68 - 情報規格調査会

No. 68
2005 年 12 月
目
次
標準活動トピックス:
JTC 1 における情報アクセシビリティの標準化動向 ..................................... 2
高田 秀之((株)日立製作所)
最近の国際会議から:
JTC 1 Special Working Group on Accessibility 会議報告 ....................................... 5
野村 茂豊((株)日立製作所)
SC 17(Cards and personal identification)総会報告 ......................................... 6
谷内田 益義(東京工業大学)
SC 22(Programming Languages, their Environments and System Software Interfaces)総会報告 ... 7
後藤 志津雄((株)日立製作所)
SC 25(Interconnection of Information Technology Equipment)総会報告 ....................... 9
山本 和幸((財)日本規格協会)
SC 28(Office Equipment)総会報告 ......................................................... 11
三橋 慶喜((独)科学技術振興機構)
SC 36(Information Technology for Learning, Education, and Training)総会報告............... 12
仲林 清(NTT レゾナント(株))
解説:暗号アルゴリズムの標準化....................................................... 14
近澤 武(三菱電機(株))
2005 年 12 月以降 国際会議開催スケジュール ............................................ 15
声のページ:
標準化:国家戦略と企業戦略と現場 .......................................................... 16
山下 博之((独)科学技術振興機構)
標準化活動を振り返って .................................................................... 16
野水 泰之((株)リコー)
標準化活動をビジネスに生かすために国家レベルのサポート組織を............................... 17
田渕 治樹((独)情報処理推進機構)
情報処理学会試行標準のページ......................................................... 18
新田 恒雄(豊橋技術科学大学)
編集後記 ............................................................................ 18
<標準活動トピックス>
JTC 1 における情報アクセシビリティの標準化動向
アクセシビリティ SWG 小委員会
主査 高田 秀之((株)日立製作所)
1. はじめに
ISO/IEC JTC 1 では,2004 年 10 月の JTC 1 総会に
おいて,情報技術分野におけるアクセシビリティを検
討する SWG(Special Working Group)(以下「SWG-A」
と略す)の設立が決議された.
ここでは,SWG-A の活動内容について述べるが,理
解に役立つように,まず情報アクセシビリティの国際
動向および国内動向について触れ,次に SWG-A の活動
について説明する.SWG-A 国際会議の報告は,「情報
技術標準ニュースレター」[1][2]に掲載されているの
で,ここでは主に SWG-A の役割,検討内容,検討の方
向性について解説する.
2. 情報アクセシビリティ検討の背景
2.1 国際動向
世界的に急速な高齢化が進んでおり,高齢者や障害
のある人々の情報通信機器へのアクセシビリティ確
保のニーズは高まりつつある.
ISO では,1998 年 5 月に第 20 回 ISO/COPOLCO(*1)総
会(チェニス)において「高齢者・障害者のニーズに
配慮した国際的ガイドライン作成の提案」がなされ,
また 2000 年 6 月には,ISO/IEC 政策宣言として「標
準化業務における高齢者及び障害のある人々のニー
ズの考慮」が発行された.
そして,2001 年には,規格を作成,改訂する際に
高齢者・障害者を含め,誰もが使用できる製品・サー
ビスを提供するための全般的な指針として,ISO/IEC
Guide 71「高齢者及び障害のある人々のニーズに対応
した規格作成配慮指針」が発行された.
米国では,1999 年にリハビリテーション法 508 条
①
基本規格
②グループ規格
(セクターガイド)
の具体的な運用基準として「電子及び情報技術アクセ
シビリティ基準」が制定され,2001 年 2 月からこれ
が連邦政府機関の調達基準となった.この他,情報通
信分野におけるアクセシビリティガイドライン,Web
コンテンツに関するアクセシビリティの確保など,い
ろいろな団体でアクセシビリティが議論されている.
一方ヨーロッパでは,2004 年 10 月に,情報通信分
野における公共調達のためのアクセシビリティ要件
に関する国際ワークショップで,特に米国を参考にし
た法制化の方向付けが議論された.
2.2 国内動向
日本でも他に類を見ない急速な高齢化が進んでお
り,高齢者や障害者への配慮が課題となっている.
日本工業標準調査会(JISC)では,1998 年 6 月に
「高齢者・障害者に配慮した標準化政策の在り方に関
する建議(バリアフリー社会を目指して)」が発行さ
れ,その後積極的な国際活動が展開され,2001 年の
ISO/IEC Guide 71 の制定に貢献した.また,2003 年
6 月には,「高齢者・障害者への配慮に係る標準化の
進め方について(提言書)
」で,
(1)ISO/IEC Guide 71 に基づく体系的な標準の整備,
(2)40 の標準化テーマの提示,
(3)アジア地域及び欧米との連携強化,
(4)アクセシブルデザインフォーラムの設立,
(5)啓発・普及の強化を提言した.
情報アクセシビリティに関する JIS の制定状況に
ついては,「標準化ジャーナル Vol.34」[3]に記述され
ているが,図-1に示すような体系で整備が進められ
ている.
すべての製品・サービスにかかわる基本となる規格
JIS Z8071 高齢者及び障害のある人々のニーズに対応した規格作成配慮指針
グループに共通であるべき機能や指針を示す規格
JIS X8341−1 高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における機器,
ソフトウェア及びサービス−第一部:共通指針
個々の製品・サービスごとの規格
JIS X8341−2 第二部:情報処理装置
JIS X8341−3 第三部:ウェブコンテンツ
JIS X8341−4 第四部:情報通信機器(制定予定)
JIS X8341−5 第五部:事務機器(制定予定)
③製品・サービス等個別規格
図-1
情報アクセシビリティ関連規格
3. SWG-A の活動
3.1 概要
2004 年 10 月の JTC 1 総会の決議を受けて,SWG-A
が設立された.主査および幹事国は米国で,主な支援
団体は ITI(米国:情報技術産業協議会)である.
情報規格調査会では,2005 年 3 月の規格役員会に
おいて,SWG-A への国内対応委員会の設立を決議し,
活動を開始した.正式名称を「アクセシビリティ SWG
小委員会」とし,「技術委員会」の直下に置くことを
決めた.当面の役割として,
(1) 4 月の第 1 回 SWG-A 全体会議(英)への対応,
(2) 7 月のタスクグループ会議(加)への対応,
表-1
(3) 9 月の第 2 回 SWG-A 全体会議(日)の準備,
(4) 国内の IT Accessibility 活動へのインタフェー
スを司ることでスタートした.
SWG-A は,第1回 SWG-A 全体会議を 2005 年 4 月,
英国のシェフィールドで開催し,つぎの 2 つのタスク
グループを設置することを決議した.
・ Task Group 1 on User Requirements(TG1)
・ Task Group 2 on Accessibility Standards
Inventory and Gap Analysis(TG2)
第 1 回の SWG-A 全体会議では,JTC 1 総会で決議され
た次の SWG-A の目的を再認識し,活動計画を決定した.
SWG-A プロジェクトプラン
タスク
フェーズ 1: 準備作業
A.ユーザニーズの更新
B.ユーザニーズと技術分野のマッピング
C.「ユーザニーズの紹介」の作成
D.試行分野と関連する既知の標準リストの作成
E.標準リストのレビューと SDO との調整を要求するかどうかの決定
F.当該 SDO リストの作成
G.SDO のためのユーザガイド作成
H.SDO の適当な人とのコンタクト開始
I.ギャップ分析モデルの再構成
J.ギャップ分析における標準リストの充分性評価基準を決定
K.どこで標準化作業をすべきかを勧告する場合に使う 適当 を定義
L.EC との対話の場の設置
M.プロジェクトプランの更新
N.SWG-A ウェブサイトをよりアクセシブルに改修
O.SWG-A ウェブサイトに参考資料のセクション作成
P.参加者を増やすしかけを検討
Q.JTC 1 の NP 提案用紙に記入することを要求
R.ユーザニーズの有益なインデックス作成
フェーズ 2: データ収集
A.標準プロファイリングの入力を要求
B.NB や他の団体に,標準が充分でない分野や技術を特定するよう要求
C.NB や他の団体に,標準が充分でない NW を検討するよう要求
D.既知の標準に関する情報を標準リストに入力
E.ギャップ分析において,標準リストが充分かどうか決定するメトリックスの適用
フェーズ 3: 試行分析
A.試行分析の実施
B.TG1 会議へ遠隔地から参加
C.試行ギャップ分析のレビュー
D.必要に応じて,データ収集と分析プロセスの見直し
E.追加の技術分野にデータ収集と分析をどのように拡張するか決定
F.最初の成果をいつ,どのように公開するかの決定
フェーズ 4: データ収集とギャップ分析の拡大
A.SWG-A 3 月会議で決まった追加分野の作業完了
フェーズ 5: 最終成果の提供
A.最終成果の JTC 1 総会への提供
B.継続する SWG-A 活動内容を JTC 1 総会へ提案
AHG1∼AHG7: 5 ページ参照
期 限
05.12.30
05.11.15
05.11.30
05.11.30
05.11.30
05.11.30
05.11.30
05.11.30
05.12.30
05.12.30
05.12.30
05.12.30
05.12.30
05.12.30
05.12.30
05.12.30
05.12.30
05.12.30
05.12.30
06.02.21
06.02.21
06.02.21
06.02.21
06.02.21
06.02.21
06.03.21
06.03.15
06.03.21
06.03.21
06.03.21
06.03.21
06.03.21
06.10.02
06.10.02
06.11.10
06.11.10
06.11.10
担 当
AHG4
AHG6
AHG5
AHG3
AHG3
幹事国
AHG2
AHG3
AHG1
AHG1
AHG1
SWG-A 全体会議
P−PLAN ED
幹事国
TG1
AHG7
SWG-A 全体会議
AHG5
AHG3
AHG2
AHG2
AHG3
AHG2
AHG1
TG1
SWG-A 全体会議
SWG-A 全体会議
SWG-A 全体会議
SWG-A 全体会議
P−PLAN ED: プロジェクトプランエディタ
3.2 SWG-A の目的
(1) 多彩な,またユニークとなる機会(ユーザ組織,
ワークショップ,リエゾンの直接参加)に留意して,
ユーザ要件収集の方法を定め,実現する.
