社団法人 電子情報通信学会 THE INSTITUTE OF ELECTRONICS, INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS 信学技報 IEICE Technical Report 次世代広域レイヤ 2 網実現に向けたプロトコル実装と実証実験 岡本 聡† 菊田 洸† 西田 昌弘† 石井 大介† 荒川 豊† 山中 直明† †慶應義塾大学理工学部 〒223-8522 神奈川県横浜市港北区日吉 3-14-1 E-mail: †[email protected] あらまし イーサネットサービスの高度化に伴いキャリアグレードイーサネットを凌駕する次世代広域レイヤ2 網が求められている.我々は,イーサネットをベースとした新たなレイヤ 2 プロトコル技術を提案し,要素技術の 開発を進めてきた.本論文では,提案している次世代レイヤ 2 プロトコルの概要及び,開発したプロトタイプシス テムでの実証実験の結果を報告する.プロトタイプシステムでは,in-band message communication channel (IMCC)及び, Mac-in-Mac 伝送,GMPLS によるレイヤ 2 パス制御機能を実現している. キーワード 広域レイヤ 2 網,イーサネット,仮想専用線,GMPLS Experiments of transport and control protocols for next generation wide area Layer2 networks Satoru OKAMOTO† Kou KIKUTA† Yutaka ARAKAWA† Masahiro NISHIDA† Daisuke ISHII† and Naoaki YAMANAKA† †Department of Information and Computer Science, Faculty of Science and Technology, Keio University E-mail: †[email protected] Abstract As increasing Ethernet service users and enhancing service functions, a next generation wide area layer2 network beyond the state-of-the-art carrier grade Ethernet is expected. For realizing the next generation layer2 network (NGL2), we have proposed new layer2 protocol technologies based on Ethernet technologies and have developed elemental functional systems. In this article, a newly developed NGL2 prototype system is reported. The prototype system provides an in-band message communication channel (IMCC) function, Mac-in-Mac frame transport mechanism, and GMPLS based layer2 path control functions. Keyword Wide Area Layer2 Network, Ethernet, Virtual Private Line, GMPLS 1. は じ め に ンパチビリティを保つことが基本的な原則とされるた 高速広帯域通信網をサポートするために,イーサネ め , 最 新 の IEEE802.1ah Mac-in-Mac に よ る Provider ッ ト 技 術 は 1 Gbps (GE),10 Gbps (10GE)と 進 展 し ,現 Backbone Bridge (PBB) を 実 現 す る た め に は , 在 は 40 Gbps (40GE)及 び 100 Gbps (100GE)の 開 発 と 標 IEEE802.1ah 対 応 の Edge デ バ イ ス を 用 意 す る だ け で よ 準化が進められている.