寄 書 米国の技術史教育の体験と技術史研究環境* 松 本 , , _ , _ , . オ て 寿 * * うに。そうすれば素晴ら しい博物館が生まれ 1 .はじめに るだろう」との指摘をうけた。在学したのは 筆者は 1993年末より 1994年夏まで,スミソ ワシントンに隣接するメリーランド大学の芸 ニアン協会,国立米国歴史博物館( National 術・人文学部,歴史学科の技術史講座であっ Mus eum ofAmeri c a n Hi s t o r y)に客員研究員と た。 して滞在した。滞在した研究室は「電気およ ここでは,学生としてその講座の 内容を紹 び近代物理部門」( Divi si on o f El e c t ri c i t y and Moder n Physi c s)のバーナード 介し,次に技術史研究者の立場から ,米国の ・S フ干ン博 技術史研究環境を論じ,あわせて日本国内へ 士 ( Dr.Bernard S. Finn)の部屋で‘あっ( 足。 の要望を提言する 。 同室は 1964年の米国歴史博物館の創設以来の 伝統ある研究室で、 if>( ~ 2 . メリーランド大学の技術史講座 0 21 概 要 私の滞在した目的は,計測器メーカー横河 『 電機が音| ー画している「計調l j の技術館」 ( 仮称) 当初 1859年メ リーランド農科大学として発 の開設に必要な技術の習得と,電気計器の歴 足し, 1920年にボルチモア専門学校との統合 史を研究することであった。 しかし到着早々, を経てメリーランドナト |立大学としての基礎が フイン博士から「松本に最も必要なのは,技 作 られた。現在では,ワシントンを取り囲む 術の歴史をより深く学ぶことだ。博物館は既 ベ ル ト ウ ェ イ に 隣 接 す る カ レ ッジパ ー ク 存の展示の表面のみを真似することがあって (Cole g ePark)の広大なキャンパスを本部に, はならない。歴史を扱う博物館に欠かせない ボルチモアにもキャンパスを持つ総合大学で 知識として,滞米中に技術史を大学で学ぶよ ある 。 * 1995年 5月 2日受理。技術史教育,エクスターナリスト, アーカイブス,技術史研究環境, スミ ソニアン 1 治会 ** 横河電機(株) 技術館準備室 (1) バーナードフイン博士は電気および近代物理部門の主任キュレータで,米国歴史博物館の創設 以来,電気のコレクションを担当している 。とくに大西洋海底電信,エジソンの研究に詳しく,担当 した大型展示には電気の歴史,情報化時代などがある 。 (2) 松本栄寿「スミソニアン協会 ・アメリカ歴史博物館に科学技術と 社会の活動を見る」, r 電気学会 誌 」 Vol . 1 14 ,N o . 6 ,( 1 9 9 4 ) ,p p .3 5 5 3 5 8は松本の滞在報告である 。 (3) 大学の概要は 1994-95Univ. ofMarylanda tC o l l e g eParkUnder g r a d u a t eC a t a l o gp p .「 XI 5 3 1 0巻 l号 (5 4 ) 技術と文明 学んだのはカレッジパークの芸術 ・人文学 fArtsand Human i t ie s),歴史学科 部(Colegeo (Hi s t o r y)であった。 この学部は多 くの学科 の集合体で,歴史と文化の総合的な学科を学 ぶことにある 。内部は 22の専攻科目に分かれ ており,美術,美術史,中国語,日本語,ラ テン語,仏語と仏文学,独語と独文学,歴史, 音楽,演劇など多様である 。 私は 1994年春学期 (1月一 5月)の歴史学 科に出席した。学生として受講したのは学部 図 1 大学院コース H IS T6 0 9の授業 ( 左端がフリーデル教授、中央右が筆者) コースの HIST-407 「歴史におけ る技術 と 社 会変化」( TechnologyandSoci a lChangei nH i st o r y ) , 1.5時 間 /週 2 回 と , 大 学 院 コ ー ス の D r .S.B r u s h)もあった。ここではメリーランド HIST-609 「科学と技術史の講読」( Readings 大学での体験を通じての技術史教育を論ずる i nt h eHi s t o r yo fS c i e n c eand Technol o g y ) , 3時 が,広く米国内の状況については別の文献を 間/週の二つであった)。両講義とも ロパート 参照されたい。 米国では,技術の社会との関係を重視して ・フリーデル博士( Dr.Robe rtF r i e d e l)の担当 歴史を研究しようとの考え方が 1970年代にな であった。 歴史学科の講義の内容は範囲が広く,地域, って重視されてきた。技術史分野でいわゆる 時代, 軍事, 性別,社会,人種,科学,技術, エクスターナリストと呼ばれる 。 フリ ーデル 家庭などの歴史をカバーしており全部でこの 教授の授業も技術と社会との関連,技術をど (8) 学期でも 85の講義があった。他に科学技術に う社会が選択したかに重点をおいた講義であ 関連する講義にとして HIST-403 「物理学の ったと言える 。以下にその様子を学部コ ース 20世紀における革命」 ( 20 t hCentury R e v o l u- と大学院コースに分けて説明しよう 。 t i o n si nt h eP h y s i c a lS ci e n c e s , Dr. R ,D o e l) と HIST 808「科学と技術史のセミナー」( Semin a rm t h eH is t o r yo fS c i e n c e and Te ch n o l o gy , (4) S c h e d u l eo fC l a s s es,Spri 暗 1 994SecondE d i t i o n , Univ.o fMarylanda tCole g ePark,pp. 79-80 に HISTの説明がある 。 (5) 大学院の案内書は A p p l i c a t i o nandI nf o r m a t i o nf o rI n t e r n a t i n on a lGraduateA p p l i c a n t s , TheUni・ v e r s i t yo fMalyland,Cole g ePark ( Rev.6 1 9 3 ) (6) フリーデル博士はメ リーランド大学で技術史の担当教授であると共に,スミソニアン協会 ・米国 歴史博物館でコントラクタとしていくつかの展示に参加した経験がある 。マテリアル・ワールド(人 工品の世界),サイエンスイン・アメリカンライフ等である 。ま た,米国電子電気学会の歴史センタ (IEEEC e n t e rf o rH i s t o r y)の初代所長であ った。P i o n e e rP l as ti c , Edison旨 E l e c t r i cL i g h t ,Z i p p e rの 著書がある 。 (7) 田中国昭,石井彰三「米国における 科学技術史教育の現状」, r 電気学会電気技術史研究会資料』 HEE-94-12.( 1 9 94 ) . pp.17-25に(財) 研究産業協会の支援で電気学会電気技術史技術委員会が 1994年 度に実施した実地調査報告がある 。 (8) 技術史の研究者にはインターナリスト( I n t e r n a l i s t)とエクスターナリスト( E x t e r n a l i s t)がある 。 インターナリストは,科学技術を内在的な要因で発展するとし,発明発見史的に簡単なものから複雑 なものへと分類学的にあっかう。これに対して,科学技術と社会との関係を重視し歴史を研究しよう とする人々をエクスターナリストと呼ぶ。米国では, 1970年代よりエクスターナリスト的な考えが主 となってきており,スミソニアン協会の米国歴史博物館の最近の展示は,それを反映している 。 54 米国の技術史教育の体験と技術史研究環境( 松本) 2 2 学部 コー ス H IST-407 ( 歴史における技術 The L a t e Greek and (8) Hodges , Hen ry,“ と社会変化) Roman Engine er s and Thei r Devo ti on t o 22 -1 講義の概要と テキス卜 Ma ch i ne r y( 300BC-AD500) ” , T echno l ogy このコースは通常の講義形式で予めテキス f re d.A.Knoph, i nt he Anc i e nt W o r l d , Al ト4冊と論文合本 2怖が指定された。出席者 ( 1 9 7 0) (9) Asht o n , Thomas S’ は約 40名で内女性 1/4,ほとんどが学部の 1 - 2年生であるが,中年の女性も 2名出席し S t an【l ar ds :AnEar ly Moder n Revi s i o n,The ていた。アフリカ系米国人は数名,アジア系 S t anda rdo fL i feo ft heWorkersi nEngl and は松本 l名であ った。 1790-1 830”J ou r n a lo f Econo mic His t o r y , 授業の初めのオリエンテーション時にフリ 1 725( 1 9 4 9 ) ーデル教授からは,テキストは宿題であり授 ls :A s i a , ( 1 0) Pa c e y , Ar nol d, 勺 uns and Rai 業の前に読んでおくこと (授業では説明しない) Bri t ai nandAmerica , ” Te ch n o l o g yi n Wor l d C i vi l iz a t i o n ,MITPress( 1 9 9 0) を求められた。 また, 全体で 90分の授業が春 ( 1 1)Srol e , Carol e , “ A Bl e s si n gt o Mankind, 休みをはさんで 30回あり,中間と 最後のテス 2回の 1 0ページ小論文, and Espe ci aly t o Womankind: The Type - それに授業への参加度 (発言度合い) を加え 9 01 2 0分)と, ト( w r i t er and t he Fem i n iz at i o no f C! er r ic al て評価 をする旨の説明がされた。指定された , ' ’ W omen,Work, Work,Bo s t on 1 860-1920 テキスト (1) (3)と論文合本 (4) 一( 1 3) を v .o f Michigan Pre s s a nd Te chnol ogy ,Uni ( 1 9 9 0) 次に列記する 。 (1) C i p o l la , C a r l o , Cl o c k s and C山 u r e ( 1 2) Cer uz zi ,P a u l , "An Unforeseen Re v o lu - 1 3 0 0 1 7 0 0 ,W.W.Norton& C o . (1 9 7 8) t ion : Comp u t e r s and Expe c t a t i o n s,1 9351 985 , ” I ma gi ng Tomorrow, 188-201 , MI T r,S t e v e n , En・ (2) H i n d le , Brooke & L山 a gi ne so f Change,Smiths on ian I ns ti t u ti on P re s sJourna l ( 1 98 6 ) ( 1 3) Wi n ne r , London,旬。 A r t i f a c ts Have P r es s ,( 1 98 6 ) . ,T e c h n o l o gya ndS o c i e (3) St os s ,R a n d l lE Pol i t ic s? ” , Dae dal us , VoU09, N o .l,Amer- t yi n Twen t ie t h Ce nt u ry Amer i c a , Wads i c a nAcademyo fArtsa ndSci enc e( 1 9 8 0) worthP u b l is h i ngCo. ( 1 9 8 9 ) この講義で取り上げた範囲は,ヨーロッパ の中世から米国の 20世紀初頭に至る技術と社 (4) Sha r p,Laur at i o r l Age Aus t r a l i a n” Human Organiz ’ 会のかかわりあいであ ったと言 える 。テキス V【>Lll,No. 2 , Soci e t yf o r Appl ie d Ant hr o- トの幾っか解説すると, pol ogy. ( 1 9 5 2) (1)は機械時計の 出現が如何に人 々の社会 (5) Ogburn, Wi l l iam F .," How Technology を変えたか,初めは水時計や 日時計より精度 ' ’ Ch ap ter2Te c hno l o CausesS o ci a lChang e, の劣 っていた機械時計が人々の日常や生活を どう変えて行ったか,歓州の時計工業の中心 l 9 5 7 ) gyandS o c i a lChange( , “ Accel e r a t i o n i nS o ci al (6) Hart, Houne l 地の移り変わり ,また中国と日本の受け止め 方はどう異なっていたかに言及 している 。 