機能訓練指導員現場でのヒント

機能訓練指導員現場でのヒント Ver4.01
ケア・ネット21
三谷
朋麿莉作成(2001年9月7日)
機能訓練指導員現場でのヒント
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4.01
ケア・ネット21
三谷朋麿莉
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機能訓練指導員現場でのヒント Ver4.01
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三谷
《目
朋麿莉作成(2001年9月7日)
次》
1.初めに
2.機能訓練指導員の介護保険上の位置づけ
3.リハビリテーションと機能訓練違いについて
4.機能訓練指導員としての仕事の流れ
5.機能訓練の評価法について(作成中)
6.機能訓練指導員として理解すべきポイント
7.可逆的な要素をチェックする
8.危機管理について
9.利用者・家族のモジベーションについて
10.ディマンドとニーズについて
11.拘縮のある利用者に対して(作成中)
12.痴呆のある利用者に対して
13.疾患別の問題点
14.福祉用具についての知識
15.住宅改修についての知識 (作成中)
16.機能訓練アセスメントシートについて (学会発表に掲載)
17.事例について(T・Uさんの場合) (作成中)
18.参考資料
★別紙1(介護保険申請の流れ)
★別紙2(機能訓練指導員仕事の流れ)
★感染症利用者への対応チャート
★居宅サービス計画(T・Uさんの場合)
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1. 初めに
『機能訓練指導員現場でのヒント』は私自身が介護支援専門員としてケアプラン作成の
中から気が付いた事や、教えて頂いた事、勉強してきた事を元に『この様な知識・技術
を持った機能訓練指導員がいたら利用者はもっと自立できるのではないか?』
『柔道整復師がどの様な視点で機能訓練指導員として働いたら上手くやっていけるの
か?』この2点を介護支援専門員の立場から作成した物です。
介護保険制度の基本理念である『自立支援』の為にはリハビリテーションや機能訓練は
欠かせないサービスだとは思います。
しかし、充分なサービス量が確保されていなかったり、充分に活用されていなかったり
しているのが現状ではないでしょうか?
理学療法士・作業療法士が行う訪問リハビリテーションや通所介護内での機能訓練がも
っと機能していけば寝たきりになる人も減っていくのではないでしょうか?
厚生省(現在は厚生労働省)が示した寝たきり予防10ヶ条の中にも、『寝たきりは寝
かせきりから作られる。過度の安静、逆効果。
』『生活リハビリテーションの必要性』『進ん
で利用、機能訓練・デイサービス寝たきりなくす人の輪・地域の輪』の主旨の項目があり
ます。
積極的に機能訓練を行うことにより、要介護状態の方が要支援状態又は非該当の状態へと
移行する可能性はあります。
自立したQOLの高い生活の実現介護保険制度の目的になりますが、この目的のため機能
訓練指導員の方々が現場に出られたときに少しでもヒントになれば幸いです。
平成13年6月16日
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三谷朋麿莉
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2. 機能訓練指導員の介護保険上の位置づけ
機能訓練指導員の介護保険上での位置づけに関しては『機能訓練体制加算の理解』とい
う事で【対象施設】
・
【機能訓練指導員とは】
・
【訓練を行う能力を有する者】
・
【機能訓練
の具体的内容】
・
【単位数】について表にしてあります。法律上の位置づけを確認して下
さい。特に
機能訓練の具体的内容
については認識を深める必要があります。
機能訓練体制加算の理解
対象となる法律
介護保険法
対象施設
通所介護(デイサービス)・短期入所生活介
護(ショートステイ)・介護老人福祉施設(特
別養護老人ホーム)
機能訓練指導員とは
日常生活を営むのに必要な機能の減退を防
止するための訓練を行う能力を有する者
訓練を行う能力を有する者
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護
職員、柔道整復師又はあん摩マッサージ指圧
師の資格を有する者とする。
ただし,利用著の日常生活やレクリエーショ
ン、行事を通じて行う機能訓練については、
当該事業所の生活相談員又は介護職員が兼
務しても差し支えない。
機能訓練の貝体的内容
① 寝返り訓練
② 起きあがり訓練
③ 座位訓練
④ 立ち上がり訓練
⑤ 歩行訓練
⑥ その他の日常生活動作
体操やダンスのように集団で行うか、個別で
行うかは別として、これらの訓練を医療と峻
別した形で行うこととなります。
単位数
機能訓練指導員を1日120分(2時間)以
上配置したときは、1人につき27単位(2
70円)ショートステイ等は12単位に定数
を乗じた金額を国保連合会に請求する事が
できると定められております
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3.リハビリテーションと機能訓練違いについて
リハビリテーションと機能訓練は混同される場合が多くあります。その定義について再確
認をしておきましょう。
脳卒中患者を例として表にしてありますので、見比べてみて下さい。
医療における「リハビリ」と「機能訓練」の違い
例:脳卒中患者に対して
リハビリテーション
対象者
目的
老人保健法機能訓練
介護保険法機能訓練
急性期から回復期へ 概ね65歳以上で廃 要介護者で通所介護
の患者
用性症候群
中に希望される方
麻痺した機能の回復
①本人への動議付け
日常生活を営むのに
ADLの自立
②物理的・人的な環 必要な機能の減退を
境への働きかけ
防止するための訓練
この2点による
中心となる課題
「脳卒中による狭義 能力障害維持・回復
寝たきり・閉じこも
(ADLを含む行動 りの予防
の機能障害」
全般)
担当職種
看護婦
医師・保健婦・理学 理学療法士・作業療
理学療法士
療 法 士 ・ 作 業 療 法 法士・言語聴覚士・
作業療法士
士・言語療法士・ヘ 看護職員・柔道整復
ルパー・ボランティ 師・あん摩マッサー
ア
ジ指圧師
要介護認定期間
期間
6ヶ月以内
取り決めはない
訓練内容
Drの指示による
① 集団訓練(中心) ① 寝返り訓練
理学療法プログラム
② 個別訓練
② 起きあがり訓練
作業療法プログラム
③ 理学療法的訓練
③ 座位訓練
言語療法プログラム
④ 作業療法的訓練
④ 立ち上がり訓練
⑤ 言語療法的訓練
⑤ 歩行訓練
⑥ レクレーション
⑥ その他の日常生
⑦ 友の会
活動作
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①『機能訓練』の対象となる『障害』の意味の捉え方
機能訓練の対象はいうまでもなく『障害』にある。ところが、この「障害」という言葉
が色々な意味で用いられていて、何を対象にするかによって「機能訓練」の内容やアプロ
ーチの方法が異なってくる。「障害」正しく理解し整理しておくことが重要になる。
《
WHO の障害に関する分類について
》
A.脳卒中による片麻痺などの(機能の)障害
B.食事・排泄などのADLの障害
家事や職業上の作業能力の障害
C.復職・家庭復帰・地域生活などにおける障害
A.B.Cは同じ「障害」と言う言葉を用いながらも、内容(次元)がことなっています。
WHO では障害の多義性に対して、[IDH 分類]によって整理することを提唱しています。
この分類をA.B.Cに当てはめてみると、
A.脳卒中の片麻痺
:つまり障害者の身体に生じた多くは部分的な機能障害→(impairment)機能障害
B.食事などのADL障害、家事や職業的動作(活動)の障害
:つまり障害者が個人として発揮する全体的能力→(Disability)能力障害
C.復職、家庭復帰、地域生活の障害
:つまり障害者が元の職場、家庭、地域において占めていた「位置」を失うこと→Handicap
(社会的不利)
《機能訓練指導員はどの障害に対して行うのか?(個人的な解釈として)》
介護保険内での機能訓練はどのタイプの障害について行われるのかを考えてみると。
下記の3つに分類されると思われます。
寝返り訓練+起きあがり訓練+座位訓練=移乗
立ち上がり訓練+歩行訓練=移動
その他の日常生活動作=ADL+IADL
これらから推察して、 介護保険でおける機能訓練は能力障害に対して行われる物である
と分析されます。
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②『機能訓練』の『機能』の捉え方
機能障害はなぜ起こるのかを考えてみましょう。
機能障害は下記の4点が影響をしてきます。
1.原疾患による機能障害(片麻痺・運動失調など)
2.生理的条件(年齢による老化など)
3.合併症
4.二次的障害(廃用性症候群など)
例:脳血管障害の方の歩行について考える
★ 脳血管障害後遺症が重度であるために歩けない→原疾患による機能障害
★ 足関節拘縮のために歩けない→二次的障害
★ 健側も含めた筋力低下のために歩けない→二次的障害
★ 重度な心疾患を持つために歩くことが出来ない→合併症
★ 老化による体力低下により歩くことが出来ない→生理的条件
これらの要因が複雑に絡み合って「機能障害を作り出している」
機能訓練を必要としているニーズの要因をハッキリさせ、それに対応する訓練を行うこと
が効果的である
例1:重度な心疾患のために歩けない人に対して歩行訓練を繰り返しても更に悪化するだ
けである。
例2:健側の筋力低下の為に歩けない人に対して患側の関節拘縮のための機能訓練を行っ
ても健側の筋力はアップしない
③「能力障害」の構造について
介護保険における機能訓練は能力障害に対して行いますが、どの様な構造を持っているの
でしょうか?
