皮膚の厚みに対する抗アレルギー薬, 抗ヒスタミン薬の

皮膚の厚みに対する抗アレルギー薬,
抗ヒスタミン薬の使い方
岩田
力 1)
はじめに
1
. 痔みとアトピー性皮膚炎
小児科の診療範囲は広く,皮膚科医が専門と
する皮膚疾患も, とくに乳幼児においては小児
淳みがアトピー性皮膚炎の中心であること
科医による診療を受ける機会は多々ある.全身
は,日頃の臨床体験からも明らかであろうが,
的な疾患や素因を背景とし,その表現型が皮膚
旧厚生省心身障害研究による,アトピー性皮膚
に出現する疾患においては,小児科医による診
)では掻破痕の存在から
炎の診断の手引き(表 1
療はより重要となる.すなわち,常に発達と発
痔みの存在を示している.
育を念頭に置きつつ全身的な診療をする小児科
この淳みをどのような方法でコントロールし
医の役割を全うするという意味において,表現
ていくかが,抗炎症療法とともに治療の根幹を
型が皮膚であっても小児科医が主治医の一人と
なす.おそらくは痔みに対してコントロールが
なることが重要である.
可能となれば,掻破行動が減少することによっ
とはいえ,いくら素因や遺伝的な背景がある
ものでも,皮膚症状が生涯を通して主となるよ
てアトピー性皮膚炎の治療の半分は成功するで
あろう.
うな特殊な疾患を,あえて小児科医が主治医で
あるとしゃしゃり出る必要はないであろう. と
すると対象は限られるが,頻度の多いものとし
l
l
. 痔みに対する内服療法
てアトピー性皮膚炎の診療は小児科医が熟知し
なければならないものの一つである.局所療法
1.抗アレルギー薬と抗ヒスタミン薬
は,一度は皮膚科医の指導を得て標準的なもの
局所療法を十分に行い,いわゆるスキンケア
を学ぶ必要があるが,内服療法や環境調整,食
を継続することによって多くの場合痔みのコン
物の摂取に関することを含めた日常生活の指導
トロールも可能となるが,治療の初期や局所療
など,総合的な診療において小児科医の役割は
法が十分な効果を発揮しないようなときは,内
大きい.
服による痔みの治療を行うことになる.
本稿ではアトピー性皮膚炎を念頭に置き,そ
淳みを生じる機序を考えると,多くの場合は
の一大特徴である痔みに対する薬物療法につい
アレルギー反応の結果放出され Hl受容体に
て考察してみる.
対して働くヒスタミンが,起痔物質として重要
である.そのため,痔みに対する第 1選択薬は
1
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ATA 東京家政大学家政学部児童学科小児医学研究室
[連絡先]
号
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2東京都板橋区加賀 1
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8
1 東京家政大学家政学部児童学科小児医学研究室
内/-
FO
2
Vo.
J47 No.2 2006
表 1 アトピー性皮膚炎の診断の手引き
1
. アトピー性皮膚炎とは
ア卜ピー性皮膚炎とは,アトピー素因のあるものに生ずる,主として慢性に経過する皮膚の湿疹病変である.
このため,本症の診断にあたっては,いまだ慢性経過の完成を見ていない乳児の場合を考慮し,年齢に対する配
慮が必要である.
(注)ア卜ピー素因とは気管支哨息,ア卜ピー性皮膚炎,アレルギー性鼻炎の病歴または家族歴を持つものをい
つ
.
1
1
. アトピー性皮膚炎の主要病変
1.乳児について
a) 顔面皮膚または頭部皮膚を中心とした紅斑または丘疹がある.耳切れが見られることが多い.
b) 患部皮膚には掻破痕がある.
(注)紅斑:赤い発疹,丘疹:盛り上がった発疹,掻破痕:掻き傷の痕
2
. 幼児・学童について
a) 頚部皮膚または服寓,肘富もしくは膝富の皮膚を中心とした紅斑,.fr疹または苔癖化病変がある.耳切
れが見られることが多い.
b) 乾燥性皮膚や枇糠様落屑を伴う毛孔一致性角化性丘疹がある.
c) 患部皮膚には掻破痕がある.
