ENGINEERING JOURNAL No.1006

寄
稿
最近 20 年のトライボロジー研究
̶基礎と応用̶
Study of Tribology in the Past Twenty Years
*
加藤康司
— Fundamentals and Applications —
Prof. Koji KATO
The representative research results in the past 20 years at my laboratory are introduced as follows,
(1)Static friction coefficient changes by the shape of contact area.
(2)Different wear modes are classified in one diagram as Wear Map by introducing indexes of severity of
contact.
(3)Repeated sliding friction at self-mated SiC and Si3N4 in water generates friction coefficient below 0.01.
Micro texture on contact surfaces generates friction coefficient in the order of 0.0001.
(4)Tribocoating of indium on the surface of SUS440C disk generates friction coefficient below 0.05
against Si3N4 pin in high vacuum.
(5)N2 gas supply at the contacts of Si3N4/CNx and CNx/CNx in air generate friction coefficient in the order
of 0.001.
(6)Tribolayer formed by tribo-chemical reaction changes friction and wear drastically.
Key Words: micro-slip, wear map, water lubrication, tribo-coating, N2-gas lubrication, tribolayer
面が形成されている.下部の球形試片に摩擦力 F が徐々
1.はじめに
に加えられて,F の増加に伴い試片の弾性変形量 d と
ギリシャ語の Tribos を語源とする「Tribology」を
日本語に直訳すれば「摩擦学」とするのが妥当である.
摩擦係数 l = F/W が増加している.
l の増加に伴い,円形接触面の中では円周辺から中
それは摩擦の結果として生じる摩擦熱,摩擦音,摩耗お
心に向かって緑色で示されたミクロ滑りが伝播拡大して
よび潤滑を含み,摩擦帯電,摩擦発ガス,摩擦電子放射
いる.この「ミクロ滑りが接触面全域に伝播」したとこ
等を含む.
ろ で 巨 視 的 滑 り が 発 生 し, そ の 時 の l の 値(ls =
摩擦は自然界の多数の現象に深く関与し,工業界の接
触面の技術に深く関わる.
それ故に摩擦の基礎を理解し,
0.85)が静止摩擦係数になる.
図1(b) では円形接触面の中央に 2 個の点欠陥が存在
応用への展開の形を知ることは工業製品の「開発,性能
する.この場合ミクロ滑りはそれらの欠陥の周囲から発
向上,信頼性確保,生産性向上」のために重要である.
生し外周に向かって伝播する.一方で外周から別のミク
このような観点から,本文においては筆者がこれまで
ロ滑りが中心に向かって伝播する.両者が合体したとこ
の 20 年間に大学の研究室において若手研究者および学
ろで巨視的滑りが発生し,静止摩擦係数は ls = 0.69 と
生達と共に行った研究成果の代表例を紹介する.
なる.
図2では 4 種類の異なる接触面形状におけるミクロ
滑りの発生と伝播を示している.三角形の場合にミクロ
2.摩擦と摩耗の微視機構
2.1
滑りは最も早く接触面全域を覆い,ls = 0.32 の最小値
接触面内ミクロ滑りの発生と伝播
を示す.
図1(a) では W の荷重下の弾性変形により円形接触
*
日本大学工学部
2
機械工学科
教授
工学博士
JTEKT Engineering Journal No. 1006 (2009)
最近 20 年のトライボロジー研究
(a) 接触面内局所滑り
W
̶基礎と応用̶
2.2
摩擦係数
摩擦力F
l=
荷重 W
巨視的滑り発生前
の摩擦係数
金属はアブレシブ摩耗,凝着摩耗,流動摩耗,疲労摩
F
耗,腐食摩耗,等の種々の摩耗の種類(Type)を示す
摩擦力F の方向
l=0.22
l=0.70
l=0.50
2mm
l=0.85
2mm
2mm
摩耗形態図(Wear Map)
と共に,1 つの種類の中でも摩耗程度の異なる型(Mode)
2mm
を示す.
図3はアブレシブ摩耗の中で観られる切削型
静止摩擦係数
ls= 0.85
摩擦係数,l
接触面
(Ploughing mode)の 3 つの型の発生領域を,突起食
い込み度 Dp と接触面の無欠元せん断強度 f の 2 つのパ
滑り域
非滑り域
(Cutting mode)
, く さ び 型(Wedge mode), 溝 型
ラメータによって「摩耗形態図」として表わせることを
W
示す.
