高機能性高分子を用いた植物栽培技術(ハイメック)の開発

ASTE Vol.A18 (2010) : Annual Report of RISE, Waseda Univ.
高機能性高分子を用いた植物栽培技術(ハイメック)の開発
研究代表者
鷲尾
方一
1.研究課題
我々はハイドロゲルという機能性高分子を活用した新しい植物栽培技術を開発して
いる。水分吸収率が自重の 100~200 倍で、且つ植物の生長阻害が全くない、植物用保
水剤(スカイジェル)を開発し、法面緑化、屋上緑化、農業に応用している。一方、ハ
イドロゲルを膜状に成形した“ハイドロメンブラン”を介して植物に水分、栄養素を供
給する、新しい植物栽培技術(ハイメック)の開発を行っている。本研究では植物の根
とハイドロゲルの相互作用を解明することを目的とする。
2.主な研究成果
ハイドロゲルの特徴は、水分を吸収するものの吸収した水分を外部に放出しないとい
う性質である。スカイジェルのような保水剤を土壌に添加すると植物の生長が著しく促
進されことが分かっている。ハイメックの場合でも直接、植物に水を供給しなくともハ
イドロメンブラン上で植物が生長することが分かっている。植物は、外部に放出される
ことが無いハイドロゲル中の水を吸って生長していることになる。
図に示すように植物は根をハイドロゲルの表面に密着させ、ハイドロゲル中の水分と
栄養素を直接吸って生長する。吸収効率を上げるために膨大な毛根を発生させると同時
に糖分などを大量に合成し、浸透圧を利用することが分かりました。
“ハイドロメンブラン”
植物
酸素
水と養分
酸素
養液
水と養分
根
養液
“ハイドロメンブラン”
ハイドロメンブラン上の
繊細な根のネットワーク
ASTE Vol.A18 (2010) : Annual Report of RISE, Waseda Univ.
3.研究業績
本技術のテレビ紹介
1) 2010.4.22 TBS 「ひるおび」
2) 2010.5.8
3) 2010.5.16
4) 2010. 8.11
テレビ朝日 「やじうまサタデー」
BS Japan
「デキビジ」
TBS 「はなまるマーケット」
5) 2010. 9.28 「池上彰のそうなんだニッポンの食生活」
4.研究活動の課題と展望
本技術は1)安全、安心、高栄養価な作物の生産、2)水、肥料、土などの農業資源
の大幅削減、3)土の代わりに工業製品のフイルムが使用でき、農業のマニュアル化が
可能など、次世代農業につながるものと期待されている。国内は 3.11 の大津波の被災
農地の復旧、国外では地球温暖化による水不足、土壌劣化が深刻な地域の農業再生につ
ながるものと思われる。