(2) 検討作業を進めるために,各会議間で積極的に作
業するメカニズムを決める.
(3) 広く知られているアクセシビリティ標準活動の
一覧表を作成し,公表する.
(4) 自主開発した標準が指向していない領域/技術
を知り,適切な団体に新たな作業を考慮するように働
きかける.
(5) 必要な標準が効力を失わないように,法,政策お
よび指針を追跡調査する.
(6) SWG-A の資料を広く配布し,国際的に評価された
自主開発標準の利用を促進する.
(7) コンソーシアム/フォーラムが希望すれば,その
仕様を定型的な標準化プロセスに提出できるように
支援する.
この目的からわかるように,この SWG-A では規格作
成の作業は一切行なわない.適当な標準化団体が規格
を作成するように促すことと,作成する場合の支援を
実施する.
3.3 日本会議の概況
2005 年 9 月の日本で開催された国際会議(第 2 回
SWG-A 全体会議とタスクグループが開催)において,
Task Group 1 で,情報アクセシビリティに関するニ
ーズがまとまり,今後そのニーズを国際会議報告書[2]
で述べられている 21 の技術分野毎にニーズを分類,
整理することが行なわれようとしている.この作業は
2005 年 12 月までに完了する予定で進められている.
Task Group 2 では,情報アクセシビリティに関す
る標準規格が世の中にどれだけあるか,在庫の整理と
Task Group1で実施されたユーザニーズを現存の標
準規格で規定されている機能とのギャップ分析が行
なわれようとしている.その方法論の実効性を検証す
るために,テストケースとして,コンピュータハード
分野で先行して試行することになった.そのために,
コンピュータハード分野向けのギャップ分析モデル
を各国の規格開発団体に送付し,次回 2006 年 3 月の
第 3 回会議までにその分析結果をまとめる予定であ
る.
また本 SWG-A 全体会議において,2006 年 9 月まで
に SWG-A の達成すべきプロジェクト計画(表-1)が承
認され,その実現のため,各タスクグループ中にいく
つかの Ad hoc が設立された.その Ad hoc の詳細は,
本 NL の<最近の国際会議>での報告[2]を参照された
い.
プロジェクト計画(表-1)によると,大まかな予定
としては,準備作業(フェーズ 1)を 12/末までに終
え,データ収集(フェーズ 2)を来年 2 月 21 日,試
行分析(フェーズ 3)を来年 3 月 21 日で進められる.
ギャップ分析の結果が来年 4 月以降随時公開され,ギ
ャップを埋めるべく,標準化開発団体に働きかけ,情
報アクセシビリティに関する規格化が加速する予定
である.
これに対応し,日本としては積極的に貢献し,まず,
コンピュータハード分野におけるギャップ分析にも
参画し,前述の 21 の技術分野におけるニーズ抽出活
動にも参画,図-1に示す情報アクセシビリティ関連
規格の国際標準化実現に向けて,国内対応委員会が中
心的な役割を果たしていく予定である.
4. おわりに
情報アクセシビリティの標準化動向,SWG-A の活動
状況を述べてきたが,そこから分かるように情報アク
セシビリティに関する標準規格の普及に関して,
SWG-A は国際的な役割を果たすことが期待できる.
一方,国内の普及では,JSA を中心に JIS 規格の整
備が推進され,それを活用した「公共分野におけるア
クセシビリティの確保に関する研究会」の動きが総務
省を中心に進められているが,JEITA の報告書に見る
ように,行政の対応動向として,障害福祉関係者で
JIS 規格「第 2 部:情報処理装置」の認知度は 6%以
下となっており[4],その普及は今いちである.
今,
「新しい e-Japan 戦略」の検討の中で,
「ユニバ
ーサルデザイン化により,誰もが意識することなく安
心して利用でき,その恩恵を享受できる IT 社会」の
実現が議論されている.今後高齢化社会の到来に対応
して,情報アクセシビリティに関連した国際標準規格
の制定加速とその活用,普及が益々重要となってくる.
情報規格調査会の「アクセシビリティ SWG 小委員会」
がその普及に少しでも役立てば幸いである.
<参考文献>
[1] 野 村 茂 豊 : 「 JTC 1 Special Working Group on
Accessibility 会議報告」NEWSLETTER 66(2005.6)
[2] 野 村 茂 豊 :「 JTC 1 Special Working Group on
Accessibility 会議報告」NEWSLETTER 68(2005.12)
[3]経済産業省 産業技術環境局 情報電気標準化推進
室「情報アクセシビリティに関する JIS 制定される」
標準化ジャーナル Vol.34 2004.11
[4]アクセシビリティ事業委員会編「情報通信機器の
ユニバーサルアクセスに関する調査研究報告書」
(社)
電子情報技術産業協会 2005.3
(*1) COPOLCO: Committee on Consumer Policy
<最近の国際会議から>
■ JTC 1 Special Working Group on Accessibility
会議報告
アクセシビリティ SWG 小委員会
幹事 野村 茂豊((株)日立製作所)
1. 開催場所:東京(日)
2. 開催期間:2005-09-12/16(全体会議)
2005-09-13/14(Task Group 2 on Accessibility
Standards Inventory and Gap Analysis ) ,
2005-09-14/15(Task Group 1 on User Requirements)
3. 参加国数/出席者数:5 カ国/41 名
コンビーナ(Karen Higginbottom,米),セクレタ
リ(Jennifer T. Garner, Patrick Morris, 米),米
(6) , 英 (1) , 加 (1) , 仏 (1) , ITI(3) , ITU-T(1) ,
W3C/WAI(1),TC 159/WG 2(1),日(23: 高田秀之[日立],
中野義彦[沖電気],鈴木俊宏[日本オラクル],渡部良
二[富士ゼロックス],垣内良規[富士通],相澤幸一,
勝亦眞人,吉田誠,相澤幸一[METI],寺島彰[浦和大],
山本喜一[慶應大],山田肇[東洋大],関喜一[産総研],
宮崎順朗[JEITA],関達雄,森井秀司[JSA],野村茂豊,
他 7 名)
4. 議事内容
各タスクグループからの報告を審議し,全体会議で
下記の主な項目を決定した.また,ホスト国として歓
迎会も開催した.
(1) ISO/TC 159(人間工学),CEN/ISSS Workshop on
Document Processing for Accessibility, ITU-T SG16
とリエゾン関係を提携する.
(2) EC では公共部門の ICT 製品・サービス購買時のア
クセシビリティ要件を決定する計画があるので,EC
との意見交換を行なう.
(3) 規格の価格,配布に関する手続きは,現行 JTC 1
方針を支持する.
(4) ユーザニーズと既存および開発中の規格とのギ
ャップ分析の対象技術分野を次とする.
1)Web , 2)Communication technology (wired and
wireless),3)Consumer electronics,4)Public access
terminals
including
voting
machines ,
5)Broadcasting,6)Electronic medical equipment,
7)Industrial equipment,8)Transport information
technology , 9)Educational
technology ,
10)Electronic document formats , 11)Embedded
software,12)Ergonomics,13)Assistive technology,
14)Biometrics , 15)Information technology for
learning, education and training , 16)Coding of
content , 17)Computer hardware , 18)Computer
software , 19)Smart media (cards, smart cards,
personnel id.) , 20) Security techniques , data
privacy , 21)User interfaces, ie, input/output,
icons & symbols
(5) ギャップ分析モデルに,ISO/IEC Guide 71(高齢
者及び障害のある人々のニーズに対応した規格作成
配慮指針)のカテゴリで分類する欄を設け,見易くす
る.
(6) ギャップ分析をコンピュータハード分野で,試行
する.そのために,コンピュータハード分野向けのギ
ャップ分析モデルを各国の規格開発者に送付し,ギャ
ップ分析を実施してもらい,次回 3 月会議までにその
結果をまとめる.
(7) JTC 1 NP Ballot Form にアクセシビリティに関
した質問項目を追加する.具体的な文面は,来年 3 月
の会議に間に合うように各国からの提案を求める.
(8) プロジェクト計画の承認
2006 年 9 月末までに本 WG が達成すべきプロジェク
ト計画を承認した.本計画で次回 3 月会議までに予定
された事項を実施するために,次の Ad hoc を結成し
た.各 Ad hoc メンバに日本は登録した.
・ Task Group 1
ユーザニーズ一覧表を再編する Ad hoc(AHG4),
ユーザニーズ一覧表を活用できる組織に紹介す
る Ad hoc(AHG5),ユーザニーズ一覧表を技術分
野毎に分類する Ad hoc(AHG6),ユーザニーズ一
覧表を良くするために参加者を増やす Ad hoc
(AHG7)
・ Task Group 2
ギャップ分析関連事項を実施する Ad hoc(AHG1)
,
(1*)
SDO 一覧表を纏める Ad Hoc(AHG2),規格一覧
表関連事項を実施する Ad hoc.(AHG3)
5. 今後の開催予定
2006-03-16/21 ロサンゼルス(米)
CSUN(2*)と同期して開催.なお Task Group 2 では
集合会議に通信でのリモート参加形態を試みる.
2006-09-18/22 ブラッセル(ベルギー)
6. 今後の日本対応
(1) 各 Ad hoc の活動に参加の日本メンバを支援する.
(2) ユーザニーズ一覧表を JSA, JEITA, CIAJ, JBMIA
に関連した技術分野に分類することを依頼する.
