0(66 - 日本シーカ株式会社

SIK A JAPAN
CUSTOMER
MAGAZINE
日本シーカ カスタマーマガジン
ISSUE No.2 SEPTEMBER 2011
Sika’s Innovation
シーカの革新。
このたびの東日本大震災により、
お亡くなりになられた方々に心よりお悔やみ申し上げますとともに、
被災された方々に謹んでお見舞い申し上げます。
少しでも早い復旧を心よりお祈りいたします。
1
Customer Magazine EVOLUTION
SIK A JAPAN CUSTOMER MAGA ZINE
ISSUE No.2 SEPTEMBER 2011
Sika’s Innovation
C
O
N
T
3
5
E
N
T
S
MESSAGE ①
日本シーカ株式会社 代表取締役社長 大場 孝一
「私たちの目指すイノベーションは、
すべてがお客様のためにあります。」
MESSAGE ②
日本シーカ株式会社 代表取締役副社長 保木本 亘
「イノベーションは、
カエルの卵みたいなものです。」
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NEW PRODUCTS
新製品紹介
9
SPECIAL INTERVIEW
慶應義塾大学 環境情報学部教授 清水 浩 氏
「太陽電池が、21世紀型文明の扉を開く。」
13
CUSTOMER CLOSE UP
元旦ビューティ工業株式会社 代表取締役社長 舩木 亮亮 氏
「いま、屋根の役割が大きく変わろうとしています。」
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TALK
特別企画/カスタマー座談会
防水業界の「いま」と「明日」を語る
21
The Sika EXPERIENCE
Webサイト紹介
インターンシッププログラム
23
PRODUCT REPORT
製品レポート
シーリング関連事業
25
Sika′
s 100 Years Jubilee
100周年に沸いた
世界中のシーカ
26
LATEST NEWS
展示会出展 etc.
Customer Magazine EVOLUTION
2
0(66$*(
Our concept of innovation
benefits for all customers.
私たちの目指すイノベーションは、
すべてがお客様のためにあります。
まずはじめに、このたびの東日本大 震 災により被害にあわ
れた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。被災地の、1日
も早い復興を心よりお祈り申し上げます。また、弊社がこの
未曾有の危機を乗り越えることができたのは、お客様、そし
て取引先のサプライヤーの方々の協力があってのことでし
た。ここに、感謝を申し上げます。
前号のカスターマガジンからおよそ1年が経ちましたが、そ
の間の大きなトピックは、ふたつあります。ひとつは、東日
本大震災が起こったことです。大震災では、もちろん弊社も
さまざまな被害を受けましたが、製造ラインを止めることな
く、お客様のもとへ製品を届けることができました。競合他
社が原料調達に苦慮しているときにこのようなことを可能に
したのは、シーカがグローバル企業であることの強みに他
ありません。もう大震災は起きて欲しくありませんが、予期
せぬ出来事が起こった際にもグローバルに展開するネット
ワークを駆使して、臨機応変に対応していけることが実証さ
れたと思います。
日本シーカ株式会社 代表取締役社長 大場 孝一
President, Sika Japan KOICHI OBA
3
Customer Magazine EVOLUTION
0(66$*(
President
もうひとつのトピックは、ダイフレックスとの資本・業務提携を結んだことです。日本は建設市場に
限らず、あらゆる分野で高品質を望む傾向があります。おそらく日本で要求される製品とサービス
のレベルは、世界でも一番高いのではないでしょうか。例えば施工の仕上がりに関しても、ヨーロッ
パもしくはアジアの他の国々とは比較にならないほどの仕上がりを要求されます。私たちシーカグ
ループの製品、そして技術は世界各国で認められ、高い評価をいただいていますが、日本のお客様
に認めていただくためには、日本特有の改良を行う必要があります。そういったなかで、46年とい
う長い歴史を誇り、日本市場にいくつもの革新的な製品・サービスを提供し、日本市場とお客様に
ついて熟知しているダイフレックスとパートナーシップを結べたことは、弊社にとっても大きな意味
を持っています。日本の防水のトップメーカーと、世界の防水のトップメーカー…といっても日本で
はまだ混和剤とシーリング材が主ですが…が提携を組んだことによって、かなり革新的な製品が市
場に登場するのではないかと、大きな期待を寄せられていることを実感しています。
The key for innovations is on job-sites.
Innovationのタネは、すべて現場に落ちています。
今号のカスタマーマガジンのテーマは、イノベーション(Innovation)です。そこで、この単語につい
て辞書で調べてみると、イノベーションはラテン語で「イン・ノヴァティス」といい、
「 Make New」と
いう意味と「Renewal」
「Change」という意味があると書かれていました。しかし、この辞書の意味
のとおりに新しい製品を作ったり(=Make New)、改良したり(=Renewal)することはもちろんひ
とつの革新(=Innovation)ではありますが、そこにお客様のメリットが伴わなければ、本当のイノ
ベーションではないと私は考えます。つまり、私たちが開発した製品、日本に導入した製品、そして
お届けするサービスをお客様が使うことによって、例えば工期が半分に短縮されたり、耐久性が倍
に伸びたり、保証年数が5年に延びるなど、何らかのメリットをお客様が得られなければ、私たち日
本シーカにとってそれはイノベーションとは言えないのです。それではどうすれば、お客様にメリッ
トを提供できるイノベーションができるのでしょうか?それは、
「現場」に行くことだと思います。現
場に行って、現場で何が起こっているのかを把握し、お客様が何を望んでいるのかを理解して、そ
れをもとに新しい製品やサービスを考える…それがイノベーションの第一歩になるのだと思います。
私もできるだけ時間を作って、現場に行くつもりでおります。
Striving for innovations which contribute to
the Japanese economy.
日本経済に貢献するInnovationを、目指します。
現在の日本が抱えている政治不安、経済の停滞は、いきなり180度回転してバラ色の世界になるよ
うなことは決してありません。まだまだ停滞は続くでしょうし、好転の兆しもそうすぐには期待でき
ないと思います。そのような社会状況の中で、日本経済の土台を支えているのは私たちのような中
小企業です。私たちが確実に利益ある成長を続けていくことが、社会のあらゆる面において日本経
済の活性化につながるのです。シーカグループは、おそらく日本の競合他社が持っていないような
資金力を有しています。そして2年前のリーマンショックの際に、平塚工場に高粘度接着剤用新ライ
ンのための投資をしたことからも分かりますが、日本シーカのものづくりにおける技術力、そしてそ
こから生み出される製品の品質の高さは、スイス本社からも信頼を得ています。私たちは、シーカグ
ループの豊かな資金力と、スイス本社から勝ち得た信頼をもとにもっと日本に投資を促し、ひとつ
でも多くのお客様に利益をもたらすイノベーションを実現し、日本経済の活性化に貢献していきたい
と思います。
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0(66$*(
$*(
(
To me,
innovation is more like frog eggs.
