ベックニュース

BEQNews
[ベックニュース]
◉食を通じてQOLの向上に
貢献する栄養通信
Better quality of life
through better nutrition
編集・発行●株式会社 ジェフコーポレーション 〒105-0012 東京都港区芝大門1-3-11 YSKビル7F http://www.jeff.jp (03)3578-0303
提 供●株式会社 クリニコ 〒153-0063 東京都目黒区目黒4-4-22 http://www.clinico.co.jp (03)3793-4101
◉特別インタビュー
日本静脈経腸栄養学会JSPEN の現状と今後の展望
◉臨床現場訪問 褥瘡治療における栄養管理の重要性
―栄養補助食品の使用経験から―
◉TREND 第 34回 ESPEN
(欧州臨床栄養代謝学会)
レポート
◉連載
東邦大学医療センター大森病院 NSTの仲間たちと綴る
実践!NST活動 ❸『栄養療法の効果判定』
2013
18
No.
特別インタビュー
日本静脈経腸栄養学会
JSPENの現状と今後の展望
東口髙志 先生
ひがしぐち・たかし◉日本静脈経腸栄養学会理事長 / 藤田保健衛生大学医学部外科・緩和医療学講座教授
会員数が 17,000 名を超えた成長著しい日本静脈経腸栄養学会
性の高い一般社団法人化に向かって進んでおります。
そのためには
では、
本年
(2012年)
2月新理事長に藤田保健衛生大学医学部外科・
定款、
規約、
あるいはそれに伴う細則などを見直す必要があり、
そ
緩和医療学講座教授の東口髙志先生が就任され、
学会の新たなる
の改革に着手しております。
一歩が踏み出された。
そこで、
2013 年を迎えるにあたり、
東口髙志
なぜそれが
「みんなの JSPEN」
なのかということですが、
日本静
理事長に JSPEN の現状と今後の展望等について伺った。
脈経腸栄養学会は、
17,000 名の会員の皆様の会費によって運営さ
れている大きな団体です。
従いまして、
皆様からお預かりしている
「みんなのJSPEN」
と
「内固外進」
を合言葉に
会費を、
いかに有意義に運用し、
社会貢献に反映させるか、
あるい
2012 年 2 月に日本静脈経腸栄養学会の第 4 代目理事長を拝命
は会員の皆様に還元するかということは学会の大変重要な責務で
致しました。
これまで学会の発展に尽力された3 代の理事長の意
す。
その実現のためには、
まずは学会自体に社会から認められた一
志を引き継ぎ、
4代目でしぼむことのないよう奮闘努力を続けたい
つの法人格を持たせることが非常に重要です。
例えば現在、
多くの
と思いつつ、
まもなく就任1年を迎えようとしています。
会員あるいは施設が、
診療報酬に関わる様々な資格取得に励んで
私は本学会の会員歴が 30 年ぐらいになります。そういう目で
おられますが、
その発行元が法人格を持たないと、
ただの紙切れに
ずっと眺めてきて、
学会としてまだ不完全な点、
改善すべき点など
なる可能性があります。
やはり、
集まった方々の知識、
技術の向上、
に思いが及ぶ一方、
学会の良い点として伸ばすべき点、
根を張って
あるいは資格制度、
将来に向けての社会貢献への姿勢、
こういうこ
育てるべき点などいわゆる攻撃的な改善点も多々あるのではない
とを明確にして初めて
「みんなの JSPEN」
として胸が張れると思っ
かといったことをこの1年、
思い描きながら過ごしてきました。
ています。
そこで、
今年度中に何とか規約をまとめ上げながら、
1年
就任時に掲げさせていただいた
「みんなの JSPEN」
と
「内固外進」
後には法人化を実現したいと思っております。
という、
二つの合言葉のもとに学会を成長させるために、
この1年間
委員会活動や認定制度などの見直し
は、
本当に苦労しながら歩んでいるというところが正直な気持ちです。
一方、
「内固外進」
ですが、
「内固」
の目標は、
前述の法人化を軸に、
各種委員会の組織・形態変更を積極的に
どこから見ても恥ずかしくない立派な学会にすることと思ってい
「みんなの JSPEN」
に関しましては、
まず、
評議員の先生方との意
ます。
今は、
日本静脈経腸栄養学会という大きな建物の土台を手づ
志の疎通をいつでも図ることができ、
相互の意見交換も可能なメー
くりながらも、
一生懸命固め直しているところです。
リングリスト体制を近々に作り上げる予定です。
これができると評
もちろんそれだけでは進みませんので、
各委員会活動の活性化
議員の先生方が自由にディスカッションできる場を提供できます。
にも注力しています。
例えば、
これまで各部会で行っていた教育的
また、
現在本学会の理事は 25 名おられますが、
その先生方のお
活動は教育委員会で統括するようにしてレベルの安定を図るよう
力をフルに活かしていただけるような環境作りにも着手しました。
にしました。
具体的には、
委員会の数を増やし、
総務統括部門、
渉外部門、
教育・
奨励部門等 9 部門に分け、
それぞれ部門担当理事を置き、
わかりや
(人)
20000
すく系統立てた組織再編に努めました。
また従来の委員会の委員
長、
