医療施設における新型インフルエンザ感染対策の手引き

神戸市の医療施設における
新型インフルエンザ A(H1N1)感染対策の手引き
第1版
2009 年 9 月 29 日
神戸市新型インフルエンザ対策病院連絡協議会
目
次
1.基本的な感染防止対策
1) 感染経路
2) 手指衛生
3) 咳エチケット
4) 個人防護用具(PPE)の使い方
5) 消毒
6) 環境整備
7) 空調設備
8) 職員の健康管理
2.外来患者の感染対策
3.入院患者の感染対策(一般病棟)
4.特殊病態下における感染対策
5.検査時の感染対策
附録)
1) 患者・家族への説明文
2) ポスター
3) 関連サイト
参考文献)
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1.基本的な感染防止指針
新型インフルエンザ A(H1N1)の全国的流行期において、現時点での限られたエビデンス
を踏まえ、季節性インフルエンザの感染対策に準じた方策を示した。
ただし、季節性インフルエンザと異なる点として、ワクチンがまだ国内で利用可能でな
いこと、重症度や致死率がまだ確定的でなく今後変化する可能性があるため、エビデンス
が明らかになる毎に随時改訂していくこととする。
1)感染経路・隔離期間
①感染経路
季節性インフルエンザと同様と想定されており、主に飛沫感染により伝播すると考えら
れる。飛沫感染以外に、飛沫が付着した環境表面からの間接的接触感染の可能性もある。
ウイルスの侵入門戸は、口・鼻であるが、エアロゾルを多量に発生させる場合には、眼の
粘膜の保護も考慮する。
②隔離期間
厚生労働省は、感染対策を行う期間は、解熱してから 2 日間(または発症から 7 日間)
との基準を示している。登校・就業の制限は、所属する学校・職場・団体等の規定に従う。
<標準予防策>
解説:標準予防策とは、
「適切な手指衛生、防護用具の使用、適切な鋭利器具の取り扱いな
どの具体策を、すべての患者に対して標準的に講じる感染対策である。血液や汗を
除く体液、傷や粘膜を感染の可能性のある対象物として対応することである。」
手指衛生や咳エチケットも標準予防策に含まれる。
<飛沫感染予防策>
解説:粒径5μm以上の大きな飛沫粒子に付着した微生物(インフルエンザウイルス・ム
ンプスウイルス・風疹ウイルス・アデノウイルス・百日咳・髄膜炎菌など)よる感
染で、咳・くしゃみ・会話などで伝播する可能性がある。通常は、1mほどの短い
距離を飛散する。感染或いは、疑いのある患者とは、サージカルマスクを着用して
接するようにする。患者にも他者と接するときは、マスクの着用をすすめる。
注意:診断に日数を要することがあり、標準予防策の徹底と症状により予防的に飛沫感染
予防策を実施することが重要である。
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2)手指衛生
処置の前後に手指衛生を行うことは、感染予防策の基本である。手指衛生の方法は、流
水と石鹸による手洗いとアルコール擦式消毒薬による方法がある。アルコールは、インフ
ルエンザウイルスに効果のある消毒剤であり、どちらの方法も有効である。手指に汚れ、
有機物が付着している可能性がある場合は、流水と石鹸で手指衛生(乾燥後さらに擦式ア
ルコール消毒剤を追加して使用してもよい)を行う。
①流水と石鹸による手指衛生のポイント
・手指を流水で濡らしたあと、石鹸を十分に泡立て 15 秒以上手指表面全体(手首まで)
を擦り洗いする。
・洗い残しの多い部分(母指、指先、しわの部分など)に注意して洗う。
・流水で十分に洗浄し、乾燥させる。拭き取りによる乾燥では、擦らず押さえ拭きする。
・自動開閉栓でない場合は、手の再汚染を防ぐために、ペーパータオルを用いて蛇口を
閉める。
②擦式アルコール消毒薬による手指衛生のポイント
・消毒薬を十分に手に取り、15 秒以上手指を擦り合わせる。(15 秒以内に乾燥するよう
であれば消毒薬の量が不十分。)
・手のひらに消毒薬を取った後、先ず指先を消毒薬に浸すようにして擦り合わせる。手
指全体(手首まで)を消毒薬が乾燥するまで擦り合わせる。
3)咳エチケット
咳、くしゃみ、鼻水、呼吸器分泌物の増加などの症状がある人に対して適応される。
内容は、
・医療施設の職員、患者、面会者を教育する。
(ポスター、配布物など)
・呼吸器分泌物に触れた後は手指衛生を行う。
・一般待合室では呼吸器症状のある人から距離(1m以上が理想)を設ける。
具体的には、
厚生労働省:インフルエンザの予防等基礎知識普及啓発資料より