(1*) SDO: Standards Development Organizations
(2*) CSUN: the International Conference on
Technology and People with Disabilities
■ SC 17(Cards and personal identification/カ
ード及び個人識別)総会報告
SC 17 国内委員会
副委員長 谷内田 益義(東京工業大学)
1. 開催場所:サンシティ(南ア)
2. 開催期間:2005-10-05/07
3. 参加国数/出席者数:16 カ国/47 名+リエゾン 3
名(外部 3 名)
議長(Dick Mabbott,英),セクレタリ(Freda Bennett,
英),豪(1),加(2),中(3),フィンランド(2),仏(5),
独(2),マレーシア(2),イスラエル(1),日(3: 寄本
義一[凸版印刷],榊純一[松下電器産業],谷内田益義),
ニュージーランド(2),韓(2),シンガポール(2),南
ア(4),スウェーデン(1)
,英(3),米(10)
リエゾン:VISA(1),ECBS(1),MasterCard(1)
4. 特記事項
第 17 回 SC 17 総会がサンシティ(南ア)で行われ,
日本からは 3 名が出席した.議長の開会宣言に引き続
き,南アフリカ標準局より総会中の運営方法の説明が
あった.議事案 SC 17N2852 に基づいて審議が進めら
れた.日本から NP 提案計画の「Tactile symbols
Self-Mark”点字」に関する提案趣旨が承認され,CEN
の提案を待たずに新規提案を進めることで合意した.
今回の総会に臨み,年間の活動として,日本が規格
に反映するために努力した主要案件,今後影響を与え
る可能性のある案件は,以下のとおりである.
4.1 日本の SC 17 関連規格活動への役職貢献
日本が目指す「多目的 IC カードの利用業務に関す
る追加,削除管理用コマンド」の早期規格化,および
日本の技術を「運転免許証 IC カード」の規格に反映
させるため,国際役職を継続している.
(1) WG 4 ISO/IEC 7816-13(多目的 IC カードの利用
業務管理用コマンド)プロジェクトエディタ: 谷内
田益義(東工大)−2004 年より継続
(2) WG 10(運転免許証)セクレタリ: 榊純一(松下
電器産業)−2004 年より継続
(3) SC 17 総会の起草委員: 榊純一(松下電器産業)
−2005 年新規就任
4.2 日 本 か ら の NP 提 案 「 Tactile symbols
"Self-Mark 点字」に関する処理−決議 542
国内 SC 17/WG 1 は,昨年度から,ID-1 カードのエ
ンボス領域の右下端に点字 3 文字分による,視覚障害
者および高齢者のカード所持者自身が判断できるマ
ークを加工する方法に付き,「共用品推進機構」と国
際標準化提案方法を継続しており,昨年の SC 17 総会
にて,CEN の活動と協調して NP の提案を行うことと
決議された.しかし,CEN での作業が進まないため,
独立に日本より提案を行い,NP として認められれば,
WG 1 が ISO/IEC 7811-1(エンボス文字)に Self Mark
を附属書として追加する改定として審議することと
した.
4.3 IC 旅券(e-MRP)の標準化−決議 540
ICAO/NTWG が中心となり,標準化を進めている
e-MRP(IC 旅券)の技術レポート(ICAO-TR)作成に
は,日本は外務省と共に積極的に参加して旅券への
PICC(近接型非接触 IC)を利用した仕様策定に貢献
してきた.国際的な運用では,このシステムを構成す
る PICC,および運用するデバイス(PCD)の国際互換
性のための統一仕様および品質評価のための試験方
法が必要となる.SC 17/WG 3 では,試験方法に対す
る TF を設けて ICAO の協力の下に標準化を進めており,
昨年より榊 WG 3 主査が TF リーダに就任している.ま
た,3 月には筑波にて国際的な互換性試験も実施して
いる.
今年 ICAO 仕様である ICAO Doc 9303-1 Ed.6 が完成
したことを受けて,ISO/IEC 7501-1 として Fast-track
による投票にかけることとなった.
4.4 BAC の略変更要求−決議 541
ISO/IEC JTC 1/SC 27 で審議されている ISO/IEC WD
24761 では, Biometric Authentication Context
の略語として BAC を規定している.しかし SC 17 では,
IC 旅券で Basic Access Control の略語として既
に BAC を利用し,普及している.同じ BAC が略語とし
て利用されていることは,混乱を招く危険性があるた
め,SC 27 に対して,用語を変更し,BAC を使わない
よう求めることとした.
4.5 Match On Card の作業−決議 547∼551
シンガポールより提案され,既に NP として認めら
れたカード上で生体情報(指紋)の入力・照合を行う
ための作業項目に関して,総会の前に開催された 2 回
の Ad hoc 会議の結果を受けた審議を行った.カード
に関わる仕様に関しては,明らかに WG 4 の作業と重
なるため,WG 11(生体情報)および WG 4(IC カード)
が合同の会議を 2006 年 3 月に開催し,作業内容の再
検討と,それに対応したタイトルを決定する.それに
先立ち,WG 11 コンビーナが基となる文書を作成する.
既存の SC 17 の標準(ISO/IEC 7816 や 24727)との整
合性を確保し,SC 37 で行われている作業項目との協
調を図る.WG 11 コンビーナは提案国であるシンガポ
ールより選出し,セクレタリは南アフリカが行うこと
とした.
5.今後の開催予定
2006 年 10 月 第 2 週
2007 年
(仏)
(独)
■
SC 22 ( Programming Languages, their
Environments and System Software Interfaces/プ
ログラム言語,その環境およびシステムソフトウェア
インタフェース)総会報告
SC 22 専門委員会
幹事 後藤 志津雄((株)日立製作所)
1. 開催場所:Mont Tremblant(加)
2. 開催期間:2005-09-29/10-02
3. 参加国数/出席者数:9 カ国/32 名
議長(米),セクレタリ(米),加(3),英(2),米(2),
韓(2),独(2),蘭(1),スイス(1),日本(4:石畑清[明
大],黒川利明[CSK],木戸彰夫[日本 IBM],後藤志津
雄),他に O メンバのノルウェー(1)
Convener: WG 3 (APL, 加), WG 4 (COBOL, 米), WG 5
(Fortran, 英), WG 9 (Ada, 米), WG 11(Bindings,
蘭[兼]), WG 14 (C, 米), WG 16 (Lisp, 湯淺太一[京
大]), WG 17 (Prolog, 米), WG 19 (FSL, 英), WG 21
(C++, 米),Liaison: Free Standards Group (1, 米),
研究発表: Tienke Egyedi (蘭)
4. 概況
(1) 昨年の SC 22 総会で WG 15 (POSIX)と WG 20 (国
際化) を廃止したので,日本にとっての重要問題はお
おむね解決している.従って,今年は平穏な総会とな
るべきだったが,カナダが妥当性に欠けると思われる
提案を幾つか行っていたので,それらをつぶすのに労
力を要した.カナダ提案のほとんどは,国際化に関す
る作業を改めて行おうとする動機に基づくものであ
る.幸い,日本のほか,アメリカ,イギリスなどカナ
ダ以外の国のほとんどがカナダ案に反対したので,禍
根を残しそうな提案はすべて否決することができた.
日本,アメリカ,イギリスは,十分な時間があったに
もかかわらず,意味のある結果を残すことのできなか
った国際化機能の規格化について,怪しげな提案は極
力排除すべきだとの共通の認識を持っている.
(2) 個々の決議に特に目立つものはないが,SC 22 か
ら見た上部委員会である JTC 1,ITTF,ISO に対する
不満を述べた決議が多かった.規格の無料配布の周知
の不徹底,投票や出版の手続きの遅れ,不要な手続き
の強要(JTC 1 との喧嘩を避けるため決議に入れなか
ったものもある),出版テキストの変更処理の誤り,
Directives の規定への不満,JTC 1 文書の読みにくさ
の指摘,などである.
5. 紛糾があった案件
(1) カナダが POSIX を扱う WG の新設(再設置)を提
案したが,その理由を説明した文書には数々の誤りが
あったため,議長も含めた各国からの総攻撃に合い,
採決に至る前に葬られた.
(2) POSIX の charmap,locale,profile の収集に関
して,POSIX Advisory Group は,Internationalization
Rapporteur Group (I18NRG) が扱うよう勧告した.し
かし,これは I18NRG の守備範囲外であったため,誰
が処理すべきかが宙に浮いていた.結局,Project
Editor に扱い方に関する提案を出させることにした.
(3) カナダは,Linux を扱う WG の新設も提案した.
こちらは,数か国の賛成を得たが,日本,アメリカ,
イギリス,オランダが反対したため,反対多数と見な
され,採決前に廃案となった.日本の反対理由は,PAS
の枠組みで進んでいる規格化に新たな WG が加わると,
規格内容の分裂を招くとするものである.
(4) 規 格 ISO/IEC 15897 ( Cultural Elements の
Registration 手続き)の改訂は,2003 年に投票があ
った後 Project Editor の動きがなく,ITTF によって
自動的に cancel されるところだった.これに気づい
た Project Editor が総会の直前に Disposition of
Comments を提出したため紛糾した.当初の決議案は,
cancel 期限の 1 か月以内に規格最終案を Project
Editor が提出すれば手続きを進める(1 日でも遅れれ
ば cancel する)というものだった.これに対して,
日本をはじめとする数か国は自動的な cancel を待た
ずに SC 22 の意思で cancel すべきだと主張した.結
局,この件は Letter Ballot に回されることになった.
Letter Ballot の間に cancel 期限を迎えることにな
るので,この手続きには疑問がある.
(5) I18NRG の勧告受入れの決議案に関して,カナダ
は全会一致による可決に反対し,投票を要求した.結
果は,カナダが棄権しただけで,他の国は賛成したた
め,賛成多数で決議は成立した.
(6) 誰 が 提 案 し た か は っ き り し な い が ,
Internationalization の議題を毎年の総会に出すべ
しという決議案が出た.日本は,昨年の総会の決議に
同等のものが含まれているとして反対した.裏には
Internationalization に関する無意味な議論や作業
を避けたいという思惑がある.この決議案は投票に持
ち込まれ,賛成,反対とも 4 票ずつで否決された.
(7) WG 3 (APL)を廃止するか否かを問う Letter
Ballot を行なうとの決議案があったが,カナダが反
対したことを受けて,アメリカが Letter Ballot を提
案した.結果として,この決議案は Letter Ballot に
回されることになった.
