米国事業買収の基本 – 外国買主にとっての重要な法律上・実務上の考慮事項 目次 • • • • • • • • • • • • 外国買主にとっての主要論点 買収対象の特定及び属性 会社法制による制約 法規制による制約及び届出義務 買収ストラクチャー 資金調達及び対価の選択 従業員に関する考慮事項 過半数持分 の投資 過半数持分への投資 買収契約に関する考慮事項 特殊なリスク 買収が外国親会社及び米国外の事業に与える影響 米国輸出規制 2 外国会社による米国事業の買収における主要論点は何か? • • • • • • • • 買収対象は誰か?その所在地は? • 買収対象が会社の場合、閉鎖会社か公開会社か?上場会社か非上場 会社か? • 対象会社が公開会社の場合、米国法は正式な買付手続を行うことを 要求している 外国買主は米国事業の買収ストラクチャーをどのように決めるのか? どのような米国の会社法制が買収を制約するか? • 設立書類上の特殊な条項(株主の承諾や先買権) • 重要な契約における支配権移転条項(change of control provisions) 米国政府からのどのような許認可の取得が必要か? 外国買主はどのように買収資金を調達するか?どのような対価を支払う ことができるか? 外国買主は対象会社の米国従業員をどのように扱うべきか? 外国親会社が認識すべき米国特有のリスクは何か? 米国外の事業や関連会社が米国の規制の対象となることを避ける ために、どのような予防策があるか? 3 米国の買収対象の特性 • • • 米国会社は州法に基づいて設立(50州あるがデラウェア州が最も一般 的) 米国会社の2つの形態 • 閉鎖会社 – コーポレーション – LLC – パートナーシップ – リミテッド・パートナーシップ – リミテッド・ライアビリティー・パートナーシップ – ゼネラル ゼネラル・パートナーシップ パ トナ シップ • 公開会社(米国証券取引委員会(「SEC」)への届出書提出会社) – NYSE/NASDAQ 上場会社 – 任意的届出書提出会社(社債等) 正式な買付手続 • 連邦証券法に基づき米国公開会社の買収において必要 • 多数の株主を有する閉鎖会社の買収においても必要とされる 場合がある 4 米国の会社法制による制約 • • • • • 米国会社の売却は対象会社の設立書類 (設立認可証/付属定款) や 株主間契約に基づいて制約されている場合がある 一般的な制約としては 般的な制約としては • 株主による承諾(例:決議要件の下限設定や拒否権) • 先買権 • タグアロング権/ドラッグアロング(売却強制)権 タグ グ権/ド グ グ(売却強制)権 米国の同族会社やベンチャー出資会社はより複雑な保有形態となっ ている 100%未満の持分を取得する場合 • 買主と他の米国株主との契約が必要となる場合がある • 米国法は、少数株主保護のための重要な制度として、「公正な」 米国法は、少数株主保護のための重要な制度として、 公正な」 価格による「スクイーズ・アウト」権及び「セル・アウト」権を 規定している 米国における重要な契約には、売却や支配権移転により解除される 旨の規定がある場合がある 5 米国の法規制による制約−総論 • • • • * 米国外からの投資又は外国企業による買収に対する、一般的な為替 管理、政府規制又は許可制度は存在しない 米国で得た利益の本国への送金に対する制約 又は外国会社を対象 米国で得た利益の本国への送金に対する制約、又は外国会社を対象 とする米国の為替管理規則は存在しない 外国企業による米国株式又は在米資産の保有について一般的な制約 は存在しない 一般的に、外国企業は、連邦及び州の投資優遇措置及び便益に対す る平等なアクセスが認められている* 多くの都市や州は、外国製造業者に対して工場建設、雇用創出を促すため、重要な税務上その他 の優遇措置を提供している 6 米国の法規制による制約−反トラスト • • • • • 米国の反トラスト当局は、米国におけるあらゆるM&Aが「反競争 的」であるか調査できる しかし、特定の取引の規模が しかし、特定の取引の規模がハート・スコット・ロディノ法 ト ット ディノ法 (「HSR」)の下限基準を満たす場合のみ、連邦公正取引委員会 (「FTC」)及び米国司法省反トラスト局(「DOJ」)に対する事 前届出及び待機期間の満了を要求される 事前届出は、以下の要件を満たす場合に要求される • 取引額総額が66百万米ドルを超える場合 • 取引額が66百万米ドル以上263.8百万米ドル以下である場合にお 取引額が66百万米ドル以上263 8百万米ドル以下である場合にお いて、当事者の規模が特定の基準を満たすとき* 事前届出は、適用除外に該当しない限り、義務である 第一次待機期間は30暦日 (現金のみでの公開買付及び倒産取引は15 暦日) *一方当事者において年間の売上高又は総資産額が131.9百万ドルを超え、か つ 他方当事者において年間の売上高又は総資産額が13 2百万ドルを超える つ、他方当事者において年間の売上高又は総資産額が13.2百万ドルを超える 場合 7 米国の法規制による制約−反トラスト(承前) • • • 当事者はHSR待機期間の早期終了を申請でき、この場合、規制当局 は期間満了前に待機期間を終了する裁量権の行使が認められる FTC又はDOJは 届出当事者からの追加情報を求める「追加資料提 FTC又はDOJは、届出当事者からの追加情報を求める「追加資料提 出要求」を行うことにより、第一次待機期間を延長できる • 追加資料提出要求の対応は、多くの場合、その解決までに6月以 上の期間を要する • 追加資料提出要求に関する費用は、100万ドルを超える場合があ る • 交渉前に、米国反トラスト法に関するリスクを検討することが重 交渉前に 米国反トラスト法に関するリスクを検討することが重 要 クロージング前は、米国事業は買主から独立して運営されなければ ならない(「ガン ジャンピング規制」) ならない(「ガン・ジャンピング規制」) 8 米国の法規制による制約−エクソン・フロリオ/CFIUS* • • • 外国買主による米国事業の買収が「国家安全保障」又は「国土安全保 外国買主による米国事業の買収が「国家安全保障 又は「国土安全保 障」上の懸念を生じさせる場合の特別な届出及び承認の取得 公式な分野リストはない。別紙「考慮要素」参照。 米国の「重要なインフラ」(極めて広い定義)とみなされる事業分野 米国 要 」(極 定義) み 事業分野 に対する特別審査 • • • • • • • • • • • 農業、食品及び水 航空宇宙 銀行及び金融 化学及び危険物質 緊急サービス 暗号化又は他の情報セキ リテ 暗号化又は他の情報セキュリテ ィ エネルギーインフラ及び資源 防衛産業基盤及びその他の防 衛・諜報契約 光ファイバー 政府調達契約 情報技術 • • • • • • • • • • • 軍事利用情報、技術及び製品 鉱業及び鉱物 天然資源 郵便及び海運 公衆衛生 半導体 レーダー 電気通信 運送インフラ 運送イ ラ 武器 その他の重要インフラ又は技術 _______________________________ *米国内外国投資委員会(Committee on Foreign Investment in the United States)(エクソン・ フロリオの管理者) 9 米国の法規制による制約−エクソン・フロリオ/CFIUS*(承前) • • • • 30日の審査、第一次審査において決定が得られない場合には、 CFIUSは45日の第二次調査を開始 重要インフラや外国政府が支配する団体による投資に絡む案件は45 日の調査 CFIUSは、以下のいずれかを選択できる • 買収が国家安全保障に対する脅威をもたらさない旨の決定 家 脅 • 大統領に対する、買収を中止させ、又は緩和措置をとるべき旨の 提言(大統領には15日の考慮期間が認められる) 実務上、当事者は、買収を実施可能とすべく影響緩和のための契約 を締結するか、CFIUSへの通知を自主的に撤回し買収を終了させる かのいずれかを行う 10 米国の法規制による制約− 他のセンシティブで規制されている事業分野 • • • • • • • • • • • 航空 銀行/金融サ ビス 銀行/金融サービス 通信/放送免許 (テレビ、 ケーブル、 ラジオ) 防衛 賭博 ヘルスケア 保険 海運 鉱業 公共事業 無線衛星ネットワーク 11 米国の法規制による制約−報告義務 • • • • 