私にとっての「イノベーション」は、カエルの卵みたいなものです。
And "glocalization" is
the core DNA of Sika Group.
「グローカル」が、シーカグループのDNAです。
今 年5月のデータになりますが、株 式時価総額の世界トップ
100社の中で、最も企業数の多い国はアメリカで38社、以下
イギリス11社、中国10社、フランス7社、ドイツとスイスが同
数で5社、そしてその次に日本が4社で入っています。ちなみ
にスイスの5社とは、ネスレ(食 品)、ノバ ルティス(医 薬)、ロ
シュ(医薬)、UBS(金融)、エクストラータ(鉱山資源開発)です。日本は、トヨタ、NTT、ドコモ、ホンダの4社です。なぜ、
面積は41,000km2で九州と同じくらい、人口は約780万人で愛知県と同じくらいの小さな国が、何倍も多い人口と広大
な土地を持つドイツと肩を並べることができるのでしょうか?その理由は、国土が狭く鉱物資源もないことから、人の智
恵と勤勉さを国の資源と考え、教育、人材育成に力を注いできたからです。また、積極的に海外からの投資や人材を受け
入れてきたことも、理由のひとつでしょう。さらにいえることは、国内の市場が小さいために必然的にグローバルな展開を
迫られるということです。スイスで101年の歴史を歩んできたシーカも、中小企業のレベルの段階から、つねに世界の市
場を視野に入れたビジネスモデルの構築、研究開発に取り組んできました。そして、世界各国のシーカ各社はグローバル
に展開する製品・技術・サービスを活かしながら、それぞれの国の特性に合った製品・技術・サービスを開発し、お客様に
提 供すること、つまりグローカル(グローバ ル+ローカル)な展開を行っているのです。これこそが、シーカグループの
DNAであり、もちろん私たち日本シーカにもそのDNAは受け継がれています。
日本シーカ株式会社 代表取締役副社長 保木本 亘
General Manager, Sika Japan WATARU HOKIMOTO
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Customer Magazine EVOLUTION
0(66$*(
General Manager
We support customers' globalization.
お客様の海外進出も、多角的にサポートします。
私たちは、つねにお客様の製造、施工、設置、廃棄など、あらゆる場面において、私たち
の製品によってより機能・性能・効果が高くなるところ、あるいはコストを削減できると
ころに注目し、そこに製品、ソリューションを提案することを心がけています。たとえば
これから間違いなくニーズが高まるであろうソーラーシステムで考えると、従来は溶接
やボルトなどを使っていたパネルと設置台の接合を、私たちの弾性接着剤に変えると、
「面」で接合するために接合力が強まるだけでなく、強風によってパネルが割れたりする
トラブルもなくなります。これは、ボルトなど点による接合では無理な力がその点の部
分に集中してしまいますが、弾性接着剤を使用すると接合面に柔軟性があるため、力を
分散させることができるのです。また、日本の私たちのお客様の今後10年を考えた場
合、海外展開をこれまで以上に加速する企業が多いと思います。そのとき、日本シーカ
を海外展開のパートナーとして選んでいただけるようにしたいと考えています。海外の
市場の情報をいち早く提供したり、お客様と共同で研究開発を行ったり、さらには現地
でのテクニカルサービスや営業サービスまで、グローカルに展開する日本シーカならで
はの、多角的なサポートをご提供させていただきます。
Innovation and efficiency do not go together.
Innovationは、効率化できるものではありません。
この25年くらいの間、特にグローバルな展開をしている企業はイノベーションに効率化
を求めていました。また、計数管理をしようとしていたと言っても良いかも知れません。
しかし、イノベーションは効率化できるものではありません。イノベーションは、いわば
カエルの卵です。カエルが子孫を残すために唯一有効な方法は、たくさんのタマゴを生
むことです。イノベーションも同様で、イノベーションを実現するためには、アイデアを
たくさん出すしかないのです。ここで注意したいのは、
「イノベーション=新しい技術、新
しい製品」ではないということです。確かに新技術・新製品とイノベーションは非常に近
いものですが、必ずしも同じではありません。新しい技術や製品の開発にとらわれず、
お客様の気がついていないニーズはどこにあるのか、こういうものがあったら便利だろ
うというアイデアをたくさん出すことが、イノベーションにつながるのです。イノベーショ
ンのタマゴは、
「現場で見つけるもの」で、
「お客様と話しているときに気がつくもの」だと
私は思います。これからも、たくさんのタマゴを生んで、ひとつでも多くのお客様のため
になるイノベーションを孵化させてゆきたいと考えています。
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1(:352'8&76
HYBRID!!
MIXING EACH ADVANTAGE OF
MODIFIED SILICONE AND URETHAN.
THE MOST ADVANCED BODY SEALER.
MODIFIED SILICONE
URETHAN
性能を追求したら、
それは「ハイブリッド」になった。
次世代
ウレタンと変成シリコンの長所を併せ持つ究極のシーラー、遂に登場!
