海洋観光資源の利活用方策に関する調査 報 告 書

平成14年度沖縄総合事務局委託調査
海洋観光資源の利活用方策に関する調査
報
告
書
平成15年3月
株式会社 国建
はしがき
本報告書は、平成14年度沖縄総合事務局の委託調査により、(株)国建が実施した
「海洋観光資源の利活用方策に関する調査」の結果をとりまとめたものである。
沖縄の観光においては、従来からダイビングを中心とする海洋観光が盛に行われ、沖
縄県は今日全国的にも海洋レジャーの先進地と言われるようになっている。こうしたな
か、近年与那国島の「海底遺跡」と称される海底資源が訪れる人々に夢やロマンを与え
るものとして注目されており、これがきっかけとなって慶良間諸島や久米島、沖縄本島
北地区、その他の海域においても類似する海底観光資源がいくつか発見されている。
平成14年7月に策定された「沖縄振興計画」においては、沖縄の持つ地域特性を生
かして質の高い観光・リゾート地、国際的海洋性リゾートの形成を図るとともに、長期
滞在も可能な国民の総合的な健康保養の場と位置づけ重点的にその形成を図るとして
おり、また、同計画に基づく「沖縄県観光振興計画」においても、観光振興施策の一環
として「海底観光資源の利活用促進」をあげている。これらを踏まえ、国際的な海洋性
リゾートの形成や国民の総合的な健康保養の場の形成等を図るためには、沖縄の海洋観
光資源の実態を把握するとともに、観光資源としての利活用について検討することが必
要である。
こうしたことから、本調査ではダイビングポイントを中心とする海洋観光資源の実態
調査と、ダイビングショップ、漁業協同組合へのアンケート調査、さらには関係団体の
関係者および有識者等へのヒアリング調査を行い、また学識経験者からなるワーキング
会議において観光資源としての利活用に関する検討を行った。これらの調査結果が、今
後の沖縄の観光振興に少しでも役立てられるならば幸いである。
なお、アンケートやヒアリング調査にご協力をいただきました関係事業者、関連団体
等の関係者、有識者およびワーキング会議にご参加いただきました関係諸氏に対し改め
て感謝申し上げます。
平成15年3月
株式会社 国建
概
要
1.調査の目的
本調査は沖縄の海洋観光資源(海底遺跡、珊瑚礁、海底鍾乳洞等)が、その神秘性や
歴史的ストーリー性を含めて、今後の重要な観光資源として注目されつつあることから、
海洋観光資源の実態を把握するとともに、観光資源としての利活用を促進するための方
策を検討し、今後の沖縄の観光振興に資することを目的とする。
2.調査の方法
本調査では、沖縄の海洋観光資源(海底遺跡、珊瑚礁、海底鍾乳洞等)の実態を把握
するため、既存資料の収集整理とダイビングショップ等の関係者からのヒアリング調査
およびアンケート調査を行い、それらをもとに学識経験者等からなるワーキング会議に
おいて、観光資源としての利活用を促進するための方策を検討した。その調査方法の概
要は以下のとおりである。
既存資料の収集整理
ヒアリング調査
アンケート調査
ダイビング関係事業者
ダイビングショップ対象
ダイビング関係団体等の代表者
漁業協同組合対象
海洋観光関連団体等の関係者
海洋観光関連学識経験者
海洋観光資源の利活用方策に
関する調査・ワーキング会議
報告書のまとめ
3.調査結果の概要
本調査の結果、報告書のとりまとめにあたっては「第1部
態」と「第2部
沖縄の海洋観光資源の実
沖縄の海洋観光資源利活用方策の検討」に大別し、それぞれにおいて
各章ごとに調査結果を詳述した。それらの概要は以下に示すとおりである。
第1部
沖縄の海洋観光資源の実態
ここでは海洋観光資源の実態を整理するため、主として「ダイビングポイントの実態
(データベース)
」と「その他の海洋観光資源の実態」および「関係者等のアンケート
調査」について示した。
第1章
調査の目的と概要
本章では「1.調査の目的と背景」および「2.調査の概要」を示したが、特に「2」
では本調査で扱う「海洋観光資源」とは何かという概念の定義について検討した。す
なわち「海洋観光資源」とは、必ずしもダイビングによる観賞を目的とした海底地形