W =7.85N
F
(a)3つの摩耗形態のSEM
(走査型電子顕微鏡)
像
(b) 接触面内欠陥効果
W
F
切削型
(Cutting)
試片の変形量 d x,
l=0.17
l=0.48
l=0.30
l=0.69
2mm
2mm
2mm
2mm
W:
F :
H:
R :
a :
h :
静止摩擦係数
ls= 0.69
図1
くさび型
(Wedge forming)
摩擦力の増加に伴う接触面内ミクロ滑りの
伝播と静止摩擦係数1)
h
DP = a = R
pH
2W
1
2
溝型
(Ploughing)
荷重
摩擦力
硬さ
突起半径
接触円半径
食い込み深さ
2
pR H
−1
2W
−
(b)金属のアブレシブ摩耗形態図
0.6
Micro-slip in contact area corresponding to the increase
h
DP = a = R
in friction force and the static friction coefficient
pH
2W
1
2
2
−
pR H
−1
2W
円環
半球
F
l=0.29
四角柱
F
F
l=0.29
l=0.29
l=0.30
2mm
2mm
三角柱
F
2mm
2mm
非滑り域
滑り域
W
dx
F
摩擦係数,l(= F / W )
接触面
静止摩擦係数
ls=0.85( )
0.6
ls=0.49( )
ls=0.48( )
0.5
0.4
突起食込み度, Dp
0.5
0.4
0.2
0
0.2
0.1
0
0.1
0.2
0.3
0.4
線理
べり
によ
論解
界
る境
線
くさび型
溝型
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
接触面の無次元せん断強度,f
W=7.85N
0
修正す
0.1
ls=0.32( )
0.3
切削型
0.3
接触面のせん断強度
f ( l ) = バルク材のせん断強度
0.5
試片の変形量 dx ,mm
図2
接触面形状がミクロ滑りと静止摩擦係数に及ぼす
影響1)
図3
金属のアブレシブ摩耗形態2)
Abrasive wear map of metals
The effect of shape of contact area on micro-slip and
static friction coefficient
JTEKT Engineering Journal No. 1006 (2009)
3
最近 20 年のトライボロジー研究
̶基礎と応用̶
(a1)
図4はセラミックスの同種同士の摩擦において観察さ
れるマイルド摩耗(滑らかな摩耗面が形成される)とシ
ビア摩耗(粗い摩耗面が形成される)の 2 つの摩耗の種
20µm
類の発生領域を,機械的接触の過酷度 Scm と熱的接触の
過酷度 Sct によって,摩耗形態図として表わせることを
摩耗痕
w=rvm/Pmax
(a2)
示す.
Es
Ys
界面はく離型,下地内はく離型)の発達領域を,被膜と
Hs
Z/a
図5は硬質被膜の表面が繰返し摩擦された場合に生じ
る被膜の 3 つのはく離形態(被膜内はく離型,被膜下地
2
下地の硬さ比および被膜厚さと接触半径の比によって,
3
摩耗形態図として表わせることを示す.
4
接触の過酷度Sc(Severity of Contact)
のコンセプトの導入
シビア摩耗
マイルド摩耗
7
7
6
6
5
4
3
硬さ比,Hf/Hs
降伏応力比,Yf/Ys
(b)
(a3)
0.00 0.40 0.80 1.20 1.60
0
l=0.70
l=0.50
1
l=0.25
t/a=0.5
X/a=0.0
Ef/Es=2.0
Ef/Es=2
l=0.25
5
4
3
2
2
1
1
0
1
2
3
4
被膜ෘߐ/接⸅ඨ᏷,t/a
4µm
潜在予き裂と接触圧力分布
2µm
(c)界面近傍ではく離した被膜
(1+10l)Pmax d
)
KIC
Sc,m= (
機械的接触の過酷度
20
図5
15
硬質被膜のはく離の摩耗形態図4),5)
Wear map of delamination of hard coatings
10
2.3
5
流動摩耗のシミュレーション
図6は油中における鋼の流動摩耗により発達した薄片
0 −3
10
−2
10
熱的接触の過酷度 Sc,t= (
l :摩擦係数
Pmax :ヘルツ接触面圧
d :き裂長さ
KIc :破壊靭性
図4
(d)層内はく離した被膜
c
v
W
Hv
:熱分配率
:滑り速度
:荷重
:硬さ
−1
0
10
cl
DTs
10
vHWV
)
kqc
DTs:耐熱衝撃性
k :熱伝導率
q :密度
c :比熱
セラミックスのマイルド摩耗とシビア摩耗の
摩耗形態図3)
Wear map of ceramics describing mild and severe wear
状の摩耗粒子を示す.図7は摩擦面の同一箇所を摩擦サ
イクル中に SEM により連続観察することにより得られ
た鋼表面の流動摩耗粒子発生状況を示す.1.6 × 104 の
摩擦の繰返しにより 1 個の薄片状摩耗粒子が形成され
ている様子が分かる.図8は,鋼の摩擦面上に形成され
たビッカース圧痕が,油中の摩擦の繰返しによる表面層
の流動のために覆われて,徐々に小さくなってゆく様子
を示す.ビッカース圧痕サイズの摩擦方向変化 DDx を
測定すれば,図9が得られる.図9より表面の流動速度
R と接触圧力の関係が図10 のように得られる.すなわ
ち,流動速度は圧力に敏感であり「1 Å /pass」前後の
表面流動により流動摩耗が発生していることが分かる.
