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第1章 2006年度・マーケットキーワード編
Ⅱ.再燃するMVNOトレンドと「日本型」の成否
キーポイント
■通信事業者の伝統的ビジネスモデル転換で MVNO の存在に再注目
■ 2G の音声激安 MVNO に悩む欧州。3G 先行の日本ではデータ系 MVNO に期待
■法人開拓/ M2M / FMC ――ガイドライン・事業法改正に向けた動きが本格化
1. MVNOビジネスの再浮上とその動向分析
(1)MVNOの登場とその概要
識されているとは言い難いのが実情である。次項に示すように、
ITUやEUなど各国の行政/規制機関など、それぞれが一応
①MVNOと代理店の基本的な相違点
の定義づけをしているものの、
実際には単なる回線の再販でも
自らは無線ネットワークに関わる大々的な設備を持たず、移
MVNOにカウントされているケースも少なくない。
動通信オペレータの無線インフラ設備を借り、
エンドユーザー
に携帯電話サービスを提供する「MVNO」
(Mobile Virtual
②多種多様なMVNOの定義とその曖昧さ
Network Operator:仮想移動通信事業者)は、
1990年台後
ITUの解釈では、移動サービスを提供するが自己の無線周
半に欧州で相次いで登場した。
波数を持たない者で、かつ移動サービス業者または付加価値
一般的に、公衆向けの無線通信サービスの免許を受けられ
サービス業者であることとし、
また自己のネットワークコードを
る通信事業者(MNO:Mobile Network Operator)は、数
持つことができ、SIMカードを発行できるとしている。
これに対
社程度であるが、MVNOのスキームであれば、周波数免許や
し、英国の規制当局である旧OFTELによれば、MVNOは移
インフラ設備のない企業でも、
無線通信サービスを提供するこ
動サービス提供組織であるが、
自己のSIMカードは発行しない
とが可能となる。その意味では、NTTやADSL事業者などの
と定義している。
一方では、
同国調査会社オバムのように、
自己
回線設備を借用し、エンドユーザーにサービスを提供するISP
の無線周波数を持たずに移動サービスを提供し、
自己のSIM
のポジションに似ている。
カードは発行し、
自己の網コードを持ち、
自己の移動交換局を
通信事業者から一定の周波数帯域を大口で仕入れるなどし
持つ組織である――という具合である。
て、
サービスをユーザーに再販するリセラーとの一般的な相違
やっかいなのは事業の形態や目的、
インフラの借り方などが
は、MVNOが何らかの独自サービスを付加してサービスを提
多種多様であることから
(図表1)
、
あまりにも綺麗にカテゴライ
供する点にある。
ズすることが、
かえって本質を見誤らせる要因にもなり得る。
また、
日本に関していえば、携帯電話ショップや事業者の販
例えば、国内でPHSによるMVNO事業を展開している日本
売代理店の業態と異なるのは、MVNO自身が直接ユーザーと
通信によれば、
彼らが海外で同ビジネスを語る時、MVNOとい
契約を結んで自らのサービスを提供するのに対し、
ショップや
う言葉は避けているという。国内では、
法人に向けたPHSデー
代理店はあくまで事業者のサービスを仲介するにとどまってい
タ通信ソリューションを展開する同社だが、
データ通信サービ
る点である。つまりショップや代理店は、事業者とユーザー間
スを行うMVNOがほとんど存在しない海外において、MVNO
の契約の仲介を行うに過ぎない。
は音声ベースの安売りオペレータというイメージが強烈で、同
さらにMVNOは事業者から回線を借りて、
言い換えれば
「仕
入れ」て、独自の事業を行うため、端末のみならず回線につい
社の付加価値サービスに対する理解がなかなか得られない、
とこぼす。
ても、
ある種「在庫」の概念が生ずる。
これに対し、
ショップや
今後の無線通信市場において、MVNOの果たす役割が一
代理店はあくまで仲介役であるから、回線に対する在庫の概
定のウェートを占めると見込まれる現在、曖昧な定義のまま
念という感覚は基本的に存在しないか、
あるいは「どんぶり勘
MVNOの存在意義を云々するのは、
これからを展望する上で
定」的な要素を見い出すことができる。
議論の混乱を招きかねない、
とも懸念されるのである。
以上がMVNOの基本的な概要であるが、実際のところは
MVNOについての明確な定義をもってして、国際的に共通認
84
モバイルインターネット要覧 2006
ちなみに、本稿では一応の目安として、①無線インフラを借
用している、②サービスに何らかの付加価値を付随している、
みほん
第1章 2006年度・マーケットキーワード編
図表1 インフラからサービス提供までの流れとカバー領域
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※出典:情報流通ビジネス研究所
③最終ユーザーに対して直接サービスを提供している、
④自社
で料金体系を設定し、料金請求や回収も基本的に自社で行う
――ことを前提とした。
③英国・旧OFTELによるMVNOの定義
英国通信行政当局OFTEL
(現OFCOM)の諮問文書
(1999
年6月)では、
同国における携帯電話の事業形態について、
①移
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ションズや、英国のヴァージンなどが産声をあげた頃でもあり、
OFTELのそれは、
ごく初期段階におけるMVNOの定義とい
うことができるだろう。
④フランス・旧ARTにおけるMVNOの分類
後に見るように、
フランスでは既存オペレータとMVNO参入
希望企業との交渉が次々と不発に終わり、その後も事業者の
動通信事業者の直販部門、②事業者系列のサービスプロバイ
寡占性やそれに関わるMVNO参入の是非を巡る曲折を経て、
ダ、③独立系サービスプロバイダ、④間接アクセス、⑤MVNO
2004年6月にようやくMVNO第1号が誕生している。
――の5つに分類している。
2001年11月、
フランスの行政当局ART
(現ARCEP)に所属
英国では、携帯電話の自由化に伴い、
当初10年間は事業者
する無線通信諮問委員会は、MVNOに関する報告書を発表
によるエンドユーザーへの直接販売が認められず、上記の②
し、そのなかでUMTS事業に対するMVNO参入の積極的推
~④のようなサービスプロバイダ経由のサービス提供形態が
進を掲げていた。
採られていた。MVNOは、
そうしたサービスプロバイダの業態
同委員会ではMVNO事業の形態を、①サービス業者、②自
と差がないようにも見える。が、MNOへのアクセス番号をダイ
社のSIMカードを保有する小規模携帯電話事業者、③既存加
ヤルする必要もないことから、
ユーザーサイドからすれば、
あた
入者を持つMVNO、④バックボーンを持ちMVNOに進出する
かもMNOと同様のサービスを利用している格好となる。
この点
業者――の4つの種類にカテゴライズしている。
が
「仮想事業者」と表現されるゆえんである。
この報告書では、
UMTSの成功は革新的サービスの提供
ただ当時は、
それまでのサービスプロバイダが淘汰されてい
にかかっており、そのためにUMTS事業者は他のサービス
くなかで、
ひとつのビジネスモデルとしてMVNOという形態が出
業者やコンテンツプロバイダとの提携が必要になると指摘し
