日清オイリオグループの 成長戦略とCSR

特集 日清オイリオグループの
成長戦略とCSR
“植物のチカラ”
を通じて新しい価値を創造すること。
事業を通じて成長しながら社会に価値を提供し、社会の発展に貢献すること。
今回の特集は、日清オイリオグループの成長戦略がどのようにCSRにつながっているかを報告します。
1 技術を核とした成長戦略
テーマ
■日清オイリオグループの成長戦略“GROWTH 10”
10ヵ年経営基本構想
“GROWTH 10
(グロース・テン)
”
は2007年4月からスタートし、2010年度までの4ヵ年は「フェー
ズⅠ」
として進行しています。
また、
“GROWTH 10”
では技術を通じた革新や
“植物のチカラ”
の具現化を重視しています。
さまざまな事業上の成果には、
バックグラウンドとなる技術とそれを生かす戦略があります。
本特集では、2010年度がフェーズⅠの最終年度であることから、ひとつの区切りとしてこれまでの進捗を報告します。
■4ヵ年経営計画“GROWTH 10”フェーズⅠ(2007年4月〜2011年3月)
“GROWTH 10
(グロース・テン)”
∼
“ 植物のチカラ”を新たな価値へ 成長 10 年構想∼
2007.4
2017.4
2011.4
フェーズ Ⅱ
“GROWTH 10”
構想の展開
“
経営指標(売上高、経常利益、有利子負債営業CF倍率など)
製油事業
安定した国内収益構造の確立、技術立脚型へのシフト加速、海外事業展開
加工油脂事業
スペシャリティファット&オイル事業の拡大
ヘルシーフーズ事業
生活習慣病・治療・予防・高齢者食市場をターゲットとした商品開発・上市
ファインケミカル事業
技術力の強化、グローバル展開の加速化による事業拡大
新しい
ビジネスモデルを構築
エコリオ事業・大豆蛋白事業 「コア育成事業」として経営資源の重点的投入
事業を支える基盤
”
(CSR、内部統制、リスクマネジメント、ブランド戦略、関係会社政策、人事政策、財務政策、資本政策など)
国際社会に貢献するためのさらなる飛躍へ
4ヵ年経営計画
“GROWTH 10”
フェーズⅠ
フェーズ Ⅲ
(2011∼2013年度) (2014∼2016年度)
植物のチカラ で新たな価値を創造し続ける国際的な企業グループ
フェーズ Ⅰ
(2007∼2010年度)
※フェーズ Ⅱ のスタートにあたっては、フェーズⅠの総括を踏まえた中期経営計画を策定します。
日清オイリオグループ
10
CSR報告書2010
特集 日清オイリオグループの成長戦略とCSR
1 技術を核とした成長戦略
■“GROWTH 10”フェーズⅠにおいて技術が生んだ主な成果
パートナーとの連携で新しい価値をつくる( P14)
業務用のチョコレートメーカーである大東カカオ株
式会社に資本参加しました。当社の油脂加工技術と大
東カカオのチョコレート製造技術のシナジー効果を生
み出していきます。
また、マレーシアのグループ企業ISF
(Intercontinental
Specialty Fats)社では、大規模な設備の増強を行いま
した。2010年3月には新設備が竣工し、チョコレート
用油脂をはじめとするさまざまな用途に向けた特徴的
な油脂の製造に乗り出しています。
ミヨシ油脂、山崎製パンとの調印式(2009年10月26日)
当社とパン製造最大手の山崎製パン株式会社、マー
ガリン・ショートニング製造の大手であるミヨシ油脂
株式会社の3社間で業務提携契約を結びました。
当社の加工技術を活かした油脂をミヨシ油脂・山崎
製パンに提案・供給し、よりよいパン・菓子づくりの
ために力を合わせて技術開発力を強化していきます。
大東カカオとの調印式
(2009年2月5日)
アジアに広がる
「ヘルシーリセッタ」
( P13)
大豆の皮から新素材( P16)
日本で特定保健用食品の認可を取得している「ヘル
“植物のチカラ”を活用し、環境への配慮と高付加価
シーリセッタ」が、中国、韓国、台湾でも同等の保健認
値をキーワードに食用以外の分野への展開を進めてい
証を取得し、販売を開始しました。
ます。
「体に脂肪がつきにくい」効果は、各国でもこれまでの
大豆の皮を焼成した新素材「フィトポーラス」は、国
食用油にはなかったもので、経済発展に伴って肥満や生
