03 vol. デジタル時代 ― 浮き彫りになる写真著作権問題 特 集 2 ファイル交換ソフトをめぐる著作権問題の現状 連 載 著作権を知ろう! 連 載 著作権相談 case 3 連 載 著作権相談 case 4 JPCA設立について 特集1 01 04 07 08 10 12 昨今、日本も本格的なBB(ブロードバンド)時代を迎えたと言われています。夢のような未来として 考えられていた高速データ通信網が、世界規模で確立しつつあるのです。この環境は広告写真の世界 を確実にデジタル化しようとしています。それに伴い写真著作権の世界も変容していきます。すでに、 一枚のポジの行方を管理していればよかった時代は過ぎ去ろうとしているのです。激変の時代にどう 向かい合うか、本号では『デジタル時代の写真著作権問題』を特集します。 Photo S.YANAGISAWA デジタル時代 ―浮き彫りになる写真著作権問題 桑野雄一郎 弁護士 写真の世界でデジタル技術が初めて話題となったのは、1990 ■ 写真のデジタル化が進展する背景 年初頭に写真をCD-ROMに保存するフォトCDサービスが デジタル化は何も写真に限ったことではなく、音楽、出版、放 登 場 したときであったように記 憶 している。 その後 のデジタ 送などの各方面のメディア産業全般に進行していることであ ルカメラの普及もあり、わずか10年余りの間に写真のデジタ る。そして、そのいずれの分野においても指摘されている、デジ ル化は急速に進展し、それに伴い、従来のプリントや印刷媒 タル化された作品の特徴は、①複製・加工(翻案・改変)が容易 体以外の方法で写真が利用されることが飛躍的に増加して なこと②複製しても質が劣化しないことという点にある。写真 きている。特に、広告写真の世界は、広告の媒体が多様化・デ の世 界 でもこの点 は同 様 であるが、 特 に写 真 については③ ジタル化 していることもあり、 写 真 のデジタル化 が避 けられ DTP・CTPにより①の複製・加工が早く、しかも安くできるこ ない状況になっている。本稿では、急速に進展している写真 とも大きな特徴となっている。つまり、写真はデジタル化され のデジタル化に伴い、著作権に関連してどのような問題が生 ることで、早く、安く、簡単に高品質の複製・加工を行うことが じるのか、そしてその問題に写真家としてどのように対応し 可能になり、利用する側としては非常に都合がいいわけであ ていく必要があるかを考えてみたい。 る。写真のデジタル化が進んでいる理由はこの点にある。 0 1 ■ 写真家にとってのデジタル化の危険性その1 ■ デジタル化に際して写真家の注意すべき点 ∼事実上の危険性 ∼書面による合意の必要性 このように、写真をデジタル化することは利用する側にとっ このように、 デジタル化 は写 真 家 にとって危 険 をはらんでい て非常に都合がいいが、その反面で写真家としては注意すべ るから、デジタル化を前提として写真を提供する際には、①誰 き点が多い。 が著作権者になるのか②写真家が著作権者となる場合に、作 もともと写真に限らず、作品の制作の委託に際しては、委託 品の利用をどの範囲で許諾するのかを明確に合意し、双方の する側と制作する側の間に認識・思惑の相違が少なからず存 認識・思惑の相違が生じないようにしておく必要がある。 在する。すなわち、委託する側は、制作に必要な費用を負担し この点で参考になる裁判例がある。商品カタログに掲載する ている以上、完成した住宅が施主のものになるのと同じよう 写真の制作の委託を受けた会社が、作品を提供する際、単年 に、出来上がった作品は著作権も含めて全て自分のものにな 度のカタログに1回使用することのみを許諾したにもかかわ ると思う傾向がある。これに対して、制作する側は、自分が創 らず、利用する側がこれを無断で複数年度のカタログに掲載 作した以上自分が著作権者となるのが当然だと認識してい したとして、著作権に基づいて提訴した事件である。この事 る。そして、この両者の認識の相違が多くの紛争や裁判の原 件で、写真を提供した会社は、見積書と請求書に「写真著作 因となっている。「ホテルパンフレット事件」(APA著作権レ 物は、法律により保護されています。原則として上記の契約 ポートVOL2 6頁)などもその典型例である。 に基ず(ママ)き、同一媒体に置ける1回の使用とし、使用済 もっとも、 従 来 は写 真 家 がフィルムさえ確 保 しておけば、 作 みのオリジナルは、御返却ください。」と記載していた。このよ 品が無断で利用される事態をある程度予防することができ うな記載があったにもかかわらず、大阪地方裁判所は、当該 た。しかし、写真がデジタル化された場合、データさえあれば 写真は次年度版以降のカタログにも使用することを前提と 写真はいくらでも複製・加工でき、無断利用も容易になって するものであったとして、著作権の侵害はないと判断した。そ しまう。しかも、委託する側がデジタル化を希望するのは、上 の背景には、上記の記載が極めて小さかったことや、提供し 述のとおり、複製・加工が簡便だからからである。その背景に た写真が翌年以降のカタログに使用されていたのに提訴し は写真を一つの作品としてではなく、単なる素材として捉え た会社が異議を述べずに長期間放置していたことなどの事 る考えがある。容易さに加えて、そのようなメンタリティーか 情も大きく影響している。しかし、この判決からも明らかなよ らも、委託する側は無断利用に陥りやすいのである。 うに、単に自分が決めた利用の範囲を一方的に相手に「通 知」するという方法だけでは、許諾の範囲を画することはで ■ 写真家にとってのデジタル化の危険性その2 きない。必要なのは「通知」した条件に対する相手の「合意」で ∼法律上の危険性 ある。「合意」といっても、契約書や念書といった体裁にこだ もちろん、著作権法では作品を創作した者、つまり写真につ わる必要はないが、紛争になったときに証拠として利用でき いていえば撮影をした写真家が著作者となり、著作権者とな るよう、 口 頭 だけではなくメールやファックスなど形 に残 る るのが原則である。その結果、著作権を譲渡した、あるいは許 方法で相手が「合意」したことの言質をとっておくことが肝 諾をした、といった事情がない限り、写真の制作を委託した 要である。 側が無断で写真を利用することは写真家の著作権の侵害と なる。上述の「ホテルパンフレット事件」もそのような事例で ■ 書面で合意すべき事柄 ある。 では、どのような事柄を「合意」しておく必要があるだろうか。 