O-1 当院における生体肝移植後の門脈血栓の発生危険因子の検討 武田 和永 1、熊本 遠藤 格 1 1 横浜市立大学 宜文 1、野尻 和典 1、森 隆太郎 1、谷口 浩一 1、松山 隆生 1、田中 邦哉 2、 消化器・腫瘍外科、2 帝京大学千葉総合医療センター 【背景】肝移植術後合併症における術後門脈血栓症の頻度は、0.3-2.2%と低率ではあるが、いったん発症すると致命的な 場合もある。【目的】生体肝移植後の、術後門脈血栓発生危険因子を明らかにする。【対象と方法】当院での生体肝移植 59 例中、術後門脈血栓を発症した 4 例(6.7%)を対象に、門脈血栓非発症例(n=55)と比較し、門脈血栓発生危険因子を検 討した。【結果】術前因子では、レシピエント年齢、ドナー年齢、MELD score, ABO incompatibility で差を認めなかっ たが、術後門脈血栓例では、術前門脈血栓の併存率が 50%と、非発症例(n=4;7.2%)に比較し、高率であった(P=0.006)。 術中因子では、グラフト体重比、脾臓摘出率、門脈再建時の interposition グラフト使用率に差を認めなかった。一方で、 グラフト門脈 2 穴症例が、門脈血栓発症例で、非発症例に比較し、高率であった(血栓発症例 vs. 非発症例=50%:3.6%, P=0.0001)。また、術後合併症のうち、肝動脈血栓、急性拒絶反応、CMV 感染合併率は、差がなかったが、門脈血栓発 症例では、肝静脈狭窄合併率が高頻度であった(血栓発症例 vs. 非発症例=50%:10.9%, P=0.02)。術後門脈血栓発症 4 例のうち、2 例が術後 10 日以内の早期(1 日、10 日)に合併し、2 例が術後 30 日以降の晩期(45 日、133 日)に合併した。 早期血栓発症例では、術前門脈血栓の遺残(n=1)、グラフト門脈 2 穴(n=1)が血栓発症の誘因と推察され、晩期発症例で は、術後高度肝静脈狭窄合併(n=1)、グラフト門脈 2 穴(n=1)が血栓発症の誘因と推察された。 【結語】術後門脈血栓の 危険因子は、術前門脈血栓の存在、グラフト門脈 2 穴であった。とくに、グラフト門脈 2 穴症例は、術後早期だけでな く晩期でも血栓が発生しうるので、長期抗凝固療法が必要である。 O-2 中西 生体肝移植における術後門脈狭窄の危険因子に関する検討 渉、宮城 東北大学病院 重人、川岸 直樹、米田 海、原 康之、中西 史、佐藤 和重、大内 憲明 移植再建内視鏡外科 [目的]生体肝移植術において門脈狭窄は重篤な合併症である。我々はこの合併症を抑えるために、血管内皮細胞の保護効 果を有するガベキサートメシレートの全身投与を行っている。この薬剤は強力なセリンプロテアーゼ阻害剤であり、播種 性血管内凝固症候群にも有効である。本研究の目的は、術後門脈狭窄の危険因子について検討するものである。[方 法]1991 年から 2012 年まで当科では 153 例の生体肝移植術を施行した。これらの症例について、生存率および門脈狭窄 の発症について調査した。単変量解析および多変量解析によって、門脈狭窄の危険因子を検討した。[結果]5 年生存率は 79.6%であった。門脈狭窄の発症率は 7.2%であった。単変量解析の結果、P<0.20 であった危険因子は、高年齢 (P=0.0385)、重い体重(P=0.1840)、高身長(P=0.1122)、細い門脈内径(P=0.1379)、術中出血多量(P=0.0589)およびガ ベキサートメシレート低投与量(P=0.0103)であった。多重ロジスティック回帰分析の結果、高年齢(P=0.0073)、および ガベキサートメシレート低投与量(P=0.0339)が独立危険因子であった。[結論]多変量解析の結果、ガベキサートメシレ ートの全身投与は術後門脈狭窄の抑制に寄与するものと考えられた。 79 O-3 内藤 塚田 川崎 肝左葉グラフトを用いた生体肝移植後に発生した遅発性 outflow block に 対して Foley Balloon catheter の留置により改善を認めた 1 例 滋俊、石崎 陽一、松平 慎一、行田 悠、伊古田 正憲、伊能 壮、中山 祥未、水野 智哉、 暁、中山 昇、大黒 聖二、徳川 友彦、藤原 典子、須郷 広之、吉本 次郎、今村 宏、 誠治 順天堂大学 医学部 肝胆膵外科 【症例】症例は 60 歳、男性。C 型肝硬変及び肝細胞癌に対し、肝左葉グラフトを用いた生体肝移植を施行した。グラフ ト肝重量は 520g で、GV/SV 比=44.8%、GRWR=0.89%であった。左肝静脈、中肝静脈はグラフト肝に含み、端々吻合で 静脈再建を行った。術後 16 日目に超音波ドプラ検査で、門脈血流速度と静脈血流速度の低下を認め、CT 検査を施行し た所、門脈は造影されるものの、中肝静脈は造影されず S4 領域の鬱血を認めた。術後 20 日目に、ドレーンより大量の 腹水(最大 500ml/h)が出現し、プレショック状態となった。超音波ドプラ検査を行ったところ、肝静脈、門脈の血流が同 定できず、outflow block が強く疑われたため、緊急開腹手術を施行した。開腹所見では、肝円索と腹壁の固定が不良で あり、グラフト肝が右横隔膜下腔に落ち込み、肝静脈が捻じれ、静脈の還流障害を来していた。肝円索を上方に牽引し腹 壁に固定した後に、グラフト肝を正中に固定するため、右横隔膜下腔に Foley Balloon catheter を 2 本挿入した。その後、 静脈血流速度は改善し、再手術後 7 日目に CT を再検査した所、鬱血の改善を認め、再手術後 20 日目から Balloon を次 第に小さくし、最終的に再手術後 30 日目に抜去し、その後は合併症なく経過した。 【考察】肝左葉グラフトを使用した 肝移植術後ではグラフト肝が小さいために、横隔膜下腔に落ち込み、静脈の捻じれのために outflow block を引き起こと がある。outflow block は速やかな治療が必要である。今回、我々が使用した Foley Balloon catheter は簡便であり、グ ラフト位置の調節に有用であると考えられる。 O-4 生体肝移植後首尾よく治療ができた仮性動脈瘤 宮崎 晃行 1、高山 中山 壽之 1、緑川 1 日本大学 医学部 忠利 1、大久保 貴生 1、山崎 慎太郎 1、檜垣 泰 1、金本 彰 1、服部 桜子 1、幕内 雅敏 2 消化器外科、2 日本赤十字社医療センター 時夫 1、森口 正倫 1、 肝胆膵・移植外科 肝移植手術における肝動脈仮性動脈瘤は稀であるが死亡率の高い合併症である。生体肝移植術後に発生した肝動脈仮性 動脈瘤に対し早期診断・治療ができた症例を経験した。症例は 29 歳の男性。原因不明の劇症肝炎に対して、姉の右肝グ ラフトを用いて生体部分肝移植術を施行した。合併症として胆汁漏が残存したが、術後 33 日目に軽快退院となった。外 来経過観察中に後区域胆管のドレナージ不良が原因の肝機能障害を認め再入院となった。後区域胆管拡張評価のための継 続的な腹部超音波検査にて、門脈前区域枝右側に低エコー腫瘤を認めた。ドップラーエコーでは腫瘤内部に拍動性の血流 シグナルを認めたため、仮性瘤化した動脈瘤と考えられた。腹部造影CT検査では肝離断面右側に造影される 3.5×2.5cm 大の仮性動脈瘤を認めた。腹部血管造影検査では肝動脈からの噴射状の造影剤流出を認めた。術中肝下面の瘤内部の血腫 を除去すると右肝動脈吻合部より中枢側のレシピエント側動脈壁にできた径約 1mm のピンホールから出血を認めてい た。その出血点を単純縫合閉鎖して手術を終了とした。術前の血管造影検査において、オクルージョンカテーテルを出血 部より中枢側の肝動脈内に留置しバルーンを調整することにより、肝の虚血を回避しながら出血の制御に大いに役立ち手 術を安全に遂行できた。その後は大きな合併症を認めず血管修復術後 28 日目に退院し、現在当科外来通院中である。生 体肝移植術後の患者に対し継続的な腹部超音波検査により仮性動脈瘤の早期発見につながり首尾よく治療することが可 能であった。 80 O-5 生体部分肝移植後の肝動脈血栓症:早期診断と治療戦略について 雨宮 隆介 1、尾原 秀明 1、篠田 昌宏 1、松原 健太郎 1、日比 泰造 1、阿部 北郷 実 1、藤野 明浩 2、板野 理 1、星野 健 2、黒田 達夫 2、北川 雄光 1 1 慶應義塾大学 外科、2 慶應義塾大学 雄太 1、八木 洋 1、 小児外科 【目的】生体部分肝移植術後の合併症の一つである肝動脈血栓症(以下 HAT)は、グラフトの血流障害をきたし致命的とな る可能性が高い。当施設で施行した生体部分肝移植術後に生じた HAT を検討し、その危険因子、診断法、治療法につき 報告する。 【対象】1995 年 4 月から 2014 年 3 月までに当施設で施行した生体部分肝移植 210 症例を対象とした。肝動脈 再建は全例顕微鏡下に端々吻合で行った。【結果】HAT は全移植 210 例中 11 例に認め、成人は 125 例中 1 例、18 歳以 下小児は 85 例中 10 例であった。小児の全例が 3 歳未満であった。また、手術時期を前期 100 例、後期 110 例にわける と、前期には成人 55 例中 0 例、小児 45 例中 8 例に HAT を認めた。後期では成人 70 例中 1 例、小児 40 例中 2 例に HAT を認め、HAT の発生率は前期の症例で高い傾向にあった。HAT を術後発生時期で分けると、術後 3 週間以内に生じた HAT(Early HAT)は成人 0 例、小児 9 例で、術後 3 週間以降で生じた HAT(Late HAT)は成人 1 例、小児 1 例であった。 【考察】HAT の危険因子について単変量解析を行うと、レシピエントの年齢、体重、GW/BW 比、選択した graft、レシ ピエント動脈径にて有意差を認めた。対して、性別、冷阻血時間、温阻血時間、手術時間、出血量、ドナー動脈径、吻合 時間、ABO 不適合では優位差を認めなかった。多変量解析を行うと、レシピエントの年齢が 1 歳未満で優位に HAT の 発生が多いことがわかった。HAT の診断には MDCT が有用であった。治療としては血栓溶解療法や再吻合術による早期 治療が重要であり、多くの HAT 症例で肝動脈の再開通を得られたが、再発症例に対しても繰り返し血行再建を行うこと で側副血行路の発達が期待でき、グラフト不全が回避された。最終的に HAT による死亡例は認めなかった。 O-6 村田 櫻井 生体肝移植術後肝動脈血栓症に対する血管内治療の治療成績 泰洋、水野 洋至、臼井 三重大学 修吾、種村 彰洋、加藤 正信、伊佐地 秀司 宏之、栗山 直久、安積 良紀、岸和田 昌之、 肝胆膵・移植外科 【はじめに】肝動脈血栓症(Hepatic artery thrombosis:HAT)は、肝移植術後における深刻な合併症の一つであり、時に 重篤なグラフト機能不全を来すことがあり、迅速な判断と対応が求められる。近年、interventional radiology(IVR)の進 歩により、HAT に対する血管内治療の低侵襲性と有用性が報告されている。今回、生体肝移植術後における HAT の発 生頻度を明らかにし、IVR による血管内治療を導入した治療成績を検討し、その有用性を検証した。 【対象と方法】観察 期間は 2002 年 2 月から 2014 年 1 月、術後 2 ヶ月以上経過観察ができた生体肝移植症例 140 例を対象とし HAT の発生 頻度、患者背景、血管内治療の治療成績、予後を検討した。【結果】140 例中、9 例に HAT の合併を認め、発生頻度は 6.4%であった。合併例の平均年齢は 55 才で全例で成人例であり、Graft は左葉 6 例、右葉 2 例、後区域 1 例で、HAT 発生時の術後経過日数中央値は 10 日であった。血栓溶解療法と percutaneous luminal angioplasty による再開通成功率 は 77.8%(7/9 例)であり、2 例の高度吻合部狭窄合併例に対してステント留置を追加した。血管内治療による再開通に failure した 2 例に対しては、保存的治療を継続した。2 例で肝梗塞、肝機能異常、高度黄疸、1 例で biloma を合併した が、いずれも保存的治療で改善し、それぞれ術後 46 日目と 69 日目に横隔膜下動脈からの側副血行路を介した肝動脈血 流の再流入を確認しえた。HAT 非合併例(131 例)vs. HAT 合併例(9 例)の 1, 5 年生存率は 81.4, 70.1% vs. 51.4, 51.4%で、 HAT 合併例の予後は不良であったが、統計学的有意差を認めなかった。 【結語】生体肝移植術後 HAT に対して血管内治 療は低侵襲性の面から急性期治療に有効であり、長期的にも有用な処置であると考えられた。 81 O-7 生体肝移植術の予後予測因子に関する検討 泉 俊男、渡辺 常太、田村 圭、竹林 孝晃、佐藤 創、伊藤 英太郎、影山 水本 哲也、井上 仁、高井 昭洋、藤山 泰二、串畑 史樹、高田 泰次 愛媛大学大学院 医学系研究科 詔一、羽田野 雅英、 肝胆膵乳腺外科 【背景】生体肝移植術の予後に影響を及ぼす因子については骨格筋量減少など多数の報告がみられる。しかし生体肝移植 術の短期予後、長期予後双方の独立危険因子に関する報告は、検索した範囲内において存在しなかった。 【目的】生体肝 移植術の短期、長期予後双方の独立危険因子を検討する。 【対象と方法】2001 年 9 月~2014 年 1 月に当院にて施行され た生体肝移植術症例 59 例中、成人 45 例を対象とした。骨格筋量の指標として、術前施行された腹部 CT にて第三腰椎 椎体尾側端レベルでの大腰筋断面積を身長の二乗で除した値(PMI:psoas muscle index)を検討に用いた。検討項目はこ の PMI に加え、性別、年齢(レシピエント、ドナー)、血液型適合、BMI、Child Pugh 分類、MELD スコア、原因疾患 (HCV 関係の有無)、周術期栄養療法の有無、手術時間、術中出血量、GRWR、術前血液検査値の各指標とした。短期予 後として術後生存退院、長期予後として overall survival との関係を検討した。【結果】45 例中、術後 12 名が死亡退院 し、退院後の観察期間中に 3 例が死亡した。術後生存退院例と死亡退院例の二群間の比較で p<0.10 となったのは性別、 ドナー年齢、BMI、大腰筋断面積、AST、K、BUN であった。これらについてロジスティック回帰分析を行った結果、 二群間で大腰筋断面積、BUN に有意差を認めた。また長期予後の検討として Kaplan-Meier 法にて生存率に有意差を認 めたのは BMI、大腰筋断面積、AST、K、BUN であった。これらについて Cox 比例ハザードモデルを用い多変量解析を 行った結果、大腰筋断面積、AST は overall survival に有意差を認めた。以上の結果より短期予後、長期予後双方の独立 危険因子は大腰筋断面積であった。 【結語】術前に大腰筋断面積が減少していると、肝移植の短期予後、長期予後ともに 不良となることが明らかになった。 O-8 肝臓移植後レシピエントに対するアルコール摂取に関する調査 矢野 琢也 1、大平 真裕 1、坂本 亮子 2、成定 愛子 2、菅野 啓子 2、石山 宏平 1、 井手 健太郎 1、田原 裕之 1、安部 智之 1、佐伯 吉弘 1、清水 誠一 1、谷峰 直樹 1、坂井 小林 剛 1、田代 裕尊 1、大段 秀樹 1 1 広島大学大学院 医歯薬保健学研究院 消化器・移植外科学、2 広島大学病院 寛 1、 看護部 肝臓移植を受けたレシピエントにも移植後アルコール摂取している患者もいるため、移植後アルコール摂取の影響を評 価する必要がある。肝臓移植後外来通院中のレシピエントに対して、アルコール摂取の有無と過度の飲酒のスクリーニン グについて The Alcohol Use Disorders Identification Test(AUDIT)を用いてアンケート調査を行った。アンケート回収 は 102 例であった。AUDIT の有効回答は 97 例で、早期介入の目安とされ中等度以上のアルコール問題に相当する AUDIT8 点以上は 97 例中 5 例であった。移植後の飲酒は 24 例に認めた。アルコール性肝疾患に対して移植を施行した 患者は 8 例で、うち 1 例に再飲酒を認めた。移植前後の AUDIT の比較が可能な 75 例では、術前 6.8 点、術後 1.3 点で、 1 日の飲酒量はエタノール換算(日本酒1合=20g、ビール 350ml=14g)で術前 47.1g、術後 6.1g であり、術後の AUDIT とアルコール摂取が有意に低かった。原疾患がアルコール性と非アルコール性の比較では、AUDIT は移植前 17.0 点 vs 5.7 点、移植後 1.2 点 vs1.3 点、1日飲酒量は移植前 107.8g vs 40.9g、移植後 5.7g vs 6.2g であり、術前は AUDIT、1 日飲 酒量ともにアルコール性が有意に高いが、術後は両群に差がなかった。術後飲酒のリスク因子の解析では HRAR score 3 点以上 30.0%(3/7)、HRAR score 2 点以下 27.4%(14/51)、喫煙 26.0%(6/23)、非喫煙 5.4%(4/73)、ドナーが親 60%(3/5)、 子 15.6%(10/64)、兄弟姉妹 66.6%(6/9)、配偶者 20.0%(3/15)、その他 22.2%(2/9)、就労中 45.0%(18/40)、就労予定 14.2%(1/7)、非就労 8.1%(4/49)、同居者飲酒あり 32.0%(16/50)、同居者飲酒なし 13.9%(6/43)で、喫煙ありとドナー が親か兄弟姉妹、就労中、同居者飲酒ありで術後の飲酒が多かったが、HRAR score は術後の飲酒とは関連がなかった。 レシピエントの術後飲酒は概ね過剰な飲酒とはなっていないが、飲酒に関して介入が必要となる症例も存在し、また飲酒 は社会的背景とも関連しているため、フォロー体制の充実が必要であると考えられた。 82 O-9 尾形 江川 低用量タクロリムスによる生体肝移植後免疫抑制導入療法 哲、小寺 由人、片桐 裕人、山本 雅一 東京女子医科大学 聡、有泉 俊一、高橋 豊、大森 亜紀子、山下 信吾、佐々木 一成、 消化器外科 背景:生体肝移植後免疫抑制導入療法は、タクロリムス(Tac)+ステロイドの 2 剤併用が標準治療である。Tac は術直後 から 2 週までトラフレベルで 10-15ng/mL 以上に保つことが多いが、腎機能障害、耐糖能異常などの副作用が問題とな る。目的:術後 2 週までの Tac トラフ 8-10ng/mL を目標値とし、ステロイド、Mycophenolate mofetil(MMF)を併用し たプロトコールにおける、拒絶反応、腎機能障害及び、耐糖能異常の各項目について検討する。方法:対象は 2011 年 9 月 2 日から 2012 年 12 月 31 日までに当科で施行した成人生体肝移植 22 例。タクロリムスは、術後 2 週までトラフで 8-10ng/mL、2-4 週まで 6-8 ng/mL となるよう投薬した。ステロイドは、メチルプレドニゾロンを 1-3 日目目 1.0mg/kg、 4-6 日目まで 0.5mg/kg、7-27 日目プレドニゾロンを 0.3mg/kg、28 日目以降 0.1mg/kg 投与した。MMF は 500mg/日で 開始し、1000-1500mg 連日投与した。結果:年齢は、レシピエント 54.5±9.7 歳、ドナー46.3±10.9 歳。MELD score は、22.4±5.0。術前リツキシマブ投与 5 例(血液型不適合 3 例、ドナー特異的抗体強陽性 2 例)。グラフトは、右肝 9 例 (41%)、左肝 13 例(59%)。グラフト-レシピエント体重比は、0.82±0.15。1 年生存率は、95.5%。90 日以内に拒絶反 応は 4 例(18%)に発症した。クレアチニンは術前、術後最高値、30 日目のそれぞれで、0.81±0.33、1.05±0.43、0.69 ±0.19mg/dL であった。De novo diabetes mellitus の発症は認めなかった。結語:3 剤併用低用量タクロリムスによる 免疫抑制導入療法は、拒絶反応発症率も許容範囲であり、カルシニューリンインヒビターの副作用の少ないプロトコール と考えられた。 O-10 北郷 藤野 生体肝移植後の新規悪性疾患の検討 実、篠田 昌宏、板野 明浩、星野 健、黒田 理、尾原 秀明、日比 達夫、北川 雄光 泰造、阿部 雄太、八木 洋、松原 健太郎、 慶應義塾大学 【背景】本邦で生体肝移植を開始してから 25 年が経過したが、術後の新規悪性疾患の発生に関するデータは未だ限られ ている。当施設においては生体肝移植を開始して 19 年間が経過したが、今回当科における移植後の新規悪性腫瘍の頻度 や特徴について解析したので報告する。 【方法】当施設で 1995 年から 2014 年までに施行した生体肝移植 210 例(成人 122 例・平均観察期間 83 か月、小児 80 例・平均観察期間 90 か月)を対象とした後ろ向きコホート解析。リンパ増殖性疾患 (PTLD)、固形癌に着目し発生率と特徴を解析した。 【結果】生体肝移植後の PTLD は 8 例で、全症例における発生率は 3.8%。疾患内訳は胆道閉鎖症 5 例、PSC2 例、C 型肝硬変 1 例。移植後発症までの期間は、小児疾患(胆道閉鎖症)例は early onset、成人例(胆道閉鎖症以外の成人例)は late onset であった。PTLD 発症時、小児疾患例は EBV-IgG 陰性、 EBV-PCR 陽性、成人例は EBV-IgG 陽性、EBV-PCR 陰性だった。病理像は WHO 分類で diffuse large B-cell lymphoma7 例、polymorphic1 例。タクロリムス減量のみで 1 例寛解、7 例はリツキシマブ併用化学療法を加え 4 例が生存している。 固形癌は 5 例で、全例成人。成人例における発生率は 4.1%であった。甲状腺癌 2 例、喉頭癌1例、大腸癌 2 例。術後最 短 2 年 10 か月、最長 7 年 10 か月経過して発見された。発見の契機は 4 例で症状があったためで、定期検査で発見され たのは大腸癌の 1 例(便潜血)のみであった。5 例とも適切な治療にて生存中である。 【結語】当院の PTLD 例は、小児疾 患例は EBV 初感染で early onset が多く、成人疾患例では EBV との関連は明らかではなく late onset が多い傾向を示し た。小児・成人疾患別に特徴があり、管理に注意を払う必要があると思われた。固形癌の発生は、現時点では 4.1%にと どまっているが、定期検査の種類・頻度や観察期間により今後さらに増加する可能性があり、注意深く長期観察していく 必要があると考えている。 83 O-11 木下 後藤 生体肝移植後に直腸癌を発症し、術後肝転移と吻合部再発を併発した 1例 秘我、福本 直大、浅利 神戸大学 医学部 巧、木戸 正浩、武部 敦志、田中 貞毅、外山 博近、味木 徹夫、具 基文、蔵満 英成 薫、福島 健司、松本 拓、 肝胆膵外科 [はじめに] 生体肝移植後の患者は免疫抑制剤内服のため発癌率は高く、癌の進展が通常より早いことが報告されている。 B 型肝硬変、肝細胞癌に対し生体肝移植を実施し、5 年半後に直腸癌を発症し、低位前方切除術後、肝転移と吻合部再発 を併発した症例を経験したので報告する。[症例] 60 歳男性。1996 年に B 型肝炎を指摘され、近医にてラミブジンの投 与を受けてきた。2006 年 3 月に S5 と S6 に肝細胞癌を指摘され、S6 の病変に対しては部分切除術、S5 の病変に対して は RFA を施行した。2007 年 3 月 S1、S4、S8 に再発を認めたため TACE を施行した。5 月に S8 に再々発を認めたため、 7 月右葉グラフトを用いた生体肝移植を施行した。術後に急性拒絶を認めたためステロイドパルスを施行し、以降はプロ グラフ、プレドニン、セルセプトの 3 剤を内服していたが、11 月よりプログラフ単剤の内服を行っていた。2008 年 11 月胆管吻合部狭窄を認めたため、胆管空腸吻合術を施行した。その後は胆管炎にて入退院を繰り返していたが、2012 年 11 月頃より血便を認めたため CF を施行したところ、直腸 Rs に 2 型の進行癌を認めた。術前精査にて遠隔転移を認めな かったため、2013 年 2 月開腹下に低位前方切除術、回腸瘻造設術を施行した。病理結果は MP、N0、stageI、ly0、v1 であった。術後の造影 CT、MRI にて IVC 前面の S7 に 1.4cm 大の単発の転移巣を認めたため、5 月に定位放射線治療 (54Gy/4Fr)を施行した。7 月に回腸瘻閉鎖術の術前精査で CF を施行したところ、吻合部再発を認めたため 8 月に腹会 陰式直腸切断術を施行した。その後は明らかな再発を認めていない。[結語] 生体肝移植後に直腸癌が出現し、その術後 に肝転移と吻合部再発を併発した 1 例を経験した。移植後は de novo 発癌のリスクは高く、さらには治療後の再発率も 高いため、頻回の検査による厳重な観察が必要である。 O-12 成人生体部分肝移植レシピエントにおける筋力の一年間の経過 佐野 由布子 1、川上 里宇 明元 2 1 慶應義塾大学病院 途行 2、小林 賢 1、篠田 昌宏 3、板野 理 3、尾原 秀明 3、北川 雄光 3、 リハビリテーション科、2 慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室、3 慶應義塾大学 外科 【目的】我々は本研究会で成人生体部分肝移植(以下、LDLT)後における退院時の下肢筋力は術前の筋力レベルには至ら ず(2010 年)、術後 6 か月においても下肢筋力は継続して改善していること(2013 年)を報告した。