第 3章 成田空港の管理・運営 こうした取り組みは、速やかに両空港の業務に反映 され、空港の持続的発展、並びにお客様に対するサー ビスや利便性の向上に役立てられている。 ❺ 海外空港支援業務 NAAはこれまで、 『国際拠点空港としての役割を果 たし、グローバルな航空ネットワークの発展に貢献す る』 という経営理念のもと、全世界の空港を対象に海外 空港支援業務を進めている。 NAAは国際事業室を窓口とし、NAAの中期経営 計画“Innovative Narita 2015”に掲げられた非航空 系収入増大に向けた1つの柱として海外事業の取り扱 いを推進している。 NAAの強みは、1978年の成 田空 港 開 港 以 来、 Total Airport Management Operatorとして36年 間にわたって培ってきた空港運営ノウハウである。こ の強みをベースに、NAAおよびNAAグループ一体と なって、空港の計画段階から建設、空港の供用準備、 供用後の空港経営や環境対策等の包括的な空港マネ ジメントについて、1997年から、 タイ・台湾・エジプト・ ベトナム等へ経験豊かな空港専門家を派遣し、幅広い コンサルティングサービスを提供している。 また、 支援先の空港等から研修生の受け入れも実施 している。 海外空港支援は、航空ネットワークの拡充や、旺盛 な航空需要を創出することとなり、世界の航空市場全 体の発展につながる。また、 成田空港においても、 大規 模な公共インフラである空港の新規建設、拡張、マネ ジメントに携わることで得られる知識や経験をフィード バックすることで、その運用の質を高め、航空会社や利 用者へのサービス向上に結びつけている。 これまでの主な海外空港支援業務の実績は別表の とおりである。 (表3-3参照) 表3-3 海外空港支援業務実績 ①海外コンサルタント業務 業務概要 実施例 1 空港運営支援 台湾桃園国際空港および周辺地域における再開発マスタープランの基本設計 2 供用準備支援 ベトナム国ノイバイ国際空港第2ターミナル供用に向けた支援業務 3 スタッフトレーニング エジプト国ボルグ・エル・アラブ国際空港における空港管理支援およびスタッフトレーニング ②海外研修生受け入れ実績 (※現地派遣含む) 研 修 名 研修科目 ・諸施設、 商業施設の運用、 顧客満足 度向上活動 研 修 生 1 ベトナム国 「空港運営管理研修」 2 モンゴル国「新ウランバートル国際空港運営・維持管理能力 ・空港運営、 諸施設の運用 強化研修」 モンゴル民間航空庁他 13名 3 ベトナム国 「ターミナル施設維持管理研修」 ・空港運営、 諸設備の運用 ベトナム空港会社 8名 4 ベトナム国 「ターミナル移転に係る幹部研修」 ・空港運営、 諸施設、 ターミナル移転 ベトナム政府、ベトナム民間航空局、 ベトナム空港会社 8名 5 「マグレブ諸国内務省関係者の本邦招聘 (テロ対策分野) 」 ・空港保安施設、 諸施設の運用 ベトナム空港会社 4名 チュニジア、 モロッコから 各4名 4 完全民営化の早期実現に向け体制整備 ❶ 株式上場に向けて 1) 株式上場に向けたプロセス NAAは、早期の株式上場および完全民営化を目指 し、2006年10月に上場準備室を設置し、社外の専門 アドバイザーも加え、 準備を開始した。 株式上場に向けたプロセスとしては、法制整備やこ れに引き続き行われる諸手続きを経て上場することに なるが、上場時期については、首都圏における空港容 量拡充の推移や全国の空港経営のあり方に関する議 論も踏まえ、 国において決定される。 124 3.世界の空港の一員として 4.完全民営化の早期実現に向け体制整備 2)NAAの株式上場および完全民営化に向けた政府の 動き 2008年8月、NAAの完全民営化に必要な措置とし て、空港インフラへの規制のあり方に関する基本的な 方策を検討するため、内閣官房長官および国土交通 大臣のもとに 「空港インフラへの規制のあり方に関する 研究会」 が設置された。同年12月の最終報告書を受 けて、国土交通省は2009年3月、資本規制の導入を盛 り込んだ 「成田国際空港株式会社法の一部を改正す る法律案」 を第171回通常国会に提出したが、同年8 月、 衆議院解散による審議未了により廃案となった。 NA ❷ NAA の「信用力」裏付ける格付け 会社の事業基盤や経営状況は投資家が注目する重 要な点である。 「格付け」 は会社の信用力を判断するう えで欠かせない要素となっており、NAAは格付投資 情報センター(R&I) 、スタンダード&プアーズ (S&P) の日米大手格付会社2社から格付けを取得している。 格付けには、債務者の総合的な債務履行能力を表す 発行体格付け、個別の長期金融債務の支払い能力に 対する長期債務格付け、コマーシャル・ペーパー等の 短期金融債務の支払い能力に対する短期債務格付け がある。 