「MCC(Millennium Challenge Corporation)の援助動向」(原稿作成日

平成17年6月17日
FASIDジュニア・プログラムオフィサー
久賀みず保
最新開発援助動向レポートNo.18
MCC(Millennium Challenge Corporation)の援助動向
はじめに
2002年3月のメ キシコ・モンテ レーで 開催された 国連 開発資 金国 際会議 にて 、ブッ シュ
大 統領 は 、 今 後 3会計 年 度内 に 開 発援 助 資金 を 増額 し 、 そ の 増 加 分 を従 来 の援 助 予 算 と は
別枠の新たな特別会計「MCA(Millennium Challenge Account)」とすることを発表し
た 1 。主な特徴は、1)同資金は、04会計年度(03年10月~04年9月)に予算10億ドルから
スタートし、3年後の06会計年度には50億ドルにまで拡大される予定である。2)その資金
配分は、特定の政策領域における選定基準に基づいて選ばれた国にのみ無償援助として供
与される。特定の政策領域とは、Ruling Justly(公正な行政)、Encouraging Economic
Freedom(自由市場経済の促進)、Investing in People(国民への投資)の3分野であり、
選定には被援助国の主体的かつ健全な開発政策運営へのコミットメントが最も重要視され
る 。 3 ) MCA の 管 理 ・ 運 営 は 新 た な 政 府 機 関 で あ る MCC ( Millennium Challenge
Corporation:ミレニアム・チャレンジ公社)が実施する。
援助適格国は、対象となるプログラムに関するプロポーザルを作成し、MCCとの交渉を
経て、合意書(Millennium Challenge Compact)を締結する。2005年4月、初のMCA資
金供与がマダガスカル共和国に決定し、同年6月にはホンジュラスとの合意締結に至った。
本稿では、MCA構想の背景とMCCをめぐる最近の動きを整理し、今後の動向について
述べる 2 。
1.
MCA構想の背景
MCAとは、3つの特定分野において実績をあげている国々に対してのみ、無償で配分さ
1
2
MCC “The Millennium Challenge Account”“( http://www.mcc.gov/about_us/overview/index.shtml).
本 稿 は 、 独 立 行 政 法 人 国 際 協 力 機 構 (JICA)国 際 協 力 総 合 研 修 所 、 調 査 研 究 グ ル ー プ 、 事 業 戦 略 チ ー ム
の 工 藤 美 佳 子 氏 、 佐 々 木 章 江 氏 、 JICA 企 画 ・ 調 整 部 、 企 画 グ ル ー プ /事 業 企 画 チ ー ム ( 国 際 援 助 協 調
チ ー ム )、援 助 ア プ ロ ー チ・戦 略 ネ ッ ト ワ ー ク 支 援 ユ ニ ッ ト の 作 元 理 江 氏 よ り 有 意 義 な コ メ ン ト を 頂 い
た。感謝申し上げる。
1
れる援助資金である。被援助国の業績に基づいて援助額を引き上げることにより、ODAの
健全な使用と、途上国の制度や政策改善を促すための財政的インセンティブを与えようと
いうものである 3 。この構想の背景には、米国による過去の援助経験の反省がある。米国内
では援助効果に関して多くの議論がなされてきたが、過去の失敗の原因として、実績への
関心と測定可能な結果への要件が欠けていたと指摘されている 4 。援助資金が不正に使用さ
れた結果、不健全な政治を補完し、民間投資を締め出すという逆効果を生んできた 5 。こう
した事態を避けるため、途上国の開発政策に関する業績と評価の測定を前提とし、被援助
国の選定(つまり援助資金の配分)が業績と結果に反映される、結果重視主義が強調され
るようになった 6 。
MCAは、近年の援助と異なり、経済成長を通じた貧困削減にのみ焦点を当てている 7 。
具体的には、1)農業、2)教育、3)民間セクター開発、4)キャパシティ・ビルディング
分野への投資によって貧困を削減し、持続 的 な経済成長を促進しよ うという戦略である 8 。
貧困削減をターゲットにした政策への転換は、2001年9月11日の同時多発テロ事件がきっ
かけであると言われている 9 。テロと貧困との因果関係については異なる見解があるが、事
件発生以後、米国は「貧困が国境管理や治安確保、法の遵守を妨げている」との認識をも
ち 10 、貧困削減を目的としながら援助の質・量ともに大幅強化するに至った。
2.
