屋根の塗装作業中墜落 この災害は、集合住宅の屋根・外壁 塗装工事

屋根の塗装作業中墜落
この災害は、集合住宅の屋根・外壁
塗装工事において、屋根上で塗装作
業を行っているときに発生したもの
である。
災害発生当日、現場監督者 A から、
作業者 B を含む 3 人は屋根を黒色の
ペンキで上塗りする作業を指示され
た。
上塗り塗装を指示された 3 人は、
屋根に上がって作業していたところ、
急に雨が降ってきたので、地上にい
た A が、屋根上の 3 人に作業の中止を伝えた。そこで屋根の頂部付近にいた B
は地上に戻ろうと屋根上を移動し始め、屋根板の段差につまずいて転倒し、屋
根上から約 7m 下の道路に墜落した。
屋根の勾配は 23 度あり、屋根上でつまずいたり、滑ったりすると転落する危
険性があったにもかかわらず、屋根上には安全帯のフックを取り付ける親綱等
の設備はなく、B を含め作業者全員が安全帯を着用していなかった。
また、建物の外壁塗装作業は終了していたため、災害発生当日は、建物には
足場や手すりが全くない状態であった。
塗装工事を請け負った事業場では、工事計画書を作成しておらず、建物の全
周に足場を設置するために必要な資材を確保していなかった。また、作業者に
対して、高所作業における墜落防止等の安全対策について教育していなかった。
この災害の原因としては次のようなことが考えられる。
1
建物の周囲に、墜落を防止するための足場や手すり等が設けられていなか
ったこと
2
墜落のおそれがある屋根上で、安全帯を使用させずに作業を行わせていた
こと
屋根から墜落する危険性があり、手すり等が設けられていなかったにもか
かわらず、屋根上に安全帯のフックを取り付けるための親綱等の設備を設け
ておらず、安全帯を着用させてもいなかった。
3
工事計画書がなく、作業者に安全衛生教育を実施していなかったこと
塗装工事を請け負った事業場が工事計画書を作成せず、建物周囲に足場を
設置するために必要な資材を確保していなかった。また、作業者に対し、高
所作業における墜落防止等を含めた安全衛生教育を実施していなかった。
同種災害防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1
屋根等、墜落の危険がある場所で作業を行わせる場合には、手すり等を設
けること
屋根等、作業中に墜落の危険がある場合には、墜落を防止するための足場
を屋根等、作業位置まで建ち上げ、あわせて転落防止の手すりを設ける等の
措置を講じる。
2
作業者に安全帯を使用させること
墜落防止のための手すり等を設けることが著しく困難なときは、親綱を設
置した上で作業者に安全帯を使用させて作業を行わせる。
3
請け負った工事の計画書を作成し、安全措置に必要な資材を確保すること
工事を請け負った事業場は、安全な作業方法を盛り込んだ工事計画書を作
成し、災害防止に必要な資材を確保する。また、日頃から作業者に安全衛生
教育を実施し、安全に作業を行うための基本ルールや作業手順を周知徹底す
る。
屋根葺き工事中、足場板とともに墜落
この災害は、木造倉庫の屋根の瓦葺
き工事において、丸太足場の点検中に
発生したものである。
災害発生当日は、午前 7 時頃に現場
責任者 A と作業者 B、C の 3 人が作業
現場に到着した。3 人は地下足袋に履
き替えて屋根に上がり、A は、B と C
に対し、当日の作業内容について、台
風が来るのでその準備をし屋根の釘打
ちはしないこと、足場は点検してから
使用すること等を指示した。
C は、A の指示に従って足場を点検しようとして屋根北側の軒先まで行き、
軒先から丸太足場上に架け渡されていた足場板に飛び乗ったところ、番線等で
他の足場板と緊結されていなかったため、足場板が天びん状態となってバラン
スを崩し、その足場板とともに約 5.5m 下の地上に墜落し、間もなく死亡した。
このとき C は保護帽を着用しておらず、また、安全帯も着用していなかった。
さらに、丸太足場には、手すりがなく、屋根軒先にも墜落防止措置が講じられ
ていなかった。
この災害の原因として、次のようなことが考えられる。
1
固定されていない足場板に飛び乗ったこと