(8)カナダ Translation Bureau が用語の管理ツールに
関する発表を行い,カナダの体勢や SC 22 でこれまで
行なわれてきた用語収集の作業報告をもとに議論が
行なわれた.用語を統一的に使用すべきであるとの意
見も出たが,現実的でないとする意見が大勢を占めた.
また,用語収集の作業は労力が大きすぎるため,SC 22
としての作業は特に進めないことになった.
6. 特記すべき決議
(1) IEEE 754 の改訂(10 進浮動小数点表現)の作業
が遅れている.この影響を受けて,SC 22 における規
格化(COBOL,C,C++など)にも遅れが生じている.
IEEE 側への申し入れを行なうこと,規格完成の期限
を延ばすこと,SC 22 内の周知を図ることなどの決議
が行なわれた.
(2) ホームページの LiveLink への移行は,技術的問
題があって,必ずしもうまく進んでいない.そのため,
現在の open-std.org のサイトも残すことになったが,
期限を定めるか否かで議論があった.結果的には,日
本として満足すべき結果(1 年を期限とする)になった.
(3) C#や CLI の日本語への翻訳の際に多くの改善点が
発見された.これによって原規格の品質も向上したと
して,感謝する決議が行なわれた.C,Linux,WG 11
など,我も我もという雰囲気だった.一昨年も同様の
決議が行なわれているので,日本としてはややこそば
ゆい感じである.なお,決議文では,カナダ,フラン
スにも同じ理由で感謝している.
(4) 言語の vulnerabilities をまとめた Technical
Report を作成する作業体勢について,またその予想
される成果について,かなりの議論が行なわれた.作
業体勢は Other Working Group(毎年再結成)とし,
他の言語 WG の委員にも参加を要請することになった.
内容は,どのようなものになるか不明だが,言語独立
の部分と言語依存の部分の両方があること,発見され
た問題点を少しずつ書き足していくような進め方に
なること,特定の言語を攻撃するような内容にはしな
いこと,などの説明があった.
(5) 2006 年 2 月に日本で行なわれる標準教育に関す
る workshop が決議に明記された.この workshop を皮
切りとする標準教育に関する作業への支援を SC 22 か
ら JTC 1 に求める.
7. その他の決議:
7.1 JTC 1 Freely Available 文書の明示化の要請
(1) SC 22 が 以 前 に 要 求 し 承 認 さ れ た Freely
Available 文書の一覧表をセクレタリが作成し,ITTF
website に確かに freely available と表示されてい
ることを,Chair が ITTF と一緒に作業して確認する.
(2) 以下の規格を Freely Available 文書にすること
を要求する.
・ ISO/IEC TR 15580: 2001
Fortran -Floating-Point Exception Handling, Type 2,
2nd edition
・ ISO/IEC TR 15581: 2001 Fortran - Enhanced
Data Type Facilities, Type 2, 2nd edition
・ ISO/IEC TR 19767: 2005
Enhanced Module
Facilities in Fortran, Type 2
・ ISO/IEC TR 18015 C++ Performance, Type 3
・ ISO/IEC 10967 (Parts 1, 2)
Language
Independent Arithmetic
(3) 以下の規格が出版されたら,Freely Available
文書にすることを要求する.
・ ISO/IEC 1539:2004 Fortran: COR 1
・ ISO/IEC 10967 (Part 3) Language Independent
Arithmetic
7.2 JTC 1/SC 7 との Liaison 関係の復活
SC 7 からの要請を受入れ,Liaison 関係を復活する.
James Moore を Liaison Officer に任命した.
7.3 SC 22 プロジェクトの進め方
(1) 以下の遅延プロジェクトの 1 年間延期を承認す
る(IEEE 754 の改訂作業遅延によるため).
・ ISO/IEC TR 24732
Extensions for the
Programming Language C to Support Decimal
Floating Point Arithmetic
・ ISO/IEC TR 24733
Extensions for the
Programming Language C++ to Support Decimal
Floating-Point Arithmetic
(2) ISO/IEC 24731 のタイトルを変更する.
"Specifications for Secure C Library Functions"
から"Extension to the C Library - Part 1: Bounds
Checking Interfaces"に変更する.
(3) 以下のプロジェクトを廃棄する.
・ ISO/IEC 15068-2: 1990 POSIX system
administration -- Software administration
・ ISO/IEC TR 14252: 1996 Guide to POSIX open
systems environments
・ ISO/IEC 14515-2: 2004 Shell and utility test
methods
(4) 以下のプロジェクトの廃棄手続きを確認する.
昨年廃棄を決めた次の規格が ISO ウェブには掲載
されている.廃棄手続きを確認する.
・ ISO/IEC 13814: 1998
Generic Package of
Complex Elementary Functions in Ada
7.4 5 年ごとの規格の見直し
下記の 2006 年度見直し対象規格について,担当 WG
からの見直し提案を収集した上で,SC 22 内の 3 ヶ月
投票を行って SC 22 提案を決め,JTC 1 に送付する.
・ ISO/IEC 13751:2001 Extended APL
・ ISO/IEC 13211-1:1995
Prolog -- Part 1:
General core
・ ISO/IEC 8652:1995 Ada
・ ISO/IEC 13817-1:1996
Vienna Development
Method -- Specification language -- Part 1:
Base language
・ ISO/IEC 13886:1996
Language-Independent
Procedure Calling (LIPC)
・ ISO/IEC 10967-2:2001 Language independent
arithmetic -- Part 2: Elementary numerical
functions
・ ISO/IEC 14519:2001
POSIX Ada Language
Interfaces -- Binding for System API
・ ISO 6160:1979 PL/1
・ ISO 7185:1990 Pascal
・ ISO/IEC 10279:1991 Full BASIC
・ ISO/IEC 10206:1991 Extended Pascal
・ ISO/IEC 6522:1992 PL/1 general purpose subset
・ ISO/IEC 10514-1:1996 Part 1: Modula-2, Base
Language
7.5 WG convenor の(再)承認
・ John Reid (UK), WG 5 - Fortran
・ Willem Wakker (NL), WG 11 - Binding Techniques
・ John Benito (US), WG 14 - C
・ Taiichi Yuasa (JP), WG 16 - Lisp
・ Jonathan Hodgson (US), WG 17 - Prolog
・ Herb Sutter (US), WG 21 - C++
・ Charles Stevens (US), WG 4 - COBOL (新任)
7.6 プロジェクトエディタの承認
・ Malcolm Cohen (英): ISO/IEC 1539-1 Fortran
・ P. J. Plauger (米): ISO/IEC 24747 C Standard
Library to Support Mathematical Special
Functions
・ Andrew Josey (英): ISO/IEC 9945 (all parts)
POSIX
7.7 POSIX 関係
(1) POSIX 規格の保守を担当している Austin Joint
Working Group (Open Group,IEEE,SC 22 の 3 者か
らなる)への SC 22 の代表を Nick Stoughton,副代
表を Keld Simonsen とする.
(2) Austin Joint Working Group と SC 22/WG 14 と
が,Liaison 関係を結ぶ.
(3) POSIX 規格と Linux 規格の間の矛盾点を列挙する
Type 3 TR 24715 を DTR 投票にかける.
(4) ISO/IEC 9945-1, 2, 3, 4 をまとめて,POSIX
Package standard とする.
(スイスは反対.)
7.8 Internationalization (I18N)関係
2005 年 3 月の I18NRG 会議の決議(SC 22N3945)をす
べて承認する.(カナダは棄権)
7.9 Grammar Engineering プロジェクト
オランダ代表から,Amsterdam 自由大学の Grammar
Engineering プロジェクトの紹介があり,各 WG がレ
ビューし有効であれば来年の SC 22 総会に報告する.
7.10 Other Working Group の naming
SC 22 内に設置する Other Working Group の名前を,
今後は OWG: <機能名> とする.
8. 今後の開催予定
2006 年
(英)
■
SC 25 ( Interconnection of Information
Technology Equipment/情報機器間の相互接続)総会
報告
SC 25 専門委員会
委員長 山本 和幸((財)日本規格協会)
1. 開催場所:エジンバラ(英)
2. 開催期間:2005-9-30
3. 参加国数/出席者数:21 カ国/41 名
議長(Gunter Zeidler,独),セクレタリ(Walter von
Pattay,独),米(4),独(5),英(5),仏(3),日(3:
宮島義昭[住友電工],
廣瀬直樹[日本 IBM],山本和幸)
,
スウェーデン(2),豪(2),韓(2),中(1),ベルギー(1),
メキシコ(1),アイルランド(1),加(2),イスラエル
(1),スペイン(1),蘭(1),スイス(2),デンマーク(1),
チェコ(1),ノルウェー(1),伊(1)
4. 議事要約
4.1 一般議事
(1) 総会に先立ち 9 月 26 日∼29 日に WG 1,WG 3 が
開催された.なお WG 4 は 27 日∼29 日開催.
(2) 前回,千歳総会議事録の承認
(3) ITU-T とホームネットワークの標準化で審議の重
複がないよう SC 25 からリエゾンレターを出すことを
決定.なおこのような標準化の JTC 1 と ITU に跨る重
複は,日本の宅内情報通信・放送高度化フォーラムが
JTC 1/SC 25 で審議中にも拘わらず,その審議結果を
ITU/SG9 に持ち込んだ事に始まる.
(4) 日本のエコーネットの SC 25 への 2 件の NP 提案
の内,1 件は SC 25 での投票国が半数に達せず,2005
年初めに否決されてしまった.このため提案元はこの
文書を IEC/TC 100 へ再提案し,その結果日本の提案
は IEC で成立した.この件について総会で SC 25 と
IEC/TC 100 との領域が話題となった.このため日本
からセクレタリの管理がまずかったのではないかと
指摘した.これに対し書記は「投票期限がクリスマス
休暇に掛かっていたので」と弁解し,管理のまずさを
認めた.
(5) IEC/TC 46,48 と SC 25/WG 3 の範囲の棲み分け
に関して若干の議論があり,次の点を確認した.
・ IEC では,コネクタや,ケーブル等のエレメント
の規定を行う.
・ SC 25/WG 3 はその規格を組み合わせたシステム
としての規格化を行う.