まず初めに、能力障害は「実行している行為」について考え、「潜在能力」は含まれない原
則があります。
これには、その人の環境や心理的要素が強く関与してきます。
例:機能障害が同じ程度の人
・ 本人のモジベーションの有無
・ 室内環境整備状況
・ 家族関係
・ その人の精神状態
能力障害の維持・改善には「環境面」「心理」にも同時にアプローチする必要がある。
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④「社会的不利」の構造について
障害があることにより様々な社会的不利を受けることになる。
一般的に個人として地域社会・家族・職場・友人や仲間・学校・その他の社会集団に属し
て生活を行っているが、社会的不利はそれらの社会集団内における社会関係に問題を生ず
ることである。
これらの社会関係が個人の心理や行動そのものに大きな影響を与える。障害を持つことで
家族が低く位置づけることは、本来の家族関係を失うという意味で社会的不利を生じる一
方で、その様な環境(接し方)のもとで本人の行動意欲(心理)を失わせて能力障害をも
たらす可能性を持つ。
《能力障害の維持回復のためには 機能障害(廃用性症候群) や 社会的不利
(人的・物理的環境整備) を同時に行う必要がある》
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4.機能訓練指導員としての仕事の流れ
介護保険上で機能訓練指導員から機能訓練を受けるための大まかな流れを説明いたし
ます。接骨院に来院した患者のように先生方が判断して施術を行うようなわけには行き
ません。機能訓練が行われる対象者は介護保険の認定を受けて要介護状態又は要支援状
態と認定された方が(別紙1を参照)、ニーズに対応したサービスとして通所介護等を
希望し、尚かつ機能訓練のニーズがあり、その上で利用者が希望した場合に限定されま
す。
これだけの条件が揃い初めて、機能訓練が開始されるのです。
介護認定を受けて、要介護状態または要支援状態と認定され(別紙1参照)、通所介護
内での機能訓練の流れについて表にしてみます(表1参照)
介護サービス開始までの流れ(表1)
項目
担当職種
①
利用者のアセスメント
ケアマネジャー
②
アセスメントからの課題分析によりニ ケアマネジャー
ポイント
ーズ発見が行われる
③
ケアプラン作成
ケアマネジャー
④
利用者の承諾
ケアマネジャー
⑤
サービス開始
サービス事業者
①〜⑤まで機能訓練指導員の出番はありません。
機能訓練のニーズをケアマネに理解してもらう作業が必要です。
1点目のポイントとして機能訓練のニーズを見つけられるケアマネジャーの育成が必要と
なります。
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次に、通所介護施設内での機能訓練の流れについて表にしてみます。
(表2参照)
通所介護施設内での機能訓練の流れ(表2)
項目
担当職種
ポイント
⑥
機能訓練アセスメント
機能訓練指導員
アセスメント表理解
⑦
機能訓練開始
機能訓練指導員
どのニーズに対して
の機能訓練なのか
(1表・2表)
⑧
機能訓練評価
機能訓練指導員
評価表の理解
⑨
担当者(カンファレンス)会議
関連職種
中心課題は利用者の
状態
⑩
再アセスメント
⑪
⑦〜⑪
機能訓練指導員
の行程を繰り返す
機能訓練がケアプランに位置づけられて初めてサービス開始になります。
ここでは、ケアプランからの情報を読む作業とアセスメント、更には担当者会議での発言
が重要になります。
『居宅サービス計画(1)(以後1表と書きます)』に書かれている、『本人及び家族の介護
に対する意向』を確認して、『総合的な援助方針』についても確認しておきましょう。
そして、『居宅サービス計画(2)(以後2表と書きます)』で何のニーズに対して、どのよ
うな目的で、どのような機能訓練の依頼があったのかを確認しておきましょう。
この作業を行う事によって、現場に出て何をすればいいのかを明確にする事が出来ます。
『長期目標』と『短期目標』が書かれています。
この目標に向かっての機能訓練になります。
訓練の内容については『ケア内容』に書かれています。
2つ目のポイントはこの様に1表・2表から必要な情報を読み取る癖をつける
必要があると思います。
柔整師としての独自性は『機能訓練中』に発揮されると思いますが、方針(1表)や目標
と具体的内容(2表)を無視するような形ではまずいと思われます。
これに沿った形でどの様に独自性を出しいけるのか否か、今後の課題になると思います
機能訓練の流れとその担当職種については別紙2を参照して下さい
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サービス担当者会議について
これは、施設利用者(入所者)と在宅利用者の2通りあります。
在宅の利用者はケアマネジャーから若しくはサービス担当者からの依頼でサービス担当者
会議が行われます。
ここでは、利用者の状態について話が行われ、機能訓練指導員もチームの一員として参加
をします。そこで話される中心課題はは利用者の状態についてです。
この場でも医療的知識・他業種の専門知識も吸収することが出来ます。
目的
① 利用者の問題点(解決すべき課題⇒ニーズ)を解決する為の具体的なチームアプローチ
方法の検討。即ち介護サービス計画(ケアプラン)を作成することです
② 担当職種間での連携方法の確認
目的に関してはいつの時期に開催するのかにより大きく違ってきます。
① 緊急時の利用希望時
② 新規利用者(継続的に在宅生活を続けられていて状態が悪化した場合)
③ 新規利用者(病院・施設等退院・退所時)
④ 継続利用者でサービス導入による効果が上がっていない場合
⑤ 継続利用者でサービス導入の方向性を見直す場合
⑥ 再アセスメントにより新たな問題点が発生した場合
中心課題
① 利用者の状態について(主体者はあくまでも本人・家族である)
② 状態への対応方法
中心課題については、ケア目標や疾患について話し合われるものではありません。
あくまでも、利用者の状態についての話が行われます
具体的内容
① 接近困難事例への対応を統一する
★ ケースに関わっているサービス担当者内での対応方法の統一・役割分担
② 看護婦とヘルパーの連携
★ 同時間体にヘルパー・看護婦を導入した際の意思の統一
★ 仕事の分担
★ 仕事の効率化
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③ 退院後初めてサービスを導入するときの意思統一
★ 退院後のサービス導入が極めて重要になってくる
★ 退院後の変化に素早く対応するため
④ 状態が変化しやすく細かくプランが変更しやすい事例の意思統一
⑤ 福祉用具導入時・住宅改修後の対応について
★ 導入した福祉用具や住宅改修についての効果について
(福祉用具相談員・福祉用具プランナー・福祉住環境コーディネーター等の参加を促す)
カンファレンスの流れ
① 会議出席の依頼(担当ケアマネジャーが作成)
② 出席の依頼(担当ケアマネジャーが行います)
③ 依頼内容について提示(担当ケアマネジャーが作成するが関連職種から検討内容を提示
する事もできます)
この時に依頼内容以外にもいくつかの情報を事前にもらっておくとスムーズに仕事が進み
ます。
・ 利用者の状態
・ 利用者・家族の介護に対する意向
⇒
サービス計画(1)
・ 医療的な問題点
・ 介護支援専門員が知っている悪化予測(社会的・医学的・経済的)
・ 利用者に対しての注意事項(ターミナルケア等で告知が行われていない場合など)
例:脳梗塞のある利用者
【目標として考えられる事】
★ 再梗塞の予防に関する事項
★ ADL向上に関する事項
★ 障害受容に関する事項
【問題点として考えられる事項】
① 再梗塞予防
② 運動障害に関連したADL自立の困難
③ 感覚障害、運動障害、認識力の低下による転倒、骨折、皮膚損傷
④ 失行、失認、精神知能障害に関連した日常生活能力の低下
⑤ 言語障害に関連したコミュニケ−ション障害
⑥ 排尿障害、運動障害に関連した失禁、便秘
⑦ 嚥下困難に関連した食事摂取量の不足による栄養状態の低下
⑧ 障害受容に関連した闘病意欲の低下
⑨ 患者の退院に関連した家族の受け入れ、介助能力の不足
これらの事柄を各専門職がそれぞれの視点より、利用者のQOL向上のために話し合われ
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る場になります。
具体的事例に関しては
17.事例について(T・U さんの場合)を参照して下さい
3つ目のポイントは柔整師の専門家としての目が重要になってきます。どのニ
ーズを解決するための機能訓練か?