際学会や展示会で大きな注目を集めました。電磁波の
活習慣病が増えつつあるアジア各国で注目されています。
遮蔽・吸収特性や、リチウムイオン電池での充放電特
今後も、商品を通じて世界の人々の健康に貢献します。
性が発見され、携帯電話やパソコン、電気自動車など、
さまざまな分野への活用を目指しています。
ヘルシーバランス
シェフズオイル
(韓国)
ヘルシーリセッタ
(日本)
日清牌
中長鎖脂肪酸
食用油
(中国)
統一綺麗健康油
(台湾)
新素材フィトポーラス
アジア各国で販売しているヘルシーリセッタ
日清オイリオグループ
11
CSR報告書2010
特集 日清オイリオグループの成長戦略とCSR
1 技術を核とした成長戦略
■成長戦略にかかわる先進技術
“植物のチカラ”を十二分に活用し新たな価値を創造するには、優れた技術が必要です。日清オイリオグループは、
100年以上の歴史を通じて積み重ねてきた技術と、未来を見据える先進性により開発した最先端の技術を保有してい
ます。その中でも、油脂の精製・加工・評価にかかわる技術は、当社の事業の中核を支えるものです。
純粋にする
酵素でつくる
精製技術
酵素エステル交換技術
油から成分や不純物を分離して、色や臭いなど
を取り除く技術です。さまざまな手法を組み合
わせて精製していきます。
酵素のチカラを利用して、油の機能を高める
技術です。ヘルシーリセッタをつくるために
も使われています。
分ける
評価する
分別技術
評価技術
おいしさ、風味、安全性など、さまざまな観
風味 安全性など さまざまな観
点から評価をする技術です。人の感覚だけで
なく、いかに数値化して明確に評価するかも
重要なポイントです。
原料油から、欲しい固さの油を取り出す(分
別する)技術です。温度管理や撹拌、精製を
組み合わせて、目的の油脂を分別します。
日清オイリオグループの研究開発については、ホームページにさらに詳しい情
報を紹介しています。
http://www.nisshin-oillio.com/company/rd/index.html
日清オイリオHOME > 企業・IR・採用 > 研究開発
日清オイリオグループ
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CSR報告書2010
特集 日清オイリオグループの成長戦略とCSR
1 技術を核とした成長戦略
■
「ヘルシーリセッタ」
にみる食用油の新しい可能性
「ヘルシーリセッタ」は、天然の植物成分「中鎖脂肪酸」
●体脂肪の変化
を含んでいます。中鎖脂肪酸は体の中でエネルギーにな
■ ヘルシーリセッタ ● 調合サラダ油
** P<0.01 * P<0.05
0.0
りやすいという性質があり、そのため、同じ量の油を摂
-1.0
取しても体に脂肪としてつきにくいのです。
「ヘルシーリ
-2.0
セッタ」
は、
「体に脂肪がつきにくい」
食品として特定保健
減少した体脂肪量︵
用食品※の表示を許可されています。
そして、この
「ヘルシーリセッタ」
の開発には、
「酵素エ
ステル交換技術」と「評価技術」が大きな役割を果たして
います。
kg
︶
※ 特定保健用食品:体調を整える成分を加えるなどして、その効果が医学
的にあるいは栄養学的に証明された食品で消費者庁から健康にどのよ **
-3.0
-4.0
*
*
-5.0
-6.0
全期間(4,8,12)
週で有意に低下
0-0
0-4
0-8
うに有効であるか表示することが許可された食品です。
0-12
調べた期間
(週)
出典:M.Kasai,et al,Asia Pac J Clin.Nutr.12(2),151-160(2003)
P:統計的な有意差の有無についての精度
酵素エステル交換技術
酵素エステル交換技術とは、酵素を使い特定の機能を
植物油
もつ油脂をつくり出す技術です。
ヘルシーリセッタ
長鎖脂肪酸
「ヘルシーリセッタ」
は菜種を原料とする植物油をベー
スに、独自の酵素エステル交換技術により、ココナッツ
やパームフルーツ由来の中鎖脂肪酸の機能を植物油とし
植物油本来の
「おいしさ」
「風味」
「調理適性」
て活かすことを初めて可能としました。こうして、調理
ココナッツや
パームフルーツ由来