4.2 WG 1(Home Electronic Systems)関連
(1) ホームゲートウェイ(15045-2),高速映像対応ホ
ームネットワーク(JTC 1 N6417),セキュア通信プロ
トコル(エコーネット提案)の各文書は CD 段階とす
ることが承認された.
(2) KONNEX 規格(CD 150451-2,3-1,3-2)の 3 文書
の扱いは,日米で何としてでも阻止しなければならな
かった(
「4.5」参照).
山本は WG 1 会議で長年世界標準ができなかった構
造を説明し,多標準方式を容認すれば長年の問題が一
気に解決できることを示した.この構造を各国に納得
させた上で,KONNEX 規格の CD 文書の内,各国の規格
に共通する第 1 文書を共通文書とし,KONNEX 規格固
有仕様文書である第 2,3 文書を KONNEX 仕様として容
認した.この上で各国提案も共通文書に追加可能な規
格文書構成を認めさせ,各国の提案も世界標準となる
道を切り開いた.
総会の議決では KONNEX 規格が先んじて FCD 投票に
なったと言うことで波乱無しに通過した.
4.3 WG 3(Customer Premises Cabling)関連
(1) 構内配線の配管経路規格(ISO/IEC 18010)2 版
修正は FPDAM に進むことが承認された.
(2) データセンター用情報配線規格は FCD に進むこ
とが承認された(FCD 24764).
(3) 住宅用情報配線規格(ISO/IEC 15018)のバラン
追加修正は PDAM に進むことが承認された.
(4) IPTG(工業配線システム)の CD 投票のコメント
の審議が終わり,FDC 文書が完成した(FCD 24702).
総会後直ちに FCD の投票になる予定.この議論の中で,
日本から POF(Plastic Optical Fibre)の新しいタ
イプを入れたいとの提案を行った.参加者より,取り
入れることに関しての賛同は得られたが,今回の FCD
に対する Amendment としたいとの結論となり,FCD 投
票が出され次第できるだけ早い時期に NP として提出
することとなった.
(5) 光ファイバケーブルの測定法は FCD 投票でのコ
メントを審議し FDIS 投票に入る(FDIS 14763-3).
(6) 次回会合は,2006 年 2 月,ブエノスアイレス(ア
ルゼンチン)で開催予定.
4.4 WG 4(Interconnection of Computer Systems and
Attached Equipment)関連
(1) FDDI,FC,SCSI 関連の NP,CD 等の規格は順調に
審議通過.なお FC(Fiber Channel)は国内各社が製
品出荷を行っており,今後も主要高速インタフェース
の位置を占め続けると予想され,日本は支持を続ける.
(2) 日本提案の Responsive Link は FCD 投票化が承認
された.なお当初日本の提案は提案段階で若干のコメ
ントのみで内容に大きな反対は無かったため FCD 投
票化が決まっていた.しかしセクレタリが次の「4.5」
で示す CENELEC/KONNEX 規格の FCD 投票に対する米英
の反発を理由に,日本提案も CD 投票段階を経るよう
要求していたことが後に判明した.
(3) HPSB(IEEE1394)の審議は米国が国際標準化の意
志を喪失し 3 年間放置されているので撤回すること
になった.但し日本が引き継ぐことも可能であり,国
内で議論することになった.
(4) 次回会合は,2006 年 9 月ベルリン(独)で開催予定.
4.5 CENELEC/KONNEX 規格の CD 投票問題
2005 年 4 月,SC 25 のセクレタリがドレスデン協定
を理由に KONNEX 規格を WG 1 での審議無しに,突然
FCD 投票に掛けた.
これに対し米,英が反発したため,
6 月に CD に格下げし再投票に掛けた.提案文書は欧
州標準の KONNEX 規格で,これが唯一国際標準となれ
ば,日,米,中等のビル/住宅制御技術分野で混乱と
ビジネスを失う企業が続出することが予想される.当
然日本提案のエコーネット規格も吹き飛んでしまう.
文書はどこにも KONNEX 規格であることは記載されて
おらず,一見汎用的な規格提案のように見えていた.
そのような国際標準とグローバルビジネスがリンク
することや欧州標準であることを理解していない国
が賛成投票を行い,多数決で承認されることを狙った
ものである.結果は,賛成多数で承認された.
いきなり FCD 投票,CD 投票に持ち込んだ手続きに
関しカナダが異議を提出したが,総会ではセクレタリ
が独自に作成した投票用紙の様式に誤解を招く点が
あったとして言い逃れた.これに対し,カナダもそれ
以上の追求をしなかったため,投票用紙に不備があっ
たとだけ議決されてしまった.
4.6 WG コンビーナ改選問題
今回のエジンバラ総会は議長,セクレタリ,コンビ
ーナの改選時期に当たり,WG 1 でも引き続き米国の
Dr.Wacks が継続すると見られていたが,SC 25 セク
レタリは同僚(シーメンス)の Kaijer を会議直前に
対立候補(スウェーデンから)として擁立した.これ
は CENELEC 規格(≒EIB 規格)を強引に世界規格に押
し込もうとするセクレタリの思惑と見受けられた.
この改選は KONNEX の CD 投票問題(KONNEX の単独
世界標準化の危険性)と絡み,日本の利益に反するた
め,現コンビーナの Dr.Wacks を擁護し,新候補の当
選を阻止する必要があった.このため,日本は米国支
持の立場を会議の当初から表明し,中,韓,豪,ニュ
ージーランドの他これまで比較的日本寄りと思われ
る欧州の国にも米国支持を要請した.
総会での投票は 11 対 10 でかろうじて米国コンビー
ナが再選され,日本の利益も守られることになった.
また SC 25 議長 G. Zeidler,セクレタリ W. von
Pattay は継続承認された.ただし,その辣腕ぶりに
敬意を表するものの,その独裁者的運営に疑問を持つ
国も多く,4 年後の改選時期までに幹事国交代の根回
しが必要かも知れない.(日本が立候補したら支持す
ると言う国も現れた)
4.7 新 WG 発足問題
セクレタリの押すコンビーナ候補が落選したため
新 WG 発足を強引に提案した.狙いは新 WG でビル制御
ネットワークの審議を WG 1 から切り離し,新コンビ
ーナの下で,再び KONNEX を単独世界標準化すること
を目論んでいるのは明白であった.これに対する投票
でも7対 10 で否決されたにも拘わらず,新 WG 発足検
討の TF 発足を強引に決めた.
上記の様な審議経過により,今回の総会議決は極め
て異様なものとなっている.
5. 今後の開催予定
2006-09-22 ベルリン(独)
■ SC 28(Office Equipment/オフィス機器)総会報
告
SC 28 国内委員会
委員長 三橋 慶喜((独)科学技術振興機構)
1. 開催場所:北京(中)
2. 開催日時:2005-09-12/16
3. 参加国数/参加者数:8 カ国/50 名
議長(斎藤輝,日,コンサルタント),セクレタリ
(出井克人,日,キヤノン),中(14),米(10),韓(3),
蘭(2),独(1),豪(1),オーストリア(1),日(16:小
渋弘明[コンサルタント],大久保彰徳[リコー],竹信
秀俊[キヤノン],伊藤丘[コニカミノルタビジネステ
クノロージーズ],伊藤哲也[コニカミノルタビジネス
テクノロージーズ],浜田信明[セイコーエプソン],
臼井信昭[PFU],稲垣敏彦[富士ゼロックス],吉田信
司[富士ゼロックスプリンティングシステムズ],大根
田省吾[リコー],桜井穆[JBMIA]堀井和哉[セイコーエ
プソン],三宅信行[キヤノン],宮下隆明[リコー],
武富理恵[リコー],三橋慶喜)
4. 概要
(1) 昨年(第 15 回総会 2004 年 5 月,
ニュルンベルグ,
独)の会議で,次回開催は中国と決められた.その後,
中国内部の組織変更等により開催が一時危ぶまれた
が,時期・場所を変更して,9 月北京開催が実現した.
中国からの参加者が多いことなど,中国の関心の強さ
が伺えた.
(2) FCD 投票へ移行
・ 19799 Method of measuring gloss uniformity
・ 19798 Toner cartridge yield on colour EP
・ 24712 Office color test targets for
measurement of office equipment consumable
yield
(3) FDIS へ移行: 18050 Print Quality Attributes
for Machine Readable Digital Postage Mark
本規格で準拠している反射率測定の基準としては,塗
料用ではなく,プリント用の ISO/IEC 13655 (Spectral
Measurement and colorimetric computation for
graphic arts images )に変更する.
(4) Image Quality Working Group の設立予定:下記
NP 投票が受け入れられたらという条件付.19751: 光
沢度均一性測定について,マルチパート標準として
NP を再提案することを認めた.NP が郵便投票で承認
されれば,審議のため WG を設立する.
(5) Productivity Working Group の設立
・ WD 24734 digital printer productivity
・ WD 24735 digital copier productivity
(6) Advisory Working Group(AWG)使命の確認.こ
れまで AWG の役目の一つであった NP 案の検討はしな
いことになった.
(7) リエゾン関係の解消:JTC 1 SWG アクセシビリテ
ィへのリエゾンは行わないことに決めた.
(8) 日本からの NP 提案が否決されたことの対応
総会終了後に急遽日本の専門家による説明会を開
催し,理解を求めた.
複写機,MFD とプリンタとの 2 つの異なるパートに
わけた,消費電力測定法の NP の再提案を行う.関連
する米国の Energy Star では,各機器の消費電力のラ
ンク付け(多い,低い)のみを目的とした測定法であ
り,絶対消費電力を測定しない,また正確な測定法と
はいえないなど,課題が多いことを指摘する.日本提
案の NP は消費者にたいしても正しい情報の提供が可
能となること,地球温暖化に向けての省エネルギー対
策の一環としても,本提案が有益であることを,世界
に訴え,国際標準化を改めて目指す.
