MAY 13, 2013 バングラデシュにおける火災予防および 建設物の安全に関わる協定 下記に署名した当事者は、合理的安全衛生措置の実施をすれば防止することのできる火災やビル崩 壊、その他の事故に労働者が怯えることのない、安全で持続可能なバングラデシュの衣料産業の目 標達成に向けて取組む。 本協定への調印者は、バングラデシュにおける火災予防および建設物安全に関わる 5 か年計画を策 定することに合意するものである。 計画は、火災予防に関する国家活動計画(NAP)に基づくものであり、バングラデシュにおける火 災予防改善に大きく寄与するあらゆるステイクホルダーの活動による策定・実施を、特に歓迎する ものである。調印者は、本計画とその活動ならびに NAP に従い、共通プログラムの策定、連絡機関 や諮問組織の設置等を含め、これらステイクホルダーとの緊密な連携を確保するものとする。 また調印者は、本協定調印者による計画ならびに NAP の履行を確実なものとするため、ILO バング ラデシュ事務所や国際的なプログラムを通じ、ILO が強力な役割を担うことを歓迎するものである。 調印者は、本協定への調印から 45 日以内に実施計画を策定し、これに合意しなければならない。 2012 年 3 月 15 日付の「火災予防および建設物の安全に関する共同覚書」に署名し、本計画の実施 について支援の意思を表明している非政府組織は、各組織の自由裁量において本協定の証人として 署名するものとする。 本協定は、NAP に記載される少なくとも以下の要素を含む現場実務活動を考慮した計画への出資と 実行を、調印者に委ねるものである。 対象範囲: 本協定は、調印企業の製品を製造する全サプライヤーを対象とする。調印者は、下記分 類に該当するサプライヤーを指定するものとする。調印者は、サプライヤーの工場に対する検査の 受入れ、是正措置の実施について、以下の概要に従ってサプライヤーに要求するものとする。 1. 調印企業のバングラデシュにおける年間総生産量のうち、約 30%相当以上を生産する施設 (「レベル 1」)における、安全検査、是正措置および火災予防研修の実施。 2. 調印企業の他の主要なサプライヤー、あるいは長期にわたる納品を行うサプライヤーの施設 (「レベル 2」)における、安全検査および是正措置の実施。「レベル 1」と「レベル 2」 に指定された施設における年間生産量を併せると、調印企業のバングラデシュにおける年間 生産量の約 65%以上となるものとする。 3. 調印企業からの臨時発注や 1 回限りの発注を請負う施設、あるいは調印企業からの注文が工 場生産量の 10%未満にあたる施設(「レベル 3」)における、ハイリスク特定のための限定 的な初期安全検査の実施。本項の規定は、調印企業のバングラデシュにおける年間総生産量 のうち、約 35%相当未満を生産する「レベル 3」に指定された工場について、各調印企業の 安全確保義務を軽減するものではない。初期安全検査によってハイリスクがあると特定され た施設については、以降「レベル 2」の工場と同様の扱いとなるものとする。 1 MAY 13, 2013 ガバナンス: 4. 本協定に調印した労働組合および会社は、双方から選出された同数の委員(最大で各 3 名)、 ならびに ILO 選出の中立的議長により構成される運営委員会(Steering Committee=SC)を設 置するものとする。SC は、安全検査官および研修コーディネーターの選任、契約、報酬、 職務遂行に責任を持つ。SC には、計画予算の管理・承認、財務報告・監査役の採用に関す る管理、ならびにその他の必要な管理義務がある。SC は全会一致の合意に至るよう努力す るが、合意が図れない場合には、多数決による決定がなされる。SC の活動を発展させるた め、ガバナンス規則が策定される。 5. 紛争解決。本協定の期間内に発生したあらゆる労使紛争は、最初に SC に提起され、当事者 の一方から申立がなされた日から数えて 21 日以内に、SC は多数決による裁定を行う。いず れかの当事者による求めにより、SC の裁定は、最終且つ拘束力のある仲裁プロセスに入る こともある。あらゆる仲裁裁定書は、裁定執行の対象となる調停者の住所を管轄する裁判所 において法的強制力を有し、必要に応じて、外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約(ニ ューヨーク条約)の対象となる。仲裁および仲裁人の選任に関わる費用配分等を含む、拘束 力を有する仲裁プロセスは、国際商事仲裁模範法(2006 年改正・採択)に基づく。 6. 調印者は、ブランド企業や小売業者、サプライヤー、政府機関、労働組合、NGO 等から構 成される諮問機関を設置する。諮問機関は、国内および国外の全ステイクホルダーが建設的 対話に参加し、SC に対して意見を述べ、それによって SC の質や効率性、信頼性、相乗効果 を向上させるようにする。SC は、NAP に関わる当事者と協議し、共同の諮問体制の実行可 能性について判断する。 7. 実務レベルでの相乗効果を最大化するため、計画の実施運営は、NAP を実施・監督する 「ハイレベル三者構成委員会」およびバングラデシュ労働雇用省、ILO、ドイツ国際協力公 社(GIZ)との協議の下、SC が行う。