ウィーン自然史博物館 ∼確固たる美意識∼

ウィーン自然史博物館
〜確固たる美意識〜
日本科学未来館
訪問日:
概要
松原志緒
平成18年9月28日
:
ウィーン自然史博物館は、ウィーン中心の中心部に王宮を正面として美術史博物館と対称に建てられ
ている。1889年、都市整備事業の一環として建設された。所蔵されている展示物は、250年以上
前、女帝マリア・テレジアの夫、フランツ・シュ
テファンⅠ世のコレクションから始まったもので
ある。展示物は動物標本や化石、鉱物や考古学展
示など多岐におよぶ。
展示手法の特徴は、
「王の権力の象徴」として、そ
の数や種類を誇るもので、展示物に関する説明は
ほとんど無い代わりに、数多くの展示物を並べて
いる。これは欧州の博物館全体に共通した特徴で、
「メッセージを伝える目的で展示物を選ぶ」とい
う、未来館を含めた日本の新しい博物館・科学館
の展示手法と対極をなすものでありその違いは非
常に興味深い。
展示室は39部屋もあり数多くの、展示物が整然
12カラットの天然アレキサンドライト。何億
と並んでいる。
円…するんだろう?
宝石のコレクション。宝石の種類ではなく、原
標本展示。近年の改修により、動物の生前の姿
産地が記されているのがコレクションらしい。
が生き生きと再現されている。
ヴィレンドルフのヴィーナスと呼ばれる婦
マリア・テレジアが夫に贈った宝石の花束。
人像。3〜4万年前の物で世界最古の芸術作
葉は絹で、花瓶は水晶でできている。
品と言われる。この展示の輸送には戦車が護
衛したという。
「触れない地球」?扉の向こうに突然現れる
地球のディズプレイ。コンテンツはジオ・コ
スモスとよく似ている。背景は星空になって
いて宇宙に浮いているようで美しい。
○歴史的な雰囲気を壊さない展示○
「権力の象徴」として始まった展示物は、鉱物や動物標本などの自然物も絵画や彫刻などの芸術も
「美しくてすばらしい宝」として同等のものであり、いわゆる「科学と文化の融合」が、歴史的に古
い段階で確立している。
そのため、この博物館では新しい展示物も、歴史的な建物の雰囲気を壊さないことを最優先に作成
されている。
・ミクロテアーター・
それを端的に表しているのが「ミクロテアーター」と呼ばれる展示室で、館長ベルント・レッチュ
博士が直接監修した。オペラのステージのような重厚な雰囲気のこの部屋は、実は偏光式の3D シア
ターで、微生物の生きた姿が顕微鏡からライブで映し出されている。このシアターは最新の設備を備
えているにもかかわらず、100年前に建設された建物に調和するようなデザインに作られている。
ステンドグ
ラスには、
ドイツの生
物学者ヘッ
ケルによる
微生物のス
ケッチが描
かれ、天井
からつるさ
れたランタ
ンは微生物をかたどっている。言葉ではなくアートによるメッセージで生物、自然の美しさや不思議さ
を語っている。
・カフェ・
・自然神を表した彫像・
レッチュ博士によって改修された。ランプの明
写真は「鉄」の神と「錫」の神。古い物のよう
かりを思わせる照明や植物が飾られている。
だが、実は最近作られた物らしい。
クジラの動きや宝石
の色の解説。19世紀
を思わせるゾートロ
ープとステレオグラ
ム。解説展示が古めか
しいのは演出の一部
のようだ。
博物館の展示物を芸術品のひとつとして扱うここのスタイルは昔から受け継がれてきたわけではな
く、1994年にはじめて外部から招かれた館長として就任したレッチュ博士の大改革によるものらし
い。それまでは内装に近代的なものあったらしいが、すべてレッチェ博士により改装が行われたそうで
ある。
現在でも展示の改修は続けられており、その様子はいわゆる「メイキング」として公開されている。
○必要最低限の解説○
博物館には未来館のように常時展示室に解説員が常駐しているわけではなく、展示物も積極的に説明
するような解説はほとんど見られない。
・鉱石の蛍光・
この写真の展示ケースは、スイッチで紫外線
による発光が見られる展示だが、それを示す