副委員長、
担当理事に加え、
委員会
(部会)
によっては、
特別顧問
■総数 ■正会員(コメディカル) も置けるようにし、
二重三重にネットワークができるようなかたち
NST加算の
新設
■正会員(医師) に致しました。
これによりこれまで、
委員会が単独で推進していた
15000
業務も何らかのかたちでネットワーク化され、
無駄を削減しながら、
より強い推進力が得られると思っています。
例えば委員会を開かなくても、
統括部長、
あるいは担当理事のお
10000
声がけで、
メールを通してディスカッションが非常に活発に行われ
病院機能評価
Ver5.0への
更新
ています。
先生方には、
ITの威力を利用しながら、
頑張っていただい
ていると感謝しております。
そういう意味で、
一つの方向に向けて、
5000
みんなで活動していくという気運はかなり高まってきていると思っ
ております。
01
1
(年)
2
9
0
01
0
2
8
0
2
7
0
0
0
2
0
6
0
2
0
5
0
2
0
4
0
2
3
0
2
0
0
0
2
0
01
2
0
2
「みんなの JSPEN」
に込められたもう一つの目標があります。
そ
2
0
学会の一般社団法人化
図 JSPEN 会員数の変化
(各年12 月31日集計)
れは学会の法人化です。
もうすでに、
日本静脈経腸栄養学会は公益
※
「正会員」
は評議員・学生会員・賛助会員・名誉会員等を除く 引用 :PEN2012 年 9月1日号
1
日本静脈経腸栄養学会 JSPENの現状と今後の展望
また、
まもなく日本静脈経腸栄養学会独自のガイドラインの改訂
長を務めさせていただきましたが、
そのとき
「世界の中の日本」
と
版も完成予定ですが、
策定次第、
教育の内容を見直していく所存です。
いうタイトルを掲げました。
当時思ったのは、
いつか必ずJSPEN に
そうするとある疑問が生じます。
ガイドラインに載っていない、
海外から多くの研究者がやってきて発表してもらえるようになるこ
あるいは明確なエビデンスがないけれども実際には様々な栄養管
とでした。
しかし、
その前に、
やはり我々が、
日本ではこれだけ素晴
理が行われています。
例えば絶食の期間等も明確な答えはありま
らしい研究なり臨床経験があるということを、
積極的にアピールす
せん。
そこでそうした疑問に答えていくために、
二つの委員会活動
べきだと思っています。
そういう意味では、
今回の ESPEN では非
を行っています。
常に誇らしい思いを感じた次第です。
実験をメインとするワーキンググループ、
もう一つは臨床研究の
また JSPENとESPEN のカウンシルミーティングにも出席しま
ワーキンググループを統括する委員会です。
それぞれ五つぐらいの
したが、
現在、
ESPEN、
ASPEN の執行部と我々とは、
非常にフレン
テーマの下に活動しており、
その中で私どもが疑問に思っている
ドリーな関係を保っています。
そういう意味では、
徐々にではあり
テーマを選び、
学会主導で多施設協同等の試験を実施していこう
ますが、
JSPEN が欧州、
米国、
世界に浸透し始めているという感じ
思っています。
できましたら、
その内容を論文にして世界に発信し
を受けました。
ただこれで満足せず、
皆様に望みたいことは、
英語で
ていくということも重要と思っております。
アピールできるような論文を積極的に発表していただきたいと思っ
また、
NST 専門療法士、
NST 医師等の認定、
あるいは NSTの施
ております。
設認定については、
しっかりベースを築き、
担保できる質の高いも
の、
要するに、
明確に評価できるものを確立させたいと思っていま
アジアの一員として
す。
世界には、
まだ栄養管理に関する資格あるいは認定制度、
特に
また一方では、
現在、
日本を取り巻く情勢は、
不安定な部分もあり
施 設 認 定 制 度というものはありません。JSPEN の 認 定 制 度は、
ますが、
まさしくそれは重要なポイントで、
私たちはアジアの一員
ASPEN、
ESPEN にない、
JSPEN 独自のシステムであり、
しかもこ
であるということを忘れてはいけないと思います。
のシステムは診療報酬においても反映されており、
厚生労働省にも
PENSA(Parenteral and Enteral Nutrition Society of Asia:
評価していただいております。
今後は、
この各制度を有機的に結び
アジア静脈経腸栄養学会)
という学会があります。
これは、
いわゆ
付けてしっかり土台を作ることが今行うべき非常に重要なポイン
るアジアの PEN Societyをまとめ上げて組織された学会です。
私
トになります。
は、
先日バンコクで開催された PENSA カウンシルの日本代表とし
さらに、
ご存じのように我が国では NSTの認定第三者機関であ
て出席しましたが、
非常に驚いたことがあります。
それは、
我々が
る日本栄養療法推進協議会
(JCNT)
が NSTの稼働施設を評価し
思っていたよりも、
ずっとアジアの研究者は活発に活動していると
ています。
これは、