や珊瑚礁といった海底資源のみではなく、そこに生息する熱帯魚類やしばしば回遊し
てくる回遊魚等の生物群も資源であり、また、海面上におけるプレジャーボートや遊
具等による各種海洋スポーツ・レジャーやリゾートホテル等における活動、各地の海
洋イベント等も「海洋観光資源」の一つであると考えられる。このため、こうしたこ
とを考慮し、本調査の調査範囲を明確にするため、ここでは「海底観光資源」と、そ
の他の海洋観光資源としての「海域観光資源」に大別してその定義について検討した。
その結果海洋観光資源の概念を以下のとおり定義した。
「海洋観光資源」の定義
〈本土や諸外国から沖縄を訪れる観光客が利用する海洋レジャーに関する観光資源〉
ダ(イビングの対象資源
海底観光資源
(ガラスボート遊覧、シーウォーキング含む)
)
︵ダイビング以外︶
海域観光資源
海洋観光資源
各地域の海底遺跡、珊瑚礁、海底鍾乳洞等
観賞・観察、体験・学習型海洋観光資源
①ホエールウォッチング、②ドルフィンセラピー
③エコツーリズム、④漁業体験、観光漁業、⑤海洋文化・人文資源、⑥その他
スポーツ・イベント型海洋観光資源
①スポーツフィッシング、②ヨットレース、③ボードセーリング大会、④ジェットスキー大会、⑤サー
フィン大会、⑥サバニ競技、⑦シーカヤック、⑧パラセール、⑨ドラゴンボート、⑩その他
図1
「海洋観光資源の類型」
第2章
海底観光資源の現況−ダイビングポイント・データベース−
本章では海底遺跡、珊瑚礁、海底鍾乳洞等のダイビングポイントについて既存資料
および関係者からのヒアリング等をもとにデータベースとして整理した。
もとより「ダイビングポイント」は、そのほとんどがダイビングショップ等の関係
者により発見または評価され、便宜的にポイント名がつけられたものであって、必ず
しも公的または学術的に公認されたものではない。したがって、その名称や範囲や評
価基準等も一様ではなく、またそのポイント数もいわば無数にあるといえる。そのた
め、ここでは、県内地域別に沖縄本島周辺、慶良間諸島、久米島、宮古諸島、八重山
諸島に区分し、それぞれの地域ごとに概ね 10 ヶ所程度の主要なダイビングポイント
を取り上げ、それぞれの位置と名称、資源のタイプ、スキル、エントリー方法、潮流、
水深、その他の情報について示した。その結果、合計 52 ヶ所のダイビングポイント
が収録された(次頁の一覧表を参照)。
第3章
海域観光資源の現況−ダイビング以外の海洋観光資源の現状−
本章では第1章でみた「定義」に基づき、
「ダイビング以外の海洋観光資源の現状」
について整理した。これについても、前章同様に沖縄本島周辺、慶良間諸島、久米島、
宮古諸島、八重山諸島に区分し、それぞれの地域ごとに各地のリゾートホテルや関係
団体等が行っている海洋レジャー等で観光に関連しているイベント等であって、かつ
一般的によく知られている事項についてとりあげることとした。
また、その際沖縄の観光においては単に有形の資源のみならず、歴史的な事件や物
語、文化財、過去に製作・公開された映画、テレビ、小説等の人文資源も観光資源と
して大いに貢献しているのであるから、特にこれらの中で当該地域に関係するもので
あり、かつ海に関連する人文資源についてもとりあげることとした。
ダイビングポイント・データベース−ポイント一覧
域区
分
沖縄本島・周辺離島
慶良間諸島
久米島周辺
宮古諸島
八重山諸島
ポイント名
概 況
①辺戸岬ドーム
②二神岩
③崎本部
④ラビリンス
⑤カナン崎ドーム
⑥ホーシュー
⑦真栄田岬
⑧残波岬
⑨砂辺
⑩大渡海岸
⑪ナガンヌ島・北ドロップ
⑫ゴンゴン穴
①男岩(うがん)
②古座間味ビーチ
③安室魚礁
④タカチンシ
⑤伊釈加釈
⑥久場の隠れ根
⑦運瀬
⑧トカシクビーチ前
⑨アリガー南
⑩下曽根
①トンバラ西
②イマズニ
③クマノミ城
④カスミポイント
⑤ムーチーグー西
⑥ウーマガイ
⑦シチューガマ
⑧久米島海底鍾乳洞(参考)
⑨フデン崎2瀬
⑩グルクの崎
①八重干瀬プロビデンス
②キジャカ
③パナリ干瀬インナーリーフ
④エンジェルケーブ
⑤ツフツワ干瀬インナーリーフ
⑥通り池
