2015 年 9 月吉日 ~突撃★ドメーヌ最新情報!!~ ◆VCN°57 トニー・ボールナール 生産地方:ジュラ 新着ワイン 3 種類♪ VdF ル・シャルド・ゲ 2013(白) 2013 年は、ミルデューの影響で 13 hL/ha と、当初予想していた収量の半分以下しかブドウがとれなかった。 畑はピュピランの丘の上、石灰岩の断崖の上にあり、土壌は 100%石灰質!味わいの中にも、チョークのような 細かく繊細なミネラルが感じられ、まるでブルゴーニュのシャルドネのような雰囲気がある! VdF ル・ヴァン・ド・プルサール・ウーヴル・レスプリ 2013(赤) ワイン名には、 「プルサールというマイナー品種にも素晴らしいワインがある!もっとプルサールを知ってほし い!」という願いが込められている! 2013 年は不幸にも大規模な花流れの被害に遭い、収量はたったの 6hL/ha!と当初予想していた量の 5 分の 1 に終わった…。ただ、早いうちからブドウが少なかったので、病気に もならず、収穫したブドウは完璧だった!量が少ないので、醸造は細心の注意を払い、手を加えるのも 1 日 1 回 手で静かに果房を果汁に沈めるだけの作業のみ!香りの華やかさを壊さないようにと、仕込みと熟成は全てタン クのみで行っている!赤い果実の香りより、洋ナシや白桃等の白い果実と花の香りが華やかで、上品な味わいだ! VdF ル・ピノ・ノワール 2013(赤) 「これぞまさに THE ピノ・ノワール!」というストレートな名前だが、トニー曰く、ワインが出来上がって名 前を付ける時にこれ以上相応しい名前が思い浮かばなかったそうだ。2013 年は、シャルドネ同様、ミルデューの 影響で 16 hL/ha と、当初予想していた収量の半分しかブドウがとれなかった。ワインはまだ若干硬いがとても 気品があり、洗練されている!今年から父フィリップのピノの畑を 0.52 ha 譲り受け、計 0.85 ha の畑で更なる 質の向上を目指す! ミレジム情報 当主「トニー・ボールナール」のコメント 2013 年は、平均収量が 12 hL/ha と全体的に収量が少なく、立ち上げ 1 年目としてはかなり厳しいスタートだ った…。4 月 5 月と気温が低く雨が多かった影響で、かつてない規模で花が流れてしまい、多くのブドウが開花を 待たずに蔓に変わってしまった…。7 月はいく分天候が回復し太陽にも恵まれたのだが、8 月に入り再び気温が低 く雨の多い日が続いた。この悪天候の影響で、8 月終わりだというのにブドウ畑にミルデューが繁殖し始めた。9 月に入り真夏のような太陽が戻ってきたのだが、ブドウの房自体がすでに少なく、収穫はわずか 1 日で全て終了し てしまった…。ただ、収穫したブドウは、房が少なかった分フェノールが適度に熟し、酸と糖のバランスもとても 良かった! 「ヨシ」のつ・ぶ・や・き フィリップ・ボールナール Jr のトニーのワインがついに日本上陸~!トニーのワインは、ラベルが何ともポップ でファンキーだが、これをデザインしたのは妹のシャロレーヌ!ラベルの表裏にある白黒の子ギツネがトニーのト レードマークだそうだ。 今回、トニーに「フィリップを父に持つプレッシャーはないか?」聞いてみたところ、彼は至って普通に、 「全く プレッシャーはない」と答えた。むしろ、やれ「エチケットのデザインは何だ!?」とか「なぜいきなり VdF なん だ?アペラシオンを最初から拒否するとは、ジュラのワインに誇りがないのか?」など、ボールナール家の跡取り ということで、まわりのヴィニョロンからうるさくはやし立てられているようだ。 一方、フィリップにトニーのデビューについて聞いてみると、 「あいつはまだ何も分かっていないし、まだまだ青 二才だ!」と父親らしい厳しい答えが返ってきた。でも、その割には今年トニーにピノの区画の一部を譲ったり、 そもそもトニーのワインを最初にヴァンクゥールに奨めたのもフィリップ!今回トニーのインタビューを行った時 に、一番落ち着かなかったのもフィリップ!!(笑) 息子の前では厳しいことを言う彼も、やっぱり本当は息子が心配で応援したくて仕方ないのだろう。訪問の最後、 フィリップに「ヨシ!心配するな!トニーは一人ではなく、ちゃんと後ろに俺がついているから大丈夫だ!」と伝 えられ、その言葉からフィリップの親心とトニーを立派なヴィニョロンに育て上げるという決意を感じ取り、ドメ ーヌを後にした。フィリップだけでも話題に事欠かないのに、更にトニーも加わって、今後ボールナール家のネタ に困ることはないだろう(笑)これからますます目が離せなくなった! (2015.7.3.