外国事業者が以下のものを取得する場合、国際投資・サービス貿易 調査法に基づき、米国商務省に対する定期的な直接投資報告が要求 される • 不動産 • 一定の規模以上の事業の10%以上の持分 米国外からの米国不動産向け投資が 定の水準を超える場合 外国 米国外からの米国不動産向け投資が一定の水準を超える場合、外国 人不動産投資税法に基づく報告が要求され、さらに、一定の適用除 外事由に該当しない限り、資産売却時に売却代金の源泉徴収が要求 される 一定の規模を超える米国の農場、牧場、森林の取得は、米国農務省 に対する報告が要求される 不動産の取得は 州及び地方に対する他の報告義務も生じさせる可 不動産の取得は、州及び地方に対する他の報告義務も生じさせる可 能性がある 12 買収ストラクチャー • • • 米国におけるM&Aは多様な買収ストラクチャーをとり得る • 公開会社を対象とする買収(明確に規制されている)と非公開会 社を対象とする買収 • 友好的買収 – 株式買収(証券市場外又は証券市場内における株式取得) – 全部買収 – 一部買収 – 資産買収 – 合併(1段階) – 株式公開買付(2段階) • 敵対的買収 – 株式公開買付 – 委任状合戦 対価は、株式、現金、債券、又はそれらの組み合わせで構成される 買収ストラクチャー及び対価の選択により適用ルールが定まる 13 買収ストラクチャー−株式買収 • • 株式買収は、米国における買収のうち最も単純な形態であり、特に 株主が少数で、全株主が買収に賛同している場合に用いられる 長所 • 米国会社は、ライセンス、許認可及び営業許可(政府当局からの 同意取得の必要性により、移転が困難な場合がある)を含む、す べての資産を保持し続ける – 重要契約やリースが株式移転によって影響を受けない可能性 – ただし、対象会社の支配移転が契約解除や許認可取消の原因 とならないか確認するための調査が必要 • 譲渡に必要とされる書類は限定的 • 買収を比較的迅速に完了することが可能 • ほとんどの州における譲渡税は比較的低額であり、また、譲渡税 ほとんどの州における譲渡税は比較的低額であり また 譲渡税 が限定的であったり、免除される可能性がある(例外はいくつか の州における不動産) • 買収後に繰越純損失を利用することが可能( 買収後に繰越純損失を利用することが可能(一定の制限が 定の制限が ある) 14 買収ストラクチャー−株式買収(承前) • 短所 • 典型的なケースでは、売主が、買主に対し、買収対象である米国 会社が負う一定の簿外債務を(補償上限の範囲内で)補償するも のの、米国会社は、すべての税負担その他の偶発債務を、開示の 有無にかかわらず負担し続ける • 売主が一定の(通常売主に不利な)申請に同意しない限り、米国 事業の購入代金は、買収後における米国会社の資産の課税上の基 準額に反映されない可能性がある • 買主が米国事業全体の取得を希望していない場合、取引が複雑と なる – 株式買収前に対象会社に、不要な事業や資産を処分させる場 合がある – 米国における会社分割の法律上及び税務上の問題は複雑なも のとなり得る 15 買収ストラクチャー−資産買収 • • • 長所 • 買主の米国資産の課税上の基準額が、購入価格を反映して増加する • 米国会社の資産のすべてを買い取る必要がない ‒ 売主の特定のビジネスラインや事業部門にのみ関心がある場合、資 売主の特定のビジネスラインや事業部門にのみ関心がある場合 資 産買収が最良の方法 • すべての債務を承継する必要がない • 一定の債務については、いかなる場合においても買主に継承され得る 定の債務については、いかなる場合においても買主に継承され得る ‒ 一定の州の資産税は、買収資産に対する先取特権で担保され続ける ‒ 米国不動産の後続の所有者が環境法に基づく責任を負う可能性があ る ‒ 一定の条件下で、米国の年金債務が買主に継承される可能性がある ‒ いくつかの州においては、買収に先立って販売された製品について も、買主に対して製造物責任が課される 通常、資産譲渡契約において売主がかかる賠償責任の補償を約しており、売 主が財政的に健全であれば、それで賄い得る 仮に売主が倒産状態にある場合、「詐欺的財産譲渡」として訴えられること (資産買収後 