Cha ng e , ' ’ C apter3 ,i b i d (7) Druc k er ,Pe t e rF .,寸 heF i rs tTechnolo- (2)は米国の産業革命時期について現存す g i c alRevol ut i on andi tsLe s sons , ” Te chno l - る資料,史料の基づい てと りあげ,ヨー ロ ッ ogya ndCul t u r e ,39-46,Soci e t yoft heH is パからの技術移転と米国での発明,米国式工 t o ryofTechnol ogy( 1 96 6 ) 業の勃興について述べているにの内容は現 5 5 J O 巻 l号 (5 6 ) 技術 と文明 ある物,例えば材料,化合物でもよし、。 在米国歴史博物館の常設展示にな っている) 。 ③社会に与えた影響を文献,当時の文書, (3)は 20世紀初頭 までに現代の米国消費者 が享受する近代文明技術がほとんど完成した。 雑誌,新聞,手記などで綴ること (2)論じ方としては次の点に注意して記述 全国郵便個別配達,各家庭水道供給,フラ ッ シュ ・トイレ,冷暖房,近代的百貨店,定価 すること 。 販売,ガラス ・ショ ーウインドウ,鉄骨高層 ④技術革新 ( それが何をしたかを) 。 ビル,公共交通機関,大規模新聞,新聞広告, ①何時,どこでそれが導入されたか。 それらがどう社会的環境を変えたか,自動車 ⑥ その導入の社会的背景と最も重要な社会 での応用を 。 文化,宇宙開発,電子レンジは社会や家庭に ⑦誰が影響を受けたか,どのように影響を どう受け止められたか,などが盛り込まれて 受けたかを明確に。 いる 。 ③何故影響がその形を取 ったと,どのよう (4)は石器の斧が唯一の道具であったオー に我々が理解できるかを 。 ストラリア原住民の世界に,ある時鉄製の斧 が持ち込まれる 。それまで家長のみが石斧を (3)論文は約 10頁 , 2000-3000字で引用は完 作れたが,より優れた鉄製の斧が宣教師や牧 全 な形で,脚注または文末に載せる 。図 , 場主のような欧州人の好意にすがれば誰でも 表の引用もタイトルをつけ原文を明確に記 が入手する ようになった 。家長制度社会で保 述する 。 また正確で綴りミスがなく ,適正 っていた独立制や先祖崇拝が崩れ,変革して な用語をイ吏用すること 。 行った。技術と行為が固有の価値観,既存の 要約すれば,この様な宿題を通して ,学生 社会制度を変えて行くありさまを記した論文 は主題の選定,その掘り下げ,文章の作成の である 。 訓練を受けると考えられる 。 2-2-2 小論文とテス ト 2回目の小論文は「 20世紀の米国の社会変 春休みの直前には中間論文の提出と,春休 化とキーにな った技術」がトピ ック スであ っ みの後には中間テストが待ちかまえていた。 た。作成にあた って指示されたのは次の 2項 その書き方については「トピ ァク は技術の社 目であった。 会的意義に ついての解析の訓練であり ,技術 (4)参考例として の歴史や技術の詳細を述べるのものではな 男性 ・女性の役割変化,政府の役割の変化, い」との注意があった。 労働者と経営者の役割変化,種々の教育の 最初の小論文は 「技術が社会に導入され, 重要制の変化,国際関係の変化,性 ・人種 社会にインパクトを与えた事が文書で残って .民族などの社会グループの定義 ・状態の いる例」をとりあげて内容は, 変化,住居 ・移動性 ・都市 ・地方の分布の (1)次の 3条件を満足するものであること 。 変化があげられた 。 ①導入と 少な くとも最初の社会的な効果が (5)注意事項として下記事項が示された。 ①注目する社会変化と,状況の以前と以後 1 900年以前であること 。 の状態と差を 明確に説明する 。 ①大きさがパン入れより 小 さいもの(約 2. 5 立方フィート, 0. 3立方メート ル以下)で ②話題にする時期と場所を説明する 。 (9) R o b e r tFri e de l“ A Guidet oExams& P a p e r s ,H is t o r y 407,Spr i ng1 994”が配布され,取り組み 方について注意があ った。 ( 1 0)“ F i r s tPaperAssignment’“ S e c ondPape rAs signme n t”なる進め方の指示書があった。総じて注意 事項は,学部コースでは細かな注意事項が与えられが,大学院コースでは簡単に口頭で済まされるこ とが多かった。 56 米国の技術史教育の体験と技術史研究環境 ( 松本) ③関連する技術に主題としている前 ・後の の関係を考察せよ 。「 変化の前」と「後」 変化 と について特徴を描写し,寄与した技術的変 ④誰が,どのように影響を受けたかを説明 化を注意深く述べよ 。 また最後に,明らか する 。 に技術に無関係な重要なものを少なくとも ⑤社会変化と技術変化の因果関係を注意深 一つ拾い出せ。 く解析する 。 ( 1 0)この授業では,社会と技術変化の関係 @現代の問題 ・政治 ・提案ではなく歴史的 を解析するのに幾つかのキーとなる論点を な論文を書くこと 。 C a u s a t i o n)・ あげて来た。 その因果関係 ( 9 世 私の論文は前半,後半をあわせて,「 1 選択( Choi c e)・範囲( E x t ent )に関連した 紀の電気計器の出現から, 2 0世紀のディジタ ものである 。それらの疑問を解く幾つかの ル表示計器に至る歴史で,その中で 3つの革 方法があるが,その中には①可能にする行 新技術あげ,アナログとディジタルの表示を 為とコストの技術の解析, ②一次的, 二次 人々がどう選択して,どう受け止めてきたか」 的 , 三次的効果を解析する方法があ った。 をまとめた。 9 0 0 授業の中から 三つの例を取り上げよ 。 1 中間のテストは事前に全くヒント無しの出 年以前, 2 0世紀,さらに任意の時代をとり, 技術の社会的効果の解析に如何にそれらの 題であったが,最終テストは学生の要望もい れて,予め論ずる 内容を 5題を与え 3題を選 方法が有効に使われたかを示せ。 択する方式をとった。テス トでも文章の正確 ( 1 1)技術は,個人や社会の行動範囲を定め , さ,表現の 的確さ,綴りの正しさも採点に反 新たな機会を提供するなど重要な役割を果 映すると予告されていた。 たしてきた。このことは授業紹介のシラパ 最終テスト時の論ずる問題は,最終授業時 スにも記したが,授業の中でどう理解した に黒板で指示され,次の( 7)(8)(9)より 2 かを述べ,分かりやすい技術の例で説明せ 題 , ( 1 0)( 1 1)より l題選択するものであ った。 よ。少なくとも 一つは 1 8 0 0年以前からとる (7)第二次大戦は 2 0世紀後半に重要にな っ こと 。 た幾つかのキーとなる技術を生み出した。 0 9( 科学と技術史の 社会に最も重要な影響を与えたものは何か。 2-3 大学院 コース HIST 6 講読) 講義と教材から得た問題から述べよ 。 2-3-1 講義の概要と テキ スト (8) Langdon W i nner ( 1 3の論文)は教材で 技術的な産物は政治的な特性を持っている 学部コースと異なりゼミナール形式であっ と主張し,幾つかの例をあげである 。彼の 1名,全員男性,外国人は英国 た。