また,キャリアグレードイー く , Core デ バ イ ス は , 従 来 の VLAN Bridge (802.1Q ス サネット技術の開発が進められた結果,イーサネット イ ッ チ )や Provider Bridge (802.1ad ス イ ッ チ )を 継 続 し は Local Area Network (LAN) だ け で は な く , Wide て 使 用 可 能 と い う メ リ ッ ト が 存 在 す る [1]. Area Network (WAN)へ の 適 用 も 進 め ら れ て い る . し か し な が ら ,元 来 LAN を 対 象 に 定 義 さ れ た も の で イ ー サ ネ ッ ト は , IEEE 802.3 に お い て フ レ ー ム フ ォ あるため,キャリアグレードイーサネットとして ー マ ッ ト が 定 義 さ れ ,Virtual LAN (VLAN)等 の 拡 張 や , Operation, Administration, and Maintenance (OAM)機 能 Q-in-Q,Mac-in-Mac と い っ た 拡 張 が IEEE 802.1 に お い やプロテクション機能の追加が試みられているものの, て定義されている.拡張においては,バックワードコ イーサネットの枠組の中での機能拡張が前提とされて いる. これまで,日本国内ではイーサネットの枠組を超え た 広 域 レ イ ヤ 2 ネ ッ ト ワ ー ク 技 術 と し て ,Ethernet over Ethernet (EoE)[2]と 呼 ば れ る Mac-in-Mac 方 式 や Global 独 立 し た NGL2 網 用 MAC フ レ ー ム の ヘ ッ ダ を 付 与 す る Mac-in-Mac マ ッ ピ ン グ 方 式 が 考 え ら れ る . 我 々 は ,(1) ア ド レ ッ シ ン グ の 自 由 度 の 確 保 ,(2) ユ Open Ethernet (GOE) [3]の 開 発 が な さ れ て き た .し か な ー ザ MAC フ レ ー ム の 透 過 伝 達 性 , (3) connection が ら , 両 方 式 に お い て も Spanning Tree Protocol (STP) oriented (CO) な パ ス サ ー ビ ス (Point-to-Point (P-P) 及 をベースとして拡張したコントロールプレーンを利用 び Point-to-Multipoint(P-MP)の 仮 想 専 用 線 )の 実 現 性 , し て い る も の の , Automatically Switched Optical (4) コ ン ト ロ ー ル プ レ ー ン と の 親 和 性 , を 重 視 し , c) Network (ASON)[4]や Generalized Multi-Protocol Label の Mac-in-Mac マ ッ ピ ン グ 方 式 を 採 用 し た . Switching (GMPLS)[5]に 代 表 さ れ る 本 格 的 な コ ン ト ロ ールプレーンの機能を活用したものではなかった. 図 1 に提案する次世代広域レイヤ 2 網のサービスア ー キ テ ク チ ャ を 示 す .UNI は ,802.3D,802.1Q,802.1ad, そ こ で , 我 々 は (1) イ ー サ ネ ッ ト を ベ ー ス と し て 最 802.1ah の 各 イ ー サ ネ ッ ト フ レ ー ム を サ ポ ー ト し ,ユ ー 小 限 の フ ォ ー マ ッ ト 変 更 を 行 う , (2) イ ー サ ネ ッ ト の ザ か ら の オ ン デ マ ン ド な P-P,P-MP の CO パ ス サ ー ビ 枠 組 に と ら わ れ な い 自 由 な 機 能 変 更・追 加 を 許 容 す る , ス を 提 供 す る . ま た , CO パ ス が ア プ リ ケ ー シ ョ ン 対 (3) IP と の 親 和 性 を 高 め , コ ン ト ロ ー ル プ レ ー ン の 機 応 の Quality of Service (QoS)を サ ポ ー ト で き る よ う , 能を活用する,といった三項目を研究の枠組と据えて QoS 提 供 性 能 の 向 上 を 目 指 し て い る . 