ロフトオフィス大研究

ロフトオフィス大研究
広い空間、低いコスト、フレキシブルなデザイン……
ユーザーの希望するワークプレイスを
自由につくるロフトオフィスの魅力!
今、どうしてロフトオフィスが
てきました。これには、
そこで働く人にとっての環境の向上という
企業の注目を集めているのか?
側面もありますが、もう一つ、人材採用におけるメリットも注目さ
ここ数年、
日本でも、倉庫用の建物を改造し、
「ロフトオフィス」
イメージ」は常に上位に位置しており、
オフィスのデザイン性は企
として利用する企業が、少しずつ増えてきました。
業にとって無視できないPRポイントになりつつあるのです。
ロフトオフィスという呼び名は、もともと米国で誕生しました。
3.
組織や事業の変更への対応
れています。就職希望者が企業を選択する要因として「会社の
1970年代以降の産業構造の変化の中で、ニューヨークの港湾
米国のロフトオフィスでもそうだったように、一般のオフィスビ
沿いにある倉庫の需要が減り、
その空きスペースを改造してオフ
ルに比べて広いスペースが確保しやすい倉庫では、ワーカーの
倉庫や工場だった建物を改装して事務所にするロフトオフィス。ニューヨークやシリコンバレーではこのようなコンバージ
ィスにしたのが誕生のきっかけだといわれています。当初は「都
人数に対し余裕を持ったオフィスをつくることができます。最近の
ョン(用途転用)が広く行われていますが、最近は日本でも、企業の関心を集めてきました。ロフトオフィスの魅力はさまざ
心に近接しているのに低コストで借りることができる」
「24時間
ように事業内容の見直しが頻繁な時代になってくると、
「変化に対
まです。まず第一に、広い空間を自由に設計して使えるため、ワークスタイルや利用目的に合ったオフィスを手に入れるこ
利用できる」というメリットからジャーナリストやデザイナーなどが
応できるフレキシブルなオフィス」への注目が集まってくるのです。
とができます。第二に、オフィス専用のビルに比べて賃料が低く設定されているため、たとえ個性的な内装にしても、最終
ロフトオフィスの主役でしたが、やがてI
T関連の企業なども移転
4.
オフィスの利用形態の多様化
的にはコストを抑えることにつながるのです。今回の特集記事では、賃貸オフィスにおける「内装の自由度への要求」が強
を開始。現在では職種に関係なく、ロフトオフィスは認知される存
従来の日本企業では、オフィスを探すときに「立地」が最優先
まる中でも注目されてきたロフトオフィスのケーススタディを行います。
在になっています。その後、
シリコン工場の跡地にベンチャー企
されていました。これはいうまでもなく、
「足で稼ぐ」営業が業務
業が次々と生まれたシリコンバレーなどでも、ロフト風のオフィス
の主流だったからです。しかし産業構造が変わり、ビジネスの多
が増えてきました。
様化が進んだ今、必ずしも立地にこだわらない部門も多くなって
多くの企業がロフトオフィスに注目するようになったのは、単に
きています。またワーカーも、立地より「働きやすさ」や「広さ」
「デ
コスト面のメリットがあったからだけではありません。他にも次の
ザイン性」にプライオリティをつけるようになってきており、ロフト
ような点が人気の要因でした。
オフィスの持つデメリットは解消されつつあります。
第一に、オフィスビルに加えて広いスペースは、事業拡大など
このような理由から、ロフトオフィスに目を向ける企業が増えて
による人員や設備の増加に対し、
フレキシブルに対応できます。
いるのですが、
まだ実例が少ないため、選択肢になりにくいのが
このため、急成長が経営の課題であるベンチャー企業にとって
現状です。それだけに、新しい企業の取り組みに着目する必要が
は好都合でした。
あるようです。
第二に、デザインの自由度が大きいロフトオフィスでは、天井
の高さを利用して中2階を設置したり、作業目的に合ったブース
ロフトオフィスが示していく
を並べたりと、ユーザー側の工夫で、
そこで働く人にとって理想
テナントビルの新しい方向性
の環境が実現できるのです。
欧米のように古い建物を、長期間、使用する習慣のある国では、
日本企業にとっても価値のある
倉庫や工場のコンバージョンも、企業にとって決して特別な選択
ロフトオフィスの条件とは?
