犬の首にリードを付けることの危険性

原題: Is it harmful to attach a leash to your dog’s neck ?
著者: Emily Larlham
オリジナル・ポスト:
http://dogmantics.com/2013/07/17/is-it-harmful-to-attach-a-leash-to-your
-dogs-neck-2/
犬の首にリードを付けることの危険性
著者: エミリー・ラーラム (ドッグ・トレーナー)
訳者: 藤田則子
画像:エミリー・ラーラム
(著者注: この記事の内容は、今後の研究調査により、必要に応じてアップデートされます)
犬を家族として迎い入れた人たちが願うことは、愛犬が身体的にも精神的にもベストな
状態で暮らせること。私たちは、犬を飼うという経験を通して、犬と友情や信頼関係を結
び、また、私たちの庇護下にある動物の世話をするという貴重な体験をします。そして、
私たちは、愛する犬をちゃんと世話していることにプライドを感じます。
だから、犬への接し方について相反する意見を聞けば、それを個人攻撃や批判と受け取
り、嫌な気持ちになる人がいても不思議ではありません。
以前は私も、犬の首輪にリードを付けるか、スリップリード(訳者注:リードの片端で輪を作
り、犬の首にかけるようになっているリードで、リードが張ると輪が締る)を犬の首にかけて散歩を
していました。ところが、ある日、見知らぬ人に、
『犬の首を傷つけないようにハーネスを
使用したら?』と言われたのです。そう言われて、私は、個人攻撃されているように感じ
ました。なんて失礼な、と怒りさえも感じました。私はこんなに犬を愛している。それを
見ず知らずの“知ったかぶりのおせっかいな人”がいきなり意見するなんて! さらには、
公共の場でしたので、公衆の面前で間違えを指摘されたようで、恥をかかされた、と感じ
ましたし、自分の行動を否定されたことに私は傷つきました。
しかし、このときのことは、私の心の中で小さな種となって残り、この種は私の中で育
ち始めました。そして、数年後には、私はハーネスしか使用しなくなりました。さらには、
首にリードを付けた犬の、リードが張った時の様子を目撃して、私はたじろぐようになっ
たのです。
愛犬の QOL と身体的な健康のためには、なぜ、首輪にリードを付けない方が良いのか、
そのことを納得してもらえるようにこの記事を書きました。現在、首輪にリードを付けて
いる人の理由はさまざまでしょう。首輪の方が装着が簡単だから、犬の行動は首でコント
ロールすべきだからなど、いろいろな意見があるでしょう。そして、やみくもに『首輪は
ダメ』と言われても嫌な気持ちになるだけで、納得できませんよね。ですので、なぜ私が
そう思うのか、その理由をこれから詳しく述べていきます。
【犬の首の構造は私たち人間と違うから、首輪を使っても大丈夫なのでは?】
Thyroid Gland:甲状腺
Oesophagus:食道
Trachea:気管
首輪派の人たちの主張の一つに、犬の首は人間の首とまったく異なり、とても頑丈で強
固である、というのがあります。でも実際は、犬の首の構造は、生理学的に人間の首と良
く似ているのです。人と犬は、解剖学的構造が似ているからこそ、犬は、人間の薬の臨床
実験に利用されてしまうのです。手足を床につけた状態で、自分の首を触って観察してみ
て下さい。そして犬と比べてみましょう。人の首も犬の首にも、気管、食道、甲状腺、リ
ンパ、頸静脈、頸椎が比較的類似した場所に収まっています。
犬の首部、三番頸椎での断面図:
Oesophagus:食道
Trachea:気管
External Jugular Vein:外頸静脈
犬の皮膚もまた人間の皮膚と似ています。もちろん犬には被毛(コート)があり、汗をか
きませんが、犬の表皮は 3~5 個の細胞の厚さで、人間は 10~15 と、コートを考慮すると
同じような厚さになるのです。
【首にリードを付けることは犬の首に身体的な危険を及ぼすのでしょうか?】
画像:エミリー・ラーラム
首にリードが付いた状態で、リードが強く張る、もしくは、犬が引っ張ると、犬の首に
は怪我や損傷のリスクが発生します。犬の首は大変デリケートで、犬の健康を保つために
重要な器官がたくさん通っています。例えば甲状腺は首の前部、喉頭のすぐ下にあります。
犬が強く引っ張った、たった一度の衝撃でも、運が悪ければ甲状腺が傷つき、長期間に渡
ってその影響が何らかの症状として出る可能性があります。
そんなリスクを冒す必要があるのでしょうか?