⑦魔王の宮殿
⑧L字アーチ&ワープホール
⑨クロスホール
⑩中の島チャネル
①川平石崎マンタスクランブル
②平野
③伊土名ドーム
④大崎ハナゴイリーフ
⑤竹富島海底温泉
⑥ハナヒゲポイント
⑦鹿ノ川湾・中の瀬
⑧バラス東
⑨ハンマーヘッドロック
⑩遺跡ポイント
エアドームのある海底鍾乳洞、旧石器の発見など文化的価値も高い
辺戸岬灯台直下のポイント、ダイナミックな景観で大型回遊魚も多い
別名ゴリラチョップ、穏やかな海で希少種が多くカメラ派におすすめ
瀬底島西側ポイント、トンネル、ケープ等のラビリンス(迷宮)が広がる
伊江島の代表的ポイント、巨大ドームに5つのトンネル、大物から小物まで
馬の蹄(ホースシューズ)に似た岩とダイナミックなドロップオフが特徴
沖縄本島の代表的ポイント、ツバメウオ、グルクマの大群が名物
潮流が非常に強い、リーフエッジの連続するドロップオフは圧巻
沖縄本島の代表的ポイント、ソフトコーラルには多くの海洋生物が見られる
穏やかなリーフ内では体験ダイブや講習、リーフ外にはケーブ等の地形
那覇沖合のチービシ(無人島群)のポイント、美しいサンゴと魚の海中景観
南大東島の代表的ポイント、ケーブ等の地形、大型回遊魚も多い
座間味島北、ダイナミックな地形と魚影の濃さ、迫力満点のポイント
美しいビーチポイント、水深も浅く初心者やスノーケリングにも適す
安室島北西、ブロック魚礁には100種以上の魚が住み着く
屋嘉比島北、ケーブやクレバスが多い海底地形、回遊魚も多い
阿嘉島北西の無人島、夏から秋にかけてマンタポイントとして人気を集める
久場島西、露出した複数の岩の内側にある隠れ根がポイント
渡嘉敷島東、潮流が速く大物出現率の高いポイント、中級者以上
ビーチ前の湾内のポイント、真白な砂地にサンゴの根が点在、初級者可
渡嘉敷島西、ハマサンゴ等のサンゴ群落にはハナゴイなどが群れる
久場島南、潮流が速く上級者のみ、イソマグロ等の大型回遊魚ポイント
久米島南トンバラ岩周辺、強い潮流の中を大型回遊魚の群れが現れる
久米島東、クレバス、アーチ等の複雑な地形と回遊魚が多い人気ポイント
奧武島畳石ビーチ南、一面ハナクマノミに覆われた根が人気、初級者可
久米島東はての浜北、カスミチョウチョウウオの大群が見られる
久米島東はての浜南、「6 つの根」の意、それぞれの根に特徴的な魚群
久米島東はての浜北、水深40mまで落ち込むダイナミックなドロップオフ
久米島東はての浜北、トンネル、クレバス等変化に富んだ地形
別名ヒデンチガマ、日本最大の海底鍾乳洞、現在調査研究中
粟国島南西、大型回遊魚の遭遇率が高い、潮流が強く中級者以上
渡名喜島南端、水深50mまでのドロップオフ、大型回遊魚多数
八重干瀬北、サンゴにはカラフルな魚が訪れ、鮮やかな海中景観を演出
八重干瀬南、エダサンゴの群生、コブシメの産卵・孵化が観察できる
東平安名岬パナレ干瀬、浅い砂地にはガーデンイール、初級者可
東平安名岬下、クレバス、ケーブ等の地形がメイン、中級者以上
宮古島東沖、三日月型環礁内の穏やかな海でのフィッシュウォッチング
下地島西、2つの池が横穴で海に繋がっている地形ポイントの代表格
下地島西、ダイナミックな地形と光のシャワーによる幻想的な空間
伊良部島北、大型アーチによるダイナミックな景観、大型回遊魚も出現
伊良部島北、縦穴の十字型の入り口が特徴、地形と生物が両方楽しめる
下地島西中ノ島湾内、クレバス等の地形、キンチャクガニ等の小物が潜む
国内を代表する人気のマンタポイント、群れがホバリングする姿は圧巻
石垣島北端、サンゴ・魚影・透明度のどの要素も高いレベルにある
石垣島北部西海岸、L 字型洞窟、コブシメの産卵・孵化が観察できる
石垣島西部大崎西、サンゴ群生、魚影が濃くフィッシュウォッチングに最適
竹富島北東、海底から温泉(40∼50度)が湧き出ている名物ポイント
黒島港北、ハナヒゲウツボが住む根がメイン、砂地には様々な根が点在
西表島南西部、鹿ノ川湾中央、巨大アザミサンゴ、大小様々な種類の魚群
西表島上原港沖、サンゴ群生、カラフルな魚群が楽園的な海中景観を演出
与那国島西崎沖、冬場にはハンマーヘッドシャークの大群がみられる
