海外勤務者の社会保険関係の諸問題について ~中国出向者の事例を中心に~ 研究部副部長 永岡 稔 はじめに 私達税理士は、顧問先が海外に進出している場合、海外との取引における会計税務処理、 法人税申告に外国税額控除、海外勤務者の所得税についてアドバイスをするケースが殆ど であろう。一方、よく見落とされている問題点として、海外勤務者の社会保険がある。本 稿では、その海外勤務者の社会保険問題について見て行く。 Ⅰ 問題点 海外出向者の社会保険問題における、目下の課題は次の通りである。 1.日本と社会保障協定を締結し発効している国(ドイツ、イギリス、韓国、アメリカ、 ベルギーの5カ国)、締結はしているが未だ発効していない国(フランス、カナダの 2カ国)、現在交渉中の国(オーストラリア、オランダの二カ国)がある。協定発効 対象国に出向し、そこで当該国の社会保険料を納付している場合は、帰国後もその納 付額を通算できる(韓国・イギリスの場合は通算不可)。しかし、社会保障協定が発 効されていない国の企業等に出向した場合、この協定の適用は受けられない。 (参考)厚生労働省HP http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/shakaihoshou.html 社会保険庁HP http://www.sia.go.jp/seido/kyotei/index.htm からの抜粋 2.海外出向者については、通常は日本親会社が留守宅手当を支給し、海外法人からも給 与が支給されている。但し、社会保険料率は、日本親会社支給分のみを基に計算され る。従って、海外出向時に、留守宅手当が従前給与のままだとさほど問題は発生しな いが、海外法人での給与負担を増額し留守宅手当を削減する場合には、掛金が減少し、 将来の年金受給額が減少する。また、雇用保険給付金の給付時に減額給付となる場合 もある。 3.海外出向者の日本留守宅手当は、①現地法人等の経営成績を厳密に算定する為に、現 地法人等からの支給額が多くなっている、②日本の税務調査において、日本法人の為 の勤務実態等がなく留守宅手当が否認されるケースが増加している、事などにより減 1 少傾向にある。 4.また中国の様に、そもそも外国人の社会保険加入を認めていない国にあっては、将来 年金や健康保険をどう手当するかの問題も発生する。 Ⅱ 社会保障協定を締結している場合 ここで、Ⅰ-3の社会保障協定について解説しておく。 海外出向者等が出向元法人に在籍のまま出向国の法令に基づきその社会保険に強制加入さ せられる場合には、社会保険料を二重に納付しなければならないが、社会保障協定を締結 している国の場合、日本若しくは出向先企業の国で納付するだけで良い。 但し、年金・医療保険・労災保険の全てではなく、国により年金だけという場合がある(下 記(1)適用調整、及び表参照)。 また、保険期間の通算が出来る国と出来ない国がある(下記(2)保険期間の通算、及び 表参照) (参考)厚生労働省HP http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/shakaihoshou-gaiyou.html 社会保険庁HP http://www.sia.go.jp/seido/kyotei/index.htm からの抜粋: 社会保障協定の主な内容 社会保障協定においては、先の2つの問題を解決するために、(1)二国間の公的年金制 度に関する適用調整、および(2)年金の受給権の取得を目的とした両国における保険期 間の通算、の2つを主な内容とする。 (1)適用調整 企業により一時的に就労するために派遣される被用者等について、派遣の期間が5年を超 えない見込みの場合には、当該期間中は派遣先国の法令の適用を免除し、派遣元国の法令 を適用することとしている。 (2)保険期間の通算 両国間の年金制度への加入期間を通算して、最低必要とされる期間以上であれば、当該国 の制度への加入期間に応じた年金が受けられるようにすることとしている。 