理は、住民の健康に対する意識や習慣、またこれら
の施設の利用率を変えられる事が示されている。成功を納めた区の事例を挙げる
と、子供の為の医療サービス利用率は 158%の増加を見せ、加えて治療費の為に
支出された金額は全体的に減少したという(Bhushan 2002)。
15
この”Constracting-out 適用除外”実験の期間中、医療サービスを高く保ち、スタ
ッフに相応しい給与が支払われ、時間どおりに必要十分な資金が届き、なお利用
可能な運営資金が保持され、期間中の資金計画が適切に運用され、スタッフはボ
ーナスを受け取る事ができ、これらがスタッフらの動機付けを深めた。貧困層に
とっても、非効率な医療費の支払と交通非が減った事が合わさって、利益となっ
た。
これらの事例が ARI(急性呼吸疾患)または ORT(経口補水療法)の使用等の領域
においてどの程度改善をもたらしたのかは定かではないが、医療費の支出を減少
させ、特にディストリクト(区)内の 50%以下経済グループの医療施設へ接触を増
やした事は判った。いくらかの改善は、他の地域でもまた見られるであろう事が
提言されている。
4.1.4 医療機関の自己資本
1996 年、医療金融憲章は公共医療施設の医療費に関する法律上の枠組み(貧困
層の医療費免除に関するシステムを含む-不幸にもこれらはうまく機能しなかっ
たのだが)が制定する。
医療資本(Health Equity Funds HEF)は主要な目的に貧困層の医療施設へのアク
セスを増加せしめ、その医療品質を高める事を掲げた。これらの施策は医療費の
免除、またはその他の費用(通常、貧困層を医療サービスから遠ざける交通費等)
を返還するものであった。
これら HEF の効力は、貧困層サイドが医療サービスにアクセスする際の障壁
を緩和し、病院の収入を増加させ、病院の医療サービスの改良の助けとなった
(Bautista 2003)。
HEF の成功によって、貧困層の病院利用率は増え、Pursat 病院や Sotnikum 病
院ではベッド占有率は増加した。(Por and Hardeman 2003;Bautista 2003). “分権的”
な保健所においての HEF は MSF によって指導された。特に女性や遠隔地の村に
住む人々の医療サービス利用率が全体的に 44%増加した事が報告されている(Por
and Hardeman 2003)。Svay Rieng で実施された HEF では、著しく厳しい栄養失調
の状況下に置かれる子供達に医療サービスが提供されていると報告されている
(他の地域での HEFs ではまだ報告されていない傾向である)。
4.2
民間セクターで見られる処置
今日急速に成長してきているのが民間の医療セクターだが、主として調整がな
されていない。次の表は、カンボジアに存在する多くの民間医療施設の数を測る
為に行われた調査の結果である。(PATH 2002:8).
Table 5 カンボジア内で活躍する民間医療セクターの数
種類
正規の薬局/倉庫
施設数
896
16
正規の診療所/キャビネット
500 3
正規でない薬局/倉庫
2591
正規でない診療所/キャビネット
1700 4
村の薬局
13,000
個人医療セクターがカンボジアに与える影響を明確に示す調査はまだ行われてい
ない。しかし、国際的な文献では次の要素から、これらが主な医療セクターであ
る事を示している(Tawfik 2002:8)。
1. 知識及び臨床技術
2. 消費者の期待
3. 利益率
4. 薬剤企業の進出
多くの無免許の医療開業者達は、全くと言って良いほど基礎的な医学の知識を
持っていない。彼らは顧客の要望に応じ治療を行い、効果な注射や薬物を供給す
る事で収入を得ている。製薬会社は彼らが医学知識を持っていない事もあり、容
易に影響する事ができる。
最近開かれた容器の薬を更に最近の製造日付と混ぜて、古い薬を(それらを豚
などに使用するであろう)顧客に販売する事が最大に利率のある事で、薬局のマ
ネージャーに奨励している。
4.2.1 公式な民間セクター
これらのグループは診察所、診療所、病院、薬局(営利を目的とした)、医療サ
ービスを並列的に提供する研究施設(超音波、放射線等の機器を扱う)を含む。
PATH(2002)の調査では、5 歳以下の子供に医療サービスを提供する 108 の医療
セクターの評価と、80 人の母親達にそれらのセクターの治療や医療サービスに
ついて質問をした。
その中で、重要と思われる要素が幾つか見られた。