説明はどこにも無く、観察しているかぎりそ
のスイッチに気づく来館者はほとんどいな
かった。
・こんにゃく石・
この写真は、触ることでその意味が分かる、
「柔らかい石」であるが、この石に関する説
明や、触ることを促すような説明も無い。
見学者を観察している限り小学生や高校生などの学生団体が多く訪れていたが、展示物を見ずに走り
回るという日本の博物館と同じような光景が見られた。この様子から、展示物に解説が無いのは、見学
者が科学に対して非常に積極的で説明が無くても自ら学ぼうとするからではなく、通常の見学者には特
に気づいてもらわなくてもかまわないという博物館の意志ととれる。
しかし、この博物館が展示物への解説を放棄しているというわけではない。
写真は偶然出会ったスクールアクティビティの開催現場で10人前後の小学生と積極的なコミュニケ
ーションをとりながら、地球史についてのワークショップを行っていたようだ。さきほどの一見わかり
づらいハンズオン展示は、このようなイベントの際に説明されるものと思われる。これらのツアーやア
クティビティは別料金で申し込むことができる。この別料金制は、欧州の他の博物館でもよく見られた
制度だった。
残念ながらこのようなアクティビティのコンテンツや受け入れ態勢、対応職員のスキルなどについて
は聞くことができなかったが、このようなアクティビティは同様にレッチュ博士の働きかけによるもの
が多く、博士のこれらの活動により年間来館者数は22万人から36万人に増加したという。
所感:
未来館とはまったく異なるスタンスが非常に興味深かった。
先に展示物ありき、の方針決定に博物館としてのメッセージが確立できるのか、レッチュ博士に「来館
者に何を見てもらいたいか」(博物館としてのメッセージは何か)と質問したところ、博士は屈託無く
「ミクロテアーターと、宝石の多さと、人間の歴史としてのヴィレンドルフのヴィーナスと…」と展示
物の名前を挙げた。これは私の予想とまったく異なる答えだったが、非常に納得する答えでもあった。
展示物を美しく飾り自慢げに並べ、見方によっては「博物館の傲り」
、
「ハコモノ」という感じを与えか
ねないのに、ここが全くそうは見えないのは博士が心から「展示物を愛している」からだろうと思う。
この博物館の過剰なまでの美意識は、「自然(科学)がすばらしい」というメッセージそのものではな
いだろうか。
来館者に何を伝えたいか、来館者が何を望んでいるのか、それを意識することは科学コミュニケータ
ーとして必須であるが、時として多くの世論に流されて逆に科学を伝わりにくくしている可能性もある。
レッチュ博士のように、
「科学はすばらしい」
「科学は美しい」と私たち科学コミュニケーターが心から
思っているだろうか、その思いを無くして来館者に科学のすばらしさが伝えられるだろうか、科学コミ
ュニケーターに本当に必要なものを改めて感じさせられた。
今回の研修で、忙しい時間を割いて熱意のこもったお話をいただいたベルント・レッチュ博士には改
めて感謝申し上げたい。
日本科学未来館
森田由子
2006 年欧州研修では、出発前に参加者間で重点的に報告を担当する公式館を決めた。私・森田は
ウィーン自然史博物館を担当した。本報告書は担当館の特に生物系展示における館の新しい試みに
着目し、報告する。
訪問日:2006 年 9 月 28 日
対応者:館長
ベルント・レッチュ
(Professor Dr. Bernd Lotsch, Austria's most famous
conservationist)
施設の概要
所在地:Naturhistorisches Museum Wien Burgring 7, A‑1014 Wien, Austria
URL
:
http://www.nhm‑wien.ac.at/
入館料:8ユーロ
開館日:火曜日定休、9:00〜18:30(水曜日のみ 21:00)
設立: 現在の状態での開設は 1889 年(フランツ・ヨーゼフ I)
