ビジネスリーダーに重要な20の質問 - Strategy

ビジネスリーダーに
重要な20の質問
マネジメント
・アイデアの歴史は、
実務的ないくつかの質問への答えから紐解くことができる。
著者:アート・クライナー、ナンシー A. ニコルズ
監訳:岸本 義之
経営に関する意思決定とは、そう意識しているかどうかにかかわ
したり、行動を起こしたりして、正しい答えかどうかを試してみる。
らず、ごく具 体 的な質 問に対する普 遍 的な答えを見つけたいと
成功もあれば失敗もあるが、注意深い者はその結果から学んで
いう願いのもとに行われている。組織で成功を収める人は、実務
いる。つまりビジネスの歴史とは、起業家、幹部、リーダー、社員
的な問題の解決者であり、そうでなければ成功していない。組織
が、一つの実験的回答から別の回答へと、試行錯誤してきた歩み
には数えきれないほどの問題があるからだ。どのようにして成長
を示す物語なのである。そうした中で彼らは専門性と見識を身に
するか、仕事を成し遂げるか、顧客を見つけるか、どうすれば職場
付けつつ、売上と利益を高め、それと同時にマネジメント理論を
でありのままの姿でいられるか、などである。このような複雑な
進化させてきたと言える。
問題には簡単な答えはないため、起業したり、プロジェクトを開始
Q.1
成功するには
どうするか
知識を身につけ、
弱いふりをしながら力を増し、 「なぜ世界はこの企業を必要とするのか」
準備が整ったら、
ためらわず攻撃せよ
と問い続けよ
『孫子の兵法』紀元前500年ころ
孫武(古代中国の武将)
計画が失敗することを計画せよ
カール・フォン・クラウゼヴィッツ(プロイセンの将軍)
『戦争論』1832
競争力のあるポジショ
ンを確保せよ
マイケル・ポーター(ハーバード・ビジネススクール教授)
『競争の戦略』1980
優れた実行をせよ
現場でのオペレーションに、
トップリーダーの意識を
集中させて、高業績企業になる。
リーダーは、
企業の存立目的について
語り続けることによって、
よりよい戦略家になる。
シンシア・モンゴメリー
(ハーバード・ビジネススクール教授)
strategy+business(以下s+b)
インタビュー 2013
戦略と実行のギャ
ップを埋めよ
チェザレ・メイナルディ、
ポール・レインワンド
(Strategy&)
ウィリアム・アバナシー、ロバート・ヘイズ(経営学者)
Harvard Business Review 1980
(ハネウェルCEO)
、
ラリー・ボシディ
『経営は「実行」』2002
ラム・チャラン(経営学者)
4
S t r a t e g y & F o r e s i g h t Vo l . 6 2 0 16 W i n t e r
アート・クライナー
ナンシー A. ニコルズ
kleiner_art@
strategy-business.com
岸本 義之(きしもと・よしゆき)
本稿は、米国でStrategy&が企画・刊行し
yoshiyuki.kishimoto@
strategyand.jp.pwc.com
ている季刊雑誌『 strategy+business 』
された記事の抄訳である。
strategy+business 誌編集長。著書に
ハーバード・ビジネス・レビュー元シニア
Strategy& 東京オフィスのシニア・エグ
『 The Age of Heretics 』
( 2008 )が
エディター。グレート・アイデア・スタジオ
ゼクティブアドバイザー。20 年以上にわ
ある。
創設者。
の創刊 20 周年を記念して同誌に掲載
たり、金融機関を含む幅広いクライアン
トとともに、全社戦略、営業マーケティン
グ戦略、
グローバル戦略、組織改革など
のプロジェクトを行ってきた。
Q.2
不確実性に
どう備えるか
メガ・
トレンドに着目せよ
人口構造や社会の変化、
世界的な経済力の変移、
急速な都市化、気候変動と
資源不足、技術的な革新
などが、
ビジネスに影響を
与える。
『未来の衝撃』1970
アルビン・
トフラー、ハイジ・
トフラー(未来学者)
『メガトレンド』1982