【日本との社会保障協定締結国とその詳細】 協定相手国 ドイツ 適用調整内容 年金 保険期間の通算 あり 2 イギリス 年金 なし 韓国 年金 なし アメリカ 年金・医療保険 あり ベルギー 年金・医療保険・労災保険・雇用保険 あり フランス 年金・医療保険・労災保険 あり カナダ 年金 あり それぞれの国の社会保障制度の内容は上記のとおりである。年金のみを論ずる場合は日本 と他の国との共通社会保障制度は「年金」となる。 Ⅲ 非社会保障協定締結国等への出向・出張の場合の、社会保険と法人税務の処理 出向・出張には様々な形態があるため、ここでは各形態別に社会保険の処理を説明する。 併せて、法人税申告上の留意点も述べる。 1.出向の形態-在籍出向と移籍出向 (1) 在籍出向:基本的に出向元法人との雇用関係は継続していると考えられる為、海外勤 務者であっても、社会保険の被保険者資格は継続する。但し、在籍出向でも給与が全 額出向先企業から支払われている場合は、出向元法人との雇用関係は継続していない と見做される可能性がある。⇒次の2.③を参照。 (2) 移籍出向:出向元法人との雇用関係はなくなるため、被保険者資格を失う。 尚、出向とは別に、日本人を現地で採用する手法(現地採用)もあるが、この場合はそも そも出向元法人との関係は全くない為、出向元法人は通常その者の社会保険については一 切考慮しない⇒Ⅴ その他の問題 参照 2.在籍出向の場合の、出向元法人給与支給額について (1) 従来どおり全額支給:社会保険料が減額される事はないので、被用者の社会保険上問 題もない。一方日本の税法上は、当該出向者が海外法人にて勤務する場合の社会保険 料は、国外関連者に対する寄附金として、出向元法人においては、法人所得の計算上 全額損金不算入となる(租税特別措置法第六十六条の四(国外関連者との取引に係る 課税の特例)の3.)。但し実状は、当該出向者の海外勤務期間の給与について損金不 算入としても、社会保険料まで損金不算入とする事例は大変少ない様である。 (2) 一部を減額支給:出向先企業で一部負担する代わりに、出向元法人での支給給与を減 額する方法である。この場合、出向元法人の給与が減少すればそれだけ社会保険料も 減額される。そうなると、将来の年金受給額や失業時の雇用保険等給付額が少なくな 3 る。 雇用保険等給付額については、基本手当日額算定の基礎となる賃金日額は、離職日以 前1年間において被保険者期間として計算された最後の6ヶ月間に支払われた賃金総 額を 180 で除した額となる(雇用保険法第 17 条 1 項) 。従って、出向先企業で退職し たり、出向元法人に戻った後6ヶ月以内に退職した場合は、算定基礎給与が減額され たままの給与となるので注意が必要である。 前述の国外関連者の寄附金については、出向元法人での勤務期間に見合う分は損金算 入、出向先企業での勤務期間に見合う分は損金不算入となるであろう。 (3) 全く支給しない:この場合、在籍出向であっても、出向元法人との雇用関係は継続し ていないと見做される可能性がある。そもそも、全く支給しないのであれば、社会保 険料も発生する事はなくなる。この場合、年金については、国民年金の任意加入が可 能(国民年金法 附則抄第5条(国民年金の任意加入)1項3号)、健康保険について は任意継続被保険者の手続を行う(最長2年間) (健康保険法第3条4項、及び同 37、 38 条)か、日本国内に住民票をおいたままにするという前提条件で国民健康保険に加 入する(国民健康保険法第7条)の何れかである。雇用保険には加入できないので、 その分自分で積立を行うしかない。 尚、出向先企業を退職した場合の失業等給付は原則として受給できない(海外法人で ある為)。但し、出向元法人での被保険者期間が 6 ヶ月以上ある場合には、出向元法人 退職後 1 年以内に出向先企業を退職し、帰国した場合に、給付を受ける事が可能であ る(雇用保険法第 13 条 1 項 1 号)。 法人税務上は、出向者の各種任意加入保険の保険料を出向元法人が負担した場合は、 全額損金不算入の寄附金となる。 (4) 介護保険について:前掲(1)から(3)の場合、介護保険についての留意点は次の通りで ある。 ① 海外では日本の介護保険サービスは受けられない。 ② 海外出向時に日本の住民票を抜く場合、政府管掌健康保険では介護保険の被保険 者にならない(介護保険法第 9 条) 。