A から「足場板は点検して使うように」という指示があったので、C は屋根
北側の軒先から足場の点検をしようと思い足場板に飛び乗ったが、足場板同士
の重ね部を番線等で固定していなかったため、足場板が天びん状態になり、墜
落した。
2
丸太足場に、手すりがなかったこと
3
屋根上での作業に関わらず屋根の軒先に転落・墜落防止措置が講じられて
いなかったこと
4
C は、保護帽を着用しておらず、また、安全帯も着用していなかったこと
同種災害防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1
足場板は番線等で緊結するとともに、足場の構成部材、手すり、足場板の
取付け部、緊結部等を点検し、異常を認めたときは直ちに補修すること
丸太足場では、足場を使用する作業を行うに当たって、作業を開始する前
に、床材の取付け、かけ渡しの状態、手すり等の有無、脱落の有無、足場板
同志の重ね部の緊結状態等を点検し、異常を発見した場合には、適切に補修
等を行うことが必要である。
2
丸太足場での作業を行う場合には、墜落を防止するための手すりを設ける
こと
3
屋根上で作業を行う場合には、軒先からの転落、墜落を防止するため、軒
先上に丸太足場の建地を延長し、手すりを設けること
4
作業者には必ず保護帽と安全帯を着用させ、墜落のおそれのある屋根作業、
軒先作業等では必ずこれらを使用させること
住宅の屋根を塗装中に転落
この災害は、個人住宅の屋根、内
壁、外壁等の塗装工事中に発生した
ものである。
この工事は、X 社工事部長 A、作業
者 B と C の 3 名で行うことになった。
初日、先ず墜落防止用ロープを設置
するため、A は母屋の北側にある立木
に ロ ー プを 結 び 、 母屋 の 屋 根頂 部
(「ぐし」)上を通して母屋南側まで
掛け(立木ロープ)、次に母屋の南側にある作業小屋根内の 2F の柱にロープを
結び、母屋の屋根上を北側にまで掛けた(小屋ロープ)。次いで、A は高圧洗浄
機のホースを持って屋根全体の洗浄を行った。
2 日目には、初日に洗浄した屋根のさびているところにさび止めを塗布し、3
日目には被災者が塗料吹き付け機械により母屋南側軒先の一部、2 階屋根および
「ぐし」の上塗り作業を行ったが、作業終了後、A は小屋ロープが発注者の玄
関先で邪魔になるので外すように B に命じ、取り外させた。
4 日目の災害発生当日、3 人は午前 8 時 30 分頃に現場に到着したが、屋根が
露で濡れていたため、A は B にドライヤーで乾かすよう指示した後、屋根の「ぐ
し」の菱形状の凹み模様を白色塗料で塗るため、身体に立木ロープを巻きつけ、
塗料缶、刷毛、水滴を拭き取るためのウェス、ドライヤーの延長コードを持っ
て、母屋南側から屋根へ上がっていった。
B は玄関屋根、母屋屋根の順で乾燥作業を行い、午前 9 時 50 分頃作業終えた
とき、母屋屋根の南西端から約 7m 下の水路の洗い場に A が顔をつけて倒れて
いるのを発見し、救急車を呼んだが被災者はすでに死亡していた。
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1
墜落防止用措置を行っていなかったこと
墜落危険のある屋根上での作業に際し、墜落防止のために、母屋屋根南側
については立木ロープ、屋根北側については小屋ロープを取り付けていたが、
災害発生前日に小屋ロープを取り外しており、当日の屋根全体の作業につい
ては墜落防止措置は十分でなかった。また、作業者に安全帯を着用させるこ
となく、立木ロープあるいは小屋ロープを身体に巻きつけただけの墜落防止
措置として不完全な状態で作業を行わせていた。(安衛則第 519 条)
2
墜落防止用のロープの固定方法が適切でなかったこと
母屋を横断する形(長手方向)で屋根上に渡されていた立木ロープは、一端が
立木に固定されていたものの、他端はフリーの状態で作業が行われていたた
め、北側屋根上での作業については、墜落を防止する機能は有しないもので
あった。
3
安全帯の使用についての教育等の安全管理を行っていなかったこと
この会社では、採用時に屋根上の作業について、墜落防止用ロープの両端