首輪がハーネスに勝る点は、装着が簡
単なこと、それと、人が犬をコントロールしやすいこと、この二点に尽きるのではないで
しょうか。
【首輪にリードを付けて使用することの危険性】
首の損傷
-
犬が急に走り出したり、何かの理由で飼い主が強くリードを引っ張ること
があります。このときに、首に強く圧がかかり、たった一度の出来事でも犬の首に重度の
損傷をもたらすことがあります。主なものには、打撲傷、むち打ち、頭痛、気管虚脱、咽
頭の損傷、頚椎損傷などが挙げられます。さらに、首と脊髄の損傷は神経の麻痺や四肢の
麻痺を起す可能性もあります。
1992 年にアンダース・ホールグレンが『動物行動コンサルタント・ニューズレター』で
発表した 400 頭の犬を対象とした研究結果は、
「犬による引っ張り、もしくは飼い主による
リード・ジャーク(リード・ショック)は、犬の首と喉に影響を及ぼす」と結論付けています。
予想されたように、リードの使い方と、犬の胸部や腰への関係は述べられていません。
首に損傷のある犬の 91%に、リード・ジャークもしくは引っ張りがあることが判明して
います。リード・ジャークは、飼い主が一気にリードを引くことで首に圧を加えること(訳
者注:日本ではリード・ショックともいいます)
、この場合の引っ張りは、犬が慢性的もしくは長
時間リードを引っ張った状態で歩いていることを意味します。また、犬が遊ぶこと自体に
は危害はないとしていますが、ウォーミングアップの必要性を指摘しています。良く走る、
他の犬と遊ぶ、嬉しいときにジャンプする、障害物をジャンプするなどの行為と背中への
損傷の関連は見られませんでした。これは喜ばしいことです。ただ、激しい遊びや狩猟、
アジリティーなどの体に大きな負荷のかかるアクティビティを行うときは、十分なウォー
ミングアップと、終了後のマッサージが推奨されることが述べられています。
眼と耳の問題 - ポーリ AM、ベントレー、E ディール KA、ミラーPE の研究『首輪あ
るいはハーネス利用時の首部への圧の、眼圧への影響』によると、「首輪やリードにより首
部へ圧がかかると眼圧が基準値より高くなるが、ハーネスではそれが見られなかった」こ
とが発表されています。このタイプの眼圧は、すでに角膜に問題を抱えている犬、緑内障
やその他の眼の問題の症状を悪化させるリスクがあります。
獣医師でもあるピーター・ドバイアス博士は、
『首輪の使用は疾患の発症、さらには癌を
誘発する可能性がある』ことを記事として書いています。リードが張る状況を頻繁に経験
している犬には、耳と目に疾患が見られることが多く、これは、リードが張ることで首に
圧がかかり、血液とリンパ液の流れが悪くなることが理由としてあげられる、としていま
す。記事はこちらをご覧ください。
http://www.peterdobias.com/community/2011/07/dog-collars-can-cause-disease-and-poss
ibly-lead-to-cancer/
甲状腺機能低下症などの甲状腺の異常
-
通常、首輪は甲状腺のある場所に着けられる
ために、ピーター・トバイアス博士によると、『犬がリードを引っ張ることで甲状腺が傷つ
き、炎症を起こす。すると体の免疫システムが炎症した細胞を除去することで炎症に対処
しようとして、最終的には甲状腺の細胞を壊してしまう。甲状腺細胞の破壊は、甲状腺ホ
ルモンの低下に繋がり、すべての細胞のメタボリズムが低下し、疲れやすい、体重の増加、
皮膚疾患、脱毛、耳の炎症が起きやすくなることや、臓器の不全などの症状を引き起こす』
としています。
前肢神経組織の疾患