この場合、 「介護保険適用除外該当届」を保 険者に提出すれば原則として保険料負担は不要。任意継続被保険者の場合も同様。 ③ 一方、国民健康保険の場合は住民票の存在が前提条件なので必ず被保険者となる。 3.移籍出向や、在籍出向で出向元法人支給額がない場合、及び現地採用の場合 この場合は、前掲2.(3)と同様となる。 【まとめ】 社会保険給付と法人税務上の問題点を簡潔にまとめると次表の通りとなる。 4 出向元給与負担額 全額負担 一部負担 移籍出向、現地採用 社保給付 満額支給 社保給付・法人税務 法人税務 損金不算入 ともに、左記在籍出 社保給付 年金・雇用保険給付が減額 向の、出向元法人給 法人税務 損金不算入 与負担額なし 社保給付 出向者が自前で国保加入・健保任意継続・国 場合と同じ。 なし の 健保加入等の手段を講じなければならない。 法人税務 Ⅳ 在籍出向 上記保険料を負担すれば損金不算入 出向元法人の対応策 1.対応策 目下、在籍出向者に対する企業の対応策は、主に次の通りである。 (1) 年金 ① 特に対策をとらず、日本の留守宅手当のみを基準として掛金を納付している。 ② 会社で個人年金をかけて、将来の年金受給額減に備えている。 ③ 現地法人から支給される給与を日本出向元法人が直接受け取り、留守宅手当と合算して 支給し、同時にこれを基準に標準報酬月額を決定し掛金を納付する。 特にこの方法だと、日本出向元法人における当該海外給与のみ取り上げれば、会計 処理上その預り金の発生・消滅となり、法人税務上も損金が発生せずクリアな形と なる。 ④ ③の様に給与送金とせず、出向元法人に対するロイヤリティという名目で支払送金を行 う。 ⇒③④については、Ⅳ 3.参考:中国からの外貨送金について を参照。 (2) 健康保険 ① 日本の健康保険に継続加入し、重要な治療は日本で受け、軽微な治療は現地で受けた後、 被保険者自らが社会保険事務所に還付申請し、現地医療費の一部還付を受ける。 ② 海外旅行傷害保険に加入し、傷病時に海外でも補填を受けられる様にする。 これら対応策において出向元法人が支出する金額については、法人税務上、前掲Ⅲ 2. (1)~(4)及び3.の各ケースに応じた処理をすることになる(前掲枠内の預り金処理を除 く)。 5 2.尚残る問題点 問題は、多くの中小企業では総じて、この問題について特別な対策をとらず、出向者任せ にする事が多い事である。その理由は、下記の通りである。 (1) そもそも出向者がこの問題に気付いていないか、気付いていても積極的な対策をとろ うとしない。 (2) 出向元法人としては、社会保険料負担を増やしたくない為、積極的な対策をとろうと しない。 (3) 前掲(1)③の様に海外支給給与も日本出向元法人を通じて支払う場合の適格性につい て、社会保険関連法令には明確に規定されていない(参照:健康保険法第 42 条、厚生 年金保険法第 22 条、他) (4) 海外から日本に対して外貨送金規制があるため(中国など)、法人だけでは対処しき れず、個人口座を経由するケースがあり、その場合には送金時に時間と手間、金額ロ スが発生する⇒次の3.参照。 3.参考:中国からの外貨送金について (1) 中国からの外貨送金は規制が厳しい 近年、中国の長期滞在者が増加している(下表参照)。そこで、ここでは送金規制の比較 的緩やかなアメリカはさておき、規制の厳しい中国からの外貨送金について特に説明する。 中国現地法人から日本の法人口座及び個人口座への外貨送金を行う際には規制がある。貿 易・サービス取引や登記済外貨建債務返済、配当送金などは容易であるが、現地法人から 支給される駐在員給与を現地で支給せずに親会社・日本の留守宅に直接送金する事は出来 ない。 (2) 出向先企業から個人口座を迂回して出向元法人に給与送金を行う方法 この為、Ⅳ 1.(1)③の様に、中国現地法人から日本出向元法人に給与分送金をする場合 には、一旦源泉税納付後の手取額を中国の駐在員個人の口座に入金し、当該銀行窓口で身 分証、個人所得税納付書などを提示し、日本の出向元法人に外貨送金する方法が現実的で ある。但し、送金の際には、中国の高率の個人所得税額、送金手数料等のロスが発生し、 最終的に日本出向元法人の口座に入るまでに少々時間と手間を要するのが難点である。 (3) 技術指導料・ロイヤリティ契約を締結して送金する方法 別の方法としては、出向元法人と技術指導契約・ロイヤリティ契約を交わし、給与額に見 合う金額を出向元法人に送金する方法がある。但しこの方法では、次の点に注意しなけれ ばならない。 ・ 当該契約により外貨送金する際は事前に中国当局に届出若しくは登記を必要とする。 6 ・ 送金時に源泉税(営業税 5%、及び営業税控除後の金額に対し企業所得税(=日本の法 人税に該当)10%)が課税される。 ・ 実態に即していないと、中国の出向先企業で当該契約支払額の損金性を否認される。 (4) その他の方法 出向元法人と出向先企業との間の貿易取引を利用し、売買代金にオン/オフする方法が採 られているケースもありますが、これは正常な取引価格を曲げる手法であり、日本・中国 の両国の税務当局が移転価格課税・海外寄附金課税を強化している昨今、奨励すべき方法 ではない。 ※日本国外務省の「平成 17 年度海外在留邦人数調査」(平成 17 年 10 月 1 日現在)では下 記の通りである。 順位 在留邦人総数 長期滞在者数 1位 アメリカ(351,668 人) アメリカ(235,824 人) 2位 中国(114,899 人) 中国(114,170 人) 3位 ブラジル(65,942 人) 英国(44,107 人) 4位 英国(54,982 人) タイ(35,581 人) (参照) http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/tokei/hojin/06/index.html 注:長期滞在者とは,3 ヶ月以上在留している邦人のうち,在留国から永住資格を得てい る「永住者」以外のものをいう。 Ⅴ その他の問題 出向者ではないが、現地採用の日本人については、全くの自己責任となっており、即ちそ の個人の任意で国民年金に加入するのみである。しかし、出国に際して日本の住民票を抜 いた場合、日本の健康保険に加入できない。 尚、現地採用者を日本親会社からの出向という形にして留守宅手当を支給する手法は、偽 装雇用・出向となり認められない。 海外の現地法人では、日本語が話せる人材を確保し、併せて人件費を切り詰める為に、現 地採用者を雇うケースが多いが、彼らの社会保険が十分に手当されないケースが多いので はないかと考えている。厚生労働省・社会保険庁において、この現地採用者や、前掲の移 籍出向者、また在籍出向者で給与の全額が現地法人負担のケースについて、実態調査を行 い、社会保険上の手当が出来る様な制度にして欲しいと願う。(完) 本稿の作成に当たり、社会保険法令に関連する部分の最終チェックは、神戸の社会保険労 務士である小堀景一郎先生に御担当頂きました。門外漢の私にも丁寧に対応して頂き、誠 7 に有難うございます。本稿を借りて厚く御礼申し上げます。 【参考文献】 「海外勤務者の手引き ~社会保険と税務Q&A~」 ㈱UFJ総合研究所 「社会保険労務ハンドブック平成 19 年版」 全国社会保険労務士会連合会 編・発行 編 中央経済 社 「外資系企業に対する中国の外貨管理 「中国駐在員の完全ガイド」 藤井 恵 2006 年版」 著 みずほ総合研究所㈱ 編・発行 清文社 8 【参考法令】 (税法) 租税特別措置法 (国外関連者との取引に係る課税の特例) 第六十六条の四 法人が、昭和六十一年四月一日以後に開始する各事業年度において、当 該法人に係る国外関連者(外国法人で、当該法人との間にいずれか一方の法人が他方の法 人の発行済株式又は出資(当該他方の法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又 は総額の百分の五十以上の数又は金額の株式又は出資を直接又は間接に保有する関係その 他の政令で定める特殊の関係(次項及び第六項において「特殊の関係」という。)のあるも のをいう。以下この条において同じ。)との間で資産の販売、資産の購入、役務の提供その 他の取引を行った場合に、当該取引(当該国外関連者が法人税法第百四十一条第一号 から 第三号 までに掲げる外国法人のいずれに該当するかに応じ、当該国外関連者のこれらの号 に掲げる国内源泉所得に係る取引のうち政令で定めるものを除く。