しかし、繰り返しになるが、もともと写真をデジタル化するの 上述した①写真家が著作権者になること、②作品を利用で は複製・加工が簡便だからである。従って、写真家がデジタル きる範囲(方法、媒体、期間など)に加えて、デジタル情報が 化を承諾すれば、複製・加工が行われることを当然予想し、そ 流出することを防ぐため、③利用が終了した場合のデジタル れに承諾していると判断される危険性は高くなる。写真家に 情報の廃棄・返却といったことも決めておきたいことである。 とってのデジタル化のもう一つの危険性はこの点にある。 デジタル先進国のアメリカでも、デジタル技術で制作された 映 画 をアセットとして管 理 する際 には、 あえてフィルムを使 0 2 用するアナログ方式が採られている。これは、フィルムの褐色 ■ 最後に や損傷がデジタル技術で容易に復元できることもあって、安 デジタル化に伴う問題点と対応策を考えてきたが、法律家と 全性に問題のあるデジタル方式を避けた結果といわれてい してはデジタル化 によって新 たな問 題 が生 じたというより る。写真についても、委託者が保管・管理を希望する場合には も、デジタル化に伴い従前の潜在的な危険性・問題点が顕在 アナログ方式(フィルム)を選択し、デジタル情報は廃棄す 化 しているという印 象 が強 い。 その意 味 で、 デジタル化 の動 るか、回収して写真家が自ら管理することが望ましい。さら きを警戒するばかりでなく、写真をめぐる著作権について問 に、提供する写真に電子透かしを施した上で、当該電子透か 題意識を喚起するよい機会と受け止めてはどうかと思う。 しの入った複製物が発見された場合は無条件に利用者が責 任を負うとの規定を盛り込むことも考えられる。 なお、デジタル化する場合に限らず、作品の制作委託契約全般 にいえることだが、報酬額の内訳として、制作の対価と利用許 ●執筆者プロフィール 桑野雄一郎。昭和41年 生 まれ。早 稲 田 大 学 法 学部卒業。森・濱田松本 法律事務所パートナーを 経て、平成15年9月に骨 董 通 り法 律 事 務 所 を設 立。現在、東京藝術大学 音楽学部及び同大学院 において講師として応用 音楽学特殊研究及 び著 作権概論の講義を担当。 諾(著作権を譲渡する場合には譲渡)の対価を区別して明記 することを推奨したい。これは、利用者側に作品を利用できる 範囲を意識させる上でも有効だし、何より利用者が許諾の範 囲を合意したという確実な証拠となる。上記判決の事案でも、 見積書の金額に「1年分の利用許諾料」という内訳が明記され ていれば違った結論になった可能性が高いと思われる。 フィルム破損事故について 我々カメラマンの仕事は、撮影をして納品すれば自分の K会員は、表紙の事があるのでキズつけた印刷所に対し 仕事は終わりと考えていませんか?でも、印刷工程で予 て今回の破損事故にどう対処してくれるのかを開示請求 期せぬ事故に遭遇したら…。考えたくは無いが現実に自 しました。印刷所からは、「PCで復元修正をしてオリジナ 分の手から離れた所での破損事故はあるのです。 ルに近 い写 真 に修 正 したものを納 品 する、 オリジナル写 今回は、ある地方のK会員から相談があった「フィルム破 真の財産権の対価は、地方なのでその地方レートでの金 損事故」についてお話致します。 額を支払う」との回答があったとの事です。 まず、「破損事故」と聞いて一番先に思うのは現像所での こういった際 に、 一 番 問 題 となるのがフィルムの破 損 状 フィルム現 像 のクリップからのスクラッチや、 フィルムを 況による写真の復元修正の有無と財産権の対価請求額、 落とした際のキズなどが考えられますが、納品してからの 地方と首都圏のレートの格差、写真に関する条件契約の 印刷所での破損事故もあり得る事は想定していないので 有無などが考えられます。 はないでしょうか。 自分の写真である以上、事故をどのようにして回避すべ K会員の相談は、撮影した写真が地方の公共的印刷目的 きかを考えておく必要があります。尚、K会員の事案は、 に写真を協力した際に印刷工程で写真にキズをつけられ 現在交渉中な為に詳しい内容はK会員の交渉終了の報 てしまった。それと前後して東京の某出版社の本表紙にそ 告があり次第、報告をさせていただきます。 の写真を使用する事を、別途使用契約をしていたのです。 小杉俊幸 0 3 APA知的所有権部 担当委員 ファイル交換ソフトをめぐる著作権問題の現状 久保田裕 社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)専務理事 ■ はじめに∼ACCSについて 見つけ出したユーザーに対してリクエストを送り、自分のパ コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)は1985年に設 ソコンに当該ファイルを送信させることで、ファイル交換が 立され、1991年に文部科学省・文化庁の許可の得た社団法人 実行される。 であり、 コンピュータソフトウェアをはじめとするデジタル化 されたあらゆる著作物に関する著作権保護活動を行ってきた。 ■ 「ファイル交換ソフト」の利用実態 ACCSは、著作権及び情報モラルを普及するために、教育・広 ACCSでは2002年から、ファイル交換ソフトに関するインタ 報啓発、立法政策の提案・調査研究、権利執行への支援を3本 ーネットユーザー調査を実施している。その結果、日本国内 の柱とした活動を行っている。これらの活動の中で特に多くの でファイル交換ソフトを使った経験があるユーザーは、2002 方の目に触れているのは、権利執行への支援活動だろう。これ 年の時点で約145万人、2003年では約185万6,000人と推計 は、ACCSの会員会社が権利を持つ著作物への侵害行為につ されている。 いての実態調査や、法的措置への支援・協力を行うものである。 2003年に実施したファイル交換経験の調査では、ファイル交 さて現在、インターネットを通じたソフトウェアの著作権侵害 換ソフトを使った経験があると回答したユーザーがダウンロ については、オークションサイトを悪用した海賊版販売の宣伝 ード(受信)した著作物ファイルの数は、平均約113との回答 告知と、「ファイル交換ソフト」を利用した違法送信が喫緊の を得た。内訳は「音楽関連」60.3、「写真関連」23.7、「映像関 問題となっている。