会社債権者によ て提訴されうる)を避けるために 特別な (資産買収後、会社債権者によって提訴されうる)を避けるために、特別な 手続を経る必要がある 16 買収ストラクチャー−資産買収(承前) • • 短所 • 資産買収の場合、通常、米国会社が有していた有利な課税上の属 性を失う • すべての米国内資産を移転させる必要があるため、株式買収に比 べ手続が複雑になる 価値 認 位 • 一定の価値ある資産(ライセンス、許認可及び契約上の地位等) の移転に対する同意が得られない可能性や、同意取得のために高 額な対価が必要となる可能性がある 籍 通常、買主が外国籍であることが、米国の公開会社又は非公開会社 からの同意を取得することの妨げにはならない 17 買収ストラクチャー―合併 • • • • • • • • 米国の州会社法による手法 二つの会社が法の作用によって結合される 長官 届出 、 存続会社 新 州務長官に届出るだけで、すべての資産と負債が存続会社(又は新 設会社)の所有となる 一方の会社は消滅し、他方の会社は両社のラインの承継者として存 続する コーポレーションの場合には取締役会及び株主総会の同意が、LLC の場合は社員の同意が、必要とされる 被合併会社の株式は、現金、合併存続会社の株式又は他の会社(親 会社)の株式に転換される 買収対象会社を存続会社とすることも可能である(逆さ合併) 米国の公開会社又は多数の株主若しくは非協力的な株主を有する会 社を買収するために最適な買収ストラクチャー 18 買収ストラクチャー―合併(承前) • 長所 • 米国対象会社の株式が自動的に転換(譲渡書類は別途不要) • 買収者が一定の割合(一般的には50%だが、会社によっては 66%から80%)を超える株式を取得した場合、対象会社の株主 は自己の株式を保有し続ける選択権を失う 併 続 代 価 • 株主は、合併手続において提示された金額に代えて評価額の支払 いを受ける権利を取得する場合があるが、(不正がない限り)合 併そのものを阻止することはできない • 通常、合併においては譲渡税が課されない • 資産買収よりも合併の方が、価値の高い許認可や契約上の地位を 移転させることが容易である場合がある 19 買収ストラクチャー―合併(承前) • 短所 • 株主総会開催及び株主に対する必要な情報開示のために時間を要 する場合がある • 株主が合併契約の当事者とはならないことが多いため、別途、契 約に基づく補償やエスクローを準備する必要がある 20 米国における資金調達及び対価の選択 • • • • • 米国における買収において提供しうる主要な対価は、現金、株式又は債 券(債務証書) 買主が十分な買収資金を有していない場合における主要な選択肢は、現 金借入又は(対価又はエクイティ・ファイナンスとしての)株式発行 米国対象会社の資産や将来の収益による買収資金の調達 (レバレッジ ド・バイアウト)として一般的な条件 • 対象会社の米国資産を銀行その他の金融機関に対し担保として提供 すること、又は、買主が通常ハイイールド債と呼ばれる高金利の劣 後債証書を発行することが可能 • 社債 社債は証券に該当するため、登録免除が適用されない限り、 証券 該当す 、 録 除 適用 限 、 SECへ の登録が必要 • ヨーロッパ諸国の会社法と異なり、対象会社 の米国資産を買収資金 の調達に利用することは違法ではなく、役員の個人責任のリスクも 生じない 外国買主は、特に親会社や株主が自国で借入を行っている場合、親会社 や株主からの融資を利用した買収資金の調達が可能 米国での買収の公表や買収契約の締結の前に確定的又は法的拘束力のあ る資金調達をすることは、法律上要求されない 21 米国における資金調達及び対価の選択(承前) • • 対価の選択 • 外国買主が売主に対して提供しうる対価の種類について特別な規 制はない • 支払う対価の選択について、以下の点を検討すべき: – 買主の資金源 – 証券を発行する場合に想定される買主保有の発行済株式の希 券 合 想定 有 済 式 釈化(及び予想される市場価格への影響) – 対価の種類についての米国対象会社の株主の嗜好 対価として証券を用いる場合の不利な点 • SECへの登録に伴う遅延・費用(登録免除の適用がない場合) • 