9 多くの民間医療セクターは地方にて活動しており、その対象の 33%は子供で
ある(1 年に扱う患者 670000 人中 220000 人)。※
9 多くの ARI 患者の子供は政府の公共医療機関を紹介される。薬局は十分な薬
剤を所有していないという理由で(62%)、診療所は必要な薬品と資材を所有し
ていない理由で治療できないからである。※
※これらの測定値は 11 州にて保健省により統計された結果からくるものである。
17
9 大多数の下痢性疾患の子供は公共医療機関を紹介される。紹介しない薬局は
わずか 7%にすぎなかった。しかし、半数の診療所は子供達の両親が自分達
で処置できると判断し公共医療機関を紹介しなかった。
9 多くの民間医療セクターでは穏やかな ARI(急性呼吸疾患)を区別し処置する
事が難しい。また多くの民間医療セクターは主として抗生物質を使った(時に
は他の抗生物質と混合して)治療が行っていると報告されている。下痢に関し
ては 53%の民間医療セクターは下痢としての区別を行わず、55%が他の治療
法と同じように抗生物質をもって治療する。大部分の民間医療セクターは(一
般に診療所など)ORS(経口補水療法)を処置の一部として扱う。
9 研究チームは、下痢を患う未成熟な子供に対し、テトラサイクリン塩酸塩等
を用いた処置が広範囲に渡って(主に田舎の薬局から都市部の診療所まで)行
われている事が判った。※
保健省の人員による診療所
保健省にいて業務を行う時間はほんの数時間であり、そして他の時間は個人営
業の為に費やされる。時折彼らは適切な治療法を知っていても、それらに関する
知識を十分持たない患者を満足させるだけの治療を行う事がある。
幾つかの民間診療所は保健省の人員という名のもとで運営されているが、その
実質は外国人によって運営されている事もある。最も多いのが中国人、そしてベ
トナム人、フランス人、タイ人、他にも米国の医者を含めた医療機関の人間であ
る。彼らはカンボジアの医者という名称で運営し、幾人かの現地医療スタッフを
雇っている。幾らかの医療セクターは良い設備を整え、裕福な顧客層のニーズを
見事に満たしている。
これらの施設は子供達が利用可能であるかを考慮すると、その取り扱える要領
は少ない。保健省の病院部門はこれらの診療所や病院が行っている医療サービス
の情報を知る為に毎月フォームを送っているが、そのフォームを記載しているの
はわずか1つのフランス人経営の診療所のみである。
NGO により運営される子供の為の病院
NGO により運営される病院は多くの患者を引受け、またその任地範囲の外か
らの患者も引受けている。それらの病院は高品質な医療サービスを無償、もしく
は考慮された価格で提供し、その多くは交通費等を返還している。当然ながら、
それらの病院の利用率は非情に高い。
NGO の病院と保健省による協力レベルは病院ごとによって異なる。Kantha
Bopha 病院や Javarman 病院は保健省の議定書の規則に従う様子がない。The
Angkor Hospital for Children は可能な限り保健省との議定書を守っており、保健
省の人材開発部門、主にトレーニングの提供、保健省に近い保健施設とのインタ
ーンシップ、地方の訓練施設との協力等を行っている。
18
民間セクターと保健省とのパートナーシップに関する調査も Montague(1997)に
て行われた。
これらの調査では、民間セクターは一般的に政府の干渉や規則、登録等に関し
て非情に強い疑い深い事が示されている。
民間の診断サービス機関
しばしば保健省の人員が低い給与を補う為に診療所等の経営を行う事があるが、
大部分の診療所や病院は広い医療サービスの幅を持つ事が宣伝される外国人によ
って経営される。公の病院はしばしばそれらのサービスを提供しない、または提
供する事ができない事が知られている。
これらのサービスには超音波や放射線といった医療技術も含まれる。これらの
品質はチェックを受ける事は無く、また研究室での実験の効果はある程度までは
薬品の購入を促進する為に使われる。
民間医療部門に関する法律と規則
既存の法律によると、全ての医療に携わる者は公共か民間に関わらず、また実
習中の者であっても全て医学会に登録する必要がある。医学者としての資格を得
る者、または個人医療書の開業を望む者は全て、個人の医療管理や薬品の補助に
関するサービスの規則に従わなくてはならない。個人開業の医療施設は保健省の