ジョン・ネイスビッツ(未来学者)
ブラック
・スワンを予測せよ
とてもありえないような災難は予想も
回避もできないが、企業としての
対応能力を育てることはできる。
ナシーム・ニコラス・タレブ
(元金融トレーダー、学者)
『ブラック・スワン』2007
Q.3
より賢明な
意思決定には
何が役立つか
自分自身で確実性を作り上げよ
「未来を予想する最善の方法は、それを創りだすことである。」
アラン・ケイ(ゼロックス・パロアルト研究所のコンピューター科学者)
1971
注意の払い方に注意を払え
カール・ワイク(組織学者)
『センスメーキング・イン・オーガニゼーションズ』1995
複数のシナリオを想像せよ
現状への理解を高めるために複数の想定可能な未来を
検討し、あらかじめ定められた事象と重大な不確実性とを
区別することによって、よりよい意思決定に役立てる。
ピエール・ワック(シナリオ・プランニングの開発者)
s+b 2003
ベストプラクティス
ゲーム理論
1920 年代にハーバード・
自分の行動が他者の選択肢に
どれほど影響を与え、それが
自分にどう影響するかを
分析する。
ビジネススクールが
ケーススタディを導入して
以降、企業は同業他社から
体系的に学ぼうとしてきた。
SWOT分析
(強み、弱み、機会、脅威)
1960年代に開発され、
アビナッシュ・ディキシット、
バリー・ネイルバフ(経済学者)
『戦略的思考とは何か』1990
遅い思考
現代のシリコンバレーに
おいても利用されている。
「あなたがあることを考えているとき、人生においてそのこと
以上に重要なことは存在しない。」
よりよい意思決定
ダニエル・カーネマン(行動経済学者)
『ファスト&スロー』2011
(村井章子訳、
早川書房、
2014)
意思決定とは、必要な全ての情報を考慮した幅広いもので
なければならないが、同時に、前へ進めるように現実的なもので
なければならない。
『経営行動』1947
ハーバート・サイモン(経営学者)
Q.4
変化について
何がわかって
いるか
変化が最も有効なのは小集団である
クルト・レヴィン(心理学者)
エディス・シーショア、
チャールズ・シーショア(組織学者)
自社の文化を味方につけよ
正しい新たな方向性を
示す少数の重要な人物と、
その特質と行動を
明らかにせよ。
ジョン R. カッツェンバック他
s+b 2011, 2015
S t r a t e g y & F o r e s i g h t Vo l . 6 2 0 16 W i n t e r
5
Q.4
変化について
何がわかって
いるか
(続き)
「パラノイアだけが生き残る」
自分の成功を破壊せよ。
さもなければ他の者が
破壊する。
アンドリュー・グローヴ
(インテル元CEO)
『インテル戦略転換』1996
(佐々木かをり訳、七賢出版、
1997)
システムの変化は非線形におこる
システムダイナミクスにおける
正と負のフィードバックが
分かれば、大きな力になる。
自分の周りに渦巻いている
変化の波に乗ることが
できるだろうか。
ジェイ・フォレスター
(コンピューター科学者)
『インダストリアル・ダイナミクス』1961
企業の変革はキャンペーンのようなもの
緊急性を明示し、目標を設定し、変化を主導するチームを
組成し、人心をつかみ、新体制を展開せよ。
ジョン・コッター(ハーバード・ビジネススクール教授)
『企業変革力』1996
Q.5
最善な
仕事法とは何か
測定できるものは管理できると理解せよ
フレデリック・テイラー
(経営学者)
『科学的管理法』1911
歩き回るマネジメン
ト
デビッド・パッカード(ヒューレット・パッカード創業者)
『 HPウェイ』1995
エクセレンスをめざせ
優れた経営者は、人々の才能を最大限に活かし、
行動力を引きだし、単純な形にして、仕事への情熱を
生み出している。
トム・ピーターズ、ロバート・ウォーターマン(経営学者)
『エクセレント・カンパニー』1982
暗黙知を形式知化して活用せよ
(人々の心や会話の中に潜んでいる)暗黙知を、その活力を
失うことなく、形式知(ルーチンや文書やソフトウェア)へと
