分娩後の乳房浮腫を比較する

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2014年8月07日作成
分娩後の乳
分娩後の乳房浮腫を比較する
房浮腫を比較する
酪農家別に乳牛の分娩前後の乳房浮腫(しこり)の程度を比較してみた。その酪農家により
乳房浮腫の程度は大きく異なり、更に初妊牛と経産牛でも浮腫発生は異なる。乳房浮腫の発
生は乾乳期の栄養摂取の影響を強く受け、特に蛋白質(代謝蛋白質)の摂取量に左右される。
乳房浮腫が重度になると、乳房が垂れ下がり機械搾乳が困難となるだけでなく、研究報告に
よればケトージスの発生が高くなり、体細胞数も高くなると報告されている。乳房浮腫が重
度な牛(重度となる牛)は、産後の周産期病発生のリスクが高い牛とも言える。逆言えば、浮
腫の少ない牛を作ることは、周産期病を減らすことにもつながる。
初産牛分娩直前直後の比較
乳房の張り(大きさ)が小さい分娩直前の初妊牛たち
初妊牛でも経産牛でも、分娩前の乳房の張り具合は直接的に乳量に影響する。小さな乳
房ではより多くの牛乳を生産することができないので、初妊牛の乳房の大きさを管理コ
ントロールする事は、牛乳生産にとって極めて重要である。
乳房の浮腫が強く、乳房の張り(大きさ)が不足している分娩直後の初産牛
乳房浮腫がお腹の下部(へそ)まで発生したり、搾乳時に痛みが生ずるようでは乳量は期
待できない。
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良好なる乳房の張り(大きさ)と軽度の浮腫がある分娩直後の初産牛
これくらいの大きさの乳房を期待したいところである。
経産牛の重度な乳房浮腫
経産牛の乳房浮腫は、重度であることが多い。乳房が垂れ下がり搾乳困難となることも
ある。乳房が垂れ下がれる原因は、乳房をつり下げている堤靱帯が、浮腫により伸びる
からである。
陰部にまで及ぶ事例
重度な浮腫の2産目牛
乳房が落ちる
上手くいった2産目牛
下の写真と比較すると良い
血乳になることも多い。
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乳房浮腫の少ない分娩直後の経産牛
栄養のコントロールが上手くいけば、浮腫は少なくなり、搾りきりも良くなる。
分娩数時間前の乳房
乳房浮腫の原因は?(参考 乾乳牛のシミュレーション)
乳房浮腫の原因は、血液中と乳房組織の浸透圧の違いによる。乳房組織は多くの初乳を作
るために、多くの蛋白質を分娩前より必要とする。初妊牛は更に乳房組織自体を作るために、
経産牛よりも早い時期より、より多くの量を必要とする。この蛋白質は血液から供給される
ので、血液中の蛋白質濃度は低下し、その結果血液中の浸透圧は低下する。一方乳房組織で
は蛋白質が供給され、浸透圧が維持される。この浸透圧の違いにより、低い血液側から、高
い乳房組織へと水分が移動する。これにより乳房浮腫が発生する。蛋白質は更に胎児の成長
のためにも必要とされるので、乾乳期間を通じて常に健康を維持する鍵となる栄養である。
初妊牛は、胎児の成長、乳房の成長、そして初乳の作成のために蛋白質の必要量は経産牛
よりも多く、分娩前の早い時期より必要量は増える。このために栄養に気を遣われていない
酪農家では、初産牛の浮腫は経産牛よりも重度となる。
初妊牛と経産牛の分娩前(乾乳期)の栄養は、全く異なると理解すべきである。
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