ACCSではこれらを日常的な調査・警告の 連」22.9、「ソフトウェア」4.7、「文書関連」2.1の順で、単純に 対象としているが、このうち、被害規模の特に大きいファイル ユーザー数を掛け合わせると、これまでに約4,400万の「写真 交換ソフトを使った著作権侵害について、その実態と展望など 関連」ファイルが、ファイル交換ソフトのネットワークを使っ を以下に検討してみたい。 て受信されたこととなる。 送信側の調査でも、ファイルの共有(他人に送信できる状態 ■ 「ファイル交換ソフト」の仕組み にすること)について全体の40.5%が経験しているとの結果 ファイル交 換 ソフトは、 インターネットユーザー同 士 のコン を得ており、共有ファイル数は平均約150であること、内訳は ピュータの間で、「ピア・ツー・ピア」と呼ばれる直接の情報の 「音楽関連」80.9、「映像関連」44.3、「写真関連」12.1、「ソフト 送受信を実現する機能を持っている。複数種類存在している ウェア」10.2の順であることも推計されている(ダウンロード ファイル交 換 ソフトのほとんどはインターネット上 などで無 2003年実施の調査結果のうち ファイル交換ソフトを使った経験があるユーザーが ダウンロード(受信)した著作物ファイルの内訳 料配布されており、市販のソフトウェアなどと同じように、パ ソコンなどにインストールして利用する。 これらのファイル交換ソフトを利用すると、自分のパソコン などに保存してある音楽や映像、コンピュータソフトウェア といった著作物を含むあらゆる電子ファイルを、インターネ ットを通じて他のファイル交換ソフトユーザーのパソコンに 対して送信することができ、同様に他のユーザーのパソコン に保 存 されている著 作 物 などを含 むあらゆる電 子 ファイル を、自分のパソコンに送信させることもできる。 ファイル交換ソフトの一般的な利用法だが、まず、利用者間 のネットワークを通じたファイル名に基づく検索を行い、入 手したいファイルを持っているユーザーを探し出す。その後、 0 4 ファイル交換ソフト「Win MX」を使って「写真集」とタレント名とをキーワ ードにファイルの検索をしたところ−−202のファイルが確認された の場合と同様、写真関連について見ると、約2,246万ファイル が送信された結果になる)。 ■ 「ファイル交換ソフト」と著作権法 ファイル交換ソフトなどを使って、インターネットを通じて著 作権者に無断で著作物を公衆に送信することは、著作権法に 規定された「公衆送信権」の侵害に該当する。「公衆送信権」 には、著作物を送信できる状態にすること(送信可能化)も含 まれており、ファイル交換ソフトを使い、著作物ファイルを送 信できる状況にしておくことも公衆送信権侵害に該当する。 なお、ファイル交換ソフトユーザーのすべてが著作権侵害を 行っているわけではないとの指摘もあるが、音楽と映像ファ イルについての詳細な調査では、送信側・受信側ともに、90% ファイル交換ソフト「Winny」を使って「写真集」をキーワードに検索したと ころ−−112のファイルが確認された 以上のファイルが著作権の対象となるファイルであったとの 結果も得ている。 このような著作権侵害行為については、これまでに2件の刑 事摘発が行われている。1件目は「世界初」の刑事摘発とされ る事 案 で、 2 0 0 1 年 1 1 月 、 京 都 府 警 によって行 われた。 「WinMX」(ウィン・エムエックス)というファイル交換ソフ トを使 って、 ビジネスソフトなどを他 の不 特 定 のインターネ ットユーザーに送信できる状態にしていた大学生と専門学 校生(ともに当時)が、公衆送信権の侵害容疑で逮捕された ものである。2例目は、2003年11月、「Winny」(ウィニー)と いうファイル交換ソフトを使って、著作権者に無断でゲーム ソフトやアメリカ映画の映像などを不特定のインターネット ユーザーに送信できる状態にしていた無職男性と自営業男 自体は違法ではないが、その技術をどう利用するのかが問題 性が、これも京都府警によって逮捕された事案である。 で、現在流通しているファイル交換ソフトは著作権侵害行為 などを防止する機能がない。著作物ファイルの無断コピーな ■ 「ファイル交換ソフト」の今後 どを防止する技術を取り入れ、さらに利用に当たっては正確 デジタル化された情報は、内容を劣化させることなく、簡単・ な課金ができるシステムを採用したファイル交換ソフトがあ 無 限 にその複 製(コピー)を作 ることができる。 また、 インタ れば、著作権者が著作物を提供することをためらう理由はな ーネットが情 報 通 信 の重 要 なインフラのひとつとなった現 くなる。まず、電子技術の面で安全な取引が実現できるシス 在、一個人でも、世界中のニュースソースから直接情報を得 テムが生まれることが必要とされる。 ることや、世界に向けた情報発信を行うことができる。 教育を含めた広報啓発を一層充実させることも重要だ。学校 このような情報の「デジタル化・ネットワーク化」は多大な利 や家庭、職場など、どこでもコンピュータを通じてインターネ 便性をもたらすものだが、一方で、著作権侵害のほか、プライ ットに接続できる環境が整った現在、例えば子供たちに対し バシーやセキュリティ、情報の内容の信ぴょう性など、インタ ても、パソコンやソフトウェアの使い方を教える程度の情報 ーネット上を流通する情報をめぐっては、日々数多くの問題 教育では不十分であろう。インターネットを通じて得られる が発生している。 情報について、その内容を適切に取り扱うための教育が必要 ファイル交換ソフトの背景的な技術である「ピア・ツー・ピア」 だろう。 0 5 多くの方が著作権について理解・尊重する環境となったにも 関わらず、あえて著作権侵害を行う者に対しては、法的な措 《社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会》 置が必要となる。これまでのように刑事摘発は今後も行われ 〒112-0012 るであろうが、民事的には、「プロバイダ責任制限法」に基づ 東京都文京区大塚5-40-18 友成フォーサイトビル5F いて、著作物ファイルを送信している者の身元を開示させ、 TEL 03-5976-5175 FAX 03-5976-5177 損害賠償などを請求することも検討されるだろう。 著作権ホットライン(著作権についての一般相談電話) このような、電子技術の普及、教育( 広報啓発)活動、そし TEL 03-5976-5178 て権利執行のそれぞれを総合的に行うことが、今後のファイ ホームページ http://www.accsjp.or.jp/ ル交換ソフト対策において必要とされている。 ■執筆者プロフィール 久保田裕(くぼたゆたか) 社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会 専務理事・事務局長 1956年東京生まれ。88年からデジタルコンテンツの著作権保護活動に参加。91年、社団法人化とともに事務局長に就 任、99年より専務理事。デジタルコンテンツの著作権保護活動のパイオニアとして、著作権や情報モラル問題について、 学校、企業、自治体などで年間50回ほどの講演を行う。講演先は、情報処理関連の研修機関、教育委員会主催研修、 裁判所書記官研修所、企業、団体など多岐にわたる。文化審議会著作権分科会小委員会専門委員のほか、文化庁の「権 利の執行に関する協力事業協力者会議」委員など。 著 書:『知っておきたい情報モラルQ&A』(共著 平成14年3月 岩波書店) 最近の寄稿:『ビジネスコンピュータニュース』 (コンピュータニュース社) 『日経パソコン』(2004/1/19号) 委 員 等:平成15年度 <文化庁>文化審議会 著作権分科会「契約・流通小委員会」「国際小委員会」 「著作権教育小委員会」「司法救済制度小委員会」 著作権学ぼうプロジェクト」協力者会議 権利の執行に関する協力事業協力者会議 <内閣府>司法制度改革推進本部 知財教育実務家ワーキンググループ 写真著作権の空白 | 保護期間の満了した写真著作権の保護復活について | あまり知られていないことですが、現在、写真活動されて たことによるズレが生 じたためです。 平 成 11年 度 の著 作 いる写真家であっても、昭和31年(1956年)12月31日以 権審議会で、著作物の利用関係に大きな混乱を招かない 前に発表された写真の著作物については、著作権の保護 よう、保護期間が満了した著作権の保護は「復活しない」 を受けられないのです。実年令で推定すると、現在60才代 こととされました。一応、筋は通っているのですが、改正著 後半以上の写真家の方が、20才代から30才代のころ撮影 作権法のもとで活動している写真家の著作権が保護され した作品の著作権が消滅している可能性があります。一 ない期間があるというのも変な話です。そこで、日本写真 度、正確に調べてみて下さい。何故このようなことが起き 著作権協会が中心となり、利用者団体(新聞・出版・放送 ているのか。それは著作権法の改正(平成8年1996年)後 等)などと協議して、許諾なしの使用をさけるよう問題 と、それ以前の保護期間の考え方の違いによるものです。 解消のため折衝を続けています。 1996年以前では、公表後何年保護するという起算方法で 堀切保郎 知的所有権部副部長 すが、1996年の改正で、死後起算とし保護期間を延長し 0 6 連載 著作権を知ろう!−3 法人著作とは何? 日本では写真を創作すると自動的に、 場 で、 映画の製作に参加しているから さえあります。 しかし、 どのような場 合 作者一人がその写真の著作者になりま です。この法人著作は規定として、法人 でもその写真の著作者は写真 家です。 す。また著作権者にもなります。しかし、 の業務に従事する者が職務上作成した 写真という有形の著作物を生み出した 世の中には幾つかの著作物が合わさっ ものを法人名義で公表するとあります。 のは写 真 家 の力 であるからです。 訴 訟 て一つの著作物を生んでいる例が映画 だから社員一人の発案であったとして で法人著作が争点になった裁判があり やゲームソフトなどにみられます。 映 画 も法人の発意となり、業務命令の下に ました。世に言うブランカ事件です。あ は脚本、演出、撮影、編集、音楽などの 制 作 したとされるのです。 しかし、 一 時 る写真家が、すべての費用を出版社か 著作権の対象になる著作物を結集して 的な委託者や職務規程に定めがない場 ら出 してもらって南 国 を取 材 した結 作 り出 されるもので、 英 知 を傾 けた著 合 には当 てはまらず、 個 人 著 作 になる 果、話 になかった雑誌にまで無断使用 作者は何人もいます。しかし、当たった ことがあります。写真の場合はどうかと された事件です。裁判所の判断は雑誌 映画が興行収入で何十億円ものお金を いうと、 法 人 の会 社 などに所 属 して写 社の主張する法人著作を認めず、写真 生んだとしても、それぞれの著作者に著 真 創 作 をする者 は同 じですが、 全 くプ 家 側 の全 面 勝 訴 でした。 このような実 作権料が入る訳ではありません。それは ライベートな時間に制作した創作物の 例があるのに、お金を出したから自分の 映画作品の著作権を映画製作者か製 著 作 者はその個人となります。広告写 ものといった誤 った認 識 に苦 しむ写 真 作会社が持っているからです。このよう 真家はその仕事の大半をクライアント 家 が後 を絶 ちません。 大 きな声 で主 張 な場合の考え方は「法人著作」が根底 からの依頼で行います。時にはすべての してほしいものです。 にあります。 それぞれの分 野 の著 作 者 資 金 の提 供 を受 け、 ディレクターの起 は、 製 作 会 社 の社員やそれに準 じる立 こしたアイデアを元 に写 真 を撮 ること 柳澤俊次 日本の著作権には著作者人格権という されるのです。同一性保持権は前号に も事実です。それに比べて広告 写真は 著作者そのものを守る権利が銘文化さ 詳 しく載 っていますが、 著 作 者 は著 作 一企業の営利目的なのが現実です。し れています。 それは著 作 者 の精 神 性 を 物 の内 容 やタイトルなどを保 持 する権 かし、広告写真にも著作権 はあるので 尊重した権利で「氏名表示権」・「同一 利を持っているということです。トリミ す。いつの時代か、町に溢れるポスター 生 保 持 権(どういつせいほじけん)」 ・ ングや色、並べ方など作品の考え方に に作 者 の名 前 が載 ることを、 望 みたい 「公表権」の三つがあります。著作者人 関する改変を受けない権利と言っても ものです。まずは広告主の理解がなけれ 格権はたとえ財産的権利が他人に譲渡 よいかも知れません。また公表権は著作 ば実 現 はしないでしょう。 ところが、 朗 や相 続 されたとしても、 作 者 一 身 に無 者の意に反して勝手に公表できない権 報があるのです。有限責任中間法人と 期 限 に属 する権 利 であることがポイン 利です。未発表の作品に対する無断使 なった日本写真著作権協会が写真家 トです。作者の死後でさえ、著作物を展 用などがこれに当たります。