又、他職種からの意見を聞き、機能訓練の内容に反映させることも重要になり
ます。
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5.(機能訓練評価)について作成中
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6.機能訓練指導員として理解すべきポイント
通所介護内での機能訓練については、行える職種と時間、単位、機能訓練の種類以外のこ
とは決められていません。
通所介護の規模と時間(1日に2時間)では複雑な訓練や選定は行えません。
理解すべきポイントだけは押さえて置いた方がよいでしょう
下記の表にまとめてありますので参考にして下さい
機能訓練指導員としての理解すべきポイント
利用者の概要から、
『利用者像』や『利用者情報』を読み取れるように
1表から、
『利用者及び家族の意向』を読み取る
1表から、ケアマネジャーが作成したケアプランの『総合的援助方針』を理解
する
2表から、『どのニーズの為のサービスなのか?』『実際に行う訓練内容』につ
いて理解する
2表から、ニーズに対する『長期目標』『短期目標』を理解しておく
ニーズについて理解する(作成中)
機能訓練とリハビリテーションの違いをハッキリ理解する
カンファレンス会議で他業種からの意見を聞き機能訓練に反映させる
機能訓練の目的は寝たきりと作らないことである。
(寝たきりなのか寝かせきり
なのか?)→(作成中?)
福祉用具の知識について
住宅改修の知識について(作成中)
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7.可逆的な要素をチェックする
機能訓練を行う上で、可逆的な要素を事前に把握し、危機管理を行う必要があります。
合わせて悪化予測も行う必要があります。
可逆的な要素に関して3つに分けて表にしてあります。これをチェックすることにより
関連職種内で共通な情報を持つことができ、連携にも役に立つのではないでしょうか?
1. 医学/身体的な問題
2. 心理社会的問題
3. 環境的問題
このなかで「2.心理社会的問題」
「3.環境的問題」についてはあまり馴染みがない項目
になりますが、機能訓練を行い、継続して、効果を出すためには必要な項目です
□(疾患名をチェックし、Dr・CMヘの相談)○(集団訓練のみ又は行えない)
△(薬剤に関して注意)▽(住環境)
医療/身体的な問題
① 慢性疾患の突然進行
□(疾患名:
)
② 関節炎の存在
□(部位:
)
③ 鬱血性心不全(C H P)
□(いつから:
)
④ 冠状動脈疾患
□(いつから:
)
⑤ 脱水
□(いつから:
)
⑥ せん妄
□(いつから:
)
⑦ 痴呆症がある
○(特記事項:
)
⑧ 肺気腫・慢性閉塞性肺疾患
□(いつから:
)
⑨ 骨折
□(部位:
)
⑩ 感染症
□(病名:
)
⑪ 栄養障害
□(病名:
)
⑫ 痛み
□(部位:
)
⑬ パーキンソン病である
□(特記事項:
)
⑭ 薬剤の順守が行われていない
△
⑮ 甲状腺疾患
□(特記事項:
)
⑯ 不安定な状態又は急性期
□(特記事項:
)
⑰ 視覚障害
□(病名:
)
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2.心理社会的問題
① 問題行動ある
○(特記事項:
)
② うつ状態である
□△(特記事項:
)
③ 治療を順守していない
□△(特記事項:
)
④ 身体抑制を受けている
□(特記事項:
)
⑤ 精神科疾患の存在
□△(病名:
)
⑥ 独居である又は家族関係が悪い
□(特記事項:
)
⑦ 薬物の副作用の危険性がある
△(薬剤名:
)
⑧ 1ヶ月以内に入院歴がある
□(病院名:
)
3.環境的問題
① 玄関の段差が180㎜以上ある
▽(特記事項:
)
② 玄関に手すりが設置していない
▽(特記事項:
)
③ 玄関の材質が滑りやすい
▽(特記事項:
)
④ 浴槽が和式又は洋式である
▽(特記事項:
)
⑤ 浴室内に段差がある
▽(特記事項:
)
⑥ 浴室内に手すりが設置していない
▽(特記事項:
)
⑦ 浴槽と床の段差400㎜以上である▽(特記事項:
)
⑧ トイレが和式である
▽(特記事項:
)
⑨ トイレ内に手すりの設置していない▽(特記事項:
)
⑩ 階段があり、それを利用している
▽(特記事項:
)
⑪ 蒲団で寝ている
▽(特記事項:
)
⑫ 動線上に物が置いてある
▽(特記事項:
)
⑬ カーペットが敷いてある
▽(特記事項:
)
(これらにチェックが入った場合は、悪化予測を行い、リスクマネジメントを
行う必要がある)
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8.危機管理について
危機管理をする上で最近は『リスクマネジメント』と言う言い方が良く用いられています。
機能訓練指導員としてのリスクマネジメントとはどのようなことかを考えて見ます。
リスクマネジメントとは言葉は聴いたことはあるが実際に柔整師等にはなじみの薄い言葉
になります。
① リスクマネジメントとは
リスクマネジメント=リスクファイナンス+リスクコントロールのことを言います。
★ リスクを保険で保証する「リスクファイナンス」
★ リスクの予防活動などの「リスクコントロール」
これを機能訓練指導員の立場で当てはめると
リスクファイナンスは施設サイドが入っている介護サービスの損害保険に入っているはず
です。この事については機能訓練を行う前に各施設で確認して下さい。
リスクコントロールは起こるべきリスク(悪化予測・アクシデント等)を予測し予防する
ことです。悪化予測については『7.可逆的な要素をチェックする』を参考にして下さい。
利用者の疾患を知ることにより、ある程度の悪化予測を行うことができますが、高齢者や
障害者は予期せぬ状態に陥る場合もあります。細心の注意が必要になると思います。
この二つを合わせて行い初めてリスクマネジメントが行えます。
② リスクマネジメントの手順
★ 「リスクコントロール」
1.リスクの認識
・ 現在どの様な疾患があり、どの様なリスクが存在するのか?
・ 今後どの様なリスクが考えられるか?
・ リスクが発生する危険性は?
・ 上記のことを明確化する
リスクの認識を行うことは大変重要になります。リスクの認識が出来なければその対策も
行うことができません。又、認識が不十分であった場合には対応も不十分なものになり機
能訓練中の事故が起こる確率が飛躍的に上がります。
自分が得意な分野、そうでない分野とあると思いますが満遍なく認識しておく必要があり
ます。
2.リスクの予防
・ どうしたらリスクが発生するのか?
・ リスクを発生させないためにどうしたらよいのか? Etc
リスクマネジメントはリスクが発生した以後の対応に注目されがちですが、本当に大切な
のはリスクが発生しないように予防をすることです。
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この為には、
・ 利用者の状態や疾病に対するリスクに対しての知識を蓄える
・ リスクに対する意識を高める
・ 予防する為のマニュアルを作る
・ そのマニュアルのシュミレーション等により施術側が体得する。
3.リスク発生時の対応
・ リスク発生時に最優先で何を行うのか?
・ どのような順序・方法で行っていけばよいのか? Etc
・ 以上を踏まえてリスク発生時の対応マニュアルの作成
・ 緊急時の対応方法などによるリスク発生時の対応マニュアルの徹底
リスクの発生時は平常時と違い冷静な判断ができなくなりますので対応マニュアルはリス
クから何を最優先で守るのかを決めて必要最小限度のものにします。また、日頃からリス
ク発生時対応マニュアルを見直すことも重要です。
4.リスク発生後の対応
・ リスクが発生するとどうなるのか?
