リージョナル・センター

REGIONAL CENTERS
リージョナル・センター
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リージョナル・センターとは
障害を持つということが、家族や社会から離れ、他とのつながりや自身の選択を拒絶された孤立した
施設などでの人生を意味していたのはそう遠い昔のことではありません。幸いにも今日その状況は改
善され、障害を持つ人達やその家族の話に耳を傾け、情報を提供し、サービスやサポートのコーディ
ネーションをするパートナーとしての機関が存在します。それがリージョナル・センターです。
1966年に発足したリージョナル・センターは、州政府との契約の下に活動する私立の非営利団体
です。地域別に分けられ、障害者やその家族、その地域のコミュニティーリーダーを含む役員によっ
て運営されています。カリフォルニア州内で計21のリージョナル・センターが存在し、総数10万
人以上の障害者とその家族にサービスを提供しています。リージョナル・センターの運営コンセプト
は福祉サービスとしては特殊といえるかもしれません。福祉に不可欠な思いやりの気持ちとプロとし
ての知識を、ビジネス慣習の利点と結び付け、障害者やその家族、地域社会、公的機関とのパートナ
ーシップの成立を追及・実現させています。
リージョナル・センターは医療サービスを提供するクリニックではなく、従来のカウンセリング・セ
ンターでもなく、単なる経済的援助機関でもありません。障害者の必要とするサービスの提供や計画
をコーディネートし、管理する機関と言えます。
対象となる人
リージョナル・センターは、州法で定められた発達障害者すなわち、知的障害者、脳性まひ、てんか
ん、自閉症、その他の知的障害のような症状を持つ人々すべてに年令にかかわらずサービスを提供し
ます。上記の診断がつかなくても、出産時に問題があり、発作を起こした、又はことばや歩行に問題
がある場合、おすわり・はいはい・歩行が遅い、他人に興味を示さない、又は心身に何等かの障害が
認められる乳幼児の場合もリージョナル・センターの対象となりえます。リサーチの結果、発達障害
の多くが未然に回避可能なことが明らかになっている現状をふまえ、リージョナル・センターではリ
スクを持つ新生児に対するアーリー・インターベンション(早期介入治療)や、発達障害児を生む可
能性が高いと危惧される妊婦に対する診断やカウンセリングも行なっています。乳幼児へのアーリ
ー・インターベンション・サービスでは、地域学校区や他のサービス提供者と協力の下でコーディネ
ーションにあたります。
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リージョナル・センター
対象となる障害者の基本的条件は、1)障害が顕著であり、2)その障害が18才未満までに発生してお
り、3)現在引き続いている、又は将来にわたって続くであろうと思われる場合となります。リージョナ
ル・センターは福祉機関の中の一つであり、センター独特の査定基準があります。センターの査定では知
的障害に重きを置いているので、純粋な学習障害(LD)のみ、又は言語障害のみを持ち、テストの結果知
的障害では全くないと判断された場合、受け入れを拒否される場合もあります。ただし子供の年令が低い
場合はテストが妥当でなかった場合があるので、一応対象となり得る場合が多く、一年後に再度査定が行
なわれたりします。知的障害は認められなくても、脳性まひ等で日常生活に顕著な支障をきたす程の身体
的障害がある場合も対象になる場合もあります。なお精神病の場合は精神衛生局の対象となります。
リージョナル・センターへの申請
最初の申請依頼の電話又は手紙を受けた後、同センターの担当専門家(多くの場合intake
coordinator)とのミーテイングが持たれます。それぞれのセンターによって多少異なりますが、担当
者が依頼主の家に出向き必要な情報をまず入手し、後日診断・評価(assessment)がなされる場合や、
障害者とその家族がセンターに行き、最初のミーテイングで本人と両親から現在までの必要な情報を聞
くと同時に、それぞれの専門家達による診断・評価(assessment)がなされる場合もあります。必要な
ら後日行なわれるテストが予定される場合もあります。多くの場合申請受理か否かはミーテイングの行
なわれたその日に決定されます。この申請に対する診断・評価は無料で行なわれます。障害の心配が
ある場合、医師による診断がついている場合は勿論のこと、ついていない場合でもリージョナル・セ
ンターに連絡を入れ、無料の診断・評価(assessment)を受け今後の対応を考えることです。
申請が受理された後、障害者本人とその家族はリージョナル・センターのクライアント(依頼人)又
はコンシューマー(顧客)と呼ばれる立場になり、それぞれに担当者(CSC=Consumer Service
Coordinator, case manager, counselor 等センターによって呼び名が違う)が決定されます。この担
当者は常時受け持ちクライアントに対してのサポート業務と同時に、年ごとにクライアントの受ける
べきサービスの新たな計画を作成し、そのコーデイネーションと管理を行ないます。この計画は
IPP(Individual Program Plan=個人別プログラム計画)と呼ばれるもので、向こう一年間の目標を定
め、必要なセラピー等を詳細に計画したもので年毎に親の意見を反映させ関係者により審議改正され
ていきます。リージョナル・センターの決定に不服がある場合は書面(ケース・ワーカーが用意して
くれます)にて聴聞会(fair hearing)に申し立てをすることができます。この件に関してはP98
を参照してください。
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サービス内容(注:それぞれのセンターで多少異なります)
リージョナル・センターの重要な仕事の中に、各クライアントの発達を促すに最も適すると思われる
サービスを調査・提案するというのがあります。例えば乳幼児のためのプログラムに保育園入園が望
ましいと思われその旨IPP(個人別プログラム計画)で決定された場合、リージョナル・センターは一
番適当と思われるプログラムを両親と保育園側との間に立って探します。一般的にクライアントがよ
く利用するサービスは下記のようなものです。
*乳幼児アーリー・インターベンション・プログラム(早期介入治療)
*公立校における特殊プログラム
*アフタースクール(放課後)プログラム
*成人障害者用日常生活技術習得プログラム(料理、金銭管理、身の回りの世話、裁縫、住まいの管
理、他人との付き合い、買い物、交通機関利用法等)
*成人障害者用職業訓練
*医療サービス
*言動マネージメント訓練
*夏季、週末レクリエーション・プログラム
*特殊器具購入
*送迎サービス
*在宅介護
これらのサービスの場合、直接のサービス提供者はそれぞれのコミュニティーに存在する他の該当機
関で、リージョナル・センターは調査、アレンジ、紹介、一部費用負担などを行ないます。センター
が直接提供するサービス内容は下記のようなものです。
*診断・評価(assessment)と個人別プログラム(IPP)作成
*担当者による常時サポート・システム(情報提供、調査業務、カウンセリング等)
*障害者用住まい探し
*一部医療費・特殊サービスの費用補助
(他の公的機関からの援助が受けられない場合のみ)
*Advocacy
(障害者の権利を守るための擁護・啓蒙・主張活動/親や専門家へのトレーニング、州・連邦議会
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リージョナル・センター
に対するロビー活動、個人的カウンセリング等)
*予防対策(ハイリスクの乳幼児や、障害者出産のリスクをもつ夫婦に対する予防策)
*レスピット・ケアー
(親に休養を与えることを目的とした親へのサポートで、医療行為のできる看護人の派遣、週末の
み等の短期間あずかり、ベビーシッター代一部負担など。注:金額や時間に制限があるので、事前
にセンター側の承諾が必要)
*その他のサポートプログラム
(発達障害児を持つ親のストレスや大変さを自らの経験により理解できる親達によるサポートシス
テム。成人障害者本人や、親、兄弟姉妹などへの個人別サポート、マルチメディア情報、教育材料、
トレーニングプログラム等。)
さて障害者本人が成人となり、自身の権利を知り、生き方を自分自身で決定できる状態に達した場合、
家族やリージョナル・センターのサポートの下で自立が可能になります。この場合リージョナル・セ
ンターは一生涯パートナーとして、住まいの決定、仕事の計画、技術取得トレーニング、セラピー、
コンサーバターシップの取得など、要所要所でヘルプを提供します。リージョナル・センターは障害
者が社会の中で融合し、選択権を持ち、できる限り一般社会の中で自立することに焦点をおいて活動
します。障害者が成年に達した後リージョナル・センターと本人との関わり合い方は多少変化してき
ます。以前のように毎年の連絡は無くなり、節目節目の必要時を除けば、お互いの連絡も2・3年に
1度のIPP作成時が基本となります。
IPP(Individual Program Plan = 個人別プログラム計画)
IPPとは、リージョナル・センターの担当者、障害者本人とその家族、本人又は家族が希望する関係者
を交え、1年に1回(本人の誕生日前後)向こう1年間のことを話し合い文書にまとめたものです。
3才∼18才までは年毎に家族の希望に合わせ、電話で簡単に済ませられるケースから、担当者が家
庭に出向く場合、センターで複数の専門家を交え詳細に練られるケースまで、障害の度合や本人の年
令などにより様々です。障害者本人が18才を過ぎた場合、多くは本人の希望にそって、ミーティン
グの場所や参加者が決められます。本人が家族と同居している場合は年毎の連絡は電話で済ませ、3
年に1度IPPのミーティングがもたれますが、ボーディングホーム(グループホーム)在住の場合はミ
ーティングも1年に1度行われます。IPPミーティングで考え方の中枢をなすのがPerson Centered
Palnning(本人の意思を中心とした計画)です。障害者本人の意思(本人が子供の場合は家族の意思)
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を尊重するということは、本人の言葉に耳を傾けるということ、例えば:
◆ 住む場所
◆ 日常の時間の過ごし方
◆ 誰と共に時間を過ごしたいか
◆ 将来への夢や希望
などに関しての障害者本人の選択を知り、それを誰がどのように手助けするかを具体的にIPPで話し合
います。家族や友人は各々どの様な援助が可能かを話し合い役割分担をし、リージョナル・センター
の担当者は福祉専門家の立場からサービス機関や学校・ワークショップ等の情報を提供します。チー
ムワークがIPP成功の鍵となります。
リージョナル・センター連絡リスト
カリフォルニア州内には全部で21のリージョナル・センターがあります。それぞれのリージョナ
ル・センターが独自の方法で運営されているので多少異なる部分(担当者の呼び名、実際にサービス
を受けられるまでにかかる日数、サービスの詳細内容等)があるので、本書の情報はあくまでも基本
と考え、詳細は所属リージョナル・センターから直接入手してください。
機関名・住所
サービス地域 Eastern Los Angeles Regional Center
*East Los Angeles, Alhambra,
North East L.A., Whittier
1000 S. Fremont, Los Angeles, CA 91803
(626)299-4700/FAX (626)281-1163
Frank D. Lanterman Regional Center
*Hollywood, Wilshire, Glendale, Foothill,
3440 Wilshire Blvd., #400, Los Angeles, CA 90010
Pasadena, Burbank, Central L.A.,
(213)383-1300/Fax (213)383-6526
(L.A. County)
From Pasadena (818)240-1576
*Bellflower, Harbor, Torrance, Long Beach,
Harbor Regional Center
21231 Hawthorne Blvd., Torrance, CA 90503
(310)540-1711/Fax (310)540-9538
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Health District (L.A. County)
リージョナル・センター
*San Bernardino County, Riverside County
Inland Regional Center
647 Brier Dr., San Bernardino CA 92408
(909)890-3000/Fax (909)890-3001
Mailing Address:
P. O. BOX 6127, San Bernardino, CA 92412-6127
*East Valley, San Fernado,
West Valley (LA County), Antelope Valley
North Los Angeles Regional Center
15400 Sherman Way, Suite 300, Van Nuys, CA 91406
(818)778-1900
San Gabriel/Pomona Regional Center
*El Monte, Pomona,
761 Corporate Center Dr., Pomona, CA 91768
Foothill Health Districts (L.A. County)
(909)620-7722/Fax (909)622-5123
South Central Los Angeles Regional Center
*Compton, San Antonio South, South East,
2160 W. Adams Blvd., Los Angeles, CA 90018-2096
South West Health District (L.A. County)
(213)734-1884/Fax (213)730-2286
Westside Regional Center
*Culver City, Santa Monica, Inglewood,
5901 Green Valley Circle, Suite 320, Culver City, CA 90230 West LA (LA County)
(310)337-1155/Fax (310)649-2033
Regional Center of Orange County
*Orange County
530 S. Main St., Orange, CA 92868
(714)973-1999/Fax (714)541-3021
San Diego Regional Center
*Imperial & San Diego Counties
4355 Ruffin Road, Suite #205, San Diego, CA 92123-1652
(619)576-2996/Fax (619)576-2873
Tri-Counties Regional Center
*San Luis Obispo,
5464 Carpinteria Ave., Suite #B,
Santa Barbara & Ventura Counties
Carpinteria, CA 93013-1475
(805)684-1204/Fax (805)684-3034
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*Amador, Calareas, San Juaquin,
Valley Mountain Regional Center
7210 Murray Drive, Stockton, CA 95210-3342
Stanislaus & Toulumne Counties
Mailing Address: P.O.Box 69220, Stockton, CA 95269-2290
(209)473-0951/Fax (209)473-0256
*Monterey, Santa Clara,
San Andreas Regional Center
300 Orchard City Dr., Suite #170, Campbell, CA 95002
Santa Cruz & San Benito Counties
Mailing Address: P.O.Box 50002, San Jose, CA 95150-0002
(408)374-9960/Fax (408)376-0586
*Tulare, Kings, Fresno,
Central Valley Regional Center
5168 N. Blythe Ave., Fresno, CA 93722-0580
Madera Mariposa & Merced Counties
(209)276-4300/Fax (209)276-4450
*Marin, San Francisco &
Golden Gate Regional Center
120 Howard Street, 3rd Floor, San Francisco, CA 94105-1696
San Mateo Counties
(415)546-9222/Fax (415)546-9203
*Kern, Inyo, & Mono Counties
Kern Regional Center
3200 N. Sillect Ave., Bakersfield, CA 93308
(805)327-8531, (800)479-9899/Fax (805)324-5060
*Alameda & Contra Costa Counties
Regional Center of The East Bay
1212 Broadway, Oakland, CA 94612
(510)451-7232/Fax (510)-465-0177
*Napa, Solano & Sonoma Counties
North Bay Regional Center
10 Executive Court, Suite A, Napa, CA 94558
(707)256-1100/Fax (707)256-1112
Alta California Regional Center
*Alpine, Colusa, El Dorado, Nevada,
2031 Howe Ave., Suite 100, Sacramento, CA 95825-0196
Placer, Sacramento, Sierra, Sutter,
(916)924-0400/Fax (916)929-1036
Yolo & Yuba Counties
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リージョナル・センター
Far Northern Regional Center
*Butte, Glenn, Lassen, Modcc, Plumas, Shasta,
P.O.Box 492618, Redding, CA 96049-2418
Siskiyou, Tehama & Trinity Counties
(916)222-4791/Fax: Redding (916)222-8908, Chico (916)865-1501
Redwood Coast Regional Center
*Del Norte, Humboldt, Lake & Mendocino
808 “E” Street
Eureka, CA 95501-1889
(707)445-0893/Fax (707)444-3409
rrrrr
参考資料:
“Regional Centers, Partners in Lifelong Support”
Eastern Los Angeles, Frank D. Lanterman, Harbor, Inland, San Gabriel/Pomona, South
Central Los Angeles, Tri-Counties Regional Centers 1996
“THE FAMILY GUIDE TO SERVICES”
Harbor Developmental Disabilities Foundation
“An Introduction”
Frank D. Lanterman Regional Center
私が学んだこと
リージョナルセンターの一人のサービス
コーディネーターが抱えるクライアントの数は 80 ∼
120人もいるので、親が積極的に働きかけないと年に1度
のIPP以外忘れられたような存在になってしまう可能性も
あります。クリスマスカードに子供の写真を同封して送る
のもいいかもしれません。また、IEPミーティングに来て
アドボケートしてくれたり、希望していたサービスが
取れた時など、簡単な「Thank you」カードで感謝の
気持ちを表わすのも大事なことだと
思います。子供が単なる書類上の
クライアントから生きた一人の
人間に変わるかもしれません。
(M)
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私が学んだこと
子供に必要なサービスを一番よく知っている
のは親。リージョナル・センターのコーディネー
ターには子供のことをよーく理解してもらい、親が
中心になってコーディネーターを働かせる位の
つもりでいること。リージョナル・
センターが何でもやってくれる
とは決して思わないこと。
(M)
私が学んだこと
障害を持つ子の子育ては“療育”と言い、健常児
の子育ては“養育・教育”などと、ごく自然に分け
て言われているようですが、どちらも育児です。
この子は障害があるからとか、普通のわがままを
障害のせいにしてしまうとか、単なる甘やかしを
してしまわないように、常に全般的な子どもの成長、
発達を念頭においた上で、療育を含めた育児を
心がけていきたいものです。(H)
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Early Intervention Services
乳幼児早期介入サービス(0才∼3才)
アーリー・インターベンション・サービス
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アーリー・インターベンションとは?
アーリー・インターベンション・サービスとは、IDEA(障害者教育法)のH項目に提唱されるカリフ
ォルニア州幼児早期教育プログラム(アーリースタート・プログラム)の一環として、障害を持って
生まれた3才までの乳幼児もしくは将来障害を持つリスクの高い新生児、そしてその家族のために提
供される福祉サービスの総称です。当事者である家族に対して、総合的観点から子供の発達を助ける
ための各種サービス(医療、セラピー、教育、経済、精神的サポート等)が提供されます。
対象児とは?
誕生から36ヵ月までの乳幼児で、検査などの診断の結果下記の5項目の少なくとも一つ以上に遅れ
が認められる場合:
*認知能力の発達
*運動・身体的発達(視覚・聴覚を含む)
*言葉の発達
*社会性・精神性の発達
*環境適応能力
発達遅滞とは、月齢相応の平均的発達に比べ顕著な遅れが認められる場合をさします。時には検査時
には顕著な問題が見られなくても、将来障害の出る可能性が高いと判断される場合も含まれます。い
ずれにしても専門の医師による診断が必要になります。出産時の問題、例えば低体重児、未熟児、仮
死産児、又は出産後新生児期のけいれん発作など医学的見地から将来の発達に心配がある場合もこの
プログラムの対象となります。診断を受けたら直ちにリージョナル・センター又は地域の教育機関に
その旨連絡をする必要があります。
サービス内容
該当機関は連絡を受けてから45日以内(注:担当機関によって多少異なります)に検査・評価を実施
し、必要なサービスを検討することになります。同時に両親を加えたスタッフによりIndividualized
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アーリー・インターベンション
Family Service Plan (IFSP) (各家族別サービス計画)が作成されます。リージョナル・センターや
地域の教育機関から提供されるアーリー・インターベンション・サービスは無料です。加えてこれら
のサービスが重複しないように、又子供の生活する自然な環境のなかで提供されるよう調整される必
要があります。これらのサービスとは:
*発達のモニターとサービスのコーディネーション
子供の発達進行状況を評価し、それにそって必要なセラピーやサービスを検討
*オキュペーショナル・セラピー(作業療法)
神経系知覚運動とその発達障害、主に自身の身の回りのこと、知覚発育、食事、遊びなどに影響が
ある場合の治療
*フィジカル・セラピー(理学療法)
全体的神経系筋障害(運動障害)に対する療法
*スピーチ・セラピー(言語療法)
子供のニーズ・年令・能力に見合った会話、咀嚼等の口の運動、食事能力の指導
*乳児発育プログラム
家庭又はセンターにおける教育プログラムで、認識・知覚・言語・運動・遊戯などの発育を刺激す
る内容のもの
*医療サービス
聴覚・視覚・栄養・特別看護サービスを含む
*ファミリー・サービス
レスピットケアー、サポートグループ、カウンセリング、精神的ケアー、行動療法、指導、トレー
ニング等を含む
*トランジション計画(進学等の変換期の対処計画)
3才でプリスクール(保育園)または他のサービスに移行する際の支援業務
*その他
送迎サービスや技術的支援助業務を含む
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関係する機関
カリフォルニア州ではDepartment Of Developmental Services(発達・発育関係サービス局)と
California Department of Education(カリフォルニア教育局)
が、
この乳幼児早期教育のリーダーシッ
プを取り、関連サービスを提供する責任を負っています。さてこのプログラムの提供をスムーズに遂
行させるために州を32の区域に分けーこれをLocal Interagency Coordination Areas (LICAs) と称
しますー、区域別に該当機関が実際の家族とサービス提供者間のコーディネーションに当たっていま
す。例えばランタマン・リージョナル・センターはロサンジェルス郡に7つあるLICAsの一つを担当
している該当機関ということになります。カリフォルニアではリージョナル・センターと地域教育機
関両方の協力でアーリー・インターベンションのサービスが提供されています。それらの機関とは:
■地域教育機関(学校区)
視覚、聴覚、重度の整形外科的障害のいずれか、もしくはそれらの二つ以上に障害がある場合。サ
ービスは子供の家庭かセンターで提供され、時には教育機関とリージョナル・センターの両方から
同時にサービスを受けるケースもあります。
■リージョナル・センター
リージョナル・センターは、専門家からの診断がなされた障害児、及び様々な医学的理由により将来
発達に問題が起きる可能性のある乳幼児にアーリー・インターベンション・サービスを提供します。
注)各該当リージョナル・センターのリストは本書P14を参照してください。
■CCS (California Children's Services)
カリフォルニア・チルドレンズ・サービス
19720 E. Arrow Highway
Covina, CA 91724/Tel(818)858-2100 (一般情報)