てきた――といったような側面も垣間見られ、
事業形態の境界
ている。さらにMVNOは、サービスの多様化と充実化に貢献
がさほど明瞭に線引きされているわけでもなかったように映る。
し、
UMTSの発展に寄与すると述べている。また、事業者に
MVNOの嚆矢とされるノルウェーのセンス・コミュニケー
よってはUMTSのインフラを自社で全て活用するわけでなく、
モバイルインターネット要覧 2006
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携帯電話のスロットに差し替えることで、
ユーザーが事業者を変
みほん
更したり、
TPOに合わせて好きな端末を使えるようになってい
が、
不発に終わって1999年3月には会社清算という事態まで追
る。
い詰められたものの、復活を果たしてノルウェーのMVNOとし
第1章 2006年度・マーケットキーワード編
MVNOを活用することによってネットワーク稼働率を引き上げ
ることも可能と指摘した。
ただ、
この報告が提出された当時は、MVNO参入促進のた
めのルールを設ける必要はないとも述べ、さらにUMTS事業
者の方がMVNOとの交渉上、優位に立つ可能性があるとしな
がらも、
大企業の参入も考えられることから、
両者間において均
衡の取れた交渉は可能としていた。
その後ART(ACEPTに名称変更)は、
他のEU諸国に比し
て、
フランスにおける市場競争が進展していないことなどを背
景に、既存事業者に対するMVNOの開放義務化の方向に舵
を切ることとなったが、規制化の前にMVNOが続々と登場し
たことや、それを考慮したEUからの指導もあって、MVNOに
対するネットワーク開放規制という“矛”は収められる格好と
なった。
な通信事業者の直営店もある。
つまり欧州の場合、端的に言えば、SIMの発行やその後の
チャージができるような体制さえあれば、MVNOという形で
携帯電話サービスを展開すること自体は、比較的簡単にでき
る事業環境にある。
もちろんMVNOによっては、
通信事業者と
同じ端末を調達し、
ロゴだけ変えたMVNO独自ブランドとして、
SIMと一緒に販売するケースもある。
欧州でMVNO参入が以前から多く見られたのは、
こうした
大きな背景が存在している。
先に挙げたように、MVNOの数が目立つ英国などは、携帯
電話の自由化に際し、
当面の間は携帯電話事業者が直接エン
ドユーザーにサービスを提供することが禁じられ、
リセラー
(再
販業者)を経由したサービスの流通形態が採られていた。
この
ことも、その後同国でMVNOが多く存在するようになった遠
因といえよう。
(2)欧州の市場環境とMVNOの発祥
②センス・コミュニケーションズの誕生とその目的
①GSMの普及とプリペイド比率の高さ
欧州では世界初のMVNOが登場し、また他の刻や地域と
比較してMVNOの参入が多く見られる。欧州の場合、現在で
も多数を占める2GのGSMやその発展版GPRS、そしてGSM
のコアネットワーク(GSM-MAP)をベースにした3GのUMTS
(W-CDMA)の携帯電話が採用されている。
これらの方式では、基本的に「SIM」
(Subscriber Identity
Module)や「U-SIM」といった、
切手大の加入者識別カードを、
加えて欧州は他の地域と比べて、
プリペイド・サービスのユー
世界初のMVNOといわれているのは、ノルディック諸国に
おける固定から移動までの総合通信サービス提供を目的に、
1996年にノルウェーで合弁会社として設立されたセンス・コ
ミュニケーションズである。同社は、総合通信サービス実現の
ためには、
自社のSIMを発行するとともに、顧客管理のための
システムを構築する必要がある。
そこで同社は、
ノルウェーのテレノールやスウェーデンのテリ
ア、
デンマークのソノフォン(いずれも当時の名称)といったオペ
レータと、携帯電話インフラの借用について交渉を行ってきた
て現在にいたっている。
ザー比率が高い。あらかじめ通話度数の入ったプリペイド用の
センス・コミュニケーションズにおける所期の目標は、
今でい
SIMカードを買ってきて端末に差し込むような使い方が普通で
えば
「FMC」
(Fixed Mobile Convergence:固定と移動の融
ある。通話度数がなくなったら、パソコンなどでのオンライン
合)を実現するための、
スキーム構築手法としてのMVNO参入
チャージをすることで継続して使えるようになっている。
形態に類すべきものといえそうだが、
目的こそ異なるものの、英
このことは、携帯電話の回線と端末が分離されていることを
国やノルウェー、
フィンランド、
デンマーク、オランダ、
アイルラン
意味している。規格上、
W-CDMA方式ではU-SIM搭載が必須
ドなど、
欧州諸国ではこれを契機にMVNOというビジネスモデ
事項となっているが、
日本の場合U-SIMは事実上“封印”され、
ルが登場することとなった。
携帯電話ショップで回線と端末が一体的に販売されているこ
とは、
いうまでもない。
とりわけ1999年、英国において登場したヴァージン・モバイ
ルの成功は、MVNOのさらなる参入を促すとともに、携帯電話
欧州のように、
回線と端末が基本的にアンバンドルされてい
市場における一定のプレゼンスを確立させた。同時に、市場に
るということは、
いろいろな携帯電話サービスの販売チャネル
おけるMVNOの存在意義や役割について、
レギュレータサイ
や販売方法が可能だということを意味している。SIMだけを売
ドでもさまざまな議論が交わされるようになっていったのであ
るところもあれば、
日本のように端末と回線をセットで売るよう
る。議論の多くは、競争市場における既存オペレータとの関係
86
モバイルインターネット要覧 2006
みほん
第1章 2006年度・マーケットキーワード編
や、MVNOに対するネットワーク接続の義務化といった規制
に関する内容であった。
ストネットワークである携帯電話事業者のシェアが、毎年ドラ
スチックに入れ替わるほどの影響力を持っている。
このように
しかし、MVNOのさきがけとなったセンス・コミュニケーショ
ンズが、
当初掲げた総合通信サービスの実現という目標は、
そ
うした議論を飛び越えて、
むしろFMCやNGNなど今日の一大
トレンドとMVNOの接点が、約10年も前から構想されていた
という点において、
当時次々と出てきたMVNOの目的とは次元
の異なる、
革新的なものだったといえよう。
MVNOは、
いまや欧米市場において欠かせないポジションを
得るまでになってきた。
ヴァージン・モバイルの動静については、
別項で改めて詳述する。
たた、
ヴァージン・モバイル登場の頃から現在に至るまで、
参
入企業数が順調に増えてきたというわけでもない。
またヴァー
ジンに続くような大型MVNOは出現せず、同社に見られるよ
うなビジネスモデルが、
どのような企業でもMVNOとして通用
(3)再活発化するMVNOトレンドの背景
するものではないという輪郭も鮮明となり、一時期ほどの話題
性は収束したかのようにさえ映っていた。現在、
再びMVNO参
①ヴァージン型グローバルMVNOの不発とその後
入が活発化してきたのは、
つい最近のことなのである。その大
英国での成功を基点としてヴァージン・モバイルは、
シンガ
ポールやオーストラリア、米国、カナダなど、海外にも進出した。
米国ではスプリントPCSとの提携によって順調に加入者を獲
得するなど、
