実習報告 2011年度観光学実習 『カナダ,プリンス・エドワード島における実習』報告 三瓶文博* キーワード:異文化環境下でのコミュニケーション,観光関連産業の実態, ホスピタリティー 1.はじめに 東海大学観光学部の学生20名と引率教員2名は2011年8月16日から同30日までの間13泊15日 に亘り,カナダ東部のプリンス・エドワード島(PEI)を訪問し,観光関連施設における実習, 州政府観光局による観光旅行者誘致活動等に関する座学,無農薬栽培農場での研修及び同島の 主要観光資源の視察などを行った。本稿では PEI の観光を含めた概要,実習計画の策定,実 施内容とその成果を報告する。 2.PEI の概要(含観光的視点) 本実習を実施した PEI はカナダの東海岸,大西洋上のセントローレンス湾に浮かぶ東西224 キロメートル,南北の最大距離64キロメートルに亘る面積5,656平方キロメートル1) (愛媛県と ほぼ同じ面積)の小島である。同島は日本の約27倍,世界第2位の面積を誇るカナダの13の州 (含む準州)にあっては最も小さい州である。 PEI は元々は原住民のミクマク族が居住する島であったが,16世紀ごろからヨーロッパ,取 分けフランスからの移民が入植し始め,1720年同国領となった。その後1763年,パリ条約によ り同島はケベック州などとともに英国の支配下2)に入った。1864年にはイギリス系の植民地か ら代表者が州都シャーロットタウンに集まり,カナダ連邦成立に向けた討議が初めて行われた。 このことから同地は「カナダ発祥の地3)」として知られるところとなっている。同市の中心街 には当時,19世紀の面影を偲ぶことができる建造物(プロビンス・ハウスや市庁舎など)が残 されており,これが観光資源ともなっている。 4) 同島の人口は145,855人(2011年現在) であり,最も人口が集中しているシャーロットタウ ンでも僅か34,562人,次に大きな町が同市の西側に位置するサマーサイドで14,751人5)であり, その他多くの島民は農村部に居住している。人口構成6)としては英国,フランス系住民が全体 の91%(2006年国勢調査)を占め,その他ヨーロッパ系住民を入れると人口の95%を白人系住 民が占めている。このように人口が少なく,且つ,トロントなどの拠点都市から遠く離れてい * 東海大学観光学部観光学科 第3号(2012) 53 三瓶文博(観光学部観光学科) る PEI の産業は限られており,主なものとしては農業,酪農,観光業,漁業などが挙げられる。 農業ではジャガイモの生産地としてカナダ国内では夙に有名であり,漁業としてはロブスター 漁,ムール貝やカキの養殖が盛んであり,これらを食することが大きな観光魅力となっている。 同島へのアクセスは島の中央南端のボーデン・カールトンとニューブランズウィック州の東 南端を結ぶコンフェデレーション・ブジッジ,フェリー,空路となっている。観光客を含めた 同島への来訪者の経路はこの3つであり,限られている。観光旅行者の誘致上では不利な地勢 的な状況にある。 PEI の観光資源は「赤毛のアン」の作者,ルーシー・モンゴメリーが「世界で一番美しい島7)」 と表現しているように,何と言ってもその自然景観にある。赤土の道となだらかな緑の丘陵, 色鮮やかな花畑がパッチワークのように続く牧歌的な農村風景は美しい海岸線に佇む白い灯台 とともに都会の喧騒に疲れた旅行者に癒しを与えてくれる。また,同島中央北に位置するキャ ベンディッシュを中心とする「赤毛のアン」関連施設(国立公園の中に施設がある) ,上述し た19世紀の古風な建物とレストラン,観劇施設などの都市的快適さを楽しむことが可能な州都 のシャーロットタウン,名物のロブスターやムール貝などの海の幸,ゴルフなどである。そし て忘れてならないのが同島を訪れる旅行者に対する島民のホスピタリティーであろう。これら が相俟って同島は北米において高級リゾート地としての確固たる地位を築いている。なお,観 光シーズンは5月から10月ごろまでで,夏場の7月と8月にピークを迎える。 プリンス・エドワード島州政府観光局職員の座学(2011年8月17日実施)でのマーケット・ プレゼンテーションでは2010年の同島への訪問者数は約130万人とのことであり,実に同島の 人口の9倍もの旅行者を受入れたことになる。因みに我が国で島と言う同じ条件にあり,観光 立県として定評のある沖縄についてその比率を見てみると4.1倍(2010年沖縄への来訪者数: 570万人8)/人口:138万人9))であり,PEI の倍率の高さが窺えるところである。