採用について

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労 ◆
働 ◆
法 ◆
務
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採用について
JC総研 経営相談部
本誌が発行されるのは 3 月。春の明るく穏やかな気
労働基準法第1条では「労働条件は、労働者が人た
候のうちで、卒業、新入学、就職のシーズンの真った
るに値する生活を営むための必要を充たすべきもので
だなかです。
なければならない」と定め、他の条文では、契約期間
JC総研の経営相談部にも、採用に関する質問が寄
を定める場合の制限、労働契約の不履行についての
せられてきます。
違約金の定めの禁止、労働者の前借金と賃金の相殺
そこで、
「就職する」つまり「採用」とは、どういう
の禁止など、労働者を保護する規定がされています。
ことなのか考えてみます。
また、労働契約法第1条では「労働者及び使用者の
自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、
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又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関
.採用するとは
する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条
「採用」とは、使用者と労働者が雇用契約を締結す
件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを
ることとされています。民法第 623 条では「当事者の
通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の
一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相
安定に資することを目的とする」とされています。
手方がこれに対してその報酬を与えることを約すること
つまり、これらの趣旨に沿って考えると、使用者は
によって、その効力を生ずる」と規定しており、この関
労働者を採用する時には、労働者の保護の観点に立っ
係を雇用契約と呼んでいます。
て契約を締結することが大切であると思われます。
一方、労働契約法第6条では、
「労働者が使用者に
うことについて、労働者及び使用者が合意することに
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よって成立する」と規定しています。
一方、使用者が労働者の採用を行う場合、公共の
民法では「約することによって、その効力を生ず
福祉、労働者保護、人権などの原理に基づく法律に反
る」、労働契約法では「合意することによって成立
しない限り、自由とされています。
する」となっており、
「働きたい」と申し込み、
「働い
よく引用されるのが、三菱樹脂事件大法廷判決(最
てください」と承諾すれば、契約は成立することになり
大判昭 48.12.12)で、
「憲法は ・・・(略)・・・ 第 22 条、
ます。
第 29 条等において、財産権の行使、営業その他広く
しかしながら、昔から労働者の方が使用者側より立
経済活動の自由をも基本的人権として保障している。
場が弱い場合が多く、そのため、使用者が不利な条
それゆえ、企業者は、かような経済活動の一環として
件を労働者に押し付けることがないよう、法律でもい
する契約締結の自由を有し、自己の営業のために労働
ろいろな配慮がなされています。
者を雇用するにあたり、いかなる者を雇い入れるか、
使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払
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労働法務チーム
JC総研レポート/2014年 春/VOL.29
【労働法務】採用について
.採用の自由
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いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他に
まな要請により、法律上の制約が増えており、使用者
よる特別の制限がない限り、原則として自由にこれを
としては、それらに留意しながら、採用活動を行って
決定することができる」
(下線、筆者挿入)とされました。
いくことが必要と思われます。
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昭和から平成に移り、現在は、この判決文のなかの
「法律その他による特別の制限」が増加し、強化され
る流れにあります。
【参考資料】菅野和夫『労働法 第 10 版(法律学講座双書)』弘文堂、
2012 年、など
以下に、
「法律その他による特別な制限」にどのよう
なものがあるか簡単に記載します(表)。
これらの判例・法律などから、採用については、何
人採用するか、どのような人を採用するかは本来的に
は使用者の自由です。しかしながら、男女の雇用機会
均等や、障害者保護、派遣労働者の保護などさまざ
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