転換することが非常に重要である。
品質、
リーン、
カイゼンで
「いつまでも絶えず改善せよ」
大野 耐一
(トヨタ自動車工業 元副社長)
、
W. エドワーズ・デミング
(統計学者、
経営コンサルタント)
ジェームズ P. ウォマック、
ダニエル T. ジョーンズ
(経営学者)
『リーン・シンキング』2008他多数
実行、
実行、
また実行
「実行とは
成し遂げることである。
世界には理論や戦略を
気取って、行動に移されない
ものが非常に多い。」
ラリー・ボシディ
(ハネウェル元CEO)
s+b インタビュー 2002
野中 郁次郎(経営学者)
HBR 1991
Q.6
全てを
やり遂げるには
どうすべきか
全てはできない
それに慣れること
ヘンリー・ミンツバーグ
(経営学者)
HBR 1975
リストを作れ
自分の考えていることを全て把握したら、
それらを今すぐ実行するか、誰かに任せるか、もしくは
リストに残す。そのリストを管理して、正しいことを正しく
成し遂げられるようにする。
デビッド・アレン(コンサルタント)
『仕事を成し遂げる技術』2001
6
終わりを思い描くことから始めよ
先を見越して行動せよ。緊急案件より重要案件を優先せよ。
スティーブン・R・コヴィー(コンサルタント)
『 7つの習慣』1989
知り合いの数を減らせ
1870年ごろまでは、
中流階級では誰一人、
忙しいことに文句を言う者
はいなかった。その後、
電車や電報が多くの人を
結びつけるようになり、
皆が忙しいと言うようになった。
アダム・ゴプニク
(New Yorker誌のライター)
S t r a t e g y & F o r e s i g h t Vo l . 6 2 0 16 W i n t e r
Q.7
仕事を
管理するために
何のシステムを
使うべきか
会計
在庫、売上、そして必ず、税金の記録をつける。
古代文明期(バビロン、アッシリア、シュメール、エジプト)
紀元前7000–1000
複式簿記
借方と貸方、資産と負債が釣り合うようにする。
ルカ・パチョーリ
(14∼15世紀のイタリアの修道士、複式簿記を公式化したとされる)
活動基準原価と
バランスト
・スコアカード
会計とオペレーションを統合し、あらゆる活動に
測定基準を定め、見えないコストや
改善の機会を明らかにする。
投資利益率および
関連する指標
投下資本に対する
予想売上・利益を推定し、
実際の値との差を分析する。
ジョン・ラスコブ、
ドナルドソン・ブラウン
(ともに1920年代のデュポンとGMのCFO)
数字ではなく、
習慣化した気づき
データ中心的な管理なしに、社員が仕事の流れを直接気づく
ことのできるトヨタ生産方式を見習おう。
H. トーマス・ジョンソン
(経営学者)
『トヨタはなぜ強いのか』2000
ロバート・キャプラン(ハーバード・ビジネススクール教授)
デビッド P. ノートン(コンサルタント)
Q.8
理想的な
組織設計とは
クローバー状の連邦型組織
小さな中枢部と、複数の枝葉からなり、可能な限り最前線の
近くで意思決定を行う。
(経営学者)
チャールズ・ハンディ
『ビジネスマン価値逆転の時代』1989
目的に対する最適化
独自の戦略やケイパビリティや文化を持った企業は、
4つの公式な構成要素(組織構造、意思決定権、動機付け、
情報の流れ)
と、4つの非公式の構成要素(規範、
コミットメント、
考え方、ネットワーク)
を、
高業績を生み出すように、
自社流に組み合わせる
ことができる。
ゲイリー L. ニールソンと
組織DNAチーム(Strategy&)
s+b 2013
Q.9
どうやって
成長するか
ブルー・オーシャンへ漕ぎ出せ
強力な競争相手のいない未開の市場を探せ。
W. チャン・キム、
(経営学者)
レネ・モボルニュ
『ブルー・オーシャン戦略』2005
無償で提供せよ
限界費用が低ければ、対価を払わない顧客に
「フリーミアム」モデルを提供せよ。このモデルは、
基本サービスを無料で提供し、
プレミアムサービスは有料にするというものである。
3Dロボティック社長)
クリス・アンダーソン(元Wired編集長、