(9) JIS 改訂にともなう IS 文書 ISO/IEC 11160-2:1996
の改訂内容を日本が用意する.(Systematic Review)
(10) 中国は再生モノクロトナーカートリッジに関す
る NP 提案を希望していたが,CEN の動向を知らない
ようである.そこで,中国に対して,CEN/BT/TF 165
文書を勉強すること,中国で開発中の関連標準化文書
(案) を速やかに英訳して情報提供することが課せら
れた.
(11) 最近になって,英国が P メンバとして登録され
たが,今回の参加はなかった.一方,APSEM(Asia
Pacific Seminar)の成果として特筆されることは,
オーストラリアが今回会議に O メンバとして参加し,
国内動向の報告を行ったことである.近いうち P メン
バとして参加することが期待できる.今後とも未参加
のアジア各国が SC 28 へ積極的に参加をするように,
日本から働きかけることが望まれる.
5.今後の開催予定
2006-05 ケンタッキー州レキシントン(米)
■ SC 36(Information Technology for Learning,
Education, and Training/学習,教育,研修のため
の情報技術)総会報告
SC 36 専門委員会
委員長 仲林 清(NTT レゾナント(株))
1. 開催場所:ノースカロライナ(米国)
2. 開催期間: 2005-09-19/23
3. 参加国数/出席者数:11 カ国,5 団体/51 名
議長(Bruce Peoples,米),セクレタリ(Lisa Rajchel,
米),豪(3),加(10),フィンランド(1),仏(4),独(3),
日本(5: 岡本敏雄[電通大,WG 2 コンビーナ],西田
知博[大阪学院大 WG 2 セクレタリ],原潔[ユニシス],
平田謙次[産能大],仲林清),韓(10),ノルウェー(1),
英(5),米(6)
リエゾン: AICC (Aviation Industry Computer-Based
Training Committee), AUF (Agence universitaire de
la Francophonie (Agency of French-speaking
Universities)), CEN/ISSS (The European Committee
for
Standardization/Information
Society
Standardization System), IEEE LTSC (IEEE Learning
Technology Standards Committee), DCMI (Dublin
Core Metadata Initiative)
4. 特記事項
4.1 総会
前回の東京総会以来,懸案となっていた幹事国の交
代について,US から UK に引き継がれることとなった.
次回,2006 年 3 月のトゥルク総会前に交代.UK のほ
か,韓国が立候補していたが,最初の 3 年は UK が幹
事国を務め,その後韓国に引き継ぐ方向で関係者で合
意済みである.
また,UK (BSI)から提案されていた Fast-track 案
件の ISO/IEC DIS 23988 Code of practice for the use
of information technology (IT) in the delivery of
assessments について,10 月から 11 月の間に Ballot
resolution meeting (以下 BRM)が開催されることが
アナウンスされた.エディトリアルなコメントがつい
ているが,ほぼ成立の見通しとのことであった.
4.2 WG 1(ボキャブラリ)
WG 1 は学習支援技術に関する語彙を整理し,ドキ
ュメント間の整合性を高めることを目的としている.
現在作業中の ISO/IEC 2382-36 を 2006 年 3 月まで
に FCD 投票にかけることで合意した.現 CD 中の用語
以上に用語を増やさず,定義を完成させて FCD 化する.
不足の用語については第 2 版で吸収する.
4.3 WG 2(協調技術)
日本がコンビーナ(電通大 岡本)を務め,主導権
を取って進めている WG である.日本がプロジェクト
エディタを務める 2 つのプロジェクト,その他の議論
が行われた.
(1) Collaborative Workplace (FCD 19978-1)
ユニシス 原がプロジェクトエディタを務める.
2005 年 3 月の東京会議後に受けたコメントを反映
した FCD 文書案 SC 36N1103 について検討を行った.
その結果を反映した文書へのコメントは 2005 年 10 月
7 日まで受け付け,FCD 投票案を 2005 年 10 月 14 日ま
でにセクレタリに提出することが決議された.
(2) Learner to Learner Interaction Scheme
(FCD 19780-1)
日立 古賀が,カナダの Norm Friesen とプロジェク
トコエディタを務める.
プロジェクト名を内容に合わせて, Collaborative
Learning Communication と変更することとなった.
現在進行中の 19780-1 は,テキストチャットや電子掲
示板を用いた協調学習のデータ形式の定義に絞った
形 と し , タ イ ト ル も Text-based Collaborative
Learning Communication と変更する.変更の可否に
ついては JTC 1 に確認する.FCD 投票用文書を 2005
年 10 月 14 日までにセクレタリに提出することが決議
された.
(3) Agent-to-Agent Communication (WD 19779-1)
韓国の Tae In Han から WD 文書 SC 36/WG 2N0093 に
関するプレゼンテーションがあり,CD 投票へ向けて
の議論が行われた.それらの議論を踏まえ,次回トゥ
ルク会議までに修正した WD 文書をまとめることが決
議された.
(4) その他
WG 1 から用語 collaborative learning の定義
を行って欲しいとの要請があり,2005 年 10 月 6 日ま
でに,その定義を用意することとなった.
4.4 WG 3(学習者情報)
PDTR 24763 Conceptual reference model for
competencies and other related terms について,
2005 年 9 月に NP と PDTR の投票が行われたが,両者
の区別が明確でなく議論がし難いとの批判が出た.日
本からは,この分野の重要な概念が包含されていない
という主旨の反対投票をしていたが,今回の WG 会議
では,ドキュメントの内容の説明のみで BRM は実施し
なかった.これに関連して,IEEE LTSC WG 20 より
Reusable Competency Definition 規格の説明が行わ
れた.この内容についても議論が紛糾したため,PDTR
24763 の投票結果を受けて 2005 年末までに BRM の準
備をし,トゥルク会議で BRM をおこなうことになった.
プロジェクトの継続についてはその際決定する.
また,韓国よりモバイル用の学習者データモデルの
説明が行われた.これを基にして,モバイル学習に関
する機能と構造; Functional and structural system
aspects of M-Learning について,Study period を設
定し韓国の Prof. Jin を中心として継続検討すること
となった.
その他,ISO/IEC CD 19787 Participant Performance
Information は BRM を継続し,2nd CD 化を図る.NP
24726 Competencies, Impairments and Performance
Metrics についてはプロジェクトの進展が無いため中
止することが決まった.
4.5 WG 4(Management and Delivery for Learning,
Education, and Training)
WG 4 はコンテンツ関連の標準化を行っている.メ
タデータ(19788-1)に関して,Part 1: Framework と
Part 2: Data Elements について議論が行われている.
Part 1 では対象とするデータ項目の範囲,記述の方
式としてどういうアーキテクチャを取るか,Part 2
では記述の対象とするデータ項目に関して議論が行
われている.
今回,Part 1 については,Metadata の定義,およ
び,データ項目のカテゴリ訳分けについて議論が行わ
れ た . Part 2 に 関 し て は Elementary elements,
Pedagogy, Rights, Accessibility, Relation,
Collective/Composite のカテゴリを設けることで合
意した.Part 1 は CD 投票の段階に進めることで合意
し,2005 年 10 月 15 日までに CD を用意する.Part 2
に関しては,プロジェクトエディタからメタデータの
ユースケースに関するドキュメントが提出された.こ
のユースケースを元に WD を作成する.
4.6 WG 5 ( Quality Assurance and Descriptive
Frameworks)
FCD 19796-1 Quality Management, Assurance, and
Metrics - Part 1: General approach は承認され FDIS
化が進められている.
今回の会議では,今後の活動として,
・ Part 2: 品質モデル(Quality Model)
・ Part 3: 参 照 方 法 と 基 準 尺 度 ( Reference
Methods and Metrics)
・ Part 4: 実 践 ガ イ ド ( Best Practice and
Implementation Guide)
の各パートについて,ドイツ,韓国,日本から説明を
行い,Scope,Purpose,Justification を議論した.
エディタは,Part 1 を担当したドイツの Prof. Jan
Pawlowski が,他の Part のコエディタも務め,主担
当コエディタとして,Part 2 を韓国の Dr. Tae in Han,
Part 3 を日本の平田(産能大),Part 4 をフランスが
引き受ける方向で検討が進められた.韓国,日本は引
き受ける方向で確認済み,フランスについては継続し
て検討する.コエディタ会議を次回総会前に実施し,
以後定期的に実施することを決めた.各パートとも
2006 年 3 月に最初の WD を出し,2008 年から 2009 年
の IS 化を目指す.
4.7 WG 7(Culture, Language, and Human Function
Accommodation)
CD 24751 Individualized Adaptability and
Accessibility in E-learning, Education and
Training の BRM を行った.日本からは Part 1∼3 の
ドラフトそれぞれに対して指摘していたが,すべて好
意的に受け止められ,FCD に反映することが決まった.
FCD への準備を進め,2005 年 12 月までに提出する.
CD 19786 Participant accommodation information
は,2nd CD 投票結果受け 3rd CD として 2005 年 12 月
に再投票する.また,CD 24751 と CD 19786 との関連
を明確にする Annex を作成し,次回トゥルク会議で検
討する.
5. 今後の開催予定
2006-03-13/17 トゥルク(フィンランド)
2006-09-18/22 北京(中)
6. その他
SC 36 は議長の再任問題,幹事国の問題などで運営
が不安定な状態が続いていたが,今回,幹事国が UK
に決まったことで,この件については一応の決着をみ
た.一方,運営に関する不効率性については,以下の
ような課題が指摘されている.
WG,プロジェクトが多すぎ,内容が重複している.
スクラッチから始めているプロジェクトが多く進展
が遅い.
これに対して,前回の東京会議で「戦略」
,
「組織」
,
「コミュニケーションツール」に関する議論を行うア
ドホックを設置した.今回も継続して議論が行われ,
12 月をめどに SC 36 の今後の進め方に関する最終的
な報告を出すことになった.また,各 WG に対してプ
ロジェクトの継続の判断が求められた.今回の会議で
は,各 WG から今後のスケジュールの報告を行った.
今後,運営の効率化がどの程度効果をあらわすかに注
目していく必要がある.