日清オイリオ独自の
エステル交換
長鎖脂肪酸
適性と栄養効果の両方を併せ持つ健康オイル「ヘルシー
リセッタ」
を生み出しました。
この酵素エステル交換技術は、
「ヘルシーリセッタ」だ
中鎖脂肪酸
けではなく、当社のチョコレート用油脂製品などにも幅
中鎖脂肪酸はエネルギーに
なりやすいのが特徴
広く使われています。
中鎖脂肪酸
■おいしさと健康のための評価技術
食品にとって、安全性は最も重要ですが、おいしさも
●揚げ物のサクサク音の比較
また重要な要素です。食品のおいしさは、味だけでなく、
食感、風味等によって総合的に判断されます。
サクミの評価
揚げ物の場合、油自体の味はもちろんのこと、衣のサ
日清キャノーラ油
クサク感がおいしさに大きく関わっています。一般的に
ベジフルーツオイル
(サクサク音が大きい)
は、人の感覚で評価することが多いですが、当社グルー
プでは、サクサク感を数値で客観的に評価しています。
例えば、当社が開発した「食感音響評価システム」を
使って「食べ物の破砕音(サクサク音)
」と「咀嚼(そしゃ
く)圧」を解析・数値化して、揚げ物のおいしさとのかか
わりを評価します。
日清オイリオグループ
揚げ物を砕く装置と
音響センサー
13
CSR報告書2010
特集 日清オイリオグループの成長戦略とCSR
1 技術を核とした成長戦略
■おいしいチョコレートを世界へ
口の中でなめらかにとろけるチョコレート。
すべてがカカオだけからつくられているわけではなく、
市販のチョコレートには植物油脂
(チョコレート用油脂)
も
使用されています。
実は、植物油脂はチョコレートの
「なめらかな口どけ」
に
深くかかわっているのです。
チョコレートのつくり方
おいしさは口どけにあり
それでは、どこに油が使用されているのか、大東カカ
チョコレートのおいしさの一つは口どけにあります。
オでのチョコレートのつくり方を見ていきましょう。
チョコレートが口に入れた瞬間から溶けるのは、原料の
ココアバターの特徴によるものです。ココアバターは
カカオの風味のおいしさは、カカオ
豆の「選定」と「加工技術」から生まれ
ます。
32~36℃あたりの狭い温度で急激に溶けるという性質
があります。この性質により、室温では固まった状態で、
選定:カカオ豆を選ぶポイントは品
種と産地。ガーナやエクアドル、ベネ
ズエラなどから選りすぐり、理想と
する風味のカカオ豆を安定的に確保
することが重要です。
口に入れると溶けるというチョコレートの特徴を実現し
ているのです。
左の工程で、チョコレート用油脂は、「混合」の工程で
カカオマスに加えられます。パーム油などから取り出さ
焙煎:選別したカカオ豆を煎って、
カカオ特有の香りを引き出します。
れたチョコレート用油脂は重要な役割を担っており、コ
コアバターとよく似た性質、口どけを再現します。
磨砕(まさい)
:煎ったカカオ豆をすりつぶします。粉末と油分が
混ざり、
カカオマスになります。
チョコレートの安定供給
なぜチョコレート用油脂を使うのか?それには、価格
カカオマス
の問題と安定供給の問題があります。カカオは収量が不
搾油
安定で、常に予定量のカカオが手に入るとは限りません。
●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
そのため、カカオからつくるココアバターは高価なもの
になってしまいます。
●●●●●●●●●●●●
さらに中国やロシアなど、これまであまりチョコレー
ココアパウダー ココアバター
つあります。もちろん日本でもたくさんのチョコレート
●●●●
トを食べていなかった地域でもチョコレートが広がりつ
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
カカオマス
が求められています。これらの需要に応えて安定的にチョ
コレートを供給するためにも、ココアバターに似た性質
搾油:カカオマスに高圧を
混合・微粒化:砂糖や粉乳、チョコレート
用油脂を加え、舌の上でざらつきを認識
できなくなる程度まで粉末を細かくして
いきます。
かけると、
ココアバターと
を持つチョコレート用油脂を使う必要があるのです。
さまざまな用途のために
チョコレート用油脂
ココアケーキ