常温での施工が可能な最新ハイブリッド技術を用いた次世代ボデーシーラーです。
1液、2液塗料のみならず、水性塗料の上塗りも良く※、ノンプライマーでの接着も良好です。
また、溶剤を含んでいないため、低臭で人体や環境への影響も低減できます。
※塗料によっては確認が必要です。接着性・塗料との適合性は事前に確認してください。
水性塗料対応 次世代ボデーシーラー
2011年6月発売開始
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1(:352'8&76
新製品紹介
水分の浸入は止める。
コンクリートの呼吸は止めない。
水や塩化物イオンの浸入を防ぎ、内部の水蒸気は透過させる先進のシリコーン・テクノロジー
シーカガード ®-706 チキソは、吸水防止層を形成することにより、表面の透湿性を保ちながら
水や塩化物イオンの浸入を抑制し、コンクリート構造物の長寿命化に貢献します。
●クリーム状で、優れた含浸深さ ●1回塗りが可能で、天井面への施工も容易 ●白色から無色透明へ変化、外観を保持
Sikagard -706 Thixo
®
シラン系浸透性吸水防止材
シーカガード ®-706 チキソ
2011年7月発売開始
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太陽電池が、21世紀型文明の扉を開く―
慶應義塾大学環境情報学部教授
清水 浩
氏
「太陽電池を地球上の陸地の1.5%に貼れば、
世界中のおよそ70億人がアメリカ人と同じだけの
エネルギーを使えるようになります。
この1.5%が、豊かな未来への鍵なのです。」
地球温暖化も、石油枯渇も、化石燃料が原因ということでは同じ問題であり、
片方を解決すればもう一方も解決する、と清水教授は語ります。
そこで、その具体的な解決策である、教授が開発する電気自動車と、太陽電池についてお話をうかがいました。
9
Customer Magazine EVOLUTION
63(&,$/
専門家とは違った発想で、
ブレークスルーを実現
はじめに電気自動車の開発に取り組まれるようになった、
きっかけを教えてください。
子供の頃からクルマが好きで、大学ではクルマの研究をするつもりで
いました。しかし当時、公害と交通事故が非常に大きな社会問題になっ
ていたため、そのような分野を自分の一生の仕事にして良いのかと悩
み、学部は工学でしたが、学科は基礎を学んでおけばつぶしがきくと
いうことで(笑)、応用物理を専攻しました。そして大学院に進み、レー
ザー光を使用して大気汚染を測定する「レーザーレーダー」という機器
の開発に取り組みました。その縁で卒業後、設立されて間もなかった
環境庁の国立公害研究所に入所しました。そこで世界最大のレーザー
レーダー装置の開発という大きなプロジェクトに携わった後、次は大
気汚染を測定することより実際に環境問題を良くすることに関わりた
いと考え、電気自動車の開発に進みました。このように、私はクルマに
ついての専門的な教育はまったく受けていません。しかし大学で学ぶ
物理は力学、電磁気学、量子力学なので、それらをどの分野に応用す
るかということだけで、レーザーレーダーも電気自動車も、そんなに
大きな違いではないと考えていました。しかし、まわりの人は「何を考
えているのか?」というような感じだったと思います
(笑)。
INTEREVIEW
先生が開発されたエリーカは、エネルギー消費効率だけでなく最高速
度や加速感なども追求されています。
電気自動車というとエコの部分が強調されて、乗り心地や運転するこ
との喜びなどはあまり重視されていません。しかし、クルマは実用の
ために乗るのはもちろん、ドライブのように楽しむために乗るもので
もあるわけです。その楽しみの部分をなくしてしまったら、普及するこ
とはありません。そこでエリーカでは、クルマに求められることは何か
を考えて導き出した3つの要素、
「加速感」
「乗り心地」
「スペース」を高い
次元で満たすことを目指しました。その結果として、特に加速感につい
ては時速100マイル(時速160km)に達するまでの加速勝負で、あの
ポルシェに勝つことができたときは、うれしかったですね!
電気自動車がもたらす、
技術のターニングポイント
ちょうど昨年の今頃、先生が関わられている神奈川県の電気バスの試
作に弊社の弾性接着剤を使っていただきました。
その節は、お 世話になりました。接着剤による部 材の接 合は、ボルト
などの接合部品を使わない分、軽量化に貢献します。また、アルミや
FRP、樹脂部品など、溶接できない部材を接合することもできますし、
それは先生が『脱「ひとり勝ち」文化論』でも書かれている、
「既知の組み
スポット溶接よりも全体を接着するほうが強度も高くなります。このよ
合わせで従来の枠を取り払ったら、自動車メーカーでなくても電気自
うに電気自動車の製造に欠かせない弾性接着剤の製造メーカーである
動車を作ることができる」の具体例のようですね。
日本シーカさんには頑張っていただき、今後も優れた製品を提供して
いただきたいと思います。この溶接構造から接着構造への転換などは
確かにそうですね。当時の自動車メーカーは、エネルギー量の少ない
良い例ですが、電気自動車の開発・製造の現場では、従来にない新し
鉛電池では電気自動車は作ることができないと考え、開発に力を入れ
い技術や製品がたくさん使用されます。そこで私は電気自動車を開発
ていませんでした。そこで私は「それならばエネルギー量の少ない鉛電
する会社
(株式会社SIM-Drive)を設立し、会員各社から参加費をいた
池で走らせることのできる、エネルギー消費の少ない電気自動車を作
だいて電気自動車のプロトタイプを製作し、その製作過程で開発した
れば良い」と考えました。つまり、モーターで消費する電気量はもちろ
技術やノウハウを各社に継承、それぞれのビジネスに役立ててもらうと
ん、ころがり摩擦や空気抵抗、ブレーキ時に消費されるエネルギーな
いうシステムを作りました。今 年 の 春に1台完 成させ、現在、2台目を
ど、さまざまなところで消費されるエネルギーを限りなくゼロに近づ
34社の 参加を得て作っています。ヨーロッパからもPSA、ボッシュ、
けるのです。そうすれば、電池のエネルギーも限りなくゼロに近くて良
ダッソーなどの会社が参加しています。PSAはご存知かもしれません
くなります。この考え方を基本に、これまで電気自動車を12台作って
が、プジョーとシトロエンを製造・販売しているフランスの会社です。パ
きましたが、残念ながらまだ実用化されたものはありません。予定で
リの街を、私たちの手がけた電気自動車がきびきびと走りまわる姿を
は5年で実用化され、40歳で大金持ちになっているはずだったのです
思い浮かべながら開発を進めています
(笑)
。さらに3台目のプロジェク
が(笑)…。
トを来年2月からスタートさせる予定です。
Customer Magazine EVOLUTION
10
63(&,$/,17(59,(:
人類が40年かかってたどり着いた、
太陽電池という「解」
2005年 には 世 界 の50%の 太 陽 電 池 を日 本 が 作って いました が、
2010年には10%台に減ってしまいました。これから始まる太陽電池
の時代を、日本がリードする可能性はあるのでしょうか?