<解説:暗号アルゴリズムの標準化>
SC 27/WG 2 小委員会
幹事 近澤 武(三菱電機(株))
1. はじめに
SC 27/WG 2 では,エンティティ認証や鍵管理など
のプロトコルと,ディジタル署名やハッシュ関数など
のアルゴリズムの標準化を手がけている.
暗号アルゴリズムについては,1980 年代(ISO/TC
97/SC 20 の時代)に,米国の暗号 DES (Data Encryption
Standard)の標準化を推進したが,提案国の米国自身
が標準化の中止を申し出て,プロジェクトは中止とな
った.それ以降,近年まで標準化を行わず,ISO/IEC
9979 “Procedures for the registration of
cryptographic algorithms”(暗号アルゴリズムの登
録手続き)に基づいて登録制度を維持してきた.
しかしながら,この登録制度では,全く安全性の評
価がされていない暗号アルゴリズムでも登録が可能
であり,登録された暗号アルゴリズムが ISO/IEC で標
準化されたものと誤解されてしまう問題点があった.
また,米国で DES に代わる暗号アルゴリズム AES
(Advanced Encryption Standard)の選定作業が始まっ
たのを受けて,暗号アルゴリズムの標準化を求める声
が世界的に起こった.
そこで,1999 年に暗号アルゴリズムの標準化の新
規提案がされ,2000 年に新規提案が承認された後,
標準化作業が開始された.
本稿では,暗号アルゴリズムについて概説した後,
ISO/IEC 18033 “Encryption algorithms”(暗号アル
ゴリズム)の標準群を紹介する.
2. 暗号アルゴリズムの種類
暗号アルゴリズムの種別は以下のようになる.
ブロック暗号
対称暗号
(共通鍵暗号,秘密鍵暗号)
こちらも日本では公開鍵暗号と呼ぶのが通常である.
鍵(A)は公開され誰でも暗号化が可能で,鍵(B)を秘密
に知る者だけが復号できる仕組みとなっている.
対称暗号はさらに,ブロック暗号とストリーム暗号
とに大別できる.ブロック暗号は,あるブロック単位
で暗号化/復号の処理を行うものである.一方ストリ
ーム暗号は,鍵ストリームを発生させ 1 ビット(ある
いは数ビット)毎に暗号化/復号処理を行う(通常は
排他的論理和を施す)ものである.
3. 暗号アルゴリズムの標準
本論である,暗号アルゴリズムの標準群 ISO/IEC
18033 について紹介する.
ISO/IEC 18033 は,以下の 4 つのパートから構成さ
れる.
・ パート 1:General(概論)
・ パート 2:Asymmetric ciphers(非対称暗号)
・ パート 3:Block ciphers(ブロック暗号)
・ パート 4:Stream ciphers(ストリーム暗号)
3.1 パート 1:概論
ISO/IEC 18033-1 は,暗号やその種類等の定義,お
よび附属書に暗号アルゴリズムの選択基準が記述さ
れている.2005 年 1 月に出版された.
3.2 パート 2:非対称暗号
ISO/IEC 18033-2 は,以下の 6 つの非対称暗号アル
ゴリズムを規定し,その中の 4 つの KEM(鍵カプセル
化機構:対称暗号で利用する秘密鍵を配送するために
非対称暗号を用いる枠組み)方式は各国提案を基に標
準化された.日本からの提案により,ElGamal 方式に
基づく KEM の一つとして PSEC-KEM と,モジュラー平
方演算に基づく暗号として HIME(R)を掲載している.
2005 年 10 月現在,FDIS 投票の準備中で,2006 年に
は標準が出版される見込みである.
ストリーム暗号
非対称暗号
(公開鍵暗号)
図-1
表-1
暗号アルゴリズムの種別
対称暗号は,暗号化の際に使用される鍵(A)と復号
の際に使用される鍵(B)が同一であることから,その
ように呼称される.日本では共通鍵暗号や秘密鍵暗号
と呼ぶ場合が多い.鍵(A)と鍵(B)の両者を秘密にする
ことにより安全性が保てる.一方,非対称暗号は,鍵
(A)と鍵(B)が異なることから,そのように呼称される.
非対称暗号アルゴリズム
カテゴリ
ElGamal 方式に基づ
く KEM(鍵カプセル化
機構)
アルゴリズム名(提案国)
ECIES-KEM(米国)
PSEC-KEM(日本)
ACE-KEM(ドイツ)
RSA 方式に基づく非 RSAES(スウェーデン,米国)
対称暗号/KEM
RSA-KEM(スウェーデン,米国)
モジュラー平方演算 HIME(R)(日本)
に基づく暗号
3.3 パート 3:ブロック暗号
ISO/IEC 18033-3 は,以下の 6 つのブロック暗号ア
ルゴリズムを規定している.日本からの提案により,
64 ビットブロック暗号の一つとして MISTY1 と,128
ビットブロック暗号の一つとして Camellia を掲載し
ている.2005 年 7 月に出版された.
表-2
ブロック暗号アルゴリズム
カテゴリ
64 ビットブロック暗号
128 ビットブロック暗号
アルゴリズム名(提案国)
TDEA(米国)
MISTY1(日本)
CAST-128(カナダ)
AES(米国)
Camellia(日本)
SEED(韓国)
3.4 パート 4:ストリーム暗号
ISO/IEC 18033-4 は,以下の 2 つのストリーム暗号
アルゴリズムを規定している.日本からの提案により,
鍵ストリーム生成専用アルゴリズムの一つとして
MUGI を掲載している.また,鍵ストリーム生成専用
アルゴリズム以外では,秘匿とデータ認証を実現する
ストリーム暗号の出力関数として MULTI-S01 を掲載
している.2005 年 7 月に出版された.
表-3
ストリーム暗号アルゴリズム
カテゴリ
アルゴリズム名(提案国)
鍵ストリーム生成専用ア MUGI(日本)
ルゴリズム
SNOW 2.0(スウェーデン)
4. おわりに
以上,ISO/IEC 18033「暗号アルゴリズム」の標準
群を紹介した.
プロジェクト開始当初は数多くの暗号アルゴリズ
ムの提案があり,特にパート 2 の非対称暗号とパート
3 のブロック暗号においては,アルゴリズム数を絞る
議論や投票を多く行った.しかし,暗号アルゴリズム
は,各国の暗号政策において重要な位置にあり,容易
に提案アルゴリズムの取り下げはできないため,各国
の合意を得るのにかなりの時間を費やした.最終的に
は,前項で紹介したように,各パートに日本提案の暗
号アルゴリズムが複数掲載され,日本の暗号アルゴリ
ズムの技術水準が高いことを示す結果となった.
また,本プロジェクト全体を見てみると,暗号アル
ゴリズムを提案するだけでなく,苗村 SC 27/WG 2 コ
ンビーナ(情報セキュリティ大学院大)のサポートを
受け,パート 3 のブロック暗号は筆者が,パート 4 の
ストリーム暗号は櫻井 SC 27/WG 2 小委員会主査(九
大)がプロジェクトエディタを務め,標準化推進に日
本が大きく貢献したと言える.
今回の暗号アルゴリズムの標準化作業はほぼ完了
したが,暗号技術や解読技術が進歩しているので,SC
27/WG 2 にて常に技術動向をチェックし,重大な欠陥
が見つかれば,すぐに当該アルゴリズムに対する注意
喚起,あるいは削除するための Corrigendum を発行す
ることが望まれる.
また,総務省と経済産業省が 2003 年 2 月に発表し
た日本の電子政府推奨暗号リストに掲載されていな
い暗号アルゴリズムや,掲載されているが一部仕様が
異なる暗号アルゴリズムも ISO/IEC 18033 に含まれて
いるので,混乱を避けるためにも,両者の差異への対
応が国内で早急に必要であると思われる.
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<2005 年 12 月以降
JTC 1
SC 2
SC 6
SC 7
SC 17
SC 22
SC 23
SC 24
SC 25
2006-11-13/17
2006-01
2005-06-12/16
2006-05-14/19
2006-10
2006
2006
2006
2006-09-22
国際会議開催スケジュール>
Mpumalanga,South Africa
USA
Prague,Czech Rep.
Bangkok,Thai
France
UK
TBD
Europe
Berlin,Germany
SC
SC
SC
SC
SC
SC
SC
SC
SC
27
28
29
31
32
34
35
36
37
2006-05-16/17
2006-05
2006-07-22/23
2006-05-25/26
2006-04-11/03-31
2006-05-29/06-01
2006-02-13/17
2006-03-13/17
2006-07-03/11
Madrid,Spain
Kentucky,USA
Klagenfurt,Austria
Moscow,Russia
神戸,日本
Seoul,Korea
Berlin,Germany
Turku,Finland
UK
<声のページ>
標準化:国家戦略と企業戦略と現場
山下 博之((独)科学技術振興機構)
ここ数年,国際標準化活動の重要性が認識され,
(社)日本経済団体連合会が 2004 年 1 月 20 日に発表し
た「戦略的な国際標準化の推進に関する提言」
( http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/20
04/007.html)において,官民一体となった国際標準
化への取組みが急務であると指摘されているのをは
じめ,政府の総合科学技術会議による「平成 18 年度
の科学技術に関する 予算,人材等の資源配分の方針」
(平成 17 年 6 月 16 日)(http://www8.cao.go.jp/
cstp/output/iken050616.pdf)においても,研究開発
の推進及び実証と共に,その成果を国際標準に反映す
ることを推進するとされている.そして,我が国にお
ける標準化戦略は,知的財産戦略と一体的に進められ
ることが,知的財産戦略本部による「知的財産推進計
画 2005」(2005 年 6 月 19 日)(http://www.kantei.
go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/050926f.pdf)に謳
われている.
このような提言や方針・計画における標準化戦略の
具体的な項目は,戦略的な国際標準化活動の強化と支
援,企業戦略としての国際標準化活動への取組みの促
進,標準化活動を担う人材の育成等が主なものである.