対外的に非常に大きな意味を持っています。
で
いうことです。
きましたら、
諸施設におかれましては、
JCNTの認定も自主的に受
しかし、
残念なことにアジアの先生方は、
ESPEN、
ASPEN の方
けられることを望んでいます。
を向いておられました。
前回の PENSA は台湾で行われましたが、
そのときにも、
プログラムを見るとESPEN 一色でしたから、
これを
世界的なレベルに成長させるために
何とかしたいと感じてきたわけです。
今回のカウンシルミーティン
現在、
JSPEN は、
世界最大の PEN Societyに成長しました。例
グでは、
ぜひとも JSPEN の役割を PENSA の中でも、
大きくでき
えば医師の数、
会員数だけ見ても、
ASPEN、
ESPEN をはるかに凌
るような働きかけを行ってきました。
近いうちに、
アジア諸国と共
駕しています。
しかしながら、
世界的な評価レベルでは、
ESPEN、
に、
この栄養療法、
あるいは静脈経腸栄養療法というものを高めて
ASPEN の後塵を拝したままで、
なかなか JSPEN が高い評価を得
いく必要があると確信して帰ってまいりました。
ですから、
仲良くし
られるには至っていません。
私は、
これではいけないと思っています。
ながら、
競い合いながら、
さらに将来を見つめるような PENSA に
本学会は研究会時代を含め約 27年の歴史があります。
これは、
育て上げるのも JSPEN の役割だと感じた次第です。
ASPEN、
ESPENとさほど歴史的には差がありません。
しかも単一
国で、
これだけたくさんの医師をはじめメディカルスタッフの方々
高齢化社会の医療を担う栄養療法
が参加して、
しかも前に進もうというエネルギーを持った学会です
いろいろお話をしてきましたが、
将来明確なことがあります。
そ
ので、
当然、
高く評価されなければならない。
そのためにも、
内を固
れは高齢社会での医療を支えるものは栄養管理、
栄養療法である
めて外へ出て、
そして進むことが必要です。
ということは間違いないということです。
この栄養療法を疎かに
例えば、
今回、
私はバルセロナにて開催された今年の ESPEN に
すれば、
いかなる治療であろうとも無に帰しますし、
コストがかさ
参加させていただきましたが、
オープニングセレモニーを一番前の
むばかりで幸せがやって来ません。
さらに私たちも余分な副作用や
席で拝聴する機会に恵まれました。
セレモニーの中で ESPEN の理
合併症に悩み、
治療が進まず、
よいアウトカムが出ません。
事長のシンガー先生が、
今回の ESPEN の発表演題の中で、
国別で
我が国においては、
皆様の本当に地道な努力のおかげで、
やっと
見ると日本が一番であると報告されました。
88 題
(late breaking
栄養療法の重要性が明確になるところまで来ました。
では、
次はど
abstractを含む)
出ています。
私はシンガー先生が見つめる中、
思
うするかと言えば、
全ての医療従事者、
医療人あるいは国民の皆様
わずガッツポーズをしてしまいました。
このガッツポーズの意味は幾
が、
栄養療法をきちんと尊重して適切な治療の一つとして自由に使
つかあります。
えるように、
そして、
しかもその普及が自然と高まっていくような、
一つは「日本 から来 てい る」ことのアピールです。もう一つは、
そういう社会体制をつくる必要があります。
それが私たち JSPEN
ESPEN に対して影響力を持つ学会としてJSPEN を認めてほしい
の、
できれば法人化された JSPEN の将来の仕事です。
まずは一歩
こと。
さらにもう一つは、
素直にうれしい思いを表現したかったの
ずつということで、
「みんなの JSPEN」
「
、内固外進」
、
この先もこの
です。
私は第 26 回日本静脈経腸栄養学会学術集会
(2011年)
の会
二つの合い言葉で、
進んで行きたいと思っております。
2
臨床現場訪問⑲
褥瘡治療における栄養管理の重要性
―栄養補助食品の使用経験から―
小林 礼子 先生
亀井 美佳 先生
こばやし・れいこ◉ JA 埼玉県厚生連 久喜総合病院 医療技術部 栄養科
かめい・みか◉ JA 埼玉県厚生連 久喜総合病院 看護部
(お二人のお話をまとめさせていただきました。
)
事をされており、
かなり痩せていました。
入院後は、
嚥下に問題が
褥瘡対策チームを立ち上げ
当院の前身は幸手総合病院で、
平成 23 年 4月1日に JA 埼玉県
あるということで、
おかゆ主体の食事を続けていましたが、
介助が
必要ながらも1日 3 食で計 1800kcalを経口で摂ることができてい
厚生連 久喜総合病院として移転・新規開院いたしました。
新病院
ました。
実は、
当初 ICU に入室しその後整形外科病棟に入院したの
は急性期医療とがん治療を担うことが打ち出され、
地域の災害拠
で、
治療を優先していたこともあって、
痩せてはいたけれども栄養
点病院としての役割も担っています。
面はそれほど問題視されていなかったのです。
急性期病院ということで褥瘡患者数はそれほど多くはありませ
ところが、
体重は徐々に減少して、