それまで欧州メインであったMVNOを、米国でも
広める火付け役になったといえる。
このことは、一部データ通信サービスでMVNO参入がみら
れた日本国内の事情にもあてはまる。
そして日本でも、
ここにき
てMVNOという新規プレーヤーの存在意義や、
そのビジネス
モデルについて、
再び議論が活発化してくるようになった。
欧米
MVNOは、
いまや欧米で確たる位置を得るまでになってき
た。英ヴァージン・モバイルのようにMVNOの活躍次第で、
ホ
図表2 MVNOに対する再評価・参入再活発化の背景
携帯電話オペレータの
ビジネスモデル転換
きな背景を示したのが、
図表2である。
新興企業の事業
モデル導入
におけるMVNO参入の活発化と国内のそれとは、行政当局に
よる規制といった背景や市場環境、
システムといったさまざま
トラヒック依存型
事業モデル変革
固定通信系オペレータ
のビジネスモデル転換
各種通信事業者
の移動通信進出
携帯電話加入者の飽和/
対人口普及率の高まり
移動通信市場による
固定通信市場の侵食
周辺企業の事業
モデル変革
隣接業界の事業
モデル導入
MVNOに対する再評価/
MVNO参入の再活発化
データ/IP系
事業モデルの台頭
垂直統合型事業
モデルの限界
市場競争の評価手段/
支配的事業者に対する競争圧力
料金の下方硬直性に
対するプレッシャー
非トラヒック依存
の料金コスト構造
各種通信事業者
の移動通信進出
FMC(固定と移動の融合)の
実現に向けた新たな
スキーム構築
メディア融合ビジネス
に向けた連携
ユビキタス時代の新たな
企業モデル確立
出典:情報流通ビジネス研究所
モバイルインターネット要覧 2006
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な側面で、異なる部分があるものの、
奇しくも同じようなタイミ
ングで、MVNOの存在が大きく取り沙汰されるようになってき
たわけである。
みほん
第1章 2006年度・マーケットキーワード編
③固定系通信事業者による無線分野への進出
固定系通信の加入数あるいは収益を、移動通信のそれが急
速に凌駕してきているトレンドは、世界的な傾向となっている。
日本の状況も多分にもれず、
2001年度に固定電話加入者数と
②高普及率の進展によるオペレータ戦略の見直し
3G携帯の加入比率がほぼ半数にまで迫ってきた日本の状
況と異なり、欧州における商用ベースの3Gは、緒についたばか
りという感は否めず、まだGSM/GPRSといった2G加入者が
大半を占めている。2Gの時代より始まった欧州MVNOの携
帯電話サービスは、いまだ音声やSMSを中心としたものが大
半であり、MVNOの特徴として定義づけられる「付加価値の
提供」という側面から見ると、
低額料金などが売り物の再販業
者に近い業態や、ニッチな顧客ターゲットを狙った小規模な
MVNOが少なくない。
MVNOの代名詞とされるヴァージンにしても、
同グループに
よる多角的事業との連携や、
ヴァージン・ブランドという高い
顧客ロイヤリティや、
それに付随する顧客対応といった“付加
価値”はあるものの、通信サービス自体の高付加価値は、
さほ
ど見出せないのが現状である。
そのような状況のもとで、
2004年あたりから再びMVNO参
入の気運が高まってきたのは、
いくつかの新たな環境やトレン
ドが押し寄せてきたからに他ならない。
第一に挙げられるのは、欧州各国における携帯電話の普及
率が、概ね行き着くところまで辿りつき、携帯電話オペレータ
各社は従来の戦略の延長上に、自らの成長戦略を描けなく
なってきているということである。
ユニバーサル・サービスの提供というDNAを持つ通信事業
者の立場からすれば、残された多様かつ僅かな顧客層を、
自ら
。当然のことながら、
各国
移動の加入者数が逆転した(図表3)
の固定系オペレータは、
こうした不可逆性のトレンドに対して大
きな危機感を募らせる。
例えば、英国の旧国営通信事業者であったブリティッシュ・
テレコム(BT)は、
一時期の通信バブルを背景に、
自らの移動
体通信部門「BTセルネット(
」現mmO2)の売却を余儀なくさ
れ、
現在は固定系オペレータという位置付けになっている。
しか
し同社は、
O2を手放したとはいえ、
移動通信市場への関わりを
抜きにした今後の事業成長は難しいと考えた。
そうしたことから、売却したO2の移動通信ネットワークを借
りる形で、もともとは自らの傘下にあったO2のMVNOになり、
企業向け移動通信事業を展開している。
このように、
固定系通
信事業者は座して死を待つわけにもいかず、BTのようにインフ
ラ調達先であるMNOが以前の傘下部門であろうとも、立ち位
置がMVNOに成り下がろうとも、移動通信市場への関与を断
ち切ることはできなくなってきているのである。
同様の動きは他国でも見られる。米国AT&Tのケースがそ
れである。巨人AT&Tが分離・分割されて久しいが、AT&T
傘下にあった米携帯電話大手のAT&Tワイヤレス(2003年
シェア全米3位)は2004年2月、同シェア2位のシンギュラー・
ワイヤレスに買収された。業績悪化によってAT&Tは、
すでに
AT&Tワイヤレスを分離していたものの、AT&Tブランドを冠
した再販事業を展開していた。しかし、AT&Tワイヤレスの買
収によって、
それが断ち切られる格好となったのである。
の努力で開拓するには、
やはり限界がある。
また事業のコストパ
奇しくも、
シンギュラー・ワイヤレスの本体であるシンギュラー
フォーマンスも悪い。
であるならば、
そうしたところはMVNOに
は、
もともとAT&Tが分離・分割して出来上がったベル系地
まかせた方が良策という考え方である。
域会社の旧SBCコミュニケーションズとベルサウスによって設
MVNOの獲得した顧客のトラヒックは、少なくとも自社ネッ
立された企業である。
トワークを流れるから、たとえエンド・ツー・エンドでサービ
成長分野における虎の子を失ったAT&Tは2004年5月、全
スを提供できなくとも、
インフラ設備の効率的な運用や、加入
米携帯電話シェア第4位のスプリントPCS(現スプリント・ネク
シェアの増大が期待できることに違いはない。携帯電話の普
ステル)のMVNOとして、
移動通信事業に再び乗り出す計画を
及率が天井に達した今、
欧州オペレータにとって、
自らは法人や
打ち出した。
もともとAT&Tは、企業ユーザーを多く抱えてい
ポストペイドユーザーなど高ARPUの顧客獲得に重心を置き、
る。
そのため、MVNOという形態ではあるが、
3000万を超える
ニッチ層やプリペイドユーザーが比較的多い低ARPU層の開
といわれる同社の法人顧客に対して、携帯電話サービスを提
拓は、MVNOに委ねるような戦略転換が自ずと求められてき
供していくとした。
ているのである。
スプリントPCSの親会社であるスプリントは、長距離通信市
場ではAT&Tの強力なコンペチターだということも、一種興
味深い。先のBTも、
それまでドメスティックな関係にあったO2
88
モバイルインターネット要覧 2006
みほん
第1章 2006年度・マーケットキーワード編
図表3 国内通信サービス加入数の推移(1997~2004年度)
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1997
6,164
102.3%
1,020
235.6%
1996
6,263
101.6%
2,088
204.7%
㪈㪐㪐㪎