出席者は 1 議論をとりあげ,もう 一つの例を提案せよ 。 人 l名,インド人 l名,日本人は松本 1~,, 技術的な産物が,権力と権威をどう強化す 中国系米国人 1名,残りは欧州系米国人であ るか説明せよ 。 った。40才台以上の者も松本を含め 4名,高 校の教師や研究所勤務者が在籍した。 ( 図 1) (9) 2 0世紀は人々の生活,労働の方法に大 今学期のテーマは 「 1 9 世紀半ばから 2 0世紀半 きな変化をもたらした。住居,旅行,職業 の準備や選択,家事の準備の新しい形式が, ばまでの通信技術の発明,開発とその応用に 2 0世紀後半のアメリカ人の生活を以前とは ついての歴史家,社会学者,人類学者の見識 まったく異なるものにした。授業の教材 ・ を探る」ものであ った。学生は予め示された 講義 ・討議から技術と「都市生活」「家庭 本を参考書と共に読んで、 ,討議の準備をして 生活」「仕事場」のおけるそれらの変化と くることが必須で,準備の内容と討議への参 5 7 1 0 巻 1号 (5 8 ) 技術と文明 (2) C a r l s o n Bernard & Gorman. Mi c h e l 加度合いが主たる評価にな った。 司 中間論文の提出やテストはなか ったが,学 E., A C o g n i t i v eFrameworkt oUnderstand 生には二度二名ずつ組になってクラスの討議 Te ch n o l o g i c a lC r e a t i v i t y . B e l l , Edison.and のために,キーになる質問と背景の素材を用 Te l ephone fromI n v e n t i v eMi nds.Oxford 意することが謀せられた。そのためには予め ( 1 9 9 2) Univ.P r e ss, (3) I s l a e l , Paul ,FromMachineShopt oI n・ 決められた組の学生同志で当番に当たった本 を読みあい,つぎに図書館で、フーッペ i tビュー d u s t r i a lL a b o r a t o r y : Telegraphy and t h e ・ダイジェスト( B o o kR e v iewD i g es t )または Changing C o n t e x to fAmer i c a nI n v e n t i o n, ブックレビュー ・インデ ックス( B o okRe vi e w o h n s Hopkins Uni v. P r e ss, 1830-1920,J I n de x)など を調べて,その本のレビュー の ( 1 9 9 2) 著者を探しだす。ついで掲載されている雑誌 (4) Ai t k e n , HughG.J. . Synt o n yandSpark や,図書館にない場合にはその著者からから TheO r i g i n so fR a d i o ,P r i n c e t o nU n i v . P r e ss ,( 1 9 85 ) レビ、ユー自体を入手して客観的な評価をつか んで,討議の際に使用する題材を組み立てた。 (5) N o b l e . DavidF. AmericanbyDesi gn司 また,まとめた質問などの情報は,予め電 e , Te ch n o l o g y , and R i s eo fC o r p o S c i e口c 子メールでコースの当番の学生が各学生へ送 r a t e C a p i t al i s m , O xford Uni v. P r e ss , 付し,出席者も事前に読んでおく必要があっ ( 1 9 7 9) (6)B i jl 句 r , W凶) eE.,Hug h e s ThomasP. た。当日は教授も出席者の一人であるから本 司 の解説や自分の意見を予め言 う事はなかった。 180分の授業が 15回あり終了が午後 a nd,P i n c h , Trevor F 司 TheS o c i a l Con- s t r u c t i o no fTechnolog i c a lSystems - New 7時で, D i r e c t i o nsi nt h eS o c i ol ogyandH i s t o r yo f それから図書館で参考書を探すことが多か っ r e ss,( 1989) T e c h n o l o g y , MITP た。課題図書自体は図書館にリザーブされて (7) B e n i g e r , JamesR..The C o n t r o lR e v o - いるが,日本人の私には読書量が多く,自分 l u t i o n , HarvardU n i v _P r e ss ,( 1 9 8 6) で持たないと消化出来なか った。 学生と教授聞の連絡も原則として電子メー (8) Y a t e s , JoAnne ,C o n t r o lt h r o u g h Com- ルを使用することが最初に説明され,筆者も m u n i c a t i o n ,J ohns Hopi くi n s Uni v. P r e ss , その手ほどきを受けた。後述するが図書館の ( 1 9 89 ) 検索もコ ンピュータ通信で行うし ,論文の作 (9) Maivi n,C a r o l y n , Whe n Ol dT e c h n o l o - 成もワープロ・ソフトを使うから,学生にと g i e s were New Thi nking a b o u tE l e c t r i c ってコンピュータは必需品であ った。 また検 Communication i n t h e L a t e N i n e t e e n t h xfordU n i v _P r e s s ,( 1988) Cent u r y ,O 索などは 1 - 2時間と長時聞かか ってしまう ( 1 0 )D o u g l as , SusanJ_,l n v e n t i n gAmerican こともあり,米国の電話回線の使用料が安く 有り難か った。指定された図書は Broadcas t i ng 18991922, J o h n s Hopkins (1) Mokeer.J o e l . The Lever o fR i c h es , Univ.P re s s , (1987) T e c h n o l o g i c a l Cr 巴a t i v i t y and Economic P r o g r e s s,O xfordUniv.P r e ss ,( 1 9 9 0) ( 11) N ye, DavidE . , El e c t r i f yi n gAmerica刀g so f a New Technology, S o c i a l Meani ( 1 1 ) Bo okR e v i e wI n de x ,Gal eRe s ea rc hI n c . 