(注)苔癖化:つまむと硬い, きめの粗い皮膚
枇糠様落屑:米糠様の皮膚の断片
1
1
1
. ア卜ピー性皮膚炎の診断基準
1.乳児について
1
11に示す病変のうち, a),b) の双方を満たし,別表に示す皮膚疾患を単独に擢患した場合を除外したも
のをアトピー性皮膚炎とする.
2
. 幼児・学童について
1
1
2に示す病変のうち a) あるいは b),及び c) の双方,並びに下記のイ),口)の条件を満たし,別表に
示す皮膚疾患を単独に擢患した場合を除外したものをアトピー性皮膚炎とする.
イ)皮膚に庫みがある.
口)慢性(発症後 6カ月以上)の経過をとっている.
〔別表〕以下に示す皮膚疾患を単独に経過した場合はアトピー性皮膚炎から除外する
1)おむつかぶれ 2) あせも 3) 伝染性膿姉疹(とびひ) 4) 接触皮膚炎 5)皮膚力ンジダ症
脂漏性皮膚炎 7)尋常性魚鱗癖(さめはだ) 8) 病癖 9)虫刺され 10) 毛孔性苔癖
(厚生省心身障害研究
抗ヒスタミン薬 (H1a
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) である.
6)乳児
「小児期のアレルギー疾患に関する研究J
)
る.さらにアレルギ ~JI'生疾患に対して適応のあ
一方で,アレルギー性疾患の治療薬として,し
る薬物を添付文書情報 (
http://www.
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.
ばしばいわゆる抗アレルギー薬が用いられる.
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.
わが国には従来から,薬物の分類にはこの抗ア
html)より検索すると,薬効分類には抗ヒスタ
レルギー薬という名称があり,抗ヒスタミン薬
ミン薬とその他のアレルギー用薬という 2つの
の一部もそのなかに入れられ,区別があいまい
分類を参照できる.その他のアレルギー用薬と
な点があった.たとえば,気管支端息について
は,従来の抗アレルギー薬で、ある.
ではあるが,日本小児アレルギー学会によるガ
表 3はそれらのなかからアトピー性皮膚炎と
イドラインでは,小児に適応のある経口抗アレ
淳みに対して適応をもっ薬物を抽出し,剤形や
ルギー薬は表 2に示すごとくである 1) このな
用量設定の有無から小児に用いることが可能な
かにヒスタミン Hl括抗薬という分類がある.
ものを選んでまとめた.それぞれ適応疾患を異
こ れ は 上 記 の 日 1a
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eと同じであ
にするが,表 2と表 3を比較すると表 3のほう
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q
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2
一小児科表 2 小児の気管支端息に適応のある経口抗アレルギー薬
分
類
化学伝達物質遊離抑制薬
ヒスタミン
Hl措抗薬
ロイコトリエン受容体括抗薬
Th2サイト力イン阻害薬
薬品名
商品名
トラニラスト
ペミ口ラストカリウム
レピリナスト
リザベン@
ペミラストン@アレギサール@
ロメッ卜@
フマル酸ケトチフェン
塩酸アゼラスチン
オキサトミド
メキタジン
ザジテン@
アゼプチン@
セルテクト@
ゼスラン@ニポラジン@
プラン jレカスト
オノン@
モンテルカスト
シングレア@キプレス@
トシル酸スプラタスト
アイピーデイ@
(日本小児アレルギ一学会,小児気管支端息治療・管理ガイドライン 2
0
0
2
)
が従来からの薬効分類に則っていて抗アレル
みに対して抗アレルギー薬を用いるとした場合
ギー薬という概念が暖昧であることに気付くで
は,やはり抗ヒスタミン作用を期待しており,
あろう.すなわち表 2におザる分類に従うと,
やや付帯する効果として,メディエーター遊離
表 3のなかではクロモグリク酸とトラニラスト
抑制作用,ひいては抗炎症作用を期待して用い
以外はすべてヒスタミン H1詰抗薬である.と
ているようである.