・ リスクからどのような順序で何を守るのか? Etc
・ 以上を踏まえてリスク発生後の対応マニュアルの作成
・ リスク発生後の対応マニュアルの徹底
リスクは時間の経過と伴に拡大していきますので日頃から迅速な対応ができるよう対応マ
ニュアルの徹底を図ることが重要です。また、リスクの程度が把握できないときは最大限
の対応とし、正確なリスクの把握と伴に適切な規模の対応へと移行していくようにします。
具体的には?
具体的な例としては「千葉県
石橋和正先生」よりいただいた資料が掲載してあります。
疾患ごとに詳しく書かれていますのでこれを参考にしてください。
但し、利用者は疾患だけでは判断できないケースが殆どです。
具体的には担当者会議に参加してそこでニーズに対応した機能訓練を行ってください。
担当者会議については「4.機能訓練指導員としての仕事の流れ」に記載してありますの
で参考にしてください。
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機能訓練中の危機管理(事故防止回避の為)(千葉県 石橋和正先生の資料より)
参考例1:脳卒中で心疾患を持つ患者を対象にした運動療法実施のための基準
Anderson の運動負荷基準
下記の基準に十分留意し、患者のリスクを引き起こさないよう運動負荷量を決めるとよい。
①
安静時脈拍が100以上では訓練をしない。
②
訓練中、息切れ、めまい、宙に浮いた感じ、胸部痛、チアノーゼが出現した場合は訓練を中止。
③
訓練中脈拍数が135〜140を越えるか、または不整脈が出現した場合は訓練を中止。
④
訓練後、2 分間の休息で脈拍が訓練前の値+10以下にもどらない場合は訓練を中止。
⑤
徒手抵抗訓練は、四肢を対象とする場合は各肢ごとに分けて行うこと、訓練中および訓練 2 分後の脈
拍をとり上記の基準に応ずる。
⑥
患者歩行時は、歩行開始直後と訓練後 2 分の脈拍をとる。
⑦
両側性の四肢訓練あるいは体幹の訓練の際には、10分おきに休息を与える。そして脈拍をとり、さ
らに 2 分後に脈拍をチェックする。
⑧
もし不整脈がある場合は、脈拍を 15 秒でなく、30 秒とり、心尖拍動部においても測定すること。
土肥
豊
リスクと対策から、運動療法実施のための基準(Anderson 基準を改訂)
Ⅰ.訓練を行わないほうがよい場合
① 安静期脈拍120/分以上
② 拡張期血圧120以上
③ 収縮期血圧200以上
④ 労作狭心症を現在有するもの
⑤ 新鮮心筋梗塞 1 ヶ月以内のもの
⑥ うっ血性心不全の所見の明らかなもの
⑦ 心房細動以外の著しい不整脈
⑧ 訓練前すでに動悸、息切れのあるもの
Ⅱ.途中で訓練を中止する場合
① 訓練中、中等度の呼吸困難、めまい、嘔気、狭心痛などが出現した場合
② 訓練中、脈拍数140/分をこえた場合
③ 訓練中、1 分間10個以上の期外収縮が出現するか、または頻脈性不整脈(心房細動、
上室性または心室性頻脈など)あるいは、徐脈が出現した場合
④ 訓練中、収縮期血圧40mmHg以上または拡張期血圧20mmHg以上上昇した場合
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Ⅲ、次の場合は訓練を一時中止し、回復をまって再開する。
① 脈拍数が運動前の 30%をこえた場合、ただし、2 分間の安静で 10%以下にもどらぬ場
合は、以後の訓練は中止するかまたは、きわめて軽労作のものに切り替える。
② 脈拍数が120/分をこえた場合
③ 軽い動悸、息切れを訴えた場合
知識
心疾患か否かの鑑別テスト
{起立位にして、踵が臀部につくまで膝屈伸を 2 秒に 1 回の割合で 20 回行わせる。}
正常者
運動後
脈拍数10〜20程度の増加
最大血圧が20〜40mmHg以下の増加
最小血圧が10mmHg以下の増加
運動後 3 分には運動前に戻る。
心疾患がある方
運動後
脈拍数30以上の増加
最大血圧は変化しない
最小血圧は上昇する
運動前の値に戻るのは 5 分以上が必要。
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参考例2:糖尿病を持つ患者を対象にした運動療法実施のための基準
1、糖尿病をもつ利用者
食後の 30 分〜2 時間の間がよいとされています。しかし、経口血糖降下薬やインスリン療
法を行っている利用者は注意が必要です。
低血糖の兆候が生じていないかどうかを観察する。低血糖発作に備えて、角砂糖やブドウ
糖液を用意しておく。
急性低血糖症状
インスリン静注後の低血糖による症状の進展(Sussman,1963)
血糖(mg/dl)
90〜
副交感神経刺激症状(空腹感、悪心、あくび、徐脈、軽い血圧低下)
70〜
大脳機能低下(傾眠、あくび、倦怠、自発言語の減少、計算不能、記憶減退)
50〜
交感神経刺激症状(収縮期血圧上昇、頻脈、過呼吸、発汗)
30〜
低血糖性昏睡(全身痙攣、昏睡)
10−
2、けいれん発作
脳血管障害後にけいれん(てんかん)発作を生じ、抗痙攣薬の投与を受けている対象者が
いる。けいれんは四肢(とくに麻痺側)の 1 部から始まることが多く、疲労が蓄積した時
に起こりやすいので、その日の様子をよく観察して訓練内容を決める。発作が生じたら安
静にし、起動を確保した上で、救急車の要請などの対応を講じる。
3、脱水状態・熱中症
脱水状態は、意識の消失・血栓を発症させる恐れがあります。脱水による体重減少度でみ
ると、4%で運動の抑制、6%で体温上昇・手足の震え、10%で筋痙攣・失神・腎機能
不全がおこる。高血圧で、利尿系の降圧剤を服用している利用者は脱水状態におちりやす
いので、特に注意する。
熱中症の発生は年齢、健康状態、運動習慣の有無、疲労、睡眠不足、二日酔いが関係する。
気温30度以上、湿度80%以上、無風、屋内では危険性が高まる。
上記の目安は、成人が基準になっている為、考慮して注意する。
4、転倒予防
以下に疾患または、薬物を服用している場合、注意要し危険予測を立て指導にあたる。
循環系の異常
1、低酸素血症
2、起立性低血圧
3、低血糖、
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神経系の異常
1、パーキンソン二ズム
2、脊髄後索障害
3、末梢性ニューロパシー
4、てんかん
5、小脳障害
6、ミオパシー
7、片麻痺(脳血管障害)
転倒を生じやすい薬物
1、睡眠薬・精神安定剤・抗不安薬
2、抗うつ剤
3、その他の抗精神病薬
4、降圧利尿剤
5、その他の降圧剤および血管拡張剤
6、非ステロイド鎮痛消炎剤
7、強心剤など心疾患治療薬
8、抗痙攣剤
9、抗パーキンソン病薬
10、 鉄剤
5
疲労度のコントロール(over use)
疲労しすぎも、体調不調・感染症かかり易い恐れがある。特に腎不全・コントロールの悪
い糖尿病・肝機能障害・低血圧は疲労しやすい。
臨床的には、訓練による疲労が訓練直後にあってもいいが、数時間休息したあとで残って
いる場合、特に次の朝まで持ち越すような場合には、運動量が多すぎたものと判断し、訓
練の時間または密度を減らすようにする。しかし、よくなりたい一心で疲労を隠し、訓練
をしすぎる利用者もいれば、逆に意欲が無く、疲労を誇張していう利用者もいるので、総
合的判断が必要になる。
6、骨折・関節痛の危険
片麻痺の麻痺側肢は、骨密度が低下している事が十分考えられる為、骨折の危険性も考慮
しておく。
慢性関節リウマチ・パーキンソン等は、関節炎を起こしやすく、パーキンソンは腰部・膝
部に痛みがでやすい(特有姿勢の為)。
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7、褥瘡の悪化と発症の危険
褥瘡の確認は必ず行うようにする。褥瘡がある場合は位置を確認し、悪化しない様に配慮
する。短下肢装具の装着や、座位での訓練は、踵・坐骨部に発症させる恐れがあるので、
注意をはらう。褥瘡は感染症の恐れがあるので、管理には専門職の連携が必要である。
8、感染症の感染経路(保菌者)としての危険性
感染症は、脳血管障害・脊髄損傷・体力が弱まっている利用者にとって感染し易く、生命
にも危険を招く恐れのあるものである。衛生管理に気を付け機能訓練指導員自身が感染者
なり、他の利用者への感染経路にならないように、十分注意する。
主な感染症