「これからは太陽電池の時代になる」とおっしゃっていますが、
その理由を教えてください。
技術的なレベルは依然として日本が最も優れていますから、その技術
を活かした新しいビジネスモデルを構築すれば可能性は大いにあると
21世紀の中心となるエネルギー技術について考えると、まず、原子力
思います。太陽電池のバリューチェーンは、太陽電池の製造メーカーが
は無くなるのではないかと考えざるを得ません。これは、現実性、公平
あり、販売する家電メーカーがあり、家庭に販売し、施工会社が工事
性、持続性、最大効果量、資源制約、環境調和性、新たな問題、限界コ
する、というものです。これが今後は、大量の太陽電池を製造するメー
スト、利用の容易性など、9つの条件について太陽電池、バイオ、風力、
カーがあり、広大な面積に太陽電池を貼る施工会社が工事を行い、そ
水力、原子力を比較すると、原子力はかなりの条件に「×」がついてし
の大量に貼られた太陽電池を管理する会社が登場する、といったよう
まうのです。では、なぜ太陽電池かというと、先ほど述べた9つの条件
に変化していくことになります。この新しいバリューチェーンへの移行
についてもっとも評価が高かったのが太陽電池であり、太陽電池を地
をいかにスムーズに、しかも迅速に行えるかがポイントになるのでは
球上の陸地の1.5%に貼れば、世界中のおよそ70億人がアメリカ人と
ないでしょうか。
同じだけのエネルギーを使うことができるようになることが分かって
いるからです。1970年に世界各国の科学者100人で構成される「ロー
マクラブ」が未来に関する報告書「成長の限界」で「エネルギーの枯渇」
「環境問題」
「人口の大 爆発」を予測し、それをきっかけに73年にオイ
ルショックが起こり、世界中で石油に代わるエネルギーの研究が活発
になりました。そしてさまざまな試行錯誤を経て40年後の現在に残っ
たのが、太陽電池でした。人類は40年かかってやっと「解」を見つけた、
というのが私の印象です。石油が主役であった20世紀は、先進国の約
1割の人たちだけが幸せな時代でした。しかし太陽電池が主役になる
21世紀は、その潤沢なエネルギーによって世界中の70億の人たちが
幸せな時代になるのです。
人生×イノベーション=エリーカ
最後に、今号のテーマであるInnovationについてお聞かせください。
先生にとってInnovationとは、何でしょうか?
私にとってInnovationとは、人 生をかけてやってきたものです。そし
て実感したことは、社会を良くするものであると同時に、フリクション
も多いということです。もっとスムーズに電気自動車の時代が来るか
と思っていましたが、そう簡単にはこないものだなと(笑)。でもいつか
くることは間違いないことであって、夜明けはもうすぐそこまできてい
るところだと思います。
インタビューを終えて
とても気さくに、難しい内容の話を私たちに理解できるレベルに噛み砕い
て、わかりやすくお話ししていただきました。いま、社会には東日本大震災
と原子力事故、そして地球温暖化などいろいろな問題がありますが、先生
のお話をお伺いすると、私たちの未来には明るく豊かな社会が待っている
ことがわかりました。そしてそれは決して夢物語ではなく、すでに具体 的
に動き出しているということも、インタビュー後にエリーカを見せていた
だくことで実感しました。お忙しい中、長時間のインタビューに加えて撮影
しかし太陽電池は、まだまだコスト的に問題があると思いますが。
にも笑 顔で応えていただき、本当に感謝しております。近い将来、先生の
開発された電 気自動車でドライブにいける日がくることを、楽しみに待っ
確かに、まだ安くはありません。設 置にかかる費 用を償却するには、
20年かかります。しかし、実際は余剰電力の買い取り制度があるので
およそ10年で償却が可能です。実は今年6月、私の家にも設置しまし
たが、売電でかなり利益をあげてくれています(笑)。東日本大 震 災に
ともなう原発の事故は、太陽電池の普及を大いに促進することになる
と思います。このまま世論の高まりが続けば、そう遠くないうちに原
子力よりも太 陽電 池で 起こした電 気のほうが 安くなる時代がくるで
しょう。そうなれば、世界中への普及はあっという間です。1.5%とい
う数値が、具体的に見えてくると思いませんか?
11
Customer Magazine EVOLUTION
ています。
し
か
し
、
夜
明
け
は
目
の
前
に
来
て
い
ま
。
﹂ す
。
…
あ
と
5
年
く
ら
い
で
し
ょ
う
か
︵
笑
︶
す
で
に
30
年
か
か
っ
て
い
ま
す
。
﹁
電
気
自
動
車
は
5
年
で
で
き
る
予
定
で
し
た
が
、
63(&,$/
INTEREVIEW
Profile 清水 浩 慶應義塾大学環境情報学部教授 8つの車輪のすべてにモーターを挿入し、最高速度は370km!この電気自動車の世界にInnovationをもたらしたEliica(エリーカ)と、その開発者の清水教授は、テレビや雑誌などメディアにもたびたび
登場しているので、ご存知の方も多いと思います。また、清水教授には昨年度の「日本シーカのイベント」で講演をしていただき、来場者の皆さんに大好評を博しました。1947年に宮城県で生まれた
清水教授は、東北大学工学部博士課程を修了後、環境庁国立公害研究所(現環境省国立環境研究所)で地域計画研究所室長を勤めた後、アメリカ・コロラド州立大学へ留学。帰国後、国立公害研
究所に戻り、地域環境研究グループ総合研究官を経て、現職に就かれました。電気自動車や環境問題に関する著書も多く、近著『脱「ひとり勝ち」文明論(ミシマ社)』は、現代社会が抱える地球温暖
化やエネルギー問題に対する解決策がとてもわかりやすく書かれています。また、清水教授ならではの発想や考え方は、思わず目からウロコが何枚も落ちてしまうほど!おすすめの1冊です。
Customer Magazine EVOLUTION
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&/26( 83
屋根をとおして、
「21世紀の環境創造」に貢献する―
元旦ビューティ工業株式会社 代表取締役社長
舩木 亮亮
氏
「いま、屋根の役割が大きく変わろうとしています。
それは、雨風から建物を守るだけでなく、
これからの地球環境に貢献することです。」
舩木社長が目指すのは、
「屋根の総合プロデューサー」。
創業以来、つねに金属屋根のパイオニアとして業界の最先端を走り続けてきた同社が考える、
これからの屋根の役割と、環境問題への取り組みについて語っていただきました。
日本の金属屋根の歴史を創った、
パイオニア的存在
御社は半世紀近い歴史をお持ちですが、
創業から一貫して屋根に携わってこられたのですか?