新組織MCCの設立と役割
2-1.
MCC設立の背景
MCAの運営を任されているのが、MCCである。2004年の1月、強力な超党派的支持のも
と 、 米 国 議 会 は MCC に MCA の 運 営 を 許 可 し 、 2004 年 度 の 初 期 資 金 と し て 約 10 億 ド ル
($994.1 million)を提供した。05年には、議会で約15億ドル($1.488 billion)が承認さ
大 原 ( 2003) pp.28-29。
今 村 ( 2004) p.8。
5 MCC に よ る FASID へ の 提 供 資 料 、 January 2005。
6 米 国 の 開 発 援 助 に お い て 、結 果 重 視 主 義 は 新 し い こ と で は な い 。MCC が 従 来 の 援 助 と 異 な る 点 は 、50
億 ド ル と い う 多 額 の 援 助 資 金 配 分 が 業 績 と 結 果 に リ ン ク さ れ て い る 点 で あ る 。 今 村 ( 2004) p.8。
7 MCC に よ る FASID へ の 提 供 資 料 、 January 2005。
8 MCC “The Millennium Challenge Account”( http://www.mcc.gov/about_us/overview/index.shtml).
9 今 村 ( 2004) pp.8-9、 紀 谷 ( 2003) p.147。
10 ブッシュ大統領の演説より “An d in man y ot her states aro und th e wo rl d, po ve rt y pre vents
governments from controlling their borders, policing their territory, and enforcing their laws.
Development provides the resources to build hope and prosperity, and security.” The White House
“President Proposes $5 Billion Plan to Help Developing Nations” March 14,2002.
(http://www.whitehouse.gov/news/releases/2002/03/print/20020314-7.html).
3
4
2
れ、ブッシュ大統領は06年には30億ドルを要求 11 、将来的には50億ドルへ増額すると公約
している 12 。
MCCの ス タ ッ フ は 150~ 250人 と 見 込 ま れ て い る 。 80億 ド ル の 予 算 を 約 2,000人 ( 2002
年時点)の直接雇用職員で運営しているUSAID(United States Agency for International
Development)と比較すると 13 、かなり少数精鋭である。MCCの監査を担当するのは、最
高議決機関であるMCC理事会である。議長であるライス国務長官をはじめ、財務長官、米
国通商代表、USAID長 官など閣僚級メンバーによって構成されている。加えて、4名の 民
間専門家も含まれている。また、初代最高経営責任者(CEO)には、アフリカでインフラ
事業の財務を担当し、民間資金の導入を進めてきたポール・アップルガース氏が任命され
た 14 。
これまで米国の開発援助プログラムは、主としてUSAIDによって実施されてきた。しか
しMCAの運営は、USAIDではなく新組織であるMCCがイニシアティブをとって実施して
いる。FASIDによるUSAID、及びMCCスタッフへのインタビューによると、USAIDは1961
年の設立以降、議会の干渉があまりに大きくなってしまい、官僚的かつ非効率な機関とし
て評価されていた 15 。新たな援助が効率的に運営されることを期待し、民間色の強い新組
織にその役割が求められたのである。
2-2.
MCCの役割と特徴
MCCは、第1に、被援助国を選定する役割をもつ。経済成長を通じた貧困削減を目的と
し、その達成の可能性が高い国、すなわち、公正な行政、自由市場経済の促進、国民への
投資を行っている国を選定して支援を行う。
適格国と認められた国は、支援対象となるプログラムに関するプロポーザルを作成する。
対象プログラムは、被援助国自身が策定した国家開発戦略を基本とし、プログラムの策定
や評価も被援助国が中心になって実施する。その後MCCは、合意締結に向けてプロジェク
トパフォーマンス目標の策定や、説明責任の明確化などについて助言する。これがMCCの
第2の役割である。併 せて、合意 締結後のモ ニタリングや評価も行 うことになっている 16 。
プログラムの候補としては、1)各種のコミュニテイー、セクター、ナショナルイニシア
11
12
13
14
15
16
MCC “FY2006 MCC and Budget Presentation to Congress” p.6.
(http://www.mcc.gov/about_us/key_documents/FY06_Budget_Justification.pdf) .
MCC “The Millennium Challenge Account”( http://www.mcc.gov/about_us/overview/index.shtml).