このような にIDナンバーの配布を始めたのです。こ 示 や印 刷 するときなどに、 作 者 の作 品 権利も、広告写真の現場では尊重され れは管理事業において、著作権者を特 に対 する意 向 を尊 重 しなければならな ているとはいえないのが現実で、残念で 定するために取られる方法なのですが、 い権利とも言え、強い権利なのです。氏 す。特に氏名表示権に関しては、雑誌な 流用できないかを思案中です。どちらに 名表示権は作者の名前を変えられない どの出版物に比べて大きく遅れていま しても著作者である皆さんの協力がな という権 利 です。 詳 しく述 べると本 名 す。 これは雑 誌 には社 会 性 が認 められ ければ実現しないことです。 でもペンネームでも、作者が望む名前を ているからで、 社 会 的 主 張 のある発 表 他 人 は勝 手 に変 えられず、 また作 者 名 物は当然のように作者名が表示された を付けるか否かさえ作者の意向が尊重 からです。また写真家の運動があったの 知的所有権部部長 氏名表示の重要性 0 7 柳澤俊次 知的所有権部部長 連載 著作権相談 case 3 鏑木高人氏 の場合 「盗人は、2人いた!」 鏑木高人 (APA正会員) スタジオ・エフエイト ◆ 事件は突然明るみに トして、B代理店を通じ、X社宣伝部に ◆ もうひとつの著作権侵害 すべては、一本の電話から始まった。電 調査を依頼した。すぐにX社宣伝部から Y印刷は我々の写真を「スキャンして 話をかけてきたのは、以前から付き合い 返答があり、2002年11月から1ヶ月間、 使用した」と言った。しかし、問題の「帽 のあるモデルのキャスティング会社。い 東横線の車内吊り広告にその写真を使 子をかぶった写真」は、A社のチラシの つもは親 しげに話 す担 当 者 が、 その時 用 したことを認 めた。 しかし、 制 作 など 裏面に全身写真で小さく扱われていた ばかりはなぜか困惑気味に話し始めた。 すべてをY印刷に任せており、事情は分 はずだ。Y印刷が見せたカラーカンプの 「当社の外人女性モデルが、東横線で自 からないという回 答 だった。 そしてその ように顔のアップで使えば、もっと粗い 分の写っている車内吊り広告を見たと 日の夕方、B代理店にY印刷の営業担当 写 真 になるに違 いない。 これは、 おかし いうんです。 すでに掲 載 の契 約 期 間 は 者が事情説明にやって来た。担当者の手 い。その疑問をA社にぶつけると、契約 過 ぎているはずなんですが、 どういうこ には問 題 の車 内 吊 りのカラーカンプが 期間後の2002年6月以降も一連の写真 とでしょう…」。 あり(現物はもうないと言った)、帽子を を我々に無断で使用し、別の印刷会社 電 話 を切 って調 べてみると、 この外 人 かぶった外 人 女 性 がアップで写 ってい でチラシを作っていたと告白した。そし 女性を撮影したのが2001年5月。使用 た。 期間は2002年5月までとなっていた。こ それは確 かに私 が の電話があったのが2003年の1月だか シャッターを押 し ら、確かに契約期間を過ぎていた。しか た写 真 。 明 らかな も我々が彼女を撮影したのはレジャー 写 真 盗 用 である。 産業のA社の広告(新聞折り込みチラ 彼 は、 A 社 のチラ シ)のためだったのに、 彼 女 は同 じレジ シからモデルの写 ャー産業、つまりライバル会社であるX 真 をスキャンして 社の車内吊り広告に自分の姿が写って 使 用 したことを認 いたという。 め、 いかなる対 処 どういうことなのだろうか。 もすると謝 罪 し た。 ◆ あまりにも大胆な写真盗用 … だが、 これで一 「車内吊りに使われていたのは、帽子を 件 落 着 ではなかっ かぶっていた写 真 」 だと彼 女 は言 った。 たのだ! 私 は写 真 盗 用 の疑 いを抱 き、 まず最 初 に、身内からポジフィルムが流出してい ないかを確 認 した(アシスタント、 デザ イン会社、代理店<以下B>、印刷会 社 、 広 告 主 )。 そして我 々 サイドに写 真 流出者がいないことを確認後、ヤレのポ ジから「 帽 子 をかぶった写 真 」 をプリン 広告撮影時の別ショット 0 8 て、 その時 に「 帽 子 をかぶった写 真 」 を のみを対 象 とした。 当 方 はカメラマン、 い状 況 にあるかを痛 感 することができ アップで使ったと言うのだ。 A社、モデルの3者。提示した示談金は た。と同時にその著作権を守る法律が なんということだろう! 以下の通り。 我々カメラマンにとって、いかに頼もし 一枚の写真の著作権が、2つの会社から ・カメラマン 100万 円(実 際 にX 社 い存 在 であるかも実 感 することができ 侵害されていたのだ! の印刷物を作ると仮定した場合の撮 た。 私が責め立てると、A社はすぐにモデル 影料金+慰謝料) 出 口 の見 えない不 況 の影 響 のせいか、 事務所に半年分の写真使用延長料金 ・A社 を支 払 うと申 し出 た。 釈 然 としない気 ・モデル 50万円 持ちもあったが、我々はその申し出を受 100万円(カメラマンと同額) 誰もが余裕を失っている。クリエイティ ブの現 場 では「 バレなきゃ儲 けもの」 と (弁護士費用は総額250万円の20%) ばかりに、 モラルのない輩 たちが、 他 人 以上の金額をX社の弁護士に提示し のクリエイティブを罪 悪 感 もなく気 軽 た。そして2003年10月、総額175万円 に盗用している。 ◆ そして弁護士へ で和解が成立。3者がほぼ満足のいく形 今回、私があえて弁護士を通して事件 すべての事 情 が明 らかになったところ で事件を解決することができた。 を解決したのは、そうした節操のない輩 け入れることにした。 たちの行 為 に警 鐘 を鳴 らしたかったか で、所属しているAPAに相談したとこ ろ、柳澤俊次氏と三戸岡耕二弁護士が ◆ 事件を振り返って らだ。この業界は広いようで狭い。私が 相談に乗ってくださることになった。今 もし女 性 モデルが、 東 横 線 であの写 真 鳴らした小さな警鐘が、ゆっくりとでも 回 の事 件 は単 純 なケースで、 先 方 も非 を見つけなかったら、我々は何も知らず 節操のない輩たちの現場にまで広がる を認 めているので、 簡 単 に示 談 で解 決 に過ごしていただろう。あの電話のおか ことを願っている。 するだろうとのことだった。本件はX社 げで、カメラマンの著作権がいかに危う プレゼンテーションに盗用される写真 最 近 は仕 事 がやり難 くなったという声 を良 く聞 きます。 