(http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/file/dl/File01_0001.pdf)
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4)個人防護用具(PPE)の使い方
①サージカルマスク
・鼻すじにしっかりと密着させ、顎や口をしっかり覆う。
・再利用は出来るだけ避け、新しいものを装着する。
・在庫が減ってきた場合は1日1枚を目安に使用する。
・破損や汚染、ゴムがゆるんだりしたら交換する。
・サージカルマスクを外すときには、特にマスクの前面表面に触れないように注意し、
はずした直後には手指衛生を行う。
②N95 マスク
・エアロゾルが発生する行為(下記)では必ずN95 マスクを装着する。
・N95 マスクのフィッティングには十分に注意する。
・各施設で決められた時間を超えた場合、ゴムバンドが伸びた場合、形状が確保できな
くなった場合は新しいものを装着する。
・N95 マスクを外したら手指衛生を行う。
エアロゾルが発生する行為とは
気道吸引、気管支鏡検査、気管内挿管、蘇生など
(その他、咳嗽が誘発されやすく、飛沫が多量に発散される場合は N95 マスクを
装着する。)*歯科治療時の注意に関しては4-4)の項参照
③手袋とガウン
・連続的な装着は避けて1回診察毎に新しいものを装着する。
・手袋を脱いだら石鹸と流水による手洗いか、アルコール性擦式消毒薬による手指衛生
をする。
・体液の曝露が多い、介助などで濃厚に接触する場合はガウン装着をする。
・曝露量が少ない場合はビニールエプロンまたはロールエプロンを装着する。
④眼の防護具
・眼瞼部分や目尻などの隙間が無いようなゴーグルを選ぶ。場合によりフェイスシール
ドでも構わない。
5)清掃・消毒・リネン類の取り扱い
日常の実施していることを確実に行うことが基本である。
①清掃
・環境整備時は汚染物や消毒薬からの曝露を防止するため、手袋・サージカルマスク・
ガウン(ビニールエプロンまたはロールエプロンでも可)を着用する。
・床、壁などの消毒は日常行っている清掃でよい。
・患者が触れた環境(手すりやドアノブ、椅子などの頻回に接触する部分)はウイルス
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が付着している可能性があるので、水拭き清掃や環境除菌用ウェットタオルによる清
掃、アルコール清拭消毒を実施する。
・消毒薬の噴霧はウイルスを飛散させる可能性があるので行わない。
・咳がひどい患者周辺の環境や眼に見える体液が付着している場合、汚染物を取り除い
た後に 200~1000ppm の次亜塩素酸ナトリウムによる清拭を行う。
・消毒薬の濃度、使用できる素材についての注意事項を確認しておく。
②消毒
・ウイルスに効果のある消毒薬は、次亜塩素酸ナトリウム、アルコール類、高水準消毒
薬である。消毒の目的と適応に応じて使用する。
・熱水消毒も効果がある。
③リネン類の取り扱い
・汚染されたリネン類は、周囲に汚染を拡散しないように注意し、所定の場所に運搬す
る。
・特別に扱う必要はなく、通常の洗濯を実施する。
6)空調・設備
①室内気圧
・主な感染経路は、飛沫感染と接触感染であり、陰圧空調は不要である。
・エアロゾルが発生する行為を行う場合は、処置を行う医療従事者が N95 マスクを着用
し、陰圧室で実施することが望ましい。陰圧室がない場合は、室内換気を適切に行う。
②湿度
・病室内の湿度を高くする必要はなく、窓・壁の結露によるカビの発生に注意する。
③診察室・処置室・病室など
・重症患者は、個室にて管理する。
・個室が不足する状況では、インフルエンザ患者同士を同室にコホート管理する方法も
ある。(PCR確定患者)
・個室が不足する場合や軽症患者の場合は、患者をカーテンやついたてなどで仕切って、
患者周辺を隔離する方法もある。
7)職員の健康管理
・患者や同一家屋の家族で新型インフルエンザ患者が発生した場合で、濃厚接触者であ
っても症状が無い場合は休業規制を行わなくて良い。ただし、サージカルマスク着用
し、体調不良を訴えた場合は速やかに勤務を中止する。一時的な配置転換で、感染伝
播リスクを抑えることも考える。
・出勤前に体調不良を訴えた場合は無理に勤務をしない。体調不良を申告しやすいよう
な職場環境を作っておく。
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・インフルエンザ様症状がある場合は、解熱してから 2 日間(または発症から 7 日間)