1、感冒
2、MRSA
3、梅毒
4、B 型肝炎
C 型肝炎
5、結核
6、白癬
7、インフルエンザ
8、疥癬
ヒゼンダニという、ダニの 1 種が皮膚に寄生しておこります。
皮膚にいろいろな症状がでます。かゆみは夜中にひどくなるのが特徴で、小さな赤いブツ
ブツ(小丘疹)、外陰部の小さなしこり(結節)、手や指の小さな水ぶくれ、など、いろい
ろなタイプの皮疹を生じます。これは、虫体や糞に対するアレルギー反応と思われます。
感染経路
寄生されている人と密接に接触することです。(添い寝、SEX)
感染力
比較的弱く、ヒゼンダニは乾燥に弱く、人間の体を離れると比較的短時間で死んでしま
います。
疥癬虫(ヒゼンダニ)の生態
卵は3〜5 日で孵化します。幼虫は皮膚の上を自由に歩き回ります。脱皮を繰り返し、2
wほどで、成虫になります。交尾したメスが皮膚の中にトンネルを掘り進みながら、1ヶ
月くらいのあいだ、毎日2個から3個ずつ卵を産みます。
症状
感染してから約1ヶ月の潜伏期間をおいて、発症します。(ノルウェー疥癬は1w前後)
夜間の強い痒み、皮膚症状。
予防
乾燥に弱く、人体の温度以外には適しない為、人体を離れると数時間で、感染力が無くな
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るといわれています。手などで接触すると 10 分程度で感染するので、消毒用アルコール等
の消毒が一番有効と思われる。
参考
別冊総合ケア
老人の転倒と骨折
目で見るリハビリテーション
老人の疾病と運動処方
機能訓練事業ガイドライン
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9.利用者・家族のモジベーションが低い場合の対応について
機能訓練を行うときに本人・家族のやる気は最も重要である。
又、その担当職種のモジベーションも合わせて重要になってくる。
(担当職種が、行っても効果がないと思って行っていては、効果の出る確率は低い)
利用者のモジベージョンが低い場合
・ 機能訓練の意味を理解していない場合
・ 障害受容が出来ていない場合
・ 行っても無駄だと思っている場合
対処方法は千差万別でケースが同じ場合でも利用者の性格により対応が変わってくる場合
もあり非常に難しい事であります。
★ 原因は何か
★ 対処法は
★ 担当職種は
先ずはこの3点を明確にする必要があると思います。これを明確にすることにより方向性
が見えてくる場合も多くあります。
具体的には受容と共感を行い、その人の内的現実と外的事実から行動を見るようにする
利用者や家族が「何故、機能訓練を行うとしないか」を考える
★機能訓練を行う必要がない場合も勿論考えられる。
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10.ディマンドとニーズについて
① ディマンドとニーズをどの様に摺り合わせるか
② 日常生活目標を用い利用者とともに考える
★ ディマンド志向型機能訓練の特徴
利点:ディマンドなので利用者に受け入れられやすい
欠点:その訓練を行うことにより状態が改善しにくい
★ ニーズ志向型機能訓練
利点:行っている訓練に目的があり、状態が改善しやすい。
欠点:利用者に受けいられない場合がある
機能訓練の場合、利用者のディマンドのみを行うことは非常に簡単である。
しかし、その先にある、
『訓練を行った結果』を考えると『ニーズの為の機能訓練』でなけ
ればなりません。
注:ニーズとは利用者にとってQOLを維持向上するための解決すべき課題のことです。
機能訓練を行うことによって、利用者の状態が改善される必要があります。この場合の利
用者の状態とは単に、部分的な機能障害のみを示す事ではなく、能力障害や人的・物理的
環境を含めた社会的不利を示すものです。
ディマンド=ニーズになるためには利用者と共にどの様な生活を行うのかを話し合う必要
があります。
生活目標を詳細に話し合い、表にして目で確認して、イメージメイキングを行う必要があ
ります。このイメージメイキングを上手く行えるかどうかも大切なポイントになります。
下記の「具体的な生活目標」について表を埋めていくことによりディマンドがニーズに変
わっていくと思います。
一度活用してみて下さい。
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利用者名(
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)連絡先(
)
担当介護支援専門員名
作成年月日(
年
月
日)要介護度(要支援・1・2・3・4・5)
① 生活目標
(具体的に)
② 生活様式全般
洋式・和式(どちらかに○を打って下さい)
③ 家屋内移動
移動方法は(独歩・掴まり立ち・杖・車椅子・その他)
必要な機器として
次のステップ時期
④ 寝具
布団・ベット(2モーター・3モーター)
必要な付属品は
サイドレール・ターンテーブル・介助バー・褥瘡予防具
特記事項
寝具周りの改修
リスクマネージメント
⑤ 排泄
問題点は
方法
(トイレ・ポータブル・採尿器・オムツ)
本人の希望
家族の希望
必要な機器
⑥ 入浴
本人の希望(自宅・施設・訪問入浴)
入浴方法
自宅(自力・介助)・施設(一般・機械)・訪問入浴
介助の方法
訪問介護・訪問看護・訪問入浴
医師の指示
可・不可(
⑥−1(自宅)
問題点は
)
浴室への移動方法
洗身姿勢
浴槽への出入り
必要な付属品
⑦ 食事
入浴の(不・可)
問題点は
場所
姿勢
食材や料理法
医師の指示
必要な物
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⑧ 日中安静
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問題点は
何処で
どの様な姿勢で
必要な機器
⑨ 外出手段
問題点は
外出方法
(独歩・介助・歩行器・車椅子・その他)
必要な機器は
必要な住宅改修
⑩ 外出機会
問題点は
定期的な外出機会
(有・無)
本人の意向
家族の意向
具体的な外出方法
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11.拘縮のある利用者に対して(作成中)
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12.痴呆のある利用者に対して
痴呆のある利用者も通所介護・ショートステイ・介護老人福祉施設に見える場合もありま
す。痴呆のある利用者に対しては、難しいとは思います。特に接骨院への来院の頻度が低
く、対応方法にも知識が必要になります。二つの原則(下記の痴呆があったときの対応方
法の①・②)を理解し、ケースバイケースで接して下さい。
痴呆があったときの対応方法(痴呆の方への接し方)
① 痴呆患者の特性を把握し対応する
② 問題行動の原因を掘り下げて考える
◎:ワンポイントアドバイス
×:好ましくない事
◆:対象者の反応●:良い反応
(太字下線は接し方のポイントです)
①物忘れ「ご飯はまだですか」
◎ 話題を変え、
「忘れること」を利用する
何が事実かで争うことではなく、本人に納得してもらうことです
×「さっき食べたでしょ」→◆反感「私は食べていません」・・・・・・反感を持つ
◆被害妄想「自分達だけ食べて私には食べさせてもらえない」
●「もうすぐ出来るから待っていてね」・・・・・・・待っている内に忘れてしまう
●ちょっと作るの手伝って
★ 「何となく口淋しい」→不満が原因(機嫌をよくする)
★ 「自分の好きな物を食べさせてもらえない」→日頃から本人の好きな物やチョットした
お菓子等を用意しておく
●「もうすぐ出来るから、それまでこれで我慢してね」
②妄想「財布を盗まれた」
◎同じ感情を共有して、味方になる
■大切な物を『なくしてはいけない』とどこかにしまい、そのまま忘れてしまう
◆:疑う・・・・・使おうと思ったらそれがないので「これは怪しい。誰かが取ったに
違いない」
×「私じゃないわよ」
◆「自分が取ったと自白する盗人がいるはずがない」
●「それは困りましたね。一緒に探してみましょう」・・・・・一緒に探す
●みつけても自分の手柄にしない→上手く導いて自分で見つけてもらう
(この辺りを探してみましょうか?)