ドメーヌ突撃訪問より) ボールナール Jr. 夢は父親を超えるヴァンヴィヴァンをつくること! トニー・ボールナール 生産地 フランス東部、ジュラ地方のアルボワの街を南に 2 km ほど下ると、標高 400 m 以上の高原に囲まれた小さな村 ピュピランがある。そのピュピラン村の高台にフィリップ・ボールナールのドメーヌがあり、現在トニーは父親の フィリップとカーヴを共有している。畑の総面積は 2.5 ha、南から南西の丘の斜面に点在する。寒冬暑夏の大陸性 気候だが、高地に連なる土地は高山気候の要素が強く、春と秋が短い。ジュラ高原最大の支脈を背にして森林地帯 が広がり、深い谷が南東に向いているため、ブドウ畑は厳しい冬の寒さと夏季の乾燥に耐えることができる。 歴史 オーナーであるトニー・ボールナールは、ジュラのスター生産者フィリップ・ボールナールを親に持つ代々ヴィニ ョロンの家系で育った。幼い頃から父親のように自らのワインをつくってみたいと思っていた彼は、1998 年高校 を卒業後、Lycee Viticole de Beaune(ボーヌ醸造学校)でワイン全般を学び、2002 年にはマコンのワイン学校 (BTS)で 1 年間栽培醸造、そしてもう 1 年はパリで経営を学ぶ。2004 年 1 月、BTS 卒業後、語学の勉強も兼ね て、ナチュールとは対極的な栽培方法・醸造テクニックを経験するために、半年間オーストラリアの大手ワイナリ ーで研修し、その後すぐにアメリカに渡り、ナパのブティックワイナリーで半年間研修をする。2005 年 3 月アメ リカから帰って来た彼は、父親のフィリップが後継ぎのために用意をしていたドメーヌのポストを断り、自らワイ ナリー立上げの資金を貯めるために別の道を歩む。そして、2005 年 4 月からジュラ・ボワソンという酒類販売会 社の営業として働く。だが、仕事は 2 年と続かなかった。2007 年に会社を退職してから 4 年間は、ボジョレー、 サンジョセフ、リヨン、 サンテ=ティエンヌのワインショップを転々とするが、なかなかうまく資金を貯めること ができなかった。30 歳までにワイナリーを立ち上げるという夢が叶わなかった彼は、もう一度ゼロからチャレンジ する覚悟で 2011 年 4 月フィリップの元に戻る。 父親のドメーヌを手伝いつつ、一方で父親から畑を譲り受けたり、 あるいは自ら購入しながら、少しずつドメーヌ立上げの準備を整える。そして、2013 年 1 月、ついにドメーヌを スタートさせる。 生産者 現在、トニーは 2.5 ha の畑を 1 人で管理し、ワインの醸造は父親のフィリップのカーヴを共有している。所有す るブドウはピノノワール、プルサール、シャルドネ、サヴァニャンで、樹齢は 2015 年に植樹したものも含めて平 均 30 年。 幼い頃は大の虫好きだったトニーは、その頃から大自然やエコロジーに興味があり、ブドウ畑をビオで育てるのも、 父親からの影響ではなく、ごく自然な流れだった。彼のつくるワインは、スタイルこそ父親譲りだが、抽出が優し く、どれも上品で華奢な美しさとフィネスを兼ね備えている。彼のモットーは「環境と体にやさしいワイン」で、 将来的には畑にビオディナミを少しずつ取り入れたいと考えている。 トニー・ボールナールの+α情報 <もっと知りたい畑のこと> 土壌:マルヌ(赤色泥灰土、灰色泥灰土) 、石灰質粘土質 総面積:2.5 ha 品種:プルサール、ピノノワール、シャルドネ、サヴァニャン 樹齢:25 年~42 年 剪定方法:ギュイヨ・サンプル、アーチ型 生産量:10~30 hL/ha 収穫方法:収穫者 20 人で手摘み。畑で房レベルの選果 ビオの認証:なし(2017 年からビューローベリタス取得予定) <もっと知りたい醸造のこと> 醸造方法:赤はスミマセラシオン・カルボニック、白はバレルファーマンテーション。 赤は、ブドウを畑で選果後、手で除梗しファイバータンクもしくはステンレスタンクへ。果房を常にジュース に浸した状態を保つためにタンクに中蓋を落とし、そのまま 2 週間前後密閉のまま放置。マセラシオン後フリ ーランとプレスをアッサンブラージュして、ステンレスタンクもしくは 400 L の古樽で 11 ヶ月間熟成。熟成 終了後ワインをスーティラージュし、タンク内で少しワインを落ち着かせてから瓶詰め。 (瓶詰め日は月のカレ ンダー参照) 白のバレルファーマンテーションは、プヌマティックプレス機で 3 時間かけて圧搾。ジュースをステンレスタ ンクで 24 時間デブルバージュした後、そのまま古樽へ移し自然発酵。