用いられているのが現代のプレゼンテーションです。広告 広告写真の力が低迷しているという声や自由に写真を撮 主はかなり高い確率で完成形を把握できるので合理的と れた時 代 を懐 かしむ声 さえ聞 こえて来 ます。 それは広 告 もいえます。しかし、実は撮影における創造性は低下しま の制作法が大きく変わったことが原因のようです。その一 した。それは確定した完成形に感覚が阻害されるからで つに広 告 主 にプレゼンテーションするカンプがあります。 す。不自由なのです。また、それに盗用されている写真も デザインの世界がデジタル化され、肉筆によるカンプが消 問題です。印刷物への透かしの埋め込みやマナーの啓蒙 えたのはそう遠い昔ではありませんが、より完成品に近い が必要でしょう。広告写真は力を失っていきそうです。 アイデアを伝えるために既成の写真がスキャニングされ、 柳澤俊次 0 9 知的所有権部部長 連載 著作権相談 case 4 伏見行介氏 の場合 小さい扱いの写真にも、著作権はあるのです。 伏見行介 APA正会員 東京 ㈱マッシュ 「この前、T社でした仕事の写真が、T ◆ イヤな予感 用データは渡していなかったので、今度 社 の別 のムックで使 われているけど知 ところが、担当編集者に対して、何回も は担当編集者とではなく編集長と、こ っている?」と、2003年3月中旬にかか こちらから連絡をしても、返事がなかな れまでの経緯を説明し交渉をしました。 ってきた、 フリーのライターからの電 話 か戻 ってこず、 なんと撮 影 3日 前 に、 見 その結果、実は、T社の名刺を持ち、現 でこの事件は始まりました。電話のもと 積 もりよりかなり低 い金 額 での返 事 が 場に立ち会い、ライターと打ち合わせを になったオリジナルの仕事は、このライ 返ってきました。この時点で、進め方が し、仕事を発注していた編集者は契約 ターの紹介で撮影をした仕事なのです。 フェアーでないので、撮影を降りようと 社員で、予算を持っている正社員の編 T社は、男女のファッション誌、コンピ 思 ったのですが、 あまりにも直 前 で、 他 集長とのコミュニケーションが、全く取 ュータ関係雑誌等の定期刊行誌十数 のスタッフに迷惑がかかるので、撮影料 れていない事が判明しました。 誌と書籍を出版している、中堅の出版 金については、撮影後に再交渉という事 編集部側の内部事情で、写真家側が迷 社です。 で撮影をしました。 惑を受けるいわれは無いので、納得でき T社との付き合いは初めてではなく、同 撮影が終了してみたら、実際には、何と る金額でなければ、実データを渡す訳に 社 の出 していたコンピュータ系 の週 刊 約 400カット弱 にふくれていました。 当 はいかないと交渉をしました。結果とし 誌に、デジタルカメラの記事を連載して 然、提出した見積もりの条件にそって、 ては、当初の200カット撮影金額を若干 いた事もあったのですが、その時感じた 再計算をした金額で撮影料金の再交渉 下回る程度になってしまいましたが、交 のは「 マーケティング指 向 」 とかの出 版 をしましたが、 なかなからちが明 きませ 渉が成立して、2002年9月に本は出版 社で、社風も編集部員の感じも、大手の んでした。 されました。 昔からある出版社とは若干感じが違う 幸 いな事 に、 レイアウト用 のデータは、 後に解ったのですが、この時点で、編集 ということでした。 編 集 部 に渡 してあったのですが、 印 刷 部は、予定金額より高めの撮影料金を 今 回 の仕 事 は、 以 前 仕 事 をしていた編 集 部 と は別 の編 集 部 の仕 事 で、 ライター経 由 で、 手 芸の制作手順をデジタ ルカメラで追 って撮 影 するものでした。撮影前 にカット数 を確 定 する 事は難しいため、約200 カットの撮 影 を前 提 に し、カット数が増えた場 合は撮影代金が増加す る事 を記 した見 積 もり を出しました。 オリジナル 1 0 支 払 う事 になったのと、 交 渉 過 程 のな かの誤解から写真を買い取ったと解釈 したらしいのです。 1. 問題の写真の著作権は通知人に有 士同士のやりとりの末、損害賠償金の 支払い、謝罪広告の掲載等を条件に03 ること。 2. 無断で再使用した事は、著作権法違 年8月末に示談が成立しました。 反である事。 ◆ 違反の事実 3. よって通知人は、T社に対し ◆ ころばぬ先の…情報。 トラブル含みの仕事を終え、ほっとして (1)03年版の発売、領布の中止 今回の件で改めてわかった事は、扱う写 いた所、前述の電話となったわけです。 (2)書店等にある03年版の回収破棄 真の種類(被写体の種類、写真の大き さっそく、 書 店 で問 題 のムック本 を購 (3)在庫中の03年版の破棄 さ、 載 せるページのランク等 )によって 入し、調べたところライターが書いた説 (4)既に販売し、回収不能となって 編集者の著作権に対する意識が異なる 明文共々38点の写真がモノクロに変換 いる03年版が有った場合、回収 事。デジタル時代になり、世間的に映像 されて無断流用されていました。 不能になった数量及び、現時点 そのものが安易に軽く扱われる傾向が、 連 絡 をくれたライターに、 一 緒 に抗 議 における売 上 額 の開 示 を1週 間 想像以上に進んでいる事。また、出版不 をするかを確認したところ、フリーなの 以内に書面で回答する事。 況 下 で出 版 社 の体 質 が「 劣 化 」 してお で難しいとの事なので、弊社のみで抗議 4. 通 知 人 会 社 の要 求 に応 じない場 合 り、中堅の出版社といえども、社員の著 をする事にしましが、弊社にはヘアメイ は、即時差止訴訟、損害賠償請求訴 作 権 に対 する意 識 が低 く、 さらに契 約 ク部門があり、その当時、T社の他の編 訟等の法的手段を執ること。 や下 請 けの編 集 プロダクションの社 員 にいたっては、皆無に近い状態になって 集部に対して営業活動を行っていたと ころなので、正直、大いに迷いました。 弊社の顧問弁護士と相談し、03年4月 T 社 は1週 間 後 に全 てを認 め、 直 ちに いる事。小さい扱いの写真に対する、賠 (1)(2)(3 )を実 行 するむねの内 容 償金額は低く、顧問弁護士がいない場 21日にT社あてに、概略以下のような通 証明が、弊社の弁護士に届きました。 合、赤字になってしまう事等です。 知書を内容証明として郵送しました。 