●喜びを分かち合う・・・・・「あったぁ、良かった」
◆ 「やっぱりあんたが盗んだのでしょう」
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③見当識障害「今日は何日だい」
◎同じ立場になり不安を取り除く
■不安の裏返し・・・「何日か」を知りたいのではなく、今がいつで、ここが何処なのか
が不安
◆「今日は何日だい」
何度でも繰り返し聞く
●決まったところに大きな日めくりカレンダーを掛け、その前へ行き「今日は○日なの
ね」と一緒に納得する(介護者の心の余裕がないとき等に手っ取り早い一つの方法)
×つっけんどんな受け答え→×悲しい思いをする
④人物誤認「あなたはどなたですか?」
◎否定しないでまず受け入れる
新しい記憶がなくなってしまう。→別の人(両親・兄弟・友人等)と間違える
●強く否定しないでその人になりきってしまった方がいい場合がある
◆泥棒だとか恨みを持っている人と誤認して興奮する
→言い争うと余計ややこしくなるので一回姿を消してから、機先を制し改めて訪れる。
●「ただいま帰りました。○○です」と言って認識してもらう工夫をする
⑤異食「生ゴミや輪ゴムなど食品でない物を食べようとする」
●食べられない物や危険な物を目の届かないところ、手の届かないところへしまう
●食べ物を探すような行動を始めたら、お菓子や果物を上げて気を反らすようにする
⑥徘徊「家に帰る」
「帰り道がわからなくなる」
◎高齢者の安全を守るネットワーク作りを
徘徊の主な理由
・ 自分がまだ現役であると錯覚して通勤してしまう
・ 何か用事を思いついて出掛けてしまう
・ 自宅にいると認識が出来ずに「家へ帰る」と言う
・ 何となく外の空気がすいた。歩いてみたい。
《対策》
●一緒に出掛けて季節の事などを話しかけたり、公園で休んだりして、気が晴れたら帰る
・ 玄関のとにベルを掛ける
・ 名札、名刺、ペンダント・・・・住所・名前・電話番号を書く
・ 地域の人に協力してもらう・・・
よく行く商店街、スーパーの人などに「一人歩き」をしていたら教えてもらうよう予めお
願いをしておく。
「徘徊老人
SOS ネットワーク」
主旨:痴呆性高齢者の問題に地域全体で取り組んで、その人の生命や安全を守ろう・
● 自治体、保健所、保健センター、福祉事務所、警察などの公的機関のほか、バス・タク
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シー・会社・病院・「家族の会」などが連携して早期の発見、保護、アフターケアを行
う
⑦幻覚「誰かが狙っている」
◎説得よりも安心感を抱かせる
◆「そこに妖怪がいる」
「泥棒が狙っている」
●「私がいるから大丈夫ですよ」「一緒に退治しましょう」
×「なにもないじゃない」
本人は本気で怖がって騒ぎ立てる→説得しても納得しない
あまり続くようなら専門医に相談
・ 精神が安定する薬を出してもらう
・ 生活指導を受ける
⑧人格変化「腹を立てて攻撃的になる」
◎介護者が冷静になって対応する
感情をコントロールする能力の低下
様々な思いを上手に表現することが出来ないもどかしさの現れ
×介護者が平静さを失うとより増幅する
●上手に話題を変えながら注意を別の方向に持っていく
取り敢えずその場を離れ、一定時間、間をおいて本人が忘れるのを待つ
日常生活や環境をもう一度見直して、原因となることがもしあればそれを改めてみる
⑨問題行動「失禁・不潔行為」
◎厳しく叱責する事は逆効果
不潔行為・・・「失敗したことを隠したい」羞恥心、自尊心の現れ
● 生活リズムを把握する・・・そろそろ用便かと思うときに一緒にトイレに行く
● 失禁時は平静に始末を行う「チョット濡れたから替えましょうか」
「新しい方が気持ちいいですよ」
☆「用便は健康状態を示す」ひどい下痢、便秘、尿の出が悪い→医師に相談
⑩夜間せん妄
夜起きだしてウロウロと歩いたり、幻覚を本当のように思い込んで怯えたり、興奮して錯
乱状態になることもあります。
● 気が紛れるように、他の部屋に誘ったり、お茶を飲むようにしたりする
×無理矢理静かにさせたりしない→何時間かで落ち着く
☆身体の健康状態をチェックする→体調が悪い。水分摂取不良など
⑪性的行動
異性介護者に触ったり、抱きつこうとしたりすることがあります
×「厳しく叱責」「鋭く拒絶」→気持ちが高ぶってしまう→手を握って納得してもらう
● 上手く気をそらす→大きなぬいぐるみを2人で一緒に持つ
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13.疾患別の問題点
具体的な例として代表的な四つの疾患について書きます。しかし、これが全てではありま
せん。利用者によってケースバイケースです。あくまでも参考例だと思って下さい
疾患別の問題点
(1)脳梗塞
① 再梗塞予防
② 運動障害に関連したADL自立の困難
③ 感覚障害、運動障害、認識力の低下による転倒、骨折、皮膚損傷
④ 失行、失認、精神知能障害に関連した日常生活能力の低下
⑤ 言語障害に関連したコミュニケ−ション障害
⑥ 排尿障害、運動障害に関連した失禁、便秘
⑦ 嚥下困難に関連した食事摂取量の不足による栄養状態の低下
⑧ 障害受容に関連した闘病意欲の低下
⑨ 患者の退院に関連した家族の受け入れ、介助能力の不足
(2)パーキンソン病
① 転倒・転落
② 栄養状態の悪化
③ セルフケアの不足
④ 便秘・排尿障害
⑤ コミュニケーションの障害
⑥ 不眠
⑦ 家族の不安
⑧ 肺炎
⑨ ボディーイメージに関連したストレス
⑩ 褥瘡
⑪ 尿路感染
(3)脊髄損傷
① 血管中枢の障害による脊髄ショック
② 体位性低血圧
③ 損傷部位の整復固定による苦痛
④ 知覚・運動機能障害による呼吸不全(頚髄損傷の場合)
⑤ 知覚・運動機能障害による褥創
⑥ 排尿中枢障害による排尿障害
⑦ 排便機能障害による排便障害
⑧ 知覚・運動機能障害によるセルフケアの不足・
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⑨ 廃用性症候群
⑩ 身体機能の喪失に関連したボディーイメージの障害
⑪ 身体機能の喪失に関連した自己尊重の低下
⑫ 身体不動性に関連した家族の介護における家族プロセスの変化・性機能障害
(4)頭部外傷(慢性期)
① 上気道感染や沈下性肺炎を起こしやすい
② 尿路感染を起こしやすい
③ 排尿の自立困難
④ 便秘になりやすい
⑤ 食事摂取の自立が困難
⑥ 清潔保持の自立が困難
⑦ 四肢の拘縮を起こしやすい
⑧ 褥創ができやすい
⑨ 意識障害があり社会生活が困難である
感染症に対する対応について
接骨院に来院される患者さんでは問題になるようケースは少なく思いますが、施設内には
感染症の方もみえます。
重要なことは、自分が感染しないことも勿論ですが、自分自身が感染源となり広めてしま
うことが一番怖いのです。
感染症に関して正しい知識を身につける必要があります
・ MRSA
・ インフルエンザ
上記の2点は『大阪府健康福祉部高齢介護室HP』を参考にして下さい。(クリック)
・ 疥癬(資料4)
豊島区HPより抜粋
★ 関連職種間での対応については『感染症利用者への対応チャート参照』
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14.福祉用具についての知識
福祉用具の基本知識
在宅生活の考え方
①
寝たきりから居室内生活
★ベットといすの生活
②
→
移乗の為の機器
居室内生活から屋内生活
★ 排泄はトイレ・入浴は浴槽・食事は食堂・憩いは茶の間
→車椅子等への移動・移乗のための機器
③
屋内生活から屋外生活へ生活習慣を拡大
★屋外へのアプローチ
→
車椅子・電動車椅子
① ベット+車椅子+ポータブルトイレ
→
これだけで寝たきりを防げない
② 寝たきり予防の第一歩は座らせること
③ 福祉用具は早めの導入を行う。ギリギリの導入では効果は少ない
④ 生活者の視点で選ぶ→自分ならどれを選びますか
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Ⅰ:車椅子について(自走用標準型車いす・普通型電動車いす・介助用標準型車いす)
車椅子の種類を決めるときの注意点
用途は色々あるが本人・家族は車椅子に何を求めているかで種類が変わってくる
Q:どうして車椅子をほしいと思ったのですか
?
