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VOL.
51
家電製品の購入プロセス
2012.8
「ショールーミング」する
ネット活用層の店舗への期待
スマートフォンの普及とともに、店頭での最安値の確認が可能にな
り、米国では店頭で品定めをしてネットで安く購入するという消費行
図 1 情報収集を目的とした
50
図 2 家電製品に対する意識
家電量販店の利用
100
(%)
80
(%)
動、
「ショールーミング
(showrooming)
」
が注目されている。今号で
40
60
は、ネット通販の急拡大に直面する日本の家電業界に注目し、生活
30
40
者の購入プロセスを紐解くことで、
今後の家電販売のあり方を探る。
低価格化と店舗拡大を競ってきた家電量販店各社。業界再編の活
発化とともに、新たな戦略を模索する動きがみえ始めている。ヨドバ
0
10
0
“専門小売店としての原点回帰”と“O2O の強化”
20
20
ネット・通販活用層
関心が
ある
店頭購入層
お金を
かけても
よい
購入商品は 新商品の
多くの商品を 情報が
比較して選ぶ 気になる
店頭購入層
ネット・通販活用層
DNP「メディアバリュー研究 2012」
DNP「メディアバリュー研究 2012」
※
「ネット・通販活用層」
とは、
家電製品の購入チャネルとして 1 番目と2 番目のいずれかにカタログ通販、
テレビ
ショッピング、
ネットショッピング、
モバイルショッピングと回答している人。
「店頭購入層」
とは、
上記いずれのチャネルも1 番目と2 番目に回答していない人。
シカメラは、生活者のネットとリアルとの使い分けを意識してネット通
報を含めて幅広い情報源を参考にするが、最終決定時には店頭購
販を自社サイトに一本化。ユーザー評価や各店舗の在庫情報を提
入層と同様に店頭に足を運ぶ
(図 3)
。ネットを使いこなし、情報収集
供するなどネット上のサービスを充実させるとともに、ネット価格を
しているこの層が店頭に赴くのは、単にリアルの接点として商品に直
店頭価格と常時連動させるなど、
リアルのサービスとの連動性を高め
接触れるためだけではなく、店員との会話を通して自身の商品選択
ることで、売上の5% 強をネット販売が占めるに至っている。一方、
の最終確認をしているのだ。納得して買い物をするために、インター
ビックカメラは、今年 7 月
「専門店の集合体」
をコンセプトとする巨大
ネット上で得られる多くの情報を総合的に判断してくれるような相談
店舗を新宿東口に新装開店。顧客に幅広く対応する専門相談員を
相手となることであったり、店員のみが知りえる情報や専門知識など
配置し、有料でワインの試飲が出来る「ミニバー」や、美容家電を体
が重要になってきている
験出来る
「パウダールーム」
など多くの商品を お試し できる、
店舗な
と考えられる。
らではの体験サービスを提供している。
今後、ネットショッピング
インターネット普及初期に価格比較サイトでの商品比較が定着した
がさらに定着する中、日
図 3 家電製品の購入プロセスで参考にされる情報源
[ネット・通販活用層]
70
60
本の生活者は、一定のこ
40
を続けてきた家電量販店だが、Amazon や楽天市場といったネット
だわりを持ちながら、
多様
30
ショッピング専業チャネルが勢いを増す中、ネットショッピングと共存
な情報、多様なチャネル
20
する店舗のあり方や独自のサービス、
魅力探しが始まっているのだ。
をますます使いこなすよう
“ネット・通販活用層”がよせる店舗への期待
ルーミング」という形で寄
テレビ
50
家電製品。その後、生活者の低価格ニーズに応えるように、価格競争
になる。その中で、
「ショー
(n=196)
(%)
街頭・
店員からの情報
折込チラシ
店員か
ポータルサイト
パンフレット
店頭販促物
テレビ
家族からの情報
パンフ
店頭販
雑誌
普段
メーカ
コミュニ
友人・知人からの情報
10
0
折込チ
ショッピングサイト
メーカーサイト
新聞
比較・検討
最終決定
[店頭購入層]
70
購入後
(n=1089)
(%)
ショッピ
携帯メー
友人・
からの
雑誌
せられる店舗への期待に
60
ピングなどを店頭と併用する ネット・通販活用層 に注目すると、情
対して、
購入に近いプロセ
50
電子メ
報収集を目的として家電量販店を利用する割合が高く、
ショッピング
スを担う接点として顧客
40
ポータ
家電製品の購入で、
ネットショッピングやカタログ通販、
テレビショッ
テレビ
店員からの情報
折込チラシ
友人・知人からの情報
30
としてだけではなく、
「ショールーミング」
のためにも店舗利用が活発だ
の購買行 動を後 押しす
(図 1)
。この層は家電製品に対する関心があり、お金をかけてもよい
る、そのお店ならではの
10
という意識も高いことも分かっており
(図 2)
、購入プロセスではショッ
サービスを提供していくこ
0
ピングサイトやメーカーサイト、コミュニティサイトなどネット上の情
とが、
求められている。
20
通販カ
パンフレット
携帯ショ
サイト
家族からの情報
メーカーサイト
家族か
店頭販促物
雑誌
普段
比較・検討
DNP「メディアバリュー研究 2012」
最終決定
購入後
家電製品の今後を読み解く3 つの視点
ライフスタイルの変化と情報社会の大きなうねりに巻き込まれ、