その後、数回の書面のやりとりと、弁護 トラブルを未然に防ぐには、ウェブサイ トの2チャンネル(http://www2.2ch. net)等で出版社の情報を得るのも、一 つの方法かもしれません。また、日本雑 誌協会に加入しているかいないか等も 目安になるようです。今回、問題を起こ した、T社は、雑協にも入っていず、2チ ャンネルでも評 判 の良 くない会 社 でし た。 もちろんその後 、 T 社 からの撮 影 依 頼 はありません。 違法にコピーされた問題のムック本より 1 1 Information JPCA(Japan Photographic Copyright Association) 設立について 堀切保郎 知的所有権部副部長・JPCA理事 有限責任中間法人日本写真著作権協会が2003年(平成15) と成 っています。 これまではそれぞれの組 織 が行 なってきた 12月2日より業務を開始しました。「有限責任中間法人」とい 「保護期間の延長」、「保護期間が満了した写真著作権の復 うのは、社団法人や株式会社と違って、NPO法人(特定非営 活」運動や、「複写権使用料の分配」、「氏名表示の徹底」など 利活動法人)などと同じく、新しく作られた法人の形態です。 の事業を引き継ぎ、さらに「写真著作権の管理事業」が行なえ 内容はその名称の示すとおり、社会全体の公益性を重視する る体制を整えるため、2003年(平成15)6月5日、社団法人日 公益法人と、法人の利益を目的とする営利法人の中間の性 本写真家協会、社団法人日本広告写真家協会、社団法人日 格 をもっています。 これは協 会 を法 人 化 するにあたり、 著 作 本写真文化協会によって有限責任中間法人を設立登記しま 権等管理事業法などを法律で定められた事業者として活動 した。その後、社団法人日本婚礼写真協会、日本肖像写真家 するために必 要 と考 え、 この形 態 を選 択 しました。 そこで 協会、日本写真作家協会、全日本写真連盟の4団体が加盟す JPCAの性格を理解するために沿革にふれておきます。 るに至り、現在7団体に属する会員は約27,000人で、そのうち JPCAは1971年(昭和46)写真著作権の管理機構として、日 約8,000人に「写真著作権者ID」が付与されています。現在、 本写真家協会、日本広告写真家協会、日本写真文化協会、日 協会では写真著作権者IDの普及をはかりながら、写真著作権 本肖像写真家協会、全日本写真連盟、日本報道写真連盟に の管 理 事 業 の確 立 に向 けてJ P C A ホームページ(h t t p : / / よって設立された任意団体である日本写真著作権協会(初 www.jpca.gr.jp)を運用し、データベースの構築と安全な流 代会長渡辺義雄)と、写真著作権の保護期間の延長を求めて 通システムの確立をめざして活動して行く方針です。尚、この 法改正運動をすすめてきた全日本写真著作者同盟(1965年 項は皆様のご理解の一助になればと、JPCA専務理事松本徳 設立)を、2000年(平成12)10月30日に合併したものが母体 彦氏よりご教示いただき掲載しました。 著作権を取り巻く環境とJPCAの事業 瀬尾太一 APA知的所有権部担当委員・JPCA常務理事 世の中が知的財産に目覚めてきた。新 ンテンツを流 通 させ、 一 大 産 業 として の業 界 といってもその業 態 は、 分 野 に 聞報道でも、「知的財産」「著作権」の文 育 てようというのが、知的財産戦略本 よって大 きく異 なっている。 しかし、 今 字を日々、目にする。これはなぜなのか。 部 だ。 もちろん、 著 作 権 はその一 部 で、 までと同じ対応では、全く時代に取り 今、写真家に何が求められているのか。 特 許 なども大きな位置を占める。知財 残されてしまう。そのために、「とにかく 有限責任中間法人日本写真著作権協 戦略本部は、首相が本部長を務める事 著作権という共通項目で、 ひとつにま 会(以下、JPCA)の活動を中心にその からもわかるとおり、 重 要 な政 策 機 関 とまって社 会 と向 き合 おう」 その実 践 動きを追ってみよう。 であり、 かつてない速 度 で様 々 な施 策 の場がJPCAなのだ。 を実行している。 このように時 代 は大 きく動 いているの ● パソコンの性能が上がり、ネットワーク だが、著作権において、今まで写真業界 JPCAの事業は大きく分けて次の3分 が普及して、インターネットの時代を迎 は他の分野に比べて、アプローチが少な 野がある。 えた。更にその転送速度が向上し、ブロ かった。 それは、 多 くの団 体 が併 存 し、 1)権利者の所在情報を明確にする。 ードバンドの普及時期を迎えている。こ 業 界 としての力 を持 たなかったことが 2)著作権において業種を代表し、対外 のような状 況 で、 画 像 や音 楽 などのコ 大 きな理 由 である。確かに一口に写真 ● 現在の環境 1 2 JPCAの事業 的なアプローチを行う。 動を行 ってゆく予定である。JPCAの ホームページにはID登録者専用のペー ジやギャラリーも設 置 されてゆくので、 そちらも併せて利用するといいだろう。 画像保護技術もJPCAのギャラリーな どで体感していただくのが、一番の理解 になると思われる。 今後、IDの普及に向けて、電通や大手 出版社など、APA会員となじみの深い 企業との折衝が行われてゆく予定であ る。そのような活動にAPA会員が、積極 的 に係 わってゆくこと、 そしてA P A が 今後の写真著作権活動の重要な一員 として機 能 してゆくことは、 写 真 業 界 全体の要望であるだろう。 3)インターネットを利 用 した流 通 シ る著 作 権 者 データベースを稼 働 させて 今まで写真は、どの分野であれ、個人の いる。また、稼働に伴い、正会員(団体正 力が重要だった。しかし、今の時代、業界 会員。APAも正会員である)に加入する を挙げて対応しなければできないことも 1)は氏名表示の徹底、データベースの 権利者に著作権者IDをお送りした。この 多くなってきている。一人で法律は変え 構 築 、ID の普 及 などであり、2)は保 護 データベースでは、権利者の詳細画面に られないのである。 厳 しい経 済 環 境 や、 期間の切れた写真著作権の復活運動、 5点以内の作品とプロフィール、顔写真 激変する社会体制の中で、次の世代の 書籍貸与権への参加、文化審議会など などを掲 載 することができる。 心 配 なの 写真家が、希望を持って仕事のできる環 の外部会議への出席などである。