2ヶ月毎に発行される 。一般書・専門舎の書籍・定期刊 行物をカバーしている 。 8月,12月版は半年分を含む。印刷物 ・ディスク・テープ・オンラインでも 検索ができる 。 ( 1 2 ) B o o kRe vi e wD i g e st ,H.W.W i s o nC o m p a n y,年一回の発行,米国・カナダ・英国の人文 ・社会科 学・自然科学をカバーしている 。 58 米国の技術史教育の体験と技術史研究環境 ( 松 本) MIT Pr es s,( 1 9 9 1) また , 同時期 に学部 と大学院コー スの双方 r ic anCal l i ng( 12 )F isc her,Cl audeS.,Ame に出席したため,互いの関係がよく 理解でき AS o ci a lH i s t o r yo ft heTe l e pho net o1 940, た。大学院コースでは,学部の講義内容やそ Un iv .ofCal f . Pr e s s ,( 1 9 9 2 ) の知識はすで、に持っているのが前提であった ort ab le ( 1 3) Schi f f er,MichaelBri an, TheP ようで討議の中で よく話題 となった。 2-3-3 科学の歴史哲学の専門家会議 ( Hi s t o r y R a d ioi nAme r ic anL i f e,Un iv . ofArizona Pre s s,( 1 991 ) a ndP h i lo s o phyo fS ci e nc e ,Coloq ui um ( 14 ) He ad r i c k , Dan iel R., The I nv i s i b le 在学した春学期中に大学構内 で科学の歴史 We a p on-Tel ecommuni c at i o n a nd I nt er n ・ a の専門家会議がもた れ , 学生 も出席を 薦めら t i ona l Po l it i cs 18 51-19 45, Oxf o r d Uni v. れた。 2月から 4月末 までの期間に 13回あ り, Pre ss,( 1 9 91 ) 原則 として毎週木曜午後 2時間 で出席者は1 0 (1)は富国と貧困 の差は,持てる金銭量で 数名であった。講演者の研究スピ ーチが終わ はなく ,物とサ ーピスを 作 り出す人間の技術 ると,コーヒーとケーキをつ まみながら全員 的創造力であったとする書, ( 1 0 )はテレピ世 が談話する運営であった。実施された順に列 代の女性の歴史家である筆者が放送の概念の 記するが,講演者の話題から活動内容が理解 始ま りに疑問をもって研究した内容であり, できょう 。 面白い読み物も 多かった 。 (1) Weart, Spenc er,“ Out ofNucl e a r Fi r 巴 2-3-2 最終論文な ど i nt ot he Gl obalFryi ng Pan : Changi ng Im- このコー スで は最後にピブ リオグラフイカ a g e sofS ci enc eandCat st r ophy” ルな論文 ( 文献を網羅 しである論文)の提出が (2) l s l a el,Paul , “ Te l egraphyandAm巴r i can 課題であった。1 0 頁の英文で形式は正式な論 Tr ad it i on” 文として通用す るような形で求められた。内 (3) Br anni gan,Vinc en t, “The Empire has 容は原則と してコースの主題に関連する調査 no Cl o the s:LegalCont r o v er sy and t he I n・ と評論であるが,実際のテーマはそれほどこ v en t ionofRad io " だわらず,教授 と各学生が専門 , 背景を事前 (4) Anderson, J ohn, “His t o ri c al Ori gi ne に相談 して 決める 。軍事 ・教育・ジャーナリ Aer odynamic s. I . Cont r i b u t ion of Otto ズム ・コンピュータ ・自動車と様々であった。 L il i e n thal " テー マ選定 ・内容 ・文章の読みやすさ ・用語 (5) Sumida ,J on," Belsand Whi st le s:N a v ・ .誤スペル ・句読点への注意など全てが学生 alCommunic at i ons , 1776-1994” にとっ ての訓練であ ったと言え よう。最終の (6) Anderson J ohn, " Hi s to r ic al Origi no f 時間 には総合討議があったが,各学生は論文 Aer odynamic s . I I . Con t ri b u t ion of S. P . の 1ページ要約を電子メールで相互に送って Langl e y " おいて ,討議 を行 った。 (7) Ha rr i s on J enny,“ Women i n Mat h and 私の提出 した論文は「定性から定量にいた ? S c i enc e -I st her er oom a tt het o p” る計測 , 電気的現象と発見,電信の時代,電 (8) Car ls on, W . Bernard and Gorman, 気照明の時代 , 交流や電力網供給の時代の要 , “ Und er s t andi n gI nvent i on: TheEx・ Mi cha el 請と計測器」 を,それぞれの時代の計測を文 ampl eoft heTel ephone " 献 にもと づ、いて綴った。この作成にはスミソ (9) S e r t i m a ,I vanVan, “ Bl acksi nSci enc e , ニアンで研究してい た電気計器の歴史の知識 巴n tt oModer n" Anci が大変役だっ た。 ian,“ The or i e s of Ma tt er, ( 10) Yan , Ka時 n 5 9 技術と文明 1 0巻 l号 ( 6 0) Space,andTime i n Anci entCh ina and t h e と様々な人々が見られるが,中でもアジア系 Re a c t i on of Modern Chinese Schol ar st o の学生がわりに多い感じをもった。しかし専 WesternTheor ie s” 攻学科によって好みや志向が異なるのだろう か,工学系の学部などと比較すると歴史学科 ( 1 1) Manning, Kenne th, “ Hi s t ory ofHeal t h は欧州系学生の割合が多いように見受けられ Car eofBl ackAme ri cans " ( 1 2) Shulman, Hol l y,“ A New Strange る。 