2006・9・20 平等な社会をめざして 総会報告 八王子手をつなぐ女性の会第 19 回定期総 に必要なのではないか」「一般会員や市民に 会が6月 17 日(土)、労政会館で持たれた。 向けて具体的な活動をもう少し強めたらど 発足以来、真の男女平等社会実現のために活 うか」といった意見が出された。20 周年記 動を重ねてきた私たちの会であるが 2005 年 念事業への取り組みも含め、今後運営委員会 度も八王子市や東京都そして国の女性政策 で検討することになった。 憲法 24 条と 9 条の改憲が声高に語られる に呼応しながら、他の団体とも力を合わせ、 市民としての活動を繰り広げてきた。「男女 中、ジェンダーバッシングが学校現場を直撃 共同参画センターのプランナーズ会議」や し、処罰つきの日の丸・君が代が強制され、 「男女共同参画施策推進委員会」「市民参加の 愛国心教育や教育基本法改正の動きなど物 しくみづくり検討委員会」への参加など八王 言わぬ国民つくりが始まっている。歴史を逆 子市とも積極的にかかわってきた。DV被害 戻りさせないよう、多くの人と手をつなぎ、 者支援のための「電話相談」や「れんこんの 戦争への道をつくる一つひとつのことに反 会」の活動もスタッフの方々の地道な努力で 対の声をあげていかなければならない。平等 充実してきている。各部から活動報告と新年 な社会は平和な社会があってはじめて実現 度の方針が出され、承認された。会場から「中 するのだから。(K.O.) 高校生のデートDV防止の働きかけが緊急 2006年度運営体制 代 表 副代表 書記局 会 計 講演会 遠藤真子 露木肇子 斎藤義子 市川晶子 磯貝光子 渉 外 陣内康子 広 報 石井のり 研 修 米村幸江 ホットライン 井上睦子 宝月ちか子 れんこんの会 古坂容子 ホームページ ポパル和子 小野慶子 佐久間寛子 茂原嘉子 「スウェーデンの男女平等を学ぶ」 講師 レーナ・リンダル 6月 17 日総会後、福祉と男女平等の先進国であるスウェーデン社会の取り組みを、持続可能なスウェー デン協会・日本代表のレーナ・リンダルさんに伺いました。 スウェーデンの男女平等とは?! スウェーデンの内閣は皆がフェミニスト。 本。性教育は、自分の生き方を選ぶことであ 民主主義とは、個人の権利・責任・自由が基 り、性教育こそ民主主義。こうした言葉を皮 1 切りに、来日 20 年近くになるレーナ・リン 人を犠牲にしながら、国の経済発展を追い求 ダルの口からは次々と生きた言葉と提言が めてきた国。家族単位の発想など日本の文化 たくさん出されました。 の特徴や社会保障制度の不十分さなどに触 70 年代の「ストッキングやお化粧はいら れられ、両国の違いが浮き彫りになりました。 ない」という極めつけの運動から始まったス 質疑応答では、日本もスウェーデンを見習い、 ウェーデンの男女平等運動も、現在は性差を 高負担高福祉で社会保障制度の充実をする 認めつつ、男女平等の追求というステージに ことも将来的選択かという質問をしたとこ シフトしているそうです。立ち会い出産で男 ろ、「日本は税金の使われ方が不透明。市民 女がともに子育てをする意識づけを行う取 の知る権利が保障されていない。こうした中 り組み。給与の80%が保障される育児休暇。 では高負担にも不満が出てうまくいかない 保育所から男女平等は始まると、保育のあり と思う。」と抜本的な日本の政治課題も鋭く 方も、ビデオ撮影で検証し研究するなど、実 指摘されました。 験社会スウェーデンでの取り組みは、さらに また、民主主義や男女平等の先進国だから、 進行中です。 スウェーデンでは、DVやレイプは少ないの スウェーデンでは男女とも働くことが当 かという質問には、「決して少なくない。む たり前。経済的自立の中、結婚する人もいる しろレイプなどは日本より多いかも。性教育 が、同棲を続ける人もいる。結婚は個人の問 のあり方に課題が残る。」というお話があり、 題。子どもを犠牲にすることには社会の目は 男女平等の先進国にもまだまだ課題がある 厳しいが、経済的自立があるので、離婚は簡 ことがわかりました。 