くにフマル酸ケトチフェン,塩酸アゼラスチン,
一方,古典的な第 1世代の抗ヒスタミン薬も
オキサトミドは従来抗アレルギー薬という名称
強弱は別にしてもメディエーター遊離抑制作用
のもとに用いられており,抗ヒスタミン薬とい
はあり,抗アレルギー薬と抗ヒスタミン薬の明
う名称のもとで用いられることは少なかった.
確な線引きは困難である.また従来からのいわ
このような用語の暖昧さが,実際の診療の場
ゆる抗アレルギー薬という名称もメディエー
で混乱を生じ,薬物療法の理論的な確立に影響
ター遊離抑制薬を主としてその名前でよんでお
を与えることはないであろうか.昨年,筆者は,
り,近年のロイコトリエン受容体措抗薬やサイ
日本小児アレルギー学会の評議員を対象に,ア
トカイン抑制薬は,単純に抗アレルギー薬とい
-mailでアンケート
ンケート調査を行った 2) E
う範嘆には入れづらい.このようなことを考慮
票を送付した 6
8名中回答を得られたのは 34名
すると,表 2に示すような,薬効による分類を
という少数であったが,表 4にアンケートと回
意識した薬物療法を行うことが好ましい.
答を示す.
この結果をみると,小児のアレルギー疾患の
2
. 抗ヒスタミン薬をどのように用いるか
抗ヒスタミン薬のもつ副作用でもっとも問題
専門家ともいえる医師でも,抗アレルギー薬と
になるのは,中枢作用である.催眠作用,鎮静
いう分類をどのように解釈すべきか,必ずしも
作用,認知障害,錐体外路症状,興奮,多動,
明確ではないことがうかがえる.回答上は抗ア
そしてけいれんである.しかし場合によっては
レルギー薬と抗ヒスタミン薬を区別していると
催眠作用,鎮静作用を痔みに対する効果として
2名で,とくに区別をしていないと
したものは 2
期待する.第 2世代といわれる抗ヒスタミン薬
0名であるが,それぞれ個別の
回答したものは 1
には,この中枢作用をかなり抑えたものもある
回答内容,コメントを読むと,実際には両者に
が,即効性にかける.そこでアトピー性皮膚炎
おいてそれほどの差異があるわげではない.淳
にみられる痔みを治療する際,第 2世代の抗ヒ
司L
FO
4
Vo.
J47 No.2 2006
表 3 淳みやアトピー性皮膚炎に適応があり小児にも用いられる(あるいは用いることが可能な)薬物
分類*
薬品名
商品名
蒲
イ
考
抗アレル 塩酸アゼラスチン
ギー薬
アゼプチン
用量.年齢,症状により適宜増減
低出生体重児,新生児,乳児または幼児に対する安全性は
確立していない(使用経験が少ない).
塩酸エピナスチン
アレジオン
3歳以上用量記載あり.低出生体重児,新生児,乳児に対す
る安全性は確立していない(使用経験がな¥, ¥
).
ク口モグリク酸
インタール内服
6カ月未満は使用経験少ない.
エパスチン
エパステル
低出生体重児,新生児,乳児に対する安全性は確立してい
ない(使用経験が少ない).
フマル酸ケトチフェン
ザジテン
用量 :6カ月以上記載あり.乳児,幼児に投与する場合に
は,観察を十分に行い慎重に投与すること(けいれん,興
奮などの中枢神経症状が現れることがある)
オキサトミド
セルテク卜
幼児とくに 2歳未満において錐体外路症状出現のおそれあ
り,過量投与を避けること
塩酸セチリジン
ジルテック
低出生体重児,新生児,乳児,幼児または小児に対する安
全性は確立していない(使用経験が少ない).