世界的に有名、城門・メインテラス等太古の人々の生活跡を思わせる景観
第4章
海洋観光資源の利活用に関するアンケート調査
ここでは本調査において実施したアンケート調査の結果について整理・解析した。
調査対象としたのは、県内において日頃から海洋観光資源に関わっているダイビン
グショップ(沖縄県水上安全条例に規定する届出事業者である全 403 事業者)と漁業
協同組合(県内全 39 組合・連合会)である。下表に回収結果等を示す。
ダイビングショップからの回答結果からは、県内ダイビングショップの大半は、1
980年代の後半に設立され、沖縄本島・周辺諸島にあって経営も小規模であること
や、集客方法としては、宿泊施設、旅行代理店等々との提携が過半数を占めているこ
と等が概観され、また各圏域における人気ポイントについての情報や、海洋観光資源
の利活用の今後のあり方についての意見・要望が多数寄せられた。なかでもサンゴの
白化現象やオニヒトデ、赤土流出による海洋汚染やゴミの問題、漁業資源と観光資源
の共存、行政機関との連携、施設整備に関する意見等が目立った。
また、漁業協同組合の回答からは、観光漁業への取り組みの現状と今後の展望が示
された。遊漁船やダイビング船のみならず体験漁業等への取り組みを実践している漁
協は一部に限られており、他の漁協でもこれに対する関心と期待がある反面、現状に
おいてはその取り組みが円滑には進められていないことが浮かび上がった。
アンケート回収結果一覧
対 象
発送数 回収数 回収率
転居先不明等
調査期間
ダイビングショップ
403
72
22.5%
83
H15.1 .24∼H15.2.10
漁業協同組合
39
16
41.0%
0
H15.1 .24∼H15.2.10
アンケート調査票の主な設問項目
対 象
属 性
・所有設備
・代理店等との提携状況
ダイビングショップ
・集客状況
利活用状況・
関心等
意見・
要望
・おすすめダイビングポイ ・自由記述
ントベスト5
・ポイント開発の取り組状
況
・観光漁業の実施の有無 ・海洋観光資源への関心 ・自由記述
漁業協同組合
・海洋観光資源の利活用
方策
第2部
沖縄の海洋観光資源利活用方策の検討
前掲の海洋観光資源の実態調査を受けて、ここでは、これらの海洋観光資源を沖縄の
観光振興に役立てるため、その利活用方策について検討した結果についてとりまとめた。
これらの概要は以下に示すとおりである。
第1章
沖縄観光における海洋観光の推移と経済効果
海洋観光資源の利活用方策を検討するにあたり、沖縄観光の現状と、とりわけその
中における海洋観光の現状について大まかに踏まえておくべき事項として以下の点
について整理した。
1.沖縄観光の推移
沖縄観光の入域観光客数は、平成 14 年には過去最高の 483 万人に増加して
おり、全国的な景気低迷の中にあって沖縄観光は好調に推移している。
2.沖縄観光における海洋観光の推移
入域観光客数の増加に伴い海洋観光関連の参加者数も増加しており、平成
12 年には合計 132 万人(全体の 29.3%)に上っているものとみられる。
3.沖縄観光における海洋観光の経済効果
沖縄県の調べによれば、沖縄観光における海洋レジャー関連の消費額は約
112 億円と推計され、その生産波及効果(県外客)は 156.8 億円、付加価値効
果は(県外客)は 85.2 億円と推計される。
4.沖縄県内の海洋観光関連事業者の推移と現状
沖縄県における海洋観光関連事業者としてのダイビングショップは昭和 62
年頃は 100 店舗ほどであったが、平成 13 年現在では3倍の 300 店舗に増加し
ている。
第2章
海洋観光資源の利活用に関する上位・関連計画
海洋観光資源の利活用方策を検討するにあたり、国や沖縄県の海洋観光に関連する
上位計画として大まかに踏まえておくべき事項および各地域(自治体)における海洋
関連でかつ観光に関連する公的な事業計画等について整理した。その項目は以下に示
すとおりである。
1.沖縄振興計画(平成 14 年 7 月)内閣総理大臣決定
「第3章 施策の展開」において、
「自立型経済の構築に向けた産業の振興」
として、