後に褥瘡が発生し悪化してい
んでしたが、
低栄養状態が災いして褥瘡が悪化し、
患者さんの治療
ることに気づき、
あらためて生化学データを調べると Alb 値なども
や管理に難渋した経験から、
病院としては、
褥瘡の予防・治療体制
低下しており、
たんぱく質の摂取も十分ではないことがわかりまし
を強化する方針をとることとなりました。
WOC ナース
(皮膚・排泄
た。
そこで、
栄養士が介入し、
まず、
嚥下の程度を改めて見直し、
でき
ケア認定看護師)
を取得した看護師 2 名が中心となって褥瘡対策
るだけおかゆから常食に移行するようにし、
さらに間食でエネル
チームを立ち上げ、
活動を見直し、
現在は、
定期的な褥瘡回診を中
ギーや必要な栄養素補給をできないか検討しました。
心にケアの体制を構築しつつあります。
また、
当院では最近 NST を発足させましたが、
活動としてはまだ、
栄養補助食品を積極的に活用
症例検討会を行うに留まっており、
組織作りや活動システムの構築
日本褥瘡学会の
「褥瘡予防・管理ガイドライン」
では、
褥瘡治療と
等に取り組んでいるところです。
栄養管理に関して、
「エネルギー必要量に見合ったエネルギーとた
んぱく質を投与することが勧められ
(レベル B)
」
、
「亜鉛、
アルギニ
褥瘡症例紹介
ン、
アスコルビン酸などが欠乏しないよう補給することを行っても
褥瘡の改善のためには、
十分なエネルギーとたんぱく質の補給
よい
(レベル C1)
」
とあります。
たんぱく質、
特に Alb の低下は褥瘡
が重要といわれているので、
私どもも出来る限り適切な栄養補給
の発生要因であり、
創傷治癒過程においては、
線維芽細胞の増殖や
に努めていますが、
うまく食事が摂れない、
あるいは疾患の影響等
コラーゲン生成のために、
十分なたんぱく量が維持される必要が
によって難しい場合が多々あります。
あるといわれています。
また、
亜鉛・銅・鉄などの微量元素やビタ
そうした中、
褥瘡が悪化した患者さんにたんぱく質や微量元素
ミン類も、
創傷治癒過程における上皮形成やコラーゲンの生成に
を強化した栄養補助食品を使用することによって、
褥瘡の改善に
不可欠とされています。本症例においては、摂取エネルギーに見
寄与したと思われる症例を経験しました。
合った、
たんぱく質量の強化と亜鉛や鉄の補給が必要と考え、
その
その患者さんは、
50 歳代の男性で水田に転落し、
一晩その状態
補給方法として、
たんぱく質強化栄養補助食品
(エンジョイプロテ
のままで、
翌日に救出され当院に搬送されました。
この患者さんは
イン FeZ)
の投与を医師に提案し試みました。
もともと脊髄損傷でご自分で食事をすることができず全介助で食
エンジョイプロテイン FeZ は、
消化吸収に配慮した鉄、
亜鉛強化
たんぱく質粉末で溶かしやすく、
使いやすいため、
食事の際、
スプー
ン小さじ1杯分
(約 5g)
を汁物に加えたり、
お茶やジュースに混ぜて
飲んでもらうようにしました。
とくに粉末を入れて食事の味が変わ
ることもなく、
抵抗なく摂っていただきました。
エンジョイプロテイ
ン FeZ を加えたことにより、
たんぱく質は 1日12g の追加摂取が
できました。
さらに同じ微量元素を強化した栄養補助食品であるエンジョイ
ポチも味が良く飲みやすいので、
1日 2 本程度昼食時、
夕食時など
に飲んでもらうことにしました。
その結果、
褥瘡の治療に VAC 療法
(後述)
などを取り入れたこと
もあり、
栄養管理と相まって褥瘡の治癒が明らかに促進された印
象を持ちました。
この結果を受けて、
その後はたんぱく質、
微量元素を強化する必
要がある場合などは、
エンジョイプロテイン FeZやエンジョイポチ
を使う症例が増えました。
病院の食事が食べられない、
あるいは全
量摂取が無理な方は、
どうしてもその分摂取エネルギーは減少し、
褥瘡回診風景
3
Interview
褥瘡治療における栄養管理の重要性―栄養補助食品の使用経験から―
たんぱく質も微量元素も不足してしまうので、
粉末あるいは栄養
補助飲料で補えるのであれば積極的に使うようにしています。
褥瘡対策チームの活動の見直しを図る
また、
とくにエンジョイポチはいろいろな味があっておいしく飲
当院の褥瘡対策チームは、
以前の幸手総合病院の時代からあり
みやすいので、
褥瘡患者さんをはじめ手術患者さん、
あるいは神経
ましたが、
主だった活動は会議で状況報告をする程度でした。
先ほ
内科で食欲不振の患者さん、
泌尿器科の患者さん等で微量元素や
どの症例のように褥瘡の発見が遅れる例をなくしたり、
褥瘡発生
エネルギーを補いたい場合に飲んでいただくことも多くなってい
の予防を強化するために、
現在は、
褥瘡対策チームの見直しを図っ
ます。
ており、
個々の患者さんについて多くの職種が集まって、
治療方針
や栄養管理、
リハビリの内容について検討するように努めています。
褥瘡治療はVAC 療法などを併用
前述のように、
急性期病院なので褥瘡患者さんは少ないため、
褥瘡
一方、
患者さんの褥瘡は、
創部の上皮が形成されていたので当初
の治療よりは、
予防に重点をおいた活動を目標に、