㪈㪐㪐㪏
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㪉㪇㪇㪋
単位:万台
年度
固定電話
前年度比
携帯電話
前年度比
1997
5,907
―
213
―
1997
6,028
102.0%
433
203.3%
1997
6,285
100.4%
3,153
151.0%
1998
6,263
99.6%
4,153
131.7%
1999
6,223
99.4%
5,114
123.1%
2000
6,196
99.6%
6,094
119.2%
2001
6,133
99.0%
6,912
113.4%
2002
6,077
99.1%
7,566
109.5%
2003
6,022
99.1%
8,152
107.7%
2004
5,961
99.0%
8,700
106.7%
出典:総務省
「音声トラヒックからみた我が国の音声サービスの利用状況」をもとに情報流通ビジネス研究所作成
のMVNOとして移動通信事業を展開していたが、
2004年11
月にはグローバルな携帯電話事業を展開するボーダフォンの
MVNOとして、
再起を果たすこととなった。
AT&TとBTともに、旧国営という出自もあって法人分野に
強いという共通項がある。
その意味では、
従来の“しがらみ”を
ネットワークにボーダフォンを選択した理由も、単にO2と比較
して好条件だったということよりも、
今後のFMCサービス展開
上で不可欠かつコアとなる位置情報サーバーなど、
顧客管理シ
ステムに関する構築や運営面での合意が整った――という側
面が大きかったとされる。
捨ててでも、好条件な内容を優先したMVNO契約で、法人セ
CATVが普及している米国では、欧州固定系オペレータの
グメントを移動通信で攻略したい思惑と、固定を移動が席巻
入り方とは様相が異なるものの、米AT&TにしてもFMCの推
することに対する危機感が透けて見えるのである。
固定系の通
進団体であるFMCAのボードメンバーになっており、MVNOと
信市場を移動通信市場が抜くというトレンド、そして次なる移
して法人ユーザーを開拓するだけでなく、FMCという形での
動通信の成長ステージは法人分野――という大きな背景から、
事業展開を視野に入れていることに違いはない。
上記2社にとどまらず、移動通信/無線分野に乗り出そうとす
る固定系通信事業者は少なくない。
2005年に入ってからの動きを読むと、
異業種企業がMVNOと
なって独自の移動通信サービスを展開する形に加え、
既存通信
事業者が固定やインターネット、
携帯電話などの通信サービスを
④FMC実現に向けたスキームとしてのMVNO
総合的に提供するための、
ひとつの無線インフラ調達手法として
そして急 浮上してきたのが、
「NGN」
(Next Generation
MVNOという形態を採るケースが目立ってきているのである。
Network)の構築に向けた動きである。
とりわけ、
その目玉とな
例えば、
ドイツのインターネット事業者であるフリーネット社
るのがFMCサービスの実現であり、
これに向けた第一歩として
は2005年3月、国内でIP携帯電話サービスの提供を開始する
も、
固定系事業者がMVNOとして動くことの意義は見逃せない。
と発表し、携帯電話オペレータおよびサービスプロバイダとの
FMCについては、本章で別に取り上げているので詳細は割
提携交渉を表明している。
同社は、
アルカテルとIP携帯電話端
愛するが、BTがO2とのMVNO契約を解除し、今度はホスト
末
「IP1」を開発している。機能的にはBTの
「BT Fusion」と同
モバイルインターネット要覧 2006
89
様、通常の携帯電話としての利用に加え、
自宅ではBluetooth
経由でIP網に接続して固定にも電話がかけられるというもの
であり、
ドイツ国内の固定電話への通話は全て無料という。発
表のなかで同社は、MVNO参入をほのめかしている。
同社の親
会社は、
再統合中の独通信プロバイダ大手のモビルコムである
ため、MVNO参入はその動向に左右されるとした。
フランスでは、
ヌフ・テレコムが2005年6月に企業向け携帯電
話サービス「9オフィス・モバイル」を発表しているが、
同社はこ
れに先立つ同年3月に仏SFRをホストとしたMVNOとなってい
る。
みほん
第1章 2006年度・マーケットキーワード編
を活性化させるという考え方のベースにもなっている。実際、
デ
ンマークやスウェーデン、香港、台湾といったところは、一定の
条件下で既存オペレータに対するMVNOへのネットワーク開
放義務を課している。
MVNOが徐々に数を増していった頃の2001年9月、ITU
は開催したワークショップで、
3Gの早期普及を目指す報告書
「Licensing of 3rd Generation Mobile」をまとめている。
当時、各国のオペレータがUMTS向け周波数オークションに
よる巨額投資の後遺症を理由に、
UMTSサービス開始の延期
やスタート時の規模縮小を表明するムードに包まれていた状況
ヌフ・テレコムが明らかにした「9オフィス・モバイル」は、固
定/携帯電話/インターネットを1タリフで提供するもので、
同
社の保有する約3万社の企業ユーザーをターゲットにしている。
月額基本料金は、SIM1枚につき18ユーロとし、通信料金は携
帯発固定着または携帯発携帯着で1分13ユーロセントの完全
秒単位課金となっており、企業内通信であればこれが10ユー
ロセントとなる。
同社もまた、FMCの実現を視野に入れており、屋外では
GSM携帯電話として、企業内では無線LANにシームレスアク
セス可能となるサービス2006年にも始めたい意向を持つ。
米CATV業者リバティメディアの海外事業会社であるリバ
ティ・グローバルは2005年9月、オランダにある子会社の220
万加入者のアナログ・セットトップボックスをディジタル化する
ため、
3億ユーロを投資すると発表し、欧州に展開する13か国
(790万加入)でもディジタル化の方針を打ち出している。
同社もオランダとオーストリアでMVNO事業を展開しており、
今
に対し、ITUは活性化策を提示することによって、早期普及へ
の流れをもう一度作り出すそうとした。
そのなかにおいてMVNOの在り方に関する提言が盛り込ま
れ、多彩なサービス実現と市場拡大のためには、無線免許を
持たないMVNOの参入による競争の促進が効果的であると
の認識が示されている。3Gの発展にはコンテンツが重要とし、
新たなコンテンツビジネスを企図するプレーヤーの市場参入
圧力が、
ネットワークへのアクセス要求へとつながることを指摘
した。
すなわち、
3Gネットワーク時代におけるMVNOの存在意
義が示された形である。
報告書では、既存の携帯電話オペレータに対するMVNO
へのネットワーク開放義務化/強制、新規参入企業に対する
規制などについての基本的考え方が盛り込まれている。
これに
よると、
3Gシステムの開発においては、
コンテンツや各種情報
サービスが重要度を帯びることによって多くの新規参入と、
イ
ンフラへの接続要求が盛り上がりを見せるとし、仮に既存オペ
後はテレビやブロードバンド、
電話に加えて、
携帯電話サービスの
レータと新規参入企業の交渉が不調に終わった時は、香港の
提供――すなわちクワドルプルプレイを図っていく考えである。
ただ
特別行政区のような形で、MVNOへのネットワークアクセスの
し長期的には、
自前でWiMAX網を整備し、