3)は、 は不正利用だが、画像保護には、JPCA 境を作ることも、今をおいて他にない。 インターネット上 での画 像 保 護 サービ で採用した画像保護技術が用いられて まずはデータベースを通じて、新しい流 スの提供や、解像度に依存しない保存 いる。 また、 このデータベースには美 術 、 れを感じていただきたい。 形式の普及によって、写真家が積極的 グラフィックアートも参加し、APGデー JPCAホームページ にインターネットを利 用 できる環 境 を タベースとして展開されている。 提供することである。これらの事業、運 APA会員は、すべてID登録者なので、 動 は多 岐 にわたり、 ここでは詳 細 を省 自分のIDとパスワードを使って、この機 http://www.apg.gr.jp くが、 ひとつだけ重 要 なテーマ、 データ 能を使うことができる。ぜひ、写真やコ 1)A P G データベースで詳 細 なマニュ ベースとIDについて説明しよう。 メントなどを掲載し、社会にアピールし ステムを構築する。 ● http://www.jpca.gr.jp APGデータベース アルが用意されている。 ていただきたい。今までは、APA会員が 2)APGデータベースとJPCAデータ 著作権者IDとJPCAデータベースの 直接JPCAの活動に参加する機会は少 ベースのデータは共 通 であり、 同 じ 利用について なかったが、今後はインターネットを通 データベースと考 えていただいても じて、写真家一人一人に実感できる活 いいだろう。 J P C A では、 すべてのシステムの元とな 1 3 写真著作侵害罰金 の引上げを! ば済むぜ!」 験が始まろうととしている。これも知識 飲酒による運転も以前は、「めったにや 普及の第一点である。情報伝達メディ られないぜ、 そん時 はそん時 」 とたかを アの発達はすさまじいものがある。社会 飲酒、酒気帯びの罰金の引上げと、免許 くくっていた者 もけっこう多 かったは 生活は増々便利になり世界の人々にと の減点増が、飲酒運転等による交通事 ずだ。 罰 金 もさることながら免 許 停 止 って情報は国境の概念すら忘れさせて 故激減になっていると新聞報道が伝え 期 間 、 取 り上 げと罰 則 の強 化 が「 やば くれる。まして写真、いわゆる映像は言 ている。社会現象として罰金引上げは い」となるのである。 葉の壁すら越えて情報を伝えてくれる 効 果 ありとしている。 罰 金 が高 額 にな 著作権侵害に対する罰則、罰金も引き 重要な手段となっている。 った結果という理由がなんとも残念な 上 げが必 要 ではないだろうか。 せめて 私達写真家が良質な、快適な写真映像 を制作する必要があるのは当然である。 感じはするが、 交 通 事 故 の減 少 はうれ しいことである。 発明特許による会社員研究者に対して なんと200億円余の支払い判決が大き な話題となっている。会社が潰れてしま うという意見まで討論されている。 著作権侵害による法的な罰金の最高額 モメない ための 第一歩 あちこちで使 いたくなる様 な魅 力 ある 写真映像を情報文化の担い手として作 る努 力 をしなければならない時 代 でも ある。 写真の著作物は作者の死後50年ある。 財 産 として遺 産 相 続 できるのである。 それにしても無体財産権の知識普及の は300万円以下である。社会で起る他の 事 件 の罰 則 や法 律 のバランスから見 て 1,000万円位になれば、侵害が見つかれ 作 業 を急 がなくては。 財 産 としての価 そんなもんかなとも思う。しかし、実際に ば「やばい」になるのではないか。知的財 値を上げねば著作権に対する理解は進 は裁判での最高額を果した判例は見当 産 保 護 は「 良 識 」 が原 点 であるがこの まない。 らない、せいぜい半分位である。 「良識」の普及ははなはだ難しい問題で 「うちのお父ちゃんの写真が死んでも使 「著作物を侵害しても大したことになら もある。教育と罰則両面の運動が有効 われる。お金にもなる。」 ない、裁判の費用を掛けてまで訴訟する ではないか。 写 真 家 として生 きた証 しでもあるのだ やつはまれだ、 見 つかったら罰 金 を払 え 最近、特許、商標、著作に関する検定試 から。 私 たちはすでに、 何 件 かの相 談 を解 決 ■利用方法 してきました。トラブルでお悩 みの方 、 ・相談内容を文書にて事前にAPA事 著 作 権 について知 りたい方 はぜひご相 務局に提出して下さい。 (所定の用紙 APAでは平成10年('98)年から担当 談ください。 は事務局にあります) 弁護士による著作権の相談窓口を開設 ■インフォメーション ・内容精査の上相談日を決定し通知 しています。 ・相談日 毎月第4木曜日( 変更にな ・相談日に個別面談を実施します。 著作権相談室の ご案内 ほとんどの場合、口約束だけで仕事を る場合があります) (知財 守) ・急を要する件については電話にて対 応します。 始める事が多い私たちは、契約書を交 ・場 所 APA事務局(2F APAルーム) わす習慣があまりないので、思わぬとこ ・利用資格 APA会員に限る ろでビジネストラブルや知 的 所 有 権 の ・相談料 無料 途発生するものは相談者負担となり 侵害に遇うことがあります。またマルチ ・担 当 三戸岡耕二(担当弁護士) ます。 メディアの発 展 でインターネット上 で 柳澤俊次(部長) の知的所有権の侵害や無断使用、その 飯泉博基(副部長) 他、数 多 くの新 しい問 題 も起こってい 堀切保郎(副部長) ます。これらは著作権思想の普及や啓 石田研二(担当委員) 蒙がまだ足りない結果といえますが、著 小杉俊幸(担当委員) 作権者である私たちの無知も原因のひ 瀬尾太一(担当委員) ・調査費用や訴訟その他の費用など別 とつです。 APA著作権レポート vol.03 ©APA2004 Printed in Japan 本誌掲載の写真・記事の無断転載を禁じます。 発行日 2004年( 平成16年)2月29日 発行所 社団法人 日本広告写真家協会 〒104−0045 東京都中央区築地2−11−3 ヒロシゲビル4F TEL.(03)3543−3387 FAX.(03)3543−3317 http://apa-japan.com 発行人 藤井秀樹 編集人 柳澤俊次 編集 社団法人 日本広告写真家協会 知的所有権部 印刷・製本 ホクエツ印刷株式会社 1 4
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