資料収集は、1748 年にフィレンツェの貴族ジャン・ドゥ・バイユウから 3 万点に
およぶ鉱物・岩石・化石・珊瑚・貝類・甲殻類などの資料を購入したのがはじまり。
規模: 延床面積 3 万㎡、展示面積9千㎡、収蔵資料点数約 2000 万点
運営: 年間予算
約 21 億 7000 万円
本館以外に2つの分館を経営
① ハールシュタット(古代からのこる岩塩採取のフィールドステーション、世界
遺産)
② レンジャー育成と野外教室用の施設(ダニューブ川の自然保護区内)
研究室、図書館、非展示標本の所蔵庫も維持
運営状況:○年間予算
21 億 7000 万(450 万€、補助金、入場料など。割合は不明)
オーストリア政府による「ムゼウムスミリアーデ(博物館のための
10 億シリング)というスローガンの下に、潤沢な資金援助がある。
○レストランやショップなども経営
○スタッフ
職員 250 名、うち 60 名ほどが研究者
ボランティア職員はいない
個人ガイド、子供向けの教育スタッフは存在
○「フレンズオブミュージック」という会員制度がある(会費 30€)
○言語表記は、独、英、伊、日、一部仏語
○展示内容は必要最小限(たとえば名称のみ)
。
子供用のテキストは用意していない。
利用状況
常設展示の内容は、学校の指導要綱での利用を想定。ただし、充分に即しているとはいえない。
マーケティングは行っておらず、来館者アンケートもほぼ行っていないに等しい。また、ハンズオ
ン展示はあるものの、子供が遊ぶためのデバイスは設置していない。標本類に関しては、触るため
に用意したもの以外は観覧のみ。ただし、1977 年に当時の館長オリバー・E・ペイジェットが子供
用展示室を1室設けている。ここでは教育学を収めた担当者がおり、ヨーロッパにおける「子供の
教育施設としての博物館」という思想のさきがけとなった。
収蔵品は、歴史的にも、量的にも膨大である。隕石・岩石・鉱物のコレクションは世界屈指であ
り、動物標本に関してはほぼ全世界をカバーしている。
以下、特徴ある展示物を数点とりあげる。
(1)入口踊り場にある、熱気球模型
定時になるとヒーターで熱し、熱気球の上昇実験を行っている。この
踊り場上空は非常に高い吹き抜けとなっており、熱気球がかなりな速
度で上昇する様子を見ることができる。
(2)エコハウスの模型
ドナウアウエン、ペトロネルにつくられた若者のた
めの研修施設「ナショナルパークハウス」の模型。
現・館長は、生態学者であり、かつ非常に有名な環
境保護論者でもある。太陽、風力エネルギーを利用
し、下水処理まで環境に配慮したこの建物は、館長
からのメッセージのひとつとして、模型が設置され
ている。
(3)動物標本展示の新手法
通常、博物館における生物標本は、系統分類に即
して陳列されている。現・館長の新しい試みとし
て、系統分類ではなく、生態に即した展示、つま
りある環境に生息する生物を、その環境を模した
展示ステージに、生息状況に即した形で展示して
いる。
(4)生きているミツバチの展示
樹の洞に対し、窓の外からミツバチが出入りできるようにし、館
内側は透明なガラスをはめ込んで、蜂の巣内部が見られるように
なっている。ミツバチの行動学研究を行う研究室で取り入れられ
ている実験装置を、博物館の展示物に応用したもの。
(3)の展示
とともに、環境理解を博物館が推進するという、現・館長の試み
のひとつ。
(5)サメの皮膚構造模型
種々のサメを系統的に展示するだけでなく、その生態にとって
重要な皮膚構造の模型も並べて展示することで、生態に関する
理解を高めようとするもの。
(6)進化のハンズオン展示
地球の大陸移動、年代、植生、ウマの進化の歴
史を、ダイアル操作で行き来することができる
ハンズオン展示。ウマの姿がかわる背景で植生
の変化も見ることができ、非常に興味深い。た
だし、この方式では、現生のウマが昔は別の姿
をしていたというような誤解を生む可能性に配
慮する必要がある。
(7)進化論のレリーフ
ダーウィン進化論が発表された当時の論争と誤