単。離婚後も保護者は二人。教育費は無料。 そもそもスウェーデンでは、労働者の平等 さらには、スウェーデンでは、事故が起きて、 つまり、人の平等の運動の中で男女平等も育 万が一障害を持っても基本的に保障があり、 ってきたけれど、日本は男女平等以前の、人 社会が面倒を見てくれる社会福祉が充実し の平等ができていない国との分析もあり、今 ている。だから、冒険や実験をしながら社会 後男女平等の実現のためには、包括的人権問 をつくっていけるとのこと。 題への取り組みが欠かせないことを痛感し 一方、日本は経済成長最優先にし、環境と ました。 (K.W.) 男女平等への意識は教育の積み重ねから レーナ・リンダルさんは、持続可能なスウ バランスのとれた学校作りをめざし、すべて ェーデン協会の日本代表です。私はまず、こ の幼稚園、保育園、学校、成人教育機関が持 の持続可能な学校認証制度というものは、ど 続可能な学校になることを目的としている んなものなのだろうかと思いました。そのた そうです。 めの教育(ESD)にも興味をそそられました。 生から死への間、皆が楽しく平和に過ごす 環境面だけでなく、経済、社会面においても ことができるようにと願ってできたプログ 2 ラムのような気がしました。男女平等の意識 喜ばれて生まれてくる。 ☆事実婚も多いが 1987 年「サムボ法」が のあるスウェーデンだからこそ推進してい けるのかもしれません。教育の問題に人権、 成立し結婚している人と同様に義務や 男女平等、貧困削減、企業の社会的責任と説 権利がある。 明責任などを重ねる、この持続可能な学校と ☆離婚はどちらか一方が言い出せば成立 いう考え方をもう少しゆっくりじっくり聞 するので数は多いが子どもは二人で世 いてみたいと思いました。 話をする。 レーナさんは 20 歳の時日本に来てアルバ ☆民主主義教育にすごく力を入れていて、 イトや旅行をしていたそうです。しかし日本 個人の権利、自由、性教育を大切にし、 自分の人生を選び、判断し、成長して いくこと教える。 ☆ 避妊についても男女共に学び、知らな かったとは言えない。責任感が育まれ ていく。 男女平等への意識はこのような教育のつ み重ねだとしみじみ、つくづく思いました。 「同じような価値観をもっている人たちの 中にいる事がすごく大事。」と言うレーナさ んの言葉にレーナさんの自信と誇りがみな ぎっていました。 の女性たちとは結婚のことなどでは話し ジェンダーフリー・バッシング、ゆきすぎ が合わなかったと言っていました。 た性教育論、個人より国優先等など問題点い 以下お話の要点を紹介します。 っぱいの日本の教育現状の中で少し明るく ☆スウェーデンは個人主義で働くのはあ なれました。 (K.M.) たり前でそれぞれが自立し、税金を払い、 結婚も経済的理由でする人はいない。 ☆子どもは時を選んで産むのでいつでも スウエーデン・フィンランドの福祉を訪ねて 北欧の「介護予防と福祉の基盤としての住 福祉ツアーに参加しました。 まい」からスウェーデン・フィンランドの福 暮らしている人の個性に合わせた、快適な 祉を訪ねて、5月の 10 日間、生命誕生から 生活を楽しむ生活空間として欠かせない住 ターミナルケアの現場 16 箇所を訪ね、北欧 まい。スウェーデンでは「住・食・衣」の考 3 えのもと、国の責任として住宅省が高齢者、 各自の居室にはベッドルーム、リビング、自 障害者、単身者、国籍に関わらず、そして厳 炊が出来る台所、トイレ、シャワーがあり、 しい気候から命を守るシェルターとして、す 一部屋というより一戸。独立した生活が出来 べての人が安心して地域で生活していくた るように職員がフォローします。精神障害者 めに欠かせない住環境整備を進めています。 のサポートハウスも同様なしつらえとなっ 訪ねたストックホルム市は住宅局が 1900 ていました。地域で暮らすのに障害のレベル 年代より土地の私有化を抑え、90%が市所 で考えるのではなく、どういう生活を営みた 有となり高さは5階までとした集合住宅を いのか、どうすれば可能になるのかを検討す 建てていきました。