米国証券取引法に基づき登録された証券の保有に伴う、米国証券 法に基づき必要となる詳細かつ広範な開示義務の可能性 • 米国証券法の詐欺防止規定に基づく親会社の責任 • 買主の証券の米国取引市場における流動性低下の可能性 22 米国従業員に関する考慮事項 • • • • 対象会社の取締役会又は買主は、買収について米国従業員に告知し又はこれと協 象 協 議する義務を負わない: • (従業員が組織化されている場合)売主は、買収の影響に関し、対象会社の 従業員代表に告知し、交渉を行う法的義務を負う可能性がある • 買主は、買収のクロージングに際し、対象会社の従業員代表の代表権を認 め、これと交渉を行う法的義務を負う可能性がある 株式買収においては、通常、買主は、従業員を維持し、対象会社の雇用に関する 全て 責任を承継する とが要求される 全ての責任を承継することが要求される 米国における資産買収の場合、従業員は自動的に買主の従業員にはならない: • 対象会社の全ての従業員を雇用/維持する法的義務はない • 資産買収者は、通常、雇用条件を変更できる • 資産買収者は、対象会社の従業員に適用される雇用契約を承継する法的義務 資産買収者 象会社 従業員 適用さ 雇用契約を 継す 法的義務 を負わない • 資産買収者は、対象会社の従業員に影響を与える法令違反について承継者と しての責任を負う可能性がある 労働協約が、買主に対し既存の協約を承継することを要求し、又は買収に関し他 の制約を課す可能性がある: • 賃金率、労働時間及び他の労働条件を変更する買主の権限を制限する可能性 がある • 確定給付/年金プランの責任を承継することを要求する可能性がある • 退職後の医療給付義務は一般的である 23 米国従業員に関する考慮事項(承前) • • • 米国法には、「任意」(at will)の意思に基づく雇用の概念が存在する: • 解雇は、雇用差別を禁止する法律には服するものの、通常、解雇手当 や通知なくして許容される • 退職手当プラン、労働協約又は個別の雇用契約によって修正され得る 連邦法(WARN法)及びいくつかの州法並びに多くの労働協約は、特定 の事業所が閉鎖され又は大量のレイオフが実施される場合、事前通知を 要求して る 要求している: • 典型的には、通知が要求されるのは、50人以上の正規従業員が影響を 受ける場合のみである • 60日前の通知を従業員及び政府機関に対し行わなければならない 前 通知を従業員及び政府機関に対し行わなければならな • 親子会社間の独立性の程度によっては、外国の親会社が通知懈怠の責 任を負う可能性がある 連邦法( COBRA )は、解雇された米国従業員が、従業員の費用負担 ) 解雇された米国従業員が 従業員 費用負担 (特定の州はこの費用を雇用者に負担させる)のもと、雇用者の拠出す る保健制度に一定期間継続加入することを認めることを要求している 24 米国従業員に関する考慮事項−年金その他の給付 • • • • 対象会社が年金プラン等何らかの従業員福利厚生制度を有していた 場合、資産買収の場合であっても、これらの義務のために継続して 十分な資金拠出をす き責任を買主が引き継ぐ 十分な資金拠出をすべき責任を買主が引き継ぐ 米国事業の買主は、年金プランの積立不足の補填など、買収前に生 じていた重大な義務を負担する可能性がある 退職給付プランは米国の連邦規則によって広範な規制を受ける 米国における買収においては、多額にのぼる予想外の責任を避ける ために、買主が専門家(弁護士及び保険数理士)を雇い、対象会社 の年金と退職プランを綿密に調査する必要がある 25 米国従業員に関する考慮事項−役員報酬の取り決め • • • 「ゴールデン・パラシュート」契約 • 支配権が変動した後に解雇された場合、役員に年俸の1∼3倍を 支払う • 「過剰」な支払は、加算税(20%の目的税)の対象となるうえ、 会社による控除の対象にできない • 多くの場合、役員は、税負担から保護するためにグロスアップ計 算した金額の支給を受けている • コストが従来金額の2.5倍に増加する 従来 倍 増 退職プランは拡充される場合がある 退職により競業避止条項が発動する場合がある • 契約に定められた期間又は範囲が必ずしも強制執行力を有すると