次世代広域レイヤ 2 技術の研究開発を進めてきた. こ れ ま で ,ASON/GMPLS に よ る イ ー サ ネ ッ ト 制 御 技 術 [6-8], VLAN タ グ ス ワ ッ ピ ン グ に よ る マ ル チ ド メ イ ン 広 域 イ ー サ ネ ッ ト 網 構 築 技 術 [9,10],コ ン ト ロ ー ル プ レ ー ン 用 in-band message communication channel (IMCC)提 供 技 術 [11-13],フ レ キ シ ブ ル ス イ ッ チ ノ ー ド 構 成 技 術 [14] , フ レ ー ム ロ ス 最 小 化 故 障 救 済 技 術 [15] の報告を行ってきた.本論文では,研究開発ターゲッ トとしている次世代広域レイヤ 2 網のサービスアーキ テクチャ,提案するフレームフォーマット,制御プロ トコルの実装及びプロトタイプシステムによる実証実 図 1: 提 案 す る 次 世 代 広 域 レ イ ヤ 2 網 サ ー ビ ス ア ー 験結果を報告する. キテクチャ 2. 次 世 代 広 域 レ イ ヤ 2(NGL2)網 の ア ー キ テ ク 2.2. 転 送 アーキテクチャ チャ 2.1. サービスアーキテクチャ イ ー サ ネ ッ ト は ,家 庭 内 LAN,企 業 内 LAN,さ ら に フ レ ー ム を End-to-End で 転 送 す る 上 で は ,以 下 に 示 す 5 項目が重要である. 1) 宛 先 識 別 子 : フ レ ー ム の 宛 先 は通信キャリアバックボーンと幅広く採用されている 2) 始 端 識 別 子 : フ レ ー ム の 送 信 元 た め , 物 理 的 な User Network Interface (UNI)と し て は 3) イ ン ス タ ン ス 識 別 子 : デ ー タ フ ロ ー の 識 別 将来的にもサポートが必要である.そのため,イーサ 4) 経 路 ・ キ ュ ー の 識 別 : ノ ー ド で の 処 理 識 別 ネットと次世代広域レイヤ 2 網との間で,なんらかの 5) サ ー ビ ス タ イ プ 識 別 子:フ レ ー ム が 提 供 す る サ ー プロトコル変換が必要となる. ビス識別 変 換 の 手 法 と し て は ,a) ユ ー ザ Media Access Control 既 存 イ ー サ ネ ッ ト で は , 1) Destination MAC ア ド レ (MAC) フ レ ー ム の ペ イ ロ ー ド を 次 世 代 広 域 レ イ ヤ 2 ス (D-MAC) , 2) Source MAC ア ド レ ス (S-MAC) , 3) (Next Generation Layer2: NGL2)網 用 MAC フ レ ー ム の VLAN-ID, 4) VLAN-ID+プ ラ イ オ リ テ ィ , 5) Ethernet ペイロードデータとして収容するペイロードマッピン Type と し て ,5 項 目 が イ ー サ ネ ッ ト ヘ ッ ダ 内 に エ ン コ グ 方 式 , b) ユ ー ザ MAC フ レ ー ム の ヘ ッ ダ を 利 用 し て ー ド さ れ て い る . VLAN-ID が End-to-End の 呼 識 別 子 NGL2 網 用 MAC フ レ ー ム の ヘ ッ ダ デ ー タ を 生 成 し ,ユ として利用されているため,スケーラビリティや運用 ー ザ MAC フ レ ー ム の ペ イ ロ ー ド を NGL2 網 用 MAC フ 性 の 点 で 課 題 が あ る と さ れ て お り ,VLAN-ID を リ ン ク レ ー ム の ペ イ ロ ー ド デ ー タ と し て 収 容 す る 拡 張 MAC 毎にスワップすることでスケーラビリティの課題を打 ヘ ッ ダ マ ッ ピ ン グ 方 式 , c) ユ ー ザ MAC フ レ ー ム 全 体 破することが可能である.しかしながら,リンク毎に を NGL2 網 用 MAC フ レ ー ム の ペ イ ロ ー ド デ ー タ と し , スワップするためのテーブル管理,人的な設定ミスに よる誤接続といったデメリットのインパクトが大きい た め , 標 準 化 で は 不 採 用 と さ れ て い る [1] . ま た , 張 ヘ ッ ダ (32bit): Time To Live (TTL) 8bit + 予 備 End-to-End に お け る 呼 の 識 別 子 と し て , [D-MAC , 24bit. S-MAC, VLAN-ID]が 利 用 さ れ て い る . 