LDLT 前後にリハビリ テーションを行うことで筋力が改善することは報告されているが、レシピエント下肢筋力の術後長期経過についての報告 はない。そこで今回、術後 1 年の下肢筋力の経過について報告する。【方法】対象は、2007 年 10 月~2013 年 4 月まで に LDLT が施行され、術前術後に理学療法を実施した 38 名中、術後 1 年の期間に筋力評価が可能であった 10 名(男 4 名、女 6 名、平均年齢 55.1±6.1 歳)。評価時期は術前、術後 1 か月、術後 3 か月、術後 6 か月、術後 1 年とした。下肢 筋力の評価方法は、リカンベント式エルゴメーター(S-ergo;三菱エンジニアリング)を用い、10 回転駆動させた時の最 大値を計測し、体重で除して算出した値を採用した。また、術前の値で術後それぞれの評価時点の測定値を除して変化率 (%)を求めた。 【結果】下肢筋力(Nm/kg)は、男性は術前 1.15±0.39、術後 1 か月 0.94±0.33、術後 3 か月 1.10±0.35、 術後 6 か月 1.50±0.15、術後 1 年 1.61±0.18 であり、女性は術前 0.80±0.45、術後 1 か月 0.61±0.19、術後 3 か月 0.92 ±0.23、術後 6 か月 1.12±0.37、術後 1 年 1.23±0.23 であった。下肢筋力の変化率は術後 1 か月 75.4±14.5%、術後 3 か月 101.8±23.5%、術後 6 か月 134.1±43.2%、術後 1 年 149.5±48.8%であった。【考察】下肢筋力の同年齢の健常者 平均値参考データ(Nm/kg)は男性 1.91~2.17、女性は 1.34~1.56 と報告されており(三菱エンジニアリング)、LDLT 患 者では術後一年でも、健常者の平均値を上回らなかった。 【結語】肝移植患者では1年後まで筋力は改善し、術前よりも 筋力は向上するが同年代の平均値よりは低い値であった。 84 O-13 生体肝移植予後因子としての術前骨格筋量および筋肉内脂肪の意義 濱口 雄平 1、海道 利実 1、奥村 晋也 1、藤本 玉井 由美子 2、稲垣 暢也 2,3、上本 伸二 1 康弘 1、小川 1 京都大学 医学部附属病院 肝胆膵・移植外科、2 京都大学 3 京都大学 医学部附属病院 糖尿病・内分泌・栄養内科 晃平 1、森 医学部附属病院 章 1、波多野 悦朗 1、 疾患栄養治療部、 【目的】サルコペニアは筋肉量および筋力の低下と定義され、外科手術後予後不良因子とされている。近年、筋肉内脂肪 量の増加は筋力低下と相関するとの報告がある。そこで我々はサルコペニアの新たな因子として筋肉の質に注目し、筋肉 量とともに肝移植予後予測における意義について検討した。 【方法】対象は 2008 年 1 月から 2013 年 10 月までに当院で 施行した成人生体肝移植症例 200 例。筋肉の質および筋肉量は、各々単純 CT にて多裂筋 IMAC(intramuscular adipose tissue content;多裂筋の CT 値/皮下脂肪の CT 値)と PMI(psoas muscle mass index;両側腸腰筋面積(cm2)/(身長(m)) 2)にて評価。検討項目は、1)術前 IMAC と各種パラメーターとの相関。2)術前 IMAC、PMI にて分類し、移植後生存 率。3)肝移植後独立予後不良因子(多変量解析)。4)術後 2 年以上生存症例に関して IMAC と PMI の経時的推移。【結 果】1)男性において IMAC は年齢と正の相関(r=0.229)、PMI と負の相関(r=-0.236)。女性において IMAC は年齢と 正の相関(r=0.349)、BTR(BCAA-to-tyrosine ratio)と負の相関(r=-0.250)。2)IMAC 高値群(P<0.001)および PMI 低値群(P<0.001)では有意に生存率が不良。3)術前 IMAC 高値(Odds ratio 3.898, P<0.001)、PMI 低値(Odds ratio 3.635, P<0.001)が移植後独立予後不良因子。4)IMAC は術後 3-6 ヶ月まで増悪し、その後回復に向かうも術前値まで 改善は認めず。 【結語】筋肉量の低下や IMAC で示される筋肉の質の低下は肝移植における予後不良因子であった。肝移 植後サルコペニアの改善・予防のために長期にわたる栄養療法やリハビリテーション介入の必要性が示唆された。 O-14 グラフト肝における中心静脈周囲線維化を伴う SOS の病態解明と 新規治療法の開発 中沼 伸一 1、太田 哲生 1、正司 政寿 1、林 泰寛 1、田島 秀浩 1、高村 博之 1、牧野 勇 1、 尾山 勝信 1、中川原 寿俊 1、宮下 知治 1、ニ宮 致 1、北川 裕久 1、伏田 幸夫 1、藤村 隆 1、 谷 卓1 1 金沢大学消化器・乳腺外科・移植再生外科、2 公立松任石川中央病院 外科 【はじめに】類洞閉塞症候群(Sinusoidal obstructive syndrome:SOS)では、肝類洞内皮障害を始めとして小葉中心静脈 周囲(Zone3)の肝細胞壊死や線維化、門脈圧亢進症へ進展し予後不良である。有効な予防対策の確立が急務である。SOS を認めた 2 例より、その病態解明に迫り新規治療の開発に取り組んでいるので報告する。 【症例 1】59 歳、男性。PBC(MELD 23)に対して生体肝移植術を行った。術後 3 か月目から黄疸および血小板減少を認め、Zone3 に炎症細胞浸潤、肝細胞の 脱落を認めた。拒絶反応の診断にて免疫抑制強化を行ったが、Zone3 の線維化が進行、肝不全に至り術後 9 か月に死亡。 血小板のマーカーである CD42b の免疫染色では、Zone3 において類洞沿いの肝細胞の表面や肝細胞内に発現を認めた。 【症例 2】44 歳、女性。AIH(MELD 16)に対して脳死肝移植を行った。術後 2 週間より胆汁量減少、腹水増加、血小板 低下を認め、門脈域での炎症細胞浸潤、Zone3 ではうっ血や肝細胞の脱落、内皮炎を認めた。ACR の診断にて免疫抑制 強化を行った。しかし、黄疸悪化、門脈血流の逆流を認め、Zone3 のうっ血、肝細胞壊死、線維化にて肝不全に至り術後 45 日に死亡。CD42b の免疫染色では症例1と同様の所見を認めた。 【考察】CD42b染色所見より、類洞内皮障害により 血小板が類洞外に浸透し、Disse 腔で凝集(Extravasated platelets aggregation:EPA)、活性化血小板より TXA2(血管 収縮)、VEGF-A(Paradoxical vasoconstrictor)、TGF-β(線維化、細胞増殖抑制)、PAI-1(線溶系抑制、HGF 不活化) などが放出され、門脈圧亢進症、肝線維化、肝再生抑制が誘発する病態を推測した。予防対策として、類洞血管内皮強化 や血小板凝集抑制が重要と考え、特に PDE3 阻害剤は抗血小板凝集作用以外に免疫寛容や虚血耐性の効果も持つため有 用と考えている。最近の症例でヒアルロン酸値を類洞内皮障害の指標として同薬剤を使用し良好な結果を得ている。 85 O-15 肝移植周術期におけるサルコペニア評価項目と栄養パラメーターの推移 ならびに相関に関する検討 玉井 由美子 1、海道 稲垣 暢也 1,3 利実 2、小川 1 京都大学医学部附属病院 疾患栄養治療部、2 京都大学大学院医学研究科 3 京都大学大学院医学研究科 晃平 2、藤本 康弘 2、辻 秀美 1、幣 憲一郎 1、上本 伸二 2、 肝胆膵・移植外科、 糖尿病・内分泌・栄養内科 【目的】我々は、肝移植患者において術前低骨格筋量は予後不良因子であることを報告し、この結果に基づき、2013 年 1 月から自立歩行可能を移植適応に追加した。しかし、肝移植患者においてサルコペニア評価項目である骨格筋量と筋力の 周術期推移や相関は不明である。そこで今回、肝移植周術期における骨格筋量と筋力、栄養学的パラメーターの推移なら びに相関を前向きに検討した。 【方法】2013 年 1 月から 2013 年 12 月までに本院で成人生体肝移植を施行した 22 例を対 象に、前向きに骨格筋量と握力および生化学的検査(BCAA・PA・EPA)を経時的に測定した。骨格筋量は In Body720 を用いて測定した。なお、腎不全にて術後透析例や難治性拒絶反応にて術後在院死例、再移植例、退院後他院でのフォロ ー症例は除外した。検討項目:1、入院時における骨格筋量と握力・BCAA、握力と BCAA の関係、2、肝移植後の握力、 骨格筋量、BCAA、PA、EPA の経時的回復率(入院時を 100)、3、EPA 変化率と骨格筋量・BCAA の変化率の関係、4、 BCAA 変化率と術後在院日数および完全経口摂取移行日数の関係について検討した。 【結果】1、骨格筋量と握力、骨格 筋量と BCAA、握力と BCAA に有意な正の相関を認めた(p<0.05)。2、骨格筋量、握力ともに肝移植後低下し、術後 3 ヶ月経っても術前状態まで回復しなかった。一方、PA、BCAA、EPA は術後約 2 ヶ月で術前状態まで回復した。3、EPA 変化率と骨格筋量および BCAA の変化率、いずれにも正の相関を認めた。4、BCAA の変化率と術後在院日数、完全経 口摂取移行日数の間に、各々、負の相関を認めた。 【結語】肝移植後、ほぼ全例に二次性サルコペニアを認め、その回復 は栄養学的パラメーターより遅かった。BCAA は骨格筋量や握力、術後在院日数や経口摂取の程度と相関を認め、BCAA をターゲットとした栄養介入の有用性が示唆された。 O-16 田中 植村 肝移植後微小血管障害症が予後に及ぼす影響について ~当科 290 例の解析とスコアリング化の提唱~ 宏和、秦 浩一郎、稲本 道、久保田 豊成、岡村 裕輔、平尾 浩史、吉澤 淳、冨山 忠廣、小川 晃平、藤本 康弘、森 章、岡島 英明、海道 利実、上本 伸二 京都大学 大学院医学研究科 浩司、 肝胆膵移植外科 【目的】肝移植後早期には血小板が著減し、これが高度な程予後不良となる事は以前より報告されているが、その機序に ついては依然未解明である。我々は以前から成人生体肝移植後にはほぼ全例で ADAMTS13 活性が著減すること、高頻 度に血栓性微小血管障害(Thrombotic microangiopathy;TMA)様病態を伴うことを報告してきた。今回は予後との相関 を解析した。【対象と方法】2006 年 4 月から 2013 年 3 月にかけて当科で施行した成人肝移植 291 例を対象とし、術後 60 日以内に、移植後 TMA の診断基準である 1)血小板数低下、2)溶血性貧血、3)LDH 上昇、4)破砕赤血球の出現、の 各項目を満たす頻度を TMA-like syndrome(TMALS) score として算出(0~4 点)し、予後との相関を解析した。【結果】 全症例の内 TMA 診断基準 4 項目を全く満たさない(0 点)のは 2 例しかなく、実に 95%以上に相当する 276 例で TMALS score 2 項目以上を、75%以上である 219 例で 3 項目以上を満たすことが判明した。点数が増すにつれ予後は増悪した。 4 項目とも陽性(4 点)の症例も 39%(112 例)存在し、その予後は全体に較べ明らかに不良(1 年生存率:60% vs.79%, p< 0.001)であり、肝移植後半年以内に死亡した 71 例を全て内包した。逆に TMA 陽性項目1つ以下の 14 例(0 点 2 例、1 点 12 例)では周術期合併症もほとんどなく、生存率 100%であった。2 点以下の症例は術後早期に血小板が回復しており、 予後不良の血小板減少に TMALS が深く関与している可能性が示唆された。 【結語】肝移植後の血小板減少には様々な要 因があるが、特に予後不良の症例においては背景に TMALS が存在している可能性があり、これを制御する事で肝移植 全体の治療成績を向上しうるものと期待される。 86 O-17 伊藤 渡邊 生体肝移植術後の呼吸器合併症についての臨床的検討 英太郎、藤山 泰二、水本 常太、高田 泰次 愛媛大学 医学部 哲也、羽田野 雅英、高井 昭洋、影山 詔一、井上 仁、 肝胆膵乳腺外科 肝移植術後の早期合併症として頻度の高いものに呼吸不全が挙げられる。肝移植の侵襲の大きさに加え、免疫抑制下で の感染コントロールの難しさから、肝移植後の呼吸不全症例はしばしば致命的な経過をたどる。今回、愛媛大学で生体肝 移植を施行し、術後に呼吸器合併症を発症した症例について臨床的検討を行ったので報告する。【対象と方法】愛媛大学 では 2001 年 9 月から 2014 年 1 月末までに 48 例の成人に生体肝移植を施行した。術後、呼吸器合併症を発症し抜管で きなかった症例及び再挿管となった症例を合併症群に分類し、患者背景ならびに周術期因子について正常群と比較検討し た。【結果】術後呼吸器合併症を発症したのは 11 例(23%)であった。移植から抜管までにかかった日数(中央値)は正常 群が 3 日、合併症群が 4 日であった。合併症群のうち、抜管後に再挿管を要したのは 9 例で、術後 8 日目に最も頻度が 高かった。移植後呼吸不全が遷延し、抜管できなかった症例は 2 例あった。合併症群 11 例中 5 例が在院死した。術前に SBP などの感染症に対し治療を行った症例は正常群で 2 例、合併症群で 4 例あった。周術期因子のうち、術前の腎機能 に関して合併症群が有意に不良であった(Cre=1.55±1.33 vs 0.88±0.52)。【考察】愛媛大学で施行した成人 48 例の生 体肝移植から、術前の腎機能低下は呼吸器合併症発症の有意な危険因子であることが分かった。末期肝不全患者は術前よ り腎機能低下や SBP など感染を始めとする種々の合併症を伴うことも多い。そのような症例が術後呼吸器合併症を発症 する危険性は高く、厳格な水分管理や感染対策が行われる必要がある。 O-18 小児肝移植におけるウィルス感染の検討 林田 真 1、松浦 俊治 1、吉丸 耕一朗 1、柳 調 憲 2、前原 喜彦 2、田口 智章 1 1 九州大学大学院 小児外科、2 九州大学大学院 佑典 1、江角 元史郎 1、池上 徹 2、吉住 朋晴 2、 消化器・総合外科 【はじめに】小児肝移植術後では、免疫抑制状態で様々なウィルスの初感染を起こし、重症化することも多く早期診断、 早期治療が重要となる。今回、当科における肝移植後のウィルス感染の発症状況、感染対策について検討した。 【対象と 方法】1996 年 10 月から 2013 年 12 月まで、当科で施行した 18 歳未満の小児肝移植症例 61 例を対象とし、サイトメガ ロウィルス(CMV)、EB ウィルス(EBV)やその他のウィルスに関する感染状況、治療、予後に関して後方視的に検討し た。 【結果】CMV 感染:CMV 抗原陽性となったのは 28 例(46.8%)であり、tissue-invasive CMV disease は 2 例(6.9%) に認めた(消化管 1 例、肺 1 例)。術前 CMV-IgG が D+/R-、ステロイドパルス、OKT3 使用例で有意に感染頻度が高か った。原疾患では劇症肝不全が有意に高かった。治療は ganciclovir または valganciclovir と免疫抑制剤の減量で行い、 pre-emptive therapy を行ったものは全例治癒したが、ABO 不適合症例で抗体関連拒絶治療後の CMV 肺炎の症例は抗 ウィルス剤投与後、血中の抗原は陰性化したが、肺への感染は持続し、呼吸不全で死亡した。EBV 感染:EBV-DNA 陽 性は 11 例(18.0%)であった。4 例が有症状で、そのうち 1 例が腫瘍形成し PTLD となった。無症状の症例に対しては免 疫抑制剤の減量、血中の EBV-DNA モニタリングにより軽快し、有症状の症例に対しては、感染細胞の特定により全例 B 細胞であったため rituximab の投与により軽快した。その他のウィルス:単純ヘルペスによる歯肉口内炎、水痘、イ ンフルエンザ等認めたが、抗ウィルス薬の投与により重症化することなく軽快した。 【結語】小児肝移植術後のウィルス 感染症では CMV 感染が最も多かった。多くは pre-emptive therapy にて軽快したが、tissue-invasive な症例では重症 化し予後に影響を与えるため予防投与の必要性が示唆される。EBV 感染症は rituximab の投与により軽快可能だが、感 染細胞等の迅速で正確な評価が重要である。 87 O-19 高木 八木 生体肝移植術後致死的経過を辿ったムコール症の 2 例 弘誠、吉田 孝仁 岡山大学病院 龍一、杭瀬 祟、内海 方嗣、信岡 大輔、楳田 祐三、篠浦 先、藤原 俊義、 肝・胆・膵外科 【はじめに】ムコール症(接合菌症)は稀な深在性真菌症で、抗菌活性を有する抗真菌剤は AMPH のみとされ、その診断 は困難であり予後は極めて不良とされている。我々は、肝移植後ムコール症を発症し急激に致死的な経過を辿った 2 例 を経験したのでこれらの臨床経過を簡潔に提示するとともに、若干の文献学的考察を加えて報告する。 【症例 1】63 歳女 性。原因不明遅発性肝不全に対し生体肝移植術を施行。術前リンパ球クロスマッチ陽性であり、rituximab 投与、血漿交 換を移植前免疫抑制療法とした。周術期経過は良好で拒絶反応・血管系合併症なく移植後 42 日目に軽快退院した。移植 後 3 ヶ月、発熱・炎症反応高値にて再入院、CT にて肺に空洞を伴う腫瘤性病変を認めた。深在性真菌症と診断とし VRCZ/MCFG 投与開始とした。β-D グルカン低下傾向であったが炎症反応高値遷延したため肺腫瘤生検施行、ムコール 症と診断した。病巣切除も視野に入れ AMPH 開始するも急速に小脳・延髄播種を来し、意識レベル低下、死亡した。 【症 例 2】43 歳男性。C 型非代償性肝硬変(MELD 29)に対し生体肝移植術を施行。移植後 5 ヶ月、C 型肝炎再燃に対して IFNα/ribavirin 療法を導入。移植後 6 ヶ月、発熱・右視力低下・右眼瞼部腫脹が出現し緊急入院。頭部 CT にて右前頭 葉に広範に広がる low density area、副鼻腔炎を認め、副鼻腔炎の眼窩内進展、頭蓋内進展による髄膜脳炎を疑い強力な 抗菌薬・抗真菌薬加療を開始したが、急速に意識レベル低下、再入院 5 日後に死亡した。剖検を施行し鼻脳型ムコール 症の確定診断に至った。 【結語】免疫抑制強化例や重症症例では、ムコール症のように有効な抗真菌剤が限られている疾 患も念頭において移植後真菌感染対策を行なうことが肝要である。 O-20 内田 萩原 肝移植後の重症マルトフィリア敗血症の経験 浩一郎、谷口 雅彦、今井 正弘、小西 奈々美、川原 旭川医科大学 浩二、渡邉 敏靖、松野 賢二、宮本 直徒、古川 正之、鈴木 博之 達也、松坂 俊、 消化器外科・一般外科 背景:Stenotrophomonas maltophilia は主に入院患者に対して日和見感染を引き起こすグラム陰性桿菌である。特に免 疫抑制患者に感染すると、致死率は非常に高く、適切な抗生剤選択と積極的な投与量を必要とする。症例:62 歳女性、 肝硬変(NASH)と肝癌の診断で、息子の左葉を用いた生体肝移植を施行した。術前リンパ球クロスマッチが弱陽性のため、 リツキサンを移植1ヶ月前に投与した。免疫抑制剤はシムレクト、ステロイド、タクロリムス、セルセプトを使用した。 ICU 治療期間中は週 2 回の血液、喀痰、便、胆汁、腹腔ドレーン排液の監視培養を施行した。移植後 14 日目に肝動脈血 栓症を合併し、緊急再吻合を施行するも、血流再開は困難であった。そのため、胆管炎と肝膿瘍を合併し肝膿瘍切除を必 要とした。肝膿瘍と胆管炎による感染症は反復し全身状態はさらに不良となった。その際、急激に敗血症が発症し ARDS 呼吸不全にまで進行、血液・喀痰培養から、S.maltophilia が検出した。敗血症性ショックによる急性腎不全も併発し CHDF による腎保護も必要とした。免疫抑制剤を中止し、バクトラミンとシプロキサン治療を開始し、一時的に呼吸状態は改善 した。しかし監視培養にて S.maltophilia は ST 合剤を含めて、徐々に多剤薬剤耐性を獲得した。適時にミノマイシンを 併用し、約 4 週間の抗生剤カクテル治療により患者は重篤な S.maltophilia 敗血症から回復した。結語:肝移植後の S.maltophilia 感染症は重篤化しやすく、薬剤耐性獲得も早い。適切な監視培養と複数抗生剤治療が効果的であった症例 を経験した。 88 O-21 生体肝移植患者における Itraconazole の長期内服による真菌感染症 予防効果、安全性の検討 内海 方嗣 1、楳田 八木 孝仁 1 1 岡山大学病院 祐三 1、高木 弘誠 1、杭瀬 肝胆膵外科、2 岡山大学病院 崇 1、信岡 大輔 1、吉田 龍一 1、藤原 俊義 2、 消化器外科 背景生体肝移植レシピエントは免疫抑制剤の使用により感染症罹患率は高率となる。特に深在性真菌感染症は早期診断 が難しく発症すると致死的なることが少なくない。そのため厳密な真菌感染予防を行うことは予後を改善する上で重要で ある。Itraconazole は抗アスペルギルス活性が強く、Candida, non-albicans にも効果が期待できることから術後長期に わたり immunocompromised host である肝移植患者においては有用であることが予想される。目的生体肝移植患者にお ける移植後早期の Itraconazole の真菌感染症予防効果を中心とした有用性と安全性を前向き試験によって検討する。対 象と方法 2009 年から 2013 年 3 月まで当院で施行された成人生体肝移植 40 例中、術前に真菌感染症の既往なく、抗真 菌剤内服を行ってない 26 症例を対象とした。Itraconazole の投与(内服)を行い移植後 100 日間までを観察期間とした。 真菌感染症発症予防効果、生存率、副作用について前向試験にて検討を行った。結果患者は男女比 16/10。背景疾患はウ イルス性非代償性肝硬変 20 例、NASH4 例 PBC2 例であった。免疫抑制剤は FK16 例 CyA10 例。術後 50 日目に 1 症 例(3.8%)のみに発熱、炎症反応、β-D グルカン上昇を認め腹水培養(Candida ablicans 陽性)から深在性真菌感染症と 診断された。Colonization(アスペルギルス 3 例、カンジダ 3 例)は 6 例認めた。一時的な免疫抑制剤(CNI)の血中濃度上 昇を認め腎機能障害が危惧されたが、CNI の投与量調節により対処可能であった。Itraconazole 内服による Gade2 以上 の副作用は認めなかった。結論生体肝移植術後に Itraconazole の投与を行うことにより真菌感染症発生の予防効果が示 された。また、長期内服による副作用は少なく安全に使用できることが示唆された。 O-22 稲垣 肝移植後患者における E 型肝炎ウイルス感染状況 勇紀 1、大城 1 筑波大学 幸雄 1、岡本 宏明 2、大河内 消化器外科、2 自治医科大学医学部 信弘 1 感染・免疫学講座 ウイルス学部門 【目的】E 型肝炎ウイルス(HEV)感染については、欧米諸国を中心に臓器移植後患者における慢性化の報告が散見され、 その重要性が認識されつつある。われわれは、わが国の肝移植患者の感染実態を明らかにするために全国調査を行った。 【方法】厚生労働省「経口感染によるウイルス性肝炎(A 型及び E 型)の感染防止、病態解明、遺伝的多様性及び治療に関 する研究」の分担研究として、全国の肝移植 19 施設(北海道大,岩手医大,東北大,東京大,慶應大,順天堂大,信州 大,京都大,大阪大,神戸大,岡山大,広島大,徳島大,愛媛大,九州大,福岡大,長崎大,熊本大,筑波大)の肝移植 後患者を対象とし、血清中の抗 HEV 抗体および HEV-RNA を測定した。【結果】肝移植後患者 1169 人の HEV 抗体測 定を行い、抗 HEV-IgG 抗体陽性患者は 37 人(3.2%)、抗 HEV-IgA,IgM 抗体陽性患者はともに 0 人であった。また、 105 人に対して血中 HEV-RNA 測定を行い、1 例(0.09%)で陽性を認め、HEV 現行感染と考えられた。 【考案】抗 HEV-IgG 抗体保有率は健常人で 5.3%と報告され、年齢や性別、地域間での抗体保有率の格差を考慮に入れても、肝移植後患者に おける抗体陽性率は健常人と比較して低い傾向であった。免疫抑制剤投与による抗体産生能の低下や、感染経路である生 肉などの摂取を控えていることが関与した可能性がある。また、1 例において HEV-RNA 陽性を認め、本例では IgG 抗 体は高力価であるにも関わらず IgA,IgM の急性期抗体はいずれも陰性であったことから、わが国初の肝移植後 HEV 持 続感染の可能性が示唆された。 【結語】肝移植後患者において、HEV 持続感染が存在する可能性が示唆された。今後も抗 体、血中 HEV-RNA 測定の検体数をさらに蓄積することで、我が国の肝移植患者における HEV 感染の実態把握に努め る予定である。 89 O-23 S2 モノセグメントグラフト乳児生体肝移植症例の検討 内田 孟 1、福田 笠原 群生 1 晃也 1、佐々木 1 国立成育医療研究センター 健吾 1、松波 昌寿 1、金澤 寛之 1、阪本 臓器移植センター、2 国立成育医療研究センター 靖介 1、野坂 俊介 2、 放射線科 【目的】乳児肝移植において、過大グラフトに伴う合併症を回避すべく、グラフト重量のみならずグラフト形状、特にグ ラフトの厚さを考慮したグラフト選択が肝要である。今回我々は、S2 モノセグメントグラフト(S2 グラフト)を使用した 症例について検討した。 