ではありませんでした。というのも、
もともとオフィスビルそのもの
多くの経済現象がそうであるように、
日本でも米国と同じような
けていたため、
ロフトオフィスへの抵抗はほとんどなかったのです。
が「コア&シェル」を原則にしており、内装はユーザー側が手掛
産業構造の変化が、10∼20年の時差で起きています。生産拠
これに対して日本の場合は、内装まで含めた「標準仕様」のオ
点の海外移転が進むことで工場が不要になったり、輸出品を保
フィスビルが一般的であり、ユーザーにとって「工夫できる」チャ
管しておいた倉庫に空きが増えるという現象は全国的に見られ
ンスは非常に少なかったといえます。
ており、
これに伴って「ロフトオフィスとして利用できないか?」と
しかし、企業のオフィスに対するニーズは、
ここ数年、急激に変
いった声が生じてきたのです。
化しています。実際にファシリティマネジャーに話を聞いてみると、
日本においてロフトオフィスへの期待が高まってきた理由を整
「デザイン性の高いオフィスへの願望が強まっている」
「個性的
理しておきましょう。
なオフィスは採用面でも有利であり、ぜひ検討したい」という声
1.
オフィスコストの節減
は多いのです。
倉庫や工場として使われていた建物は、立地や設備の問題な
まだ決して実例は多くはありませんが、
日本でもロフトオフィス
どから、都心のオフィスに比べて賃料が低く抑えられています。
に着目する企業が出現してきたことは、今後のオフィスマーケット
同じ面積であれば、半分以下のコストでスペースを確保すること
に確実に影響を及ぼします。企業のオフィス利用の条件も多様
ができ、大幅なコストダウンが可能です。
化してきた今、デザインや設備に柔軟性のあるオフィスビルの供
2.
自由なデザインへの期待
給が望まれているのは確かなことなのです。
日本でも最近はオフィスのデザイン性を重視する企業が増え
欧米のロフトオフィス例(写真:コクヨオフィス研究所)
ロフトオフィス大研究
株式会社ポリフォニー・デジタル
広い空間、低いコスト、フレキシブルなデザイン……
● 社員1人あたり10坪以上の広い空間
● 24時間勤務に対応したさまざまな施設
● SF映画に出てきそうなサーバールーム
●外観
一見、前衛的なオフィスデザインも
コスト追求という発想から生まれた。
株式会社ポリフォニー・デジタル
プレジデント
山内一典氏
1
● レセプションスペース1
山内さんが「今回の移転プロジェクトで唯一の贅沢です」と紹介してく
れたのが白い円柱の壁。これはコクヨオフィスシステムのデザイナーの
作品です。床はコンクリートの剥き出しですが、特に不満はないとのこと。
「予算が自由にあれば、全面、木のフローリングにして、ワックスの匂い
とかをさせたかったのですが、
この広さではそれは無理なので、大部分、
コンクリートの床を残しました」
7
● 和室
「小会議室として設けた8畳の和室。気楽な打ち合わせや、疲れたとき
に寝転がって休んだりと、社員にも好評なようです」
3
● レセプションスペース
2
レセプションスペースと執務室をわける金網のフェンス。
「最初はガラスのパーテーションで区切る予定でしたが、
コ
ストダウンのために金網にしました。最初は『オフィスに合わ
ないかな』と思ったのですが、アメリカの都市にある小さな
公園のような雰囲気になって、
これも味があるような気がし
ます。バスケットのゴールでも置けば完璧ですね(笑)」
またフェンスの隣にある「駐車場」の床ペイントは、
「スペー
スが空いていてそのままにしておくのもおかしいので、ペイ
ンティングをしました。これだとペンキ代だけで独特の雰囲
気が出るので。費用対効果は大変高いですね」
5
● サーバールーム
「仕事上、大きなサーバーが必要なのですが、
オフィスの端に隠すのではなく、
あえて中央にもってきて、
青色の照明で演出しました。これはSF映画みたいな雰囲気で、大変、気に入っています」
1
7
入口
2
3
4
● 執務室
「コンピュータを使っての作業が中心になるため、
ブース式のデスク配列になっています。天井が高
いので圧迫感はありません」
2
● レセプションスペース3
中2階に続くような鉄製のステップと足場は、船で使うもの。
「理想は15
m以上の天井高のスペースで中2階をつくることだった
のですが、今回の物件は5
m弱しかなかったので断念。しかし『いつ