2 4 2 大学の図書館と資料 Weapono fW a r ・ I nt er na ti onalBroadcast i n g カレッジパーク ・キャンパスには全部で 7 & Amer icanFor ei gnPol i cy, 1 9 2 9 -1 9 4 5” つの図書館があり蔵書は 220万冊,マイクロ ( 1 3) Headr ick, Dan iel.“Tel ecommun ic a ti ons ・フィルム 4 8 0万枚,定期刊行物と新聞 2万 andI nt ernat ionalRel a ti ons” このように学部 ・大学院の講義に直接関連 種,政府関係文書 78万,地図 20万,技術レ のある専門家の話が聞ける機会があり,技術 ポート 2万,を持ち,その専従者は 8 0名も 史研究の先端を知るのに役だ った。 いる 。 2 4 大学の環境と図書館 ブラ リーには蔵書 100万冊,政府関係のドキ 中央図書館にあたるマッケンドリー・ライ 2 41 大学の環境 ュメントと地図,東アジア ・コ レクション カレ ッジノ Tークのキャンノ Tスはワシン トン 6000冊と定期刊行物,メリーランド関係の手 DCの中心地から 1 0マイル,ボルチモアとア 記,書籍,新聞,米 ・独 ・仏文学の稀こう本 ナポ リスから約 30マイルの地点にある 。学生 ( R e a rBook) ,大学の アーカイブス ,などがあ や研究者にとってはそれらの地の図書館や研 る。学部生を主体にするホーンベーク図書館 究施設を利用するのに好都合である 。それに はリファレンス,フィルムなどの非印刷物も は後述するが,ス ミソニアン協会の図書館群 所蔵し,試験シーズンには 2 4時間利用できた。 やジョージ ・ワシントン大学などの他大学の 他に建築学部図書館,美術図書館, 化学図 ほかに,議会図書館,フ ォルジャ ー ・シェー 書館,工学・物理図書館,音楽図書館,図書館 Fol g e rShake spe ar e ) ,国立公 クスピア図書館 ( 学図書館,等がある 。各図書館はライブラリ 文書館,国立医学図書館,農務省図書館,海 アンによる相談以外にもピクター( VI CTOR) er v at o ry) ,特許庁 軍天文台図書館( NavalObs と呼ばれるオンライン検索システムが利用で NI ST) ,ボルチ 図書館,国立標準局図書館 ( き,学生は自宅からでも電子メ ールに使われ モアのプラット ・フリ ー図書館( PrattFree), るテレネットで自由にアクセスができる 。変 メリーランド歴史協会図書館,アナポリスの わったサービスに , 1 1時4 5分まで、開かれてい メリ一ランド記録保存所( HallofRecord)な 、 る「よいつばり」( NightO、, ど政府機関の施設を利用でき る干J J , 話相談窓、口があつて,図書館がしまった後で 米国干土会に共通している事白 であろうが,大 も質問事項を相談できる組織も あった。 学の案内書には学生にも職員にも人種,肌の 特別なアーカイブスなどを除いて,米国の 色,性別,宗教,年齢,身体障害などの差別 図書館には共通していることだが,図書の複 は一切ないことが明記されている 。キャンパ 写は,自分で使用する 限 り,プ リペイド ・カ ス内ではアジア ・アフリカ・アラブ ・欧州系 ードを購入して研究者や職員などに依頼しな ( 1 3) 前掲注( 3) の1 v-v1 ( 1 4) A Gu i det ot heUMCPL i b r a r ie s ( 15 ) Que st 川i s ?TheN i g h tOwl, EnochP r a t tF re eL i b r a ry 60 米国の技術史教育の体験と技術史研究環境 ( 松 本 ) くても自由に複写できる 。棚から取り出して (3)議会図書館 ( L i b ra r yofCong r e s s)の文 見たり , コピーした図書は自分で棚 に戻さず 書センタ ー図書,地図,テープを含め全体 その場に残しておく 。 これは開架式なの で誤 で9000万点,稀こう本室など 収納を防 ぐためでもある 。 (4) 米 国 赤 十 字 ア ー カイブス メリーランド大学には,国際ピアノ ・アーカ ( Ame r i c a n N a ti o n a lRe dCrossArchive s ) イブス,国立歴史保存信託図書,メ リーラ ンド u d e tUm・ (5)ガ ロウ 大学ア ーカイ ブス(Gala 州研究,日本語出版物 1945-49年,米国特許 v e r s町 Arch iv e s ) (6)ジョージ ・ワシントン大学 ・特別コレ 保管図書,政府関係文書と地図,国際連合 ・ 国際連盟出版物などいくつかのコレク ション g eWas h i ng t onUn i ve r si ty ) クション( Geor がある 。第二次大戦後,日本の占領期間の資 (7) ジョージ ・タウン大学 ・特別コレ クシ 料で戦後史の研究には欠かせないものもあ る。 George t ownUn iv e r si t y) ョン ( (8)ハワード大学ム ーアラ ン ド・スピンガ 3.ワ シ ン ト ン DCと ス ミ ソ ニ ア ン 協 会 のアーカイブス dUni v . Moorl andーム研究センター( Howar Spi ng a rm Re s e ar c hCen t e r ) スミソニアン協会に滞在中には,メリーラ (9)国立科学アカ デミー ンド大学の技術史の論文作成と,電気計器の ( l o)ワシントン歴史学会 歴史を研究するため主としてワ シン トン近郊 の図書館,アーカイブスを訪ね歩いた。以下 3-2 スミソ ニアン協会の図書館とア ーカイブ に利用できるそれらの機関と特徴を説明す る。 ワシン トン地区には政府機関が集中し てい ス スミソニアンの図書館は自然史博物館に本 るが,そこに は多 くのア ーカイ ブスもあり且 部があり,全体で蔵書 120万冊, 1 .5万の定期 つ研究者に は聞かれてい る。スミソ ニアンも 刊行物, 4万の稀こ う本, 1800種の文書があ 含めて説明する 。 る。各博物館にはそれぞれ特徴を持った 18の 分館があり ,相互に SIRISと呼ばれるオ ンラ 3 1 ワシントン地区のアーヵィ 丹 イン ・ネットで検索ができる 。主なるものに ワシン トンDCの主 なる アーカ イブス には は国立米国歴史博物館,国立航空宇宙博物館, 次の様なものがある 。 国立動物園,環境研究セ ンター,スミソ ニア (1)スミソニアン 協会アーカイブス, 米国 ン天文物理観測所,熱帯研究セ ンタ ー,国立 歴史博物館のアーカイブス ・セ ンターと他 園芸館,クッパー ・ヒューイ ッ ト博物館,国 の博物館のアーカイブス 立アフ リカ 美術館, 国立郵便博物館などがあ (2)国立古文書館 ( Nat i o n alAr c h川 s )1 400 る。 また,特別コレ クションやア ーカイ ブス 万点の 写真, 200万点の写真, 30億の文書 には次のものがある 。 