-
ビーター・トバイアス博士は、同記事の中で、首輪による他の
健康問題としては、前肢神経の損傷を挙げています。博士は『犬が前脚を過度に舐める、
また、前脚の跛行(びっこ)と首輪の関連』を指摘しています。リードの引っ張りは前脚へ
の神経を刺激するため、犬は異常な感覚を覚え、前脚を舐めることがあるそうです。多く
の場合、このような症状は皮膚アレルギーが疑われるのですが、首輪を止め、首部への損
傷を治療することで治る場合もある、としています。
行動問題
-
脳を持つ生き物では、行動は健康とリンクすると一般的に考えられていま
す。前述のアンダース・ホールグレンはその研究において、怪我と行動の関係性に言及し
ています。『犬と人間にはびっくりするほど共通点が多い』『犬の行動問題の原因の一つは
疾患や痛みによるものである。一般的に見られる痛みと疾患は、筋肉と骨への損傷である』
としています。アンダースの研究は背中の怪我に重点を置き、犬 400 頭の研究対象のうち、
攻撃的な犬の 79%は背中を痛めており、21%には背中の健康問題はなかったとしています。
怖がりでシャイな犬のうち 69%は背中を痛めていて、31%はなかったとしていています。
この研究で、身体的な健康状態と行動問題の関連性が明らかにされています。
【首に損傷を与えるほどの圧なら、なぜ犬は引っ張るのをやめないのでしょう
か!?】
画像:エミリー・ラーラム
引っ張ることで首に損傷を負うほどの圧がかかるのなら、なぜそれでも犬は引っ張り続
けるのでしょうか。犬は人間と同じように考え、行動するわけではありません。人間は、
引っ張って苦しくなるようなら、引っ張ることを止めます。身体の構造は似ている犬と人
間ですが、脳は大きく異なります。よって、人間の行動パターンを基に、犬の行動を推測
することには無理があるのです。
もしあなたが突然、同僚のネクタイをつかんで引っ張ったとしましょう。引っ張られた
人は、あなたを引き摺ったまま、壁におしっこを引っかけようと壁まで引っ張って行った
り、女性の同僚に向かって怒鳴りながら無理やり近づこうとしたり、休憩室に置いてある
ドーナッツをなんとか掴もうと、何回も引っ張って、あげくの果てにはひっくり返って背
中から落ちる、
、
、
、なんてことはしませんよね。
でも犬はどうでしょう。リードを引っ張り、後足で立ち上がり、首輪にかかる力でバラ
ンスを取りながら、二本足で進もうとしている犬を見たことがあるでしょう。あまりにも
酷く引っ張るので、息も絶え絶えで、ぜえぜえと苦しそうに喘ぎながら引っ張り続けてい
る犬を見たこともあるでしょう。犬の体が宙に吹っ飛ぶほど、飼い主にリード・ジャーク
(リード・ショック)を入れられ、地面に叩きつけられても、起き上がった瞬間にまた他の犬
に向かって突進する犬もいます。
ボール投げやハーディング(羊追い)に夢中になり過ぎて、オーバーヒートにより死亡す
る犬もいます。フェンスやクレート(ケージ)を噛みちぎって脱走しようとして牙を折る犬
もいます。飼い主が 5 分いなかっただけで、ドアを引っ掻き続けて爪をはがしてしまった
犬もいます。私のボーダー・コリーは荒地で遊んでいてパッド(足裏)の皮膚を剥いてしま
ったのですが、痛がる様子を見せたのは昼寝から起きた後でした。動物レスキューの番組
やサイトで、小さくなった首輪が犬の皮膚にめり込み、大きな傷ができているのに、平然
と、まるで何ごともないように歩き回っている犬を見たことはないでしょうか。犬と人間
は、痛みの感じ方や痛みに対する反応が異なるのです。
画像:エミリー・ラーラム
【犬がどのように感じているのかを知る方法はないのでしょうか?