トラニラスト
抗ヒスタ
ミン薬
リザベン
アトピー性皮膚炎への適応
酒石酸アリメマジン
アリメジン
H
a
r
n
a
c
kの方法(体表面積)に準拠し, 1歳の用量記載あり
マレイン酸クロルフェ
ニラミン
ネオレスタミン
アレルギン
用量:年齢,症状により適宜増減
メキタジン
ゼスラン
ニポラジン
l歳以上用量記載あり,乳児においては安全性は確立して
いない.
フマル酸クレマスチン
タベジール
テルギン G
l歳以上用量記載あり,乳児においては体重・症状を考慮し
て適宜決定
塩酸トリプ口リジン
ベネン
年齢・症状により適宜増減,未熟児・新生児には投与しな
いことが望ましい.
塩酸シプ口へプタジン
ペリアクチン
用量:A
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b
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r
g
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rの式による.新生児・低出生体重児に対
する安全性は確立されていないので投与しないこと.乳・
幼児において,過量投与により副作用が強く現れるおそれ
があるので,年齢および体重を十分考慮し,用量を調節す
るなど慎重に投与すること
パモ酸ヒドロキシジン
アタラックスー P
抗アレルギ一性緩和精神安定剤.小児への使用上の注意記
載なし.用量:年齢,症状により適宜増減
d
-マ レ イ ン 酸 ク ロ ル ポララミン
用量:年齢・症状により適宜増減
フェニラミン
タンニン酸ジフェンヒ
ドラミン
レ ス タ ミ ン A 用量:年齢・症状により適宜増減
コーワ
分類は添付文書情報 (
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mJ)の薬効分類による.
(医薬品医療機器情報提供による医薬品添付文書を参照,作成)
。
戸2FO
表 4 日本小児アレルギー学会評議員に対するアンケートとその回答
Aコ
(
j
)
σ
3
A. 小児のア卜ピー性皮膚炎の庫みに対する処方についてお尋ねします.
1.抗ヒスタミン薬は第一選択として用いますか.
はい
2
3名
いいえ
1
1名
2
. はいと答えられた方はどのような抗ヒスタミン薬を処方されますか.そ
の名前(商品名で可)と処方量をお示しください.
アタラックスー P
1
4名
ぺリアクチン
1
2名
ポララミン
6名
ゼスラン
2名
ザジテン
7名
セルテクト
2名
(処方量に対する回答は省略)
3
. いいえと答えられた方は,痔み対策の第一選択は何でしょうか.
自由にお書きください.
ステロイド外用療法を充分に行う
6名
抗ヒスタミン作用のある抗アレルギ一薬を用いる
4名
そのイ也
精神的な支援,原因抗原除去,保湿剤外用の強化,ワセリンや車鉛華
軟膏,皮膚を清潔に保つ,タクロリムス
B. 小児のアトピー性皮膚炎を治療する際,いわゆる抗アレルギー薬の用い
方についてお尋ねします.
1.抗アレルギ一薬を用いる目的は何でしょうか.
痔みに対して用いる
1
2名
基盤にあるアレルギ一反応を抑制するために用いる
4名
両方を考慮する
1
6名
2
. 庫みに対して抗アレルギー薬を用いるとされた方は,どのような抗アレ
ルギー薬を用いますか.その名前(商品名で可)と処方量を教えてくださ
ザジテン
2
5名
セルテクト
2
1名
ゼスラン(ニポラジン
5名
l名
アゼプチン
I
P
D,オノン
各 l名
(その他ペリアクチン 2名,アタラックスー P,アレジオン,エパステル各
l名)
(処方量に対する回答は省略)
3
. 矛盾するような質問ですが,抗ヒスタミン薬と抗アレルギー薬を区別し
て用いますか.
は¥,¥
2
2名
その理由は何ですか.
抗アレルギ一薬には抗ヒスタミン作用以外の作用がある.