を固定するように指導はしていたが、そのロープに安全帯を取り付けること
等の教育は行ってはおらず、また、実際の作業においては墜落防止用ロープ
の一端だけを固定して作業を行っていることを知っていながら黙認していた。
また、母屋周辺に足場を組み立てること、安全な親ロープに安全帯を確実
に取り付けること等の墜落防止措置に関する安全教育等の管理をほとんど実
施していなかった。
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1
墜落防止措置を確実に実施すること
高さが 2m 以上の個所の作業であって墜落危険のある場合には、足場を組
み立てて作業床を設けること、安全ネットを張ること、親ロープの確実な取
り付けおよび安全帯を使用させることが必要であり、工事期間が比較的短い
建物の補修・塗装工事等においてもこれらの措置を確実に実施のうえ作業を
行わせる。(安衛則第 518~520 条)
2
安全教育を十分に行うこと
平屋建ての民家等は、ビル等に比較して地上からの高さが比較的低いため
墜落による危険を十分に認識しないまま、安易に作業に従事させることが少
なくないが、2m 以下の高さから転落して死亡する例も多いので、高所での作
業に従事させる労働者に対してはあらかじめ墜落防止措置等について十分な
安全教育を実施する。(安衛則第 35 条)
3
安全管理を十分に実施すること
軒の高さが 5m 以上の木造建築物の構造部材の組立又はこれに伴う屋根下
地若しくは外壁部材の取り付けの作業を行う場合には、一定の技能講習を修
了した者を作業主任者として選任する必要があるが、それ以下の同種の作業
あるいは類似の作業であっても作業の責任者として墜落防止措置について十
分な知識と経験を有する者を指名し、その者の直接指揮の下に作業を行わせ
る。(安衛法第 14 条・令第 6 条)
また、経営トップは、作業の安全に関する教育、指示を行うとともに、定
期あるいは随時に作業現場を巡視し、指示事項の遵守状況等の確認と必要な
指示を行う。
住宅新築工事において屋根瓦葺作業中に天窓箇所から墜落
この災害は、個人住宅の新築工事におい
て屋根瓦葺作業を行うための段取り作業中
に 2 階の天窓箇所から墜落したものである。
災害発生当日、工事の現場責任者の A が
出社したところ、工事部長より、住宅新築
工事現場の作業に被災者と 2 名で従事する
よう指示を受けたので、直ぐに作業に必要
な機材を車に積み込んで現地に向かい午前
8 時頃に到着した。
当日の作業の内容は、住宅の北側の 1 階の軒先部分に「瓦ぐり」(ブリキ板を
波形に加工したものを取り付けるもの)を取り付けるもので、打ち合わせの後二
人は 1 階の屋根に上り直ちに作業に取りかかった。
作業を開始して 15 分程経過したとき、現場責任者 A は、ブリキ鋏を車の中に
忘れてきたことに気づき、それを取りに行くため住宅の東側に立てかけてあっ
た移動ばしごの方に移動した。
その時に 1 階の屋根にいた被災者の方を振り返って見たところ、当日の作業
予定には入っていない 2 階屋根の天窓箇所(地面からの高さは約 7 メートル)にい
たのでおかしいと思った直後、被災者は天窓箇所に敷いてあった床ルーフ(発泡
スチロール製)を踏抜き、地上の土間に墜落した。
この災害の原因としては、次のことが考えられる。
1 作業の指示が明確に行われていなかったこと
2 堅固な踏抜き防止措置がなされていなかったこと
3 安全衛生教育が行われていなかったこと
この災害は、個人住宅の新築工事において屋根瓦葺作業を行うための段取り
作業中に 2 階の天窓箇所から墜落したものであるが、同種災害の防止のために
は、次のような対策が必要である。
1 短時間の作業であっても作業の指示を明確に行うこと
2 墜落の危険がある場所には囲い、柵等の墜落防止措置を確実に行なうこと
3 新規入場者教育等の安全衛生教育を実施すること
4 墜落防止措置のための機材を準備すること
木造家屋の屋根に垂木を取り付ける作業中、墜落
この災害は、木造家屋増築工
事において、屋根の母屋(もや)
に垂木(たるき)を取り付ける作
業を行っているときに発生したも
のである。
災害発生当日、午前 8 時頃、工