か実現するぞ』という願望を込めて、
このステップだけはつくりました」
6
6
● 山内さんの執務スペース
「ガラスのパーテーションで個室スタイルのオフィス
にするのが理想です。このため、プレジデントルーム
や会議室、
リフレッシュルームはすべてこのスタイル
にしました」
4
5
8
● リフレッシュルーム
移転に際してスタッフに必要な設備を聞いたところ、多かったのがスポ
ーツジムと仮眠室、
それにシャワールーム。このため、広いリフレッシュ
ルームの中にジムマシンと、食事用のキッチンを置き、
そこから続くスペ
ースに仮眠室などの「生活設備」を設けました。またリフレッシュルーム
には天井までの本棚が設置されています。
「仕事上必要な資料だけでなく、
それこそマンガまで並べた図書館をつ
くってみたかったのです。作業に詰まったときは、
そこで自由にリラックス
できるスペースも必要ですから」
執務スペース
数カ月も社内の作業が続くから
です。
スタッフはそこで何カ月も生活するのだから、十分なスペースが必要になる。
居心地のいい空間づくりを優先
「800坪に70人というと、普通のオフィスしかイメージしない人は驚くかも
新しいオフィスは、
その条件をほぼ満足することができました」
しれませんが、私たちの仕事の性格からいえば、
『これでも、今後、人数
8
庫物件を探し始めました」
しかし、広さや天井高などの条件を満足させる物件がなく、
「それこそ
地方や海外への移転まで考えた」という山内さんが、
ようやく見つけたの
ソニー・コンピュータエンタテインメント・グループのゲームソフト制作
が増えればすぐに手狭になるだろうな』という感覚。ですから新しいオフ
内装工事費を含めて賃料で消却する
が9
月9
日から使用を始めたこのオフィスです。
会社であるポリフォニー・デジタルの新オフィスは、有楽町線「豊洲」駅
ィスを探すにあたっては、何よりも広さを優先させたのです」
新しいロフトオフィス・サービス
「ここはコクヨオフィスシステムさんが新しいサービスとして始められた「フ
から徒歩15分ほどのビルの2階にあります。
「オフィスを移転するにあた
世界中で2700万本以上の売上を記録したレース&ドライビングシミュレ
って、最初から倉庫物件を探していた」と話すように、プレジデントの山
ータの『グランツーリスモ』シリーズ。このようなゲームソフトの制作は、
ス
1998年4
月にソニー・コンピュータエンタテインメントから独立したとき、
のリクエストに応じて倉庫を改造し、工事費等のオフィス構築費用を賃料
内さんにとっては、
かなり理想に近い空間が手に入りました。
タッフがそれこそ「オフィスに籠もって」進められます。
最初のオフィスは赤坂にあったそうです。
に含める形で5年間の転賃借契約を結ぶ。これは条件として、
かなり理想
まず、
その概要を紹介しましょう。
「プレイステーション2のような高度なゲームマシンになると、
ソフトのサイ
「まだメンバーも3人だったので、普通のオフィスビルに入居しました。しか
に近いものでした」
ポリフォニー・デジタルが使うワンフロアの広さは約800坪。この中に
ズも大きくなるから、通常、2年がかりで開発を行います。特に最後の追い
しすぐに人数が増えて手狭になり、次々と移転。ここに来る前は中野坂上
プレジデントとして会社を経営する立場の山内さんにとって、
コスト抑
70人の社員が仕事をするブースや個室、広い会議室が2つ、サーバー
込みの時期になると、私自身も何カ月も自宅に帰れないほど忙しい。です
に約300坪ほどのスペースを借りていたのですが、
これでは仕事にも支障
制も重要な課題です。このため、室内の工事も、
さまざまな工夫をして最
ルーム、
ジムやキッチンを備えたリフレッシュルーム、仮眠室、
シャワー室、
から、
オフィスの居心地につながる広さや環境は非常に重要なのです」
が出始めたため、1年ほど前から物件探しを始めたのです」
大限の費用対効果を目指しました。
デモンストレーションスペースなどがあります。とにかく目を引くのはその
山内さんは自分たちの仕事のスタイルとオフィスの関係を船にたとえ
仕事上、
「外との接点は少ない」ということから立地にはこだわらず、
「いくら好きなデザインのオフィスをつくるといっても、高い金をかけてし
「広さ」で、エレベーターホールからオフィス内に入ると、