当社は私の父で現会長の舩 木元 旦(ふなき もとかつ)が、1965年
に創業しました。もともと会長の兄が板金屋を経営しており、そこで
修行していた会長が独 立して「舩木 鉄板」という会社を立ち上げたの
が始まりです。そして1975年に、
「元旦ビューティ工業株式会社」に社
名を変更しました。創業時から金属屋根の領域を中心に事業を展開し
てきて、今年で創業47年目になります。金属屋根という言葉はいまで
こそ普通に使われていますが、当社の草創期の頃には「ブリキ屋根」と
いわれていました。ブリキは錫をメッキした薄い鉄板で、加工がしや
すかったためいろいろなものに使われていました。ジョーロや煙突、
そしてキッチンまわりに使われていたのを憶えている方もいらっしゃ
るかもしれません。そして戦後の復興需要を経験して、現在のガルバ
リウム、アルミ、ステンレス、さらに高価なチタンなどの金属が使われ
るようになりました。金属屋根の施工は、初めの頃は「縦葺き屋根」が
ほとんどでした。その市場に現在は一般的になっている「横葺き屋根」
を持ち込んだのが、当社です。横葺きは長い資材を使用するため、現
場に機械を持っていって加工しなければならず、手間もかかるし現場
でのロスも非常に多いものでした。それを当社の会長が、工場で安定
した品質の資材を製造する、いわゆる工業化のシステムを開発したこ
とで普及させたのです。当時は業 界の大半の方が「うまくいくわけな
い」と考えていて、一緒に工業化に取り組む会社もありませんでした
し、相当な 投 資も 行っていたので、会 長 がかなり苦 労していたのを
覚えています。
13
Customer Magazine EVOLUTION
しかしその業界に対する挑戦、
イノベーションが現在の御社の礎を築いたことになるのですね。
そのとおりです。資本力の無い会社が業界で生き残っていくためには、
やはり智恵しかないと思います。他人がやっていないところを探して
手をつけていかないと先駆者になれないし、市場開拓もできないとい
うのが会長の基 本にあるので、
「つねに新しいことに挑戦していく」こ
とが当社の社風として根付いています。ただ、問題になるのが良いも
のは必ず真似をされるということです。そこで当社では、私たちが作っ
たものの価値、つまり知的財産を守るために特許の取得を積極的に
行っています。もちろんコストもかかりますが、それは必要な投資で
あると認識しています。
&/26(83
CUSTOMER
Profile 舩木 亮亮(ふなき あきふさ) 元旦ビューティ工業株式会社 代表取締役社長 元旦ビューティ工業株式会社の歴史は、そのまま日本の金属屋根の歴史といっても良いかも知れません。
独創性を企業理念に掲げるだけに、同社が開発した製品・システムも数多く、累計特許出願数1231件、
累計実用新案出願217件という驚異的な実績(2011年3月現在)を誇ります。これらの特許技術をベース
に、高い防水性、耐風圧性、断熱性を誇る金属屋根システムを開発、博物館や体育館などの公共施設か
ら一般の戸建住宅まで、さまざまな建物に採用されています。また、環境問題にも積極的に取り組み、
屋根一体型太陽光発電に関しては業界に先んじて、20年以上も前に開発していたほどです。
舩木社長が代表取締役社長に就任されたのは、2009年6月。アメリカの金属屋根メーカーに3年間在籍
し、日本とアメリカの製品や技術、そして考え方の違いなどを熟知した社長は海外事業部長も兼任、同
社の海外進出の推進役も担っています。お父様である先代社長の「進取の精神」
「イノベーター的気質」
もしっかりと受け継ぎ、新しいアイデアと技術の開発を進めることで、屋根をとおして環境と社会に貢献
することを目指されています。
Customer Magazine EVOLUTION
14
&/26( 83
お客様との会話から始まる、新しい挑戦
横葺きの施工事例で、記憶に残っているものはありますか?
やはり、佐賀県立九州陶磁器文化館や福島県 立博物館など、横 葺き
の施工を初めて間もない頃のものが印象 深いですね。九州陶磁器文
化館は、建物を設計した先生から聞いたのですが、工期が遅れていて
屋根の施工も工程内に終わらないのではないかと危惧されていたの
に、当社が間に合わせてしまったので驚かれたそうです。2000m 2
前後の規模でしたが、このプロジェクトで大面積にも対応できること
が証明されたので印象に残っています。福島県立博物館は、当時はま
だ無名の会社にもかかわらず、寒冷地での金属屋根の良さをアピール
することで採用されたという経緯があったので、とても良く憶えてい
ます。陶 磁器文化 館は建 設から30年以 上、福島県 立博 物 館は25年
以上経っていてすでに改修時期をむかえていますが、屋根に関して問
題になるような箇所はありません。私たちはできるだけ良い屋根を長
く、フリーメンテナンスで、しかも問題が発生したときは迅 速に対応
することをモットーとしています。あるお客 様から「30年経っても何
も手がかからなかったのは屋根だけだった、他の部分は10年周期で
何かしら問題が出てきた」と言っていただいたことがあり、これはと
てもうれしかったですね。
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Customer Magazine EVOLUTION
満
ち
あ
ふ
れ
て
い
ま
す
。
﹂
屋
根
に
は
、
ま
だ
ま
だ
新
し
い
可
能
性
が
屋
根
か
ら
の
イ
ノ
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設計の方や建設業の方の口から御社の名前がでてくることがあります
日本シーカについて、ご要望や期待することなどが
が、そういうときは「難しい施工やディテールの部分は元旦さんに…」と
ありましたらぜひお願いします。
CUSTOMER
いう話が多いような気がします(笑)。
どの業界も同じだと思いますが、現在の日本の市場はかなり厳しい状
会長は、基 本的にお客 様の要望に対しては「No」と言いません。それ
況です。そのような状況のなかで、市場占有率を高めていくためには、
が全社員に浸透しているため、お客様への返事は必ず「わかりました、
お客 様に目玉となるものを提 案し続けなければなりません。当社に
なんとかしましょう」です。そのため、お客様からいろいろとご相談を
とって、その目玉のひとつがサーナフィルです。しかし、私たちはまだ
いただき、それが新しい製品開発のきっかけになることも多々ありま
この商品の優れたところを完全に把握できていないと思います。いま、
す。たとえば北海道のお客様から、雪が滑り落ちやすい屋根はできな
当社の営業スタッフは御社からいただいたデータをそのままお客様に
いかと相談を受けたことがありました。そこで材料メーカーさんと相
見せて「これだけいいものですよ」とお勧めしていますが、それ以上の
談してフッ素樹脂加工を施した資材を開発し、ものすごく雪が落ちや
質問をされると答えることができません。そこで、もっとその特長や具
すい屋根を作ることができました。もう落ち始めると、全ての雪があっ
体的なアピールのしかたなどを教えていただくなど、いまよりもさら
という間に屋根からなくなってしまいます。このように「No」と言わな
に一歩、コミュニケーションを深くできればと考えています。それから
いことが基本なため、御社も含めて材料を供給していただいている会
御社とお付き合いさせていただいて感じることは、どこがと明確には
社から私たちの要望に対して「できない」という答えが返ってくると、
言えませんが「シーカは、やはり世界を舞台にビジネスをしている会社
私たちはすぐに「なぜ?どうしてできないの?」と言ってしまいます。こ
だな」ということです。御社と話をさせていただくと、海外事業の展開
の点では、日本シーカさんにも迷惑をかけていると思います(笑)。
を検討している当社が取り組まなければならない部分が見えてくるの
で、非常に参考になり勉強をさせていただいてます。
環境をキーワードに、
つねに新しい屋根の付加価値を追求
御社の今後の展開について、教えてください。
また環境問題については、どのように考えていますか?
