側鎖に長鎖アルキル基を持つアミノ酸の合成 東海大学大学院 工学研究科 工業化学専攻 ○鈴木 歩、鈴木 康之 東海大学 工学部 応用化学科 倉持 真由子 東海大学 工学部 応用化学科、糖鎖科学研究所 稲津 敏行 はじめに ナノチューブなどの分子自己集積体は超分子としてその特異な構造と機能が注目されている。生体内でも DNA の二重らせんやタンパク質の4次構造など自己集積体の例は多い。アルツハイマー病患者ではアミロイ ドβペプチドが疎水性相互作用によりβシート構造への自己集積することが知られている。合成ペプチドに よるヒドロゲル繊維の形成や、H-Phe-Phe-OH によるナノチューブ構築などが報告されている。これらペプチ ドは疎水性相互作用、水素結合、イオン結合などによって分子間で自己集積している (図 1) 。そこで、本研 究ではペプチドの側鎖に複数の長鎖アルキル基を導入し、疎水性相互作用により分子内で自己集積させ、さ らに巨大で新規な自己集積体を得られるものと考え検討した (図 2) 。 糖鎖含有長鎖アルキル金コロイドの文献を参考にヘキサエチレングリコールを含む長鎖アルキル基をもつ アミノ酸を合成することとした。そこで、長鎖アミンまたはカルボン酸とヘキサエチレングリコールユニッ トをエーテル結合させ、次いでグルタミン酸のカルボン酸またはリジンのアミノ基とそれぞれ縮合させるこ ととした。 図 1.分子間での自己集積 図 2.分子内での自己集積 実験方法および結果 長鎖アルキル部のエーテル結合は対応するアルコキシドとトシラートを反応させることで合成した。合成 した長鎖アルキルアジドは還元により長鎖アルキルアミンとし、長鎖アルキルアルコールは酸化により長鎖 アルキルカルボン酸へ誘導した。次に、それぞれグルタミン酸のカルボン酸またはリジンのアミノ基と PyBOP を用いて縮合を行い、長鎖アルキル基をもつグルタミンまたはリジン誘導体などの合成を行った(図 3)。 HO 1) Ph 3 P 2) H 2 O THF 64% N3 1)NaH TrO 2) 5 O TrO 6 O 5 O BnO 6 5 Z-Lys-OBn DIEA PyBOP O 6 5 CH 2 Cl2 86% H N O Z N H OBn O O Fmoc N H OH OTr 5 6 O OH 4 O O BnO 6 N H 4 Z CH 2 Cl2 92% OBn N H O HO 5 O BnO O 6 H N OTr DMF BnO 5 O 6 H 6 NH2 Z-Glu-OBn DIEA TrO PyBOP HO N3 O 6 DMF 81% TrO 1)NaH TsO 2) Ts O O 6 4 N H Fmoc O OH N H O 図 3.ヘキサエチレングリコールを含む長鎖アルキル基をもつアミノ酸の合成
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