『フリー』2009
S t r a t e g y & F o r e s i g h t Vo l . 6 2 0 16 W i n t e r
リエンジニアリングを遂げた企業
ビジネスプロセスをとことん自動化できれば、
新たな組織作りが可能になる。
マイケル・ハマー(経営学者)、
ジェイムズ・チャンピー
デビッド P. ノートン(コンサルタント)
『リエンジニアリング革命』1993
世界全体にオープンなプラッ
トホーム
権限は、その時に最も有効に
利用できる者に与えられる。
組織は参加者同士の人的な
つながりによって決まってくる。
張 瑞敏(ハイアールCEO)
s+b インタビュー 2014
頭上のスペースを埋めよ
同じ顧客に提供する新たな製品やサービスを見出して、
現在の市場の中で拡大せよ。
ケン・ファバロ、
デイビッド・ミーア、
サムラット・シャルマ(Strategy&)
HBR 2012
自社のケイパビリティを使え
自社の強みが他社との違いをもたらすように、
市場の内部あるいは近辺での機会を求めよ。
ジェラルド・アドルフ、
キム・デビッド・グリーンウッド
(Strategy&)
s+b 2015
7
Q.10
グローバル展開
について何が
わかっているか
ピラミ
ッ
ドの底辺に
富が埋まっている
世界の最貧困層を
ワンランク上の生活に
引き上げることが、
巨大なビジネスチャンスになる。
C.K・プラハラード、
スチュアート・ハート(経営学者)
s+b 2002
世界はセミ
・グローバル化
している
世界はフラッ
ト化している
世界経済は相互につながっており、
地域差は重要ではなくなっていく。
トーマス・フリードマン(ジャーナリスト)
『フラット化する世界』2005
新興国市場は予想可能な進化をしている
市場ライフサイクルのどの段階にも、
理想的な製品とサービスのミックスがある。
アロンソ・マルティネス、
ロナルド・ハドック(Stratrgy&)
s+b 2007
ビジネス戦略にとって、地域差は
これまでと変わらず重要である。
パンカジ・ゲマワット
(ハーバード・ビジネススクール教授)
『コークの味は国ごとに違うべきか』
2009
Q.11
どうやって顧客を
ひきつけるか
顧客が本当に欲しがり必要としているものを、
自社の事業であるかどうか関係なく、
与えよ
「実際にはガソリンを買っているのではない。
(中略)…何を買っているのかというと、
自分の車を運転し続ける権利なのである。」
セオドア・レビット(経営学者)
HBR 1960
(DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部訳
『マーケティング近視眼』
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 2001)
顧客を洗練度で分けよ
人口動態データだけでなく、
価値観、美意識、機能性など、
数多くの基準で
顧客ターゲットを定めよ。
ダニエル・ヤンケロビッチ
(調査会社創業者)
s+b インタビュー 2005
分析力を用いて顧客への認識を深めよ
市場の洞察を得るために、自社固有の測定方法を用いよ。
トーマス・H・ダベンポート(経営学者)
『分析力を武器とする企業』2007
Q.12
イノベーションの
最善の方法とは
何か
盗み続けれれば、
さらによくなる
扉を開け
サミュエル・スレイターという英国の見習工が、
アークライト式紡績機の設計を丸暗記して
米国に不法入国し、
ロードアイランド州で自ら紡績機の複製を
作った。これが米国の織物産業の始まりであった。
社外の人と協力せよ。
サミュエル・スレイター(18世紀の実業家)
自社のビジネスを
破壊せよ
(非公式チーム)
を設置せよ
スカンクワーク
将来の自社顧客の
ニーズを重視し、
自社の現在の顧客ニーズに
とらわれるな。
イノベーターが制約なく仕事ができるよう、
安全で、資金もある非公式チームを作る。
このような環境のおかげで、
ロッキード・エアクラフトは
1943年に初めてのジェット戦闘機を生み出した。
クレイトン・クリステンセン