JBIC ワ シ ン ト ン 駐 在 員 事 務 所 ( 2005) p.147。
MCC に よ る FASID へ の 提 供 資 料 、 “The Honorable Paul V. Applegarth Chief Executive Officer
Millennium Challenge Corporation”.
USAID の 援 助 体 制 へ の 評 価 に つ い て は 、JBIC ワ シ ン ト ン 駐 在 員 事 務 所( 2005)pp.149-150 を 参 照 。
MCC “Frequency Asked Question”( http://www.mcc.gov/about_us/faq/index.shtml) .
3
ティブへの資金援助、2)インフラ開発、3)物資購入資金(commodity financing)、4)
訓練・技術支援、5)民間企業、財団への資金援助などがある 17 。
以上を踏まえ、MCAプログラムの特徴は以下のようにまとめることができる。
1)MCAプログラムは、わずか200人程度のMCCスタッフによって運営されている。
2)被援助国の選定は、各国のプロポーザルを検討することによって行われる。
3)指標を用いて選択されるため、対象国は自ずと少なくなる。
4)そのため、ひとつの合意額が無償資金としては相当大きい。
5)プロジェクトの企画、運営、評価は、主に被援助国によって行われる。
これらの特徴は、従来の援助方式とは大きく異なっている。
3.
MCCによる被援助国の選定基準
援助プログラムの対象国とは、どのような基準で決められるのか。その基準は、各国の
所得水準とパフォーマンスの2つのカテゴリーから成る。所得水準については、プログラ
ム開始以降、以下のように毎年変更がある 18 。
z 2004年度:1人当たりGNI 1,415ドル以下、IDA融資適格国
米国対外援助ActパートⅠ適格国 19
z 2005年度:1人当たりGNI 1,465ドル以下、米国対外援助Actパート1適格国
z 2006年度:2つのGNI水準に分類
(1) 世銀が定める低所得国水準:現時点で1,465ドル以下
(2)
〃
低中所得国水準:現時点で3,035ドル以下 (2005年6月発表予定)
米国対外援助Actパート1適格国
パフォーマンスについては、「MCA資金の投入が当該国の貧困削減や経済成長を刺激す
る政策であるか」という観点から、MCCが指標を用いて測定する。その指標とは、3つの
政策領域に16の経済、政治指標が設定されている(表1参照)。16の指標には、成長と貧
困削減に関する国際機関や国家データが採用されており、データの透明性、客観性、有効
性、正確性などが勘案されている。適格国となるには、各指標の半数以上において、候補
今 村 ( 2004) p.9。
MCC “FY2006 MCC and Budget Presentation to Congress” pp.20-23.
(http://www.mcc.gov/about_us/key_documents/FY06_Budget_Justification.pdf) .
19 米 国 の 対 外 援 助 法 で あ る Foreign Assistance Act of 1961 の PartⅠ で 規 定 さ れ て い る 国 で あ る 。特 定
の国名は挙げられていないが、低所得かつ民間からの融資を得るのが困難な、米国の譲許的な資金援
助 を 受 け る 国 と な っ て い る ( Sec.102)。 USAID (http://www.usaid.gov/policy/ads/faa.pdf).
17
18
4
国の中間値以上のスコアを出すことが必要条件とされている。例外として汚職規制指標に
ついては、中間値かそれ以下の場合、他の15指標の業績評価が高くても援助資格を失うこ
とになる 20 。最終的には、MCC理事会による評価が加わり、大統領へ推薦される。
これらの基準に基づいて、MCC設立後5ヶ月で63ヶ国が候補国(candidate countries for
FY 2004)として選ばれ、うち16ヶ国が適格国(eligible countries)となった。適格国に
選 ば れ な か っ た 国 は 、 改 革 の 意 志 の あ る 中 程 度 の 達 成 国 と し て 準 適 格 国 ( threshold
program eligible countries)と位置づけられ、将来的に適格国となるようUSAIDから政策
表1 被援助国の選択指標 (2005年)
Ruling Justly (公正な行政)
1
2
3
4
5
6
出 所
Civil Liberties (市民の自由)
Political Rights (政治的自由)
Voice and Accountability (報道の自由と説明責任)
Government Effectiveness (政府の効率性)
Rule of Law (法の支配)
Control of Corruption (汚職規制)
Freedom House
Freedom House
World Band Institute:WBI
WBI
WBI
WBI
Encouraging Economic Freedom (自由市場経済の促進)
1
2
3
4
5
6
Country Credit Rating (国家の格付け)
1-year Consumer Price Inflation (インフレーション)
Fiscal Policy (財政政策)
Trade Policy (貿易政策)
Regulatory Quality (規制政策)
Days to Start a Business (新規事業開始手続きに必要な日数)
Institutional Investor
IMF/IFS,World Economic Outlook:WEO
IMF/WEO
Heritage
WBI
WB
Investing in People (国民への投資)
1 Public Expenditure on Health as % of GDP
(GDPに占める保健分野への割合)
2 Immunization Rates:DPT3 and Measles (予防接種率)
3 Public Primary Education Spending as % of GDP
(GDPに占める公的初等教育への支出割合)
4 Girls Primary Education Completion Rate
(女性の初等教育終了率)
national sources
WHO
national sources
World Bank EdStats
Education For All
注) 2005年の指標である。2004年度版に修正が加えられており、2006年度についても修正が予定されている。
MCC "FY2006 MCC and Budget Presentation to Congress” p.20.