我々は,コントロールプレーンを利用することで, ペイロードには,ユーザのイーサネットフレームが 収 容 さ れ る . 又 ト レ イ ラ ー と し て , Frame Check 誤接続やループといった致命的なデメリットを回避す Sequence (FCS)が 付 加 さ れ る . ユ ー ザ フ レ ー ム の FCS る こ と が 可 能 で あ る と 考 え ,VLAN-ID を リ ン ク 毎 に ス はペイロード収容時に剥ぎ取られ,終端ノードにおい ワップする転送方式を採用する.また,経路上のスイ てペイロードから取り出された際に再計算して付与さ ッ チ は ,VLAN-ID に 基 づ い た ラ ベ ル ス イ ッ チ ン グ に よ れる. っ て 転 送 さ れ る も の と し た .VLAN-ID を ス ワ ッ プ 可 能 拡 張 ヘ ッ ダ は ,現 在 は TTL 用 と し て 8bit の み 定 義 し と す る こ と で ,ス ケ ー ラ ビ リ テ ィ・運 用 性 の 向 上 [9, 10], て い る が , QoS 制 御 用 の フ ィ ー ル ド と し て 活 用 す る こ 高 速 障 害 回 復 機 能 の 提 供 [15]と い っ た メ リ ッ ト を 享 受 と を 想 定 し て い る . ま た , TTL は 経 路 ト レ ー ス 機 能 を 可 能 に な る .ま た ,パ ス 設 定 に お い て も ,ノ ー ド /リ ン 実 現 す る こ と を 目 的 と し て い る . な お , TTL は ル ー プ ク ロ ー カ ル な 空 き ID を パ ス 識 別 の た め の ラ ベ ル 値 発生時の対策としても効果を期待可能であるが,コン (Virtual Path Identifier (VPI))と し て 割 り 当 て る こ と が トロールプレーンからの制御を前提としているため基 可能となるため,パス設定の簡易化が可能となるメリ 本的にはループは発生しないものと考えている. ットがある. 3.2. アドレッシング 前 述 し た 5 項 目 に 対 し て は ,1) D-MAC,2) S-MAC, イ ー サ ネ ッ ト に お け る MAC ア ド レ ス は , 基 本 的 に 3) イ ン ス タ ン ス 識 別 子 (Instance TAG: I-TAG), 4) VPI は 上 位 24bit の ベ ン ダ ア ID と 下 位 24bit の 機 器 ID か ら + Priority-ID, 5) Payload Type を 定 義 し た . ま た , 呼 構成されている. の 識 別 子 と し て は a) [D-MAC,S-MAC,I-TAG]及 び b) 提 案 す る 次 世 代 広 域 レ イ ヤ 2 網 で は ,IP ベ ー ス の コ コ ン ト ロ ー ル プ レ ー ン に お け る ASON/GMPLS Call-ID ントロールプレーンとの融合を最大限に活用すること が利用可能である. を 目 指 し ,ノ ー ド ID(ル ー タ ID)と し て 付 与 さ れ る IPv4 ア ド レ ス を 上 位 32bit と し て 利 用 し ,下 位 16bit を 物 理 3. 次 世 代 広 域 レ イ ヤ 2 網 用 フ レ ー ム フ ォ ー マ ッ ト 3.1. NGL2 フレームフォーマット 図 2 に,今回定義した次世代レイヤ 2 網のフレーム 的なポート番号として与える. こ の た め , GMPLS に お け る Traffic Engineering (TE) リ ン ク の ア ド レ ス と し て ,ル ー タ ID(32bit)と イ ン タ フ ェ ー ス ( ポ ー ト )ID(32bit)の 組 と い う unnumbered の 形 フォーマットを示す.フレームは,ヘッダとペイロー 態 を 採 用 す る こ と に よ り ,GMPLS OSPF で 広 告 さ れ る ドから構成される.また,既存イーサネット技術を極 TE リ ン ク よ り リ ー チ ャ ブ ル な MAC ア ド レ ス を 容 易 に 力流用可能とするため,今回はイーサネットフォーマ 抽 出 可 能 で ,48bit の リ ー チ ャ ブ ル MAC ア ド レ ス を 広 ットとほぼ同一のフォーマットを採用している. 