以下この条において「国 外関連取引」という。)につき、当該法人が当該国外関連者から支払を受ける対価の額が独 立企業間価格に満たないとき、又は当該法人が当該国外関連者に支払う対価の額が独立企 業間価格を超えるときは、当該法人の当該事業年度の所得及び解散(合併による解散を除 く。以下この条において同じ。)による清算所得(清算所得に対する法人税を課される法人 の清算中の事業年度の所得及び同法第百三条第一項第二号 の規定により解散による清算 所得とみなされる金額を含む。第七項において同じ。)に係る同法 その他法人税に関する 法令の規定の適用については、当該国外関連取引は、独立企業間価格で行われたものとみ なす。 (中略) 3 法人が各事業年度において支出した寄附金の額(法人税法第三十七条第七項 に規定 する寄附金の額をいう。以下この項及び次項において同じ。 )のうち当該法人に係る国外関 連者に対するもの(同法第百四十一条第一号 から第三号 までに掲げる外国法人に該当す る国外関連者に対する寄附金の額で当該国外関連者の各事業年度の所得の金額の計算上益 金の額に算入されるものを除く。)は、当該法人の各事業年度の所得の金額(同法第百二条 第一項第一号 に規定する所得の金額を含む。)の計算上、損金の額に算入しない。この場 合において、当該法人に対する同法第三十七条 の規定の適用については、同条第一項 中 「次項」とあるのは、 「次項又は租税特別措置法第六十六条の四第三項(国外関連者との取 引に係る課税の特例)」とする。 法人税法 第四目 寄附金 9 (寄附金の損金不算入) 第三十七条 内国法人が各事業年度において支出した寄附金の額(次項の規定の適用を受 ける寄附金の額を除く。 )の合計額のうち、その内国法人の当該事業年度終了の時の資本金 等の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金 額(第四項において「損金算入限度額」という。)を超える部分の金額は、当該内国法人の 各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。 2 内国法人が各事業年度において当該内国法人との間に連結完全支配関係がある連結 法人に対して支出した寄附金の額があるときは、その寄附金の額は、当該内国法人の各事 業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。 3 第一項の場合において、同項に規定する寄附金の額のうちに次の各号に掲げる寄附金 の額があるときは、当該各号に掲げる寄附金の額の合計額は、同項に規定する寄附金の額 の合計額に算入しない。 国又は地方公共団体(港湾法 (昭和二十五年法律第二百十八号)の規定による港務 一 局を含む。)に対する寄附金(その寄附をした者がその寄附によって設けられた設備を専属 的に利用することその他特別の利益がその寄附をした者に及ぶと認められるものを除く。) の額 二 民法 (明治二十九年法律第八十九号)第三十四条 (公益法人の設立)の規定により 設立された法人その他公益を目的とする事業を行う法人又は団体に対する寄附金(当該法 人の設立のためにされる寄附金その他の当該法人の設立前においてされる寄附金で政令で 定めるものを含む。)のうち、次に掲げる要件を満たすと認められるものとして政令で定め るところにより財務大臣が指定したものの額 イ 広く一般に募集されること。 ロ 教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に寄与するた めの支出で緊急を要するものに充てられることが確実であること。 4 第一項の場合において、同項に規定する寄附金の額のうちに、公共法人、公益法人等 その他特別の法律により設立された法人のうち、教育又は科学の振興、文化の向上、社会 福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして政令で定めるものに対する当 該法人の主たる目的である業務に関連する寄附金(前項各号に規定する寄附金に該当する ものを除く。 )の額があるときは、当該寄附金の額の合計額(当該合計額が当該事業年度に 係る損金算入限度額を超える場合には、当該損金算入限度額に相当する金額)は、第一項 に規定する寄附金の額の合計額に算入しない。ただし、内国法人である公益法人等が支出 した寄附金の額については、この限りでない。 5 内国法人である公益法人等がその収益事業に属する資産のうちからその収益事業以 外の事業のために支出した金額は、その収益事業に係る寄附金の額とみなして、第一項の 規定を適用する。 6 内国法人が特定公益信託(信託法 (大正十一年法律第六十二号)第六十六条 (公益 10 信託)に規定する公益信託で信託終了の時における信託財産がその信託財産に係る信託の 委託者に帰属しないこと及びその信託事務の実施につき政令で定める要件を満たすもので あることについて政令で定めるところにより証明がされたものをいう。)の信託財産とする ために支出した金銭の額は、寄附金の額とみなして第一項、第四項、第九項及び第十項の 規定を適用する。この場合において、第四項中「)の額」とあるのは、 「)の額(第六項に 規定する特定公益信託のうち、その目的が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉へ の貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして政令で定めるものの信託財産とする ために支出した金銭の額を含む。) 」とするほか、この項の規定の適用を受けるための手続 に関し必要な事項は、政令で定める。 7 前各項に規定する寄附金の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもつ てするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与 (広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚 生費とされるべきものを除く。次項において同じ。)をした場合における当該金銭の額若し くは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時に おける価額によるものとする。 8 内国法人が資産の譲渡又は経済的な利益の供与をした場合において、その譲渡又は供 与の対価の額が当該資産のその譲渡の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の 時における価額に比して低いときは、当該対価の額と当該価額との差額のうち実質的に贈 与又は無償の供与をしたと認められる金額は、前項の寄附金の額に含まれるものとする。 9 第三項及び第四項の規定は、確定申告書に第一項に規定する寄附金の額の合計額に算 入されない第三項各号に掲げる金額又は第四項に規定する寄附金の額の記載及び第三項各 号又は第四項に規定する寄附金の明細書の添付があり、かつ、財務省令で定める書類を保 存している場合に限り、適用する。この場合において、第三項又は第四項の規定により第 一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されない金額は、当該金額として記載された金 額を限度とする。 10 税務署長は、第三項又は第四項の規定により第一項に規定する寄附金の額の合計額 に算入されないこととなる金額の全部又は一部につき前項の記載若しくは明細書の添付が ない確定申告書の提出があつた場合又は同項の書類の保存がない場合においても、その記 載若しくは明細書の添付又は書類の保存がなかつたことについてやむを得ない事情がある と認めるときは、その記載若しくは明細書の添付又は書類の保存がなかつた金額につき第 三項又は第四項の規定を適用することができる。 11 財務大臣は、第三項第二号の指定をしたときは、これを告示する。 12 第五項から前項までに定めるもののほか、第一項から第四項までの規定の適用に関 し必要な事項は、政令で定める。 (清算中の所得に係る予納申告) 11 第百二条 内国普通法人等は、その清算中の各事業年度(残余財産の確定の日の属する事 業年度を除く。)