は限らない 26 米国従業員に関する考慮事項− 株式型報酬及びインセンティブ報酬 • • • • • ストックオプション及び制限付株式(リストリクテッド・ストッ ク)が、付与条件(期間/業績)に基づき従業員に発行されている 買収が株式の付与と受給を早める可能性がある 重要な問題:買主は、株式プランに基づいて持分を購入する将来の 権利を剥奪できるか? • 現金買取のオプション • 親会社のオプションへの転換 オプション/デリバティブを剥奪するために保有者の同意を要する とするプランもある 買収が未獲得部分にいかなる影響を与えるのか確認するため、パフ ォ マンスユニットプランを検証する必要がある(このプランは、 ォーマンスユニットプランを検証する必要がある(このプランは ユニットバリューを有するインセンティブプランであり、ターゲッ トとなる業績や財政上の目標の達成に連動するもので、買収及びそ の後の統合によって影響を受ける可能性がある) 後 統合に 影響を受ける可能性 ある) 27 米国従業員に関する考慮事項−対象会社取締役 • • クロージング時に、米国の取締役は取締役会からの辞任を申し出る • 金銭支払の義務なし • 標準的な米国におけるプラクティス • クロージング書類として辞任届を入手 クロージング後、取締役は、一人株主により「理由」なく解任でき る 28 過半数持分への投資 • • • • 株式の一部買収の場合、米国対象会社の株主として、買主の他に少数 株主が残存する 買主は、残存する米国少数株主をキャッシュ・アウトするため、二段 階合併を用いることが可能 少数株主が投資家として残存する場合 買 は、自 取引に関する支配株 責任を回避するた 、米国 • 買主は、自己取引に関する支配株主の責任を回避するため、米国 対象会社との取引につき、独立当事者間取引の原則に基づく取引 が必要 及 イ ウ 関す 問題 規定す 株 間 • ガバナンス及びバイアウトに関する問題について規定する株主間 契約が必要 いくつかの州においては、フリーズ・アウトに関する法律に基づき、 対象会社に対する一定の保有割合(通常、10%から20%の間)を超え 社 有 た買主は、その後、対象会社の支配を取得するまで、又は対象会社と 何らかの取引を行うまでに、一定期間を設けることが求められる 般的 、米国対象会社 取締役会 事前 認 、 • 一般的に、米国対象会社の取締役会の事前の承認により、かかる 制約は回避できる • 通常、上場会社に限定される 29 買収契約に関する考慮事項 • • • • 外国買主は、「米国スタイル」とされる契約条件と実質的に乖離 し、又は、米国におけるプラクティスに著しく反する契約条件を含 む契約を用いる きではない む契約を用いるべきではない 米国外の規制に基づく承認及び外国通貨による支払いは、通常、米 国におけるクロージング条件に適していない 買収契約の準拠法は米国法とすべき • 設立州 • 米国会社が住所を有する州 • ニューヨーク州等、それ以外の州 ク州等 それ以外 州 紛争は米国において解決すべき • 紛争解決手段として、仲裁手続か裁判手続かの検討 • 陪審裁判の放棄が望ましい 30 特殊なリスク* − 通常はデュー・ディリジェンスにより調査・確認可能 通常はデュ ディリジェンスにより調査 確認可能 事業・事業分野 に特有のもの 「単発」のもの 環境 製品保証 知的財産 製造物責任 雇用慣行(クラ ス・アクション のリスク) 租税 確定給付型年金制度・ 退職後の医療費負担 従業員の安全 衛生 31 特殊なリスク−事業分野に特有のリスク 電気通信 運送・運輸 技術集約的産業(IP) 防衛 ヘルスケア・医療 - 機器 - 薬事 - バイオテクノロジー バイオ ク ジ エネルギー・ 石油 ガス 石油・ガス 政府調達契約 公共事業 保険 金融機関 医療機関 32 米国における「負の遺産」(終了した事業)に関するリスク (デュー・ディリジェンスによる調査・確認が不可能又は多額の (デュ ディリジェンスによる調査 確認が不可能又は多額の デュー・ディリジェンス費用がかかる可能性) • • 何が対象となるか? • 売却された事業 • 閉鎖された工場 • 閉鎖された製造ライン 製 • 