(ハーバード・
ビジネススクール教授)
『イノベーションのジレンマ』1997
ダッシュとスクラム
自由行動のできるチームが集まり、
集中的に取り組み、その後もフォローを行う。
ゾープ(フリーウェア)などのソフトウェア
8
ヘンリー・チェスブロウ(経営学者)s+b 2011
A. G. ラフリー(P&G元CEO)s+b 2008
ビル・フィッシャー、
ウンベルト・ラーゴ、
ファン・リュウ(経営学者)s+b 2015
イノベーションを戦略と整合させよ
研究開発費を単に
増やすのではなく、事業の
優先順位に合わせて支出せよ。
バリー・ヤルゼルスキ、
ヴォルカー・スターク、
ブラッド・ゲール(Strategy&)
s+b 2014
S t r a t e g y & F o r e s i g h t Vo l . 6 2 0 16 W i n t e r
Q.13
従業員に対して
何をすべきか
リスペクトし、
エンパワーせよ
従業員に注意を払え
権力を振りかざすのではなく、社員にパワーを求めよ――
会社の代わりに意思決定する自律性を社員に与えよ。
照明を暗くすると、労働者は一生懸命働く。
照明を明るくすると、労働者はさらに精を出して働く。
メアリー・パーカー・フォレット(社会思想家)
エルトン・メイヨー(心理学者)
とホーソン実験 1927–32
『組織行動の原理』1942
金銭だけではなく、
意味ある報酬を与えよ
金銭は衛生要因であり、十分に与えなければ
疾病の原因になる。仕事の満足度はそれ以上に重要である。
フレデリック・ハーズバーグ(心理学者)
HBR 1968
やる気を出させるのはニンジンかムチか
人がやる気を出すのは、恐怖か自分自身の
野心のどちらかである。ダグラス・マクレガーは
それをX理論、Y理論と呼んだ。
人々が望む
5つのものを与えよ
地位、確実性、自律性、関連性、
公平性を、認識可能なレベルで
高めれば、生産的な
神経反応を引き起こす。
デビッド・ロック(脳科学者)
s+b 2009
ダグラス・マクレガー(経営学者)
『企業の人間的側面』1960
Q.14
称賛に値すること
とは何か
自分が請求されるであろう
金額を相手に請求せよ
商業の黄金律:適正価格とは
生産原価を賄えるものであるが、
切実な必要に迫られている人の
弱みにつけこんではならない。
聖トマス・アクィナス(神学者)
『神学大全』1265–73
仕事を天職にせよ
仕事の世界とは、エネルギーを
費やすにたる気高いものである。
こうしたプロテスタント神学の考えが、
資本主義の基礎を築いたと考えられる。
マックス・ヴェーバー(社会学者)
永続するものを作り出せ
永続的なビジョンと価値観を持つ
企業が勝利する。
ジム・コリンズ、
ジェリー I. ポラス(経営学者)
『ビジョナリー・カンパニー』1994
テイクではなく、
ギブの人になれ
他者を助けよ―
たとえ自分にプラスに
ならなくても。
アダム・グラント(経営学者)
s+b 2013
『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』1904
Q.15
どうすれば
潜在能力を発揮
できるか
自己実現せよ
コンフリク
トの根底にある
生存、安全、安定、愛と所属、承認という、欲求の階層を上り、
そして最終的には達成と超越という欲求のもとに、
自分自身より大きな貢献を行う。
コンフリクトには
正面から向き合え。
エイブラハム・マズロー(心理学者)
“A Theory of Human Motivation ”1943
複雑性の理解、
志、
内省的な会話を
「学習するディシプリ
ン」を身につけよ
ピーター・センゲ(システム科学者)
『学習する組織』1990
(枝廣淳子・小田 理一郎・中小路佳代子訳、
英治出版、
2011)
力関係を理解せよ
チャールズ・シーショア、
エディス・シーショア(組織学者)
自分の進歩は
他者の視点からどう見えるか
変わりたいのなら、
他人の言うことに、真剣に耳を傾けよ。
マーシャル・ゴールドスミス
(エグゼクティブ・コーチ)
s+b 2004