の終了の日の翌日から二月以内(当該期間内に残余財産の最後の分配が 行われる場合には、その行われる日の前日まで)に、税務署長に対し、次に掲げる事項を 記載した申告書を提出しなければならない。 一 当該事業年度の所得を解散をしていない内国普通法人等の各事業年度の所得とみな して計算した場合における当該事業年度の課税標準である所得の金額又は欠損金額 二 当該事業年度の所得を解散をしていない内国普通法人等の所得とみなして前号に掲 げる所得の金額につき第一章第二節(税額の計算)(第六十七条(特定同族会社の特別税 率)及び第七十条(仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の控除)を除 く。)の規定を適用するものとした場合に計算される法人税の額 三 当該事業年度中に残余財産の一部の分配をしている場合において、その分配に係る残 余財産分配予納申告書に記載すべき次条第一項第一号に掲げる金額があるときは、当該金 額(当該事業年度中に二回以上残余財産の一部の分配をしている場合には、これらの分配 に係る当該金額の合計額)に百分の三十四・五(協同組合等については、百分の二十五) を乗じて計算した金額 四 第二号に掲げる法人税の額から前号に掲げる金額を控除した金額 五 第六十八条及び第六十九条(所得税額等の控除)の規定による控除をされるべき金額 で第二号に掲げる法人税の額の計算上控除しきれなかつたものがある場合には、その控除 しきれなかつた金額(第三号に掲げる金額がある場合には、当該控除をされるべき金額の うち、当該控除をしないものとして計算した場合における第二号に掲げる法人税の額から 第三号に掲げる金額を控除した金額を超える部分の金額) 六 前各号に掲げる金額の計算の基礎その他財務省令で定める事項 第百四十一条 外国法人に対して課する各事業年度の所得に対する法人税の課税標準は、 各事業年度の所得のうち次の各号に掲げる外国法人の区分に応じ当該各号に掲げる国内源 泉所得に係る所得の金額とする。 一 人 二 国内に支店、工場その他事業を行なう一定の場所で政令で定めるものを有する外国法 すべての国内源泉所得 国内において建設、据付け、組立てその他の作業又はその作業の指揮監督の役務の提 供(以下この号において「建設作業等」という。)を一年を超えて行う外国法人(前号に 該当する外国法人を除く。) 次に掲げる国内源泉所得 イ 第百三十八条第一号から第三号まで(国内源泉所得)に掲げる国内源泉所得 ロ 第百三十八条第四号から第十一号までに掲げる国内源泉所得のうち、その外国法人が 国内において行う建設作業等に係る事業に帰せられるもの 三 国内に自己のために契約を締結する権限のある者その他これに準ずる者で政令で定 12 めるもの(以下この号において「代理人等」という。)を置く外国法人(第一号に該当す る外国法人を除く。) 次に掲げる国内源泉所得 イ 第百三十八条第一号から第三号までに掲げる国内源泉所得 ロ 第百三十八条第四号から第十一号までに掲げる国内源泉所得のうち、その外国法人が 国内においてその代理人等を通じて行う事業に帰せられるもの 四 イ 前三号に掲げる外国法人以外の外国法人 次に掲げる国内源泉所得 第百三十八条第一号に掲げる国内源泉所得のうち、国内にある資産の運用若しくは保 有又は国内にある不動産の譲渡により生ずるものその他政令で定めるもの ロ 第百三十八条第二号及び第三号に掲げる国内源泉所得 (社会保険法令) URLリンクのみ表示 健康保険法 http://www.houko.com/00/01/T11/070.HTM 国民健康保険法 http://www.houko.com/00/01/S33/192.HTM 厚生年金保険法 http://www.houko.com/00/01/S29/115.HTM 国民年金法 http://www.houko.com/00/01/S34/141.HTM 雇用保険法 http://roppou.aichi-u.ac.jp/joubun/s49-116.htm 以上 13
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