(http://www.mcc.gov/about_us/key_documents/FY06_Budget_Justification.pdf).
出所) MCC “Report on the Criteria and Methodology for Determining the Eligibility of Candidate Countries
for MCA Assistance in FY 2005.
(http://www.mcc.gov/about_us/congressional_reports/Report%20to%20Congress%20on%20Criteria%20
and%20Methodology%20FY051.pdf).
今村(2004)p.10.
CSIDS “Innovations in Development Finance” p.6。
( http://www.grips.ac.jp/csids/subject/subject03.pdf)、 今 村 ( 2004) p.9。 各 国 の パ フ ォ ー マ ン ス 測
定 結 果 は http://www.mcc.gov/countries/rankings/index.shtml に 公 開 さ れ て い る の で 参 照 さ れ た い 。
20
5
改善についての支援を受ける 21 。2005年度は16ヶ国の適格国、12ヶ国の準適格国が選出さ
れている(表2参照)。MCCは、4ヶ国(グルジア、ホンジュラス、マダガスカル、ニカラ
グア)と協議し、うちマダガスカルと初の合意締結に至った。
表2. 2005年度MCA適格国及び準適格国のリスト
MCA適格国 (16ヶ国)
Armenia
Ghana
Mali
Nicaragua
Benin
Honduras
Mongolia
Senegal
Bolivia
Lesotho
Morocco
Sri Lanka
Georgia
Madagascar
Mozambique
Vanuatu
MCA準適格国 (12ヶ国)
Burkina Faso
Malawi
Tanzania
East Timor Guyana
Paraguay
Philippines
Uganda
Yemen
Kenya
Sao Tome and Principe
Zambia
出所:MCCによるFASIDへの提供資料、March 2005
4.マダガスカル共和国との合意締結
2005年4月、MCC理事会はマダガスカル共和国に対し、無償資金、約1億1,000万ドル
($109.773 million)を4年間の計画で供与することを発表した 22 。
マダガスカルの貧困層は、圧倒的に農村に多く、農村における貧困削減と経済成長が急
務である。国民人口の約70%が農村で生活し、80%以上の国民が一日2ドル以下で生活し
ている。銀行の業務機能の未熟さや脆弱な土地所有制度の問題が顕在化しているため、融
資へのアクセスが困難となり、農村での投資も妨げられてきた。
マダガスカルの実施プログラムの目的は、自給自足に依存した生活から市場経済への移
行を図り、農民の所得向上を目指すことである。経済成長と貧困削減が重点分野とされ、
農村を中心とした土地所有権の確立、融資へのアクセス改善、農民のキャパシティ・ビル
ディングがプロジェクトの対象分野である。
プログラム策定の背景には、政府がNGOや市民グループ、地方の事業組合などからMCA
申請に向けたアイデアを求めたことや、国民に対するワークショップの開催によって国内
21
22
MCC “The Millennium Challenge Account”( http://www.mcc.gov/about_us/overview/index.shtml).
マ ダ ガ ス カ ル 合 意 の 背 景 に つ い て は 、 MCC ウ ェ ブ サ イ ト を 引 用 し た 。 “Madagascar Compact Fact
Sheet” April 18
( http://www.mcc.gov/public_affairs/fact_sheets/Madagascar_Compact_fact_sheet.shtml) .