病院部門に登録する必要がある。薬剤師は薬剤師協会に登録する必要がある。
多くの施設が地方の到るところで運営されている。プノンペンにおける診療所
の登録の状況は幾分か良い方だが、下の表が示すように多くの無許可の診療所が
存在する(Tawfik 2002:9)。
Table 6 プノンペン及びその他 10 県の登記、無登記診療所の件数
診療所及び臨床医
診察所及び相談医
登記
無登記
登記
無登記
プノンペン
20 (75 %)
8
188 (35 %)
343
その他 10 県
3 (3.5 %)
83
99 (13 %)
653
22.215
91
286.52
996
合計
シェムリアップ衛生局の人員の報告によると、シェムリアップにある外国人所
有の診療所 10 件の内、唯一1件のみが”登録中”だと言う。
19
4.2.2 非公式の民間セクター(村落外)
遺法の薬局
ただ単に薬剤や医療資材を販売する者は地方、都市、ディストリクト(区)を問
わず至るところで見受けられる。上記の Table 5 ではカンボジア国内に 2591 件の
遺法な薬局が確認されている。彼らは様々な種類の薬剤や資材を、処方に関する
知識も無く扱っている。
著者が学んだものの 1 つに、”Thnam Chhut”と呼ばれる人気な薬品がある。タ
イ語の借用で”一組の薬”と呼ばれる。売り手はそれらの薬をカラフルな薬と混ぜ
てビニール袋に入れ表示している。それらの薬の典型的な組合せは下記の通りで
ある。
- Vitamin C
- Antibiotic(抗生物質)
- Diazepam
- Corticosteroid
- Antihistamine(抗ヒスタミン剤)
- Paracetamol(頭痛、解熱剤)
近年の調査では薬の値段はパッケージにより1錠 150 リエルから 300 リエル、
数日間の使用により 1000 リエルになる。大部分は普通の風邪用の薬のパッケー
ジに下痢用、背筋痛用、関節痛用(コルチコステロイドを含む)または神経痛用の
薬品が混ざっている。
二つの調査が示すのは、彼らは全く、もしくは部分的にしか効果の無い薬を売
り物として市場で取り扱っている。薬の品質に関する調査ではカンボジア国内の
市場に出回る薬の 25 %は偽者である(Newton P, et al, 2001)。230 種類のサンプル
をテストしたところ、13%は故障した品質であり、10%は模造、2.6%は標準以下
の品質だった。(Primo-Carpenter 2004 p.26).
5 発見と改善の為の提言
これまでの調査で発見された事、および改善の為の提言を下記にまとめる。
発見された事
•
子供達が病気になった際のカンボジア人の行動は、近代医療による治療よ
りもまず、自分の住む共同体内に存在する民間療法や非公式な医療者を頼
る傾向がある。
•
非公式の医療セクター(特に Kru Khmer や村の薬屋等)は多くの人々から治
療の手段として選択されている。公共医療機関はしばしば最後に選択され
るか、病気が深刻な状況に陥った時に選ばれる。
20
•
緊急の治療を必要とする子供達の”危険な兆候”がしばしば母親達には識別
ができない、そして無益な(時には有害な)治療が施される事がある。伝統
的な治療法はそれ自体有害ではない(時折有害な治療もある)が、適切な治
療を素早く施さねばならない場合は、死に帰着する。
•
偽者の薬、期限切れ、低品質、または病気の処置に相応しくない薬を処方
する等、多くの危険な処置が地域レベルで見られる。これらの薬を子供に
使用するのは全く持って高価である。
•
多くの保健省の人員が経営する個人医療機関は適切な治療を行えていない。
研究が示したように、多くの患者達の医療サービスに関する要求は医療を
提供する者達によって大きく影響を受ける。更に彼らの利益を追求する行
動が、無謀な薬物の使用や有害な治療に帰結する。
•
多くの患者達が子供達の病気の際に保健省管轄の医療サービスを使用した
がらない理由は、”不当な金銭の要求”、”村から保健所が遠い”、”交通費
が高い”、”高い治療費”、”失礼で倫理の無いスタッフの行動”等であった。
これらから”低い医療サービスの品質”、”資格を欠く保健省の人材”という
事が気づかれる。
•
保健省における施設の改善は非情に重要である。特に母親の病気の予防に
関する知識が貧しい点、病気の治療を自宅かコミュニティ内にある非公式
な医療者を頼る傾向を改善する事ができれば、短期にて著しく子供の坊率
を減らす事ができるだろう。.
.