「質の高い観光・リゾート地の形成」、「国際的海洋性リゾート地の形
成」
、
「国民の総合的な健康保養の場の形成と体験・滞在型観光の推進」が示さ
れている。
2.沖縄県観光振興計画(平成 14 年 8 月)
「第3部 観光振興施策の展開」として、
「国際的海洋性リゾート地の形成」
と、「国民の総合的な健康保養の場の形成と体験・滞在型観光の推進」が示さ
れ、それぞれにおいて具体的な施策が示されている。
3.県内自治体等における関連計画
沖縄県の圏域別に各市町村における海に関係する「観光振興施策」の関連計
画等についてその概要を示した。
第3章
海洋観光関連事業者・団体および有識者等の意向調査
海洋観光資源の利活用に関するダイビングショップ等の関連事業者・団体および有
識者等の意向調査としてヒアリング調査等を行った結果について整理した。その項目
は以下に示すとおりである。
このうち「1.関連事業者・団体等の意向調査」では「
(1)関連事業者のヒアリ
ング調査」として、近年注目をあびている久米島海底鍾乳洞、国頭村宜名真海底鍾乳
洞、与那国海底遺跡および南大東島水中鍾乳洞(地底湖)について取り上げ、その関
係者にヒアリングを実施した。その結果、海底観光資源としての利活用及び保全に関
する様々な提案・提言、さらにはそれぞれの資源の魅力に関する情報が得られた。
また、「(2)関係団体等のヒアリング調査」では、沖縄本島、座間味島、久米島、
宮古、八重山地域のダイビング関連団体およびエコツーリズム等の関係団体の代表者
または関係者にヒアリングを実施した。その結果、各地域のダイビング業界と、その
他の海洋観光資源の利活用においての現状と課題が把握され、特に海洋観光資源の保
全および持続的利活用のためのルールや、港湾等の施設整備に関する提案が得られた。
さらに「2.有識者の意向調査」では、従来より沖縄の海洋観光資源等に関わりの
ある有識者(4氏)にヒアリングを行った。その結果の概要は以下のとおり。
・木村政昭氏(琉球大学理学部教授)
与那国海底遺跡を水中文化遺産としての登録を目指している。また、県内各
地の海底鍾乳洞や沈船等の海底観光資源に関しても、その保護のために同様な
措置が必要であると提言している。
・出口宝氏(財団法人健康科学財団理事長 医学博士)
沖縄の海洋観光を観光形態から第一世代を名所史跡等を観賞する観光、第二
世代を参加型のレジャーや体験学習等、第三世代を健康保養型観光と三世代に
分類し、沖縄観光の優位性を踏まえた上で、第三世代の利活用が最も重要であ
ることを示し、海洋観光資源の第三世代への利活用を観光産業のリーディング
事業とすることを早急な課題とし、それが今後の国や県の観光施策に活かされ
るよう提言している。
・新田勝也氏(水中写真家)
水中カメラマン、ダイバーの視点から県内の海洋観光資源に関する全般的な
情報を提供、今後は沖縄の海の魅力やそれに関わる文化を広く紹介していくこ
とが大切であると提言している。
・添畑薫氏(海洋フォトジャーナリスト)
沖縄の海洋観光資源の活用における最も大切なキーワードとして「自然・伝
統・文化」を上げ、これらを活かした海洋観光資源活用の具体的アイデアとし
て進貢船やアメリカズカップで用いられるような大型艇によるクル−ジング、
オーシャンラフティング、ウォーターワイズという水に親しむ教育システムの
沖縄での利活用などを提言している。
第4章
海洋観光資源利活用の課題と展望
海洋観光資源の利活用方策についてワーキング会議において検討し、その内容を
「海洋観光資源の利活用の課題と展望」としてとりまとめた。このうち「1.海洋観
光資源利活用の課題」では、アンケート調査やヒアリング調査等を踏まえ海洋観光資
源利活用方策を検討する上での課題についてとりまとめた。
また、これを受けて、「2.海洋観光資源利活用の今後の展望」として具体的なモ
デルプラン案について検討した。そのプラン案の内容は、各地域における陸上観光と
組み合わせた「ダイブ&観光ツアーモデルプラン(案)」と「海洋観光資源利活用ネ
ットワークプラン(案)」および「海洋観光資源利活用プロモーションプラン(案)
」
として示した。