6
のニーズ把握に努めてきたことがある。こうした積極的な政府主導の策定プロセスが、今
回の選定に有利に働いたとみられる。
具体的に、MCCは以下の3つのプロジェクトについて支援を行う 23 。
1) 土地所有制度の確立(Land Tenure Project)
:土地政策の枠組み(National Land Policy Framework)の改善、土地情報データベ
ースの作成、国有地登記の整備、農民への普及など
2) 融資へのアクセス改善(Finance Project)
:銀行制度を改善し農村での融資サービスを普及、貸付業務の改善、マイクロクレジ
ット、融資手続きの効率化(支払い期間を45日間から3日間へ短縮)
3) 農民のキャパシティ・ビルディング(Agricultural Business Investment Project)
:対象地域5ヵ所に農業訓練センター(Agricultural Business Centers)の設立、農
村における投資機会の発掘、生産や管理、マーケティング技術や起業活動の訓練
事業コストの内訳は、表3に示すとおりである。マダガスカルは、この合意内容に沿っ
た農村開発への統合的アプローチによって、飢餓・貧困削減のMDGsを達成する可能性が
ある 24 。
表3. マダガスカル共和国援助の事業コスト内訳
($ thousands)
1
2
3
4
5
6
Land Tenure
Finance
Agricultural Business Investment
Monitoring and Evaluation
Fiscal and Procurement Management and Audits
Program Administration
Total Estimated MCC Contribution
37,803
35,888
17,683
3,375
7,871
7,153
109,773
出所: MCC “Millennium Challenge Corporation Congressional Notification”
April 27,2005 (http://www.mcc.gov/about_us/congressional_notification
/042605-cn_Madgascar_compact.pdf)
23
合意文書サマリー参照。
MCC “Millennium Challenge Corporation Congressional Notification” April 27,2005,pp.2-4.
( http://www.mcc.gov/about_us/congressional_notifications/042605-cn_Madgascar_compact.pdf) .
24 MCC “Fact Sheet / MCC and Madagascar: Building a Partnership for Poverty Reduction and
Growth” March 14,2005.
7
5. 今後の展望
MCA 資金の供与は、マダガスカルとの合意が第1号として締結されたばかりであり、今
後の動向が注目される。2005年6月には、ホンジュラスとの合意も締結された 25 。農業の
生産性向上、及び中小規模農民のビジネス・スキル向上を目的とした農村開発と、運輸コ
スト削減、市場へのアクセス改善を狙った交通ネットワーク整備に対し、約2億1,500万ド
ルが5年計画で供与される予定である 26 。また、同時期にカーボヴェルデとニカラグアへの
MCA供与も承認されている 27 。
MCA資金援助において最も特徴的なのは、その援助額の大きさと当該国イニシアティブ
である。予算にインフラ整備支援が含まれていることも理由のひとつであるが、無償資金
供与での1億ドルを超える巨額な供与は、政策改善に向けた当該国政府のインセンティブ
となるであろう。また、明確な指標が予め示されていることにより、政府は開発計画のタ
ーゲットを絞りやすく、グッド・ガバナンスの実現を高める可能性もある。
USAIDは、議会などからの干渉が多く非効率な機関である、とホワイトハウスからみら
れている。この見方を踏まえ、MCCは、非常に少ないスタッフで当該国主導の下、大きな
プロジェクトを実施するというUSAIDとはまったく異なった方式で援助を行っている。こ
の援助方式には、当該国のオーナーシップを高めるという目的があり、プロジェクトは実
質的に当該国が行うという発想が画期的である。しかし、アフリカ数ヶ国の首脳からは、
「適格国がプロポーザルを提出したとしても、承認やディスバースメントの過程で非常に
時間がかかる」と、ブッシュ大統領へ不満が投げかけられているのも事実である 28 。
このようにMCAプログラムをめぐる問題が顕在化しつつあるが、MCAが開発に与える
インパクトは未だ明確ではない。今後、開発効果が生まれ、成功に至れば、新たな援助方
式として確立することが期待できよう。
25
26
27
28
MCC “Press Release / Millennium Challenge Corporation Signs $215 Million Compact with
Honduras” June 13,2005. (http://www.mcc.gov/public_affairs/press_releases/pr_061305.shtml).
MCC “Fact Sheet / Honduras and Millennium Challenge Corporation: Building a Partnership for
Poverty Reduction through Growth” May 20,2005.