【対象と方法】2014 年 2 月までに当院で施行された小児生体肝移植症例 266 例のうち、S2 グラ フトを使用した 8 例(3%)を対象とした。男児 3 例、女児 5 例、年齢は 6.3±3.2 ヶ月(4~14 ヶ月)であった。術前予測グ ラフトレシピエント体重比(GRWR)は 4.79±1.75%、ドナー外側区域の厚さは 66.5±4.0cm、レシピエントの腹腔前後 最大径は 57.4±9.7cm であった。術前のドナー外側区域の厚さと腹腔前後最大径は CT で評価し、グラフト内の血管系 は 3D シミュレーション構築画像で評価した。減量手術は生体ドナー術野で施行、まず S3 グリソン鞘をクランプするこ とでデマルケーションラインを表出し、切除範囲をマーキングした。その後、術中超音波で流入・流出血管を確認しつつ 切除を行った。 【結果】8 例中 6 例で S2 グラフトを、 残り 2 例では減量 S2 グラフトを使用した。グラフト厚は 41.5±11.6cm、 グラフト重量減量率は 44.8±11.6%、GRWR は 2.54±1.75%であった。術後合併症は全てのドナー症例で認めなかった。 レシピエント症例では内ヘルニアと腹腔内感染症を 1 例ずつ認め、再手術を要した。全ての症例で筋鞘による一期的閉 腹が可能であった。全例生存している。(観察期間 15~400 日)【結語】S2 グラフトを使用することで、グラフト重量と ともに厚さの軽減を得ることが可能であり、乳児肝移植症例において過大グラフトに伴う合併症を改善しえた。 O-24 中尾 串山 門脈血栓症を伴い門脈血流確保に難渋した脳死肝移植の一例 俊雅、伊藤 孝司、原田 律子、吉村 了勇 京都府立医科大学 俊平、中村 緑佐、越野 勝博、鈴木 智之、昇 修治、牛込 秀隆、 移植・一般外科 【背景】非代償性肝不全状態では門脈血栓を伴う症例は多くみられる。今回我々は、門脈血栓(Yerdel grade 3)、巨大脾 腎シャントを伴う症例で、術中門脈血流確保に難渋し、下大静脈(IVC)-門脈吻合した症例を経験したので報告する。 【症 例】62 歳男性、現病歴は、2005 年頃より非 B 非 C の原因不明肝硬変にて肝機能異常を指摘され、治療を行うも徐々に 肝硬変に移行し、2009 年 5 月に脳死肝移植登録。入院時血液検査は、HBV/HCV ウイルス陰性、GOT/GPT 36/26 U/l、 Tbil 3.04mg/dl、Alb 3.2g/dl、PT-INR 1.17 の Child C、10 点、MELD score12 の肝硬変状態。術前画像所見は、CT 像 上、肝臓へ門脈血流は完全閉塞で、門脈血栓は門脈本幹より脾静脈合流部まで存在していたが、上腸間膜静脈(SMV)血 流は脾静脈を逆流し、巨大な脾腎シャントを通じて大循環系へ流入。それ以外、腹腔内には多数の側副血行路が存在。手 術所見は、手術時間 16 時間 44 分、冷阻血 780 分、温阻血 36 分。術中門脈血栓の除去を行ったが、血流確保できず、門 脈吻合のための SMV、左腎静脈との jumping graft 造設施行試みるが、側副血行路発達による大量出血あり、吻合する ことが不可能。このため、総腸骨静脈グラフトを用い IVC と門脈を吻合した。門脈血流確保のため、IVC グラフト吻合 部上部を半結紮する際に、門脈圧測定を行い、至適門脈圧、門脈血流量を確保した。術後経過は良好であり、術 3 ヶ月 目に軽快退院している。 【考察】IVC-PV 吻合(cavoportal hemitransposition)を作成し、良好な経過の報告は散見される。 しかし、報告では IVC を半結紮する際の指標をどのようにするかは不明である。今回、我々は門脈圧を測定しながら、 門脈血流量、門脈圧を制御し、術後良好な結果を得られたので、報告する。 90 O-25 残肝再発肝芽腫に対する生体肝移植の 1 例 ー肝部下大静脈合併切除および自家肝下部下大静脈片を利用した再建術ー 新開 真人 1、北河 宮城 久之 1、後藤 徳彦 1、藤田 裕明 2、森永 1 神奈川県立こども医療センター 3 神奈川県立がんセンター 省吾 1、望月 響子 1、臼井 聡一郎 3、大浜 用克 1 外科、2 神奈川県立こども医療センター 秀仁 1、武 浩志 1、浅野 史雄 1、 血液再生医療科、 外科(肝胆膵) 【背景】肝芽腫の治療には肝病巣の完全切除が必要条件である。原発巣切除不能例や残肝再発例では肝移植が唯一の選択 肢だが、腫瘍の占拠部位によっては肝部下大静脈合併切除再建を余儀なくされることがある。再建にはドナー内頚静脈や 人工血管が用いられるが、前者は倫理的な問題もある。一方、人工血管と直接の肝静脈吻合は、少なくとも小児では好ま しくない。今回われわれは人工血管を用いながら肝静脈吻合に留意した下大静脈再建術を実施したので症例を提示する。 【症例】3 歳、女児。肺転移を伴う肝芽腫の診断で、前医にて骨髄移植を含めた化学療法と肝右葉切除、肺部分切除が行 われたが、まもなく広範な残肝再発、門脈左枝内腫瘍栓、肝部下大静脈狭窄および肺転移を認めたため、当院に転入院と なった。化学療法にて肺転移が消失したので、父をドナーとする生体肝移植を施行した。 【手術】肝部下大静脈頭側は腫 瘍と密に接し狭窄していたため、同部を合併切除した。肝下部下大静脈圧が上昇したため下大静脈を再建した。方法は山 岡らの方法に準じ、肝下部(腎上部)下大静脈の全周性分節を頭側に移動させ肝上部下大静脈端と後壁吻合。前壁は移植肝 静脈吻合口とした。肝下部(腎上部)下大静脈は ePTFE 血管グラフトを用いて再建した。他の脈管の再建は通常通り。術 後 1 年経過し、肝機能や肝静脈および下大静脈血流は良好で、AFPは 3mg/dl に低下している。【結論】肝部下大静脈 切除後の再建法として人工血管を用いる場合、自家下大静脈全周性分節の移行による肝静脈吻合部の作成は、小児移植肝 静脈吻合に優しい有用な方法と考えられた。 O-26 胆嚢管を用いて胆道再建を施行した生体肝移植の 2 例 濱 直樹 1、和田 浩志 1,2、丸橋 繁 1,2、小林 省吾 1、友國 晃 1、富丸 慶人 1、川本 弘一 1、 江口 英利 1、薮中 重美 2、萩原 邦子 2、梅下 浩司 3、土岐 祐一郎 1、森 正樹 1、永野 浩昭 1,2 1 大阪大学 消化器外科、2 大阪大学 移植医療部、3 大阪大学 周手術期管理学 【はじめに】当科での生体肝移植における胆道再建は、当初は胆管空腸吻合での再建がスタンダードであったが、2002 年以降は、乳頭機能を温存でき逆行性感染の少ない胆管胆管吻合を基本術式としている。肝移植提供者に対しては、術前 に DIC-CT を撮影して胆管の分岐・走行を充分に把握し、さらに術中にも胆嚢管より挿入したチューブより胆道造影を 行って再度分岐形態を再確認することとしている。今回、胆嚢管を用いて胆道再建を施行した生体肝移植を 2 例経験し たので報告する。 【症例 1】48 歳女性。劇症肝炎に対して、夫をドナーとして、右葉グラフトを用いた肝移植を施行した。 術前 DIC-CT にて、ドナーの後区域胆管は単独で総胆管に合流していた。術中所見も同様であり、前後区域胆管の一穴 化は困難であると判断されたため、レシピエントの胆嚢管を可及的に長く温存し、前区域枝を総肝管に、後区域枝を胆嚢 管に吻合した。現在、術後 2 年 3 ヶ月経過し、若干の胆汁排泄遅延が観察されたが、胆汁漏や吻合部狭窄もなく外来通 院中である。 【症例 2】64 歳男性。劇症肝炎に対して、娘をドナーとして、右葉グラフトでの肝移植を施行した。待機期 間が短く、術前 DIC-CT は撮影できていなかったが、術中胆道造影にて、総胆管の低位に単独で合流する B6 枝が描出 されたため、本症例も前後区域枝を総肝管に、B6 枝を個別に胆嚢管に吻合した。術後 1 ヶ月経過し、狭窄や胆汁漏など の胆道系合併症もなく術後経過良好である。 【まとめ】胆管の走行異常に対して、胆嚢管を用いて胆管胆管吻合での胆道 再建を施行した生体肝移植の 2 例を経験した。生体肝移植において、特に右葉グラフトでは胆管の分岐形態によっては、 複数個所での吻合を要することがある。そのような症例に対する胆嚢管を使用した胆管胆管吻合は、胆管空腸吻合を回避 できる有用な手術手技であると考えられる。 91 O-27 抗ミトコンドリア M2 抗体陽性ドナー候補者からの生体肝移植を断念した 1例 畑 太悟 1、柴 浩明 1、二川 康郎 1、坂本 太郎 1、飯田 智憲 1、島田 淳一 1、奥井 紀光 1、 阿部 恭平 1、春木 孝一郎 1、松本 倫典 1、遠山 洋一 1、石田 祐一 1、矢永 勝彦 2 1 東京慈恵会医科大学肝胆膵外科、2 東京慈恵会医科大学外科学講座 症例は 55 歳女性、3 年前より黄疸を自覚。人間ドックで胆道系酵素の上昇を指摘された。精査加療のため、当院消化器 肝臓内科受診。家族歴は、母親が原発性胆汁性肝硬変と診断されている。肝生検で vanishing bile duct syndrome を呈 するものの、慢性非化膿性破壊性胆管炎を疑う所見もあり、原発性胆汁性肝硬変として矛盾しない所見であった。血液生 化学検査では、抗核抗体陽性、抗 M2 抗体陽性。以上より、常用していた感冒薬による薬剤性肝障害または原発性胆汁性 肝硬変の診断で外来通院していた。その後、肝不全が進行し、腹水も出現したため入院となり、肝移植目的にて当科受診 した。診察時、Child-Pugh score 11 点、MELD score 23、日本肝移植適応研究会予後予測式 6 ヶ月後死亡率 98%で、 肝移植適応ありと判断した。ドナー候補者は実妹で、血液生化学検査ではγGT 軽度上昇を認めるのみであったが、抗核 抗体陽性、抗 M2 抗体陽性であった。皮膚掻痒感など、症状の訴えなし。肝生検は、原発性胆汁性肝硬変として矛盾しな い所見であった。以上より、無症候性原発性胆汁性肝硬変と診断し生体肝移植ドナー不適と判断、他に生体ドナー候補が いないため生体肝移植を断念した。原発性胆汁性肝硬変は家族内発生があるため、血縁ドナーを考慮する際には、抗核抗 体、抗 M2 抗体、必要に応じて肝生検を行い、適応を慎重に判断する必要がある。 O-28 中山 一卵性双生児間での生体肝移植の一例 祥未、石崎 順天堂大学 陽一、藤原 典子、須郷 広之、吉本 次郎、今村 宏、川崎 誠治 肝胆膵外科 【目的】今回我々は C 型肝硬変、肝細胞癌の患者に対し一卵性双生児である姉をドナーとした生体肝移植を経験したので 報告する。【症例】患者は 53 歳女性。1989 年より C 型肝硬変の診断で他院で加療中であった。2010 年 9 月に施行した 腹部 CT にて肝細胞癌(S8/7 15mm, S8 10mm)を認め、非代償性肝硬変、肝細胞癌の診断で生体肝移植を希望され当科紹 介となった。双生児の姉がドナー候補となり、術前の遺伝子検査で一卵性双生児であると確認。2010 年 11 月、生体肝移 植術(左葉グラフト)を施行した。術当日から通常プロトコールの 1/3 量のソルメドロールを第 5 病日まで使用したが以降 は免疫抑制剤は使用しなかった。第 33 病日に AST/ALT の上昇を認め、C 型肝炎の再燃を疑いペグイントロンを投与、 レベトール内服を開始した。その後 AST/ALT の改善がみられ第 64 病日に退院となった。現在もインターフェロン投与 中であり、肝細胞癌の再発もなく経過良好である。 【まとめ】一卵性双生児間での肝移植は免疫抑制剤を使用せずに良好 な経過であった。 92 O-29 西岡 阪本 生体肝グラフト採取 519 例の手術成績 裕次郎、長谷川 潔、田中 智大、野尻 良弘、菅原 寧彦、國土 典宏 東京大学 医学部附属病院 佳代、赤松 延久、金子 順一、青木 琢、 肝胆膵外科・人工臓器移植外科 【はじめに】生体肝移植ドナー手術ではレシピエントの手術がやりやすくなり、術後経過がよいように配慮すると同時に、 ドナーにおいては通常の肝切除よりはるかに高い精度で安全性の担保が要求される。当科の生体ドナー手術の経験をまと めた。【対象・方法】成人以上 66 歳未満を対象、ICG 検査で正常肝機能を確認、造影 CT で肝容量を正確に評価する。 グラフト切除後残肝が全体の 30%以上、かつグラフト予定容量がレシピエント標準肝容積の 40%以上(レシピエントの病 態が低リスクなら 35%以上)を必須条件とする。術前シミュレーションにより血管の分岐形態を把握し、各門脈・静脈枝 の支配領域を計算する。Pringle 法と hanging maneuver を併用、術中超音波を駆使して、肝離断を行う。胆管処理では 術中胆道造影により至適切離点を決定し、ドナー側断端は可能な限り結紮し、閉腹前はリークテストを必ず行っている。 【結果】1994 年 1 月-2013 年 12 月、519 例の生体肝移植を行った。手術時間、出血量、術後在院日数(中央値[範囲])は それぞれ 421ml(50-2000)、480 分(315-1760)、14 日(4-64)だった。15 例(2.9%)で再手術(胆汁漏 10 例、後出血 2 例、 遺残膿瘍 2 例、潰瘍穿孔 1 例)を行った。最近の 74 例(2010 年以降)でそれぞれの中央値は出血量 367ml、手術時間 450 分、在院日数 13.5 日とほぼ変化がなかった。術後合併症は胆汁漏が最も多く、全体で 39 例(8.7%)、最近の 74 例では 7 例(9.4%)、そのうち再手術を要したものが全体で 8 例(1.8%)最近で 3 例(3.9%)であった。【結語】生体肝移植ドナー手 術の術前後の管理法や手術手技は確立され、ほぼ安全に施行できている。ただ、胆汁漏はいまだ頻度が高く、再手術も一 定頻度で必要となっており、今後改善すべき問題である。 O-30 当施設における高齢ドナーを用いた成人生体肝移植の治療成績 戸子台 和哲、川岸 大内 憲明 東北大学病院 直樹、佐藤 和重、宮城 重人、中西 史、三浦 佑一、藤尾 淳、米田 海、 移植・再建・内視鏡外科 【目的】60 歳以上の高齢ドナーを用いた成人生体肝移植におけるドナーおよびレシピエントの治療成績を検討した。【対 象と方法】2001 年 4 月から 2009 年 5 月までの間に当院で生体肝移植施行した連続症例のうち、小児症例 39 例を除外し た 48 症例を対象とした。ドナーの移植時年齢が 60 歳以上の症例を高齢ドナー群、60 歳未満の症例を対照群とし、2 群 間でドナー術後合併症やレシピエント生存率を患者背景とともに比較した。【結果】当施設における 60 才以上の高齢ド ナー症例は 48 例中 4 例(8.3%)であった。対照群の平均年齢は 35 歳であった。グラフトの種類は、高齢ドナー群 4 例中 3 例が右葉グラフト、1 例が左葉グラフトであり、対照群 44 例中 42 例が右葉グラフト、2 例が左葉グラフトであった。 対照群 44 例中、創感染 4 例や胆汁漏 2 例などを含む 11 例にドナー術後合併症を認めたが、高齢ドナー群では認めなか った。高齢ドナー群のレシピエント生存率は対照群とほぼ同等の成績であり、1 年生存率 75%(対照群 86%)、5 年生存率 75%(対照群 73%)であった。 【結語】当施設における 60 歳以上の高齢ドナーを用いた生体肝移植症例は 60 歳未満のドナ ーを用いた症例とほぼ同等の治療成績であった。 93 O-31 当院における C 型肝硬変に対する高齢者ドナー生体肝移植の検討 鈴木 智之 1、伊藤 吉村 了勇 1 1 京都府立医科大学 孝司 1、串山 律子 2、中尾 俊雅 1、越野 移植一般外科、2 京都府立医科大学附属病院 勝博 1、昇 修治 1、牛込 秀隆 1、 移植コーディネーター 【背景】外科手術の適応年齢が高齢化しており、高齢者においても安全な手術、内視鏡手術などによる低侵襲手術が行え るようになってきている。生体臓器移植における生体ドナー手術においては何よりもドナーの安全性が優先されることが 必須であり、その適応年齢は必ずしも通常の外科手術適応年齢と一致するものではない。今回当科における C 型肝硬変 に対する生体肝移植症例の内、50 歳以上のドナーからの移植症例と 50 歳以下ドナーからの移植症例に分け、C 型肝硬変 に対する生体肝移植におけるドナー年齢のドナー及びレシピエントにおける影響を比較検討した。 【対象、方法、結果】 2003 年 10 月から 2013 年 12 月までに当院で施行した HCV 肝硬変に対する生体肝移植 30 例を、50 歳以上のドナーか らの移植症例の 8 例(高齢群)と 50 歳以下のドナーからの移植症例の 22 例(非高齢群)に分け比較検討を行った。レシピ エント側の因子として、レシピエント年齢、術前 MELD score、出血量、手術時間、CIT、WIT を高齢群と非高齢群で 比較したが有意差を認めなかった。また、ドナー側の因子として年齢、術式、出血量、手術時間、術後在院日数などを比 較したが、年齢以外には有意差を認めなかった。さらに、高齢群と非高齢群で生存率を比較したところ有意差はなかった が、5 年以上の長期成績では高齢群が 60%で非高齢群が 66.8%と高齢群の方が悪い傾向を認めた。高齢者群では 2 例の 死亡例を認め、C 型肝硬変再発によるものと、原因不明の神経障害によるものであった。【考察、まとめ】当院における C 型肝硬変に対する生体肝移植に関しては、ドナーが 50 歳以上の群と 50 歳以下の群で生存率に差はなかった。ただし、 レシピエントの術前状態、原疾患、血液型適合性などに よってはドナー年齢が高いことがリスクとなる可能性があると 考えられ、ドナー年齢が高いときはドナー自身における安全性を十分に確保しつつ、ドナー年齢も考慮した適応判断が必 要と考えられた。 O-32 当科における高齢ドナーを用いた成人生体肝移植の成績 藤田 優裕 1、篠田 日比 泰造 1、松原 1 慶應義塾大学 医学部 昌宏 1、板野 理 1、尾原 秀明 1、北郷 実 1、八木 健太郎 1、星野 健 2、黒田 達夫 2、北川 雄光 1 外科学教室 一般・消化器外科、2 慶應義塾大学 医学部 洋 1、阿部 外科学教室 雄太 1、 小児外科 【背景】成人生体肝移植において、ドナー年齢が移植成績を左右するとされる。今回当科の成人生体肝移植において、ド ナー年齢が移植成績に影響を与えるか解析した。 【方法】当科の成人生体肝移植 122 例を対象に、ドナー年齢を 40、45、 50、55、60 歳の各年齢を境に若年・高齢ドナーに分け、生存率に差があるか検討した。レシピエント年齢に関しても同 様に若年・高齢レシピエントの成績の検討を行った。ドナー年齢・性、レシピエント年齢・性、原疾患(HCV、劇症肝炎、 肝細胞癌)、胆道再建法、GRWR、血液型適合性、肝予備能(Child スコア)、温・冷阻血時間、出血量の各項目に関して、 生存率に影響を与えるか、単変量・多変量解析を行った。 【結果】ドナー各年齢での群分けにおける生存率解析では、45 歳以上のドナーの生存率が未満のドナーに比し有意に不良であった(5 年生存率、65.9% vs 82.1%, p<0.05)が、他の年 齢での群分けでは有意差を認めなかった。レシピエント年齢の解析では、45 歳以上・未満で生存率に差を認める傾向に あったが、他の年齢の群分けでは有意差を認めなかった。生存率に影響を与えた因子の単変量解析では、ドナー年齢 45 歳以上、レシピエント年齢 45 歳以上、HCV 陽性、胆管空腸再建、GWRW0.8 以下の 5 項目が有意な予後不良因子(p< 0.10)あった。同 5 因子の多変量解析では、HCV 陽性以外の 4 因子が有意(p<0.05)であった。【結語】当科の成人生体 肝移植においては、45 歳以上のドナー、45 歳以上のレシピエント、胆管空腸再建、GWRW0.8 以下はいずれも独立した 予後不良因子であり、適応を決定する際十分配慮すべきと思われた。 94 O-33 ドナー年齢がレシピエント予後に与える影響と新規対策の提案 林 泰寛 1、高村 博之 1、正司 政寿 1、中沼 田島 秀浩 1、北川 裕久 1、伏田 幸夫 1、谷 花崎 和弘 4、太田 哲生 1 伸一 1、牧野 勇 1、中川原 寿俊 1、宮下 知治 1、 卓 2、清水 康一 3、宗景 匡哉 4、北川 博之 4、 1 金沢大学 医学部 消化器・乳腺・移植再生外科、2 公立松任石川中央病院 4 高知大学 医学部 外科 外科、3 富山県立中央病院 外科、 【緒言】肝移植において、ドナー年齢がレシピエントの予後に与える影響は大きい。当科での生体部分肝移植(LDLT)症 例をドナー年齢という観点から検討する。【対象と方法】当科において 2013 年 12 月までに LDLT を施行した成人初回 症例 61 例を後方視的に検討した。 【結果】レシピエントは平均 52.7 歳(23~66 歳) 、性別は男性 35 例女性 26 例。うち HCV 抗体陽性症例は 23 例(HCC15 例を含む)であった。ドナーは平均 40.8 歳(20~62 歳) 、50 歳以上ドナー症例は 20 例、60 歳以上は 5 例、性別は男性 36 例、女性 25 例(50 歳以上男性 7 例、女性 13 例)。グラフトは右肝 37 例、左肝 21 例、その他 3 例(50 歳以上右肝 13 例、左肝 7 例) 、平均 GV/SLV は 48.8%(50 歳以上 44.2%)であった。50 歳以上ドナ ー症例は 50 歳未満ドナーと比して短期予後が不良な傾向が認められたが、グラフトロスの原因には一定の傾向などは認 められなかった。また、1 年以内にグラフトロスに至った症例をドナー年齢 50 歳以上と未満の群で比較したが、各種因 子に有意な差異は認められなかった。 【考察】当科においてもドナー年齢はグラフト予後に影響を与えていた。ドナー加 齢に伴う変化は、ドナー自身の手術リスクを上げるのみならず、肝移植において不可避である血管内皮細胞障害にも影響 を与えていると考えられる。当科では、同障害への対策が喫緊の課題であると考え、14 年 1 月より周術期管理法、特に 抗凝固および抗血小板療法の見直しと人工膵臓を用いた周術期血糖管理を導入した。症例数は限られているが、その理論 的背景と実際を併せて報告する。 O-34 神戸大学における劇症肝炎に対する移植プログラム 蔵満 薫 1、福本 巧 1、木下 秘我 1、田中 基文 1、武部 敦志 1、木戸 正浩 1、矢野 三住 拓誉 3、松本 拓 1、後藤 直大 1、浅利 貞毅 1、松本 逸平 1、味木 徹夫 1、具 1 神戸大学 肝胆膵外科、2 神戸大学 消化器内科、3 神戸大学 嘉彦 2、 英成 1 麻酔科 【背景】神戸大学は 2010 年より脳死肝移植実施施設として脳死肝移植希望患者の登録を行って来た。脳死肝移植対象疾 患のうち劇症肝炎は、専門医療機関で総合的な治療を早期に開始することが救命率の向上のために不可欠な疾患である が、内科的治療法及び肝移植を包括的に提供可能な医療連携システムはこれまで我が国に存在しなかった。そこで我々は、 兵庫県で既に定期的に開催されていた肝疾患連携拠点病院等連絡協議会を母体とする劇症肝炎等医療連携窓口を 2011 年 神戸大学に設置し、新たな移植プログラムを立ち上げた。窓口では劇症肝炎ならびに肝移植に関する専門医療機関、協力 医療機関からの問い合わせに応じ、CHDF や血漿交換等集学的治療が可能な専門施設への患者受け入れの斡旋/調節を 開始した。 【対象】2011 年 3 月より 2014 年 3 月末までの期間で 8 名の劇症肝炎患者の受け入れを行った。うち 7 名に脳 死肝移植希望登録を実施した。 【結果】2 名は内科的治療で改善したため登録取り消し、1 名に生体肝移植を実施、残る 4 名に脳死肝移植を実施した。脳死肝移植の平均待機期間は 10 日。全例転院後は集中治療室で人工呼吸管理、血漿交換を 実施した。移植を実施しなかった 1 名が肺炎にて死亡したが、それ以外の全例が生存している。【考察】劇症肝炎患者に 対し、神戸大学では全例に生体肝移植・脳死肝移植両方の説明を行っている。脳死から生体への切り替えは内科側の判断 に委ねているが、現在の問題点として肝性脳症の評価が挙げられる。実際に肺炎にて死亡した1名は内科的治療法で肝機 能は改善したものの意識障害が最後まで遷延した。本プログラムを開始し 3 年が経過し、兵庫県内の劇症肝炎患者が神 戸大学に集約されるようになった。今後はこれまでの経験を紹介施設と共有することで、さらなるプログラムの充足を目 指したい。 95 O-35 脳死登録後肝移植待機中に内科治療を続け救命した劇症化 自己免疫性肝炎の 2 例 永井 一正 1、姜 貞憲 1、友成 暁子 1、松居 桜井 康雄 1、真口 宏介 1、嶋村 剛 1 1 手稲渓仁会病院消化器病センター、2 北海道大学第 剛志 1、田中 一成 1、辻 邦彦 1、児玉 芳尚 1、 1 外科 【緒言】移植法改正後、脳死肝移植(LT)が増加したとはいえ、需給不均衡が是正されるには至っていない。さらに時間的 余裕がない昏睡型急性肝不全(ALF-C)の診療では、LT(脳死 or 生体)と内科治療の機動的な選択が迫られる。脳死登録後 待機中に内科治療を続け救命した劇症化自己免疫性肝炎(AIH)2 例を経験したので報告する。【症例 1】既往歴のない 42 歳男性。2011 年 10 月 3 日全身倦怠感で発症、前医受診し AST 832 U/L, ALT 827U/L, T.bil 28.1mg/dl, PT 28%で入院、 21 日肝性脳症を生じ ALF-C(亜急性型、移植適応 GL score 6)を呈した。集中治療で脳症は改善したが肝萎縮著明のため 脳死登録、LT 待機目的で 11 月 1 日当センターへ転入した。適応生体 donor なし。ANA x40, IgG 2828 mg/dl 及び除外 診断から急性発症様 AIH 劇症化を疑い、mPSL, AZA を併用、LT 待機 inactive として治療を続けた。回復後肝生検し revised AIH score 16 であった。 