告するための新規拡張が不要となるメリットがある. 図 3 に 提 案 す る MAC ア ド レ ス の フ ォ ー マ ッ ト を 示 す. 図 3: MAC ア ド レ ス フ ォ ー マ ッ ト 図 2:提 案 す る 次 世 代 広 域 レ イ ヤ 2 (NGL2) 網 用 フ レ ームフォーマット 4. 制 御 プ ロ ト コ ル 実 装 4.1. GMPLS 実 装 制 御 プ ロ ト コ ル と し て は GMPLS の RSVP 及 び OSPF ヘ ッ ダ は 6 個 の フ ィ ー ル ド よ り 構 成 さ れ る . 1) を 採 用 し た .実 装 に お い て は ,GMPLS Engine [16]を 利 D-MAC (48bit),2) S-MAC (48bit),3) VPI (32bit): Type 用 し て , Layer2 対 応 及 び 独 自 の 拡 張 を 加 え た . 16bit + VPI 16bit , 4) I-TAG (32bit): Type 16bit + 4.2. シグナリング Instance ID: 16bit,5) ペ イ ロ ー ド タ イ プ (16bit),6) 拡 RSVP に 関 し て は IETF に お い て PBB-TE に 関 す る 拡 張 の 標 準 化 が 進 め ら れ て い る . PBB-TE に お い て は , 経 路 上 の ス イ ッ チ に 対 し て D-MAC , S-MAC 及 び 4.3. ルーティング VLAN-ID (B-TAG) を 通 知 し て Forwarding DataBase IEEE に お い て , PBB-TE に 対 す る Shortest Path (FDB)を 構 成 す る 必 要 が あ る . 一 方 , 本 論 文 で 提 案 す Bridging に 対 す る IS-IS プ ロ ト コ ル の 標 準 化 が 進 め ら る レ イ ヤ 2 網 は , D-MAC, S-MAC を ノ ー ド の ノ ー ド れ て い る .OSPF が IP に 依 存 し て い る の に 対 し ,IS-IS ID + Port 番 号 と し て , GMPLS メ ッ セ ー ジ の 終 点 ・ 始 は IP 非 依 存 な た め , イ ー サ ネ ッ ト フ レ ー ム 上 に IS-IS 点 と し て 自 然 に エ ン コ ー ド が 可 能 で あ る .ま た ,MPLS Protocol Data Unit (PDU)を 定 義 可 能 で あ る と い う こ と と同様なリンク毎にラベルを割り当てるラベルスイッ が 大 き な メ リ ッ ト で あ る .IS-IS に よ っ て ,エ ッ ジ と な チ ン グ を 採 用 し て い る た め , FDB は [入 力 ポ ー ト 番 号 , る MAC ア ド レ ス を 広 告 し , 最 短 経 路 に 基 づ い た FDB 入 力 VPI 値 , 出 力 ポ ー ト 番 号 , 出 力 VPI 値 ]と し て 管 を 各 ノ ー ド が 構 築 す る こ と で PBB-TE の 動 作 (MAC 学 理される. 習 無 , 宛 先 不 明 の フ レ ー ム は 廃 棄 )を 実 現 し て い る . 提 案 方 式 に お い て は , MPLS と 異 な り 双 方 向 通 信 で 提 案 方 式 に お い て は , MAC ア ド レ ス で は な く , あ る た め PATH メ ッ セ ー ジ 中 の Upstream_Label に て , unnumbered な ノ ー ド ID(ル ー タ ID)と ポ ー ト に よ り リ VPI 値 を 通 知 し ,上 り /下 り で 同 一 の VPI 値 を 割 り 当 て ーチャビリティを広告することが可能である.また, る . こ の た め , VPI 値 の 管 理 テ ー ブ ル を ポ ー ト 毎 に 用 VPI の 採 用 に よ り ,空 き VLAN-ID の 広 告 等 も 不 要 と な 意 す る 場 合 に は , PATH メ ッ セ ー ジ で 通 知 さ れ た 上 流 っ て い る . 従 っ て , 現 状 の GMPLS OSPF-TE か ら の 大 ノ ー ド の 出 力 VPI 値 は 下 流 ノ ー ド の 入 力 VPI 値 と し て きな拡張は必要としていない.