解を風刺したレリーフ。サルが人(中央)に向か
って鏡を差し出し、自分の姿を見直す(ヒトもサ
ルである)ように強いられ、顔を背けている様子
をあらわしている。
(8)ミクロテアター
中世の劇場のようにしつらえたミニシアターで、立体視ができる顕微鏡で生きた微生物を観察し、
その姿を映し出す。現物主義を追求しながらも、先端手法によりミクロの世界を実感できるように
している。
まとめ
本報告書では、特に生物系の展示の特徴についてまとめている。
館の最も基礎的な方針は現物・実物主義である。これは膨大な数の収蔵品を持つ館の自信である
とともに、自然科学の基本でもある。しかし、現・館長が就任して以来、動物標本の展示を、系統
分類から生態分類に変えるという、科学の切り口を変えてしまうという大きな挑戦を実施している。
また、歴史を重視する精神から、館の建築物としての価値を現代建築法で損なわない配慮をした上
での改築を行っている。今後は中庭にガラス屋根をかけ、イベントや特別展を行える 1000 ㎡の増
築も予定されている。
こうした新たな変化は、典型的な博物館としての芯はそのままに、教育の精神にあふれた改革と
見ることができる。子供中心主義的な改革はあえて行われていないとも言える状態にもかかわらず、
1995 年には 22 万人だった入場者数が、2000 年には 35 万人に増え、現在はもっとも子供に親しみ
やすい施設との評価を得ている。自然科学に対する市民の理解と高い支持が、その歴史上あるとい
う恵まれた状況もあるが、博物館や科学館が、まず館の精神というものをしっかりと持つことが大
切であるという教訓とも考えられる。未来館は所蔵品を持たない科学館であるが、館の立場、ポリ
シーがまずありきであるという姿勢は、見習う点であると考える。
独立行政法人 日本原子力研究開発機構
大洗わくわく科学館
飯島
一敬
(1)概要
ウィーン国立自然史博物館は、30,000 に及ぶ世界の動植物、鉱物資源などの分野のコレクション
が宮殿内に展示され 1880 年にオープンした。
現在、約 2,000 万のコレクショ
ンを所蔵しており、展示面積約
9,000 ㎡、開館時間 9 時〜18
時 30 分(水曜日は 21 時まで)、
年間入館者数 36 万人であり、
職員 250 名、年間予算 1,450
万ユーロ(約 21 億 7000 万円)
で運営されている。
ウィーンの国立自然史博物館正面
当日は、ベルント・レッチェ館長が出迎えられ自ら館内を案内された。入口ホールではモーツア
ルト時代の気球を浮上させる実演(下左写真)が行われており、初めての水素気球に乗せられたの
は囚人ではなく当時の館長であったという
エピソードを紹介された。
同ホールに展示されていたソーラーエネル
ギー(80%)と薪の再生エネルギー(20%)
のいわゆるエコエネルギーで賄われている
ー・ハウス
模型(右
要性を熱く語られた。
エコロジ
写真)の説明とともに今後の必
鉱物や結晶の展示室では、巨大な塩の結晶の
前で 自然の造形力は素晴らしく博物館は自然
を相手にした総合的学問であり、芸術としての
絵画も同様に自然から大いに学ぶべき対象で
ある
左
旨を述べられた。
写真
巨大な塩の結晶と館長
科学に造詣が深かったフランツ・ステファン皇帝による天文学に関する展示品も多かった。彼
が后テレージアに贈った宝石の
250 年前の輝き
に私たちは驚嘆した。
生態系展示室では、植物アルソミトラの葉(左
写真)の落下する様子を
ヒントに第 1 次世界大
戦中に飛行体が開発されたエピソードを話され
た。
実演により水中の生物の生態を顕微鏡で拡大し
た迫力ある映像をスクリーンで紹介した。
これ
こそ生態学博士である館長の最も見せたい展示方
法だと実感した。(右
写真)
海底の雰囲気の薄暗い模擬水槽にその鮫肌がスイミン
グスーツに応用されているという鮫がリアルに展示さ
れていた。
左
写真
(2)調査内容
① 博物館の役割
博物館のミッションは、採取された
背景
や
仲間 (親類)は何かなどを関連付けて展示し