の休業をする。(職場の規定に従う。
)
・外来診療や手術などの予定が入っている場合は代診または休診とし、待機手術は延期
する。
・予防内服については、自施設の基準に従う。
(流行状況や曝露の程度、内服薬の準備状
態を考慮する必要がある。)
・季節性インフルエンザワクチンは、自施設のワクチンプログラムに準じて実施する。
・新型インフルエンザワクチンの職員接種については、未定。
・集会の制限については、自施設の規定や流行状況で判断する。
・職員の感染や家族の感染、子供の学校が閉鎖されることにとり、出勤することができ
ない職員が増えること想定しておく。実働可能な職員数を推定し、業務整理・制限を
計画しておく。
2.外来患者の感染対策
感染対策の基本は、標準予防策(手指衛生、咳エチケット、適切な PPE の着用)の徹底
と飛沫感染対策(サージカルマスクの着用および患者との 1~2mの間隔を取る)を追加す
る。下記に外来における個々の場面におけるポイントを示す。
1)受診受付・導線
・受診者へお願いすることとして受診時間、受診手順(先に電話連絡をもらうなど)、入
口の制限、待合室の使用に関する取り決めなども案内しておく。
(ポスター掲示、案内
書の配布などで広報)
・インフルエンザ様症状(発熱、咳、鼻閉・鼻水、咽頭痛など)のある患者には、サー
ジカルマスクを着用してもらう。
・インフルエンザ様症状で受診時には必ずサージカルマスクをするよう、玄関、窓口等
にポスター掲示したり、電話で問い合わせを受けた時に指導したりする。
2)待合場所
・インフルエンザ様症状のある患者とそうでない患者を時間的に分離するか、別々の区
域に誘導することが望ましい。
<待合場所の調整方法例>
・インフルエンザ様患者と他の患者と待合場所を分ける。(部屋を分ける、衝立やカーテ
ンで仕切る)
・インフルエンザ様患者を他の患者と 1~2m離すようにする。
・自家用車で来院患者の場合は、車で待機してもらう。
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<患者が使用する設備について>
・トイレや洗面所に液体石鹸を設置し、手洗いの手順をポスター等で説明する。
(備蓄に余裕がある場合は、擦式アルコール手指消毒剤を設置。基本的に患者の手指衛
生が必要な場合は流水による手洗いを推奨する。)
・ティシュペーパーなどの廃棄用ゴミ箱の設置。(足踏み式の蓋付きが望ましい。)
3)職員の PPE
・医療従事者は呼吸器症状のある患者の診察や問診時にはサージカルマスクを着用する。
特に、全国流行期においては、インフルエンザを疑う患者を診療するエリアに従事す
る者は、常時サージカルマスクの着用を推奨する。外来業務中は、マスクがぬれたり、
飛沫が直接かかったりして汚染した場合には交換する。
・外来でも、エアロゾル発生の危険性がある手技時(気道吸引、気管支鏡検査、気管内
挿管、蘇生)には、N95 マスクを装着する。
・処置時の患者毎の手袋交換着用・手指衛生を推奨する。不可能な場合には、必ず擦式
アルコール消毒剤を手元に置き、患者毎の診療・処置前後に使用する。
4)診療・検査・処置室
・インフルエンザ様疾患患者を診察室に入室させるときには、患者がマスクをしている
かどうか確認する。
・診察に必要な最低限の職員のみが診察室で待機する。
・処置の内容により選択できるよう、室内の処置台から 1~2m以上はなれた場所に、必
要な防護用具を準備しておく。
・複数の患者を同時に検査室や処置室などに入室させる場合は、インフルエンザ様患者
にはマスク着用・咳エチケットをすすめ、患者間は 1~2 メートル離し、衝立やカーテ
ンなどで仕切る。(このような対処がとれない場合、数人の患者が狭い部屋に一定時間
いることは患者間の伝播リスクとなるため、多室を使うか、待合室との連携をとるこ
と。)
・換気扇の使用で室内の空気を排気する方法、空調設備が不十分な場合は窓の開閉で換
気する方法もある。
・エアロゾル発生の危険性がある手技時、個室で作業としているが、陰圧個室があれば
陰圧条件下で行うことが望ましい。
3.入院患者の感染対策(一般病棟)
感染対策の基本は、外来部門と同様、標準予防策(手指衛生、咳エチケット、適切な PPE
の着用)の徹底と飛沫感染対策(サージカルマスクの着用と患者との 1~2mの間隔を取る)
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を追加する。下記に入院時(一般病棟)における個々の場面におけるポイントを示す。