レセプションに
ます。
スペースを優先した結果がロフトオフィス。
「せっかくなら自分で好きなデ
まっては意味がない。あくまで低コストで働きやすい空間を実現できると
使われるスペースだけでもバスケット場ほどの空間が用意されているの
「言ってみれば海外航路を走る船みたいなものですよね。仕事に入ると
ザインのオフィスをつくってみたかったので、品川あたりから海沿いに倉
ころが、ロフトオフィスの最大の魅力なのです」
ルパッケージ・オフィスレントサービス」を利用したオフィスです。入居者
コクヨエンジニアリング株式会社
ロフトオフィス大研究
広い空間、低いコスト、フレキシブルなデザイン……
● 駅から徒歩1分のロフトオフィス
● 広い空間を簡単にオフィスにするkybos
● ショールームの設備を流用してコストダウン
「オフィスづくり」のノウハウを見せる
ショールーム機能をもった執務スペース
コクヨエンジニアリング株式会社
東京支店 支店長
夏目精治氏
●外観
1 エントランス
ガラスドアと段差の関係で、エントランスからすぐに全
室が見回せます。
「デザインは白と銀色を中心にモノトーン風にしました。
そのおかげで、非常に明るいイメージになり、訪ねてこ
られるお客さまも、入ってすぐ『いいオフィスですね』と
感心していただけますね」
4 会議室
●
「ガラスのパーテーションで区切ることにより、閉塞感をなくしています」
3 デスクエリア2
●
(フリーアドレス)
「営業部門は自席をなくしてノンテリトリアルにしました。一応、人数分の席
は用意していますが、kybosのおかげでどのデスクからもネットワークに接
続できますから、自分の場所にこだわらずに仕事をしています」
2 デスクエリア1
●
(固定席)
kybos
によるデスク配置。目隠しはロールスクリーンにして、開放感が失われないように
なっています。
5 建材倉庫
●
「今後は、直接、工場から出荷するように変えて
いくため、いずれは倉庫スペースもオフィスにして
しまうつもりです。そういう意味では『倉庫併設』
という条件はなくなりますが、みんなここが気に入
っているので、他に移転するつもりはしばらくあり
ません」
4
2
5
●天井パネル
天井パネルの工事もビジネスの一つであるため、
わざと裏面が見えるように一部だけに設置したそう
です。
「ショールームも兼ねているので、
フレキシブルに
天井を貼れるという実例を見せたかったのです。
ただ一つの誤算は、同じ照度を確保していても、
天井があるところとないところでは明るさのイメー
ジが変わってしまうこと。これは数字を見せて納得
してもらうしかありませんでした」
1 入口
執務スペース
3
既存の設備で使えるものがあれば
すから、
どこに行くにもそれほど不便は感じない。正直言って、前のオフ
現在50名ほどのスタッフがいます。
利用することでコスト抑制になる
ィスより便利なくらいです」
「倉庫部分を除いた執務室は170坪あります。前のオフィスが79坪でし
貼りませんでした。一つのオフィスの中で高さにバリエーションがあること
さらにもう一つ、
このビルには大きな魅力がありました。
たから、2倍近くに広がったわけで、
これだけでも社員は喜んでいます」
も、閉塞感をなくす効果につながっているようです」
執務スペースでまず目につくのが、アルミの枠組に区切られたデスク
入居して1年以上たちますが、社員の評判はよく、不満の声はほとんど
「高い空間もロフトオフィスの魅力なので、天井は一部のスペースにしか
コクヨグループの工事会社であるコクヨエンジニアリングの場合、本
「もともとは倉庫用のビルなのですが、私たちが入る前に住宅関連会社
社を移転するにあたっては、
「一時的に建材を保管する倉庫兼用オフィ
がショールームとして使用していたため、空調や照明、
さらにエントランス
です。
聞かれないそうです。
ス」が条件でした。
のドアなど、
オフィスにそのまま転用できる設備がついていたのです。改
「この枠組はkybos
というコクヨの製品で、パーティションやロールスク
「天井が高いことで、空調の効きが悪いのではないかと心配しましたが、一
「それまでは上野の入谷にある古いビルにいましたが、お客さんなどが
装にあたっては、使えるものはできるだけ残しましたから、
かなりのコスト
リーンによって簡単にスペースを区切れますし、枠自体に配線が可能な