A:手足が不自由になったので
A:片麻痺になったので
その人のニーズをつかみ車椅子を選ぶようにする
★ イスとしての機能は
★ 車としての機能は
★ 介護保険給付内でどこまで対応できるか
★ 自走型か介助型か
?(体が少しでも動かせるならば自走式の方がよい)
★ 移乗のことも絶えず頭に入れて車椅子を選ぶ(安全によい姿勢で座れるか)
★ 褥そうにも注意をはらう(座骨や尾骨部)
タイヤの位置
イスとタイヤの幅が近いと動かしやすい
(イスに座って手を下げたときに手先がタイヤの中心になるのがベスト)
後輪の車軸について
★ 重心より前についている→こぎやすい
★ 車軸と重心が一致すると小回りが利く
座面の高さ
★ 足でこぐタイプは座面の高さが重要になってくる(足がしっかりつく必要がある)
★ 一般には立ち上がりやすい高さ
座幅
★ 座って両手が横に入る幅
★ 380㎜だとタイヤが近くなるので操作が容易
肘掛けの高さ
クッションをおいて調整する
移乗について
→
移乗を楽に安全に行う方法を考える
★ 移動1回につき移乗は2回発生する為、移乗手段も絶えず頭には入れておく
★ 移乗が大変だと生活空間が狭くなる
★ ベット→車椅子(スライディングボード)
★ ベット→浴室・トイレ(シャワーキャリー)
移乗のバリエーションを考える
★ 立位移乗
★ 座位移乗→スライディングボードの活用(特殊寝台+肘掛けのとれる車椅子)
★ 全介助→リフト・ホイスト
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一般的な車椅子の選び方(あくまで参考にして下さい)
ケース1:施設内だけで使い、両手で車椅子をこげる場合
鉄製のスタンダード型でもよい。ただし、車輪や座面サイズは体格にあわせて
大きすぎないように。
ケース2:屋外を押してもらいながらの散歩用
アルミ製の介護型車椅子がよい。長期間の使用でも錆びず、また小さいので玄
関先などに置いておいても邪魔にならない。
介助者用ブレーキをつけるのも良い。
ケース3:狭い屋内で自力駆動して使う場合
介護型の車椅子でフットレストが取り外し型のもの。
これを足で床を蹴って移動すれば、狭い家屋内でも座位保持用・移動用ともに
目的を達することができる。
最近は「介護型の大きさで自力駆動可能」というヒット商品もある。
ケース4:車椅子を自家用車に積んで持ち運ぶ必要があったり、車椅子を施設・家庭間を
往復させ使う場合
アルミ製で軽くし、同時に「背折れ背もたれ」に「フットレスト取り外し式」
として、小さく収納できるようにするのが良い
Ⅱ:車いす付属品について
車椅子付属品を決めるときの注意点
クッションについて
★ 素材に注意をする
★ クッションの厚みと傾斜に注意をする
★ 安定した姿勢で座ることが重要、合っていないと褥そうが出来る(尾骨の褥瘡)
電動補助装置
★作成中
テーブル
★作成中
ブレーキ
★作成中
在宅酸素ボンベ台(介護保険のレンタル対象外)
★ ボンベの大きさをはかってくる。(ニックは2種類有る)
★ 購入かニックのレンタルを活用する
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三谷
朋麿莉作成(2001年9月7日)
Ⅲ:特殊寝台について
【ベットの機能とは】
①安静臥床するのにふさわしい機能
②介護しやすいポジショニング機器としての機能(寝たきりと座位が取れるのかで異なる)
③起居動作する
場 としての機能〜椅子としての機能まで(利用者の状態により異なる)
1.ベットを導入するか?布団のままにするか?
【ベット導入の利点】
① ベット上での起き上がり動作を助け、車椅子等への移乗を楽に行える
② 介護者の負担が少なくすむ
【いつ導入するのか?】
① 床から立ち上がりが困難になり始めたら
② 夜間トイレによく起きる人
【布団が良い場合】
① はったり、座ったままで移動する人
② 危険防止を図りたい人
③ ベットに対する抵抗感の強い人
④ 生活空間を広く使いたい人
2.電動ベットの種類
① 1モーターベット(ベットに座ることのみが目的ならばこれが最適)
② 2モーターベット
③ 3モーターベット(背上げと膝上げが個別に動く)
④ 4モーターベット(3モーター機能+ティルト機能付き→特殊な場合)
2モーターは背上げと膝上げが連動しているが、膝のあがるタイミングが少し遅いために
身体が足元にずり落ちやすい。
3モーターは背より先に膝を上げる事が出来るので身体がずり落ちにくい
お尻りが滑る場合は三角クッションを膝の下に噛ませお知りが滑らないように工夫する
3.寝心地について
マットレスが選定のポイントになります。マットレスの種類については④に記載
★ 固さに注意をする。軟らかすぎると寝起きが行いにくくなる
4.離床動作
寝るための道具+起きあがるための道具→寝心地と離床動作を考える
【寝返りについて】
★ マット幅とベット柵が重要な要素になります
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① マット幅(83〜100㎝)
介護中心に考えるのか、本人動作を中心に考えるのか
これによって異なってきます
830(パラマウント・ケプロ)850(フランスベット)900(ケプロ)
910(パラマウント)1000(アイシン)
② ベット柵
★ ベット柵を引っ張って寝返りをする際は、ベット用の手すりが必要(固定が甘いため)
【起き上がり】
★ 起き上がりをする人は、肘をついて起きあがる為、その分のベット幅が必要になります
★ RA の人は早めの導入が必要(首を持ち上げると環軸関節の脱臼を起こす)
★ 起き上がり側の足元の柵は、足をおろしやすいようにつけない場合が多い
【端座位保持】
★ 足が床について上体をやや前屈出来る高さが適当(足が付かないと座位が不安定)
★ ベット用手すりは、端座位になったときに姿勢を安定させる
★ 家具屋のベットは高さが低い場合が多い
【立ち上がり】
立ち上がりの動作ポイント
① 膝と腰を伸ばす力とバランス
② イスの高さが高いと楽(ベットのハイ・ロー機能を活用)
③ 上体を前傾させて足を後ろに引く(ベットの下に隙間がないとやりにくい)
Ⅳ:特殊寝台付属品
① サイドレール
② マットレス(下のマットレスの種類について参照)
③ ベット用手すり(P型とR型がある為用途によって使い分ける)
④ テーブル(オーバーテーブルと座位保持テーブルがある)
★ オーバーテーブルの場合背上げをした際に体が足元にずり落ちてテーブルが
使いにくくならないように注意する
★ 座位保持テーブルはテーブルの脚部がベットの下にはいるか注意が必要
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マットレスの種類について(フランスベットHPより)→要介護度は目安です
●スプリングマットレス
筒状のスプリングを使用し、睡眠を重視したマットレスで、背上げ、脚上げを行っても体
になじむよう工夫されており、要介護度1程度までの方に最適
●ファイバーマットレス
ポリエステル繊維をかためたマットレスで、かためにできており、介護される方のリハビ
リや、介護する方がマットレス上で力のいる介護作業をするときに最適です。要介護度2,
3の方に適している
●ヴィスコマットレス
粘性と弾性の性質を合わせ持つ低反発ウレタンのマットレスで、耐圧分散効果が高い(床
ずれ予防効果大)上に、マットレスが揺れないので力をかけることができ、介護がしやす
い。また体が硬直していて横を向いて寝る人には最適。床ずれ予防に対し開発されたもの
で、要介護度3,4,5の方に適している
●エアーマットレス
エアーセル(素材は多種)に空気を送ってクッション材とし、体圧分散効果が大で、空気
噴出型(空気を噴出して湿気を取り除く)、波動型(エアーセルが膨らんだり縮んだりして、
体にかかる圧力の位置を変える)、体位変換型があり、これらの型を組み合わせたものもあ
る。床ずれ予防に対し、開発されたもので、要介護度4,5の方に適している
●ウォーターマットレス
水を袋に入れてクッション材としたマットレスで、体圧分散効果が大で、ヒーターがつい
ているため体の弱った方や冷え性の方に最適。床ずれ予防に対し開発されたもので、要介
護度4,5の方に適している
この中で、その人に合ったマットレスを選定するようにする。セットでの導入に頼るのは
危険である
Ⅴ:褥瘡予防用具について
褥そうの主な原因について
① マットレス等の体圧分散が悪く、腰・肩甲骨・かかと等への圧迫
② ベット背上げ時・身体の移動時のズレ摩擦による細胞の断裂
③ 体表面の過温度・汗湿気等による皮膚の弱体化及び摩擦係数の増加
④ 湿気及び通気の悪い環境による雑菌繁殖等の非衛生状態
⑤ 療養されている方の身体状態・体質・栄養面等個人差部分(ケプロのコピーより)
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エアマットの床ずれ予防効果
1.床ずれの主な原因:圧力
1)寝床と骨との間の肉が薄いところで局部的に他より高い体圧が出来ます。
2)高い圧力で血管が押しつぶされ、血が流れなくなります。
3)押しつぶすほど高い圧力でなく、血の流れが極度の減る状態が長時間持続すると、
同じような結果になります。
4)血管の圧力は心臓に戻る側が一番低いのですが、コレは点滴したときに点滴液が残る
高さで分かります。
2.体圧と持続時間の関係
1)イギリスより帝国臓器さんがエアマットを導入した時、イギリスの病院で体圧と持
続時間と組織許容の関係を調べた論文が発表されています。
2)その論文での表は帯の形で表されていますが、簡単化すると以下の通りです。
体圧(gr/cm・cm)×持続時間(hr)=400
この式より高い領域では床ずれになって行きます。
3)2)項は健常者の値のようです。体が弱った人、肉があまりなく、体内で圧力が分散
しにくい人は、上記の値は、経験的に更に下がり、以下の関係のようです。
体圧(gr/cm・cm)×持続時間(hr)=250
体圧とは表面の圧力であり、体内では更に上がり、痩せている人ほど体内での圧力集
中が高まるためと思われます。
3.従い完全に体圧ゼロにする必要はない。
また高い圧力に設定するとエアマットでも床ずれは出来ます。
寝返りでコレを実現しても同じ事ですね。
【エアマット導入時の注意点】
① 寝たきり=エアマット
の考え方は×
寝返りが十分出来る場合は不要
② 自力もしくは介助で起座する場合導入は慎重に→不安定なために
③ 完全適応の方
・ 全く意識がないような植物状態の方
・ 意識はあってもごく重度な障害の方など
④ 褥瘡予防効果の高い物を選ぶ→情報をまめにとる
⑤ マットが同じ素材で有れば分厚い方が体圧分散しやすい→本人は動きにくくなる
⑥ セルの数が多いほど細かく動く
⑦ 基本的には、ビニールの上に寝るので汗かきの人は噴気タイプがよい場合もある。但し
噴気タイプ(サンケイ)体は蒸せにくいが接触圧が係る
⑧ スーパー介助マットは意識のない人は×
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Ⅵ:歩行器
歩行器の種類を決めるときの注意点
① 歩けないから歩行器なのか
?