診断の内容によってはCCSから医療費の援助が受けられます。CCSは検査、特殊医療器具、ケアー、
セラピーなどを提供します。CCS医療セラピー部はオキュペーショナル・セラピー、フィジカル・
セラピーが必要と判断された子供に無料でセラピーを提供します。時にはCCSとMEDI-CAL (医
療保護保険)の両方から医療費の援助を受けるケースや、医療保険でカバーできない部分をCCSか
らの援助に頼るというケースもあります。 CCSに関してはP76を参照してください。
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アーリー・インターベンション
■Los Angeles County Department Of Health Services
Alcohol And Drug Program Administration
ロサンジェルス郡衛生局/アルコール・麻薬プログラム管理部
714 W. Olympic Blvd., 10th Floor
Los Angeles, CA 90015/Tel(213)744-6516
■Department Of Mental Health
精神衛生局
Los Angeles County Mental Health
2415 W. 6th St.
Los Angeles, CA 90057/Tel(213)738-4601
■Department of Social Services
社会福祉局
Los Angeles County Department of Public Social Services
12860 Crossroad Parkway South
City of Industry, CA 91746/Tel (310)908-8380
Los Angeles County Department of
Children And Family Services
425 Shatto Place
Los Angeles, CA 90020
Tel (213)351-5602
私が学んだこと
子供がまだ小さく診断がはっきりつかず、
専門家の一言一言で喜んだり落ち込んだりの
繰り返し。結局親が勉強し、情報を集め、
子供を正しく見つめ、どういう方向に行く
べきか検討・判断しつつ前に
進んでいくしかないのだと
分かりました。
(K)
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私が学んだこと
早期療育には賛否両論あり、身近な人達からも心配し過ぎ
とか、そのうち普通にできるようになるとか、親の神経質さ
を咎められたりして、障害がはっきり分からない場合は親は大
変な迷いの中で日々を送ったりしますが、毎日接している
親が一番子供のことが良く見えています。
希望的観測に頼って現実から目を
そむけないで…。(D)
私が学んだこと
アーリー・インターベンションとは早期に
インターベイン(介入)するという、障害を
後々発生させないための積極的療育のこと
です。もし何かをする必要性を感じたら、脳の
吸収率の最も高い乳幼児期に適切な療育を
探し、問題を未然に防ぐまたは最小限に
抑えることを勧めます。(F)
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学校について
■カリフォルニア州特殊教育事情
■照会(リファーラル)からIEPまで
■統合教育
■親の権利と義務
■特殊教育関係の法律と訴訟
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■ カリフォルニア州特殊教育事情
カリフォルニア州では特別なニーズを持った子供(Individuals With Excepti-onal Needs/IWEN)
のための教育として、次の6つのカテゴリーをもうけています。
1) 軽度障害(Mild Disabilities)
学習障害 (Learning Disability/LD)
行動・情緒障害 (Behavior Disorders/Emotional Disturbance)
軽度精神遅滞 (Mild Mental Retardation)
2) 重度障害(Severe Disabilities)
重度情緒障害(Severe Emotional Disturbance/SED)
中度・重度精神遅滞(Moderate/Severe Mental Retardation
重複障害 (Multiple Disabilities)
3) コミュニケーション障害(Communication Disorders)
聴覚障害 (Hearing Impairment=Deaf/Hard-of-Hearing)
スピーチ障害 (Speech Impairment)
言語障害 (Language Impairment)
4) 視覚障害(Visual Impairment)
全盲またはそれに近い視機能(盲)(Blindness)
ロービジョン(Low Vision)
5) 身体・健康障害(Physical or Health Impairments/PH)
身体障害 (Physical Impairment)
健康障害 (Health Impairment)
6) ギフティッド(Gifted & Talented/GATE)
高知能 (Gifted)
特殊才能 (Talented)
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学校/カリフォルニア特殊教育事情
1)軽度障害
「学習障害」とは通常の知能を持っているのにも関わらず、それに見合った機能が聞く、考える、
話す、読む、書く、綴る、計算する能力のうちの1つ以上において著しく劣っている障害をさします。
知覚障害(Perceptual disabilities)、脳の外傷(Traumatic Brain Injury/TBI)、微細脳機能不全
(Minimal Brain Dysfunction)、識字障害(Dyslexia)、発達性失語症(Developmental Aphasia)を含
み、注意欠陥多動障害(Attention Deficit Hyperactivity Disorder/ADHD)生徒の約8割方をも
含みます。しかし、視覚・聴覚・運動の障害や精神遅滞、情緒障害、環境的要因(貧困、文化・言語
の違い等)の結果として学習に問題を来している場合は含みません。原因は脳の損傷とも中枢神経シ
ステムの損傷とも言われますが、実際に医師によって損傷を認められない場合でも学習障害とされる
こともあり、定義はやや不明確です。また、指導方法が類似していることから、カリフォルニア州の
特殊教育では軽度の精神遅滞と行動・情緒障害を含めた一つの「軽度障害」というカテゴリーで、一
般的にメインストリーミング(Mainstreaming)の教育を受けています。
メインストリーミングとは、普通学校の中に設置されているリソースルーム (Resource Room)と
いうパートタイム用の特殊学級に出席し週に何時間か一定の時間、小グループの指導を受ける以外、
普通学級で特に補助を受けずに障害のない他の生徒たちと一緒に授業を受けることを言います。学習
障害児のためにはリソースルームでの特別指導の他にも、生徒の必要に応じてスピーチセラピー、ノ
ートを取るためのエイド(アシスタント)、チューター、テストを口頭で受けたり、時間を延長しても
らう等の特別なサービスを受けることも学校(大学も含む)によっては可能です。いくらかのサポー
トを受けることによって学習障害児は一般の生徒と全く同じように生活することが可能と考えられて
おり、実際に有名企業の社長や学者、俳優等でも自分は学習障害を持っていると宣言した人がアメリ
カにはかなりいます。又、軽度精神遅滞の生徒についても、学習の遅れについてのサポートが必要な
だけで、社交性やコミュニケーションについてはほとんど普通の発達をすると言われます。行動・情
緒障害の子供も、普通学級で行動修正、又は投薬を受けながらほぼ普通に学習することができます。
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2)重度障害
重度障害とは、主に中度から重度の精神遅滞と、他の障害との重複障害をさします。重度情緒障害
も含みます。視覚および聴覚障害のような重複障害はこのカテゴリーには含まれません。
まず精神遅滞は、日常生活のための機能に重大な制約をもつものとして定義されています。つまり、
「明らかに平均以下の知的機能」と「コミュニケーション、身辺自立、家庭生活、社会的技能、地域社
会の利用、自身規律、健康と安全、実用的な学業科目、余暇、労働といった適応行動のうち二つ以上
の領域で障害が見られること」の二つの条件を満たす者であるというのが最新のAAMR(アメリカ
精神遅滞学会)による定義です。
次に行動・情緒障害とは、長期間かなりの程度において(1)学習が不可能、(2)人間関係を維持
することが不可能、(3)不適切な行動や感情、(4)ひどい落ち込みや憂鬱、(5)問題に関する生理
的な症状や恐怖感、(6)精神分裂症といった状態を指します。タイプとしては外に向かって問題行動
を起こすタイプ(多動、破壊的、犯罪的行動等)と内向的で周りの者に気づかれにくいタイプ(憂鬱、
引きこもり、病的嫌悪・恐怖症、拒食症、過食症、かん黙症等)の二つに分かれます。また、自閉症
(Autism)については歴史的には健康障害とされたり精神遅滞ともされてきましたが、1990年の連
邦法(IDEA)によって独自のカテゴリーが認められるようになりました。ただ、カリフォルニア
州にはまだ独自のカテゴリーがなく、教育法が似ているために軽度の場合は1)の行動・情緒障害、
それ以外は2)の重度情緒障害として、特殊教育のサービスを受けるようになっています。
重度障害児の教育のオプションとしては、普通学級でのフルインクルージョン(Full-Inclusion/必要
なサポートを受けながら普通学級で学ぶこと)、普通学校内の特殊学級、特殊学校等があります。とり
わけチャレンジングとされる重度情緒障害児については、学校区内の公立学校で適切なプログラムが
ないとIEPで判断され、学校区の全額負担で少人数制の私立学校への通学が認められるケースがか
なりあるようです。
連邦法(IDEA)では障害の程度に関わらず普通の環境で教育を受ける権利(LRE/Least
Restrictive Environment)が保障されています。が、同時に障害児各自のニーズに合わせた最も適切
な公教育も保障されています(FAPE/Free, Appropriate Public Education)。普通学級で社会性を
身につけることが適切である子供には統合教育が適切でしょう。しかし個人や小グループでタスク・アナ
リシス(Task Analysis/服の着替えや料理等身辺自立のための基本的なスキルを細かく順序立てて10
ー20位のタスクに分け、段階毎に繰り返し練習する方法)や、CBI(Community-based Instruction/
教室内で学ぶのが難しい、買い物や公共交通機関の使用等、日常生活のスキルを実際にコミュニティ
に出て学ぶ方法)の指導を受けた方が適当である子供の場合は特殊学級(特殊学校)の方が適切かも
28
学校/カリフォルニア特殊教育事情
しれません。IEPでの話し合いをもとに親が正しい判断をする必要があります。そして、それ以外
にコミュニケーションにも障害があればSLP(Speech & Language Pathologist)、それに身体の自
由にも制限のある場合にはPT(Physical Therapy)やOT(Occupational Therapy)等の訓練を受け
たり、手話等の通訳、コンピューター等も含めたコミュニケーションの為の様々な器具(Assistive
Technology)やヘルパー等を必要に応じて学校に要求することも可能です。
3)コミュニケーション障害
コミュニケーションの三つの手段、すなわち言語の受信(聴覚)と表現(スピーチ)
、そして概念(言
語)の障害を包括したカテゴリーです。
聴覚障害には聾(Deaf)と難聴(Hard of Hearing)の二種類ありますが、難聴は補聴器(Hearing Aids)
の使用により音の情報をプロセスできる状態を指します。
スピーチ障害は声(Voice)が喉の病気等の原因で出せない、発音(Articulation)が難聴で聞き取ること
ができないため等のせいで正確に出せない、またどもり(Stuttering)等がひどくわかりやすく話せない、
といった状態を指します。
そして、言語障害は文法的な形式(Form)、内容(Content)、使用法(Use)のいずれかに問題がある場合を
いい、失語症(Aphasia)のような、脳の外傷や病気のために傷ついた中央神経システムが原因の障害です。
文化的な要因、地方出身であったり英語が第二の言語であるために言語に問題がある場合は含まれません。
コミュニケーション障害は軽度障害に次いで多いカテゴリーです。リソースルームと同様、大抵の学
校には専門家がいて(Speech and Language Pathologist/SLP、Reading Specialist等) 週に何時
間と決められた枠内に必要な生徒だけ教室移動をして個人、又は小グループで指導を受けますが、それ
以外の場合は普通学級で授業を受けるメインストリーミング(Mainstreaming)が一般的です。その
場合、必要であれば手話の通訳者、ノートを取るためのエイド等のサービスについてもつけてもらうよ
うに要求することができます。コミュニケーションに障害を持っていても重複障害でなければ学力的に
問題はないはずなのですが、読み書きが遅れがちですのでチューターをつけてもらうのも一案です。コ
ンピューター等テクノロジーの補助もとても役に立つので、必要であればサービスとして要求すること
も考えられます。また、どうしてもクラスの中で孤立してしまいがちなので意識して社交性を身につけ
るよう助けてやらねばなりませんし、或いはカウンセリングが必要になることもあるかもしれません。
聴覚障害を持つ高校生のためのマグネット・プログラムがCal State Northridgeの付属高校に、又ニ
ューヨーク州ロチェスターにあるNational Technical Institute for the Deaf(NTID)では毎年夏に一週
間、高校生の職業・進学決定のためのオリエンテーション的なプログラムがあります。又、Deafの学生の
29
ための総合国立大学・大学院でワシントンDCにあるGallaudet UniversityとNTIDだけで計約2900
人、Seattle Community College、California State University Northridge、St. Paul Technical Institute、
University of Tennessee Consortiumの四校だけで計662人の聴覚障害を持つ学生が学んでいます。
4)視覚障害
大きく二つのグループに分けられます。ロービジョン(低視力)とは障害のために日常生活に支障
を来すこともありうるが、一応見ることにより学習のできる状態を指します。そして、全盲またはそ
れに近い視機能(盲)とは視力や見える範囲に重度の限界がある場合を指します。
全盲またはそれに近い視機能(盲)は、全く何も見えず光の認識もない全盲(Totally Blind)や、光
の認識だけはある状態も勿論含みますが、法的な視覚障害(Legally Blind)と分類される場合、眼鏡等
で矯正をして良い方の目の視力が20/200以下であるか、又は視野(見える範囲)が20度未満
である場合を指しています。つまり、一般的には盲というと全盲のことを指しているように思われが
ちですが、アメリカ国内では法的に認められることにより、全盲ではなくても盲としてサービスを受
けることが可能なわけです。
視覚障害を持つ生徒のための教育のプログラムは、伝統的な盲の生徒のための寄宿舎学校、週に何度
か訪れて指導してくれる移動教師(Itinerant Teacher/ Vision Specialist)等のサポートを受けながらの
普通学校で学ぶFull-Inclusion、或いは重複障害の場合等特殊学校、特殊学級等といった選択肢があり
ます。
ロービジョンの場合には眼鏡等を使って矯正したり、大きな文字のプリントをもらったりする等に
よりかなりの障害を克服することが可能ですが、全盲またはそれに近い視機能の場合には点字
(Braille)、声の出るコンピューター(Voice Activated Computer)、オーディオ・テープ等の使用・習
得が必要です。又、他にも抽象的な事物や手で触れられない大きなもの(山やビル等)の認識が困難
であることから認識障害や言語障害を起こしやすいので、リソースルームやSLP(Speech &
Language Pathologist)等で指導を受けたり、方向感覚(Orientation)や移動(Mobility/ある所から
別の所へ移る時に安全にかつ効率よく動く能力)にも限界があるので歩行訓練士(OMS/
Orientation & Mobility Specialist)の指導を受けることも必要です。
視覚障害を持つ生徒の半数以上は重複障害と言われていますが、重複障害を持たない視覚障害の生
徒のほとんどは普通かそれ以上の学力をもっているとも言われています。その場合もノートを取って
もらったり、教科書やテストを読んでくれるサポート等のサービスを受けながら、高等教育への進学
が可能です。
30
学校/カリフォルニア特殊教育事情
5)身体・健康障害
カテゴリー内に更に細かいサブカテゴリーが無数にあるのが、身体・健康障害です。まず健康障害の
方から見てみますと、現在特に増えつつあるHIV感染、子供たちの学校長期欠席の理由のナンバーワン
であるぜんそく(Asthma)、そして心臓病(Heart conditions)、結核(Tuberculosis)、リューマチ熱
(Rheumatic Fever)、腎炎(Nephritis)、鎌形赤血球性貧血(Sickle Cell Anemia)、血友病(Hemophilia)、鉛
中毒(Lead Poisoning)、白血病(Leukemia)、糖尿病(Diabetes)等、慢性の病気と病弱な状態が含まれます。
そして身体障害という項目は更に神経性のもの(Neurological Impairments)と神経筋肉性のもの
(Neuromuscular Impairments)の二種類に別れます。神経性はこのカテゴリー中最大のサブカテゴリーで
と、てんかん(Convulsive Disorder/Epilepsy)、それに二分脊椎(Spina
ある脳性麻痺(Cerebral Palsy/CP)
Bifida)や脊髄の外傷(Spinal Cord Injury)、脳の外傷(Traumatic Brain Injury/TBI)が含まれます。
更に、神経筋肉性の身体障害としては、最近では予防接種が一般化したために数が減ったとされるポリオ
(Polio)、その他、筋ジストロフィー(Muscular Dystrophy)、多発性硬化症(Multiple Sclerosis)等があります。
身体・健康障害の生徒もAdapted P.E.という特別の体育のクラス等の関連サービスや、移動する上で
の配慮を受けながら普通の学級で学ぶことが可能で、社交性や通常の学力を身につけるためにもそれが
一番望ましいと考えられています。又、通常の知能を持った身体・健康障害児には、高等教育への進学
を可能とし将来の経済的自立を促すためにも普通学級で学ぶことが重要視されてきています。但し、重
度の重複障害のある場合には特殊学級や特殊学校、さらに体力的に登校が難しい時には学校区から家や
病院に教師を派遣してもらって学習をすること(Home Teaching/Hospital Teaching)も可能です。
6)ギフテッド
知性、言語、芸術、芸能、スポーツ、指導力等のうち一つ以上の分野に極めて優れている子供たちの
ためのカテゴリーですが、連邦法によって強制はされていないので、運営は各学校区の判断に任され
ています。これらの子供たちも特別なサポートなしには能力を維持・開発することが難しいと言われ
ています。又、国の未来を担う科学、芸術等の発展、そして指導者養成のためにも、特殊教育が必要
という理論に基づき様々なサービス、プログラム、教育技法等が研究されています。
マグネットスクールと呼ばれる公立の特殊学校等にある科学や芸術等の特別強化プログラム、普通
学校内にあるオナーズ(Honors Sections)と呼ばれるパートタイムの特殊学級、学年の飛び級や高
校生のうちから大学で受講しクレジットをもらうシステム等が代表的なプログラムです。1)から5)
の障害と重複してこれらのプログラムを受けることももちろん可能で、実際に行われています。
31
ま と め
このように特殊教育のカテゴリーは連邦政府(全部で13)と州のレベル(カリフォルニア州では
上記の6つ)とで違い、またカテゴリーの定義も連邦政府、各州、各学校区、擁護団体等によるもの
と様々です。又精神遅滞の定義に見られるように度々変わる変動的なものでもあります。
他にもカリフォルニアならではの特殊教育関連のプログラムとしては、バイリンガル教育がありま
す。これは、1974年にサンフランシスコに住む中国系アメリカ人が、母国語で教育を受けられな
いことは憲法第一条、機会平等の原理に反すると告訴し勝ち得た権利です (Lau v. Nicholas)。現在1
つの学校区に25人以上英語以外の言語が母国語の子供がいた場合、親はバイリンガル教育を要求す
ることができます。ヒスパニック系の軽度障害の生徒のうち、かなりの数が特殊学級からバイリンガ
ルのクラスへ移ったと言われています。
また、カリフォルニアにはヒスパニック系以外にも、アフリカ系(黒人)、アジア系、先住民族(イ
ンディアン)と非白人のアメリカ人が数多く住んでおり、2005年頃までには州内の公立学校の生徒
の50パーセント以上が非白人で占められるという予測がなされています。これらマイノリティの生徒
が白人生徒との比率で特殊学級内に非常に高くなっているのは、公立学校教員の大部分を占める女性白
人教師たちの、マイノリティの子供たちへの偏見や誤解から間違って障害を持っていると判断されるケ
ースや、母国の文化的な標準に合わない指導や、カリキュラムのせいで学習が遅滞するケースも少なく
ないためと言われています。そのため、現在カリフォルニア州立大学の特殊教育課程では異言語・異文
化をもつ生徒たちを理解するためのコースが必須となっています。又、査定(Assessment)の際に過去
使用されていた文化的に偏ったテストであるといわれるIQテストの使用を禁止し、マイノリティの生
徒には母国語で、母国の文化の標準に合った査定を受けられる等の対策も取られています。
32
学校/リファーラルからIEPまで
■ リファーラルからIEPまで
IEP、IFSP、ITPとは?