NAAの発 行 体 格 付けは、R&Iが 「AA」 、S&Pが 「AA−」 となっている。 「AA」 は最上位の 「AAA」 に次 ぐカテゴリーで、 「信用力は極めて高く優れた要素があ る (R&I) 」 、 「債務を履行する能力は非常に高く最上位 の格付けとの差は小さい (S&P) 」 企業に与えられる (プ ラス記号またはマイナス記号は各カテゴリーの中での 相対的な強さを表す) 。これまでNAAの発行した一般 担保付普通社債と公団時代から引き継いだ財投機関 債の長期債務格付けについても同様の格付けを取得 している。また、短期債務格付けとして 「a−1+ (R&I) 」 「A−1+ (S&P) 」 と最上位の格付けが付与されてい る。 2014年2月には第15回社債 (一般担保付/発行日 2014年2月20日、償還日2024年2月20日) を発行し、 両社から同様の長期債務格付け (R&I「AA」 、S&P 「AA−」 ) を取得している。この格付けの理由として R&Iは、 「2010年に羽田空港が再国際化した影響が 一部に出ているようだが、首都圏の国際航空需要の大 半を担っていることに変わりはない。しかも首都圏の 航空需要は中長期的に増大していく可能性が高い。 政府の支援姿勢や支援能力が変化すれば影響を受け るものの、事業基盤の強さが変わらないなら、影響は軽 微だろう」 としている。 S&Pは、 「同社の業績は、 空港ター ミナルの利用客数の回復を背景に改善しており、同社 の主要な財務指標も緩やかながら改善基調が続くと みている」 としている。 第3章 3) 株式上場および完全民営化に向けた体制整備 株式上場による完全民営化の早期実現は、NAAグ ループの中期経営計画「イノベイティブ Narita 2015 ~選ばれる空港を目指して~」 (2013年度~ 2015 年度) の目標の1つであり、NAAでは経営基盤の強化 や、効率的で透明性のある企業活動を実践し、投資家 の信頼を得るための諸施策に取り組んでいる。 これまで、NAAグループ全体の総合力、経営管理 体制強化の一環として、事業セグメントや事業部制の 導入、リスクマネジメント体制整備、NAAグループ全 体での予算管理体制整備、内部監査などのコンプライ アンス体制整備を行い、財務報告に関する内部統制 への対応も進めてきた。 4 01 その後、NAAの株式上場および完全民営化につい ては、国土交通省が同年10月に設置した 「国土交通省 成長戦略会議」 において議論され、2010年5月に最 終報告 「国土交通省成長戦略」 が取りまとめられた。 また、2011年4月には 「規制・制度改革に係る方針」 が閣議決定され、 「成田国際空港株式会社について、 2010年5月に取りまとめられた国土交通省成長戦略 における 『これまで完全民営化の方向性が議論されて きた、成田国際空港株式会社の経営のあり方につい ては、今後、首都圏空港における容量拡充の推移、全 国の空港経営のあり方に関する議論も踏まえ、成田空 港のアジアにおけるハブ空港としての地位確立に向け て、民営化戦略、手順が検討されるべきである』 との方 針を踏まえ、 今後、 所要の検討を行う。 」 とされた。 NAAとしては、国における検討を見守りつつ、株式 上場に向けて準備を進めている。 A A IR PORT IT 2 R 5 プロモーション強化に向けて ❶ エアライン事業部の新設によるプロモーション強化 1) 「選ばれる空港」実現へ重要な役割 NAAグループ中期経営計画に掲げる 「選ばれる空 港づくり」 への取り組みの中で、成田空港の航空ネット ワークのさらなる拡充に資するべく、エアライン事業部 が取り組むべきことは、 航空会社のニーズを的確にとら え迅速に対応することおよびマーケティング・プロモー ションを強化し積極的にネットワークの拡大や需要喚 起を図ることである。具体的には、①マーケティングを 強化し、また航空会社と積極的にコミュニケーションを 図ることで情報を収集し、効果的な路線誘致活動を実 施すること、②安心して就航していただけるように円滑 に手続きを実施すること、③就航後もその路線を末永 く続けていただくために、また成田空港が航空会社とと もに発展していくために、航空会社、関係機関と協同し て積極的にさまざまな需要喚起を行っていくこと、が重 要と考えており、この方針に基づき、さまざまな施策を 実施することが 「選ばれる空港」 の実現につながるもの と考えている。 4.完全民営化の早期実現に向け体制整備 5.プロモーション強化に向けて 125
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