現在そのシステ
は比較的軽度の褥瘡とみられたのですが、
その表面の皮膚を剥が
ム作りについて試行錯誤しながら取り組んでいます。
また、
褥瘡対
してみると、
ポケットを形成しており、
かなり深い傷の状態でした
策チーム主催の褥瘡に関する勉強会を年 2 回開催していくことに
(ステージⅢ)
。そこで、デブリードメントなどの 褥 瘡 治療に加え、
しており、
そのうち 1回は栄養管理の勉強会を兼ねた内容で行う
2010 年に保険適応となった、
創部を被覆材で密閉し、
専用機器で
予定です。
吸引して陰圧状態を維持しながら創傷の治療を行う新しい創傷治
療法
「陰圧創傷治療システム
(VAC 療法)
」
を施行するなど、
あらゆ
定期回診で褥瘡への意識が高まる
る手を尽くした結果、
創部は治癒傾向となりました。
やはり同時に
褥瘡回診については、
最近、
脳外科および皮膚科の医師にサポー
行った栄養補助食品によるたんぱく質強化や微量元素投与による
トしていただき、
専門看護師、
栄養士、
薬剤師、
リハビリのスタッフ
管理が大きなサポートとなったと考えています。
当院は急性期病
等が加わり、
週 1回のペースで定期的に行うようになりました。
また、
院のため褥瘡は完治を待たずして転院されました。
回診の際は、
各病棟の看護師も同行します。
圧迫やずれだけでなく、
栄養状態や全身状態が悪化するにつれて、
場合によっては 1週間く
症例から多くのことを学んだが…
らいで褥瘡が発生し、
悪化する方も存在します。
悪化してからでは
本症例では、
栄養補助食品を用いた栄養管理の力を認識したの
治療に難渋するのは明らかなので、
定期的に回診して、
早期発見に
ですが、
結局、
低栄養
(体重減少)
を見逃したことにより、
褥瘡も悪
努めています。
そのためには、
やはり看護師の目だけでは不十分で、
化させてしまった点は大きな反省点です。
どんな患者さんでも栄養
初期の段階から多くの職種が介入し、
それぞれの視点から褥瘡発
評価、
全身状態の評価を行い、
常に適切な栄養管理を行うこと、
そ
生の原因や対策を検討することが必要と考えています。
して、
褥瘡の予防や早期発見の重要性も痛感しました。
しかしなが
活動を継続することによって最近では、
他の看護師も触発された
ら前述のように当院では、
褥瘡対策チームによる定期回診も NST
ようで、
褥瘡を発生させてはいけないという意識が高まっているよ
も立ち上げたばかりで、
入院患者さんすべての栄養状態や褥瘡予
うです。
また、
他の職種、
例えばリハビリ担当のスタッフからは、
車椅
防に目が行き届いていないのが現状です。
子座位のときのクッションを増やしてほしいといった要望も出るよ
うになりました。
栄養士も積極的な介入を目指す
褥瘡の経過とAlb の推移
担当栄養士も、
毎回褥瘡回診に同行しますが、
まず回診前に対象
患者さんのリストに目を通し、
食事の内容などをチェックしておき、
実際の患者さんの様子をみて、
栄養面で何か問題があれば検討し
ます。
例えば、
患者さんが食事を残すようなら、
患者さんとコンタク
トをとりながら原因を追求し、
食事の形態を変えるのか、
ハーフ食
1月12日
4月13日
にするのか、
栄養補助食品を加えるのかといった方法についてその
5月31日
場で検討しています。
また、
回診時に限らず、
主治医から褥瘡対策チームに栄養が十分
Alb 値の推移
摂れない患者さんの対処などを相談された場合は、
栄養科に直ち
(g/dL)
に伝えられます。
栄養科からは、
前述のようにたんぱく質の強化や
4.0
微量元素の補給方法等いろいろ提案をし、
医師の了解を得て対処
するようにしています。
3.0
冒頭に申し上げましたように当院では、
NSTが立ち上がり、
現在、
症例検討会を定期的に行うことからスタートしたばかりで、
まだ本
2.0
格的な活動に至ってはいませんが、
いずれは褥瘡対策チームとの
連携体制も構築したいと考えています。
今後 NST 活動を盛り上げ、
1.0
0.0
褥瘡対策チームとのコラボレーションを実現するためには栄養士
の臨床活動が重要な役割を担っていると思いますので、
今後も積
12月15日
1月17日
4月11日
極的な活動を続けて行きたいと考えています。
5月14日
4
最近の話題や用語を紹介⑰
第34回ESPEN
(欧州臨床栄養代謝学会)
レポート
丸山道生 先生
まるやま・みちお◉ 東京都保健医療公社大久保病院 外科部長
2012 年 9 月 8 日から 4 日間にわたり、
スペインのバルセロナにて
ルセロナのヴァルデ・ヘプロン病院のプラナス先生の挨拶から始ま
第 34 回 ESPEN
(欧州臨床栄養代謝学会)
が開催された。
参加され
り、
例年の通り、
ESPEN 理事長のシンガー先生が ESPEN の紹介と
た東京都保健医療公社大久保病院外科部長 丸山道生先生に学会
今回の集会の概要を話しました。
事前の参加登録者は約 3600人で、
の模様をレポートしていただいた。
88 か国にわたるとのことでした。演題応募数は754 と過去最高で、
採択率も 90%以上でした。
開催地が魅力あるバルセロナということ