連邦法により、特殊教育と関連サービスを受ける学齢期の子供(3歳から22歳まで)にはIEP
(Individualized Educational Program、個別教育計画)
、それ以前の子供(0歳から2歳まで)には
IFSP(Individualized Family Service Plan、個別家族サービス計画)
、そして学校を終える時期
の近い子供には(16歳以前から、又は適当な場合は14歳以前から22歳まで)ITP(Individualized
Transition Plan、個別トランジション計画)が親と学校等のスタッフらとのミーティングの後、書面
で書かれることが定められています。3種類の個別計画の相違点は、IEPでは学校がほとんど主にサ
ービスを行うのに対し、IFSPではサービス・コーディネイトをするリージョナルセンターと実際の
サービスを行う医師、看護婦、各種セラピスト、チャイルド・ケア、それに親等のチームで行われるこ
と、そしてITPではサービスの中心は学校ですが各種関連サービス(リハビリテーション・カウンセ
ラー、ソーシャル・ワーカー、ジョブコーチ等)が多様化し、リージョナルセンター等のエージェンシ
ーとの協力体制で進められることにあります。また、ITPはIEPの一部として含まれる場合もありま
す。このように年齢、サービス提供者等に違いが見られる以外、三つとも基本的に大体同じです。IEP、
IFSPはまず実際のサービスへの照会から始まります。なお、IPP(Individualized Program
Plan) もよく似たプログラムですが、学校ではなくリージョナルセンターでのプログラムです。
リファーラル
特殊教育サービスを受けられるよう推薦されることをリファーラル (Referral)といいます。学齢期以前
の子供たちをリファーラルするのは大抵の場合、子供の発達に遅れを見つけた医師、看護婦、プリスク
ールやチャイルド・ケアの教師、リージョナルセンター等ソーシャル・サービス・エージェンシー、そ
して親です。それと違って、学齢期に入ってからリファーラルをされる場合の多くは、学習、又は行動
に問題の見られる軽度障害の子供が対象で、普通学級の教師がまず各学校にあるスチューデント・スタ
ディ・チーム(Student Study Team、略してSST)にリファーラルをします。このチームは大抵、校
長、カウンセラー、スクール・サイコロジスト、特殊教育の教師らで構成されており、リファーラルされ
た生徒に対してアセスメントが必要かどうかを検討し、決定します。必要であると決定された場合は、
まず親に書面で通知されます。アセスメントを実際に行う前に、親の同意が書面で必要とされています。
33
アセスメント
学齢期の子供のアセスメント (Assessment、査定) はまず学校で行われます。その場合、スクー
ル・サイコロジストがチームのリーダーとなり、フォーマルなテスト(学力、視力、聴力等)とイン
フォーマルなテスト(教室内での行動観察記録やインタビュー等)を組み合わせた複数のテストが行
われます。その時英語を第二言語とする子供たちは、第一言語(母国語)で、母国の文化を標準とし
文化的偏見のないアセスメントを受ける権利を、連邦法(PL94−142)は保障しています。ま
た、学校で行われたアセスメントの結果に異議がある場合等、他の機関(リージョナルセンター等)
で再度受けることも可能です。
リージョナルセンターのアセスメントの場合、まずリファーラルをされるとインテイク・コーディ
ネーター (Intake Coordinator) が子供の医師や学校からの情報を集めた後、(1) 知能、(2) 学力、
(3)言語能力、(4) 運動能力、(5)適応機能、(6) 行動・感情、の六分野のうち障害の見られそうな分野に
ついて様々なテストを行い、やはりサイコロジスト、医師、アセスメント・コーディネーター等のチ
ームでサービスを受けるに値するかどうかを検討し、書面で結果を親に報告します。結果に異議があ
る場合再審理を要求することができます。なお、リファーラルからアセスメント終了までのタイムラ
インは、リージョナルセンターの場合は120日(緊急の場合は30日)と定められています。
判 定
アセスメントの結果は要約され記録に残ります。この記録の秘密保管は保障されており、担任教師でも
見ることは難しいと言われています。但し、親が記録を入手することは可能で、
「IEPの準備のために
必要なので書面で(必要な場合親の母国語で)コピーが一部ほしい」旨学校に要求し、手に入れることが
できます。
アセスメントの結果子供に障害があると判定 (Identification) された場合、その障害のカテゴリーもこ
の時点で決められます (Classification)。同時に、どのような特殊教育関連サービス(Related Services、
各種セラピー、補助機器等)が子供にとって必要なのか、そしてプレイスメント(Placement、どの学
校・学級に入るのか)がSST等の専門家チームにより検討されます (Analysis of Services)。但し、こ
こでも決定権は親にあります。又、LRE (Least Restrictive Environment、最も制約の少ない環境) と
FAPE (Free Appropriate Public Education 、無料で適切な公教育)が連邦法(PL94−142)
で保障されていますので、異議や要求のある場合学校年度中ならいつでもIEPミーティングを要求し、
ミーティングの場で主張することができます。
34
学校/リファーラルからIEPまで
IEPミーティング
障害が判定された後は、各生徒のためにIEPミーティングが少なくとも毎年一回開かれることが
連邦法により定められています。カリフォルニア州では初めてのアセスメントへの同意書に親がサイ
ンした後50日以内に、IEPミーティングを開くことが定められています。
ミーティングの場では、年間目標 (Annual Goals) と短期達成目標 (Objectives) が教師の手により
書面に書き込まれます。そして目標達成のために必要な教育法と関連サービス(各種セラピー、リソ
ースルーム等)も記されます。ここで親がすぐにサインをしてしまう必要はなく、問題があれば再度
ミーティングを要求することができます。親のサインなしに何事も決定されませんが、同時に特殊教
育サービスを受け始めることもできません。また、親が決定に同意できない場合、アピール
(Appeal/上訴)することもできます。
ミーティングには、SST(その中にはIEPで決められた事項を承認する権限を持つ校長、また
は学校区の役職者が必ず参加していなければなりません)と親、子供の担当教師やセラピスト、そし
て適当な場合は子供(本人)、それに親の友人、リージョナルセンターのサービス・コーディネーター、
弁護士等親の擁護者となる誰もが参加することができます(但し弁護士を参加させる時には前もって
学校側に知らせねばなりません)。また、学校側がミーティングをテープに録音したい場合、親の許可
が必要ですが、親がミーティングをテープで録音する場合も、24時間以上前に学校側に知らせなく
てはなりません。親の言語が英語でない場合、前もって学校に通訳を無料で提供してもらうよう要求
する権利もあります。
また、親が学校にIEPミーティングを要求した場合、書面での要求後30日以内にミーティング
が開かれなければなりません。学校側はミーティングの場所や日時を書面で親に前もって知らせ、か
つ親の都合に合わせなくてはなりません。
IEPの実行
親はミーティングでの決定が記されたIEPの書類のコピーをもらい、そこに書かれたサービスが
実行されているかどうかをチェックします。行われていない場合は要求をし、それでも実行されない
場合にはアピールする必要があります。
35
IEPのエバリュエーション
IEPが書かれプログラムが実行された後は、計画に基づき子供がどのように進歩してきたか等を
評価する機会がもたれなければなりません。IEPミーティングは最低でも年一回開かれることが義
務づけられています。最初のリファーラル直後のIEPミーティングの次の回からのIEPミーティ
ングは、翌年度の計画・目標決定を兼ねて、その年のエバリュエーション(Evaluation、評価)をす
るため、親からの特別な要求がなければ学年度末に開かれることが多いようです。
なお、子供の発達等、全体についてのエバリュエーションも最低でも三年に一回は受けることが連
邦法で定められています。その場合アセスメントからエバリュエーションまでの各ステップが繰り返
されます。
私が学んだこと
私はいつもIEPや学校のミーティングには
子供の写真をはったバインダーを持って行く。
誰のことを話し合っているのか
visual になってとてもよい。
(W)
私が学んだこと
学校区が用意する通訳は、往々にして
一般父兄のボランティアなど特殊教育
を理解していない人なので、IEPでこ
ちらの意思が通じず、学校側のペースで
終わってしまったりする。(H)
36
学校/統合教育
■ 統合教育
ノーマリゼーション (Normalization)
障害者、特に知的遅滞を持つ人たちは多くの国で社会から隔離され、巨大施設に収容されてきまし
た。しかし、1940年代にデンマーク人のバンク=ミッケルセン(Bank-Mikkelsen)が施設での処遇
を批判し、「障害者、精神遅滞者を一般市民と同じ権利を持った人間として、彼らの生活を可能な限り
一般市民の生活条件・様式に近づけよう」と提案しました。続いてスウェーデン人のB.ニールェ
(Nirje)が、1968年にアメリカ大統領委員会で「ノーマリゼーション」を「精神遅滞者の日常生
活のパターンと条件を、社会の主流の規範とパターンにできるだけ近づけるようにすること」と定義
したことによって、この理念がアメリカでも確立されました。
この後、「ノーマリゼーション」の理念に基づき、二つの運動が始まりました。一つは、脱施設化運
動、つまり障害者を巨大な施設から地域に密着し、より普通の生活に近いグループホームのような小
型の施設に移す運動です。これは現在では更に、グループホームからコミュニティ内のアパートや一
軒家へ移り、ルームメイト等から最低限のサポートを受けながら独立生活(Independent Living)を営
む形へと広がっています。そして、もう一つの「ノーマリゼーション」に基づく運動が統合教育、つ
まり「すべての障害児を普通学級へ」という運動です。
統 合 教 育
日本語では適当な訳が他にないのでどれも「統合教育」となってしまうのですが、現在アメリカの
特殊教育の現場では実際に3種類の「統合教育」が行われており、厳密に使い分けられていますから
注意する必要があります。
1・フルインクルージョン(Full Inclusion):障害の種類、程度を問わず、全ての障害児を直ちに小・
中学校の普通学級に入れようという運動。連邦法(PL94−142)の条文の示すLRE(Least
Restrictive Environment)、すなわち「障害児にとって可能な限り最も制約の少ない教育環境」を、普
通学級で学ぶことと解釈したもの。理念上ではノーマリゼーションに基づいており、特殊教育の関連サ
ービス(各種セラピー、エイド、手話通訳、リソースルーム等)を普通学級にいながら受けられるとして
います。関連サービスが整い、普通学級の教師にも適切なトレーニングやサポートが与えられれば、理
想的な教育方法です。知能が普通以上の身体障害児等にとっては普通学級における教科学習を保障され、
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高等教育への進学、そして経済的自立をより可能にすることにつながります。又、発達障害を持つ生徒
等にとっても十分な社交性を身につけることにより、将来独立した質の高い生活を送る可能性を広げま
す。普通学級内の教師や他の生徒たちにとっても、毎日の学校生活の中で障害児に対する援助の方法を
考えることが必要になることから創造性の学習等を促すと言われています。又、責任感や思いやりをも
たらし、自分と異なる人々への偏見や恐怖感から解放され、多様性への寛容さを学ぶ貴重な体験となる
とも言われています。一般の子供たちは、大人になって社会に出てからも様々な場面でこの体験を応用
することができます。但し、現状では十分なトレーニングを受けていない普通学級の教師の理解を得る
ことが困難であること、又、関連サービスの充実とそのための予算の拡充等が今後の課題です。
2・メインストリーミング(Mainstreaming) : 主に軽度障害(学習障害等)、そして言語障害・ス
ピーチ障害等を持つ生徒が毎日、又は毎週決められた時間内をリソースルームやスピーチ・セラピー
等にプルアウト(Pull-out/一時的に普通学級から出されること)され、個人、又は少人数授業を受け
る制度です。いわばパートタイムの特殊学級で、日本でも1993年から始まった「通級」制度がこ
れに該当します。フルインクルージョンとの違いは、普通学級にいる時間内は関連サービス(エイド
や手話通訳等)を通常受けない点です。又、欠点としては、プルアウトの間に普通学級で行われてい
る授業を受けられないことと、離れた教室間を移動するため時間のロスが大きいこと、普通学級で受
ける科目が体育、芸術、音楽分野に限られてしまいがちであること、そしてサポートなしに重度障害
児らをメインストリーミングすることが困難であること等です。しかし、プルアウトの時間を放課後
に当てるようにしたり、普通学級の教師とリソースルーム等特殊教育の教師との密接な協力関係と互
いのサポート等によって問題を解決することは可能で、効果がないわけではなく、少なくともノーマ
リゼーションの理念に近づいているといえます。
3・インテグレーション(Integration) : ランチタイムや課外活動のような限られた時間内に、普通
学校の特殊学級で学ぶ生徒と普通学級で学ぶ障害を持たない生徒たちを交流させる制度です。又、特
殊学校と普通学校の生徒たちを、ある一定の活動時間(例えばピクニックや運動会等)内に交流させ
たり、又、特殊学級の生徒が普通学級内で一定時間過ごす等、様々なバリエーションが各学校によっ
て可能です。フルインクルージョンもメインストリーミングも言うなれば、インテグレーションの一
つのタイプということになりますが、違いをはっきりさせるために教科学習を抜きにした社交的なも
のとして、インテグレーションという言葉が使われることが多いようです。つまり、障害児たちを隔
離された教室において社会的に孤立させてしまわないために、学校の教科指導以外の場で行う統合教
育がインテグレーションという事になります。従って、親の積極的な参加、クラブ活動等の自主的な
設立等も重大な役割として考えられます。これによって、障害を持たない生徒たちの間に障害児に対
38
学校/統合教育
する偏見や恐怖感を減らし、障害児に対する理解と友情を深めようという、ノーマリゼーションの初
歩的段階ともいえる目的を果たしています。
統合教育を始めましょう
もしあなたのお子さんがプリスクール、又は幼稚園に通っている年齢であれば、フルインクルージョン
をためす価値があるかもしれません。早速、IEPやIPPのミーティングをリクエストし、提案してみ
て下さい。教科の遅れが比較的少ない小さい子供のうちの方が、比較的簡単にフルインクルージョンを始
められると言われています。又、学校の先生の理解、協力も比較的とり易いでしょう。お子さんの年齢が
大きくなればなるほど、特殊学級から普通学級へ移すのは難しく思われます。但し、プリスクールでフル
インクルージョンを要求する場合、事実上ほとんどが私立校であり、私立のプリスクールには資格のある
教員が少ないため連邦法にある「無料の公教育」条項の適用が困難だと言われています。それをデュープ
ロセス(法的手続き)を通して勝ち取ることは理論上は可能です。しかし、それを避けたい方は、子供を
公立特殊教育のプリスクールに無料で午前中通わせながら、午後や週に数日、私立の普通のプリスクール
へ授業料を自ら負担して通わせ、統合教育を始めるという方法も考えられます。そして、子供が幼稚園
(キンダーガーデン)に入る時点で、本格的にフルインクルージョンを要求しましょう。
あなたのお子さんが軽度障害で、現在特殊学校か特殊学級に通っているのならば、やはりフルインクル
ージョンをIEPで提案してみましょう。フルインクルージョン・コンサルタントが定期的に訪れ教師や
生徒たちを援助する他、エイド、代わりにノートを取ってくれる人、手話通訳者、テープレコーダー等の
援助を受けながら普通学級で学習をし、その他にも必要に応じて各種セラピーやリソースルームでの学習
等も並行して受けられます。普通学級内で特に援助が必要でないと思われればメインストリーミングで十
分かもしれません。その場合、各種セラピーやリソースルームの指導以外は普通学級で特別なサポートな
しに学習します。
あなたのお子さんが年齢的にもかなり大きく、かつ特殊学校や特殊学級に通う重度障害児である場
合、急にフルインクルージョンを始めるのはためらわれるかもしれません。連邦法はLRE(最も制
約 の 少 な い 環 境 ) を 保 障 す る と 同 時 に 「 最 も 適 切 な 」 無 料 の 公 教 育 ( F A P E /Free and
Appropriate Public Education)を保障しています。ですから、特殊学校や特殊学級での教育が最
も適切と思われるのでしたら、続けて下さい。但し、インテグレーションの努力を始めましょう。イ
ンテグレーションのチャンスを学校、又はコミュニティで積極的に探し求め、物足りなければ自分た
ちで始めるのも一案です。これによって、社会が一歩一歩ノーマリゼーションに近づき、将来的には
あなたのお子さんがより普通に近い生活を営める基盤となるのです。
39
フルインクルージョンのサポート機関
フルインクルージョンを始めたいという方は、ランタマン・リージョナル・センターのサム鈴木氏
らの行っているフルインクルージョンのセミナー(月一回)や、サポート・グループ、ファミリー・
ネットワーク等に参加してみましょう。お子さんを擁護する準備として、フルインクルージョンにつ
いてよく知っておく必要があります。又、それらのグループ等で出会ったフルインクルージョンを実
践し成功した親や、普通学級の教師、校長らの話は参考になるはずです。頼んでみたら彼らがIEP
等に一緒に参加してくれ、擁護を援助してくれる可能性もあります。ランタマン付属のファミリー・
リソース・センターのライブラリーにはフルインクルージョンのビデオ等もありますので、それらを
IEPの席上で活用することも一案です。フルインクルージョンにどのような効果があるのか知らな
い校長や普通学級の教師らにまず情報を与えることが、非常に重要です。
フルインクルージョンをIEPで提案し、学校側に拒否された場合、次の解決手段が考えられます。
(1)要求を考え直す(取り下げ)、(2)交渉し、どこかで妥協する、(3)法的な手続き(デュー・
プロセス)を取り、要求を続ける、の三つの方法です。いづれにせよ、親の知識と考えに基づいた、
正しい判断と行動が必要です。
私が学んだこと
スクールバスは学校区の管轄。送迎
に関する件でもバス・ドライバーだけ
に依頼するのでなく学校区を通す方が
正式になるし、学校区側も何が起きて
いるか把握できてよい。(W)
私が学んだこと
子供が小さい、又は知的障害がある、又は話せない
場合、母親はせっせと学校に足を運び先生や学校側と親
しくなる努力をすること。問題が発生したときの早期解決
につながるし、何をしているのか把握
し家庭と学校とのギャップ(特に
日本人家庭の場合)を埋めるの
にも役立つ。
(G)
40
学校/親の権利と義務
■ 親の権利と義務
親 の 権 利
IEPの要求と決定権
お子さんが既に特殊教育を受け始めている場合、必要に応じて開くよう学校に要求することができま
す。担任の教師や校長等に手紙を書き、書面で通知しますが、同時にアセスメントの結果を再度要求す
ることもできます。連邦法では一年間に開くIEPミーティングの回数を制限していませんので、学校
側が拒否した場合にはそのことを告げるか、またはデュー・プロセスに持ち込みます。
IEPミーティングの開催を学校側から親に知らせてくる場合、日時と場所を親の第一言語で前もっ
て書面で知らされる権利があります。更に、実際のIEPミーティングに、友人等擁護者を連れていく
ことと、ミーティングに外国語や手話の通訳が必要な場合、学校側より無料で提供されるよう要求する
権利が親にはあります。また、ミーティングでは親は学校の職員らと対等に参加し、子供についての情
報を提供する必要があります。
IEPの最終決定権は親にあります。ミーティングで決められたプログラムやサービス、又子供のプ
レイスメントは、親の承諾なしには実行されません。IEPの書類にサインにすることにより親は承諾
をするのですが、ミーティングの場でサインする必要はなく、持ち帰って検討することも可能です。そ
して、異議のある場合には再度ミーティングを要求するか、またはデュー・プロセスに持ち込みます。
デュー・プロセス (Due Process)
お子さんのクラス分けや受けている特殊教育サービスに不満がある場合や、IEPミーティングで
のその他の取り決めに不満がある場合等、親はデュー・プロセスに持ち込むことができると連邦法
(PL94−142)は保証しています。
デュー・プロセスではまず最初にヒアリング (Hearing、公聴会) を行います。そこでは州のヒアリン
グ・オフィサーが学校と親の間に介入し、互いの交渉を援助します。デュー・プロセス・ヒアリングでは
裁判官による判決等はなく、従って弁護士も必要なく、場所も裁判所の代わりに学校等で行います。
ヒアリングでも親の納得のいく結果が得られなかった場合には、次の手段として州の裁判所にアピ
ール (Appeal、訴訟) をすることができます。この場合には弁護士(学校区、リージョナルセンター、
擁護団体等に特殊教育専門の弁護士を推薦してもらうことも可能)をたて、裁判所で正式に親対学校
(又は学校区等)という形で争うことになります。州の裁判所でも満足する結果の得られない場合には、
41
更に最高裁判所へアピール (Appeal、上告) することができます。このように裁判が長引いてしまう
と何年もかかることになり親にとっても大変なのですが、特殊教育をさらに充実させるよう法律を変
えていくためにも裁判は必要であり、時には学校区等が協力して裁判に持ち込むこともあるようです。
情報へのアクセス
アセスメント、IEPミーティング、IEPのエバリュエーションの結果、子供の教育に関する学
校での記録等といったものを手に入れたり、自由に閲覧する権利が親にはあります。アセスメントや
IEPミーティングの結果等は親が自分の第一言語で読むことを希望する場合、学校側に翻訳された
書類を要求することができます。
親 の 義 務
IEPミーティングの参加 (Parent Participation)
IEPミーティングへの参加は親の特殊教育への参加の第一歩です。親にはIEPミーティングに参
加し、自分の子供に関して一番よく知っている専門家として、教師やサイコロジストといった他の専門
家たちに子供に関するあらゆる情報を提供し、対等に話し合う義務があります。学校側から指定された
日時や場所について、親の都合がつかない場合、欠席するよりもむしろ自分の都合のつく日時(仕事後
の夕方等)や場所(コミュニティセンター等)に変えてもらうよう要求する方が得策です。親の許可
(欠席の届)があれば、親なしで学校の職員たちだけでIEPミーティングを開くことも可能です。し
かし、その場合子供を擁護する人がいないので、子供のプレイスメントやプログラムが子供にとってど
れがよいかではなく、学校側にとってどれが都合がよいかで決められてしまう恐れがあります。
IEPミーティングでは子供にとって不利なように事が運ばないよう、親は子供を擁護しなければ
なりません。また、子供にとって最も適当でかつ最も制約の少ない環境が与えられるよう、子供を擁
護しなくてはなりません。擁護が親だけでは難しい時には友人やリージョナルセンターのサービスコ
ーディネーター等に応援を頼み、一緒にミーティングに参加してもらうこともできます。
教師とのパートナーシップ (Parent-Teacher Partnership)
教師と親の双方のコミュニケーションがうまくいくことによって、教師、親、そして子供にとって
大変有意義な結果をもたらすと言われています。教師にとっては子供をより理解するための手助け、
42
学校/親の権利と義務
教育方法やプログラムを改良するためのフィードバックやヒントが得られますし、親にとっては子供
のプログラムを理解しそれに並行して家でどのように教えるかを学ぶことができますし、子供にとっ
ても二つの重要な環境においてスムーズな移行ができ、リソースや多くの情報によって学ぶチャンス
が広がるからです。子供にとって、一番重要な人物は親ですが、多分毎日学校で接する教師も二番目
に重要な大人です。双方の協力体制は子供の教育面で、重要なカギとなります。
教師との連絡方法としては、コンファレンス (Parent Conference、ミーティング) 、ノート
(Written Note、メモ書き) 、電話の三種類が一般的です。コンファレンスではお互いに面と向かって
情報交換をすることができるという長所がありますが、フォーマルなものとなりがちなので定期的に
スケジュールをたてることが難しく、頻繁なコンファレンスは教師にとってストレスとなる可能性も
あります。そこでよりインフォーマルで効果的な方法として、ノートと電話があります。ノートは教
師への質問や依頼、子供の状態に関する情報等を簡単に書いて、子供に持たせたりします。行動障害
の子供の場合、効果があるといわれる行動修正 (Behavior Modification) プログラムのために毎日の
学校での行動について教師に書き入れてもらい、コンスタントに良かった週の最後には子供の好きな
褒美(お気に入りのテレビ番組を一時間見せる、アイスクリームを食後に与える等)を与えるという
ことも可能です。更に簡単で時間のかからない連絡方法が電話です。学校によっては各教師のレコー
ディングメッセージを毎日残し、親が電話することによりその日に行われた学習や宿題を知らせるシ
ステムを取っているところもあります。教師にとって話しやすい時間を知り、定期的に電話し、子供
の成長に関する情報等について話し合うことは大変効果的な方法です。
これら以外にも、双方が使えればEメールやファックスを使うことも時間のかからない簡単な方法
として考えられます。また、親が時間のあるときになるべく学校に立ち寄ったり、学校の行事やボラ
ンティアの参加をすると同時に教師と接するようにしたりすることも効果的な連絡方法となります。
子供の教育への参加 (Parent Involvement)
連邦法(PL94−142)は親の特殊教育への参加を義務づけています。ただし、一言で参加と
いってもその程度は様々で、どの程度参加をするかは親次第です。中でも最も重要で基本的な参加は
前述のIEPミーティングへの参加と、やはり前述の教師とのパートナーシップです。
他にもPTAや各イベントへの参加、図書室やオフィス、教室等でのボランティアとしての参加、
ファンド・レイジング (Fund Raising、寄付集め) 等学校への親の参加はアメリカでは一般的に盛ん
です。また、リージョナルセンターや擁護団体、親の会等への参加、そうした所の催す親のためのト
レーニングやミーティングへの参加、それ以外のコミュニティ活動への子供との参加、また家で子供
の宿題等を見たりする等、様々なかたちでの教育への参加が考えられます。
43
■ 特殊教育関係の法律と訴訟
障害児を持つ親は子供の権利を擁護し、主張してサービスを勝ち取らねばならないこともあります。
以下は、数多い特殊教育と障害者関連の重要な連邦法と訴訟の判決のうちの代表的なものです(州の
法律は連邦法に基づいています)
。
PL94−142:The Education of All Handicapped Children's Act (EHA)(1975年)
この連邦法は障害児とその親の権利を守るという意味では、アメリカの歴史上最も画期的な法律です。
大切な項目は下記の通りです。
*FAPE(Free, appropriate public education)・・・全ての3歳から21歳の障害児に無料で適
切な公立教育と必要な関連サービスが与えられる。
*LRE(Least Restricted Environment)・・・障害児も可能な限り一般の子供たちと同じクラス
で学ぶことができる。選択権が生じたという意味で、強制ではない。
*IEP(Individualized Educational Programs)・・・全ての障害児に必要。
(P33, 35, 41, 42参照)
*Procedural Safeguard(保護者の権利)・・・
記録をチェックする権利
記録を秘密にしておく権利
保護者の同意なしに査定やクラス替えをされることはない
IEPへの参加
デュープロセス(障害児の受けている特殊教育や関連サービスの決定に異議がある時保護者は公
聴会を要求することができる)
査定を別の機関で受ける権利
適切な教育がない場合に学校区が授業料を払って私立学校へ通う権利
*Nondiscriminatory Assessment・・・生徒の母国語による査定を保障。文化の違いを加味した
複数のテストの使用等で偏見のない評価を下す。
44
学校/特殊教育関係の法律と訴訟
PL99−457:Amendments to the Education of All Handicapped Act(1986年)
前述の連邦法の改正。重要なのは0ー3歳までの乳幼児への教育が IFSP (Individualized Family Services
Plan)を通して義務づけられたことと、ITP (Individualized Transition Plan)が提案されたことです。
*Preschool・・・満3歳から5歳まで。前述のPL94−142が適用されるが、子供
の障害のカテゴリーはまだこの時期に決める必要はない。
*Early Intervention・・・0歳から3歳で、発達遅滞が見られるか、又は遅
滞が後に現れるリスクが認められた子供が、IFSPで決められた各種セラピー等のサービスを
無料で受けられる。
PL101−336:Americans with Disabilities Act (ADA)(1990年)
この法律は、企業、雇用、住居、公共宿泊施設、教育、交通機関、コミュニケーション、レクリエ
ーション、施設、ヘルス・サービス、選挙権、そして公共サービスへのアクセスにおいて、障害があ
るがための差別のないよう、そして環境が障害者に適応するよう配慮する規則を定めています。
法務省(Department of Justice)、交通省(Department of Transportation)、機会均等委員会(the
Equal Employment Opportunity Commission)、建築・交通障害対応連邦通信委員会(Architectural
and Transportation Barriers Compliance, FCC)に施行の責任があります。
ADAの条項・詳細についての問い合わせ先:
U.S. Architectural and Transportation Barriers Compliance Board
1111 18th Street, N.W., Suite 501, Washington D.C., 20036-3894
トールフリー番号 1(800)USA−ABLE PL101−476:The Individuals with Disabilities Education Act(1990)
通称IDEAで知られるこの法律は1(PL94−142)の最新の修正版です。ここでは法律の
名前(EHAからIDEAへ)と障害児の表現(Handicapped ChildrenからChildren with
Disabilitiesへ)が全文中で書き替えられたことがまず目に付く変化です。
その他重要な追加事項としては、トランジション・プログラムを遅くて
も16歳までに始め、生徒のIEPにITPを含まねばならないということ、関連サービスにリハビ
45
リテーション・カウンセリングとソーシャル・ワーク・サービスが加わったこと、そして今まであっ
た障害のカテゴリーに新たに自閉症と脳損傷が加わり合計13になったこと、等です。
この法律によって定められた13の障害のカテゴリーとは以下の通りです。
1・精神遅滞
(Mental Retardation)
2・学習障害
(Learning Disabilities)
3・重度情緒障害
(Seriously Emotionally Disturbed)
4・重複障害
(Multiple Disabilities)
5・聾盲
(Deaf-Blind)
6・難聴
(Hard of hearing)
7・盲
(Blind)
8・言語障害
(Speech Impairment)
9・視覚障害
(Visual Impairment)
10・整形外科系障害
(Orthopedically Impairment)
11・その他の健康障害
(Other Health Impairments)
12・自閉症
(Autism)
13・脳損傷
(Traumatic Brain Injury)
次に代表的な訴訟を見てみましょう。
● Diana v.State Board of Education(1970年)
EMR(教育可能な軽度の精神遅滞)クラスに入れられたカリフォルニア州に住む9人のメキシコ
系アメリカ人(8ー13歳)が、査定は文化的に偏ったIQテスト(白人中流階級の価値観)の下に
行われるので、間違ってそのクラスに入れられたと訴えた。この訴訟の結果、査定は生徒の母国語で
母国の文化の標準に基づき行うこと、口頭での回答を促すテストだけに頼らないこと、メキシコ系と
中国系のEMRクラスにいる子供は全員査定をし直すこと、そしてその子たちを普通学級に戻す計画
を学校区は立案すること、メキシコ系の子供が特殊教育のクラスに圧倒的に多い学校区はその理由を
説明すること等が義務づけられた。
● Larry P.v.