メデイエータ一抑制作用は古典的抗ヒスタミン薬よりも強力.
抗アレルギー薬にはメデイ工ーター抑制作用も期待するから.
長期連用の場合は抗ヒスタミン作用のある抗アレルギー薬を用い,
睡眠前頓用には第一世代の抗ヒスタミン薬を用いる.
反復性慢性症状に対して抗アレルギー薬を用いる.
長期使用においてアレルギ一炎症の抑制,予防のため.
いいえ
1
0名
その理由は何ですか.
産みに対する効果を狙うため特に区別はしない.
いずれも抗ヒスタミン作用を期待して用いる.
(抗口イコトリエン薬は抗炎症を期待する.)
抗ヒスタミン作用以外に庫みに効果はない.
内服抗アレルギー薬の抗炎症効果は弱い.
経口抗アレルギー薬の多くは抗ヒスタミン薬である.
明確に抗アレルギ一薬であるという薬剤は無い.
C
. 軽症と思われる小児のアトピー性皮膚炎に対して内服薬を処方します
か
は¥,¥
1
0名
具体的には
ザジテン,セルテクト,アタラックス -Pがしばしば用いられる.
いいえ
2
4名
D. 中等症と思われる小児のアトピー性皮膚炎に対して内服薬を処方します
か
は
し1
25名
具体的には
ザジテン,セルテクト,アタラックスー Pがしばしば用いられる.
いいえ
8名
巳重症と思われる小児のア卜ピ一性皮膚炎に対して内服薬を処方します
か
は
し1
3
0名
具体的には
ザジテン,セルテク卜,アタラックスー Pがしばしば用いられる.
いいえ
3名
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.
l47 No.2 2006
スタミン薬をいわばコントローラーとして継続
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cの乳児に対し,ケトチブエ
使用し,第 1世 代 の 抗 ヒ ス タ ミ ン 薬 を レ リ ー
ンあるいはセチリジンを長期投与することによ
ノマーとして用いることがある. し か し 第 2世
り,その後の気管支瑞息発症を,非投与群に比
代といわれる抗ヒスタミン薬のなかでも,中枢
較して有意に抑制したという陸自すべき報告は
作用の比較的強いものがあるため, この併用療
あるがか 5),日常の診療においてその報告を即
法は,乳児においてはかなり注意が必要であろ
応用できるほどにはアレルギー性疾患の発症の
っ
.
仕組みが解明されていない現状では,個々の患
表 3~こ示した抗アレルギー薬として分類され
者に対して,まず処方をする医師の目的をはっ
ているもののうち,クロモグリク酸とトラニラ
きりと述べることにより,効果の評価も少しは
スト以外はいわゆる第 2世代の抗ヒスタミン薬
容易となろう.
であるが,備考欄に記載した通り,アトピ〕性
おわりに
皮膚炎の好発年齢である乳児に対してはいずれ
もが使用しにくい. このように改めて添付文書
小児科医がしばしば診療にあたる淳みを主要
に記載されている事柄を見直すと,いかに慣用
症状とする疾患はアトピー性皮膚炎である.従
的に処方されていた薬物が,
とくに乳児におい
来からこの痔みに対し抗ヒスタミン薬が繁用さ
て用量設定も含めて検討されないまま,現実に
れ,いわゆる抗アレルギー薬の使用も目立つ.
長い間用いられていたかがわかる.
しかし抗アレルギー薬の定義と,多くの抗ヒス
今後は極力中枢作用の少ない薬物を選び,そ
タミン薬との境界は暖昧であり,診療現場では
れを症状に応じた形で使用していくことが望ま
それらを区別せず,使用目的も明確化しないま
しかろう.また,少なくとも抗アレルギー薬と
ま混在した形での処方も見受けられる.また小
いう名称に惑わされずに, これらの薬物はいず
児の用量が決められていないまま,歴史的に乳
れも抗ヒスタミン薬であるという認識をもつこ
児においても繁用されるものがある.中枢神経
とが必要である.