たとえ一人住まいでも台 るのです。 所、トイレ、シャワー室は誰もが尊厳を持っ 日本では「衣・食・住」というように、住ま て生活していくための最低条件とし、賃貸で い方については後回しとされてきました。特 も大家さんはこの条件をクリアするよう罰 に高齢者や障害者は最近ようやく個室対応 則規定が設けられています。日本の2DK よ が取り入れられてきたものの、一部屋4人づ りゆとりがありました。そして住宅個数の つをカーテンで仕切り、生活の場としている 20%は高齢者や障害者に提供しなければな 収容型施設が多く存在し、減ることがありま らないとされ、脱施設政策を確実に推進して せん。望んで施設に入る人はいないのに地域 います。 で暮らすための住宅政策から遠い存在のま 一般に 18 歳となれば障害者も同様に誰も まです。誰もが尊厳ある生活を保障されるた が親元から独立した生活をはじめます。市内 めに、福祉サービスのみをさすだけではなく、 で最も人気のある再開発地区のアパート。 住宅を含めまち全体をバリアフリー化する 一番日当たりのよいところに知的障害者5 ことも必要です。 (H.S.) 人が生活するグループホームがありました。 会費納入とカンパのお願い! 活動資金確保のため、会員の皆様の ご協力をお願いします!! 本の紹介 『すみれ日和』 教育資料出版会 1500 円 望月すみ江著 会員の望月すみ江さんの気力と実行力が 十分伝わってくる本でした。 著者の体験が 普段の言葉と明るいお人柄が、重たい内容で あるのに、緊迫感を与えず、その場面が目に 浮かんでくる体験日誌という感じをもちま した。 三部構成で、第一部は職業病との闘い、労 使関係における女性の地位の問題への果敢 なる取り組み、自分のためだけではなく、女 性の職場改善として捉えて闘ってきた姿は、 今職場で悩んでいる女性たちへの勇気を与 える内容だと思いました。 4 ン病を著者は子どものように P ちゃんとい い、好きなスキーや登山に挑戦する。それも 楽しみながら・・・・ それを支えてくれる 仲間があればこそ、いつでも社会に目を向け ている彼女の生き方ゆえであろうと思いま した。 (書評 J.K.) 第二部、第三部はご自身の乳がんとパーキ ンソン病との関わり方、病気とともに生きて いこうという生き方が書かれ、私たち自身の 問題として、これらの病気の心配があったと きの対処の仕方が丁寧に示され、教えられる 本でした。 さらにすごい事は、難病であるパーキンソ 活動紹介 『市民が調べた 有料老人ホームの調査』 「介護の社会化を進める 1 万人市民委員会 In八王子」製作 500 円 八王子市民で構成している当会は、八王子 入居金や利用料、生活環境など多項目の設 市の高齢者福祉に関する問題提起など全国 問に答えてもらい、いろいろ比較しながらご 組織の中では地道に活動を継続している団 覧いただけると思います。また、メンバーが 体です。過去には、特養ホームの調査活動を ホームを訪問し、ヒヤリングを行ない、その まとめた報告書を作成し、市民に広く情報提 感想文を掲載しています。市民の第一印象は 供してきました。このことが社会的にも認め 的を射ているもので、かなり参考になると自 られ、2002 年度毎日新聞社の『毎日介護賞』 負しております。 更に、覆面トークを行な 受賞。 ‘06 年 8 月に乱立する有料老人ホーム い、感想文では書けなかったことなど忌憚の の実態を調査しました。三多摩地域には 50 ない意見や、有料老人ホームへの期待、改善 あまりのホームがあるが、アンケートに答え 点なども少々ソフトな言い方でしたが、載っ てくれたのは 22 箇所でまだまだ閉鎖的であ ています。啓文堂・くまざわ書店にてお求め ることが窺えます。 ください。 (J.K.) 