Riles(1971)
EMRクラスに圧倒的に多くいる黒人の子供は、文化的に偏ったテストにより間違ったクラスに入
れられ、普通学級に戻るための適切な教育も受けられないままにいると、やはりカリフォルニアで行
46
学校/特殊教育関係の法律と訴訟
われた訴訟。この結果、カリフォルニア州では査定時のIQテスト使用は禁止となった。また、マイ
ノリティの子供の査定は慎重に行うべきであること、特殊教育は“Dead−end”(行き止まり)
ではなく、カリキュラムの質をもっと高めて普通教育への復帰を促すべきであることが約束された。
● PARC v.Commonwealth of Penn.(1972)
● Mills v.Board of Education(D.C.)(1972)
この二つの東海岸での訴訟は主にMRの子供が教育の権利を奪われていると親のグループ等が訴え
たもの。この後、教育の権利と共にデュープロセス等の親の権利も決議され、それが1975年のP
L94−142を形成した。
● Board of Education v.Rowley(1982)
キンダーの普通クラスに入ったAmy Rowleyという聴覚障害児が、IEPで決められたよ
うに補聴器、テレタイプ、スピーチ・セラピー、特別のチューターをつけてもらった。親(二人とも
聾)はそれでも不足とし、手話の通訳者をつけるよう学校に訴えた。学校区は要求通り通訳をつけた
が、Amyは手話を見ないし成績も良いので必要ないと二週間後にやめたことから、親がデュープロ
セスを始め、公聴会、そして告訴した。最終的には最高裁まで行ったが、そこでの判決は、手話の通
訳がなくてもAmyは十分適切な教育と特殊教育関連サービスを受けていたとするものであった。
PL94−142施行後最初に最高裁まで行った大きな特殊教育裁判。
● Irving ISD(Texas)
v.
Tatro(1984)
二分脊椎を患う三歳の子共が、導尿管の世話をする者がいないという理由で公教育を拒否された。
そこでPL94−142に定められたように、全ての子供の障害に関わらず無料の公教育を受ける権
利があるとして、関連サービスの要求と共に訴訟に至った。その結果、身体・健康障害の子供が学校
で学ぶときに導尿管を必要とする場合、医者でなくても導尿管は扱えるという理由から学校区がその
世話をするように義務づけられた。
47
● Honig v.Doe(Calif)
(1988)
他の子供に暴行を加えたとする二人の情緒障害児が学校から退学処分を受けた。これは全ての子供に
無料の公教育を受ける権利があるとするPL94−142に反すると訴えたもの。最高裁での判決は、
障害に起因する問題行動を理由に障害児を退学させてはならない、というものだったが、同時に障害
がなければそれは是認できるものであり、又障害のある子の場合でも親の認可か裁判所の認可があれ
ば生徒を退学させてもいいという決議であった。
(文:水谷由美/CSULA特殊教育学修士課程修了)
私が学んだこと
学校区に対して親は日本語の通訳を要求する
権利があり、学校区は通訳を用意する義務がある。
しかし実際のところこの法律はスペイン語を話す親
のことを念頭においているので、マイノリティーの中
のマイノリティーである日本語の、それも特殊教
育に詳しい通訳を学校区はすぐに見つ
けることができない場合が多
く、ミーティングの日程がどん
どん先にのびてしまうこ
とが多い。
(M)
私が
学んだこと
クラスのボランティアを率先してする
こと。手伝いながらクラスの授業、
学校の姿勢(事情)がわかって
くる。(W)
48
トランジションから大人へ
■ TRANSITION (=変換・移行)
■ 就職
■ 障害者用住宅
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■トランジション(Transition)
トランジションとは?
トランジション(変換・移行)とは、ある状態から違う状態への変換・移行を意味する言葉で、私達
は人生において数多くのトランジションを経験します。引っ越し、卒業、進学、就職、結婚、離婚、
子育て、引退などすべてトランジションですが、ここでは障害児が学業期を終了し(18才∼22才)
学校から大人の社会へ、教室から職場へ(又は義務教育から大学進学へ)、そして自立へ到達するまで
の過渡期におけるトランジションについて考えます。このトランジションをよりスムーズに、かつ実
りのある将来に導くためには、色々なオプションを知り、障害者本人の意向を尊重したきめ細かな計
画を立てることが大切です。
現在、障害を持つ子供が親と共に住み、親が身の回りの世話をし、昼間は月曜から金曜まで毎日学校に
通っている場合、その子供の生活の中心は学校生活で占められているものです。しかし、その子が卒業
し、又は22才に到達した時、学校に行っていた毎日の時間をどの様に過ごすかが大きな問題になりま
す。多くの親の場合、子供が高校生(14才∼18才)になった時点で心配し始める様ですが、実はも
っと早い時期から考え始めるべきで、将来どこに住むのか、どんな仕事につきたいか、毎日をどの様に
過ごすのか等を常日頃から話し合うことが必要になります。そしてそれをもとに本人・家族・先生・関
係者と共にITP (Individual Transition Plan=個人別トランジション計画)を作ることになります。
ITP (Individual Transition Plan)
ITPとは、関係者が集まり、その子の学校から社会への転換に向けてのトランジションに必要な教育
やサービスを検討・計画し、それを文書化するものです。1年に1回話し合い作成されるIEP と別個
に作成されることもあれば、ある年のIEPでITPを同時に行い作成添付される場合もあります。トラン
ジションの始まりが14才(又は高校入学)時に当たるので、ITPが行われる年令は14才(又は9
年生)になる前が適当とされていますが、カリフォルニア州特殊教育法では、16才までにITP作成
を義務付けています (1997年現在)。このITPは適格な査定のもとに行われるべきもので、査定は本人
の持つ技術・経験、本人の興味や将来へ対する希望、家族や友人のサポートの度合等多面的に考慮さ
れます。ITPで練られる計画は将来目標達成に導くためのステップとなるべきもので、かつ達成可能
な現実性のあるものでなければなりません。
50
トランジション
ITPは1990年に連邦法で義務付けられた比較的新しいコンセプトなので、学校関係者の中には不
慣れな人もいたりしますが、必ず遅くとも16才までには、学校側から働きかけがなくても親側から
ITPのミーティングを要求し、積極的に参加、発言することが大事です。
ITPの内容
将来の希望に沿って、下記の項目の具体的な教育内容とサポートの目標が設定されます。
* 職業訓練/就職
* 住まいに関すること
* レクリエーションやレジャー
* 高校後の教育
* 自己管理(金銭管理、衛生、社会性、住まいの管理、安全性等
* 送迎サービス
* 収入
ITPに参加すべき人
* 子供本人
* 両親(又は他の家族)
* 学校関係者
(特殊教育の教師、職業訓練・リハビリテーション・カウンセラー、職業教育専門教師、普通教
育教師(必要であれば)、校長(又はその代理))
*
外部からのサービス・コーディネーター
(例:リージョナル・センター、リハビリテーション局、コミュニティーカレッジ、精神衛生局等)
*
その他の学校関係者(例:カウンセラー、心理学者、関係サービス専門家等)
* 雇用主(存在する場合)
* 家族又は本人が希望する人(例:友人、弁護士等)
ITPに際してIEPと同じく親としての準備が必要です。積極的に学校側にITPやIEPを要求し、下記の
事項を頭に入れて対処することが望まれます。
*
質問したいことを全部リストにする。
*
もし誰かのサポートが必要と感じたら、誰かを同行する。
51
*
英語に自信がない場合は、通訳を付けるように学校側に頼む(学校側は無料で通訳を付ける義務
がある)。ミーティングを要求する際に通訳の事も頼む。
*
ITPやIEPの前に、子供に対して行われた査定(assessment) の文書のコピーを自分の希望する
言語に翻訳された形で入手する。
*
同時に学校側のポリシー(方針)のコピーを要求する。特殊教育において第一に法的効力を持つ
連邦法との違いがある場合等、参照するのに役立つ。
*
IEPと同様、その子に関することは自分自身が他の誰よりもよく知っているとの自信を持ち、言
いたいことをはっきり発言する。
*
常にポジティブにコミュニケートする。
*
他の人達の発言に耳を傾ける。
*
子供に関する質問をどんどんして、貴重な情報を多く得る。
*
分からない時は必ず質問する。
*
すべて記録する。
*
すべての記録・査定のコピー、ITP(又はIEP) のコピー、医者やセラピストからのレター、予防
注射の記録等ファイルにまとめる。
より望ましいトランジションのために
障害児が将来成人して社会生活を営むためには、両親の果たす役割が多大なのは言うまでもありませ
ん。具体的に就職、住居、余暇の過ごし方等、色々な面を考える際、親としてどの様に関わり援助す
ることがより望ましいトランジションに繋がるのでしょうか?
1)子供と話し合い理解を深める
将来大人になったら何をしたいかを話し合う。どこに誰と住みたいか?どんな仕事につきたい
か?興味の対象や得意なことは何か質問する。コミュニケーションが難しい場合は、行動を注意
深く観察し、子供の好きなこと、嫌いなこと、又は得意とすること、長所などを見つけ記録して
おく。
2)下記の項目に関して情報を集め知識を増やす
* 職業訓練/就職(P54参照)
* 住まいに関すること(P56参照)
52
トランジション
* レクリエーションやレジャー
* 高校卒業後の教育
* 送迎サービス
* 収入(SSI、信託、労働報酬、フードスタンプ等)
* 擁護/法律関係(コンサーバターシップ=後見人等)
* 医療関係(医療保護、保険、医療機関等)
3)色々な成人用プログラムを実際に見て回る
障害者用住まい、職場や職業訓練所、レクリエーション・プログラム等を見に行く。オプション
を知り、比較し、適したプログラムや支援機関を見つけておく。
4)親のためのサポート・グループに参加する
積極的に他の障害児を持つ親達との交流を広げることで、貴重な情報が入ってくるだけではなく、
精神的サポートを得たり勇気づけられたりする。より深く子供のトランジションに関わることで、
自分自身が他の親に対して、情報源やサポートの提供者にもなれる。
rrrrr
参考資料:
“FROM ADOLESCENT TO ADULT /
TRANSITION A HANDBOOK
私が学んだこと
FOR FAMILIES”
Published by Harbor Developmental
Disabilities Foundation
子供はあっという間に成長します。特に障害
の問題を抱え試行錯誤の毎日を送っていると将
来の予定など立てる余裕がないのが現実。子供が1
0才を過ぎた頃には、長期的観点にたってその子の現
実味のある将来をじっくり考えてみましょう。そ
の場合の観点はどうしたら障害を
治せるかではなく、どうした
ら子供がより幸福な人生を送
れるかに置いた方が
良いと思う。
(N)
53
■就 職
サポーティッド・エンプロイメント
障害のある大人が22才(又はそれ以前)で高校を出て働くとき、大まかに4つのタイプの進路が考
えられます。
1) Competitive Employment (コンペテティブ・エンプロイメント)
一般の職場で障害のない人達と一緒に援助を受けずに普通に働く、通常の就労状態
2) Supported Employment (サポーティッド・エンプロイメント)
一般の職場で他の障害者や障害のない人達と一緒に、特別な援助を受けながら働く
3) Sheltered Employment (シェルタード・エンプロイメント)
障害者専用の隔離された職場(作業所など)で働く
4) Adult Day Program(アダルト・デイ・プログラム)
働くのに必要な技能を身につけるためのプログラムで、Work Activity CenterやDay
Treatment、Behavior Management Program, Community Living Skillなどがある。
歴史的に、障害者の中でも特に知的障害者は、コミュニティーから離れた場所に作られた施設に住み、
教育を受ける場合は特殊学校、働く場合は作業所と、生活全般にわたって一般の人と交流することの
ない、隔離された暮らしを強いられてきました。ところが1960年代にノーマリゼーションが唱え
られ、障害者が一般の人と変わらないできるだけ普通の暮らしができるよう社会が少しづつ変わって
きました。住むところは施設からコミュニティーの中にあるグループホームへ、そして更に普通の家
やアパートで必要最低限の援助を受けながらの自立生活へ、教育も一般の学校での統合教育へ、そし
て職場もコミュニティーの中でサポートを受けながら働く、すなわちサポーティッド・エンプロイメ
ントへと徐々に移り変わってきているのです。
リサーチの結果によると、一般の職場で重度障害者が援助を受けずに働けることは非常にまれだそう
です。又、作業所や働くのに必要なスキルを身につけるためのトレーニング・プログラムに一度通い
始めた障害者は、他へ移ることなく一生そこに通い続ける者が多いことも報告されています。作業所
やアダルト・デイ・プログラムでは障害者は最低賃金よりも格段に下回る賃金しか支払われず、週に
20時間以内だけしか働くことができません。又、障害者のための職場、又はプログラムであるため
に、障害を持たない一般の人と職場で同僚として交流する機会はありません。そこで、援助を受けな
54
就 職
がら障害者以外の人達とコミュニティーの中で交流しながら働くサポーティッド・エンプロイメント
が、重度障害者にとって一番理想的な職場であると言われるようになりました。サポーティッド・エ
ンプロイメントは、重度障害者も少なくとも最低賃金を受け取り、コミュニティーの中で人々と交わ
り、必要とする間は打ち切られることもなく援助を受け続けることができ、雇用主と障害者双方のニ
ーズに柔軟に合わせて行われるものです。
サポーティッド・エンプロイメントは細かく分けると3つの種類に分類されます。
1)Enclave Model(エンクレイブ・モデル)
一般の職場の中で障害者の小さなグループが援助を受けながら働く
2)Work Crew Model(ワーク・クルー・モデル)
障害者の小さなグループが色々な会社や商店、コミュニティー機関などと契約し、援助を受けながら
働く
3)Individual Supported Job(インディビジュアル・サポーティッド・ジョブ)
障害者が個人で援助を受けながら一般の職場で働く
1)のエンクレイブ・モデルの例では、障害者の2∼8人のグループを工場の一部に配置し、ジョ
ブ・コーチの指導を受けながら、障害のない一般の人達と共に働きます。2)のワーク・クルー・モ
デルの例では、やはり2∼8人の障害者のグループが配達や、修理、清掃などをコミュニティー内で
契約した会社や商店に出向いて行います。予算が一番かかるという欠点がありながらも長所が一番多
く、最も理想的なモデルが3)のサポート・モデルです。個人サポート・モデルでは、障害者個人の
興味やニーズに合わせた職場で、ジョブ・コーチから個人指導を受けながら他の障害者がいない環境
で働きます。リサーチの報告によると、個人サポート・モデルで働く障害者が最も安定しており、コ
ミュニティーへの参加の度合も高いとの結果が出ています。そこで、個人サポート・モデルが重度障
害者には適当な職場環境と考えられるようになり、1990年にはサポーティッド・エンプロイメン
トの71%までが個人サポート・モデルとなっています。
rrrrr
参考資料:
“FROM ADOLESCENT TO ADULT/TRANSITIONAL HANDBOOK FOR FAMILIES”
Published by Harbor Developmental Disabilities Foundation
55
■障害者用住居
住 居 の 種 類
障害者の住居は大きく3つのタイプに分けることができます。1)コミュニティー・ケアー住居
(community care facilities)、2)ヘルス・ケアー住居(health care facilities)、3)州立施設
(state developmental centers)の3タイプです。
1)コミュニティー・ケアー住居(=グループホーム):このタイプは大小様々ありますが、一般に
はベッド数15床より小さい住居がほとんどで、個人経営の形で運営されています。この住環境はケ
アーや保護を必要とする障害を持つ子供や成人を対象に運営されていますが、医療的には定期検診や
単純な投薬以外は特別な医療行為を必要としない障害者に対して提供されています。ほとんどのホー
ムで身辺のケアーや自立のための訓練を行っています。いくつかのホームでは、行動障害や他の特殊
障害で学校や職場や家庭で問題を抱えている障害者を対象に訓練を含んだケアーを提供している所も
ありますが、こういったホームは通常短期間でその問題を修正するためのもので、より普通のグルー
プホームへのステップとして入居する場合がほとんどです。
グループホームへのケアーの度合はリージョナル・センターにより4段階に分けられていて、レベル
1は大体日常的なことは自分でできる人達を対象としていて、レベル2は身辺自立に手助けや訓練を
多少必要とする人達が対象でスタッフと入居者の比率は6対1、レベル3は身辺自立に顕著な障害が
あり肢体にも不自由さが多少あり確立されたプログラムが必要な人対象で比率は3対1、レベル4は
重度の障害で身辺自立ができず肢体不自由な人対象で比率は3対1か2対1となっています。
2)ヘルス・ケアー住居:このタイプは通常グループホームより大規模で、ベッド数は15床∼100床
まであり、やはり個人経営によるものです。このホームは医療的に、より頻繁又は特殊なケアーを必
要とする人を対象としたもので、スタッフに看護婦やセラピストなどが含まれているのが特徴です。
上記のグループホーム同様、医療ケアーに加え、家庭的な環境のなかでリクリエーションや社交を楽
しみ健全な精神の発達を促すようになっており、住人は学校や職業訓練や仕事など昼間のプログラム
を引き続きこなしながら集団生活をします。
3)州立施設:カリフォルニア州によって運営されている障害者専用の施設で、コミュニティー・ケ
アーやヘルス・ケアー住居での生活が難しい重度の障害者用に運営されています。この施設へは重度
56
障害者用住居
の医療問題や行動障害、又は重度の精神障害を抱える障害者に限って入居対象としています。
住 居 選 び
障害者本人や障害児の親が住居探しをしたいと思った場合、まずリージョナル・センターの担当者に相
談すると、担当者はその方面に知識の豊富な複数のメンバーと共に障害者本人の障害内容、コミュニケ
ーション、食事、身の回りのケアー、排泄、入浴、行動/医療問題などを含む日常レベルの必要性につ
いて検討し、本人に最も適していると思われる幾つかの住居を推薦します。リージョナル・センターが
住居を検討する際に考慮する基準は:入居者に対する訓練プログラムの種類や保護体制、スタッフの質
や管理責任者の経験、地の利と住居の種類などです。適当と思われる幾つかの住居が推薦され、本人や
家族は実際に訪問し自身の目で確かめ、最終選択やさらなる検討要素を担当者にフィードバックします。
さてそれらの住居を訪問する際、そこで世話をしているスタッフと話したり管理責任者に色々と質問し
たりする訳ですが、下記の項目に気を配ってきめ細かなチェックをすることが望まれます。
*
日常的に行われる訓練やレクリエーションの内容、それらは入居者のニーズに応えているか?
週末の行動内容は?
*
入居者が、訪問の際紹介されたり尊厳ある処遇を受けているか? 清潔できちんとした身なりを
しているか?
*
住居の家主や管理責任者が不在の場合は誰が代りを努めているか? そしてその人物の経験やト
レーニングは?
*
住環境は清潔で修理などはまめになされているか? 屋外にはパティオや裏庭など休める空間が
あるか?
*
就寝時間や訪問時間、喫煙やペットなどに関する生活規則は?
*
絵やプラントなど家庭的な雰囲気を出すための装飾品は飾られているか? 家具は座り心地が良
いか? ゲームや雑誌、音楽など娯楽のためのものがあるか?
*
住居の場所は入居者が生活するに便利なところにあるか? 例えば買い物や公園へのアクセスな
どー。近所は住宅街か商業地か? 家族が訪問しやすい場所にあるか?