歩きにくくなったから歩行器なのか
?
② 歩行器は外での実用性は低い
③ 膝の悪い人は四輪歩行器(足の支持を助ける)
④ 腰の悪い人はシルバーカー
⑤ タイヤの大きいほど屋外の適応度は高い
⑥ 歩行器の高さは、手すりの高さと同じ
Ⅶ:歩行補助つえ
歩行補助杖の選定の注意点
① 多点杖の場合は屋外での使用は極力さける(特に坂の場合転倒の危険が高い)
② 自宅でのリハビリはメリハリをつける。訓練は自宅内ではなく外に求めていく
Ⅷ:痴呆性老人徘徊感知機器
コミュニケーション機器に関して
介護保険でのコミュニケーション機器の給付は認められていないが、身障法の中では認め
られる物もある。(障害者日常生活用具の一覧を確認のこと)
この際には、対象者・性能・限度額・耐用年数・備考に注意する(別表に書かれている)
Ⅸ:移動用リフト
移動用リフトについて
① ホイストは上からつり上げるものでリフトは下から上に上げる物
床走行式
★
畳や絨毯の上では動かしにくい
★
ベットで使用する場合は脚部がベットの下にはいるのかが重要になる
★
移乗を目的としているので室内のみの利用が原則
設置型
ベット⇔車椅子ならばこれが最良
リフトにフレームがある為、足元が邪魔になる
天井走行式
★リフトで一番使いやすいのは面移動型である(ベット⇔イスの生活がイメージできる)
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Ⅹ:ポータブルトイレについて
【ポータブルトイレの満たすべき条件】
① 立ち座りしやすい
② 安定性が良いこと
③ フタの開け閉めが行ないやすいこと
④ 臭いが漏れないこと
⑤ 清潔保持しやすいこと、お掃除しやすいこと
⑥ 見た目が良いこと。
⑦ 立ち・座りの行いやすい条件とは
・ 座面の高さが40㎝程度であること
・ 腰かけた姿勢で、ある程度膝を曲げて足を後ろに引くことができること
⑧ 便座穴の位置と形
・ やや縦長の穴が座面の真ん中から前方に開いたものが理想である
・ 実際には座面はむしろ広めである場合がほとんどです。
『ホイストについて』
★ホイストはアセスメントが必要な物である(吊り具のアセスメントを参照)
★細分化されているために、専門事業者の意見を必ず聞く
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福祉用具が活用されない場合について
① 活用されない状況を考える
★利用者あるいは介護者が用具を使えない
★利用者あるいは介護者が用具を使おうとしない(使いたがらない)
★住宅の状況や他の福祉用具とあわないために使えない
★利用者の状態が変化し使えなくなった
★用具使用をきっかけに利用者の状態の悪化を引き起こした
② 状況を引き起こした原因について
【利用者の生活全般に関するアセスメントの不足】
・介護者の意向・介護負担の把握が不十分
・利用者本人の要望・生活習慣・身体機能の把握が不十分
・疾病・投薬状況等による身体状況の変化の予測が不十分
・利用者のADL向上の可能性のみに着目し、介護者や住宅の状況等を含めた全体的な状
況判断が不足
【利用者・介護者の意識】
・利用者や介護者が、福祉用具を利用した際の状況改善のイメージが出来て
いなかった
・用具導入効果の期待と現実のずれが大きく、利用者あるいは介護者の満足
度が低かった
・利用者と介護者との間に要望のズレがあった
・用具導入後、利用者あるいは介護者に用具を用い状況を改善する意欲が
低下した
【事前の使用方法の説明やフィティングの不足】
・事前のフィティングが不十分(利用者にあうものが選択されていない)
・導入された用具の使用方法が良く分からない
③
原因の背景にある問題状況
・利用者の状況を総合的に判断するためのカンファレンスの不足
・福祉用具導入・活用に関わるキーパーソンがはっきりしていない
・使用方法の指導や継続的なフォローアップ体制が整っていない
・利用者・介護者のニーズの変化に応じ用具を取り変える体制が整っていない
・入手可能な用具の種類が少なく、選択の余地が乏しい
・措置制度が適用される用具に制約があり、選択の余地が乏しい
・用具に関する情報不足で適切な選択が困難
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福祉用具の導入による効果について
① 利用者の身体機能の維持・向上が可能となる
② 介護負担が軽減した
③ 利用者の不安が解消、自信・自尊心の維持が可能となる
④ 利用者あるいは介護者の生活の幅が拡大
⑤ 利用者あるいは介護者にリハビリや生活の意欲向上が見られた
効果を得るために必要な条件
① 総合的なアセスメント
② 利用者・介護者との話し合いに基づく用具の選択・導入決定
③ 事前の説明やフィティング
④ アフターフォローが十分
これらの条件をクリアーした際にのみ福祉用具導入の効果は出てきます。
もしも効果が出ていないのならば、どこに問題があるのかを再確認しましょう。
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15.住宅改修についての知識(作成中)
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16.機能訓練アセスメントシートについて
日本接骨学会発表後に掲載予定
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17.事例について作成中です
引用資料:千葉県
石橋
和正先生の資料より
参考文献:日本版 MDS-HC2.0 在宅ケアアセスメントマニュアル(医学書院)福祉用具ア
セスメント・マニュアル(中央法規)初心者のための POS ワークブック(日総研出版)・
痴呆介護(日総研出版)
・福祉住環境コーディネーター2級テキスト
機能訓練事業ガイドライン(厚生科学研究所)
・現場生まれの介護テクニック
引用HP:
・大阪府健康福祉部高齢介護室(http://www.pref.osaka.jp/osaka-pref/korei/)
・新潟国立療養所 HP(http://www.saigata-nh.go.jp/)
・豊島区 HP(現在は閉鎖)
・(株)フランスベット(http://www.homecare.ne.jp/)
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更新履歴
2001/09.07:Ver4.01 に更新
6.機能訓練指導員仕事の流れ更新(担当者会議について)
8.危機管理についてを更新(リスクマネジメントの考え方)
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