また,同年 の PEI への旅行者からの収入は3億7,000万加ドル10) で,これは同島の GDP(38億7,290万加 ドル11))の9.5%に当たり,極めて高い数値を示している。さらに,同島訪問者に占める再訪 問者の割合(リピーター率)12)は78%とのことであり,このことは観光目的地として同島が極 めて高い満足度評価を受けるとともに,安定したマーケットを有している証左と考えられる。 3.実習計画の策定について (1)PEI 選定の理由 実習の目的地として PEI を選んだ理由は以下の通りである。 ① 上述のように PEI は優れた観光資源を有するとともに,観光が重要な産業となっており, 官民をあげて旅行者の誘致に熱心で観光学を学ぶ者にとっては適していると考えられる。 同時に,観光産業のみに依存することなく農業,漁業などの他産業とバランスが取れてい ることも選定理由である。 ② 現地では極めて標準的な北米英語が使われており,しかもそのスピードがトロントなど の大都市の住民と比べゆっくりしており,学生が聞き取りやすいこと。さらには,地域住 民がホスピタリティーに富み異文化環境下でのコミュニケーションが取りやすいと考えら 54 東海大学紀要 観光学部 2011年度観光学実習『カナダ,プリンス・エドワード島における実習』報告 れること。 ③ 同地は大都市とは違い地域コミュニティーがしっかり機能しており,比較的安全と言わ れるカナダのなかでも取分け治安の良いところと言われている。何といっても安全性は大 事で,治安が危ぶまれる場所では学生の行動が制限を受け,実習旅行そのものの効果がか なり減少するものと考えられる。この点,PEI はそのようなことがなく,学生の実習目的 地として適している。 (2)実習の目的 実習の実施に当たり上記 PEI の特性も考慮し,その目的を以下の通りとした。 ① 観光関係施設におけるオンザジョブ・トレーニングを体験することにより,観光関連産 業の実態の一端を理解する。 ② 異文化環境下で実習,視察,座学などを経験することにより,コミュニケーション能力 や国際感覚を養う。特に,コミュニケーション手段としての英語力の向上に資する。 ③ 出国から帰国までの全ての事象を学習の対象とし,国際観光旅行とはどのようなもので あるかを体験的に理解する。 (3)実習の時期,期間 実習の時期については学業に支障のないように夏季休暇中(8月初旬∼9月中旬)に実施す ることとし計画を立てた。この時期,季節変動の激しい PEI のホテル料金は極めて高額にな るため,夏季に一般開放していて,比較的安価で長期滞在するには適している州立のプリン ス・エドワード島大学(UPEI)の学生寮を使用することとした。同大学の夏季休暇は9月初 旬には終了するので,2011年の場合は寮の一般開放は8月28日に終了することとなっていた。 従って,本実習は航空運賃が最も高くなるお盆の時期を避け,その直後の8月16日(火)に出 発し,27日(土)に同島を去ることとした。同島の滞在期間は10泊11日で,日本への帰国日は 米国での乗り継ぎ時間並びに時差を入れると8月29日(月)で,総旅行期間は11泊13日(1機 内泊)となる計画を立てた。本来ならば日本からの国際航空券がさらに安くなる9月初旬に出 発したいと考えたが,総旅行費用を考えると UPEI 寮を使用した方が安価であり,9月の出発 を見送った。なお,本実習旅行の期間は,旅行経費の他学生が夏季に割ける最大公約数的時間 をも考慮して決定した。 (4)実習旅行プログラムの組み立て 本実習旅行のプログラムは我々にとって遠隔地である PEI 訪問のメリットを最大限に活用 するため,主要目的である実習の他,座学,観光資源(含ミュージカル観劇)の視察,自由行 動など幅広い体験をするよう組み立てた。 ① 実習について 本実習プログラムの参加定員は20名を予定しており,1ケ所での受け入れは困難と予想さ 第3号(2012) 55 三瓶文博(観光学部観光学科) れたことから学生の受入が可能と思われる観光関連団体(機関)に打診したところ,4団体 (Confederation Centre of the Arts, Delta Prince Edward Hotel, Tourism Prince Edward Island (PEI 州政府観光局), 赤毛のアン関連施設)が受入を表明した。これにより学生の各施設に おける配属数は5名程度とし,本人の希望,語学力,性格等を考慮し派遣先を決定すること とした。実習の期間は他プログラムとのバランスなどを考慮して4日間としボランティアで の実習とする。各団体での実習内容は学生の語学能力等の適性と受入先の要望を摺りあわせ て決定した。 * Confederation Centre of the Arts 同センター13)はカナダの連邦としての設立を先導した人々に敬意を表して1964年にシャー ロットタウンの中心街に建設されたもので,その建設に当たっては連邦政府が資金の一部を 提供している。同施設には劇場,美術館,図書館,レストラン,お土産品展,美術・工芸教 室などが設置されており,その運営は公的団体が行っている。 学生は同センターで地元の児童を対象として行われているキッズ・キャンプの補助員を務 める。 * Delta Prince Edward Hotel Delta Prince Edward Hotel は PEI で最大の客室数(約250室)を誇る高級ホテルで,シャー ロットタウンの中心街の南,海岸線に面している。学生の実習内容はハウス・キーピング, ランドリーでの補助。 * Tourism Prince Edward Island(PEI 州政府観光局) PEI 州政府観光局が運営する3つの観光案内所(シャーロットタウン市内,シャーロット タウン空港,キャベンディッシュ)でパンフレット等の印刷物の整理,日本人等に対する案 内情報の提供などの業務を担当。 *赤毛のアン関連施設 PEI 中央部に位置する同施設では学生が入園者向けのイベント実施に関する補助的業務及 び清掃業務を担当。 ② 座学 PEI 州の観光客誘致活動,同州政府観光案内所の業務,国立公園局の管理・活動や PEI 訪 問日本人旅行者等の実態について現地担当者からプレゼンテーションを受ける。会場は PEI 州政府観光局会議室を借用し,各担当者の講演時間は約1時間で使用言語は日本人観光客に 関するプレゼンを除き英語で行う。質問など学生の積極的な参加が重要との認識から事前研 修,事前学習が必要とされる。プレゼンテーションの概要は以下の通り組立てた。 56 東海大学紀要 観光学部 2011年度観光学実習『カナダ,プリンス・エドワード島における実習』報告 * PEI 州の観光客誘致活動 担当者:州政府観光局マーケティング担当マネージャー 内 容:同観光局が主要マーケットで展開している誘致戦略はどのようなものか? *州政府観光案内所での業務 担当者:州政府観光局情報担当マネージャー 内 容:PEI 州政府観光局の情報提供業務と旅行者から寄せられる質問の内容 *カナダ国立公園局の管理・活動 担当者:カナダ国立公園局職員 内 容:カナダ国立公園局が同国全土で展開している管理・運営業務と PEI で同公園局 が実施している業務 * PEI 訪問日本人旅行者の実態 担当者:Prince Edward Tours 社日本人スタッフ 内 容:PEI 訪問日本人旅行者のマーケティングと興味の対象。海外で勤務することとは どのようなことか? ③ 観光資源の視察 限られた日程の中で3.5日を使用し,PEI の観光資源を視察する計画を立てた。視察地の 概要は以下の通り。なお,現地ガイドは英語力の向上をめざし英語によるものとする。 * PEI 東部地域(Wood Island Provincial Park,オーウエル・コーナー歴史村等) *ゴルフ場(Links at the Crowbush)訪問,施設視察 * PEI 国立公園(赤毛のアン関連施設,グリーン・ゲイブル郵便局,モンゴメリー墓所な ど) *グリーン・ツーリズム(Spring Willow Farm)に関する研修 * PEI 中央西南部地域(Confederation Bridge, Summer Side 市等) *ミュージカル(赤毛のアン)の観劇 *シャーロットタウン市内(歴史的建造物,ウォーキングツアー,水陸両用バスツアーな ど) ④ 自由行動 学生の主体的,自主的行動を促すため,実習や座学が実施することが困難な日曜日(8月 21日)とシャーロットタウン最終日の午後を自由行動日(時間)に充てる計画を立てた。 4.実習旅行の実施 上記計画に従い,実習旅行を下記の通り実施した。 第3号(2012) 57 三瓶文博(観光学部観光学科) (1)学生の参加者数:20名(男子学生:3名,女子学生:17名) (2)引率教員:2名 三瓶文博 観光学科教授 館野和子 観光学科教授 (3)旅行期間:2011年8月16日(火)∼同月30日(火) 【13泊15日】 ※当初の計画ではデルタ航空635便にて米国(ニューヨーク,ロスアンゼルス)経由で帰国 予定であったが,ハリケーン(アイリーン)が北米北東部に来襲し,JFK 空港が閉鎖され ため8月27日のハリファックス発デルタ便が運休し,帰国が1日半延びた。結局,帰りは カナダ航空に振替え,トロント経由で帰国(成田空港到着) 。 (4)実施記録(時系列にて報告) ◇第1日目:8月16日(火) DL276便にて成田発(15:10) ,デトロイト着(13:50)。DL5615便にてデトロイト発(17: 46) ,カナダ,ハリファックス到着(21:30)。出迎えのバス故障の為,ハリファックス空港 にて代替バスの到着を待つ(約1時間) 。午後11時同空港をバスで出発,UPEI 大学寮に翌 日(8/17)午前2時に到着,チェックイン。 (注)DL:デルタ航空 ◇第2日目:8月17日(水) 午前10時から昼食を挟み午後4時まで座学。詳細は以下の通り。 * PEI 州観光局の観光客誘致活動 担当者:PEI 州政府観光局,Robert Ferguson マネージャー(言語:英語) 内 容:最新メディアの活用など誘致手法,主要マーケットなどに関するプレゼンテー ション。 * PEI 州政府観光局案内所の業務 担当者:PEI 州政府観光局,Heather Pollard マネージャー(言語:英語) 内 容:PEI 州政府観光局の情報提供業務と旅行者から寄せられる質問の内容 *カナダ国立公園局の管理・活動 担当者:カナダ国立公園局職員,Michelle Pineau 氏及び Tara McNally 氏(言語:英語) 内 容:カナダ国立公園局が同国全土展開している管理・運営業務と PEI での同公園局 の業務・活動 * PEI 訪問日本人旅行者の実態 担当者:Prince Edward Tours,Mayumi Mukaemachi 氏(言語:日本語) 内 容:日本人旅行者にとっての PEI の魅力と同地での旅行業の実態。PEI に生活しての 実感。 【所感】学生は座学実施日の早朝に大学寮にチェックインし寝不足気味であったが,各プレ 58 東海大学紀要 観光学部 2011年度観光学実習『カナダ,プリンス・エドワード島における実習』報告 ゼンを熱心に聴いていた。また,英語によるプレゼンに慣れてくると何人かから質 問が出るようになった。 ◇第3日目:8月18日(木) *午前:PEI 国 立 公 園( 赤 毛 の ア ン 関 連 施 設 ) を 視 察。 同 公 園 で は 現 場 責 任 者 で あ る Chantelle Macdonald 氏が我々グループを出迎え,施設の案内は公園のスタッフが 対応。その他,赤毛のアン関連施設の外側にあるルーシー・モンゴメリーの墓所, 同氏縁の郵便局を視察。 *午後:アグリ・ツーリズムの研修:Spring Willow Farm を訪問。同農場主,Raymond Loo 氏の案内で豚,鶏の飼育場,野菜類の栽培農場を視察。同農場は無農薬での栽培を 心掛けており,旅行者の見学を受け入れている。ここでは学生と農場主との間で比 較的活発な質疑応答があった。 【注】このプログラムはツアーバスを使った移動であり,案内は英語のガイドで行った。 以降,島内の移動は全て英語ガイドを使用。 ◇第4日目:8月19日(金) *午前:PEI 東部観光資源の視察 Wood Island Provincial Park,Rossignol ワイナリーを訪問。 *正午:オーウエル・コーナー歴史村の視察 同歴史村でピクニックランチを取る。 (晴天のこともあり,雰囲気は良好) *午後:州運営のゴルフ場,Links at the Crowbush(同島中央北端に位置)の視察コースも 含めゴルフ場の施設を案内してもらう。 (これまでゴルフ場を訪れたことがない学生が多く,彼等にはコースそのものが印 象深かった模様。 ) ◇第5日目:8月20日(土) *午前:シャーロットタウンのファーマーズ・マーケット,サマーサイド市(同島中央南 部)及びコンフェデレーション・ブリッジ付近の公園,お土産品店を視察。同お土 産品店にはユニークな商品が多く,観光学を学ぶ者にとっては参考になる。また, 同店には赤毛のアンのコスプレを楽しめる施設があり,旅行者の関心を引寄せる方 法を考える上でも参考になった模様。 *午後:Confederation Centre of the Arts 及び同施設内にある劇場でミュージカル(赤毛の アン)を観劇。ミュージカルの観劇は旅のコーディネーションの参考になるととも に英語の勉強になった模様。 第3号(2012) 59 三瓶文博(観光学部観光学科) ◇第6日目:8月21日(日) *自由行動日: PEI 到着以来,ほとんどのコミュニケーションが英語で行われていたこともあり,言葉, 現地事情にも慣れた模様で,学生がシャーロットタウンの中心市街や北部のキャベン ディッシュ地域などに積極的に出かけていた。 ◇第7日目∼第10日目:8月22日(月)∼同25日(木) 下記4か所に学生が5名ずつに別れ,上記2 (4) ①に記載の計画通り実習を行った。 * Confederation Centre of the Arts * Delta Prince Edward Hotel * Tourism Prince Edward Island(PEI 州政府観光局) *赤毛のアン関連施設 【所感】各学生が各施設で直接現地担当者とコミュニケーションを取り,実習を行った。学 生に取っては英語力の向上はもとより,異文化環境下での意思疎通の上で勉強に なったと考えられる。なお,上記4ヶ所のうち Delta Prince Edward Hotel でのハウ ス・キーピング業務はピークシーズンに当たっていたこともあり,肉体的にも精神 的にも相当ハードなものであった。但し,現場の管理者が学生の疲労度を見ながら 業務量を調節し,実習の継続を図った。当該学生にとっては業務に耐えたことは将 来的には自信につながったのではないかと思料する。 ◇第11日目: 8月26日(金) *午前:シャーロットタウン市内観光資源の視察 ・地元ボランティア・ガイドによる英語のウォーキングツアーに参加(Great George St. にある歴史的建造物(Province House など)を視察。 ・水陸両用バスにて市内中心部及び海岸部から視察。 *午後:自由行動 ◇第12日目:8月27日(土) 午前6時半 UPEI 大学寮をチェックアウトし,ハリファックス空港に直行。 (夕刻搭乗予定 のニューヨーク JFK 空港行き DL3851便がハリケーン来襲のため運休とのことで,振替便交 渉の為,ハリファックス市内観光を取り止める。 )同日には振替便が手当てできず,ハリ ファックス空港に隣接する Quality Inn Halifax Airport に宿泊し,待機した。 ◇第13日目:8月28日(日) 午前7時半にホテル,Quality Inn Halifax Airport をチェックアウトしハリファックス空港に 向かう。同空港の DL カウンターで交渉の結果,翌日(8/29)のエアー・カナダ(AC) 1便(トロント→成田)への振替が可能となった。この為,ハリファックスから AC619便 60 東海大学紀要 観光学部 2011年度観光学実習『カナダ,プリンス・エドワード島における実習』報告 (午後4時45分発)と AC621便(午後6時50分発)に分かれてトロントに向かう。同夜はト ロント空港ホテルの Best Western Plus Travel Hotel に宿泊。 ◇第14日目:8月29日(月) 午前9時30分,Best Western Plus Travel Hotel をチェックアウト。トロント空港に向かう。 午後2時20分 AC1便に搭乗,成田空港に向かう。機中泊。 ◇第15日目: 8月30日(火) AC1便にて午後4時20分に全員成田到着。 (5)事前研修の実施 本実習旅行を実施する前に6回に亘り事前研修を行った。同研修ではカナダや PEI の歴史, 経済,日本との関係,観光資源,海外旅行の技術,安全に旅行するための留意事項,実習先 での業務内容,現地の人々との交流のあり方などについて情報提供を行った。また,学生に は PEI はどのようなところであるかを既存の資料で調査させた。 この事前研修のお陰で,実習旅行がスムーズに行われ,極めて重要な機能を果たした。 5.実習旅行の成果など 本実習旅行は帰国時に北米東海岸がハリケーンの来襲を受け,ニューヨーク JFK 空港が閉 鎖され搭乗予定の航空便が運航停止となり,結果として1日半帰国が延び,13泊15日と長きに 亘ったが,その間実習,座学,観光資源視察など当初企画した通りのプログラムを無事終える ことが出来た。参加学生は外国語である英語と格闘しながら異文化環境下でこれらプログラム を完璧ではないにしても主体的に何とかやり遂げることが出来た。彼等のレポートによると, 本実習旅行を終えて得るものが多く,漠としてではあるが,将来に対する自信を持つことが出 来たと指摘する学生が多く見受けられた。さらには多くの学生が短期ではあるが PEI での生 活をエンジョイすることが出来たと指摘している。 四か所に分かれて実施した本プログラムのメイン・テーマである実習に関しては,始まる前 は語学力,風俗習慣の違いなどの点から大いに不安を感じる学生が多かったようであるが,事 前研修で業務内容をかなり詳細に把握していたこと,又,現地受入側が親切に対応してくれた などの為,思いの外スムーズに運んだ。特に,各職場で担当者と身振り手振りも交えコミュニ ケーションが取れ,業務の遂行を通じ旅行業の一端を肌で感じることが出来たことを最大の成 果と学生は指摘している。 