主力の金属屋根については、永年培ってきた技術力・開発力を武器に、
他社との差別化をよりいっそう図っていくつもりです。しかし、これから
中心となっていくのは、太陽光発電、屋上緑化などによる環境問題への
対応でしょう。当社は25年前から太陽光発電や屋上緑化の研究を進め
ていて、屋根一体型太陽光発電は当社が日本で最初に開発しました。
最後に、舩木社長にとってのInnovationとは、
どのようなものでしょうか?
当社の活動の全てが、Innovationかも知れません。当社の基本は屋根
ですが、まだ現在私たちが扱っているもので終わりではないと思って
います。屋根に、もうひとさじも、ふたさじも新しいことを加えていく
つもりです。たとえば丈夫で軽い屋根を作れば、その建物の柱を細く
することができます。柱が細くなれば居住空間が広がり、さらにコス
トを下げることができます。このような発想を、私たちは「屋根からの
逆発想」といっていますが、この逆発想で屋根の新しい可能性を広げ
ていきたいと考えています。
このように屋根における環境問題のパイオニアとして、今後も積極的に
取り組んでいくつもりです。私は、屋根にはまだまだ新しい可能性が秘
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
められていると思います。雨風から建物を守るだけでなく、いかに付加
価値を創出するかについて智恵をしぼることが私たちの仕事であり、
インタビューを終えて
太陽光発電、屋上緑化以外にも屋根には新しい可能性があると考えて
建物における屋根の最大の役割は、雨風をしのぐことです。しかし、太陽光
います。その可能性を探るためのもののひとつが、御社の防水シート、
発電、屋上緑化など、私たちの抱える環境問題を解決するための役割も担っ
サーナフィルです。また、今後は海外事業の展開を検討しています。特
ていることについて、舩木社長のお話をうかがってより深く認識すること
に東南アジア諸国はまだまだ所得格差が大きく、日本のブリキ屋根以
ができました。さらに舩木社長は、屋根はまだいろいろな可能性を秘めて
前の時代のような地域も数多く存在しており、大きな市場と捉えてい
いるとおっしゃっていましたが、いったいどんなことが屋根から始められる
ます。さらに、国の経済力が上がってきているタイなどは、年々品質の
のでしょうか…。イノベーション精神にあふれる元旦ビューティ工業株式会
高いものを求める方が増えているので、近い将来、かなり期待のできる
社の今後の活動に、注目していきたいと思います。
市場になると思われます。
Customer Magazine EVOLUTION
16
7$/.
特別企画/カスタマー座談会
防水業界の
「いま」と「明日」を語る
写真左から
藤信化建株式会社 代表取締役 吉田 信一 氏
野口興産株式会社 代表取締役社長 野口 裕二 氏
株式会社 南防
代表取締役
原田 毅 氏
進行:日本シーカ株式会社 代表取締役社長 大場 孝一
東日本大震災という未曾有の大災害が起こる以前、日本経済は「失われた20年」といわれるほどの長期にわたる低迷が続いていました。
そして今回の大震災によって、その低迷状態がこれから先も続くことが間違いない状況になっています。このような社会経済のなかで、
建築市場における防水業界はどのような状態にあり、これからどのような方向に進んでいくのかについて、土木分野、建築分野、そして
代理店とそれぞれの立場で業界を牽引されている方々にお聞きしました。
*文中敬称は省略させていただいております。ご了承ください。
17
Customer Magazine EVOLUTION
7$/.
ダイフレックスの印象と、三浦会長
CUSTOMER
日本シーカとダイフレックスの
業務提携について思うこと
はじめに、ダイフレックスに対する印象や、
記憶に残る経験などについてお聞かせください。
昨年ダイフレックスと業務提携を結んだシーカに対しては、
どのようなイメージを持たれていますか?
吉田 ダイフレックスといえば、CVスプレーの防水工法です。私の会
社は創業 以 来、地下鉄、電 力、トンネル、ダムなど土木関係の地下構
吉田 当社はこの10月で設立43周年になりますが、常に技術は信用
造物防止水工事を専門に行っており、8年前に三浦会長に説得されて
につながると考えて技術力の向上に努め、海外の技術、製品、機器も
(笑)CVスプレーの防水 工 法を導入しました。最初の3年間は苦労し
積極的に取り入れてきました。そのおかげで海外からも止水工事の注
ましたが、その後の5年間は土木の防水工法の世界を変えるほどの勢
文を受けるまでの技術力を持てるようになりましたが、残念ながら日
いで普及していきました。特に施工後の漏水が無いことが高く評価さ
本シーカさんとはお付き合いがありませんでした。これを機会に日本
れ、現在、東 京圏内で行われている土木の防水工法の6割はCVスプ
シーカさんの製品やノウハウを提供していただき、お互いにさらに成
レーの防水工法です。
長していければと考えています。
原田 私は現在、ダイフレックス防水 工事 業 共同組合の理事長を務
原田 正直申し上げて、日本シーカさんのことはまったく知りません
めさせてもらっています。組合には準 会員を含めて全国260社が 参
でした。私は日本の南の果ての鹿児島で建築関係の防水・改修に関す
加していますが、これは1メーカーの組合としては一番規模が大きい
る仕事をさせていただいていますが、私たちの業界に「グローバル化」
のではないかと思います。私がいままで最も印象に残っていること
などという言葉はまったく縁遠いものだと思っていましたから、ダイ
は、組合が軌道に乗ってきた頃の総会で、ダイフレックスの三浦会長
フレックスが外資系の日本シーカさんと資本・業務提携するという話
が「当社は順調に利益を上げています。この利益を組合員の皆さんに
を聞いたときは、まさに青天の霹靂でした(笑)。
配分しても、おそらく1社100万円くらいでしょう。100万円ではでき
野口 お付き合いは、シーカフレックスという製品から始まり、低圧
ることは限られます。ですので、そのお 金を当社に預けてください。
注入工法の器具と注入材料、シーリング材と続いてきています。私は、
そうしたらそのお金を元にして、皆さんが次のステップに上がれるよ
ダイフレックスさんの製品ラインアップと日本シーカさんの製品ライ
うな 製品を開発して皆さんにお返しします」というようなことをお話
ンアップが合わさったことで、幅広い品揃えと材料の改良・統一化が
しされたことです。この会長の言葉に私はものすごく共感を覚え、そ
はかられ、非常に扱いやすくなっているという印象を持っています。
のときの感動がいまだに心に残っています。この三浦会長の考え方、
また、屋上から外壁、シール、床材まで、建物についてトータルで材料
姿勢が根幹にあるから、組合員の皆さんとともに40年以 上も頑張っ
供給できるようになりました。ここはこのメーカーの製品、その先は
てこられたと思っています。
このメーカーの製品と、各部分ごとに責任分担が異なっていたものが、
野口 代理店として、ダイフレックスさんと直接の取引としては10年
すべてをひとつのメーカーで扱えるようになったことは、私たちにとっ
くらいになります。その中で印象が強いことといえば、毎回、会 合に
て大きなメリットになっています。
出るたびに三浦会長がつねに新しいことを研究され、発展させている
話をしてくださるのですが、その前向きな姿勢、努力にいつも感心さ
せられています。それからごく最近のことですが、東日本大震 災のあ
と、ダイフレックスさんが 非 常に努力して材料 の 供 給を一 生 懸命な
さったことについては感動し、また助かりました。
Customer Magazine EVOLUTION
18
7$/.