陽光と文化の街、
バルセロナ
で、演題も集まったのでしょう。国別の演題数が発表されましたが、
陽光溢れるバルセロナはまさに地中海の楽園です。
見上げる空
演 題 数のトップは、なんとわが日本で、79 題(正 式 演 題 数 で、late
は真っ青で、
照りつける日差しは強いですが、
日陰に入れば地中海
breaking abstractを含めると88 題)
と紹介されました。
2 位は開催
からの風が心地よいのです。
バルセロナはイベリア半島の東端に位
国スペイン
(71演題)
、
ついでオランダ
(47)
、
イギリス
(42)
と続いてい
置するスペイン第 2 の都市で、
中世には地中海を制覇し、
栄華をき
ました。
日本からの演題数は 2010 年のニースでは42、
2011年ヨーテ
わめた
「カタルーニャ」
帝国として発展を遂げてきました。
美しい港
ボリでは 52と着実に増加傾向にあります。日本の臨床栄養への関
には、
地中海クルーズの大型豪華客船がいくつも停泊しています。
心が、
ついに日本国内に留まらず、
海外に吹き出すに至ったというと
19 世紀末には、
この都市は建築や美術などの文化面にも優れた才
ころでしょう。
あとでシンガー先生にお会いした時、
日本の貢献をこ
能を輩出してきました。
建築家では、
天才ガウディを筆頭に、
モデル
とのほか喜んでおられました。
今回は、
日本から札幌医科大学の平田
ニスモ建築を代表するモンタネールやブッチ、
芸術家では、
ピカソ
公一、
帝京大学の福島亮治、
両先生がセッションの司会者として、
東
やミロ、
そしてダリなどです。
この陽光と文化の街、
バルセロナで第
京大学の深柄和彦先生が招待講演演者として選ばれ、
この点でも日
34 回の ESPENコングレスが、
9 月 8 日から 4 日間開催されました。
本の貢献が目立ちました。
深柄先生は昨年の大震災と原発事故に関
連した災害時の栄養管理に関しての講演を行い、
好評を得ました。
ESPEN 開催、
演題数は日本が No.1、
学会への貢献度アップ
イベリコ豚はオレイン酸 60%!
学会 会場は地中海を望む、近代的なバルセロナ国際コンベン
オープニングの記念講演は、
スペイン静脈経腸栄養学会の初代
ションセンターで開かれました。
バルセロナ郊外にある新興地域の
の理事長であったマドリッドのクレルバス先生が“Spanish food:
ダイアゴナル・マルに位置しているとても大きな会議場です。
そし
excellence and unique variety”という魅力ある講演を行いまし
て今回の学会のテーマは“Achieving Goals in Nutrition”でした。
た。
各地のスペイン料理の紹介と地中海型食生活の効用について
日本語訳では
「栄養療法の努力達成目標」
とでもなりましょうか。
です。
パエリア、
オリーブ、
地中海料理、
大西洋の魚介類など、
食事と
学会初日のオープニングセレモニーは、
今回の会長である地元バ
文化に関連したものでとても興味深いものでした。
その中で特に驚
参加者総数
3611名
医師
2575名
会場の近代的な
バルセロナ国際
コンベンションセンター
向こうはもう地中海だ。
(内 日本人参加者 : 200名)
内訳
栄養士
看護師
学生
567名
89名
107名
展示関係者 273名
(mci による集計結果)
今回の ESPENの
プログラムの表紙 あのバルセロナの 目玉であるガウディの サグラダ・ファミリア聖堂を モチーフとしたおしゃれなロゴ。
ポスター会場と展示のある
ESPEN ビレッジは 休み時間ともなると 参加者でいっぱい。
5
第 34回 ESPEN
(欧州臨床栄養代謝学会)
レポート
いたのは、
イベリコ豚です。
スペイン西端のエストレマドゥーラ州や
ドイツのレイエス先生は
「Probiotics in surgical and critically
南のアンダルシア州西部の山間で、
生ハム
「ハモン・セラーノ」
にし
ill patients」
と題する講演を行いました。
外科手術後や重症な症例
て食べる高級食材です。
ヨーロッパに現存する豚の中でも最もイノ
では、
いわゆる善玉菌が減少し腸内細菌叢が変化していることを、
シシに近い原生種で、
コルク樫の林で放し飼いにされ、
オレイン酸
術後の SIRS の状態においてのデータで示しました。
術後患者の腸
を豊富に含む樫実
(どんぐり)
を食べて大きくなります。
驚きは、
こ
内細菌叢を回復させ、
腸管バリアの正常化や免疫能の維持を図る
ために、術 後にプロバイオティクスを利用する臨 床 的な試 みを、
の豚の脂肪の 60%が一価不飽和脂肪酸のオレイン酸であること、
そして食事により体の脂肪が変化するという点です。
講演では、
イ
「Eco-immunonutrition」と称して、プロバイオティクスの臨床的
ベリコ豚産地の修道院で臨床研究が紹介され、
イベリコ豚とオリー
効果に関して文献的に考察を加えました。
それによると、
大腸、
膵臓
ブオイルを食べることで、
総コレステロール、
LDL コレステロール、
手術や肝移植手術において、
多くの場合、
