防災科学技術研究所 地震・火山観測網 Seismograph Networks of NIED

防災科学技術研究所 地震・火山観測網
Seismograph Networks of NIED
強 震 観 測 網:K-NET・KiK-net
高 感 度 地 震 観 測 網:Hi-net
広 帯 域 地 震 観 測 網:F-net
火 山 観 測 網:V-net
2011 年東北地方太平洋沖地震の断層すべり量,
各観測点における最大加速度,余震分布.
国立研究開発法人
防災科学技術研究所
いろいろな地震計
地震による地面の揺れ方は様々です.長さを測るのに,ノギスから巻き尺までいろいろな道具
があるように,地震計にもいろいろなタイプのものがあります. 地震動の振幅および周期の範囲
はきわめて広いため,防災科学技術研究所(以下,防災科研)では,観測の目的に合わせて3種
類の地震計を用いて観測を行っています.地震計は,強震計・高感度地震計・広帯域地震計に大
別することができます.
図はそれぞれの地震計
が得意とする揺れの大き
さと周期の関係を示して
います.
強震計:建物が壊れてしまうような強い揺れがきても,それを確実に記録するための地震計です.
大きな揺れを観測するため,頑丈な造りになっています.地盤の構造や耐震設計など,主に工学
的な研究に役立てられます.これに震度を計算する機能を付加した「震度計」は,広く使用され
ています.
高感度地震計:人間が感じることができないような小さな揺れまで敏感に記録するための地震計
です.小さな地震による微弱な揺れを観測するため,車や工場などによる地表近くの雑微動を避
けて井戸の底に設置されることが多く,地震の起きた位置の推定(震源決定)などに用いられま
す.
広帯域地震計:はやい揺れからゆっくりした揺れまで計測することができる地震計で,断層破壊
の様子や地球内部構造の研究に用いられます.温度や気圧の変化に影響されやすいため,トンネ
ル内に設置する必要があるなど,観測施設がやや大がかりになりますが,非常に高性能な地震計
です.
強震観測網:K-NET・KiK-net
阪神・淡路大震災を契機として,我が国では,地盤の強震動を全国的に観測する組織的な取り
組みが不十分であったことが浮き彫りにされました.これを受けて,防災科研は,全国を約 20 km
間隔で覆う約 1,000 ヶ所の強震観測施設(写真)からなる K-NET(Kyoshin Net)を完成させま
した.さらに,高感度地震観測施設(次項参照)には,地表と地下にペアで強震計を設置してお
り,KiK-net(Kiban Kyoshin-net)と呼ばれています.このような,地中観測を含めた全国的に
均質かつ高密度な強震観測体制は世界でも類をみないものです.強震観測の目的は強い地震動を
振り切れることなく忠実に記録することです.2008 年 6 月 14 日岩手・宮城内陸地震(M 7.2)
では KiK-net 一関西観測点において,これまで世界で観測された最大の加速度となる 4,022 gal
を記録しています.観測装置は地震を検知すると,自動的に防災科研にあるデータセンターに接
続して,即座にデータ転送を行います.集められた強震波形は,加速度分布図や各観測点の地盤
情報などと共に,広く一般に公開されています.さらに,地面の揺れを連続観測することにより,
地震の直前から直後までリアルタイムの防災情報の提供を可能とする計画を進めており,一例と
して現在の地震動分布を可視化して配信する強震モニタが挙げられます.また,一部の観測点で
計測された震度値は気象庁に集約され,防災情報として活用されています.右下の図は,2011 年
3 月 11 日東北地方太平洋沖地震(M 9.0)の発生
から約 2 分後における強震モニタを示しています.
赤色で示される強い揺れの領域が,東北地方から
関東地方にかけての太平洋側に数百 km にわたっ
て広がっており,震源域の広大な超巨大地震が発
生したことを見て取ることができます.
2011 年東北地方太平洋沖地震に
よる地表加速度分布を可視化し
K-NET の観測施設
た強震モニタの 2011 年 3 月 11
日 14 時 48 分 10 秒時点の表示例
高感度地震観測網:Hi-net
内陸で発生する浅い地震の震源の位置を精度よく決
めるため,防災科学技術研究所では,阪神・淡路大震
災を契機として,防災科研 Hi-net(High sensitivity
seismograph network)と呼ばれる新たな高感度地震
観測網の整備を進めてきました.この観測網は,既存
の微小地震観測点と併せて日本全国を約 20 km 間隔で
均質に覆うように計画され,現在,約 800 地点で地面
の揺れを常時観測しています.このような高密度な3
成分高感度地震観測網は,世界でも類をみないもので
す.
高感度の地震観測にとって,自動車や工場等による
人為的な振動(ノイズ)は大きな障害になります.こ
のようなノイズを避けるため,Hi-net の各観測施設で
は深さ 100 m 以上の井戸を掘削し,その井戸底に高感
度地震計を設置しています.市街地や厚い堆積層に覆
われている地域の観測点では,数百 m から数千 m の深
さの井戸を掘削しています.