があ る。近 くカ レッジパーク 地区に分館が (1)スミソニアン協会 アーカイブス( Smiths o・ 設置さ れる予定で あった。 n ianI ns ti t u t i o nArch ives) ( 1 6) Whata r eArchi v e s? :A r c h i v e sCen te rNMAH,J a nua r y1 9 9 3,ワシン トン地区のアーカイブスの 説明もある 。 ( 1 7) Oe hs er,Pa ulH .,TheSmths on i a nI ns ti t u t ion,P ra e g erP u b l is he r s ,1 9 7 0 i t h o n ia nOpportun it i e s-f o rRe s e a川 1andSt u d yi nHi 凶 t o r y -Art・ Sci e nc e ,O f f i c eo fF e l l o w s h i p s ( 1 8) Sm on i a nI ns t i t u t io n,199 3 9 4にスミソニアンのインターン制度,各博物館の研究内容 andGr a n t s ,Sm川 s とスタッフなどが詳細に紹介されている 。 ( 1 9) スミソニアンの年報,Sm i t hs on i a nY e a r1 9 9 3 , Sm i t hs on ia nP r es s,1 9 9 4,p.39. 6 1 1 0 巻 1号 ( 6 2 ) 技術と文明 ・スミソニアン協会の公式記録,遠征・探 HERALDSOFSCIENCE 検,スミソニアンが関わった博覧会の記 副吟棺回,..,回旬曲・-~・M 勧曲。d,掃骨也 録も含む 忌 "I>, ゐ _ , _ , , 防 司, s , 町 企 鱒 " ' " ' 岡山E圃ー ・ジョゼフ ・へンリー( JosephHenry)ペ 瞳 ーパープロジェクトは,諸処に散逸して いるスミソニアンの初代総長の記録を収 集してまとめている ・オーデタイオ ・ピテ’オのインタピュ一言己主主 1 9 6 7年発足,工芸産業館にある 。 砧 ,d 向 印 刷, 一 … 一 (2)国立自然史博物館 ① 国立人類学アーカイブス ( Nat i o nal ” . . Ol \ \ ・ . . . ., , , , , ’" " " ' 附 " " 制 打 ! 1 ' U T I Q , . - -~’一~ Anthropol o g i c a l Archives)ー北米先住民 族の資料では世界最大級,北米言語資料 図 2 スミソニアン・デプナ ー図書館の書 科学の先駆者 ( H e r a l dso fS c i e n c e) など, 1965年発足 科学技術に関する 9000の貴重な書籍,資 ②人類研究ア ーカイブス ( HumanS t u d i e s Archives):民族学的フィルム,ピデオ 料のコレクションである 。アリストテレ の保存, 1 9 8 1年発足 ス,ボイル,チコ ・プラ ーエ,デカルト, ケプラー,ガリレオ,から初期の電気, (3)フリア一美術館とサックラー美術館 ①アジア美術センタ ー: 3万冊の図書があ フランクリン ,ボjレタ,ファラデー,マ り半分は西欧語,半分は中 ・日・アラブ ルコニー,の時代をカバーする 。1976年 .ペルシャ語である 。 創設。図 2に発行書の表紙を示す。 (4)国立米国美術館 ①米国美術アーカイブス :2500以上の米国 美術の歴史的コレクション,インタピュ ③ ア ー カ イ ブ ス ・センター( Archi v e s Center)歴史博物館のアーカイブス ・セ ンターには幅広い米国文化のコレク ショ 9世紀のコレクションも多い。 ー記録, 1 ンがある 。 これらは博物館の収集品を補 ワシントンの本部と,ボスト ン,ニュー う役割も果たしており,とLジソンなど技 ヨーク,サン ・マリノの 3カ所に貯蔵所 術の歴史に関連するもののみでなくデユ を持っている 。 ーク・エリントンのような米国文化を象 (5)国立アフリカ美術館 徴する音楽,写真などのコレクションが ①エリオ ッ ト・エリソフォンアーカイブス 含まれている 。 1982年創設。その幾つか (El io tEl is o f o n Archives)アフリカ美術 を例示すると ・文化 ・環境の 1 0万枚のスライド,写真, • George H. Clark Radioana C o l l e c t 1 0 n フィルム ( R a d i o ) (6)国立米国歴史博物館 聞 l( T巴l e v悶 on • Al lenB.DuMontCole ct 9世紀からの電気関係の雑誌も ①図書館: 1 • Under wood& UnderwoodCole c t i o n ある 。現在,約45万枚のトレード・カタ ・立体写真のガラス乾板 28000枚 ログ ( メーカー別の年代物の商品カタロ • Duke Eli g t on C o l l e c t i on (Musi c手書き グ)の資料化が進行中である 。 の楽譜もある) DibnerLibrary):中世, ②デブ ナー図書館 ( • Ameri can Musi cand Popu la rCul t u r巴に ルネ ッサンスから 1 9世紀にわたる西欧の 関するコレクション 62 米国の技術史教育の体験と技術史研究環境(松本) • HammelC o l l e c t i o n( Hammel& Edison) 4.まと めと提言 • Arthurd’ Arazienの広告写真コレクショ ン メリーランド大学からは,技術の社会との 相互作用について技術がどう社会に選択され, 3-3 電気関係の文書コレクショ勺 また社会にどう影響を与えて来たか,いわゆ 米国内の電気関係文書のコレクションの案 るエクスターナリスト的な考えに基づく技術 内書としては IEEEHistoryCenterが 1989年 史を学んだ。 この考え方は,スミソニアン協 にまとめた SAMCRESTと呼ばれる資料があ る。 これにはアメリカ全土から 1008件のコレ 会 , ( 話国歴史博物館の最近の展示に実現され ている 。 クションが記述されており,ワシントン地区 米国歴史博物館の研究員用の図書館やデブ からは 156件が収録されている 。 ナー図書館には広範囲の科学技術の歴史の図 (1) 放 送 パ イ オ ニ ア 図 書 館 ( Br oa d c as t 書がある 。私もワシントン近郊の幾っか図書 P i o ne e rL i b r a r y)に米国 24件 館も訪れて,電気計器や「はかる」道具の歴 American Woman i n Radio and Tel evi si o n 史的な資料から多くの手がかりを得て,日本 (インターピューテープ,手記)ほか では得難い価値を実感した。 (2)ワシントン歴史学会図書館に l件 この教育体験と研究環境をまとめると Capi t a lTransitCo. の前身の企業記録 (1)技術史教育では学生に大量の図書を読 (3)議会図書館,文書に 50件 ませ,その中から自分の考えを引き出し, A t l a n t i cTel egraphCompanyの記S 景など 物の見方を組立させる 。資料の見つけ方や (4)議会図書館,レア・フ。 ツク室に l件 論文の書き方も細かに指示,体験させる 。 (2)科学 ・技術史の文献が豊富で,既刊書 Bate s, David Homer (Vi c eP r e s胤 n to fW e s t e m Union)の記録 ばかりでなく新刊書も多い。 また,ペー パ (5)国立古文書館に 1 3 件 ー ノ Tックなどで廉価に入手出来る 。 (3)政府機関や大学の図書館や,多くのア Def ence E l e c t r i c Power Administrat10n, FederalPowerCommissionなど ーカイブスが研究者に聞かれており,歴史 (6)スミソニアン協会アーカイブスに 3件 的な研究がしやすい。 ワシントンの中心地 Henry, J o s e p hの文書 , VailTel egraphC o l - は土 ・日にはハンバーガ店は休業だが,大 l e c t i o nなど 型書店はクリスマスも正月も休みなしの年 (7)スミソニアン米国歴史博物館に 52 件 Anglo-American Telegraph 中無休で夜間も開店しており,科学技術史 関係の書籍も豊富に見られる 。 KINKOと Company , HanmmerC o l l e c t i o n( E di s on)など 呼ぶ大型のコピ ー店は 24時間,年中無休営 (8)スミソニアン,テ3ブナ一図書館(D i b n 業で,さらに店内では MAC, IBMなどの L i b r a r y) に 2' 1 牛 Cleavel and, Par k巴r’( J . パソコンが WINDOWSでも DOSでも 10$/ Henryとの電磁石文書を含む)ほか 時間で利用できる 。 ( 2 0 ) B e d i, J o y c eE . ,K l i ne , Ronal dR ,a n dS ems elCrai g ,S o u r c e si nEl e c t ri c alH凶 o ry :A r c h i v e sand Manus cr i p tCole c t i o n si nU.S. Re po si t o ri e s.,C e n t e 1f o rt heH is t o r yo fEl e ct r ic alE n g i n e e r ing , IEEE, 1 9 8 9には資料・文書などのコレクションが紹介されているが,この他に歴史を口述としてインタビ a lH is t or yC o l l e c t i o n si nU.S.Re po si t o r ie s ,1 9 92も発行されて ュー ・テープに残した記録と し て , Or いる。 ( 2 1 ) 高橋雄造「米国スミソニアン研究所滞在報告」『博物館学雑誌』 V o l . 1 9 , No.l-2, ( 1 9 9 4), pp.51-52に米国歴史博物館の展示の特徴について説明されている 。 6 3 1 0巻 1号 ( 6 4) 技術と文明 このように日常生活は不便であ ったが,情 5.お わ り に( 25) 報サ ー ビスの側面は東京より便利であった。 筆者は米国歴史博物館の研究員と,メリー (4)歴史的資料の所在地を網羅した資料や, f 年代的に文献を集積した書籍が, ( ま現金 出版社者から数多く発行されている 。 ランド大学の学生を同時に体験する機会に恵 このような環境は技術史研究者にと って米 で計 6単位を取得できた 。私の ような日本人 国が大変魅力がある社会に映る 。 の若くない技術者にとっても,米国の大学で また技術史と歴史博物館の関係として 学ぶのがそう遠い道ではなかった 。志があれ まれた。幸いにも受講した二つの技術史講義 ば誰でもが可能な社会である 。入学金は 40$ , (5)技術史教育はエクスターナリスト的な 立場から 行 われており,実際の博物館展示 授業料は l講義あたり j 十 | 外居住者 として 1044 にもそれを見ることができる 。 8である 。なお,聴講生でなく学生として受 最後に,技術史研究者として日本の社会へ 講するには TOEFL550点以上が求められる 。 またある時期は,大学の論文作成と電気計 要望 としたいことは (6)明治以来産業の振興を 一途 にはかつて 器の歴史を研究するために,東海岸の図書館 きた日本では,技術の歴史的な資料はそれ やアーカイブスを訪ねる日々をおくり,聞か ほど意識されていない。宮 ・民を問わずそ れた社会に触れることができた。 れらの資料の所在を調査し,周知化 して行 最後に大学で、技術史の指導を受けたメリー くことが望 まれる 。大学や国立の研究機関 ランド大学の ロパート ・フリー デ jレ教授,常 .博物館の図書 ・資料が外部の研究者にも 日頃から 叱時激励されたスミソニアンのバー 開放して欲しい。米国電気電子学会 ( IEEE) ナー ド・フイン博士,東京農工大の高橋雄造 の歴史セ ンターなどの活動にも例があるが, 教授と,技術史の習得と歴史研究の機会を与 日本の学協会が自身で技術史研究を推進す えてくれた横河電機に謝意を表したい。 と共に,開かれた体制 を働きかけて行くべ きであると考える 。 ( 2 2) Finn.BernardS . , TheHistoryofE l e c t r i c a l Te chnologyAnAnno t a t e dBi b l i ography ,G a 1l andP u b 1 9 91 )には 1537件の文献が紹介されている 。 i lc at ion ( ( 2 3 ) Sh町 i s,G e o r g e ,Bibliographyoft heHi storyofEl e c t r o n i c s ,S caredrow P r es s( 1 9 7 2)には 1 820件の エレクトロニクスと電気通信の文献が含まれている 。 ( 2 4 ) Fergus on,Eug eneS . ,Bi bl iography ofHi s t o r yofTechnol ogy,MI TPre s s( 1 968)広い範囲から文献 ogyandCul t u r e誌の 1 9 6 265年に発表された。 を集めており,その一部は Technol ( 2 5 ) 松本栄寿「米国の技術史教育の体験とスミソニアン協会」として 『 電気技術史研究会』 HEE 9 5 4( 1 9 9 5)に口頭発表したが,本論文は技術史教育のみに的を絞り,重点的に加筆してまとめた。 6 4
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