運営委員会報告 6 月 17 日 第 19 回総会 8月 1 日 ジェンダー予算学習会 6 月 20 日 プランナーズ会議 8 月 16 日 男女共同参画施策推進委員会 7月 3日 運営委員会 8 月 30 日 市民参加のしくみづくり 7 月 13 日 プランナーズ会議 7 月 15 日 市民参加のしくみづくり 検討委員会 7 月 19 日 検討委員会・提言書提出 9月6 日 プランナーズ会議 9 月 12 日 運営委員会 男女共同参画施策推進委員会 東京ウィメンズプラザ 「平成 18 年度 DV 防止等民間活動助成対象事業」助成金を獲得! 八王子手をつなぐ女性の会が DV 被害者 えられているとはいえ、僅かな年会費の中か への支援活動を始めて 4 年が経ちました。 ら会にとっては大きな予算を割く活動を認 02 年 7 月からの自助グループれんこんの会 め、カンパ要請にも応えてくださる会員の と、同じく 11 月からの DV ホットライン八 方々の理解がなければ到底はじめられず、続 王子どちらも、スタッフの熱意と責任感に支 けられなかった活動です。 5 女性であるがゆえに負ってきた数々の理 助成対象事業募集』がプレス発表されました。 不尽さの究極が、このもっとも身近な夫や恋 当会 2006 年度活動方針に「DV サポート活 人からの日常的に受ける暴力であることを 動に向けて研修し、かつ実施する」と明記し 理解し、痛みと怒りを共有し、その状況から ていることでもあり、急遽「DV 被害者支援 解放されるための支援活動を後押ししてき スタッフ養成と DV 問題啓発のための公開 たのは当会の蓄積された力だと思います。 講座」として助成金の申請を行いました。総 活動内容については、厳重な守秘を原則と 537.000 円の事業を予定し、内 268.000 額 しているので、詳細には伝えられませんが、 円をウィメンズプラザが交付するというも DV 法施行の成果なのか若い人たちが幼い のです。 子と一緒に家を出るという行動の選択も増 えているようです。当事者の個別に解決すべ 事業予定(1)−①は、8月 5、6 日に終 き課題は多様です。電話相談も、自助グルー 了しました。内容の濃い、充実した 2 日間、 プも一人ひとりの問題を傾聴し、寄り添い、 新しく 3 名の会員がスタッフへの意思を持 受容することが支援の基本ですが、活動の中 って参加され、今後も従来からのスタッフと で生じたスタッフの疑問や課題の解決も含 もども研修を重ねることになっています。 め、とくに集中的研修の実施と、会員の中か (2)は広く会員や市民への公開講座です。 ら新しいスタッフの養成が運営の課題とな 特に①は若者たちの深刻な問題となってい っています。 るデート DV についてがテーマです。 折しも、06 年 5 月下旬、東京ウィメンズ これらの事業を成功させ、DV を許さない、 プラザの『平成 18 年度 DV 防止等民間活動 暴力のない社会をめざしていきましょう。 事業予定 (1)DV 被害者支援スタッフ養成 ①DV ホットライン八王子、自助グループれんこんの会スタッフ養成・スキルアップ講座 ②スタッフのセルフケアとスーパーバイズ講習 ③八王子チャイルドライン主催相談員研修への参加(全 8 回) ④NPO 法人女性の安全と健康のための支援教育センター主催支援者のための専門講座 への受講者派遣(1 名) (2)会員及び市民対象の DV 問題啓発のための公開講座 ①若者への DV 防止教育・・・デート DV とは?(仮題)----12 月 2 日予定 ②映画とお話の会 07 年 2 月の予定 (M.E.) 6 学習会[06・8 ・1] 八王子市予算をジェンダーの視点から分析する 八王子市の予算は、2006 年度で 3245 億 教育費では、男女混合名簿は小学校で 57 円(一般会計 1596 億円、特別会計 1649 億 校、中学校で 7 校と中学校の実施率が低く 円)。この予算は、 「男女の格差を縮小し男女 性教育については、家庭の役割に責任を転じ 平等のために、どのように使われているの るなど市教委の消極的な姿勢が報告された。 