(粉砕すると
ココアパウダー)
に分けら
れます。
混合・微粒化:砂糖や粉乳、植
チョコレートはパンやアイスクリーム、クッキーなど、
精錬(コンチング)
:細かくされた原料やチョコレート用油脂など
を長時間練ります。
チョコレートの風味を決める重要な工程です。
認識できなくなる程度まで粉
さまざまな食品にも使用されています。それらの食品で
は「焼いても溶けない」
「常温ですぐ固まる」など、ココア
精錬(コンチング)
:細かくされ
ります。チョコレートの風味を
バターだけでは実現が難しい機能が求められます。
充填/検査/ラッピングを経て
世の中のチョコレートを使用した食品には、当社の技
チョコレートのできあがり
日清オイリオグループ
術を活かしたチョコレート用油脂が必要なのです。
14
CSR報告書2010
特集 日清オイリオグループの成長戦略とCSR
1 技術を核とした成長戦略
技術力が生み出すチョコレート用油脂
けて高品質・高機能なチョコレートおよびチョコレート
チョコレート用油脂は、
「油の分別技術」や「酵素エス
用油脂を供給します。 テル交換技術」などの油脂加工技術を活用してつくられ
ています。
油脂加工技術が生み出す新しい機能と製品
分別とは、パーム油を液体の状態からどんどん冷やし
チョコレート用油脂以外の分野でも、分別・エ
ていき、温度によって徐々に固まってくる成分を取り出
ステル交換技術は、
マーガリンやショートニング、
すものです。液体部分と固体部分を分離する条件の微妙
フィリングなど、加工油脂分野でも活用されて
います。
な調整が技術の核であり、マレーシアのグループ会社
使用製品の例
ISF社が得意とするものです。
また、当社が得意とする酵素エステル交換技術は、油
脂の性質を、口どけ良くシャープにするなどの設計がで
きるので、目的のチョコレートの性質に合わせた自在か
つ精密な製造が可能になります。
これらの技術を組み合わせ、当社グループは世界に向
■環境と人にやさしい
“エコリオ”非食用油の活用と開発
世界的な人口の増加による食料需要の増大や、食用作
“エコロジー”と“オイリオ”のふたつの言葉から「エコリ
物が燃料資源として使われたことに伴う穀物需要の増加
オ」と命名し、新たな用途の研究・開発を行っています。
などによる原料高騰があり、それらにより世界の食糧原
私たちはこれまで100年以上かけて培ってきた加工
料の需給バランスに影響が出ています。私たちは、食の
技術や新たな技術開発等により非食用分野を含めた幅広
安定供給の観点から食べられる植物は食用へ、食べられ
い分野で、環境に配慮した付加価値の高い商品開発や新
ない植物を食用品以外へという基本方針のもと、環境・
しいビジネスモデルの構築を進め、“植物のチカラ”
を活
社会に役立つ
“植物のチカラ”
の非食用分野を含めた広い
かした、環境、社会と人にやさしい事業を展開していき
領域への活用を進めています。私たちはこの取り組みを
ます。
エコロジー
オイリオ
エ コリオ
現在の取り組み
●新素材の開発
大豆の皮からつくった新素材
「フィトポーラス」
●工業用途への植物油の適用
アスファルト付着防止油、コンクリート用型枠の離型油
「エコメイト」
シリーズ
●燃料用途への植物資源の活用 など
日清オイリオグループ
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CSR報告書2010
特集 日清オイリオグループの成長戦略とCSR
1 技術を核とした成長戦略
100%植物由来の新素材
「フィトポーラス」
「放熱シート」
などへの適用可能性が認められています。
大豆油の製造段階で発生する大豆の皮を焼成・粉砕し
また汎用ゴムに練り込む際、通常のカーボンブラック
た多孔性炭素材料「フィトポーラス」にさまざまな特性が
よりたくさんの量(4倍程度まで可能)を練り込むことが
あることを発見し、用途開発を進めています。
できるため、上記の特徴を活かした材料として、より幅
これは、産学協同のプロジェクトとして三和油脂株式
広い分野で利用できる可能性があります。
会社ならびに山形大学工学部飯塚研究室と共同で研究開
さらに、炭化焼成条件や粉砕条件を変えることで新た
発を行っています。