ただし,今回はリーチ 常 時 利 用 可 能 で あ る . VPI 値 の 管 理 テ ー ブ ル を ノ ー ド ャビリティの広告機能は実装されていない. で 一 つ と し た 場 合 は ,他 の ポ ー ト で 利 用 済 の VPI 値 が Upstream_Label で 通 知 さ れ , ブ ロ ッ ク さ れ る 可 能 性 が 5. 実 証 実 験 ある.この場合は,クランクバックによるリトライ, 5.1. コントロールプレーン実 装 Suggested_Label に よ る 複 数 候 補 通 知 と い っ た 対 策 が 必要となる. こ の よ う に ラ ベ ル と し て 通 知 す る の は VPI 値 の み で 十 分 で は あ る が , 今 回 は [6-10]で 利 用 し た ソ フ ト ウ ェ アを流用したため,ラベルフォーマットは,図 4 に示 す [Tag/Untag][Port#][VPI]形 式 を 利 用 し た . コントロールプレーンの制御ソフトウェアは,デー タ プ レ ー ン 用 ボ ー ド が 装 着 さ れ る ホ ス ト PC 上 に 実 装 し た . ホ ス ト PC で は Linux が 動 作 し て お り , デ ー タ プ レ ー ン 用 ボ ー ド 制 御 ソ フ ト ウ ェ ア 及 び GMPLS ソ フ ト ウ ェ ア (RSVP 及 び OSPF)が 動 作 し て い る . GMPLS ソ フ ト ウ ェ ア 間 の 通 信 チ ャ ネ ル の 提 供 に は in-fiber in-band Data Communication Network (DCN)方 式 を 採 用 し , こ れ ま で に 我 々 が 開 発 し て き た IMCC 方 式 [11-13]を 適 用 し た . IMCC は , デ ー タ プ レ ー ン 用 ボ ー ド に 実 装 さ れ て お り ,PCI-X バ ス を 介 し て ホ ス ト PC 上 の Linux と 通 信 し て い る . IMCC は , Linux 内 部 で imcc0 及 び imcc1 と い う イ ー サ ネ ッ ト と 等 価 な デ バ イ ス と し て 認 識 さ れ ,隣 接 ノ ー ド の IP 通 信 及 び Linux の IP フ ォ ワ ー デ ィ ン グ 機 能 と 組 み 合 わ せ て コ ン ト ロ ー ル プ レ ー ン 用 IP 網 を 構 築 す る の に 利 用 さ れ て い る . 図 4: ラ ベ ル フ ォ ー マ ッ ト 提 案 方 式 で は ,VPI と し て リ ン ク 毎 に VLAN-ID 相 当 の 値 を call-by-call に 割 り 当 て る た め ,網 全 体 か ら の 未 使 用 VLAN-ID の 探 索 や , Explicit Route Object (ERO) に よ り VLAN-ID の 始 端 か ら の 通 知 [6-10]と い っ た 処 理 が 不 要 と な り ,ERO と し て は 経 路 の み を 与 え れ ば 十 分 と な っ た .反 面 ,経 路 に お け る 付 与 さ れ た VPI 番 号 リ ストを始終端ノードが取得することが困難となるため, Record Route Object (RRO)を 用 い て ラ ベ ル 値 を 収 集 す る機能を追加した. 5.2. データプレーン実 装 データプレーン用ボードは,双方向 1 入力 1 出力の Layer2 ス イ ッ チ と し て PCI-X ボ ー ド に 実 装 し た .ボ ー ド に は , 2 個 の デ ー タ プ レ ー ン 用 1000Base-T ポ ー ト (IF0 及 び IF1), フ レ ー ム ス イ ッ チ を 実 現 す る た め の Field Programmable Gate Array (FPGA) , IMCC , Mac-in-Mac,TTL,VPI 値 変 更 処 理 を 行 う 2 個 の Digital Application Processor/ Distributed Network Architecture II (DAPDNA II)チ ッ プ [17]が 搭 載 さ れ て い る .