*
食事は美味しそうで栄養的にもバランスが取れているか? 食事中ではない場合は1週間のメニ
ューを見せてもらう。
*
入居者の好みや選択が反映される機会は提供されているか? 例えば部屋の飾り付けや社交、ル
ームメイト選びや食事などー。
57
気に入った住居が見つかった場合はその旨担当者に伝え、住居側の責任者にもその旨連絡がいき、住
居側でも受け入れるに問題なしとなれば(ホーム側にも選択の権利があります)、リザベーション(予
約)を入れ、入居日など詳細が決定されます。気に入った住居がない場合、さらにリージョナル・セ
ンターに検討を依頼し再度推薦を受けることもできるし、気持ちが変わりホームへの入居をやめたい
場合はいつでもプロセスを中止することができます。
所属リージョナル・センター管轄内で新しい住まいを見つけ、入居後も引き続き同じ担当者がケース
ワーカーとしてケアーを提供するのが理想的ですが、時には適当な住居が管轄内で見つからず、止む
を得ず他の地域に移転が決まることもあります。その場合、入居者が成人ならば新たにその地域を担
当するリージョナル・センターに担当者が移行され、新しいケースワーカーがそのケースを引き継ぐ
ことになりますが、入居者が未成年の場合は2つのリージョナル・センターが共にひとつのケースを
担当し、日常の保護的観察業務は住居のある地域担当のリージョナル・センターが担当し、支払いな
どに対する事務的業務は従来のリージョナル・センターが引き続き業務を遂行することになります。
住居に対する支払い
コミュニティー・ケアー住居(=グループホーム)への支払いはSSI(P62参照)が基本的住居
費、ケアー、保護費などを払い、リージョナル・センターが月々の追加料金を訓練などにかかる費用
として住居管理側に支払います。SSIはリージョナル・センターを受け取り代理人に認定している
ので、SSIから入居者の月受給額がまずリージョナル・センターに支払われ、同センターから住居
管理側に毎月の住居費の支払いがなされるように処理すると便利です。その手続きの書類は同センタ
ーで入手できます。もしSSIからの受給額を直接受け取る場合は、住居側への支払いは本人の責任
において毎月滞ることなく支払われなくてはなりません。ヘルスケアー住宅の場合はカリフォルニア
州の医療保護=メディキャルから支払われるか、もし入居者がメディキャルの対象にならない場合リ
ージョナル・センターが支払う場合もあります。
グループホーム入居者が未成年の場合はその家族に対して州から訓練費などの一部を個人負担するよ
うに請求されますが、金額はその家族の収入に合わせて計算されます。成人の場合は家族への負担は
ありません。
どのホームもSSIやリージョナル・センターやメディキャルからの支払いより多くの金額を家族に
58
障害者用住居
対して請求することはできません。
ホームへの支払いには住居費、ケアー、保護監視やトレーニング、そして多くの場合生活必需品、洗
濯、医者への送迎サービス、レクリエーションや社交活動、洗面関係品(石鹸、はみがき、シャンプ
ー、タオル、生理用品、櫛やブラシ、応急医療用品など)が含まれており、服や化粧品や美容院代、
又は映画やレストランに行ったりと個人で行うレクリエーションは個人負担となります。それらに必
要なお金は通常毎月入るSSIの一部P&I(Personal and incidental=私物経費)の分から使われ
ることになります。
入居に際して
入居に際してはいくつかの州規則にそって、医療アセスメントを入居前か入居後30日以内に行うことが
義務付けられています。ヘルス・ケアー入居の場合は入居前の指定医療アセスメントとラボ・テストが義
務付けられています。その後入居に際する同意書に署名をし、同時に何種類かの歯科を含む医療行為同意
書や医療レコードのリリース(公表すること)などに署名します。この段階で、分からないことや疑問に
感じることがあればはっきりと質問しておくことが大切です。
リージョナル・センターの役割
入居後30日以内にリージョナル・センターの担当者が決められます。担当者の役割は入居者とホー
ム側とリージョナル・センター間のリンクになることで、ケースワーカーとして従来通りの対象者の
ニーズの理解、サービスのコーディネーション、問題解決の手助けなど幅広くサポートしていきます。
一年に一回のIPPミーティングのコーディネーションも重要な仕事です。定期的にホームを訪れ、
生活状況をリポートし、様々なニーズや変化などを観察します。
家 族 の 役 割
多くのホームが入居者の家族も含んだディナーやピクニックやミーティングなどを年間を通して計
画・実践しているので、積極的に参加し運営スタッフたちとも友好を深めることが望まれます。リー
ジョナル・センターの担当者が訪れない週末や夜間の状態などは、家族が積極的に訪問して生活状況
59
を把握することが大事です。多くの場合ホーム側と入居者の家族は親しく信頼できる関係を結び、入
居者も楽しく日常が送れる場合が一般的ですが、何か問題を感じたら早い時期にオープンに話し合う
のが最も有効な解決法です。ホーム側へのアプローチは相手側への尊敬を忘れず、喧嘩ごしや脅しや
命令口調にならないよう気を付けるべきでしょう。その家にはその家独特のやり方があるので、家具
や料理や日常のあまり細かいところまで批判的に見ることは慎むべきです。ただし問題と感じる部分
が、入居者の保護や安全管理に関することや、虐待、性的いたずらやおどし、あまりにもひどい食生
活など重大な問題がある場合は直ちにリージョナル・センターの担当者に連絡し善後策を考えなくて
はなりません。緊急の場合は24時間リージョナル・センターに電話できるようになっています。グ
ループホームは人数が少ないこともあり、入居者やスタッフが同居して家族のような親しい関係を結
んでいくので、障害者である自分の子供の新しい家族である他の入居者やスタッフへの親しみや感謝
の念が子供の日常の幸福を支援することも認識してください。
rrrrr
参考資料:
“Understanding Residential Care/What Every Parent Should Know”
Frank D. Lanterman Regional Center & Harbor Regional Center
April 1989
60
公的福祉プログラム
■ SSI(生活援助金)
■ IHSS(在宅補助サービス)
■ MEDI-CAL(医療保護)
■ CCS(カリフォルニア・チルドレンズ・サービス)
61
■SSI (Supplimental Security Income)/生活援助金
SSIとは連邦政府から保障された、障害者が社会の一員として自立し、生産性のある生活を営むことを
目的とした、経済的生活を援助するお金のことです。SSIは障害者が生涯を通して受け取る主な生活費
としてとらえるのではなく、むろん個々人の障害の度合によって異なりますが、あくまでも本人の経
済生活を手助けするため又は踏台としてとらえることが望まれます。障害者の自信と誇りに満ちた自
立に不可欠な障害者自身の就労を奨励するため、この福祉プログラムには、就労の結果受ける報酬が
援助金の停止に繋がらないよう様々な労働奨励項目がもうけられています。SSIを受け取る基本条件は
障害の有無と収入の額で査定されるので、障害者が18才を過ぎると本人の収入のみが査定の対象に
なり、多くの障害者がこの援助金を受けられることになります。又障害者が18才未満でも親の所得
が低い場合は、障害の証明と所得証明を提出すればその障害児本人に対しSSIが支給されるので、該当
者は最寄りのソーシャル・セキュリティー事務所で申請することをお勧めします。
対 象 者
*
資産が非常に少ないかもしくは全くない
*
医学的に障害者である
*
仕事に就いていないか就いていても実質的な基本収入(注)レベルを下回る。視覚障害者の場合
は仕事に就いていても対象となり得る。
注:実質的な基本収入額は毎年変わるので直接ソーシャル・セキュリティー事務所で確かめること。
ちなみに1996年は$500/月(控除後の額)
。
1997年5月現在の時点ではこれらの保護は市民権をもつすべてのアメリカ国民と永住権所有者を
対象に提供されていますが、対象者が子供で親が永住権所有者の場合、過去に親がソーシャル・セキ
ュリティーへの支払をある一定期間行った場合という条件が最近追加され、事務手続きが繁雑になっ
ています。各自状況が違うので、ソーシャル・セキュリティー事務所に直接出向き相談してください。
援助金額の算出方法
金額内容は本人の1)現在の収入額、2)住居の状況、3)在住州 に基づいて算出されますが、連
邦政府の基本金に各州がその州独特の方法で算出した額を加算して支給されます。金額は毎年物価変
62
SSI
動に合わせ調整されます。査定対象とされる収入は本人の労働収入、その他の収入、配偶者の一部収
入、本人が18才以下の場合は両親の収入などです。学費や教科書、他の教育費のための奨学金や補
助金などは査定対象になりません。又労働奨励項目にそって収入の一部を査定から外す場合もありま
す。SSI受給者になったら、収入の変化、住居の変更、結婚などSSI額に影響する内容は変化のあった
月の次の月の10日までにソーシャル・セキュリティー事務所に報告することが義務づけられていて、
その変化は2ヵ月後のSSI支給額に反映されます。この報告を怠ると、増額分はもらえないばかりか、
減額の場合はさかのぼって払い戻しを請求されることもあります。親の家で世話を受けている場合、
連邦基本額の最高1/3が減額されます。しかし障害者本人の負担額を領収書などで証明するなどし、
ある程度の金額の調整にはソーシャル・セキュリティー事務所は柔軟に対応してくれます。
労働奨励項目(Work Incentives)
ほとんどの人々が労働意欲をもっています。障害者の場合その労働意欲を失うことなく同時に援助金
の支給を受け続けるのが、自立に到達する早道です。現在全国で3百万人以上の障害者がSSIの支給を
受けていますが、その中には、仕事に就きたいが就いたら最後SSIやMedi-Cal(医療保護保険/P7
2参照)を打ち切られるのではとの心配から積極的な求職活動を控えている人達もいますが、その様
な人達に仕事に就きながらなおかつSSIの支給も受けられるように考えられたのが労働奨励項目です。
この労働奨励項目を利用して仮に$1,000以上の所得収入があってもSSIを受け取ることが可能で
す。SSI受給障害者である以上仮に仕事に就いてもすぐにSSIが打ち切られることはなく、又収入が基
本所得額を上回りSSIがストップされたとしても、失業した場合12ヵ月以内ならすぐに再申請を要す
ることなくSSIが再支給されます。収入査定から控除される労働奨励項目は:
1)障害に関係した職業経費
2)所得収入特別控除
3)学生所得特別控除
4)視覚障害者職業費
5)自立計画(=PASS)
6)自営用不動産
7)第1619労働奨励条項
63
さて項目別に詳しく説明を加えてみます。
1)障害に関係した職業経費..障害者の職場での労働を可能にするために要する特別な器具、サービ
スや保険でカバーしない医療費などで、障害者本人が負担している金額。
例: * サポート人材費/職場でのサポートを提供する人材、仕事場への送り迎えや身支度をヘルプす
る人材、家族がヘルプを提供しそのために経済的負担を強いられている場合の負担額など。休
日や家族からの経済的負担のないヘルプは控除不可。
* 送迎サービス/通勤に必要な車に障害に対応するよう行われる改造費。通勤に必要なヘルプや
交通費で健常者以上に特別必要とされる経費。通勤走行距離の一部額。車の購入費や障害に無
関係の改造費や通勤以外の経費は査定控除にならない。
* 医療器具/車椅子、血液透析器具、ペースメーカー、人口呼吸器、牽引(けんいん)器具など。
* 特殊器具や人材/片手タイプライター、タイピング補助器具、聴覚障害者用電話機、視覚障害
者用補助器具など。視覚障害者専用のアシスタント、聴覚言語障害者の通訳、指導員など。障
害者本人が支払わない分や本人が自営業ですでに経費でおとしている分は控除対象にならない。
* 人工補綴(ほてつ)/義足、義手など、美容整形目的のものは控除不可。
* 住居の改造/外に通勤する障害者の場合家屋の外(ドライブウエイなど)でアクセスを可能に
するために行われる改造費や、自分の住居を利用して自営業を営む場合のみ障害に対応するた
めの内部の改造費。
* 障害に関する医療費/障害に対する治療やセラピーや薬品、医者への支払い。健康診断やアレル
ギー治療、歯科治療、眼鏡など健常者と同範囲内の医療費は控除対象とならない。
* 医療検査費/障害に関係した分野で、病気の治療や管理や診断を目的としたもの、障害と関
係のない分野や、他の機関や保険から支払われる分は控除不可。
2)所得収入特別控除..ほとんどの障害者が収入(作業所などでの収入も入る)に対する特別控除を
受け、結果SSIの支給が受けやすいように考慮されています。ソーシャル・セキュリティー事務所は個
人の得た収入のまず$85を控除し残りの1/2も控除した残額のみを査定対象収入とみなします。
3)学生所得控除.
.22才以下で学校に通っている障害者に対して最高月額$400、最高年額$1,620ま
で所得から控除されます。条件は少なくとも1つ以上のコースを大学なら最低週に8時間、7∼12年生な
ら週12時間、職業訓練なら週12時間(コースによっては15時間)
、障害の内容により在宅学習の場合は
該当機関からの該当者の派遣を受けている場合で、先述の所得控除に加えてさらに控除されます。
64
SSI
4)視覚障害者職業経費..視覚障害者がその所得を得るために必要とした経費は控除されます。控除
対象経費は障害に直接関係した経費に限らず控除できます。
例:盲導犬費用、通勤にかかる交通費、連邦・州・地域所得税、社会保障税、点字通訳、視覚エイド、
組合費、身辺のケアーサービスなど。
5)自立計画(Plan for Achieving Self-Support = PASS)..この項目は障害者が収入の中からあ
る金額を一定期間将来の目的のために貯金し、その金額を対象収入から控除する方法です。目的は教
育、職業訓練、新ビジネスなど色々です。この控除の承認はその計画が本人に合ったものであるか、
実現可能のものであるか、その目的に到達するのに使われる時間は妥当(通常36ヵ月以内)か、貯金
の使われ方、貯金の仕方など多方面から審査されます。ソーシャルワーカーやカウンセラーなどのヘ
ルプを受けて計画を練るのが望ましく、ソーシャル・セキュリティー事務所でも提出方法などについ
て手助けをしてくれます。
6)自営用不動産..ビジネスの目的に使用される建物や個人が仕事場として使用する建物にかかる費
用は控除対象となり得ます。又必要道具や機械にかかる費用も控除されます。
7)第1619労働奨励条項..労働による所得を得ながら同時にSSIの支給も受けられ、この条項の
(b)項にはMedi-Cal(医療保護保険)も継続して受けられることが述べられており、1)∼6)の
労働奨励項目の法的擁護を意味しています。
さて具体的に労働奨励項目がどのように受給者に影響するのか実際の例をみてみましょう。
例:Aさんは当初SSIの支給額$470のみが毎月の収入でしたが、近くのファーストフード・レスト
ランでパートの仕事を始めました。その収入は月$215です。
SSI算出法 実質収入
$215(所得収入)
ー85(特別控除)
$130
÷ 2(1/2控除)
$215(所得収入)
$ 65(査定対象収入)
+405(SSI) *
$620(合計収入)
$470(1996連邦基本支給額)
ー65(査定対象収入)
$405(SSI連邦支給額)
65
*実際はこの金額に州支給額が
加算されます。
SSIの額は$470から$405と$65の減額になりますが、収入合計は$620と以前に比べると
$150増です。それに何といっても仕事をすることの充実感、社会的に繋がりを持つことは本人の
満足度を高めるものです。さてAさんは熱心な仕事ぶりが認められ収入が$367に上がりました。仕
事場での働きをよりスムーズにするためAさんは電動車椅子を購入し、それへの支いが月々$52発生
してきました。
SSI算出法
実質収入
$367(所得収入)
ー85(特別控除)
$367(所得収入)
$282
+355(SSI) *
ー52(職業費)
$722(収入合計)
$230
÷ 2(1/2控除)
*これに州支給額が加算されます。
$115(査定対象収入)
$470(連邦基本支給額)
ー115
$355(SSI連邦支給額)
さて一年後Aさんは大学に入学してある資格を取りたいと思うようになりました。ソーシャルワーカーの
助けを借りてAさんはPASS(自立計画)を作り、毎月$75をそのために積み立てることにしました。
SSI算出法
実質収入
$367(所得収入)
ー85(特別控除)
$367(所得収入)
$282
+430(SSI) *
ー52(職業費)
$797(収入合計)
230
÷ 2(1/2控除)
$115(査定対象収入)
ー75(PASS)
$ 40(査定対象収入)
66
*これに州支給額が加算されます。
SSI
$470(連邦基本支給額)
ー40
$430(SSI連邦支給額)
PASSを作り将来の設計をすることによって、SSI支給額が増えたのが分かります。
上記はほんの一例にすぎず、個々人それぞれの障害内容による限界があり一口に自立といってもそう
簡単なものではありません。しかし親がいなくなった後も長い人生を歩んで行くであろう障害を持つ
子供に、自立の重要性・必要性や労働の価値を教えたい親は、少しずつ時間をかけて自立に近づける
方向性を見つけてあげることは可能です。自立の基盤になる経済生活のため、親の経済状態に無関係
に、障害者は18才になったらすぐにSSIを申請し、SSIをうまく利用しながら小さくても自立という
階段を一歩一歩上がり始めることが重要です。
rrrrr
参考資料:
Social Security Administration
SSA Publication No. 05-10095
SSA Publication No. 64-030
私が
学んだこと
一人一人事情が違うので、最初から
決めてかからないで、SSIの申請は
とにかくやってみる事を勧めます。
(E)
67
■IHSS (In-Home Supportive Services)/在宅補助サービス
IHSSは、連邦政府からの一部財政援助を受けて州が障害者や病人に対して提供する福祉プログラムで、
自身でできない日常の世話を頼むヘルパーに対する人件費の負担を援助するもので、County Welfare
Offices(郡福祉事務所)が実際の業務管理を行っています。IHSSプログラムは、対象者が日常生活
を営む上で自分でできない内容、例えば、家事(洗濯、料理、掃除、買い物)、準医療(注入、吸引)、
保護監視(事故に対する安全監視)、身の回りの世話(入浴、着替え、下の世話、食事)、医者への送
り迎えなどに関してヘルパーを必要としている場合その人件費を負担します。ヘルパーは郡と契約す
るエージェンシーから派遣される場合と、対象者本人の選んだ人材に支払われる場合とがあります。
対 象 者
自宅で安全に過ごすためにはIHSSのサービスが不可欠な人で、同時に下記の条件の一つでも満たす人ー。
1. SSI(P62参照)を受給している人
2. SSDIを受給しているか、SSADC(Social Security Adult Disabled Child)を受給している人
でSSIの資産限度額に該当する人
3. 他の収入源があるがSSIの障害の条件に該当し資産限度額にも該当する人
4.労働に従事しているがSSIの第1619(a)項または(b)項の対象の人
5.所得が上がりSSIの支給が止められたが、障害があり日常の世話にヘルプが必要で、かつSSIの資
産限度額に該当する人
SSIの支給を受けられないだけの収入源がある場合も、一部負担をしてIHSSを受けられる場合があります。
IHSSから支払われるサービス内容
障害者が自宅で安全かつ/又は自立生活を維持するために必要と認められた下記のサービス:
*
家事一般(掃除(台所、風呂場を含む)、整頓、ゴミ処理、シーツ取り替え、その他)
*
大掃除(IHSSの開始時や病気の内容によって(アレルギー等)掃除が必要と認められた時)
*
関連サービス(調理、テーブルの用意と片ずけ、洗濯、アイロン、買い物など)
*
身の回りの世話(下の世話、カテーテルや人工肛門袋取り替え、人工呼吸器に関する補助、酸素
吸入に関する補助、器具の清掃、食事介助、入浴、洗面、着替え、床ずれ防止マッサージ、車椅
子などの器具のケアーなど)
*
送迎サービス(医療関係場所への送り迎え)
68
IHSS
*
庭の掃除(危険を防止するための内容のみ(出入り口の雪かきや伸びた雑草抜き))
*
保護監視(自分で危険の判断ができない重度障害者への保護監視)
*
トレーニング(IHSSに頼っている部分で訓練次第で自身でできると思われる仕事に対する訓練)
*
準医療(専門家の指導のもとでの注射、体操、吸引、カテーテルの取り付け取り外しなど)
提供されているサービス内容は一年に一回担当者が自宅訪問して再審査しますが、受給者の方から状
況の変化に合わせいつでも再査定を要求できます。又何かの都合で短期間のみ追加時間や追加サービ
スが必要な場合なども連絡して認められれば受けることができます。
IHSSの申請
Medi-Calの申請場所と同じCounty Walfare Office(郡福祉事務所)で申請します。申請後County
からの担当者が自宅を個別訪問し、何時間のIHSSが必要かの審査をします。その際特別のニーズ(よ
り頻繁な入浴、特別食、長い食事時間、より頻繁な清掃、より頻繁な洗濯、週末や夜間のケアーなど)
は理由と共にはっきり説明することが大事です。もし注射、気管吸引や特別体操など準医療援助が必要
なら担当者に準医療用の書類にも記入するよう頼む必要があります。担当者は“SOC 293”と“SOC
293a”の2書類に対象者の必要IHSSサービス時間を書き込みます。その際そのコピーをもらっておく
と、後でCountyからの正式IHSS提供時間の案内がきた時どのようにその時間が算出されたか理解で
きます。
対象者は“non-severely” impaired(重度ではない)と“severely” impaired(重度)の2項目
に分けられ、重度でない場合は月最高195時間まで、重度の場合は月最高283時間までサービス
が受けられます。契約エージェンシーからヘルパーを雇う場合は個人で雇うよりこの最高提供時間が
少なくなります。重度の項目に該当する場合、月の最初にその月のIHSSトータル支払額を前払いで受
け取り、自分で雇ったヘルパーに直接その都度支払ができるようにアレンジすることも可能です。
雇うヘルパーは郡によって違いますが、契約エージェンシーを紹介される場合もあるし、対象者が
“重度”の場合は個人で気に入った人を雇うこともできます。契約エージェンシーは個々に賃金設定が
ありますが、IHSSのヘルパーへは通常最低賃金かそれに近い賃金が支払われ、職場での事故に対する
州保険のカバーも受け、その分賃金から社会保障費が差し引かれます。
69
子供もIHSSを受けられるか?
障害のある子供もIHSSの対象になります。仮に家族の所得がSSI限度額より高くてもIHSSを受け
られる場合もあります。子供に対するIHSSは 1)両親とも仕事で外に出ている間のケアー、2)両
親が共に障害者ゆえにできない部分のケアー、3)親が睡眠をとっている間のケアーなどですが、障
害児(又は病人)への休みないケアーから親を解放するのを目的とするIHSS提供もあります。時には
親自身がIHSSヘルパーとして支払を受けることもできますがその際家事に対する支払は認められてい
ません。親が支払を受けるには、1)子供への特殊ケアーの必要が原因で仕事に就けない場合でかつ、
2)他にヘルパーが見つからない場合でかつ、3)もし親のIHSSなしでは自宅でのケアーができない
か他では適切なケアーが受けられないと判断された場合のみです。自分の子供にIHSSの保護監視サー
ビスが必要と思ったら、同年令の健常児に比べていかに特別に常時目を離さずに監視する必要がある
かを説得する必要があります。成人に比べて子供の場合は、どの子でもある程度親の監視が必要なの
でこの項目でIHSSを受けるためにはリージョナル・センターのケースワーカーの援助を得て、
Countyの担当者に詳細に特殊性を説明する必要があります。
成 人 の 場 合
結婚している障害者がIHSSのヘルパーに自分の配偶者を選ぶことができます。又その配偶者へ、保護
監視や医療機関への付き添いに対するIHSSヘルパーとしての支払がなされる場合がありますが、それ
には 1)他に適当なヘルパーがいないために配偶者がフルタイムの仕事に就けない場合、2)配偶
者でなくては十分なケアーがなされないと認められた場合の2条件を満たした場合です。又、結婚し
ている相手が健常者で外で仕事に就いている場合、IHSSのサービスはその配偶者が仕事などで不在の
時や、その配偶者にも物理的に無理な内容(力のいる仕事など)、又は配偶者への休みないケアーから
の解放などに対して提供されます。
保護監視は“自身で判断ができない、知的障害又は精神障害を持つ人”に“危険、怪我や事故を防止
するための保護”を提供するサービスですが、病気又は医療関係(人工呼吸器や車椅子など)のみが
理由の場合や、医療的に緊急事態が想定されるといった理由や、動けないが自身で判断能力のある人、
非社会的行動や行動障害の制御を目的とする場合は対象から外されます。エージェンシーからや知り
合いを雇ってもよいし、親が成人障害者の保護監視をしIHSSヘルパーとしての支払を受けることもで
きます。
70
IHSS
そ の 他
IHSSに関する決定内容に異議がある場合は審理請求を要求することができます。書類受理から10日
以内か、又は決定内容履行前に審理請求を行えば、審理時まで現在のままの内容を受けられます。書
類の裏面にあるCountyに送付するか下記の社会福祉局に異議の理由を明確に書いて送ってください。
The Office of the Chief Administrative Law Judge
Department of Social Services
744 “P” Street
Sacramento, California 95814
Re: IHSS Fair Hearing
Name
Sate Number (申請者本人の場合はSSナンバー)
rrrrr
参考資料:
“IN-HOME SUPPORTIVE SERVICES (IHSS) SERVICE RIGHTS AND ENTITLEMENT
PROGRAMS AFFECTING DISABLED CALIFORNIANS”
Revised Edition
Protection and Advocacy, Inc.