か」当会会員の市議会議員(狩野宏子さん、 就労を援助する「しごと情報館」の設置や 陣内泰子さん、若尾喜美絵さん、松本良子さ 市内事業所の男女の働き方調査実施など前 ん、川村美恵子さん、井上睦子さん)の皆さ 進もあるが、多くがパートなど非正規で働く んから、担当常任委員会の予算について分析 女性のための施策が不十分であることが明 と問題提起を受けた。 らかになった。また、農家の女性については、 男女平等事業の拠点である男女共同参画 その地位と労働条件の改善のために「家族経 センター予算は、約 4000 万円だが、多くは 営協定」が市内 6 軒の農家で結ばれている 人件費で事業費が少ないことや、市職員の女 が、農業委員には農業者女性が0であること 性比率は 27%、管理職は5%と、政策立案 もわかった。 部門への女性の参画率を高めることが課題 都市計画などのまちづくり予算について、 である。 総合入札制度を導入し受託企業の男女平等 また、65 歳以上の高齢女性の割合は 56% を進めることの提起があった。 と比率が高いが、改定介護保険制度では軽度 内容が盛りだくさんで十分な議論の時間 利用者の福祉用具のレンタルができなくな がなくて残念だったが、男女平等の視点で予 ること、乳がん検診などの有料化、障害者自 算を見ると市政の問題点はより鮮明になり 立支援法は、女性が障害を持っても子どもを 興味深い。資料も種々示され、今回の学習会 産み育てるという人生を選択できるケアを を 10 月に提出する 07 年度予算要望に生か 準備していないことなどが問題である。 していきたい。 (M.I.) 私の好きなジェンダーフリーⅡ…槙原敬之 槙原敬之(まきはらのりゆき)といえばSM のフレーズくらいしか知らなかった。ところ APの歌でヒットした「世界にひとつだけの が一昨年友人から借りたCDを聴いて以来、 花」の作詞作曲者として知られている。2年 すっかり彼の歌にはまってしまったのだ。 程前まで私は彼の歌は♪どんな時もどんな なにしろ詞がいい。彼の詞は饒舌すぎると 時も…、や♪もう恋なんてしないなんて…、 言う人もいるが、私は好きだ。語彙が豊富で 7 美しい。どの曲も映画のように場面が浮かん 幸せにする素敵さなのだ。 でくる。現在30代半ばの彼だが、20代の 私が30年前に不愉快に思った「眠りにつ 頃につくったせつない恋の歌がいい。最近は、 いた君をポケットに詰め込んでそのまま連 仕事・家族・子ども・仲間・地域…をテーマ れ去りたい…」(チューリップ「心の旅」)とは、 にした歌が多いが、それもまたいい。彼の曲 まるで異なる女性観である。 は言葉とメロディーのマッチングが絶妙で 槙原の歌では、しばしば「僕」は落ち込んだ ある。メロディーラインが美しい。アレンジ り、弱音を吐いたりして、「男らしくしなく がまたいい。そして本当に歌がうまい。あふ ちゃ」と思ったりもするのだが、実際はおろ れる才能とはまさに彼のことだろう。 おろしている。そしてそんな「僕」を支えて元 彼の詞をたくさん聞いているうちに、私が 気付けてくれるのは、「君」や「みんな」(家 彼の詞を心地よく感じる理由が分かってき 族・仲間・地域…)の存在なのである。彼は た。そこで歌われている「君」がとても素敵な また「温かいミルクみたい」な、やさしい男 のだ。「君」はいきいきと仕事をして暮らして 友達のことも歌っている。「僕」には人間とし いる、いろいろなことに悩んでいる、強い意 てのプライドはあるが、無用な男のプライド 思を持っている、一人の女性である。「僕」 はない。 はそんな「君」をとても大切に、また誇りに 彼の詞に私は「ジェンダーフリー」を感じ 思っている。これまでの多くのラブソングで るのだが、彼にとってはごく自然な感覚なの うたわれていたのは、ただ「美しい」「かわい だろう。彼の詞に多くの若者が共感している い」「けなげな」「君」であった。「そんな君 ことがなんだか嬉しい。(A.I.) を僕が守るよ」「僕のものにしたい」であった。 槙原の世界では、「君」の素敵さは「僕」だ けのものではない。「君」の素敵さはみんなを 8
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