8-3新型インフルエンザ(入院)対応 抜粋版

Ⅱ
病原体別感染対策マニュアル
8.新型インフルエンザ感染防止対策
8‐3.新型インフルエンザ(入院)対応(抜粋版)
目次
1.対象 ....................................................................................................................................... 1
2.病室管理 ................................................................................................................................. 2
3.具体的な感染予防策................................................................................................................. 2
4.患者発生時の対応 .................................................................................................................... 4
5.部署別の対応(放射線部) .......................................................................................................... 5
6.部署別の対応(透析室) ............................................................................................................. 5
7.部署別の対応(産科病棟) .......................................................................................................... 5
8.部署別の対応 (小児科病棟) ..................................................................................................... 5
9.部署別の対応(ICU・HCU病棟) ................................................................................................ 6
10.(資料)防護具の着脱方法 ……………………………………………………………………………7
新型インフルエンザ(H1N1 型インフルエンザウイルスによるもの)においても季節性インフ
ルエンザと同様に、可能なかぎり自宅療養を原則とするが、入院で対応する場合、「インフ
ルエンザ対応病室」での個室管理とする。新型でも季節性でもインフルエンザ対応病室で
の管理とするが、感染対策上、原則として、入院時には遺伝子検査を実施し(衛生環境研究
所での検査)、新型か季節性かの鑑別を行う。なお、感染可能期間とは、発症日の前日から、
解熱後 48 時間経過していて、発症日の翌日から 7 日間が経過した時点までとする。
1.対象
新型インフルエンザ患者と季節性インフルエンザ患者が混在して発生することが予想さ
れるため、インフルエンザが確定している(①)、または疑いのある(②)全ての入院患者に
対して下記の対策を実施する。
① 迅速検査診断キットでインフルエンザ A 型が陽性の者
② 発熱および急性呼吸器症状(鼻汁または鼻閉、咽頭痛、咳)を呈し、医師がインフル
エンザを疑う者
新型インフルエンザ(入院)対応 2009.9.2(病院感染対策のためのマニュアル:Ⅱ病原体別感染対策マニュアル)
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2.病室管理
1) インフルエンザに罹患した患者は可能なかぎり自宅療養(退院または外泊)として対応
する。
2) 入院治療が必要な場合は、インフルエンザ対応病室での個室管理を原則とする
(インフルエンザ対応病室のある病棟に関連しない診療科においては感染制御部
に連絡して病室を検討する)。部屋のドアは閉めておき、部屋からの出入りは極