これと同社のCATV
実現を命令することが必要になるとしている。
を組み合わせたサービスの提供を計画しているようである。
こうした場合において、各国の政策担当者はMVNO参入の
達成目標が、コンテンツ提供を指向したサービスの多様化な
⑤市場競争評価の尺度としてのMVNO
のか、
移動通信市場の競争促進なのかについて、
明確にしてお
当初はひとつのビジネスモデルとして定義・分類されていた
かなければならないと指摘している。一方では、
3Gが革新的
に過ぎなかったMVNOだが、
徐々にその存在感や役割の重要
でありながらも不確実な市場であれば、競争法規による安全
性が明らかになるにつれ、
行政/規制当局もこの新たなプレー
保護を前提として、MVNOに対する規制は差し控えるべき―
ヤーのポジションを見過ごせなくなってきたという経緯を辿っ
―と提唱している。
ている。
すなわち、携帯電話市場における競争状況の評価を行
う際の尺度として、MVNOの存在やその有無がこれまで議論
⑥MVNOを巡る行政当局と既存事業者の攻防
されてきたということである。
SMP事 業 者に対 する競 争プレッシャーの手段として、
このことは、携帯電話分野において市場支配力(SMP:
MVNOに対するネットワーク開放を義務化する――という
Significant Market Power)を持つ通信事業者を対象に、
考え方は、欧州委員会において、先に挙げたデンマークやス
MVNOへのネットワーク開放を義務化することによって、競争
ウェーデン以外の国で実際に発動された例がある。
アイルラン
90
モバイルインターネット要覧 2006
みほん
第1章 2006年度・マーケットキーワード編
ドではO2とボーダフォンがSMP指定を受けており、
当局によ
る規制の結果として、MVNOの登場が見込まれている。
同様に、
フランス規制当局であるARCEP(旧ART)も2002
年末、
MVNOに対して既存オペレータ3社がネットワークを開
放する必要性はないとの判断を示していたものの、
その後は同
国市場に3事業者しか存在していない状況に対し、
これら3社を
「協調的な共同支配」を理由に、
SMP指定する案を持ち出して
いた。
旧ARTは先に記した通り、
3GにおけるMVNOの役割と、
そ
の重要性について報告書を提出していた。とりわけ、同国にお
ける3Gサービスが遅れているのは、競争が十分に進んでいな
いためというわけである。そうしたことから、
それまでの方針を
転換して、既存の全3社をSMP指定し、MVNOへのインフラ提
供義務化を匂わせていた。
結果的に、ARCEPの規制案は欧州委員会からの意見も
あって、
2005年5月末に撤回されることとなったが、
2004年
末にこの提案が公表されてからというもの、
フランスでは急速
にMVNO参入が進むことになったのである。
このことは、規制
によってMVNOへの接続が義務化されるよりは、自主的に
MVNO企業と契約を結んだ方がベター、
と既存事業者が判
断したもの――と容易に推察できるだろう。
欧州委員会の監視の下、ARCEPと既存3オペレータ間で行
われたMVNOを巡る攻防であるが、
3社はネットワーク開放義
務という縛りから免れたものの、実質的にはARCEPの思惑通
りにコトが運んだのである。
2. 海外におけるMVNOの現状と最新動向
(1) MVNOを巡る欧州各国の動静
一説には、テルモアとCBBだけで、同国における過去3年間
の新規加入の43%を獲得したとされ、テルモアが520万ユー
①デンマーク市場にみる激安MVNOの
“怖さ”
欧州ではヴァージン・モバイルの成功を機に、
1999年~
2001年にかけてMVNO参入が相次いだものの、その後はや
や沈滞ムードが漂っていた。
しかし、
前項でいくつかあげた背景
から2004年頃から再びMVNO事業参入の計画が相次ぎ、再
びMVNOトレンドが押し寄せてきている
(図表4)
。
早くからMVNOが参入している北欧や英国、
オランダといっ
た諸国では、現在すでにMVNOの市場シェアは10~20%程
ロ・純利益率10%、
CBBが16%という高い水準の利益率を
叩き出したとみられている。この事態に対して2004年末には、
TDCモビルがテルモアを、
ソノフォンがCBBをそれぞれ買収し、
MNO自らが低料金路線のMVNO事業も運営する――という
顛末を辿った。
良く言えば、
ディスカウントセグメントを開拓するため、
ダブル
ブランドを持つという戦略である。が、加入者数の伸びは事業
者の意に反して、
もはや数%にとどまっている。
とどのつまりデン
度にまで達しているとみられ、最もMVNOの進出が進むデン
マークにおいては、
飽和局面(2005年3月末・普及率約94%)の
マークは、
シェアが24%にまで達しているという。MVNO参入
「成長なき市場」構
なかでの、
低料金の仕掛け合い――という、
数でみても、英国やスウェーデン、
フィンランド、
ノルウェー、デ
造に陥っていると、
評価せざるを得ないところまできた。
ンマークなどでは10社程度が事業展開しており、オランダで
はすでに約30社を数え、
もはや淘汰の時代を迎えつつある。
欧州諸国のなかでは早期から、デンマーク規制当局はス
ウェーデンと同様、
MNOに対し「ネットワークキャパシティに余
これらの国々においては、MVNOの多くがローエンドユー
裕がある場合には、
MVNOに開放すべき」との規制を課してい
ザー対象の低料金戦略を採って、市場に少なからず影響を与
た。スウェーデンも似たような懸念はあるものの、
こちらは普及
えている。
率約110%・年成長率が10%弱となっており、
今のところデンマー
なかでも象徴的なのは、
デンマークである。2005年3月時点
クほど
「すさんだ状況」までには至っていないといえるだろう。
でデンマークにおけるシェアトップ(47.8%)の携帯電話オペ
レータ、
テレ・デンマーク(TDCモビル)は、
低価格路線を貫く
②英国料金競争に火をつけたイージー・モバイル
テルモアやCBBといったMVNOの跳梁によって、
2003年には
デンマーク市場に代表される通り、欧州ではローエンドを
同社ユーザーの20%を失うとともに、ARPUも50%下落する
ターゲットにした格安タリフを売り物とするMVNOの跋扈と、
ほどの影響を受けた。続く2004年も、
同社の加入者は4.3%純
市場に対する影響を不安視する声は、
日を増すごとに高まって
減、ARPUも22%下落している。第2位オペレータのソノフォン
いる。
も、
相当な打撃をくらったことは容易に推察できる。
証券会社大手のクレディ・スイスによれば、
2004年Q1に
モバイルインターネット要覧 2006
91
図表4 MVNOを巡る欧州諸国の主な動き(2001年~2005年9月)
年月
概要
ヴァージン・モバイル、
MVNOによる移動音声通信およびデータ通信
2001/5
サービスを提供
2001/6 仏SFRがヴァーチャル・ネットワーク事業者と協力体制を構築
スウェーデンのテレ2が、
オランダでMVNO参入方針を固め、
同国GSM
2001/8
オペレータのテルフォードと契約締結
テレ2が、
ドイツ初のMVNOとして参入するため、
独フィアク・インターコム
(英mmO2傘下)と周波数容量の卸売契約を締結
2001/12
ニューワールド・モビリティが資産売却の一方で、
MVNOへの転身を企
図し、
2億~3億香港ドルの予算を計画
ヴァージン・モバイルが新ポスト・ペイド・サービス「コントラクトレス」