S t r a t e g y & F o r e s i g h t Vo l . 6 2 0 16 W i n t e r
9
Q.16
職場でありのままの
姿でいるには
成功の障害を乗り越える
方法を探れ
女性は、
リーダーとしての
才能を最大に発揮し、
独自の方法でゲームをプレイし、
トップへ上る方法を自ら
見つけなければならない。
シェリル・サンドバーグ(フェイスブックCOO)
『 LEAN IN
(リーン・イン)』2013
序列主義は、
他者の無視、
酷使、
搾取であり、
これに立ち向かえ
人種差別と性差別の根底にあるのは、
他者を無視し、酷使し、搾取するという、
人間の身に染みついた性向である。
ロバート・フラー(物理学者)
s+b 2004
Q.17
なぜ企業が
存在するのか
政府が取らない、
あるいは
取れないリスクを取るため
変化を起こすべく、
自らのアイデンティティを
宣言せよ
カミングアウトすることは、
ビジネスによいことである。
ジョン・ブラウン(BP元CEO)
The Glass Closet 2007
製品やサービスの
購入者のため
「企業の目的の定義は
一つしかない。それは、
顧客を創造することである。」
ジョイント・ストック・カンパニー
ピーター・
ドラッカー(経営思想家)
『マネジメント』1973
(上田惇生訳、
ダイヤモンド社;
エッセンシャル版、
2001)
取引コス
トを減らすため
一つの企業の中にビジネス活動を入れれば、
外部との関係構築と管理に関する摩擦を
避けることができる。
ロナルド・コース(経済学者)
The Nature of the Firm 1937
Q.18
リーダーシップとは、 それは組織内の、
有形だが目に見えない力のことである
株主のため
「ビジネスの社会的責任とは
利益を増やすことである。」
ミルトン・フリードマン(経済学者)
New York Times Magazine
1970
それは倫理感によって生じた
影響力である
「太上は下これ有るを知るのみ(最も理想的な指導者とは、
部下がその存在くらいしか意識しない者のことである)。」
「組織の存続はリーダーシップの良否に依存し、その良否は
それの基礎にある道徳性の高さから生ずるのである。」
老子(古代中国の哲学者)
『老子道徳経』紀元前570頃
チェスター・バーナード(経営学者)
『経営者の役割』1938
(山本安次郎・田杉競・飯野春樹訳、
ダイヤモンド社、
1968)
「君主は、
慕われないまでも、
憎まれることを避けながら、
恐れられる存在に
ならなければならない」
ニッコロ・マキアヴェリ
(中世イタリアの政治思想家)
『君主論』1513
(河島英昭訳、岩波文庫、
1998)
10
バーバラ・ワウ、
ステイシー・クスロス
American Family 2010
新大陸航海のように、起業家による高リスクの
新たな冒険を認める会社定款が、
ルネッサンス時代の皇族から出された。
(17∼18世紀の英国)
はたして何なのか
特権格差を乗り越えよ
ほとんどのビジネスマンは、
バックグラウンドや
社会的地位の異なる人々の間にある格差に
今なお気づいていない。
マネージャーは
ものごとを正しく行い、
リーダーは正しいことを行う
ウォレン・ベニス(経営学者)
『リーダーになる』1989
S t r a t e g y & F o r e s i g h t Vo l . 6 2 0 16 W i n t e r
Q.19
優れたCEOとは
冒険心に富んだリーダー
「秩序と経済に常に厳正な注意」を払い、高いリスクを取る。
ジャン=バティスト・セイ(18-19世紀の経済学者)
A Treatise on Political Economy 1803
ダニエル・レン(経営学者)
『マネジメント思想の進化』1972
その役割に就くため
周到に選ばれた人物
CEO承継計画が優れているほど、
企業が成功を収める傾向が高い。
ケン・ファバロ、
パーオラ・カールソン、
ゲイリー L. ニールソン
(Strategy&)s+b 2015
Q.20
現実の世界は
どう動いているのか
市場の見えざる手が経済を動かしている