以 前 の 報 告 [11-13]に お い て は ,DAPDNA II を 1 チ ッ プ の み 使 用 していたが,機能追加に伴い両方のチップを使用して 処 理 が 行 わ れ て い る . 図 5(a)に デ ー タ プ レ ー ン 用 ボ ー ドの写真を示す. NGL2 フ レ ー ム に 付 与 す べ き D-MAC,S-MAC,VPI, TTL 等 の 値 は , Linux 上 の デ ー タ プ レ ー ン 用 ボ ー ド 制 御ソフトウェアから与えられる. 5.2.2. Mac-in-Mac 機 能 の 実 装 図 5(b)に ,Mac-in-Mac 機 能 を 実 装 し た 場 合 の ボ ー ド 構 成 を 示 す . IF0 に は , 既 存 イ ー サ ネ ッ ト フ レ ー ム (802.1D,802.1Q,802.1ad,802.1ah)が 入 力 さ れ ,DNA に お い て ,NGL2 フ レ ー ム に Mac-in-Mac さ れ て IF1 よ り 出 力 さ れ る (push 動 作 ).ま た IF1 よ り 入 力 さ れ か つ , D-MAC が 本 ボ ー ド 宛 の NGL2 フ レ ー ム は DNA に お い (a) て , ユ ー ザ MAC フ レ ー ム が 取 り 出 さ れ , FCS を 付 加 し た 後 IF0 よ り 出 力 さ れ る (pop 動 作 ).デ フ ォ ル ト で は , IF0,IF1 か ら 入 力 さ れ た フ レ ー ム は 廃 棄 さ れ る .GPLS Engine を 利 用 し て End-to-End に パ ス が 設 定 さ れ る 際 に , S-MAC (自 ノ ー ド ID+ポ ー ト 番 号 ), D-MAC (宛 先 ノ ー ド ID+ポ ー ト 番 号 ), VPI, Type, TTL 初 期 値 と い った情報をボード制御ソフトウェアのコンフィグに追 加する,あるいはパス削除時には削除することで,所 望 の パ ス に ユ ー ザ MAC フ レ ー ム を 所 属 さ せ る こ と が で き る . ユ ー ザ MAC フ レ ー ム に 対 し て は , S-MAC, D-MAC, VLAN-ID, Type 等 を 指 定 し て ど の パ ス に 所 (b) 属 さ せ る か の 制 御 が 可 能 で あ る が , 現 在 は GMPLS と 連動する実装は行っていない. 5.2.3. TTL 処 理 , VPI 変 換 機 能 の 実 装 図 5(c)に , TTL 処 理 , VPI 変 換 機 能 を 実 装 し た 場 合 の ボ ー ド 構 成 を 示 す . IF0 か ら 入 力 さ れ た NGL2 フ レ ー ム を IF1 に , IF1 か ら 入 力 さ れ た NGL2 フ レ ー ム を IF0 に 出 力 す る 双 方 向 1 入 力 1 出 力 の NGL2 ス イ ッ チ を実現した. NGL2 フ レ ー ム の 処 理 に 関 し て は 以 下 の 三 種 類 の 処 理 を 行 う . (1) IMCC 用 の 0x8809 の タ イ プ 値 を 持 っ た フ レ ー ム は , imcc0, imcc1 と の 間 で や り 取 り を 行 う . (c) (2) 入 力 さ れ た フ レ ー ム に 対 し て は , TTL の 減 算 処 理 図 5: デ ー タ プ レ ー ン 用 ボ ー ド 構 成 , (a) ボ ー ド 概 要 , を 行 う . 入 力 時 に TTL=0 の フ レ ー ム は 廃 棄 す る . (3) (b) IMCC+Mac-in-Mac 機 能 構 成 , (c) IMCC+TTL+VPI GMPLS Engine の ラ ベ ル 管 理 テ ー ブ ル と 連 動 し て 作 成 変換機能構成 さ れ る VPI 変 換 テ ー ブ ル を ,ボ ー ド 制 御 ソ フ ト ウ ェ ア か ら DNA に 与 え 動 的 な VPI 変 換 を 行 う . 5.2.1. IMCC 機 能 の 実 装 imcc0, imcc1 か ら 入 力 さ れ た IP パ ケ ッ ト は , イ ー 5.3. 実 験 系 の構 成 と動 作 確 認 プロトタイプシステム 3 台を用いて,実験網を構築 サネットフレームに収容され,デバイスドライバを介 し た .