提言される事:
•
子供達の為の医療の改良と、保健省へのアクセスの配慮(特に貧しく最も
恵まれない世帯/コミュニティレベル)への介入に優先事項が置かれるべ
きである。 多くのパイロット事業は高品質な医療の提供が医療サービス
の利用率を急激に上昇させ得る事を論証している。これらは同時に多くの
家庭の残り少ない資金を医療費に費やす事を避け、また効果が無く危険な
治療から子供達を助ける事になる。
•
子供の為の生存プログラムは EPI、ORT(経口補水療法)、ARI(急性呼吸器
疾患)治療、出産間隔調整、母乳教育、栄養バランスの改善等を通して、
感染症や栄養失調、その他の高い死亡率を引き起こす事項から地方のコミ
ュニティ子供達の命を守る事に貢献できる。これらのプログラムは優先順
位に対する方針と集中的なモニタリングを必要としている。
21
•
近代医学や公衆衛生に容易に地方の人々がアクセスできるシステムを緊急
に作る必要がある。新しいプログラムの戦略は、村落の住民が容易にアク
セスする事ができ、それらの熟練された医療サービスが緊急な場合を迎え
た子供の命を救い得るものでなくてはならない。その実行性に関する調査
と可能性を立証する必要がある。
•
踏まえなくてはならない段階の 1 つが個人営業や薬剤販売に関する既存の
法律の実施である。不適当な薬の使用が実際に子供達を害し、時として殺
し得る事は明らかである。村の薬屋やその他の薬剤販売を禁止するか若し
くは他の方法で薬剤の品質を調整し、危険な薬を排除する等の配慮が必要
である。
•
正しい処置と医療を必要とする人々の権利の為に、多くの家族や保護者た
ちが危険な兆候を識別し、また資格を持つ正しい医療機関を利用する必要
性がある事を教える全国的なキャンペーンを行う必要がある。
•
貧しい区分に住む人々の医療アクセスの改善を図る為に治療費と交通費の
両方の保証を拡張し、また特に母子保健に関する包括的な医療サービスの
質を改良する必要がある。
•
伝統的な治療を行う者達に対してその限界を理解させ、特に幼年期の子供
の命を脅かす病気や公共医療機関に関する必要性を伝達する戦略が必要で
ある。これらの戦略は子供達の健康を促進し、効果的な治療の遅延から起
こる惨状を回避する方法を見出さなくてはならない。
•
非公式(例:村の薬屋等)の個人セクターの治療や実践に関する更なるデータ
が必要である。
その他の提言は”子供の健康の為に個人セクターの果たせる役割ワークショッ
プ(2002)”の参加者の提言と、それらを再検討したものである。
•
個人セクターらが持つ知識の違いを識別し、職場内訓練などのようにセク
ターごとに異なるタイプの介入を行う。個人セクターらも同様に病気に関
する知識が必要である。特に下痢や ARI(急性呼吸疾患)、デング熱などの
病気に焦点を合わせる。
•
(個人セクターへの)介入は熟達した実践や、規定に沿って調合されテスト
された薬を扱う事を奨励する事になる。それらは同時に良い医療を実施し
ているプロフェッショナルの提携を深め、促進する結果となる。
22
•
“最も有害な治療”や”基本の処置の規則”等の教育キャンペーンは学校教育
の中でも始めるべきである。普遍的に大衆の中に見られる幼年期の病気等
にフォーカスを合わせる。IEC の介入は自宅内での処置や症状を確認する
為に訓練を受けた医療提供者への相談する事等を含め、人々の慣習を変え
得る。
•
保健省とそのパートナーらは子供の医療に関するマーケティングアプロー
チの研究を深めるべきである。既存のアプローチは厳しく評価し、健康に
対する理解を促進できているのか、予防できる処置となっているのか確認
する必要がある。子供の医療サービス利用に関する社会マーケティングア
プローチの研究が長期に渡って行なわれるであろう。
•
民間/個人セクターに介入し成功を収めた他国の情報や証拠を集める。
様々な介入が低コストで高い効果のある医療サービスの普及を促進し、試
験的な自己規定のメカニズムを通してサービスの質を改良する。これらの
情報を学び再検討し、一体何がカンボジアの状況下で適用されるかを検討
する事は今後重要となってくるであろう。
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LIST OF CONTACTS
In addition to various URC technical staff who provided input during the course of
developing the report, the following were also interviewed:
Steve Croll, PATH
Ms. Lee Vannak, Technical Department in charge of private sector, PHD Siem Reap
Charles Hamilton, BBC Trust Fund
David Dunlop, Health Economist and URC consultant
Dr. Rasoka Thor, Project Officer Health, UNICEF
Dr. Navy Kieng National Officer Health Svay Rieng, UNICEF
Kerry Davies, Hospital Advisor Svay Rieng, UNICEF
Dr. Severin Xylander, WHO
Jan de Jong, WHO
Pamela Shepard, UNV/WHO
Koen Repriels, NGO Coordinator, MSF-Belgium
Eric Legrende Project Coordinator, Sothnicum MSF-Belgium
Dr. Khol Khemerary, Dept. of Planning and Health Information, MOH
David Shoemaker, Angkor Hospital for Children, Siem Reap
Various drug sellers in the market in Pursat and owners of village shops
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