環境問題/汚染物質の敷地外での処理 • 雇用・安全衛生にかかる「負の遺産」 解決策:責任が生じる場合の補償の交渉 33 買収が外国親会社及び米国外の事業に与える影響 • • • 適正なストラクチャーで買収が行われ、かつ買収した事業が買収後 に適正に運営されていれば、米国法が、買主の米国外の事業に対し て重大な影響を及ぼすことはなく、また、外国買主の米国外での活 動に関し米国政府に対する詳細な開示が求められることもない 適正な会社法上の手続その他の運用が遵守されている限り、外国親 会社が米国法の下で、買収した米国子会社の負う債務について責任 を負うことはない* 特定の債務(環境に関するもの)については、親会社が子会社の施 設の運営に積極的に関与し、支配を及ぼした場合に例外的に責任を 負う** *親会社が子会社の行為について責任を負うことになり得る米国法理は、一般に「会社法人格の否認」責任及び「alter ego (分 身)」責任として知られるものである。一言でいえば 身)」責任として知られるものである 言でいえば、前者を避けるために重要となる予防措置は、子会社の会社としての形 前者を避けるために重要となる予防措置は 子会社の会社としての形 式を遵守すること(例えば、子会社自身の取締役会による意思決定)、親会社と子会社とで取締役会及び役員の構成を異なる ものとすること、米国会社が十分な資本を持つこと、及び子会社が別個かつ適正な帳簿及び記録をつけることである。「分身 」理論は、子会社のために活動をする者が子会社自身の役員若しくは従業員であるのか、又は親会社の役員若しくは従業員で あるのかを注視する **責任を問うには、親会社が「とりわけ汚染に関係する業務、すなわち、有害な廃棄物の漏出若しくは処理又は環境規制の遵 責任を問うには 親会社が「とりわけ汚染に関係する業務 すなわち 有害な廃棄物の漏出若しくは処理又は環境規制の遵 守についての意思決定に関係する業務を管理、指示又は実施しなければならない」 34 米国海外腐敗行為防止法−外国買主への適用可能性 • • • • 米国海外腐敗行為防止法 (「FCPA」)は、米国会社による事業参 入又は維持の促進を図る目的で、外国公務員の行動又は決定に影響 を与えるために、米国会社又は関係者が、公務員その他一定の者に 対して特定の支払をなすことを禁止する 米国会社は、外国会社に買収された場合であっても、FCPAの適用対 象から外れることはない しかし、外国買主によるその米国子会社と関係のない米国外での行 為が、米国子会社を有することを理由としてFCPAの適用対象となる ことはない ただし、米国会社の外国株主が、その米国会社のために禁止行為を 行った場合には、FCPAに基づく責任を問われる 35 米国輸出規制−外国買主との取引に対する適用可能性 • • • 米国輸出規制法は、米国の者と特定の外国の者との事業活動を規制し ている 米国の対象会社/子会社と外国親会社(及び米国外関係会社)との間 の会社間取引はこれら規制の適用を受ける 輸出規制法は、以下の点を規制する • 誰と取引できるか – 特定の国並びにリストに記載された個人及び会社(当該リストの 対象者は増加をたどっている)との取引の禁止/制限(米国財務 省による輸出入禁止−海外資産管理室( 省による輸出入禁止 海外資産管理室( OFAC ) ) – 米国輸出規制法に違反したと判断された者を含む取引に対する支 援の禁止(米国商務省違反者リスト) – 「禁止」対象者による軍需品及び軍事用途に特別に設計され又は 禁止」対象者による軍需品及び軍事用途に特別に設計され又は 改変された技術の輸出及び(一部の)輸入の禁止 (米国国務省禁 止対象者) 化 – 大量破壊兵器、ミサイル技術及び生物・化学兵器の拡散に関与し た特定の組織(個人を含む)への技術輸出の禁止(米国商務省 「組織リスト」) 36 米国輸出規制−外国買主との取引に対する適用可能性 • 何を販売できるか – 民生用又は 民生用又は「 両用 」 」の大部分の輸出/再輸出については、多 大部分 輸出/再輸出に ては、多 くの輸出先に関し許可は不要である。