縮小する建設市場に対する今後の展望
これからの防水業界を予測する
1997年には約80兆円あった建設市場が、いまや45兆円を切るまで
今後、日本の防水業界はどのように変わっていくとお考えですか?
に縮小しています。このような状況のなか、どのようにビジネスを展開
させていこうと考えておられますか?
吉田 私は土木の観点から、しかも東京に限ってということでお話し
させていただきますが、確かに市場は縮小されていますが、私のとこ
ろは1年半先までの受注があり、受けきれない仕事もあります。これ
は当社の技 術力を高く評価していただいているということで有 難い
のですが、それではダメなんです。土木は「水を制して土木を制する」
と言われるくらい高い 技 術を要求されますから、他社にも頑 張って
いただいて業界内で技術力を競い、切磋琢磨しなければ業界全体の
成長 が見 込めません。そこで先日、私は三 浦 会 長に製 品と一 緒に施
工の技術とノウハウを持ったアドバイザー的な人を育てませんか、と
お伝えしました。施工を業者に任せきりにするのではなく、メーカー
がノウハウを提 供できるようにするのです。そうすることによって製
品の能 力を100%発揮できるようになりますし、施工業者の技 術も
向上します。
原田 私どもの地元では公共工事がほとんどですから、国の政 策に
吉田 建築でいえば新築ではなく改修が主体になるでしょうが、この
よって公共 事業の予算がころころ変わっていくので、まったく先が見
改修の技術は本当に難しいものです。もちろん私たちも同様で、トン
えない状態です。そこで今後を見据えて考えなければならないのは、
ネルも作って壊して、新しいものを作るなどということはありません、
私たちの事業領域をどの方向に広げていくかということです。たとえ
改修型です。
ば鹿児島だけでも橋はおよそ1万橋もあり、そのどれもがいずれは改
原田 地域密着型ですか。設計業界もゼネコンさんもそうですが、今、
修補強を行わなければなりません。先ほど吉田社長がおっしゃったよ
県外の業者が参入することができなくなっています。昔は何百億円単
うに、土木の分野は高い技術力とノウハウが必要ですから参入しにく
位の工事が鹿 児島県内でも年に1ヶ所か2ヶ所はありましたが、それ
いところがありますが、表面の部分に関しては私たちもできることが
がまったくありませんから、県外の業者と分け合うほどの仕事もあり
ありますので、そういったところに可能性を見つけ出したいと考えて
ませんし、スーパーゼネコンさんが参入したがることもありません。地
います。シーカは土木に強いと聞いていますので、ぜひご協力をお願
域と密着した会社がフットワーク軽く動いて仕事をこなしていくよう
いします。
なかたちです。このような状況ですから、今後の製品構成については、
都市部と地方とでいろいろな意味で供給内容・体制を変えていく必
要があると思います。
野口 新築から改修に比重が移ることは、明白だと思います。そうな
ると、私たちの仕事も大きく変わってきます。新築の場合は仕様書を
基本に進めていけますが、改修の場合は下地の状態、痛み具合、その
下地を撤去するのかそのまま使うのか、下地処理剤はどのようなもの
を使うのか、など選択肢が山のように増えます。従来の私たちの仕事
は、在庫して、早く、安く供給するということが基本でしたが、これか
らはそれに加えてお客 様が要求される現 場の情報を、いかに迅 速に
提供できるかが求められるようになってきます。そうなると施工に習
熟した防水業者さんの存在が、重要になってくると思います。
野口 今後の建築業界のなかで、改修という市場について私はわりあ
い楽観的に捉えています。街には数えられないほどのビルがあり、そ
れぞれが改修時期を順 次むかえていくわけですから。確かに新築 そ
の他については厳しい部分もあるでしょうし、単価も今までより厳し
い状況になるでしょうが、建築ストックについては、ビルにしてもマン
ションにしても、戸建ての住宅にしても、どんどん建っていてそれがた
まっていく状態ですから、いろいろな智恵を出し合っていけば、まだ
まだ伸びる業界だと信じています。
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Customer Magazine EVOLUTION
7$/.