専門化と分業によって、全体として滞りなく動いている。
アダム・スミス(経済学者)
『国富論』1776
将来に適した人物
今日のCEOは、
倫理と持続可能性をそなえた「よい成長」を求めている。
デニス・ナリー(PwC会長)
s+b 2014
二人のうちの一人
偉大なトップチームは、
リンダ・レズニックと
スチュワート・レズニック
(米国の飲料会社の創業者)のように、
プロデューサーと
パフォーマーのペアから
成っている。
ジョン・スビオクラ、
ミッチ・コーエン(PwC)
The Self-Made Billionaire Effect
2015
イノベーションが
創造的破壊をひきおこす
資本主義は個人の選択に対する
政府の介入範囲を制限し、
かくして人々の生活に報酬とリスクを付加している。
産業革命は、
80年という
予想可能な長期の循環をしている
ヨーゼフ・シュムペーター(経済学者)
『資本主義・社会主義・民主主義』1942
これらの循環には3つの段階がある。
導入(投機的投資が先行する熱狂的な成長)、
危機、そして幅広く拡大する黄金時代である。
「資本収益率が産出と所得の
成長率を上回るとき、
資本主義は自動的に、
恣意的で
持続不可能な格差を生み出す」
カルロタ・ペレス(経済学者)
s+b インタビュー 2005
経済的な力は
人々による
(必ずしも
合理的とは限らない)
選択によって動く
ジョゼフ J. エリス(歴史学者)
s+b インタビュー 2007
(経済学者)
トマ・ピケティ
『 21世紀の資本』2013
(山形浩生、
守岡桜、
森本正史訳、
みすず書房、
2014)
自己利益の最大化を前提とした
伝統的な経済理論が
予想しない方法で、
個人は常に行動している。
ダニエル・カーネマン
(行動経済学者)
、
エイモス・
トベルスキー(心理学者)
s+b インタビュー 2003
S t r a t e g y & F o r e s i g h t Vo l . 6 2 0 16 W i n t e r
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「ビジネスリーダに重要な 20 の質問」ついて
『 strategy+business 』の創刊 20 周年を記念し、同編集部は、こ
の壮大なマネジメント思想の物語をたたえる企画を考えた。古代
から今日まで、マネジメント思想で優れた業績を上げた人物、もし
くはそのアイデアを一堂に集めたいと、紹介した次第である。
次々と増え続けるマネジメントのアイデアを名言集として一覧
にし、構成し直した。これはマネジメントのアイデアの系図のよう
なもので、その出典と影響を示し、どのように実践されているかに
ついても述べている。
私たちは、シンプルかつ壮大な構想をもって、
この名言集作りを
開始した。本誌の 20 周年記念に、歴史の中で極めて大きな影響力
を持つビジネスのアイデアを追跡しようと考えた。私たちの知る
中で最も洞察力に長けた数名のビジネス歴史学者や識者をワーク
ショップに招待した。彼らはマネジメントの歴史の中で重大な出来
事と考えられるもののリストを準備してきてくれた。
最終的には約 400 個ものアイデアを、大きなテーマ別に分け、
20 テーマにしぼった。s+b の 20 周 年に合わせて偶 然にも 20 の
質問になったのである。
* 訳注:書籍名は邦訳があるものは邦訳名、それ以外は原著名で、
発行年は全て原著発行年を記載した。原著の記述を直接的に引用
した書籍・論文は邦訳の詳細も記載した。
“20 Questions for Business Leaders”, by Art Kleiner and Nancy A.
Nichols, strategy+business, Issue 80 Autumn 2015
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S t r a t e g y & F o r e s i g h t Vo l . 6 2 0 16 W i n t e r