「月刊不動産流通」2011年2月号より転載 vol.337 宅地建物取引業者による 所有権留保等の禁止について 教えてください 1 所有権留保の禁止 るための所有権留保は禁止されています (法第43条第3項)。 所有権留保とは、宅地建物の割賦販売に おいて、宅地建物取引業者(以下「業者」 という。 )が売主として物件を買主に引渡 2 譲渡担保の禁止 した後も、残代金の債権を保全するために 所有権留保を禁止したとしても、残代金 所有権を移転しないで、自己の所有のまま の保全措置として、業者が買主から当該物 にしておくことをいいます。 件の所有権を譲渡担保として譲り受けるこ しかし、業者が所有権を留保すると、買 とがあります。この場合、所有権は買主か 主である一般消費者は物件の引渡しを受け ら売主に移転するので、所有権留保の場合 たとしても、所有権及び登記がないため、 と同様に買主は第三者に対抗することがで 業者が二重売買した場合や、倒産した場合 きなくなります。そのため、法第43条第2 に第三者(二重売買によって登記を得た別 項では、①代金の額の10分の3を超える額 の買主や業者の債権者)に対抗することが の金銭を受け、かつ、②買主に物件を引渡 できなくなります。 した後は、担保の目的で当該物件の所有権 このような事態を防止するために、宅地 を譲り受けてはならないとされています。 建物取引業法(以下「法」という。)第43 また、提携ローン方式による売買におい 条第1項は、業者は自ら売主となる割賦販 ても、業者が買主に対する求償権を担保す 売を行った場合、①代金の額の10分の3を るために当該物件の所有権を譲渡担保とし 超える額の金銭を受け、かつ、②買主に物 て譲り受けることは禁止されています(法 件を引渡すまでに、登記その他の引渡し以 第43条第4項)。 外の売主の義務を履行しなければならない と規定しています。ただし、抵当権もしく 所有権留保等の禁止に反する特約をした は不動産売買の先物特権の登記申請や保証 場合、その特約は私法上有効です。しか 人を立てるといった残代金の保全措置を講 し、法に違反したとして、業者は業務の全 じる見込みがない場合に、業者が所有権を 部または一部の停止処分、情状が特に重い 留保することは認められています。 ときは免許が取り消されることもあります また、買主が支払いに充てるための資金 ので、法の遵守に万全を期してください。 を銀行等から借り入れ、その返済を業者が 保証する提携ローン方式による売買におい (文責 奥本絵美) ても、業者が買主に対する求償権を担保す 36
© Copyright 2024 Paperzz