力控える。
3) 同じ病棟に複数の患者が入室する時は、病室を1つのエリアに固める。インフルエンザ
患者とそうでない患者の部屋が混在しないように配置する。
4) インフルエンザ患者が増加したときは、病院長が指定した病棟(「インフルエンザ対応病
棟」とよぶ)に患者を集めることを考慮する。その場合、新型インフルエンザ患者と季節
性インフルエンザ患者を同室にしない。
5) 人工呼吸器管理中は陰圧個室の使用が望ましいが、無理なら通常の個室を空気予防
策を講じて使用する。
6) インフルエンザの流行状況に応じて、入院制限、転棟・転室制限を行う。
7) 隔離解除の目安は解熱後 48 時間経過していて、発症日の翌日から 7 日間が経過した
時点までとする。隔離解除は感染制御部への連絡確認後に行う。
3.具体的な感染予防策
1) 標準予防策と飛沫予防策+接触予防策を実施する。気管内挿管時、人工呼吸器管理
中の処置や気管支鏡検査などエアロゾルが発生するような医療行為を行う時には N95
型微粒子用マスクを着用する。防護具の着脱方法については章末の資料を参照する。
2) 感染可能期間は、他科紹介・レントゲン撮影・リハビリ・手術などを、可能なかぎり延期す
る。やむを得ず実施するときは、依頼先へ情報を提供し、他の患者との接触を避けるた
めに順番を最後にした上で、感染対策を実施するなど配慮する。
3) 流行期においては不要不急の外出および外泊、面会を制限する。
① やむを得ない外出および外泊後は、帰院時に発熱や呼吸器症状がないか確認す
る。
② 面会者には「発熱や呼吸器症状がないか、同居者にインフルエンザを発症してい
る者がいないか」を確認し、ある場合は面会を延期してもらう。どうしても面会が必要
な場合は担当医の許可のもと、サージカルマスクを着用し、手指衛生を行い、短時
間の面会とする。
③ 面会制限について、外来建物入り口・救命救急センター入り口・病棟入り口へのポ
スターにより周知、また病院ホームページにより情報発信する。
4) 患者・家族には感染予防について十分に説明し、協力を得る。軽快後もウイルスを排出
するため、症状が治まっても 3 日間程度は感染対策を継続することについて患者・家族
に説明する。
新型インフルエンザ(入院)対応 2009.9.2(病院感染対策のためのマニュアル:Ⅱ病原体別感染対策マニュアル)
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具体的な感染予防策
病室管理
原則として個室管理(トイレ付き)とする(インフルエンザ対応病室)。
・ ドアは閉めておく。
・ 病室は1つのエリアに固める。
・ 人工呼吸器管理中は、可能なら陰圧個室を使用する。通常の個室を
使用する時は、給排気口を閉鎖(4Fは除く)して、ポータブルのHEPA
フィルター内蔵空気清浄機を設置する。
個室管理できない時は、病棟ごと集団隔離とする(インフルエンザ対応病
棟)。
・ 新型インフルエンザ患者と季節性インフルエンザ患者は同室にしな
い。
患者の移動
制限する。
・ 室外へ出る必要がある時にはサージカルマスクを着用する。
・ 呼吸器衛生/咳エチケットの遵守を患者に指導する。
接触予防策に準じて、手洗いを徹底する。
・ 病室への出入り時にはアルコール擦式消毒を行う。
・ 患者または病室環境に触れる時は、手袋を着用する。
・ 患者から離れる場合はすぐに手袋を外して感染性廃棄物容器に廃棄
し、手指衛生を行う。
病室に入る時にはサージカルマスクを着用する。
・ 勤務している病棟にインフルエンザ患者が入院している場合は、常に
サージカルマスクを着用する。
・ 気管挿管などエアロゾルを発生する恐れのある処置時には、N95 型微
粒子用マスクを着用する(上気道検体の採取時などに N95 型微粒子
用マスクを着用してもよい)。
流行に注意を要する時期は、外来職員はサージカルマスクを着用して勤
務する。また、病棟においては、ハイリスク患者の診察、処置、ケアを行う
ときにはサージカルマスクを着用する。
手洗い
手袋
マスク
ゴーグル/フェ
イスシールド
気管挿管などエアロゾルを発生する恐れのある処置時には、ゴーグルま
たはフェイスシールドを着用する(上気道検体の採取時などにゴーグルま
たはフェイスシールドを着用してもよい)。
エ プ ロ ン / ガ ・ 患者または病室環境に触れる時は、使い捨てエプロン/ガウンを着用
ウン
する。
・ 患者から離れる場合はすぐに個人防護具を外し、感染性廃棄物に廃
棄し、手指衛生を行う。
呼吸器衛生/ 咳エチケットを指導・実施する(標準予防策に準じる)。
咳エチケット ・ 呼吸器症状のある人には、咳やくしゃみのときにティッシュなどで口と