4
JTEKT Engineering Journal No. 1006 (2009)
(a)
̶基礎と応用̶
Amount of Plastic Flow,DDx (µm)
最近 20 年のトライボロジー研究
(b)
S10C (0.1 wt.% C steel)
Alkylnaphtalene (28〜35 cst at 38℃)
Rmax=0.4µm
Pm=9.8MPa
V=0.52m/s
20
20µm
Indentation
10
0.52m/s
0
2
6)
図6
油中で形成された鋼の流動摩耗粒子のSEM像
図9
Frictional (b)
Direction
4
4
8 (×10 )
6
Passage Number of Ball
(Passes)
SEM images of flow wear particles of steel generated in oil
(a)
6.0Mpa
26.5Mpa
45.1Mpa
63.5Mpa
表面の塑性流動と摩擦繰返し数および接触圧力の
関係7)
Relation between surface flow, number of
3
1.6×10 Passes
8×10 Passes
(c)
(d)
4
1.6×10 Passes
図7
×10
5.0
ー4
Flow Rate,R (µm/Pass)
3
friction passes and contact pressure
Flow wear
S10C (0.1 wt.% C steel)
Rmax=4µm
Pm=9.8MPa
V=0.52m/s
Alkylnaphtalene
(28〜35 at cst 38℃)
4
4.8×10 Passes
Rough Surface
(4µm Rmax)
R
0
Generation process of a flow wear particle of steel by
20
40
60
80
100
Contact pressure (MPa)
repeated friction
図10
表面の流動速度と接触圧力の関係7)
The relationship between surface flow rate and
10µm
(b)
Rx
Ry
2.5
0.52m/s
繰返し摩擦による鋼の流動摩耗粒子の
発生過程6)
(a)
20µm
Indentation
contact pressure
(c)
3.セラミックスの水潤滑
3.1
水中なじみによる低摩擦の発生
図11 に示すように SiC 同士や Si3N4 同士を水中で繰
0Pass
4
3.2×10 Passes
4
4.8×10 Passes
Frictional Direction
0.25m/s; 26.5MPa
図8
繰返し摩擦によるビッカース圧痕の変化による
流動摩耗過程のシミュレーション7)
Simulation of flow wear process by the change of
返し摩擦すれば摩耗面はナノメートル単位で滑らかにな
り,10nm 単位の水膜が流体潤滑状態を形成し,摩擦係
数は 0.01 以下になる.図12 はピンとディスクの摩擦
方向がわからないほど滑らかな摩耗面を示す.このよう
に滑らかな摩耗面の形成は
Vickers indentation mark in repeated friction
Si3N4 + 6H2O → 3SiO2 + 4NH3
SiC + 2H2O → SiO2 + CH4
SiO2 + 2H2O → Si(OH)4
のような「トライボ化学反応が」接触面で発生したこと
によると考えられる.このような摩耗面は水を除去した
後も約 104 サイクルの間 l = 0.15 の低摩擦を示す.
JTEKT Engineering Journal No. 1006 (2009)
5
最近 20 年のトライボロジー研究
̶基礎と応用̶
Friction coefficient,l
1.2
Sliding contact in water
1.0 Load:5N
Sliding velocity:
0.8 120mm/s
Water
20mm
Si3N4 / Si3N4
SiC / SiC
0.6
SiC / SiC
0.4
0.2
l< 0.01
Si3N4 / Si3N4
0
0
2
4
6
8
10
12
14
4
Sliding cycles N,×10 cycles
図11
SiC/SiCとSi3N4/Si3N4の水中における摩擦
繰返しによる摩擦係数の低下8)
Reduction in friction coefficient of SiC/SiC and
図13
Si3N4/Si3N4 by repeated friction in water
SiCディスク表面に形成された
10)
マイクロピット
Micro-pits formed on SiC disk surface
Si3N4 Pin/Si3N4 Disk
Sliding in water
Load W:5N
Sliding Velocity v:120mm/s
Sliding cycles N:87 500 cycles
Pit diameter: 150µm
Pit depth
: 3〜4µm
Untextured
u150, 2.8%, Depth 3-4µm
u150, 22.5%, Depth 3-4µm
u350, 4.9%, Depth 3-4µm
図12
Si3N4ピンとSi3N4ディスクの水中摩擦繰返し
により得られた滑らかな摩耗面9)
Smooth wear surfaces on Si3N4 pin and Si3N4 disk
formed by repeated friction in water
3.2
Friction coefficient l
0.04
0.03
0.02
0
図13 は SiC ディスク表面に形成されたマイクロピッ
める割合(面積率)を変化させれば,図14 に示すよう
に水中の焼付き試験によって得られる臨界荷重 Wc の
値が大きく変化する.図15 はそのような Wc に及ぼす
ピットの深さ h/ 直径 d と面積率 r(%)の影響を表す.
Wc
0.01
表面テクスチュアによる潤滑効果
トを示す.このようなピットの大きさと全体の面積に占
SiC/SiC
−1
Rotational speed n:1 200min
Lubricant:Purified water
Supply rate:60ml/min
0
Wco
Wc
Wc
500 1 000 1 500 2 000 2 500 3 000 3 500
Load W,N
図14
ディスク表面のマイクロピットの大きさと
面積率が焼付きの臨界荷重Wcに
及ぼす影響10)
The effect of size and area ratio of micro-pits on critical
seizure load
Wco はピットの無い場合の Wc の値であり一定値であ
る.図より,Wc/Wco > 2.0 〜 2.5 の値が(h/d = 0.01
〜 0.02,r = 5%)の領域に存在することが分る.