図 6 に 実 験 系 の 構 成 を 示 す .ノ ー ド ID と し て , し て デ ー タ プ レ ー ン 用 ボ ー ド に 送 信 さ れ る . 図 5(b), 5.5.5.5, 6.6.6.6, 7.7.7.7 を 割 り 当 て , NGL2 と し て 使 (c)に 示 す よ う に ,ボ ー ド で は ,NGL2 フ レ ー ム の Type 用 す る ポ ー ト の 番 号 を 56 (0x0038), 65 (0x0041), 67 値 0x8809 を 持 つ フ レ ー ム と し て Mac-in-Mac さ れ , (0x0043), 76 (0x004C)と 割 り 当 て た . RSVP に よ っ て imcc0 は IF0 へ ,imcc1 は IF1 へ と FPGA を 介 し て ス イ ノ ー ド 5.5.5.5 と ノ ー ド 7.7.7.7 の 間 に パ ス が 張 ら れ た ッ チ さ れ る . 逆 に , IF0, IF1 よ り 入 力 さ れ た NGL2 フ 際 に は , 5.5.5.5 の IF1 の MAC ア ド レ ス と し て レ ー ム の Type 値 0x8809 を 持 つ フ レ ー ム は , Linux の 05:05:05:05:00:38 が ,6.6.6.6 の IF1 の MAC ア ド レ ス と デ バ イ ス ド ラ イ バ に 出 力 さ れ ,そ れ ぞ れ imcc0,imcc1 し て , 07:07:07:07:00:4C が 付 与 さ れ る . VPI 値 は , ラ に お い て IP パ ケ ッ ト と し て 取 り 扱 が 可 能 に な る . ベ ル 管 理 テ ー ブ ル に 従 っ て 付 与 さ れ , 5.5.5.5 で は 3 (0x0003)が ,6.6.6.6 で は 1003 (0x03EB)が 次 回 の パ ス 設 定 に お い て 利 用 さ れ る も の と し て 設 定 し た . RSVP に よ っ て パ ス が 張 ら れ た 際 に は , ノ ー ド 6.6.6.6 の VPI 変 換 テ ー ブ ル に Map-0 (IF0→ IF1 方 向 ) 0x0003 0x03EB, Mpa-1 (IF1→ IF0 方 向 ) 0x03EB 0x0003 と 記 述 さ れ る . 図 6: 実 験 系 の 構 成 動 作 確 認 実 験 に お い て は , GMPLS に よ り ノ ー ド 5.5.5.5 と 7.7.7.7 の 間 に NGL2 パ ス を 設 定 し ,正 常 に ユ ー ザ PC 間 で デ ー タ が 交 換 さ れ る こ と ,NGL2 フ レ ー ム の D-MAC, S-MAC が 動 的 に 正 し く 設 定 可 能 な こ と , VPI 値 が 正 し く 設 定 さ れ 変 換 さ れ る こ と , TTL 値 の 減 算処理が正しく行われることを確認した.また複数の NGL2 パ ス を ノ ー ド 5.5.5.5 と 7.7.7.7 間 に 設 定 し ,そ れ ぞ れ に 個 別 の VPI 値 が 付 与 さ れ る こ と , S-MAC , D-MAC は 同 一 と な る こ と 等 を 確 認 し た .今 回 の 実 装 で は ,I-TAG は 未 実 装 (領 域 無 ),P-MP パ ス 設 定 は 未 実 装 , さ ら に は 複 数 の NGL2 パ ス へ の 振 り 分 け も 実 現 で き て おらず今後の機能拡張が必要である. 6. ま と め 次世代広域レイヤ 2 プロトコル技術を実現するため の要素技術となるフレームフォーマット,パス制御技 術,通信チャネル提供技術をプロトタイプシステムに 実装し動作を確認した.本論文では,基本機能を確認 したことを報告したが,プロトタイプシステムは 1 入 力 1 出 力 で あ り ,多 ポ ー ト シ ス テ ム の 構 築 と 検 証 ,QoS 制御機能の実装と検証等,要素技術の研究開発が今後 も必要である. 謝辞 本研究の一部は,独立行政法人情報通信研究機構 (NICT)の 委 託 研 究 「 λ ア ク セ ス 技 術 の 研 究 開 発 」 の 成 果です. 文 献 [1] R. 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