新型インフルエンザ(入院)対応 2009.9.2(病院感染対策のためのマニュアル:Ⅱ病原体別感染対策マニュアル)
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鼻を押さえ、周りの人から顔をそむける(ティッシュはすぐに廃棄)す
る。
・ 咳をしている人にサージカルマスクの着用を促し、正しく着用できるよ
う指導する。
器具
環境消毒
・ 咳をしている人は他の患者から空間的距離(少なくとも 1m以上)をあ
けるかカーテンにより仕切る。
可能なかぎり専用とする。
通常通りでよい。
リネン類
標準予防策に準じる。
保清
・ 隔離中は共通の浴室・シャワー室の使用を禁止する。
・ 清拭時は病院の清拭タオルを使用する。
配膳・下膳
ゴミ、汚染物
通常通りでよい。
・ 病室内で発生した一般ゴミは、通常通りとする。
・ 治療・検査等に使用したものは、感染性廃棄物として扱う。
面会
制限する。
・ 免疫がない人が多いため伝播しやすいことを説明し、患者の家族は病
室への立ち入りを出来る限り控えてもらう。乳幼児、易感染状態の人、
基礎疾患のある人は入室を禁止する。
・ 発熱・呼吸器症状のある人や、同居者にインフルエンザを発症してい
る人は面会を禁止する。
退室・退院後 経理調達課・特定調達係に電話し、清掃業者が清掃を行う。
4.患者発生時の対応
1) 迅速検査診断キットでインフルンザウイルス A 型が陽性となった時点で感染
制御部に連絡する。入院対応するときには遺伝子検査を実施し、新型か季節
性かの鑑別を行う。
2) 速やかに患者を他の患者から空間的に離す。
3) 可能であれば自宅療養での感染対策について指導した上で、退院または外泊とす
る。入院を継続する場合は、原則個室(インフルエンザ対応病室)またはインフルエ
ンザ対応病棟での管理とし、飛沫予防策と接触予防策を実施する。
4) 同室者などの接触者に対しては、接触後7日間はサージカルマスクの着用を心が
けてもらい、不特定多数が集まる場所などへ出かけないようにすることなど、感染拡
大の防止について説明する。また、接触後7日間は転室を行わず、病室への新た
な入室も行わない(室内はカーテンでしきる)。
5) 抗ウイルス薬は、治療目的のみに処方する。なお、抗ウイルス薬の入手が困難な状
況にあるので、予防的投与を控える。ただし、新型インフルンザが確定診断された
患者の診療を行った職員は 5 日間の予防的内服を行うことを認める。
新型インフルエンザ(入院)対応 2009.9.2(病院感染対策のためのマニュアル:Ⅱ病原体別感染対策マニュアル)
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5.部署別の対応(放射線部)
1) 感染可能期間は可能なかぎり検査を延期する。やむを得ず実施するときは、レント
ゲン撮影は病室内で行う。また、放射線部検査室で行う検査は、他の患者との接触
を避けるために順番を最後とする。
2) レントゲンに使用するカセッテは、ビニール袋に入れて使用し、ビニール袋は患者
ごとに使い捨てる。
6.部署別の対応(透析室)
1) 透析室への出棟前に、発熱および急性呼吸器症状がないかを確認する。
2) インフルエンザ患者は、可能なら病室内で透析を行う。透析室を使用する場合は、
透析室内の個室を使用する。また、他の患者と同じ時間帯にならないように、他の
患者が終了してから実施するなどの時間調整を行う。
3) 透析終了後の環境消毒は、通常通りでよい(接触面を 0.05%次亜塩素酸ナトリウム
で清拭消毒する)。
4) インフルエンザ患者に接触した透析患者は、接触後 7 日間はサージカルマスクを
着用する。また、透析室内の個室が空いている場合は、個室を使用する。
7.部署別の対応(産科病棟)
1) 使用する病室(個室)およびエリアを限定する。
2) 流行期における不要不急の外出および外泊、面会制限を特に慎重に行う。
3) 分娩室を使用する場合、第2分娩室を使用する。出産前の分娩第Ⅰ期を可能なか
ぎり病室(個室)で過ごし、陣痛室は使用せずに直接分娩室へ入室する。
4) 感染可能期間に帝王切開を行う場合、可能なら患者の数が少ない時間帯やその
日の最後に手術を予定する。
5) 新型インフルエンザに感染した母親が直接授乳や児のケアを行なうためには以下
の 3 条件がそろっている場合とする。ただし、児と接触する前のサージカルマスク
着用・ガウン着用・手指衛生・咳エチケットを十分に指導し、母子感染を防止する。
【感染可能期間の直接授乳の条件】