図16 に示すように種々の「ピットパターン」を形成
すれば,図17 と図18 に示すように摩擦係数 l と臨界
荷重 Wc はパターンによって,さらに大きく変化する.
図17 に示されている l
0.0001 の値は水潤滑として
実用に大きく寄与できる値である.
6
JTEKT Engineering Journal No. 1006 (2009)
̶基礎と応用̶
5 000
0.04
SiC cylinder/SiC disk
Pit diameter d:50-650µm
Pit depth h:1.9〜16.6µm
Lubricant:Purified water
0.03
Wc/Wco
2.0〜2.5
1.5〜2.0
0.02
1.0〜1.5
0.01
0.5〜1.0
0
0
5
10
15
20
Critical load Wc,N
Depth-diameter ratio,h / d
最近 20 年のトライボロジー研究
4 000
3 000
2 000
1 000
0
25
Pit area ratio r , %
図15
ディスク表面のマイクロピットの
深さh/直径dと面積率r(%)と焼付きの
臨界荷重Wc/Wcoの関係
Wco:マイクロピットなしの時の臨界荷重10)
Lubricant:refined water
Supply rate:60ml/min
Temperature:14-20℃
図18
No texture
RSP
CLP
CLRSP
3種類のピットパターンがSiC/SiCの水中の
焼付き臨界荷重Wcに及ぼす影響11)
The effect of three pit patterns on critical seizure load
Wc of SiC/SiC in water
The relationship among depth/diameter ratio h/d and
area ratio r(%) of pits on disc surface and the normalized
critical seizure load Wc/Wco
4.真空中固体被膜潤滑
真空中潤滑のための固体被膜は使用前にイオンプレー
10mm
Upper specimen
Lower specimen
ティングやプラズマコーティングで形成され,使用中に
膜が摩耗し消失した時点でその軸受を使用するシステム
100µm
500µm
500µm
はストップすることになる.図19 に示すように,摩擦
の直前と開始直後に蒸着膜を形成する「トライボコーテ
ィング」に依れば,図20 のようにインタバルに何度で
Material
SiC (CIP)
SiC (CIP)
Texture s name
RSP
(Rectangular
Small Pit)
CLP
(Circular
Large Pit)
Pit diameter:
d (µm)
40
350
Pit depth:
h (µm)
2.6-7
2.7-7.9
3.4-8
は Si3N4 ボールと SUS440C ディスクの組合せにおいて
Pit area ratio:
r (%)
4.0
4.9
7.7
得られていることである.図22 は SUS440C ディスク
SiC (CIP)
CLRSP
(Circular Large
and
Rectangular
Small Pit)
CLP RSP
350
40
も潤滑膜を供給することができる.更にこのようなトラ
イボコーティングによるインジウムの膜は図21 に示す
ように,従来のコーティング膜に比べてはるかに低い摩
擦係数を 104 サイクル以上保つことができる.
ここに注意すべきことは,このように優れた潤滑特性
の摩擦面に形成された In のトライボコーティングによ
図16
SiCディスク表面に形成された
ピットパターン11)
Three pit patterns formed on SiC disk surface
るトライボレイヤの TEM 像を示す.レイヤの厚さは
約 400nm である.図23 の EDX 分析によれば,マト
リックスは Si,Cr,O を主成分とする.マトリックス
Stable friction coefficient,µs
に分散する黒点はナノパーティクルであり,In が主成
0.0014
Lubricant:refined water
Supply rate:60ml/min
Temperature:14-20℃
0.0012
0.001
*Under detection limit
0.0008
分である.図24 の TEM 像によれば In のナノパーテ
ィクルは結晶相であり,マトリックスはアモルファス相
である.
0.0006
0.0004
0.0002
0
図17
No texture
RSP
CLP
CLRSP
3種類のピットパターンがSiC/SiCの
水中摩擦係数に及ぼす影響11)
The effect of three pit patterns on friction coefficients of
SiC/SiC in water
JTEKT Engineering Journal No. 1006 (2009)
7
最近 20 年のトライボロジー研究
Tribo-coating process
Friction test
̶基礎と応用̶
Carbon film (overcoat)
Tribo-layer
Load
(〜1min)
図19
4
6
(1〜2min) 10 〜10 (10 cycles)
摩擦支援被膜潤滑(Tribo-coating)の原理:
軟金属インジウムを摩擦開始直前直後に
数分蒸着12)
Friction assisted coating lubrication (Tribo-coating):
Vapor-deposition of soft metal In for a few minutes just
before and after initiation of sliding
図22
TEM image of tribo-layer on Si disk surface formed by
tribo-coating of In
Si
0.8
Cr
O
In
Evaporation
0
0.4
1
2
Fe
3 4 5 6 7
X-ray Energy,keV
0
1
2
3
Count,a.u.