部に個別空調も併用したため、夏も冬も快適でした。とにかく、
この広い空
来たときに、
もう少し見栄えのいいオフィスにしたいという希望もあり、
ま
セービングになったはずです」
た、手狭になったため昨年、新しい物件を探し始めたんです」
ので、OAフロアにしなくても、ネットワークの配線や照明器具の設置が
間は仕事をするには最高です。これだけの広さと高さがあれば、喫煙コー
自由にできる。ここのオフィスは、一応、OAフロアを設営しましたが、
『天
ナーの煙が迷惑をかけることもなく、
そういう苦情もなくなりましたね」
ロフトオフィスによるデメリットはなく、
「移転は大成功だった」と語る夏
そのとき、上の条件から夏目さんの頭に浮かんだのがロフトオフィスです。
どんな広い空間でもオフィスにできる
井が高い空間や広い空間に簡単にオフィスをつくることができる事例』
「倉庫のビルだったらスペースはとれますし、デザインも自由にできる。
自社製品の機能を最大限に活用
として、kybos
を全面的に導入しました」
目さん。
たしかに広すぎる空間は、デスクワークをするには落ち着かないことが
「やはり、自分たちで新しいオフィスをつくったという実感は、社員全員の
オフィスの設営工事は自分たちの仕事なのですから、ショールームとし
ても使えるようなものを実現できればおもしろいと思いました」
それではコクヨエンジニアリングのロフトオフィスを見てみましょう。ビ
ありますが、
このように区切っていくことで、倉庫のイメージはまったくなく
モチベーションアップにつながっているように思います。お仕着せのオフ
そして見つけたのが、港区海岸の今のオフィスです。
ルの入口は「倉庫」のままですが、1階の全フロアを使ったオフィスに入
なります。しかも通常のパーテーションより開放的なことから、4
mのスラ
ィスではこうはならない。デザインの重要性を、改めて感じましたね」
「ロフトオフィスというと、通常は交通の便が悪くなるものですが、
ここは、
ると木枠のガラスドアとフローリングによるエントランスエリアがあり、
そ
ブ高との相乗効果で、
まるで屋外に事務所が出現したようなイメージさえ
ゆりかもめの「日の出」駅から徒歩1分、浜松町駅からも10分ちょっとで
こから数段下がった広い執務室が見渡せます。総床延面積は225坪で、
あります。
株式会社三洋マネージメント
ロフトオフィス大研究
広い空間、低いコスト、フレキシブルなデザイン……
● 船のコンセプトでロフトオフィス風の新社屋を建設
● 立地のマイナスを逆転発想した新オフィス効果
● 建築や設備の工夫で大幅なコストダウン
街の中心部に最適な物件がなかったので
思い切って好きなオフィスを建てました
執務スペース
2
株式会社三洋マネージメント
代表取締役
3
4
山口弥生氏
1
入口
2 2階のエントランス
●
階段を上ると、打ち合わせスペースが設けられています。執務
室はガラスで区切ることにより、外部からの遮音と冷暖房の効
果を高めるように工夫されています。
3 執務室1
●
倉庫仕様のため高い天井が広い空間を演出しています。屋根の部分は形状に合わ
せた断熱材入りの直天井になっており、夏の冷房時だけの吹き出し口が高く取り付
けられていることで、
さらに空調効率を高めています。
●外観
●
1 エントランス
エントランスに入ると、ウッドデッキから木製の
階段につながるデザインは、船内のイメージに
なっています。
4 応接室
●
窓際に開けた応接と会議のためのスペース。ベイブリッジやクレーンが見え、横浜ら
しさをアピールしています。
「お客さまをここに案内すると、
まず窓のほうに目を向けて、
『横浜らしい風景ですね』
と感心されますね。そこから話が広がっていくので、初めての方でもすぐに親しくなれ
るんですよ」
3 執務室2
●
約80坪の執務室に従業員数は20人ほどであるため、広々としたオフィス空間が
実現できました。
「オフィスが広いと気分がいいだけでなく、移動するにも遠回りする必要がなくな
り、無駄な動きをしないでもすみます。結果として、業務の効率化につながって
いるのではないでしょうか」
●倉庫
1階部分は、
エントランスを除くと、
倉庫になっています。
立地がよくても設備に不満があれば
会社にとっていいオフィスではない
しかし、当初は近所で次のオフィスを探してみたものの、条件の合った
オフィスに求めることは何か?