71
■MEDI-CAL/医療保護保険
Medi-Cal(メディ・キャル)とは州と連邦政府が共に低所得者や障害者に対し提供する医療保護保険
のことで、SSI(生活補助金/P62参照)受給者、TANF(Temporary Assistance to Needy
Families/扶養子女のいる家庭への一時的生活補助)受給者、IHSS(在宅補助サービス/P68参照)
受給者は自動的にこの医療保護保険を受けることができます。他にも医療保護を必要としていると認め
られた場合、医療費の一部負担をしてMedi-Calを受けることができます。
対 象 者
SSI、TANFやIHSS受給者は自動的に対象になります。仮に収入が上がりSSIが打ち切られても、第
1619労働奨励条項(b)項に基づき、収入が労働を維持するために必要な医療費を賄うに十分では
ないと認められれば、Medi-Calのみ引き続き受けられます。Medically Needy Medi-Calは SSIや
TANFを受けるには収入の面だけで高すぎて該当しない場合その本人に対してや、子供に障害があり
親の資産も限度額以上ないにも拘わらず月収のみが多すぎる場合その子供に対してや、子供に障害は
ないがTANF扶養規定に該当する場合その子供に対して提供されます。Medically Indigent Child
Medi-Calは、21才以下の子供でSSIにもTANFにも該当しないけれど医療保護が必要と認められた
場合に提供されます。低所得家庭の妊婦や新生児、又は1才から6才までの子供の場合も、家族の所
得が州規定の額を下回る場合Medi-Calが受けられます。その他医療設備のあるナーシングホームなど
での長期ケアーを必要とする場合は特殊Medi-Calプログラムが適用される場合があります。1997
年5月現在の時点ではこれらの保護は市民権を持つすべてのアメリカ国民とすべての合法移民(永住
権やビザ所有者)を対象に提供されていて、一部非合法移民(妊婦や緊急医療など)にも適用されて
いますが、この非合法移民に対する保護の打ち切りと、合法移民に対する内容削減が州議会に提案さ
れて議論を巻き起こしています。この地で生まれた子供の場合市民権を持つので問題はありませんが、
親の転勤や移民などで合法的にではあれ途中でこの国に住み始めた人達にとっては自身の問題に繋が
るので気をつけて情報を入手してください。
サービス内容
Medi-Calは以下の医療に関しての支払をします。
* 医者の診断
* 成人用健康管理ケアー
72
MEDI-CAL
* 緊急医療サービス(医療機関はMedi-Calに即連絡する)
* 医者や医療サービス場所への送迎サービス(事前承認要)
* 診断を目的とした検査
* 外科手術(事前承認要)
* 支給許可リストにある医薬品(事前承認があれば他の医薬品も対象となり得る)
* 入院(事前承認要)
* 耐久型医療器具(車椅子など/事前承認要)
* オキュペーショナル又はフィジカル・セラピー(事前承認要)
* 歯科治療(事前承認要)
* ナーシング・ホーム入居(事前承認要)
* 精神・心理療法(事前承認要)
* 在宅看護サービス(事前承認要)
Medi-Calの申請
SSIやTANF又はIHSSの申請書が同時にMedi-Calの申請書を兼ねていますが、それらへの申請がなく
Medi-Calのみ申請の場合はCounty Welfare Office(郡福祉事務所)で直接それぞれ該当するMediCal項目に対して申請します。 SSIなどの申請で同時にMedi-Calを受ける場合はSSI支給と同月から
Medi-Calのカードが送られてきますが、申請月より3ヵ月さかのぼって発生した医療費の受給を申請
したい場合は直接County Welfare Officeに出向いてそれ専用の申請をします。所得が高すぎてSSI
を受けられない場合でも障害者の多くがMedically Needy Medi-Calを一部個人負担することにより
取得できるケースが多いので、申請してみることが大事です。仮に申請が却下されてもそれに対して
不服の場合は、必ず再審理を請求できるし、この再審理を請求したケースの50%までが最終的には
承認されるというデータがあります。プライベート医療保険もMedi-Calもなく医療サービスが必要に
なった場合、ほとんどがCounty Hospital(郡経営病院)で仮に受けられても最低限のケアーしか受
けられないので、医療費の高いこの国では医療保険は生活必需品です。
さて申請する項目をまとめてみますと:
*
SSI、 TANF 、IHSS受給者(自動的にMedi-Calも取得)
*
Medically Needy Medi-Cal(所得が高すぎてSSI支給対象にならないが、障害があり医療保護
が必要な場合。一部個人負担がある場合とない場合がある)
*
TANF-linked Medically Needy Medi-Cal(子供に障害はないが家族の収入・資産がTANF扶
養規定に該当する場合、その子供に対して支給)
73
*
Disability-linked Medically Needy Medi-Cal(子供に障害があり資産限度額以下の資産しかな
いにも拘わらず、家族の所得が高すぎてSSI対象にならない場合その子供に対して支給)
*
Medically Indigent Child Medi-Cal(21才以下の子供で上記のどれにも該当しないが、必要
な医療を受けるのが困難であると認められた場合、その子に対して支給)
*
1∼6才児対象Medi-Cal(低所得家庭(連邦低所得平均の133%以下)の幼児対象)
*
人工透析や非経口的栄養過剰症対象Medi-Cal
*
低所得妊婦対象Medi-Cal(妊娠期間と出産後60日までの妊娠関連医療/連邦低所得平均の18
5%まで。一部負担なし)
*
1才までの新生児対象Medi-Cal(低所得家庭の新生児対象/連邦低所得平均の185%まで。一
部負担なし)
*
特殊Medi-Calプログラム(その他色々な特殊ケースに対するプログラムあり)
この他にも長期ケアーを必要とする場合や、医療施設で生活している障害者を在宅ケアーに変更する
場合などには In-Home Medical Care (IHSS) Waiver(在宅医療ケアー特別措置)やSkilled Nursing
Facility (SNF) Waiver(医療養護施設特別措置)などでMedi-Calからの医療費支払をケアーを提供
やModel IHMC
する家族に移すことができます。又Model SNF Waiver(SNFモデル・ケース特別措置)
Waiver(IHMCモデル・ケース特別措置)など、重度の障害者(児)の在宅ケアーをより可能にする
ために、家族の所得や資産を査定対象から外し家族に対し経済的保護を提供する方法もあります。
そ の 他
各自事情は違うので、Medi-Calからの医療援助が必要な場合は直接County Welfare Officeに出向き
相談するか、リージョナル・センターの担当者に相談してください。なお子供が21才以下で障害があ
る場合、同時にCCS (California Children’s Services)からの医療サービスも受けられる場合もある
のでCCS(P76)の項も参照してください。 Medi-Calに関する決定内容に不満がある場合は審理請
求を要求する権利があります。この請求は、異議を唱えるMedi-Calの決定事項を記した書類=MediCal Notice of Actionの裏面の書類に記入し提出します。この審理請求期限は書類受理から90日以
内となっています。なお直接社会福祉局に手紙で審理請求を要求することもできます。宛先は:
74
MEDI-CAL
Office of the Chief Referee
Department of Social Services
744 “P” Street
Sacramento, CA 95814
Re: Medi-Cal Fair Hearing
rrrrr
参考資料:
“MEDI-CAL / SERVICE RIGHTS AND ENTITLEMENT PROGRAMS AFFECTING
DISABLED CALIFORNIANS” Revised Edition
Protection and Advocacy, Inc.
私が学んだこと
SSI受給者という事でメディキャルを自動
的に受ける場合でも、親の健康保険に入れる間は
そのまま両方の保険を保持するのが良い。メディキ
ャルが使える医者又は医療には限りがあるので、
引き続き十分なケアーを続けたい場合は個人
の保険を使う。メディキャルは
個人保険で支払われなかった
分を払ってくれたりする。
(K)
75
■CCS (California Children's Services)
CCSはカリフォルニア州が21才以下の身体障害児に対して提供する医療プログラムで、カウンティー
が実際の運営を行っています。CCSのサービスは家族の所得水準に関係なく診察・査定サービスが無
料で提供され、調整後総所得$40,000以下(1991年)の家族の場合CCSの治療サービスが受けられ
ます(一部負担の場合あり)
。仮に$40,000以上でも医療費に所得の20%以上の負担がかかる場合、
一部負担をしCCSの医療サービスが受けられます。 CCSは低所得と中流家庭に対し、低額医療サービ
スや医療器具の提供もします。公立学校を通してセラピーを提供する場合は所得は問題になりません。
対 象 者
重度の身体障害児が基本対象児です。
例:整形外科的障害、形成手術を要する症状(みつ口、口蓋裂、やけどなど)、心臓疾患、けいれん関
連障害、白血病、事故による怪我、視力障害、血友病、二分脊椎、脳性まひ、嚢線維症、多発性硬化
症、進行性ジストロフィー、鎌状赤血球、硝子体膜異常、視力障害、聴覚障害など。
2才以下の幼児の場合は、顕著な障害が現われていなくても上記症状が将来心配される場合は対象に
なり得ます。中枢神経の機能障害による重度知的障害児で、それに関連した身体的障害を持つ場合は
セラピーは提供されません。例えばダウン症児に心臓疾患がある場合、心臓疾患は医療サービスの対
象になりますが、知的障害に基づいた全体的発達の遅れや障害に対してのフィジカル・セラピーやオ
キュペーショナル・セラピーは提供されません。
申 請 の 方 法
医者や医療機関からの勧めで申請する場合が多いのですが、個人でカウンティーのCCS事務所(カウ
ンティー衛生局内)に直接コンタクトをとって申請することもできます。なお学校区を通してCCSの
サービスを受ける場合もあります。仮に所得や資産、移民ステータスにおいてMedi-Calを受けられる
と判断された場合はまずMedi-Calへの申請を要求されます。
サービス内容
大きく2種類に分けられます。第一は診断・査定サービスとCCSのメディカル・トリートメント・ユニット
(=MTU)又は契約しているセラピー機関などで提供されるオキュペーショナルとフィジカル・セラピーで、
76
CCS
これらは家族の所得に無関係に無料で提供されます。第二にこれは所得が関係してくる医療サービスで、こ
のサービスに該当すると個人の健康保険でカバーできない部分をCCSが支払ってくれますが、調整後総所得
(Adjusted gross income)$40,000(1991年)以下の場合家族の負担額は前年度支払った州所得税の
約2倍程度です。ただし低所得家族でMedi-Cal受給者の場合、多くがこの医療サービスも無料かそれに近い
形になります。仮に調整後総所得(Adjusted gross income)が$40,000(1991年)以上でも医療費
に所得の20%以上の負担がかかる場合、一部負担をしCCSの医療サービスが受けられます。
さてMTUは通常公立校の中に位置し、診断・評価、セラピーの必要性の評価や処方、適応器具(車椅
子など)やリハビリ器具(矯正用プレスなど)の処方、加えてセラピーも行います。医療サービスは
CCSに加入している医者、クリニック、病院、セラピストから提供されます。(セラピーの内容に関し
てはセラピーの項P79を参照)。
異議申し立て
申請者やCCSサービス受給者で、CCSの決定に不満がある場合は見直し請求(appeal)を居住カウンティー
のCCSプログラム宛に行います。決定の通知受理から30日以内に文書で提出します。 CCSは見直し請求受
理から21日以内に該当ケースに目を通し、決定理由を文書で説明します。これが第一段階審理となります
が、この返書でなおも納得がいかない場合、CCSに対して公正な聴聞会(Fair Hearing)を請求します。第
一段階の返書受理から14日以内に衛生局のディレクター(Director of the Department of Health Services)
に対して文書で要求します。その後実際の公聴会(hearing)が開かれ該当ケースが当事者を交えて審議され
ますが、その際本人の擁護・主張を代弁する人物を同行するのが望ましく、リージョナルセンターなどに相
談し、障害者の法律に詳しい人に請求など一連の複雑な作業も通して手伝ってもらうのがよいでしょう。
rrrrr
参考資料:
“CALIFORNIA CHILDREN'S SERVICES (CCS)
SERVICE RIGHTS AND ENTITLEMENT
PROGRAMS AFFECTING DISABLED CALIFORNIANS”
Protection and Advocacy, Inc.
“How to Advocate in the Systems Handbook”
Frank D. Lanterman Regional Center
77
私が学んだこと
医者やセラピストを変えることは
日本と違い簡単。文句を言いながら
通うよりよい。(W)
私が学んだこと
CCSのセラピーサービス学校区を通して受ける場
合が多いが、独特の査定方法が有り、知的障害による機
能不全に対しては、良くなる見込みが低いなどの理由で
対象にならない場合が多い。多くの
親が不満としているCCSの
体制。(W)
78
THERAPY
セラピー
■ セラピーの提供機関
■ セラピーの種類
79
■セラピーの提供機関
障害を持つ子供に対するカリフォルニア州でのセラピーは大きく分けて公立学校(Public School)シ
ステムを利用する方法と、私立病院や個人経営のクリニックなどの私立機関(Private Facility)を利
用する方法との2つがあります。さらに公立学校システムにはCCS (California Children's Services
P76参照)とLEA (Local Education Agency=School district)の2つの組織があり、障害の種類
によってどちらの組織を利用できるかが決まります。
CCS(カリフォルニア・チルドレンズ・サービス)
CCSはカリフォルニア州が提供し、各カウンティーが運営するヘルスケアーシステムで、医学的な診
断を受けたいわゆる身体障害児(例:脳性小児まひ、脊髄性小児まひなど)に対するセラピーを提供
しています。Medical Treatment Unit=MTUと呼ばれるセラピーが行われる場所をいくつかの公立
学校内に置き、OT (Occupational Therapy=作業療法)やPT (Physical Therapy=理学療法)の
サービスを行っています。CCSではサービスを受けるための独自の医学的診断条件を持ち、その条件
に合った障害児のみを受け入れセラピーを提供します。又CCSサービスの一部は、医療費の支払が困
難な保護者のための州ヘルスケアーシステムなので、経済状況と住居場所に関する条件もあり、条件
からはずれた場合はサービスの提供は受けられません。サービスを受けるためにはまず照会(referral)
のプロセスが必要ですが、それは医者、専門家、学校関係者に限らず誰でもリクエストすることがで
き、親が自ら手紙などでリクエストすることも可能です。照会が受理されると今度は申込書
(application form)が送られてくるのでそれを書いて送り返すと、条件の審査が始まります。審査を
パスするとアセスメント(assessment=査定/評価)を受け、このアセスメントでセラピーの必要性
が認められた場合セラピーが開始されます。
LEA(ローカル・エジュケーション・エージェンシー)
LEAはいわゆる学校区(school district)と呼ばれる市教育委員会のことで、市内の個々の学校を統
括している組織です。そのなかでセラピーは“教育に関連したサービス(related services)
”に含まれ、
学校活動に関連した障害を持つ児童に対する治療を提供しています。なんらかの理由でCCSのサービ
スを拒否されたもしくはサービスを打ち切られた障害児はLEAにセラピーの提供をリクエストする
ことができます。LEAはリクエストを受けると必ずアセスメントを行う義務があり、その結果サー
ビスが子供にとって有益であると認められると、セラピーが開始されます。サービスを受けるにはこ
80
セラピー
こでも照会が必要で、通常、スクール・サイコロジスト(School Psychologist=学校専門心理学者)
と呼ばれる心理学者が個々のクラスの教師と共に、問題のある子供をそれぞれの関連サービスの担当
者に照会します。しかし実際には親が直接スクール・サイコロジストか、又はそれを飛び越えて特殊
教育(Special Education)の事務局に文書でリクエストしない限り、障害が軽度の場合など関連サ
ービスへ照会される可能性は少ないのが現実です。さてアセスメントでセラピーの必要性が認められ、
有益性が確認されるとスクール・サイコロジストを中心にして、セラピーの種類やスケジューリング、
両親や学校関係者を交えて行われるIEP(P35参照)ミーティング、そしてdischarge(セラピーの
打ち切り)といったプロセスを踏むことになります。
幼稚園児や低学年児童の障害はOTとPTの分類が難しく、多くの場合はアセスメントを受け、その後の
セラピーもco-treatment(共同治療)又は一方のセラピーが両方のセラピーをカバーするという形を
とります。しかしやはり肢体に不自由がある場合(例:歩行困難、姿勢維持の困難)はPT、学校での一
般的な活動に困難がある場合(例:教師の話が理解できない、集中力がない、えんぴつ/はさみが上
手に使えない、仲間との活動に参加できない)はOTを中心に受けます。高学年になると必要なセラピ
ーの種類もはっきりしてくるためOTとPTが別々に提供されることが多くなります。又障害児の中には
神経組織の異常を伴う子も多く、その場合言語障害が現われることがあります。その結果子供の学校活
動に明らかに支障がある場合、子供はST (Speech Therapy)を受けます。その他Mobility Therapy
(多くの場合は極度の視力障害又は全盲の子供のために、学校を含めた地域のあらゆる施設へのアクセ
スや利用能力の向上を図るためのセラピー)など、特別なサービスを提供するLEAもあります。
私立機関(Private Facility)
私立機関のサービスを利用する場合、アセスメントも含めセラピー料はとても高額なので、医療保険
がカバーしてくれることが保護者にとっては第一条件となります。照会の方法も様々です。私立の専
門家やクリニックを利用する場合は利用する前にできるだけの情報を、例えば、どのようなセラピー
を提供しているのか、セラピーの目標と子供が必要としているものが一致しているのか、どの程度の
頻度でセラピーを受けられるのか、どの程度の割合で保険がカバーしてくれるかといった情報を手に
入れることが大切です。
81
■セラピーの種類
オキュペーショナル・セラピー(作業療法)= OT
“Occupation”は日本語では通常“職業”と訳されます。そこから多くの人はOTを単なる職業訓練と
考えるようですが、実際には人間の生活におけるすべての“作業(活動)”に対する療法を意味します。
小児OT(pediatric OT)でも子供の日常生活に必要な能力の回復または修正が第一の目標です。子
供の活動は大きく分けて日常生活活動(activities of daily living=食事、着替え、入浴などの身辺
活動)と、学校活動(school activities=書く、読む、運動など)の2つになります。分かりやすく
分けると、前者(日常生活活動)をCCSが請け負い、後者(学校活動)をLEAが請け負います。
先にも述べたようにCCSでは肢体不自由児、例えばCP(cerebral palsy=脳性小児まひ)、SB
(spina bifida=二分脊椎)、TBI(traumatic brain injury=外傷による脳障害)などの障害を持っ
た子供を対象にしています。多くの場合週に1∼2時間(1時間x1∼2回又は30分x2∼4回)の
セラピーを1対1で受けます。場所はMTU(Medical Treatment Units)に子供が出向いて行われ
るのが一般的ですが、子供の外出能力(例:歩行、車椅子での車の乗降など)に著しく問題がある場
合は、子供の学校や家庭にセラピストが出向いて行われることもあります。セラピーの内容は例えば
CPで四肢にまひがある子供にどのように洋服を一人で着るかを教える場合、自由に動かない手/腕で
洋服を頭上に持ち上げるのではなく、上半身をかがめて頭を洋服の位置に持っていくといった方法を
繰り返し訓練します。又様々な道具(adaptive equipment=障害に適応するために改良された道具)
を用いて、より効率的な方法の訓練もします。例えば脳障害で利き腕を含む半身が不自由な子供に食
事の仕方を教える場合、カフの付いたスプーンで手のひらを一定の方向に向けたまま、手首やひじの
代りに肩を動かして食べ物を口まで運ぶ訓練を繰り返します。またCCSでは様々な副木(splint)も作
製し提供します。OTの副木は主に指と手首の関節の矯正を目的としています。よくみられる症状は親
指の付け根の亜脱臼(subluxation=関節が完全に固定されていない状態)、神経異常に伴う肢体反応
(associate reaction)による手首の屈曲(flexion)や回内(pronation)異常などで、それらを正常
な状態に近づける矯正をします。以上のようにCCSでは主に医学的サービス(大人では医学的リハビ
リテーションにあたる)を提供しています。
次 に L E A で す が 、 学 校 活 動 に 関 連 す る 障 害 と し て は 例 え ば 自 閉 症( A u t i s m )、 学 習 障 害
(LD=Leaning Disability)などを含み、それらの障害を持つ子供にセラピーを提供しています。こちら
も多くの場合は週に1∼2時間(1時間x1∼2回又は30分x2∼4回)のセラピーを1対1で受け
82
セラピー
ます。場所はそれぞれの学校区によって異なります。セラピー・ステーション(Therapy Station)
を持つ学校区では子供が決まった時間に学校区から提供されるバスの送迎でステーションを訪れます。
セラピー・ステーションを持たない学校区ではセラピストが自らそれぞれの子供も学校に出向き、教
室や体育館でセラピーを行います。又LEAに独自のセラピー部がない場合は、親が自らセラピーに
指定された病院などの施設に子供を送迎しなければなりません。セラピーの内容は、例えば文字が上
手に書けない子供にはそれぞれの文字の形を書くことからではなく、他の媒体(例:パズル、ひもな
ど)を用いて教えることから始め、凹凸のある筆記練習用紙を用いての書き方練習などに進み、徐々
に通常の書き方訓練にまで導きます。又自閉傾向のために極度のコミュニケーション困難を持つ子供
には、カードを使ったコミュニケーション(意図する内容のカードを指したり、組み合わせたりする)
や、コンピューターを使ったコミュニケーションの訓練をし繰り返します。ADD(注意欠陥障害/P
122参照)の子供にはゲームを使って、ルールの理解や長時間の集中力を養う訓練をします。
OTを受ける心構え
小児OTの問題点の一つに、障害を持つ子に対する家族の過剰な保護傾向が上げられます。特に子供が
幼い場合、親はつい子供の活動に手を出しがちでなかなかセラピーのゴールが達成されにくいのが現
状です。OTの目的は、将来の身体的、精神的、社会的に独立した生活を目指すものです。できないか
らと親が手を貸している限り子供は自分で物事に取り組む姿勢を育てることができず、その状態での
セラピーでは進歩が少ないのはいうまでもありません。親は冷静にOTの意味や必要性を認識し、自ら
がその方向性に沿って子供と関わっていくのがよい結果に繋がります。OTは単に様々な作業/遊戯を
紹介するセラピーではなく、医学的知識を下地に発達してきたセラピーです。どのような動きがどの
ような脳の発達を促し、どのような動きに応用されるのかを理解して、治療内容すなわちセラピーに
おける作業/活動が決定されます。作業/活動への自らの取り組みを通じて、子供は人間の生活に必
要とされる様々な能力を修正、又は習得していくのです。仮に一つの遊戯療法が、使われる道具や方
法が家庭でもできそうな内容の場合、ただ真似をするのではなく、どこにポイントがあるのかセラピ
ストに質問しアドバイスを受けるのがよいでしょう。家庭でも継続して効果的な遊びや行動を取り入
れることは、週1∼2回のセラピーのより効率のよい利用法で、ほとんどのセラピストはそういった
親の積極性を歓迎し、色々と家庭でできることや気を付けるべき点などを専門的知識に基いてアドバ
イスしてくれます。OTをより有効に利用し成功に導くために、セラピストにどんどん質問し、学び、
日常レベルでセラピーを取り込む努力をしましょう。
83
フィジカル・セラピー(理学療法)=PT
PTは日本でもアメリカでも医学的リハビリテーションの支柱的役割をはたしています。PTはOTと異
なり、肢体の不自由な障害者を中心に、運動機能の回復を目標としたセラピーを提供します。
CCSではPTの対象となる診断、時間、場所などはOTの場合と同じです。セラピーの内容は、例えば
脳性まひの子供で筋肉の緊張が著しく激しい場合は、それを取り除くためのマッサージ、ROM
(Range of Motion=関節可動域)訓練などを、反対に筋肉に緊張がなく力が入らない場合は、適度な
抵抗を徐々に加えることで筋肉増強の訓練などを行います。加えて、座位や立位をバランスよく保つ訓
練を様々な器具(例:セラピー・ボール、歩行器など)を用いて、長期にわたって積み重ねます。又
CCSのPTもOT同様、副木(splint/副木の素材は樹脂やウエットスーツの素材が一般的)や補装具
(brace)を作製し提供します。PTの副木は主に足首の関節の矯正を目的としています。こちらも神経
異常に伴う肢体反応(associate reaction)による足首の異常な伸展(extension)や内反
(inversion)又は外反(eversion)などがよく見られる症状で、それらを正常な位置に近づける矯正
をします。ただ副木は身体の要求と異なる位置に関節を固定するため、たいていの子供は長時間にわ
たる着用を嫌がります。そのためセラピストは徐々に着用時間を増やしながら慣らしていくスケジュ
ールを組みます。
次にLEAですが、こちらもOT同様、学校活動に関する障害、特に運動に関する障害を持つ子どもに対す
るセラピーを提供します。Gross Motor Activitiesと呼ばれる全身運動活動(例:走行、跳躍など)は、子供
の学校活動の基本的な運動で、それらをスムーズに実行できない子供は様々な運動活動への参加が難しくな
ります。セラピーの時間と場所はOTの場合と同じですが、セラピーの対象となる子供はOTの場合とは異な
り、歩行などの生活に必要な運動機能は持ち合わせてはいても、多少高度な能力を必要とする運動、例えば、
平均台、ブランコ、シーソー、トランポリンなどはぎこちない動きで実行したり、全く実行できないという
ような症状の子供を対象とします。セラピーの内容は先に述べたような高度な運動に対応できるバランスを
保つ訓練、筋肉増強訓練などを、様々な器具(例:セラピー・ボール、車輪付きのボード、スイング・プラ
ットフォーム(ブランコの応用形)など)を使って行います。LEAのPTでは、子供はもともと基本的な運
動機能を持ち合わせていることが多いので、色々な器具を使ってのセラピーは子供を魅了し、子供をセラピ