間欠的なトライボコーティングの効果12)
The effect of interval tribo-coating
Cr
Si
Cu
Cr
Friction coefficient,l
10
(b)
O
Pin/Disk:Si3N4/SUS440C
P=1GPa,v=22mm/sec,
−6
VR=10 Pa
In (Tribo-coating)
In (Vapor deposition)
Ag (Ion-plating)
Pb (Ion-plating)
0.2
9
In
Number of cycles,×104 cycles
0.3
8
(a)図22(a)のマトリックス
Matrix in Fig. 22(a)
0.2
.
図20
(a)
Cr
0.6
0
(b)
InのトライボコーティングによりSiディスク
表面に形成されたトライボレイヤのTEM像14)
Count,a.u.
Friction coefficient,l
10nm
(a)
Pin/Disk:Si3N4/ SUS440c
Lubricant:In
H=2nm/min,th=1-2min
P=1.3GPa,v=24mm/s
ー6
VR=10 Pa
1
Si3N4 pin
100nm
0
2
3 4 5 6 7
X-ray Energy,keV
8
9
10
(b)図22(b)中の黒点
Black points in Fig. 22(b)
図23
Range of friction coefficient
obtained with soft metal films
0.1
1
Fe
Siディスク表面のトライボレイヤ中の
EDXによる成分分析14)
Compositions in tribo-layer on Si disk surface analyzed
by EDX
0
0
5
10
15
3
Number of cycles,×10 cycles
図21
蒸着膜やイオンプレーティング膜に優る
トライボコーティング膜の低摩擦長寿命13)
The lower friction and longer life of Tribo-coating film in
comparison with films by vapor-deposition and ion plating
2.5nm
(a)ナノパーティクル
Nano-particle
図24
(b)マトリックス
Matrix
トライボレイヤのTEM像14)
TEM image of tribo-layer
8
JTEKT Engineering Journal No. 1006 (2009)
最近 20 年のトライボロジー研究
̶基礎と応用̶
Disk:CNx (100nm)/Si3N4
Pin:Si3N4 ball (r=4mm)
Normal load:200mN
−1
Rotary speed:250min (0.4m/s)
5.N2ガス潤滑
1.0
Si3N4 ボールと CNx 被膜間の摩擦はガス雰囲気によ
囲気の中で「N2 ガスのみが摩擦係数を 0.01 以下」に低
下させることを示す.図27 は空気中の 0.7 前後の摩擦
係数が接触面に N2 ガスの吹付けを受けることにより急
速に 0.02 のレベルに下ることを示す.
Air
Friction coefficient,l
り大きく変化する.図25 と図26 は,7 種類のガス雰
0.8
0.6
0.4
0.2
空気中における摩擦面に対するガスの吹付け効果は
0.0
dry air,O2 においても観察される.さらに dry air や
N2
N2
1.2L/min 4.8L/min
0L/min
Air
0
2
4
6
8
10
12
14
3
Number of cycles,×10 cycles
O2 を 50 〜 100 サイクル吹付けた後に N2 を吹付ければ
摩擦係数と摩耗率 ws は大きく低下する.図28 は空気
中において O2 を 50 サイクル CNx/CNx 面に吹付けた後
に,N2 を吹付けることにより l
0.005 が得られるこ
図27
Si3N4/CNxの空気中摩擦に及ぼすN2ガス
吹付けの効果16)
The effect of blowing N2 gas to the contact on friction
of Si3N4/CNx in air
とを示す.図29 は種々のガス吹付けの場合の l と ws
5 × 10 − 8mm3/N・m の値
0.05,l
の値を示す.l
Friction coefficient,l
0.5
Pin:Si3N4 ball (r=4.0mm)
Disk:100nm CNx/Si
Normal load:100mN
Maximum contact pressure:200MPa
Sliding speed:4mm/s
0.4
0.3
1.0
0.8 O2
0.6
0.4
0.2
0.0
1
th
N2 at 50 cycle
10
0.16
0.1
100
1 000
l= 0.005
10 000
Number of cycles N,
3
x10 cycles
CNx
Si3N4
0.05
0.009
図25
0.36
Load:1N
Sliding speed:0.21-0.27m/s
Temperature:20-24℃
Humidity:RH 20-40%
Si3N4
0.2
0
Friction
coefficient,l
は実用に十分に応えるものである.