【症例 2】54 歳女性。2013 年 1 月 21 日に右季肋部痛で発症、前医入院、AST 276 U/L, ALT 175 U/L, T.bil 9.2 mg/dl, PT 25.2 %であった。28 日昏睡ΙΙ度を認め ALF-C(急性型, score 2)を呈すも血液浄化後 覚醒した。適応生体 donor なく脳死登録、31 日当センター転入、2 月 1 日脳死 donor 出現し移植外科転出も graft 不適 応とされ待機した。IgG 2486mg/dl, ANA x40、除外診断から AIH が疑われ、移植外科で PSL 導入、25 日当センターへ 再入院し AZA を併用、緩徐に回復した。肝生検後 AIH score 14 であった。【考案と結語】脳死肝提供が恒常的とは言え ない現状で ALF-C 全体の救命率を向上させるには、肝移植の機会をうかがいながらも内科的治療を試みる余地は依然と して存在する。 O-36 安中 当院に紹介された急性肝不全の推移 哲也 1、高木 1 岡山大学病院 章乃夫 1、山下 里見 2、保田 消化器・肝臓内科学、2 岡山大学病院 裕子 2、八木 孝仁 3、山本 看護部、3 岡山大学病院 和秀 1 肝胆膵・移植外科 【目的】肝移植施設における急性肝不全の予後について検討した。 【方法】2008 年~2014 年に当院へ紹介または受診され た急性肝不全の成因と予後を解析した。 【成績】症例は 49 例。そのうちで詳細な記録の残っている 46 例を解析した。年 齢中央値は 44 歳(14~74 歳)、男性 22 例、女性 24 例。急性肝不全昏睡型(含 劇症肝炎)31 例、非昏睡型 7 例、LOHF5 例、急性肝炎 2 例、肝性脳症 1 例。原因は成因不明 21 例、ウイルス性 15 例、薬物性 5 例、自己免疫性肝炎 2 例、その 他 3 例。ウイルス性 15 例のうち 12 例は HBV であった。予後は移植適応外 14 例、保存的に回復 10 例、肝移植 15 例、 移植準備または待機中死亡 7 例であった。受診時期別では 2008 年~2010 年の前期に 19 例、2011 年以降の後期に 27 例 であった。成因不明の割合は前期で 21%、後期で 63%であり、後期で成因不明の割合が増加していた(p=0.005)。また 成因不明の割合は 45 歳未満では 33%であったが、45 歳以上では 59%であり、年齢が高い群で多い傾向であった(p= 0.08)。紹介後経過別の成因不明例の割合は、適応外 14 例中 6 例(43%)、保存的に回復 10 症例中 4 例(40%)、生体肝移 植 10 例中 4 例(40%)、脳死登録後移植に至った 5 例中 2 例(40%)、移植準備または待機中死亡 7 例中 5 例(71%)であ った。移植準備または待機中死亡の群の内訳は急激に進行した症例 4 例(成因不明 2 例、HBV2 例)と、25 日以上の脳死 登録待機を強いられた症例 2 例(いずれも成因不明)および他施設で脳死移植登録した 1 例であった。急性肝不全の予後 について成因は大きな関与が無く、合併症やドナーの有無、脳死移植待機期間が重要な因子であった。移植後死亡は 2 例(成因不明 1 例、HBV1 例)であった。移植前後の強い免疫抑制療法が要因の 1 つと考えられた。 【結論】当院での原因 不明の急性肝不全は増加傾向である。原因不明の急性肝不全は必ずしも予後不良でなく、迅速に肝移植を含めた集学的治 療を行うことで救命できると考えられた。 96 O-37 大西 劇症肝炎にて脳死登録された症例の治療と転帰 -改正臓器移植法前後の検討を中心に 康晴 1、亀井 1 名古屋大学 秀弥 1、坪井 医学部附属病院 千里 2、山口 移植外科、2 名古屋大学 尚子 2、小倉 医学部附属病院 靖弘 1 移植連携室 (はじめに)2010 年 7 月に改正臓器移植法が施行されたものの、年間約 40 例の脳死肝移植にとどまっているのが現状で ある。今回、臓器移植法改正後約 4 年経過時点での、劇症肝炎に対する脳死移植登録症例について検討した。(対象)2013 年 12 月までに当院で劇症肝炎にて登録された 34 例。(結果)当科からの脳死肝移植登録は 207 例であり、そのうち劇症 肝炎は 34 例で 17%を占めていた。年齢は 15~68 歳(平均 45 歳)で、男性 21 例(62%)、女性 13 例(38%)であった。待 機中死亡が 16 例(47%)、状態悪化による登録取り消しが 2 例(6%)、状態改善による登録取り消しが 9 例(26%)であった。 肝移植に至ったのは 7 例(21%)で、生体肝移植 2 例(6%)、脳死肝移植 5 例(15%)であった。臓器移植法改正前(前期)と 後(後期)で比較すると、登録数は前期 11 年間で 22 例であったのに対し、後期は 3 年で 12 例となり、平均で年間 2 例か ら 4 例に倍増した。待機中死亡は前期で 12 例(55%)、後期で 4 例(33%)に減少した。症状改善による登録取り消しは前 期で 6 例(27%)、後期で 3 例(11%)であった。肝移植に至ったのは、前期で 3 例(生体 2 例、脳死 1 例)、後期では脳死 肝移植の 4 例であり、脳死肝移植施行率は前期 5%から後期 33%に飛躍的に増加した。移植後死亡例は他院で施行された 生体移植1例のみであり、移植実施症例 7 例の生存率は 86%、脳死肝移植に限れば 100%であった。(まとめ) 緊急肝移 植として行われる術式は、従来は生体移植にほぼ限られ、適切なドナー候補がいない場合は状態悪化による死亡例が比較 的多かった。改正臓器移植法実施により脳死移植施行率は上昇し、その成績も良好であるが、未だ満足される症例数には 達していないため、脳死移植のさらなる推進・普及が本邦での移植医療における今後、大きな課題のひとつと思われる。 O-38 当院における急性肝不全に対する劇症肝炎ワーキングの取り組み 富丸 慶人 1、丸橋 江口 英利 1、藪中 土岐 祐一郎 1、森 1 大阪大学 繁 1、和田 浩志 1,2、濱 直樹 1、小林 省吾 1、友國 晃 1、川本 弘一 1、 重美 2、萩原 邦子 2、梅下 浩司 3、上野 豪久 4、近藤 宏樹 5、 正樹 1、藤野 裕士 6、中川 雄公 7、嶋津 岳士 7、竹原 徹郎 8、永野 浩昭 1,2 消化器外科、2 大阪大学 児科、6 大阪大学 移植医療部、3 大阪大学 麻酔科、7 大阪大学 周手術期管理学、4 大阪大学 高度救命救急センター、8 大阪大学 小児外科、5 大阪大学 小 消化器内科 【背景】急性肝不全症例の救命には、集中治療と共に肝移植を念頭においた診療が必要であり、当院では高度救命救急セ ンター、消化器外科、消化器内科、小児外科、小児科、麻酔科の医師で「劇症肝炎ワーキング」を開催し、診療にあたっ ている。今回、当院紹介となった急性肝不全症例の劇症肝炎ワーキング後の転帰を調査し、急性肝不全に対する治療の今 後の課題を検討したので報告する。 【方法】これまでに劇症肝炎ワーキングを行った 108 症例を対象とし、対象症例にお けるワーキング後の転帰を調査し、急性肝不全に対する治療の今後の課題を検討した。 【結果】108 例中 46 例が肝移植の 方針となった。肝移植の方針となった 46 例中、生体および脳死肝移植をそれぞれ 20 例、5 例に施行した。一方、肝移植 手術を施行できなかった 21 例のうち 5 例は内科的治療が奏効し脳死肝移植登録を抹消したが、残り 16 例は移植手術待 機中に死亡した。このような傾向は改正臓器移植法施行前後のどちらの期間においても認められた。 【結語】脳死臓器提 供数が増加している現在においてもその数は依然として十分ではなく、移植手術を受けられない症例や生体ドナーに依存 している症例も多く存在する。治療成績向上には、脳死臓器提供の増加させることが重要であると考えられた。 97 O-39 特発性血小板減少性紫斑病を急性発症した C 型肝硬変症例に対し 生体肝移植を施行し得た 1 例 徳満 純一 1、原口 雅史 1、木下 梨華子 1、園田 悠紀 1、高木 裕子 1、藤富 真吾 1、 内田 信二郎 1、加茂 泰広 1、吉村 映美 1、柴田 英貴 1、三馬 聡 1、田浦 直太 1、市川 中尾 一彦 1、日高 匡章 2、高槻 光寿 2、江口 晋 2、猪口 薫 3 1 長崎大学病院 消化器内科、2 長崎大学病院 移植消化器外科、3 日本赤十字社 辰樹 1、 長崎原爆諫早病院 症例は 43 歳、女性。1996 年に HCV 陽性を指摘され、2005 年に C 型慢性肝炎と診断されるが、その後 C 型肝炎に対 する加療歴なし。2011 年に近医再受診した際、HCV-RNA6.3logIU/ml、Genotype1b と高ウィルス量であるとともに、 肝生検:A2-3/F4 であることから C 型肝硬変の診断となった。ご本人と相談し、肝硬変の増悪を抑制する目的で 2012 年ペグインターフェロン+リバビリン療法を開始されたが、血球減少などの副作用により中断。以後、対症療法で経過観 察されていたが 2013 年 5 月の血液検査で Alb2, 2g/dl、T.bil5.4mg/dl、PT36%、血小板 7.5 万/μl、腹水増加、と肝硬変 増悪(Child-pugh:12 点)を指摘された。長期生存は困難と判断され、生体肝移植目的に同年 7 月当院紹介受診。生体肝 移植適応と判断され、移植前精査目的で 8 月に当科入院となるが、入院 4 日前から歯肉出血を認め、入院 1 週間前の血 液検査では血小板 6.6 万/μl であったのに対し、入院時血液検査で血小板 2000/μl と著明な血小板減少を認めた。また、 胸部 CT で右肺野に肺胞出血も指摘され、原因精査目的で当院血液内科に紹介し種々の検査を施行したところ、骨髄穿刺 で巨核球数の増加及び血小板結合性免疫グロブリン G(PAIgG)増量を認めた。上記結果から C 型肝硬変に合併した特発 性血小板減少症(ITP)の診断となり、血液内科、移植消化器外科と相談の上、血小板輸血を継続しながら免疫グロブリン 大量療法及びリツキシマブ点滴(day1)を開始。加療開始に伴い血小板数は 3 日間で 2000→20000→75000 と速やかに改 善したため免疫グロブリンを中止したが血小板減少を認めず出血症状も消失したため、予定通り 8 月末に夫をドナーと した生体肝移植及び脾摘術が施行され経過観察中である。【考察】HCV 感染に合併した ITP 症例については報告例が散 見されるが、本邦では生体肝移植に急性発症した報告はなく今後も厳重な経過観察が必要と考えられる。 O-40 肝移植後、自然経過で C 型肝炎ウイルス消失を来した 2 症例 小木曽 智美 1、徳重 克年 1、橋本 悦子 1、谷合 白鳥 敬子 1、江川 裕人 2、山本 雅一 2 1 東京女子医科大学 消化器内科、2 東京女子医科大学 麻紀子 1、鳥居 信之 1、児玉 和久 1、 消化器外科 【はじめに】C 型肝炎ウイルス(HCV)による肝硬変で移植に至った症例では、移植後のウイルス再感染が問題となる。今 回、肝移植後の経過観察中に自然経過で、ウイルス消失を認めた症例を経験したので報告する。【症例及び経過】C 型肝 硬変および肝細胞癌のため、左葉グラフトにて生体肝移植及び脾摘術を施行した 2 症例。2 例ともセロタイプは 1 型でド ナーとの血液型は適合。術後の免疫抑制剤はステロイド、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチルを用いた。1) 症 例 1 は 52 歳男性。ドナーは姉。術前のウイルス量は 4.8 Log copy/ml。肝移植後、タクロリムスの血中濃度は 4ng/ml 前 後にコントロールした。術後 1 ヵ月目に HCV RNA は 6.9 Log copy/ml と再感染が確認された。術後 3 ヶ月目に AST 204 IU/l、ALT 94 IU/l と上昇を認め、インターフェロン(IFN)治療を検討していたが、原因不明の発熱のため強力ネオミノ ファーゲン C の投与を開始した。術後 4 ヶ月目にウイルス陰性化を認めた。現在、半年間の持続陰性を確認している。 2) 症例 2 は 50 歳女性。ドナーは弟。術前のウイルス量は 4.3 Log copy/ml。肝移植後、タクロリムスの血中濃度は 5- 8ng/ml にコントロールした。術後 1 ヶ月目に AST 162 IU/l、ALT 97 IU/l と上昇を認めた。急性拒絶反応を疑い肝生検 を施行したが、C 型急性肝炎と拒絶反応との鑑別は困難であった。ウイルス量は 6.9 Log copy/ml であり強力ネオミノフ ァーゲン C の投与を開始した。その後 IFN 治療を検討していたが、全身状態不良のため経過観察とした。術後 2 ヶ月目 にウイルス量の低下を認め、術後 3 ヶ月目より陰性化している。 【結語】免疫調整剤投与下で、自然経過で C 型肝炎ウイ ルス陰性化例を経験した。陰性化の機序は不明であるが、移植肝への再感染後免疫応答により自然排除された可能性が考 えられた。 98 O-41 肝移植後の HCV に対する simeprevir の使用経験 三浦 佑一 1、川岸 宮城 重人 1、佐藤 1 東北大学病院 直樹 1、米田 和重 1、木村 海 1、藤尾 修 2、小暮 淳 1、中西 渉 1、戸子台 和哲 1、中西 史 1、 高之 2、近藤 泰輝 2、下瀬川 徹 2、大内 憲明 2 移植・再建・内視鏡外科、2 東北大学病院 消化器内科 HCV 感染症に対する抗ウイルス療法は NS3/4A protease 阻害剤と peg-interferon、ribavirin による 3 剤併用療法が 現行の標準である。しかし肝移植後の HCV 陽性レシピエントに対してこの抗ウイルス療法を行う場合、従来の NS3/4A protease 阻害剤は免疫抑制剤の血中濃度を上昇させて副作用出現の危険性を高めることが臨床的に問題とされてきた。 2013 年 12 月より保険適用となった NS3/4A protease 阻害剤である simeprevir は peg-interferon、ribavirin と併せて 3 剤併用療法(simeprevir 3 剤併用療法)を行うことで従来の抗ウイルス療法と比較して高い臨床効果を示すだけでなく、 免疫抑制剤の血中濃度に影響を与えないことが報告されている。そこで我々は、HCV-RNA 陽性で C 型慢性肝炎を合併 する肝移植後のレシピエント 3 例にウイルスの排除を目的として simeprevir 3 剤併用療法を施行し、その臨床経過を検 討した。症例は 52~60 歳、男性 2 例、女性 1 例、いずれも右葉グラフトを用いた生体肝移植後でウイルス遺伝子型 1 型、 高ウイルス量であった。CI は tacrolimus 例、cyclosporine1 例であった。症例 1 は移植 4 カ月後に肝炎を発症し、初回 治療として simeprevir 3 剤併用療法を開始。治療開始 4 週後に血中 HCV-RNA が陰性化した。症例 2 は移植 10 カ月後 より peg-interferon、ribavirin2 剤併用療法を施行するも効果なく、移植後 2 年 7 カ月後より simeprevir 3 剤併用療法 を開始し、治療開始 3 週後から血中 HCV-RNA が陰性化した。症例 3 は移植 3 カ月後から治療し、一時血中 HCV-RNA が陰性化したが、移植後 2 年後に再燃。移植後 2 年 7 カ月から simeprevir 3 剤併用療法を開始し、治療開始 4 週後に血 中 HCV-RNA が陰性化した。治療開始後 3 例とも治療前後に CI の変化はなく、その他の副作用出現もなく rapid virological response を得た。治療開始からの観察期間は短いが simeprevir を用いた抗ウイルス療法は肝移植後の HCV に対する治療法として安全かつ有用であることが示唆された。 O-42 肝移植後 C 型肝炎再燃に対する Teraprevir、Simeprevir 3 剤併用療法の 治療成績 三馬 聡 1、市川 江口 晋 2、中尾 1 長崎大学病院 辰樹 1、宮明 一彦 1 寿光 1、田浦 消化器内科、2 長崎大学病院 直太 1、曽山 明彦 2、日高 匡章 2、高槻 光寿 2、 移植消化器外科 【目的】C 型肝炎患者の肝移植後、グラフト肝への C 型肝炎再燃は必発であるが、その IFN 治療は難治性である。近年 Teraprevir、Simeprevir による 3 剤併用療法が保険適応となり、慢性 C 型肝炎における高い奏功率が報告されている。 当科では、同療法を肝移植後 C 型肝炎再燃例に対し 2013 年 1 月より導入しており、その治療効果について報告する。 【方法】2000 年 8 月から 2013 年 10 月まで当院で行われた成人生体肝移植症例 175 例のうち C 型関連生体肝移植症例 74 例 を対象とした。これらの長期予後解析とともに、IFN 治療を行った 42 例(3 剤併用(-)IFN 30 例、Teraprevir 4 例、Simeprevir 8 例)の治療効果、予後を解析した。 【成績】C 型関連症例移植後長期予後は 1 年 71.8%、3 年 61.4%、5 年 52.8%であった。pegIFN/Ribavirin を含む IFN 治療(計 40 回)による RVR は 7.5%(3/40)であった。また 3 剤併用(-)IFN による SVR は 8 例(8/30, 26.6%)で達成さ れた(平均治療期間 747 日)。これら SVR 症例の予後は、1 年 100%、5 年 100%と良好であった(非 SVR 例:1 年 90.9%、 3 年 75.4%、5 年 53.8%)。一方、3 剤併用(+)IFN はこれまで 12 例(Teraprevir 4 例、Simeprevir 8 例)に導入されて いる(全例血清型 1 型、高ウイルス量)。Teraprevir3 剤併用療法の治療成績は SVR 1 例、Relapse 1 例、終了後 HCVRNA 陰性化持続 1 例、投与継続中 1 例である。Teraprevir、Simeprevir3 剤併用療法とも現在まで全症例で RVR を達成し(4/4、 6/6)、治療中止は 1 例も認めていない。 【結論】移植後 C 型肝炎再燃に対する IFN 治療によるウイルス陰性化は予後改善をもたらす。Teraprevir、Simeprevir3 剤併用療法は抗ウイルス効果が非常に高く、治療期間も短く有用であり、C 型肝炎移植症例の長期予後改善に大きく寄与 することが期待される。 99 O-43 シメプレビルを用いた成人生体肝移植術後 C 型肝炎の治療経験 永 滋教 1、篠田 八木 洋 1、阿部 昌宏 1、海老沼 浩利 2、板野 雄太 1、松原 健太郎 1、金井 理 1、尾原 秀明 1、北郷 隆典 2、北川 雄光 1 実 1、日比 泰造 1、 1 慶應義塾大学外科、2 慶應義塾大学内科 【背景】HCV プロテアーゼ阻害薬であるシメプレビル(SMV)は、PEG-IFN/ribavirin との3剤併用療法で 1b/高ウイル ス量症例に対して高い治療効果を発揮し、カルシニューリンインヒビター(CNI)との相互作用も少ないとされる。当科に おける生体肝移植後 C 型肝炎に対する SMV の使用経験を報告する。【対象・方法】当科で施行した成人生体肝移植 122 例中 HCV 陽性レシピエントは 35 例。このうち SMV+PEG-IFN/ribavirin の3剤併用療法で治療を行った 3 症例(いず れも HCV Genogroup 1 で移植後初回治療例)について、その効果ならびに有害事象について検討した。 【結果】(症例 1)55 歳男性。血液型不適合、右葉グラフトによる生体肝移植術後 24 か月の肝生検にて C 型肝炎再発が指摘された。3 剤併用 療法を導入し 22 日経過時点で CNI は投与量を変えることなく血中濃度は一定に保たれ、HCV RNA 量は 7.4 IU/ml から 検出感度以下となった。特記すべき副作用は見られていない。(症例 2)63 歳女性。血液型適合、左葉グラフトによる生 体肝移植術後 18 カ月目の肝生検にて C 型肝炎再発と診断された。 3 剤併用療法導入により HCV RNA 量は 6.6 から<1.2 IU/ml(投与 30 日目)と減少した。CNI 投与量の若干の調節を要したが、副作用は認めなかった。(症例 3)60 歳男性。血 液型不適合、右葉グラフトによる生体肝移植術後 17 カ月目の肝生検にて C 型肝炎再発が指摘された。3 剤併用療法導入 の結果、HCV RNA 量は 6.7 IU/ml から検出感度以下(投与 27 日目)となった。それに伴い肝酵素も改善した(AST/ALT 88/105 → 22/16 U/L)。CNI は投与量を変えることなく血中濃度は安定、副作用も認めなかった。【結語】SMV+ PEG-IFN/ribavirin の 3 剤併用療法は、CNI との相互作用、有害事象とも少なく、速やかに HCV RNA 量を低下させた。 生体肝移植後 C 型肝炎に対する有用な治療選択肢となることが示唆された。 O-44 河岡 C 型肝不全に対する肝移植症例の長期生存のための検討 友和 1、今村 1 広島大学病院 道雄 1、石山 宏平 2、田代 消化器・代謝内科、2 広島大学病院 裕尊 2、大段 秀樹 2、茶山 一彰 1 消化器外科 【目的】 当院における移植後 C 型肝炎に対する IFN 治療 50 例において SVR が得られた 26 例の 10 年生存率は 95%, SVR が得られなかった 24 例の 10 年生存率は 40%であり SVR 例は長期生存を得られた。そのため、SVR 率を上げるために IFN 治療の向上が必要である。今回 Peg-IFN+RBV 併用療法とテラプレビルあるいはシメプレビルを含めた 3 剤併用療 法について検討した。【対象と方法】2003 年 9 月から 2013 年 1 月までに当院にて肝移植後 C 型肝炎に対し IFN 治療を 行った 56 例のうち、治療効果の評価が可能であった 50 例を対象とした。Peg-IFN+RBV 併用療法と現在はテラプレビ ルあるいはシメプレビルを含めた 3 剤併用療法を行った。【結果】Peg-IFN+RBV 併用療法では SVR 率は genotype1 型 40%(17/43)、genotype2 型 100%(7/7)であった。genotype1 型においては、十分な SVR 率は得られていなかった。IL28B のドナー:レシピエント別では、ドナー:レシピエントどちらも TT であれば 81%(13/13)と高い SVR 率が得られてい たが、ドナー:レシピエントが TT:TG、ドナー:レシピエントが TG:TT とどちらかがマーナーSNP であるとそれぞ れ SVR 率は 33%(2/6)、20%(1/5)と十分な SVR 率は得られなかった。3 剤併用療法はテラプレビルを 3 例、シメプレビ ルを 6 例に行っているが、テラプレビルの 1 症例目は IFN+RBV 併用療法無効例、IL28B はドナー:TT、レシピエント: TT で SVR 達成した。2 症例目は IL28B はドナー:TG、レシピエント:TT である。5 週目で陰性化するも副作用強く 中止、その後再燃した。3 症例目は Peg-IFN+RBV 併用療法無効例で、IL28B はドナー:TT、レシピエント:TG で 2 週目で陰性化し現在テラプレビルの 12 週の治療を終え、Peg-IFN+RBV 併用療法継続中である。シメプレビルの 6 症例 のうち 2 症例は 12 週の治療を終え、安全に投与でき RVR が得られた。 【結語】肝移植後 C 型肝炎 genotype1、マイナー SNP 症例の SVR 率向上のために、3 剤併用療法の検討が必要である。 100 O-45 山下 山本 透析患者に対する生体肝移植の経験 信吾、大森 雅一 東京女子医科大学 亜紀子、有泉 俊一、小寺 由人、高橋 豊、尾形 哲、北川 光一、江川 裕人、 消化器外科 透析管理を伴う生体肝移植では、循環動態の管理だけでなく、透析ルートの管理、維持も重要である。特に、動静脈シ ャントを造設している慢性腎不全患者では、シャント維持により余分なルート留置を回避することで、感染予防の点で安 全な周術期管理が可能となる。今回、透析患者に対して行った生体肝移植の 2 症例の経験を報告する。症例 1:28 才女 性。身長 164.5cm、体重 42.5kg。高蓚酸血症による慢性腎不全にたいし維持透析を行っていた。血液型一致の母親の左 葉(GRWR 1.05)を移植した。術後は、ドレーンを抜去し、末梢輸液を漸減したところ術後 3 日目にシャントが閉塞。右 内頚静脈にブラッドアクセス用カテーテルを留置し透析を継続した。術後 21 日目にシャント再建し 41 日目に退院した。 症例 2:56 才女性。身長 159.1cm、体重 48.6Kg。原因不明の腎不全と高アンモニア血症を伴うアルコール性肝硬。紹介 施設にて留置されたブラッドアクセス用カテーテルを抜去しシャントを作成した後、血液型不適合の夫の右葉(GRWR 1.25)を移植した。ドナー抗体陽性(CDC:T, B ともに 100%)でもありリツキサン、セルセプト、タクロリムスを術前よ り開始し、血漿交換を行い手術を施行した。術後 11 日目、血圧低下と浮腫によりシャント穿刺困難な状態になっていた。 そのため、エコー下に穿刺を行ったが、透析開始後、返血の漏洩のためシャントは閉塞した。内頚静脈よりブラッドアク セス用カテーテルを留置し透析を継続した。その後甲状腺機能低下症が判明し、補充療法にて循環動態と浮腫は改善し、 26 日目シャントも再開通した。留置 12 日目にアスペルギルス抗原が陽性になったがカテーテル抜去により陰性化した。 