この中で,標準化人材の育成に関して,文部科学省科
学技術政策研究所発行の『科学技術動向』2005 年 6
月号掲載の報告「国際標準を担う人材育成について」
(黒川利明)(http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/
jpn/stfc/stt051j/0506_03_feature_articles/20050
6_fa01/200506_fa01.html)は,我が国における標準
化人材育成の現状認識に基づき,産学連携によるシス
テム化された人材育成施策の必要性を訴えている.
私は,長年の間,研究開発に従事する傍らで,標準
化の現場でも活動してきた.本規格調査会の活動以外
に,民間のフォーラムによる活動にも何回か携わった.
その経験から思うことは,上記のような国家や企業に
おける標準化戦略が具体的な施策となって実行され
る際に,戦略立案者の意図が活動の現場に十分に伝わ
るようなシステムが重要ということである.せっかく
の優れた戦略も,細分化された個々の独立組織でその
担当者の考えのみに基づいて進められることになれ
ば,大きな成果が得られない可能性が高い.戦略的な
国際標準化活動が推進されようとしている最近の動
きを喜びつつ,政策立案側と実行側とを円滑につなぐ
システムへの改革に期待したい.
標準化活動を振り返って
野水 泰之((株)リコー)
2005 年 7 月に標準化貢献賞という栄誉ある賞をい
ただきました.活動を支援してくださった国内委員会
の皆様はもとより,影ながら多くのサポートをして頂
いた事務局の皆様に心より感謝しております.
私は仕事の関係上,静止画像の標準化である SC
29/WG 1 の活動に従事してきました.標準化活動に本
格的に参加したのは,80 年代後半で,
「ファクシミリ
で綺麗な絵を送りたい」というお客様の要求から,算
術符号(後に JBIG となる)に注目したのが始まりで
した.今では想像もつかないかもしれませんが,当時
はまだ 16 ビットマイコンが全盛時代で,インターネ
ットも無い時代です.その直後,「白黒ではなくカラ
ーの画像を送りたい」という要求があり,JPEG の標
準化にも参加させていただくことになりました.現在
でも広範囲で使われている JPEG,JBIG の標準化に貢
献できたことは,私自身,幸運であったと共に,その
ような活動をサポートして頂いた情報規格調査会の
皆様に感謝しております.勝手な思い込みかもしれま
せんが,もし JPEG が存在していなければ,今日のイ
ンターネット社会を築くことはできなかったと思っ
ています.通信路の高速化(ADSL の普及)と JPEG の
組み合わせで,文字データの情報交換しかできなかっ
たネット社会を,画像を使ったストレスのない情報交
換に進化させたことが,急速なインターネットの普及
を導いたと思っています.
標準化活動を通して得た一番のメリットは,多くの
専門家と意見交換できるパイプができたことです.自
分の技術がどのレベルにあるかを常に把握すること
ができ,技術的な面での努力目標を決定するのに大い
に役立ちました.また,技術面ではなく,ここでは書
ききれないほどの,政治的な面での駆け引きを学べた
のも大きかったです.
最後に,標準を制定することはかなりの努力を必要
とするにも関わらず,企業の中での標準化活動に対す
る評価は,それほど高くはないという声をよく聞きま
す.とても残念ですが,利益と直接に結びつくかどう
かわからない標準化作業に関しては,そのような捉え
方をされてしまうのも理解できます.そのような状況
下でも私がこれまで活躍できたのは,私どもの会社が
標準化作業と言うことに対して,きちんと理解を示し
てくれた点が大きいと思います.この点でも,幸運で
あったと思っております.
標準化活動をビジネスに生かすために国家レベルの
サポート組織を
田渕 治樹((独)情報処理推進機構)
「ビジネスにならないので,委員を交代することに
なりました.
」
「しかし,せっかくここまで寄与したの
だからもう少し.」1991 年に ISO/IEC JTC 1/SC 27(情
報セキュリティ技術)の活動に参画して以来,何度,
このような会話をしてきたことか.「標準化などとい
うものは,酔狂な物好きが関与するもの.IT ビジネ
スには無関係.」定期的に実施される企業の業務実績
評価でも,標準化活動に関してはこのような指摘.情
報セキュリティは,個人情報の保護という基本的人権
を保護するための技術という点に共感し,投資効果が
顕著には知見できないために,推進には ISO というお
墨付きが必須であると確信して,情報セキュリティの
ISO 活動に参画したとはいえ,短期間に仲間が次々と
交代し,企業活動としての評価は低いという状況は,
決して心地いいものではなかった.ISO の場でも,出
席者が少なく,2 つの WG をかけもちという状況が 7
∼ 8 年続いた.これでは,標準化をビジネスに活用
するなどということは不可能であろう.
グローバルマーケットの視点でビジネスを捉えな
ければ,発展は見込めないといわれている現在,ビジ
ネスの基盤となる情報技術の ISO は必須である.しか
し,将来の種となる技術分野では,10 数年前に,情
報セキュリティ技術の国際標準化において私が実感
したと同じ状況にあるものが多く存在しているので
はないかと懸念する.花開いたものに投資することは
容易であるが,種に投資することは難しい.しかし,
国際標準化技術は,種に投資してこそ意味を持つ.ビ
ジネス戦略にかかわるからである.標準技術が見えて
きた時点では,技術の供給者は世界規模になり,刈り
取り時点でのビジネスにうまみは無い.種を育ててつ
ぼみにするまでが,標準化の勝負であると同時に,ビ
ジネスの勝負でもある.しかし,つぼみになるまでは,
個人レベルの活動に頼っているのが実情である.
欧米から遠く離れ,英語にはなじめない固有の言語
で育った日本人が,ISO の場で標準化の主導を握るこ
とがいかに大変なことであるかを,自分がエディタと
して,200 ページ弱の標準化文書を 2 年半ほどかけて
作成してみて,はじめて実感した.情報技術は,今後,
ますます拡大していくであろう.しかし,一方では,
種を抱えて,個人的に苦闘している技術者が多くいる
はずである.これらの人が,国際標準化の活動に積極
的に参画し,種をつぼみにできるように,国家レベル
でサポートするための体制整備が急務ではないかと
感じている.
訃音
(社)情報処理学会 情報規格調査会
顧問,第 2 代 会長
高橋 茂 先生(84 歳)
(学校法人 片柳学園 理事)
平成 17 年 11 月 22 日にご逝去されました.生前のご活動に
感謝し,ご冥福をお祈り致します.
<情報処理学会試行標準のページ>
カーナビ用音声入力の性能評価のためのガイドライン:情報処理学会試行標準 IPSJ-TS 0011:2005
学会試行標準/WG 4 小委員会
主査 新田 恒雄(豊橋技術科学大学)
WG 4 小委員会(音声インタフェース)は,音声入
出力を利用する際に起こる様々な問題を,標準化の観
点から解決することを目的に活動しています.この欄
では先に「音声認識のための読み表記」(IPSJ-TS
0004:2003)と「ディクテーションに用いる基本記号に
対応する読み」
(IPSJ-TS 0009:2004)を紹介しました.
今回紹介する試行標準は,カーナビゲーションシステ
ム(以下カーナビと呼ぶ)で利用される音声認識機能
の性能を評価する方法を規定したものです.カーナビ
の音声入力は,十字カーソル等で目的地を選ぶ場合の
ように階層をたどることなく,すぐに入力が完了する
といった利点を持ち合わせています.しかし,カーナ
ビ用音声認識装置は使用環境が多岐にわたる上,操作
方法やコマンド・目的地の呼称などが各社まちまちの
ため,統一的性能評価が困難でした.共通のガイドラ
インが試行標準として提供されると,各社の認識装置
が本来持つ能力を比較することが可能になります.こ
のことは,カーナビメーカーだけでなく音声認識装置
開発各社,およびエンドユーザーにとっても有益と考
えられます.
今回の試行標準では,性能評価方法を示すガイドラ
インとして簡易評価方法と基本評価方法の二つを規
定しました.簡易評価方法は,異なる機種間での性能
比較を可能にすることで,雑誌社などの第三者による
評価に裏付けを与えることを,また基本評価方法は,
メーカー自らがこの評価結果をパンフレットに記載
することで健全な技術競争を生み出すことをねらっ
ています.ガイドラインには,性能評価の際に守るべ
き一定の基準(実験条件,実験手順の詳細)が示され
ています.特に「簡易評価方法」では,誤った使い方
によって,誤った評価が行われることを避けるため,
評価時の負担が小さくなるよう考慮するとともに,自
車の現在地を 新宿−東京都庁 に固定し,多くのカ
ーナビが入力可能と考えられる東京周辺の施設名称
152 箇所を評価用 POI(Point of Interests: 関心地
点)リストとして提供しています.
(詳細は,当調査会ホームページの情報処理学会試
行標準を参照: http://www.itscj.ipsj.or.jp/
ipsj-ts/ts0011/toc.htm
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<編 集 後 記 >
エスカレータに乗る時,立つのは片方側,もう片方
側は歩く人のために空けておく,これは世界的に広ま
っているマナーのようです.
公私問わずよく海外に出かけるのですが,悩み事の
一つにこのエスカレータの乗り方があります.立つの
は右側?左側?そんなの周りを見て乗ればいいじゃ
ない,と思われるかもしれません.もちろん,大勢に
従えば良いのですが,逆側に立っている人も結構いる
場合もあるので,本当はどっちなの?と叫びたくなる
時が多々あります.このような時,国際標準でもあれ
ば悩まずに済む,と仕事柄思ってしまいます.
今,ふと思ったのですが,関東と関西では確か逆だ
ったように記憶しておりますので,国際標準の前にま
ずは国内標準が必要かもしれません.命名「エスカレ
ータ立ち位置基準」
.
こんな変な悩み,考えを持っている人,他におりま
せんか?でも,そもそもエスカレータは立ち止まって
乗るものなのかも??
エレベータについての「悩み事」もありますが,別
の機会に紹介させていただきます.
[Ct 記]
発
行
人
社団法人 情 報 処 理 学 会
情報規格調査会
広報委員会
〒105-0011 東京都港区芝公園 3-5-8
機械振興会館 308-3
Tel: 03-3431-2808
Fax: 03-3431-6493
[email protected]
http://www.itscj.ipsj.or.jp/