犬の痛み
や苦痛は測定できるのでしょうか?】
動物が感じている痛みや苦痛を正確に測定する方法はありません。人間の痛みや苦痛の
場合も同様です。人間は、ことばで説明することによって、痛みや苦痛の度合を伝えるこ
とはできるでしょう。MRI で脳を見ることによって、何らかの感情の分析をすることもで
きます。コルチゾールやストレス・ホルモンの量は、痛みや苦痛のレベルの判断としては
信頼性が低いことが証明されています。例えば、人間の虐待のケースでは、ストレスレベ
ルが標準より高いから、低いからと言って、そこから何らかの結論を導き出すことはでき
ません。犬のストレスの場合も同じです。よって、現時点では、首輪による精神的な影響
を科学的に立証することはできません。ただ、犬の行動は身体的な健康に影響されること
は明らかです。
【犬同士が相手を噛むのであれば、それを真似して犬をしつけることは自然な
流れではないか?】
画像(左):モニーク・プイマン
画像(右):エミリー・ラーラム
動物を脅したり、苦痛を与える行為を許容するかどうかは、あなたのモラルと倫理観に
かかっています。弱い者いじめ、レイプ、殺人などは人間社会の一部ですが、だからと言
って、そのような行動が社会的に認められているわけではありません。犬やオオカミが弱
い者いじめをする、ケンカをする、相手を殺してしまうなど、たとえそのような行為をす
るからといって、同じ行動を飼い主が自分の犬にしても良いという論理にはならないはず
です。
犬は口を使ったケンカ遊びをします(左上の写真)
。でもそれは、私たちが首輪を使った
り脅すことで犬を管理、もしくはトレーニングすることを正当化する理由にはなりません。
犬にジャーク(ショック)を入れることで、行動を封じ込めることは可能かもしれませんが、
攻撃行動やフラストレーションなどの他の好ましくない行動が副作用として現れることも
あります。副作用のない、体罰を用いないトレーニング方法は実在します。
すべての犬が、お互いに対して懲罰を与えるという説は事実ではありません。他の犬に
罰を与える犬もいれば、そうしない犬もいます。多頭飼いの家では、すべてを犬任せにし
て力関係を構築させるのではなく、飼い主が古典的条件付けを用いて、犬たちがお互いの
存在を居心地良く感じ、安心して暮らせるように仕向けることが可能です。
また、首輪でジャーク(リード・ショック)を入れることと、犬が他の犬を噛むこととは、
生理学的に異なります。多くのトレーナーは、犬にツケを教える(ハンドラーのすぐ横に居さ
せる)ためや、新しい行動を教えるためにジャーク(リード・ショック)を使いますが、犬た
ちは、他の犬を自分の近くにとどめるために相手を噛んだり、特定の行動をさせるために、
一日を通して相手を噛むことはありません。だいたい犬が、自分の行動が将来的に相手の
行動に影響を与えるということを意識し、理解できているかどうかも判明していません。
犬が相手に懲罰を与える行為は、単純に反射行動である可能性もありますし、過去の経
験から強化された行動なのかもしれません。また、犬によっては、たとえどんな理由があ
ったとしても、相手に噛まれたことで攻撃的になる犬がいることに十分注意しなければい
けません。
【では、犬が引っ張ったときは、どう罰したらいいのでしょうか?】
PRT(Progressive Reinforcement Training:プログレッシブ強化トレーニング)と呼ば
れる、身体的および精神的な苦痛を動物に与えないトレーニング方法があります。より詳
しい情報は、www.dogmantics.com に記載されているマニフェストを参照してください。
愛犬の引っ張りぐせを直すには、犬があなたの傍にいるときに、正しいタイミングでト
リーツや『前へ進むこと』をご褒美として与え、引っ張っていない状態を強化します。そ
うすることで、犬が引っ張るときの『罰』は、引っ張ったら前へ進めないこと、さらには、
後ずさることとなります。リードを引っ張らないで歩くことを教えるために、犬を脅した
り、苦痛を与える必要はありません。
大切なのは、リードが張った状態で、犬の行きたい方向へは進ませないことです。一歩
たりとも、ですよ。ここで犬が引っ張るままに歩いてしまうと、犬は引っ張れば行きたい