幸い抗体関連拒絶なく退院に向けてリハビリ中である。術後早期のシャント閉塞は、さまざまな要因で起こり得るため、 細心の管理が重要であり、カテーテル長期留置を避ける努力が重要である。 O-46 岡村 植村 維持血液透析中の慢性腎不全併発例に対する生体肝移植成績の検討: 当院 6 症例の治療経験より 裕輔、秦 浩一郎、稲本 道、久保田 豊成、平尾 浩史、田中 宏和、吉澤 淳、冨山 忠廣、小川 晃平、藤本 康弘、森 章、岡島 英明、海道 利実、上本 伸二 京都大学大学院 浩司、 肝胆膵移植外科 【目的】維持血液透析中の慢性腎不全患者は出血や感染症などの周術期合併症が起こりやすいと考えられている。今回、 当科で経験した維持血液透析中の慢性腎不全合併症例に対する生体肝移植の治療成績を検討した。【方法】対象は 1999 年 1 月から 2012 年 12 月までに当科で成人間生体肝移植を施行した 728 例のうち、維持血液透析中の慢性腎不全合併 6 症例。周術期の血液透析は術前々日および前日に間欠的血液透析を行い、術当日は術中より持続的血液濾過透析(CHDF) を開始し、術数日後に間欠的血液透析に移行した。透析中の抗凝固剤はメシル酸ナファモスタットを使用した。 【結果】 原疾患は先天性多発肝嚢胞症/多発嚢胞腎 2 例、原発性高シュウ酸尿症 1 例、アルコール性肝硬変/ネフローゼ症候群 1 例、B 型肝硬変/糖尿病性腎症 1 例、C 型肝硬変/ネフローゼ症候群 1 例。術前透析期間は中央値 15(範囲:4-62)か月、 MELD score は中央値 22(範囲:20-29)、Child-Pugh score は中央値 9(範囲:5-11)。術後 CHDF 期間は中央値 6(範 囲:4-12)日。術中出血量は中央値 5100(範囲:290-11560)ml であり、非透析症例と有意差は認められなかった。術後 急性期の感染症は 2 例、出血性合併症は 2 例に認められたが、全 6 例生存退院した。長期経過では、術後 5 か月目に真 菌性肺炎で 1 例、17 か月目と 161 か月目に頭蓋内出血で 2 例を失った。非透析症例と比べて生存率に有意差は認められ 【結語】慢性腎不全による維持血液透析中の症例に対 なかった(P=0.94)。また、2 例で異時性生体腎移植が施行された。 する生体肝移植成績は非透析症例と同等であったが、感染症や高血圧、脳動脈瘤など原疾患特有の合併症に留意が必要と 考えられた。 101 O-47 肝移植後の腎機能の経過と降圧療法について 高木 章乃夫 1、八木 孝仁 2、保田 裕子 3、安中 哲也 1、貞森 裕 2、篠浦 吉田 龍一 2、信岡 大輔 2、内海 方嗣 2、藤原 俊義 2、山本 和秀 1 1 岡山大学 消化器内科、2 岡山大学 消化器外科、3 岡山大学病院 先 2、楳田 祐三 2、 移植コーディネータ 【背景】肝移植後患者においては、カルシニューリン阻害剤の有する血管攣縮作用などにより高血圧を伴い腎機能が悪化 していくことが多い。これに対してミコフェノール酸併用によるカルシニューリン阻害剤の減量などが行われる。高血圧 管理に関して、どのような管理方法が良いかについて十分な知見はない。当院で肝移植を行われた症例の降圧管理・腎機 能経過より最適の降圧療法を探索する。 【対象】経過観察症例 50 例(男 29、女 21)。原疾患は C 型肝硬変 24 例、B 型肝 硬変 7 例、非アルコール性脂肪性肝炎 7 例、他 12 例である。移植時年齢中央値 54 歳、術前クレアチニン中央値 0.75mg/dl で、全例生体肝移植であった。【結果】クレアチニン値は 1 年後 0.85mg/dl、2 年後 0.89mg/dl、3 年後 0.94mg/dl、4 年 後 0.96mg/dl、5 年後 0.93mg/dl、6 年後 1.06mg/dl と上昇傾向であった。骨髄増殖性疾患併発に伴う化学療法後の腎不 全 1 例、糖尿病性腎症悪化による腎不全で 1 例が移植後に透析導入となった。C 型肝炎関連腎症発症例が 2 例あり、抗 ウイルス治療にて改善中である。1 年後に降圧薬を使用されている症例は 11/50 例(22%)でアムロジピン 9 例(5mg3 例、 2.5mg6 例)、ロサルタン 2 例(50mg1 例、25mg1 例)バルサルタン 3 例(20mg3 例)(延べ例数)であった。5 年後に降圧 薬を使用している症例は 8/22 例(36%)で 8 例中 2 例は多剤併用であった。経過中 3 例で Anigotensin receptor blocker (ARB)によると思われる薬剤開始後のクレアチニン急上昇を認め、減量あるいは中止した。 【まとめ】移植後腎機能は悪 化傾向にあり、ARB は本来有する腎輸出細動脈拡張に伴う腎機能悪化が顕著に生じる可能性があるため、少量より慎重 に投与することが望ましい。 O-48 藤原 石崎 当科における成人肝移植術後の腎機能障害について 典子、伊能 陽一、川崎 順天堂大学 壮、中山 誠治 昇、塚田 暁、徳川 友彦、吉本 次郎、須郷 広之、今村 宏、 肝胆膵外科 【目的】肝移植術後晩期合併症としての腎機能障害について、当科での症例の腎機能障害発現とその予測因子について検 討する。【対象】2013 年 1 月までに当科で肝移植を施行した成人 51 例(ドナーが一卵性双生児のため術後免疫抑制剤を 投与していない 1 例をのぞく)対象とした。免疫抑制療法は CNI として FK を第一選択とし副作用出現に応じて CyA に 変更(1 例は痙攣のため CNI を中止し Rapamycin を投与)、症例に応じてステイロイドと MMF を併用している。腎機能 の評価は推算糸球体濾過量(eGFRs)を基に、慢性腎臓病(CKD)のステージ分類で CKD3 以上(eGFR60 未満)を腎機能障 害例とした。【結果】症例の移植時平均年齢 52.4±11.9 歳、観察期間中央値 5 年 5 ヶ月、男性 20 例、女性 31 例。移植 術前の全症例中の CKD3 以上腎機能障害例は 10 例 19.6%であった。移植術 1 年後の腎機能の評価は、CKD1(eGFR90 以上):8 例、CKD2(eGFR60-89):23 例、CKD3(eGFR30-59):17 例、CKD4(eGFR15-29):2 例、CKD5(維持透析 導入):1 例で、腎機能障害例は 20 例 39.2%であった。術前 CKD3 以上の 10 例で術後に腎機能が CKD2 以下に改善し た症例はなかった。術前 CKD2 以下 41 例中、術後 CKD3 以上に悪化した 10 例 と、術後も CKD2 以下に保たれている 31 例を比較したところ、術後腎機能障害発現の予測因子として術前の利尿剤投与の有無が有意な予測因子であった (p=0.02)。年齢、MELDscore、肝炎ウィルス合併の有無などは腎機能障害発現の予測因子ではなかった。【結語】術前 CKD3 以上の肝移植症例では、術後 CNI の投与や術前の長期腎機能障害が原因と推測される影響で、術後腎機能の改善 はみられなかった。術前 CKD2 以下の症例で術前利尿剤投与例は、移植後の腎機能障害の発現に注意が必要であると考 えられた。 102 O-49 谷峰 田代 NK 細胞 License 機構の肝細胞癌切除後再発予後に対する影響 直樹、田中 裕尊、大段 広島大学大学院 友加、小林 秀樹 医歯薬保健学研究院 剛、石山 宏平、井手 健太郎、大平 真裕、田原 裕之、 消化器・移植外科 【背景】NK 細胞は自己の HLA を認識する抑制性 Killer immunoglobulin-like receptors(KIRs)を表出することで潜在 的活性強化がおこることが報告されており、この機構は「License」と呼ばれている。抑制性 KIR は 5 種類(KIR2DL1, 2DL2, 2DL3, 3DL1, 3DL2)存在し、それぞれ特定の HLA 配列を認識すること、抑制性 KIR の保有、HLA 型は遺伝的多 様性を認めるため、潜在的に機能する KIR-HLA ペアに個体差が生じることが知られている。 生体内で NK 細胞の License 効果が肝細胞癌(HCC)術後予後にどのように寄与するかを検証するため、遺伝子解析により潜在的 License 経路の判定 および HCC 切除後再発予後に対する影響を検討した。【方法】1997 年~2010 年に施行した HCC 初回肝切除症例 170 例を対象とした。術前肝予備能不良症例(Child-Pugh B/C)および非治癒切除症例は対象より除外した。rSSO-PCR 法を 用いて KIR, HLA 遺伝子タイピングを行い、年齢、性別、背景肝、腫瘍個数、腫瘍径、分化度、脈管侵襲、衛星結節、 切除断端距離、計 9 項目を用いた Propensity score matching 法による調整後、再発予後解析を行った。 【結果】それぞ れ単独の KIR-HLA ペアの保有は再発予後に有意な影響を認めなかったが、KIR-HLA ペアの保有数により累積再発曲線 の階層化が認められた。遺伝的に有効な KIR-HLA ペアが多い患者群(≧3 個)はペアが少ない群(≧2 個)に比べ有意に術 後再発予後が良好であった(P = 0.0183, 調整 Hazard ratio 0.57)。【考察】NK 細胞は In vitro で複数の License 経路の 存在により、細胞障害活性が増強されることが報告されており、本研究により生体内でも遺伝レベルの KIR-HLA ペア の累積によって、HCC 切除後再発予後に強く関わることが示唆された。我々は HCC 合併末期肝硬変患者に対し、肝移 植後再発予防を目的としてドナー肝由来 NK 細胞移入療法を行っており、License 効果を考慮したドナー選定は強力なツ ールとなり得ると考える。 O-50 生体肝移植後 6 年半で肺転移・脳転移・脾転移をきたし、胸腔鏡下 肺切除・脳転移巣切除に加え、腹腔鏡下に脾摘術を施行した 1 例 臼井 正信 1、山本 憲彦 2、奥田 善大 1、種村 彰洋 1、村田 泰洋 1、栗山 岸和田 昌之 1、水野 修吾 1、櫻井 洋至 1、竹井 謙之 2、伊佐地 秀司 1 1 三重大学 肝胆膵・移植外科、2 三重大学 直久 1、安積 良紀 1、 消化器・肝臓内科 肝移植後 5 年以上経過後に多発遠隔転移を来した 1 例を報告する。症例:65 歳男性。2006 年 12 月に肝右葉を占める 10cm のアルコール性肝硬変合併巨大肝癌に対し、門脈枝塞栓後右肝切除を施行。術後外来通院中、残肝に 1~2cm 大の多発再 発を認め、Milan 外のため、自費で息子さんをドナーに生体肝移植施行(左葉グラフト GRWR)。術後 6 年まで正常化し ていた AFP が 2013 年より徐々に上がりはじめ、定期的にとっていた CT で、左肺上葉に小結節を指摘された。6 月(術 後 6 年半)、生検を兼ね胸腔鏡下に左肺部分切除施行。肝癌肺転移の診断であり、7 月よりネクサバールによる化学療法 を開始。10 月に突然の脳出血を認め、ネクサバール開始前に確認した CT では移っていない脳転移からの出血であった。 脳転移巣の切除後、一旦下がった AFP が再び上昇し、CT にて脾転移を指摘された。2014 年 2 月、腹腔鏡下脾摘術を施 行した。病理組織はいずれも肝癌脳転移と脾転移であった。術後経過は良好で退院となった。現在術後 1 ヵ月で、脳出 血があったため、慎重にネクサバールの再開を検討中である。生体肝移植後に遠隔転移を認める症例でも、積極的に手術 を行い、補助化学療法を組み合わせることで、予後の延長が望める症例が増える可能性があると考えられた。 103 O-51 岩橋 石川 RFA 後肝細胞癌再発例は EMT 誘導を介して腫瘍悪性度が増強する -RFA 後肝細胞癌における肝移植適応に関して- 衆一、島田 大地 徳島大学 光生、居村 暁、森根 裕二、池本 哲也、荒川 悠佑、齋藤 裕、山田 眞一郎、 外科学 【はじめに】肝細胞癌に対する治療として肝移植術は重要な治療オプションであるが、移植後の肝細胞癌再発が問題とな っている。今回我々は肝切除術後であるが、RFA 治療後の局所再発症例は肝外再発の割合が高く予後不良であり、肝移 植の適応判断において慎重を期するべきであるといった知見が得られたので報告する。【対象と方法】肝切除を行った RFA 後局所再発切除症例 10 例(RFA 群)、および初回手術症例 78 例(Control 群)を対象とした。検討 1:臨床病理学的 因子・再発形式、検討 2:microRNA200c、microRNA34a、HIF-1α、TGF-β、Twist、Vimentin、Snail-1 mRNA 発 現【結果】検討 1:RFA 群で門脈侵襲の頻度が高く低分化型の割合が高かった。腫瘍最大径や大きさに両群間に有意差 は認められなかった。RFA 群は初回治療からの生存率が悪い傾向にあり(3 年生存率 36.5 vs 74.6%, p=0.10)、切除から の生存率が不良であった(3 年生存率 34.9 vs 74.6%, p<0.01)。また切除後の無再発生存率おいて RFA 群が有意に不良で あった(3 年生存率 26.7 vs 45.5%, p=0.01)。肝外再発の頻度は RFA 群が有意に高率であった。検討 2:HIF-1αは RFA 群で高い傾向があり、EMT 関連遺伝子においては、TGF-β、Twist、Snail-1 は RFA 群で有意に高値を示し(TGF-β: p<0.01、Twist:p=0.02、Snail-1:p<0.01)、Vimentin も RFA 群で高い傾向を有した。また microRNA200c、microRNA34a は RFA 群で有意に低値であった。【まとめ】RFA 治療を行い局所再発した症例は肝外再発を来たす頻度が高く予後不良 であり、その機序に microRNA200c・microRNA34a の低下を介した EMT 誘導が考えられた。RFA 後局所再発切除症 例における肝移植適応判断は慎重を期するべきと考えられた。 O-52 陽子線療法による前治療歴を有する肝細胞癌症例に対する肝移植の 経験 見城 明 1、佐藤 直哉 1、木村 隆 1、穴澤 貴行 1、芳賀 土屋 貴男 1、斎藤 拓朗 2、大平 弘正 3、後藤 満一 1 1 福島県立医科大学 臓器再生外科、2 福島県立医科大学 3 福島県立医科大学 リウマチ・膠原病・消化器内科 淳一郎 1、佐藤 哲 1、渡邊 淳一郎 1、 会津医療センター外科、 【背景】肝細胞癌(以下、HCC)に対する局所療法は、肝切除術、RFA、TACE を選択することがほとんどであり、放射線 治療に関しては、治療選択は許容されるが科学的根拠に乏しいとガイドラインに記載されている。陽子線治療(以下、 PBT)は、光子線治療と比較して深部に急峻な線量ピークを持ち(Bragg peak)、少ない門数で良好な線量分布が得られ、 周囲正常組織への影響を低減できるとされている。当科にて、肝細胞癌に対する陽子線治療歴を有する症例に対する生体 肝移植を経験したので報告する。 【症例】62 歳 妻 男性【既往歴】60 歳より糖尿病【輸血歴】なし。 【家族歴】父親、母親、 C 型肝炎【現病歴】40 才時に C 型肝炎を指摘され、短期間のインターフェロン治療を施行するも NR。54 歳時 PEG-IFN+Rib 療法を 1 年間施行するも NR であった。61 歳に肝腫瘍(S5 3cm)が出現し、治療目的に当院内科入院。 肝腫瘍は画像所見及び AFP(36ng/ml)・PIVKA-II(2902mAU/ml)の高値より HCC(T2, N0, M0, StageII)と診断。肝機 能は Child-Pugh B。食道・胃静脈瘤に対し EIS を施行後、本人の希望により HCC に対して PBT を施行(77Gy/35 回)。 PBT 4 ヶ月後、腫瘍マーカーの再上昇及び肝不全徴候が出現(腹水貯留、肝性脳症、Child-Pugh C)。肝移植を希望され 当科受診。移植前画像検査では、PBT 施行部位の腫瘍再発は明らかでなく、肝腫瘍はミラノ基準内(腫瘤個数 3 個(S6, 7, 8)、最大径 1.9cm)であり、生体肝移植術(血液型一致、左葉+尾状葉グラフト)を施行した。【病理所見】腫瘍は 3 個、 最大径 1.5cm、高~中分化型 HCC 脈管浸潤なし。PBT 部位は肉眼的に著明に萎縮し、組織学的に腫瘍細胞は存在せず、 肝細胞は脱落し広範囲線維化間質成分を背景に偽胆管の増生・リンパ球浸潤を認めた。 【移植後経過】術後合併症なく、 移植後 8 ヶ月、再発を認めていない。 【結語】PBT の肝細胞癌に対する局所治療効果および肝機能に及ぼす影響に関して 文献的考察を加え報告する。 104 O-53 HCC に対する down staging 後の生体肝移植の治療成績 高村 博之 1、正司 政寿 1、中沼 伸一 1、林 泰寛 1、田島 秀浩 1、北原 征明 2、荒井 邦明 2、 山下 竜也 2、柿木 嘉平太 2、渡邉 利史 1、岡本 浩一 1、酒井 清祥 1、木下 淳 1、牧野 勇 1、 中村 慶史 1、尾山 勝信 1、中川原 寿俊 1、宮下 知治 1、二宮 致 1、北川 裕久 1、伏田 幸夫 1、 藤村 隆 1、金子 周一 2、太田 哲生 1 1 金沢大学 消化器・乳腺・移植再生外科、2 金沢大学 消化器内科 Milan 基準を逸脱する HCC に対する down staging を目的とした移植前治療を行った生体肝移植(LDLT)症例の成績に ついて報告する。 【対象】当科では 2008 年以降は厳格に Milan 基準内の症例しか LDLT を行っていないため、本検討の 対象を 2007 年までに HCC に対して LDLT が行われた 23 例とした。その内、down staging を目的として移植前治療 (TACE)が行われた症例が 7 例で、さらにその中で Milan 基準外で移植前治療を行った症例は 5 例(Up-to-7 外)であっ た。 【結果】3 か月以上前の前治療歴の有無は移植後の予後に寄与しなかった。CT-HA もしくは dynamic CT で Up-to-7 を満たせば、脈管侵襲の有無や組織型、腫瘍マーカーの多寡にかかわらず全例無再発生存中であり、予後良好である。 HCC に対して down staging を目的として移植前治療(TACE)が行われた 7 例の内、Up-to-7 外から Milan 基準内へ down staging が図られた症例が 4 例あり、その内の 2 例は無再発生存中だが、他の 2 例は HCC の再発が認められた。この 4 例は全例で組織学的に HCC の残存が確認されたが、再発を認めていない 2 例は、治療後の dynamic CT で全腫瘍が壊死 巣と評価された。しかし再発した 2 例は、いずれも腫瘍の viable lesion の残存が確認された。また、再発を認めない 2 例は組織学的に癌間質(CAF)の増生が認められなかったが、再発した 2 例はいずれも CAF の増生が認められた。また、 前治療を行ったものの、Up-to-7 内へ down staging が図られなかった症例が 1 例あるが、この症例も CAF の増生を認 め移植後に HCC の再発が認められた。 【結語】HCC は CT-HA や dynamic CT、EOB-MRI による術前画像で Up-to-7 を満たせば HCC の再発は認められないので保険適応を Up-to-7 に広げるべきである。Down staging を目的とした移植 前治療は、予後を改善させる可能性があるが、姑息的な治療とせず、必ず全腫瘍を治療のターゲットとして制御を目指す べきである。また、癌間質の増生は予後不良の重要な因子である。 O-54 演題取り下げ 105 O-55 当院における脳死肝移植症例の提供肝に関する検討 友國 晃 1、丸橋 繁 1,2、和田 浩志 1,2、濱 直樹 1、富丸 慶人 1、小林 省吾 1、江口 薮中 重美 2、萩原 邦子 2、梅下 浩司 3、上野 豪久 4、近藤 宏樹 5、平松 直樹 6、 土岐 祐一郎 1、森 正樹 1、竹原 徹郎 6、永野 浩昭 1,2 1 大阪大学 消化器外科、2 大阪大学 5 大阪大学 小児科、6 大阪大学 移植医療部、3 大阪大学 周手術機関理学、4 大阪大学 英利 1、 小児外科、 消化器内科 【背景】本邦における脳死ドナー提供者数は極めて少なく、移植症例数の確保のためにはその適応の拡大が必要であると 考えられ、高齢ドナー、脂肪肝、あるいはウィルス性肝炎等、完全に健康とはいえない肝臓をグラフトとして利用するこ との是非が論じられている。一方、こうしたマージナルドナーに由来するグラフトには初期機能不良または初期機能喪失 の危険性が少なからず存在し、その評価・管理は極めて重要である。【目的】今回、当院における脳死肝移植例のうち、 マージナルドナーからのグラフトを使用した症例の移植成績について報告する。 【方法】当院にて施行した脳死肝移植症 例18 例を対象として、グラフトの脂肪肝の程度、冷阻血時間、ドナーの年齢、ICU 滞在期間、カテコラミンの使用量な どのドナー側の因子をもとに LPI(the risk of severe Liver Preservation Injury)及び PPD(Probability of Primary Dysfunction)を算出し、その移植成績について検討した。 【成績】LPI が高値であった移植症例は3例であった。そのう ち 2 例は術後問題なく経過し、現在も健存中であるが、残る 1 例については LPI が特に高く(19.2)、術後大量腹水、持 続透析を要する腎不全をきたし、さらにグラフト肝の線維化の進行(F3~4)を認めた。同症例は、術後 8 ヶ月目にいった ん退院したものの、その後グラフト肝の線維化がさらに進行し、食道静脈瘤の破裂、肺炎を併発し術後 10 ヶ月目に死亡 した。【結論】マージナルドナー由来のグラフトを用いることの可否は肝移植医療における重要な課題であり、脳死肝移 植の成績向上のためには、各施設間での情報を共有し十分な議論を進めるとともに、その適応の詳細を明らかにすること が重要であると考えられた。 O-56 日本の脳死肝移植の推進 -米国における臓器提供システムから学ぶこと- 村岡 いづみ 1,2、高槻 光寿 1、曽山 明彦 1、日高 匡章 1、木下 綾華 1、夏田 孔史 1、 バイマカノフ ジャスラン 1、足立 智彦 1、北里 周 1、黒木 保 1、江口 晋 1、西田 聖剛 2 1 長崎大学 移植・消化器外科、2 マイアミ大学 移植外科 臓器移植先進国である米国では、昨年 6203 例の脳死肝移植が施行された。臓器提供者数が多い要因として、米国連邦 政府の強い主導の下、民間営利団体である UNOS や Organ Procurement Organization(OPO)と呼ばれる非営利団体の 地域臓器斡旋機構の存在がある。脳死患者が発生した場合、医療機関には OPO への報告義務と臓器摘出手術までの確立 されたシステムがある。多くの医療機関で脳死の可能性がある患者を報告するにあたり簡便なフローチャートが存在し、 そのチャートに則って脳死の可能性を判断し OPO に報告できるようになっている。ドナーが発生した病院側や患者主治 医は、OPO への報告後は直接臓器提供患者家族に関わることはなく、OPO から派遣された専門のコーディネーターが該 当患者の管理、患者家族に対し臓器提供に関する説明・同意書の取得を行ない、同意以降の医療費の負担を OPO が行う。 提供に到る場合は医療機関との臓器摘出手術のスケジュール調整を行う。このように、脳死患者発生の報告以降、医療機 関の医師や看護師に対する負担はほとんどなく、全てが画一化された OPO のシステムの元で動くよう組織構築されてい る。脳死患者の OPO への報告義務は、州法で定められており、この義務を怠った場合は公的医療費負担の削減や指定医 療機関から外されるといった罰則が科せられる。提供臓器は、肝臓の場合は、MELD>35 以上は UNOS の近隣の州に、 それ以下の場合は提供地域の待機患者に原則的に優先権が与えられている。実際にフロリダ州マイアミで脳死肝移植の現 場を体験し、日本の献血制度に通じる、OPO が果たす役割の重要性と機能的な臓器配分制度を実感した。我が国におい て臓器提供数の増加を目指すにあたり米国の統一された全ての医療機関に対する脳死患者の報告義務とその後の OPO の 専門家による介入、該当医療機関への保険制度上の優遇制度、該当地域患者への優先配分などは、参考にするべきシステ ムであると考える。 106 O-57 山本 宮川 末梢血中にドナーリンパ球が同定された脳死肝移植後溶血性貧血の 1例 悠太、増田 眞一 信州大学 医学部 雄一、大野 康成、三田 篤義、浦田 浩一、中澤 勇一、小林 聡、池上 俊彦、 移植外科 【はじめに】成人肝移植後に貧血と診断される頻度は 4.3%と報告されている。その原因として、腎障害、術中出血、鉄 欠乏、免疫抑制剤などの薬剤、溶血、骨髄抑制、再生不良、GVHD などが挙げられる。今回我々は、末梢血中にドナー リンパ球が同定された脳死肝移植後溶血性貧血の一例を経験したので報告する。【症例】患者は 57 歳女性、血液型は A 型(+)。感冒症状後に褐色尿を自覚し近医を受診した。急性肝不全と診断され入院加療されたが、意識障害が出現し劇症 肝炎と診断された。肝移植目的に当院に転院し、脳死肝移植を希望され、臓器移植ネットワーク登録を行った。内科的治 療を行ったが意識障害は改善しなかった。登録 9 日目に脳死ドナー(男性、O 型(+))が出現し脳死全肝移植術を施行した。 手術時間は 14 時間 20 分、出血量は 1450ml であった。免疫抑制導入療法としてタクロリムス、ステロイドを用いた。 術後 2 病日に人工呼吸器から離脱し、術後 6 病日に ICU から一般病棟へ転棟した。