① タミフルあるいはリレンザを 2 日間以上服用していること
② 熱が下がって平熱となっていること
③ 咳や、鼻水が殆どないこと
上記 3 条件を満たしていない間は、母児は可能な限り別室とし、搾乳した母乳を
健康な第三者が児に与えるよう指導する。このような児への感染予防行為は症状
が消失し、感染可能期間を過ぎるまで行う。
8.部署別の対応 (小児科病棟)
1) 使用する病室(個室)およびエリアを限定する。
2) 流行期における不要不急の外出および外泊、面会制限を特に慎重に行う。
新型インフルエンザ(入院)対応 2009.9.2(病院感染対策のためのマニュアル:Ⅱ病原体別感染対策マニュアル)
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3) 院内学級への出席やプレイルームの使用は、感染可能期間を過ぎ、担当医の許
可があるまで行わない。
4) 病院のおもちゃ・本は使用しない。
9.部署別の対応(ICU・HCU病棟)
1) 使用する病室(個室)およびエリアを限定する。
※ICUⅠ(407 号室の 1 床)、ICUⅡ(412 号室の 1 床)、HCU(426 428 号室の 3 床)
2) ICU・HCUへの入院は、当該病棟の入室基準に準じる。人工呼吸器装着患者な
どに対応する。
① ICUⅠ・Ⅱ:内科系外科系を問わず、呼吸、循環、代謝、その他の重篤な急性
機能不全の者で、集中的な治療で救命を期待しうる者。
② HCU:回復可能な病態にあり、バイタルサインに変動のある者。看護度がA‐
Ⅰ、A‐Ⅱ、B‐Ⅰに該当する者。
3) 人工呼吸器を使用する場合は、閉鎖式吸引カテーテルを使用し、回路を開放して
行う吸引は必要最小限とする。
平成 21 年 9 月 2 日
感染予防対策委員会
新型インフルエンザ(入院)対応 2009.9.2(病院感染対策のためのマニュアル:Ⅱ病原体別感染対策マニュアル)
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(資料)防護具の着脱方法
《防護具の着方》
手指衛生→ガウン→マスク→ゴーグル/フェイスシールド→手袋
ガウン
・ ガウンが床に付かないように注意して、手首・首∼胴体・背中・膝までしっかりと覆うように着用する。
・ ひもは背部(襟・腰)で結ぶ。
サージカルマスク
・ プラスティックワイヤーを折り曲げて、鼻部分にフィットさせる。
・ 鼻から顎までしっかり覆うようにマスクのヒダを伸ばす。
・ ひもタイプの時はまず上のひもを後頭部で結び、次に下のひもを後頸部で結ぶ。
N95 型微粒子用マスク
・ マスクの使用説明書にそって着用し、十分にフィットさせる。
・ シールチェック(フィットチェック)を行う。
ゴーグル/フェイスシールド
・ フィットさせる。
手袋
・ 手袋は最後に着用する。
・ 用途にあったもの・サイズのあったものを選択する。
・ ガウンを着用する場合は、ガウンの袖口に手袋をかぶせるように着用する。
《防護具の脱ぎ方》
手袋→手指衛生→ゴーグル/フェイスシールド→ガウン→マスク→手指衛生
(二重手袋の場合)
手袋 2 枚→手指衛生→ゴーグル/フェイスシールド→ガウン→マスク→手指衛生
手袋
・ 汚染している手袋の外側に触れないようにして外す。
・ まず、手首近くの手袋外側をつかんで、中表になるように外す。
・ 外した手袋は手袋着用側の手で持ったまま、手袋をしていない手を残りの手袋の手首内側から滑り
込ませて、中表になるように外す。
ゴーグル/フェイスシールド
・ 表面に触れないように、固定のバンドなどを持って外す。
・ ゴーグルは消毒して再使用するため、使用後はビニール袋に入れて密閉する。
ガウン
・ 首のひもをほどいてから、次に腰ひもを外す。
・ 表面の汚れに触れないよう、中表になるように外す。
・ 袖を抜く時は、外側に触れないようにまず手を袖の内側に滑り込ませて片袖を抜く。次に袖の内側
からもう片方の袖を引っ張って外す。
・ 周囲を汚染しないように小さくたたんで廃棄する。
サージカルマスク/ N95 型微粒子用マスク
・ マスクの外側も内側も汚染しているため、ゴムまたはひも部分のみをつかんで外す。
・ ひもタイプの時はまず下のひもをほどいてから、次に上のひもをほどく。
注)使用した防護具は診察室内で汚染しないように注意して外し、感染性廃棄物容器(鋭利物用の白い
新型インフルエンザ(入院)対応 2009.9.2(病院感染対策のためのマニュアル:Ⅱ病原体別感染対策マニュアル)
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プラスティック容器)へ廃棄する。