CUSTOMER
日本シーカとダイフレックスに期待すること
座談会を終えて
最後の質問になりますが、今後、私たちに期待すること、
皆さんの言葉の端々からダイフレックスの三浦会長
ご要望がありましたらぜひお願いします。
へ の 信 頼 の篤さ、関 係 の 深 さが 伝わってきました。
また、日本シーカへの期待の高さも実 感させていた
吉 田 ダイフレックスさん の いままで 持っておられる 技 術と、日本
だきました。お忙しいなか今回の座談 会のために時
シーカさんの技 術をプラスして、日本の市場に大いにPRしていただ
間を作っていただいた、吉田様、野口様、原田様には
き、われわれにもそれを浸 透していただく。双方にとってプラスにな
るPRをしていただきたいと考えています。
原田 ダイフレックスさんに期待していることは、今後も独創的な製
品・システムを供給していっていただきたいということです。日本シー
カさんに対しては、私個 人もそうですが 私 たちの 仲間は世代交 代の
時期を迎えていますので、次の世代をどう導いていけばいいかという
ことがいちばんの関心事です。そこで、これは組合員の皆さんの希望
大 変 感 謝をしております。皆 さまのお 話を 参 考に、
またいただいたご要 望については真 摯に受け止め、
ダイフレックスとともに防水 業 界に優れた製品・技
術を提 案することで、業 界 の活性化に貢 献していき
たいと思います。
大場 孝一(進行役)
でもありますが、できるだけ早く「これからダイフレックスと日本シー
カが組んでこうなっていきます、将来的にはこうしていきます」という
長期的なメッセージを発信してもらいたいと思っています。私たちは
どのような方向を示してくれるのか、大いに期待しています。
野口 ダイフレックスさんの魅力は、つねにウレタン業界に新しい製
品を提案してきたことです。それも単なる新製品というだけではなく、
新しい思想が入っているので、業界がそれに基づいて変わっていくこ
とが魅力になっています。そのような製品を、これからも提案し続け
ていただきたいと思っています。また、日本シーカさんと提 携したわ
けですから、お互いの智恵、ノウハウ、技術などを組み合わせて、新し
い製品を矢継ぎ早に提供して、業界を活気づけてください。よろしく
お願いいたします。
ダイフレックス 三浦会長を囲んで
Customer Magazine EVOLUTION
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学生やキャリアを
スタートさせた方達を対象とした
インターンシッププログラム
シーカは将来を担う才能ある若者への機会の提供を大切にし
ています。Sika Experienceは学生やキャリアをスタートさ
せたばかりの方達を対象としているプログラムです。シーカグ
ループが携わるプロジェクトや各国シーカでのインターンシッ
プに参加することで、初めてのプロフェッショナルとの関わり
を通じて見識を深めることができます。彼らの活動はブログ
を通じて報告をしています。また同時に、このサイトを通して、
シーカが関わる持続可能性への取り組みも発信しています。
The Sika
EXPERIENCE
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Customer Magazine EVOLUTION
6LND([SHULHQFH
Web site information
Donation
寄付活動への協力
それぞれのアクションごとに、シーカが一定額をグローバルレベル
での活動、特に社会、教育、環境問題に携わっている団体に、ご協
力いただいた方に代わって寄付をします。
・20ドル:フェイスブックの”Like”/「いいね!」ボタンをクリック
・25ドル:サイトを知り合いに広める
・50ドル:シーカ体験型プログラムSika experienceに申し込む
http://experience.sika.com/sustainability/
Sika Experience
シーカ体験型プログラム/インターンシップ
学生や研究者など、これからキャリアをつんでいかれる方を対象
とし、シーカが携わる様々なプロジェクトや世界各国のシーカで
のインターンシップに参加できます。
http://experience.sika.com/sika-experience/
Blog
ブログ
Sika Experienceに参加した世界中の学生 からの報告やシーカ
からの情報を日々アップデートしています。
http://experience.sika.com/blog/
Customer Magazine EVOLUTION
22
352'8&7 5(3257
日本シーカ製品レポート/シーリング材関連事業
化成品建設資材本部
ベルエース、デュアリボンが加わったことで、
お客様の要望にお応えするための、
より充実した体制が構築されました。
2010年3月、日本シーカはヘンケルジャパン株式会社の建築用シーリング材事業を承継しました。
それにより、日本シーカのシーリング材のラインアップに
「ベルエース」と「デュアリボン」の2つのブランドが加わることになりました。
それから1年半が経った現在、私たちはシーリング材の分野で
お客様にどのようなメリットをお届けできるようになったのかを、レポートします。
23
Customer Magazine EVOLUTION
352'8&75(3257
MERIT
1
Sealing Business
日本全国のお客様に、
私たちのシーリング材を
提供する環境が整いました。
従来のシーカフレックスシリーズの販売ネットワークに、ベルエー
ス、デュアリボンの販売ネットワークが加わったことにより、いま
まで日本シーカの製品をお届けできなかった地域にも、お届けす
ることができるようになりました。また承継後、最短のスケジュー
ルでJIS認証を取得し、ベルエース、デュアリボンの両製品を当社
の新南陽工場(山口県)で生産、お客様の注文に迅速に対応できる
安定供給体制をいち早く構築しています。なお、今後もベルエース、
デュアリボンは同じブランド名で展開していきます。
MERIT
2
受注締め切り時間の延長など、
お客様のご要望に
お応えできるようになりました。
昨年の承継後まもなくは、ヘンケルジャパンと日本シーカの受注シ
ステムが異なっていたため、お客様にご迷惑をおかけすることが
ありました。しかし今年の2月に両社の受注システムを統一、さま
ざまな面でお客様にとって利便性の高いシステムを構築しました。
たとえば新システムになったことで、受注の締め切り時間の延長
や、受注後に発行する送り状のより早い発送などを可能にしてい
ます。また、お客様からご要望の多かった営業窓口の一本化も実
現しました。それまではブランド別にお客様を担当する営業スタッ
フがいたため、シーカフレックス、ベルエースのそれぞれの製品に
MERIT
3
今までにない、
対して、それぞれの担当者が対応していましたが、現在は1人の担
新しいシーリング材の開発を
当者がすべての製品について対応させていただくようになってい
スタートしました。
ます。
今回の承継によって拡充した販売ネットワークは、私たちがいま
まで接することのできなかったお客様の声、イノベーションのタマ
ゴとなるような製品に関する情報を私たちにもたらしてくれてい
ます。また、ヘンケルジャパンと日本シーカそれぞれの得意な技術
を融合させることで、技術的なイノベーションを進めることも可能
になりました。これら新しい情報と技術をフルに活用し、新製品の
開発に取り組んでいます。すでに建物の長寿命化、具体的には耐
久性と耐候性に優れたシーリング材の開発がスタートしています。
今後も、お客様の声にしっかりと耳を傾けることでイノベーション
をはかり、顧客満足度の向上を目指します。
Customer Magazine EVOLUTION
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Sika's 100 Years Jubilee
100 Years of Sika
2010年、シーカはおかげさまで100周年を祝うこ
とができました。世界中のシーカが様々なイベント
を企画し、たくさんの笑 顔があふれました。各々が
気持ちを新たに、次の歴史を紡いでいくため精進し
てまいります。
25
Customer Magazine EVOLUTION
▲
2010年10月
100周年記念新Webサイトに刷新
▲
2010年12月
新南陽工場にてベルエース生産開始
▲
2011年6月
シーカフレックス-527AT ハイブリッド 発売開始
▼オートサービスショー出展
▲
資本・業務提携先ダイフレックス社 リフォーム&リニューアル 建築再生展2011 出展
▲
2011年7月
シーカガード-706 チキソ 発売開始
▲
コンクリートテクノプラザ出展
発行元
日本シーカ株式会社
〒254-0021 神奈川県平塚市長瀞1-1
TEL 0463-21-6734 FAX 0463-21-1316 http://www.sika-japan.co.jp/
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NEEDS SOLUTIONS
その視線の先にあるのは、次の100年。
世界で100年、日本で55年を迎えたシーカ。
建築・土木・工業用化学製品のトータル・ソリューション・サプライヤーとして、
これからもお客様のベストパートナーであり続けます。
日本シーカ株式会社
〒254-0021 神奈川県平塚市長瀞1-1
TEL 0463-21-1101 FAX 0463-22-7410
http://www.sika-japan.co.jp/