同日ヘマトクリット値の低下(20.1%) を認めたが、腹部 CT 検査では腹腔内出血を認なかった。A 型(+)RCC 計 6 単位を輸血したが術後 11 病日のヘマトクリ ット値は 17%まで低下し、間接ビリルビン値の上昇、低ハプトグロビン血症を認め、溶血性貧血が疑われた。Coombs 試験陽性、抗 A 抗体 8 倍であり、FISH 法にて Y 染色体陽性リンパ球が末梢血中に同定され、ドナーリンパ球による抗 A 抗体産生の可能性が考えられた。抗 A 抗体の存在を考慮し、以後は O 型洗浄 RCC を用いた。Coombs 試験は術後 19 病日に陰性化し、抗 A 抗体は同 107 病日に陰性化を確認した。術後 55 病日に紹介病院に転院した。現在自宅にて自立生 活し、明らかな溶血発作再発を認ない。 【まとめ】末梢血中にドナーリンパ球が同定された脳死肝移植後溶血性貧血の一 例を経験したので報告した。 O-58 頭蓋咽頭腫術後下垂体機能不全が原因と考えられる肝不全に対して 生体部分肝移植を施行した一例 影山 詔一 1、藤山 渡邊 常太 1、高田 1 愛媛大学 医学部 泰二 1、高井 泰次 1、徳本 昭洋 1、井上 良雄 2、日浅 肝胆膵移植外科、2 愛媛大学 仁 1、竹林 陽一 2 医学部 孝晃 1、水本 哲也 1、羽田野 雅英 1、 消化器内分泌代謝内科 頭蓋咽頭腫術後下垂体機能不全が原因と考えられる非代謝性肝硬変に対して生体部分肝移植術を施行した症例を経験 したので報告する。症例は 33 歳男性、6 歳時に頭蓋咽頭腫に対して腫瘍摘出術を施行。術後ステロイド、抗利尿ホルモ ン、成長ホルモンの投与を行い経過観察されていた。17 歳時、頭蓋咽頭種の再発を認めガンマナイフ治療を施行。その 後は抗利尿ホルモンの投与のみにて経過観察されていた。24 歳頃からひきこもりが原因で病院受診が途絶え、ホルモン の補充も施行されていなかった。33 歳時食欲不振と腹部膨満を認め、近医を受診。著明な肝障害、黄疸、腹水、低酸素 血症を認め、精査にて原因不明の非代償性肝硬変、肝肺症候群と診断された。内分泌ホルモン検査では、中枢性甲状腺機 能低下症、性腺機能低下症、ACTH 分泌不全症を認めた。Child-Pugh score 12 点 C、MELD score 24 点であり、当院 転院後母親をドナーとして生体部分肝移植を施行した。摘出肝は非代償性肝硬変であり、原因を特定するには至らなかっ た。術後経過は良好であり大きな合併症を呈する事なく経過したが、肺内シャントに伴う低酸素血症が持続している。現 在手術から 3 ヶ月経過し、退院に向けてリハビリ中である。近年、汎下垂体機能低下症に非アルコール性脂肪肝炎(NASH) を合併することが報告されている。本症例は頭蓋咽頭腫術後ホルモンの補充が途絶え、下垂体機能低下症より NASH を 発症し、その後非代償性肝硬変に至ったのではないかと考えられた。発症のメカニズムや肝移植後の問題点に関して若干 の文献的考察を加えて報告する。 107 O-59 吉長 原発性肝アミロイドーシスに対して待機的化学療法施行を目的に 生体部分肝移植を先行させた一例 恒明 1、上野 1 信州大学 医学部 晃弘 1、加藤 附属病院 2 日本赤十字病院医療センター 修明 1、松田 正之 1、池田 修一 1、幕内 雅敏 2 脳神経内科、リウマチ・膠原病内科、 肝胆膵・移植外科 全身性 AL アミロイドーシス(AL)は、骨髄中の異常形質細胞により産生された免疫グロブリン軽鎖がアミロイドとし て全身臓器に沈着して発症する。原発性肝アミロイドーシスは、肝臓に際立ったアミロイド沈着を認める AL の一病型で ある。AL に対する標準治療は異常形質細胞を標的とした強力な化学療法であるが、原発性肝アミロイドーシスに対して は肝障害が妨げとなって化学療法を施行できず、本病型は従来非常に予後が不良であった。そこで機能不全に陥った肝臓 を移植により正常化したのち、待機的に化学療法を施行する治療戦略が考えられるが、成功例は世界的にも少ない。今回 我々は肝不全のために化学療法の導入が困難であった AL の患者に対し生体部分肝移植を施行した経験を報告する。症例 は 58 歳の男性。55 歳時に健診にて肝機能異常を指摘。57 歳時に前医にて肝腫大と消化管粘膜へのアミロイド沈着を認 められ AL と診断されたが経過観察された。58 歳時に精査加療のため当科紹介受診。免疫固定法で M 蛋白は陰性であっ たが、血清中遊離軽鎖(FLC)の異常高値(694mg/L)を認めた。T-bil(1.93 mg/dL)と ALP(1996 IU/L)の上昇、腹水、お よび高度な肝腫大を認めたが心機能、腎機能は保たれていた。肝不全により患者の余命は数ヶ月と判断して、肝機能を正 常化した後に化学療法を施行する目的で息子の肝左葉をグラフトとした生体部分肝移植が施行され、3100g の罹病肝が摘 出された。術後に 1 度急性拒絶反応を認めたがソルメドロールとタクロリムスのサイクル療法でコントロールされ、移 植肝の経過は良好である。移植半年後より化学療法を開始し、肝機能を損なうことなく FLC の順調な減少を認めており、 治療経過は良好である。一方で術後 CHDF や腎アミロイドによる腎障害の進行があり待機的に透析療法を予定している。 原発性肝アミロイドーシスに対する移植例は本邦 4 例目であり、肝移植を介した根本的治療の可能性を示唆している。 O-60 肝移植後免疫抑制下に急速な心アミロイド沈着進行をきたした原発性 アミロイドーシス肝不全の 1 例 冨樫 順一 1,2、菅原 寧彦 2、赤松 延久 2、田村 純人 3、野尻 青木 琢 2、阪本 良弘 2、長谷川 潔 2、國土 典宏 2,3 1 東京労災病院 外科、2 東京大学大学院医学系研究科 3 東京大学医学部附属病院 佳代 4、田中 智大 4、金子 順一 2、 肝胆膵・人工臓器移植外科、 国際診療部、4 東京大学医学部附属病院 臓器移植医療部 症例は 42 歳女性。原発性硬化性胆管炎(PSC)、肝腎症候群の術前診断で当科入院となった。入院時 T-Bil 22, PT74%, Alb2.0 難治性胆管炎あり、Child-Pugh score 11 点で MELD score は 20 であった。術前心エコーでは心駆出力率(EF) は正常で、Asynergy なく壁肥厚も正常内であった。精査 CT で硬化性胆管炎も石灰化を伴う多発リンパ節腫大あり、頚 部リンパ節生検施行し反応性過形成のみも経過観察期間をおきリンパ腫大不変を確認した。その間に肝不全の著明な進行 を認め、最終的に妹をドナーとする生体肝移植を施行した。術後免疫抑制剤はステロイドとタクロリムスの 2 剤併用と した。肝機能は一貫して正常化したが腎不全進行し 8 病日に持続血液ろ過透析(CHDF)を導入した。病理診断及び骨髄 穿刺所見にて肝アミロイドーシス AL 型が確認されたが、13 病日の心エコーでは EF51%でアミロイド沈着所見も認めな かった。しかしながらその後、非持続性心室頻拍 NSVT が顕在化、58 病日の心エコーで拘束性心筋症、右室側壁の sparkling sign を認め心アミロイドーシスと診断した。造血幹細胞移植や化学療法 Bortezonib 導入を検討していたが、 低心拍出症候群進行し 74 病日永眠された。従来の報告では心アミロイドーシスの平均罹病期間は約 1 年半とされている が、本症例では短期での増悪を認め、免疫抑制下では心アミロイド沈着が急速進行する可能性が示唆された。移植数の増 加に伴い、術前診断困難なアミロイドーシス肝不全例との遭遇は今後も予想されるが、肝不全救命の移植には慎重な検討 が望まれる。経時的に心機能を追跡し得たアミロイドーシス移植症例は稀であると考えられるため報告する。 108 O-61 ABO 血液型不適合肝移植後にヘパリン起因性血小板減少症をきたした 1例 岸田 憲弘 1、篠田 昌宏 1、菊池 阿部 雄太 1、日比 泰造 1、松原 岡本 真一郎 2、北川 雄光 1 1 慶應義塾大学 外科、2 慶應義塾大学 拓 2、板野 理 1、尾原 秀明 1、北郷 実 1、八木 洋 1、 健太郎 1、田中 真之 1、皆川 卓也 1、雨宮 隆介 1、 血液内科 症例は 45 歳女性。アルコール性肝硬変に対して、生体肝部分移植(ABO 血液型不適合、左葉グラフト、GW/BW 0.83、 術前血小板数 11.1 万/μL)を施行した。術前にリツキサン投与、血漿交換を施行し、術中に脾摘術を施行した。術後免 疫抑制剤は CNI(タクロリムス)、プレドニゾロン、ミゾリビンの 3 剤を使用し、門注療法は 3 剤とヘパリン 2000 単位/ 日を使用した。5 病日に血小板減少(3.4 万/μL)を認めた。薬剤性を考慮してミゾリビン、PPI 等の各種被疑薬を中止ま たは変更した。破砕赤血球は 0.2%と低値であった。7 病日、血小板は依然低値であった(2.3 万/μL)。同日 CT で門脈血 栓を認めたため、門注投与していたヘパリンを 5000 単位/日へ増量した。血小板低値の原因として、TB 上昇(6.3 mg/dl)、 LDH 上昇(396 IU/L)、破砕赤血球軽度上昇(1.1%)等の所見から血栓性微小血管障害(TMA)の初期の可能性を、ヘパリ ンを使用していたことからヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の可能性を考慮し、抗 HIT 抗体を測定した。TMA 対策と して、CNI を減量、連日新鮮凍結血漿を輸血し、血小板は輸血しない方針とした。9 病日に抗 HIT 抗体陽性の結果が判 明し、4T’s score が 6 点であったため HIT を疑い、門注ヘパリンをアルガトロバンへ変更した。その後、血小板数は著 明な改善を認め(10 病日 6.3 万/μL、12 病日 18.1 万/μL)、以後特記すべき合併症を認めず 32 病日に退院した。抗 HIT 抗体陽性、4 T’s score 高値、アルガトロバンへ変更後の著明な血小板数の改善という経過から、本症例を HIT と診断 した。また破砕赤血球の出現などの所見から、TMA 初期の病態が併存していた可能性が考えられた。薬剤性や TMA、 DIC など様々な原因で血小板減少をきたしうる肝移植後において、比較的稀ではあるが鑑別診断として重要な HIT をき たした 1 例を経験したため、若干の文献的考察をふまえ報告する。 O-62 大森 山本 医原性汎下垂体機能低下症を伴った NASH に伴う肝硬変に対して 生体肝移植を施行した 1 例 亜紀子、小寺 雅一 東京女子医科大学 由人、有泉 俊一、高橋 豊、尾形 哲、山下 信吾、片桐 聡、江川 裕人、 消化器外科 症例は 30 代男性。身長 163cm 体重 91kg。頭蓋咽頭腫に対して開頭術を 3 回、γナイフを 1 回施行され、術後水 頭症に対して VP シャントが挿入されていた。術後ステロイドおよびデスモプレシンによるホルモン補充療法を施行され るも、成長ホルモンの補充療法は受けていなかった。術後 5 年間に 10kg の体重増加を認め、術後 3 年目より歩行時の息 切れを自覚し、術後 4 年目には Room air にて SpO2 が 50%まで低下した。前医にて肝肺症候群が疑われ、加療目的に 当院へ紹介となった。精査にて肝硬変に伴う肝肺症候群による低酸素血症との診断に至った。診断時点で肺の可逆性が認 められたことより肝移植の適応と考えられた。汎下垂体機能低下症に対しては前医にて処方されていたステロイドおよび デスモプレシンに加えて、成長ホルモン、男性ホルモンおよび甲状腺ホルモンの補充を行った。生体肝移植術は弟をドナ ーとして右葉グラフトで施行した。術後多尿に対しては周術期の利尿期か尿崩症によるものかの判断に苦慮したもののデ スモプレシンを適宜使用し管理した。文献的に成長ホルモンの存在が NASH の形成および進行に関与することが報告さ れており、術後も定期的に IGF-1 を測定しながら補充を行った。同様に甲状腺ホルモンの補充も施行した。また、VP シャントチューブは一旦体外への排液ルートに変更したのち、クランプにて水頭症の増悪のないことを確認し、チューブ を皮下へ埋没した。肝肺症候群の評価としては術後肺血流シンチを適宜施行した。最終的には肺内シャント率は術後 3 カ月で 28%まで低下し、酸素補充療法もほぼ不要な程度まで改善した。肝肺症候群に対する肝移植術は唯一の根治術で あるが、汎下垂体機能低下症を伴う症例はほとんど報告がない。本症例に関しては術後のホルモン補充療法が重要と考え られ、文献的考察を加えて報告する。 109 O-63 菊池 渡邊 生体肝移植後に被嚢性腹膜硬化症によるイレウスを発症した 1 例 智宏、見城 明、木村 淳一郎、後藤 満一 福島県立医科大学 隆、穴澤 臓器再生外科学講座 貴行、佐藤 哲、佐藤 直哉、松井田 元、芳賀 淳一郎、 肝胆膵・移植外科 被嚢性腹膜硬化症は一般に腹膜透析の合併症として知られ、びまん性に肥厚した灰白色の線維性被膜(cocoon-like membrane)によって小腸が被覆され腸閉塞症状を引き起こす症候群とされる。今回我々は生体肝移植後 3 年で被嚢性腹 膜硬化症によるイレウスを発症した 1 例を経験したので報告する。 【症例】61 歳男性。平成 15 年よりアルコール性肝硬 変の診断で加療歴あり。腹水貯留、特発性細菌性腹膜炎等で入退院を繰り返していた。平成 23 年 5 月生体肝移植術施行 (右肝グラフト、ドナー:妻)。術後胆管胆管吻合の縫合不全と後区域胆管狭窄を認めた。胆管ステント留置し肝機能の改 善を認め、術後 73 日で退院した。以降、胆管ステントの閉塞や逸脱等で胆管炎繰り返していた。肝機能障害進行し、平 成 25 年 5 月、6 月、11 月の肝生検では門脈域を中心とした線維化と偽胆管の増生が徐々に増悪。慢性胆管閉塞が原因と 考えられた。平成 25 年 12 月初旬より腹水貯留を認めていた。平成 25 年 12 月末イレウスにて入院。保存的加療にて改 善せず開腹手術施行した。開腹すると 2500ml の腹水あり。小腸全体が拡張し、回腸は灰白色の線維性被膜に被覆され、 被膜内に蛇腹状に折りたたまれ詰まっていた。その被膜を切開、除去して閉塞を解除した。被嚢性腹膜硬化症と診断した。 平成 26 年 3 月再度イレウスにて入院。保存的加療にて改善なく、開腹手術施行した。前回同様の被膜により腹膜全体が 薄く被覆され、トライツ靭帯から 80cm では強い屈曲を伴って癒着していた。癒着剥離および被膜除去を行った。術後は 再発予防を期待しステロイド内服を開始した。 【考察】被嚢性腹膜硬化症の発症には、腹膜劣化とそれに続く炎症性サイ トカインの誘導が関係すると言われている。本症例では移植前からの長期間の腹水貯留と、術後の繰り返す胆管炎が一因 である可能性が考えられた。生体肝移植後の被嚢性腹膜硬化症の合併例の報告は稀であり、若干の文献的考察を加えて報 告する。 O-64 ラットモデルにおける肝類洞閉塞症候群の血管外血小板凝集に伴う 肝障害の病態解明と PDEⅢ阻害薬を用いた障害予防の検討 宮田 隆司、田島 秀浩、宮下 知治、的場 美紀、正司 政寿、渡邉 利史、岡本 浩一、中沼 伸一、 酒井 清祥、木下 淳、古河 浩之、牧野 勇、中村 慶史、林 泰寛、尾山 勝信、井口 雅史、 中川原 寿俊、高村 博之、二宮 致、北川 裕久、伏田 幸夫、宮本 正俊、藤村 隆、太田 哲生 金沢大学附属病院 消化器・乳腺・移植再生外科 【背景】肝類洞閉塞症候群(sinusoidal obstruction syndrome:SOS)は、重篤な肝障害の一つであり、肝中心静脈閉塞症 (veno-occlusive disease:VOD)とも呼ばれる。SOS の病態として肝類洞内皮細胞障害、肝中心静脈閉塞伴う循環障害性 肝障害があり、その原因として免疫抑制剤などの薬剤の可能性が示唆されていることから、移植医療においても重要な合 併症の一つであるが、未だ予防法や治療法は確立されていない。われわれは、生体肝移植後慢性拒絶症例の肝組織の中心 静脈領域(zone3)を中心に血管外 Disse 腔内に血小板凝集を認めることを免疫組織染色にて確認しており、今回は、 PDEIII 阻害薬であるシロスタゾール(CZ)が SOS の抑制効果を有するかを、ラットモデルを用いて検討した。 【方法】モ ノクロタリン(MCT)を用いたラット SOS モデルを作成し、治療群(n=10)は MCT 投与の 48、24、0.5 時間前、そして MCT 投与後 8、24 時間の 5 回、30mg/kg の CZ を経口投与し、SOS が最も顕著となる MCT 投与後 48 時間後に肝臓と 血液を採取して、溶媒のみ投与した対照群(n=10)と比較した。 【結果】治療群では対照群に比して、血小板数の低下や肝 機能の上昇が有意に抑制され、組織学的にも、肝細胞の壊死や類洞内出血が抑制された。ラットの血管内皮障害を評価す る rat endothelial cell antigen 1(RECA-1)の免疫染色では、治療群では肝類洞内皮障害を有意に抑制する結果となり、 CD41 を用いた血小板の免疫染色では、対照群にて zone3 を中心に多く認めた血管外血小板凝集が、治療群では抑制され た。更に肝組織における PAI-1 蛋白の発現は治療群では有意に低下し、線溶系を亢進する結果となった。 【結語】SOS 発生には血管内皮障害に起因した血管外 Disse 腔内への血小板凝集が大きな誘因であると考えられた。また PDEIII 阻害 薬である CZ は、血管内皮保護作用と抗血小板作用によって肝機能の上昇を抑制し、更には線溶系を亢進し肝再生を促進 することが推測された。 110 O-65 平田 特発性移植後肝炎患者血漿のメタボローム解析による病態の分析 義弘、吉澤 淳、上田 京都大学医学部附属病院 大輔、上本 伸二 外科学講座 【背景】メタボローム解析とは生体中の有機酸やアミノ酸などの低分子化合物等の代謝物質を網羅的に解析する手法であ り、疾患特異的な代謝物質の検索に用いられている。特発性移植後肝炎(Idiopathic posttransplantation hepatitis、 IPTH)は、自己抗体による肝障害が主な病態と考えられているが、詳細は依然不明である。我々は IPTH 患者の血漿を 用い、メタボローム解析を施行し病態の分析、biomarker の探索を行った。 【方法】IPTH の診断の既往のある患者のう ち、2012 年 4 月から 11 月に当院外来を受診した 26 例を対象とした。コントロール群は同期間に外来受診し同意を得る ことが出来た、ウィルス性肝炎患者を除く 59 例とした。患者血漿 100μl を用いてキャピラリー電気泳動-質量分析法 によるメタボローム解析を施行した。 【結果】血漿中から 303 候補物質が検出された。PLS-DA 分析では 2 群間で分離を 認めた。2 群間で統計学的有意差があり(p<0.05)、fold change が 1.4 以上又は 0.7 以下で、検出率が 0.8 以上であるも のは 8 候補物質であった。このうち代謝物質が同定できたもの、ヒトの代謝に関係するものは 5 候補物質であり、これ らが IPTH で有意に増加している代謝物質であった。それらの物質名とその性質は、guanidoacetic acid(肝のメチル化 酵素障害で上昇)、palmitleic acid, myristoleic acid, oxidized linoliate(酸化ストレスによる肝障害で上昇)、perillic acid(抗体産生能を上昇させる)であった。【結論】メタボローム解析により得られた IPTH で有意に増加している代謝物 質は、いずれも病態に関与していることが示唆された。これらの代謝物質が病態の解明および biomarker となり得るか どうかは更なる検討が必要である。 O-66 荒川 肝星細胞からみた加齢肝再生不全の検討 悠佑、島田 徳島大学 光生、石川 大地、斎藤 裕、岩橋 衆一、池本 哲也、森根 裕二、居村 暁 消化器・移植外科 【背景】加齢肝では肝切除術後の再生能が低下し術後管理に注意を要する。加齢肝において加齢指標蛋白質 SMP30 の低 下、p16 増加による肝再生抑制等の変化が報告されている。我々は加齢肝における肝再生低下と加齢指標マーカーに着目 し、臨床症例において肝切除後の肝再生を評価し、これを踏まえマウスを用いた基礎的検討に加え、肝再生において重要 な役割を持つとされている肝星細胞について検討を行った。 【方法】(1)臨床的検討:肝切除 99 例を用い 60 歳以下を若 年群(n=45)、70 歳以上を高齢群(n=54)として肝切除後肝再生を評価し、肝内の加齢指標マーカー(SMP30, p16, p66, SIRT1)を測定した。(2)基礎的検討:雄性 balb/c マウスを用い 8 週齢以下を若年群(n=5)、16 か月以上を高齢群(n=5) として 70%肝切除を施行した。肝切除前後の加齢指標マーカーを測定した。肝星細胞を分離・培養し、肝再生関連因子 (HGF, cMET)の発現を real time PCR にて測定した。【結果】(1)高齢群において術後 6 か月で肝再生は遅延しており、 肝内 p16 は高値で肝再生率と負の相関を示した。(2)肝切除前では SMP30 は高齢群で低値、p66 及び p16 は高齢群で 高値であった。さらに肝星細胞においても p16 及び肝再生因子である HGF が低値であった。 【結語】加齢肝における肝 切除後の肝再生能低下に関する機序として加齢指標マーカーである SMP30, p16 が関与していると考えられた。さらに この肝再生不全のメカニズムとして肝星細胞の関与が示唆された。 111 O-67 生体肝移植後 18 年経過後グラフト不全で死亡した成人型シトルリン 血症患者の一剖検例 矢崎 正英 1、高曽根 健 1、小林 池上 俊彦 2、宮川 眞一 2、小松 1 信州大学 3 信州大学 千夏 1、池田 通治 3、大月 修一 1、増田 聡明 4 医学部 脳神経内科、リウマチ・膠原病内科、2 信州大学 医学部 消化器内科、4 信州大学 医学部附属病院 雄二 2、大野 医学部 康成 2、三田 篤義 2、 移植外科、 臨床検査部 肝移植後グラフト不全は、移植後患者にとって大きな問題であり、拒絶反応、感染症など様々な原因に起因する。今回、 生体肝移植施行 18 年で、de novo 自己免疫性肝炎(AIH)によると思われるグラフト不全で死亡した成人型シトルリン血 症患者を経験したので報告する。患者は死亡時 44 歳男性。X-19 年(24 歳時)に、成人型シトルリン血症を発症。X-18 年に当時 61 歳の父親をドナーとする生体肝移植を施行した。免疫抑制剤はタクロリムスを使用したが、肝障害が出現し、 シクロスポリンへ変更。その後、胆管空脹吻合部狭窄から胆管炎を繰り返し、X-6 年に、自治医科大学消化器科で吻合部 バルーン拡張術を施行。X-5 年に肝機能障害にて当科入院。肝生検施行し、慢性活動性肝炎・一部肝硬変の所見を認めた。 各種肝炎ウイルス検査は陰性で、抗核抗体などの自己抗体も陰性であったが、de novo AIH と考え、ステロイドパルス療 法とプレドニン、MMF 投与を行った。その後も肝障害は遷延したが、胆管炎を繰り返し、抗菌剤による治療と、バルー ン拡張術を行った。X 年には、羽ばたき振戦などの肝不全症状出現、汎血球減少を認めた。胆管炎を繰り返すため、MMF を中止。再移植の適応検討のため当科入院。退院後、急激に肝機能が悪化し(AST 1250 IU/l、ALT 494 IU/l, T.bil 15.21 mg/dl)、ステロイドパルス療法施行。その後も肝機能障害が進行し、腎障害も併発し CHDF 導入となった。脳死肝移植 の登録後移植外科へ転科し、再移植を待機する方針となったが、呼吸状態が悪化し永眠された。肉眼的剖検所見では、移 植肝は高度な肝硬変状態であった。現在、病理組織所見は検索中であり、本患者のグラフト不全の原因は現時点では確定 できていないが、de novo AIH の急性増悪と考えている。 O-68 成人症例における肝移植後における抗ドナー抗体測定の臨床的意義の 検討 上田 大輔 1、吉澤 秦 浩一郎 1、植村 羽賀 博典 3、上本 淳 1、平田 義弘 1、菱田 理恵 2、万木 忠弘 1、藤本 康弘 1、小川 晃平 1、森 伸二 1 1 京都大学肝胆膵移植外科、2 京都大学医学部附属病院 紀美子 2、宮川(林野) 文 3、 章 1、岡島 英明 1、海道 利実 1、 輸血細胞治療部、3 京都大学医学部附属病院 病理診断部 【背景】臓器移植における抗ドナーHLA 抗体(DSA)の存在は長期グラフト障害の原因である。以前我々は小児肝移植患 者は術後に DSA が約 40%の症例で陽性となり、移植肝の中心静脈領域の線維化と強い相関があることを報告した。今回、 成人肝移植長期経過症例における DSA の検討を行った。 【方法】当院で施行した成人肝移植症例(移植時 15 才以上)で 1 年以上経過した 177 例を対象に、肝生検に合わせて、血 清中の DSA を Luminex を用いた Single antigen 法で測定を行った。患者背景、免疫抑制療法、病理所見について解析 を行った。 【結果】同期間の小児症例における DSA 陽性率は 45.0%である一方、成人症例では DSA 陽性症例が 32 例 19.3%(Class1、 Class2 ともに陽性 8 例、Class2 陽性 24 例)であった。成人症例の患者背景について、DSA 陽性群と陰性群で、術後年 数、性別、ドナー性別、妊娠による前感作、原疾患に差を認めなかった。術前 DSA 陽性症例が 9 例あり、4 例は術後 DSA 陰性化、5 例が DSA 陽性化しており、術前既存 DSA は術後 DSA 陽性の有意な因子であった(p=0.003)。肝生検では中 心静脈領域の中等度以上の線維化を、DSA 陽性症例の 46.8%、DSA 陰性症例の 5.9%に認め、DSA 陽性は有意なリスク 因子であった(p=0.0086)。