座学に関しては PEI の観光全体を考える上では大いに参考になったと指摘する反面,英語 でのプレゼンの聞き取りが難しかったとする学生が多かった。今回の実習旅行では英語力の向 上を実感する一方,その不足を悔やむ学生も多かった。このことは上記の実習でも感じられ, 殆どの学生が英語をさらに学習する必要を痛感したとのことである。本実習が彼等のさらなる 英語学習に対する動機づけとなることを期待したい。 第3号(2012) 61 三瓶文博(観光学部観光学科) 今回の実習では,多くの学生が公式プログラムはもとより自由行動時を通じて個人的にも現 地の人々とコミュニケーションを取ることが出来たと指摘している。特に学生が指摘している ことは現地の人々が先に声をかけてくれることであり,そのホスピタリティーの豊かさには将 来観光業に就こうとしている彼等にとって見習うべきものがあるとしている。 カナダよりの帰国に際して,ハリケーンの北上により搭乗予定の航空便が運航停止となり帰 還が遅れたが,この間,引率教員は航空会社と振替便などの交渉を行った。学生たちは,もし 自分達が旅行会社の添乗員となった場合はどのようにすべきかを考えながら我々教員の交渉・ 行動を見守っていたとのことである。PEI だけでの実習のみならず出国から帰国までの全ての 事象を学習の対象と学生が捉えていたことは本実習旅行の効果を倍加するものと考えたい。 本実習では最後にハプニングが起きたものの,上述のように所期の目的(目標)を達したも のと考えたい。その陰には学生自身の積極的な取り組みに帰するところが大きいが,その他, PEI 州政府観光局,カナダ国立公園局,Confederation Centre of the Arts,Delta Prince Edward Hotel,Spring Willow Farm,PE Tours 社等の関係団体による協力にも寄るところも大きい。 改めて深甚なる謝意を表したい。 注 1)The Government of Prince Edward Island, Location and Terrain, retrieved Sept. 30, 2012, from http://www.gov.pe.ca/search/index.php3?words=location+and+terrain&lang=E&x=17&y=14 2)The Government of Prince Edward Island, History of PEI, retrieved Sept. 30, 2012, from http:// www.gov.pe.ca/infopei/index.php3?number=19665&lang=E 3)Provincial Government of Prince Edward Island, 38th Annual Statistical Review 2011, p3 4)同上 Annual Statistical Review 2011, p28 5)同上 Annual Statistical Review 2011, p34 6)同上 Annual Statistical Review 2011, p37 7)L.M. Montgomery, Anne of Green Gables, Nimbus Publishing Limited, Green Gables Edition, p24 8)沖縄県,『観光要覧 平成23年』,p4 9)沖縄県,『平成23年沖縄県人口動態統計(確定数)の概況』, p1 10)PEI 州政府観光局,Heather Pollard, Manager Visitor Service によるマーケット・プレゼンテー ション(2011年8月17日実施)での発表 11)Provincial Government of Prince Edward Island, 38th Annual Statistical Review 2011, p59 12)上記 Heather Pollard 氏によるマーケット・プレゼンテーション(2011年8月17日実施)での 発表 13)Confederation Centre of the Ar ts, About us, retrieved Sept. 30, 2012 from http://www. confederationcentre.com/en/the-centre.php 文献 * Tourism Prince Edward Island, Visitors Guide 2010 62 東海大学紀要 観光学部
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