総合的に関心がもてるようにすることである。従来の一般的な展示では、
いつ 、 どこ で
採
取したもの であるかを示す、いわゆる 剥製の陳列 型であったが、今後はこれらの展示手法は
変えようと考えていた。
博物館として最も伝えたいことは、先史時代の「地球の姿」のイメージである。個人的には、 ミ
クロ・コスモス
という展示に力を注ぎたいと説明された。
② 博物館の理念と運営
子供の好奇心に働きかける 教育 が博物館の運営理念として重要である。このため教員向けの
PR は大切であり専門スタッフを学校へ出向かせているという。学校の授業で常設展示物を使って
もらっているが、必ずしも指導要領に即している対象とは考えていないようであった。
博物館の職員は 250 名、その内 60 名が専門の学者である。入館者は 2 年前に年間 22 万人であ
ったが現在は 36 万人である。博物館の経営には現状に留まらず常に改革改善が必要である。
博物館の建物と展示物は国が所有し、運営は民間委託であった。運営の損益は出していない。こ
の他、博物館として古代の岩塩採掘フィールドステーション(世界遺産ハールシュタット)とダニ
ューブ川自然保護区レンジャー育成施設・野外教室を管理しているとのこと。
(3)感想
博物館が大好きな生態学博士・ウィーン大学教授・ザルツブルグ大学教授であるベルント・レッ
チェ館長自らが館内を案内された。その最終段階では、博物館の大型保管倉庫や発掘された状態の
マンモスを目前で見せた。また、タイムマシンを動かし地球の大陸と海の過去と未来の姿を見せる
という演出により、私たちを大いに感激させた。
また、周辺が一望できる博物館屋上での記念撮影やコーヒーブレイク時に意見交流の場を設定す
るなどの配慮は、私たちを十分に楽しませ満足させた。このような館長の人柄に接し感激するとと
もに、このような雰囲気に出会う子供たちは自然史科学館が好きになるだろうと思った。
コーヒーブレイク時の歓談と意見交換
日本語で用意されていた館長の名刺
盛岡市子ども科学館
学芸指導主事
山口
晋
①見学概要
所蔵品の中核をなしているのは、かつての帝室コレクシ
ョンである。自然史博物館は、そのコレクションの数の多さ
と貴重さで、この種のものとして世界でも指折りの博物館と
なっている。それにも増して特筆すべきはこの館長の熱意で
あると感じる。3時間にもおよぶツアーを自らガイドしてく
ださった。博物館を総合的な文化の発信拠点にするという熱
意と館内外に働きかける実行力にはただただ敬服するばか
りであった。この館長になってから来館者が10万人増えたという。
②系統的な展示配列のお手本
1階には岩石や鉱物、化石、2階には動物が展示されて
いる。その数は膨大で収納されている重厚なガラスケースの
迫力と相まって見るものを圧倒する。岩石・鉱物・隕石の展
示は、化学組成や結晶構造などに基づく系統分類により配列さ
れている。又、動物の展示は進化や解剖学的視点に基づく系統
分類により配列され、ほぼ全世界の動物を網羅している。(し
かし、館長はこの展示手法が気に入らないとおっしゃってい
た。)
③巧みなハイテク導入の効果
ツァイト(タイム)・マシーンは、地球表面の海陸分布の変遷がハン
ドルを回すことにより再現できる装置で、自由自在に地質時代を戻し
たり進めたりすること ができる体験型の展示物である。このようなハ
イテクを利用した展示物が館内の要所、要所に設置されているのだが、
デザインに違和感が無く、スムーズに見学ができる。この他にも、ミ
クロテアーターとよばれる展示室では 100 年前の研究室に迷い込んだ
ような雰囲気の中、土壌動物などの生きた微小動物をリアルタイムで
拡大して 3D で見せる最新鋭の設備が導入されていた。この館で来館者
は伝統的なスタイルの設備の中に効果的に配置されたハイテク機器を
違和感なく利用し心ゆくまで知的好奇心を満足させることができるよう工夫されていると感じた。レ
ベルの高い教育効果が得られると感じた。