な機能が生まれることも見出しており、今後は条件の変
この「フィトポーラス」は、特殊な炉を用いて独自の製
更による特性の変化を見極めつつ、量産に向けた研究・
法で炭化焼成した新しい炭素材料です。大豆の種皮を焼
開発を進めていきます。
成し、粉砕した粉体なので、環境面、健康面からも従来
の石油系カーボンブラックに比べ安全性の高い素材と
フィトポーラスの特長
なっています。
粉体の大きさは砕く加工の度合いによって7〜30μm。
その特徴は比重が非常に軽く、多孔質であること。大豆
の皮がもともと持つ独特な多孔質構造をそのまま保って
おり
(下写真)
、
この構造がさまざまな特性につながります。
●
原料の環境負荷が小さい
(大豆の皮の利用)
●
電磁波を遮蔽・吸収する
●
ゴムに練り込める量が多い
(カーボンブラック比 約4倍)
● 安全性が高い
(植物原料)
また、粉体の大きさによって多孔質構造が変化するため、
●
熱伝導性が良好であり高い放熱効率を有する
これまでに「電磁波吸収体」
「リチウムイオン電池負極材」
●
特定のガス吸着能力に優れる
植物由来の新素材 フィトポーラス
食用油
大豆
大豆油製造工程で出る大豆の皮
新素材
「フィトポーラス」
炭素粉末化
飼料などに使用
大豆皮の多孔性構造
多孔性構造を保持
構造がほとんど同じ
(炭化しても構造が残る)
日清オイリオグループ
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CSR報告書2010
特集 日清オイリオグループの成長戦略とCSR
1 技術を核とした成長戦略
●練り込み特性について
練り込んだゴムからつくったシートには前述のさまざま
「フィトポーラス」の粉体は、カーボンブラックの約4
な特性があります。粉体の大きさや練り込む量を変える
倍までゴムに練り込むことができます。カーボンブラッ
ことによっても特性が変化します。
クでは同じ量を練り込んでも形を保つことができません。
ゴムへの練り込み
フィトポーラス SH
練り込み中
カーボンブラック
練り込み品
練り込み中
練り込み品
データ提供 山形大学工学部飯塚研究室
●熱伝導性の高いフィトポーラス
めか、
「高い充放電特性」
「高い電磁波遮蔽・吸収性」も示
「フィトポーラスSH-3030」は通常のフィトポーラス
しています。充放電特性は、近い将来、拡大が予想され
か ら 不 純 物 を 除 き、 炭 素 比 率 を き わ め て 高 く し た
る充電池分野への利用が期待されます。
(C=99.95%)ものです。炭素が結晶化しつつも多孔質
これらの特性は他の材料との配合率の違いによって変
構造を維持しており、それにより他のフィトポーラスに
化するため、条件によってさらに多様な用途が期待され
はない「高い熱伝導性」を獲得しました。シリコンゴムや
ます。
石英ガラスなどの数倍、限界までゴムに練り込んだ場合
で比較するとカーボンブラックを練り込んだ場合の7倍
期待される用途
以上の熱伝導性があります。金属を放熱材料として使う
よりも軽く、加工性がよいので、小型・軽量化が求めら
れる分野での利用が期待されます。
●
リチウムイオン電池や燃料電池の電極材
●
電子機器の部品
●
放熱シート など
一方で、多孔質構造が電子のやりとりに適しているた
黒鉛化しても多孔質構造を保持
日清オイリオグループ
黒鉛(グラファイト)結晶
17
CSR報告書2010
特集 日清オイリオグループの成長戦略とCSR
テーマ
2 一貫した環境負荷への
取り組み
当社グループは、環境負荷削減のために、業界に先駆けた先進設備の導入など、
さまざまな取り組みを行ってきました。
これまでも一定の成果を上げてきましたが、市場環境が大きく変化し、環境への取り組みも
新たなアプローチが求められています。
“GROWTH 10”
と同様に、当社グループの環境への取り組みも新しい段階を迎えました。
環境理念・環境方針の制定
日清オイリオグループでは、2009年11月、経営理
この理念と方針には、当社グループが“植物のチカラ”
念の一部として位置づける
「環境理念」
「環境方針」を制定
から生まれた「おいしさ」
「健康」
「美」への喜びを、お客様
しました。従来は