ーに溶け込ませるのも比較的簡単です。ただし、単なる発達の遅れによって、年令に匹敵する運動能力を持
ち合わせておらず、いずれ追い付くであろうと判断されるとセラピーの提供を拒否されることも多いので、
アセスメントの結果をよく検討し、子供の異常の早期発見に努めることが重要です。
84
(文:糟谷和美/USC療法士科大学院生)
ADVOCACY
擁 護 ・ 主 張
85
ADVOCACYとは
ADVOCACYを辞書で引いてみると“擁護・支持・主張”等の訳が出てきます。一見分かるようで具
体的内容となると把握しにくい言葉です。ADVOCATEするー主張するー行為は日本で生まれ育った
私たちには不慣れでゆえに不得手と感じる方が多いのではないでしょうか?しかしこの国で子供を育
てる、それもその子に障害がある場合、避けて通れないのがこのADVOCACYの問題です。できれば
ADVOCACY等とは無縁に、子供のことは学校に任せてという事なかれ主義では、よりよい環境、学
習、治療を子供に与えて少しでもよりよい発達を促したいという親の願いはかなえられにくい現状で
す。一言でいうと、主張できる親とできない親とでは子供が受けるサービスに違いが出てくるのが、
この国の障害者教育の実情です。日本で小さいころから自分の権利を理論立てて主張する訓練を受け
ていないばかりか、時には主張しないことが美徳と教えられた文化的背景を持つ私たちは、具体的に
ADVOCACYを理解し、主張・説得する力を身に付ける必要があります。リージョナルセンターから
のパンフレットによるとADVOCACYとは:
1.自分自身に自信を持ち/かつ他人を尊重する
2.的確な言動や決定のための必要方策を探す/又は提供する
3.個人の権利を知る/又は知らせる
4.問題を分析する/又は問題点を指摘する
5.適当な機関に積極的にコンタクトをとる
6.適当なサービスを見つけるための援助を探す/又は提供する
7.他の可能性に関して質問する/又は提供する
8.必要な立法のためのロビー活動
9.必要に応じての技術援助又は訓練を探す/又は提供する
10.情報が不明確な場合は説明を求める
11.仲裁を必要としている人に援助を提供する
12.共通の支持や行動を持つグループを探す/又は情報を提供する
13.争いの解決のためには考えられるすべての方法を講じる
14.障害者本人、両親、専門家間の相互情報提供、義務、行動を伴うパートナーシップの確立
ADVOCACYではない行動:
1.相手に対する威圧的態度
86
ADVOCACY
2.要求を突き付ける
3.他の人をコントロールしようとする
4.適切と思われないサービス内容をそのまま受け入れる
5.障害者のニーズに合わない又は適さない法律を現状維持で受け入れる
6.グループの問題を個人で決定したり又はしようと試みる
7.他人に代って決定する
8.情報を受けないままの状態
9.問題解決の第一歩に訴訟を考える
10.共通の問題を抱える人達とのみ行動する
11.仲裁を必要としない人に代って仲裁をかってでる
12.我々対彼等という敵対心
13.あるADVOCACYのうまい人にすべて頼ってしまう
14.コミュニケーションの壁を自ら作ってしまう
となっています。これでみる限り、難しい法律内容に精通する必要がある訳でもなく、又弁護士のよ
うに相手に威圧感を与えつつ言葉たくみに相手から欲する言葉を引き出す技術を必要とする訳でもな
いようです。要するに“自信を持って自己の要求するところを堂々と説明し、相手の話にも十分に耳
を傾け、さらに要求が通らない場合は喧嘩ごしにならず、さりとて争いを避けたいがための事なかれ
主義で不満な内容を甘受することもせず、紳士的態度で納得のいくまで質問し、解決策を探って最終
的には主張内容を獲得する”といったところでしょうか。ここで技術的に必要なことは、要求を指示
するに当たり、親側が子供に関する資料をきちんと整理していること、なぜ必要なのかを説得するた
めの材料や資料を出し惜しみしないこと、それも言葉だけよりも形のあるもの(専門家からの手紙、
治療が必要と思われる言動のビデオ等)がより説得力をもっています。なによりも子供のことは親が
一番よく知っているという自信も必要だし、それだからこそいくら専門家といえども他人が自分の子
供のことをきちんと把握していなくても当り前、自分がその人達に効率よく教え説得しなくてはとの
心意気が相手にも通じます。他には記録する癖をつけること(話し合いの日時、出席者、内容)と、
基本的な障害者の法的権利の知識(本書P44、91参照)が必要で、どうしても同意が得られない
場合はすみやかに公正な審理請求を諮問委員会に対して請求し、より異なった観点から要求内容を審
理してもらいます。この公正な審理請求は必ず保障された権利ですが、審理にかける前にインフォー
マルな仲裁者による話し合いが持たれ、再度話し合いで解決しようと試みられます。これら一連の作
業に際してそれまでの経緯の記録が役に立つのは言うまでもありません。審理請求を起こす前に障害
者の権利に詳しくADVOCATEを手助けしてくれる機関や個人に助けを求めるのも一案です。リスト
87
はディレクトリーのADVOCACYのページを参照してください。下記は連邦法にも基づき障害者の権
利の擁護や相談、照会を無料で行う非営利団体です。
Protection & Advocacy, Inc. (800)776-5746
Main Office
私が学んだこと
100 Howe Ave., Suite 187-N
Suite 1550
Sacramento, CA 95825
(916)488-9550
Southern California Office
3580 Wilshire Blvd.,
自分(又は子供)の権利を主張するということは相手に
対して威圧的に話すということではない。まず話す相手を十分
尊重しつつ、自分の考えを主張する。相手の考えに同意できない
場合や、やり方に対する不満は、その旨その場でちゃんと伝える
ことが相手に対しても親切で誠意のある態度。表情やニュアンスで
相手の意を汲むなどということはこの国
ではありえないと思うのが利口。
コミュニケーションは意思を言葉に
して初めて成立する!(G)
Suite 902
Los Angeles, CA 90010-2512
(213)427-8747
Oakland Office
1330 Broadway,
Oakland, CA 91206
私が学んだこと
(415)839-0811
Developmental Disabilities Area Board 10
4146 Lankershim Blvd., Suite 404
North Hollywood, CA 91602
(818)508-2260/Fax (818)508-2267
医者や学校関係者と親である私達は対等な
立場におり、先方の意見や勧めに対して、私達の率直な
意見や感じたこと・希望をはっきり伝え、親と子供が違和
感のないベストな方法を探していくというやり方が徹底して
いると思う。親がコーディネーターとなり、最終的な意思決定
を下していくというのは、理にかなっているし私には
とてもやりやすいが、同時に専門家と話し合えるだけの
知識や行動力も要求されるので、私は今
“親業”という専門職に就いている
という意識が強くなった。
(S)
88
ADVOCACY
Protection & Advocacy, Inc. 出版物リスト
PAIでは障害関係の出版物を色々出版しており、電話で頼むと送ってくれます。10ドル前後の寄付
を頼まれます。この中のいくつかは様々な言語に訳されていますが、残念ながら日本語訳のものはあ
りません。
■発達障害/精神障害関係出版物
Access to the Courts
ADA Employment Rights
Assurance Grievance Procedure
Client Grievance Procedure
Durable Powers of Attorney for Health Care
Fair Hearing Videotape
General Advocacy Videotape
Guardianship Booklet
IHSS Manual (Service Rights)
Medi-Cal Manual
PAI Newsletter, back issue
PAI summary of Services
PAI Three-year Plan
PAI Brochure
Reforming Seclusion and Restraint
Social Security Manual
SSI-Linked Medi-Cal Eligibility
Summary of PAI Authority
TOP Brochure (Transportation Ombudsman)
You have the Right
■発達障害関係出版物
California Children's Services
Federal Definition of Developmental Disability
89
私が
学んだこと
スクールバスには1時間以上乗っては
いけないということが決められている
はず。朝早いpick upを避けられる
理由になる。(W)
IHSS Fair Hearing Packet
Lanterman Act Manual
Obstacles to the Lanterman Act
Special Education Rights & Responsibilities, Chapters 1, 4, 6
Special Education Rights & Responsibilities (CASE) Manual
SSI Parent/Child Deeming Packet
State Definition of Developmental Disability
■精神障害関係出版物
Introduction to Self-Advocacy
Involuntary Psychiatric Hold
LPS Conservatorships
LPS Case Summaries
Mental Health and the Rights of Minors
Peer/Self-Advocacy Manual (Abridged)
Probable Cause Hearing Manual
Rights Afforded to Persons under LSP
Rights of Persons Subject to the LPS Act Who Are Not on 72-hour or 14-day Hold
Rights in Residential Care Facilities
Study Guides for Peer Advocacy
Summary of Grave Disability
私が学んだこと
この国では“先に口を開いたものが勝
ち”のように思う。英語がうまくしゃべ
れるかしゃべれないかは二の次で、一番
うまくやっていく鍵は、“自分に相手と意
思疎通をしていく気があるかないか”に
あると思う。(S)
90
障害者関連の法律
■ リハビリテーション法(PL93-112)
■ 発達障害の定義(連邦法と州法)
■ カリフォルニア州法(ランターマン法)
教育関連の法律は「学校について」の章で説明しています。
91
■PL93-112: Rehabilitation Act of 1973
(リハビリテーション法)
広くリハビリテーションに関する決まりを定めた連邦の法律で、例えばリハビリのための制度や器具
の提供などについて書かれています。連邦の機関や、連邦の補助金を受けている機関やプログラムへ
の雇用などについて、障害者に対する差別禁止を定めているのが、第504項です。504項は次の
ように定めています。
(a)
連邦政府の財政援助を受けているいかなるプログラムや活動、または政府機関や郵便局の行うプ
ログラムや活動において差別されない。
(b) ここでいうプログラムや活動とは、
(1) (A)
(B)
(2) (A)
(B)
(3) (A)
州・地方政府の部局や機関など
連邦の援助を分配している州・地方政府そのもの
カレッジ、大学などの教育機関
地域の教育機関、職業教育、などの教育機関
次のような企業、組合、その他民間団体
(i)
連邦の援助を受けているもの
(ii) 教育、ヘルス・ケアー、在宅、ソーシャルサービス、公園、レクリエーションを
その主要な事業をしているもの
(B)
連邦の財政援助を受けている施設
(4) その他、上記(1) (2) (3) のうち2つ以上によって設立されたもの
ここでは、連邦・州・郡などあらゆる政府関係機関、および政府の補助金を受けている事業体が対象
になり、雇用や利用に関して、障害があることによって人を差別してはならないとしています。雇用
差別はもちろんのこと、事業体のある建物に入ることができない場合や、公共のバスに乗れない、障
害があるために学校教育が受けられないなどの場合も禁止されます。
92
障害者関連の法律
■発達障害の定義
連邦法の定義(発達障害者の補助と権利法)
(Developmental Disabilities Assistance and Bill of Rights Act (DDA))
発達障害とは、重度で慢性的な障害が5才以上の個人にあらわれて
1)これらの障害が身体的あるいは知的な障害、または身体的かつ知的な障害によるものであり
2)これらの障害が22才以前にあらわれ
3)これらの障害が一生続くものとされ
4)次にあげる日常の生活を営む上での機能のうち3つ以上に大きな支障があるとみなされる。
1.自分で自分の身の回りの世話をすること
2.言語の認識と表現
3.学習
4.移動
5.自己決定
6.自立生活を実現する可能性
7.経済的に自立するに足る能力・技能
5)また、これらの障害によって一生あるいはある一定の期間、専門的または学問的な支援やサービ
スを受けるニーズがある者が「発達障害者」とみなされる。さらに、0才児から5才児のなかで9
将来「発達障害」になる可能性がありながら現在適切なサービスを受けていないものも「発達障
害者」とみなされる。
カリフォルニア州の定義(ランターマン法)
発達障害とは、
■知的遅滞(mental retardation)
■脳性まひ (cerebral palsy)
■てんかん (epilepsy)
■自閉症 (autism)
■その他、知的遅滞に関連した障害や、知的障害者に必要とされているサービスと同様のものを
必要としている人
93
などでこれらの障害が18才以前に始まり一生続くとみなされその障害を持つ個人にとって大きな支
障となっている場合をいう。(第4512項(a))
* 連邦とカリフォルニア州の定義を比べると、まず年令の上限が、連邦では22才、カリフォルニ
ア州では18才です。つまり、18才から22才の間に発達障害の症状があらわれた人は発達障害者
を対象にしている連邦のサービスは受ける資格がありますが、カリフォルニア州のサービスは受けら
れないことになります。次に連邦では発達障害者であるかどうかを決定するひとつの指針として、日
常生活に必要な7つの行動のうちの3つ以上に支障があるかどうかを説いています。この定義に従う
と、知的障害でなくても、例えば重度の脳性まひの障害を持った人も発達障害者になります。連邦の
法律でもカリフォルニア州の法律でも、知能指数(IQ)が、発達障害者であるかどうかを決定する基
準にはなっていません。従って、現実に、知能指数によってサービスの内容や頻度が決定されるわけ
ではありません。むしろそのようなやり方は間違っているとされるでしょう。ただし、サービス照会
や提供機関での受け付け時に参考までに、サービス利用者の知能指数を聞かれることはあります。リ
ージョナル・センターは州法の定義にあてはまる人々にサービスを提供し、PAI(P88参照)やエ
リア・ボード(P88参照)では連邦法の定義を用いています。
私が学んだこと
法律に精通する必要も、いちいち持ち出す必要もない
けれど、どういう法律が私たちの権利を守っているの
か法律名と概略を知っておくと、様々なミーティング
の場で発言する時自信を持って話せます。(F)
94
障害者関連の法律
■カリフォルニア州法
Welfare and Institutions Code
section 4500- (Division 4.5)
通称:ランターマン発達障害者サービス法(ランターマン法)
(Lanterman Developmental Disabilities Services Act)
カリフォルニア州の、発達障害を持つ人々に対するサービスについて定めてあり、州に住む発達障害
者に関わる基本的な法律です。1993年に大幅な改正があり、ほぼ現在の形になりました。
基 本 理 念
この法律の基本理念は以下の3つに集約することができます。
1) 発達障害者は、憲法や法律で保障されている権利を、他の人と同じように享受する権利がある。
2) 同年令の健常者が送っているのと同様な日常生活の実現にむけて、発達障害者のサービスは提供さ
れなければならない。サービスの目的は発達障害者が自立した生活を送り、世の中の一般的な生産
活動に参加し、ごく普通の生活をそれぞれの地域社会のなかで送ることを支援することである。
3) サービス提供者は、年令や障害、文化の違いによって当事者を差別すべきではない。当事者の持
つ多様なニーズには対応すべきである。
このような考えに基いて、ランターマン法は、以下2つの具体的な目標を持っています。
1. 州内で提供される発達障害者対象のサービスが、色々な機関から提供されているため、サービス
が重複していたり、混乱が生じる場合もあれば、各機関が十分なサービスが提供されていないこ
とに対しての責任を回避する場合もある。こうした状況を改善し、公正で必要なサービスを発達
障害者に提供するための調整をはかる。
2. サービスを受ける本人が、自分の受けるサービスを選べるようにすること。
ランターマン法には、障害の程度や年令に関係なく、障害者のニーズと選択を満たすように、サービ
スが提供されなくてはならない、と書かれています。本人が自分でサービスを選んだりすることがで
きない場合は、親や後見人が代わりにサービスを選ぶこともできます。
ランターマン法が保障している権利(第4502項)
ランターマン法は、次のような権利を発達障害者に保障しています。
95
1) 最も制約の少ない(隔離的でない)環境でサービスと支援を受ける権利。その支援は、より自
立し、生産的で、普通の生活を送る可能性を最大限にのばすためのものである。
2) 尊厳のある、個人的で、人間的なケアーを受ける権利。そのため、サービスや支援は地域の中
で提供されるべきである。
3) 障害の程度にかかわらず、公教育における適切なプログラムに参加する権利。
4) 医療を受ける権利。
5) 宗教の自由。
6) 地域の活動に参加する権利。
7) スポーツやレクリエーションをする機会を持つ権利。
8) 不必要な拘束、隔離、過度な薬物投与、虐待、放置を含む、危害を加えられない権利。
9) 被害を被るような手続きを受けない権利。
10) 生活の仕方や人間関係、暮らし方(教育、就労、余暇活動)、将来の目標の設定などを自分で
決める権利。
デベロップメンタル・センター(州立病院(State Hospital))や、地域ケアー施設(community
care facility)で暮らしている発達障害者には、以下の権利が保障されています。
(第4503項)
1)自分の着たい洋服を着る権利
2)自分だけの物をしまっておく場所の確保
3)毎日、外部からの訪問者に会う権利
4)プライベートな電話ができること
5)手紙を出す自由。手紙のプライバシーを守る権利
6)電気ショック療法を拒否する権利
7)痛みや苦しみをともなうような行動療法を拒否する権利
8)精神外科を拒否する権利
9)毎日の暮らし方、友達、余暇活動、社会活動などを自分で選ぶ権利
ランターマン法に基づく機関
この法律に基づき、発達障害者審議会、リージョナル・センター、エリア・ボードという3つの機関が設立
され、それぞれの役割、組織上の規約がこの法律に定められています。リージョナル・センター(regional
center)は、州の基金により設立され、現実には、州の発達障害サービス局(Department of Developmental
Services (DDS) )と委託契約を結んだ民間の非営利法人です。ここは、次の4つのことを行います。
96
障害者関連の法律
1) 対象者獲得と広報(case-finding and outreach)… サービスを必要とする人が地域にい
るかどうかを調査・広報を行う(第4641項)
2) 審査(intake and assessment services)… サービスの希望者がサービスを受けられるか
どうかを審査する(第4642ー4643項)
3) 予防(preventive services)…障害を持った子供が生まれてくる可能性の高い親への予防
(第4644項)
4) 個人別プランの作成と実施 … 個人別プラン(IPP)についてはこの後に書いています。(第
4646ー4648項)
現在、カリフォルニア州には21のセンターが各地にあります。実務を行う職員がたくさん働いてい
ますが、その人達とは別個に理事会があり、そこで運営上の方針づくりをします。しかし、理事会の
50%以上は発達障害者当事者かその保護者でなければいけません。(第4620ー4669項)
エリア・ボード(area board)は、発達障害者の基本的な人権や法律で定められた権利がサービスの
現場で守られているかどうかを各地で監視する機関です。1つのエリア・ボードは、4つから8つの
郡(カウンティ)を担当し、州全体で13の事務所があります。それぞれの管轄地域の住民、当事者、
保護者、後見人など約12名のメンバーがサービスのモニター役を果たすわけです。これらのメンバ
ーは郡政府か州知事によって任命された人達です。経費はカリフォルニア州によって払われますがメ
ンバーの活動自体はボランティアです。(第4570ー4613項)
州政府の各部署から独立したものとして州によって作られたのが、発達障害者審議会(State Council
on Developmental Disabilities)です。どこの課にも属さず独立した権限を持って、州内の発達障害
者対象のサービス調整、監視にあたります。(第4520ー4568項)
カリフォルニア州で発達障害者にサービスを提供していると考えられる主な部署として厚生課、リハ
ビリ課、教育課があります。厚生課の下に発達障害局、健康衛生局、社会福祉局があります。発達障
害局は、その名が示す通り、発達障害者を対象にしたサービスのみを管理・統括しています。健康衛
生局は、主にメディケイド関係の補助金業務で発達障害者に関係してきます。社会福祉局では、SSI、
SSDIの支給、自宅介護の行政補助金、在宅支援補助の支給などで関わってきます。リハビリテーショ
ン課では、職業訓練、雇用促進など、教育課では統合教育の支援での関わりが出てきます。
97
個人別プラン(Individual Program Plan (IPP) )
リージョナル・センターの担当者(サービスコーディネーター)が発達障害者個人の相談にのってニ
ーズを把握、必要なサービスのプランと個人別目標を設定します。これがIPPです。このIPPに従って、
必要なサービスはどこで受けられるかについての照会・情報提供をします。サービスは民間非営利、
行政機関などによって提供されます。どんな暮らしがしたいか、どんなサービスが必要かを、当事者
の意志に基づいて選択することができます。障害が重くても障害を持っている本人が決めますが、適
当な場合には、親や後見人がIPPを作ることができます。
法律では、リージョナル・センターでサービスが受けられるという診断があってから60日以内に、
IPPを作ります。その後、最低3年に1回見直されて、もしニーズが変わっていれば書き直されます。
それ以外でも、必要になればいつでも話し合いをして書き直すことができます。その時はIPPの見直し
を申し込んでから30日以内に話し合いをします。
不服申し立て(appeal)(第4700ー4715項)
リージョナル・センターから、サービスを受ける資格がないと診断された場合や、センターを通じて
受けているサービスについて、不満があるときは不服申し立てをすることができます。申し立てをす
る場を、聴聞会(fair hearing)といいます。リージョナル・センターが、IPPに書かれているサービ
スを変更したり打ち切ったり減らしたりする場合は、最低30日前に文書で本人に知らせなけらばな
りません。ただし、そのサービスをそのまま続けていると、本人の安全や健康が犯されるというよう
な緊急の場合は例外です。その場合は、サービスを変更したりしたときから10日以内にその旨を知
らせることになっています。センターが、本人がIPPに盛り込みたいサービスを拒否することにした場
合は、そのことが決定されてから5日以内に文書で知らせなければなりません。
センターの決定に不満がある時は、通知を受け取ってから30日以内に聴聞会に申し込まなければな
りません。なお、10日以内に聴聞会に申し込めば、今受けているサービスが続けられます。聴聞会
の申し込みは、所定の申し込み書に記入するか、手紙を書いて、センターの所長(ディレクター)宛
に送ります。申し込みをする時に援助が必要ならば、リージョナル・センターに頼むことができます。
苦情を言える場は二つあります。まず、リージョナル・センターの所長かその代理人との非公式な話
し合い(インフォーマル・ミーティング)、これは、センターが聴聞会の申し込みを受け取ってから1
0日以内に行われます。非公式な話し合いで決まったことは5日以内に文書で送られてきますが、そ
98
障害者関連の法律
れで解決しない場合は、州の苦情処理部門(hearing office)による聴聞会が行われます。その申し
立ては、非公式な話し合いの決定を受け取ってから10日以内に、文書でリージョナル・センターに
届けます。聴聞会では、通訳をつけたり弁護士を頼んだりすることができます。聴聞会の後10日以
内に、そこで決まったことが文書で送られます。その決定になお不満があるときは、90日以内に最
高裁に訴えることができます。
又、リージョナル・センターを通さない施設やサービス機関でも、発達障害者にサービスをするため
に州から援助金を受けている機関は、苦情処理を行うための手続きができるようにしなければなりま
せん。受けているサービスに不満があるときは、そこで定めている苦情処理の方法に従うか、もしく
はリージョナル・センターのサービスコーディネーターやPAI(Protection & Advocacy, Inc.)の
クライアント・ライツ・アドボケイトに仲立ちをしてもらうこともできます。
* PAIで「ランターマン法における権利(Rights under the Lanterman Act)」というパンフレッ
トが手に入ります。ここで説明したようなことをさらに詳しく解説しています。
(文:寺本晃久/社会科学研究科大学院生)
私が学んだこと
学校区とのやりとりでは、第一に
DOCUMENT、第二にDOCUMENT。
全部、月、日、時間そして“who said
what”を必ず記録しておくべし。後で
役にたつことがある。(G)
99
私が学んだこと
兄弟に障害児がいる場合、他の子ども達の心情は
今現在親には測りようもありませんが、将来起こり
得るトラブルを危惧せざるをえません。問題が
起こった時、それを乗り越える強さと優しさを身に
つけてもらう為にも、親は日頃から子どもたち一人
一人とゆとりのある時間を持つようにしなければ
なりません。 また、親自身も子育てを楽しむ余裕を
持ちたいと思いました。(H)
私が学んだこと
障害を持つ子供を残すのは避けられない現実。
あまり親に依存した生活を送ってしまうとかわいそ
うなのは本人なので、成人したら少しずつ食事の内
容や世話をほかに頼んだりと、長い時間をかけて、
親がいなくなっても生活が完全に
変わってしまわない様に努力する
必要があると思う。(M)
100
CONSERVATORSHIP & ESTATE PLANNING
コンサーバターシップと財産計画
■ コンサーバターシップ
■ コンサーバターシップを使うときの留意点
■ 遺書と財産計画
101
■コンサーバターシップ/後見人制度
コンサーバターシップとは?