地震計で記録された信号は,24 時間絶え間なく防災
科研に伝送されています.同時に,気象庁や大学など
にも送信され,地震活動の常時監視や研究に利用され
ています.逆に,大学や気象庁などによる観測データ
も防災科研に送られてきています。高感度地震観測網
により求められた震源情報や観測波形は,インターネ
ットにより広く一般に公開されています.
右図は Hi-net が 1 年間に検知した日本周辺の主な地
震の震源分布です.色は深さを示しており,暖色系か
ら寒色系になるにつれて震源が深くなります.日本周
辺では,1 年間で 10 万個以上の地震が発生しています
が,そのほとんどは人が揺れを感じない微小な地震で
す.赤色で表示された浅い地震は日本全国で多数発生
しています.東北地方や関東地方の下では,太平洋側
から日本海側に向かって震源が徐々に深くなっていま
す.これは太平洋プレートが日本列島の下に沈み込ん
でいく様子を示しています.
フィリピン海
プレート
太平洋プレート
沿いの地震
南から見た断面図
広帯域地震観測網:F-net
地震による地面の速い振動から,非常にゆっくりと
した振動まで,広い周波数範囲にわたって地震動を記
録できるのが広帯域地震計です.このような地震計を
用いることにより,世界中で起こる大地震のメカニズ
ムや,震源での断層運動の詳細な時間経過が解析でき
ると同時に,
津波地震(体に感じる揺れは小さいのに,
巨大な津波を起こす特殊な地震)を的確に検知するこ
とが可能となります.
防災科研が従来から行っていた Freesia プロジェク
トを引き継ぐ形で,広帯域地震計を全国に約 100 km
間隔で約 100 点配備する計画が進められています(平
広帯域地震観測に用いられる地
成 24 年 5 月現在 73 ヶ所).高精度の広帯域地震観測
震計.
を行なうためには温度変化や気圧変化が大きな障害となるため,地震計は,奥行き数 10 m の横
坑(トンネル)の奥に設置されるのが普通です.観測データはテレメータによって防災科研へ常
時伝送され,波形の自動解析や蓄積,およびデータ公開がなされています.
広帯域地震観測網によ
り得られた地震波形か
ら推定された,2011 年
1 月 1 日〜12 月 31 日の
期間に日本周辺で発生
した地震のメカニズム
解の分布図.ビーチボー
ル状の記号の大きさが
地震の規模を,色が深さ
を表しており,この記号
の模様が,断層の割れた
向きなどを示していま
す.
火山観測網:V-net
火山噴火予知の実用化と火山防災を目指して,防災科学技術研究所は基盤的火山観測網(V-net)
を 11 火山に整備してきました.この観測網では,1983 年三宅島噴火や 1986 年伊豆大島,1989
年伊豆東部火山群噴火の際に,その前兆を捉えることに成功した埋設式の地震・傾斜計を配備し
ています.さらに,マグマの蓄積状況を把握するため GPS,噴火の状態を理解するための広帯域
地震計を備えています.これらの機器を用いて,マグマの蓄積・移動から噴火に至る一連の過程
を観測します.
2011 年 1 月 26 日に霧島山
噴火に伴った傾斜計変動
(新燃岳)では,規模の大き
いマグマ噴火が発生しました.
この噴火では,新しく整備し
た基盤的火山観測施設で観測
された地殻変動や地震活動に
より,火山活動の推移把握や
マグマ溜まりの位置や収縮量
を推定することができました.
右図は,霧島山新燃岳噴火に
伴った傾斜変動(2011 年 1
月 23 日〜2 月 2 日)です。
V-net 紹介ホームページ
(http://www.vnet.bosai.go.jp/)
防災科研(http://www.bosai.go.jp/)の
「観測調査情報」ページからリンクを
たどることができます.
データの活用・公開
防災科研では,各地震観測網による地震のデータをリアルタイムで気象庁に転送しています.
Hi-net および F-net の地震波形データを気象庁の定常処理に組み込むことにより,日本周辺の地
震の検知能力及び震源・メカニズム解の決定精度が著しく向上しました.K-NET は,気象庁や自
治体とともに日本の震度観測の一翼を担っています.V-net は気象庁火山データと連係し、火山
活動の評価に役立っています.各観測網で得られたデータの解析結果は,政府・地震調査委員会
などに逐一報告されるほか,最近では,防災科研地震観測網のデータが緊急地震速報処理に利用
されるなど,地震防災・減災の進展に大きく貢献してきました.
全てのデータは,インターネットを通じて広く一般の人々や研究者等に公開されています.各
観測網のホームページでは,震源の位置・メカニズムなどの速報値や観測点の地質情報など,地
震現象に関する様々な情報を閲覧することができます.さらに,ユーザー登録をすることにより,
観測された波形データを取得することができます.これらのホームページには,防災科研
( http://www.bosai.go.jp/ ) の 「 観 測 調 査 情 報 」 ペ ー ジ や 防 災 科 研 地 震 観 測 網 ポ ー タ ル
(http://www.seis.bosai.go.jp/)からリンクをたどることができます.
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連絡先
防災科学技術研究所(URL http://www.bosai.go.jp/)
〒305-0006
茨城県つくば市天王台 3-1
Tel: 029-851-1611
/
Fax: 029-851-1622