「日清オイリオグループ行動規範」のな
に提供し続けていくために、次世代に向けて“植物”
を育
かに、基本的な環境への取り組みを示していましたが、
む地球環境を守り、保全する活動に取り組んでいくとい
このたび当社グループらしい、環境への取り組みの方向
う思いを込めています。
性を示すために、新たに明文化しました。
日清オイリオグループ理念・方針の位置づけ
“植物のチカラ”
®
経営理念
コアプロミス
コーポレートステートメント
CSR基本方針
環境理念
社会貢献方針
日清オイリオグループは、かけがえのない地球を次の世代に引き継
ぐために、
「植物のチカラ」を最大限に引き出し、環境にやさしい
企業活動に取り組み続けます。
環境方針
行動規範
●
●
環境関連の法規制、自主基準を遵守します。
低炭素社会、
循環型社会、自然共生社会を目指した取り組みの推進
に努めます。
●「自然と環境にやさしい」
商品・サービスの開発・提供に努めます。
●
●
環境に関する活動情報の積極的な公開に努めます。
環境に対する意識を高め、グループ一体となった取り組みの推進
に努めます。
日清オイリオグループ
18
CSR報告書2010
2 一貫した環境負荷への
取り組み
特集 日清オイリオグループの成長戦略とCSR
地球温暖化対策につながる燃料転換
2010年1月、水島工場に新たな貫流ボイラを導入し
ました。貫流ボイラは、蒸気の需要に応じて柔軟に運
転することができ、蒸気(燃料)の無駄を削減できます。
さらに、燃料を重油から液化天然ガス(LNG)に変更し
ました。
従来、ボイラで発電していた分を電力会社からの購
入に切り替えたため、購入電力は増えましたが、蒸気
や燃料の消費効率が良くなり、燃料からのCO2が削減
できた効果の方が大きく、全体としては12.7%のCO2
削減になります。
CO2削減推定効果(水島工場全体)
CO2削減量 5.8千t-CO2/年
貫流ボイラ(水島工場)
CO2削減率 12.7%
一貫した環境負荷軽減への歩み
当社グループがこれまで一貫して行ってきた環境への取り組みについてまとめました。(1991年度以降)
2009年度
水島工場
省エネ・CO2削減の流れ
1992年度
横浜磯子事業場
1996年度
横浜磯子事業場
1999年度
横浜磯子事業場
ガスコージェネレーション
設備を導入
燃料電池システムの導入
1995
1992年度
モーダルシフト開始
1991年度
「環境問題委員会」
発足
物流環境負荷削減の流れ
マネジメントシステム改善の流れ
日清オイリオグループ
2003年度
堺事業場
ガスコージェネレーション
設備を導入
重油から都市ガスへの
燃料転換
1991
ボイラ燃料転換
(上の記事に詳細)
2000
1998年度
「環境パンフレット」、
「環境白書詳細版」
初の発行
(非公開)
2005
2000年度
横浜磯子事業場
ISO14001 認証取得
1996年度
3社
(ミツカン、
カゴメ、当社)
共同物流開始
2004年度
環境4活動体(環境管理者会議、
物流環境会議、容器開発推進会議、
オフィス環境会議)発足
19
2009 年度
2009年度
「環境マネジメント委員会」
発足
「環境理念」
「環境方針」
制定
マルチサイト
(4生産拠点+外部SP)
ISO14001認証取得
2005年度
「エコレールマーク」認定
CSR報告書2010
特集 日清オイリオグループの成長戦略とCSR
テーマ
3 より使いやすく
環境負荷の少ない容器を
目指して
当社グループは、行動規範にある「資源循環型社会の構築を目指した3Rの実践」のために、Reduce
(減らす)として、容
器の
「軽量化」
に取り組んでいます。一方で、使う人にやさしくなければ、環境にやさしくても魅力は低下してしまいます。
「注ぎやすさ」
「持ちやすさ」
「保存性」
などの機能面の進化も両立させていきます。
より環境負荷を少なく
より使いやすく
食用油の容器としては、創業時より長らくガラス瓶を
食用油の容器は、購入から比較的長い期間、少しずつ
使用してきました。その後、プラスチックボトルやペッ
使用されるため、飲料用容器とは異なった機能が求めら
トボトルの導入により、
大幅な容器の軽量化を成し遂げ、
れます。それは、