しかし、高度技術及び その関連役務は規制分野に分類され、制限がより厳しく、多 くの場合輸出許可が必要となる(米国商務省産業安全保障 局) – 「軍需品」の輸出及び(一部の)輸入の制限(米国国務省管 理部) – 原子力発電の特定の分野に使用される技術の輸出管理(米国 エネルギー省−原子力規制委員会( NRC )) 販売条件/反ボイ ット規制 米国が認めて な 他国 ボイ • 販売条件/反ボイコット規制−米国が認めていない他国のボイコ ット(例:イスラエルに対するアラブ同盟ボイコット)を助長又 は支持することの禁止 37 情報開示を通じた間接的な輸出の可能性 • • • • • • • • コンピュータ・ドライブへのアクセス権限 電話 電子メール ファックス コンピ ータデータの開示 コンピュータデータの開示 対面での会話 トレーニング・セッション 現場視察 38 「促進」( 「Facilitation」 )の説明 • 説明: 米国人により又は米国か スーダンの例 連邦規則31巻538.407条 ら行われれば禁止される取引を承 認し、助長し、又は保証すること • 促進は、「難しく」かつ「とらえ 所のない」概念として説明されて きた • 例: • 禁止されている「取引の機会」 を非米国会社に紹介すること • 禁止を回避するために親会社又 は関係会社の運営実務及び運営 手続を変更すること • 禁止されている取引を承認する こと • 禁止されている取引を支援する こと 39 CFIUS 国家安全保障の考慮要素 • Appendix A FINS法* は、考慮の可能性がある要素として以下のものを挙げる は 考慮の可能性がある要素として以下のものを挙げる • 予定される国防需要に必要な国内生産 • 人的資源、製品、技術、原料並びにその他の供給及びサービスを含む国防需要を満たす 国内産業の能力及び生産量 • 外国市民による国内産業及び商業活動のコントロール(国家安全保障条件を満たす米国 の能力及び生産量に影響を与える場合) • (1) テロリズムを支援している、(2) 米国の利益を脅かす潜在的な地域的軍事力を有してい る、又は(3) ミサイル又は化学・生物兵器の大量生産の懸念がある国として適用法令で指 定 定された国に対し、軍事品、設備又は技術を売り渡す取引につき、提案をし、又は現に 事 術 案 かかる取引を行うことの潜在的効果 • 国家安全保障に影響を及ぼす分野における米国の国際的・技術的優位性にかかる取引に つき、提案をし、又は現にかかる取引を行うことの潜在的効果 • 主要なエネルギー資産を含む米国重要インフラに対する、国家安全保障に関わる潜在的 効果 • 米国重要技術に対する、国家安全保障に関わる潜在的効果 • 買主が外国政府であるか、又は外国政府に支配され、若しくはそれを代理して行動する 国 国 代 ものであるか • 不拡散体制に対する国家的遵守、テロ対策努力の支援提供についての記録及び軍事目的 での技術盗用の可能性 ネ ギ 資源 びに他 重要な資源及び材料に対する米国需要 長期見込み • エネルギー資源並びに他の重要な資源及び材料に対する米国需要の長期見込み • 大統領又はCFIUSが適当と認める他のあらゆる要素 * 2007年外国投資及び国家安全保障法 (Foreign Investment and National Security Act of 2007, Public Law 110-49, 121 Stat. 246.) 40 ご静聴ありがとうございます デコセ、スティーブン Eメール: メ [email protected] ジョーンズ・デイ ジ ズ デイ 東京都港区虎ノ門4丁目1番17号 神谷町プライムプレイス 電話: +81-3433-3939 電話 ファックス: +81-5401-2725 ご注意 本プレゼンテーションに含まれる情報は、特定の事実や事情に関する弁護士の法的なアドバイスではないことをご留意ください。 本プレゼンテーションは著作権による保護の対象となります。 弊事務所の事前の許可なく複製、転載、変更、翻案、翻訳、再配布等することはできませんのでご注意下さい。 本プレゼンテーションを使用することによって生じ得るいかなる損失に対しても弊事務所は責任を負いません。 41 ©2012 Jones Day. 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