2002/3
の開始を表明
BT、
ホットスポット事業進出と絡め、
分社化したmmO2網を利用した
2002/4
MVNOとして携帯事業者に返り咲きへ
スウェーデンのテレ2が、
フランスにおけるMVNO事業の展開不能につ
2002/7
いて仏ARTに提訴
仏MVNO事業展開を条件に、
テレ2が仏過疎地域の移動通信設備投
2002/10
資を検討
仏ARTが、
MVNOにネットワークを開放する必要なしと判断。ただし、
2002/12 2002年に採択された欧州指令の仏国内法転換後は、
MVNO規制が可
能との見方も提示
北欧の小売業者/MVNOのREITANが、
ノルウェー最大のMVNOである
2003/6
センス・コミュニケーションズを3900万ユーロで買収
スウェーデンのテレ2がEUに提出した、
固定・携帯電話・インターネット
2003/11 の競争促進に関する報告書の中で、
MVNOの認知度を引き上げること
を要請
仏ARTがMVNOに関するヒアリング結果を発表、
ブイグ・テレコム1社が
2004/1
反対
英航空会社イージージェットがSIMによるMVNO携帯電話事業進出計
2004/2
画を公表
ドベジャン仏産業担当相が仏携帯電話の市場寡占化に対しMVNO参
2004/5
入促進方針を表明
独デビテルがSFRと契約、
フランスで初のMVNOに。
年10万加入の控え
2004/6
めな目標
英国携帯電話販社のザ・フォーン・ハウスがオレンジと契約、
仏第2の
2004/7
MVNOに
スウェーデンのテレ2がドイツのE-プルスとMVNOに関し、
交渉中である
ことを表明
2004/10
コーヒー豆販売チェーンのチボが独02とブランド提携、
「チボ携帯」を発
売へ
仏フュチュール・テレコム、
MVNO参入でSFRとの契約を発表
仏最後発オペレータのブイグ・テレコム、
MVNO開放規制に反対意見を
2005/2 表明
仏民間テレビ局M6と仏ラジオ局最大手NRJがそれぞれMVNO事業者
参入への意思表示
仏ヌフ・テレコムがSFRとMVNO契約を締結、
企業ユーザーに対する
FMCサービス提供を視野に
2005/3 パリ空港の通信子会社ADPテレコムがMVNO参入の意向表明
独メディア大手ベルテルスマン、
新聞大手アクセル・シュプリンガーと提
携、
MVNO開始の方針を公表
EUが仏ARTの携帯電話オペレータに対するMVNO規制方針に見直し
2005/5
を要求
2005/7 仏番号ポータビリティの修正システム導入でMVOとMVNOが対立
独E-プルスがSMSトラヒック管理のヴィストリームとMVNO向け通信容
量卸売契約を締結
デンマークのTDCがT-モバイルとMVNO契約、
ドイツでもイージー・モ
2005/9
バイルを開始へ
独T-モバイルが、
Klarmobile/イージー・モバイル以外のMVNOとの提
携にも応ずる意向を表明
出典:情報流通ビジネス研究所
みほん
第1章 2006年度・マーケットキーワード編
場競争の激化にあると報告書は指摘している。
とりわけ北欧では、MVNOの参入がテリアソネラ(スウェー
デン/フィンランド)やテレ2(スウェーデン)
、
エリサ(フィンラン
ド)といった、現地オペレータの収益に大きな影響を及ぼして
いるという。同報告は2004年7月に公表されたものであるが、
現在はその傾向に拍車がかかっているとみて差し支えないだろ
う。そして地理的にも北欧だけでなく、欧州諸国に共通した問
題として認識されるようになってきた。
英国では、
ヴァージン・モバイルUKを筆頭に、
多くのプレー
ヤーが参入している。英国の場合、
ヴァージンはもとより、
それ
ぞれが独自のブランド力を背景にMVNO参入し、
プリペイドの
ローエンドユーザーを対象とした低価格タリフを売り物にしな
がらも、本業との連携などで相応の付加価値事業を展開する
傾向が見られた。
携帯電話オペレータサイドも、MVNOと相応
のバランスをとりつつ、ARPUを向上させるとのテーマが掲げ
られていた市場であった。
ところが、格安な航空料金で成功を収めたイージージェット
社によるMVNO、
イージー・モバイルが2005年3月に参入して
から雲行きが怪しくなってきたようである。
同社は開業にあたっ
て、業界最安値のキャンペーン料金タリフを打ち出したが、
こ
れにフレッシュ・テレコムが対抗値下げに踏み切ったことから、
料金競争に拍車がかりそうな気配を見せている。
イージー・モバイルは、
その出自からヴァージン・モバイルへ
の対抗心を燃やしており、
加えてキャンペーン価格でスタートし
たにも関わらず、
サービス開始後2ヵ月で獲得したユーザーが約
5000加入――と苦戦していることから、
キャンペーン後も激安
攻勢を加速させるとの観測も出ている。
これに反応してヴァー
ジン・モバイル、
あるいは3Gで勝負せねばならないハチソン3が、
対抗値下げや高額な奨励金を行う可能性も少なくない。
それまで、少ないオペレータ数による競争が展開され、比較
的“穏やかな市場”とされてきたドイツでも、MVNOの高波は
堤防を越えて押し寄せている。例えば、
イージー・モバイルは
2005年9月、
T-モバイルとドイツ本国におけるMVNO契約を
締結し、
同国においても参入することを決めている。
T-モバイル
は、
今後ドイツ市場におけるMVNOのシェアが10~20%に達
するとの考えを示している。
おける欧州携帯電話オペレータのEBITDAマージンは平均
③MVNO過剰参入と生き残りのための多様化戦術
37.8%で、前年同期比でほぼ横這いであるが、各国の上位2事
T-モバイルは、英国などで積極的にMVNOに対するインフ
業者だけを切り取ってみると、EBITDAマージンは前年同期比
ラ提供を展開しているが、
足元の本国でも同様の動きを見せて
約1%弱下落の平均42.7%だったという。およそ3年ぶりに、欧
きており、
すでにネットワーク提供を行っているイージー・モバ
州オペレータの収益率が停滞~下落に転じた主な理由は、市
イルやクラーモビル以外のMVNOとの提携に応ずる意向を
92
モバイルインターネット要覧 2006
みほん
第1章 2006年度・マーケットキーワード編
表明している。
同社によれば、MVNOとのカニバリゼーションはある程度
予測の範囲としつつ、市場においてサービスでの差別化が図
れないMVNOは、顧客サービスを重視するT-モバイルを脅か
すことはないと考えている。そのため同社は、MNOがディスカ
ウントセグメントを開拓するために自らが第2のブランドとして
MVNO事業を行うよりも、MVNOに対してネットワークを開
放することの方が良策――との判断を下している。
ドイツにおいて、激安価格をセールスポイントに事業展開
するMVNOは、コーヒー豆販売チェーンのチボが独O2とブ
ランド提携して、
2004年10月にサービス開始した「チボ携帯」
に始まったとされる。これに対抗する形で、ジムヨが独E-プル
ス(KPN系)のMVNOとなり、
2005年5月から固定/携帯電
話で24時間一律19セント/分というタリフを売り物に参入し、
ローエンドを巡る競争に火がついた格好である。
チボは、
2005
年6月の時点で約25万加入を獲得、
ジムヨも開業から1ヶ月経た
ない間に、
10万を越えるユーザーが加入したとみられている。
これら以外にも、
2005年6月に参入したテルコ、
あるいはE-プ
ルスがインフラ提供するブラウ・モビルフンク
(Blau.de)やシュ
ワルツフンク、