方向へ進めることを学習し、この行動が強化されてしまいます。
また、恐怖心や不安、過剰な興奮などが原因で、引っ張りはその副作用として現れてい
ることもあります。このような場合は、トレーナーはまず、問題の原因を究明し、それを
解決する必要があります。歩行トレーニングの教材動画はこちら:www.youtube.com/kikopup
引っ張らない歩き方の基本を紹介する動画はこちらを見てください:
http://www.youtube.com/watch?v=sFgtqgiAKoQ
【でも、私の犬は引っ張らないのですけど。。。】
そうですね。この世のどこかには、草むらの匂いにも、道に落ちている食べ物にも、大
好きな友だちや犬の出現にも、どんな状況でも、いきなりリードが張るような反応を返さ
ない犬がいるのかも知れません。しかし現実はどうでしょうか。いつもは緩んだリードで
上手に歩ける犬でも、何かの拍子にリードが張ることはないでしょうか。縁石に乗り上げ
た車を避けるために、飼い主がリードを強く引っ張る必要があるかもしれません。大きな
音に驚いた犬が道に飛びだすのを止めるために、リードを強く引くことがあるかもしれま
せん。
周りの危険から守るために、幼児の首に縄をつけて外を連れ歩くことはしませんよね。
ハーネスというものがあるのですから、敢えて犬の首輪にリードを繋ぐ必要はありません。
首に強い衝撃がかかれば人間の首が傷つくように、犬の首も傷つく可能性があるのです。
【犬の福祉を考えた選択を
-
犬の散歩はハーネスで!】
画像:ジェイコブ・リンド
『ハーネスをつけると犬が引っ張るようになる』という説がありますが、これは都市伝
説です。真相は、
『リードを持つ人間が犬を引っ張らせるから、犬は引っ張る』のです。背
中でクリップ留めする(背中にリードを付ける)形状のハーネスは、少ない力でより大きなも
のをプル(引っ張る)できるように設計されています。結果、犬はプルする力を発揮するこ
とが可能となるのです。犬が同じようなプルの力を首輪では発揮できないのは、首が敏感
な部位であることと、頸椎は前方へ引っ張る強い力を発揮する器官ではないからです。
現在では、力の強い犬に装着できるように設計されたハーネスがいろいろ出回っていま
す。犬の胸部にリードを繋げるように設計されたハーネスを使えば、背中にリードを付け
たときと比べて、犬は引っ張る力を発揮することができません。また、胸部のリードは、
犬をあなたの方へ方向転換しやすくなります。
愛犬に、ときには引っ張って欲しい人(スケートボードや車椅子など)は、合図で引っ張る
ように教えるのも良いでしょう。あるいは、背中にリードを付けたときには引っ張って良
い、胸にリードを付けたときには引っ張らない、と犬に教えることも可能です。
画像:モニーク・プイマン
ハーネスは、犬の体に正しくフィットするものを選びましょう。ハーネスを選ぶときは、
体全体にハーネスの重みが分散される構造で、どこかを締め付けたり、擦れたりしないも
の(特に脇に当たって擦れていないか注意しましょう)を選びましょう。ハーネスでも、スリップ
リードのように、犬が引っ張るとハーネスが締まって不快感や苦痛を与えるものもありま
すので、注意してください。引っ張りを矯正するハルター(犬のマズル部に装着して、それにリ
ードをつけることで犬の動きをコントロールするもの)は首輪とはまた異なる形で犬を怪我させる
可能性があります。リードが張ったとき、犬の首が横や後ろに捻じれるからです。また、
ハーネスの形状によっては、ハーネスが犬の首に当たるものもあります。これでは、首輪
と同じ影響を及ぼすので、ハーネスを装着していることが無意味になってしまいます。
プロング・カラー(ピンチ・カラーとも呼ばれる)は犬が引っ張れないから人道的であると
いう人も多いのですが、プロング・カラー装着時にリードが張ったらどうなるか、ご存知
でしょうか。プロング・カラーの内側に取り付けられた金属のトゲ状の突起物が立ち上が
り、首に当たります。もしこのトゲ状の突起が、ピンポイントで犬の頸静脈や咽頭に当た
ったらと考えると、ぞっとしませんか。ショック・カラー(好ましくない行動に対して、微電流