1)入院受付・導線
・入院患者へお願いすることとして入院手順を受付で案内して、案内書も渡しておく。
蔓延期には、施設の方針として外泊や面会の制限も決めておく。
・インフルエンザ様症状(発熱、咳、鼻閉・鼻水、咽頭痛など)のある患者には、必ず
サージカルマスクを着用してもらう。
・入院病棟へは、他の患者の出入りの少ない通路やエレベーターを使用するよう、具体
的に案内指導する。
2)職員の PPE
・インフルエンザ様疾患患者の病室に入室するときには、必ずサージカルマスクを着
用する。スタッフステーションや廊下において、常時マスク着用の必要はない。
(蔓延
期のマスクの不足時には、患者毎に交換できない場合もあるため、マスクがぬれたり、
飛沫が直接かかったりして汚染したりした場合に交換するようなことも考慮する。)
・エアロゾル発生の危険性がある手技時(気道吸引、気管支鏡検査、気管内挿管、蘇生)
には、N95 マスクを装着する。
・処置時の患者毎の手袋交換、および手袋の脱いだ後、診療・処置前後の手指衛生を遵
守する。
3)検査・処置室
・インフルエンザ様患者を診察室に入室させるときには、患者がマスクをしているかど
うか確認する。
・診察に必要な最低限の職員のみが診察室で待機する。
・処置の内容により選択できるよう、室内の処置台から 2m以上はなれた場所に、必要な
防護用具を準備しておく。
・複数の患者を同時に検査室や処置室などに入室させる場合は、インフルエンザ様患者
にはマスク着用・咳エチケットをすすめ、患者間は 1~2m離し、衝立やカーテンなど
で仕切る。
・エアロゾル発生の危険性がある手技時、個室で対応とするが、陰圧個室があれば陰圧
条件下で行うことが望ましい。(陰圧個室がない場合、簡易空調機の設置も考慮する。)
4)入院病室管理
・入院が必要とみなされたインフルエンザ様疾患患者は、個室隔離として自由に室外に
出ることは禁止する。やむを得ず室外に出る場合は、患者および付き添う者はサージ
カルマスクを着用する。陰圧空調設備は必要ではないが、下記 4.に述べる人工呼吸器
管理がいるような患者の場合は、エアロゾル発生のリスクも多いため、陰圧個室があ
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ればその使用を考慮する。
・入院患者(入院中に発症した患者も含む)が増えた場合、コホート隔離(軽症インフ
ルエンザ様患者を同じ多床室に収容すること)も考慮する(PCR 確定患者)。コホート
隔離中はカーテンで患者間を仕切る。
・発症した患者と濃厚接触した患者は発病の危険があるため、7日間は曝露者として非
曝露者とは可能な限り別室にして管理する。不可能な場合には、サージカルマスク着
用、カーテンによる仕切りを行い、非曝露者と可能な限り交差しないよう指導する。
・病室内の湿度を高く維持する必要はなく、空調設備が不十分な場合には、定期的に窓
を開放することもよい。結露予防のためにも過度な加湿は避ける。
4.特殊病態下における感染対策
1)人工呼吸器管理について
・人工呼吸器の挿管時や抜管時、吸引操作などのアエロゾル発生の可能性がある場合
は個室収容し、医療従事者は N95 マスクを装着する。
・大気開放型の人工呼吸器を使用する場合は、呼気側にバクテリアフィルターを使用
しウイルスの拡散をさせないようにする。その場合は、痰などの吸引作業は必ず閉
鎖式の吸引チューブで行う。
・人口鼻での感染防止は可能であるが、吸入などの行為が難しく管理しにくい。止む
無く回路を外し吸入するなど気道を開放する場合は個室で行い、他の患者に感染さ
せないようにする。
2)妊産婦の場合
・インフルエンザ様症状のある妊産婦には、可能な限り、事前に受診方法を電話で問
い合わせてもらうようにする。
・妊産婦がすでに分娩陣痛が開始している場合には、新型か季節性か判断出来なくて
も、感染性のあるインフルエンザ患者として同様に扱う。
・分娩室と陣痛室は他の患者と区分けする。区分けが不可能な場合は、カーテン隔離
で対応するが、換気を良くしベッド間隔を 1~2m以上空ける。
・出産する妊産婦にサージカルマスクは必ずしも必要ないが、飛沫がかからないよう
に病室の管理(1~2m以上ベッドを離したり、ベッド間にカーテンをひいたりする
ことにより飛沫防御)することで対応する。応対する医療従事者はサージカルマス
クとガウンを着用する。
・濃厚接触しているが症状の無い面会者は必要最小限とし、短時間に済ませる。