術後感染症の頻度が有意
フィブリノーゲンを低下させる作用が確認されています。
イベリコ
に少なくなるとされ、
特にハイリスクグループでそれが顕著である
豚は
「足の生えたオリーブ!」
と表現されるそうです。
これは、
健康
ということでした。
この講演を聞いて、
著者も術後や重症症例にプ
志向の消費者の心をくすぐるとってもおしゃれなキャッチフレーズ
ロバイオティクスを応用してみたくなりました。
だと感心しました。
オランダのハマー 先 生の 講 演 は「Gut flora and short chain
fatty acids」
という題名で、
短鎖脂肪酸の作用を、
エネルギー源、
抗
サルコペニアや悪液質が話題に
炎症作用、
抗酸化作用、
抗癌化作用、
腸管バリア機能の維持の5つ
今回の ESPEN での話題で、
特に目を引いたのは、
サルコペニア
面から解析する総説的な発表でした。
やはり、
短鎖脂肪酸の中で酪
や悪液質に関連する発表と、
それらに関係した、
たんぱく質の産生
酸が抗炎症、
抗酸化などの作用において最も生理学的な作用が強
や崩壊に関しての基礎と臨床の研究でした。
また、
肥満をともなう
いということでした。
実験的なデータが中心の発表でしたが、
今後、
サルコ ペ ニ ア で あ る、い わ ゆ る sarcopenic obesity も 予 後 や
炎症性大腸疾患や大腸がん発生予防などの分野において、
ヒトへ
QOL が悪いという点で取り上げられていました。また、重症患者
の臨床応用が多いに期待されるところです。
の栄養療法に関しても前回の学会に引き続きトピックとなってお
イギリスのカマラ先 生は「Quorum sensing, symbiotics and
り、
特に侵襲時のたんぱく質量に関しても取り上げられていました。
antibiotics」
という講演を行い、
自分と同種の菌の生息密度を感知
そのためか、
”
Postoperative early enteral nutrition, using the
して、
それに応じて物質の産生をコントロールする機構であるクオ
high-energy and high-protein enteral formula comparing
ラムセンシングの解説を行いました。
バクテリア同士のクロストーク
with using the regular type enteral formula(高エネル ギ ー高
であるクオラムセンシングは、
バクテリアの産生するシグナル物質
たんぱく組成の経腸栄養剤を用いた術後早期経腸栄養)
”という
でコントロールされています。
そのシグナル物質は実際に同定され
著者のポスター発表も好評を得ました。
また、
JSPEN では、
以前か
ており、
その分子メカニズムは、
現在非常に注目されているようです。
ら重要な課題の一つである摂食嚥下障害に関する発表も ESPEN
基礎的な解説で、
非常に難解でしたが、
感染のコントロールという
でちらほら出てきたことも印象的でした。
観点からは将来性が非常にある分野であることが分かりました。
注目されたプレバイオティクス、
プロバイオティクス関連の発表
次回の ESPEN はドイツのライプチヒ
学会 2日目には、
プレバイオティクス、
プロバイオティクスに関連
れます。
旧東ドイツの文化の薫り高い、
音楽の都です。
ぜひ、
皆さん
したセッション、
「Symbiotic life with our microbe」
がありました。
も参加して、
来年はドイツビールで楽しく乾杯しましょう。
次回の ESPEN は 2013 年 8 月末にドイツのライプチヒで開催さ
各国からの参加者、
来年 2013 年の PENSA (アジア静脈経腸栄養学会)
を 主宰するインドネシアの グループとの記念写真。
ESPEN の会場での バリ島 PENSA の宣伝にも 意気込みが感じられた。
真ん中が次回 PENSA 会長の アルバート・ヨハネス先生。
初日、
学会場で行われた
ウェルカム・バンケットは 大入り満員。
ワインとタパスで大賑わい。
楽しいひと時だ。
ガウディの設計した
グエル公園から バルセロナの街を望む。
公園のいたるところに ガウディの考案した破砕タイルの 技術が生かされている。
日差しは強いが、
はるかかなたに見える 地中海からの風が心地よい。
バルセロナでは学会の合間の 観光地巡りもその魅力だ。
6
ESPEN 初日の
ウェルカム・コンサート
カタルーニャ交響楽団による
楽しいコンサート。
会場からは暖かな拍手が
続いた。
連載コラム
木村友紀 先生
鷲
先
ら
か
❸
『栄養療法の効果判定』
左
実践!NST活動
生
東邦大学医療センター大森病院NSTの仲間たちと綴る
澤
先生
、長 沼 先 生
、小
園
きむら・ゆうき◉東邦大学医療センター大森病院 看護部 栄養治療センター看護師
今回は私たちが行っている栄養評価法についてお話しさせてい
があるようなときは低下し、
栄養状態とは筋力の維持などを介し
ただきます。
て間接的に関連していると推測されます。
有害な事象を除去する
ためのアドバイスや追加した方がよい栄養療法などを模索しなが
効果を計る指標は?