発酵と熟成を含めてトータル 11 ヶ月前 後樽で寝かせる。熟成終了後ワインをスーティラージュし、タンク内で少しワインを落ち着かせてから瓶詰め。 (瓶詰め日は月のカレンダー参照) 酵母:自然酵母 発酵期間:赤はステンレスタンクもしくはファイバータンクで 2~3 週間。白は古樽で 3 週間~1 ヶ月。 熟成方法:プルサールはステンレスタンク、ピノとシャルドネは古樽(225 L と 400 L) SO2 添加:ビン詰め時に 20 mg/L 熟成樽:3~10 年樽 フィルター:なし ちょっと一言、独り言 「ひとつお前に試飲させたい、とっておきのワインがある!」そう言われたのは、2014 年の春にフィリップ・ボ ールナールを訪問した時のことだった。樽から直接の試飲で、品種はシャルドネとピノノワールだったのだが、良 く作られたブルゴーニュワインのような透明感のある何とも言えない上品な味わいだった!そう、彼から勧められ た、とっておきのワインとは、息子トニーが初めて仕込んだワインだったのだ!トニーがワインをつくるという話 はフィリップから何となく聞いてはいたが、まさかもうすでに仕込んでいたとは全く知らなかった。しかもフィリ ップとは違うワインのテイストがあり、その場で激しく興味を抱いた。 トニーは、ピュピラン村で代々続くヴィニョロンの家系のボールナール家の長男で、若いころから父フィリップ の畑仕事などの手伝いをする機会が多く、そのうちに将来自分でワインをつくりたいと思うようになったそうだ。 フランスのワイン学校卒業後、オーストラリア、アメリカでワインを学び、帰国後はジュラに戻りそのまま順調に ボールナール家の跡を継ぐように思えたのだが、何とトニーは早々にドメーヌを飛び出してしまう。当時フィリッ プが「トニーのために、思い切ってワイン農協をやめて新しくドメーヌを立ち上げたのに、息子が出て行ってしま った…」と嘆いていたことを今でも良く覚えている。あの時の心境をトニーに尋ねてみると、彼は「あの当時はま だ 24 歳で、30 歳までにヴィニョロンになると決めていた自分にとってはまだ継ぐのは若すぎたし、また、昔から 父のつくっていたワインは今でこそヴァンナチュールとして認知されているが、当時のジュラは今ほどヴァンナチ ュールが認知されていなかった。父には当時の自分の行動が理解できなかったと思うが、自分がアメリカから帰っ てきてすぐにワインのコマーシャルの仕事に就いたのは、父のドメーヌを継ぐにしろ独立するにしろ、将来的なワ インの販売網を予め確保しておきたいという自分なりの考えがあった」と語ってくれた。今でこそボールナールの ワインは有名だが、確かにトニーの言う通り、当時は誰も知らないワインだったし、ましてやジュラのワインはま だまだ無名だった。事の真相を知り、私は長年トニーを少し誤解していたことに気がついた。 トニーに「フィリップのワインとの違いは何か?」とに尋ねてみると、彼はすぐに「個性」と答えてくれた。 「も ちろん、テロワールの違いもあるが、ブドウ栽培と醸造に関して父と僕の哲学は同じだし、父のやり方を今でも敬 っている。それでもキャラクターの違いが出てくるのは、やはり作り手の個性の違いがワインに反映されているの だと思う。もし、何度つくっても父と同じワインしかできないとするならば、自分が独立する意味がない。ワイン づくりについて、父は経験もあるし自分はまだまだ赤子のようだが、でも、自分のワインには父にはない個性があ る!」と彼は言う。確かに、フィリップと比べてトニーは、性格的に物腰が柔らかく繊細で、気遣いに長けている。 彼のワインを飲んでみると分かるが、どれも繊細でやさしく、彼のキャラクターがそのまま反映されている! 現在は、まだまだ細かいところで試行錯誤を繰り返すトニーだが、夢は父親を超えるヴァンヴィヴァンをつくる ことだそうだ!トニー曰く、目指すワインはスバリ「変化のあるワイン!その日の天気や、その日のコンディショ ンによって人の気持ちが変化するように、生きているワインは常に動いている。父親のつくってきたワインもそう いうワインだ。自分はそこをさらに洗練させて、イメージは常に明るい、いつ開けてもエネルギーを感じる、人に 元気を与えるワインをつくりたいと思う!」と締めくくった。いよいよ始まったトニーの挑戦を、これから生まれ るボールナール家の新たなストーリーを、ワクワクしながら皆さんにお届けしていきたい。
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