コンサーバターシップ(後見人制度)とは、法廷が個人の法的権限を取り去り、他人(多くの場合親)
に委ねる法的制度のことです。ある個人が何らかの理由で自身で判断し生活していくことが難しく、
後見人が必要と法廷が判断した場合にのみこの制度が適用されます。発達障害者の場合これに該当す
るケースがあります。なおこの制度は18才以上の人にのみ適用されるもので、18才未満の場合は
自動的に個人の権利は両親の庇護の下でコントロールされるのが一般的です。18才を過ぎた時点で、
障害のある無しに関わらず、すべての人に個人としての法的権利が与えられます。子供が障害者の場
合でもコンサーバターシップ/後見人制度は自動的に確立されるのではなく、法的手続きを経て初め
て確立されるものです。これは、障害者であれ自分の人生は自分の判断で選択していく個人の権利を
疎外しないために、一見面倒にもみえる手続きを義務づけています。日本人の感覚からすると子供の
ことを大切に思うがために将来のことも決めてあげてずっと面倒をみてあげようと思い、またそれが
本人の権利を無視するなどとは考えない場合が多いようですが、個人主義のアメリカでは個人の持つ
権利はとても重要なもので、障害者であろうが簡単に剥奪されるべきものではないと考えます。
3種類のコンサーバターシップ
コンサーバターシップは大きく下記の3種類に分けられます。
LIMITED CONSERVATORSHIP(限定付き後見人)
このリミテッド・コンサーバターシップが通常多く適用される制度です。この制度は多くの障害者が
うまく機能できる分野を持っており、その分野に関しては当人の権利をなるべく保護すべきとの観点
から作られました。当人の可能生をフルに活かし、不得手な分野にのみコンサーバターシップを適用
します。リミテッド・コンサーバターシップには(1)個人の生活に関することと、(2)財産に関す
ることの2種類があり、(1)の個人の生活に関するコンサーバターシップは下記の分野に分かれてい
ます。
*居住場所の決定
*医療関係同意書(薬や治療法などの決定権)
*契約書(例:売買契約、保証人契約などの契約書に署名する権利)
102
コンサーバターシップ
*社交/友人関係の選択
*結婚に関する決定
*個人の秘密書類へのアクセス
*教育に関する判断
後見人申請者はそれぞれの分野になぜ後見人が必要なのかの証明を法廷に提出し、審理の後法廷が必
要と認めた分野にのみ個々にコンサーバターシップが申請者に対して与えられます。明記されない分
野に関しては後見人は決定権を持てません。(2)の財産に関するコンサーバターシップはある程度の
財産を所有する障害者がその財産を管理する能力に欠け、外部からの悪用が心配される場合に財産の
管理のみ後見人に決定権を移行させます。
GENERAL CONSERVATORSHIP(全般的後見人)
障害者の生活全部(財産管理も含む)に関して後見人が決定権を持つ制度で、このゼネラル・コンサ
ーバターシップは障害者が自身で判断する能力が全くない場合にのみ適用されますが、人権を重視す
るこの国ではこの種のコンサーバターシップが適用されることは稀です。
LANTERMAN-PETRIS-SHORT CONSERVATORSHIP/LPS
LPSコンサーバターシップは精神病の障害の結果、重大な機能障害を有する人に対して福祉機関に与
えられる後見人制度です。
申請する場合は、裁判所にこの件に関する決まった書類がありますが、手続きは大変繁雑なので、専
門の弁護士を雇うのが一番早くかつ裁判所側とのスムーズなコミュニケーションに繋がります。この
項の最後のページに障害者関係のコンサーバターシップと財産計画に詳しい弁護士のリストを載せて
います。このリスト以外にもProtection and Advocacy, Inc.(P88参照)に連絡すると照会サー
ビスが受けられます。
rrrrr
参考資料:
How to Advocate in the Systems Handbook
Published by Frank D. Lanterman Regional Center
103
■コンサーバターシップを使うときの留意点
は じ め に
ConservatorshipとEstate Planningは、日本語では後見制度と財産管理と呼ばれる問題で、日本で
は、障害のあるお子さんをお持ちのお父さんやお母さん方は、これを「親亡き後」の問題と呼んでい
ます。親が生存中でも子は成人になれば自立すべきですから、正確に表現すれば、この問題は障害の
あるお子さんが成人になった後の将来設計の問題ということになります。
アメリカには、日本よりもよく整備されている後見制度であるConservatorshipがあります。又、信
託(Trust)もよく発達しています。ただ、それぞれの方法には長所と短所があるので、皆さんそれぞ
れの置かれている状況(アメリカ国内での親族、知人のあるなし、その人達との信頼関係の程度、障害
のあるお子さんの自立あるいは社会生活技能の程度、資産の内容等々)と照らし合わせながら、自分
たちにとって一番よい方法はどれなのかを見極めたり、いくつかの方法を組み合わせて一番あったや
り方を作ることが大切です。
どんな場合にコンサーバターシップを使ったほうがよいのか
コンサーバターシップの長所は、(1)第一に、裁判所によっては公的な法律上の権限が後見人に与え
られるので、後見人は権限がある範囲内では、銀行や行政機関と正式に交渉し、コンサーバターとし
て、契約したり裁判を起こすこともできる点にあります。(2)第二は、やはり裁判所が関わるので、
後見人に対する監督が厳格だという点が(短所にもなるのですが)長所ということができます。逆に、
コンサーバターシップの短所は、(1)コンサーバターをつけてもらう手続きに時間がかかりすぎ、手
続きも簡単ではなく、費用もかかること、(2)コンサーバターの財産の管理の基本方針は万が一にも
財産が横領されたり間違いの起こることがないようにすることにあるため、非常に慎重で保守的な資
産運用がされるため、柔軟な資産の活用がしにくいこと、(3)身内でない人(弁護士など)をコンサ
ーバターとして頼むと、コンサーバターの報酬が高かったり、コンサーバターの仕事が書類の上だけ
での仕事になりやすかったり、何かと臨機応変の対処がしにくかったりすること、(4)全般的後見人
(general conservator)の場合は、障害のあるお子さんが無能力であると判定されなければならない
点があります。
こうしたコンサーバターシップの長所・短所から考えると、コンサーバターシップを利用するための
104
セラピーコンサーバターシップを使うときの留意点
条件は、(1)障害が非常に重くて、周りの関係者の説得や時間をかけた説明や導きがまったく不可能
な状態にあるということだと思います。説得や説明や導きが可能であれば、よほど大きな資産がない
限り、あえて費用や時間をかけて本人を無能力者とする必要はないはずだからです。限定付き後見
(limited conservator)では、無能力者であると烙印を押されることは避けられますが、実務上、裁
判官は限定付き後見よりも全般的後見にしたがる傾向があるとも言われているようですから、この点
については、専門家のアドバイスを受けたほうがよいでしょう。
(2)二点目は、資産が十分にあって、
資産活用をしながら生活費を作っていく必要はなく、ましてや、SSIやSSDIなどの福祉的な資金援
助を得る必要もなく、むしろ、資産が横取りされたりしないこと(冒険をするよりは現状維持)のほ
うが重要な場合です。大きな資産を管理するには高い能力が必要であることが多いですし、日常的な
金銭の支出には日常レベルでの能力があれば足りるはずですから、能力の程度と財産の大きさは相関
関係があるといえます。
(3)三点目は、信用できる人で後見人になってくれそうな人が見つけられず、
裁判所の監督をしてもらいながら、後見をしてもらわないと、資産を横領されてしまうなどの心配が
ある場合です。
結局コンサーバターシップは、障害の非常に重い人か又は障害の重さに比べて管理しなければならな
い財産が大きすぎる人で、身近に信用できる助言者がいない場合に一番適しているシステムといえる
と思います。
障害のあるお子さんが、とんでもないことをしないか、騙されたりしないかというのは、どこの国の
親でも心配することかもしれません。しかし、だからといって、厳格な強制権限でもってお子さんの
生き方を支配するのがよいことだと言い切ることはできません。健常な人の人生にも当然リスクはあ
るわけで、リスク、言葉を換えれば、可能性があるからこそ人の一生だと言ってよいのかもしれませ
ん。大事なことは、障害のあるお子さんの人生におけるリスクを一般の市民と同じ程度のリスクにす
るということです。リスクというのは、ゼロ%でもなければ50%以上でもない、たぶん30∼4
0%くらいのところにある、そういうリスクと可能性の中で私たちは夢をもったり失敗したりして生
きてきているのではないでしょうか。障害を持つことによって、この生活上のリスクは増える場合が
あります。これを説得という技術や人間的な信頼関係の中で制御できるなら、あえて、コンサーバタ
ーシップを使う必要はないということです。
コンサーバターシップを使わない場合はどうするか。
コンサーバターシップを使わない場合の典型的なやり方は、アドボカシーと信託(トラスト)を組み合
105
わせるという方法です。アドボカシーは、身上後見(個人の医療や生活面に関わるコンサーバターシッ
プ)に似た役割をしますが、コンサーバターシップのように公的に裁判所によって権限を与えられてい
るわけではないので、本人に代って契約をしたり、医療行為に対してインフォームドコンセントを与え
ることはできません。アドボケートは、本人の自己決定を引き出し支援し、契約の相手方や医療や行政
機関との関係を調整するというやり方で本人を援助していくことになります。ですからこの方法は、障
害のあるお子さんの側に、ある程度の理解力があることが必要ですし、アドボケートの側には、障害の
ある人の能力を最大限度に引き出して上げられる技能と本人との間の信頼関係が必要になります。アド
ボカシーという言葉は、いろいろな意味に使われますが、ここでは、障害のあるお子さんの自己決定
の力の足りないところ(障害それ自体のためや社会経験が乏しいことや相談したり援助してもらえる
人が少ないことなどから、自己決定ができにくかったり不合理な自己決定をしてしまう危険性)を補
いながら、本人が妥当な自己決定をできるように援助すること(一言でいうと本人の自己決定権を支
えるということ)というような意味です。
コンサーバターは、障害のあるお子さんに代わって物事を決める役目を果たす人になりますが、アドボ
ケート(アドボカシーをする人)は、本人に代わって決めてしまうのではなく、本人の決定を援助ある
いは補佐する役目を果たすというところに基本的な違いがあります。別の言い方をしますと、コンサー
バターは本人の自己決定というものがない(あるいは自己決定をさせない)ことを前提とすることにな
りますが、アドボカシーでは、本人に自己決定してもらわなければいけないことになります。ですから、
アドボケートは、障害のあるお子さんと信頼関係があって、障害のあるお子さんがアドボケートになっ
た人の意見に耳を傾ける気持ちになる人でなければなりませんし、障害のあるお子さんの障害をよく理
解して、自己決定の力の足りないところや頼りないところ、経験不足のところなどを上手に補って本人
を導いてゆける力量のある人でなければなりません。こうした役目というのは、親や兄弟が普段知らな
いうちにやってきたものといってもよいでしょう。従って、身内にこうした役目を果たせる人がいるう
ちは、お子さんの障害が重度で、自己決定を引き出すことがとても難しい場合でなければ、原則として、
アドボカシー的な関わり方をするほうがよいと思います。アドボケートを見つけることは簡単なことで
はないのですが、親の会などで、世代間でアドボカシーの役割を果たせるようなグループを作ったり、
福祉機関の有志の人を巻き込んでボランティアを含めたアドボカシーグループを育ててゆくことも検討
できないかと考えています(ちなみに、東京では何カ所かでこうした試みを始めています)
。
親からアドボケートへの引き継ぎ事項は、指示説明書(Letter of Intent)で、お子さんの個性や好み、
障害の特性、医療上必要な配慮、生活の場所や方法などについて詳しく伝えておくとアドボカシーが
うまく機能すると思います。
106
セラピーコンサーバターシップを使うときの留意点
次に、財産の管理については、アドボカシーとは別に信託(トラスト)を組み合わせることが必要で
す。財産に関するコンサーバターシップも費用や時間がかかり、資産運用面では保守的すぎるきらい
があるのですが、特殊ニーズ用信託(Special Needs Trust)は、資産運用面で優れており、又福祉
援助(SSI、Medi-Calなど)の受給資格に影響しない(親が残した資産を子供のために使いなおかつ
政府からの援助を受給できる)点で、高い評価を受けています。これに対して、もし親の資産を子に
相続させ、その資産をコンバーターに管理させるということをすると、その資産額によっては福祉援
助金は得られなくなったり返還を求められたりする危険性があります。アドボケートは、主に医療や
生活などの身の回りのことに関わるので、資産管理については信託に任せることが必要になります。
ただ、資産活用についてもお子さんの個性や環境に配慮したきめ細かな資産運用を希望する場合は、
複数の信託者(Trustee)を指定しておくとよいでしょう。一般には、一人は銀行、もう一人はお子
さんの事情を知っている個人を受託者にします。そうすれば、お子さんの個性や境遇に配慮したお金
の使い方をさせることも可能になります。
コンサーバターシップ、アドボカシー、遺言の連携プレー
障害が重く資産が大きい場合や、アドボケートとの信頼関係が薄い場合などは、コンサーバターシッ
プが有効であり、そうでなければ、アドボカシーと信託という方法が有効だと一応いえると思います
が、それぞれの皆さんの状況は千差万別であり、又、家族の年令や障害のあるお子さんの成長との関
係で、当然皆さんが置かれている状況は時間と共に好転したり悪化したりするはずです。そこで最後
に、今まで説明した典型的な類型ではないやり方についても見ておきたいと思います。
まず、コンバーターシップの中でも、限定付きの後見(Limited Conservatorship)をつけることを
検討してみることです。限定付きの後見は、個別的な後見の必要性に応じて後見を行わせることがで
き、障害のあるお子さんを無能力者であるという烙印をつけず、必要な事柄についてだけコンサーバ
ターをつけられるので、場合によるとよい方法です。例えば、日常の生活や範囲内での買い物は本人
に任せてもできるしアドボケートの助言があれば十分にできるけれども、医療行為に対するインフォ
ームドコンセントについては、アドボケートの説得や導きによって本人が納得するのを待っていては、
治療が手遅れになってしまう危険性がある場合などには、医療の問題に限定したコンサーバターを付
けることが有益でしょう。
次に、遺言でコンサーバターを指定しておくこともできます。親がコンサーバターになっている場合は、次
にコンサーバターになるべき人を遺言で指定しておくことが許されます。又、現在はコンサーバターは付い
ていないで、親が事実上の後見役をしている場合には、後にアドボカシーをしてくれる人をコンサーバター
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になるべき人と指定しておけば、その人は、まずはアドボケートとして本人の援助に当たりますが、例えば
行政機関などと交渉する時にどうしても公的な権限が必要な時は、自らをコンサーバターに選任してくれる
ように裁判所に申し立てをして、コンサーバターシップを始めることができます。コンサーバターでない人
がコンサーバターを遺言で指定しても、法律的な拘束力は認められませんが、裁判官は遺言の指定を相当に
尊重しますから、おおむね希望した通りになるといってよいでしょう。財産面では、親が生きているうちか
らお子さん名義の財産がたくさんあって、親が信託を組んでも、結局、福祉援助は受けられないというよう
な場合でなければ、原則として信託を組むのがよい方法であるといってよいでしょう。
考え方の道筋
障害の程度が重く、意思の疎通が困難
他人の説得を聞くことが困難
NO
障害を理解し自己決定を引き出す
役目をできる人がいる
YES
YES
NO
コンサーバターシップを使う
アドボカシーと信託
YES
NO
今は、親が本人の自己決定を引き出せている
が、親亡き後は、そのような人がいない
あらゆることを他人に決めてもらう必要があるか
NO
YES
全般的後見 (GENERAL CONSERVATOR)
限定付き後見 (LIMITED CONSERVATOR)
(文:池原毅和/弁護士〈アドボカシー関係/日本在住〉)
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遺書と財産計画
■遺書と財産計画
知的障害がある障害者の場合、中には自立を達成できる軽度の人もいますが、多くが何らかの介助を
一生涯を通して必要とします。自分の子供が一生誰かの世話を受けないと生きていけないという事実
はとても辛く、自分たちが死んだ後この子はどうなるのだろうという不安は言葉には言い尽くせない
ものがあります。しかし不安を常に頭の隅に抱えながら、実際には日常の雑務に終われ、具体的には
何もしないまま日々を送る親たちが多いのも事実です。ここでこの項目を設けた目的は、自分たちが
亡くなった後、障害を持つわが子が少しでも幸せな日々が送れるように、そして手に汗して積み立て
た貯蓄をその子の豊かな生活のために少しでも有効に使えるように、その方法を考えるためです。障
害児の将来の問題を考える際考慮すべき事柄は大きく分けて3つあります。
1)受ける世話や住居に対する自己負担
2)公的福祉プログラムの受給規則
3)本人の生活能力の程度
4)親代わり又は後見人の存在
財 産 計 画
障害者の住まいやケアーは州立施設であれグループホームであれ基本的に個人に支払能力があれば個
人の自己負担となります。ただし自分で払ったからといって特別ケアーを受けたりすることができる
訳ではありません。個人の支払能力が限界に達して初めて公的経済援助が受けられる仕組みになって
います。ですから親が子供可愛さに自分たちの家や財産を障害のある子に残した場合、まずその資産
は州に与えたも同然と思って間違いありません。子供に残した信託(Trust)や生命保険も普通のもの
ではその子の資産となり、まずケアーや住居に対する自己負担として州に請求されてしまうし、資産
限度額を上回るということで各種福祉プログラム(SSI、MEDI-CAL、IHSSなど)の受給も難しくな
ります。そこで福祉プログラムの受給を受けつつ、不足分を少しづつ信託の資産から引き出して本人
の経済生活を助ける方法を考えるのが大事です。
特別信託の種類と明記条項
1)Discretionary Spendthrift Trust(自由裁量倹約消費用信託)
信託から受益者(障害者本人)へ少しづつ必要に応じて渡されるように設定されている。(本人が一度
に全額を使うことができないために、長い期間、願わくば一生使う金額があることになる。この信託
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は正しく設定すればカリフォルニア州からの自己負担請求を100%回避できる。
2)Special Needs Trust(特殊ニーズ用信託)
Spendthriftに加えてこの信託を設け、この資産は公的援助の代用ではなく、その補足収入であること
を明らかにして、SSIやMEDI-CALの取り消しを避ける。
3)Sprinkling Trust(散布信託)
複数の受益者を指定し信託を散布することにより、公共機関からの自己負担請求の回収が、他の受益
者の所有権のために難しくなる。
4)Charitable Remainderment(慈善団体残余権)
本人の死亡後、信託の残りの財産は慈善団体に寄付されるということで、自己負担請求を回避する。
5)Precatory Trust(懇願的遺言信託)
両親がその遺言の中に、障害者本人の兄弟姉妹(=受益者)に対して、一定の財産を本人のために使
ってくれるよう懇願するもので本当の信託ではない。実際にそれが実行されるかどうかは不明であり、
又法的制約もない。
生命保険:
生命保険の目的は被保険者が死亡した場合の経済的必要額をカバーするためのものですが、資産価値
の高いものです。生命保険には大きく分けて2種類があります。1)Term Insurance(掛け捨て保
険)は積み立てなどの貯金としての価値がなく死亡時のみ一時金が支払われるもの、2)Whole Life、
Universal Life、Variable Lifeは利殖目的の貯金と保険が一緒になったものです。生命保険は資産と
して所得税や裁判所の遺言検認の対象にならないなどメリットも多いのですが、受取人に障害者を指
定してしまうと本人の資産になり、福祉援助が絶たれたり、自己負担請求を受けて、せっかく親は子
を思って残したにもかかわらずそれが長く本人の経済生活を豊かにすることにはつながりません。生
命保険で”Second-to Die Insurance”というのもあり、これはWhole Lifeと一見似ていますが違い
は、両親が二人とも亡くなった時点で支払われる保険で掛け金が約80%得であることなどです。こ
れらの保険に関しては信託と同様、綿密な計画が必要なので、障害者関係の知識を持つファイナンシ
ャル・アドバイサーに相談して練ることが大切です。この項の最後にリストを載せていますので参照
してください。
遺 言
さて遺言をかくことは容易なことではありません。特にまだ比較的若い親で障害児が小さい場合、自
分たちの死など考えられないばかりか、幼い障害を持つわが子を他の人の手に委ねるなどもってのほ
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遺書と財産計画
かです。しかし現実を直視すると子供が小さければ小さいほど遺言の必要性は重要になってくるので
す。自分たちがもし死んだらその子は誰に育てて欲しいか、特別に知らせておく必要のある医療面や、
経済、教育のことなど、もし日本に返して欲しいのならその受け入れ先を遺言に明記しておく必要が
あります。家族間や友人間で話し合っただけでは十分ではなく、ちゃんとした遺言の形で保管してお
く必要があります。残された子供がアメリカ国籍の場合この国の法律にそって裁判所が養育先を決定
す る の で そ こ で 親 の 遺 言 が 圧 倒 的 な 効 力 を そ う し ま す 。 遺 言 の ほ か に “ Letter of Intent”
(Instructions to Executorとも呼ばれる)=指示説明書なる非公式の指示書をかいて自分の思うこと、
望むこと、特殊な必要ケアーに関する詳細な指示、養育費のこと宗教や性の問題など、自分たちと障
害児の葬式や墓地の手配など、もし自分たちがいなくなった場合を想定し少しづつ書いておくことが
望まれます。この作業はとても辛くつい感情的になったりするので、その場合は作業を中止し後日続
けるのがよいでしょう。このLetter of Intentは遺言のように弁護士が介入する必要はありません。終
わったら公証人の目前でサインをしコピーを3部程取り1部はセイフティー・ディポジット・ボック
スに保管し、他は信頼できる人に預けておきます。
ま と め
遺言を書くにしても財産計画を考えるにしても、やはり専門家のアドバイスと正式な文書にすること
が必要になってきます。障害児を持つ親としてはなるべく早い時期からこのことを考え、子供の一生
を通して幾らくらいの資産を残すべきなのか又残せるのか、そのための貯蓄・投資の効率的な増やし
方などのアドバイスを積極的にファイナンシャル・アドバイザーから得、対処に努めることが望まれ
ます。次頁は障害者関係に詳しい弁護士(Estate Planning Attorney)とファイナンシャル・アド
バイザーのリストです。
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弁護士: Jim Peterson (310)822-3200 Marina Del Rey
Rebecca Holt (310)453-7808 Santa Monica
Leslie Rasmussen (818)447-3539 Arcadia
Jan Stone (310)392-9677 Santa Monica
John Ebner (714)558-1993 Santa Ana
ファイナンシャル・アドバイザー:
Nadine Vogel (310)470-0796
自身も障害者の親でSNAPという団体の代表者。遺言からコンサーバターシップ、資産問題まで大変
詳しく、トータル的な相談にのってくれる。
Kinuyo Kay Mori, ChFC (310)477-1561 ext 208
Senior Financial Advisor & Estate Planning Specialist
American Express Financial Advisors Inc.
日本語を話すファイナンシャル・アドバイザーで、親の会のアドバイザーでもある。
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参考資料:
“Planning For the Future of Children with Special Needs”
by Nadine O. Vogel, MBA
“Estate Planning” Web page by Isauro Fernandez/Attorney
“GUARDIANSHIP, CONSERVATORSHIP, TRUST, AND WILLS FOR FAMILIES WITH
MENTALLY RETARDED OR OTHER DISABLED FAMILY MEMBERS”
by Sterling L. Ross, Jr. /Attorney
Published by Protection and Advocacy, Inc.
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