SC は実施の調整・支援に GIZ 職員を活用することが できる。 信頼できる検査: 8. SC は、火災予防および建設物の安全に関する専門的知見と不足の無い経歴と資格を有し、 企業・労働組合・工場と雇用関係の無い独立した安全検査官を任命するものとする。検査主 任が本協定の規定する権限に従って職務を遂行し、かつ検査主任の不正行為や無資格性につ いて明確な証拠が存在しない場合、また検査計画や報告書の作成を含めて検査主任が適切と 考える場合には、SC は協定に規定された検査主任の職務への制限や干渉を行わないものと する。 9. レベル 1、2、3 の各工場に対する信頼性ある徹底した安全検査は、安全検査官が任命し、そ の指示に従う熟練検査官によって、国際的に認知された職場の労働安全衛生基準や各国基準 に準拠して遂行されるものとする(2013 年 6 月に NAP に想定されている報告が完了する)。 安全検査官は、本協定が対象とする各工場の初期検査が、本協定の定める期間の最初の 2 年 間で遂行されるよう、あらゆる合理的努力を行うものとする。安全検査官は、NAP の総括 に対して意見を提出し、また NAP に想定されている労働雇用省の検査に関わる能力開発に ついて支援を行うものとする。 2 MAY 13, 2013 10. 安全検査官が、調印企業の検査計画について、安全検査官の定める綿密で信頼性のある検査 基準に合致あるいはこれを上回っていると判断する場合には、当該検査計画は本協定に定め る活動の不可欠な要素であると認められる。検査計画の承認を希望する調印企業は、安全検 査官に検査所見に関する十分な情報提供を行い、安全検査官はこれら所見を報告としてまと め、是正活動を行うものとする。本規定に関わらず、本協定の対象となる全工場は、安全検 査官の指示に従う検査官が行う少なくとも 1 回の安全検査(但しこれに限定されない)を含 めた、本協定における全規定の対象となる。 11. 安全検査官は検査から 2 週間以内に、計画に基づく検査を受けた全工場について検査報告書 を作成し、これを工場管理者、工場の安全衛生委員会、労働者代表(労働組合が存在する場 合)、調印企業、SC に対して示すものとする。工場に有効な安全衛生委員会が存在しない と安全検査官が判断する場合には、報告書は本協定の調印者である労働組合に示される。 SC が合意する期間内(ただし 6 週間を超えないものとする)で、安全検査官は検査報告を 公に開示するものとする。工場の是正計画がある場合には、これも添えられる。検査の結果、 労働者の安全にとって深刻かつ緊急の危険性を特定したと安全検査官が判断する場合には、 安全検査官は直ちに工場経営者、工場の安全衛生委員会、労働者代表(労働組合が存在する 場合)、SC ならびに本協定の調印者である労働組合にこれを通知し、是正計画について指 示を行うものとする。 是正措置: 12. 建設物の安全、火災予防および電気保安の基準に準拠する上で必要な是正措置が安全検査官 によって策定された場合、調印企業あるいはレベル 1、2、3 の工場に指定されたサプライヤ ーは、主要な全修繕を行うのに十分な時間を定められた強制スケジュールに従い、是正措置 の履行を工場に要求しなければならない。 13. 工場(もしくはその一部)が是正措置の完了に必要な修繕により閉鎖する期間(ただし 6 か 月を超えないものとする)について、調印企業は労働者の雇用関係と一定額の収入の維持が 図られるよう、計画に基づく検査を受けたサプライヤーの工場に対して要求しなければなら ない。これが履行されない場合には、通告ならびに警告が発令され、最終的には第 21 項に 記述される通り、取引関係が終了となる。 14. 工場における注文が減少した結果解雇となった労働者が必要とする場合、調印企業は、これ ら労働者を優先的に雇用するよう、他のサプライヤーへの積極的な働きかけを行い、安全な サプライヤーによる雇用が提供されるよう、合理的な努力をしなければならない。 15. 危険であると労働者が判断する合理的理由が存在する場合には、労働者が差別的待遇や賃金 損失を被ることなく、施設への立入拒否や施設内にとどまる権利を含む労働者の就労拒否権 が尊重されるよう、調印企業はサプライヤーの工場に対し要求しなければならない。 研修: 16. SC が任命した研修コーディネーターは、火災予防および建設物の安全に関わる広範な研修 プログラムを策定するものとする。研修プログラムは、研修コーディネーターが選定した熟 3 MAY 13, 2013 練人材によって、労働組合と国内専門家の関与のもと、「レベル 1」施設における労働者、 経営者、警備員に対して実施される。これら研修プログラムでは、基礎的安全手順や予防措 置を扱い、労働者が安全に関する懸念を表明し、保安活動に積極的に参加できるようにする ものでなければならない。安全研修専門家や資格を有する組合代表を含む、研修コーディネ ーター指定の研修チームが、労働者および管理者に対する定期的な安全研修の実施のため工 場内に立入れるよう、調印企業はサプライヤーに対し要求しなければならない。 17. 調印企業は、自社に納品するバングラデシュにおける全ての工場に、安全衛生委員会を設置 しなければならない。