今、
家電製品の役割や位置付けも大きく変化しつつある。
“チャネル”、
“世帯”、
“商品”という3つの視点で、市場の変化を捉える。
家電製品の購入チャネルとしての利用率の推移
ネットショッピングの
浸透とともに、
伸び続ける
100
(%)
家電量販店
家電量販店の利用率
家電製品の購入チャネルとして順調に伸び
80
40
続けるネットショッピングの利用率。一方で
家電量販店の利用率も上昇傾向にある。
Amazon に代表される家電製品のネット通
ホームセンター
ネットショッピング
専門小売店
ディスカウントストア
カタログ通販
テレビショッピング
20
販は、家電量販店にとって脅威となり、ネット
と店頭とを使い分ける生活者の購入プロセ
スの変化を見据えた上での各社の戦略が問
われている。
0
2006
2007
2008
2009
2010
2012(年)
2011
DNP「メディアバリュー研究」
家電量販店
単身世帯数と単身世帯における家電消費額推移
増える単身世帯、
減る平均世帯人員を意識した
商品に光
ホームセンター
16
100000
(円)
単身世帯数
ネッ
トショッピング
(100
万世帯)
テレビ
専門小売店
14
ディスカウントス
トア
パソコン
80000
12カタログ通販
2030 年の平均世帯人員は 2.27 人と予測さ
れ、単身世帯も増加の一途を辿る。単身世
帯の家電消費額を見ると、エコポイント制度
の駆け込み需要で高まった前年の反動を受
エアコン
テレビショッピング
10
60000
40000
け2011年は落ち込んでいる。パナソニックの
「プチ家電シリーズ」
を始め、世帯構成やニー
冷蔵庫
6
洗濯機
4
その他
20000
2
ズの変化を意識した各社の家電製品への取
り組みや動向が注目される。
8
0
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
0
2011(年)
出典:国立社会保障 ・ 人口問題研究所
「日本の世帯数将来推計
(全国)
」
総務省
「家計調査」
商品分野別にみる出荷金額比率の推移
生活に必要な家電製品から、
商品分野
ライフスタイルに合わせて
選ぶ家電製品へ
映像機器
2011年度見込み
情報・通信機器
調理機器
(キッチン家電)
理美容・健康機器
「家事家電機器」
「調理機器」
「理美容 ・ 健
康機器」の家電製品出荷金額におけるシェ
20.2
アが徐々に伸びている。携帯用ミスト美顔器
などの「モバ美(モバビュー)」やロボット掃除
2.0
41.4
4.4 9.8 3.7 10.6
100000
4.8
1.8 1.2
対象商品(87 商品)
■ 映像機器
薄型テレビ、DVD / BD レ
コーダー・プレーヤー、ビデ
オカメラ など
■ 音響機器
携帯デジタルオーディオプ
レーヤー、ヘッドホン・イヤ
ホン など
■ 情報・通信機器
■ 家事家電機器
「メディアバリュー研究」
http://www.dnp.co.jp/mediavalue
2012年度予測
80000
冷蔵庫、
電子レンジ、
炊飯器、
■ 調理機器
ホームベーカリー、
ジャーポッ
(キッチン家電)
16
14
■ 空調機器
もが取り揃えてきた家電製品から、ライフス
14.8 2.1
45.0
4.6 10.2 4.0 10.8
5.4
12
1.9 1.3 ■ 住設機器
60000
タイルに合わせて選ぶ ライフスタイル家電
■ 管球ランプ
10・電池
へと成長分野がシフトしている。
■ 記録媒体8
0
20
40
60
80
100
40000
(%)
リック
「月刊 IT& 家電ビジネス」
調べ
6
■映像機器 ■音響機器 ■情報・通信機器 ■家事家電機器 ■調理機器
(キッチン家電)
4
20000
■理美容・健康機器 ■空調機器 ■住設機器 ■管球ランプ・電池 ■記録媒体
2
生活者とのコミュニケーションチャネルを探る
• DNP は 2001 年より、生活者の情報コミュニケーションや購買行動の変化を捉える生活者調査研究
0
0
機が人気を集めるなど、生活必需品として誰
パソコン、デジタルスチルカメ
ラ、
モバイルフォン など
クリーナー、
洗濯機 など
■ 理美容・健康機器
ト、
コーヒーメーカー など
マッサージチェア、電動歯ブ
ラシ、
ドライヤー、
肌ケア など
ルームエアコン、扇風機、空
気清浄機 など
エコキュート、
火災報知機
管球ランプ、照明器具、乾電
池、
二次電池
メモリーカード、DVD、CD・
BD メディア など
に取り組んでいます。
• 生活者の購買行動把握から、商品(ブランド)を通した、企業と生活者のコミュニケーション戦略まで
ジャーポット
幅広くサポートしておりますので、
お気軽にご相談ください。
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C&I事業部 マーケティング開発室
〒141-8001 東京都品川区西五反田3-5-20 URL http://www.dnp.co.jp/cio/ いかなる形式でも本紙の一部または全部の複製および無断転載をお断り致します。
当レポートは、
メディアバリュー研究「コミュニケーション接点調査」
(訪問留置法、
15∼69歳男女1800名対象、実施:2011年10月)
の分析結果を基にしています。
©大日本印刷株式会社 2012 printed in japan
12.8
100