海外研修報告書 栗山 優香 京都大学部医学部医学科 平成 19 年度入学 学生番号 0600197397 ・研修先: ボルドー第二大学医学部 Pellegrin 病院神経放射線科 (フランス) Hopital: Hopital Pellegrin Tripode Service: Neuro Radiologie Chef de service: Monsieur le Proffeseur DOUSSET ・期間:2012/04/02∼2012/04/27 (4 週間) ① きっかけ 私は 4 年次のマイコースプログラムでイギリスに留学させていただきました。そ の時にとても貴重な経験をさせていただき、6 年でもイレクティブ実習で海外の機関に 行きたいと考えていました。その時は英語圏に行こうと考えており、まさかフランスに 行くとは思っていませんでした。京都大学放射線診断科とボルドー大学神経放射線科は 長年の交流があり、5 年の夏に富樫先生のご紹介でボルドー大学から本学にきている留 学生と話す機会がありました。その時にフランスに興味を持ちましたが、第 3 外国語は ドイツ語を選択していましたし、フランス語を勉強したこともなかったので最初は無理 だろうと考えていました。後に医学教育推進センターの小西教授、ゲノム医学センター の松田教授と留学先について相談させていただく機会があり、このお二人の先生方と富 樫教授に後押しとご尽力をいただき、ボルドー大学に留学させていただけることとなり ました。 ② ボルドーについて ボルドーはフランス南西部の港町です。ワインが有名ですよね。私もワインの産 地であることしか知りませんでした。ワインももちろん最高!なのですが、それだけで はありません。ボルドーの街並み、とっても綺麗です。市内の歴史地区は「月の港ボル ドー」の名で、2007 年に世界遺産に登録されています。表紙の写真はライトアップさ れたブルス広場です。市内にはこんな素敵な場所がたくさんあります。そしてボルドー は、1441 年開学のボルドー大学を始めとして高等教育機関が多く、町全体の学生数は 7 万人、ヨーロッパ最大の学生町です。少し京都と似ていると思いませんか?学生のうち に行ってみたくないですか?ボルドー留学、おすすめです。旅行で行くのとは一味も二 味も違う素晴らしい経験が必ずできます。少しでも興味を持たれた方、参考にしていた だければ幸いです。 ③ 出発までの準備と費用 ・受け入れまで まず、富樫先生、小西先生、松田先生がボルドー大学神経放射線科教授 Vincent DOUSSET 先生に推薦のメールをしてくださいました。その後 DOUSSET 先生がボル ドー大学留学生科 Frederic さんと Pedro さんに指示をしてくださり、留学の具体的な 手続きはこのお二方とメール(英語)でやり取りさせていただきながら進めていきました。 宿舎の手続きについては、フランス語でメールが来るので、このお二人にいつも助けて いただきました。本学では総務科の池内さんが手助けしてくださいました。 ・準備 留学が決まったのが留学の 4 か月前で、そこからフランス語の勉強を始めました。 京都市内でフランス語をどう学ぶかいろいろと検討しましたが、候補に挙がったのは、 ①ECC などで個人レッスン、②大学のすぐ近くの日仏学館のグループレッスン、③出 町柳の公文でした。①はかなり高額で、②はポリクリで外病院に行くこともあり、毎週 平日の同じ時間に通うのは難しかったので、半分しょうがなく③公文にしました。しか し結果的には自分のペースでできるので一番良かったと思います。もちろんたった 3 か 月ちょっとで語学が習得できるはずもなく、全然できなかったですが、全くできないの と少し勉強して行くのでは全然違います。ボルドーの人々はめちゃくちゃに単語を並べ ても本当に親切になんとか聞き取ろうとしてくれました。病院内は英語でなんとかなり ますが、街中ではなんともならないこともあるので、できれば時間を見つけて勉強して いくのが良いと思います。 ・宿泊先 学生用のレジデンスがあります。大学から少し離れたトラム駅の周辺に住宅棟が 並んでいて、village をなしています。私がいたのは village3 の C 棟です。右の写真の 奥側の建物です。築 1 年でとても清潔で綺麗でした。部屋の中の写真を撮ってくるのを 忘れてしまいましたが、コンロ、冷蔵庫、シャワー、トイレ、クローゼット、机、ベッ ド付きで快適に過ごせました。ただ、受付の方はフランス語しか話しません。一応、 Google translate でなんとか乗り切れました。 ・アクセス パリからボルドーへの飛行機は一時間に一便以上出ているので、関空から乗り継 ぎもスムーズです。最初からバスに乗りこなすのは難しいかもしれません。空港から宿 舎へはタクシーで 3000 円でした。 ボルドーの空港の baggage claim ・海外留学保険 私は一般の海外旅行保険にはクレジットカードに付帯のものを使い、現地でボル ドー大学指定の学生保険(15 ユーロ)に加入しました。