0.03
100µm
Air
Vacuum
N2
CO2
O2
5
−4
4
4
4
(1x10 Pa) (2x10 Pa) (7.4x10 Pa) (7.4x10 Pa) (7.4x10 Pa)
10 cycles
100µm
10 000 cycles
15)
Si3N4/CNxの摩擦に及ぼすガス雰囲気の影響
The effect of gas environment on friction of Si3N4/CNx
Friction coefficient,l
0.5
0.4
Disk:100nm CNx/Si
Pin:Si3N4 ball (r=4.0mm)
Normal load:750mN
Pmax=400MPa
0.31
V=0.26m/s
0.35
図28
空気中においてCNx/CNxの摩擦面に
O2ガスを50サイクル与えた後にN2ガスを
与えたときの摩擦係数の変化17)
The change in friction coefficient of CNx/CNx by
supplying N2 gas after initial 50 cycles in O2 gas
0.3
0.20
0.2
0.14
0.1
0.01
0
Air
5
Vacuum
−3
(1.0x10 Pa) (4x10
図26
Pa)
N2
He
Ar
5
(1.0x10 Pa)
Si3N4/CNxの摩擦に及ぼすガス雰囲気の影響16)
The effect of gas environment on friction of Si3N4/CNx
JTEKT Engineering Journal No. 1006 (2009)
9
0.3
Load:1N
−1
Sliding speed:0.21-0.27m/s (250min )
Temperature:20-24℃,Humidity:RH 20-40%
2
Gas flow rate:2.0L/min. (2.10cc/mm s)
Inner radius of tube:4.5mm
̶基礎と応用̶
Load
Cylinder (φ6×6mm,
Wear Track
bearing steel)
7 mm stroke@7 Hz
Plate
(10×8×2mm)
Lubricant:1%ZDDPin PAO (80℃)
0.2
0.1
ZDDP : 4-methyl-2-pentanol
R -O
0
S
S
4
CH3
R:
-CH-CH2-CH-CH3
CH3
O-R
S
Zn
P
R-O
5
P
S
O-R
0.20
3
0.15
2
0.10
l
Specific wear amount
Steady state
−7
3
Ws,x10 mm /N・m friction coefficient,l
最近 20 年のトライボロジー研究
1
0.05
0
Air
O2
N2
Air
N2 O2
N2
0.00
From 100 cycles 50 cycles
From
st
st
1 cycle 1 cycle (400mN)
0
1 000
2 000
3 000
Time,sec.
Iron Oxide Plate
Steel Cylinder
図29 空気中においてCNx/CNxの摩擦面にdry air,O2,
N2を独立に,および組み合わせで与えたときの
摩擦係数lと摩耗率ws(mm3/N・m)の値17)
The values of friction coefficient l and wear ratio ws
3
(mm /N・m) at CNx/CNx in dry air, O2, N2 and
combination of gases
TEM Analysis
1.0mm
6.トライボケミカル反応とトライボレイヤ
図30
鉄の酸化膜を成長させた鋼板面と
鋼シリンダ間のZDDPを含む油(PAO)中の
摩擦により形成された表面層の外観18)
ZDDP(Zinc Dialkyl Dithio Phosphate)は米国にお
いて発明されたエンジンオイルの耐摩耗添加剤として 60
Out look of surface layer on oxidized steel plate formed
年以上の使用実績を有する.酸化鉄膜を成長させた鋼板
by friction against steel cylinder in oil (PAO) containing
を,ZDDP を 含 む 油(PAO:Poly-Alpha Phosphate)
ZDDP
中で鋼シリンダにより繰返し摩擦すれば,図30 に示す
ZDDP : 4-methyl-2-pentanol
ように摩擦係数は低下し茶褐色の摩擦面が形成される.
その表面は図31 の TEM 像に示すように 200nm のトラ
イボレイヤに覆われている.その成分は Zn,Fe,P,C,
S,O,Cr 等を主とし,図31 の EDX プロファイルのよ
R -O
R-O
40nm
S
S
P
S
O-R
CH3
R:
-CH-CH2-CH-CH3
CH3
Carbon Layer
(For protection)
Upper Layer
うに分布している.このようなミクロ構造の 200nm 厚
さのレイヤが,形成されるメカニズムと摩擦摩耗を低下
O-R
S
Zn
P
Tribofilm
させるメカニズムは明らかでない.それらは明らかに,
Middle Layer
Bottom Layer
摩擦作用により励起された「トライボケミカル反応」の
世界である.
Iron Oxide Layer
TEM Cross Section Photograph
Near the Surface
図31
鋼板摩擦面に形成されたトライボレイヤ
(〜400nm)のTEM像と各成分の
EDX Depth Profile18)
TEM image of tribo-layer (〜400nm) on friction surface of
steel plate and depth profiles of elements by EDX
10
JTEKT Engineering Journal No. 1006 (2009)
最近 20 年のトライボロジー研究
̶基礎と応用̶
図34 は Si3N4 の素球を従来方式に比べ 40 〜 100 倍
7.トライボ応用技術
のスピードで同レベルの真球度に研磨できる方式として
図32 は 1995 年にレーザープリンタに応用されたレ
1990 年に発明された磁性流体研磨法の原理を示す.磁
ンズと鏡筒の締まりばめ機構を示す.ここに新田・加藤
性流体の値段が下がらないために,設備投資とランニン
により発明されたシュリンクフィッタ(Shrink-Fitter)
グのコストが見合わず,当時実用化されるには至らなか
が用いられ,従来のものより 100 倍広い視野が実現さ
った.このためには Si3N4 の水中摩耗メカニズムが基礎
れている.このためには接触のミクロメカニズムが基礎
知識になっている 22),23).
知識になっている 19).
