UMIN000003478 - JABTS/NPO法人 日本乳腺甲状腺超音波医学会

超 音 波 検 査 に よ る 乳 が ん 術 前 化 学 療 法 早 期 判 定 基 準 の 有 効 性 に 関 す る 研 究 ( JABTS BC-03) に つ い て UMIN000003478 <研究の背景> 現在の乳がん診療において、術前化学療法は、化学療法感受性の予測や温存率向上のための標準治療となって
います。しかし、今のところ治療早期での有効な治療効果予測手段はないため、不安を持ちながら治療を続ける
事が多いのが現状です。もし、治療早期に治療効果を予測する手法があれば、乳がん術前療法の臨床運用に大き
く貢献することになるでしょう。 一方、超音波検査は簡便で安全な検査である上、高解像度超音波診断装置の出現によりミリ単位までの測定が
容易になってきています。しかし、超音波検査が検査者の技術によって最も大きなバイアスがかかるため再現性
の低い検査として扱われ、現在の固形癌治療効果の標準基準である RECIST では体表領域固形腫瘍に限定した視
触診の補助的役割として位置づけられ、決して推奨されていません。再現性とは同じ病変部位を繰り返して正確
に撮像する精度を意味しており、その再現性が高いものとして、CT や MRI が推奨されています。 日本乳腺甲状腺超音波診断会議(JABTS)の精度管理研究班では、これまで安定して繰り返し腫瘍部位を同定す
る乳房超音波検査法を研究してきました。今回、その応用として乳がん術前療法早期超音波評価基準を考案して
おります。本評価基準では CT や MRI より検査領域が小さく基本的解像度が高い超音波を使用するため、再現性
をもって病変を把握できるのであれば、微少な変化もとらえることが可能となるでしょう。そうなれば、治療開
始早期での効果判定が可能となることが期待されます。 逆に、本研究で本基準の有効性を検証できれば、超音波の早期治療効果評価における有益性と同時に、繰り返
し腫瘍部位を正確に同定する精度を証明し、乳がん術前療法評価のモダリティとしての可能性を証明することに
なります。そこで、乳がん術前療法2サイクル終了後の超音波画像の変化を8パターンに分類する乳がん術前療
法早期超音波評価基準と、術前化学療法終了後の最終治療効果判定との関係を検討し、本評価基準の有効性を検
証する研究を考案いたしました。 <研究区分> 本研究は日本乳腺甲状腺超音波診断会議(JABTS)における精度管理研究班が行う研究であり、多施設共同研究
で実施され、JABTS BC-03 と称されます。本研究は観察研究であり、現在の日常診療で日常的に行われている術
前化学療法∼乳がん手術の過程において、ルーチン時実施される超音波検査画像および病理診断結果を、連結可
能な匿名化のもと集積し、分析するものです。 <評価指標(endpoint)> 1) 主要評価指標(primary endpoint): 乳 が ん 術 前 療 法 早 期 超 音 波 評 価 基 準 で、治療効果有りとされた群(responder:uCR+uPR)と、効果なしとさ
れた群(non-responder:uNC+uPD)とを比較し、pCR(切除標本の最終病理診断で腫瘍がすべて消失している状態)
率との関係を検討します。 2) 副次的評価指標(secondary endpoint): 下記について、解析、評価いたします。 
乳がん術前療法早期超音波評価基準は、多施設間で再現性をもって安定実施可能である。 
乳がん術前療法早期超音波評価基準の各パターンの割合の算出。その感度、特異度。および pCR 予測に対す
る感度、特異度 
乳がん術前療法早期超音波評価基準と治療前後の病理学的因子との関連性。 
乳がん術前療法早期超音波評価基準は、最終的乳房温存手術率との関連性。 
乳がん術前療法早期超音波評価基準は術直前 clinical response と関連性。 
乳がん術前療法早期超音波評価基準と治療前後の他の画像モダリティ(CT、MRI)との関連性。 <研究の対象> 術前化学療法開始前に組織学的に乳がんと診断され、術前化学療法施行予定の症例で US にて計測可能な病変
を有する症例。単多発、進行度や、術前化学療法の内容は問いませんが、全サイクルが 6∼8 サイクル以上ある
ことが望ましいと考えます。 <研究の方法> 術前療法開始前(下図 A)と 2 サイクル終了後(下図 B)の超音波画像および病理診断結果を収集します。超
音波検査法、撮像方法は本研究の手法に従って行わなければなりません。収集した超音波画像は画像中央判定委
員会で所見判定を行った後、各施設の超音波効果判定結果、病理情報と照らし合わせ、それぞれの endpoints に
ついて解析を行います(下図 C)。 →
<予定症例登録数と研究期間> 予定症例登録数:150 例、登録期間:12ヵ月、研究期間:2 年 <倫理的事項の概略> 本研究は疫学研究の観察研究に分類されます。本研究で用いる検査データは通常診療で行われる術前化学療法
中に必ず実施する超音波検査画像で、被検者に対して新たな侵襲、負担は増加しません。また日常的な術前化学
療法で行われる検査データのみを収集対象としていることから、治療方針への介入もありません。本研究に用い
る個人データは各施設で匿名化を行った上で事務局管理するので研究参加者のプライバシーは保護されます。 <参加施設基準> 本研究は観察研究です。研究の内容上、研究参加施設は下記の項目を満たすことを必須とし、中央運営委員会
にて最終認定します。申し訳ありませんが、下記条件を満たさない施設はご遠慮ください。 ①
JABTS(日本乳腺甲状腺超音波診断会議)の幹事が所属する施設で、研究参加を希望する施設 ②
常勤病理医が在籍し、今回の観察項目の報告が行われている(内容は研究代表者に問い合わせください) ③
日本超音波医学会専門医(または専門技師)と乳腺専門医が在籍し、検査精度が保証される ④
フルデジタル装置で10MHz 以上の体表用プローブを用いて乳房超音波検査が可能な施設 ⑤
超音波画像をマスキングされたデジタルファイル形式で提出することが可能な施設 ⑥
同じ装置で一人の患者を撮像可能である施設 ⑦
本研究における研究方法は一般的な乳がん精査施設で行われている通常診療の範囲内でデザインされてい
ますが、本研究の運用が参加希望施設での通常診療範囲内であること ⑧
術前療法症例数がある程度期待されるように、年間乳がん手術症例が 200 例以上あること。2009 年の症例数
を参考に判断。 <研究参加申請・施設登録> 研究に参加を希望する施設は研究代表者 (川崎医科大学 中島一毅、メールアドレス:[email protected]) にメールで参加意向を伝えてください。その場合、通常実施の術前療法のレジメン、術前療法中の画像診断の
時期、内容、治療開始前の針生検と切除標本の最終病理報告の内容をお伝えください。施設の検査、手術の状況、
病理レポートの評価項目などを確認した後、中央運営委員会での協議し、参加可能または不可のメールをいたし
ます。 なお、上記の基準を満たす参加希望施設が多い場合は、事務局の対応能力を考慮し研究代表者が調整する場合
もあります。