晩期急性拒絶反応、慢性胆管炎、慢性拒絶反応の所見については DSA との間に相関は認めな かった。術後維持期の免疫抑制療法では、タクロリムスのトラフ値、MMF の使用率は DSA との有意な相関を認めなか ったが、DSA 陽性患者は有意にステロイド使用率が高かった(p=0.0372)。 【まとめ】成人症例では小児症例と比べ術後 DSA 陽性率は有意に低いが、DSA 陽性は移植肝の中心静脈領域線維化の有 意なリスク要因であった。肝生検で進行する線維化および炎症所見が持続し、ステロイドが使用されている症例で DSA が検出された。これらの症例は抗体関連型拒絶反応(AMR)の関与が示唆され、臨床経過の観察、および AMR を念頭に した治療が重要である。 112 O-69 The influence of single nucleotide polymorphism(SNP) of FOXP3 gene on acute cellular rejection in liver transplantation. Verma Sapana, Tanaka Yuka, Shimizu Seiichi, Das Kumar Lalit, Ohdan Hideki Department of gastroenterological and transplant surgery, Hiroshima University Aim:FOXP3 gene encodes a transcription factor critical for development and function of regulatory T cells (Treg cells), which regulate T cells activation during alloimmune response after liver transplantation (LT). The present study investigated the influence of single nucleotide polymorphism (SNP) of FOXP3 gene on susceptibility to acute rejection after LT.Methods: We enrolled 90 patients who underwent living donor LT (LDLT) from 2006 to 2013. Rs3761548(A/C) variant allele in FOXP3 gene was genotyped using PCR-RFLP technique. Rejection within 30 days after LDLT was taken into consideration. The type of rejection was further classified as no remarkable rejection group (NR), subclinical rejection group (SCR) and acute cellular rejection group (ACR) according to the dose of steroid used in each group i.e. NR: <500 mg/3days, SCR: ≧500 mg to <1000 mg/3days and ACR: ≧1000mg/3day or use of thymoglobulin, respectively.Results:7 patients encountered ACR and 10 patients experienced SCR. The remaining 73 never encountered any type of rejection (NR). The proportion of Rs3761758-A carrier/CC genotype in ACR and SCR and NR were 5/2, 0/10, 18/55, respectively. Genotype frequency from ACR group to the SCR group patients differed significantly (p<0.05), suggesting that this SNP had significant influence on the depth of rejection. Conclusion:There was remarkable association between FOXP3 gene SNP and ACR in the recipient of LDLT. Rs3761758 A-carrier was more susceptible to rejection, suggesting that they may require higher doses of immunosuppression than CC homozygous individuals. O-70 肝移植後活性化 NK 細胞移入療法が T 細胞抗ドナー応答に与える 影響解析 田中 友加 1、石山 田代 裕尊 1、大段 1 広島大学 宏平 1、大平 秀樹 1 大学院医歯薬保健学研究院 真裕 1、清水 誠一 1、井手 健太郎 1、尾上 消化器・移植外科学、2 国立病院機構 隆司 2、小林 剛 1、 呉医療センター (目的)当施設では、肝臓移植後の肝癌再発予防目的で、ドナー肝由来 IL-2 活性化 Natural killer(NK)細胞移入療法を 実施している。本 NK 細胞療法は、術後早期における肝癌再発抑制のみならず、重症感染症の発症率の低下などの効果 を得ている。しかし、移入細胞が術後のレシピエントT細胞の抗ドナー応答性を亢進する可能性も懸念される。そこで、 リンパ球混合試験(MLR)を用いて術後抗ドナー応答性をモニターし、NK 細胞療法によるT細胞応答への影響について 解析した。(方法)広島大学で成人間生体肝移植を施行した肝臓癌を原疾患とする症例において、術後 NK 細胞療法を実 施した 30 例(NK 群)と非施行 26 症例(非 NK 群)で比較した。抗ドナー応答性は、術後 1, 2, 4 週、3, 6 か月後に施行し た MLR における CD4 および CD8T 細胞の Stimulation Index(SI)で評価した。また、急性拒絶反応の発症率について 同様に評価した。(結果)CD4 と CD8 各々の術後1週目の SI は NK 群 vs 非 NK 群で 2.10±2.4 vs 5.90±14.61、2.31± 3.20 vs 2.63±2.63 と非 NK 療法群でやや高い傾向にあった。両群とも術後経過に伴って抗ドナー応答性は減少したが、 術後 6 か月の時点で CD4T 細胞の抗ドナー応答性の有意な残存を認めた割合は、NK 群で 14.7%に対し、非 NK 群では 27.3%であった。また、急性拒絶反応の発症率は NK 群で 6.7%(2/30)、非 NK 群で 15.4%(4/26)であり NK 群で低率で あった。移入したドナー細胞は、我々の行った末梢血キメラ解析で、約1か月間は残存することを確認しているが、今回 の結果では、NK 療法による T 細胞への免疫賦活作用は認めなかった。(考察)肝移植後のドナー由来活性化 NK 細胞療 法は、術後の T 細胞抗ドナー応答性を惹起することなく安全に実施できる補助免疫療法であることが示唆された。 113 O-71 田原 平田 田代 肝移植における de novo 抗ドナー特異的 HLA 抗体陽性症例の検討 裕之、矢野 琢也、坂井 寛、佐伯 吉弘、清水 誠一、谷峰 直樹、安部 智之、橋本 文宏、森本 博司、大平 真裕、田中 友加、井手 健太郎、小林 剛、石山 宏平、 裕尊、大段 秀樹 広島大学 慎二、 消化器移植外科 肝移植における慢性拒絶反応の克服は、今後の移植成績向上のための重要課題とされている。肝移植後の de novo 抗 ドナー特異的 HLA 抗体が慢性抗体関連拒絶反応と深く関わっていると考えられているが、retrospective に解析した過去 の報告において、de novo 抗ドナー特異的 HLA 抗体の臨床的意義は未だ明らかにされていない。広島大学病院では 1991 年から 2014 年 3 月までに 221 例の生体および脳死肝移植を施行(うち 5 例は再移植症例)した。術後 HLA 抗体スクリー ニング目的に LABScreen test を施行し得た 81 症例中 39 例に移植後HLA抗体を検出した。そのうち 11 例において de novo DSA(ドナー特異的 HLA 抗体)を認めた。うち ClassII 抗体(DR:9 例, DQ:1 例)を 10 症例に認め、ClassI 抗体 (A:1 例)は 1 例のみであった。病理学的に慢性拒絶反応と確定診断を得たのは 1 例のみであった。この 11 例の移植後 の背景として、急性拒絶反応を 5 例、難治性胆管炎を 3 例、肝炎(原疾患再燃ないし非特異的)を 2 例に認めた。原疾患 は非ウイルス性 7 例(劇症肝不全 3 例, NASH2 例, PBC1 例, アルコール性 1 例)、ウイルス性 4 例(B 型 2 例, C 型 2 例) であった。血液型不適合移植症例は 2 例含まれていた。死亡症例を 2 例認めたが、これらの症例において病理学的に慢 性拒絶反応の確定診断は得られていない。以上、de novo 抗ドナー特異的 HLA 抗体陽性症例において急性拒絶反応の既 往や胆管炎/肝炎といった治療抵抗性を示す症例が多く認められる傾向にあった。de novo 抗ドナー特異的 HLA 抗体陽性 症例や non-HLA 抗体陽性症例において免疫学的解析および考察を加えた報告を行う。 O-72 生体肝移植後の患者が退院後に遭遇する困難と対処 田口 恵美 1、岡 江口 晋 3 1 長崎大学病院 宏美 1、中村 美奈子 1、安藤 階東病棟、2 長崎大学病院 恵美 1、橋本 看護部、3 長崎大学大学院 久子 1、辻 あゆみ 2、高槻 光寿 3、 移植・消化器外科 【目的】当院ではこれまで 198 例の生体肝移植手術を施行している。今回、移植後患者が退院後の生活を送る中で遭遇す る困難と対処を明らかにする事を目的とした。 【対象と方法】対象は生体肝移植後の、同意を得ることができた退院後半 年~2 年以内の患者 5 名(男:女=3:2)、年齢中央値 59 歳(50-70)。半構造的面接法を実施し、逐語録から患者の困難 と対処について表現している内容に着目してコード化し、コードの類似性に沿ってカテゴリー化し分析した。【結果】退 院後に遭遇する困難として 10 のカテゴリーを抽出した。特徴的なものとして、免疫抑制剤内服の自己管理やドレーン類 の管理など、<新たなセルフケアを獲得・継続する事の難しさ>、移植後変化した社会的役割により<療養と社会的役割 の両立の難しさ>、移植後は他の患者との交流がなく、主治医へ質問することの遠慮などから<有用な情報の不足>とい う困難に遭遇していた。困難に対する対処として 13 のカテゴリーを抽出した。特徴的なものとして、ライフスタイルに 合わせた内服管理やドレーン管理を行うために<セルフケアに必要な技術を高める>、療養や社会的役割を果たすために <周囲の人に理解と協力を得る>、情報不足に対して気軽に相談できる移植コーディネーターを頼り<的確に対応してく れる専門家に相談する>という対処を行っていた。 【考察】移植後患者には壮年期の者も多く、社会的役割を果たしてい く事が発達課題としても重要であり、入院中、早期から患者と家族のライフスタイルに合わせたセルフケアの支援を行っ てく必要がある。また、有用な情報不足の困難に対しては、専門家に相談する対処は支援しつつ、今後は患者会や患者サ ロンなどの患者同士の情報交換の場を設けるなどの検討が必要である。 114 O-73 長尾 生体肝移植後にパウチング技術を応用した一事例 たか子 1、原田 1 京都大学 久子 1、冨山 浩司 2 医学部付属病院 看護部、2 京都大学医学部附属病院 肝胆膵移植外科 【背景】生体肝移植後に多量腹水を認め創部からの流出が持続し創部が離開する場合がある。創部からの腹水流出に対し て、ガーゼを厚くする、吸収パッド用いるなどして腹水カウントも同時に行ってきた。しかし、このような管理では、病 衣やシーツ汚染することが多く、その度に交換することとなり、患者の苦痛も大きいことは明らかであった。今回、ICU から術後6病日目に HCU に帰室した患者にパウチを用い創部を陰圧管理にすることにより 14 日程で創部が治癒した事 例を経験したためここに報告する。【事例】壮年期男性。B 型肝硬変で生体肝移植予定であったが精査の際に大腸癌を指 摘され、今年1月右半結腸切除を施行された。2月半ばに生体肝移植(左葉グラフト:適合、過小グラフト)施行後、逆 T 字切開交叉部分が離開しそちらを覆うパウチのみを貼付し帰室した。【経過】過小グラフトのため今後腹水増加すること が予想され HCU 帰室直後に創部管理を WOC ナースに依頼した。複数のサイズのパウチを調整し管理を試みたがうまく いかず VAC 療法を検討することになった。しかし VAC 療法でも腹水吸引ができず8時間で除去。その後創部をほぼ覆 えるサイズのパウチに交換し吸引を開始したところ、スムーズに吸引ができるようになり、1回のパウチ交換で創部が完 全に閉鎖した。【考察】創部管理については、簡便で交換の頻度が少ない方が術後の患者の身体状況を考慮しても安楽で あると言える。また、使用する材料についても VAC システムのような高価な物を使用しなくても可能であることが明ら かになった。今回は、ICU から HCU へ帰室してから最終的な吸引システムに変更するまでに数日を要しておりその間 に離開部分が大きくなったことも考えられたが、今後は離開部が小さいうちに対応できるようになるとより安価で管理も 容易になると考えられる。 O-74 生体肝移植周術期リハビリテーション経過に関する検討 吉岡 佑二 1、大島 上本 伸二 3、稲垣 洋平 1、西村 暢也 4、松田 1 京都大学医学部附属病院 純 1、藤田 秀一 1 容子 1、玉井 由美子 2、佐藤 リハビリテーション部、2 京都大学医学部附属病院 晋 1、海道 利実 3、 疾患栄養治療部、 3 京都大学大学院医学研究科肝胆膵・移植外科、4 京都大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌・栄養内科 【目的】成人生体肝移植術(LDLT)では術後 3 か月以内の早期死亡率が高く周術期管理が重要である。近年、上腹部外科 手術に対する周術期リハビリの効果が注目されているが、LDLT におけるリハビリ経過や運動機能の推移は不明である。 そこで本研究では LDLT 周術期のリハビリ経過を検討した。 【方法】対象は 2013 年 1 月~12 月に当院で待機的に LDLT を施行した 28 名のうち術前後の評価が可能であった 14 名(男性 6 名)とした。年齢 47.0±12.1 歳、身長 159.5±9.8cm、 原疾患は C 型肝硬変 2 例、B 型肝硬変 1 例、原発性胆汁性肝硬変 4 例、NASH1 例、アルコール性肝硬変 2 例、胆道閉 鎖症 3 例、自己免疫性肝炎 1 例であった。術前 Child-Pugh 分類は B3 例、C11 例、術前 MELD Score は 17(13-33)点、 GRWR は 1.02±0.32%であった。術前は必要に応じ、術後は全例に対しプロトコールに沿ってリハビリを実施した。1) リハビリ関連項目開始日、2)体細胞量、体重、握力、膝伸展筋力の周術期推移 3)6 分間歩行距離の周術期推移について 検討した。【結果】1)術後リハビリ開始は 5(2-19)日目、端座位開始は 6(4-19)日目、歩行開始は 7(5-32)日目、術後在 院日数は 47(32-127)日(それぞれ中央値(範囲))であった。2)体細胞量:29.3±7.4→26.6±6.6→25.1±5.9(kg)、体重: 59.6±9.9→52.0±8.9→49.4±8.4(kg)、握力:24.4±12.1→20.7±8.8→20.9±8.2(kg)、膝伸展筋力:116.9±81.0→94.2 ±57.7→93.8±48.2(Nm)(それぞれ術前→術後 4 週→退院時)と、すべての項目が術前に比較し術後 4 週、退院時は有意 に低値であった(p<0.05)。3)6 分間歩行距離は術前 377±170→退院時 401±100(m)で有意差を認めなかった。【結論】 LDLT 後、早期からリハビリを実施したが、筋力は退院時においても術前時点までの回復は認めなかった。手術侵襲、廃 用、低栄養による筋肉量の減少が原因と考えられた。6 分間歩行距離は術前後で有意差を認めず、筋量や筋力以外の因子 が影響している可能性が示唆された。 115 O-75 池生 生体肝移植後、予期せぬ廃用症候群となった患者の身体変化に対する 受容過程と看護介入 瑛美 1、末次 理佳 1、古川 看護部、2 旭川医科大学 外科学講座 1 旭川医科大学病院 さゆみ 1、田中 博之 2 消化器病態外科学分野 【はじめに】生体肝移植後、廃用性症候群となった患者に身体・心理変化に合わせ介入し、退院した事例を経験した。 【目 的】廃用性症候群となった患者の身体状況の受容と心理変化について看護診断に基づく介入効果を明らかにする。 【方法】 1)対象:肝移植後、廃用性症候群となった患者 1 名。2)データ収集方法:看護診断とその記録をデータとする。3)デ ータ分析方法:看護診断をタイトルとした記録から介入内容と患者の言動を意味・内容で分類しコーンの段階理論を用い て分析する。 【結果】1)ショック:挿管管理から離脱の時期は「動けないなら手術しない方がよかった」と予期しない身 体状況を受容できず、過度の期待やストレスを予防する為に ND1 コーピング促進準備状態と診断した。2)回復への期 待:ギャッジアップで過ごした時期は、ND2 身体可動性障害で患者と目標設定し他職種と共有した事で「どの位で歩け るかな」と回復への期待が増した。3)悲嘆:医師が独歩での退院は難しいと説明したが受け入れられず、 「食事が楽しく ない」と味覚障害で摂取が進まず落ち込み、ND1 で他職種とカンファレンスを通じ氏の思いを共有し ND2 を継続した。 4)防衛:車椅子移乗が自立した時期は「車椅子のまま帰る」と現状を認識でき、ND2 の目標を車椅子での生活がイメー ジできるとした。5)適応:車椅子での生活に向け社会資源の調整と自宅を改修し、ND1、ND2 は解決した。【考察】上 田は障害の受容とはあきらめでも居直りでもなく、障害に対する価値観の転換であると述べている。氏は退院時の ADL を車椅子での生活へ転換できた事が身体状況の受容へつながった。移植医療では多職種との連携が不可欠であり、目標を 共有し継続的に介入することが必要である。ND1 で各時期の身体状況に対する受け止めを確認し他職種と共有し各専門 職がアプローチしたこと、ND2 で段階的に目標設定した事が、自己効力感を高め適応を促進したと考える。 O-76 吉村 肝移植後のレシピエントの妊娠中の不安と対処法 弥須子 1、梅下 1 森ノ宮医療大学 浩司 2、久保 有葵 1 看護学科、2 大阪大学大学院 保健医療学部 3 大阪市立大学大学院 正二 3、吉川 医学研究科 医学系研究科 保健学専攻、 肝胆膵外科学 【目的】近年、肝移植後のレシピエントの妊娠・出産が増加している。われわれはこれまで、肝移植後のレシピエントの 子どもを持つことに対する思いや、妊娠判明時のレシピエントの感情と家族の反応を明らかにし報告した(日本肝移植研 究会, 2013、日本移植学会, 2013)。その結果、レシピエントの多くは子どもを望み妊娠を喜んでいたが、免疫抑制剤の 影響や自身の体調などによって子どもを持つことに不安を感じ、家族はレシピエントの身体の負担や悪化を恐れ否定的な 反応も示していた。本研究では、肝移植後のレシピエントの妊娠中の不安と対処法について検討した。 【方法】肝移植後 に妊娠・出産を体験したレシピエント 14 名(劇症肝炎 8 名、胆道閉鎖症 6 名)を対象に、半構成的面接調査を実施した。 面接内容は許可を得て録音し逐語にした。レシピエントの妊娠中の不安とその対処法が現れている文脈を抽出し、カテゴ リー化した。本研究は本学および実施施設の研究倫理委員会の承認を得た。 【結果】妊娠中の不安については、<薬の胎 児や母乳への影響><自身の体調の悪化と子どもや家族への影響><出生前診断のリスクと結果><疾患の遺伝><出 産時のリスク><周りの順調な母親との比較>の 6 カテゴリーが抽出された。不安の対処法は、≪医療者に相談する≫ ≪家族に相談する≫≪同じ体験をした人に相談する≫≪自身の体調を整える≫≪悩まない・前向きに考える≫があげられ た。【考察】肝移植後のレシピエントの多くは、免疫抑制剤の影響や自身の体調の悪化に対する不安を抱いていた。しか し、誰かに相談したり、自身で体調管理を行い対処していた。また免疫抑制剤は自分が生きていくうえで必要不可欠なも のであり、自分が悩むことで胎児に悪い影響がおよぶとネガティブな感情を払拭し前向きに対処していた。レシピエント の肯定的な感情を支持し、安定した身体・心理状態で出産に臨めるようサポートを行うことが重要である。 116 O-77 手術室看護師の肝移植手術に対する意識調査 松岡 真奈美 1、熊谷 美佐子 1、阿部 京子 1、石森 長谷川 康 2、新田 浩幸 2、若林 剛 2 1 岩手医科大学附属病院 看護部、2 岩手医科大学 医学部 由樹 1、高橋 公子 1、高原 武志 2、 外科学講座 【はじめに】当院は、2011 年に脳死肝移植実施施設に認定され、これまでに生体肝移植 49 件、脳死肝移植 3 件を実施し てきた。手術室看護師(以下看護師とする)が移植手術について、どの程度の知識や興味、関心を持っているか今まで把握 していなかった。患者の背景や移植に対する患者の思いを知り、理解を深める事が看護師の看護観を高め、移植手術に対 するモチベーションを上げることができると考えた。そこで、移植手術に対する看護師の意識調査を行った。【目的】看 護師の移植手術に対する思いを明らかにする。【方法】1.対象:A 病院手術室看護師 60 名。2.方法:1)移植手術に ついてアンケートを行う。2)アンケート内容は「経験の有無」「興味の有無」「肝移植に対するイメージ」 「関心の有無」 とした。 【結果】肝移植手術介助の経験者は全体の 55%であった。肝移植に興味があると答えた看護師は 85%であった。 肝移植に対しては、 「大変」 「不安」 「長い」 「荷が重い」などのマイナスイメージが多く、 「やってみたい」 「充実感がある」 などと答えた看護師は少なかった。移植後の患者の経過に関心を持っている看護師は 94%であった。 【考察】アンケート を実施する前は肝移植に対し、興味がないと思っている看護師が多いと思っていたが、結果は肝移植に興味があると答え た看護師が多かった。また移植手術後の患者の状態を知りたいと考える看護師も多かった。このため、肝移植患者の手術 介助の有無にかかわらず、移植手術や移植前後の患者の情報を共有する場を設けることが必要だと考えた。さらに、移植 手術介助の未経験者や不安や大変という意見に対し勉強会の開催や詳細なマニュアルの作成を検討していきたい。 O-78 石橋 生体肝移植後在院中に再移植となった 1 症例に対するレシピエント 移植コーディネーターの関わり 朋子、梅谷 由美、竹下 京都大学医学部附属病院 麻美 看護部 【目的】当院で、小児期(15 歳未満)に再移植を実施した 46 例のうち、在院中に再移植となった症例は 10 例であった。 生体肝移植後、間もない再移植は、家族にとって早急な治療選択が必要であり、多大な負担となる。生体肝移植後 41 日 目に脳死再移植を実施した症例についてレシピエント移植コーディネーター(RTC)の関わりを報告する。 【症例】患者は 1 歳 2 ヶ月、胆道閉鎖症の女児。父親をドナーとする生体肝移植をうけ、術後 6 日目に急性拒絶を認めた。その治療中の 感染症を契機に、急性呼吸窮迫症候群、グラフト肝不全に伴う高アンモニア血症に対して、ECMO、CHDF、PE 治療を 行った。ECMO を離脱した後、急性腎不全、グラフト肝不全のため、再移植が必要となり 41 日目に分割脳死再肝移植を うけ、初回移植後 145 日目に退院となった。 【結果】主治医から術前の高アンモニア血症により、再移植後に脳障害が残 る可能性や様々な高いリスクについて説明を受けた両親は、再移植の選択について意見が分かれた。早急な決断が求めら れる状況に対して、RTC はそれぞれの思いと理解度をアセスメントし、医師からの説明を適宜受けられるように調整し、 また、相談する時間を十分にとれるようにした。そして、再移植を希望された時点で、速やかに脳死登録を実施した。再 移植後は、ICU 在室期間が長期化し面会時間が限られていた。そこで、スタッフと相談し母親が看護ケアに参加できる ように計画を立て、家族を孤立させない環境づくりをした。母親からドナー家族に宛てられたサンクスレターには、両親 の病状に対する十分な理解、不安や葛藤の中で十分に考え決断された選択であったこと、脳死ドナーと遺族への感謝が明 確に示されていた。 【まとめ】RTC として、早急な治療選択が必要な状況において、医師からの説明を十分に理解し、納 得したうえで意思決定ができるように支援することが重要であると考える。 