事を請け負った Z 社の社長 A は、
B~F の作業者 5 人に事務所で当
日の作業内容の説明をした後、作
業者とともに工事現場に向かい、午前 8 時半頃から作業を開始した。
午前中は、6 人全員で木造家屋 1 階の軸組の筋交い取付け作業を行い、午後は、
B と C が建屋 1 階の屋根上に上がり、A が積載型トラッククレーンでつり上げ
た垂木を屋根の骨組である母屋に取り付ける作業を行った。A は垂木を屋根に
つり上げた後は、D~F とともに 1 階で午前中の作業の続きを行った。午後 4 時
頃、建屋 1 階の屋根南側部分と北側部分の下段の垂木の取付け作業が終了し、
次いで北側部分の上段に移動し、上段の垂木の取付け作業を開始した。
このとき、取り付けようとした垂木 6 本の長さが長すぎたので、B が、母屋
の上に置いたベニヤ板上に仮置きしていた携帯用丸のこ盤で切断し、それらを
順次に取り付けていった。
6 本目の垂木を取り付けようとした際に、なお寸法が少し長かったので、再度、
携帯用丸のこ盤を取りよせようと B が身をのり出したときに体のバランスを崩
し、約 5.5m 下の 1 階土間コンクリート上に墜落した。B は墜落した後、1 階で
作業していた A により救出され、病院に搬送されたが、間もなく死亡した。
B と C が作業を行っていた屋根の母屋は幅が 12cm で約 1m の間隔があった
が、親綱等、安全帯を使用する設備がなく、B と C は安全帯を着用していなか
った。また、作業個所には墜落防止用の防網は設置されていなかった。
A は、自らを木造建築物の組立て等作業主任者として選任していたが、現場
で使用する器具、工具、安全帯等及び保護帽の点検や作業者の安全帯等及び保
護帽の使用状況の監視等の職務を行っていなかった。また、A は、作業者に対
し、木造家屋工事での墜落災害の防止、安全な作業方法等について安全衛生教
育を実施していなかった。
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1
屋根上で垂木の取付け作業を行う際に墜落防止のための措置が講じられて
いなかったこと
B が作業を行っていた個所は、地上からの高さ約 5.5m で幅 12cm の母屋の
上であり、母屋の間隔は約 1m あり、体のバランスを崩せば墜落する危険性
のある空間となっていたにもかかわらず、墜落防止用の防網を設置しておら
ず、作業者に安全帯を使用させるための親綱等も設置していなかった。
2
木造建築物の組立て等作業主任者が必要な職務を行っていなかったこと
社長 A は、自らを木造建築物の組立て等作業主任者として選任していたが、
現場で使用する器具、工具、安全帯等及び保護帽の点検や作業者の安全帯等
及び保護帽の使用状況の監視等、作業主任者としての職務を行っていなかっ
た。
3
作業者に対し安全衛生教育を実施していなかったこと
A は、作業者に対し、木造家屋工事での墜落災害の防止、安全な作業方法
等について安全衛生教育を実施していなかった。
同種災害防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1
屋根上での垂木等の取付け作業では墜落による危険を防止するため、墜落
防止のための措置を講ずること
高さ 2m 以上の屋根上等で行われる作業では、墜落する危険のある個所に
墜落防止のための防網を設置するとともに、親綱等を設置した上で作業者に
安全帯を使用させる。
2
木造建築物の組立て等作業主任者に必要な職務を行わせること
現場では、木造建築物の組立て等作業主任者技能講習を修了した者のうち
から、木造建築物の組立て等作業主任者を選任するとともに、当該作業主任
者に次の職務を行わせる必要がある。
(1) 作業の方法及び順序の決定と作業の直接指揮
(2) 器具、工具、安全帯等及び保護帽の機能を点検し、不良品を取り除くこ
と
(3) 安全帯等及び保護帽の使用状況の監視
3
作業者に対し、安全衛生教育を実施すること
木造家屋工事に従事する作業者に対し、屋根上の作業での墜落の危険性、
安全な作業方法等についての安全衛生教育を行い、現場での安全な作業を徹
底する。