への作用も見逃せない.淳みに対して用いる抗
淳みの多くの部分にヒスタミンが関与してい
る以上,抗ヒスタミン薬を用いることは治療上
アレルギー薬は抗ヒスタミン薬であるという認
識が重要ではないかと考える.
必要である.アトピー性皮膚炎は,乳児に多い
ヒスタミンの作用を制御することは,痔みに
ことを考慮すると,用量の定まっていない乳児
対する有効な治療となり,原因疾患であるアト
に対しても経験的な用法で抗ヒスタミン薬を投
ピー性皮膚炎そのものに対する治療に成功する
与せざるを得ないが,少なくとも臨床的に効果
であろうが,現在の手持ちの抗ヒスタミン薬は,
を確かめつつ,実は抗ヒスタミン薬である薬物
まだ乳幼児に用いることのできるものが少な
の二重投与,過量投与に陥らない注意が必要で
い.剤形もさることながら,用量検定も必要で
ある.たとえば急性上気道炎を合併した場合に
あり, CONGAの提言 6)を小児科領域でも実現
漫然と他の種類の抗ヒスタミン薬を処方せず,
されることを願う.
注意深い症状の観察,診察所見によりその必要
文 献
性を再考すべきである.さらに,抗アレルギ一
作用をもっ抗ヒスタミン薬を,単純に「体質改
善薬」と称して処方することも,今一度その目
的を再考するべきであろう.
1)日本小児アレルギー学会:古庄巻史,西間三
馨(監修) :小児気管支瑞息治療・管理ガイド
ライン 2
0
0
0
2(
2
0
0
4年改訂版),協和企画,
p6
3,2
0
0
4
アトピー性皮膚炎を発症している乳幼児ある
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児 科一
2
) 岩田力:かゆみをめぐって.小児科から
一小児に対する抗アレルギー薬,抗ヒスタミ
3:
ン薬の使い方.日本小児皮膚科学会雑誌 2
0
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第 13回 小児呼吸器セミナー
日会
時:平成 1
8年 4月 2
2日・(土) 1
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場:金沢全日空ホテル鳳の間
主後主
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催:日本小児呼吸器疾患学会
セミナー委員会
援:第 1
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9回日本小児科学会学術集会
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題 : 小児の長引くせき』
1.アレルギーからみた小児の長引くせき
座長高瀬真人(日本医科大学付属多摩永山病院小児科)
演者:望月 博之(群馬大学大学院医学系研究科小児生体防御学)
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. 注意すべき小児の長引くせき
座長高瀬真人(日本医科大学付属多摩永山病院小児科)
演者:川崎一輝(国立成育医療センター呼吸器科)
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. 小児呼吸器感染症ガイドラインの改訂に向付て
座長梅原
実(神奈川県立こども医療センター救急診療科)
演者:上原す立子(千葉大学,埼玉医科大学)
1
V フィルム読影
座長:雑本 忠市(東京西徳洲会病院小児難病センター呼吸器科)
I)のフィルムを是非ご持参くだ
※興味ある症例・読影困難であった画像 (X線・ CT.M R
さい.ご持参される方は 3月末日までに下記までご連絡ください.
参 加 費 : ¥ 3,
0
0
0 (テキスト代込) 当日会場にてお支払いください.
1日迄に下記へお願い致します.
お申込み方法:原則として事前申し込みを 3月 3
問合せ先:号 2
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2東京都多摩市永山 1
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日本医科大学付属多摩永山病院
小児科内
日本小児呼吸器疾患学会事務局
FAX042-372-7377
サo斗o斗0 0 1号。4>味。サ。サ0 4>サ0 4>斗0 4>サo斗oサo斗o斗o寸oサ。寸o斗o斗oサoサo斗o斗0 4>寸o寸o斗o寸。サo斗oサ。サo斗。サo斗o味。サo寸o斗o斗oサo斗oサo斗oサ0 4>4>サ。
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