117 O-79 吉田 現代社会問題における小児肝移植 ~医療ネグレクトに対し新設された改正法を用いて肝移植を行った一例~ 幸世 1、尾沼 1 自治医科大学附属病院 恵梨香 1、水田 耕一 2 移植・再生医療センター、2 自治医科大学 移植外科 【背景】現代の肝移植治療は、技術の進歩や社会福祉の充実により、末期肝不全の治療として普及している。同時に社会 的側面においても多様な問題を抱えた症例に対し行われている。今回、現代社会問題の一つでもあるネグレクト状況にあ る小児の生体肝移植を行った。緊急性が高い中で、社会的・倫理的にも難しい症例を多職種と連携し、また新設された改 正法を用いて救命したため報告する。【症例、家族背景】1 歳未満、胆道閉鎖症術後。両親の療育能力は困難な状況にあ り、同居している祖父母が全面的に支援していた。 【経過】初診時より非代償性肝硬変、難治性胆管炎を繰り返し、早期 に肝移植が行われない場合、生命予後は不良な状態であった。両親は子どもの救命のために肝移植治療(脳死肝移植登録、 生体肝移植)を選択したが、準備途中に親権者である両親が所在不明となった。祖父母らは自分らが生体ドナーとなり救 命することを希望したが、親権者不在の中で、永続的管理を必要とする移植医療を行う事は、慎重な審議を必要とした。 平成 24 年 4 月に医療ネグレクトに対しての改正法が新設された。改正法により、親権喪失ではなく、親権の停止が可能 となり、親権代行者の判断により医療行為が決定できるようになった。改正法を用いての肝移植は前例がなく、移植施設、 紹介施設、地域、児童相談所、親権代行者(祖父母)の連携が重要であり、それらの調整をコーディネーターは担った。家 庭裁判所への申立てから数日で本症例の適応が認められ、祖父母の同意により生体肝移植を行った。術後 56 日目で退院、 その後も地域と連携しながら患者、家族の永続的な支援を行っている。 【結語】改正法により、重大な疾患を抱えた小児 も、早期に適切な医療行為を受けることが可能となった。また、早い段階から術後の療育を見据えて関わる事が重要であ り、多職種との連携が円滑になるよう調整することが、コーディネーターに求められている。 O-80 当科における肝移植後良性一過性高 ALP 血症 5 例の検討 吉丸 耕一朗 1、林田 真 1、柳 祐典 1、江角 調 憲 2、前原 喜彦 2、田口 智章 1 1 九州大学大学院 小児外科学分野、2 九州大学大学院 元史郎 1、松浦 俊治 1、池上 徹 2、吉住 朋晴 2、 消化器・総合外科 【はじめに】小児における良性一過性高 ALP 血症(Benign Transient Hyperphosphatasemia;BTH)は 2-5%程度の頻度 で罹患し、一般に 1-2 か月の経過観察で自然軽快するといわれているが、肝移植後の患児においては移植後の拒絶反応 や肝胆道系疾患との鑑別を要することも少なくない。今回われわれは、小児肝移植後の症例における BTH の 5 症例を後 方視的に検討したので、若干の文献的考察を加え報告する。【症例】1992 年 11 月から 2013 年 10 月までの 21 年間で当 科において 78 例に対し 80 回の肝移植(生体 78 回、脳死 2 回)を施行し、うち 5 例(6.41%)に BTH を認めた。男女比は、 男児 1 例、女児 4 例であり、基礎疾患は、4 例が胆道閉鎖症で、1 例が肝芽腫であった。移植時の平均年齢は 3.5±1.4 歳(0.9-7.4 歳)であり、BTH 発症までの期間は術後平均 20.8±13.1 か月(6-73 か月)であった。最大 ALP 値は 11664± 4855 IU/L(6066-31018 IU/L)であった。診断に関しては全例で採血による生化学検査及びエコー・CT 等の画像検査に て診断を行い経過観察しえた。肝生検や胆道造影等の侵襲的検査は施行しなかった。罹患期間中に拒絶反応や肝胆道系疾 患並びに、ウイルス感染症などは認めず、98.6±21.9 日(60-173 日)の保存的治療にて全例は軽快した。【まとめ】小児 肝移植後における高 ALP 血症は拒絶反応や肝胆道系疾患を示唆する生化学的所見であるが、BTH を認識し、その他の所 見と総合的な判断を行うことで過剰な侵襲的検査を回避することが可能である。 118 O-81 小児生体肝再移植術後の異所性静脈瘤出血に対しダブルバルーン 小腸内視鏡を用いて止血した1例 大舘 花子 1、浦橋 泰然 1、井原 欣幸 1、眞田 永山 学 2、矢野 智則 2、水田 耕一 1 1 自治医科大学 移植外科、2 自治医科大学 幸弘 1、岡田 憲樹 1、山田 直也 1、平田 雄大 1、 消化器内科 【背景】異所性静脈瘤出血に対しての治療法は外科的止血、interventional radiology 、内視鏡的治療があるが、小児生 体肝移植術後においては報告が少ない。今回ダブルバルーン小腸内視鏡(double balloon endoscopy:DBE)を用い止血で きた 1 例を経験したので報告する。 【症例】13 歳、女児。アラジール症候群による胆汁うっ滞性肝硬変に対し 1 歳 7 か月 時に生体肝移植術を施行したが血管合併症のためグラフト肝不全となり、初回移植術後 10 か月時に生体再肝移植術を施 行し、再移植術後の経過は良好であった。再移植術後 11 年目にふらつき、めまいを自覚し、近医を受診した。肝機能検 査に異常所見はなかったが、著明な貧血(Hb 4.0mg/ dl)と黒色便を認め直ちに入院となった。上部消化管内視鏡検査では 明らかな出血源は認めなかったが、より詳細な精査のため転院となった。当院にて DBE を施行したところ、挙上空腸吻 合部付近に静脈瘤と出血点を認めたため、出血部にクリッピングとトロンビン散布を行い止血した。DBE 後 4 日目の造 影 CT 検査では、静脈瘤は造影されず、止血されていると判断した。DBE 後 5 日目に食事再開したが、DBE 後 9 日目に 再度貧血と黒色便を認めたため DBE 後 12 日目に再度 DBE にてクリッピングを施行した。再 DBE 後 7 日目に食事を再 開し、貧血・黒色便の再発は認めなかったため、再 DBE 後 17 日目に退院した。その後、6 か月間経過しているが再発 は認めていない。【結語】小児生体肝移植術後の異所性静脈瘤からの出血に対し DBE による止血が有効であったが、異 所性静脈瘤に対する根治性は確立されていない。今回の症例を経験して文献的考察を加えて報告する。 O-82 小児生体部分肝移植術における胆道再建法の検討 吉澤 淳 1、園田 上本 伸二 2 1 京都大学 真理 1、安井 医学部附属病院 良僚 1、小川 小児外科、2 京都大学 絵里 1、小川 医学部附属病院 晃平 2、岡本 晋弥 1、岡島 英明 2、 肝胆膵・移植外科 【背景】肝移植後の胆管狭窄は頻度の高い合併症の一つである。小児症例ではレシピエント側の胆管が細い点、術後胆管 狭窄に対する内視鏡治療が難しい点が成人症例と異なる。今回、胆道閉鎖症を除く小児症例に対する胆道再建について検 討を行った。 【方法】2001 年から 2013 年に当科で生体部分肝移植術を行った小児症例 69 例を対象とした。(胆道閉鎖症、 胆管胆管吻合の適応外症例を除外とした)【結果】胆管胆管吻合を行った症例(DD 群)は 27 例、胆管空腸吻合を行った症 例(HJ 群)は 42 例であった。平均年齢は DD 群が 7.2 才、HJ 群が 3.0 才であった。5 歳以下の症例は DD 群が 13 例、 HJ 群は 31 例であった。術後胆管合併症は DD 群で 3 例(3 例狭窄)、HJ 群で 7 例(1 例リーク、6 例狭窄)であり有意差 は認めなかった。DD 群の胆管合併症に対する治療は、2 例に対して ERC を行い、バルーン拡張および inside stent 留 置を行った。1 例は内科的治療で軽快し、1 例は狭窄を繰り返したため胆管空腸吻合術を施行した。1 例は PTC を行い、 バルーン拡張、PTBD 留置し、現在は軽快している。HJ 群の胆管合併症に対する治療はリーク症例に対しては拳上空腸 ろうを増設し保存的加療を行った。狭窄症例に対しては 1 例が胆管空腸再吻合術、5 例が PTC 後、バルーン拡張、PTBD 留置し、狭窄解除を行った。胆管狭窄のリスク因子として、レシピエント年齢、体重、グラフト体重比、血液型不適合、 原疾患について、検討したが、原疾患が肝芽腫であることのみが有意なリスク因子であった。原疾患が肝芽腫の症例 12 例のうち胆管合併症が 6 例(DD 群 3 例、HJ 群 3 例)あり有意に高頻度であった。【考察】小児肝移植症例において、胆 管胆管吻合は術後合併症の頻度、治療において、胆管空腸吻合と同等であった。胆管胆管吻合は消化管吻合が少ない点が 有利と考えられた。肝芽腫に対する生体肝移植は胆管合併症のリスクが高いため、胆道再建方法及び、術後の管理に留意 が必要である。 119 O-83 小児生体肝移植後の経皮経肝的門脈造影における合併症の報告 上野 豪久 1、山道 拓 1、梅田 大須賀 慶悟 2、臼井 規朗 1 1 大阪大学 [はじめに] 医学系研究科 聡 1、奈良 啓悟 1、大割 小児成育外科、2 大阪大学 医学系研究科 貢 1、上原 秀一郎 1、大植 孝治 1、 放射線科 小児肝移植において術後門脈狭窄症はしばしばみられる合併症で、経皮経肝的門脈造影(門脈造影)、ならび に血管形成術(PTA)は確立した治療法となっている。しかしこれらの治療は合併症を来すこともまれではない。今回は、 当科における門脈造影並びに PTA に対する合併症について検討した。[方法]当科において 2007-2013 年に実施した 18 歳以下の小児肝移植症例のうち術後 3 カ月以上経過した症例を対象とした。同期間に実施された門脈造影、並びに PTA の合併症について診療録より後ろ向きに検討した。[結果]対象となった症例は 49 例であった。年齢は平均 4.1 歳(0.6-18.9 歳)であった。対象となった症例のうち 9 例(18%)に門脈造影を行った。一人当たり平均 2.6(2.1 の間違い?)件、合計 19 件の門脈造影を行った。門脈造影を行った 9 例 19 件のうち 5 例において各 1 件(26%)の合併症を認めた。合併症の 内容は門脈血栓症が 2 例、門脈内血腫、肝動脈損傷そしてガイドワイヤー遺残が1例ずつであった。門脈血栓症のうち 1 例はステント留置にて改善したが、もう一例は門脈閉塞となった。肝動脈損傷は再開腹血腫除去術を必要とした。門脈血 栓は抗凝固剤にて自然に軽快し、ガイドワイヤー遺残はそのまま留置となった。門脈塞栓を来した症例以外は良好な経過 をたどっている。[まとめ]今回、血管造影を行った患児のうち 26%に合併症を認めた。そのうち、門脈血栓と再開腹を 要した肝動脈損傷は重大な合併症と考えられる。門脈造影と PTA は小児肝移植にとって重要な治療手段であるが、重大 な合併症を来すこともある為、十分な説明と合併症に対する対策が必要である。 O-84 小川 小児再々肝移植症例に関する検討 絵里、吉澤 淳、園田 真理、安井 良僚、岡本 晋弥、岡島 英明、上本 伸二 京都大学医学部附属病院 【はじめに】1990 年の肝移植術開始以降、初回移植後長期年数が経過する症例が増加しており、再移植・再々移植症例が みられてきている。今回、小児期に初回肝移植を施行し、再々移植に至った症例について検討した。【対象】2013 年 12 月 31 日までに当科で小児期(15 歳以下)に初回の肝移植術をうけた 798 例中、再々移植に至った 7 症例。原疾患は胆道 閉鎖症 5 例、原発性硬化性胆管炎(PSC)1 例、バイラー病 1 例であった。 【検討項目】初回移植時年齢、初回移植から再 移植までの期間、再移植から再々移植までの期間、グラフト肝不全の原因、再々移植時ドナー、再々移植後合併症、予後 について検討した。【結果】初回移植時年齢は中央値 1.97 歳(0.76-8.75)、初回移植から再移植までは中央値 3.81 年 (0.13-11.50)、再移植から再々移植までは中央値 6.84 年(1.63-10.17)であった。初回移植後のグラフト肝不全の原因は 慢性拒絶 2 例、慢性胆管炎 2 例、移植後特発性肝炎 1 例、PSC 再発 1 例、不明 1 例であり、再移植後も 7 例中 4 例で初 回移植後と同じ原因でグラフトを失った。再々移植時のドナーは母 1 例、叔母 2 例、脳死ドナー4 例であった。再々移植 時には初回移植時、再移植時と比較して手術時間、出血量ともに増加していたが、手術合併症の増加は認めなかった。7 例中 1 例が腹腔内出血、食道静脈瘤破裂で術後 19 日目に死亡したが、他の 6 例は生存中であり、再々移植後フォロー年 数は中央値 6.62 年(1.22-13.16)であった。生存例 6 例では腎機能障害 2 例(うち 1 例は透析中)、PTLD1 例、子宮頸が 【まとめ】初回小児期肝移植後の再々移植症例は 7 例中 6 例が生存しており、再々移植後長期経過 ん 1 例を認めている。 例もみられている。しかし、再移植後グラフト肝不全の原因は免疫学的要因の関与が多く、グラフト機能温存には免疫抑 制剤の強化が必要と考えられた。一方で免疫抑制剤に伴う合併症が多く認められ、免疫抑制療法の工夫が今後の課題であ る。 120 O-85 藤倉 水田 小児生体肝移植術後 10 年を経過して難治性腹水を伴う急性拒絶反応を 呈した 1 例 佐和子、井原 耕一 自治医科大学 欣幸、浦橋 外科学講座 泰然、眞田 幸弘、岡田 憲樹、山田 直也、平田 雄大、 移植外科 緒言)拒絶時には発熱や腹痛など多彩な症状を認めるが、時に高度の合成能低下から胸水や腹水を呈することがある。今 回移植後 10 年を経過して怠薬を契機に難治性腹水を伴う急性拒絶反応を呈した 1 例を経験したので報告する。症例)13 歳女児。2 歳 4 か月時に胆道閉鎖症・肝肺症候群に対し生体肝移植術を施行し、以降外来にて経過観察していた。10 歳 前後より免疫抑制剤の怠薬が目立ち始め、軽度の肝機能異常や病理上 Interface hepatitis を指摘されることもあったが、 移植後 10 年目のプロトコール肝生検での病理組織診断では A1F1 と改善もあり、Mycophenolate mofetil(MMF)を漸減 し経過良好であった。移植後 10 年 10 ヶ月時に全身倦怠感を主訴に近医を受診し、著明な肝機能異常を認めたため急性 拒絶反応疑いにて当科緊急入院となった。入院後肝生検を施行し、急性拒絶反応(RAI = 8(P3 B3 V2), A3 F2-3)の診断 にてステロイドパルス療法(PSL 1000mg//kg/day を 3 日間)を開始した。肝胆道系酵素は次第に軽快し正常化したが、著 明な低蛋白・低アルブミン血症や低コリンエステラーゼ血症と、それに伴う中等度の腹水の増悪を認めた。新鮮凍結血漿 やアルブミン製剤、利尿薬の投与を行い保存的に経過を観察したが、改善が得られないのと胸水による呼吸困難も認めた ため、ステロイドリサイクルパルス療法(PSL 500mg/kg/day を 3 日間)を施行し、途中サイトメガロウイルス感染の併発 もあり、バルガンシクロビルを開始した。引き続きアルブミン補充、利尿薬投与、食事療法も併用し、胸水、腹水の現症 と肝合成能の改善がみられ、入院 49 日目に退院となった。結語)10 年以上経過した晩期発症の急性拒絶で高度の合成能 低下から難治性胸水、腹水を呈することは比較的少ない。さらに小児の臓器移植では病識の不足から怠薬も急性拒絶の誘 因となるため、今回症例を呈示し考察を加えて報告する。 O-86 浦橋 胆道閉鎖症に対する小児生体肝移植における術中門脈低血流症例 への対応 泰然、水田 自治医科大学 耕一、井原 欣幸、眞田 幸弘、岡田 憲樹、平田 雄大 移植外科 【目的】小児肝移植適応の多くを占める胆道閉鎖症では、肝門部空腸吻合術の既往や繰り返す胆管炎のため、門脈本幹の 狭小化や側副血行路の発達があり、移植肝の門脈再建時に十分な門脈血流が得られずに難渋する症例が存在する。今回、 胆道閉鎖症に対する小児生体肝移植において、術中門脈低血流(以下 low portal vein flow:LPVF)症例の検討を行なっ た。 【対象と方法】2001 年 5 月から 2013 年 12 月までに胆道閉鎖症に対して施行された小児生体肝移植 172 例中、LPVF31 例(18.0%)の検討を行なった。LPVF の診断は(1)全肝摘出後、門脈断端からの front flow が低下している場合(血液噴出 高約 5cm 以下)、(2)再灌流後移植肝内門脈血流が 10cm/秒以下の場合とした。 【結果】(1)の場合:A)左胃静脈血流遮断 (全例)、B)門脈本幹が 4mm以下では狭小部を切除後、直接吻合(4 例)もしくは血管間置 graft(25 例)再建、C)なお LPVF が続く場合、門脈造影後に、D)側副血行路の血行郭清を行なった(6 例)。E)脾腎 shunt 系の発達が著明な場合は、左腎 静脈結紮術を施行した(2 例)。(2)の場合:A)術中 Doppler US および Transit time 血流計で門脈血流を評価し、B)移 植肝の repositioning、C)移植肝門脈臍部より血管造影用 sheath を挿入し、造影 catheter で門脈造影を施行し、D)門脈 吻合部狭窄、血栓が疑われた場合は ballooning や thrombectomy を行なった(5 例)。E) 側副血行路がある場合は血行郭 清を行ない、十分な門脈血流を確保した(3 例)。LPVF 症例でのグラフト不全や死亡例は認められなかった。 【結語】LPVF 症例では、門脈血流の適切な術中評価とそれに基づいた吻合法の選択および側副血行路に対する処理が重要であると思わ れた。 121 O-87 吉田 初診時肺転移を伴った切除不能肝芽腫に対し生体肝移植を施行した 2例 龍一、高木 岡山大学病院 弘誠、杭瀬 崇、内海 方嗣、信岡 大輔、楳田 祐三、篠浦 先、八木 孝仁 肝胆膵外科 【はじめに】近年、肝移植が遠隔転移を有さない切除不能肝芽腫に対する重要な治療選択枝であることが国際小児癌学会 小児肝癌グループ研究(SIOPEL)等の経験から明らかにされた。今回我々は初診時肺転移を伴う切除不能肝芽腫に対し、 肺転移巣切除・生体肝移植術を施行した 2 例を経験した。対照的な経過を辿った 2 例の詳細な治療経過を提示するとと もに、初診時肺転移を伴う切除不能肝芽腫に対する肝移植適応につき、文献学的考察を踏まえて考察する。【症例 1】症 例は 2 歳 11 ヶ月男児。多発肺転移を伴う PRETEXT4 肝芽腫に対し、JPLT-2(小児肝腫瘍研究グループ)のプロトコー ル・コース 4 に沿って CITA 療法導入後、多発肺転移巣を切除。その後自家骨髄移植併用超大量化学療法を施行し、骨髄 機能回復後、生体肝移植術を施行。移植後化学療法は施行せず。現在移植後 6 年 8 カ月無再発生存中である。【症例 2】 症例は 1 歳男児。多発肺転移を伴う PRETEXT4 肝芽腫に対し CITA 療法、ITEC 療法、CATA-L による肝動注療法の後、 計 3 回肺転移巣を切除し、生体肝移植施行。移植後肺転移再発を来し、肺転移巣再切除、VCR/CPT11/TMZ 療法等化学 療法導入した。しかし多発肺転移再発はコントロール不能であり、移植後 9 カ月で脳転移出現。移植後 10 カ月で永眠さ れた。【結語】肺転移を有する PRETEXT4 肝芽腫に対する肝移植適応は肺転移巣が完全寛解の状態である場合のみであ り、肝移植を目指すべき症例の適切な見極めと、完全寛解を目指した治療戦略の策定が今後の課題である。 O-88 田中 出血性ショック脳症症候群をきたした生体肝移植後の一小児例 秀明 1、五藤 周 1、坂元 直哉 1、岩淵 1 筑波大学 医学医療系 小児外科、2 筑波大学 3 筑波大学 医学医療系 消化器外科・移植外科 敦 2、福永 医学医療系 潔 3、大河内 信弘 3、増本 幸二 1 小児科、 症例は、3 歳女児。胆道閉鎖症術後の肝硬変に対し 10 カ月時に母をドナーとする生体肝移植を施行された。移植後門 脈吻合部狭窄に対し、計 4 回の経皮経肝的バルーン拡張術が行われ、以後門脈血流は保たれていた。術後約 1 年目に急 性拒絶反応をきたしステロイドパルス療法を施行、以後肝機能は安定し、免疫抑制剤はプログラフ、メドロール、セルセ プトの 3 剤にて外来通院中であった。意識障害発作にて 2 度の入院歴があったが原因は不明であった。今回非胆汁性嘔 吐と頻回の下痢、10 秒程度の痙攣を主訴に救急外来を受診した。家族にも同様の症状があり、急性胃腸炎と診断したが、 経口摂取も可能であったため帰宅させた。翌日嘔吐と下痢の悪化、発熱を認めたため再診。末梢循環が不良で、腹部はや や膨満、不穏と多呼吸を認めた。間もなく呼吸減弱から心肺停止となり、気管内挿管を含めた蘇生処置が開始された。心 拍は再開したが、著しい代謝性アシドーシス、高カリウム血症、肝機能、腎機能障害を認めた。輸液やカテコラミン投与 にても十分な血圧の維持が困難であった。全身の出血傾向と酸素化の悪化を認めた。再度心肺停止となり、蘇生に反応せ ず、再受診から約 17 時間後に死亡した。便中の O-157 やロタウイルスの迅速検査は陰性であった。剖検は家族の希望 により行われなかった。保存されていた児の移植前血清でのアミノ酸分析やカルニチン測定では異常を認めず、基礎疾患 としての代謝異常は否定的であった。本症例は胃腸炎ウイルスの感染を契機に意識障害、DIC、出血、低血圧を呈し、出 血性ショック脳症症候群の臨床像を示していた。急変時の門脈血流の評価は十分になされていなかったが、重度の脱水か ら門脈血流の低下、グラフト機能不全が進行した可能性は否定できず、注意が必要である。 122 O-89 浦橋 グラフト機能不全に対する小児生体肝再移植症例の検討 泰然、水田 自治医科大学 耕一、井原 欣幸、眞田 幸弘、岡田 憲樹、山田 直也、平田 雄大 移植外科 【目的】生体肝移植における再移植は、前回移植でのグラフト喪失になった理由が明確であり、再移植によってその病態 の再発を抑制できるという医学的根拠がある場合に実施されているが、再移植の時期や適応に関して未だ議論の多いとこ ろである。今回、当科における小児生体肝再移植例について検討した。【対象と方法】対象は 2001 年 5 月~2013 年 12 月までに当院で施行した 245 例の小児生体肝移植例のうち再移植を行なった 10 例(初回移植を他施設で行った 4 例を含 む)、11 回(4.1%)。年齢は、2 ヵ月~13 歳(中央値:35 ヵ月)。【結果】10 回の再移植と 1 回の再々移植を施行した。グ ラフト不全の原因は肝静脈狭窄が 2 例、肝静脈狭窄、肝動脈血栓合併 1 例、門脈血流不全が 3 例、肝動脈血栓 1 例、不 可逆性急性拒絶反応 2 例、ABO 血液型不適合関連虚血性胆管炎 1 例、 Primary non-function 1 例であった。11 回中 4 回が術後早期 2 ヶ月以内であり、3 回が術後 1 年以内であった。6 回が 20 時間を越える手術時間であり、5 回が 200ml/kg を越える術中出血であった。脈管再建に関しては肝静脈再建術や動脈再建術に工夫が必要であった。再移植症例では肝静 脈および動脈吻合の術後合併症が有意に多い傾向にあった(p<0.05)。1 例が術後難治性拒絶反応と血球貪食症候群、1 例が術後敗血症にて死亡した。1 例でグラフト不全時の脳症により中枢神経障害が認められた。グラフトおよび患者 5 年 生存率は共に 83.3%で、初回移植症例に比べて有意に不良であった(p<0.05)。 【結語】小児生体肝再移植例は初回肝移植 例に比べ、レシピエント、ドナー双方の問題点により手術手技や周術期管理に困難となる症例が多く、その適応を含めた 術前の充分な検討と手術手技、周術期管理の工夫が必要と考えられた。 O-90 高田 一般病院における肝移植術後長期フォローアップ症例の諸問題 斉人、渡邉 兵庫県立塚口病院 健太郎、片山 哲夫 小児外科 1989 年に本邦で最初の生体肝移植が行われて以来肝移植は広く普及し、今日では小児から成人に至るまで胆道閉鎖症、 肝硬変、肝癌といった疾患に対し、標準的な治療の一つとして確立されている。生体肝移植が開始された当初、術後のフ ォローアップは移植施行施設で長期間続けられてきた場合がほとんどであったが、標準治療として良好な成績が得られて いる現在、患者側の移植医療に対する捉え方も徐々に変化している。特に移植手術が終わればできるだけ早く以前の生活 に戻りたいと希望されることが多く、移植後まもない時期から主に地元病院でのフォローが開始される症例も増えてき た。当施設では臓器移植は行われていないが大学関連施設であることから、数は多くないものの以前から肝移植術後患者 のフォローアップを行ってきた。現在 10 例の患者をフォローアップしている。内訳は男 8 例、女 2 例。年齢幅 1 歳~28 歳。高校生以下 8 名、社会人 2 名。移植後経過年数が 5 年未満 4 例、10 年以上 6 例。全例がグラフトロス無く、1 例は 免疫抑制剤オフとなっている。以前から一般病院である当施設でのフォローアップで問題となっていると思われること は、大学病院のように移植コーディネーターのような職種の人員が存在せず、患者及び家族に対する医学的側面以外での きめ細かなサポートがままならないことがまず挙げられる。純粋に患者に対する医学的なフォロー、サポートは医師のみ でもなんとか行えるかもしれないが、社会的・精神的サポートとなるととても医師一人の力でまかなえるものではない。 十分なフォローアップが行えないと、様々な弊害が生じてくることになり、免疫抑制剤の怠薬、定期検査拒否、外来未受 診等は実際に当施設でも直面してきた大きな問題である。具体的な事例につき、問題解決への課題について検討を行った。 123
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