同委員会はバングラデシュの国内法に準じ、当該工場の労働者と管理 者によって構成されるものとする。同委員会の構成員は、50%以上を労働者委員とし、労働 者委員は、工場の労働組合が存在する場合にはこれが選任し、労働組合が存在しない場合に は、労働者による民主的な選挙によって選出されるものとする。 苦情処理手続き: 18. 安全検査官は、調印企業に納品する工場の労働者が、安全衛生上に関するリスクについて、 安全かつ秘密を保持された形で、時宜を得て安全検査官に懸念を提起できるよう、苦情処理 手続きならびにそのメカニズムを策定しなければならない。この手続きは NAP の下に設置 されるホットラインと連携するものである。 透明性の確保および報告: 19. SC は、計画の重要側面に関する情報について、以下を含めて開示し、定期的な更新を行う ものとする。 a. 調印企業が使用するバングラデシュにおける全サプライヤーのリスト(下請業者を 含む)。これは SC に提出されるデータに基づいて作成されるものであり、調印企業 各社によって定期的に情報が更新される。また本リストは、リスト中のどの工場が、 「レベル 1」あるいは「レベル 2」に指定されているかを示すものでなければならな い。ただし、特定の企業あるいは工場に関わる大量のデータおよび情報は、機密管 理される。 b. 本計画の下に検査を受けた全工場に関する安全検査官による検査報告文書。これら は本協定第 11 項の規定の通り、利害当事者および一般に開示されなければならない。 是正勧告に対応する措置を迅速に実施していない工場を特定する、安全検査官によ る公式声明。 c. 業界全体の安全基準順守状況のデータおよび、検査が完了した全工場に関する所 見・是正勧告・最新の是正状況についての詳細総括書の双方をまとめた、四半期総 合報告書。 20. 本協定の調印者は、ILO、ハイレベル三者構成委員会、バングラデシュ政府等と連携し、本 協定の検査および是正措置に十分な関与を行うサプライヤーが、本協定の透明性条項の結果 として不利益を被らないようにする手続きの構築を促進しなければならない。この手続きの 目的は、(i) 労働者および業界の利益のため、是正措置を取ることについて使用者の意欲を 4 MAY 13, 2013 喚起し、支援を行う。(ii) 国内法に準拠するために必要な是正措置の実行をサプライヤーが 拒否する場合、迅速な法的手段を促進する。 サプライヤーのインセンティブ: 21. 本協定に記述された検査、是正措置、安全衛生確保、必要に応じた研修活動への十分な取組 関与を、調印企業各社はバングラデシュのサプライヤーに対して要求しなければならない。 サプライヤーがこれを怠る場合、調印者は迅速に通告および警告プロセスを実施し、これら の取組みが効果を持たない場合は、最終的に取引関係の終了に至る。 22. 「レベル 1」ならびに「レベル 2」に指定された工場が、計画の改善・是正要求に適合する ことを奨励するため、参画しているブランド企業および小売業者は、サプライヤーとの間で 取引条件に関わる交渉を行う。これにより工場が安全を維持し、安全検査官によって策定さ れた改善・是正要求に適合することを財政的に実行可能となるよう確保する。調印企業各社 は、その自由裁量により、是正要求に準じるための財務能力を工場が確保するため、共同出 資、ローンの提供、ドナーや政府支援による資金調達、取引上の優遇措置の提供あるいは修 繕費用の直接的支払いを含めた代替手段(但し上記に限定されない)を取ることもできる。 23. 本協定の調印企業は、前述に示された 5 か年計画への取組みの通り、バングラデシュとの長 期にわたる製品調達関係の維持について努力をするものとする。調印企業は、本協定期間開 始の前年度発注量に相当もしくはそれを上回る発注量での事業を、「レベル 1」および「レ ベル 2」の工場において、最低でも本協定期間の最初の 2 年間において継続するものとする。 但し、以下の条件の場合に限る。(a) そのような取引が各企業にとって採算に合う場合、な らびに (b) 工場が、企業の契約条件に実質的に適合し続け、本協定に基づくサプライヤー工 場の要件に合致し続ける場合。 財政的支援: 24. 本協定の責務に従うことに加えて、調印企業は、本協定に規定された SC、安全検査官なら びに研修コーディネーターの諸活動のための資金拠出について責任を負い、各企業は、実施 計画に定められる方法に従い、公平な割合で拠出を行うものとする。SC は、政府あるいは その他ドナーに対して寄付を要請する権限を付与されるものとする。調印企業各社は、他の 調印企業と比較したバングラデシュにおける年間衣料生産量およびバングラデシュにおける 各企業の年間衣料生産量に応じ、最大で年間 50 万ドルの拠出を、本協定期間中の毎年、こ れらの活動に対して行うものとする。本協定および計画の適切な実施のための十分な資金が 確保されるが、バングラデシュにおける収益や年間売上高等の要素に基づく最低拠出額の変 動は、毎年改訂される実施計画に規定されるものとする。 25. SC は、会計およびあらゆる寄付金を管理する手続きが、頑強で信頼性と透明性のあるもの となるようにしなければならない。 5
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