図35 は宇宙用に現在開発中のトライボコーティング
図33 は真空非磁性の環境の中で電子ビーム露光に用
用マイクロヒータを内蔵する玉軸受けで球は Si3N4,レ
いられるために超音波モータ駆動を応用した総セラミッ
ースは SUS440C である.このためにはセラミックス /
クスの X-Y ステージを示す.これは超音波モータの要
メタルの最適組み合わせとトライボレイヤに関する知識
である アルミナ製の駆動ピンと被駆動レールを耐摩耗
が基礎になっている 12),13),14).
の観点から設計したもので,2000 年に京セラ㈱により
製作された.このためにはセラミックスの摩耗メカニズ
ムが基礎知識になっている
XY Stage driven by Ultrasonic Motor
for LSI of 0.15µm line width
20),21)
.
シュリンクフィッタ
温度上昇時の
シュリンクフィッタの熱膨張
シュリンクフィッタ
࡟ࡦ࠭
鏡筒
X-Y stage
Electron Beam
Lithography System
スリット
シュリンクフィッタ
ポリゴン
ミラー
ビーム
スポット小
図33
電子ビーム露光用超音波駆動総セラミックス
X-Yステージ
Totally ceramic X-Y stage driven by ultrasonic wave for
スペーサー
結像面
electron beam lithography
窒化ケイ素(Si3N4)球の磁性流体研磨法
シュリンクフィッタと
レンズ
ポリゴン
ミラー
Si3N4素球 Si3N4研磨球
ビーム
スポット大
球の外観
従来のレンズ接合法
シュリンクフィッタを
レンズの配置に適用す
ることにより従来のも
のより約100倍広い視
野を実現
磁性流体
と砥粒
球
浮子
球の直径 7.7mm 7.1mm
平均粗さ 1.0µm 0.01µm
真球度
500µm 0.14µm
研磨時間:180min
ᓥ᧪ᴺ䈱㪋㪇୚એ਄䈱ㅦ䈘
1.非磁性の浮子により球に大きな加工力を
作用させ,かつ球の運動を安定に保つ.
レーザ顕微鏡
図32 セラミックス・ポリマー/メタルの締まりばめ用
シュリンクフィッタを用いたレーザー顕微鏡
Laser microscope using shrink fitter for
2.Si3N4の球はSiCの砥粒,Si3N4の駆動軸
および水ベースの磁性流体との間のアブレ
シブ摩耗と摩擦化学摩耗(tribo-chemical
wear)の結果として研磨される.
図34
セラミック素球の磁性流体研磨
Magnetic fluid grinding of ceramic balls
ceramics・polymer/metal shrink fitting
JTEKT Engineering Journal No. 1006 (2009)
11
最近 20 年のトライボロジー研究
̶基礎と応用̶
トライボロジーの科学技術の世界が大きく深くて,研究
マイクロヒータの試作
の歴史が短いことを物語っている.
技術が地球の明暗を決めると思われる 21 世紀におい
て,ジェイテクトが重要な役割を果すことを祈り,この
小文がなにがしかのお役に立てることを願いつつ,ペン
を置かせていただきます.
Pt heater
Au wire
5mm
In
SiO2
Membrane area
図35
Si
wafer
Inのマイクロ蒸発源を多数内蔵する
宇宙用玉軸受
A ball bearing with micro-evaporators of In for space
application
謝辞
本文に紹介した研究の中で,Si3N4 と SiC の水潤滑,
Si3N4/SUS440C の In 潤 滑,Si3N4/CNX の N2 ガ ス 潤 滑
の研究のためには光洋精工㈱と㈱ジェイテクトから 15
年を超える長期にわたってセラミック球とベアリングの
供給を中心にご支援をいただいております.記して心底
より感謝の意を表させていただきます.
参考文献
8.おわりに
一般にある製品を支える技術の寿命は短い.というよ
りも製品を支える技術は日進月歩で年々ジャンプする.
一方で目先を変えただけの新製品開発をサバイバルの手
段にすれば息が切れ,なんでもありになり,結果に責任
を持たなくなり,心が荒れてくる.子供を騙すような商
品を世に出すことになる.はまってはならない地獄への
スパイラルである.
大人の良心をかけるに値する製品について,性能(機
能と効率)と信頼性を向上させ環境負荷とコストを低減
させるための技術の開拓と応用は「モノづくり」にたず
さわる者の心構えと喜びを確かなものにする.仕事の社
1)J. Liu, K. Oba, K. Kato and H. Inooka: Partial Slip
Visualization at Contact Surface with the
Correlation Method, Visualization Society of Japan,
15(1995)47-53.
2)K. Hokkirigawa and K. Kato: Abrasive Wear
Diagram, Proceedings of Eurotrib 85, 4(1985)1-5.
3)K. Adachi, K. Kato and N. Chen: Wear Map of
Ceramics, Wear 203/204(1997)291-301.
4)D. F. Diao, K. Kato and K. Hayashi: The Local Yield
Map of Hard Coating under Sliding Contact, Thin
Films in Tribology: Proceedings of the 19th LeedsLyon Symposium on Tribology, Leeds, UK, 1991, D.
Dowson et al.(Editors), Tribology Series, 25(1992)
Elsevier, 419-427.