T-モバイルとMVNO契約を結んでいるクラーモ
ビル、英国料金競争に油を注いだイージー・モバイルによる参
入など、
それまで料金水準が高かったドイツ市場でも、
もはや
後戻りできない値下げ競争ステージに突入している。
このように、
ローエンド層を対象としたMVNOの相次ぐ参入
と、激しい料金競争による市場への影響が懸念されているが、
先に挙げたオランダのように、MVNO参入が30社もあるよう
め、真剣に進めるべき方策は、
UMTSや無線LANといったイ
ンフラの付加価値を、
どのように訴求していけばいいのかとい
うことに、
ますます煮しめられていくのである。
④
“鎖国”フランス市場におけるMVNOの参入
MVNOトレンドは、
オペレータ3社のみによるGSMサービス
の提供と、
“4番目の席”が空いたままのUMTSという、既存事
業者にとって今まで楽園的な状況だったフランス市場にも、
よ
うやく訪れた。
フランスでは、
2001年半ばにMVNO参入を巡ってさまざま
な交渉が行われたものの、
ほとんど合意に至らなかった。同国
ナンバー2のSFRは、
テレ2やバロリスと交渉していたものの、
業
況悪化を背景に合意は困難との結論を出している。また同社
は、
GSMでは価格以外にMVNOの差異化が難しく、価格競
争で収益はより少なくなるという見方を表明していた。第1位
のオレンジも、同国ハイパー傘下のカルフールとMVNOの交
渉を行ったが、結局のところ頓挫している。最後発のブイグは、
ヴァージンとの交渉が座礁した。
テレ2などのMVNOは、フランス携帯電話オペレータ側
の提示した条件が悪過ぎるとし、ARTに対して2002年7月、
MVNO開放に関し提訴していたものの、同年12月にARTは
ネットワーク開放の必要はないとの判断を下している。
下記に
示すように、
2004年6月まで、
フランス市場はMVNO参入のな
い
“鎖国”状態が続いていたのである。
その空白期間中、EU指令のフランス国内法転換や、既存事
業者のUMTS展開に対する低いインセンティブなどの背景か
な状況のなかでは、
低料金が基本的な売り物のMVNOといえ
ら、ARTはMVNO開放規制へと舵を切った。消費者団体が
ど、
単なる値段の叩き合いに終始していては生き残りの余地も
同国料金水準の高さを指弾する一方、
テールエンドのブイグが
限られてくる。
MVNOへの抵抗を見せるなど、
さまざまな曲折を経ている。
ドイツでも、今後の参入を検討する企業が10数社はあると
ようやく2004年6月に独デビテルがSFRと契約し、
同国初の
いわれ、
国内外ともにMVNOへの積極的姿勢をみせるT-モバ
MVNOとなり、
次いで英携帯電話販社のフォーン・ハウスがオ
イル自身も、
今後予想されるMVNOの淘汰は否定しない。
レンジと契約、
第2のMVNOとなった。
そうしたことから、格安MVNOサイドとしても、単に一本調
その後2005年に入ってからは、仏フュチュール・テレコムや
子でプリペイドのローエンド層を狙うだけでなく、
仕事用のほか
M6/NRJ(仏TV/ラジオ局)
、仏ヌフ・テレコム、パリ空港の
にプライベート用として使う
「二台目需要」や、
ヘビーユーザー向
通信子会社ADPテレコムなどが続々と名乗りを挙げるなど、
3
けに長時間の無料通話をバンドルする、
いわゆる「米国型」の
社寡占・料金の下方硬直性の高さというフランス市場への悪評
料金プランを用意するなど、料金戦略は一様ではなくなってき
を、
とりあえず払拭した格好である。
ているとの向きもある。
ただ、いずれにせよ比較的高ARPUを保ってきたドイツ市
場も、MVNOの乱立によって、
これまでの市場環境が激変に
⑤UMTS普及の原動力としての激安MVNO
同国における現在のMVNOの顔ぶれを見る限りにおい
向かうことは、
容易に想定されるだろう。
このような値下げ圧力
て、過激な価格競争を仕掛けそうな気配は他国に比してさほ
のかかった状況のもと、今後既存オペレータが収益向上のた
ど漂っておらず、むしろFMCやコンテンツビジネスとの相乗
モバイルインターネット要覧 2006
93
を企図するような雰囲気がある。
“MVNO後発国”としては、
MVNOが跳梁跋扈する北欧や英国、デンマーク、オランダや、
それらに近づきそうなドイツの状況などが見えるだけに、業界
全体としての警戒心は決して小さくないのであろう。ARCEP
(旧ART)による規制化の動きに先んじて、上位寡占2社が
MVNOとの契約を締結し、最終的にARCEPも宝刀は抜けな
かった。
みほん
第1章 2006年度・マーケットキーワード編
どにおけるMVNOビジネス、
とりわけ米国ではスプリントPCS
との提携によって、順調に加入者を獲得している。それまで
欧州メインであったMVNOという新たな事業形態を、米国に
浸透させるとともに、同国ではなじみの薄かったプリペイド型
サービスの需要開拓にも、
ひと役買ったといえるだろう。
ヴァージン・グループのこれまでの動きを見ると、
まず英国の
成功をきっかけとして、
MVNO事業の海外展開を積極的に行う
フランスにおいては、番号ポータビリティに要する期間が他
国と比較して長いことから、
2005年7月に同国で修正法案が採
択されたが、
1年半~2年の猶予期間が必要との立場をとる既
存事業者とMVNOの間で対立が起こるなど、オレンジとSFR
の2社で85%シェアというSMPの閉鎖性が、
いまだ垣間見える。
MVNOのシェアも低く、本質的に市場環境が変化するまで
には、
まだ時間を要しそうである。
欧州では、依然としてGSM加入者数が圧倒的であるため、
MVNOが多く参入する市場においては、
当然のごとくオペレー
タの収益が悪化の一途を辿る。
しかしこの事態こそ、
UMTSの
普及を急がせるプレッシャーとして、有効に機能することも忘
れるわけにはいかない。欧州において、寡占市場から付加価値
の高い高度なサービスが普及することは、
考えにくいのである。
オレンジを傘下に置くフランステレコムなどは、NGN/
FMCに事業の付加価値を見出し、独自に歩もうとしている
が、危機感を覚えるほどの値下げ圧力もない“無風地帯”から、
ユーザーを虜にする魅力的なサービスが生まれるかどうか、
今
後ひとつの見どころだといえよう。
戦略に出た。
まず同グループは、
C&Wのオーストラリア携帯電
話子会社C&Wオプタスとの折半出資によって、
合弁企業を設立
している。
合意は2000年2月に成立、
ヴァージン・モバイル関連
会社の一角として、
1年余で約120万ユーザーを獲得している。
次に2000年5月、シンガポールのシングテルとの合弁会社
「ヴァージン・モバイル・アジア」の設立に関して、
両社それぞれ
が1億ドルを出資することで合意し、
2001年10月に同国内4番目
の携帯電話オペレータとしてサービスを開始している。同社は
ヴァージン・グループのアジア拠点として、
2006年末の当地域に
おける加入ユーザー数の目標を600万~1000万に設定していた。
だが、開業1年もたたない2002年7月に、ヴァージン・モバ
イルはシンガポール市場から撤退することを表明、
同年10月に
サービスを中止している。
ヴァージンに言わせれば、同国市場
の飽和や経済停滞がその理由だとしている。同社ユーザーは、
シングテルの携帯電話子会社シングテル・モバイルに引き継
ぐ格好となった。
また、
ヴァージン・グループはシングテルとともに1億米ドル
を投資し、
アジア地域にMVNOのジョイント・ベンチャーを拡
大する計画を立てていたが、