お客様の使いやすさ向上に大きく貢献しました。
●
中身の劣化を防ぐために酸素を通さないこと
また、軽量化によって容器資材の使用量を節約し、限
●
油は粘性が高いので、キレの良い注ぎ口であること
られた資源の有効活用を進めてきました。植物油製造業
●
大きいボトルは重量があるので、取っ手が持ちやす
における容器包装3R推進のための自主行動計画目標の
いこと
「2004年比でプラスチック製の主要容器の重量削減(1
分別収集に対応しやすいこと(はがす、つぶす)
●
本当たり1.5~2%削減)
」を達成しています。
などです。商品の性質に応じた容器の研究に努めるとと
もに、
お客様にとっての使いやすさを追求していきます。
日清オイリオグループ
20
CSR報告書2010
3 より使いやすく環境負荷の
少ない容器を目指して
特集 日清オイリオグループの成長戦略とCSR
容器改良の歩み
年度
【軽く、
使いやすい】
600gペットボトルを
リニュ ーアル
(次ページ参照)
【軽く】
1300g扁平ボトルを4g
軽量化
(76→72g)
【使いやすく】
スクイズペットボトル用
キャップの改良
2009
【陳列性向上】
1000g商品の箱入れ向き
の変更
2008
【軽く】
1300gボトルを9g
軽量化(64→55g)
【軽く】
ごま油用150g瓶
を7g軽量化
(172g⇒165g)
【使いやすく】
1300gボトルの取っ手の形をより
持ちやすく改良
変更前
変更後
2007
2006
【分別しやすく】
600g ペットラベルにはが
しやすい感熱フィルム採用
2005
【保存性向上】
ギフトに酸素バリア性向上ボトルの開発
2004
【軽く】
ペット用キャップの
改良、軽量化
2003
2002
【軽く】
1500gボトルを9g
軽量化(70→61g)
【軽く】
700gボトルを6g
軽量化(33→27g)
2001
1985
創業時のオイル
容器はガラス瓶
でした。
1984年にペットボトルを
導入(ドレッシング用。食
用油用は1985年)
1975 年にラミコン
(多 重 層 フ ィ ル ム)
ボトルを導入
創業時
日清オイリオグループ
21
CSR報告書2010
3 より使いやすく環境負荷の
少ない容器を目指して
特集 日清オイリオグループの成長戦略とCSR
お客様の声を活かした
「新600gペットボトル」
2010年2月中旬から、形やラベルを見直した新600gペッ
トボトルを採用しました。生活科学研究室が調査したお客様の
[つぶしやすいエコボトル]
ボトル容器の重量を20%削減。
不満の声を反映して、改良した容器です。
環境面への配慮と同時に、使いやすさにも工夫を施しました。
リブをつけ、つぶしやすくしたボ
トルは容積を1/3に減らせます。
Message より良い商品のために(パートナー企業より)
東洋製罐は、創業以来“包む”ことの大切さを基本に包装容
器づくりに専念し、時代のニーズに応えた包装容器を世の中
に供給し続けてきました。
日清オイリオグループ様と共同開発した600gペットボト
[注ぎやすいリブ付きボトル]
[見やすい商品説明]
ボトルの上・中・下3ヵ所にリブ
ラベルの表示面積を広くし、商品
(みぞ)
をつくり、
より持ちやすく、 名や特徴、使用上の注意などを読
注ぎやすくしました。
みやすくしました。
ルは、消費者の使い勝手と、時代が要求する軽量化を両立さ
せた容器です。製品開発の過程では、お互いの製造工程に関
する情報交換を密に行い、テストを繰り返した結果、満足の
いく容器に仕上げることができました。今後もパートナー企
業として、創意と工夫でより良い容
器を世の中に提供できることを願っ
ています。
[はがしやすい
[開封日をわかりやすく]
シュリンクフィルム] 開封した日をお客様自身が書き
はがしやすく、分別が楽にでき
込むことができ、開封日が一目で
ます。
また、
裏面のスリットから、 わかります。賞味期限の表示はこ
残量の確認もできます。
すっても消えにくくしました。
東洋製罐株式会社
営業本部
一般プラスチックボトル販売部長
坂崎 博昭様
日清オイリオグループ
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CSR報告書2010