初日に保険について説明があると 思うので、従うと良いと思います。 ・生活用品 Meriadeck 駅(病院からトラムで 10 分、宿舎から 30 分)の巨大スーパーマーケッ ト Auchan でなんでも揃います。日本で言うとイオンモールみたいな感じです。1 階に 食料品、2 階に日用品があります。インフォメーションではたまに英語が通じます。そ してなにより、安いです。宿舎には枕もシーツも布団もトイレットペーパーもなにもな いので、必要なものはすべてここで買いました。枕 5 ユーロ、シーツ 7 ユーロ、フリー スの布団 2 ユーロ、鍋 4 ユーロでした。 これが Auchan。 ・かかった費用 飛行約 20 万円、宿泊 3 万円(270 ユーロ)、保険 2000 円(一般の保険はクレジットカー ドに付帯のものを利用し無料、病院実習に関しボルドー大学より指定の保険に現地で加入 し 15 ユーロ)、通学の交通費約 2000 円(16 ユーロ)を合わせて約 25 万円です。 食費、交通費は日本よりも安いです。レストランは日本と同じか少し高めくらいの印象で、 例えば病院での昼食 550 円(4.95 ユーロ)、外食平均 1100∼2000 円(10∼18 ユーロ)くらい でした。しかしスーパーで買う食品はとても安いです。 例えばバゲット約 110 円(1 ユーロ)、 2L の水 20 円(15 セント) 、チーズ 200g 300 円(2.5 ユーロ)、トマト 1 個 50 円、イチゴ 500g 200 円くらいでした。イメージとしては、日本だと好き勝手にバスケットに入れて 3000 円 くらいの感覚で買っているところを、フランスだと同じように買って 1000 円くらいだと思 ってください。何を買っても大体美味しいです。太ると思います。 市内交通は、トラムが 5-10 分間隔で走っており、とても便利です。週末は夜中 2 時頃ま で動いています。料金は片道 150 円(1.4 ユーロ)ですが、1 か月有効の 28 歳以下対象ユース パスが 1900 円(16.25 ユーロ)を買うと良いと思います。 全体の印象は、安い!!です。日本人の留学生もみんな口をそろえてそう言うので、本 当に暮らしやすいと思います。 (2012 年 4 月は 1 ユーロ=約 110 円) ④ 生活 生活は①実習中病院内での生活と②オフ(夜、週末)に分けてご紹介します。 ・①実習中、病院内での生活 ボルドー大学の学生が午前中だけまわってきます。午前はこの学生たちと一緒に 行動していました。ボルドー大学のポリクリの制度は日本と違って、4 年から 6 年まで 3 年間、午前は各班(5∼6 人)に分かれて病院実習、午後は講堂で講義を受けるそうです。 各科 2 か月ずつまわるそうで、学生たちはみんな臨床の知識が深かったです。朝 9 時か ら 10 時頃まで講義か抄読会があります。基本フランス語なので全部理解するのは難し いですが、なんとなく全体像をつかめる時もあります。その後、MRI 班、救急部での 読影見学班、IVR 班に 2-3 人ずつに分かれてそれぞれレジデントの先生 1 人にくっつい て勉強しました。英語が上手な先生によくくっついていましたが、どの先生もとても優 しく、英語で各症例を教えてくださりました。その後、お昼ごはんを 13-14 時ごろにと って、午後は一人で午前と同じことをするか、カンファ室で調べものをしたり、典型的 な症例の画像を自分の勉強のために集めたりしていました。そして大体 16 時∼20 時く らいに帰っていました。 医学単語はラテン語由来のものが多いので、フランス語と英語はとてもよく似て いました。なので、文字になるとなんとなく分かります。例えば、失神はフランス語で syncope(発音はサンコープ)、血管は vasculaire(バスキュレール)といった感じです。 神経放射線科ということもあり、主訴や現病歴もバリエーションは多くなかったので、 最後の方はフランス語でカルテがなんとなく読めるようになりました。もちろんわから ないことの方が多いので毎回先生が英語で説明してくださりました。学生もカルテを翻 訳してくれたり、昼ごはんを一緒に食べたり、パーティーに誘ってくれたりして、みん なとても素敵でした。私が ipad でネッターを見たりしていると、その便利なアプリ教 えて!とか、僕はこのアプリを入れていてめちゃくちゃいいよ!と、とても今風な会話 もしました。他にもフランスと日本の学生生活や研修制度などを比較する話もよくしま した。フランスは成績で将来の専門科が決まるので、日本では誰でも好きな科に進める という話をするとうらやましがられました。他にも楽しい話をたくさんしました。やは り同世代が集まると、国が違っても話題は大体一緒ですね。とても楽しかったです。 一日の写真はこんな感じです。 9:00 朝の抄読会。 10:00 救急読影室にて。 12:00 ボルドー大の 6 年生たち。 13:30 食堂でランチ。美味しい! 14:30 MRI 室で先生と。 17:00 Dousset 教授(中央)と。 ・②オフ(夜、週末) 留学生科の Frederic さんが、ボルドー大に留学中の日本人の女の子 3 人と、本学 に留学予定のフランス人の学生 2 人を紹介してくださいました。その女の子たちがすぐ 輪に入れてくれて、いろんなところへ連れてってくれました。一緒にごはんを作ったり、 映画を見に行ったり、飲みに行ったりもしました。ボルドー市内がとても綺麗で飽きな いと思いますが、市内から 1 時間程度で行けるところとしては、ワイナリー、ピラ砂丘 (ヨーロッパ最大の砂丘)、ラカヌー(大西洋の町。サーフィンのメッカ?)があります。 川沿いの道。 町中はどこでもきれい。 夜はもっと素敵! ワイナリーは定番スポット。 ワインが安くて美味しい! 人気のワインバーにて。 友達と夕食を手作り。 ホームパーティー! ⑤ ボルドーで出会った先生、友達 まず、Dousset 先生は誰もが口を揃えるほど、本当に優しい先生です。先生はご高 名で分刻みに会議が入っているほどご多忙ですが、いつも私のことを気にかけてくださ いました。お会いすると毎回何か困っていることはないか聞いてくださり、タスクをし たいと申し出た時には、一緒に真剣に考えてくださって叶えてくださいました。先生は とても親日家なので、先生のもとに留学に行かれる方はフランス人が知らない日本の観 光地を紹介するととても喜ばれるはずです。そして次にお世話になったのが、Chef de Clinique (chief resident)の Elise 先生です。Elise 先生が私をはじめとした学生の指導 担当で、たくさん教えてくださいましたし、困ったことや何かあるといつもすぐ助けて くださいました。レジデントや学生だけでなく事務の人や技師さんからも慕われる、優 秀で優しい先生でした。私の憧れの先生でもあります。他に、Chief resident の Thomas、 Interne(研修医)の 6 人の先生、一人ひとりの先生方の名前を挙げてお礼を言いたいくら いですが、長くなるのと感傷にふけってしまって筆が進まないのでやめます。事務の Frederic さん、技師さん、看護師さん、学生のみんなも本当に親切にしてくれました。 フランス語もろくに話せないし、1か月しかいないのによくあれほど仲良くしてくれた なあと思います。本当に感謝しています。 病院外では、日本人留学生の友達にたくさん助けてもらいました。中国人留学生 とも友達になりました。初日に、 「はじめまして、留学生です。 」という趣旨のメールを 送った時は返信が返ってくるかすら不安でしたが、すぐレスポンスしてくれて、すぐ輪 に入れてくれて、本当に仲良くしてくれました。生活用品もなかったので、布団を貸し てくれたり、いろんな情報をくれたり、本当に助けられました。たった 1 か月でしたが、 ずっと前から友達であったかのような感じがします。彼女たちがいなかったら留学の楽 しみは半減どころではなかったと思います。本当に出会えてよかったです。 これからボルドーに行かれる方もきっと、どうして出会う人出会う人こんなに優 しくしてくれるのだろうかと驚かれると思います。まわりの方々、友達に助けられっぱ なしになると思います。私も迷惑ばかりかけて、恩を何一つ返せませんでした。でもそ れは日本にいても同じで、いつも家族、先生方、友達、周りの方々に助けられっぱなし であることに、普段気づけていませんでした。これからは手助けする側に立つ機会を増 やせるように、成長していきたいと思いました。 ボルドーで出会った方々は本当に素晴らしい方ばかりでした。少し話が逸れます が、初めて会う人も第一印象からみなさん本当に感じが良いです。全然知らない人と通 り過ぎる時も全力の笑顔で挨拶してくれます。挨拶やちょっとした声掛けをとても大切 にされているという印象を受けました。フランスのこの文化、日本にも取り入れていき たいです。 ⑥ 最後に このレポートでは楽しかったことばかり書き連ねてしまいましたが、もちろん留 学中は、語学以外でも、予想外のことや、思い通りにいかないこともたくさん起こりま した。でも本当は思い通りに行かないことこそが、留学の醍醐味なのだと思います。誰 でも追い込まれると強くなると思います。そしてどうしてもだめな時は、必ず誰かが手 を差し伸べてくれます。家族、友達、先生、周りの方々に支えられているということを 再認識することができました。 今回私がこの貴重な体験をさせていただくことができたのは、富樫教授、小西教 授、松田教授をはじめとする先生方、教務、総務の方々、そして Dousset 教授をはじめ とするボルドー大学の先生方、教務の方々のご尽力のおかげです。お世話になった全て の方に感謝して、この報告書を終えたいと思います。 この場を借りてもう一度、お礼を申し上げます。本当にありがとうございました。 (留学最終週に先生方と。ありがとうございました!) 質問などがあれば、ぜひ連絡してください。喜んで手助けさせて頂きます。 [email protected]
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