が流れる首輪)もありますが、これは副作用として行動問題が現れることが考えられます。
多くの国でショック・カラーに対する調査が始まっており、私が住むスウェーデンを始め
ヨーロッパの多くの国で、非人道的な犬具として使用が禁止されています。
【結論として】
画像:モニーク・プイマン
動物の健康と福祉を大切に思う気持ち、これこそが『人道的』なのだとしたら、リード
をハーネスに繋ぐことと、首輪に繋ぐこと、どちらがより人道的であるかは明白です。
首輪での散歩は、愛犬のデリケートで重要な器官が通っている首部に損傷を与え、結果、
他の器官にも影響をもたらし、犬の健康を損なうリスクがあります。そのようなリスクを
冒してまで、首輪で散歩する価値はありません。
画像:エミリー・ラーラム
最後に。首に圧を与えないようにハーネスに変えるだけで終わらせるのではなく、犬と一
緒に歩行トレーニングをしましょう。トレーニングは、犬との楽しい共同作業の一つであ
り、愛犬との絆を強める素晴らしい方法です。
ここで述べたことをどうぞ周りに広めてください。散歩はハーネスで!
画像:エミリー・ラーラム
画像の犬たちは著者の愛犬、トリッシュ、レーシー、タグ、スプラッシュ、キコ。もちろ
ん全員ハーネスを着用しています。
参考文献:
Pauli AM, Bentley, E Diehl, KA, Miller, PE. Effects of the application of neck pressure by a collar
or harness on intraocular pressure in dogs. J.Am.Anim.Hosp. Assoc.2006:42:207-211
Dr. Peter Dobias, DVM’s article ‘Dog collars can cause disease and possibly lead to cancer’
http://www.peterdobias.com/community/2011/07/dog-collars-can-cause-disease-and-possibly-le
ad-to-cancer/
ピーター・ドバイアス博士は 1988 より獣医師として開業していましたが、2008 年にカナダの北バンクー
バーで当時たいへん繁盛していたホリスティックアプローチに基づいた動物病院を譲渡、彼の情熱であ
る、病気予防と自然療法の知識を世間に知らしめる活動を行っています。博士は動物福祉に関する非
営利団体を立ち上げ、ホリスティックアプローチに基づくガンの研究、および、チョークチェーンとプロン
グカラーの危険性を訴える活動を行っています。博士は、みなで協力して、犬が健康で長寿に天命を
全うできる環境作りを目指しています。博士の URL は http://peterdobias.com/、フェイスブックは
www.facebook.com/drpeterdobias です。ぜひサイトを訪れてみてください。
Boyd JS (1991) Color atlas of clinical anatomy of the dog and cat. Mosby, London
Mielke, Kerstin (2007) Anatomy of the Dog In straitforward terms, Cadmos, Germany
Evans, Howard E., deLahunta, Alexander (2004) Guide to the Disection fo the Dog, Saunders,
United States of America
Anders Hallgren, Swedish Vet. Study; Animal Behavior Consultants Newlsttr; July,1992, V.9
No.2.
著者:エミリー・ラーラム
訳者:藤田則子
オリジナルタイトル:Is it harmful to attach a leash to your dog’s neck ?
オリジナル記事 URL:
http://dogmantics.com/2013/07/17/is-it-harmful-to-attach-a-leash-to-your-dogs-neck-2/