埋め、冷暖房もガスヒートポンプ式のものにしました。結果として電気代
ビルは少なかったそうです。
そのプライオリティが重要です
が大幅に減りランニングコストは安くなりましたね」
建設が決まってデザインを考えるとき、山口さんはすぐにロフトオフィス
ファシリティマネジャーに相談し、自分の要望を形にしていってもらったそ
うです。
社屋の設計にあたっては、大手デベロッパーのデザイナーや、プロの
「社員のコミュニケーションを考え、ワンフロアで広いスペースの借りら
医薬品・健康食品・化粧品の輸出入に関わる通関業務から海外取引
れるところを探したのですが、
それこそ何年たっても出てこない。そのとき、
TM
のコンサルティングまで幅広いビジネス(ファーマロジ)を手掛ける三洋
ふと『そこまで場所にこだわらなくてもいいんじゃないか』とひらめいた
を思い浮かべました。
マネージメントは、半世紀の歴史を持つ横浜の老舗企業の一つです。
のです。たしかになじみのある関内で仕事を続けたいという願望はあり
「横浜の、
しかも倉庫街に建てるのだから、地域との調和を考えればそ
最初に心配していた立地の問題も、実際にここに移転してみると、
あま
以前は横浜の「一等地」である日本大通(関内)沿いのビルにオフィス
ましたが、
それは最優先事項ではないと思いました」
のほうがいいのです。また仕事柄、扱う商品を保管することもあるので、
りデメリットはなかったとか。
を置いていました。
改めて「何のための移転か?」と突き詰めてみると、
それは広いスペ
1階を倉庫、2階をオフィスにしたビルに決めました」
「鉄道の駅からは離れてしまいましたが、横浜はバス網が発達しているの
「明治時代に建てられた建物すべてを鉄筋コンクリート造にした日本で
ースの確保や、仕事のスタイルにあった環境の実現であると気づき、方
さらに海に面した横浜のイメージを強調するために、全体を船のデッキ
で、主要駅からは15分ぐらいと、
あまり不便は感じません。それ以上に、会
最初のオフィスビルは、天井の高さやデザインなど、個人的には好きだ
針が変わります。
のようにし、
インテリアもそれにこだわりました。
社としてこだわりのあるオフィス空間をつくりあげたということによるイメ
ったのですが、
さすがに仕事のスペースとしては不便を感じるようになっ
「横浜は中心街をはずれれば、自社ビルを建てる土地もある。高い賃料
「このアイデアは正解でしたね。うちに来るお客さまも、横浜の会社だと
ージアップの効果のほうが大きい。特徴ある社屋を見て、お客さまもうち
ていました。ED(コンピューターネッ
I
トワークを用いて、受発注・決済な
を払い続けるよりも安いコストで、満足できるオフィスに移れるなら、
それ
いうことで、東京にないものを期待しています。それだけに、社内に入って、
の会社にいい印象を持っていただけますし、人事採用面でも『こういうオ
も選択肢の一つだと気づいたのです」
船室のようなインテリアを見ると、
それだけで喜んでいただけますから」
フィスで働きたかったんです』と希望者が増えました。オフィスは会社の
どの業務用文書をやりとりすること)によるI
Tが業務の中心になってくる
と引っ越さざるをえなかったのです」
そのとき、山口さんが思い浮かべたのが、今の社屋のある土地のこと
もちろん、新しい社屋は内装だけにこだわったわけではありません。構
顔ですから、お仕着せのスペースを使うだけでは、十分にアピールできま
山口さんがこう決意したのが1990年代の半ばのこと。オフィスでも1
でした。
造自体「倉庫仕様」になっているため建設費もかなり安く抑えることが
せん。これからは自分たちの方針や考え方を示した、
コンセプチャルなオ
フィスが増えていくのではないでしょうか」
人1台のパソコンが常識になってきた時代で、
「ビジネスそのものの変
「以前、一度、見たことがある場所で、新山下の倉庫街に300坪の土地
できましたし、高い天井は広々とした空間をもたらせます。さらに設備面
化に、古い建物や設備が対応できなくなってきた」という確信が、移転
が売りに出されていたのです。立地にこだわらなければ条件はいい。結局、
でも、
コスト削減の工夫を採り入れました。
の計画につながったのです。
この土地を購入して1998年3
月にここにビルを建て、会社を移したのです」
「ここは都市ガスが供給されていないため、地下にプロパンのタンクを