会貢献を確信してよい「王道」である.確実な利益の実
5)K. Kato: Microwear Mechanisms of Coatings,
現もこの王道にある.人をそそるか驚かす新商品開発と
Surface and Coating Technology, 76-77( 1995 ),
先行逃げ切りパターンの繰返しによる利益追求は王道に
非ずである.
ジェイテクトの多くの製品がこの王道に在ると考えら
れる.トライボロジーの知識を修得し基礎的体験を深め
469-474.
6)T. Akagaki and K. Kato: Plastic Flow Process of
Surface Layers in Flow Wear under Boundary
Lubricated Conditions, Wear, 117(1987), 179-196.
7)T. Akagaki and K. Kato: Simulation of Flow Wear
ることはそれらの製品の性能と信頼性を向上させ,環境
in Boundary Lubrication Using a Vickers
負荷とコストを低減させることに長期的に大きく貢献で
Indentation Method, STLE Tribology Transactions,
きるものと信ぜられる.
31(1988), 311-316.
本文に紹介された 35 枚の図の結果は若手研究者と学
生を中心にした 20 〜 25 人の集団が 20 年の研究期間に
得たものの一部である.小さな,お金の無い,若者集団
が短い期間にこの程度の成果を挙げられるということは
12
8)M. Chen, K. Kato and K. Adachi: The Difference in
Running-in Period and Friction Coefficient between
Self-mated Si3N4 and SiC under Water Lubrication,
Tribology Letters, 11(2001), 23-28.
JTEKT Engineering Journal No. 1006 (2009)
最近 20 年のトライボロジー研究
̶基礎と応用̶
9)M. Chen, K. Adachi and K. Kato: Friction and Wear
of Self-mated SiC and Si3N4 Sliding in Water, Wear,
250(2001), 246-255.
10)X. Wang, K. Kato, K. Adachi and K. Aizawa: Loads
(1989)
, 632-639.
20)T. Honda and K. Kato: The Influence of Ultrasonic
Shape on Friction and Wear Properties in
Ultrasonic Drive, JaST, 41(1996), 178-184.
Carrying Map for the Surface Texture Design of
21)K . A d a c h i , K . K a t o a n d Y . S a s a t a n i : T h e
SiC Thrust Bearing Sliding in Water, Tribology
Micromechanism of Friction Drive with Ultrasonic
International, 36(2003), 189-197.
Wave, Wear, 194(1996), 137-142.
11)K. Adachi, K. Otsuka, X. Wang and K. Kato: Effects
22)N. Umehara and K. Kato: A Study on Magnetic
of Surface Texture on Water Lubrication Properties
Fluid Grinding ( 1st Report, the Effect of the
of Advanced Ceramics, Journal of the Japan Society
Floating Pad on Removal Rate of Si 3N 4 Balls ),
for Abrasive Technology, 50(2006), 107-110.
Transactions of the JSME(C), 54(1988), 1599-1604.
12)K. Kato, H. Furuyama and M. Mizumoto: The
23)N. Umehara and K. Kato: Principles of Magnetic
Fundamental Properties of Tribo-Coating Films in
Fluid Grinding of Ceramic Balls, J. Appl.
Ultra High Vacuum, Proceedings of the Japan
Electromagnetics in Materials, 1(1990), 37-43.
International Tribology Conference Nagoya, 1990, 1
(1990)
, 261-266.
13)K. Adachi and K. Kato: Reliable Design of Space
System in Tribology Viewpoint, Proceedings of the
22nd International Symposium on Space Technology
and Science, 1,(2000), 593-598.
14)K. Adachi and K. Kato: In-situ and On-demand
Lubrication by Tribo-coating for Space Applications,
Journal of Engineering Tribology, IMechE, to be
published.
15)N. Umehara, M. Tatsuo and K. Kato: Nitrogen
Lubricated Sliding between CNx Coatings and
Ceramic Balls, Proceedings of the International
Tribology Conference Nagasaki, 2000, 2, ( 2001 ),
1007-1012.
16)K. Kato, N. Umehara and K. Adachi: Friction, Wear
and N2-lubrication of Carbon Nitride Coatings: a
Review, Wear, 254,(2003), 1062-1069
17)K. Adachi, T. Wakabayashi and K. Kato: The Effect
of Sliding History on the Steady State Friction
Coefficient between CNx-coating Under N 2
Lubrication, Proceedings of the 31st Leeds-Lyon
Symposium on Tribology, 2004, Leeds, UK, D.
Dowson et al.(Editors), Tribology and Interface
Engineering Series, 48, Elsevier,(2005), 673-677.
18)K. Ito, J. M. Martin, C. Minfray and K. Kato:
Formation Mechanism of a Low Friction ZDDP
Tribofilm on Iron Oxide, STLE Transactions, 50,
(2007)
, 1-6.
19)I. Nitta, K. Kigoshi and K. Kato: Study of the Fitting
Strength between Ceramic and Metal Elements
with the Use of a Shrink Fitter at Elevated
Temperature (Proposal of the Shrink-Fit Method
with the Use of a Shrink Fitter and Experimental
Results), JSME International Journal Series 3, 32
JTEKT Engineering Journal No. 1006 (2009)
13