そのなかにはMVNOジョイント・
(2)ヴァージン・モバイルの動向とその戦略
ベンチャーを形成するために香港オペレータ2社との交渉が
含まれていたことから、
ヴァージンによる香港市場進出は中断
①欧米における成功と海外展開のペンディング
されることとなっている。
MVNOの代名詞といえるヴァージン・モバイルは、英国で
これまでヴァージン・グループはシングテルとの合弁会社を
航空や旅行、スーパーマーケット、音楽レーベルにいたるまで
拠点として、
香港や台湾、
マレーシア、
インド、
中国、
韓国、
日本と
幅広く事業展開するとともに、
同国において強力なブランド力を
いったアジア諸国におけるMVNO事業の提携相手を探してい
有するヴァージン・グループが手がけるMVNO「ヴァージン・
たが、
これによって香港というマーケットはオプションから消え
モバイルUK」の成功がよく伝えられるところである。
たことになる。一時は日本への進出も表明していたが、韓国に
同社は、
英国の携帯電話オペレータである旧One2One(現
T-モバイルUK)
との対等出資によって設立された合弁企業で、
おける事業展開とともに、現在に至るまで実現していないこと
は、
改めて指摘するまでもない。
1999年11月のサービス開始から5年ほどで現在約500万の加
入者を有するまでになった。
②米国発のMVNO参入とプリペイド方式の普及
英国での成功を基点としてヴァージン・モバイルは、続いて
このように、
MVNOという手法でグローバル推進を図る戦
シンガポールやオーストラリア、米国、カナダなど、海外にも進
略はペンディングされ、
ヴァージン・グループの方針は思惑通
出している。
ヴァージン・ブランドを生かしにくい東南アジアで
りに事業参入が達成できた英国や米国、
オーストラリアでのビ
の事業展開は、苦戦が伝えられるが、米国やオーストラリアな
ジネスを軌道に乗せ、MVNOとしてのレーゾンデートルをさら
94
モバイルインターネット要覧 2006
みほん
第1章 2006年度・マーケットキーワード編
に確固としたものにする方向へと、
いったん舵を切っている。
2001年10月、米国においてヴァージンは、米携帯電話オペ
レータのスプリントPCSと折半出資で「ヴァージン・モバイル
USA」を設立、
3~4年後の年商30~40億ドルを目標に掲げ
て米国の携帯電話市場に参入した。メインターゲットは、
10代
後半から20代後半の若者となっており、料金はプリペイド方式
を採用している。
合弁会社はヴァージン・グループが5000万ドルを拠出、ス
プリントPCSが5000万ドル相当の通信サービスを提供するこ
とによって開始された。
ヴァージン・グループとスプリントPCS
の持株数は、
50対50である。MNOとの折半出資という形態は、
同社が英国でMVNO事業を立ち上げた時と同じパターンであ
る。
ヴァージン・モバイルUSAの登場は、すなわち米国発の
MVNO誕生を意味している。当時は、
ヴァージン・ブランドで
の通信ビジネスが米国市場に上陸したことのみならず、FCCに
よる移動通信分野の規制先進国である米国で、MVNOがどの
ように取り扱われるのかという点でも注目された。
携帯電話のディジタル化が遅れていることはもとより、依然
として音声通話ベースでの収入がメインの既存のオペレータか
らすれば、MVNOが無条件で参入してくることに対しては、
や
はり抵抗がある。
この点については、上記に記したように、
ホス
トとなるMNOとの折半出資形態を採ることで、MNOの懸念を
払拭している。
反面では、
オペレータの裁量に委ねることにもまた問題があ
るとされ、反トラスト法やユニバーサル・サービスの在り方、
あ
16.14%増の5億2129万ポンドである。
アクティブユーザーベー
ス
(3ヵ月間に一度でも携帯電話を利用した加入者)での加入者
数は、
24.4%増の403万100万である。2005年度は10~20%
の増収を予想している。
さらに2004年11月には、米国で展開するヴァージン・モバイ
ルUSAによる株式公開が、
2005年下期にも計画されていると
の観測も出ている。
米国における上場が実現することにより、
今
後の事業拡大に向けた資金調達が容易になることはいうまで
もない。
この勢いは、同グループが当初描いていたグローバル
戦略の再来を予感させる。
実際のところヴァージン・グループは、
ここにきてカナダへの
テコ入れを始め、
2005年3月にはフランスにおけるMVNO参入
に関心を示すと伝えられている。
同社は、
仏ARCEPのアンケー
トに対して、MVNO自身が市場構造と料金を決定できるよう
にすべき――との回答を寄せていた。
従来、既存オペレータの抵抗によってMVNO参入が遅
れていたフランスであるが、ここに来て急速にその数が増し、
MVNO7社がすでにオレンジやSFRとインフラ借用で契約
を結んでおり、今後の激戦が予想されている。ここにおいても
ヴァージンは、
ブランド力と顧客対応ノウハウを生かした戦略
で、
乗り込もうとしているのである。
現在のところ伝えられているのは、
2006年上半期にフランス
市場進出のため、
同市場に参入済みである英カーフォン・ウェ
アハウスと合弁企業の設立に向けて交渉を行っているという。
④プリペイドへのニーズをテコにBRICs参入を企図
るいはディジタル・デバイド対応といった政策上の整理をする
さらに同グループは、
フランス以外の欧州諸国への進出に加
必要がある――と当初指摘されることもあった。が、現在では
え、最近ではいわゆるBRICsといった新興市場に対する多大
MVNOの呼び込みに積極的なスプリントPCSのシェア拡大
な関心を隠そうとしない。
それまでの米国や豪州などに対する
に寄与するほどの存在感(加入者約300万人)を示すと同時
戦略とは趣が異なり、
同社サービスの基本であるプリペイド料
に、
オーストラリアにおける事業も順調に伸びている
(加入者約
金方式と、新興市場における料金体系ニーズが合致している点
200万人)
。
が、
大きな背景であると思われる。
その点において、
以前ヴァー
ジン・グループが標榜した一様な海外展開構想との違いを見
③ロンドン市場に上場、
2005年3月期は利益倍増
出すことができる。
英国での開業から約5年経過し、英・米・豪でMVNO事業
中国市場への参入に関してヴァージン・グループは、
3億米
展開を進めてきたヴァージン・グループは、
2004年7月に英国
ドルの投資と現地オペレータとの折半出資による合弁会社の
ロンドンで株式公開を果たしている。上場後、初の中間期決算
設立を表明しているが、
中国においてはブランドを生かした戦
となる2004年上半期の業績は、
前年同期比14%増となる営業
略が通用しそうもないことから、頼みの綱はプリペイド・サー
利益・4730万ポンドとなった。2004年通年ベースでは、
10%台
ビスということになる。
このスキームに与する中国オペレータが
後半の収入増加率を予想していた。
出てくるかどうかは、
まだ霧の中である。
同社ならではの顧客へ
続く2005年3月期業績では、税引前利益が前年の2081万ポ
ンドの2倍以上となる5312万ポンドとなった。
売上高は、
前年比
の対応ノウハウも、他国とは商習慣の異なる中国において生か
せるかどうか、
やや疑問の余地が残ることは否めないだろう。
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