・分娩7日前から分娩までに母親にインフルエンザ様症状があった場合、出産後はすぐ母子
を別室にし、母乳を与える場合は搾乳を第 3 者が与える。分娩後も飛沫感染予防策を継
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続する。
・新生児が感染している可能性を考え、個室に入れる。個室がない場合、保育器に入れ
る。保育器がなければ他の児と 1~2m以上の十分な距離をとる。
・母子接触や直接母乳は、母親のインフルエンザ発症後 7 日以降に行う。以下の条件
をすべて満たした場合に、発症後7日以内でも母子ともに個室隔離とした上で、母
子接触や直接母乳できる場合がある。
母親が①抗インフルエンザ薬服用後 48 時間以上経過、②完全に解熱している、
③咳・胆・鼻汁がほとんどない、④十分な飛沫・接触感染予防策を行える
* 出産後の母と子の管理については、日本小児科学会
緊急フォーラム『迫りくる新型
インフルエンザ・パンデミックと小児科の臨床的課題』(平成 21 年 9 月 23 日)の報
告を参照した。
3)透析が必要な場合
・個室収容が望ましいが、個室が準備出来ない場合はコホーティングしたり、換気可
能な総室で、1~2m 以上の間隔を空けたりして収容する。カーテン隔離など適宜対応
する。
・患者にはサージカルマスクを着用させる。
・依頼する医師は透析室の責任者に連絡し、血液透析の準備を行う。
・透析室の責任者は、依頼した医師と相談し透析開始時間を決定する。
・血液透析中は患者の観察、経過観察を行う。
・人工呼吸の使用が必要となった場合は、個室収容が望ましい。(「4.-1)人工呼吸
器管理について」参照。
)
・透析患者に対しては、日常からインフルエンザ対策やインフルエンザ様症状がある
ときの対応方法(受診方法も含む)を説明しておく。
4)歯科治療における感染対策
・通常より標準予防策を遵守する。
・インフルエンザ様症状がある場合は、治療を延期する。
・どうしても治療が必要な場合は、必要最低限の処置にとどめる。基本的に標準予防
策および飛沫感染予防策を実施し、処置を行う医療従事者は、手袋・サージカルマ
スク・ゴーグル・ガウンを着用する。(エアロゾルが多いと思われるときは N95 マス
クも考慮する。)
・他の患者との接触を避ける工夫(空間や時間を分ける)をする。
・定期的に受診をしている患者に対して、インフルエンザ様症状がある場合の対応(電
話連絡や予約変更のことなど)を知らせておく。
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5.検査時の感染対策
・鼻腔分泌物や上咽頭部を綿棒で擦過して用いる。
・検体採取時は、サージカルマスク、手袋、眼の防護具、ガウン(ビニールエプロンま
たはロールエプロン)を装着する。気道の感染状態により咳嗽が誘発されやすく、飛
沫核が大量に産生されることが懸念される場合には、N95 マスクの着用を考慮する。
・検体が破損しても体液が漏れないようにビニール袋などに入れて運搬する。
関連サイト)
・神戸市保健所:
http://www.city.kobe.lg.jp/safety/health/infection/influ-index.html
・厚生労働省:http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/
・国立感染症研修所感染症情報センター:
http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/index.html
・WHO:http://www.who.int/csr/disease/swineflu/en/index.html
・CDC:http://www.cdc.gov/h1n1flu/
参考資料)
・
国立感染症研究所感染症情報センター;医療機関での新型インフルエンザ感染対策
改訂版 2009 年 8 月 25 日
・
日本環境感染学会
新型インフルエンザ病院幹線対策のための冷厳検討委員会編;医
療施設における新型インフルエンザ A(H1N1)感染対策の手引き(第1版)
・
神戸市役所;神戸市広報紙特別号「新型インフルエンザ」2009 年 9 月
・
神戸市新型インフルエンザ対策病院連絡協議会;新型インフルエンザの感染対策方針
(ダイジェスト版)2009 年 7 月 9 日
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