ら回診を行っています。
サポートしている患者さんの中には声が出
栄養療法の効果判定はなかなか難しく、
長期的に観察していて
せない方も多くいらっしゃるので全患者さんに適応はできません。
も、
判定しにくいことがあります。
当院のように入院期間が短い急
回診時いろいろな評価ツールを使用していますが、
すべてを使用
性期病院では的確な評価ができないまま退院してしまうことも多
できる患者さんは比較的全身状態の良い、
予定手術前の方が多い
く、
十分な栄養支援には至っていないこともありますが、
回診はそ
のが現状です。
れぞれの症例につき1週間に1回のペースで行っており、
そのとき
私たちはいつも疾患の状態に基づき検査データなどを用いて栄
に再評価することでクオリティーを維持しています。
養療法の効果判定をするわけですが、
カルテから情報を得たあと
上腕周囲長・皮下脂肪厚・筋力の測定を行い生体への侵襲、そ
に回診にうかがうと、
事前の印象と直接見たご本人の状態との間に
こからの回復などの評価に使用しています。
筋力の測定としては一
ギャップを感じることは少なくありません。
実際にお話を聞かせて
般的に握力が用いられますが、
当院では測定や持ち運びの簡易さ
いただき、
前述のアセスメントを行うことがこのギャップを埋める
から、
ピンチトラックという器具を用いて指先のつまむ力を測定し
のに必要なことだと感じる毎日です。
ています。
これは測定時の体位や指の位置などの条件で値が変化
●
することがありますが、
高齢者でも測定値が出しやすくとても便利
●
です。
それぞれの症例につき栄養状態を含めた病状の推移を検討
薬剤師
声によって患者状態を評価するのは、
なんて斬新なのだろう
と思っています。
これが案外、
病状を正確に反映しますよ!
しています。
このように、
主に患者さんの活力を評価する事が回診
(専任薬剤師 NST ディレクター 小園幸輝先生)
の大切な仕事となっています。
患者さんご自身は術前と比べてどの
ように変わったかという実感が欲しいようで、
数値がどのように変
化したかをよく質問されます。
活気のない方はこのような事には興
味を示さないため、
測定も寝たまま行う事が多く、
ピンチトラック
ポイントは繰り返しと情報共有
を行うこと自体が現在の病状把握となります。
毎週、
回診の時に私
このように回診のたびにいろいろな方法で評価していますが、
たちのチームについて自己紹介していても活動内容を理解してい
確定したひとつの方法はないように思います。
病棟看護師などか
ただけることは少なく、
上記のような測定値をお伝えしたり、
食事
らは依頼する患者さんの選択基準が明確でないと言われますが、
内容を説明したりする過程で少しずつ理解されていくように感じ
その一方で、
栄養療法の効果が見えにくいのも常で、
支援が終了し
ます。
私たちの業務にも必要ですが、
患者さんご自身に回復を実感
た後にようやく効果が分かってくることも多いと思います。
サポー
していただくためにも役立っているのではないかと思います。
ト方法のポイントが明瞭に示せる知識も経験もない私は、
チームの
●
メンバーに助けられ、
相談しながら活動している状態ですが、
効果
管理栄養士
判定については繰り返し行うことがテクニックのツボと考え、
効果
● 特に当院のような急性期施設において侵襲下における患者
判定を自ら行うことが大切だと感じています。
これが上手に進め
さんの筋力の評価は重要だと思います。
られるようになるためには、
現場のスタッフとの情報共有がきわめ
(NSTチーフディレクター 長沼広和先生)
て大事なことだと感じています。
今月は、
研修医の先生が NST に参加していますので、
鷲澤医師
声は体調をあらわす
に代わって、
NSTの中での私の役割について評価していただきま
した。
また、
回診の時には患者さんの声がどれくらい聞き取りやすい
かを評価しています。
これに関しては、
客観的に評価しにくいとこ
●
ろがあるため、
誰でも行いやすいように数値化するツールを NST
●
メンバーが作成し、
カーテン越しに表情や仕草を見ずに、
聞こえ方
医 師
今回 NSTを研修させていただいておりますが,日々患者さ
んと直に接する機会の多い看護師さんは円滑な栄養評価・治
だけで判定する方法をとっています。
表情や指差しなどを見てしま
療に必要不可欠な存在であると実感しました !!
うと、
補助的な情報が入ってしまうため、
これらを排除し、
声の大き
(研修医 古賀裕揮先生)
さだけではなく、
滑舌やメリハリなども評価し、
総合的な元気さを
はかる尺度とすることを目的としています。
その日の体調に大きく
関連していますが、
気分なども関連してくるので、
疼痛や苦痛など
7