(http://www.mcc.gov/public_affairs/fact_sheets/Honduras_compact_fact_sheet.shtml.pdf).
カ ー ボ ヴ ェ ル デ に は 1 億 1,000 万 ド ル 、 ニ カ ラ グ ア に は 1 億 7,500 万 ド ル を そ れ ぞ れ 5 年 計 画 で 供
与 す る 予 定 で あ る 。 合 意 締 結 は 7 月 の 見 込 み 。 MCC “Press Release / Millennium Challenge
Corporation Board Approves Two Compacts” June 13, 2005.
(http://www.mcc.gov/public_affairs/press_releases/pr_061305b.shtml).
International Herald Tribune, June 15, 2005,p.5. こ の ア フ リ カ 諸 国 か ら の 批 判 を き っ か け に 、 ア
ッ プ ル ガ ー ス 氏 は CEO を 辞 任 す る こ と に な っ て い る 。 The New York Times, June 16,2005.
(http://www.nytimes.com/2005/06/16/politics/16resign.html).
8
【参考文献】
<日本語>
1) 今村勝征(2004)「米国の新しい途上国援助組織とは」国際開発ジャーナル、2004年2
月号567号、pp.8-9。
2) 紀谷昌彦(2003)「ブッシュ政権下の米国の援助政策」秋山孝允・近藤正規編、『モン
テレー会議後の世界のODAの変動』、FASID、pp.145-154。
3) 国際協力銀行(JBIC)ワシントン駐在員事務所(2005)「米国の二国間開発援助政策」
『開発金融研究所報』第23号、国際協力銀行開発金融研究所、2005年3月、pp.139-154。
4) 大原淳子(2003)
「2002年国際会議の動向」秋山孝允・近藤正規編、前掲書、pp.25-53。
<英語>
5) CSIDS ( 政 策 研 究 大 学 院 大 学
国 際 開 発 戦 略 研 究 セ ン タ ー ) “Innovations in
Development Finance”(http://www.grips.ac.jp/csids/subject/subject03.pdf).
6) International Herald Tribune, June 15,2005.
7) MCC “Fact Sheet / Honduras and Millennium Challenge Corporation: Building a
Partnership for Poverty Reduction through Growth” May 20,2005.
(http://www.mcc.gov/public_affairs/fact_sheets/Honduras_compact_fact_sheet.shtm
l.pdf).
“Fact Sheet / MCC and Madagascar: Building a Partnership for Poverty
8)
Reduction and Growth” March 14,2005.
9)
“Frequency Asked Question”
(http://www.mcc.gov/about_us/faq/index.shtml).
10)
“FY2006 MCC and Budget Presentation to Congress”.
(http://www.mcc.gov/about_us/key_documents/FY06_Budget_Justification.pdf).
11)
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(http://www.mcc.gov/public_affairs/fact_sheets/Madagascar_Compact_fact_sheet.
shtml).
12)
“Millennium Challenge Corporation Congressional Notification”April
27,2005 .
(http://www.mcc.gov/about_us/congressional_notifications/042605-cn_Madgascar_
compact.pdf).
13)
“Press Release / Millennium Challenge Corporation Board Approves Two
Compacts”June 13, 2005.
9
(http://www.mcc.gov/public_affairs/press_releases/pr_061305b.shtml).
14)
“Press Release / Millennium Challenge Corporation Signs $215 Million
Compact with Honduras ” June 13,2005.
(http://www.mcc.gov/public_affairs/press_releases/pr_061305.shtml).
15)
“Report on the Criteria and Methodology for Determining the Eligibility
of Candidate Countries for MCA Assistance in FY 2005”
(http://www.mcc.gov/about_us/congressional_reports/Report%20to%20Congress%20
on%20Criteria%20 and%20Methodology%20FY051.pdf).
16)
“The Millennium Challenge Account” .
(http://www.mcc.gov/about_us/overview/index.shtml).
17)
The New York Times, June 16,2005.
(http://www.nytimes.com/2005/06/16/politics/16resign.html)
18)
The White House “President Proposes $5 Billion Plan to Help Developing
Nations” March 14,2002 .
(http://www.whitehouse.gov/news/releases/2002/03/print/20020314-7.html).
19)
USAID
(http://www.usaid.gov/policy/ads/faa.pdf).
10